説明

用紙搬送装置、用紙処理装置、及び画像形成装置

【課題】ガイド部材と放出手段とが干渉することなく用紙を積載手段側に確実に搬送する。
【解決手段】用紙又は用紙束をガイド部材によってガイドし、搬送する用紙搬送装置において、用紙又は用紙束を搬送する放出ローラ56と、前記放出ローラ56の外周に沿って配置された第1及び第2のガイド部材609a,609bと、前記第1及び第2のガイド部材609a,609bを軸回りに揺動自在に支持する共通の支点(支軸)610とを備え、前記第1のガイド部材609aが放出ローラ56との間の経路を閉鎖する第1の位置にあるとき用紙束をシフト搬送路C側に導き、前記経路を開放する第2の位置にあるとき中折り処理トレイG側に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シート状に形成された部材、あるいはシート状記録媒体(本明細書では請求項を含め、単に「用紙」と称す)及びこれらの束を搬送する用紙搬送装置、シート部材(用紙)に対して所定の処理、例えば綴じや折りを施す綴じ・折り手段を備えた用紙処理装置、及びこの用紙処理装置を一体又は別体に備えた複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはデジタル複合機などの画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術として、例えば特許文献1ないし3に開示された発明が公知である。このうち特許文献1には、搬入された用紙に対して所定の処理を施す用紙処理装置において、用紙束に対して整合・スティプル処理を行うスティプル処理トレイと、スティプル処理トレイで整合及びスティプル処理が施された用紙束をそのまま排紙する搬送路と、用紙束を中折り処理を行う折りプレート側に搬送する束搬送ガイド上下と、搬送路と束搬送ガイド上下とに用紙束の搬送路を切り換える分岐ガイド板及び可動ガイド板とを備え、前記分岐ガイド板及び可動ガイド板は束搬送ガイド上下に切り換えたとき、スティプル処理トレイの最下流側に位置する放出ローラの外周に沿って用紙束を偏向させ、束搬送ガイド上下に用紙束を導くようにした発明が開示されている。
【0003】
また、引用文献2には、画像形成装置に付設あるいは併設され、もしくは画像形成装置と一体に設けられ、画像形成装置本体から排出された画像形成済みの用紙に所定の処理を行う用紙処理装置において、異なる搬送路から搬送されてくる用紙をそれぞれ異なる搬送路に選択的に搬出する手段を備えた発明が開示されている。
【特許文献1】特開2003−95506号公報
【特許文献2】特開2001−335217号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中綴じ、あるいは折り処理を行う場合、端綴じ処理部でシートの搬送方向と幅方向の整合した後、下流に位置する中綴じ処理部へシート束を搬送する際にシート束に搬送力を与える搬送手段は、構成上端綴じ処理部の上部に位置することとなる。そのため搬送手段の位置、制御等が端綴じ処理部でのシート整合時の妨げにならないようにする必要がある。また、端綴じ部からシート束を押し出す放出手段によって下流の紙処理部及び積載手段に用紙束を確実に送り出すには、放出手段の動作範囲を可能な限り積載手段に近づける方が好ましい。しかし、シート束を積載手段側に案内するガイド部材が放出手段の下流側に設けられていることから、放出手段の動作範囲を可能な限り積載手段に近づけると放出手段がガイド部材と干渉する虞がある。そのため積載手段側へジャムを生じることなく搬送するには、放出手段の動作軌跡がガイド部材と干渉しないような構成にした上で、放出手段の動作範囲を積載手段に近づける必要がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、ガイド部材と放出手段とが干渉することなく用紙を積載手段側に確実に搬送することができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、第1の手段は、用紙又は用紙束をガイド部材によってガイドし、搬送する用紙搬送装置において、用紙又は用紙束を搬送する搬送ローラと、前記搬送ローラの外周に沿って配置された第1及び第2のガイド部材と、前記第1及び第2のガイド部材を軸回りに揺動自在に支持する共通の支軸とを備えていることを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、第1の手段において、前記第1及び第2のガイド部材は一体に形成されていることを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1又は第2の手段において、前記第1のガイド部材が前記搬送ローラとの間の経路を閉鎖する第1の位置にあるとき第1の搬送路に導き、前記経路を開放する第2の位置にあるとき第2の搬送路に導くことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第3の手段において、前記第1のガイド部材が前記用紙又は用紙束が前記第2の搬送路側に案内されているとき前記第1の位置と前記第2の位置の中間の第3の位置にあり、前記第2のガイド部材は前記用紙又は用紙束を前記第2の搬送路に案内するため当該第2の搬送路側に開放された第1の位置に位置していることを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第3又は第4の手段において、前記用紙又は用紙束先端が前記第2のガイド部材から前記第2の搬送路に受け渡されるとき、前記第2のガイド部材は前記第1の位置よりも前記搬送ローラ側に近接し、搬送路を狭めた第2の位置に位置していることを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第5の手段において、前記用紙又は用紙束先端が前記第2のガイド部材から前記第2の搬送路に受け渡された後、前記第2のガイド部材は前記第1の位置に位置することを特徴とする。
【0012】
第7の手段は、第1ないし第6のいずれかの手段において、前記第1及び第2のガイド部材は用紙束搬送部材の軌跡を妨げないようにガイド面の一部に切り欠きが設けられていることを特徴とする。
【0013】
第8の手段は、第3ないし第6のいずれかの手段において、前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置が用紙の枚数に応じて変更されることを特徴とする。
【0014】
第9の手段は、第3ないし第6のいずれかの手段において、前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置が用紙束内の紙種に応じて変更されることを特徴とする。
【0015】
第10の手段は、第3ないし第6のいずれかの手段において、前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置が用紙束の画像状態に応じて変更されることを特徴とする。
【0016】
第11の手段は、第1の手段において、ジャム処理の際にユーザが手動で前記第1及び第2のガイド部材を操作するための操作手段を備えていることを特徴とする。
【0017】
第12の手段は、第1ないし第11の手段に係る用紙搬送装置を用紙処理装置が備えていることを特徴とする。
【0018】
第13の手段は、第1ないし第11の手段に係る用紙搬送装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0019】
第14の手段は、第12の手段に係る用紙処理装置を画像形成装置が備えていることを特徴とする。
【0020】
なお、後述の実施形態では、搬送ローラは放出ローラ56に、第1のガイド部材は符号609aに、第2のガイド部材は符号609bに、一体に形成されガイド部材は符号609に、支軸は支点610に、第1の搬送路はガイド部材609(第1のガイド部材は609a)の湾曲面の背面とガイド板611とによって形成される搬送路に、第2の搬送路は束搬送ガイド板上92によって形成される搬送路に、ガイド面のガイド面の一部の切り欠きは符号609cに、操作手段は取っ手Ta,Tbに、それぞれ対応し、第1及び第2のガイド部材の位置の変更はモータM2,M2a,M2b及びCPU360によって実行される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ガイド部材が放出手段と干渉することなく用紙を積載手段側に確実に搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0023】
1.全体構成
図1は本発明の実施形態に係る用紙処理装置としての用紙後処理装置と画像形成装置とからなる画像形成システムのシステム構成を示す図であり、図では、用紙後処理装置の全体と画像形成装置の一部を示している。
【0024】
図1において、用紙後処理装置PDは、画像形成装置PRの側部に取り付けられており、画像形成装置PRから排出された用紙は用紙後処理装置PDに導かれる。前記用紙は、1枚の用紙に後処理を施す後処理手段(この実施形態では穿孔手段としてのパンチユニット100)を有する搬送路Aを通り、上トレイ201へ導く搬送路B、シフトトレイ202へ導く搬送路C、整合及びスティプル綴じ等を行う処理トレイF(以下端面綴じ処理トレイとも称する)へ導く搬送路Dへ、それぞれ分岐爪15及び分岐爪16によって振り分けられるように構成されている。
【0025】
画像形成装置PRは、特に図示しないが入力される画像データを印字可能な画像データに変換する画像処理回路、画像処理回路から出力される画像信号に基づいて感光体に光書き込みを行う光書き込み装置、光書き込みにより感光体に形成された潜像をトナー現像する現像装置、現像装置によって顕像化されたトナー像を用紙に転写する転写装置、及び用紙転写されたトナー像を定着する定着装置を少なくとも備え、トナー画像が定着された用紙を用紙後処理装置PDに送り出し、用紙後処理装置PDによって所望の後処理が行われる。画像形成装置PRはここでは前述のように電子写真方式のものであるが、インクジェット方式、熱転写方式などの公知の画像形成装置が全て使用できる。なお、この実施形態では、前記画像処理回路、光書き込み装置、現像装置、転写装置、及び定着装置が画像形成手段を構成している。
【0026】
搬送路A及びDを経て端面綴じ処理トレイFへ導かれ、この端面綴じ処理トレイFで整合及びスティプル等を施された用紙は、ガイド部材609により、シフトトレイ202へ導く搬送路C、折り等を施す中綴じ・中折り処理トレイG(以下、単に「折り処理トレイ」とも称する)へ振り分けられるように構成され、折り処理トレイGで折り等を施された用紙は搬送路Hを通り下トレイ203へ導かれる。また、搬送路D内には分岐爪17が配置され、図示しない低荷重バネにより図の状態に保持されており、搬送ローラ7によって搬送される用紙の後端が前記分岐爪17を通過した後、搬送ローラ9、10、スティプル排紙ローラ11のうち少なくとも搬送ローラ9を逆転することによって用紙をターンガイド8に沿って逆行させて用紙後端を用紙収容部Eへ導いて滞留させ、次用紙と重ね合せて搬送することが可能なように構成されている。この動作を繰り返すことによって2枚以上の用紙を重ね合せて搬送することも可能である。ガイド部材609は1部材により一体(図1ないし図7参照)、あるいは2部材により第1のガイド部材609aと第2のガイド部材609bとから構成され(図8ないし図14参照)なり、前者はモータM2によって、後者はモータM2a及びM2bによってそれぞれ揺動駆動される。これらの構成は後述の4.用紙偏向機構でさらに説明する。
【0027】
搬送路B、搬送路C及び搬送路Dの上流で各々に対し共通な搬送路Aには、画像形成装置PRから受け入れる用紙を検出する入口センサ301、その下流に入口ローラ1、パンチユニット100、パンチかすホッパ101、搬送ローラ2、分岐爪15及び分岐爪16が順次配置されている。分岐爪15、分岐爪16は図示しないバネにより図1の状態に保持されており、図示しないソレノイドをONすることにより、分岐爪15、16をそれぞれ駆動し、両者の組み合わせを変えることによって、搬送路B、搬送路C、搬送路Dへ用紙を振り分ける。
【0028】
搬送路Bへ用紙を導く場合は、図1の状態で前記ソレノイドはOFF、搬送路Cへ用紙を導く場合は、図1の状態から前記ソレノイドをONすることにより、分岐爪15は上方に、分岐爪16は下方にそれぞれ回動した状態となり、搬送ローラ3から排紙ローラ4を経て上トレイ201に用紙を排出し、搬送路Dへ用紙を導く場合は、分岐爪16は図1の状態で前記ソレノイドはOFF、分岐爪15は図1の状態から前記ソレノイドをONすることにより、上方に回動した状態となり、搬送ローラ5及び排紙ローラ対6(6a,6b)を経て用紙をシフトトレイ202側に搬送する。
【0029】
この用紙後処理装置では、用紙に対して、穴明け(パンチユニット100)、用紙揃え+端部綴じ(ジョガーフェンス53、端面綴じスティプラS1)、用紙揃え+中綴じ(中綴じ上ジョガーフェンス250a、中綴じ下ジョガーフェンス250b、中綴じスティプラS2)、用紙の仕分け(シフトトレイ202)、中折り(折りプレート74、折りローラ81)などの各処理を行うことができる。
【0030】
2.シフトトレイ部
図1に示すようにこの用紙後処理装置PDの最下流部に位置するシフトトレイ排紙部は、シフト排紙ローラ対6(6a,6b)と、戻しコロ13と、紙面検知センサ330と、シフトトレイ202と、シフトトレイ202を用紙搬送方向に直交する方向に往復動させる図示しないシフト機構と、シフトトレイ202を昇降させるシフトトレイ昇降機構とにより構成される。
【0031】
図1において、符号13は戻しコロを示し、戻しコロ13はシフト排紙ローラ対6から排出された用紙と接して前記用紙の後端をエンドフェンスに突き当てて揃えるためのスポンジ製のコロからなる。この戻しコロ13は、シフト排紙ローラ対6の回転力で回転するようになっている。戻しコロ13の近傍にはトレイ上昇リミットスイッチが設けられており、シフトトレイ202が上昇して戻しコロ13を押し上げると、前記トレイ上昇リミットスイッチがオンしてトレイ昇降モータが停止する。これによりシフトトレイ202のオーバーランが防止される。また、戻しコロ13の近傍には、図1に示すように、シフトトレイ202上に排紙された用紙もしくは用紙束の紙面位置を検知する紙面位置検知手段としての紙面検知センサ330が設けられている。
【0032】
本実施形態では、紙面検知センサ(スティプル用)及び紙面検知センサ(ノンスティプル用)は、遮蔽部によって遮られたときにオンするようになっている。したがって、シフトトレイ202が上昇して紙面検知レバーの接触部が上方に回動すると、紙面検知センサ(スティプル用)がオフし、さらに回動すると紙面検知センサ(ノンスティプル用)がオンする。用紙の積載量が所定の高さに達したことが紙面検知センサ(スティプル用)と紙面検知センサ(ノンスティプル用)によって検知されると、シフトトレイ202はトレイ昇降モータの駆動により所定量下降する。これにより、シフトトレイ202の紙面位置は略一定に保たれる。
【0033】
3.端面綴じ処理トレイ部
3.1 端面綴じ処理トレイの全体構成
スティプル排紙ローラ11によって端面綴じ処理トレイFへ導かれた用紙は、端面綴じ処理トレイF上に順次積載される。この場合、用紙毎に叩きコロ12で縦方向(用紙搬送方向)の整合が行われ、ジョガーフェンス53によって横方向(用紙搬送方向と直交する方向−用紙幅方向とも称す)の整合が行われる。ジョブの切れ目、すなわち、用紙束Pの最終紙から次の用紙束先頭紙までの間で、制御装置350(図15参照)からのスティプル信号により端面綴じスティプラS1が駆動され、綴じ処理が行われる。綴じ処理が行われた用紙束は、ただちに放出爪52aが突設された放出ベルト52によりシフト排紙ローラ6へ送られ、受け取り位置にセットされているシフトトレイ202上に排出される。
【0034】
3.2 用紙放出機構
放出爪52aは、放出ベルトHPセンサ311によりホームポジションが検知されるようになっており、放出ベルトHPセンサ311は放出ベルト52に設けられた放出爪52aによりオン・オフする。放出ベルト52の外周上には対向する位置に2つの放出爪52aが配置され、端面綴じ処理トレイFに収容された用紙束を交互に移動搬送する。また必要に応じて放出ベルト52を逆回転させ、これから用紙束を移動するように待機している放出爪52aと対向側の放出爪52aの背面で端面綴じ処理トレイFに収容された用紙束の搬送方向先端を揃えるようにすることもできる。したがって、この放出爪52aは用紙束の用紙搬送方向の揃え手段としても機能する。
【0035】
また、図示しない放出モータにより駆動される放出ベルト52の駆動軸には、用紙幅方向の整合中心に放出ベルト52とその駆動プーリとが配置され、駆動プーリに対して対称に放出ローラ56が配置、固定されている。さらに、これらの放出ローラ56の周速は放出ベルト52の周速より速くなるように設定されている。
【0036】
3.3 処理機構 叩コロ12は支点を中心に叩きSOL(ソレノイド)によって振り子運動を与えられ、端面綴じ処理トレイFへ送り込まれた用紙に間欠的に作用して用紙を後端フェンス51に突き当てる。なお、叩きコロ12は反時計回りに回転する。ジョガーフェンス53は、正逆転可能な図示しないジョガーモータによりタイミングベルトを介して駆動され、用紙幅方向に往復移動する。
【0037】
端面綴じスティプラS1は、正逆転可能な図示しないスティプラ移動モータによりタイミングベルトを介して駆動され、用紙端部の所定位置を綴じるために用紙幅方向に移動する。その移動範囲の一側端には、端面綴じスティプラS1のホームポジションを検出するスティプラ移動HPセンサが設けられており、用紙幅方向の綴じ位置は、前記ホームポジションからの端面綴じスティプラS1移動量により制御される。端面綴じスティプラS1は、針の打ち込み角度を用紙端部と平行あるいは斜めに変更できるように、さらに、前記ホームポジション位置でスティプラS1の綴じ機構部だけを所定角度斜めに回転させ、スティプル針の交換が容易にできるように構成されている。すなわち、スティプラS1は斜めモータによって斜め回転し、針交換位置センサによって所定の斜めの角度に、あるいは、前記針の交換位置まで達したことが検出されると、斜めモータは停止する。斜め打ちが終了し、あるいは針交換が終了すると、元の位置まで回転して次のスティプルに備える。なお、図1中符号310は端面綴じ処理トレイF上の用紙の有無を検出する紙有無センサである。
【0038】
4.用紙束偏向機構
4.1 ガイド部材が1部材からなる場合
用紙束偏向機構は、図1の全体構成図、図2、図5ないし図7の端面綴じ処理トレイFと折り処理トレイG部分の拡大図に示すように、用紙束に搬送力を与える搬送機構600、用紙束をターンさせる放出ローラ56、用紙束のターン部のガイドを行う一体成形された1部材からなるガイド部材609とから構成されている。放出ローラ56は前述のように端面綴じ処理トレイFの上端に設けられ、その外周部に前記ガイド部材609が配置されている。
【0039】
各々の詳細な構成を説明すると、図2に示すように搬送機構600のコロ601は駆動軸602の駆動力をタイミングベルト603によって伝達される構成となっており、コロ601と駆動軸602はアーム604によって連結支持され、駆動軸602を揺動支点として揺動できる構成となっている。搬送機構600のコロ601の揺動(位置移動)はカム605によって行われる。カム605は回転軸606を中心に回転し、駆動はモータM1より伝達される。搬送機構600を回転移動させるカム605のホームポジション位置はセンサS1で検知される。また、ガイド部材609のホームポジション位置はセンサS2によって検知される。ホームポジションからの回転角度は図2においてセンサを増設して制御しても良いし、モータM1のパルス制御で調整しても良い。搬送機構600のコロ601の対向する位置には従動ローラ607が配置され、従動ローラ607とコロ601とによって用紙束Pを挟み、例えば引っ張りバネによって構成される弾性材608によって加圧し、搬送力が付与されている。
【0040】
端面綴じ処理トレイFから折り処理トレイGへ用紙束Pを搬送する搬送路は、放出ローラ56とガイド部材609間に形成される経路によって構成される。後述するが、用紙束Pを折り処理トレイGに搬送する場合には図5に示すようにガイド部材を図中反時計方向に回動させて用紙束先端をガイド部材609の湾曲面の内面と放出ローラ56の間に形成される搬送経路(ターン搬送路)に導き、シフトトレイ202側に搬送する場合には、図3に示すようにガイド部材609を図示時計方向に回動させてガイド部材609の湾曲面の背面とガイド板611とによって形成される搬送路に用紙束先端を導く。
【0041】
4.2 ガイド部材が複数部材からなる場合
この例は前記1部材で構成されたガイド部材609を2部材構成としたものである。用紙束偏向機構は、図8ないし図14の端面綴じ処理トレイFと折り処理トレイG部分の拡大図に示すように、用紙束に搬送力を与える搬送機構600、用紙束をターンさせる放出ローラ56、用紙束のターン部のガイドを行う第1及び第2のガイド部材609a,609bとから構成されている。放出ローラ56は前述のように端面綴じ処理トレイFの上端に設けられ、その外周部に前記第1及び第2のガイド部材609a,609bが配置されている。
【0042】
各々の詳細は2部材にした点を除いて1部材で構成したものと同等である。端面綴じ処理トレイFから折り処理トレイGへ用紙束Pを搬送する搬送路は、放出ローラ56と放出ローラ56の対向する側のガイド部材609は搬送方向上流側の第1のガイド部材609a及び搬送方向下流側の第2のガイド部材609bとで構成され、ガイド部材609a及び609bはそれぞれ同一の支点610を中心に回動し、その駆動はモータM2a及びM2bからそれぞれ伝達される。また、ガイド部材609a及び609bのホームポジションも前記センサS2と同等の位置に設けられた2つの図示しないセンサによって検出される。さらに、端綴じ処理トレイFから積載手段であるシフトトレイ202へ用紙束Pを搬送する搬送路は、第1のガイド部材609aが支点610を中心に図において時計方向に回動した状態で、ガイド部材609aの湾曲面の背面とガイド板611とによって(図9)形成される。
【0043】
5.折り処理トレイ
中綴じ及び中折りは端面綴じ処理トレイFの下流側設けられた折り処理トレイGにおいて行われる。用紙束Pは端面綴じ処理トレイFから前記用紙束偏向機構により折り処理トレイGに導かれる。以下、中綴じ中折り処理トレイの構成について説明する。
【0044】
5.1 折り処理トレイの構成
図1及び図2に示すように搬送機構600、ガイド部材609及び放出ローラ56からなる用紙束偏向機構の下流側に折り処理トレイGが設けられている。折り処理トレイGは、前記用紙束偏向機構の下流側にほぼ垂直に設けられており、中央部に中折り機構が、その上方に束搬送ガイド板上92が、また、下方に束搬送ガイド板下91が配置されている。また、束搬送ガイド板上92の上部には束搬送ローラ上71が、下部には束搬送ローラ下72がそれぞれ設けられているとともに、両ローラ71,72間を跨ぐように束搬送ガイド板上92の側面に沿って両側に中綴じ上ジョガーフェンス250aが配置されている。同様に束搬送ガイド板下91の側面に沿って両側に中綴じ下ジョガーフェンス250bが設けられ、この中綴じ下ジョガーフェンス250bが設置されている箇所に中綴じスティプラS20が配置されている。中綴じ上ジョガーフェンス250a及び中綴じ下ジョガーフェンス250bは図示しない駆動機構により駆動され、用搬送方向に直交する方向(用紙の幅方向)の整合動作を行う。中綴じスティプラS20は、クリンチャ部とドライバ部とが対となったもので、用紙の幅方向に所定の間隔をおいて2対設けられている。なお、ここでは、2対固定した状態で設けているが、1対のクリンチャ部とドライバ部とを用紙の幅方向に移動させて2箇所綴じを行うように構成することもできる。
【0045】
また、束搬送ガイド板下91を横切るように可動後端フェンス73が配置され、タイミングベルトとその駆動機構とを備えた移動機構により用紙搬送方向(図において上下方向)に移動可能となっている。駆動機構は図1に示すように前記タイミングベルトが掛け渡された駆動プーリと従動プーリと、駆動プーリを駆動するステッピングモータとにより構成されている。同様に束搬送ガイド板上92の上端側には、後端叩き爪251と、その駆動機構が設けられている。後端叩き爪251はタイミングベルト252と図示しない駆動機構とによって前記用紙束偏向機構から離れる方向と用紙束の後端(用紙束導入時に後端に当たる側)を押す方向とに往復移動可能となっている。なお、図1において、符号326は後端叩き爪251のホームポジションを検出するためのホームポジションセンサである。
【0046】
中折り機構は、折り処理トレイGのほぼ中央部に設けられ、折りプレート74と折りローラ81と、折られた用紙束を搬送する搬送路Hとからなっている。
【0047】
5.2 折りプレート及びその作動機構
折りプレート74は図示しない前後側板に立てられた各2本の軸に長孔部を遊嵌することにより支持され、さらに、折りプレート74から立設された軸部がリンクアームの長孔部に遊嵌され、リンクアームが支点を中心に揺動することにより、折りプレートは図1中を左右に往復移動する。すなわち、リンクアームの長孔部に折りプレート駆動カムの軸部は遊嵌されており、折りプレート駆動カムの回転運動によりリンクアームは揺動し、これに応じて、図1において、折りプレート74は束搬送ガイド板下上91,92に対して垂直な方向に往復動する。
【0048】
なお、この実施形態では、中折りについては用紙束を綴じることを前提にしているが、この発明は1枚の用紙を折る場合でも適用できる。この場合は、1枚だけで中綴じが不要なので、1枚排紙された時点で折り処理トレイG側に送り込み、折りプレート74と折りローラ81とによって折り処理を実行して排紙ローラ83から下トレイ203に排紙するようにする。符号323は中折りされた用紙を検出するための折り部通過センサである。
【0049】
また、この実施形態では、下トレイ203に中折りされた用紙束の積層高さを検出する検出レバー501が支点501aによって揺動自在に設けられ、この検出レバー501の角度を紙面センサ505によって検出し、下トレイ203の昇降動作及びオーバーフロー検出を行っている。
【0050】
6.制御装置
図15は本実施形態に係るシステムの制御装置の概略構成を示すブロック図である。制御装置350は、同図に示すように、CPU360、I/Oインターフェース370等を有するマイクロコンピュータからなり、画像形成装置PR本体のコントロールパネルの各スイッチ等、及び入口センサ301、上排紙センサ302、シフト排紙センサ303、プレスタックセンサ304、スティプル排紙センサ305、紙有無センサ310、放出ベルトホームポジションセンサ311、スティプル移動ホームポジションセンサ、スティプラ斜めホームポジションセンサ、ジョガーフェンスホームポジションセンサ、束到達センサ321、可動後端フェンスホームポジションセンサ322、折り部通過センサ323、下排紙センサ、紙面検知センサ330,505、S1,S2の各センサからの信号がI/Oインターフェース370を介してCPU360へ入力される。
【0051】
CPU360は、入力された信号に基づいて、シフトトレイ202用のトレイ昇降モータ、開閉ガイド板を開閉する排紙ガイド板開閉モータ、シフトトレイ202を移動するシフトモータ、叩きコロ12を駆動する叩きコロモータ、叩きSOL等の各ソレノイド、各搬送ローラを駆動する搬送モータ、各排紙ローラを駆動する排紙モータ、放出ベルト52を駆動する放出モータ、端面綴じスティプラS10を移動させるスティプラ移動モータ、端面綴じスティプラS10を斜めに回転させる斜めモータ、ジョガーフェンス53を移動させるジョガーモータ、搬送機構600を駆動するモータM1、ガイド部材609を揺動駆動するモータM2、可動後端フェンス73を移動させる図示しない後端フェンス移動モータ、折りプレート74を移動させる折りプレート駆動モータ、折りローラ81を駆動する図示しない折りローラ駆動モータ等の駆動を制御する。
【0052】
スティプル排紙ローラを駆動する図示しないスティプル搬送モータのパルス信号はCPU360に入力されてカウントされ、このカウントに応じて叩きSOL及びジョガーモータが制御される。また、パンチユニット100もクラッチやモータを制御することによりCPU360の指示によって穴明けを実行する。なお、用紙後処理装置PDの制御は前記CPU360が図示しないROMに書き込まれたプログラムを、図示しないRAMをワークエリアとして使用しながら実行することにより行われる。
【0053】
7.動作
7.1 搬送動作(ガイド部材が1部材の場合)
図2は折り処理を行う場合の動作を示す図で、折り処理トレイGでは中折り動作が行われ、端綴じ処理トレイFでは、用紙束Pが積載されて搬送される前の状態を示している。端面綴じ処理トレイFから折り処理トレイGへ用紙束Pを送る場合、端面綴じ処理トレイFで後端フェンス11及びジョガーフェンス53によって整合された用紙束Pの後端を放出爪52aで押し上げ、端面綴じ処理トレイFの上部に位置するコロ601と、このコロ601に対向する従動ローラ607とによって用紙束Pを挟み、搬送力を与える。このとき用紙束先端側に位置するコロ601は、用紙束Pの先端にぶつからないような位置で待機している。次に用紙束P先端が通過してから用紙表面に搬送機構600のコロ601を接触させ、用紙束に搬送力を与える。このときガイド部材609の湾曲部内面と放出ローラ56の外周面とによってターン部のガイドを形成し、このガイドに沿って用紙束を下流の折り処理トレイGへと搬送する。
【0054】
端面綴じ処理トレイFからシフトトレイ202へ紙束を送る場合には、図3に示すようにガイド部材609を図示時計方向に回動させ、ガイド部材609の湾曲面の背面(外周面)とガイド板611とによってシフトトレイ202へつながる搬送路を形成する。そして端面綴じ処理トレイFで整合された紙束の後端を放出爪52aで押し上げ、シフトトレイ202へと搬送する(図2及び図6参照)。なお、放出ローラ56はモータによって駆動される駆動ローラでも駆動しないで紙束の搬送に追従する従動ローラとしても、用紙束を偏向させて折り処理トレイG側及び用紙束のシフトトレイ202側への搬送を行うことができる。
【0055】
図5は用紙束偏向部の要部を示す図である。端面綴じ処理トレイFから折り処理トレイGへ紙束を送る場合、図2に示すように端面綴じ処理トレイFで後端フェンス11及びジョガーフェンス53によって整合された用紙束の後端を放出爪52aで押し上げ、予め開放されている端面綴じ処理トレイFの上部に位置するコロ601と、このコロ601に対向する従動ローラ607とのニップ間に用紙束先端を進入させる。次いで、コロ601を動作させてコロ601と従動ローラ607のニップによって用紙束を挟み、搬送力を与える。このとき用紙束先端側に位置するコロ601は、用紙束Pの先端にぶつからないような位置で待機している。しかし、用紙束先端がばらけた場合には、図2の位置では用紙束Pを確実にターン搬送路に導くことができず、ガイド部材609先端部で用紙ジャムを生じる場合がある。そこで、本実施形態では、図5に示すように用紙束先端がガイド部材609の湾曲部内面と放出ローラ56との間の搬送路に確実に導かれるだけのガイド部材609の開口面積を確保するようにした。この図5に示す例では、コロ601と従動ローラ607のニップから用紙束が突出したときに、確実にガイド部材609の湾曲部内面に当接し、ターン搬送路に沿って偏向する角度までガイド部材609を回動させるようにしている。これにより、ターン搬送路入口部おけるジャムの発生を防止することができる。
【0056】
用紙束Pが図5の状態から更にターン搬送路内に進入し、用紙束Pの先端部がターンの頂点近傍に到達したら、図6に示すようにガイド部材609を図示時計方向に回動させ、ガイド部材609の湾曲部内面と放出ローラ56の外周面との間隔が広くなるようにする。これにより用紙束Pの先端部が前記湾曲面に沿ってターンし、搬送されるときの曲率が小さくなる。これにより用紙束搬送時の搬送抵抗が小さくなり、ターン搬送路における用紙束Pの搬送性の向上を図ることができる。
【0057】
用紙束Pが前記図6の位置から更に搬送され、用紙束先端が束搬送ガイド板上92に進入する図7に示す位置に達するまでの間に、ガイド部材609を反時計方向に回動させ、図7に示すように用紙束先端が束ガイド板上92内に確実に進入するようにする。これによりガイド部材609によって用紙束Pを確実に下流側の束搬送ローラ上71に受け渡すことができる。
【0058】
7.2 搬送動作(ガイド部材が2部材の場合)
ガイド部材609を2部材で構成する場合には、前述のように共通の支点610に関して独立して揺動可能な第1及び第2のガイド部材609a,609bによって揺動動作を行う。基本的動作は前述のガイド部材609が1部材で構成されるときの同様であるが、端綴じ処理トレイFでの用紙整合後、用紙束を中綴じ・折り処理トレイGへ搬送する時は、第1のガイド部材609aを反時計方向に回動させて放出ローラ56との間に搬送路を形成し、用紙束Pを折り処理トレイG側に湾曲させてガイドする。また、端綴じ処理トレイFでの用紙整合後、用紙束をシフトトレイ202上へ搬送する場合には第1のガイド部材609aを時計方向に回動させて搬送経路をシフトトレイ202への搬送路に切り換える(図3及び図8参照)。
【0059】
端綴じ処理トレイFで整合された用紙束Pは、放出爪52aによって用紙後端を支持した状態で下流側へ押し出される。このため用紙束Pを確実に下流の処理部へ搬送させるためには用紙束先端が下流の搬送手段、この実施形態では束搬送ローラ上71に到達するまで、もしくは用紙束後端を放出手段52で支持していなくとも用紙束の自重で戻ってこないような位置まで放出爪52aで支持しながら押し出さなければならない。そこで図4の端綴じ処理トレイFの要部斜視図に示すように放出爪52aとガイド部材609(図4では、第1のガイド部材609a)との干渉を防止するため、第1のガイド部材609aのガイド面に、放出爪52aの通過を許容する切り欠き609cを設けている。
【0060】
一方、ガイド部材609が回動することによって搬送路を切り替える場合、ガイド部材609の回動軌跡に他構成部品を配置することができない。そこで図8に示すようにガイド部材609を複数の部材、ここでは、第1及び第2のガイド部材609a,609bに分けて構成し、少なくとも用紙搬送方向上流側に位置する第1の部材609aを駆動モータM2aで駆動し、搬送路を切り替えるのに必要な部分(支点610より上流側のガイド部材609a)を動くようにした。この場合、下流側の他の部分609bは位置が変化しないように構成すれば駆動モータM2は1個で済み、コストの上昇も最小限に抑えることができる。
【0061】
このように構成すると、第1のガイド部材609aを回動させたときの動作範囲を最小限に抑えることができ、搬送装置全体のスペースをコンパクトに構成することができる。なお、この実施形態では、前記第2のガイド部材609bもモータM2bによって支点610を回動中心として回動可能に構成し、後述のように第2のガイド部材609bについても特有の機能を持たせている。
【0062】
一方、搬送する用紙束の枚数や、用紙に生じるカール等によって、用紙束P先端の高さは変化し、一般に用紙枚数が多いほど先端高さは高くなる傾向にある。そこで図10に示すようにガイド部材609aを図8の位置からさらに回動させ、用紙束先端がガイド部材609aに進入し易い受け入れ位置にしておけば、用紙束先端は容易にガイド部材609aと放出ローラ56との間の搬送経路に侵入することができる。
【0063】
用紙束Pがガイド部材609によってターン搬送される場合、図11に示すように第1のガイド部材609aは図10の位置から若干時計方向に回動したて搬送位置に回動し、第2のガイド部材609bはターンの曲率が小さくなるような位置に回動させておく。これにより用紙束Pが湾曲しながら搬送される際の搬送抵抗を低減させることができる。さらに搬送抵抗を減らしたい場合は、第1のガイド部材609aも反時計方向に回動させて第1及び第2のガイド部材609a,609bとで構成されるターン搬送路の湾曲したガイド形状の曲率を全体的に小さくしても良い。
【0064】
また、用紙束先端が第1及び第2のガイド部材609a,609bの湾曲部内面(ガイド面)に沿ってターン搬送された後、下流側の折り処理トレイGへ用紙を搬送する際のガイドとなる束ガイド板上92に用紙先端が進入するまでの間に、第2のガイド部材609bを回動させ、下流へ用紙束先端が受け渡せることができる位置にしておけば、確実に用紙束Pを下流の折り処理トレイGへ搬送することができる。
【0065】
ターン搬送部から下流に受け渡すとき、第2のガイド部材609bの受け渡し部のガイド間隔は図8に示すデフォルトの位置よりも狭くなっており、このまま用紙束Pの搬送を行うと搬送抵抗となる場合がある。そこで、用紙束先端の受け渡しを完了したら、第2のガイド部材609bを再び図8のデフォルトの位置に戻して用紙束Pを搬送する。これにより、その後の用紙束Pの搬送抵抗を減少させることができる。なお、図8のデフォルトの位置は、用紙束Pをターン搬送部に受け入れて、搬送するときの位置である。
【0066】
搬送する用紙束の枚数によって用紙束先端の高さが変化する。特に用紙束先端にカールが生じている時は用紙束枚数が増えるほどに用紙束先端の高さも増加するため、用紙束枚数が多くなるほどガイド部材609aの回動角度を大きくすれば、用紙束進入時の用紙束受け入れを容易にでき、かつ用紙束先端が第1及び第2のガイド部材609a,609bを通過する際はターン搬送部の曲率が小さくなるよう第2のガイド部材609bの回動角度を大きくすれば、用紙束Pの搬送抵抗を減少させることができる。また用紙束先端が第2のガイド部材609bから下流へ搬送される際には第2のガイド部材609bの回動角度を大きくして、図13に示すように下流側に位置する第2のガイド部材609bとの段差距離Lを大きくすれば、カールが大きい用紙束でも確実に受け渡すことができる。
【0067】
また、カールが生じているときには前述のように用紙束全体のカール量も増加する傾向にある。そのため用紙束Pに厚紙が混入しているときは、用紙束Pに発生するカール量が大きいと判断し、第1のガイド部材609aの回動角度を大きくすれば用紙束進入時の用紙束受け入れを容易にでき、かつ用紙束先端が第1及び第2のガイド部材609a,609bを通過する際はターン搬送部の曲率が小さくなるよう第2のガイド部材609bの回動角度を大きくすれば、用紙束Pの搬送抵抗を減少させることができる。また用紙束先端がガイド部材609bから下流へ搬送される際にはガイド部材609bの回動角度を大きくして、下流のガイド部材との段差距離を大きくすれば、カールが大きい用紙束でも確実に受け渡すことができる。
【0068】
また、搬送する用紙束の用紙束毎において、画像が占める割合が多いほどの一般的に用紙束に発生するカールが大きくなる傾向がある。そのため用紙束に対する画像面積が基準値よりも多い時は、用紙束に発生するカール量が大きいと判断し、第1のガイド部材609aの回動角度を大きくする。これにより用紙束進入時の用紙束受け入れを容易にでき、かつ用紙束先端が第1及び第2のガイド部材609a,609bを通過する際はターン搬送路の曲率が小さくなるように第2のガイド部材609bの回動角度を大きくする。これにより用紙束Pの搬送抵抗を減少させることができる。また、用紙束先端が第2のガイド部材609bから下流へ搬送される際にはガイド部材609bの回動角度を大きくして前述のように前記第2のガイド部材609bとの段差距離Lを大きくすれば(図13)、カールが大きい用紙束でも確実に受け渡すことができる。
【0069】
このようにジャム対策を施したとしても、ジャム発生時のジャム対応策は講じておく必要がある。そのため、本実施形態では、用紙ジャムが発生した際にはユーザが手動で第1のガイド部材609a又は第2のガイド部材609bを動かし、用紙束Pを搬送路から取り除くことができるようにしている。このため、第1及び第2のガイド部材609a,609bのそれぞれに取っ手Ta,Tbを装着し、あるいは、図14示すように取っ手Ta,Tbによって第1または第2のガイド部材609a,609bの駆動系を動かせるような構成にして、ユーザが前記駆動系を操作し、第1または第2のガイド部材609a,609bを操作し、ジャムした用紙をターン搬送部から簡単に取り除くことができるようにする。
【0070】
7.3 全体的な制御(2部材のガイド部材使時)
図16A及び図16Bは本実施形態における用紙束後処理装置PDの全体的な制御手順を示すフローチャートで、図16A及び図16Bで1つのまとまった制御手順を示す。
【0071】
図16Aにおいて、ジョブが開始されると、まず中綴じ処理を行うか否かをチェックする(ステップS101)。中綴じ処理を行う場合には、モータM1、カム605をホームポジションから所定量回動させてコロ601を待機位置に移動させ(ステップS102)、モータM2a,M2b、第1及び第2のガイド部材609a,609bをそれぞれホームポジションから所定量回動させてターン搬送路を形成する(ステップS103)。次いで、モータM2aを駆動してガイド部材609aを受け入れ位置(第1の位置)に回動させる(ステップS104−図10)。用紙束が端綴じ処理トレイFに進入し、後端フェンス51を使用した用紙束Pの搬送方向の整合、及びジョガーフェンス53を使用した用紙搬送方向と直交する方向の整合を、搬入されてくる用紙1枚毎に繰り返し、部の最終用紙の搬入と、その用紙の揃え動作の終了を待つ(ステップS105)。
【0072】
揃え動作が終了すると(ステップS105−YES)、放出爪52aによる用紙束の放出動作を開始し(ステップS106−図10)、用紙束Pの先端がコロ601のニップ位置を通過し、用紙束先端が第1のガイド部材609aと放出ローラ56の入口部に達すると(ステップS107−図10)、モータM1、カム605の所定量の回動を開始し、用紙束Pの搬送位置まで移動させ、用紙束Pをコロ601とコロ607間で挟持する(ステップS108)。この状態でコロ601をモータM3で駆動し、用紙束Pを搬送する(ステップS109)。
【0073】
そして、用紙束Pを所定距離移動させ、用紙束先端が第1のガイド部材609aと放出ローラ56の所定位置まで達して両者間への用紙束Pの受け入れが終了すると(ステップS110)、モータM2a,M2b、第1及び第2のガイド部材609a,609bそれぞれを搬送位置に回動させて(ステップS111−図11)搬送を継続する。
【0074】
次いで、用紙束Pの先端部がターン搬送路の搬送を終了する位置に達すると(ステップS112)、モータM2bを駆動して第2のガイド部材609を束搬送ガイド板上92への受け渡し位置に回動させる(ステップS113−図12)。そのまま搬送を継続し、確実に用紙束先端の束搬送ガイド板上92への受け渡し(束搬送ローラ上71への受け渡し)が完了した距離として設定した距離の搬送が終了すると(ステップS114)、モータM2bを駆動して第2のガイド板609bを搬送位置(図10の位置)に戻す(ステップS115)。さらに所定距離搬送した時点で(ステップS116)、モータM1によってカム605を駆動してコロ601を用紙束Pから離間した待機位置に移動させる(ステップS117)と処理をステップS101から繰り返す。この繰り返しがジョブで設定された部数分実行され、ジョブが終了すると(ステップS118)、モータM1を駆動してカム605を回動させてコロ601をホームポジションに移動させ(ステップS119)、さらにモータM2a,M2bを駆動して第1及び第2のガイド部材609a,609bをホームポジションに移動させ(ステップS120−図8)、処理を終える。
【0075】
一方、ステップS101で中綴じでなければ、端綴じ処理であるか否かを確認し(ステップS121)、端綴じ処理でなければ、このフローチャートから抜け、端綴じ処理であれば、モータM1、カム605をホームポジションから所定量回動させてコロ601を待機位置へ移動させ(ステップS122)、モータM2a,M2bを駆動して、第1及び第2のガイド部材609a,609bをホームポジションから所定量回動させてシフトトレイへの搬送路を形成する(ステップS123)。用紙束Pが端綴じ処理トレイFに進入し、縦横両方向の揃え動作が実行され、端綴じ処理トレイFでの処理が終了すると(ステップS124)、放出爪52aによる用紙束の放出動作を開始する(ステップS125−図9)。所定距離搬送し、排紙が終了し(ステップS126)、ジョブが終了するまでステップS122以降の処理を繰り返し、ジョブが終了すると(ステップS127)、モータM1、カム605を回動し、コロ601を待機位置に移動させ(ステップS119)、さらに、さらにモータM2a,M2bを駆動して第1及び第2のガイド部材609a,609bをホームポジションに移動させ(ステップS120)、処理を終える。
【0076】
なお、上記説明の中で搬送手段を代表的なコロとして説明しているが、これをベルトとしても同様の効果を得ることができる。
【0077】
以上のように本実施形態によれば、次に述べるような効果を奏する。
【0078】
1)一つのガイド部材によって複数の紙処理部での処理や、処理を終了した用紙束を積載手段へ搬送が行えるため、ガイドの構成が簡略化できる。
【0079】
2)紙処理部から用紙束を押し出す放出爪によって下流の紙処理部及び積載手段に確実に用紙束を送り出すことができる。
【0080】
ガイド部材の動作範囲を最小限にできるので機械幅が小さくでき、省スペース化に大きく貢献できる。
【0081】
3)用紙束の枚数、紙種、画像モードなどかかわらず、本構成において最小の搬送負荷によって用紙束を下流の紙処理部及び積載手段へと搬送することができるため、用紙束の搬送が確実に行える。
【0082】
4)ガイド部材の近傍もしくはガイド部材内にて用紙束が紙詰まりを起こしても、ユーザが速やかに紙を取り除く処理を行うことができる。
【0083】
5)搬送する用紙束の枚数や、用紙束に生じるカール等によって、用紙束先端の高さは変化し、一般に用紙束枚数が多いほど先端高さは高くなる傾向にある。そこで図5または図10に示すようにガイド部材609あるいは第1のガイド部材609aを回動させ、用紙束先端がガイド部材609,609aに進入し易い受け入れ位置にしておけば用紙束先端が容易にガイド部材609,609aに侵入することができる。
【0084】
6)用紙束がガイド部材609a,609bによってターン搬送される場合、図11に示すように第1のガイド部材609aは搬送位置に回動させ、第2のガイド部材609bはターンの曲率が小さくなるような位置に回動させておく。これにより用紙束が湾曲しながら搬送される際の搬送抵抗を低減させることができる。またさらに搬送抵抗を減らしたい場合は、第1のガイド部材609aも搬送路が広くなる方向に回動させ、第1及び第2のガイド部材609a,609bとで構成される湾曲したガイド形状の曲率を全体で小さくしても良い。
【0085】
7)図6に示すようにガイド部材609が一体で成型されている場合においても、用紙束先端がターンの頂点近傍に到達したら、ガイド部材609を回動させて、ガイド部材609内側の同心円状の放出ローラ56とのガイド間隔が広くなるように位置させれば、ターンの後半で用紙束先端が沿いながら搬送される時の曲率が小さくなるため、搬送抵抗を減らすことができる。
【0086】
8)用紙束先端が第1及び第2のガイド部材609a及び609bのガイド面に沿ってターン搬送された後、下流側の処理部へ用紙束を搬送する際のガイドとなるガイド板92に用紙束先端が進入するまでの間に、第2のガイド部材609bを回動させ、下流へ用紙束先端が受け渡せることができる位置にしておけば、確実に用紙束を下流の処理部へ搬送することができる。
【0087】
9)図7に示すようにガイド部材が一体で成型されている場合においても、下流のガイド板92に用紙束先端が進入するまでの間に、ガイド部材609を回動させ、下流へ用紙束先端が受け渡せることができる位置にしておけば、確実に用紙束を下流の処理部へ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施形態に係る用紙処理装置としての用紙束後処理装置と画像形成装置とからなる画像形成システムのシステム構成を示す図である。
【図2】端面綴じ処理トレイと折り処理トレイ部分の要部拡大図である。
【図3】図2における搬送機構のコロと放出コロと用紙束との関係を示す図である。
【図4】図3における搬送機構のガイド部材と綴じ処理トレイの斜視図である。
【図5】用紙束を中綴じ処理トレイ側に搬送するときのターン搬送部進入時のターン搬送部の状態を示す図である。
【図6】用紙束を中綴じ処理トレイ側に搬送するときのターン搬送部における搬送状態を示す図である。
【図7】用紙束を中綴じ処理トレイ側に搬送するときのターン搬送部から中綴じトレイ側に排出されるときの搬送状態を示す図である。
【図8】第1及び第2のガイド部材を使用したときの初期位置を示す図である。
【図9】図8の状態からシフトトレイ側に用紙束を搬送するときの状態を示す図である。
【図10】図8の状態から中綴じトレイ側に用紙束を搬送するときの状態を示す図である。
【図11】図10の状態から搬送が進行したときの状態を示す図である。
【図12】図11の状態から搬送が信号し、用紙束の先端部が中綴じトレイの入口に達したときの状態を示す図である。
【図13】第1及び第2のガイド部材を操作する取っ手を示す図である。
【図14】第1及び第2のガイド部材を操作する取っ手の他の例を示す図である。
【図15】本実施形態に係るシステムの制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図16A】本実施形態における用紙束後処理装置の全体的な制御手順のうちの一部を示すフローチャートである。
【図16B】本実施形態における用紙束後処理装置の全体的な制御手順のうちの他部を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0089】
52a 放出爪
53 後端フェンス
56 放出ローラ
360 CPU
600 搬送機構
601 コロ
602 駆動軸
603 タイミングベルト
604 アーム
605 カム
606 回転軸
609,609a,609b ガイド部材
610 支点
Ta,Tb 取っ手
M1,M2 モータ
S1,S2 センサ
PR 画像形成装置
PD 用紙束後処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙又は用紙束をガイド部材によってガイドし、搬送する用紙搬送装置において、
用紙又は用紙束を搬送する搬送ローラと、
前記搬送ローラの外周に沿って配置された第1及び第2のガイド部材と、
前記第1及び第2のガイド部材を軸回りに揺動自在に支持する共通の支軸と、
を備えていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2のガイド部材は一体に形成されていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の用紙搬送装置において、
前記第1のガイド部材が前記搬送ローラとの間の経路を閉鎖する第1の位置にあるとき第1の搬送路に導き、前記経路を開放する第2の位置にあるとき第2の搬送路に導くことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項4】
請求項3記載の用紙搬送装置において、
前記第1のガイド部材が前記用紙又は用紙束が前記第2の搬送路側に案内されているとき前記第1の位置と前記第2の位置の中間の第3の位置にあり、
前記第2のガイド部材は前記用紙又は用紙束を前記第2の搬送路に案内するため当該第2の搬送路側に開放された第1の位置に位置していることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項5】
請求項3又は4記載の用紙搬送装置において、
前記用紙又は用紙束先端が前記第2のガイド部材から前記第2の搬送路に受け渡されるとき、前記第2のガイド部材は前記第1の位置よりも前記搬送ローラ側に近接し、搬送路を狭めた第2の位置に位置していることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項6】
請求項5記載の用紙搬送装置において、
前記用紙又は用紙束先端が前記第2のガイド部材から前記第2の搬送路に受け渡された後、前記第2のガイド部材は前記第1の位置に位置することを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2のガイド部材は用紙束搬送部材の軌跡を妨げないようにガイド面の一部に切り欠きが設けられていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項8】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置は用紙の枚数に応じて変更されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項9】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置は用紙束内の紙種に応じて変更されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項10】
請求項3ないし6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置において、
前記第1及び第2のガイド部材のガイド位置は用紙束の画像状態に応じて変更されることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項11】
請求項1記載の用紙搬送装置において、
ジャム処理の際にユーザが手動で前記第1及び第2のガイド部材を操作するための操作手段を備えていることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備えていることを特徴とする用紙処理装置。
【請求項13】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載の用紙搬送装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項12記載の用紙処理装置を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2008−214035(P2008−214035A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54308(P2007−54308)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】