説明

田植機における苗載台の端寄せ装置

【課題】苗載台21の幅方向の一方の端を植付け機構19に位置合わせする端寄せを,簡単な構成で正確に行う。
【解決手段】前記苗載台21の端寄せを,植付けクラッチ機構24の動力伝達入りにて開始し,前記苗載台の苗台フレーム27に取付けた端寄せスイッチ31の作動にて前記植付けクラッチ機構24を動力伝達切りにして終了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,走行車体に苗植え装置を昇降動可能に装着して成る田植機において,その田植え作業の開始の際に,苗植え装置の苗載台における幅方向の少なくとも一方の端を,前記苗植え装置における植付け機構に位置合わせするための端寄せ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に,田植機における田植え作業は,従来から良く知られているように,苗マットを載せた苗載台を,適宜幅のピッチ間隔で間欠的に横送りしながら,この苗載台から植付け機構が前記適宜幅の苗を切り出して圃場に植付けるものであるから,この田植え作業の開始に際しては,前記各苗載台の幅方向の少なくとも一方の端を,前記植付け機構に位置合わせるという端寄せすることが必要である。
【0003】
先行技術としての特許文献1は,
「前記苗載台における端寄せを,前記苗植え装置に対する植付けクラッチ機構を動力伝達入り(ON)に操作することによって開始し,苗載台における左右両端の一方の端が当該苗載台と圃場との間を往復動する植付け機構に合ったとき,つまり,前記苗載台が所定の端寄せ位置に来たときに,前記植付けクラッチ機構を動力伝達切り(OFF)に切り換え作動することによって,前記苗載台の端寄せを終了する。」
ことを提案している。
【0004】
そして,この先行技術は,前記苗載台が所定の端寄せ位置に来たとき,カムを作動し,このカムの動きをワイヤー及び連杆等の連動機構を介して前記植付けクラッチ機構に伝えることによって,この植付けクラッチ機構を動力伝達切り(OFF)に操作するという構成である。
【0005】
また,別の先行技術としての特許文献2は,
「前記植付けクラッチ機構を,前記苗植え装置を昇降操作する植付昇降レバーに連動する構成にして,前記植付昇降レバーを苗植え装置の上昇位置に操作したときに前記植付けクラッチ機構が動力伝達入り(ON)になって前記苗載台の端寄せを開始し,前記苗載台が所定の端寄せ位置に来たこと目測で確認したときに,前記植付昇降レバーを,前記苗植え装置の昇降を停止するという中立位置に操作することにより,前記植付けクラッチ機構が動力伝達切り(OFF)に切り換え作動して,前記苗載台の端寄せを終了する。」
ことを提案している。
【0006】
なお,これらの両特許文献の田植機を含む一般の田植機においては,前記苗載台の端寄せを終了したあとで,前記苗植え装置を圃場面に接するように下降操作し,前記植付けクラッチ機構を動力伝達入り(ON)にすることによって,所定の田植え作業に入るという構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平07−007323号公報
【特許文献2】特開平10−313629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし,この前者(特許文献1)の先行技術においては,前記苗載台が所定の端寄せ位置にきたときに作動するカム,及び,このカムの動きを植付けクラッチに伝えるワイヤー等の連動機構を必要とすることにより,構造が複雑で,部品点数が著しく多くて,コスト,大型化及び重量のアップを招来するばかりか,前記カム及び連動機構に他物が接触することの頻度が高く,これに起因して故障及び誤作動が発生し易いという問題があった。
【0009】
更に,前記先行技術において苗載台の端寄せを開始するには,その前提の操作として,田植機の前進走行を停止し,且つ,苗植え装置を上昇しておかねばならないが,これら前操作を怠たったままで端寄せを行なって,前記植付け機構及び苗載台等を損傷するという問題もあった。
【0010】
一方,後者(特許文献2)の先行技術においては,前記苗載台の端寄せを,前記苗植え装置を高く上昇した状態から開始することができるものの,作業者は,前記苗載台が所定の端寄せ位置にきたか否かを,後ろ向きの姿勢で目測で確認したうえで,前記植付昇降レバーを中立位置に操作することによって,前記植付けクラッチ機構を動力伝達切りにして,前記苗載台の端寄せを終了するようにしなければならず,端寄せの終了に手動操作を必要とするから,完全な自動化ができないばかりか,目測と手動操作とによる端寄せであるから,端寄せの作業性及び精度が低いという問題があった。
【0011】
本発明は,これらの問題を解消することを技術的課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この技術的課題を達成するため請求項1は,
「動力源を備えた走行車体と,これに昇降動可能に装着した苗植え装置とから成り,前記苗植え装置に対する動力伝達用の植付けクラッチ機構を備え,前記苗植え装置における苗載台の横送りによる端寄せを,前記植付けクラッチ機構の動力伝達入りにて開始する構成にした田植機において,
前記苗植え装置における苗載台が左右横送りの一端に来たときに作動する端寄せスイッチを備え,この端寄せスイッチの作動にて前記植付けクラッチ機構を動力伝達切りにして前記苗載台の端寄せを終了する構成にし,前記端寄せスイッチを,前記苗載台を支持する苗台フレームのうち左右の一端部より内側の部位に取付けた。」
ことを特徴としている。
【0013】
請求項2は,
「前記請求項1の記載において,前記田植機は,前記苗植え装置を昇降動する植付昇降レバーと,主変速レバーの操作にて走行速度を変速する走行変速機構と,この走行変速機構及び前記苗植え装置への回転数を変速ペダルの踏み込み操作にて変速する無段変速機構とを備え,前記植付昇降レバーを前記苗植え装置の中立位置に操作し,且つ,前記主変速レバーを走行停止の中立位置に操作した状態で,前記変速ペダルを所定値以上に踏み込み操作したときに,前記植付けクラッチ機構の動力伝達入りにて前記苗載台の端寄せを開始する構成にした。」
ことを特徴としている。
【0014】
請求項3は,
「前記請求項2の記載において,前記無段変速機構は,その出力回転数を,前記苗載台の端寄せ中に前記変速ペダルの踏み込みを緩めるか止めても,前記苗載台の端寄せを開始するときにおける回転数に維持する構成である。」
ことを特徴としている。
【0015】
請求項4は,
「前記請求項2又は3の記載において,前記無段変速機構は,その出力回転数を,前記変速ペダルの踏み込み操作量が前記苗載台の端寄せを開始するときにおける所定値を越えても,前記苗載台の端寄せを開始するときにおける回転数を越えないように維持する構成である。」
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1によると,端寄せスイッチの作動にて苗載台の端寄せを終了するから,端寄せの自動化が可能であることに加えて,前記特許文献1のような連動機構を必要とせずに構造が簡単で,部品点数が少なく,コストを低減できるばかりか,小型化及び軽量化を図ることができ,しかも,作業者は,前記特許文献2のように後ろ向きになって苗載台の端寄せを目で確認したうえで手動操作することの必要がなくなり,端寄せの作業性及び精度を確実に向上できる。
【0017】
特に,請求項1においては,前記端寄せスイッチを,前記苗載台を支持する苗台フレームのうち左右の一端部より内側の部位に取付けたことにより,前記端寄せスイッチに他物が接触することを,当該端寄せスイッチが取付く苗台フレームを利用して防ぐことができるから,故障及び誤作動の発生を低減できる。
【0018】
次に,請求項2によると,田植機に,走行速度に対する走行変速機構と,この走行変速機構及び苗植え装置に対する無段変速機構とが設けられている場合において,前記苗載台の端寄せを,苗植え装置を植付昇降レバーの操作で中立位置にし,且つ,主変速レバーの中立位置への操作にて走行を停止している状態で,無段変速機構を変速作動する変速ペダルにおける所定値以上の踏み込み操作した場合に限り,この変速ペダルの踏み込む操作をトリガーとして,自動的に開始することができる。
【0019】
つまり,苗載台の端寄せは,その前提の操作として苗植え装置を中立位置にし,且つ,走行停止している場合に限り,変速ペダルの所定以上の踏み込み操作によって,これをトリガーとして実行できるので,その前提の操作を失念することはなく,端寄せの作業性を大幅に向上できるとともに,植付け機構及び苗載台等に損傷が発生が発生することを確実に回避できる。
【0020】
また,請求項3によると,前記無段変速機構の変速ペダルから足を離したとしても,前記苗載台の端寄せを,そのまま継続して行なうことができる。
【0021】
更にまた,請求項4によると,前記変速ペダルを,前記苗載台の端寄せが開始される所定位置以上に踏み込んだ場合において,前記苗植え装置の回転数が,前記苗載台の端寄せが開始されるときにおける回転数以上になることを防止でき,換言すると,前記苗植え装置の回転数を前記端寄せが開始されるときにおける回転数に維持できるから,前記変速ペダルの過剰な踏み込み操作によって,前記苗載台の端寄せにオーバーランが発生することを確実に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1における苗植え装置の拡大図である。
【図4】図3のIV−IV視側面図である。
【図5】図2における要部の拡大図である。
【図6】制御の回路を示す図である。
【図7】制御のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下,本発明の実施の形態を,乗用型の田植機に適用した場合の図面(図1〜図7)について説明する。
【0024】
これらの図において,符号1は,乗用型の田植機を示し,この田植機1は,走行車体2と,この走行車体2の後部にリンク機構3を介して昇降動可能に連結した苗植え装置4(実施形態では8条植え用)とによって構成されている。
【0025】
前記走行車体2は,左右の前輪5と,左右の後輪6によって支持されており,その前部に搭載した動力源としてのエンジン7により,前記走行車体2の下面に装着した走行変速機構8を介して前記両前輪5及び両後輪6を駆動するか,或いは両後輪6を駆動することによって,適宜速度で前進又は後退走行するように構成されている。
【0026】
前記走行車体2には,操縦座席9が設けられているほか,この操縦座席9の前方に,操縦ハンドル10を備えた操縦コラム11が設けられている。
【0027】
また,前記走行車体2の後部には,油圧シリンダ等の昇降機構12が設けられ,この昇降機構12によって,前記苗植え装置4を昇降動する構成にしている。
【0028】
前記操縦コラム11のうち操縦ハンドル10の左側には,前記走行変速機構8を変速作動する主変速レバー13が,操縦ハンドル10の右側には,前記昇降機構12を切り換え作動する植付昇降レバー14が各々設けられている。
【0029】
前記走行変速機構8は,図5に示すように,その主変速レバー13を中立位置(N)に操作すると,車輪への動力伝達を遮断することによって,走行車体2の走行を停止する状態になり,前記主変速レバー13を中立位置(N)から横方向に低速前進位置(I)に操
作すると,走行車体2が低速での前進走行になり,前記主変速レバー13を前進位置(I
)から後ろ方向に後進位置(R)に操作すると,走行車体2が後進走行になり,そして,前記主変速レバー13を中立位置(N)から前方向に高速前進位置(II)に操作すると,
走行車体2が高速での前進走行になるように構成されている。
【0030】
勿論,この走行変速機構8には,前記各車輪に対するブレーキ機構(図示せず)を内蔵しており,このブレーキ機構を,図2に示すように,前記操縦コラム11の右側下部に設けたブレーキペダル15にて操作するように構成している。
【0031】
一方,前記昇降機構12は,同じく,図5に示すように,その植付昇降レバー14を中立位置(O)にしたとき,前記苗植え装置4を昇降動を停止しているが,前記植付昇降レバー14を中立位置(O)から後ろ方向に上げ位置(A)に操作すると,前記苗植え装置4が圃場面16から高く上昇動し,そして,前記植付昇降レバー14を中立位置(O)から前方向に下げ位置(D)に操作すると,前記苗植え装置4が圃場面16に接するように下降動するという構成である。
【0032】
前記苗植え装置4は,図3及び図4に示すように,その支持フレーム17の一部を構成する伝動ケース18と,その後端に横方向に適宜間隔で設けた複数個(8個)の植付け機構19と,この各植付け機構19の下側に横に並べて設けた複数個のフロート20と,前記支持フレーム17のうち伝動ケース18の上側の部位に前記各植付け機構19ごとに設けた苗載台21とによって構成されている。
【0033】
前記走行車体2に搭載したエンジン7の動力は,先ず,前記走行変速機構8の前側に設けた無段変速機構22に入り,ここで適宜の出力回転数に変速される。
【0034】
そして,この変速された出力回転は,前記走行変速機構8に入力することにより,各車輪を駆動する。
【0035】
更に,前記無段変速機構22にて変速された出力回転は,前記走行変速機構8に入力することに加えて,PTO軸23を介して前記苗植え装置4における伝動ケース18に入力することにより,その各植付け機構19の駆動,及び前記苗載台21の左右方向への横送り機構30等の駆動を行なうように構成している。
【0036】
前記無段変速機構22から前記苗植え装置4に動力伝達する前記PTO軸23の途中には,図示していないが,前記苗植え装置4への動力伝達を入り(ON)及び切り(OFF)に切り換える植付けクラッチ機構24が設けられているほか,前記苗植え装置4による田植え作業を,疎植え,標準植え及び密植え等に切り換えるための株間変速機構が設けられている。
【0037】
前記植付けクラッチ機構24は,前記植付昇降レバー14にワイヤー等の連動機構にて連動するように連結されていて,前記植付昇降レバー14を前記上げ位置(A)及び前記中立位置(O)に操作したときに動力伝達切り(OFF)になり,前記植付昇降レバー14を前記下げ位置(D)に操作してときに動力伝達入り(ON)になるように構成されている。
【0038】
前記無段変速機構22は,例えば油圧ポンプと油圧モータとからなる油圧式で,図2に示すように,前記操縦コラム11の右側下部に設けた変速ペダル25の踏み込み操作及び踏み込み解除操作によって変速作動されるもので,前記変速ペダル25を踏み込み操作することにより前記走行変速機構8及び前記苗植え装置4への出力回転数を加速する一方,前記変速ペダル25の踏み込み操作を解除することにより,出力回転数を減速するという構成である。
【0039】
前記苗植え装置4における苗載台21は,その裏面の上部に左右に延びるように設けた上部レール26に前記支持フレーム17から立設した苗台フレーム27の上端を嵌める一方,前記支持フレーム17に左右に延びるように設けた下部レール28に前記苗載台21の裏面下部に設けたシュー29を被嵌することによって,横方向に移動可能に支持されており,更に,この苗載台21は,前記伝動ケース18に設けた横送り機構30により,当該苗載台21における横幅寸法Wの範囲内を往復動するに構成されている。
【0040】
前記苗載台21を支持する苗台フレーム27には,図4に示すように,当該苗台フレーム27のうちその両端部27aから適宜寸法(L)だけ内側に入った部位に,端寄せスイッチ31を取付け,前記苗載台21の前記横送り機構30による横送り中において,当該苗載台における左右幅方向の一端が前記植付け機構19に一致する位置に来たときに,前記苗載台21側の上部レール26に固着した接当片32を前記端寄せスイッチ31に接当することにより,この端寄せスイッチ31が,OFFからONに作動し,このONへの作動によって,前記植付けクラッチ機構24が,これが連動する植付昇降レバー14に優先して動力伝達切り(OFF)に切り換わるという構成にしている。
【0041】
そして,前記苗植え装置4の苗載台21における端寄せは,コトローラ33による制御にて,以下に述べるようにして実行される。
【0042】
前記コトローラ33は,図6に示すように,前記主変速レバー13及び前記植付昇降レバー14における操作信号を入力とすることに加えて,前記変速ペダル25における踏み込み操作信号を入力とし,更に,前記端寄せスイッチ31の作動信号をも入力として,前記無段変速機構22及び前記植付けクラッチ機構24を,図7のフロートシートのように制御する。
【0043】
スタートに次ぐステップS1において,前記端寄せスイッチ31がOFF作動であると判断されたときには,ステップS2に移行する。
【0044】
次いで,このステップS2において,前記主変速レバー13が,走行停止の中立位置(N)にあるか否かが判別され,走行停止の中立位置(N)にあるときには,ステップS3に移行して,このステップS3において,前記植付昇降レバー14が,前記苗植え装置4の中立位置(O)に操作されているか否かを判別する。
【0045】
前記植付昇降レバー14の中立位置(O)への操作によって,前記苗植え装置4が昇降停止し,且つ,前記苗植え装置4に対する植付けクラッチ機構24が動力伝達切り(OFF)なる。
【0046】
前記植付昇降レバー14が中立位置(O)に操作されているときには,ステップS4に移行して,ここで,前記変速ペダル25を踏み込み操作しているか否かを判別する。
【0047】
前記変速ペダル25における踏み込み操作していときには,次のステップS5で,前記変速ペダル25の踏み込み操作量が所定値以上である否かを判断し,所定値以上である場合,つまり,前記変速ペダル25を前記所定値以上に踏み込み操作している場合に限り,ステップS6に移行し,前記所定値以上に踏み込み操作していないときには,リターンする。
【0048】
そして,前記ステップS6において,前記無段変速機構22から走行変速機構8及び苗植え装置4に出力される回転数を,以下に述べるように制御する。
【0049】
すなわち,前記無端変速機構22からの出力回転数を,前記変速ペダル25から足を離すことでその踏み込みを緩めるか止めた場合においても,前記変速ペダル25を前記所定値に踏み込み操作したときにおける出力回転数に維持することに加えて,前記変速ペダル25の踏み込み操作量が前記所定値を越えている場合においても,前記変速ペダル25を前記所定値に踏み込み操作したときにおける出力回転数を越えないように維持する。
【0050】
次いで,ステップS7において,前記苗植え装置4に対する植付けクラッチ機構24を,前記植付昇降レバー14の操作位置にかかわらず,これに優先して動力伝達入り(ON)に切り換えることにより,前記苗植え装置4を作動して,その苗載台21における端寄せを開始する。
【0051】
次いで,ステップ8において,前記苗植え装置4における苗載台21に対する端寄せスイッチ31がONに作動しているか否かを判別する。前記端寄せスイッチ31がON作動していないときには,前記ステップS1の前又は後に戻して,前記端寄せを継続するが,前記端寄せスイッチ31がON作動したときには,前記苗載台21は左右横送りの一端に来て,その左右の一端が前記植付け機構19に一致する位置に来ているから,ステップS9に移行し,ここで,前記植付けクラッチ機構24を,これが連動する植付昇降レバー14の操作位置にかかわらずこれ優先して動力伝達切り(OFF)に切り換わり作動することにより,前記端寄せを終了する。
【0052】
これらステップS1からステップS9に至る一連の制御により,前記苗載台21における端寄せの開始は,その前提の操作として苗植え装置4を中立位置にし,且つ,走行停止している場合に限り,変速ペダル25を所定位置以上の踏み込み操作することによって,この変速ペダル25の踏み込み操作をトリガーとして行なうことができる方,前記端寄せの終了は,前記端寄せスイッチ31の作動により自動的に行なうことができる。
【0053】
特に,前記無段変速機構22から走行変速機構8及び苗植え装置4に出力される回転数を,前記ステップS6において,前記変速ペダル25を所定値にまで踏み込み操作したときにおける回転数に維持することにより,この状態では,前記変速ペダル25から足を離すことでその踏み込みを緩めるか止めた場合においても,前記端寄せを継続することができるし,前記変速ペダル25の過剰な踏み込み操作によって,前記苗植え装置4の回転が速くなって前記苗載台21の端寄せにオーバーランが発生することを回避できる。
【0054】
なお,前記した実施形態の乗用型田植機1は,既存の田植機と同様に,前記した苗載台21の端寄せを実行したのちに,前記苗植え装置4を圃場16にまで下降し,且つ,この苗植え装置4を駆動した状態で,走行車体2を前進走行するとによって,田植え作業に入るように構成していることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1 乗用型田植機
2 走行車体
3 リンク機構
4 苗植え装置
5 前輪
6 後輪
8 走行変速機構
10 操縦ハンドル
11 操縦コラム
12 昇降機構
13 主変速レバー
14 植付昇降レバー
17 苗植え装置の支持フレーム
18 伝動ケース
19 植付け機構
20 フロート
21 苗載台
22 無段変速機構
23 PTO軸
24 植付けクラッチ機構
25 変速ペダル
27 苗台フレーム
30 苗載台の横送り機構
31 端寄せスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源を備えた走行車体と,これに昇降動可能に装着した苗植え装置とから成り,前記苗植え装置に対する動力伝達用の植付けクラッチ機構を備え,前記苗植え装置における苗載台の横送りによる端寄せを,前記植付けクラッチ機構の動力伝達入りにて開始する構成にした田植機において,
前記苗植え装置における苗載台が左右横送りの一端に来たときに作動する端寄せスイッチを備え,この端寄せスイッチの作動にて前記植付けクラッチ機構を動力伝達切りにして前記苗載台の端寄せを終了する構成にし,前記端寄せスイッチを,前記苗載台を支持する苗台フレームのうち左右の一端部より内側の部位に取付けたことを特徴とする田植機における苗載台の端寄せ装置。
【請求項2】
前記請求項1の記載において,前記田植機は,前記苗植え装置を昇降動する植付昇降レバーと,主変速レバーの操作にて走行速度を変速する走行変速機構と,この走行変速機構及び前記苗植え装置への回転数を変速ペダルの踏み込み操作にて変速する無段変速機構とを備え,前記植付昇降レバーを前記苗植え装置の中立位置に操作し,且つ,前記主変速レバーを走行停止の中立位置に操作した状態で,前記変速ペダルを所定値以上に踏み込み操作したときに,前記植付けクラッチ機構の動力伝達入りにて前記苗載台の端寄せを開始する構成にしたことを特徴とする田植機における苗載台の端寄せ装置。
【請求項3】
前記請求項2の記載において,前記無段変速機構は,その出力回転数を,前記苗載台の端寄せ中に前記変速ペダルの踏み込みを緩めるか止めても,前記苗載台の端寄せを開始するときにおける回転数に維持する構成であることを特徴とする田植機における苗載台の端寄せ装置。
【請求項4】
前記請求項2又は3の記載において,前記無段変速機構は,その出力回転数を,前記変速ペダルの踏み込み操作量が前記苗載台の端寄せを開始するときにおける所定値を越えても,前記苗載台の端寄せを開始するときにおける回転数を越えないように維持する構成であることを特徴とする田植機における苗載台の端寄せ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−196155(P2012−196155A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61473(P2011−61473)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】