用紙分離装置、画像読み取り装置、用紙処理システム及び用紙分離方法
【課題】トナーによって接着され綴じられた用紙束の綴じ状態を、用紙を傷つけることなく束状態解除し、1枚ずつの用紙にばらすことができるようにする。
【解決手段】用紙束PBの最上位の用紙Pを当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間Pvを形成する用紙浮かし機構40と、空間Pvを形成する際、用紙束PBの用紙浮かし機構配設位置よりもトナー接着部T側を押さえ、用紙束PBを保持する第1の保持機構20と、空間形成後、用紙束PBの用紙浮かし機構配設位置よりもトナー接着部Tから離れた側を押さえ、用紙束PBを保持する第2の保持機構30と、第2の保持機構30によって保持された状態で空間Pv内に挿入され、トナー接着部Tまで移動し、トナーによる接着状態を解除して最上位の用紙Pを用紙束PBから分離する用紙分離部材51を含む用紙接着部分離機構と、を備えた。
【解決手段】用紙束PBの最上位の用紙Pを当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間Pvを形成する用紙浮かし機構40と、空間Pvを形成する際、用紙束PBの用紙浮かし機構配設位置よりもトナー接着部T側を押さえ、用紙束PBを保持する第1の保持機構20と、空間形成後、用紙束PBの用紙浮かし機構配設位置よりもトナー接着部Tから離れた側を押さえ、用紙束PBを保持する第2の保持機構30と、第2の保持機構30によって保持された状態で空間Pv内に挿入され、トナー接着部Tまで移動し、トナーによる接着状態を解除して最上位の用紙Pを用紙束PBから分離する用紙分離部材51を含む用紙接着部分離機構と、を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙分離装置画像読み取り装置、用紙処理システム及び用紙分離方法に係り、さらに詳しくは、プリンタ、MFP(Multi Function Peripheral)、複写機などの電子写真を応用した出力機器や読み取り装置内で、トナーによって接着され、綴じられた用紙束について、綴じ状態を自動的に解除し、用紙を1枚ずつ分離する用紙分離装置、この用紙分離装置を備えた画像読み取り装置、この画像読み取り装置を備えた用紙処理システム、及び前記用紙分離装置で実施される用紙分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
綴じ処理は一般にはステープラと称される綴じ装置が使用され、綴じ処理には金属製の針が使用されている。このような金属製の針(ステープル針)を使用したものでは、ステープル針を物理的に抜き取り、切り取れば綴じ状態を解除することが可能である。
【0003】
一方、帯状のシートで形成される綴じ部材により用紙束を綴じる綴じ方法も知られている。このような綴じ方法を解除する場合には、帯状のシートで形成される綴じ部材によって綴じられた用紙束を載置する載置部と、用紙束の表面の綴じ部材を検出する検出手段と、前記綴じ部材を分断する分断手段と、を備え、綴じられた用紙束における綴じ部材の位置情報を得て、用紙束の綴じ状態を自動的にしかも確実に解除して用紙ごとにばらすことが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
他方、ステープルあるいは帯状のシートからなる綴じ部材のように用紙に穴を形成することなく綴じる綴じ方法としてトナーによって綴じる方法が知られている(例えば特許文献2)。この方法は、シートの綴じ代相当部分に熱軟化性を有する電子写真用トナーを付着させ、かつ、該部分に他のシートの綴じ代相当部分を重ねた状態で、該綴じ代相当部分同士を加熱及び加圧して接着するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステープル針によって綴じる方法では、金属のステープル針を抜き取り、あるいは切り取って綴じ状態を解除することができる。また、特許文献1記載の技術のように帯状のシートによって綴じる方法では、帯状のシートを分断し、引き抜いて綴じ状態を解除することができる。いずれにしても綴じを解除した場合には、用紙束にステープル跡が穴として残ることになる。その際、用紙束を構成する各用紙自体はばらばらであり、ステープル針あるいは帯状の綴じ部材によって機械的にまとめられているに過ぎない。
【0006】
これに対し、用紙を何らかの接着手段、例えば特許文献2記載の技術のようにトナーを利用して用紙を接着し、用紙束として綴じたものでは、針の抜き取りや分断では綴じ状態を解除することはできない。このような場合、綴じ状態を解除するには、接着した部分をカッタによって切り取り、各用紙の接着状態を解除すれば可能であるが、用紙の接着部分が切り取られることから、元の用紙の形状をとどめることができない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、トナーによって接着されて綴じ処理された用紙束の綴じ状態を、用紙を傷つけることなく用紙の形状をとどめた状態で解除し、1枚ずつの用紙にばらすことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離装置であって、前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する空間形成手段と、前記空間形成手段によって前記空間を形成する際、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記トナーによる接着部側を押さえ、前記用紙束を保持する第1の保持手段と、前記空間形成手段によって前記空間を形成した後、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記接着部から離れた側を押さえ、前記用紙束を保持する第2の保持手段と、前記第2の保持手段によって保持された状態で前記空間内に挿入され、前記トナーによって接着された部分まで移動し、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する用紙分離部材を含む用紙分離手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナーによって接着されて綴じ処理された用紙束の綴じ状態を、用紙を傷つけることなく用紙の形状をとどめた状態で解除し、1枚ずつの用紙にばらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る実施例1におけるトナーによって綴じられた用紙束の一例を示す図である。
【図2】実施例1における用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】実施例1における制御回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図4に示したCPUによって実行される用紙分離装置のメイン動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例2に係る用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【図7】実施例2における静電方式の吸着板の構成を示す図である。
【図8】図7に示した静電吸着板の断面構成を示す図である。
【図9】実施例2におけるエアー方式の吸着板の構成を示す図である。
【図10】実施例3に係る用紙分離装置の概略構成を示す図である。
【図11】実施例3における用紙分離部材近傍の構成を示す要部拡大図である。
【図12】用紙接着部分離機構を用紙束の搬送中心に対して対称に配置した例を示す平面図である。
【図13】ワイヤを使用した用紙分離部材の構成を示す図である。
【図14】用紙分離部材の先端縁の形状を成型や機械加工で形成した例を示す図である。
【図15】実施例4に係る用紙接着部分離解除機構による分離動作の状態を検知する検知回路の一例を示す図である。
【図16】実施例6における分離部温度と分離部材回転トルクとの関係を示す図である。
【図17】実施例6における用紙接着部分離機構を示す要部平面図である。
【図18】実施例6における用紙分離部材の一例を示す図である。
【図19】実施例6における用紙分離部材の他の例を示す図である。
【図20】実施例6における二体で形成された用紙分離部材を示す図である。
【図21】図20に示す加熱部の横断面図である。
【図22】発熱体部にトナーと密着しないようにギャップを持たせた例を示す図である。
【図23】放熱用フィンを備えた用紙分離部材を示す平面図である。
【図24】実施例7における用紙分離部材の動作を示す説明図である。
【図25】図24における用紙分離部材の動作の一例を示す速度線図である。
【図26】図24における用紙分離部材の動作の他の例を示す速度線図である。
【図27】用紙分離部材が慣性エネルギ付与機構を有する実施例8に係る用紙接着部分離機構の要部を示す平面図である。
【図28】図27のパルスモータの駆動軸に慣性ホイールを設けた例を示す用紙接着部分離機構の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、用紙束のうち最上位の用紙をその下の用紙から浮かし、その間に用紙分離用の部材を挿入し、トナーの接着部分を当該部材によって引き剥がし、用紙を1枚ずつ分離することを特徴とするものである。
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について実施例ごとに説明する。なお、実施例1が基本となる用紙分離装置の構成を示し、実施例2以降は実施例1の変形例なので、実施例2以降については実施例1と重複する各部の構成及び動作についての説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1におけるトナーによって綴じられた用紙束の一例を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は正面図である。同図では、用紙Pの平面視左下の角部である綴じ代相当部分に熱軟化性を有する電子写真用トナーを付着させてトナーパターンPcを形成し、当該綴じ代相当部分と他の用紙の綴じ代相当部分を重ねた状態で、当該綴じ代相当部分同士を加熱及び加圧して用紙を接着し、用紙束PBを形成したものである。この接着は図示しないトナー接着装置によって搬送されてくる1枚目の用紙(最下位の用紙)P1からn枚目の用紙(最上位の用紙)Pn1枚ごとに実施され、1冊の用紙束(積層用紙)PBが形成される。
【0014】
図2は本実施形態における用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図、図3は図2の平面図である。
【0015】
図2及び図3において、用紙分離装置1は、ガイド板10、第1及び第2の保持機構20,30、用紙浮かし機構40、用紙接着部分離機構50及び用紙搬送機構60から基本的に構成されている。
【0016】
ガイド板10は、トナーによって綴じられた用紙束(積層用紙)PBが置かれ、用紙接着部分離機構50で分離させる間支持する部材であり、分離後、用紙Pはガイド板10状態から排紙される。なお、用紙束PBは図示しない搬送手段によって上流側から搬送され、あるいは搬送手段を介さずにユーザが直接ガイド板10上に用紙束PBを置き、所定位置にセットされる。
【0017】
ガイド板10上には、用紙排紙方向(以下、単に搬送方向と称す。)下流側から搬送中心に沿って第1の保持機構20、用紙浮かし機構40、及び第2の保持機構30が配置され、さらに用紙束PBの先端部PBaのトナー接着部Tの側部に用紙接着部分離機構50が配置されるとともに、ガイド板10の下流側の直近に用紙搬送機構60が設けられている。
【0018】
ガイド板10の第1及び第2の保持機構20が配置された位置と対向する位置には、それぞれ第1及び第2の摩擦部材11,12が配置されている。
【0019】
第1の保持機構20は、第1の加圧軸21、第1の加圧軸21の下端に設けられた第1の加圧板22、第1の加圧軸21を回転駆動し、第1の加圧板22を昇降させる第1のパルスモータPM1、前記第1の摩擦部材11と対向し、第1の摩擦部材11との間に用紙束PBを挟み、両者間で保持する第1の保持パッド23、第1の保持パッド23と第1の加圧板22の間に装着され、圧縮量に応じた弾性力を第1の保持バッド23に付与する第1のバネ部材24、及び第1の加圧軸21の位置から第1の加圧板22のホームポジションを検知する第1のホームポジションセンサSN1を備えている。第1の保持パッド23は図3から分かるように平面視長方形であり、第1の摩擦部材11も同様の形状をしている。
【0020】
第1の保持パッド23には、第1の保持パッド23と第1の加圧板22の最大間隔を規定する第1の持ち上げ板26が取り付けられている。第1の持ち上げ板26には第1の加圧板22の上面と接触する第1の突片26aが形成され、第1の加圧板22がこの第1の突片26aの下面に当たった位置からさらに上方に移動すると、第1の加圧板22が第1の持ち上げ板26を持ち上げ、第1の保持パッド23を一体に引き上げる。第1の加圧板22は第1の保持パッド23が用紙束PBの上面に接触し、その状態で第1の加圧板22が下方に移動する場合には、第1のバネ部材24の圧縮量に応じた加圧力を用紙束PB側に付与する。
【0021】
また、第1の保持パッド23によって保持可能な位置には、用紙束PBの先端部PBaが突き当たり、当該先端部PBaを規制する突き当て板25が、ガイド板10の表面から進出後退可能に搬送中心に対して対称な個所に2個所設置されている。突き当て板25の進出後退動作はソレノイドSLによって行われ、進出量はソレノイドSLの駆動ストロークで規定され、予め突出量は設定されている。なお、ソレノイドSLは駆動時にアクチュエータを吸引することよって突き当て板25をガイド板10の表面から後退させる。突き当て板25の配設位置の直近の搬送方向上流側には、用紙束PBの先端部PBaを検出する用紙端検出センサSN4が配置されている。
【0022】
さらに、ガイド板10の搬送方向上流側であって、用紙束PBを押圧可能な位置には、第2の保持機構30が配置されている。第2の保持機構30は、第2の加圧軸31、第2の加圧板32、第2のパルスモータPM2、第2の保持パッド33、第2のバネ部材34、第2の持ち上げ板36、第2の突片36a、第2のホームポジションセンサSN2を備えており、これらの各部は第1の保持機構20と同一の構成である。なお、第2の保持パッド33は第1の保持機構20と同様に第2の摩擦部材12の垂直上方に位置している。
【0023】
第2の保持機構30は、用紙浮かし機構40よりも搬送方向上流側に設置する。用紙撓み側で保持しようとすると、用紙Pの撓み側は用紙接着部分離機構50の可動範囲内であるためスペースが狭く、適切な押さえができない上、用紙Pそのものに永久変形を与えてしまう可能性があるからである。また、第2の保持パッド33は、用紙の幅方向(搬送方向と直交する方向)全域又は用紙の幅方向の両端部で、トナー接着部Tの延長上に相当する2個所に設けることが好ましい。この位置は、用紙接着部分離機構50によってトナー接着部Tに作用する分離力に対して効率の良い押さえ位置である。
【0024】
用紙浮かし機構40は、第1の保持機構20と第2の保持機構30との間に設けられ、撓み形成ローラ47によって第1の保持機構20によって保持された用紙束PBの最上位の用紙(以下、上葉紙ともいう。)Pに対して上方に撓みPtを生じさせるものである。この用紙浮かし機構40も、第3の加圧軸41、第3の加圧板42、第3のパルスモータPM3、第3のバネ部材44、第3の持ち上げ板46、第3の突片46a、第3のホームポジションセンサSN3を備えており、これらの各部は第1の保持機構20と同一の構成である。第1の保持機構20と異なるのは、第1の保持パッド23に変えて支持板43とし、支持板43の回動支点45を第2の保持機構30側に設け、支持板43の第1の保持機構20側に、撓み形成ローラ47と、この撓み形成ローラ47を回転駆動する第4のパルスモータPM4を設けた構成にある。
【0025】
撓み形成ローラ47は加圧板22の上昇動作によって第1の保持機構20の場合と同様に第3の持ち上げ板46と一体に上昇して用紙束PBの上面から離れる。また、加圧板22の下降動作によって、加圧板22が第3の突片46aから離れると、第3のバネ部材44による加圧力が回動支点45を支点として撓み形成ローラ47側に加わり、撓み形成ローラ47は上葉紙Pに対する接触圧を付与することができる。そして、接触圧が付与された状態で、第4のパルスモータPM4が駆動され、撓み形成ローラ47が図示時計回り方向(矢印R1方向)に回転すると、図2に示すように上葉紙Pを撓ませ、撓みPtを形成することができる。なお、上葉紙Pが撓む部分の上方には、用紙撓みセンサSN5が配置され、上葉紙Pの撓み量を検出することができるようになっている。また、この撓みPtにより、当該撓みPtの下側には後述の用紙分離部材51が挿入される空間Pvが形成される。
【0026】
用紙撓みセンサSN5は、例えば反射型フォトセンサからなり、上葉紙Pの紙面からの反射光量により所定の変形が行われたものと判断する。用紙撓みセンサSN5は用紙分離部材51の紙面における可動範囲内に設置される。これにより、用紙の撓みを確実に検出することができる。
【0027】
また、本実施例では、第4のパルスモータPM4によって撓み形成ローラ47を回転駆動しているが、第4のパルスモータPM4の駆動力の伝達には減速機構を用いると良い。これにより、撓んだ用紙の撓みの戻り力で撓み形成ローラ47が駆動前の方向に戻ってしまうことがなく、U字状に撓んで変形した状態を用紙分離部材51が挿入するまでの間、保持し続けることができる。さらに、撓み形成ローラ47に代えてシリコーンゴムなどの低硬度にして極めて高い粘着性を有する平板状部材に用紙を吸着させて、第1の保持部材20側に押し出すことによって撓みを形成させることも可能である。
【0028】
用紙接着部分離機構50は図3に示すように板状の用紙分離部材51と、用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5とからなる。用紙分離部材51は図3に示すようにガイド板10のから離れたガイド板の側部にホームポジション(初期位置)HPが設定され、このホームポジションHPは第4のホームポジションセンサSN6によって検出される。また、用紙分離部材51はホームポジションから図3において反時計回り方向(矢印R2方向)に回転し、図2に示すように最上位の用紙Pが撓んでその下の用紙から浮いた部分に挿入され、隣接する用紙の間に入り込み、用紙分離部材51の回転方向前縁51aが用紙を接着しているトナー接着部Tのトナー層を剥離し、接着された用紙を分離するようになっている。
【0029】
用紙搬送機構60は駆動ローラと従動ローラとからなる用紙移動ローラ対61と、駆動ローラを回転駆動する第6のパルスモータPM6とからなり、用紙接着部分離機構50によって分離され、用紙移動ローラ対61のニップに導かれた上葉紙Pを下流側に搬送する。
【0030】
用紙搬送機構60は、分離後の上葉紙Pを移動させる機構であるが、用紙浮かし機構40による上葉紙Pの第1の保持機構20側への撓み形成のための移動を、上葉紙Pの分離後には用紙の送り出しとして併用する。すなわち、分離後の上葉紙Pの移動は、用紙束PBが移動しないようにするための第1及び第2の保持機構20,30の保持動作を解除した後、用紙浮かし機構40を駆動し、用紙移動ローラ対61のニップに送り込むことによって行う。
【0031】
上葉紙Pを移動させるにあたり、下層にある用紙束PBは、搬送方向最下流側でガイド板10から僅かに突き出した突き当て板25に突き当たり、突き当たった位置から移動しないようになっている。最後の1枚となって移動するときは、用紙Pの送り出し力が、せき止め力に打ち勝って、用紙が弾性変形し、突き当て板25を乗り越えて強制的に搬送方向下流側に押し出される。
【0032】
図2に示すように、用紙浮かし機構40により送り出す必要量は、突き当て板25に突き当たった位置から用紙移動ローラ対61のニップまでの距離Lである。そこで、用紙Pが撓んだときに、その撓み量αを加算して、(L+α)相当の移動量になるように駆動ステップ数を第4のステップモータPM4に与える。この指示は、後述の図4に示したCPU100から出力される。
【0033】
上葉紙Pの先端が、用紙移動ローラ対61のニップに噛んだならば、駆動側の用紙移動ローラの回転を第6のパルスモータPM6により開始し、上葉紙Pをさらに搬送方向下流側に移動させ、排紙する。そして、同時に用紙浮かし機構40を初期位置に戻す。
【0034】
なお、前述のように第1の保持機構20は、搬送方向中心で用紙束PBの先端部PBaを押さえるようになっているが、この押さえ位置は、トナー接着部Tと搬送方向と直交する方向から見て重なるような位置に設けられ、これに隣接した下流側に用紙浮かし機構40が配置されている。これは、用紙分離部材51を挿入するための用紙浮かし状態を形成するとき、第1の保持機構20がなければ撓み形成ローラ47が矢印R1方向に回転したときに用紙束PB全体が搬送方向に移動し、用紙浮かし状態を形成することができなくなるからである。
【0035】
また、第1及び第2の保持パッド23,33は、用紙との摩擦係数の大きな弾性部材を使用する。クロロプレンゴムやウレタンゴム等による形成が有効である。第1及び第2の摩擦部材11,12は、少なくとも用紙間同士の摩擦係数よりも大きい値であれば良いが、摩擦係数の大きな材料としては、比較的低硬度(ゴム硬度40°以下)なウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、あるいはコルク等などが使用できる。これらの材料であれば、用紙束PBの最下位となる最後の1枚の用紙P1に対しても、用紙前面に設けた突き当て板25の抵抗に抗する送り力で搬送することができる。また、このような摩擦係数の大きな部材を用いると、用紙分離部材51の作動時に、用紙束PBが移動しないような摩擦力を作用させることができる。これにより、第1及び第2のバネ部材24,34による加圧力とともに、用紙Pの下面においてμ(摩擦係数)×N(加圧力)相当の保持力を確保することが可能となる。
【0036】
このように保持力は加圧力とパッドの摩擦係数により決定される。トナー接着される用紙の積層厚さは、接着枚数を2〜50枚とすると、用紙変形による空気層の介在も含めて概ね0.12〜5mmである。厚さの変化は比較的小さいので、加圧のための第1及び第2の保持パッド23,33は、初期位置を決めておき、第1及び第2のパルスモータPM1,PM2における第1及び第2の加圧軸21,31を常に一定量のストロークで変位させて加圧するようにしている。
【0037】
積層厚の変化に伴う第1及び第2の保持パッド23,33の移動は、本実施例では、第1及び第2の保持パッド23,33を加圧する第1及び第2のバネ部材24,34の弾性変形で吸収するようにしている。用紙の積層厚さの変化を検出して、それに応じた変位量を第1及び第2のパルスモータPM1,PM2にそれぞれ与えて第1及び第2の加圧軸21,31の移動量を調整するという制御を行うこともできるが、本実施例のようにバネ部材24,34の弾性変形により機械的に吸収する方が簡単で確実である。
【0038】
なお、用紙浮かし機構40の下側に当たるガイド板10部分には摩擦部材を設けない。これは、用紙浮かし機構40のローラ駆動により最後の1枚の用紙を送り出そうとするときに摩擦が大きいと滑りが生じないからである。なお、後述の実施例2のように吸着板49を使用して用紙を浮かす場合も、長時間の接触によって粘着性などに起因する吸着が発生し、浮かし効果が得られないことがあるので、この場合も設けない。
【0039】
また、第1及び第2の保持機構20,30及び用紙浮かし機構40に第1ないし第3のバネ部材24,34,44を使用しているのは、接着された用紙束PBの厚さが用紙接着部分離機構50による用紙Pの分離動作の進行に伴って変化していくからである。バネ部材を用いることにより、このような用紙束PBの厚さの変化を吸収して、用紙分離部材51の作動時に用紙束PBが移動しないように一定以上の保持力を得るための加圧力を確保することができる。
【0040】
第2の保持機構30の保持動作は、用紙束PBが移動しないようにするためである。そのため、最上位紙について用紙浮かし機構40を動作させて用紙Pの浮かし動作が終了し、撓みPtの下面側の空間Pvに用紙分離部材51が差し込まれたら、即座に、用紙浮かし機構40による用紙浮かし動作を解除し、上葉紙Pを浮かし前の状態に戻した後、保持動作を行う。このように動作させずに、撓みPtの形成後、用紙浮かし機構40をそのままの状態にして第2の保持機構30で用紙束PBを保持し、用紙分離部材51を作動させると、適正な用紙分離ができなくなる。これは、用紙Pに撓みPt部分が存在するために、この撓みPtの部分が分離部で紙折れとなることがあり、その結果、接着部で用紙破断が発生するという事態につながる場合があるからである。このように用紙破断となると、適正な用紙分離は不能となる。
【0041】
なお、用紙を浮かし前の状態に戻すとは、用紙浮かし機構40による浮かし動作を継続することを止め、初期状態にするということである。すなわち、図2において、撓み形成ローラ47で用紙Pに撓みPtを形成し、用紙浮かしを行っている場合は、第4のパルスモータPM4の通電をオフとし、その後、第3のパルスモータPM3を駆動し、ホームポジションの検出位置である第3のホームポジションセンサSN3まで第3の加圧軸41を戻すと、回転支点45回りに初期位置に戻ることになる。
【0042】
図4は、本実施例における制御回路の概略構成を示す機能ブロック図である。図4において、本実施例における制御回路はCPU100と、このCPU100に接続されたコントローラ110を中心に構成されている。
【0043】
コントローラ110には、操作パネル111、センサインターフェース(I/F)120及びドライバインターフェース(I/F)130が接続されている。
【0044】
センサインターフェース120には、用紙分離装置Aのハード構成1Aとして設けられている前記第1ないし第4のホームポジションセンサSN1,SN2,SN3,SN6などの複数のホームポジションセンサ121、用紙厚さセンサ122及びトルクセンサ123が接続され、センサインターフェース120によってコントローラ110と各センサとの間の信号の授受が可能となっている。また、ドライバインターフェース130には、第1ないし第7のパルスモータPM1〜7の個々のモータを駆動するための複数のモータドライバ131、ソレノイドSLを駆動するためのソレノイドドライバ132、後述の静電吸着板49−1を駆動するための静電吸着ドライバ133、後述のエアー吸着板49−10を駆動するためのエアー吸引ドライバ134が接続され、ドライバインターフェース130によってコントローラ110と各ドライバとの間の信号の授受が可能となっている。
【0045】
操作パネル111は操作者とのマン・マシンインターフェースであり、操作者から操作入力が可能であり、操作者にマシンの状態、操作ボタン、操作情報などを表示する。
【0046】
CPU100はRAM101及びROM102と接続されている。CPU100は、制御部と演算部を含み、制御部が命令の解釈とプログラムの制御の流れを制御し、演算部が演算を実行する。また、プログラムはROM102に格納され、実行すべき命令(ある数値又は数値の並び)を前記プログラムの置かれたROM102から取り出し、RAM101をワークエリア及びデータバッファとして使用しながら前記プログラムを実行する。
【0047】
また、前記用紙撓みセンサSN5によって検出された撓み量は、ここでは、特に説明しないが、後述のセンサインターフェース120からコントローラ110及びCPU100に入力され、所定の撓み量(変位量)に達したときに、用紙浮かし機構40の第4のパルスモータPM4を停止させ、撓み形成ローラ47を停止状態に保持する。これにより、用紙分離部材51を確実に挿入するための空間Pvを確保することができる。その結果、接着用紙の分離ミスの発生を防止することができる。
【0048】
図5は図4に示したCPU100によって実行される用紙分離装置のメイン動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理には、実施例1で説明されていない処理も含まれているが、全体としての処理であり、後述の実施例において詳細は説明されている。ここでは、このように構成された用紙分離装置1の用紙分離の基本的な分離動作について簡単に説明する。分離動作は、
1)接着された用紙束(積層紙)PBの上葉紙Pにおいて、接着された近傍に撓みPtを発生させ、撓みPtによって形成された空間Pvに用紙分離部材51を差し込む。
2)用紙分離部材51をトナー接着部Tに回転移動させ、強制的にかつ徐々に矢印R2方向進行させながら用紙分離部材51の前縁51a部で用紙間を掻き分けるようにして用紙を分離する。これで1枚目の用紙Pが分離される。
3)用紙移動ローラ対61によって分離された上葉紙Pを搬送方向下流側に移動させる。
4)再度1)から3)の同じ動作を繰り返し、初期状態で上から2枚目の用紙(下葉紙)を分離し、移動させる。
5)同様の操作をn−1(n:積層枚数[nは2以上の整数])回繰り返し、トナー接着により綴じられた用紙束PBの全ての用紙の接着状態を解除する。
という各工程を経て、1枚ずつの用紙Pに分離される。
【0049】
上記工程をさらに詳しく説明すると、図5のフローチャートに示すように、トナーTにより、所定の位置で接着された用紙束PBは、操作者によりガイド板10上にセットされる(ステップS101)。用紙束PBのセットは、電源ON後、操作者が操作パネル111に設けられた表示に従って、方向を確認しつつ図中左側に挿入することによって行われる。すなわち、左側に挿入すると、そこには突き当て板25がガイド板10の表面から突出しており、用紙束PBの先端部PBaを突き当て板25に突き当たる位置まで押し込むと、用紙束PBはそれ以上押し込めない。用紙束PBが用紙分離位置(突き当て板25に用紙束PBの先端部PBaが突き当てられた位置)にセットされたかどうかは用紙端検出センサSN4によって検出される。
【0050】
突き当て板25は、用紙分離位置に用紙束PBがセットされたことが検出された後、分離操作が開始されると、ソレノイドSLにより引き下げられ、最下葉紙P1から1mm程度突出した位置で、その突出状態を持続する。すなわち、この突き当て板25の突出部が用紙束PBの先端部PBaに常に接触していて、分離された上葉紙1枚の送り出し移動が行われる過程において、接着された下葉紙が共に繰り出されないためのストッパとして機能する。
【0051】
第1の保持機構20は、用紙Pの撓みPtを作るための動作中に用紙Pが移動してしまわないように、用紙束PBの先端部PBaを上から押さえる機能を備えている。押さえる位置は、図3から分かるようにトナーによる接着パターン(トナーパターンPc)のない位置に設定されている。第1の保持機構20によって用紙束PBを押さえ込む場合には、用紙束PBから上方に離れたホームポジションに位置している第1の保持パッド23を下降させる必要がある。そこで、操作パネル111のスタートボタンを押し下げることにより、第1のパルスモータPM1を駆動し、第1の加圧軸21を回転させて第1の加圧板22と第1の保持パッド23を一体に下降させる(ステップS102)。
【0052】
第1の保持パッド23が用紙束PBの最上位の用紙Pに突き当たると、第1の加圧板22が持ち上げ板26の突片26aから離れ、バネ部材24の初期弾性力以上の力が用紙束PBに加わる。下降量とバネ部材24の弾性力との関係は予めテーブルとして備えられており、必要な加圧力に応じた下降量に対応するステップ数だけ第1のパルスモータPM1は回転する。
【0053】
このようにして、予め設定された加圧力で第1の保持機構20により用紙束PBの先端部PBaが押さえ込まれると、前述のようにソレノイドSLをONにし、突き当て板25を前記最下葉紙P1から1mm程度突出した位置まで下げる(ステップS103)。次いで、用紙浮かし機構40により上葉紙Pに撓みPtを生じさせる(ステップS104)。撓みPtを生じさせる場合には、通常は離れている撓み形成ローラ47を第3のパルスモータPM3の一定量駆動により下降させ、バネ部材44を介して用紙Pに加圧接触させる。次に、撓み形成ローラ47を第4のパルスモータPM4の回転により矢印R1方向に回転させて、搬送方向下流側に移動させる。そうすると用紙Pが座屈しつつ繰り出され、第1の保持機構20の第1の保持パッド23と撓み形成ローラ47の接触部との間に空間Pvが形成される。
【0054】
座屈量(撓み量)は、撓み形成ローラ47の回転量により決まるので、撓みPtを形成し、形成された空間Pvに用紙分離部材51を挿入した後に過剰な撓みが残らない適正な撓み量となるように、撓み形成ローラ47を駆動させる第4のパルスモータPM4の入力ステップ数はプログラムされている。
【0055】
他方、用紙分離時の用紙保持を確実にするために第2の保持機構30を作動させる(ステップS105)。第2の保持機構30は、第1の保持機構20と同様の動作によって用紙束PBの後端側(搬送方向上流側)を加圧保持する。この第2の保持機構30も第2のパルスモータPM2を駆動源として、第2のバネ部材34を介して第2の保持パッド33により用紙束PBを押さえ込む。これで用紙分離を行うための、用紙側の準備は行われたことになる。
【0056】
次に、用紙分離部材51を空間Pvに挿入する。用紙分離部材51は、第5のパルスモータPM5の駆動軸に固定されている。もし、第5のパルスモータPM5が用紙を分離させるに足る駆動トルクを備えていない場合には、減速機構を介して第5のパルスモータPM5に取り付ければ良い。通常は図2に示すホームポジションHPに待機している。ホームポジションからスタートして、駆動軸回りに回転しつつトナー接着部Tのトナーを掻き分け、概ね180度回転させ、エンドポジションEPで停止させる(ステップS106)。
【0057】
なお、用紙分離部材51をステップS106で180度回転させた後、用紙分離部材51をそのまま回転させてホームポジションにおいて停止しても良いが、用紙分離部材51の長さが長い場合は分離後に180°回転するエリアは無駄な動作エリアであり、装置の大型化にもなるので往復動作させるようにする。すなわち、用紙分離部材51がホームポジションから略180度回転して用紙を分離し、その後の戻り時には用紙束PBの上部を通過してホームポジションに復帰するようにする。この場合、用紙分離部材51はホームポジションに戻る際に、例えば用紙束PBの先端部PBaに当たったときに押し上げられ、用紙束PBの先端部PBaとの引っ掛かりを回避するなどの機構を採用すれば、ホームポジションに復帰する際に動作上不都合が生じることはない。この機構については後述する。
【0058】
用紙分離部材51を回転させる際、第5のパルスモータPM5の駆動軸の駆動トルクを後述のひずみゲージ(実施例5)56によって検出し、予め設定されたH若しくはLの状態であると、前者の場合は、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったと判断し、後者の場合には用紙分離アームがホームポジションに戻った時点において、積層用紙のセットする方向が異なっている(すなわち接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない)と判断する。いずれにしても、トナー接着部Tの分離動作が行われていないと判断し、操作パネル111にエラー表示を行う(ステップS108)。
【0059】
他方、駆動トルクがHあるいはLの間の中間値Mである場合には(ステップS109:Y)、用紙が分離されていると判断し、ステップS110の処理に移行する。
【0060】
すなわち、ステップS109で駆動トルクがMの場合、上葉紙Pの分離が完了したと判断し、次に初期化に向けての動作と、分離された用紙の移動動作を行う。この動作では、第1のパルスモータPM1と第2のパルスモータPM2を同時に駆動させ、第1の保持機構20及び第2の保持機構30の各部を初期位置に戻す(ステップS110,S111,S112)。初期位置は、第1及び第2のパルスモータPM1,PM2の回転位置と対応した位置に移動する第1及び第2の加圧軸21,31のホームポジションを検出する第1及び第2のホームポジションセンサSN1,SN2によって検出される。
【0061】
このようにして第1及び第2の保持機構20,30の各部をホームポジションに移動させた後、用紙浮かし機構40の撓み形成ローラ47を第4のパルスモータPM4によって矢印R1方向に回転させ、上葉紙Pを搬送方向下流側に送り出し、用紙束PB位置から移動させる(ステップS113)。その後、用紙Pは用紙移動ローラ対61によって1枚ずつ下流側の所定の個所に搬送される(ステップS114)。
【0062】
最後に、用紙浮かし機構40をホームポジションに戻し、突き当て板25をホームポジションに戻す。前者のホームポジションは第3のホームポジションセンサSN3の検出位置であり、後者はソレノイドSLの開放位置(非吸引位置)である(ステップS115)。そして、次に最上位に位置することになった上葉紙Pを分離するためにステップS102に戻り、移行の処理を繰り返す。
【0063】
最後の用紙(最下葉紙P1)になると、駆動トルクがH,LにもMにもならない状態となる。この状態になると、撓み形成ローラ47を駆動し、上葉紙、ここでは最後の1枚の用紙を送り出す。これにより、用紙束PBの全ての用紙Pは分離されと判断される。
【0064】
また、分離動作が最終紙(最下位の用紙)まで繰り返されると(ステップS116)、用紙Pが全てガイド板10上から移動し、ガイド板10上に用紙Pが存在しなくなり、用紙セット時の検出に用いた用紙先端検出センサSN4の出力信号がLowとなる。そこで、このLow信号の検出を持って用紙Pの分離工程の繰り返し完了を判断する。そして、この判断に基づいて、第1ないし第3のパルスモータPM1〜3を同時に駆動し、第1の保持機構20、第2の保持機構30及び用紙浮かし機構40を初期位置に戻す。
【0065】
このように構成された用紙分離装置1において、図5に示したような処理を実行すると、トナーを用いて接着された用紙に対して、用紙本来の形態を変えず、言い換えれば用紙を破壊若しくは破損することなく1枚々々自動的に接着を解除することができる。これにより、1枚ごとに接着が解除された用紙は、場所を変えて積層されるか、又は、画像スキャン又はコピー等のために、次工程に向けて移動させることができる。
【0066】
さらに、操作者によるスタートボタン操作によって動作が開始され、上葉紙Pの分離後、当該上葉紙Pのみを用紙束PB上から移動させる動作を行い、新たに次の最上紙(上葉紙P)の分離を行うというように動作を繰り返し、この動作を、装置に設けた用紙端検出センサ(若しくは用紙有無検出センサ)SN4が紙なしと認識するまで繰り返して行う。これにより、自動的に1枚ずつ用紙の接着状態を解除することが、最上紙から順次下位の用紙へと移行しながら最後の1枚まで行われ、その間、用紙は1枚ずつ自動的にガイド板10上から排除され、次の用紙の接着解除処理の障害となることもない。
【実施例2】
【0067】
図6は本実施例2に係る用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。本実施例2は実施例1における用紙浮かし機構40を変形した例であり、その他の各部は実施例1で説明した各部と同一なので、同一の構成には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
図6において、実施例2に係る用紙浮かし機構40aは、実施例1における用紙撓み形成ローラ47及びその駆動機構に代えて、板カム48と吸着板49を組み合わせたものとしたものである。吸着板49は支持板43に代えて第3の持ち上げ板46に固定される。
【0069】
上葉紙Pを浮かすためには、前述の上葉紙Pを座屈させて空間Pvを生じさせる方法の他に、上葉紙Pを吸着して部分的に上方に浮かせる方法がある。このような吸着手段としては、例えば、静電吸着方式あるいはエアー吸着方式が適用される。このとき、吸着した上葉紙Pをただ垂直に上方に引き上げただけでは、上葉紙Pの前面と吸着部が固定状態のまま位置が変わろうとするため、その間に張力が作用し、吸着部で用紙の剥離を起こしてしまう。
【0070】
そこで本実施例では、上葉紙Pを上方に引き上げる過程で、吸着板49が第1の保持機構20側に移動しつつ上昇して、上葉紙Pに撓みが形成されるように吸着板49側の側面にピン49aを設けるとともに、このピン49aが可動に挿入されるカム溝48aを有する板カム48を固定側に設けた。これにより、吸着板49が移動軌跡に沿って移動する際に、上葉紙Pに撓みPtを形成することができる。すなわち、固定側に設けた板カム48のカム溝48aに吸着板49に設けたピン49aが当該カム溝48aの溝形状に沿って可動に挿入される。カム溝48aは、搬送方向上流側が下側に、下流側が上側に位置するように傾斜した直線状の溝である。板カム48とピン49aは、吸着板49の用紙幅方向両側に設けられる。
【0071】
このように構成すると、上葉紙Pの吸着が加圧状態で行われたのち、第3のパルスモータPM3が加圧板42を上昇させる方向に回転すると、持ち上げ板46も上昇し、吸着板49は板カム48のカム溝48aの傾斜角で搬送方向下流側に向かって上昇する。この上昇動作に伴って撓み(U字変形部)Ptが形成される。
【0072】
図7は静電方式の吸着板の構成を示す図である。静電方式の吸着板自体は例えば特許第4049930号公報に記載されているように公知の技術なので、特許第4049930号公報の記載事項を基に簡単に触れておく。
【0073】
静電方式の吸着板(以下、静電吸着板と称す。)49−1は、表面吸着層49−2、電極49−3及び絶縁層49−4が各々プラスチックで構成されて一体に成形され、1mm〜5mm程度のシート状部材として構成されている。表面吸着層49−2は絶縁層49−4からなる基板の上に形成され、電極49−3は絶縁層49−4上の凹部に形成され、表面吸着層49−2が電極49−3の上に形成される。電極49−3は、導電性プラスチックからなり、正の電極49−3Pと負の電極49−3Nとからなる。正の電極49−3Pと負の電極49−3Nは、静電吸着板49−1の断面構成を示す図8から分かるように、それぞれ櫛歯状に形成されて互いに接触しないように入り組ませて配置され、直流電源49−5の正側端子及び負側端子にそれぞれ接続される。
【0074】
静電吸着板49−1の表面吸着層49−2上に、上葉紙(すなわち吸着すべき用紙)49−6を接触させ、直流電源49−5をオンし、直流電源49−5から正の電極3Pと負の電極3Nとの間に直流電圧を印加すると、表面吸着層49−2は高誘電体物質であるから誘電分極現象が起こって異符号の電荷(正、負の電荷)が励起され、表面吸着層49−2と上葉紙49−6との間で静電気力が生じ、瞬間的に表面吸着層49−2が上葉紙49−6を静電気的に吸着して保持する。他方、直流電源49−5をオフすると、表面吸着層49−2は除電されて上葉紙49−6に対する吸着力が減衰し、上葉紙49−6が表面吸着層49−2から剥離する。
【0075】
図9はエアー方式の吸着板の構成を示す図である。エアー方式の吸着板(以下、エアー吸着板と称す。)49−10は、モータによって駆動されるエアーポンプあるいは吸引ファン49−11を吸引源として、そこからチューブあるいはダクト49−12が接続されている。エアー吸着板49−10は内部に吸気経路49−13が形成され、吸気経路49−13はエアー吸着板49−10の下面に開口した複数のノズル49−14と連通し、図9に示すように吸引ファン49−11によってエアーを吸引したときにノズル49−14の開口部側が負圧となって上葉紙Pを吸着することができる。このエアー吸着板49−10も数mmの厚さで形成することが可能である。
【0076】
エアー吸着板49−10を使用した場合においても上葉紙Pを吸着し、上方に引き上げる過程で、上葉紙Pに撓みを生じさせる必要があるので、図6に示したものと同様の板カム48及びピン49−1が必須である。
【0077】
なお、本実施例においても第2の保持機構30は、用紙浮かし機構40による用紙浮かし動作を解除し、上葉紙Pを浮かし前の状態に戻してから、保持動作を行う。この場合は、用紙浮かし動作が静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10を使用して行われるので、これらの場合には、最初に静電吸着板49−1では当該静電吸着板49−1に対する通電を停止し、エアー吸着板49−10では吸引ファン49−11を駆動するモータの通電を遮断し、吸着された上葉紙Pの拘束を解除する。その後、実施例1と同様に第3のパルスモータPM3を駆動して第3の加圧軸41をホームポジションセンサSN3位置まで戻す。
【0078】
また、本実施例のように静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10を用紙浮かし機構40に使用し、用紙搬送機構60によって分離後の上葉紙Pを移動させる場合も、板カム48による吸着板49の移動軌跡によって規定される用紙移動量が必ず(L+α)となるような撓み量となる撓みPtを形成し、用紙移動ローラ対61による用紙移動が開始された時点では、即座に静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10の吸引をオフして初期位置に戻すようにする。これにより、用紙移動動作を自動的に行うことができる。
【実施例3】
【0079】
用紙束PBの用紙積層厚が小さい場合(積層枚数が少ない場合)は分離部の高さ方向の変動も極めて少ないので、用紙分離部材51の高さが一定であっても分離動作で特に問題が生じることはない。従って、用紙積層厚が小さい場合には、実施例1において図2の平面図に示したような回転機構のみ備えれば良い。しかし、用紙束PBの積層厚が厚い場合には分離部の高さ方向の位置が変わるため、アーム状の用紙分離部材51の高さ方向の位置を厚さに合わせて変更する必要がある。
【0080】
仮に厚さ80μmの普通紙を50枚積層すると、その厚さは4.0mmであり、用紙間に存在する空気層を考慮するとその厚さは5.0mmほどになる。用紙分離部材51の高さ方向の移動を高分解能で逐次、変化させるか、最低でも2〜3段階に分けて変更する必要がある。
【0081】
図10は本実施例3に係る用紙分離装置の概略構成を示す図で、同図(a)は要部平面図、同図(b)は要部正面図である。実施例3は実施例1における用紙接着部分離機構50の他の例であり、その他の各部は実施例1と同一なので、同一の構成には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0082】
図10に示した用紙分離装置では、用紙厚さを検出する用紙厚さセンサ122を設け、用紙厚さセンサ122からの検出信号に基づき用紙分離部材51の高さ方向位置を変更し、変更された位置を保持した後に、用紙分離部材51を分離方向に回転させて上葉紙Pを分離する。
【0083】
用紙厚みセンサ122は、第1の保持パッド23の用紙幅方向近傍の用紙束PBの上方に設けられている。積層接着された用紙束PBは、使用の過程でページの折り返しや折りたたみが行われて変形しており、平面的な位置によりばらつきが大きい。したがって、厚さの測定位置は、用紙分離部材51の回転範囲から外れた位置であって、第1の保持パッド23と用紙浮かし機構40との間に設けるのが、最も安定し、都合が良い。そのため、ここでいう近傍は、前記位置を意味する。
【0084】
用紙分離部材51の高さを変更する高さ可変機構70は、ベース71、ベース71上に配置された第7のパルスモータPM7、第7のパルスモータPM7によって駆動されるパンタグラフ型リンク機構72、及びパンタグラフ型リンク機構72によって昇降駆動され、用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5を支持する支持台73を備えている。
【0085】
用紙厚さセンサ122は反射型のフォトセンサである。検出レベルに基づき、第7のパルスモータPM7を回転させる。この回転駆動力により、ウォームが回転し、それと同軸のネジ部の回転で動作するパンタグラフ型上下機構71となっているので、用紙分離部材51を微少量上下移動させることができる。
【0086】
この制御は、CPU100の指示によってコントローラ110が実行する。コントローラ110には、用紙厚さセンサ122からの検出信号が増幅器(AMP)141によって増幅されて入力される。コントローラ110は、予め用紙厚さと検出信号(検出電圧)との関係を保持する図示しないメモリのテーブルを参照し、比較器142で比較する。コントローラ110は比較器142の比較結果に基づいて変更すべき用紙分離部材51の高さに対応するステップ数をドライバ131に指示する。ドライバ131は指示されたステップ数だけの駆動信号を第7のパルスモータPM7に出力する。第7のパルスモータPM7は、入力されたステップ数だけ回転し、そのステップ数に対応する高さ分だけ用紙分離部材51を上昇又は下降させる。
【0087】
なお、図10に示した例では、第1の保持パッド23の近傍に反射型フォトセンサからなる用紙厚さセンサ122を配置した例を示したが、機械式のレバー(フィラー)を使用し、レバーの一端を用紙束PBの上面に接触させ、てこの原理で増幅させたレバーの他端を反射型フォトセンサの光量レベルで検出するように構成することもできる。
【0088】
このように第1の保持パッド23に近傍で用紙束PBの厚さを検出し、その検出結果に基づいて用紙分離部材51の高さ方向の位置出しが行われるので、用紙Pを浮かした空間Pvに確実に用紙分離部材51を差し込み、上葉紙Pを分離することができる。その際、前記位置に用紙厚さセンサ122を設けたので、用紙束(積層用紙)PBの厚さ検出の位置によるばらつきを最小限に抑えることができる。
【0089】
図11は、実施例3における用紙分離部材51近傍の構成を示す要部拡大図である。実施例1では、用紙分離部材51が用紙分離後180度反対方向に回転してホームポジションに戻る際、用紙束PBの上部を通ってホームポジションに復帰するようになっている。実施例3では、さらに具体的に用紙束PB若しくは用紙束PBの上葉紙Pと干渉しない構成を導入したものである。
【0090】
図11において用紙分離部材51には、当該用紙分離部材51の長手方向の自由端側の端部に沿って前記用紙分離部材51と平行に設置され、両端52aを支点として自由に揺動する揺動プレート52が設けられている。この揺動プレート52は、図10(a)において、用紙分離部材51がホームポジションから図示反時計回り方向に回転(矢印R3方向)し、用紙Sを分離する工程では、用紙分離部材51の回転動作に追従して用紙Pの上面を這うように移動する。このときの揺動部材52の回転軸52aに対する位置関係は図10及び図11において符号52p1で示す位置である。
【0091】
用紙分離が行われた後も用紙分離部材51は同方向(矢印R3方向)に回転を続け、ホームポジションから180°回転した所で一旦停止する。積層されて接着された用紙は、用紙の角部に設定されたトナー接着部Tが変形して持ち上がる特性を持つため、用紙分離部材51が前記180度回転した位置から元のホームポジションに戻る方向(図示矢印R4方向)に回転する際、用紙分離部材51が、前記変形し、浮き上がった用紙Pの角部に引っ掛かる場合がある。引っ掛かりを起こすと、用紙を変形させ、あるいは破損させることにつながり、さらに、この変形や破損によって用紙分離部材51がホームポジションに戻ることができなくなる場合もある。ホームポジションに戻ることができなくなるということは、次動作が不可能になるということを意味する。
【0092】
そこで、本実施例のように揺動プレート52を揺動可能に用紙分離部材51に設けると、分離を完了し、ホームポジションに戻るときは、揺動プレート52がまず用紙束PBの先端部に図示時計回り方向(矢印R4方向)に回転して用紙束PBの上葉紙に接触し、用紙の微少な変形や浮きの状態を押さえ付けるようにしてホームポジションに戻る。このときの揺動部材52の回転軸52aに対する位置関係は図10及び図11において符号52p2で示す位置である。
【0093】
なお、実施例1でも触れたが、用紙分離部材51が分離完了位置からホームポジションに分離動作時とは逆の方向に180度回転する場合、用紙分離部材51と用紙束PBの先端部PBaの引っ掛かりを回避させる。この具体的構成として本実施例3では、図11の拡大図に示すように、用紙分離部材51の揺動駆動軸(第5のパルスモータPM5の駆動軸)PM5aに対して軸方向に可動であって、回転方向に不動となるように両者を結合する。すなわち、第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに対して用紙分離部材51を固定するのではなく、用紙分離部材51の前記駆動軸PM5aに装着する部分に軸方向に長いスライド溝51bを設け、このスライド溝51bを挿通してピン52cを前記駆動軸PM5aに固定する。その際、スライド溝51bとピン52cは緩み結合とする。これにより、用紙分離部材51は上下方向に移動可能であり、回転方向には、回転トルクがピン52cによって用紙分離部材51に伝達される。
【0094】
このような構成とすることにより、例えば用紙分離部材51が用紙束PBの先端部PBaに引っ掛かって、戻り時のトルクが過大となった場合は、揺動プレート52の下面によって形成される斜面52dに沿って力が作用し、その上方向に向かう分力により、用紙分離部材51はスライド溝51bに沿って上方に競り上がり、用紙束PBの上面に位置する。そして、用紙分離部材51は、用紙束PBの上面を滑りながら、過大な負荷を受けることなくホームポジションまで移動する。
【0095】
なお、これまでは、用紙の片側端部にトナー接着部Tを設け、当該トナー接着部Tにおいて積層接着した用紙を分離する用紙分離装置を例示しているが、用紙の接着形態としては、両側を接着しているものもある。このような両側接着の用紙束PBについては、図12に示すように用紙接着部分離機構50を搬送中心に対して対称に配置し、同じタイミングで用紙分離部材51a,51bによる分離動作を実行させるようにすれば、用紙束PBを反転させて行うのに比較して1/2の時間で分離処理を終わらせることができる。また、両側から同時に用紙分離部材51を挿入して分離を行わせるので、均一な剥離力が用紙に作用する。このため、用紙束の位置ずれ、あるいは回転が生じることもない。
【0096】
図12では用紙接着部分離機構50を用紙束PBの搬送中心に対して対称に配置させるため、搬送中心の下側に図示しない駆動用のパルスモータの駆動軸と連結されたピニオン53を配置し、このピニオン53の中心を回転対称中心として2つの用紙接着部分離機構50a,50bを搭載した用紙サイドフェンス55a,55bと連結された2本のラック54a,54bを配置して前記ピニオン53と噛み合わせ、2つの用紙接着部分離機構50a,50bを対称に移動させるようにしている。用紙接着部分離機構50a,50bの位置は、各ラック54a,54bのホームポジション位置に設置した第5のホームポジションセンサSN7a,SN7bによって検出され、この位置からの駆動量(駆動パルス数)によって用紙接着部分離機構50a,50bの位置がCPU100によって認識される。
【0097】
接着された用紙束(積層用紙)PBは、用紙サイドフェンス55a,55bに沿わせるようにセットされるので、本実施例では、用紙サイドフェンス55a,55b上に用紙接着部分離機構50a,50bを搭載し、固定した。このように構成することにより、用紙サイドフェンス55a,55bの用紙幅方向の移動に応じて、自動的に用紙束PBの用紙幅方向の位置と用紙接着部分離機構50a,50bとの位置関係が出されることになる。また、用紙接着部分離機構50a,50bを固定するための専用の固定部材を設ける必要がないので、スペース的にも、位置合わせの面でも合理的な構成となっている。
【0098】
他方、用紙のトナー接着部Tの分離を確実に行うには、用紙分離部材51が突入し、トナー接着部Tに接触する部分が鋭利な状態であることが望ましい。このように鋭利であると、分離抵抗が少なく、確実に用紙を分離させることができる。そこで、本実施例では、トナー接着部Tに接触する部分を直径がφ1mm以下であって、スチールあるいはナイロン材質によるワイヤを使用する。このようにワイヤを使用すると、分離時に発生する分離抵抗に抗する張力を任意に設定することができる。ワイヤ径は細い方が、分離性能が良いが、加工性及び強度からφ1mm程度まで許容できる。
【0099】
図13は、このようなワイヤを使用した用紙分離部材51の構成を示す図である。用紙分離部材51の本体である用紙分離フレーム部51cは平面視コの字形に樹脂材によって成形され、コの字形の開放側の端部にワイヤ51dが張られている。ワイヤ51dは両端部で金属のボールをカシメて取り付ける。図中、用紙分離フレーム部51cにワイヤ51dをセットする距離は(L+ΔL)である。ワイヤ51dは弾性を持つとともに用紙分離フレーム部51cもコの字形に形成することにより、コの字の突出部分を内側に加圧すると、戻る方向に弾性を有する。ワイヤ51dの長さはLであり、ワイヤ51dの両端のボール部51eを用紙分離フレーム部51cのコの字形の突出部分に形成されたボール嵌め込み溝51fの凹部に嵌め込んでセットする。このセットによりワイヤ51dがΔLだけ伸び、また、用紙分離フレーム部51cの前記コの字形の部分の弾性により、ワイヤ51dに対して必要な張力得ることができる。
【0100】
トナー接着部Tを剥離し、若しくは分割して用紙分離を行うための条件として、極力曲率の大きな分離形状で均一な長さ形状を有し、かつ一定の剛性を持つものを用紙間のトナー接着部Tに進入させることが望ましい。そこで、前記ワイヤ51dを使用した構成にすると、これらの条件を満足することができ、確実な分離動作を行うことが可能となる。
【0101】
一方、ワイヤ51dと同じ効果を発揮するように用紙分離部材51の先端縁の曲率を成型や機械加工で形成するようにしても良い。図14はこの例を示す用紙分離部材51の横断面図で、同図(a)は先端縁に所定の曲率を与えた例、同図(b)は先端縁に面取りを施しエッジを形成した例である。
【0102】
図14(a)に示した例は、板圧が0.3〜1mmの金属板51hの端部をR加工(円筒面あるいは円柱面加工)したものを、樹脂フレーム部51gと同時成型して形成する。すなわち、金属板51hを挟んで用紙分離部材51全体を樹脂で成型加工し、金属板51hの先端部51iの半径を例えばR=0.5mmとする。ワイヤ51dと同様に先端半径は小さいほど用紙分離は良好であるが、Rとして形成する場合はこの程度まで良好である。
【0103】
図14(b)に示した例は、図14(a)に示した例に対して、先端をR加工する代わりに片側又は両側からの面取りによって先端にエッジ51jを形成したものである。このようにエッジ51jを形成しても同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0104】
図15は実施例4に係る用紙接着部分離機構50による分離動作の状態を検知する検知回路の一例を示す図である。用紙束PBのトナー接着部Tと用紙接着部分離機構50との位置が合っていないにも拘わらず用紙分離が行われたものとして次の動作工程に進んだとすると、接着されたままの用紙が送り込まれることになるので、ジャムを起こしたり破損したりという事故につながる。
【0105】
そこで、本実施例では、用紙接着部分離機構50の用紙分離部材51の動作時において、回転トルクの変動を検出するために、用紙分離部材51又は第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aにひずみゲージを取り付け、そのひずみ量に相当する出力電圧を検出するようにした。
【0106】
すなわち、本実施例に係る検知回路は、増幅器141a、コントローラ110、表示パネル111及び比較器142aからなる。この検知回路では、第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに取り付けられたひずみゲージ56の出力を増幅器(AMP)141aにより増幅してコントローラ110に出力する。コントローラ110では、予めひずみ量とひずみゲージ56の出力電圧との関係を保持する図示しないメモリのテーブルを参照し、比較器142aで比較する。コントローラ110はこの比較結果に応じて下記のように判断する。
【0107】
すなわち、
1)運転シーケンスの所定時間内に一定のレベルがあって繰り返すときは用紙の分離が行われていると判断する(出力電圧レベル:M)。
2)逆に、レベルに変化が起きないときは(出力電圧レベル:L)、用紙分離アームがホームポジションに戻った時点において、積層用紙のセットする方向が異なっている(すなわち、接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない)と判断する。
3)一方、そのレベルがさらに一定以上の高レベルに達したときは(出力電圧レベル:H)、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったと判断する。
【0108】
そして、これらの判断結果に応じて、1)では、処理を継続し、2)では、接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない旨、操作パネル111に通知し、操作パネル111は表示部にその旨表示する。3)では、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったとして動作を停止させ、用紙の除去をうながす操作パネル111の表示部に表示させる。前記判断は、前述の図5のフローチャートにおけるステップS107,S108,S109に対応する。
【0109】
また、ひずみゲージ56の出力電圧のレベルの検知に基づいて判断することに代えて、状態を判別する手段として、用紙分離部材51を回転駆動させる第5のパルスモータPM5に通電される駆動電流の変化によって駆動トルクの変動を検知し、この検知結果に基づいて判断することもできる。この場合には、電流プローブをリード線に噛ませて電流値を計測するか、あるいは、モータの電流回路に直列にシャント抵抗を挿入し、その抵抗の両端に発生する電圧を取り出して、比例関係である電流値に換算して判別値とする。負荷トルクと通電電流値もほぼ比例関係にあるので、その大きさにより、前記1)ないし3)の状態を判断することができる。
【0110】
その他の各部は実施例1ないし3と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例5】
【0111】
実施例1ないし4に記載したような用紙分離装置1は、例えばADF(Auto Document Feeder)あるいは画像読み取り装置に搭載され、積層接着された用紙束PBをADFの前段で1枚ずつに分離した後、当該ADFで画像読み取り装置の画像読み取り部に送り込む。これにより画像読み取り部は用紙束PBの用紙を1枚ずつ読み取ることができる。読み取られた用紙は、読み取り後、再度トナーによって接着され、用紙束PBとなる。この用紙分離、読み取り、用紙接着という工程を経ることにより、トナー接着により形成された用紙束PBは、自動的に1枚ずつに分離されて読み取られ、元の冊子へ戻すことができる。その際、各工程を繰り返したとしても、用紙が破損することもない。
【0112】
このように用紙の分離と接着を一連の工程で実施するためには、用紙接着機能を有する装置内に用紙接着部分離機構50を設けることが望ましい。すなわち、プリンタを含む画像形成装置、その周辺機内、あるいは画像読み取り装置(スキャナ)に、用紙接着機構と接着部解除機構を共に有する構成とすることによって、操作者は任意に、用紙のばらし、再綴じ、新規ページの挿入綴じなどを実行することができる。
【実施例6】
【0113】
接着に使用されるトナーは、接着用として特別に調合されるものではなく、通常の電子写真方式による用紙上へのプリントに使用されるトナーである。カラートナー、黒トナーなどが対象であり、接着強度を接着目的に合わせて調合した専用トナーが対象となる。すなわち、一般トナーの場合は、バインダ樹脂中に着色剤として各種の染料又は顔料を相溶、又は分散含有させて構成し、その粒子径は、数μm程度である。バインダである樹脂材料にはポリエステル樹脂などが用いられ、主にこれがトナーとしての融点を支配する。一般に80〜130℃程度に設定されている。さらに、定着機構にオイルを使用しない形態でのトナーの場合は、これに適量のワックスを分散させる。オイルレストナーと称する。
【0114】
一方、用紙には普通紙、あるいは一般の印刷用紙が用いられる。このトナーを「接着パターン」Pcとしてプリント後、必要枚数を重ね合わせ、接着媒体として逐次あるいは一括してトナーの融点以上になるように加熱する。このときエアーギャップの介在による接触面積の低下をなくすため加圧を併用する。トナーが溶融し合い、同時に用紙表面のフィラー部と絡み合った後に加熱を解除して、冷却が進行すると、両者間は一体となって固化して結合が行われる。
【0115】
以上のようにしてトナーにより接着された用紙間を、逆に1枚ずつ解除するのが本実施例の装置である。
【0116】
実施例1ないし4では、この解除のためには、接着された上葉紙Pと、下葉紙との間の空間Pvに用紙分離部材51を差し込み、これを移動させることによって両者を掻き分けるようにして分離していた。しかし、各種の外乱条件により分離が不安定で、紙剥けが発生した、あるいは分離トルクが大きくばらつくなど、分離品質に加えて、装置側の動作も不安定になるなどの問題があった。各種試験の結果、分離のための掻き分けが行われる直ぐ近傍において、トナーを融点以上の温度に加熱させ、半溶融状態を継続させつつ分離力を作用させれば、分離力も少なく、かつ分離力のばらつきも少なく、紙剥けのない分離が行われることが判明した。
【0117】
図16は分離部温度と分離部材回転トルクとの関係、すなわち、温度をパラメータに取ったときの接着部分離トルクの特性を示す図である。同図からある一定の温度に昇温させた状態で分離部材を動作させるのが、駆動トルクが少なく有効であることが分かる。
【0118】
図17は本実施例における用紙接着部分離機構を示す要部平面図である。この実施例6では、図3に示した実施例1の用紙接着部分離機構50では、第5のパルスモータPM5によって直接用紙分離部材51を回転駆動していたものを、減速機構としてギヤ57を用い、ギヤ57の軸57aに用紙分離部材51を一体に取り付けている。その他の各部は実施例1と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明は省略する。
【0119】
図18は、本実施例における用紙分離部材の構成を示す図である。同図(a)は用紙分離部材51の平面図、同図(b)は発熱部の構成の一例を示す要部断面図、同図(c)は発熱部の構成の他の例を示す要部断面図である。
【0120】
用紙分離部材51の本体は、耐熱性で高強度を有するポリイミド、ファイバ入りポリイミド樹脂、PEEK樹脂、あるいはアルミニウム合金などの材料によって成形する。発熱部は用紙分離部材51の先端縁51kであって、分離のためにトナー接着部Tと接する全域に一体的に形成される。すなわち、トナー接着部Tに接触して分離を行う先端縁51kには、発熱体51mが全長にわたって形成されていることになる。発熱体51mとしての高抵抗体材料であるヒータ線としては、ニクロム線(ニッケル、クロム合金)、カンタル線(クロム20%、アルミニウム5%を含む鉄合金)などが用いられる。
【0121】
図18(b)は、用紙分離部材51の先端縁51kに円柱溝51nを形成し、この中に発熱体51mを埋没させた例である。絶縁性と固定のため、エポキシ系樹脂やフェノール樹脂などの熱可塑性樹脂を流し込むことにより固定させる。符号51n1は絶縁固定層を示す。
【0122】
発熱体51mの形態として裸発熱体の場合は、図18(b)の形態で固定し、シース発熱体として事前に金属管の中に絶縁体とともに固定形成した発熱体51mの場合は、図18(c)に示すように円柱溝51oに嵌め込んだ後に接着剤によって固定する。符号51o1は接着固定層を示す。
【0123】
このように発熱体51mを構成すると、用紙Pの分離点においてトナーに接触する用紙分離部材51が加熱されていることにより、介在している接着トナーが軟化し、分離しやすくなると同時に紙剥がれなどの現象が発生することもない。さらに、分離時の駆動抵抗も減少させることができる。
【0124】
外部のリード線との接続は、移動変化の少ない回動支点近傍にコネクタ51pを設けて行われる。このとき発熱体51mの端部からのリード線は、用紙分離部材51に設けた凹溝内に嵌め込むようにして配線するか、導線パターンとして形成して回転支点穴51r近傍まで配線する。この部分において、外部線とのコネクタ51pを設けて着脱自在にコネクトさせるようにする。用紙分離部材51の回転支点穴51rにおいて、回転伝達のための駆動軸PM5aとの結合方法は、丸穴中にDカット51sを形成して、ここに差し込み、その上部を抜け止めのためのネジで固定するか、Eリングで固定する。
【0125】
また、コネクタ51pには、発熱体(形成部)51mの近傍に埋め込まれた熱電対形の小型温度計51m2(図20参照)からのリード線も接続されている。この熱電対形の小型温度計51m2の出力抵抗値は図示しないがコントローラ110を介してCPU100に入力される。CPU100は入力された出力抵抗値に対して目標温度に向け常に一定値となるようにコントローラ110を経由して発熱体51mへ流す電流をコントロールする。
【0126】
接着部周辺の温度は季節や1日のうちでも大きく変化する。加えて使用されるトナーの種類によっても融点が異なるので、小型温度計51m2を設けて温度計測を行うことにより、それらの外乱があっても適切な温度に設定することができ、確実な分離を行うことが可能となる。特に用紙接着部の温度を、その近傍で最も誤差少なく計測することができる。
【0127】
一方、発熱体51m近傍には、図19(a)に示すように、発熱体51mと並行して溝部51tを設ける。これにより熱が用紙分離部材51全体に急激に拡散し伝搬することを阻止するための、熱伝達障壁として機能する。また、熱的使用効率を上げて、トナー接着部Tの分離部分を所定温度に早く立ち上げることが可能となる。前記溝部51tは、発熱体51mの周辺部において空気層に接する数mmの幅と深さを持った熱遮断溝であり、強度的に十分な範囲に形成されている。加えて溝部内面には図19(b)に示すように一定間隔で貫通穴部51t1を複合させて配列させると良い。これにより、さらに断熱効果を上げることができる。なお、溝部51tあるいは貫通穴部51t1は、使用材料に応じて成型加工あるいは切削加工によって形成される。
【0128】
このように発熱体51mの形成部近傍の形状を熱伝達障壁として機能するような形状に形成すると、発熱体51m部での温度が、ホルダ部51u2(図20参照)全域に伝播して温度が低下するのを防止することができる。したがって、熱印加時に所定の温度に早く立ち上げることができる。
【0129】
発熱体としてセラミックヒータを使用する場合は端部分離部分にヒータパターンを配し、その外側をセラミックで包み込んで成形し、その後焼成して完成させる。使用するセラミックは、アルミナ又は窒化珪素を選択し、発熱体を内部に配置して同時に焼結する。これにより外部からも遮断されて酸化することなく保護絶縁される。発熱体となる材料は、タングステンあるいはモリブデンを使用する。
【0130】
セラミックヒータはセラミックの絶縁性と、成形が可能であるという利点から用紙分離部材51として発熱体と一体的に形成できる点にメリットがある。加えて、数十mmsecでの熱的立ち上がり時間、及び広い温度域の設定が可能なことから、セラミックヒータを用いた形成は有効である。すなわち、セラミックヒータはセラミック粉の成形加工の後、焼成で形成されるので、用紙分離部材51としての他の機能(駆動軸PM5aとの固定穴など)を同時かつ一体的に作ることが可能で、図19に示したような配線を這い回す必要がなくなる。さらに、回転駆動系と嵌め合わされる回転軸穴部分も一体的に加工することができる。その際、機械的強度も十分確保することが可能である。なお、この場合も、セラミック内部から引き出されるリード線は、駆動軸PM5a近傍で外部線と接続するようにする。
【0131】
前記発熱体の外側をセラミックで包んで成型する方法では、用紙分離部材51はセラミックの同一材料で一体的に形成されたが、発熱体形成部を有する加熱部と、それを保持するホルダ部との二体で形成することもできる。これにより、加熱に必要な面積を最小にすることが可能となり、加熱部をモジュールとして作ることができるので、熱的効率が良く機械的強度の高い用紙分離部材51とすることができる。
【0132】
図20はこの二体で形成された用紙分離部材を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は横断面図である。
【0133】
図20において、用紙分離部材51の用紙分離を行う加熱部51u1は、先端縁51kが全長にわたりエッジ状に、又はR=0.5mm以下の曲率の曲面に形成され、トナー接着部Tの分離性能を上げるようにしている。そして、このセラミック製の加熱部51u1をホルダ部51u2に取り付け、固定し、用紙分離部材51として機能するように構成している。加熱部51u1におけるヒータとしては、例えば前記セラミックヒータが使用できる。このように用紙分離部材51のトナーと接触する最も近い位置に発熱体51mが配置されるので、熱的なロスを最少にし、効率良くトナーを加熱することができる。
【0134】
セラミック製の加熱部51u1を、ホルダ部51u2に取り付け、固定する場合、ホルダ部51u2への熱伝達量が最小となるように断熱性を付与する必要がある。本実施例では、図20(a)に示すようにA、B、Cの3点に微小な突起51u33,31,32が設けられており、この突起51u31〜33をホルダ部51u2に対応して設けられた穴部に嵌め込む。その際、A、B点を嵌め込みながらC点に差し込むことにより、位置出しが行われるとともに加熱部51u1の回転が規制され、ホルダ部51u2と一体となる。
【0135】
A及びB点の嵌め合いは、図20(b)に示すように直径dに対して挿入のための開口幅をLとして狭くした(d>L)クリック(スナップフィット)構造としているので、接着剤で固定しなくとも、自動的に抜け止め構造とすることができる。
【0136】
図20に示したように加熱部51u1とホルダ部51u2の二体で構成すると、加熱部51u1とホルダ部51u2の合わせ部において3点の寸法位置により、自動的に断熱用のエアーギャップ51u3がコの字型に形成される。さらに、接着剤を用いて固定しないので着脱可能であり、加熱部51u1に何らかの不都合が発生した場合、部品交換も容易に行うことができる。
【0137】
一方、運転時の振動などに起因する共振現象で、加熱部51u1あるいはホルダ部51u2から発生する振動音が問題となる場合は、加熱部51u1とホルダ部51u2との間に形成される断熱用のエアーギャップにシリコーンゴムなどの断熱性材料を充填すると、共振点を移動させることができ、共振音の発生を防止することが可能となる。
【0138】
ホルダ部51u2の材料としては、耐熱強度と機械的強度を有するものとしてポリイミド樹脂、PEEK樹脂、ベークライト樹脂などを使用することができ、これを成形あるいは切削加工して用いる。支点部は回転トルクを伝達するために駆動軸PM5aと丸穴で嵌め合わされ、回り止めのDカット加工が施されたDカット部51sとなっている。そして、ホルダ部51u2の抜け止めには、駆動軸PM5aの上部でネジ止めあるいはEリング止めが使用される。
【0139】
図21は図20に示す加熱部の横断面図である。加熱部51u1は、図21に示すような断面形状にセラミックを形成後に、形成したセラミック基板51u4上に発熱体となる材料のペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、その後、焼成することにより発熱体パターン51m1を形成する。発熱体材料のペーストとしては、例えばモリブデンあるいはタングステンが用いられる。これが図20に示す発熱体51mを構成する。ペーストを使用してスクリーン印刷すると、接着を解除するのに必要な全域の曲率形状を犠牲にすることなく、この部分に発熱体51を形成することができる。
【0140】
本実施例では、発熱体パターン51m1はセラミック内部でなく、表面に形成するので、用紙分離部材51によってトナー接着部Tを分離するときに当該トナー接着部Tと接触する最先端部に形成することができる。このため、トナー接触部Tを加熱する温度効率を最も効率の良いものとすることができる。同時に、最先端部形状はエッジ又はR=0.5mm程度以下が分離のための理想条件であるので、この条件のもとで発熱体パターン51m1を形成することができ、最も望ましい形態の加熱部51u1とすることができる。その際、発熱体パターン51m1(熱抵抗体)の形成とともに、そこから引き出される、外部との接続用リード線51qもパターン化して同時にセラミック基板51u4上に形成することができる。
【0141】
また、熱的効率を上げるため、セラミック基板51u4上であって発熱パターン51m1の直下に発熱体で発熱した熱を蓄熱させるための蓄熱層51u5を形成することもできる。このように蓄熱層51u5を形成すると、その蓄熱効果によって入力エネルギを削減することが可能となる。蓄熱層51u5は、例えばガラス(SiO2)を材料とし、層厚10〜20μm以下の層とする。そして、このガラス層の上に発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンが形成される。その他の蓄熱層形成材料としては、例えばポリイミド樹脂が知られている。ポリイミド樹脂には、ペースト状のものがあり、このペースト状のポリイミド樹脂を塗布又はディッピングにより成膜化し、その後、オーブンによって60℃の温度下で、数十分程度加熱する。ポリイミド樹脂は、この加熱により固化し、蓄熱層としての所望の特性を得ることができる。
【0142】
発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンの上層である最表層には、それらの保護層51u6を形成する。保護層51u6は発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンを酸化による劣化から保護するとともに、分離動作において、用紙間のトナー接着部Tあるいは用紙と接触を繰り返す際の用紙との接触抵抗を低くする機能も有する。さらに、保護層51u6は用紙分離部材51の耐久性を向上させ、分離性能を維持する。10μm程度でコーティングする保護層材料は、テフロン(登録商標)樹脂、PEEK樹脂、あるいはエポキシ系樹脂でこれを塗布又はディッピングにより成膜化した後に、オーブン内で加熱して固化させ、所望の特性を得る。
【0143】
このように発熱体51mの上層部に耐熱性でかつ摩擦係数の低いテフロン樹脂コーティング、PEEK樹脂コーティングを行うと、用紙分離部材51と用紙Pとの摺動摩耗を軽減し、耐久性を向上させることができる。また、用紙分離時における用紙分離部材51及び用紙に作用する抵抗を小さくすることができる。これにより、用紙分離部材51を駆動する第5のパルスモータPM5のモータトルクが小さくて済むので、モータの小型化による省電力化を図ることができる。さらに、用紙に作用する抵抗が小さいということは、分離時に上葉紙Pが移動しないように押さえる第1及び第2の保持パッド23,33の保持力を小さくすることができることを意味し、保持力が小さくなれば、その分、第1及び第2の保持機構20,30を駆動する第1及び第2のパルスモータPM1,2の省電力化を図ることができる。
【0144】
なお、発熱体51m部がトナー層に接触して分離する過程では、トナーと完全に密着している状態から若干のギャップを持たせて分離のきっかけを作って行うことが望ましい。図22は、この若干のギャップを持たせる構成の例を示す加熱部51u1の横断面図である。図22(a)に示した例では、発熱パターン51m1の発熱端より僅か離れた搬送方向上流側の位置に、小径で高さが2〜3μm程度のディンプル51u7を端部に複数列平行に並べて配置する。その際、接着分離時にディンプル51u7部への負荷抵抗が一度にかからないように、分散させることを目的に、それぞれのディンプル51u7を千鳥状に配置するとともに、ディンプル51u7の断面を見たとき、高さ0から搬送方向上流側が2〜3μm高くなるような移動方向下流側が登り傾斜となるような傾斜面となるようにする。これにより加熱部51u1とトナーが密着するという現象を回避することができる。
【0145】
これらのディンプル51u7は、表面の保護層51u6を形成するときに同時に、又は2回目の塗布工程で形成する。すなわち、まず前面のコーティングを行って予備乾燥が行われた後、スクリーン印刷によりディンプル51u7部をすり重ねるようにし、その後、再度の乾燥を行って固定化する。
【0146】
図22(b)はディンプル形状の他例を示す加熱部の横断面図である。図22(b)の例では、細帯状の凸部51u8を、端部に直角に数個所設けている。この凸部51u8は、図22(a)に示したディンプル51u7と同様に千鳥配列し、あるいは傾斜を持たせるようにすることができる。
【0147】
このように曲率を持った用紙分離部材51の先端縁51k及びその周辺は、丁度、良く研磨された包丁でチーズをカットするときのようにトナーが吸着しやすい。しかし、ディプル51u7,51u8を設け、トナーと部分接触させることにより分離抵抗が小さくなってトナー接着部Tにおいて用紙は容易に分離できるようになる。
【0148】
図23は放熱用フィンを備えた用紙分離部材を示す平面図である。放熱用フィン51v1は図18(a)に示した用紙分離部材51の回転支点穴51rが形成された用紙分離部材51の回転支点端51vに設けられている。放熱用フィン51vは、本実施例では、回転支点を中心に同心円状に設けられた短冊状の部材で、ここでは、短冊状の部材を扇形に広げた形状となっている。この放熱用フィン51v1により、回転支点端51v近傍の熱が自然放熱され、駆動軸PM5aを介して伝達される駆動系への熱伝達を抑制している。その結果、発熱体51mからの熱伝達に起因する駆動伝達系ギヤの耐久性劣化及び駆動系モータの耐久性劣化を防止することができる。
【0149】
その他、特に説明しない各部は実施例1ないし4と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例7】
【0150】
用紙分離部材51は、図2に示したように用紙束PBの上葉紙に形成された用紙の浮きによって生じた空間Pvに挿入され、回転方向下流側のトナー接着部T若しくはトナー接着層に用紙分離部材51の先端縁51kが衝突した後、トナー接着層を掻き分けながら進行し、用紙、ここでは上葉紙とその直ぐ下の下葉紙を分離する。その際、用紙分離部材51を回転駆動する駆動源となるモータが十分なトルクを有していれば、当該モータによって駆動される用紙分離部材51を一定速で動作させることにより分離は進行して完了となる。
【0151】
しかし、このように駆動源となるモータが十分なトルクを有するためには、大型のモータである必要がある。しかし、モータが大型であると、その分コストが高くなり、また占有空間も大きくなって省エネ、小型化の要求とは逆行する。そこで、本実施例では、比較的トルクが小さな小型のモータで、かつ、パルスによるステップ入力によりそれに対応した角度の回転角が得られるパルスモータを使用して用紙を分離するようにした。
【0152】
実施例1では、用紙分離部材51は第4のホームポジションセンサSN6が検出した位置をホームポジションとして待機しており、上葉紙Sに用紙浮きの空間Pvが形成されると、第5のパルスモータPM5が回転を開始する。その際、例えば図24において実線で示すホームポジション(HP)からスタートしてエンドポジションセンサSN8によって検出されるエンドポジション(EP)まで180°回転し、その後、ホームポジションに戻るという動作であった。
【0153】
これに対し、本実施例では、実際に接着を終了する約120°の回転角内の動作を複数回に分けて、トナー接着層への衝突を繰り返しながら、徐々に用紙分離部材51を用紙束PB先端側に進行させ、用紙を分離するようにした。図24はこのときの動作を示す動作説明図であり、実施例1における図3に対応する。すなわち、本実施例では、図24に示すように第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに直接用紙分離部材51を取り付けて固定し、
1)ホームポジションHPから目標角度H1まで回転させ、若干進行させた後、ホームポジションHPに戻す。
2)再度ホームポジションHPから目標角度H2まで回転させ、同じく若干進行させた後、ホームポジションHPに戻す。
3)最後は目標角度H3まで回転させ、さらに進行させてトナー接着部Tにおいて用紙の分離を完了した後、ホームポジションHPに戻す。
あるいは、回転量の最後について駆動パルス数の管理をしない場合は、
4)エンドポジションセンサSN8で検出されるまで回転した後、ホームポジションHPに戻す。
という各工程を実行し、1サイクルの工程を完了とする。
なお、120°というのは、前記3)において用紙を切り離して進行する最終角度をいう。
【0154】
本実施例では、以上のように3段階の移動動作を繰り返して、確実な分離を実現するようにしている。このように分割して動作させることによって、用紙分離部材51がトナー接着部Tに衝突する度に1/2Iω2なる衝撃エネルギをトナー接着部Tに付与することができる。これにより、用紙の分離を容易に進行させることが可能となる。また、分離動作の確実性を向上させることができる。
【0155】
なお、本実施例では、パルスモータPM5を使用しているが、エンコーダを有し、回転角度制御可能なDCモータを使用しても同様の制御が可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0156】
図24に示した例では、1回々々ホームポジションHPから衝突させる位置まで用紙分離部材51を回転させ、その後、戻すという動作を繰り返していた。しかし、衝突する度に1回々々ホームポジションHPに戻すとその分時間がかかる。一方、用紙分離部材51は用紙を浮かせた空間Pvに挿入され、その空間Pvを経て用紙間のトナー接着部Tに進行し、衝突するように動作するが、1回目はホームポジションHPから移動するが、その後の2回目、3回目の動作は、ホームポジションHPまで戻さなくても、用紙分離部材51の回転先端が用紙に形成された用紙浮きの空間Pvの領域から抜け出ない範囲まで戻して、そこから前記した目標角度への進行動作を繰り返す。これにより1サイクルの時間を短縮することができる。
【0157】
図25はこの動作を示す速度線図で、横軸に時間、縦軸に位置を取り、ホームポジションHPからエンドポジションEPに至る状態を示す。
【0158】
このように用紙分離部材の初回以降の繰り返し動作の起点は、用紙分離部材51が分離すべき用紙浮きの空間Pv内に位置させると、用紙分離部材51を挿入する空間Pvを形成する上葉紙の浮きが初回の分離動作で変形しても、その後の動作で用紙分離部材51を挿入できないという不具合が発生することはない。さらに、ホームポジションHPから分離動作を繰り返すのに比べ、分離に必要とする時間を短縮化することができる。
【0159】
同じくステップモータ使用の場合において、用紙分離部材51の位置と対応した駆動ステップ数の管理で、それぞれの目標角度を認識して複数回に分けて目標角度への進行動作を繰り返すこともできる。この場合、図26に示すように
1)ホームポジションHPから目標角度H1までの回転をさせて、若干進行させた後に、設定パルス数により戻し位置まで戻す。この位置は用紙分離部材51が用紙浮きの空間Pvの領域内にあり、さらに余裕を見込んだ位置である。
2)今度は戻し位置から目標角度H2まで回転させて、同じく若干進行させた後、戻し位置に戻す。
3)最後は、戻し位置から目標角度H3へ回転させて、ここからさらに進行をさせて分離を完了したのち、ホームポジションHPに戻す。
あるいは、ここを駆動パルス数の管理をしない場合は、
4)エンドポジションセンサによって検出されるまで進行した後、ホームポジションHPに戻す。
という各工程を実行し、1サイクルの工程を完了とする。
図26に示した1サイクルタイムCTM2は、図25に示した1サイクルタイムCTM1と比較して大きく短縮化されるのが分かる。
【0160】
なお、本実施例では、目標角度をH1〜H3の3段階としたが、実際の制御では、用紙の接着強度や接着パターンに応じて目標角度の設定回数を増加減させて最適運転が行われる。
【0161】
この場合も当然、エンコーダを有し、回転角度制御可能なDCモータを使用しての駆動でも駆動可能である。
【0162】
その他、特に説明しない各部は実施例1と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例8】
【0163】
図27は、用紙分離部材が慣性エネルギの付与機構を有する実施例8に係る用紙接着部分離機構の要部を示す平面図である。
【0164】
本実施例では、実施例7における分離時の衝突エネルギを大きくするため、用紙分離部材51の回転支点端51v側を延長し、延長部51v2の先端近傍に高質量部材51v3を取り付けたものである。このように延長部51v2の先端近傍に高質量部材51v3を取り付けると、用紙分離部材51の回転時の慣性質量を大きくすることができる。このように慣性質量を増加させると、用紙分離部材51のトナー接着部Tへの衝突時のエネルギを大きくすることができる。その結果、用紙の分離性能を向上させ、確実に用紙を分離することができる。高質量材料としては鉄、鉛等を使用する。
【0165】
図27に示した例では、用紙分離部材51に延長部51v2を設け、高質量部材51v3を付加して回転慣性を上げるように構成しているが、用紙浮き空間Pvに用紙分離部材51v3を挿入して分離動作を行っているとき、接触を起こさないような扇方形状として、そこに高質量部材を付加するという形態とすれば、さらに慣性効果を上げることができる。
【0166】
慣性質量を大きくし、用紙分離時の衝突エネルギをさらに大きくするために、図28に示すように用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに、慣性ホイールPm5bを取り付ける。慣性ホイールPM5bは高質量な鉄系あるいは銅系の材料を使用する。慣性ホイールPM5bの直径は第5のパルスモータPM5の立ち上げ可能な慣性量と、許容可能な取り付けスペースの範囲で決定される。
【0167】
第5のパルスモータPM5への駆動パルスの入力周波数は、分離のための目標角度H1,H2,H3の個所で、脱調しない最高周波数が得られるようにそれぞれ設定されるスタートから順次上げていく。その際、分離時の衝突エネルギを最大化するようにスピードを持っていけば良いので、高慣性質量にして最高の速度を限られたモータ容量の中で得られことになり、効率的である。
【0168】
大きな衝撃エネルギで分離が進行するので、用紙接着が弱いというような条件によっては、仮にアタックの回数を2回、あるいは1回に減少させるということも可能である。
【0169】
なお、図28では、用紙分離部材51に高質量部材51v3を取り付けて慣性質量を付与し、さらに、駆動軸PM5aに慣性ホイールPM5bを取り付けて慣性力を付与しているが、慣性ホイールPM5bだけでも良いことはいうまでもない。
【0170】
このように用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに慣性ホイールPM5bを取り付け、パルスモータの駆動最高周波数を、それぞれの目標角度H1,H2,H3において最高周波数となるように駆動すると、用紙分離部材51の衝突時エネルギを、慣性と角速度の面から最大にさせてトナー接着部Tに突入させることができる。その結果、分離力を向上させ、確実に用紙を分離することができる。
【0171】
なお、特許請求の範囲における用紙束は本実施形態では符号PBに、最上位の用紙(上葉紙)は符号Pに、用紙分離装置は符号1に、空間は符号Pvに、空間形成手段は用紙浮かし機構40に、トナーによる接着部はトナー接着部Tに、第1の保持手段は第1の保持機構20に、第2の保持手段は第2の保持機構30に、用紙分離部材は符号51に、用紙分離手段は用紙接着部分離機構50に、発熱部は加熱部51u1に、ホルダは符号51u2に、ホームポジションは符号HPに、エンドポジションは符号EPに、目標角度は符号H1,H2,H3に、ローラ巻き上げ手段は撓み形成ローラ47に、静電吸着手段は静電吸着板49−1に、エアー吸着手段はエアー吸着板49−10に、支持板はガイド板10に、それぞれ対応する。
【0172】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
1 用紙分離装置
10 ガイド板
20 第1の保持機構
30 第2の保持機構
40 用紙浮かし機構
47 撓み形成ローラ
49−1 静電吸着板
49−10 エアー吸着板
51 用紙分離部材
50 用紙接着部分離機構
51u1 加熱部
51u2 ホルダ
EP エンドポジション
HP ホームポジション
H1,H2,H3 目標角度
P 最上位の用紙(上葉紙)
PB 用紙束
Pv 空間
T トナー接着部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0174】
【特許文献1】特開2000−190252号公報
【特許文献2】特開平7−223387号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙分離装置画像読み取り装置、用紙処理システム及び用紙分離方法に係り、さらに詳しくは、プリンタ、MFP(Multi Function Peripheral)、複写機などの電子写真を応用した出力機器や読み取り装置内で、トナーによって接着され、綴じられた用紙束について、綴じ状態を自動的に解除し、用紙を1枚ずつ分離する用紙分離装置、この用紙分離装置を備えた画像読み取り装置、この画像読み取り装置を備えた用紙処理システム、及び前記用紙分離装置で実施される用紙分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
綴じ処理は一般にはステープラと称される綴じ装置が使用され、綴じ処理には金属製の針が使用されている。このような金属製の針(ステープル針)を使用したものでは、ステープル針を物理的に抜き取り、切り取れば綴じ状態を解除することが可能である。
【0003】
一方、帯状のシートで形成される綴じ部材により用紙束を綴じる綴じ方法も知られている。このような綴じ方法を解除する場合には、帯状のシートで形成される綴じ部材によって綴じられた用紙束を載置する載置部と、用紙束の表面の綴じ部材を検出する検出手段と、前記綴じ部材を分断する分断手段と、を備え、綴じられた用紙束における綴じ部材の位置情報を得て、用紙束の綴じ状態を自動的にしかも確実に解除して用紙ごとにばらすことが提案されている(例えば特許文献1)。
【0004】
他方、ステープルあるいは帯状のシートからなる綴じ部材のように用紙に穴を形成することなく綴じる綴じ方法としてトナーによって綴じる方法が知られている(例えば特許文献2)。この方法は、シートの綴じ代相当部分に熱軟化性を有する電子写真用トナーを付着させ、かつ、該部分に他のシートの綴じ代相当部分を重ねた状態で、該綴じ代相当部分同士を加熱及び加圧して接着するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステープル針によって綴じる方法では、金属のステープル針を抜き取り、あるいは切り取って綴じ状態を解除することができる。また、特許文献1記載の技術のように帯状のシートによって綴じる方法では、帯状のシートを分断し、引き抜いて綴じ状態を解除することができる。いずれにしても綴じを解除した場合には、用紙束にステープル跡が穴として残ることになる。その際、用紙束を構成する各用紙自体はばらばらであり、ステープル針あるいは帯状の綴じ部材によって機械的にまとめられているに過ぎない。
【0006】
これに対し、用紙を何らかの接着手段、例えば特許文献2記載の技術のようにトナーを利用して用紙を接着し、用紙束として綴じたものでは、針の抜き取りや分断では綴じ状態を解除することはできない。このような場合、綴じ状態を解除するには、接着した部分をカッタによって切り取り、各用紙の接着状態を解除すれば可能であるが、用紙の接着部分が切り取られることから、元の用紙の形状をとどめることができない。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、トナーによって接着されて綴じ処理された用紙束の綴じ状態を、用紙を傷つけることなく用紙の形状をとどめた状態で解除し、1枚ずつの用紙にばらすことができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離装置であって、前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する空間形成手段と、前記空間形成手段によって前記空間を形成する際、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記トナーによる接着部側を押さえ、前記用紙束を保持する第1の保持手段と、前記空間形成手段によって前記空間を形成した後、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記接着部から離れた側を押さえ、前記用紙束を保持する第2の保持手段と、前記第2の保持手段によって保持された状態で前記空間内に挿入され、前記トナーによって接着された部分まで移動し、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する用紙分離部材を含む用紙分離手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トナーによって接着されて綴じ処理された用紙束の綴じ状態を、用紙を傷つけることなく用紙の形状をとどめた状態で解除し、1枚ずつの用紙にばらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る実施例1におけるトナーによって綴じられた用紙束の一例を示す図である。
【図2】実施例1における用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】実施例1における制御回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図5】図4に示したCPUによって実行される用紙分離装置のメイン動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例2に係る用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。
【図7】実施例2における静電方式の吸着板の構成を示す図である。
【図8】図7に示した静電吸着板の断面構成を示す図である。
【図9】実施例2におけるエアー方式の吸着板の構成を示す図である。
【図10】実施例3に係る用紙分離装置の概略構成を示す図である。
【図11】実施例3における用紙分離部材近傍の構成を示す要部拡大図である。
【図12】用紙接着部分離機構を用紙束の搬送中心に対して対称に配置した例を示す平面図である。
【図13】ワイヤを使用した用紙分離部材の構成を示す図である。
【図14】用紙分離部材の先端縁の形状を成型や機械加工で形成した例を示す図である。
【図15】実施例4に係る用紙接着部分離解除機構による分離動作の状態を検知する検知回路の一例を示す図である。
【図16】実施例6における分離部温度と分離部材回転トルクとの関係を示す図である。
【図17】実施例6における用紙接着部分離機構を示す要部平面図である。
【図18】実施例6における用紙分離部材の一例を示す図である。
【図19】実施例6における用紙分離部材の他の例を示す図である。
【図20】実施例6における二体で形成された用紙分離部材を示す図である。
【図21】図20に示す加熱部の横断面図である。
【図22】発熱体部にトナーと密着しないようにギャップを持たせた例を示す図である。
【図23】放熱用フィンを備えた用紙分離部材を示す平面図である。
【図24】実施例7における用紙分離部材の動作を示す説明図である。
【図25】図24における用紙分離部材の動作の一例を示す速度線図である。
【図26】図24における用紙分離部材の動作の他の例を示す速度線図である。
【図27】用紙分離部材が慣性エネルギ付与機構を有する実施例8に係る用紙接着部分離機構の要部を示す平面図である。
【図28】図27のパルスモータの駆動軸に慣性ホイールを設けた例を示す用紙接着部分離機構の要部正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、用紙束のうち最上位の用紙をその下の用紙から浮かし、その間に用紙分離用の部材を挿入し、トナーの接着部分を当該部材によって引き剥がし、用紙を1枚ずつ分離することを特徴とするものである。
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について実施例ごとに説明する。なお、実施例1が基本となる用紙分離装置の構成を示し、実施例2以降は実施例1の変形例なので、実施例2以降については実施例1と重複する各部の構成及び動作についての説明は適宜省略する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1におけるトナーによって綴じられた用紙束の一例を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は正面図である。同図では、用紙Pの平面視左下の角部である綴じ代相当部分に熱軟化性を有する電子写真用トナーを付着させてトナーパターンPcを形成し、当該綴じ代相当部分と他の用紙の綴じ代相当部分を重ねた状態で、当該綴じ代相当部分同士を加熱及び加圧して用紙を接着し、用紙束PBを形成したものである。この接着は図示しないトナー接着装置によって搬送されてくる1枚目の用紙(最下位の用紙)P1からn枚目の用紙(最上位の用紙)Pn1枚ごとに実施され、1冊の用紙束(積層用紙)PBが形成される。
【0014】
図2は本実施形態における用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図、図3は図2の平面図である。
【0015】
図2及び図3において、用紙分離装置1は、ガイド板10、第1及び第2の保持機構20,30、用紙浮かし機構40、用紙接着部分離機構50及び用紙搬送機構60から基本的に構成されている。
【0016】
ガイド板10は、トナーによって綴じられた用紙束(積層用紙)PBが置かれ、用紙接着部分離機構50で分離させる間支持する部材であり、分離後、用紙Pはガイド板10状態から排紙される。なお、用紙束PBは図示しない搬送手段によって上流側から搬送され、あるいは搬送手段を介さずにユーザが直接ガイド板10上に用紙束PBを置き、所定位置にセットされる。
【0017】
ガイド板10上には、用紙排紙方向(以下、単に搬送方向と称す。)下流側から搬送中心に沿って第1の保持機構20、用紙浮かし機構40、及び第2の保持機構30が配置され、さらに用紙束PBの先端部PBaのトナー接着部Tの側部に用紙接着部分離機構50が配置されるとともに、ガイド板10の下流側の直近に用紙搬送機構60が設けられている。
【0018】
ガイド板10の第1及び第2の保持機構20が配置された位置と対向する位置には、それぞれ第1及び第2の摩擦部材11,12が配置されている。
【0019】
第1の保持機構20は、第1の加圧軸21、第1の加圧軸21の下端に設けられた第1の加圧板22、第1の加圧軸21を回転駆動し、第1の加圧板22を昇降させる第1のパルスモータPM1、前記第1の摩擦部材11と対向し、第1の摩擦部材11との間に用紙束PBを挟み、両者間で保持する第1の保持パッド23、第1の保持パッド23と第1の加圧板22の間に装着され、圧縮量に応じた弾性力を第1の保持バッド23に付与する第1のバネ部材24、及び第1の加圧軸21の位置から第1の加圧板22のホームポジションを検知する第1のホームポジションセンサSN1を備えている。第1の保持パッド23は図3から分かるように平面視長方形であり、第1の摩擦部材11も同様の形状をしている。
【0020】
第1の保持パッド23には、第1の保持パッド23と第1の加圧板22の最大間隔を規定する第1の持ち上げ板26が取り付けられている。第1の持ち上げ板26には第1の加圧板22の上面と接触する第1の突片26aが形成され、第1の加圧板22がこの第1の突片26aの下面に当たった位置からさらに上方に移動すると、第1の加圧板22が第1の持ち上げ板26を持ち上げ、第1の保持パッド23を一体に引き上げる。第1の加圧板22は第1の保持パッド23が用紙束PBの上面に接触し、その状態で第1の加圧板22が下方に移動する場合には、第1のバネ部材24の圧縮量に応じた加圧力を用紙束PB側に付与する。
【0021】
また、第1の保持パッド23によって保持可能な位置には、用紙束PBの先端部PBaが突き当たり、当該先端部PBaを規制する突き当て板25が、ガイド板10の表面から進出後退可能に搬送中心に対して対称な個所に2個所設置されている。突き当て板25の進出後退動作はソレノイドSLによって行われ、進出量はソレノイドSLの駆動ストロークで規定され、予め突出量は設定されている。なお、ソレノイドSLは駆動時にアクチュエータを吸引することよって突き当て板25をガイド板10の表面から後退させる。突き当て板25の配設位置の直近の搬送方向上流側には、用紙束PBの先端部PBaを検出する用紙端検出センサSN4が配置されている。
【0022】
さらに、ガイド板10の搬送方向上流側であって、用紙束PBを押圧可能な位置には、第2の保持機構30が配置されている。第2の保持機構30は、第2の加圧軸31、第2の加圧板32、第2のパルスモータPM2、第2の保持パッド33、第2のバネ部材34、第2の持ち上げ板36、第2の突片36a、第2のホームポジションセンサSN2を備えており、これらの各部は第1の保持機構20と同一の構成である。なお、第2の保持パッド33は第1の保持機構20と同様に第2の摩擦部材12の垂直上方に位置している。
【0023】
第2の保持機構30は、用紙浮かし機構40よりも搬送方向上流側に設置する。用紙撓み側で保持しようとすると、用紙Pの撓み側は用紙接着部分離機構50の可動範囲内であるためスペースが狭く、適切な押さえができない上、用紙Pそのものに永久変形を与えてしまう可能性があるからである。また、第2の保持パッド33は、用紙の幅方向(搬送方向と直交する方向)全域又は用紙の幅方向の両端部で、トナー接着部Tの延長上に相当する2個所に設けることが好ましい。この位置は、用紙接着部分離機構50によってトナー接着部Tに作用する分離力に対して効率の良い押さえ位置である。
【0024】
用紙浮かし機構40は、第1の保持機構20と第2の保持機構30との間に設けられ、撓み形成ローラ47によって第1の保持機構20によって保持された用紙束PBの最上位の用紙(以下、上葉紙ともいう。)Pに対して上方に撓みPtを生じさせるものである。この用紙浮かし機構40も、第3の加圧軸41、第3の加圧板42、第3のパルスモータPM3、第3のバネ部材44、第3の持ち上げ板46、第3の突片46a、第3のホームポジションセンサSN3を備えており、これらの各部は第1の保持機構20と同一の構成である。第1の保持機構20と異なるのは、第1の保持パッド23に変えて支持板43とし、支持板43の回動支点45を第2の保持機構30側に設け、支持板43の第1の保持機構20側に、撓み形成ローラ47と、この撓み形成ローラ47を回転駆動する第4のパルスモータPM4を設けた構成にある。
【0025】
撓み形成ローラ47は加圧板22の上昇動作によって第1の保持機構20の場合と同様に第3の持ち上げ板46と一体に上昇して用紙束PBの上面から離れる。また、加圧板22の下降動作によって、加圧板22が第3の突片46aから離れると、第3のバネ部材44による加圧力が回動支点45を支点として撓み形成ローラ47側に加わり、撓み形成ローラ47は上葉紙Pに対する接触圧を付与することができる。そして、接触圧が付与された状態で、第4のパルスモータPM4が駆動され、撓み形成ローラ47が図示時計回り方向(矢印R1方向)に回転すると、図2に示すように上葉紙Pを撓ませ、撓みPtを形成することができる。なお、上葉紙Pが撓む部分の上方には、用紙撓みセンサSN5が配置され、上葉紙Pの撓み量を検出することができるようになっている。また、この撓みPtにより、当該撓みPtの下側には後述の用紙分離部材51が挿入される空間Pvが形成される。
【0026】
用紙撓みセンサSN5は、例えば反射型フォトセンサからなり、上葉紙Pの紙面からの反射光量により所定の変形が行われたものと判断する。用紙撓みセンサSN5は用紙分離部材51の紙面における可動範囲内に設置される。これにより、用紙の撓みを確実に検出することができる。
【0027】
また、本実施例では、第4のパルスモータPM4によって撓み形成ローラ47を回転駆動しているが、第4のパルスモータPM4の駆動力の伝達には減速機構を用いると良い。これにより、撓んだ用紙の撓みの戻り力で撓み形成ローラ47が駆動前の方向に戻ってしまうことがなく、U字状に撓んで変形した状態を用紙分離部材51が挿入するまでの間、保持し続けることができる。さらに、撓み形成ローラ47に代えてシリコーンゴムなどの低硬度にして極めて高い粘着性を有する平板状部材に用紙を吸着させて、第1の保持部材20側に押し出すことによって撓みを形成させることも可能である。
【0028】
用紙接着部分離機構50は図3に示すように板状の用紙分離部材51と、用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5とからなる。用紙分離部材51は図3に示すようにガイド板10のから離れたガイド板の側部にホームポジション(初期位置)HPが設定され、このホームポジションHPは第4のホームポジションセンサSN6によって検出される。また、用紙分離部材51はホームポジションから図3において反時計回り方向(矢印R2方向)に回転し、図2に示すように最上位の用紙Pが撓んでその下の用紙から浮いた部分に挿入され、隣接する用紙の間に入り込み、用紙分離部材51の回転方向前縁51aが用紙を接着しているトナー接着部Tのトナー層を剥離し、接着された用紙を分離するようになっている。
【0029】
用紙搬送機構60は駆動ローラと従動ローラとからなる用紙移動ローラ対61と、駆動ローラを回転駆動する第6のパルスモータPM6とからなり、用紙接着部分離機構50によって分離され、用紙移動ローラ対61のニップに導かれた上葉紙Pを下流側に搬送する。
【0030】
用紙搬送機構60は、分離後の上葉紙Pを移動させる機構であるが、用紙浮かし機構40による上葉紙Pの第1の保持機構20側への撓み形成のための移動を、上葉紙Pの分離後には用紙の送り出しとして併用する。すなわち、分離後の上葉紙Pの移動は、用紙束PBが移動しないようにするための第1及び第2の保持機構20,30の保持動作を解除した後、用紙浮かし機構40を駆動し、用紙移動ローラ対61のニップに送り込むことによって行う。
【0031】
上葉紙Pを移動させるにあたり、下層にある用紙束PBは、搬送方向最下流側でガイド板10から僅かに突き出した突き当て板25に突き当たり、突き当たった位置から移動しないようになっている。最後の1枚となって移動するときは、用紙Pの送り出し力が、せき止め力に打ち勝って、用紙が弾性変形し、突き当て板25を乗り越えて強制的に搬送方向下流側に押し出される。
【0032】
図2に示すように、用紙浮かし機構40により送り出す必要量は、突き当て板25に突き当たった位置から用紙移動ローラ対61のニップまでの距離Lである。そこで、用紙Pが撓んだときに、その撓み量αを加算して、(L+α)相当の移動量になるように駆動ステップ数を第4のステップモータPM4に与える。この指示は、後述の図4に示したCPU100から出力される。
【0033】
上葉紙Pの先端が、用紙移動ローラ対61のニップに噛んだならば、駆動側の用紙移動ローラの回転を第6のパルスモータPM6により開始し、上葉紙Pをさらに搬送方向下流側に移動させ、排紙する。そして、同時に用紙浮かし機構40を初期位置に戻す。
【0034】
なお、前述のように第1の保持機構20は、搬送方向中心で用紙束PBの先端部PBaを押さえるようになっているが、この押さえ位置は、トナー接着部Tと搬送方向と直交する方向から見て重なるような位置に設けられ、これに隣接した下流側に用紙浮かし機構40が配置されている。これは、用紙分離部材51を挿入するための用紙浮かし状態を形成するとき、第1の保持機構20がなければ撓み形成ローラ47が矢印R1方向に回転したときに用紙束PB全体が搬送方向に移動し、用紙浮かし状態を形成することができなくなるからである。
【0035】
また、第1及び第2の保持パッド23,33は、用紙との摩擦係数の大きな弾性部材を使用する。クロロプレンゴムやウレタンゴム等による形成が有効である。第1及び第2の摩擦部材11,12は、少なくとも用紙間同士の摩擦係数よりも大きい値であれば良いが、摩擦係数の大きな材料としては、比較的低硬度(ゴム硬度40°以下)なウレタンゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、あるいはコルク等などが使用できる。これらの材料であれば、用紙束PBの最下位となる最後の1枚の用紙P1に対しても、用紙前面に設けた突き当て板25の抵抗に抗する送り力で搬送することができる。また、このような摩擦係数の大きな部材を用いると、用紙分離部材51の作動時に、用紙束PBが移動しないような摩擦力を作用させることができる。これにより、第1及び第2のバネ部材24,34による加圧力とともに、用紙Pの下面においてμ(摩擦係数)×N(加圧力)相当の保持力を確保することが可能となる。
【0036】
このように保持力は加圧力とパッドの摩擦係数により決定される。トナー接着される用紙の積層厚さは、接着枚数を2〜50枚とすると、用紙変形による空気層の介在も含めて概ね0.12〜5mmである。厚さの変化は比較的小さいので、加圧のための第1及び第2の保持パッド23,33は、初期位置を決めておき、第1及び第2のパルスモータPM1,PM2における第1及び第2の加圧軸21,31を常に一定量のストロークで変位させて加圧するようにしている。
【0037】
積層厚の変化に伴う第1及び第2の保持パッド23,33の移動は、本実施例では、第1及び第2の保持パッド23,33を加圧する第1及び第2のバネ部材24,34の弾性変形で吸収するようにしている。用紙の積層厚さの変化を検出して、それに応じた変位量を第1及び第2のパルスモータPM1,PM2にそれぞれ与えて第1及び第2の加圧軸21,31の移動量を調整するという制御を行うこともできるが、本実施例のようにバネ部材24,34の弾性変形により機械的に吸収する方が簡単で確実である。
【0038】
なお、用紙浮かし機構40の下側に当たるガイド板10部分には摩擦部材を設けない。これは、用紙浮かし機構40のローラ駆動により最後の1枚の用紙を送り出そうとするときに摩擦が大きいと滑りが生じないからである。なお、後述の実施例2のように吸着板49を使用して用紙を浮かす場合も、長時間の接触によって粘着性などに起因する吸着が発生し、浮かし効果が得られないことがあるので、この場合も設けない。
【0039】
また、第1及び第2の保持機構20,30及び用紙浮かし機構40に第1ないし第3のバネ部材24,34,44を使用しているのは、接着された用紙束PBの厚さが用紙接着部分離機構50による用紙Pの分離動作の進行に伴って変化していくからである。バネ部材を用いることにより、このような用紙束PBの厚さの変化を吸収して、用紙分離部材51の作動時に用紙束PBが移動しないように一定以上の保持力を得るための加圧力を確保することができる。
【0040】
第2の保持機構30の保持動作は、用紙束PBが移動しないようにするためである。そのため、最上位紙について用紙浮かし機構40を動作させて用紙Pの浮かし動作が終了し、撓みPtの下面側の空間Pvに用紙分離部材51が差し込まれたら、即座に、用紙浮かし機構40による用紙浮かし動作を解除し、上葉紙Pを浮かし前の状態に戻した後、保持動作を行う。このように動作させずに、撓みPtの形成後、用紙浮かし機構40をそのままの状態にして第2の保持機構30で用紙束PBを保持し、用紙分離部材51を作動させると、適正な用紙分離ができなくなる。これは、用紙Pに撓みPt部分が存在するために、この撓みPtの部分が分離部で紙折れとなることがあり、その結果、接着部で用紙破断が発生するという事態につながる場合があるからである。このように用紙破断となると、適正な用紙分離は不能となる。
【0041】
なお、用紙を浮かし前の状態に戻すとは、用紙浮かし機構40による浮かし動作を継続することを止め、初期状態にするということである。すなわち、図2において、撓み形成ローラ47で用紙Pに撓みPtを形成し、用紙浮かしを行っている場合は、第4のパルスモータPM4の通電をオフとし、その後、第3のパルスモータPM3を駆動し、ホームポジションの検出位置である第3のホームポジションセンサSN3まで第3の加圧軸41を戻すと、回転支点45回りに初期位置に戻ることになる。
【0042】
図4は、本実施例における制御回路の概略構成を示す機能ブロック図である。図4において、本実施例における制御回路はCPU100と、このCPU100に接続されたコントローラ110を中心に構成されている。
【0043】
コントローラ110には、操作パネル111、センサインターフェース(I/F)120及びドライバインターフェース(I/F)130が接続されている。
【0044】
センサインターフェース120には、用紙分離装置Aのハード構成1Aとして設けられている前記第1ないし第4のホームポジションセンサSN1,SN2,SN3,SN6などの複数のホームポジションセンサ121、用紙厚さセンサ122及びトルクセンサ123が接続され、センサインターフェース120によってコントローラ110と各センサとの間の信号の授受が可能となっている。また、ドライバインターフェース130には、第1ないし第7のパルスモータPM1〜7の個々のモータを駆動するための複数のモータドライバ131、ソレノイドSLを駆動するためのソレノイドドライバ132、後述の静電吸着板49−1を駆動するための静電吸着ドライバ133、後述のエアー吸着板49−10を駆動するためのエアー吸引ドライバ134が接続され、ドライバインターフェース130によってコントローラ110と各ドライバとの間の信号の授受が可能となっている。
【0045】
操作パネル111は操作者とのマン・マシンインターフェースであり、操作者から操作入力が可能であり、操作者にマシンの状態、操作ボタン、操作情報などを表示する。
【0046】
CPU100はRAM101及びROM102と接続されている。CPU100は、制御部と演算部を含み、制御部が命令の解釈とプログラムの制御の流れを制御し、演算部が演算を実行する。また、プログラムはROM102に格納され、実行すべき命令(ある数値又は数値の並び)を前記プログラムの置かれたROM102から取り出し、RAM101をワークエリア及びデータバッファとして使用しながら前記プログラムを実行する。
【0047】
また、前記用紙撓みセンサSN5によって検出された撓み量は、ここでは、特に説明しないが、後述のセンサインターフェース120からコントローラ110及びCPU100に入力され、所定の撓み量(変位量)に達したときに、用紙浮かし機構40の第4のパルスモータPM4を停止させ、撓み形成ローラ47を停止状態に保持する。これにより、用紙分離部材51を確実に挿入するための空間Pvを確保することができる。その結果、接着用紙の分離ミスの発生を防止することができる。
【0048】
図5は図4に示したCPU100によって実行される用紙分離装置のメイン動作を示すフローチャートである。なお、このフローチャートの処理には、実施例1で説明されていない処理も含まれているが、全体としての処理であり、後述の実施例において詳細は説明されている。ここでは、このように構成された用紙分離装置1の用紙分離の基本的な分離動作について簡単に説明する。分離動作は、
1)接着された用紙束(積層紙)PBの上葉紙Pにおいて、接着された近傍に撓みPtを発生させ、撓みPtによって形成された空間Pvに用紙分離部材51を差し込む。
2)用紙分離部材51をトナー接着部Tに回転移動させ、強制的にかつ徐々に矢印R2方向進行させながら用紙分離部材51の前縁51a部で用紙間を掻き分けるようにして用紙を分離する。これで1枚目の用紙Pが分離される。
3)用紙移動ローラ対61によって分離された上葉紙Pを搬送方向下流側に移動させる。
4)再度1)から3)の同じ動作を繰り返し、初期状態で上から2枚目の用紙(下葉紙)を分離し、移動させる。
5)同様の操作をn−1(n:積層枚数[nは2以上の整数])回繰り返し、トナー接着により綴じられた用紙束PBの全ての用紙の接着状態を解除する。
という各工程を経て、1枚ずつの用紙Pに分離される。
【0049】
上記工程をさらに詳しく説明すると、図5のフローチャートに示すように、トナーTにより、所定の位置で接着された用紙束PBは、操作者によりガイド板10上にセットされる(ステップS101)。用紙束PBのセットは、電源ON後、操作者が操作パネル111に設けられた表示に従って、方向を確認しつつ図中左側に挿入することによって行われる。すなわち、左側に挿入すると、そこには突き当て板25がガイド板10の表面から突出しており、用紙束PBの先端部PBaを突き当て板25に突き当たる位置まで押し込むと、用紙束PBはそれ以上押し込めない。用紙束PBが用紙分離位置(突き当て板25に用紙束PBの先端部PBaが突き当てられた位置)にセットされたかどうかは用紙端検出センサSN4によって検出される。
【0050】
突き当て板25は、用紙分離位置に用紙束PBがセットされたことが検出された後、分離操作が開始されると、ソレノイドSLにより引き下げられ、最下葉紙P1から1mm程度突出した位置で、その突出状態を持続する。すなわち、この突き当て板25の突出部が用紙束PBの先端部PBaに常に接触していて、分離された上葉紙1枚の送り出し移動が行われる過程において、接着された下葉紙が共に繰り出されないためのストッパとして機能する。
【0051】
第1の保持機構20は、用紙Pの撓みPtを作るための動作中に用紙Pが移動してしまわないように、用紙束PBの先端部PBaを上から押さえる機能を備えている。押さえる位置は、図3から分かるようにトナーによる接着パターン(トナーパターンPc)のない位置に設定されている。第1の保持機構20によって用紙束PBを押さえ込む場合には、用紙束PBから上方に離れたホームポジションに位置している第1の保持パッド23を下降させる必要がある。そこで、操作パネル111のスタートボタンを押し下げることにより、第1のパルスモータPM1を駆動し、第1の加圧軸21を回転させて第1の加圧板22と第1の保持パッド23を一体に下降させる(ステップS102)。
【0052】
第1の保持パッド23が用紙束PBの最上位の用紙Pに突き当たると、第1の加圧板22が持ち上げ板26の突片26aから離れ、バネ部材24の初期弾性力以上の力が用紙束PBに加わる。下降量とバネ部材24の弾性力との関係は予めテーブルとして備えられており、必要な加圧力に応じた下降量に対応するステップ数だけ第1のパルスモータPM1は回転する。
【0053】
このようにして、予め設定された加圧力で第1の保持機構20により用紙束PBの先端部PBaが押さえ込まれると、前述のようにソレノイドSLをONにし、突き当て板25を前記最下葉紙P1から1mm程度突出した位置まで下げる(ステップS103)。次いで、用紙浮かし機構40により上葉紙Pに撓みPtを生じさせる(ステップS104)。撓みPtを生じさせる場合には、通常は離れている撓み形成ローラ47を第3のパルスモータPM3の一定量駆動により下降させ、バネ部材44を介して用紙Pに加圧接触させる。次に、撓み形成ローラ47を第4のパルスモータPM4の回転により矢印R1方向に回転させて、搬送方向下流側に移動させる。そうすると用紙Pが座屈しつつ繰り出され、第1の保持機構20の第1の保持パッド23と撓み形成ローラ47の接触部との間に空間Pvが形成される。
【0054】
座屈量(撓み量)は、撓み形成ローラ47の回転量により決まるので、撓みPtを形成し、形成された空間Pvに用紙分離部材51を挿入した後に過剰な撓みが残らない適正な撓み量となるように、撓み形成ローラ47を駆動させる第4のパルスモータPM4の入力ステップ数はプログラムされている。
【0055】
他方、用紙分離時の用紙保持を確実にするために第2の保持機構30を作動させる(ステップS105)。第2の保持機構30は、第1の保持機構20と同様の動作によって用紙束PBの後端側(搬送方向上流側)を加圧保持する。この第2の保持機構30も第2のパルスモータPM2を駆動源として、第2のバネ部材34を介して第2の保持パッド33により用紙束PBを押さえ込む。これで用紙分離を行うための、用紙側の準備は行われたことになる。
【0056】
次に、用紙分離部材51を空間Pvに挿入する。用紙分離部材51は、第5のパルスモータPM5の駆動軸に固定されている。もし、第5のパルスモータPM5が用紙を分離させるに足る駆動トルクを備えていない場合には、減速機構を介して第5のパルスモータPM5に取り付ければ良い。通常は図2に示すホームポジションHPに待機している。ホームポジションからスタートして、駆動軸回りに回転しつつトナー接着部Tのトナーを掻き分け、概ね180度回転させ、エンドポジションEPで停止させる(ステップS106)。
【0057】
なお、用紙分離部材51をステップS106で180度回転させた後、用紙分離部材51をそのまま回転させてホームポジションにおいて停止しても良いが、用紙分離部材51の長さが長い場合は分離後に180°回転するエリアは無駄な動作エリアであり、装置の大型化にもなるので往復動作させるようにする。すなわち、用紙分離部材51がホームポジションから略180度回転して用紙を分離し、その後の戻り時には用紙束PBの上部を通過してホームポジションに復帰するようにする。この場合、用紙分離部材51はホームポジションに戻る際に、例えば用紙束PBの先端部PBaに当たったときに押し上げられ、用紙束PBの先端部PBaとの引っ掛かりを回避するなどの機構を採用すれば、ホームポジションに復帰する際に動作上不都合が生じることはない。この機構については後述する。
【0058】
用紙分離部材51を回転させる際、第5のパルスモータPM5の駆動軸の駆動トルクを後述のひずみゲージ(実施例5)56によって検出し、予め設定されたH若しくはLの状態であると、前者の場合は、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったと判断し、後者の場合には用紙分離アームがホームポジションに戻った時点において、積層用紙のセットする方向が異なっている(すなわち接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない)と判断する。いずれにしても、トナー接着部Tの分離動作が行われていないと判断し、操作パネル111にエラー表示を行う(ステップS108)。
【0059】
他方、駆動トルクがHあるいはLの間の中間値Mである場合には(ステップS109:Y)、用紙が分離されていると判断し、ステップS110の処理に移行する。
【0060】
すなわち、ステップS109で駆動トルクがMの場合、上葉紙Pの分離が完了したと判断し、次に初期化に向けての動作と、分離された用紙の移動動作を行う。この動作では、第1のパルスモータPM1と第2のパルスモータPM2を同時に駆動させ、第1の保持機構20及び第2の保持機構30の各部を初期位置に戻す(ステップS110,S111,S112)。初期位置は、第1及び第2のパルスモータPM1,PM2の回転位置と対応した位置に移動する第1及び第2の加圧軸21,31のホームポジションを検出する第1及び第2のホームポジションセンサSN1,SN2によって検出される。
【0061】
このようにして第1及び第2の保持機構20,30の各部をホームポジションに移動させた後、用紙浮かし機構40の撓み形成ローラ47を第4のパルスモータPM4によって矢印R1方向に回転させ、上葉紙Pを搬送方向下流側に送り出し、用紙束PB位置から移動させる(ステップS113)。その後、用紙Pは用紙移動ローラ対61によって1枚ずつ下流側の所定の個所に搬送される(ステップS114)。
【0062】
最後に、用紙浮かし機構40をホームポジションに戻し、突き当て板25をホームポジションに戻す。前者のホームポジションは第3のホームポジションセンサSN3の検出位置であり、後者はソレノイドSLの開放位置(非吸引位置)である(ステップS115)。そして、次に最上位に位置することになった上葉紙Pを分離するためにステップS102に戻り、移行の処理を繰り返す。
【0063】
最後の用紙(最下葉紙P1)になると、駆動トルクがH,LにもMにもならない状態となる。この状態になると、撓み形成ローラ47を駆動し、上葉紙、ここでは最後の1枚の用紙を送り出す。これにより、用紙束PBの全ての用紙Pは分離されと判断される。
【0064】
また、分離動作が最終紙(最下位の用紙)まで繰り返されると(ステップS116)、用紙Pが全てガイド板10上から移動し、ガイド板10上に用紙Pが存在しなくなり、用紙セット時の検出に用いた用紙先端検出センサSN4の出力信号がLowとなる。そこで、このLow信号の検出を持って用紙Pの分離工程の繰り返し完了を判断する。そして、この判断に基づいて、第1ないし第3のパルスモータPM1〜3を同時に駆動し、第1の保持機構20、第2の保持機構30及び用紙浮かし機構40を初期位置に戻す。
【0065】
このように構成された用紙分離装置1において、図5に示したような処理を実行すると、トナーを用いて接着された用紙に対して、用紙本来の形態を変えず、言い換えれば用紙を破壊若しくは破損することなく1枚々々自動的に接着を解除することができる。これにより、1枚ごとに接着が解除された用紙は、場所を変えて積層されるか、又は、画像スキャン又はコピー等のために、次工程に向けて移動させることができる。
【0066】
さらに、操作者によるスタートボタン操作によって動作が開始され、上葉紙Pの分離後、当該上葉紙Pのみを用紙束PB上から移動させる動作を行い、新たに次の最上紙(上葉紙P)の分離を行うというように動作を繰り返し、この動作を、装置に設けた用紙端検出センサ(若しくは用紙有無検出センサ)SN4が紙なしと認識するまで繰り返して行う。これにより、自動的に1枚ずつ用紙の接着状態を解除することが、最上紙から順次下位の用紙へと移行しながら最後の1枚まで行われ、その間、用紙は1枚ずつ自動的にガイド板10上から排除され、次の用紙の接着解除処理の障害となることもない。
【実施例2】
【0067】
図6は本実施例2に係る用紙分離装置の概略構成を示す要部正面図である。本実施例2は実施例1における用紙浮かし機構40を変形した例であり、その他の各部は実施例1で説明した各部と同一なので、同一の構成には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0068】
図6において、実施例2に係る用紙浮かし機構40aは、実施例1における用紙撓み形成ローラ47及びその駆動機構に代えて、板カム48と吸着板49を組み合わせたものとしたものである。吸着板49は支持板43に代えて第3の持ち上げ板46に固定される。
【0069】
上葉紙Pを浮かすためには、前述の上葉紙Pを座屈させて空間Pvを生じさせる方法の他に、上葉紙Pを吸着して部分的に上方に浮かせる方法がある。このような吸着手段としては、例えば、静電吸着方式あるいはエアー吸着方式が適用される。このとき、吸着した上葉紙Pをただ垂直に上方に引き上げただけでは、上葉紙Pの前面と吸着部が固定状態のまま位置が変わろうとするため、その間に張力が作用し、吸着部で用紙の剥離を起こしてしまう。
【0070】
そこで本実施例では、上葉紙Pを上方に引き上げる過程で、吸着板49が第1の保持機構20側に移動しつつ上昇して、上葉紙Pに撓みが形成されるように吸着板49側の側面にピン49aを設けるとともに、このピン49aが可動に挿入されるカム溝48aを有する板カム48を固定側に設けた。これにより、吸着板49が移動軌跡に沿って移動する際に、上葉紙Pに撓みPtを形成することができる。すなわち、固定側に設けた板カム48のカム溝48aに吸着板49に設けたピン49aが当該カム溝48aの溝形状に沿って可動に挿入される。カム溝48aは、搬送方向上流側が下側に、下流側が上側に位置するように傾斜した直線状の溝である。板カム48とピン49aは、吸着板49の用紙幅方向両側に設けられる。
【0071】
このように構成すると、上葉紙Pの吸着が加圧状態で行われたのち、第3のパルスモータPM3が加圧板42を上昇させる方向に回転すると、持ち上げ板46も上昇し、吸着板49は板カム48のカム溝48aの傾斜角で搬送方向下流側に向かって上昇する。この上昇動作に伴って撓み(U字変形部)Ptが形成される。
【0072】
図7は静電方式の吸着板の構成を示す図である。静電方式の吸着板自体は例えば特許第4049930号公報に記載されているように公知の技術なので、特許第4049930号公報の記載事項を基に簡単に触れておく。
【0073】
静電方式の吸着板(以下、静電吸着板と称す。)49−1は、表面吸着層49−2、電極49−3及び絶縁層49−4が各々プラスチックで構成されて一体に成形され、1mm〜5mm程度のシート状部材として構成されている。表面吸着層49−2は絶縁層49−4からなる基板の上に形成され、電極49−3は絶縁層49−4上の凹部に形成され、表面吸着層49−2が電極49−3の上に形成される。電極49−3は、導電性プラスチックからなり、正の電極49−3Pと負の電極49−3Nとからなる。正の電極49−3Pと負の電極49−3Nは、静電吸着板49−1の断面構成を示す図8から分かるように、それぞれ櫛歯状に形成されて互いに接触しないように入り組ませて配置され、直流電源49−5の正側端子及び負側端子にそれぞれ接続される。
【0074】
静電吸着板49−1の表面吸着層49−2上に、上葉紙(すなわち吸着すべき用紙)49−6を接触させ、直流電源49−5をオンし、直流電源49−5から正の電極3Pと負の電極3Nとの間に直流電圧を印加すると、表面吸着層49−2は高誘電体物質であるから誘電分極現象が起こって異符号の電荷(正、負の電荷)が励起され、表面吸着層49−2と上葉紙49−6との間で静電気力が生じ、瞬間的に表面吸着層49−2が上葉紙49−6を静電気的に吸着して保持する。他方、直流電源49−5をオフすると、表面吸着層49−2は除電されて上葉紙49−6に対する吸着力が減衰し、上葉紙49−6が表面吸着層49−2から剥離する。
【0075】
図9はエアー方式の吸着板の構成を示す図である。エアー方式の吸着板(以下、エアー吸着板と称す。)49−10は、モータによって駆動されるエアーポンプあるいは吸引ファン49−11を吸引源として、そこからチューブあるいはダクト49−12が接続されている。エアー吸着板49−10は内部に吸気経路49−13が形成され、吸気経路49−13はエアー吸着板49−10の下面に開口した複数のノズル49−14と連通し、図9に示すように吸引ファン49−11によってエアーを吸引したときにノズル49−14の開口部側が負圧となって上葉紙Pを吸着することができる。このエアー吸着板49−10も数mmの厚さで形成することが可能である。
【0076】
エアー吸着板49−10を使用した場合においても上葉紙Pを吸着し、上方に引き上げる過程で、上葉紙Pに撓みを生じさせる必要があるので、図6に示したものと同様の板カム48及びピン49−1が必須である。
【0077】
なお、本実施例においても第2の保持機構30は、用紙浮かし機構40による用紙浮かし動作を解除し、上葉紙Pを浮かし前の状態に戻してから、保持動作を行う。この場合は、用紙浮かし動作が静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10を使用して行われるので、これらの場合には、最初に静電吸着板49−1では当該静電吸着板49−1に対する通電を停止し、エアー吸着板49−10では吸引ファン49−11を駆動するモータの通電を遮断し、吸着された上葉紙Pの拘束を解除する。その後、実施例1と同様に第3のパルスモータPM3を駆動して第3の加圧軸41をホームポジションセンサSN3位置まで戻す。
【0078】
また、本実施例のように静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10を用紙浮かし機構40に使用し、用紙搬送機構60によって分離後の上葉紙Pを移動させる場合も、板カム48による吸着板49の移動軌跡によって規定される用紙移動量が必ず(L+α)となるような撓み量となる撓みPtを形成し、用紙移動ローラ対61による用紙移動が開始された時点では、即座に静電吸着板49−1あるいはエアー吸着板49−10の吸引をオフして初期位置に戻すようにする。これにより、用紙移動動作を自動的に行うことができる。
【実施例3】
【0079】
用紙束PBの用紙積層厚が小さい場合(積層枚数が少ない場合)は分離部の高さ方向の変動も極めて少ないので、用紙分離部材51の高さが一定であっても分離動作で特に問題が生じることはない。従って、用紙積層厚が小さい場合には、実施例1において図2の平面図に示したような回転機構のみ備えれば良い。しかし、用紙束PBの積層厚が厚い場合には分離部の高さ方向の位置が変わるため、アーム状の用紙分離部材51の高さ方向の位置を厚さに合わせて変更する必要がある。
【0080】
仮に厚さ80μmの普通紙を50枚積層すると、その厚さは4.0mmであり、用紙間に存在する空気層を考慮するとその厚さは5.0mmほどになる。用紙分離部材51の高さ方向の移動を高分解能で逐次、変化させるか、最低でも2〜3段階に分けて変更する必要がある。
【0081】
図10は本実施例3に係る用紙分離装置の概略構成を示す図で、同図(a)は要部平面図、同図(b)は要部正面図である。実施例3は実施例1における用紙接着部分離機構50の他の例であり、その他の各部は実施例1と同一なので、同一の構成には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0082】
図10に示した用紙分離装置では、用紙厚さを検出する用紙厚さセンサ122を設け、用紙厚さセンサ122からの検出信号に基づき用紙分離部材51の高さ方向位置を変更し、変更された位置を保持した後に、用紙分離部材51を分離方向に回転させて上葉紙Pを分離する。
【0083】
用紙厚みセンサ122は、第1の保持パッド23の用紙幅方向近傍の用紙束PBの上方に設けられている。積層接着された用紙束PBは、使用の過程でページの折り返しや折りたたみが行われて変形しており、平面的な位置によりばらつきが大きい。したがって、厚さの測定位置は、用紙分離部材51の回転範囲から外れた位置であって、第1の保持パッド23と用紙浮かし機構40との間に設けるのが、最も安定し、都合が良い。そのため、ここでいう近傍は、前記位置を意味する。
【0084】
用紙分離部材51の高さを変更する高さ可変機構70は、ベース71、ベース71上に配置された第7のパルスモータPM7、第7のパルスモータPM7によって駆動されるパンタグラフ型リンク機構72、及びパンタグラフ型リンク機構72によって昇降駆動され、用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5を支持する支持台73を備えている。
【0085】
用紙厚さセンサ122は反射型のフォトセンサである。検出レベルに基づき、第7のパルスモータPM7を回転させる。この回転駆動力により、ウォームが回転し、それと同軸のネジ部の回転で動作するパンタグラフ型上下機構71となっているので、用紙分離部材51を微少量上下移動させることができる。
【0086】
この制御は、CPU100の指示によってコントローラ110が実行する。コントローラ110には、用紙厚さセンサ122からの検出信号が増幅器(AMP)141によって増幅されて入力される。コントローラ110は、予め用紙厚さと検出信号(検出電圧)との関係を保持する図示しないメモリのテーブルを参照し、比較器142で比較する。コントローラ110は比較器142の比較結果に基づいて変更すべき用紙分離部材51の高さに対応するステップ数をドライバ131に指示する。ドライバ131は指示されたステップ数だけの駆動信号を第7のパルスモータPM7に出力する。第7のパルスモータPM7は、入力されたステップ数だけ回転し、そのステップ数に対応する高さ分だけ用紙分離部材51を上昇又は下降させる。
【0087】
なお、図10に示した例では、第1の保持パッド23の近傍に反射型フォトセンサからなる用紙厚さセンサ122を配置した例を示したが、機械式のレバー(フィラー)を使用し、レバーの一端を用紙束PBの上面に接触させ、てこの原理で増幅させたレバーの他端を反射型フォトセンサの光量レベルで検出するように構成することもできる。
【0088】
このように第1の保持パッド23に近傍で用紙束PBの厚さを検出し、その検出結果に基づいて用紙分離部材51の高さ方向の位置出しが行われるので、用紙Pを浮かした空間Pvに確実に用紙分離部材51を差し込み、上葉紙Pを分離することができる。その際、前記位置に用紙厚さセンサ122を設けたので、用紙束(積層用紙)PBの厚さ検出の位置によるばらつきを最小限に抑えることができる。
【0089】
図11は、実施例3における用紙分離部材51近傍の構成を示す要部拡大図である。実施例1では、用紙分離部材51が用紙分離後180度反対方向に回転してホームポジションに戻る際、用紙束PBの上部を通ってホームポジションに復帰するようになっている。実施例3では、さらに具体的に用紙束PB若しくは用紙束PBの上葉紙Pと干渉しない構成を導入したものである。
【0090】
図11において用紙分離部材51には、当該用紙分離部材51の長手方向の自由端側の端部に沿って前記用紙分離部材51と平行に設置され、両端52aを支点として自由に揺動する揺動プレート52が設けられている。この揺動プレート52は、図10(a)において、用紙分離部材51がホームポジションから図示反時計回り方向に回転(矢印R3方向)し、用紙Sを分離する工程では、用紙分離部材51の回転動作に追従して用紙Pの上面を這うように移動する。このときの揺動部材52の回転軸52aに対する位置関係は図10及び図11において符号52p1で示す位置である。
【0091】
用紙分離が行われた後も用紙分離部材51は同方向(矢印R3方向)に回転を続け、ホームポジションから180°回転した所で一旦停止する。積層されて接着された用紙は、用紙の角部に設定されたトナー接着部Tが変形して持ち上がる特性を持つため、用紙分離部材51が前記180度回転した位置から元のホームポジションに戻る方向(図示矢印R4方向)に回転する際、用紙分離部材51が、前記変形し、浮き上がった用紙Pの角部に引っ掛かる場合がある。引っ掛かりを起こすと、用紙を変形させ、あるいは破損させることにつながり、さらに、この変形や破損によって用紙分離部材51がホームポジションに戻ることができなくなる場合もある。ホームポジションに戻ることができなくなるということは、次動作が不可能になるということを意味する。
【0092】
そこで、本実施例のように揺動プレート52を揺動可能に用紙分離部材51に設けると、分離を完了し、ホームポジションに戻るときは、揺動プレート52がまず用紙束PBの先端部に図示時計回り方向(矢印R4方向)に回転して用紙束PBの上葉紙に接触し、用紙の微少な変形や浮きの状態を押さえ付けるようにしてホームポジションに戻る。このときの揺動部材52の回転軸52aに対する位置関係は図10及び図11において符号52p2で示す位置である。
【0093】
なお、実施例1でも触れたが、用紙分離部材51が分離完了位置からホームポジションに分離動作時とは逆の方向に180度回転する場合、用紙分離部材51と用紙束PBの先端部PBaの引っ掛かりを回避させる。この具体的構成として本実施例3では、図11の拡大図に示すように、用紙分離部材51の揺動駆動軸(第5のパルスモータPM5の駆動軸)PM5aに対して軸方向に可動であって、回転方向に不動となるように両者を結合する。すなわち、第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに対して用紙分離部材51を固定するのではなく、用紙分離部材51の前記駆動軸PM5aに装着する部分に軸方向に長いスライド溝51bを設け、このスライド溝51bを挿通してピン52cを前記駆動軸PM5aに固定する。その際、スライド溝51bとピン52cは緩み結合とする。これにより、用紙分離部材51は上下方向に移動可能であり、回転方向には、回転トルクがピン52cによって用紙分離部材51に伝達される。
【0094】
このような構成とすることにより、例えば用紙分離部材51が用紙束PBの先端部PBaに引っ掛かって、戻り時のトルクが過大となった場合は、揺動プレート52の下面によって形成される斜面52dに沿って力が作用し、その上方向に向かう分力により、用紙分離部材51はスライド溝51bに沿って上方に競り上がり、用紙束PBの上面に位置する。そして、用紙分離部材51は、用紙束PBの上面を滑りながら、過大な負荷を受けることなくホームポジションまで移動する。
【0095】
なお、これまでは、用紙の片側端部にトナー接着部Tを設け、当該トナー接着部Tにおいて積層接着した用紙を分離する用紙分離装置を例示しているが、用紙の接着形態としては、両側を接着しているものもある。このような両側接着の用紙束PBについては、図12に示すように用紙接着部分離機構50を搬送中心に対して対称に配置し、同じタイミングで用紙分離部材51a,51bによる分離動作を実行させるようにすれば、用紙束PBを反転させて行うのに比較して1/2の時間で分離処理を終わらせることができる。また、両側から同時に用紙分離部材51を挿入して分離を行わせるので、均一な剥離力が用紙に作用する。このため、用紙束の位置ずれ、あるいは回転が生じることもない。
【0096】
図12では用紙接着部分離機構50を用紙束PBの搬送中心に対して対称に配置させるため、搬送中心の下側に図示しない駆動用のパルスモータの駆動軸と連結されたピニオン53を配置し、このピニオン53の中心を回転対称中心として2つの用紙接着部分離機構50a,50bを搭載した用紙サイドフェンス55a,55bと連結された2本のラック54a,54bを配置して前記ピニオン53と噛み合わせ、2つの用紙接着部分離機構50a,50bを対称に移動させるようにしている。用紙接着部分離機構50a,50bの位置は、各ラック54a,54bのホームポジション位置に設置した第5のホームポジションセンサSN7a,SN7bによって検出され、この位置からの駆動量(駆動パルス数)によって用紙接着部分離機構50a,50bの位置がCPU100によって認識される。
【0097】
接着された用紙束(積層用紙)PBは、用紙サイドフェンス55a,55bに沿わせるようにセットされるので、本実施例では、用紙サイドフェンス55a,55b上に用紙接着部分離機構50a,50bを搭載し、固定した。このように構成することにより、用紙サイドフェンス55a,55bの用紙幅方向の移動に応じて、自動的に用紙束PBの用紙幅方向の位置と用紙接着部分離機構50a,50bとの位置関係が出されることになる。また、用紙接着部分離機構50a,50bを固定するための専用の固定部材を設ける必要がないので、スペース的にも、位置合わせの面でも合理的な構成となっている。
【0098】
他方、用紙のトナー接着部Tの分離を確実に行うには、用紙分離部材51が突入し、トナー接着部Tに接触する部分が鋭利な状態であることが望ましい。このように鋭利であると、分離抵抗が少なく、確実に用紙を分離させることができる。そこで、本実施例では、トナー接着部Tに接触する部分を直径がφ1mm以下であって、スチールあるいはナイロン材質によるワイヤを使用する。このようにワイヤを使用すると、分離時に発生する分離抵抗に抗する張力を任意に設定することができる。ワイヤ径は細い方が、分離性能が良いが、加工性及び強度からφ1mm程度まで許容できる。
【0099】
図13は、このようなワイヤを使用した用紙分離部材51の構成を示す図である。用紙分離部材51の本体である用紙分離フレーム部51cは平面視コの字形に樹脂材によって成形され、コの字形の開放側の端部にワイヤ51dが張られている。ワイヤ51dは両端部で金属のボールをカシメて取り付ける。図中、用紙分離フレーム部51cにワイヤ51dをセットする距離は(L+ΔL)である。ワイヤ51dは弾性を持つとともに用紙分離フレーム部51cもコの字形に形成することにより、コの字の突出部分を内側に加圧すると、戻る方向に弾性を有する。ワイヤ51dの長さはLであり、ワイヤ51dの両端のボール部51eを用紙分離フレーム部51cのコの字形の突出部分に形成されたボール嵌め込み溝51fの凹部に嵌め込んでセットする。このセットによりワイヤ51dがΔLだけ伸び、また、用紙分離フレーム部51cの前記コの字形の部分の弾性により、ワイヤ51dに対して必要な張力得ることができる。
【0100】
トナー接着部Tを剥離し、若しくは分割して用紙分離を行うための条件として、極力曲率の大きな分離形状で均一な長さ形状を有し、かつ一定の剛性を持つものを用紙間のトナー接着部Tに進入させることが望ましい。そこで、前記ワイヤ51dを使用した構成にすると、これらの条件を満足することができ、確実な分離動作を行うことが可能となる。
【0101】
一方、ワイヤ51dと同じ効果を発揮するように用紙分離部材51の先端縁の曲率を成型や機械加工で形成するようにしても良い。図14はこの例を示す用紙分離部材51の横断面図で、同図(a)は先端縁に所定の曲率を与えた例、同図(b)は先端縁に面取りを施しエッジを形成した例である。
【0102】
図14(a)に示した例は、板圧が0.3〜1mmの金属板51hの端部をR加工(円筒面あるいは円柱面加工)したものを、樹脂フレーム部51gと同時成型して形成する。すなわち、金属板51hを挟んで用紙分離部材51全体を樹脂で成型加工し、金属板51hの先端部51iの半径を例えばR=0.5mmとする。ワイヤ51dと同様に先端半径は小さいほど用紙分離は良好であるが、Rとして形成する場合はこの程度まで良好である。
【0103】
図14(b)に示した例は、図14(a)に示した例に対して、先端をR加工する代わりに片側又は両側からの面取りによって先端にエッジ51jを形成したものである。このようにエッジ51jを形成しても同様の効果を得ることができる。
【実施例4】
【0104】
図15は実施例4に係る用紙接着部分離機構50による分離動作の状態を検知する検知回路の一例を示す図である。用紙束PBのトナー接着部Tと用紙接着部分離機構50との位置が合っていないにも拘わらず用紙分離が行われたものとして次の動作工程に進んだとすると、接着されたままの用紙が送り込まれることになるので、ジャムを起こしたり破損したりという事故につながる。
【0105】
そこで、本実施例では、用紙接着部分離機構50の用紙分離部材51の動作時において、回転トルクの変動を検出するために、用紙分離部材51又は第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aにひずみゲージを取り付け、そのひずみ量に相当する出力電圧を検出するようにした。
【0106】
すなわち、本実施例に係る検知回路は、増幅器141a、コントローラ110、表示パネル111及び比較器142aからなる。この検知回路では、第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに取り付けられたひずみゲージ56の出力を増幅器(AMP)141aにより増幅してコントローラ110に出力する。コントローラ110では、予めひずみ量とひずみゲージ56の出力電圧との関係を保持する図示しないメモリのテーブルを参照し、比較器142aで比較する。コントローラ110はこの比較結果に応じて下記のように判断する。
【0107】
すなわち、
1)運転シーケンスの所定時間内に一定のレベルがあって繰り返すときは用紙の分離が行われていると判断する(出力電圧レベル:M)。
2)逆に、レベルに変化が起きないときは(出力電圧レベル:L)、用紙分離アームがホームポジションに戻った時点において、積層用紙のセットする方向が異なっている(すなわち、接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない)と判断する。
3)一方、そのレベルがさらに一定以上の高レベルに達したときは(出力電圧レベル:H)、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったと判断する。
【0108】
そして、これらの判断結果に応じて、1)では、処理を継続し、2)では、接着位置と用紙接着部分離機構の位置が対応していない旨、操作パネル111に通知し、操作パネル111は表示部にその旨表示する。3)では、用紙分離アームと用紙との引っ掛かりなどによる動作不良が起こったとして動作を停止させ、用紙の除去をうながす操作パネル111の表示部に表示させる。前記判断は、前述の図5のフローチャートにおけるステップS107,S108,S109に対応する。
【0109】
また、ひずみゲージ56の出力電圧のレベルの検知に基づいて判断することに代えて、状態を判別する手段として、用紙分離部材51を回転駆動させる第5のパルスモータPM5に通電される駆動電流の変化によって駆動トルクの変動を検知し、この検知結果に基づいて判断することもできる。この場合には、電流プローブをリード線に噛ませて電流値を計測するか、あるいは、モータの電流回路に直列にシャント抵抗を挿入し、その抵抗の両端に発生する電圧を取り出して、比例関係である電流値に換算して判別値とする。負荷トルクと通電電流値もほぼ比例関係にあるので、その大きさにより、前記1)ないし3)の状態を判断することができる。
【0110】
その他の各部は実施例1ないし3と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例5】
【0111】
実施例1ないし4に記載したような用紙分離装置1は、例えばADF(Auto Document Feeder)あるいは画像読み取り装置に搭載され、積層接着された用紙束PBをADFの前段で1枚ずつに分離した後、当該ADFで画像読み取り装置の画像読み取り部に送り込む。これにより画像読み取り部は用紙束PBの用紙を1枚ずつ読み取ることができる。読み取られた用紙は、読み取り後、再度トナーによって接着され、用紙束PBとなる。この用紙分離、読み取り、用紙接着という工程を経ることにより、トナー接着により形成された用紙束PBは、自動的に1枚ずつに分離されて読み取られ、元の冊子へ戻すことができる。その際、各工程を繰り返したとしても、用紙が破損することもない。
【0112】
このように用紙の分離と接着を一連の工程で実施するためには、用紙接着機能を有する装置内に用紙接着部分離機構50を設けることが望ましい。すなわち、プリンタを含む画像形成装置、その周辺機内、あるいは画像読み取り装置(スキャナ)に、用紙接着機構と接着部解除機構を共に有する構成とすることによって、操作者は任意に、用紙のばらし、再綴じ、新規ページの挿入綴じなどを実行することができる。
【実施例6】
【0113】
接着に使用されるトナーは、接着用として特別に調合されるものではなく、通常の電子写真方式による用紙上へのプリントに使用されるトナーである。カラートナー、黒トナーなどが対象であり、接着強度を接着目的に合わせて調合した専用トナーが対象となる。すなわち、一般トナーの場合は、バインダ樹脂中に着色剤として各種の染料又は顔料を相溶、又は分散含有させて構成し、その粒子径は、数μm程度である。バインダである樹脂材料にはポリエステル樹脂などが用いられ、主にこれがトナーとしての融点を支配する。一般に80〜130℃程度に設定されている。さらに、定着機構にオイルを使用しない形態でのトナーの場合は、これに適量のワックスを分散させる。オイルレストナーと称する。
【0114】
一方、用紙には普通紙、あるいは一般の印刷用紙が用いられる。このトナーを「接着パターン」Pcとしてプリント後、必要枚数を重ね合わせ、接着媒体として逐次あるいは一括してトナーの融点以上になるように加熱する。このときエアーギャップの介在による接触面積の低下をなくすため加圧を併用する。トナーが溶融し合い、同時に用紙表面のフィラー部と絡み合った後に加熱を解除して、冷却が進行すると、両者間は一体となって固化して結合が行われる。
【0115】
以上のようにしてトナーにより接着された用紙間を、逆に1枚ずつ解除するのが本実施例の装置である。
【0116】
実施例1ないし4では、この解除のためには、接着された上葉紙Pと、下葉紙との間の空間Pvに用紙分離部材51を差し込み、これを移動させることによって両者を掻き分けるようにして分離していた。しかし、各種の外乱条件により分離が不安定で、紙剥けが発生した、あるいは分離トルクが大きくばらつくなど、分離品質に加えて、装置側の動作も不安定になるなどの問題があった。各種試験の結果、分離のための掻き分けが行われる直ぐ近傍において、トナーを融点以上の温度に加熱させ、半溶融状態を継続させつつ分離力を作用させれば、分離力も少なく、かつ分離力のばらつきも少なく、紙剥けのない分離が行われることが判明した。
【0117】
図16は分離部温度と分離部材回転トルクとの関係、すなわち、温度をパラメータに取ったときの接着部分離トルクの特性を示す図である。同図からある一定の温度に昇温させた状態で分離部材を動作させるのが、駆動トルクが少なく有効であることが分かる。
【0118】
図17は本実施例における用紙接着部分離機構を示す要部平面図である。この実施例6では、図3に示した実施例1の用紙接着部分離機構50では、第5のパルスモータPM5によって直接用紙分離部材51を回転駆動していたものを、減速機構としてギヤ57を用い、ギヤ57の軸57aに用紙分離部材51を一体に取り付けている。その他の各部は実施例1と同様に構成され、同様に機能するので、重複する説明は省略する。
【0119】
図18は、本実施例における用紙分離部材の構成を示す図である。同図(a)は用紙分離部材51の平面図、同図(b)は発熱部の構成の一例を示す要部断面図、同図(c)は発熱部の構成の他の例を示す要部断面図である。
【0120】
用紙分離部材51の本体は、耐熱性で高強度を有するポリイミド、ファイバ入りポリイミド樹脂、PEEK樹脂、あるいはアルミニウム合金などの材料によって成形する。発熱部は用紙分離部材51の先端縁51kであって、分離のためにトナー接着部Tと接する全域に一体的に形成される。すなわち、トナー接着部Tに接触して分離を行う先端縁51kには、発熱体51mが全長にわたって形成されていることになる。発熱体51mとしての高抵抗体材料であるヒータ線としては、ニクロム線(ニッケル、クロム合金)、カンタル線(クロム20%、アルミニウム5%を含む鉄合金)などが用いられる。
【0121】
図18(b)は、用紙分離部材51の先端縁51kに円柱溝51nを形成し、この中に発熱体51mを埋没させた例である。絶縁性と固定のため、エポキシ系樹脂やフェノール樹脂などの熱可塑性樹脂を流し込むことにより固定させる。符号51n1は絶縁固定層を示す。
【0122】
発熱体51mの形態として裸発熱体の場合は、図18(b)の形態で固定し、シース発熱体として事前に金属管の中に絶縁体とともに固定形成した発熱体51mの場合は、図18(c)に示すように円柱溝51oに嵌め込んだ後に接着剤によって固定する。符号51o1は接着固定層を示す。
【0123】
このように発熱体51mを構成すると、用紙Pの分離点においてトナーに接触する用紙分離部材51が加熱されていることにより、介在している接着トナーが軟化し、分離しやすくなると同時に紙剥がれなどの現象が発生することもない。さらに、分離時の駆動抵抗も減少させることができる。
【0124】
外部のリード線との接続は、移動変化の少ない回動支点近傍にコネクタ51pを設けて行われる。このとき発熱体51mの端部からのリード線は、用紙分離部材51に設けた凹溝内に嵌め込むようにして配線するか、導線パターンとして形成して回転支点穴51r近傍まで配線する。この部分において、外部線とのコネクタ51pを設けて着脱自在にコネクトさせるようにする。用紙分離部材51の回転支点穴51rにおいて、回転伝達のための駆動軸PM5aとの結合方法は、丸穴中にDカット51sを形成して、ここに差し込み、その上部を抜け止めのためのネジで固定するか、Eリングで固定する。
【0125】
また、コネクタ51pには、発熱体(形成部)51mの近傍に埋め込まれた熱電対形の小型温度計51m2(図20参照)からのリード線も接続されている。この熱電対形の小型温度計51m2の出力抵抗値は図示しないがコントローラ110を介してCPU100に入力される。CPU100は入力された出力抵抗値に対して目標温度に向け常に一定値となるようにコントローラ110を経由して発熱体51mへ流す電流をコントロールする。
【0126】
接着部周辺の温度は季節や1日のうちでも大きく変化する。加えて使用されるトナーの種類によっても融点が異なるので、小型温度計51m2を設けて温度計測を行うことにより、それらの外乱があっても適切な温度に設定することができ、確実な分離を行うことが可能となる。特に用紙接着部の温度を、その近傍で最も誤差少なく計測することができる。
【0127】
一方、発熱体51m近傍には、図19(a)に示すように、発熱体51mと並行して溝部51tを設ける。これにより熱が用紙分離部材51全体に急激に拡散し伝搬することを阻止するための、熱伝達障壁として機能する。また、熱的使用効率を上げて、トナー接着部Tの分離部分を所定温度に早く立ち上げることが可能となる。前記溝部51tは、発熱体51mの周辺部において空気層に接する数mmの幅と深さを持った熱遮断溝であり、強度的に十分な範囲に形成されている。加えて溝部内面には図19(b)に示すように一定間隔で貫通穴部51t1を複合させて配列させると良い。これにより、さらに断熱効果を上げることができる。なお、溝部51tあるいは貫通穴部51t1は、使用材料に応じて成型加工あるいは切削加工によって形成される。
【0128】
このように発熱体51mの形成部近傍の形状を熱伝達障壁として機能するような形状に形成すると、発熱体51m部での温度が、ホルダ部51u2(図20参照)全域に伝播して温度が低下するのを防止することができる。したがって、熱印加時に所定の温度に早く立ち上げることができる。
【0129】
発熱体としてセラミックヒータを使用する場合は端部分離部分にヒータパターンを配し、その外側をセラミックで包み込んで成形し、その後焼成して完成させる。使用するセラミックは、アルミナ又は窒化珪素を選択し、発熱体を内部に配置して同時に焼結する。これにより外部からも遮断されて酸化することなく保護絶縁される。発熱体となる材料は、タングステンあるいはモリブデンを使用する。
【0130】
セラミックヒータはセラミックの絶縁性と、成形が可能であるという利点から用紙分離部材51として発熱体と一体的に形成できる点にメリットがある。加えて、数十mmsecでの熱的立ち上がり時間、及び広い温度域の設定が可能なことから、セラミックヒータを用いた形成は有効である。すなわち、セラミックヒータはセラミック粉の成形加工の後、焼成で形成されるので、用紙分離部材51としての他の機能(駆動軸PM5aとの固定穴など)を同時かつ一体的に作ることが可能で、図19に示したような配線を這い回す必要がなくなる。さらに、回転駆動系と嵌め合わされる回転軸穴部分も一体的に加工することができる。その際、機械的強度も十分確保することが可能である。なお、この場合も、セラミック内部から引き出されるリード線は、駆動軸PM5a近傍で外部線と接続するようにする。
【0131】
前記発熱体の外側をセラミックで包んで成型する方法では、用紙分離部材51はセラミックの同一材料で一体的に形成されたが、発熱体形成部を有する加熱部と、それを保持するホルダ部との二体で形成することもできる。これにより、加熱に必要な面積を最小にすることが可能となり、加熱部をモジュールとして作ることができるので、熱的効率が良く機械的強度の高い用紙分離部材51とすることができる。
【0132】
図20はこの二体で形成された用紙分離部材を示す図である。同図(a)は平面図、同図(b)は横断面図である。
【0133】
図20において、用紙分離部材51の用紙分離を行う加熱部51u1は、先端縁51kが全長にわたりエッジ状に、又はR=0.5mm以下の曲率の曲面に形成され、トナー接着部Tの分離性能を上げるようにしている。そして、このセラミック製の加熱部51u1をホルダ部51u2に取り付け、固定し、用紙分離部材51として機能するように構成している。加熱部51u1におけるヒータとしては、例えば前記セラミックヒータが使用できる。このように用紙分離部材51のトナーと接触する最も近い位置に発熱体51mが配置されるので、熱的なロスを最少にし、効率良くトナーを加熱することができる。
【0134】
セラミック製の加熱部51u1を、ホルダ部51u2に取り付け、固定する場合、ホルダ部51u2への熱伝達量が最小となるように断熱性を付与する必要がある。本実施例では、図20(a)に示すようにA、B、Cの3点に微小な突起51u33,31,32が設けられており、この突起51u31〜33をホルダ部51u2に対応して設けられた穴部に嵌め込む。その際、A、B点を嵌め込みながらC点に差し込むことにより、位置出しが行われるとともに加熱部51u1の回転が規制され、ホルダ部51u2と一体となる。
【0135】
A及びB点の嵌め合いは、図20(b)に示すように直径dに対して挿入のための開口幅をLとして狭くした(d>L)クリック(スナップフィット)構造としているので、接着剤で固定しなくとも、自動的に抜け止め構造とすることができる。
【0136】
図20に示したように加熱部51u1とホルダ部51u2の二体で構成すると、加熱部51u1とホルダ部51u2の合わせ部において3点の寸法位置により、自動的に断熱用のエアーギャップ51u3がコの字型に形成される。さらに、接着剤を用いて固定しないので着脱可能であり、加熱部51u1に何らかの不都合が発生した場合、部品交換も容易に行うことができる。
【0137】
一方、運転時の振動などに起因する共振現象で、加熱部51u1あるいはホルダ部51u2から発生する振動音が問題となる場合は、加熱部51u1とホルダ部51u2との間に形成される断熱用のエアーギャップにシリコーンゴムなどの断熱性材料を充填すると、共振点を移動させることができ、共振音の発生を防止することが可能となる。
【0138】
ホルダ部51u2の材料としては、耐熱強度と機械的強度を有するものとしてポリイミド樹脂、PEEK樹脂、ベークライト樹脂などを使用することができ、これを成形あるいは切削加工して用いる。支点部は回転トルクを伝達するために駆動軸PM5aと丸穴で嵌め合わされ、回り止めのDカット加工が施されたDカット部51sとなっている。そして、ホルダ部51u2の抜け止めには、駆動軸PM5aの上部でネジ止めあるいはEリング止めが使用される。
【0139】
図21は図20に示す加熱部の横断面図である。加熱部51u1は、図21に示すような断面形状にセラミックを形成後に、形成したセラミック基板51u4上に発熱体となる材料のペーストをスクリーン印刷法によって塗布し、その後、焼成することにより発熱体パターン51m1を形成する。発熱体材料のペーストとしては、例えばモリブデンあるいはタングステンが用いられる。これが図20に示す発熱体51mを構成する。ペーストを使用してスクリーン印刷すると、接着を解除するのに必要な全域の曲率形状を犠牲にすることなく、この部分に発熱体51を形成することができる。
【0140】
本実施例では、発熱体パターン51m1はセラミック内部でなく、表面に形成するので、用紙分離部材51によってトナー接着部Tを分離するときに当該トナー接着部Tと接触する最先端部に形成することができる。このため、トナー接触部Tを加熱する温度効率を最も効率の良いものとすることができる。同時に、最先端部形状はエッジ又はR=0.5mm程度以下が分離のための理想条件であるので、この条件のもとで発熱体パターン51m1を形成することができ、最も望ましい形態の加熱部51u1とすることができる。その際、発熱体パターン51m1(熱抵抗体)の形成とともに、そこから引き出される、外部との接続用リード線51qもパターン化して同時にセラミック基板51u4上に形成することができる。
【0141】
また、熱的効率を上げるため、セラミック基板51u4上であって発熱パターン51m1の直下に発熱体で発熱した熱を蓄熱させるための蓄熱層51u5を形成することもできる。このように蓄熱層51u5を形成すると、その蓄熱効果によって入力エネルギを削減することが可能となる。蓄熱層51u5は、例えばガラス(SiO2)を材料とし、層厚10〜20μm以下の層とする。そして、このガラス層の上に発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンが形成される。その他の蓄熱層形成材料としては、例えばポリイミド樹脂が知られている。ポリイミド樹脂には、ペースト状のものがあり、このペースト状のポリイミド樹脂を塗布又はディッピングにより成膜化し、その後、オーブンによって60℃の温度下で、数十分程度加熱する。ポリイミド樹脂は、この加熱により固化し、蓄熱層としての所望の特性を得ることができる。
【0142】
発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンの上層である最表層には、それらの保護層51u6を形成する。保護層51u6は発熱体パターン51m1とリード電極51qパターンを酸化による劣化から保護するとともに、分離動作において、用紙間のトナー接着部Tあるいは用紙と接触を繰り返す際の用紙との接触抵抗を低くする機能も有する。さらに、保護層51u6は用紙分離部材51の耐久性を向上させ、分離性能を維持する。10μm程度でコーティングする保護層材料は、テフロン(登録商標)樹脂、PEEK樹脂、あるいはエポキシ系樹脂でこれを塗布又はディッピングにより成膜化した後に、オーブン内で加熱して固化させ、所望の特性を得る。
【0143】
このように発熱体51mの上層部に耐熱性でかつ摩擦係数の低いテフロン樹脂コーティング、PEEK樹脂コーティングを行うと、用紙分離部材51と用紙Pとの摺動摩耗を軽減し、耐久性を向上させることができる。また、用紙分離時における用紙分離部材51及び用紙に作用する抵抗を小さくすることができる。これにより、用紙分離部材51を駆動する第5のパルスモータPM5のモータトルクが小さくて済むので、モータの小型化による省電力化を図ることができる。さらに、用紙に作用する抵抗が小さいということは、分離時に上葉紙Pが移動しないように押さえる第1及び第2の保持パッド23,33の保持力を小さくすることができることを意味し、保持力が小さくなれば、その分、第1及び第2の保持機構20,30を駆動する第1及び第2のパルスモータPM1,2の省電力化を図ることができる。
【0144】
なお、発熱体51m部がトナー層に接触して分離する過程では、トナーと完全に密着している状態から若干のギャップを持たせて分離のきっかけを作って行うことが望ましい。図22は、この若干のギャップを持たせる構成の例を示す加熱部51u1の横断面図である。図22(a)に示した例では、発熱パターン51m1の発熱端より僅か離れた搬送方向上流側の位置に、小径で高さが2〜3μm程度のディンプル51u7を端部に複数列平行に並べて配置する。その際、接着分離時にディンプル51u7部への負荷抵抗が一度にかからないように、分散させることを目的に、それぞれのディンプル51u7を千鳥状に配置するとともに、ディンプル51u7の断面を見たとき、高さ0から搬送方向上流側が2〜3μm高くなるような移動方向下流側が登り傾斜となるような傾斜面となるようにする。これにより加熱部51u1とトナーが密着するという現象を回避することができる。
【0145】
これらのディンプル51u7は、表面の保護層51u6を形成するときに同時に、又は2回目の塗布工程で形成する。すなわち、まず前面のコーティングを行って予備乾燥が行われた後、スクリーン印刷によりディンプル51u7部をすり重ねるようにし、その後、再度の乾燥を行って固定化する。
【0146】
図22(b)はディンプル形状の他例を示す加熱部の横断面図である。図22(b)の例では、細帯状の凸部51u8を、端部に直角に数個所設けている。この凸部51u8は、図22(a)に示したディンプル51u7と同様に千鳥配列し、あるいは傾斜を持たせるようにすることができる。
【0147】
このように曲率を持った用紙分離部材51の先端縁51k及びその周辺は、丁度、良く研磨された包丁でチーズをカットするときのようにトナーが吸着しやすい。しかし、ディプル51u7,51u8を設け、トナーと部分接触させることにより分離抵抗が小さくなってトナー接着部Tにおいて用紙は容易に分離できるようになる。
【0148】
図23は放熱用フィンを備えた用紙分離部材を示す平面図である。放熱用フィン51v1は図18(a)に示した用紙分離部材51の回転支点穴51rが形成された用紙分離部材51の回転支点端51vに設けられている。放熱用フィン51vは、本実施例では、回転支点を中心に同心円状に設けられた短冊状の部材で、ここでは、短冊状の部材を扇形に広げた形状となっている。この放熱用フィン51v1により、回転支点端51v近傍の熱が自然放熱され、駆動軸PM5aを介して伝達される駆動系への熱伝達を抑制している。その結果、発熱体51mからの熱伝達に起因する駆動伝達系ギヤの耐久性劣化及び駆動系モータの耐久性劣化を防止することができる。
【0149】
その他、特に説明しない各部は実施例1ないし4と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例7】
【0150】
用紙分離部材51は、図2に示したように用紙束PBの上葉紙に形成された用紙の浮きによって生じた空間Pvに挿入され、回転方向下流側のトナー接着部T若しくはトナー接着層に用紙分離部材51の先端縁51kが衝突した後、トナー接着層を掻き分けながら進行し、用紙、ここでは上葉紙とその直ぐ下の下葉紙を分離する。その際、用紙分離部材51を回転駆動する駆動源となるモータが十分なトルクを有していれば、当該モータによって駆動される用紙分離部材51を一定速で動作させることにより分離は進行して完了となる。
【0151】
しかし、このように駆動源となるモータが十分なトルクを有するためには、大型のモータである必要がある。しかし、モータが大型であると、その分コストが高くなり、また占有空間も大きくなって省エネ、小型化の要求とは逆行する。そこで、本実施例では、比較的トルクが小さな小型のモータで、かつ、パルスによるステップ入力によりそれに対応した角度の回転角が得られるパルスモータを使用して用紙を分離するようにした。
【0152】
実施例1では、用紙分離部材51は第4のホームポジションセンサSN6が検出した位置をホームポジションとして待機しており、上葉紙Sに用紙浮きの空間Pvが形成されると、第5のパルスモータPM5が回転を開始する。その際、例えば図24において実線で示すホームポジション(HP)からスタートしてエンドポジションセンサSN8によって検出されるエンドポジション(EP)まで180°回転し、その後、ホームポジションに戻るという動作であった。
【0153】
これに対し、本実施例では、実際に接着を終了する約120°の回転角内の動作を複数回に分けて、トナー接着層への衝突を繰り返しながら、徐々に用紙分離部材51を用紙束PB先端側に進行させ、用紙を分離するようにした。図24はこのときの動作を示す動作説明図であり、実施例1における図3に対応する。すなわち、本実施例では、図24に示すように第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに直接用紙分離部材51を取り付けて固定し、
1)ホームポジションHPから目標角度H1まで回転させ、若干進行させた後、ホームポジションHPに戻す。
2)再度ホームポジションHPから目標角度H2まで回転させ、同じく若干進行させた後、ホームポジションHPに戻す。
3)最後は目標角度H3まで回転させ、さらに進行させてトナー接着部Tにおいて用紙の分離を完了した後、ホームポジションHPに戻す。
あるいは、回転量の最後について駆動パルス数の管理をしない場合は、
4)エンドポジションセンサSN8で検出されるまで回転した後、ホームポジションHPに戻す。
という各工程を実行し、1サイクルの工程を完了とする。
なお、120°というのは、前記3)において用紙を切り離して進行する最終角度をいう。
【0154】
本実施例では、以上のように3段階の移動動作を繰り返して、確実な分離を実現するようにしている。このように分割して動作させることによって、用紙分離部材51がトナー接着部Tに衝突する度に1/2Iω2なる衝撃エネルギをトナー接着部Tに付与することができる。これにより、用紙の分離を容易に進行させることが可能となる。また、分離動作の確実性を向上させることができる。
【0155】
なお、本実施例では、パルスモータPM5を使用しているが、エンコーダを有し、回転角度制御可能なDCモータを使用しても同様の制御が可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0156】
図24に示した例では、1回々々ホームポジションHPから衝突させる位置まで用紙分離部材51を回転させ、その後、戻すという動作を繰り返していた。しかし、衝突する度に1回々々ホームポジションHPに戻すとその分時間がかかる。一方、用紙分離部材51は用紙を浮かせた空間Pvに挿入され、その空間Pvを経て用紙間のトナー接着部Tに進行し、衝突するように動作するが、1回目はホームポジションHPから移動するが、その後の2回目、3回目の動作は、ホームポジションHPまで戻さなくても、用紙分離部材51の回転先端が用紙に形成された用紙浮きの空間Pvの領域から抜け出ない範囲まで戻して、そこから前記した目標角度への進行動作を繰り返す。これにより1サイクルの時間を短縮することができる。
【0157】
図25はこの動作を示す速度線図で、横軸に時間、縦軸に位置を取り、ホームポジションHPからエンドポジションEPに至る状態を示す。
【0158】
このように用紙分離部材の初回以降の繰り返し動作の起点は、用紙分離部材51が分離すべき用紙浮きの空間Pv内に位置させると、用紙分離部材51を挿入する空間Pvを形成する上葉紙の浮きが初回の分離動作で変形しても、その後の動作で用紙分離部材51を挿入できないという不具合が発生することはない。さらに、ホームポジションHPから分離動作を繰り返すのに比べ、分離に必要とする時間を短縮化することができる。
【0159】
同じくステップモータ使用の場合において、用紙分離部材51の位置と対応した駆動ステップ数の管理で、それぞれの目標角度を認識して複数回に分けて目標角度への進行動作を繰り返すこともできる。この場合、図26に示すように
1)ホームポジションHPから目標角度H1までの回転をさせて、若干進行させた後に、設定パルス数により戻し位置まで戻す。この位置は用紙分離部材51が用紙浮きの空間Pvの領域内にあり、さらに余裕を見込んだ位置である。
2)今度は戻し位置から目標角度H2まで回転させて、同じく若干進行させた後、戻し位置に戻す。
3)最後は、戻し位置から目標角度H3へ回転させて、ここからさらに進行をさせて分離を完了したのち、ホームポジションHPに戻す。
あるいは、ここを駆動パルス数の管理をしない場合は、
4)エンドポジションセンサによって検出されるまで進行した後、ホームポジションHPに戻す。
という各工程を実行し、1サイクルの工程を完了とする。
図26に示した1サイクルタイムCTM2は、図25に示した1サイクルタイムCTM1と比較して大きく短縮化されるのが分かる。
【0160】
なお、本実施例では、目標角度をH1〜H3の3段階としたが、実際の制御では、用紙の接着強度や接着パターンに応じて目標角度の設定回数を増加減させて最適運転が行われる。
【0161】
この場合も当然、エンコーダを有し、回転角度制御可能なDCモータを使用しての駆動でも駆動可能である。
【0162】
その他、特に説明しない各部は実施例1と同様に構成され、同様に機能する。
【実施例8】
【0163】
図27は、用紙分離部材が慣性エネルギの付与機構を有する実施例8に係る用紙接着部分離機構の要部を示す平面図である。
【0164】
本実施例では、実施例7における分離時の衝突エネルギを大きくするため、用紙分離部材51の回転支点端51v側を延長し、延長部51v2の先端近傍に高質量部材51v3を取り付けたものである。このように延長部51v2の先端近傍に高質量部材51v3を取り付けると、用紙分離部材51の回転時の慣性質量を大きくすることができる。このように慣性質量を増加させると、用紙分離部材51のトナー接着部Tへの衝突時のエネルギを大きくすることができる。その結果、用紙の分離性能を向上させ、確実に用紙を分離することができる。高質量材料としては鉄、鉛等を使用する。
【0165】
図27に示した例では、用紙分離部材51に延長部51v2を設け、高質量部材51v3を付加して回転慣性を上げるように構成しているが、用紙浮き空間Pvに用紙分離部材51v3を挿入して分離動作を行っているとき、接触を起こさないような扇方形状として、そこに高質量部材を付加するという形態とすれば、さらに慣性効果を上げることができる。
【0166】
慣性質量を大きくし、用紙分離時の衝突エネルギをさらに大きくするために、図28に示すように用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに、慣性ホイールPm5bを取り付ける。慣性ホイールPM5bは高質量な鉄系あるいは銅系の材料を使用する。慣性ホイールPM5bの直径は第5のパルスモータPM5の立ち上げ可能な慣性量と、許容可能な取り付けスペースの範囲で決定される。
【0167】
第5のパルスモータPM5への駆動パルスの入力周波数は、分離のための目標角度H1,H2,H3の個所で、脱調しない最高周波数が得られるようにそれぞれ設定されるスタートから順次上げていく。その際、分離時の衝突エネルギを最大化するようにスピードを持っていけば良いので、高慣性質量にして最高の速度を限られたモータ容量の中で得られことになり、効率的である。
【0168】
大きな衝撃エネルギで分離が進行するので、用紙接着が弱いというような条件によっては、仮にアタックの回数を2回、あるいは1回に減少させるということも可能である。
【0169】
なお、図28では、用紙分離部材51に高質量部材51v3を取り付けて慣性質量を付与し、さらに、駆動軸PM5aに慣性ホイールPM5bを取り付けて慣性力を付与しているが、慣性ホイールPM5bだけでも良いことはいうまでもない。
【0170】
このように用紙分離部材51を回転駆動する第5のパルスモータPM5の駆動軸PM5aに慣性ホイールPM5bを取り付け、パルスモータの駆動最高周波数を、それぞれの目標角度H1,H2,H3において最高周波数となるように駆動すると、用紙分離部材51の衝突時エネルギを、慣性と角速度の面から最大にさせてトナー接着部Tに突入させることができる。その結果、分離力を向上させ、確実に用紙を分離することができる。
【0171】
なお、特許請求の範囲における用紙束は本実施形態では符号PBに、最上位の用紙(上葉紙)は符号Pに、用紙分離装置は符号1に、空間は符号Pvに、空間形成手段は用紙浮かし機構40に、トナーによる接着部はトナー接着部Tに、第1の保持手段は第1の保持機構20に、第2の保持手段は第2の保持機構30に、用紙分離部材は符号51に、用紙分離手段は用紙接着部分離機構50に、発熱部は加熱部51u1に、ホルダは符号51u2に、ホームポジションは符号HPに、エンドポジションは符号EPに、目標角度は符号H1,H2,H3に、ローラ巻き上げ手段は撓み形成ローラ47に、静電吸着手段は静電吸着板49−1に、エアー吸着手段はエアー吸着板49−10に、支持板はガイド板10に、それぞれ対応する。
【0172】
さらに、本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0173】
1 用紙分離装置
10 ガイド板
20 第1の保持機構
30 第2の保持機構
40 用紙浮かし機構
47 撓み形成ローラ
49−1 静電吸着板
49−10 エアー吸着板
51 用紙分離部材
50 用紙接着部分離機構
51u1 加熱部
51u2 ホルダ
EP エンドポジション
HP ホームポジション
H1,H2,H3 目標角度
P 最上位の用紙(上葉紙)
PB 用紙束
Pv 空間
T トナー接着部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0174】
【特許文献1】特開2000−190252号公報
【特許文献2】特開平7−223387号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離装置であって、
前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する空間形成手段と、
前記空間形成手段によって前記空間を形成する際、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記トナーによる接着部側を押さえ、前記用紙束を保持する第1の保持手段と、
前記空間形成手段によって前記空間を形成した後、前記用紙束の前記空間形成手段配置位置よりも前記接着部から離れた側を押さえ、前記用紙束を保持する第2の保持手段と
前記第2の保持手段によって保持された状態で前記空間内に挿入され、前記トナーによって接着された部分まで移動し、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する用紙分離部材を含む用紙分離手段と、
を備えたことを特徴とする用紙分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙分離装置であって、
前記トナーによって接着された部分に接触する前記用紙分離部材に前記トナーを溶融させる発熱部を備えたこと
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の用紙分離装置であって、
前記発熱部は、断熱状態で当該発熱部とは別体に形成されたホルダによって保持されていること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記用紙分離部材は、前記支持板から離れた予め設定されたホームポジションから前記トナーによって接着された部分を通過した予め設定されたエンドポジションに前記移動を行う際、前記ホームポジションからそれぞれ異なる目標角度を設けて複数回往復動し、回数を増すごとに前記目標角度が大きくなるように移動すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項5】
請求項4記載の用紙分離装置であって、
前記用紙分離部材の初回以降の繰り返し動作の起点が前記空間内に設定されていること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記空間形成手段は、ローラ巻き上げ手段、静電吸着手段及びエアー吸着手段のいずれかによって最上位の用紙をその下の用紙から分離し、空間を形成すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記用紙束を支持する支持板を備え、
前記第1及び第2の保持手段は前記支持板との間で前記用紙束を保持すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の用紙分離装置を画像読み取り手段の前段に備えていること
を特徴とする画像読み取り装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像読み取り装置の後段に用紙綴じ装置を備えていること
を特徴とする用紙処理システム
【請求項10】
トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離方法であって、
前記用紙束を支持する支持板との間で前記用紙束の搬送方向最下流側を第1の保持手段によって押さえて保持する第1の工程と、
前記第1の工程で前記第1の保持手段によって保持された状態で、空間形成手段によって前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する第2の工程と、
前記第2の工程で前記空間が形成された後、前記空間形成手段の用紙搬送方向上流側で第2の保持手段によって前記用紙束を前記支持板との間で押さえて保持する第3の工程と、
前記第3の工程で前記第2の保持手段によって保持された状態で用紙分離部材を前記空間に挿入し、前記トナーによって接着された部分に前記用紙分離部材を移動させ、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする用紙分離方法。
【請求項1】
トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離装置であって、
前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する空間形成手段と、
前記空間形成手段によって前記空間を形成する際、前記用紙束の前記空間形成手段が配置された位置よりも前記トナーによる接着部側を押さえ、前記用紙束を保持する第1の保持手段と、
前記空間形成手段によって前記空間を形成した後、前記用紙束の前記空間形成手段配置位置よりも前記接着部から離れた側を押さえ、前記用紙束を保持する第2の保持手段と
前記第2の保持手段によって保持された状態で前記空間内に挿入され、前記トナーによって接着された部分まで移動し、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する用紙分離部材を含む用紙分離手段と、
を備えたことを特徴とする用紙分離装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙分離装置であって、
前記トナーによって接着された部分に接触する前記用紙分離部材に前記トナーを溶融させる発熱部を備えたこと
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項3】
請求項2記載の用紙分離装置であって、
前記発熱部は、断熱状態で当該発熱部とは別体に形成されたホルダによって保持されていること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記用紙分離部材は、前記支持板から離れた予め設定されたホームポジションから前記トナーによって接着された部分を通過した予め設定されたエンドポジションに前記移動を行う際、前記ホームポジションからそれぞれ異なる目標角度を設けて複数回往復動し、回数を増すごとに前記目標角度が大きくなるように移動すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項5】
請求項4記載の用紙分離装置であって、
前記用紙分離部材の初回以降の繰り返し動作の起点が前記空間内に設定されていること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記空間形成手段は、ローラ巻き上げ手段、静電吸着手段及びエアー吸着手段のいずれかによって最上位の用紙をその下の用紙から分離し、空間を形成すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の用紙分離装置であって、
前記用紙束を支持する支持板を備え、
前記第1及び第2の保持手段は前記支持板との間で前記用紙束を保持すること
を特徴とする用紙分離装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の用紙分離装置を画像読み取り手段の前段に備えていること
を特徴とする画像読み取り装置。
【請求項9】
請求項8記載の画像読み取り装置の後段に用紙綴じ装置を備えていること
を特徴とする用紙処理システム
【請求項10】
トナーによって接着され、複数枚の用紙が積層されてなる用紙束から当該用紙束の最上位の用紙を分離する用紙分離方法であって、
前記用紙束を支持する支持板との間で前記用紙束の搬送方向最下流側を第1の保持手段によって押さえて保持する第1の工程と、
前記第1の工程で前記第1の保持手段によって保持された状態で、空間形成手段によって前記用紙束の最上位の用紙を当該用紙の直ぐ下の用紙から浮かせて両者間に空間を形成する第2の工程と、
前記第2の工程で前記空間が形成された後、前記空間形成手段の用紙搬送方向上流側で第2の保持手段によって前記用紙束を前記支持板との間で押さえて保持する第3の工程と、
前記第3の工程で前記第2の保持手段によって保持された状態で用紙分離部材を前記空間に挿入し、前記トナーによって接着された部分に前記用紙分離部材を移動させ、前記トナーによる接着状態を解除して前記最上位の用紙を前記用紙束から分離する第4の工程と、
を備えたことを特徴とする用紙分離方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【公開番号】特開2013−82553(P2013−82553A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225107(P2011−225107)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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