説明

甲殻類の胃石成分を含む組成物とその使用

1から3部までの有機物質あたり10部の炭酸カルシウムという比率で、有機物質と共に微細分散している非晶質または微晶質の炭酸カルシウムを含有する製剤であって、有機物質がキチンおよびポリペプチドからなる製剤を提供する。その製剤は、増殖性疾患、神経障害、および筋骨格障害を含めた、様々な病理学的疾患を処置するのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質と共に微細分散している炭酸カルシウムを含む組成物に関する。前記組成物の医薬的使用を提供する。
【0002】
発明の背景
経口送達された薬物および栄養素の吸収および生物学的利用能が他の同時送達された成分によって影響を受けることは、長い間認識されている。キレート内の金属の結合など、一部の影響は明白に思われることがあるが、元の構成成分と、体内での相互作用に関与する構成成分とを含む、構成成分間の化学的相互作用および生物学的相互作用は、しばしば複雑すぎて、観察された現象の説明または予測が不可能である。代謝過程、ホルモン過程、および免疫過程は、送達される物質の化学組成および物理的状態の両方によって影響され得る。
【0003】
例えば、高用量のカルシウムが必ずしも骨の減少を減速させるわけではないことが示されている。実際に、カルシウム摂取が高い集団のなかにも、骨粗鬆症が高率である集団があり、これは高タンパク質摂取の影響に起因すると推定され、一方、アフリカの民族集団のなかには、乳製品を摂取せず、通常、1日あたり175から475ミリグラムのカルシウムしかとらない民族集団もあるが(U.S.RDAは800mg)、彼らは、骨粗鬆症が低率である。
【0004】
国際公開パンフレット第2005/115414号は、安定な非晶質炭酸カルシウムを含む経口投与可能な組成物、および骨障害の処置におけるその使用を開示している。本発明の目的は、キチンおよびポリペプチドからなる、より少ない部分の有機物質中に分散している炭酸カルシウムを含む組成物である。
【0005】
本発明の別の目的は、キチンおよびポリペプチドからなる、より少ない部分の有機物質中に分散している炭酸カルシウムを含む医薬組成物を提供することである。
【0006】
本発明の他の目的および利点は、記載を重ねるに連れて現れてくるであろう。
【0007】
発明の概要
本発明は、90から99wt%までのキチンと1から10wt%までのポリペプチドとを含む10から30重量部(wp)までの有機物質と微細混合された100wpの炭酸カルシウムを含む組成物を提供する。前記組成物は、100wpの炭酸カルシウム(CaCO)あたり、最大40wpまでのCaCO以外の無機塩と、最大30wpまでの水分とをさらに含み得る。本発明の好ましい態様では、前記組成物は甲殻類の胃石に由来する。本発明の別の好ましい態様では、前記組成物はCaCO、キチンおよびポリペプチド(Pp)の人工混合物に由来する。前記組成物は、100wpのCaCOと、キチンおよびポリペプチドから本質的になる15から25wpまでの有機物質とを含むことが好ましく、有機物質は、95から99wt%までのキチンと、1から5wt%までのポリペプチドとを含む。前記他の塩は、炭酸カルシウム量が所望の量から増大しないように、当然ながらカルシウムおよび炭酸を同時に含まないという条件で、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ストロンチウム、ナトリウム、リン酸、硫酸、炭酸、塩化物、臭化物、およびフッ化物を含む塩から選択されることが好ましい。
【0008】
本発明は、上述の組成物を含む経口投与用の医薬製剤をさらに対象とする。前記医薬製剤は、キチンおよびポリペプチド(Pp)から本質的になる有機物質(Om)と微細混合された炭酸カルシウム(CaCO)を含み、前記有機物質および前記CaCOは1/10から3/10までの比率で存在し、前記Ppおよび前記キチンは1/100から1/10までの比率で存在している。好ましい態様では、前記医薬製剤は甲殻類の胃石に由来する。別の好ましい態様では、前記医薬製剤はCaCO、キチンおよびPpの人工混合物に由来する。前記医薬製剤は、疼痛、増殖性疾患、神経障害、免疫障害、心臓血管疾患、肺疾患、栄養障害生殖障害、筋骨格障害、および歯科障害からなる群から選択された疾患を処置するための医薬製剤であり、キチンおよびPpから本質的になる有機物質(Om)と共に微細分散しているか、または微細混合されたCaCOを含み、前記有機物質および前記CaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している。前記処置は、それらの疾患の症状の緩和を含む。前記増殖性疾患は、肉腫、癌腫、リンパ腫および黒色腫から選択される。前記癌腫は乳癌または気管支原性肺癌であることが好ましい。前記処置は、腫瘍の縮小、それらの成長の停止、または腫瘍内の細胞増殖の減速もしくは阻害を含み得る。前記疼痛は、術後痛、損傷後疼痛、癌関連の疼痛および神経障害性疼痛から選択され得る。前記神経障害は、脱髄性疾患、認知症、および運動障害から選択され得る障害であり、前記障害は、例えば、多発性硬化症、アルツハイマー病、パーキンソン病、または他の変性疾患である。前記疾患は、骨折または骨粗鬆症などの骨障害または骨髄障害を含み得る。好ましい態様では、本発明の組成物は、神経変性障害を処置するのに使用される。
【0009】
本発明は、薬物としての、本発明による組成物の使用に関する。本発明は、癌、または神経変性障害、または骨障害および骨損傷を処置するための薬物の製造における組成物の使用にも関する。
【0010】
癌を処置する新規な方法であって、CaCOと微細混合された有機物質を含有する組成物を経口投与するステップを含み、前記有機物質はキチンおよびPpから本質的になり、前記有機物質およびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している方法が提供される。変性障害を処置する新規な方法であって、CaCOと微細混合された有機物質を含有する組成物を経口投与するステップを含み、前記有機物質はキチンおよびPpから本質的になり、前記有機物質およびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している方法も提供される。さらに、疼痛を管理する方法であって、CaCOと微細混合された有機物質(Om)を含有する組成物を経口投与するステップを含み、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、前記有機物質およびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10まで、好ましくは1/100から1/20までの比率で存在している方法を提供する。最後に、骨障害または骨損傷を処置する方法であって、CaCOと微細混合された有機物質を含有する組成物を経口投与するステップを含み、前記有機物質はキチンおよびPpから本質的になり、前記有機物質およびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している方法が提供される。前記疼痛を管理する方法、ならびに癌、変性障害、骨障害および損傷を処置する方法では、前記本発明による組成物を約0.5から約5gまでの日用量で経口投与する。
【0011】
本発明は、90から99wt%までのキチンと1から10wt%までのポリペプチドとを含む10から30重量部(wp)までの有機物質と微細混合された100wpの炭酸カルシウムを含む組成物を調製する方法であって、i)CaCOおよび有機物質(Om)を含有する物質を用意するステップであって、Om/CaCOの質量比は1/10と3/10との間にあり、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、Pp/キチンの質量比は1/100と1/10との間にあるステップと、ii)必要な場合には、上記混合物をホモジナイズするステップと、iii)その混合物中の含水量を100wpのCaCOあたり10から30wpまでに調整するステップとを含む方法を対象とする。本発明の好ましい態様では、上記ステップi)における前記CaCOおよびOmを含有する物質は生物学的供給源から得られる。別の態様では、ステップi)における前記CaCOおよびOmを含有する物質はそれらの成分の人工混合物である。前記生物学的供給源は、好ましくは十脚目から選択された甲殻類の器官または身体部分であり得る。前記本発明の方法は、i)CaCO、ならびにキチンおよびPpから本質的になるOmを含有する物質を用意するステップであって、Om/CaCOの質量比が1/10と3/10との間にあり、Pp/キチンの質量比が1/100と1/10との間にあるステップと、ii)混合物中の含水量を100wpのCaCOあたり最大30wpまでに任意に調整するステップと、iii)混合物中の、CaCO以外の無機塩の含有量を100wpのCaCOあたり最大40wpまでに任意に調整するステップと、iv)混合物をホモジナイズして、微細分散物を得るステップとを含む。生物学的供給源を利用する前記態様は、i)ザリガニを選択し、胃石の形成をモニタリングおよび任意に誘導するステップと、ii)生じた胃石を採集するステップと、iii)保持されている水が、100部のCaCOあたりわずか約20部となるまで、前記胃石を熱気中で乾燥するステップと、iv)前記乾燥した胃石を粉砕する(grind)ステップとを含み得る。人工混合物を利用する前記態様は、限定されるものではないが、1つの考えられる手順では、i)水酸化カルシウムを水中に分散させるステップと、ii)リン酸ナトリウムおよび/またはリン酸カリウムを任意に混合するステップと、iii)キチンおよびポリペプチドを添加しながら、分散物を二酸化炭素で飽和させるステップと、iv)懸濁液を遠心分離するステップと、v)上清の一部を廃棄するステップと、vi)保持されている水が、100部のCaCOあたりわずか約20部となるまで、分散物の、沈殿物を含有する部分を乾燥するステップとを含み得る。
【0012】
発明の詳細な説明
キチンおよびそれより少ない量のポリペプチドからなる約20重量部(wp)の有機物質と混合された100wpの炭酸カルシウムを含む組成物が、増殖性疾患または神経変性疾患を患っている患者に経口投与された際に、疾患の経過に驚くほど上向きな効果を有することが、今日では見出されている。詳細には、100wpの炭酸カルシウムあたり約20wpの、キチンおよびポリペプチドからなる有機物質を含み、かつ30wpの追加の無機塩および20wpの水分をさらに含有する、甲殻類の胃石に由来する組成物が、増殖性障害を有する患者で、治癒効果または緩和効果を示した。例えば、進行癌の症例を含む試験では、日用量1.5gの上述の胃石ベース組成物が、患者の疾患への劇的な効果をもたらした。数日以内に、患者によって疼痛の軽減が報告され、継続された処置中には、転移性腫瘍の血液検査の好転および寛解が変化に含まれた。他の試験では、約1gの前記組成物を毎日投与した際に、進行したアルツハイマー病(AD)を患っている患者が好転を示した。その際、良性効果には、認知能力の向上および身体活動度の増大が含まれ、さらに、慢性疼痛、とりわけ骨痛を患っている患者への緩和効果が含まれた。
【0013】
本発明による組成物は、骨の軟化および損傷を含む多様な群の疾患で疼痛を緩和し、すばらしい臨床検査値が患者の主観的な状態の改善に伴うことが見出されている。負傷または軟化した骨に関連した疾患を含む多様な群の症例で、何日間かから何カ月間かまでの実験時間中に投与された、日用量約0.8から1.5gまでの本発明による組成物が、骨折の治癒を加速させ、検査室試験結果を概ね改善した。観察された効果には、例えば、骨粗鬆症における骨密度の増大が含まれる。
【0014】
本発明は、キチンおよびポリペプチドからなる10から30重量部(wp)の有機物質と微細混合された100wpの炭酸カルシウムを含む組成物、ならびに慢性疼痛の管理、および慢性疼痛を含む疾患の処置における前記組成物の使用に関する。驚くべきことに、疼痛を軽減する一方で、本発明の組成物はさらに、増殖性疾患などの、その基底にある原因の治癒、またはアルツハイマー病などの、随伴している主要な障害の緩和にも寄与する。そのような予想外の効果を理解しようとする場合には、すべての生体機能の調節に、カルシウムが重要な役割を有することを考慮に入れられなければならない。カルシウムは、人体内の固体の最大5%までを形成し、さらに、骨における構造的な機能に加えて、その驚くほど少ない全量に鑑みて、約10−7Mという細胞内カルシウムイオン濃度によって示されるように、多くの重要な調節機能およびシグナリング機能を有する。カルシウムイオンは、細胞内シグナルトランスデューサーであり、筋肉収縮の制御、神経伝達物質の放出、ホルモンの分泌、細胞運動および有糸分裂の調節、ならびに遺伝子発現への作用に関与している。カルシウムシグナリングは、卵の受精に関与する際に、生命の始まりに立会い、細胞がアポプトーシスによって死ぬ際に、生命の終わりに立ち会う。
【0015】
発病機序が明らかでない場合でも、カルシウムが多くの障害に関与していることは不思議ではない。例えば、AD患者からの脳の組織の分析は、細胞のカルシウム恒常性の変化が神経変性過程に関連していることを示唆した。カルシウムが果たしている非常に大きな役割に鑑みて、その経口投与後に観察されたすべての効果に関して、とりわけ他の成分と共に投与された場合、単純な説明を示すことはできない。上述の通り、経口投与された物質の化学的状態および物理的状態の両方が結果に影響を与え得るが、酸性の胃環境に鑑みて、炭酸カルシウムは、とりわけ、甲殻類の胃石由来の炭酸塩などの非晶質炭酸塩が提供される場合、迅速に利用可能なカルシウム形態である。さらに、本発明の組成物には、100重量部の炭酸カルシウムあたり10から30重量部までのキチンおよびポリペプチドがあり、微細混合された有機成分が、投与されたカルシウムの挙動にどのように影響を与えるかはほとんど評価できない。本発明の組成物に由来する成分は、消化管を通って移動するので、キチンおよびタンパク質分子は、炭酸カルシウムの非晶質微粒子または微結晶への閉塞効果(occlusive effect)を示す可能性もあり、または、それらはキレート効果を示す可能性もあり、さらに、最終的な相互作用のタイプも、pHの変化および消化管に沿った消化因子の存在に従って変化する。消化管では、例えば胆汁酸、投与された組成物に由来するタンパク質、および体内に由来するタンパク質などを含めた様々な物質が、潜在的にカルシウムイオンと結合し得る。さらに、本発明の一見そのように単純な組成物の広範な影響を理解しようとする限り、微細分散している炭酸カルシウム粒子中の有機高分子の役割を考慮に入れられなければならない。吸入されたキチン粒子の免疫調節効果に関して記載する米国特許出願公開公報第2004/0234614号を一例とした、キチンの生物活性を示す様々な報告に示されているように、キチンが追加の効果を有している可能性がある。したがって、いかなる特定の理論にも拘泥しないが、本発明者らは、本発明による組成物の驚くほど良好な活性は、無機カルシウムおよび有機高分子の微細分散物と、非晶質または微晶質炭酸カルシウムと共に分散しているキチンおよびポリペプチド分子の混合物と、炭酸カルシウムの無機的/有機的な網の中に織り込まれたキチンおよびポリペプチドのコンシステンス(consistence)との共同効果の結果であり得ると考えている。本発明の物質の最終的効果に寄与する他の因子も存在し得るが、上記成分の相互作用、それらの記述、または関与している作用機序は、当然ながら、理論的に興味深くはあるが、本発明の一部ではない。
【0016】
本発明による組成物は、キチンおよびポリペプチドからなる有機物質と均質に混合され、微細分散している炭酸カルシウムを含む。別段の指定がない限り、「炭酸カルシウム」(CaCO)という用語が本明細書で使用される場合は常に、CaCOの微細分散物質または特定の(particular)CaCO物質が、意図されている意味であり、「キチン」という用語が使用される場合は常に、[1−4]−β結合N−アセチル−D−グルコサミンを含む、任意な由来のオリゴ糖または多糖が、意図されている意味であり、「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語が本発明の組成物に関して使用される場合は常に、経口投与用の、薬学的に許容される任意のポリペプチドまたは任意のポリペプチド混合物が、意図されている意味である。微細混合に関する場合、元の成分が、ナノ粒子のレベルにまで小さくされて混合されている混合物を提供するホモジナイゼーションを意味する。本発明の組成物に関する場合、「水」および「水分」という用語は、互換性をもって使用される。本発明による組成物中の前記有機物質は、100重量部の炭酸カルシウムあたり、総量が10から30重量部まで、かつポリペプチド/キチンの比率が0.01から0.1まで、好ましくは前記総量が15から25wpまで、かつ前記比率が0.01〜0.05までのキチンおよびポリペプチドを含む。本発明による組成物は、100wpの炭酸カルシウムあたり最大40wpまでの量の、炭酸カルシウム以外の無機塩と、100wpの炭酸カルシウムあたり最大30wpまでの量の水分とをさらに含み得る。
【0017】
本発明は、上記に定義した組成物を含む医薬製剤を対象とする。本発明の医薬製剤は、CaCOと、100wpの前記CaCOあたり総量で10から30wpまでのキチンおよびポリペプチドと、100wpあたり最大30wtまでの水とを含み、かつ追加の無機塩と、担体、結合物質、または希釈剤など、所望のコンシステンシーを得るために医薬製剤中で使用される成分とを、それらの成分は不活性であり、かつそれらの治療活性に関連した活性成分の化学的特性または物理学的特性にいかなる影響も与えないという条件で、さらに含み得る。簡潔に表現するために、所望のコンシステンシーを医薬製剤に与えることを意図した上述の成分を、本明細書では「充填剤」と呼ぶ。好ましい態様では、いかなる充填剤も用いずに、本発明による組成物に加圧して錠剤にする。特定の適用のために、本発明による製剤中に、追加の薬学的活性薬剤を任意に包含させてもよく、前記追加の薬剤は、例えば、抗ウィルス薬、抗真菌薬、抗菌薬、消毒薬、抗炎症薬もしくは免疫調節薬、抗腫瘍薬、および鎮痛薬から選択され得る。
【0018】
本発明は、医薬品として使用するための、キチンおよびポリペプチドと微細混合されたCaCOを含む組成物を提供する。前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率は、100wpのCaCOあたり10から30wpまでの間の有機物質であり、前記組成物は、100wpのCaCOあたり最大30wtまでの水を含み、100wpのCaCOあたり最大40wpまでの追加の無機塩をさらに含み得る。
【0019】
一側面では、本発明は、肉腫、癌腫、リンパ腫および黒色腫から選択された増殖性疾患を処置するための組成物を提供する。例えば、気管支原性肺癌に利用可能な現在の処置には、手術、放射線療法および化学療法が含まれる。前記疾患は、男性(32%)および女性(25%)での癌死亡の主要原因である一方で[The Merck Manual of Diagnosis and Therapy、第17版、1999年]、前記疾患は、予後が不良である。そして、見通しを改善するか、または疼痛を含めた最も苦痛の大きい症状を少なくとも緩和する追加処置の真に緊急な必要性が感じられている。しばしば見られる症状には、骨痛が含まれる。癌疼痛症状群は、腫瘍が骨もしくは軟部組織に侵入するか、神経を圧迫するか、もしくは神経に浸潤するか、または中空の内臓を閉塞することによって引き起こされるか、あるいはそれらは治療の後に起こり得る。本発明による組成物は、肺癌を有する患者の疾患を改善させることが実証された。さらに、本発明による組成物は、増殖性疾患に関連した骨痛を緩和することが見出された。詳細には、キチンおよびポリペプチドと微細混合されたCaCOを含む、甲殻類の胃石に由来する組成物であって、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率は100wpのCaCOあたり約20wpの有機物質であり、前記物質はキチンおよびタンパク質から本質的になり、かつ100wpのCaCOあたり約30wpの無機塩および約20wpの水分をさらに含有する組成物が、日用量0.5〜2.0gで腫瘍収縮を引き起こすことが見出された。
【0020】
最も頻繁に発症している増殖性疾患のなかには、乳癌があり、8人に1人の女性が苦しめられている。肺癌よりは良い予後を示すが、薬物の毒性および有害作用を含めた、多くの合併症がしばしば現れ、その際、一部の女性は標準的治療に反応しない。この場合も、処置には、手術、放射線療法、および化学療法が含まれ得るが、最終的には内分泌療法が伴う。しかし、乳癌には、より多くの処置要素を同時または順次に採用する必要がある。例えば、化学療法が含まれる場合には、併用療法を用いるべきである。いかなる場合でも、通常、対症療法および二次的障害の処置が必要であり、それらの障害には、外傷、中毒、照射後の症状、二次感染などが含まれ得る。転移が発生した場合、現在の処置では、中央値で3から6カ月までの生存期間の延長がもたらされるに過ぎない。新薬の必要性が感じられている[The Merck Index、同上、1982頁]。本発明による組成物は、他の臓器に転移している乳癌を有する患者の疾患を改善させることが実証されており、これらの改善には、腫瘍の収縮、骨量の増大、放射線療法後における爪の成長の再生、および検査室血液値の改善が含まれる。詳細には、キチンおよびポリペプチドと微細混合されたCaCOを含む、甲殻類の胃石に由来する、本発明による組成物であって、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率は100wpのCaCOあたり約20wpの有機物質であり、前記物質はキチンおよびタンパク質から本質的になり、かつ100wpのCaCOあたり約20wpの水および約30wpの無機塩をさらに含有する組成物が、毎日、最大2.0gまでの量で非常に有効であることが示された。重要なことに、本発明の組成物の投与は、驚くべきことに、疼痛を含めた、様々な診断パラメータおよび症状に同時に影響を与え、疼痛は緩和される。現在の処置は、侵襲性が強く、しばしば外傷を、また例えば、放射線療法後の一部の患者における肋骨骨折のように、損傷さえもたらし[同上、1979頁]、本発明の組成物は、骨治癒を促進するので、これらの場合にも驚くほど寄与し得る。さらに、本発明の組成物は、様々な障害で、対症効果、とりわけ骨痛への緩和効果を有することが見出されたので、それは乳癌の複合療法にも非常に有用であろう。それらの複合療法では、多くの鎮痛剤が有害作用を有し、一部のものは効果的でない。
【0021】
本発明の別の側面では、疼痛、認知症、または他の神経変性障害などの神経障害を処置するための組成物を提供する。認知症の一例がアルツハイマー病であり、年齢60歳超での、その発生率は、年齢の増大と共にほぼ直線的に増大し、高齢者の認知症の65%超を占めている[同上]。認知機能を徐々に破壊し、最終的には、重度の合併症および身体的活動の制限をもたらすこの疾患に対しては、いかなる有効な処置も知られていない。キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質中に分散しているCaCOを含み、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率が100wpのCaCOあたり10から30wpまでの間の有機物質である、本発明による組成物は、アルツハイマー病の症状を緩和することが見出された。詳細には、キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質と微細混合されたCaCOを含み、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率が100wpのCaCOあたり約20wpの有機物質であり、かつ100wpのCaCOあたり約20wpの水および約30wpの無機塩をさらに含有する、甲殻類の胃石に由来する組成物は、0.8から1.5gまでの日用量で投与された患者における、アルツハイマー病の症状を緩和することが見出され、良性効果には、認知能力の向上および身体活動度の亢進が含まれ、重要なことに、慢性疼痛を有する患者で、前記組成物の対症効果が観察された。
【0022】
神経障害には疼痛が含まれる。疼痛は、時には、癌または術後痛など、詳細に特定された基礎疾患または原因の症状であり、時にはそれは、神経障害性疼痛など、明確な理由がなく起こる障害である。慢性疼痛は、例えば、傷害の後に発症し得る。既存の処置には、鎮痛剤、抗うつ薬または麻酔薬の投与が含まれるが、それらは、効果がない可能性も、有害作用を有する可能性もあり、それゆえ、新規な処置が必要である。本発明による組成物は、多様な症例で疼痛を緩和した。したがって、それらは疼痛管理のための有害でない代替手段であると考えられる。キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質と微細混合された炭酸カルシウムは、経口投与された際に、ほとんど毒性誘発を示さない可能性がある。詳細には、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率が100wpのCaCOあたり約20wpの有機物質であり、約20wpの水および30wpの無機塩をさらに含有する、本発明による胃石由来の組成物は、約1〜1.5g(患者の体重および年齢に応じて)の数日用量(1週間以内)で投与された際に、多様な診断された状態、とりわけ骨痛を有する患者の痛みを緩和することが見出された。
【0023】
本発明のさらに別の側面では、骨障害もしくは骨髄障害、骨折または骨粗鬆症を処置するための組成物を提供する。ヒトにおける骨形成は、約45歳の年齢まで、骨吸収を上回るか、またはそれに等しく、その後、純減少が1年あたり約0.5%の期間が続き、女性は、閉経後の数年間に最大10倍まで高い速度での骨減少を経験し得る。患者は、しばしば骨または筋の疼痛に苦しみ、骨折する可能性もある。1から1.5gまでのカルシウムを毎日摂取することが推奨されている。CaCO中に分散された、キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質と微細混合されたCaCOを含み、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率が、100wpのCaCOあたり10から30wpまでの有機物質である、本発明による組成物は、骨粗鬆症を患っている患者の疾患を改善させることが見出された。詳細には、キチンおよびポリペプチドから本質的になる有機物質と微細混合されたCaCOを含み、前記組成物中の炭酸カルシウムに対する有機物質の比率が100wpのCaCOあたり約20wpの有機物質であり、約20wpの水および約30wpの無機塩をさらに含有する、甲殻類の胃石に由来する組成物は、約0.5gの日用量で投与された際に、骨粗鬆症の症状を緩和し、骨減少を停止させることが見出され、1.5gでは、背骨で測定した骨密度の増大を含む改善をもたらした。本発明の組成物は骨折の治癒を加速させた。
【0024】
説明したように、本発明は、増殖性疾患、神経疾患、骨障害および慢性疼痛からなる群から選択された疾患を処置する方法であって、炭酸カルシウム、キチンおよびポリペプチドからなる治療のための量の組成物を投与するステップを含み、炭酸カルシウムに対する有機物質の質量比が1/10から3/10までであり、キチンに対するポリペプチドの質量比が1/100から1/10までである方法を提供する。好ましくは、前記組成物は、100重量部のCaCOあたり最大30重量部までの量の水および最大40重量部までの量の無機塩をさらに含む。その組成物は、症状の改善を得るか、前記疾患に関連した、基底にある原因を治癒するのに十分な期間、毎日1用量投与することが好ましい。上記の新知見に基づいて、本発明は、カルシウム代謝またはカルシウムシグナリングに関連した障害を処置または緩和する手段を提供する。カルシウム代謝またはカルシウムシグナリングに関与する疾患には、免疫学的、増殖性、神経学的、心血管および肺の疾患、栄養障害、筋骨格障害、ならびに歯科障害が含まれる。前記増殖性の疾患には癌が含まれ、前記処置または緩和は、腫瘍を縮小させること、または前記腫瘍内の発癌性細胞の増殖を阻止することを含み得る。前記神経学的疾患は、MSなどの神経変性脱髄性疾患、ADなどの認知症、およびパーキンソン病などの運動障害が含まれる。本発明による組成物の利点は、その成分が無害であることである。その成分は、天然素材の一部であり、時には飲食されることもある。毒性測定は、その組成物が経口投与用に安全であることを確認した。治療のための日用量0.5gから2gまでの組成物が特定の症例で有用であることが見出されているが、当業者なら理解するように、低毒性に鑑みて、必要な場合には用量を増大させてもよい。
【0025】
本発明は、キチンおよびポリペプチド(Pp)から本質的になる有機物質と微細混合または分散されている炭酸カルシウムを含み、(キチン+Pp)/CaCOの質量比が1/10と3/10との間にあり、かつPp/キチンの質量比が1/100と1/10との間、好ましくは1/100と1/20との間にある、甲殻類の胃石の組成物が有するある特定の特徴を模倣する組成物、および薬物の調製におけるその使用に関する。本発明の組成物は、100質量部のCaCOあたり約30質量部までの水分を含んでいてもよく、かつ、それは、100質量部のCaCOあたり約40質量部までの、炭酸カルシウム以外の無機塩をさらに含んでいてもよい。本発明の好ましい態様では、前記CaCOが本質的に非晶質である。前記他の塩は、例えば、マグネシウム、カリウム、ストロンチウム、およびナトリウムから選択された陽イオンと、炭酸、リン酸、硫酸、塩化物、臭化物、およびフッ化物から選択された陰イオンとを含み得る。陰イオンおよび陽イオンという用語は、塩の組成を単純に記載するのに使用し、塩の溶解性に関しては含意しないものである。前記炭酸カルシウムが非晶質である場合、国際公開パンフレット第2005/115414号に開示されている通り、IRおよびX線の分析指標が取得される。リン酸など、一部の塩は、炭酸カルシウムの非晶質状態を支持し得ることが知られている。前記本発明の組成物は、100重量部の炭酸カルシウムと、キチンおよびポリペプチドから本質的になる10から30重量部の有機物質とを含有し、前記混合物中に最大30重量部までの水と、CaCO以外の、薬学的に許容できる最大40部までの無機塩とを任意にさらに含む混合物をホモジナイズすることによって調製でき、その際、前記ホモジナイズすることによって全成分の微細分散が得られ、好ましくは、炭酸カルシウムが非晶質または微晶質として現れる。別法では、生物源から、例えば、特定の器官または身体部分に、炭酸カルシウムおよび前記有機物質を含有している甲殻類から、前記本発明の組成物を入手できる。前記甲殻類には、例えばザリガニに代表される十脚目が含まれることが好ましい。前記身体の一部は、胃石または外骨格の部分を含むものでありえ、それらは、ザリガニ、例えばレッドクロウ(Cherax quadricarinatus)のものが好ましい。
【0026】
本発明は、キチンおよびPpから本質的になる有機物質(Om)と微細混合または分散されている炭酸カルシウムを含む組成物を調製する方法であって、i)CaCO、キチンおよびPpを含有する物質を用意するステップであって、Om/CaCOの質量比は1/10と3/10との間にあり、Pp/キチンの質量比は1/100と1/10との間にあるステップと、ii)混合物中の含水量を100wpのCaCOあたり最大30wpまでに任意に調整するステップと、iii)混合物中の、CaCO以外の無機塩の含有量を100wpのCaCOあたり最大40wpまでに任意に調整するステップと、iv)混合物をホモジナイズして微細分散を得るステップとを含む方法を提供する。前記ホモジナイズには、撹拌、粉砕または粉化(milling)が含まれ得る。前記水調整には、より高温またはより低気圧下での乾燥が含まれ得る。好ましい態様では、前記本発明の方法は、ザリガニを選択し、胃石の形成をモニタリングおよび任意に誘導するステップと、生じた胃石を採集するステップと、それらを熱気中で乾燥するステップと、粉砕して、それによって本発明の組成物を得るステップとを含む。他の好ましい態様では、前記本発明の方法は、水酸化カルシウムを、任意に、より少量のリン酸ナトリウムおよび/またはリン酸カリウムと共に、水中に分散させるステップと、キチンおよびポリペプチドを添加しながら、懸濁液を二酸化炭素で飽和させるステップと、懸濁液を遠心分離するステップと、沈殿物を上清の一部と共に乾燥して、それによって本発明の組成物を得るステップとを含む。当業者ならば、所望の比率を得るための成分量を計算できる。前記ポリペプチドは、経口投与用に許容できる可溶性タンパク質および不溶性タンパク質から選択できる。
【0027】
実施例
実施例1
レッドクロウの胃石は、記載されている通りに調製した[国際公開パンフレット第2005/115414号]。100部のCaCOあたり約20部の水を含有する乾燥した胃石を粉砕して、以下CM1と表す、本発明による組成物を産生させた。既に記載されている方法[同上]に従ってCM1に加圧して錠剤にすることによって、本発明による医薬製剤を得た。
【0028】
CM1の毒性は、ラットで判定した(Harlan Biotech社、イスラエル国レホボト(Rehovot)所在)。1kg体重あたり65mgの日用量のCM1は、死亡も、いかなる目立った臨床徴候も引き起こさなかった。すべての検査値は、14日間の全期間を通して正常であった。
【0029】
実施例2
74gの水酸化カルシウムを約250mlの蒸留水中に懸濁し、撹拌した。以下の成分、すなわち、5gのNaHPO、5gのKHPO、18gの微細に粉化されたカニ殻キチン、および4gのBSAを添加しながら、懸濁液中に二酸化炭素を送気した。COで飽和させた後、懸濁液の容積を、水で400mlに調整し、懸濁液を遠心分離した。200mlの上清を廃棄し、沈殿物を含む残量をホモジナイズし、水分が13%になるように乾燥し、粉砕して、CM2と表す、本発明による組成物を得た。
【0030】
実施例3
5名のAD患者に、0.5gのCM1を含有する、実施例1に記載の通り調製した錠剤を投与した。患者は、毎日0.5〜2.0gを投与された。数日以内に上向きな反応が起こり、4から7日以内に慢性疼痛が軽減され、約1週間以内に患者の認知能力および身体的活動が亢進した。
【0031】
実施例4
他の臓器に転移を有する進行性乳癌を患っている3名の患者に、0.5gのCM1を含有する、実施例1に記載の通り調製した錠剤を投与して、1用量で0.5〜2.0gを与えた。数日後に、全身の感覚および疼痛に関する上向きな結果が報告され、患者の状態は、現在に至る7カ月間の全処置期間を通して、改善され続けた。臓器内の腫瘍は徐々に縮小し、肺では50%未満に達し、骨内ではほぼ消失し、肝臓では完全に消失した。骨密度は増大した。1名の患者では、化学療法によって、彼女の爪が破壊され、本発明による処置の後に、爪が再び伸び始めた。血液パラメータおよびカルシウムを含めた検査値が改善された。処置開始の数日後に、患者が疼痛の実質的軽減を報告し、2人の患者で便秘が認められ、処置された。
【0032】
実施例5
4年前の診断時から肺、肝臓、および骨に転移を有する乳癌を患っている女性患者は、化学療法およびホルモン療法を受けていたが、それらは非反応性であり、1年前に、アレディアを併用したアロマシンを用いた毎月の処置で置換した。毎日2gのCM1を用いた処置を開始する前の数カ月間、彼女は手の痙攣と、夜間の強い疼痛とに苦しめられていて、彼女は、彼女の手からものが落ちて、通常の家事を行うのに障害を有していた。彼女はカルシウム添加物(Vita Cal)を摂取していたのにもかかわらず、アレディアの使用のため、彼女は低カルシウム値(7.1mg%)を示した。本発明による組成物を用いた処置を開始した後に、カルシウム添加物を停止した。
【0033】
日用量2gのCM1で開始した1カ月後に、患者はカルシウム値(9.3mg%)の改善を示した。疼痛および痙攣がなくなり、彼女の睡眠が改善され、彼女の能力が大きく向上した(彼女は、3年間で初めて、パン生地を準備することができた)。彼女は、より強くなり、より上手に歩くことができ、彼女は頭痛薬を必要としない。最後のCT検査は、骨および肝の成長の状態が安定したこと、ならびに乳房および肺の成長が改善の傾向にあることを示している。
【0034】
実施例6
年齢55〜78歳の、骨粗鬆症を患っている4名の患者に、CM1の錠剤を毎日投与した。1名の患者は、彼女の状況に変化がないまま、0.5gの日用量を4カ月間投与されていた。他の患者は、毎日1.5gを5週間投与され、骨密度の増大を示した(結果は骨粗鬆症の4年前の状況と比較した)。1名の患者(72歳)は、毎日0.8gを2カ月間投与され、毎日1.5gを2カ月間投与されていた。背骨で測定された骨密度は、実質的に増大していた(骨のいくつかの領域で最大13%まで)。甲状腺の活性の改善が1名の患者で報告された。
【0035】
実施例7
それぞれ、骨盤、背中、および足(40歳男性)、脚(9歳)、ならびに指(40歳女性)を含むいくつかのタイプの骨折を患っている3名の患者に、CM1錠を最大2週間まで投与した。2つの領域で骨折した指は、完全に治癒するまで1週間処置した。1名の負傷患者における骨盤、背中、および足の骨折は、第2週から2週間、毎日1.5gを摂取した場合に、完全な回復まで6週間かかったが、医師による回復期間の初期見込みは最大約6カ月までであった。下肢骨折の患者は、毎日0.5gのCM1を摂取し、3日以内に疼痛の軽減を経験し、1週間後に完全に回復した(医師によって3週間かかると推算されていた)。
【0036】
実施例8
抗うつ薬およびメサドンまたは関連薬物で約20年間処置されている年齢50歳の女性患者が腎臓障害および彼女の下顎骨のさらなる重度な障害を発症した。1日あたり約1.5グラムの乾燥した胃石で1カ月間処置した後、患者は、気分が改善し、彼女の体重が増加し、抗うつ薬およびメサドンの使用を停止した。彼女の下顎骨の状態は実質的に改善された。
【0037】
実施例9
それぞれ5匹のメスからなる5つの群のラットに、通常の粒状餌を与えた。群(1)および群(2)の動物は、月齢1カ月で卵巣摘出し、群(3)の動物は、対照群として働くように、卵巣摘出をせずに、開腹のための切開のみを行った。術後、群(1)には、1.2wt%の乾燥した胃石で強化された食餌が与えられ、群(2)には、相当する量の結晶性炭酸カルシウムで強化された食餌が与えられ、群(3)には、強化されていない食餌が与えられた。手術の6週間後に、これらの動物を屠殺した。
【0038】
以下のパラメータ、すなわち、全体重;カルシウム、リン酸、エストラジオールを含めた血液値;動物の屠殺後における大腿骨および脛骨の質量;大腿骨および脛骨の組織学;大腿骨および脛骨灰(800℃、12時間)の質量;ならびに灰中のCaおよびMg含量を検査した。
【0039】
群相互における処置のタイプの相違によって、体重はあまり影響を受けなかったが、対照群(「偽手術」)のエストラジオールが他より高いことは、卵巣摘出動物が骨粗鬆症モデルとして働き得ることを示唆した。それらの食餌で胃石を得た動物は、結晶性の炭酸カルシウムを与えられた動物と比較した際に、より高い骨量、より高い灰質量、およびより高い灰中カルシウム含量とマグネシウム含量の両方を示した。
【0040】
本発明を一部の特定の実施例に関して記述したが、多くの改変および変形が可能である。したがって、添付されている特許請求の範囲内において、本発明は、明確に記載されたものとは異なる方法でも実現できることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10から30重量部(wp)までの有機物質と微細混合された100wpの炭酸カルシウムを含む組成物であって、前記有機物質は90から99wt%までのキチンと1から10wt%までのポリペプチドとを含む組成物。
【請求項2】
40wpまでの炭酸カルシウム(CaCO)以外の無機塩および30wpまでの水分を、100wpのCaCOあたりでさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
甲殻類の胃石に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
CaCO、キチンおよびポリペプチド(Pp)の人工混合物に由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
100wpのCaCOと、15から25wpまでの有機物質とを含み、前記有機物質は95から99wt%までのキチンと、1から5wt%までのポリペプチドとを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
他の塩が、マグネシウム、カルシウム、カリウム、ストロンチウム、ナトリウム、炭酸、リン酸、硫酸、塩化物、臭化物およびフッ化物を含む塩から選択され、カルシウムおよび炭酸を同時に含まない、請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
経口投与用の請求項1に記載の組成物を含む医薬製剤であって、充填剤を任意に含む、医薬製剤。
【請求項8】
カルシウム代謝またはカルシウムシグナリングに関連した疾患を処置するための、キチンおよびポリペプチド(Pp)から本質的になる有機物質(Om)と微細混合された炭酸カルシウム(CaCO)を含む医薬製剤であって、前記Omおよび前記CaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している医薬製剤。
【請求項9】
甲殻類の胃石または他の甲殻類骨格部に由来する、請求項8に記載の医薬製剤。
【請求項10】
CaCO、キチンおよびPpの人工混合物に由来する、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
キチンおよびPpから本質的になるOmと微細混合されたCaCOを含む医薬製剤であって、前記Omおよび前記CaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在していて、疼痛、増殖性疾患、神経障害、免疫障害、心臓血管疾患、肺疾患、栄養障害、生殖障害、筋骨格障害および歯科障害からなる群から選択される疾患を処置するための、医薬製剤。
【請求項12】
処置が症状の緩和を含む、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項13】
増殖性疾患が、肉腫、癌腫、リンパ腫および黒色腫から選択される、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項14】
癌腫が、乳癌または気管支原性肺癌である、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項15】
処置が、腫瘍内の細胞増殖の鈍化または阻害を含む、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項16】
疼痛が、術後痛、損傷後疼痛、癌関連の疼痛および神経障害性疼痛から選択される、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項17】
神経障害が、脱髄性疾患、認知症および運動障害から選択される、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項18】
疾患が、多発性硬化症、アルツハイマー病およびパーキンソン病から選択された変性疾患である、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項19】
疾患が、骨障害または骨髄障害を含む、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項20】
障害が、骨折または骨粗鬆症を含む、請求項19に記載の医薬製剤。
【請求項21】
疾患が、神経変性障害である、請求項11に記載の医薬製剤。
【請求項22】
請求項1に記載の組成物の薬物としての使用。
【請求項23】
癌を処置するための薬物の製造における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項24】
神経変性障害を処置するための薬物の製造における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項25】
骨障害および骨損傷を処置するための薬物の製造における、請求項1に記載の組成物の使用。
【請求項26】
癌を処置する方法であって、CaCOと微細混合されたOmを含有する組成物を経口投与することを含み、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、前記OmおよびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している、
方法。
【請求項27】
変性障害を処置する方法であって、CaCOと微細混合されたOmを含有する組成物を経口投与することを含み、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、前記OmおよびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している、方法。
【請求項28】
疼痛を管理する方法であって、CaCOと微細混合されたOmを含有する組成物を経口投与することを含み、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、前記OmおよびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している、方法。
【請求項29】
骨障害または骨損傷を処置する方法であって、CaCOと微細混合されたOmを含有する組成物を経口投与するステップを含み、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、前記OmおよびCaCOは1/10から3/10までの比率で存在しており、前記Ppおよびキチンは1/100から1/10までの比率で存在している、方法。
【請求項30】
組成物を約0.5から約3gまでの日用量で経口投与する、請求項26から29までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1に記載の組成物を調製する、以下を含む方法:
i)CaCOおよび有機物質(Om)を含有する物質を与えることであって、Om/CaCOの質量比が1/10と3/10との間にあり、前記OmはキチンおよびPpから本質的になり、Pp/キチンの質量比が1/100と1/10との間にある;ならびに
ii)前記混合物の含水量を、100wpのCaCOあたり10から30wpまでに調整すること。
【請求項32】
組成物中の炭酸カルシウムが、非晶質または微晶質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
ステップi)における前記CaCOおよびOmを含有する物質が、生物学的供給源から得られる、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
ステップi)における前記CaCOおよびOmを含有する物質が、前記成分の人工混合物である、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
供給源が、甲殻類の器官または身体部分である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
甲殻類が、十脚目から選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
以下を含む、請求項31に記載の方法:
i)CaCO、ならびにキチンおよびPpから本質的になるOmを含有する物質を与えることであって、Om/CaCOの質量比が1/10と3/10との間にあり、Pp/キチンの質量比が1/100と1/10との間にある;
ii)混合物中の含水量を100wpのCaCOあたり30wpまでに、任意に調整すること;
iii)混合物中の、CaCO以外の無機塩の含有量を100wpのCaCOあたり40wpまでに任意に調整すること;ならびに
iv)混合物をホモジナイズして、微細分散物を得ること。
【請求項38】
以下を含む、請求項33に記載の方法:
i)ザリガニを選択し、胃石の形成を、モニタリングし、および任意に誘導すること;
ii)生じた胃石を採集すること;
iii)前記胃石を熱気中で乾燥して、保持されている水が、100部のCaCOあたり約20部だけにすること;ならびに
iv)前記乾燥した胃石を粉砕すること。
【請求項39】
以下を含む、請求項37に記載の方法:
i)水酸化カルシウムを水中に分散させること;
ii)任意に、リン酸ナトリウムおよび/またはリン酸カリウムを混合すること;
iii)キチンおよびポリペプチドを添加しながら、該分散物を二酸化炭素で飽和させること;
iv)懸濁液を遠心分離すること;
v)上清の一部を廃棄すること;および
vi)前記分散物のうち、沈殿物を含有する部分を乾燥し、保持されている水が、100部のCaCOあたり約20部だけにすること。

【公表番号】特表2010−505818(P2010−505818A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531012(P2009−531012)
【出願日】平成19年10月7日(2007.10.7)
【国際出願番号】PCT/IL2007/001211
【国際公開番号】WO2008/041236
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(501223803)ベン グリオン ユニバーシティ オブ ザ ネゲブ リサーチ アンド ディベロップメント オーソリティ (2)
【出願人】(509095891)
【Fターム(参考)】