説明

用紙搬送装置及び画像読取装置

【課題】従来装置に比べて殆ど構成を複雑化することなく、搬送不能なサイズの用紙が誤って搬送されるのを抑制可能な用紙搬送装置と、それを備えた画像読取装置の提供。
【解決手段】フロントセンサ310が用紙を検知する主走査方向の位置に対して、リアBセンサ320が用紙を検知する主走査方向の位置は、主走査方向に102.35mmの間隔を開けて配置されている。そして、この間隔は、小さ過ぎて排紙トレイまでの搬送が不可能な名刺Mの主走査方向の長さ(90mm)よりも広く、搬送が可能なA5サイズの用紙の主走査方向の長さ(148mm)よりも短い。そこで、フロントセンサ310とリアBセンサ320との双方で用紙が検知できなかった場合は用紙の搬送を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給紙トレイに載置された用紙を搬送する用紙搬送装置、及び、その用紙搬送装置を備えて当該用紙搬送装置に搬送される用紙の画像を読み取る画像読取装置に関し、詳しくは、搬送が不可能なサイズの用紙が誤って搬送されるのを抑制可能な用紙搬送装置及び画像読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像読取装置,画像形成装置等の各種機器では、給紙トレイに載置された用紙を搬送する用紙搬送装置を設け、その用紙搬送装置によって搬送される用紙に対して画像読取,画像形成等がなされている。
【0003】
この種の用紙搬送装置では、給紙トレイに用紙が載置されたことを検知する載置センサが設けられている。載置センサが用紙を検知すると、用紙は複数のローラによって搬送経路上に搬送される。この種の用紙搬送装置では、用紙の搬送方向の長さがローラ同士の搬送経路に沿った最長間隔よりも短い用紙サイズの用紙は、搬送不能となる。
【0004】
また、この種の用紙搬送装置では、搬送が不可能な用紙サイズの用紙が搬送されるのを抑制するために、用紙のサイズを検知する用紙サイズ検知センサが別途、設けられている。例えば、用紙の自重によって折り畳まれる整合部材を主走査方向に多数並べて配設し、どの整合部材が折り畳まれているかに基づいて用紙のサイズを検出する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−238017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前記特許文献1のように別途、用紙サイズ検知センサを設けると、装置の製造コストがかかる。しかし、用紙サイズ検知センサを設けないと、載置センサが用紙を検知すると、用紙搬送装置が搬送不能としている用紙サイズの用紙も搬送されることになり、紙が詰まるという問題が生じた。
【0007】
そこで、本発明は、用紙サイズ検知センサを設けることなく搬送が不可能な用紙サイズの用紙が誤って搬送されるのを抑制可能な用紙搬送装置、及び、その用紙搬送装置を備えた画像読取装置を提供することを目的としてなされた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達するためになされた本発明の用紙搬送装置は、搬送経路に沿った複数箇所に配置されたローラを有し、給紙トレイに載置された用紙を前記搬送経路に沿って搬送する搬送部と、前記搬送部が搬送する用紙を検知する第1センサと、前記第1センサより下流側に配置され、前記搬送部が搬送する用紙を検知する第2センサと、を備え、前記搬送部は、前記用紙の搬送方向の長さが前記ローラ同士の前記搬送経路に沿った最長間隔より長い用紙を、搬送することが可能であって、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が不可能な定形の用紙サイズの前記主走査方向の幅よりも長くなるように、前記第1センサと前記第2センサとがそれぞれ配置され、更に、前記第1センサが用紙を検知した後、その用紙が前記搬送部によって搬送されて前記第2センサに検知される位置に達するのに要する時間よりも長く設定された第1所定時間が経過しても前記第2センサが用紙を検知しない場合、前記搬送部による用紙の搬送を停止する制御部を、備えたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明の用紙搬送装置では、搬送部は、搬送経路に沿った複数箇所に配置されたローラを有し、給紙トレイに載置された用紙を前記搬送経路に沿って搬送する。第1センサは、前記搬送部が搬送する用紙を検知し、第2センサは、前記第1センサより下流で前記搬送部が搬送する用紙を検知する。
【0010】
ここで、搬送部は前記搬送経路に沿った複数箇所に配置されたローラを介して用紙を搬送するので、前記ローラ同士の前記搬送経路に沿った最長間隔よりも前記搬送方向の長さが短い用紙は、前記搬送部による搬送が不可能な用紙となる。そこで、本発明では、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が不可能な定形の用紙サイズの前記主走査方向の幅よりも長くなるように、前記第1センサと前記第2センサとを配置している。このため、前記搬送が不可能な定形の用紙サイズの用紙は、前記搬送部による搬送中に前記第1センサと前記第2センサとの両方に検知されることはない。
【0011】
そこで、制御部は、用紙の搬送時に、前記第1センサが用紙を検知した後、第1所定時間が経過しても前記第2センサが用紙を検知しない場合、前記搬送部による用紙の搬送を停止する。なお、第1所定時間とは、前記第1センサが用紙を検知した後、その用紙が前記搬送部によって搬送されて前記第2センサに検知される位置に達するのに要する時間よりも長く設定された時間である。このため、本発明では、搬送が不可能な用紙サイズの用紙が誤って搬送されるのを抑制することができる。
【0012】
しかも、前記第1センサと前記第2センサとは前記搬送経路上の上下流に変位した箇所で用紙を検知するが、このように複数箇所にセンサを設けることは従来装置で一般的になされている。すなわち、本発明では、従来装置における第1センサ,第2センサの主走査方向の位置を工夫したことによって特別な構成を追加することなく前記搬送が不可能なサイズの用紙の搬送を抑制できるので、用紙サイズ検知センサを設けることなく搬送が不可能なサイズの用紙が誤って搬送されるのを抑制できる。
【0013】
なお、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が可能な定形の用紙サイズの主走査方向の幅よりも短くなるように、前記第1センサと前記第2センサとがそれぞれ配置されていてもよい。このように、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が可能な定形の用紙サイズの主走査方向の幅よりも短く構成されていると、搬送可能な定形の用紙サイズの用紙を第1センサと前記第2センサとの両方によって検知することができる。
【0014】
また、前記第2センサより下流側の前記搬送経路上で用紙を検知する第3センサを、更に備え、前記制御部は、前記第2センサが用紙を検知してから、前記第3センサが用紙を検知するまでに前記第2センサが用紙を検知しなくなった場合にも、前記搬送部による用紙の搬送を停止してもよい。
【0015】
この場合、前記搬送が不可能な定形の用紙が斜行するなどして前記第1センサ,第2センサの双方に検知されたとしても、次のように用紙の搬送を停止することができる。すなわち、このように斜行によって前記搬送が不可能な定形の用紙が第1センサ,第2センサの双方に検知されたとしても、第2センサによる検知は一時的なものとなる。その場合、前記第2センサが用紙を検知してから、その第2センサより下流側の前記搬送経路上で用紙を検知する第3センサが用紙を検知するまでに、前記第2センサが用紙を検知しなくなる。そこで、前記制御部は、そのような場合にも前記搬送部による用紙の搬送を停止するのである。従って、この場合、搬送が不可能な用紙サイズの用紙が誤って搬送されるのを一層良好に抑制することができる。
【0016】
また、その場合、前記搬送経路の一部を開閉可能に覆うカバーを、更に備え、前記第1センサは、前記給紙トレイに載置された用紙を検知し、前記第1所定時間は、用紙が前記給紙トレイから搬送されてから前記搬送手段によって前記搬送経路の前記一部を搬送されるまでに要する時間であってもよい。この場合、前記搬送が不可能な定形の用紙サイズの用紙の搬送停止が、その用紙が前記搬送経路の前記一部を搬送されている間になされる。すると、その前記搬送経路の前記一部で搬送を停止された用紙は、その部分を開閉可能に覆うカバーを開くことで容易に除去することができる。従って、この場合、搬送が不可能なサイズの用紙を前記搬送経路から除去することが容易になる。
【0017】
そしてその場合、前記搬送経路の前記一部における前記複数のローラの前記搬送方向に沿った間隔が、前記搬送が不可能な定形の用紙サイズの用紙の搬送方向の長さより短く構成され、前記一部より下流側の前記搬送経路のうち少なくとも2つの前記ローラの前記搬送方向に沿った間隔が、前記最長間隔であってもよい。
【0018】
更にその場合、前記搬送部による搬送が不可能な定形の用紙が、前記不可能な定形の用紙サイズの用紙の前記主走査方向の長さが、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における前記第1センサと前記第2センサとの間隔より短く、前記不可能な定形の用紙サイズの用紙の前記搬送方向の長さが、前記最長間隔より短く、かつ、前記搬送経路の前記一部における前記複数のローラの間隔より長い、名刺サイズの用紙であってもよい。この場合、前記搬送が不可能な名刺サイズの用紙が搬送されることを防止することができる。
【0019】
また、本発明の画像読取装置は、前記いずれかの用紙搬送装置と、前記搬送経路を搬送される用紙の少なくとも一方の面の画像を読み取る画像読取部と、を備えたことを特徴としている。このため、本発明の画像読取装置では、前記搬送経路を搬送される用紙の少なくとも一方の面の画像を、画像読取部を介して読み取ることができる。
【0020】
また、本発明の画像読取装置は、前記カバーを備えた用紙搬送装置と、前記搬送経路の前記第2センサよりも下流側で前記搬送経路を搬送される用紙の一方の面の画像を読み取る第1画像読取部と、前記搬送経路の前記第1画像読取部及び前記第3センサよりも下流側で前記搬送経路を搬送される用紙の他方の面の画像を読み取る第2画像読取部と、を備え、前記第2センサは、用紙が前記第1画像読取部の読取位置に達したことを検知し、前記第3センサは、用紙が前記第2画像読取部の読取位置に達したことを検知することを特徴とするものであってもよい。
【0021】
この場合、前記第2センサは、用紙が前記第1画像読取部による一方の面の読取位置に達したことを検知し、前記第3センサは、用紙が前記第2画像読取部による他方の面の読取位置に達したことを検知する。また、このようなセンサを設けることは、搬送経路を搬送される用紙の一方の面の画像を読み取る第1画像読取部と、前記搬送経路の前記第1画像読取部よりも下流側で前記搬送経路を搬送される用紙の他方の面の画像を読み取る第2画像読取部とを備えた画像読取装置で、一般的になされている。従って、本発明の画像読取装置では、従来装置に比べて殆ど構成が複雑化せず、製造コストの上昇も抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用された複合機の構成を概略的に表す斜視図である。
【図2】その複合機に搭載された画像読取装置の主要部の構成を模式的に表す断面図である。
【図3】その画像読取装置の構成をADFカバーを開放して表す斜視図である。
【図4】その画像読取装置の給紙ローラ近傍主要部の構成を表す平面図である。
【図5】その画像読取装置の制御系の構成を表すブロック図である。
【図6】その制御系で実行される片面読取処理を表すフローチャートである。
【図7】その片面読取処理の原理の一部を表す平面図である。
【図8】上記制御系で実行される両面読取処理を表すフローチャートである。
【図9】その両面読取処理の続きを表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を図面と共に説明する。図1は、本発明が適用された複合機1の構成を概略的に表す斜視図であり、図2は、その複合機1に搭載された画像読取装置10の主要部の構成を模式的に表す断面図である。なお、図1に示すように複合機1は、基体20の上面に原稿カバー30を開閉可能に備えている。
【0024】
[画像読取装置の全体の構成]
図1に示すように、基体20の上端面には、本実施の形態の画像読取装置10がフラットベットスキャナとして使用される場合に原稿としての用紙が載置されるガラス製の透明な原稿台21が設けられている。そして、原稿カバー30は、原稿台21の表面に閉じられることによってその原稿台21に載置された用紙を覆うように、基体20の上端面の一辺(図1における奥側の辺で、以下、その辺の側を後側ともいう)にヒンジ31を介して開閉自在に取り付けられている。
【0025】
また、この原稿カバー30は、図2に示すように、ADF(Automatic Document Feeder )を備える原稿カバーとして構成され、給紙トレイ110に載置された用紙を搬送経路に沿って副走査方向に搬送し、ADFとして機能する搬送部100と、搬送経路を搬送される用紙の裏面(一方の面の一例)の画像読み取りを行うことが可能な第1画像読取部の一例としての第1読取デバイス210とを備えている。なお、上記第1読取デバイス210と並行して用紙の表面(他方の面の一例)の画像読み取りを行うことが可能な第2読取デバイス230(第2画像読取部の一例)は基体20に設けられている。また、画像読取装置10の、上記第1読取デバイス210,第2読取デバイス230(共に画像読取部の一例)を除いた部分が、本発明の用紙搬送装置に相当する。
【0026】
搬送部100は、給紙トレイ110に載置された用紙(原稿)を、搬送経路(図2の点線)に沿って排紙トレイ130まで搬送する各種ローラ121〜129を備えている。給紙トレイ110に載置された用紙を送り出す最上流の給紙ローラ121,122は、ホルダ133によって保持されており、給紙トレイ110に複数枚の用紙が載置された場合は、その複数枚の用紙を連続して1枚ずつ給紙可能に構成されている。給紙ローラ121,122によって給紙された用紙は、搬送ローラ123,124のニップ部、搬送ローラ125,126のニップ部、搬送ローラ126,127のニップ部を順次経由して搬送され、最後に排紙ローラ128,129によって排紙トレイ130に排紙される。
【0027】
また、この搬送経路には、搬送ローラ123,124のニップ部と搬送ローラ125,126のニップ部との間に上流側読取位置が、搬送ローラ126,127のニップ部と排紙ローラ128,129のニップ部との間に下流側読取位置が、それぞれ設定されている。用紙の裏面の画像読み取りを行うための第1読取デバイス210は上流側読取位置に対応して設けられており、更に、その上流側読取位置を通過する用紙を第1読取デバイス210の読取面に押圧する裏面用原稿押え220が設けられている。また、原稿台21に設けられた用紙の表面の画像読み取りのための第2読取デバイス230は、下流側読取位置に対応する位置に移動可能に構成されており、その下流側読取位置を通過する用紙を第2読取デバイス230の読取面に押圧する表面用原稿押え240が設けられている。
【0028】
更に、この搬送経路上には、対応する位置を搬送中の用紙の有無を検知するためのセンサとして、第1センサの一例としてのフロントセンサ310と、第2センサの一例としてのリアBセンサ320と、第3センサの一例としてのリアセンサ330とが設けられている。なお、フロントセンサ310は、給紙トレイ110に載置された用紙を検知するための接触式センサで、リアBセンサ320,リアセンサ330は、それぞれ、用紙が第1読取デバイス210,第2読取デバイス230の読取位置に達したことを検知するための接触式センサである。なお、これらのセンサは、光学式のセンサ等に代えてもよいことは言うまでもない。
【0029】
また、第2読取デバイス230は、モータ351によって回転駆動される駆動プーリ353と図示省略した従動プーリとの間に架設された無端ベルト357に固定されており、モータ351の回転に応じて原稿台21の下方を副走査方向(左右方向)に移動可能である。
【0030】
また、原稿カバー30は、上記搬送経路の一部(給紙トレイ110の左端上方から搬送ローラ126の上方に至るまでの経路)を開閉可能に覆うカバーの一例としてのADFカバー30Aを備えている。図3は、そのADFカバー30Aを開放した状態の原稿カバー30の構成を表す斜視図である。図3に示すように、ADFカバー30Aを開放すると、給紙トレイ110から搬送ローラ126に至る上記搬送経路と第1読取デバイス210とが原稿カバー30の上方に露出する。
【0031】
図4は、その露出部分における給紙ローラ121,122近傍の主要部の位置関係を表す平面図である。図4に示すように、フロントセンサ310は、給紙ローラ121,122(図2参照)を保持したホルダ133の前側から給紙トレイ110上に突出している。このフロントセンサ310の突出位置は、給紙トレイ110の中心線(副走査方向すなわち用紙搬送方向に沿った中心線)から主走査方向前方に44.1mm離れている。また、リアBセンサ320は、搬送ローラ124の下流側後方に突出しており、その突出位置は給紙トレイ110の上記中心線から主走査方向後方に58.25mm離れている。このため、図4に二点鎖線で示すように、名刺Mのような小さ過ぎて搬送部100による搬送が困難な用紙が給紙トレイ110と給紙ローラ121,122との間に挟み込まれた場合、次のように検知することができる。
【0032】
すなわち、各種ローラ121〜129のニップ部の搬送方向の間隔のうち、最も長いのは搬送ローラ126,127のニップ部と排紙ローラ128,129のニップ部との間隔で、136.2mmである。また、表1,2に代表的な定形の用紙としてのA4サイズ,A5サイズ,名刺サイズの、主走査方向,副走査方向の長さを挙げる。表1に示す各用紙のうち、A4サイズ,A5サイズは縦置き横置きの両方とも副走査方向の長さが136.2mmより長いため、搬送部100による搬送が可能であるが、名刺サイズは縦置き横置きの両方とも副走査方向の長さが136.2mmより短いため搬送不可能である。なお、ローラ121〜127の他の隣接するニップ部の間隔は、名刺サイズの短辺60mmより短い。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
前述のように、フロントセンサ310が用紙を検知する主走査方向の位置に対して、リアBセンサ320が用紙を検知する主走査方向の位置は、主走査方向に102.35mmの間隔を開けて配置されている。そして、この間隔は、上記表1,2に示すように、搬送部100による搬送が不可能な用紙(予め想定された定形の用紙)としての名刺サイズの主走査方向の長さよりも広く、搬送部100による搬送が可能な用紙(予め想定された定形の用紙)としてのA4,A5サイズの主走査方向の長さよりも短い。このため、本実施の形態の画像読取装置10では、次のようにして、搬送部100による搬送が可能な用紙であるか否かをその用紙が実際に搬送不能となる前に判断することができる。以下、その処理について説明する。
【0036】
[画像読取装置の制御系の構成]
図5は、画像読取装置10の制御系の構成を表すブロック図である。図5に示すように、この制御系はASIC400(制御部の一例)を中心に構成され、そのASIC400は、第1読取デバイス210(ADF側CIS)に制御信号ADFを、第2読取デバイス230(FB側CIS)に制御信号FBを、それぞれ出力するデバイス制御部410を備えている。第1読取デバイス210,第2読取デバイス230は、これらの制御信号ADF,FBに応じて、アナログ出力端子AOからアナログの読取信号を出力する。
【0037】
ASIC400は、このデバイス制御部410の他、CPU420,ROM430,RAM440,NVRAM450,第1読取デバイス210用のインタフェース(I/F)460,第2読取デバイス230用のインタフェース(I/F)470,画像処理部480を備えている。そして、これらの各部は、バス490を介して互いに接続されている。第1読取デバイス210から出力される読取信号は、ASIC400の外に設けられたAFE510を介してデジタルデータに変換された後、インタフェース460に入力され、画像処理部480によって処理される。同様に、第2読取デバイス230から出力される読取信号は、ASIC400の外に設けられたAFE530を介してデジタルデータに変換された後、インタフェース470に入力され、画像処理部480によって処理される。
【0038】
また、ASIC400のバス490には、前述のモータ351が駆動回路540を介して接続され、搬送部100の各種ローラ121〜129を駆動するモータ550が駆動回路560を介して接続されている。更に、図5では図示省略したが、ASIC400には、複合機1の筐体表面に設けられた操作パネル600(図1参照)や、前述の各種センサ310〜330(図2参照)も接続されている。なお、操作パネル600は、スイッチ等の入力部と表示部とを兼ね備えたものである。
【0039】
[上記制御系における処理(片面読取処理)]
次に、図6は、ASIC400のCPU420が、ROM430に記憶されたプログラムに基づいて実行する片面読取処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、操作パネル600を介してその片面読取が指示されると開始される。
【0040】
図6に示すように、この処理では、先ず、S1(Sはステップを表す:以下同様)にて、操作パネル600のスタートスイッチが押下されたか否かが判断される。スタートスイッチが押下されていない場合は(S1:N)、処理はそのまま待機し、スタートスイッチが押下されると(S1:Y)、処理はS2へ移行する。S2では、フロントセンサ310がONになっているか否かが判断され、ONになっていない場合は(S2:N)、S3にてFB読取処理が実行されて、処理が終了する。なお、このFB読取処理は、駆動回路540を介してモータ351が駆動されることにより、原稿台21に載置された原稿(用紙)の画像が読み取られる周知の処理である。
【0041】
一方、S2にてフロントセンサ310がONになっていると判断された場合は(S2:Y)、処理はS4へ移行し、駆動回路560を介してモータ550が駆動されることにより、給紙トレイ110に載置された用紙の搬送が開始される。続くS5では、S4による搬送開始から第1所定時間が経過したか否かが判断され、経過していない場合は(S5:N)、S6にてリアBセンサ320がONになっているか否かが判断される。ここで、上記第1所定時間は、フロントセンサ310がONになる位置に配置された用紙が、搬送部100によって搬送されてリアBセンサ320をONにするのに要する時間よりも若干長く、かつ、その用紙が搬送ローラ125,126のニップ部を通過してしまわない時間に設定されている。このため、S4にて用紙の搬送が開始された直後は、S5,S6のループ処理が繰り返し実行される。
【0042】
ここで、前述の名刺Mのように、小さ過ぎて搬送部100による搬送が不可能な用紙が搬送された場合は、フロントセンサ310がONになって(S2:Y)、搬送が開始されても(S4)、リアBセンサ320がONになることはない。従って、この場合、リアBセンサ320がONになる前に(S6:N)、上記第1所定時間が経過し(S5:Y)、S7にてジャム処理が実行されて処理が終了する。このジャム処理とは、搬送部100による用紙の搬送が停止されると共に、操作パネル600にジャム(紙詰まり)が発生した旨の表示がなされる処理である。前述のように、第1所定時間は用紙が搬送ローラ125,126のニップ部を通過してしまわない時間に設定されているので、このジャム処理によって搬送が停止された用紙は、ADFカバー30Aを開放することによって容易に取り除くことができる。
【0043】
一方、A4サイズ,A5サイズ等の搬送部100による搬送が可能な用紙が搬送された場合は、第1所定時間が経過する前に(S5:N)、リアBセンサ320がONになり(S6:Y)、処理はS11へ移行する。S11では、リアBセンサ320がOFFになっているか否かが判断され、OFFになっていない場合は(S11:N)、S12にて、リアBセンサ320がONになってから第2所定時間が経過したか否かが判断される。第2所定時間が経過していない場合は(S12:N)、S13にてリアセンサ330がONになっているか否かが判断される。ここで、第2所定時間は、リアBセンサ320がONになる位置に配置された用紙が、搬送部100によって搬送されてリアセンサ330をONにするのに要する時間よりも若干長く設定されている。このため、リアBセンサ320がONになった直後は、S11,S12,S13のループ処理が繰り返し実行される。
【0044】
ここで、前述の名刺Mのように小さ過ぎて搬送部100による搬送が不可能な用紙が、図7に例示するように斜行して搬送された場合は、フロントセンサ310とリアBセンサ320との双方がONになる場合がある(S6:Y)。しかしながら、そのような場合は、リアBセンサ320がONになるのは一時的なものとなる。従って、そのような場合は、リアセンサ330がONになる前に(S13:N)、リアBセンサ320がOFFになり(S11:Y)、処理は前述のS7へ移行する。
【0045】
このため、本処理では、搬送不可能な用紙が斜行して搬送された場合にも、ジャム処理(S7)が実行されてその用紙の搬送が停止される。なお、リアセンサ330が用紙を検知する主走査方向の位置は、フロントセンサ310が用紙を検知する主走査方向の位置とリアBセンサ320が用紙を検知する主走査方向の位置との間であるが、リアセンサ330が用紙を検知する副走査方向の位置は、前述のように、名刺Mが斜行して搬送された場合にリアセンサ330がONになる前に、リアBセンサ320がOFFになる位置に配設されている。また、主走査方向の幅がフロントセンサ310とリアBセンサ320との間隔より広く、副走査方向の幅が搬送ローラ126,127のニップ部と排紙ローラ128,129のニップ部との間隔の136.2mmより短いような用紙が搬送された場合も、S11にて肯定判断されてジャム処理(S7)が実行される。
【0046】
一方、リアBセンサ320がOFFになることもなく(S11:N)、しかも、リアセンサ330がONになることもないうちに(S13:N)、上記第2所定時間が経過した場合は(S12:Y)、リアBセンサ320とリアセンサ330との間で用紙にジャム(紙詰まり)が発生した場合である。そこで、上記S11〜S13のループ処理中にS12にて肯定判断された場合も、処理は前述のS7へ移行する。
【0047】
また、リアBセンサ320がOFFになることもなく(S11:N)、しかも、上記第2所定時間も経過しないうちに(S12:N)、リアセンサ330がONになった場合は(13:Y)、上記搬送可能な用紙の先端がリアセンサ330のところまで搬送された場合である。そこで、その場合(S13:Y)、処理はS14へ移行し、ステッピングモータからなるモータ550が所定ステップ駆動されることによってその用紙(原稿)が第2読取デバイス230による読取開始位置まで搬送される。続くS15では、第2読取デバイス230による読取処理が実行されて、処理が終了する。
【0048】
[上記制御系における処理(両面読取処理)]
次に、図8,図9は、ASIC400のCPU420が、ROM430に記憶されたプログラムに基づいて実行する両面読取処理を表すフローチャートである。なお、この処理は、操作パネル600を介してその両面読取が指示されると開始される。
【0049】
図8,図9に示すように、この処理は、S1〜S7は図6の片面読取処理と同様であるので、説明を省略する。A4サイズ,A5サイズ等の搬送部100による搬送が可能な用紙が搬送され、前述のS5,S6のループ処理中に第1所定時間が経過する前に(S5:N)、リアBセンサ320がONになった場合(S6:Y)、処理はS21へ移行する。S21では、リアBセンサ320がOFFになっているか否かが判断され、OFFになっていない場合は(S21:N)、処理はS22へ移行する。S22では、リアBセンサ320がONになってからモータ550が更に所定ステップ駆動されて用紙が第1読取デバイス210による読取開始位置へ到達したか否かが判断され、その読取開始位置に用紙が到達していない場合は(S22:N)、処理は再びS21へ移行する。
【0050】
リアBセンサ320がONになった直後は、S21,S22のループ処理が繰り返し実行され、その間に用紙が上記読取開始位置に到達すると(S22:Y)、S23にて第1読取デバイス210による裏面読取処理が実行される。続くS24では、リアBセンサ320がOFFになっているか否かが判断され、OFFになっていない場合は(S24:N)、S25にて、リアBセンサ320がONになってから上記第2所定時間が経過したか否かが判断される。上記第2所定時間が経過していない場合は(S25:N)、S26にてリアセンサ330がONになっているか否かが判断され、リアセンサ330がONになっていない場合は(S26:N)、処理は前述のS23へ移行する。
【0051】
前述のように搬送部100による搬送が不可能な用紙が斜行して搬送された場合は、裏面読取処理(S23)が開始される前(S22:N)、若しくは、その裏面読取処理(S23)の実行中のリアセンサ330がONになる前に(S26:N)、リアBセンサがOFFになる(S21:Y、若しくは、S24:Y)。そこで、その場合、処理は前述のS7へ移行する。また、リアBセンサ320がOFFになることもなく(S24:N)、しかも、リアセンサ330がONになることもないうちに(S26:N)、上記第2所定時間が経過した場合は(S25:Y)、リアBセンサ320とリアセンサ330との間で用紙にジャム(紙詰まり)が発生した場合である。そこで、上記S23〜S26のループ処理中にS25にて肯定判断された場合も、処理は前述のS7へ移行する。
【0052】
また、リアBセンサ320がOFFになることもなく(S24:N)、しかも、上記第2所定時間も経過しないうちに(S25:N)、リアセンサ330がONになった場合は(26:Y)、上記搬送可能な用紙の先端がリアセンサ330のところまで搬送された場合である。そこで、その場合(S26:Y)、処理はS27へ移行して、引き続き裏面読取処理が続行され、続くS28にて、モータ550が所定ステップ駆動されてその用紙が第2読取デバイス230による読取開始位置へ搬送されたか否かが判断される。
【0053】
第2読取デバイス230の読取開始位置へ用紙が搬送されていない場合は(S28:N)、処理はS27へ移行して裏面読取処理が続行され、第2読取デバイス230の読取開始位置へ用紙が搬送されると、S29による読取処理が実行されて、処理が終了する。なお、このS29では、用紙が第1読取デバイス210と対向している間は第1読取デバイス210,第2読取デバイス230の双方を用いた表裏両面の読取処理が実行され、用紙が第2読取デバイス230のみと対向している間は第2読取デバイス230のみを用いた表面の読取処理が実行される。
【0054】
[本実施の形態の効果及びその変形例]
このように、本実施の形態では、搬送部100による搬送が不可能な用紙の搬送が誤って開始されてしまったことを、フロントセンサ310,リアBセンサ320,リアセンサ330を用いて検出し、ジャム処理(S7)へ移行することによってその搬送を停止することができる。しかも、その搬送停止は、当該用紙がADFカバー30Aを開放することによって容易に取り除ける位置でなされる。このように、本実施の形態では、仮に搬送不可能な用紙が誤って搬送されても容易に取り除ける位置で停止するので、装置の操作性が極めて向上する。
【0055】
しかも、上記検出に用いられるフロントセンサ310,リアBセンサ320,リアセンサ330は、いずれも、給紙トレイ110に載置された用紙の有無、用紙が第1読取デバイス210の読取位置に達したこと、用紙が第2読取デバイス230の読取位置に達したこと、を検知するため従来から使用されていたセンサである。従って、本実施の形態では、特別な構成を追加することなく上記搬送が不可能な用紙の搬送を抑制できるので、従来装置に比べて殆ど構成が複雑化せず、製造コストの上昇も抑制できる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施することができる。例えば、本発明の用紙搬送装置は、画像形成装置等にも利用可能である。また、上記実施の形態では、具体的な定形の用紙寸法に合わせてフロントセンサ310とリアBセンサ320との主走査方向の間隔を規定しているが、多くの定形の用紙は縦横の比率が1:√2前後であるので、上記間隔をローラニップ部の最長間隔の√2倍前後(例えば±10%)として設計してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…複合機 10…画像読取装置 20…基体
30…原稿カバー 30A…ADFカバー 31…ヒンジ
100…搬送部 110…給紙トレイ 121,122…給紙ローラ
123,124,125,126,127…搬送ローラ 128,129…排紙ローラ
130…排紙トレイ 210…第1読取デバイス 230…第2読取デバイス
310…フロントセンサ 320…リアBセンサ 330…リアセンサ
351,550…モータ 400…ASIC M…名刺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送経路に沿った複数箇所に配置されたローラを有し、給紙トレイに載置された用紙を前記搬送経路に沿って搬送する搬送部と、
前記搬送部が搬送する用紙を検知する第1センサと、
前記第1センサより下流側に配置され、前記搬送部が搬送する用紙を検知する第2センサと、
を備え、
前記搬送部は、前記用紙の搬送方向の長さが前記ローラ同士の前記搬送経路に沿った最長間隔より長い用紙を、搬送することが可能であって、
前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が不可能な定形の用紙サイズの前記主走査方向の幅よりも長くなるように、前記第1センサと前記第2センサとがそれぞれ配置され、
更に、
前記第1センサが用紙を検知した後、その用紙が前記搬送部によって搬送されて前記第2センサに検知される位置に達するのに要する時間よりも長く設定された第1所定時間が経過しても前記第2センサが用紙を検知しない場合、前記搬送部による用紙の搬送を停止する制御部を、
備えたことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記搬送方向に対して直交する主走査方向における第1センサと前記第2センサとの間隔が、前記搬送部による搬送が可能な定形の用紙サイズの主走査方向の幅よりも短くなるように、前記第1センサと前記第2センサとがそれぞれ配置されていること、
を特徴とする請求項1記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記第2センサより下流側の前記搬送経路上で用紙を検知する第3センサを、
更に備え、
前記制御部は、前記第2センサが用紙を検知してから、前記第3センサが用紙を検知するまでに前記第2センサが用紙を検知しなくなった場合にも、前記搬送部による用紙の搬送を停止することを特徴とする請求項2に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
前記搬送経路の一部を開閉可能に覆うカバーを、
更に備え、
前記第1センサは、前記給紙トレイに載置された用紙を検知し、
前記第1所定時間は、用紙が前記給紙トレイから搬送されてから前記搬送手段によって前記搬送経路の前記一部を搬送されるまでに要する時間であることを特徴とする請求項3に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
前記搬送経路の前記一部における前記複数のローラの前記搬送方向に沿った間隔が、前記搬送が不可能な定形の用紙サイズの用紙の搬送方向の長さより短く構成され、
前記一部より下流側の前記搬送経路のうち少なくとも2つの前記ローラの前記搬送方向に沿った間隔が、前記最長間隔であること、
を特徴とする請求項4に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
前記搬送部による搬送が不可能な定形の用紙が、
前記不可能な定形の用紙サイズの用紙の前記主走査方向の長さが、前記搬送方向に対して直交する主走査方向における前記第1センサと前記第2センサとの間隔より短く、
前記不可能な定形の用紙サイズの用紙の前記搬送方向の長さが、前記最長間隔より短く、かつ、前記搬送経路の前記一部における前記複数のローラの間隔より長い、
名刺サイズの用紙であること、
を特徴とする請求項5に記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置と、
前記搬送経路を搬送される用紙の少なくとも一方の面の画像を読み取る画像読取部と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の用紙搬送装置と、
前記搬送経路の前記第2センサよりも下流側で前記搬送経路を搬送される用紙の一方の面の画像を読み取る第1画像読取部と、
前記搬送経路の前記第1画像読取部及び前記第3センサよりも下流側で前記搬送経路を搬送される用紙の他方の面の画像を読み取る第2画像読取部と、
を備え、
前記第2センサは、用紙が前記第1画像読取部の読取位置に達したことを検知し、
前記第3センサは、用紙が前記第2画像読取部の読取位置に達したことを検知することを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−30945(P2012−30945A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172678(P2010−172678)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】