説明

用紙搬送装置

【課題】用紙を高速で搬送しつつ用紙の重送を確実に検出できる用紙搬送装置を提供すること。
【解決手段】用紙搬送装置は、用紙を搬送するための搬送ローラと、搬送ローラに対して用紙を押圧する押圧部材と、用紙が重なって搬送された際に用紙の重送を検知する重送検知センサとを備え、搬送ローラは押圧部材との間で用紙を挟持しながら搬送し、重送検知センサは用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用紙搬送装置に関し、詳しくは用紙の重ね送りを検知する重送検知機能を備えた用紙搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この発明に関連する従来技術としては、給紙部から用紙を送り出す給紙ローラと、給紙ローラから所定の間隔を空けて配置されたレジストローラと、給紙ローラからレジストローラに至る用紙搬送路の途中に設けられ超音波を発信する送波器と、送波器から発信された超音波を受信する受波器とを備え、送波器は用紙が給紙ローラとレジストローラの両ローラによって挟持された状態で超音波を用紙へ向けて発信し、受波器に受信された超音波の減衰度を所定の閾値と比較することにより用紙の重送を検出する用紙搬送装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−162426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、複写機、プリンターなどの画像形成装置の高速印字化が進められている。
このため、画像形成装置に搭載される用紙搬送装置にも原稿や記録用紙などの用紙を高速で搬送することが求められている。
しかしながら、用紙を高速で搬送しようとすると、用紙が収納または積載された給紙部から用紙を用紙搬送路へ送り出す際に、用紙が重なった重送状態で送り出される恐れが高くなる。
【0004】
用紙が重なった重送状態で搬送されると、用紙詰まり(ジャム)を引き起こす大きな要因となる。
また、仮にジャムが引き起こされなかったとしても、重送状態のままでは画像読取部において読み取られるべき画像と異なる画像が読み取られたり、画像形成部において1枚の用紙に形成されるべき画像が重なった複数の用紙にわたって形成されるなどの不具合が生じる。
したがって、用紙を高速で搬送するためには、単に給紙ローラ、搬送ローラなどの搬送手段の駆動速度を上げるだけでは不十分であり、用紙が重なって用紙搬送路へ送り出された際に確実に用紙の重送を検知する機能が求められる。
【0005】
一般に用紙の重送を検知する手段としては用紙搬送路に設けられた超音波センサが用いられている。
超音波センサは超音波を発信する送波器と、送波器から発信された超音波を受信して電気エネルギーに変換する受波器とから構成される。
送波器から発信された超音波が用紙を透過する際に減衰することを利用し、受波器に受信された超音波の減衰度を所定の閾値と比較することにより、用紙が重送されているか否かを検知することができる。
しかしながら、超音波は空気を媒体として伝わるため、用紙搬送路における用紙の振幅、すなわち用紙のばたつきが大きいと受波器出力が変動し、正確な重送の検知が困難になる。
【0006】
上述の従来技術では、用紙が給紙ローラとレジストローラの両ローラによって挟持された状態で送波器から超音波を発信するため、用紙のばたつきに起因する受波器出力の変動は解消できる。
しかし、給紙ローラから用紙を送り出した後、一旦、レジストローラで用紙の搬送を止めることにより給紙ローラとレジストローラの両ローラで用紙を挟持するため、用紙搬送の高速化を図るうえでは限度がある。
また、給紙ローラとレジストローラの配置間隔を最小サイズの用紙の長さよりも短く設定しなければならず、超音波センサの配置についても給紙ローラとレジストローラの間でなければならないという設計上の制約を伴う。
【0007】
この発明は以上のような事情を考慮してなされたものであり、用紙を高速で搬送しつつ用紙の重送を確実に検出できる用紙搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、用紙を搬送するための搬送ローラと、搬送ローラに対して用紙を押圧する押圧部材と、用紙が重なって搬送された際に用紙の重送を検知する重送検知センサとを備え、搬送ローラは押圧部材との間で用紙を挟持しながら搬送し、重送検知センサは用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配されてなることを特徴とする用紙搬送装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、重送検知センサが、用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配されるので、用紙を高速で搬送しつつ確実に用紙の重送を検知することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
この発明による用紙搬送装置は、用紙を搬送するための搬送ローラと、搬送ローラに対して用紙を押圧する押圧部材と、用紙が重なって搬送された際に用紙の重送を検知する重送検知センサとを備え、搬送ローラは押圧部材との間で用紙を挟持しながら搬送し、重送検知センサは用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配されてなることを特徴とする。
【0011】
この発明による用紙搬送装置において、搬送ローラとは、基本的に用紙に対して用紙搬送方向に摩擦力を付与することにより用紙を搬送するローラを意味するが、用紙の重送を検知した場合には重送を解消すべく逆回転して搬送方向と逆方向の摩擦力を用紙に付与する機能を備えていてもよいし、所定の搬送タイミングで用紙を搬送するために用紙を一旦チャックして静止させる機能を備えていてもよい。
したがって、搬送ローラは、給紙ローラやピックアップローラであってもよいし、用紙搬送路中に設けられたレジストローラ、或いはその他のローラであってもよい。
また、押圧部材とは、搬送ローラと対向する位置に設けられ搬送ローラと用紙との間の摩擦力を増大させるものを意味する。
【0012】
また、重送検知センサとは、用紙が重なって搬送された際に用紙の重送を検知するための手段を意味する。
したがって、重送検知センサは、超音波センサや光センサであってもよいし、或いは、搬送される用紙の表面に摺接し用紙の厚さによって変位する機械的な変位検出センサであってもよい。
また、用紙の振幅が抑制された領域とは、用紙のうち搬送ローラと押圧部材によって挟持された箇所の近傍に占めるばたつきの少ない領域を意味する。
【0013】
この発明による用紙搬送装置において、用紙の振幅が抑制された領域は、用紙の挟持箇所から用紙の搬送方向と直交する方向に沿った領域内に規定されてもよい。
このような構成によれば、用紙の先端から後端までを確実に重送検知の対象領域とすることができる。
【0014】
この発明による用紙搬送装置において、押圧部材は搬送ローラと共に用紙を挟持する押圧ローラであってもよい。
また、この発明による用紙搬送装置において、押圧部材は搬送ローラと対向する位置に設けられ用紙に摺接する分離パッドであってもよい。
また、この発明による用紙搬送装置において、押圧部材は用紙の搬送方向に沿って延びるリブであってもよい。
これらのような構成によれば、押圧ローラ、分離パッドまたはリブのいずれの押圧部材であっても用紙を確実に挟持でき、挟持箇所に隣接する領域における用紙の振幅を効果的に抑制することができる。
なお、押圧部材が押圧ローラである場合において、該押圧ローラは、用紙の重送を解消するために用紙搬送方向と逆方向に摩擦力を付与する機能を備えたいわゆるさばきローラであってもよい。
【0015】
また、この発明による用紙搬送装置において、搬送ローラと押圧部材は用紙の搬送方向と直交する方向に並んだ複数対の搬送ローラと押圧部材とからなり、重送検知センサは隣接する挟持箇所の間で用紙の重送を検知してもよい。
このような構成によれば、複数対の搬送ローラと押圧部材によって用紙が挟持されるので、複数の挟持箇所でより確実に用紙を挟持することができ、用紙の振幅をより一層効果的に抑制できる。そして、重送検知センサは用紙の振幅が抑制された隣接する挟持箇所の間で用紙の重送を検知するので、より精度よく確実に用紙の重送を検知することができる。
【0016】
また、押圧部材が押圧ローラである上記構成において、搬送ローラと押圧ローラはそれぞれ軸支され、重送検知センサは出力面と入力面を有する1対の出力素子と入力素子とからなり、出力素子と入力素子は出力素子の出力面から発せられた出力が搬送ローラと押圧ローラの軸間を透過して入力素子の入力面に入力するように用紙の表面に対してそれぞれ傾斜して配されてもよい。
このような構成によれば、出力素子の出力面から発せられた出力が搬送ローラと押圧ローラの軸間を透過して入力素子の入力面に入力するように用紙の表面に対してそれぞれ傾斜して配されるので、限られたスペースを有効に利用して重送検知センサを配置することができ、用紙搬送装置の大型化を避けることができる。また、用紙搬送装置のうち、搬送ローラと押圧ローラが配置された箇所であれば、どこにでも重送検知センサを配置することが可能となり、重送検知センサを配置するうえで設計状の自由度が非常に高くなる。
【0017】
また、重送検知センサが1対の出力素子と入力素子とからなる上記構成において、出力素子は超音波を発信する送波器であり、入力素子は超音波を受信する受波器であってもよい。
このような構成によれば、送波器から発信され用紙を透過する際に減衰した超音波を受波器で受信し、超音波の減衰度を閾値と比較することにより用紙の重送を検知することができる。
このため、用紙に非接触で用紙の重送を検知することができ、さらには、用紙の厚さや用紙の色によって影響を受けることなく、確実に用紙の重送を検知できる。
【0018】
この発明は別の観点からみると、上述のこの発明による用紙搬送装置を備えた画像形成装置を提供するものでもある。
この発明による上記の画像形成装置によれば、高速で記録用紙を搬送しつつ記録用紙の重送を確実に検知でき、安定した性能を発揮する高速度の画像形成装置を提供することができる。
なお、ここで画像形成装置とは、トナーまたはインク等によって記録用紙に画像を形成するものを意味し、例えば、複写機、プリンター、ファクシミリなどを挙げることができる。
【0019】
また、この発明はさらに別の観点からみると、上述のこの発明による用紙搬送装置を備えた原稿送り装置を提供するものでもある。
この発明による上記の原稿送り装置によれば、高速で原稿を搬送しつつ原稿の重送を確実に検知でき、安定した性能を発揮する高速度の原稿送り装置を提供することができる。
なお、ここで原稿送り装置とは、読み取られるべき原稿を画像読取部に送るものを意味し、例えば、画像形成装置やファクシミリに搭載される自動原稿送り装置(「ADF」(Auto Document Feeder))を挙げることができる。
【0020】
以下、図面に示す実施例に基づいてこの発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0021】
実施例
図1〜11に基づいて、この発明の実施例による自動原稿送り装置(用紙搬送装置)(以下、「ADF」と略称する)が搭載された画像形成装置について説明する。図1は、実施例による画像形成装置の全体構成を示す概略図である。
【0022】
画像形成装置の全体構成とその動作
図1に示されるように、この発明の実施例によるADF(用紙搬送装置)1が搭載された画像形成装置100は、ADF1によって搬送された原稿をスキャンして得られた画像データ、或いは、外部から伝達された画像データに応じて、所定の記録用紙(シート)に対してモノクロ画像を形成するものである。
画像形成装置100は、ADF1、画像読取部2、光書込ユニット3、現像器4、感光体5、帯電器6、クリーナユニット7、転写ユニット8、定着ユニット9、用紙搬送路10、給紙トレイ11および排紙トレイ12とから主に構成されている。
【0023】
画像読取部2は、主に、光源ホルダー13、ミラー群14、およびCCD15とから構成されている。
ADF1から送られてくる原稿をスキャンする場合、光源ホルダー13およびミラー群14は静止した状態で、原稿の画像をスキャンする。
ADF1から原稿が搬送されてくると、光源ホルダー13の光源から原稿に光が照射され、原稿から反射された光がミラー群14を介して光路変換されCCD15に結像され、電子的な画像データに変換される。
なお、ADF1の具体的な構造と動作については後の項で詳述する。
【0024】
帯電器6は、感光体5の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、実施例の画像形成装置100では、チャージャー型の帯電器6を用いているが、接触型のローラ型やブラシ型の帯電器を用いることもできる。
また、この実施例では光書込ユニット3として、レーザ照射部16a,16bおよびミラー群17a,17bを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)を用いているが、発光素子をアレイ状に並べたEL書き込みヘッドやLED書き込みヘッドを用いることもできる。
【0025】
光書込ユニット3は、高速印字処理に対応するために、2つのレーザ照射部16a,16bを備えた2ビーム方式を採用しており、照射タイミングの高速化に伴う負担が軽減されている。
そして、入力された画像データに応じてレーザ照射部16a,16bからレーザ光を照射し、ミラー群17a,17b介して帯電器6によって均一に帯電された感光体5を露光することにより、感光体5の表面に画像データに応じた静電潜像が形成される。
【0026】
感光体5の近傍に配された現像器4は、感光体5の表面に形成された静電潜像を黒トナーで顕像化するものである。
また、感光体5の周囲に配されたクリーナユニット7は、現像・画像転写後に感光体5の表面に残留したトナーを除去・回収するものである。
【0027】
画像形成装置100は、全体を統合制御する図示しない制御部を備えている。
制御部は、CPU、CPUが実行する制御プログラムを格納するROM、CPUにワークエリアを提供するRAM、制御データを保持する不揮発性メモリ、画像形成装置100の各部検知手段からの信号が入力される入力回路、画像形成装置100の各部駆動機構を作動させるアクチュエータやモータを駆動させるドライバ回路、レーザ照射部16a,16bを駆動する出力回路などから構成される。
【0028】
上述のように、感光体5の表面に顕像化された静電像は、搬送されてくる用紙に対して転写ユニット8から静電像が有する電荷と逆極性の電界が印加されることにより記録用紙上に転写される。
例えば、静電像が(−)極性の電荷を有している場合、転写ユニット8の印加極性は(+)極性となる。
転写ユニット8の転写ベルト19は、駆動ローラ20、従動ローラ21および他のローラで張架され、所定の抵抗値(例えば、1×109〜1×1013Ω・cmの範囲)を有している。
感光体5と転写ベルト19との接触部には導電性を有し転写電界を印加することが可能な弾性導電性ローラ22が配置されている。
【0029】
転写ユニット8で記録用紙上に転写された静電像(未定着トナー)は、定着ユニット9に搬送されることにより、未定着トナーが溶融し記録用紙上に定着する。
定着ユニット9は、加熱ローラ23,加圧ローラ24を備えており、加熱ローラ23の内周部には加熱ローラ23の表面を所定温度(定着温度:概ね160〜200℃)とする熱源が内蔵されている。
他方、加圧ローラ24は、加熱ローラ23に対して所定圧で圧接するようにその両端に図示しない加圧部材が配置されている。
これにより加熱ローラ23と加圧ローラ24との圧接部(定着ニップ部と呼ばれる)において、搬送されてくる記録用紙上の未定着トナーを加熱ローラ23で加熱して溶融させ、圧接部での投鋲作用により記録用紙上に定着させる。
【0030】
複数の給紙トレイ11は、画像形成に使用する記録用紙を蓄積しておくためのトレイであり、実施例の画像形成装置100では、装置の下方に設けられている。
実施例の画像形成装置100は高速印字処理を目的としているため、各給紙トレイ11には定型サイズの記録用紙を500〜1500枚収納可能な容積が確保されている。
また、画像形成装置100の側面には複数種の記録用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット(LCC)25と、主として不定型サイズの印字等に用いる手差しトレイ26が設けられている。
【0031】
排紙トレイ12は、手差しトレイ26とは反対側の側面に配置されているが、排紙トレイ12に代えて、排紙用紙の後処理装置(ステープル、パンチ処理等々)や、複数段排紙トレイをオプションとして配置することも可能な構成となっている。
【0032】
ADFの構成と動作
上述の画像形成装置100に搭載されたADF1について図2〜図11に基づいて説明する。図2は実施例によるADF(用紙搬送装置)の概略的な構成を示す概略図、図3および図4は図2に示されるADFの要部拡大説明図、図5は原稿の重送によって超音波が減衰し受波器で変換された電気エネルギーが変動することを示す概念的なグラフ図、図6および図7は図2に示されるADFの要部拡大説明図、図8、図9および図10は変形例に係るADFの概略的な構成を示す概略図、図11は図10に示されるADFの要部拡大説明図である。
【0033】
図2に示されるように、上述の画像形成装置100(図1参照)に搭載されたADF1は、原稿を搬送するための搬送ローラ31と、搬送ローラ31に対して原稿を押圧する押圧ローラ(押圧部材)32と、原稿が重なって搬送された際に原稿の重送を検知する重送検知センサ37とを備え、搬送ローラ31は押圧ローラ32との間で原稿を挟持しながら搬送し、重送検知センサ35は原稿の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で原稿の重送を検知するように配されている。
【0034】
以下、より詳細に実施例のADF1について説明する。
図2に示されるように、ADF1は、原稿束が載置される原稿トレイ27と、原稿束から原稿を原稿搬送路S1へ送り出すピックアップローラ28と、原稿搬送路S1へ送り出された原稿を1枚ずつ分離させながら原稿搬送路S1の下流側へ搬送する給紙ローラ29およびさばきローラ30と、原稿を用紙搬送路S1に沿って搬送するための複数対の搬送ローラ31および押圧ローラ32と、読取部34に所定のタイミングで原稿を送り出すレジストローラ33と、画像の読取を終えた原稿を排紙トレイ36へ排出する排紙ローラ35とから主に構成されている。
【0035】
原稿トレイ27は上下方向に移動でき、原稿束が載置されると図示しないセンサがそれを検知し、ユーザから印字要求がなされると原稿トレイ27が上方へ移動し原稿束のうち最も上に位置する原稿からピックアップローラ28によって用紙搬送路S1へ送り出される。
通常は、仮に原稿が重なった状態で用紙搬送路S1へ送り出された場合であっても、さばきローラ30によって重送状態が解消され、上述のように給紙ローラ29によって用紙搬送路S1の下流側へ1枚ずつ搬送される。
【0036】
しかし実施例のADF1は、高速印字処理に対応するべく原稿を高速で搬送するため、さばきローラ30を設けていても重送が生じる可能性は否定できない。
そこで、実施例のADF1は、給紙ローラ29およびさばきローラ30の下流側に配置された搬送ローラ31と押圧ローラ32の近傍に重送検知センサ37を設けている。
重送検知センサ37は、超音波を発信する送波器38と、送波器38から発信された超音波を受信する受波器39とから構成される。
【0037】
図3に示されるように、原稿搬送路S1(図2参照)を原稿Dが搬送ローラ31と押圧ローラ32で挟持されながら搬送されている際、送波器38から発信された超音波は原稿Dを透過する際に減衰し、受波器39に受信され電気エネルギーに変換される。
仮に、図4に示されるように原稿Dが重送状態で搬送されている場合、送波器38から発信された超音波は原稿Dと原稿Dが重なった僅かな空気層で大きく減衰し、受波器39に受信され電気エネルギーに変換される。
したがって、図5に示されるように、受波器39で変換された電気エネルギーのレベルを所定の閾値と比較することにより、原稿が正常に1枚ずつ搬送されているか、或いは重送状態で搬送されているかを検知することができる。
【0038】
ここで、超音波は空気を媒体としているため、超音波を受ける原稿に振幅、すなわちばたつきがあると、原稿のばたつきにより受波器39の出力が変動し、正確な重送の検知が困難になる。なお、原稿のばたつきにより受波器39の出力が変動する原因としては、送波器38からの超音波を受けて超音波振動した原稿がばたつきによって受波器39に接近したときに、振動しながら受波器39に接近した原稿が通常よりも高いレベルの振動を受波器39と原稿との間の空気を介して受波器39に与え、受波器39のセンサを通常よりも大きく振動させるためであると考えられる。
そのため、図6に示されるように、実施例のADF1では、原稿Dのうち、原稿Dの搬送方向と直交する方向に並んだ複数対の搬送ローラ31と押圧ローラ32によって挟持され、隣接する挟持箇所の間にうまれる原稿Dの振幅が抑制された領域Rで重送の検知が行われるように送波器38と受波器39が配置されている。
そして、図3および図4に示されるように、送波器38と受波器39は、送波器38から発信された超音波が搬送ローラ31と押圧ローラ32の軸間を透過して受波器39に受信されるように、原稿Dの表面に対してそれぞれ傾斜して配置されている。
【0039】
これにより、送波器38は、原稿Dの挟持箇所の間にうまれる原稿Dの振幅が抑制された領域Rに対して超音波を照射し、受波器39は振幅が抑制された領域Rを透過する際に減衰した超音波を受信するので、原稿Dの振幅に起因する受波器出力の変動の影響を受けることなく正確な重送の検知が可能となっている。
また、上述のとおり、送波器38と受波器39は、送波器38から発信された超音波が搬送ローラ31と押圧ローラ32の軸間を透過して受波器39に受信されるように原稿Dの表面に対して傾斜して配置されている。
このため、ADF1内の限られたスペースが有効に利用され、ADF1に重送検知機能を付与するにあたって、ADF1が大型化してしまうこともない。
また、上述のような配置手法を採用することにより、ADF1内の様々なローラの近傍に重送検知センサ37を設けることが可能となる。
【0040】
具体的には、図2に示されるように、実施例のADF1には、厚紙等のコシの強い原稿に対応するためにサブトレイ40が設けられている。
サブトレイ40に載置された厚紙等の原稿はピックアップローラ41によってほぼ直線状の原稿搬送路S2へ送り出された後、給紙ローラ42と押圧部材としての分離パッド43によって挟持されながら搬送され原稿搬送路S1に合流する。
そして給紙ローラ42と分離パッド43の近傍にも送波器38と受波器39とからなる重送検知センサ37が配されている。
【0041】
ここで、図7に示されるように、給紙ローラ42と分離パッド43は、原稿Dの搬送方向と直交する方向に並んだ複数対の給紙ローラ42と分離パッド43とからなり、隣接する挟持箇所の間に送波器38と受波器39が配置されている。
このため、送波器38と受波器39は、給紙ローラ42と分離パッド43によって挟持された原稿Dの振幅が少ない領域Rで重送の検知を行うことができ、原稿Dの振幅に影響されることなく確実に原稿Dの重送を検知することができる。
【0042】
また、変形例としては、図8や図9に示されるような構成をとることもできる。
図8に示される変形例では、給紙ローラ29とさばきローラ30の近傍に送波器38と受波器39とからなる重送検知センサ37が設けられている。
このような構成によれば、原稿がピックアップローラ28によって原稿搬送路S1に送り出された直後に原稿の重送を検知できるので、重送を検知次第、原稿の搬送を止めることにより、ユーザの手で容易に原稿の重送を解消できる。
【0043】
また、図9に示される変形例では、レジストローラ33の近傍に送波器38と受波器39とからなる重送検知センサ37が設けられている。
この構成では、決して重送が生じてはならない読取部34の手前にのみ重送検知センサ37を設けており、1つの重送検知センサ37で最大の効果を得ることができる。
【0044】
また、更なる変形例としては、図10および図11に示されるように、搬送ローラ31と原稿搬送路S1中の押圧部材としてのリブ44によって原稿を挟持する部分に送波器38と受波器39とからなる重送検知センサ37を設けることもできる。
【0045】
以上、詳細に説明したように、この発明によれば、重送検知センサを、用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配することにより、用紙を高速で搬送しつつ用紙の重送を確実に検知することができる。また、搬送ローラと押圧部材によって用紙を挟持する箇所であれば、どこに重送検知センサを配置しても用紙の重送を確実に検知でき、設計上の自由度も非常に高い。
なお、上述の実施例では、ADFにのみ重送検知センサを設けたが、画像形成装置の給紙ローラ、搬送ローラ、レジストローラ等にも、同様の手法によって重送検知センサを設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の実施例によるADF(用紙搬送装置)を搭載した画像形成装置の全体的な構成を示す概略図である。
【図2】実施例によるADF(用紙搬送装置)の概略的な構成を示す概略図である。
【図3】図2に示されるADFの要部拡大説明図である。
【図4】図2に示されるADFの要部拡大説明図である。
【図5】原稿の重送によって超音波が減衰し受波器で変換された電気エネルギーが変動することを示す概念的なグラフ図である。
【図6】図2に示されるADFの要部拡大説明図である。
【図7】図2に示されるADFの要部拡大説明図である。
【図8】変形例に係るADFの概略的な構成を示す概略図である。
【図9】変形例に係るADFの概略的な構成を示す概略図である。
【図10】変形例に係るADFの概略的な構成を示す概略図である。
【図11】図10に示されるADFの要部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・ADF(用紙搬送装置)
2・・・画像読取部
3・・・光書込ユニット
4・・・現像器
5・・・感光体
6・・・帯電器
7・・・クリーナユニット
8・・・転写ユニット
9・・・定着ユニット
10・・・用紙搬送路
11・・・給紙トレイ
12,36・・・排紙トレイ
13・・・光源ホルダー
14,17a,17b・・・ミラー群
15・・・CCD
16a,16b・・・レーザ照射部
19・・・転写ベルト
20・・・駆動ローラ
21・・・従動ローラ
22・・・弾性導電性ローラ
23・・・加熱ローラ
24・・・加圧ローラ
25・・・大容量給紙カセット
26・・・手差しトレイ
27・・・原稿トレイ
28,41・・・ピックアップローラ
29,42・・・給紙ローラ
30・・・さばきローラ
31・・・搬送ローラ
32・・・押圧ローラ
33・・・レジストローラ
34・・・読取部
35・・・排紙ローラ
37・・・重送検知センサ
38・・・送波器
39・・・受波器
40・・・サブトレイ
43・・・分離パッド
44・・・リブ
100・・・画像形成装置
D・・・原稿
R・・・用紙の振幅が抑制された領域
S1,S2・・・原稿搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を搬送するための搬送ローラと、搬送ローラに対して用紙を押圧する押圧部材と、用紙が重なって搬送された際に用紙の重送を検知する重送検知センサとを備え、搬送ローラは押圧部材との間で用紙を挟持しながら搬送し、重送検知センサは用紙の挟持箇所に隣接した用紙の振幅が抑制された領域で用紙の重送を検知するように配されてなることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
用紙の振幅が抑制された領域は、用紙の挟持箇所から用紙の搬送方向と直交する方向に沿った領域内に規定されることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
押圧部材は搬送ローラと共に用紙を挟持する押圧ローラであることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項4】
押圧部材は搬送ローラと対向する位置に設けられ用紙に摺接する分離パッドであることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項5】
押圧部材は用紙の搬送方向に沿って延びるリブであることを特徴とする請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項6】
搬送ローラと押圧部材は用紙の搬送方向と直交する方向に並んだ複数対の搬送ローラと押圧部材とからなり、重送検知センサは隣接する挟持箇所の間で用紙の重送を検知することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の用紙搬送装置。
【請求項7】
搬送ローラと押圧ローラはそれぞれ軸支され、重送検知センサは出力面と入力面を有する1対の出力素子と入力素子とからなり、出力素子と入力素子は出力素子の出力面から発せられた出力が搬送ローラと押圧ローラの軸間を透過して入力素子の入力面に入力するように用紙の表面に対してそれぞれ傾斜して配されることを特徴とする請求項3に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
出力素子は超音波を発信する送波器であり、入力素子は超音波を受信する受波器であることを特徴とする請求項7に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
請求項1に記載の用紙搬送装置を備えた画像形成装置。
【請求項10】
請求項1に記載の用紙搬送装置を備えた原稿送り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−276965(P2007−276965A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106623(P2006−106623)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】