説明

画像の解析及び表現

閉じた走査曲線を定義するマッピング関数を使用して画像の一次元表現が得られる。この関数は、双方向フィルタを使用して、表現の帯域幅の異なる部分を表す成分信号に分解され、ゼロの群遅延が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の背景]
[技術分野]
本発明は、画像を解析、分類及び/又は表現する方法及び装置、並びに画像を表す信号の処理に関する。
【0002】
輝度/色パターンの規則性、粗さ又は滑らかさに関連する、画像中の領域の特定の視覚的特徴は一般にテクスチャ属性と呼ばれる。テクスチャ属性は人間の物体知覚及び物体認識にとって重要である。テクスチャ属性はマシンビジョンにおける様々なタスク、例えば、様々なスペクトルイメージセンサから得られる衛星画像又は航空画像の解析のような自動目視検査又はリモートセンシングにも適用することが可能である。
【0003】
テクスチャ解析は通常、画像又は領域から特徴的なテクスチャ特徴を抽出することを含み、このようなテクスチャ特徴を後に画像マッチング、領域分類等に使用することができる。
【0004】
[先行技術の記載]
欧州特許出願第1306805号明細書は、画像、特に画像のテクスチャ属性を分類する方法を記載している。この方法は、所定のマッピング関数を使用して画像の二次元表現を一次元表現にマッピングすることによってテクスチャを表す特徴ベクトルを導き出し、次にこの表現のレベル交差統計、特に(i)表現が1つ又は複数の基準レベル(しきい値)と交差するレート、(ii)基準レベルと交差する時に表現が変化するレート、及び(iii)表現が1つ又は複数の基準レベル(しきい値)を上回った(又は下回った)ままである平均継続期間を求めることを含む。
【0005】
欧州特許出願第1306805号明細書に記載されるようなレベル交差統計を使用する新規な統計テクスチャ記述子が、Proceedings of the 17th International Conference on Pattern Recognition (ICPR-2004), Cambridge UK, 23-26 August 2004で発表されたC. Santamaria、M. Bober及びW. Szajnowskiの論文「Texture Analysis using Level Crossing Statistics」(本明細書中では「ICPR−04」と呼ぶ)に提示されている。記述子の抽出(すなわち、レベル交差特徴の統計解析)は移動窓内で、解析窓内の信号の最小振幅値、最大振幅値及び平均振幅値から求められる4つの基準レベルを使用して行われ、これらの4つのレベルは、最大値の25%、50%、75%及び信号の平均値である。様々な空間スケールで現れる画像属性を記述するために、3つの異なるセグメント長、すなわち、21ピクセル、201ピクセル、及び1001ピクセルを使用する。この提示されるアルゴリズムは、テクスチャベースの画像検索タスク及びテクスチャベースの画像分割タスクの両方において従来技術よりも優れているが、性能及び属性はさらに改善できることが分かっている。
【0006】
[発明の概要]
本発明の態様は添付の特許請求の範囲に記載される。
【0007】
本発明のさらなる独立態様によれば、画像の一次元表現が、その表現の占める周波数帯域の様々な部分を表す成分信号に分解される。
【0008】
好ましくは、分解は、ローパスフィルタを使用して、好ましくは実質的に一定で既知の(好ましくはゼロの)群遅延により表現をフィルタリングし、このフィルタリングした信号(すなわち、フィルタの出力における信号)を元の信号から減算することによって達成される。この手順を数回繰り返すと、いくつかの帯域制限成分信号が得られる。したがって、好ましい実施の形態では、異なるフィルタ特性を有する複数のローパスフィルタを使用して、異なる上限周波数まで広がる複数の異なるバージョンの表現が生成され、各バージョンが次に高い上限周波数を有するバージョンから減算されて、それぞれの成分関数が与えられる。
【0009】
本発明の好ましい一実施の形態において、再帰フィルタリングを逆方向及び順方向に適用することによって、ちょうどゼロの群遅延を有するフィルタが得られ、単純なカーネルの使用が可能になる。
【0010】
画像解析では、画像属性を様々な空間分解能で記述する必要がある場合が多い。ICPR−04の実装はそれを、異なる長さ、すなわち、21ピクセル、201ピクセル、及び1001ピクセルを有する3つの信号解析窓を使用することによって達成する。窓長は経験的に求められた(すなわち、テクスチャ解析用途に最適化された)が、これは非常に時間がかかるプロセスであり、全ての異なる用途及び画像データに対して最適な性能を保証することはできない。バンドパス信号は、特定の条件下で(例えば、当該信号の特性に応じて上限カットオフ周波数の下限カットオフ周波数に対する比が2〜3である場合に)ゼロ交差点のセットにより適切に表現することができることが知られている。上記の本発明の態様は、複数の解析窓を使用する必要なく画像の多解像度表現を可能にする。これは、帯域幅制限成分信号への新規の信号分解を適用すると共に、各成分信号に対してレベル統計解析を適用することによって達成される。
【0011】
好ましい一実施の形態において、画像解析に使用される成分帯域制限信号(あるいはチャネル)の数は、最低周波数帯域の信号エネルギーを求めることによって適応的に決めることができる。その結果、多解像度「スケール」の数及びその空間的広がりが、画像の属性に応じて適応的に定められる。
【0012】
欧州特許出願第1306805号明細書及びICPR−04論文に提示される手法において、テクスチャ解析に使用される交差レベルはアドホックに選択される。画像の輝度又は色成分は、振幅の非対称な統計分布を有すると共に多くの場合に非定常挙動を有する非負関数を形成するため、いずれの1つの固定レベル又は複数の固定レベルの交差も適切な画像信号の特徴付けを提供しない。この問題は、上記の本発明の態様を使用することによって解消するか、又は少なくとも軽減することができる。特に、好ましい一実施の形態において、帯域幅制限成分信号を導き出すために使用されるローパスフィルタもまた、別の成分信号の適応的な基準レベルを定めるために使用される。
【0013】
本発明のさらなる独立態様は、画像を一次元関数にマッピングするために使用されるマッピング関数に関する。このさらなる態様によれば、マッピングは、局所領域充填属性を有する新たなタイプの閉じた輪郭走査パターンを使用して達成される。
【0014】
処理されるべき最初の画像は、非負関数f(x,y)≧0によりデカルト座標系で記述され、ここで、x及びyは2つの空間的変数である。便宜的に、これらの空間的変数x及びyはいずれも以下のように限定されるものと仮定し得る:0<x<xmax且つ0<y<ymax。デジタル処理の目的で、最初の画像f(x,y)は、所定の離散的な位置{x,y:i=1,2,...,I;j=1,2,...,J}において求められるそのサンプルf(x,y)で表現される。通常、これらの位置は、明確で規則的な点パターン、例えば正方形又は六角形のラスターを形成する。
【0015】
好ましくは、本発明のこの態様によれば、結果として得られる画像f(x,y);i=1,2,...,I;j=1,2,...,Jは、以下の属性を有する走査曲線を使用することによって単一の離散的な空間的変数z(k=1,2,...,K)の関数f(z)である走査された画像にマッピングされる:
走査曲線z(k=1,2,...,K)は各点(x,y);1,...,I;j=1,...,Jを一度だけ通る。よって、K=I・Jである。
走査曲線z(k=1,2,...,K)は閉じている。したがって、zK+1=z,zK+2=z,...であり、走査を繰り返すと、走査画像関数f(z)の正確な周期的拡張が生成される。
好ましくは、走査曲線z(k=1,2,...,K)は、ヒルベルト曲線又はペアノ曲線等の平面充填曲線の少なくとも一部の属性を示す。
【0016】
走査曲線は、主平面充填曲線を、この主曲線の平行移動、回転及び/又は鏡映によって得られるいくつかのその複製と適宜組み合わせることによって構築することができる。
【0017】
閉じた走査曲線の使用から得られる利点の1つは、得られる信号を周期的と見なすことができることであり、したがって、一次元画像表現を例えば再帰フィルタによりフィルタリングしたい場合に、既知の方法を使用すること、又は単に適切な「試走」期間("run-in" interval)を使用することによって初期のフィルタ条件を決めることができることである。
【0018】
上記の本発明の態様は独立して有利であり、別々に使用可能である。しかし、それらを組み合わせることに大きな利点があるため、閉じた走査曲線の使用が、一次元画像を分解してその解析を改善するために使用されるフィルタの動作を高める。
【0019】
本発明を主に、画像のグレーレベルにより表されるテクスチャの解析の文脈で説明するが、本発明はそれに加えて又はそれに代えて、色成分、色成分差及び多スペクトル画像等の他の画像特性を解析するために使用することもでき、本明細書中で使用される「テクスチャ」という用語はそれに応じて解釈されるべきである。
【0020】
本発明を実施する構成を例として添付図面に関して説明する。
【0021】
[好適な実施形態の詳細な説明]
図1は、本発明によるテクスチャ分類器のブロック図である。
【0022】
入力画像マッパー(IIM)100は、より詳細に後述するように、所定のマッピング関数を使用して、入力210において受け取った二次元(2−D)入力画像のグレーレベル値を、出力212に生成される、ターゲット関数と呼ばれる一次元(1−D)関数により表す。
【0023】
スケール不変変換器(SIT)101は、適切な対数変換を使用して、IIM100の出力212におけるターゲット関数を、2−D入力画像のダイナミックレンジに依存しない値を有するターゲット関数表現に変換する。(入力画像のダイナミックレンジは、様々な照明条件、イメージセンサの局所的感度等の影響を受ける場合がある。)
【0024】
SIT101の出力は、後述のように動作して複数の成分関数を連続して出力するフィルタバンク(FB)400の入力に印加される。各成分関数は、SIT101により提供されるターゲット関数のそれぞれのバンドパス成分を表す。フィルタバンクFBの全てのフィルタはゼロの群遅延を示すことを指摘しておく。
【0025】
成分関数は(バス490により示されるように)それぞれ別個に特徴解析ブロック(FAB)500へ送出される。FAB500は成分関数毎に、その関数に特徴的な値セットを導き出す。成分関数の値セットの組み合わせは、原画像を表す特徴ベクトルを形成し、画像テクスチャ分類器(ITC)107へ送られる。
画像テクスチャ分類器(ITC)107は、入力において得られる特徴データを一緒に処理して2−D入力画像のテクスチャ分類を行う。テクスチャ分類に使用される手順は、全特徴空間の、該当テクスチャクラスを表す特定数の領域への分割に基づいてもよい。
【0026】
上述のシステムは、入力画像マッパー(IIM)100及びフィルタバンク(FB)400を除いて、欧州特許出願第1306805号明細書に記載されているシステムに類似している。入力画像マッパー(IIM)100及びフィルタバンク(FB)400の動作を以下でより詳細に説明する。
【0027】
入力画像マッパー(IIM)100は、入力210において受け取られる画像の二次元表現を、「閉じた」走査曲線を使用することにより一次元表現に変換する。図2Aは既知のヒルベルト平面充填曲線を概略的に示す。IIM100により使用される走査曲線は、図2Bに示されるもので、図2Aの主曲線の適切な幾何学変換により得られる合成物である。図2Bは、主曲線の4つのバージョンと、それらの始点及び終点が隣接する主曲線の終点及び始点に隣接して配置されるような配置とを示す。合成曲線は、図2Bに1及びNとして示す始点及び終点を有してもよい。構成としては、主曲線がM個の点を含む場合、結果として得られる走査曲線中のサンプリング点の数KはK=4×Mとなる。図示の例では、M=64であり、K=256である。図2Bの走査曲線は、始点1が終点Nに隣接することから、閉じた曲線であることが分かるであろう。
【0028】
図3Bは、(IIM)100が使用することができる代替的な閉じた走査曲線を示すと共に、この場合に、図3Aに示す主曲線から閉じた曲線が如何に形成されるかを示す。図3Aは既知のスイッチバック型ペアノ平面充填曲線である。この場合、M=81であり、K=324である。
【0029】
図4Bは、使用できる別の考えられる閉じた走査曲線を示し、この場合、図4Aに示す蛇行型ペアノ平面充填曲線に基づく。この場合も、M=81であり、K=324である。
【0030】
上記の閉じた走査曲線の構成の例は、例示の目的で提示され、包括的であること、又は本発明を開示する厳密な形態に限定することは意図しない。例えば、用途によっては、四角形のラスターを六角形のラスターに置き換えることが有利であろう。この場合、閉じた走査曲線は、適切な「歪み」を適用することによって修正することができる。図5は、六角形のラスターを対象とする閉じた走査曲線を示し、この曲線は、図3に示す走査曲線を「歪める」ことによって得られた。任意の隣接する2点を走査の始点及び終点として選択することができる。
【0031】
好ましい実施形態において、走査曲線は画像の一部のみをカバーし、画像は、走査パターンが画像を重複しないようにモザイク化(タイル張り)するように走査される。「密な」画像記述が必要とされる用途に対する別の好ましい実施形態では、重複するタイルによる走査が使用される。走査後に、各タイルは、周期的な走査画像シーケンス(一次元信号)を生成する。各シーケンスは同様に処理されて、対応する画像領域の画像記述子が抽出される。
【0032】
閉じた走査曲線の使用は、図1のフィルタバンク(FB)により行われるフィルタリング動作に有利である。FBは、SIT101から入力402においてターゲット関数表現を受け取る。走査曲線上の連続するサンプリング点間の空間的距離
|z−zk−1|; k=2,...,N
が一定である場合、走査画像関数f(z)は、対応するシーケンスfにより一意に表すことができる。このようなシーケンスfの一例を図6に示し、図中、横軸は走査曲線に沿った位置を表し、縦軸は振幅を表す。
【0033】
この表現は加算器410へ供給され、加算器410は、ターゲット関数表現の高周波数のみを含む第1の成分関数出力420を与える。ターゲット関数表現は、第1のローパスフィルタ430へも供給されて高周波数が除去され、次にこのフィルタの出力が加算器410の減算入力へ供給されてターゲット関数表現から低周波数が減算されることにより、高周波数のみが第1の成分関数420に残る。ローパスフィルタ410はゼロの群遅延を有する。
【0034】
ローパスフィルタ430の出力は第2の加算器412へも供給され、第2の加算器412はその出力において、第1の成分関数420中に存在する周波数よりも低周波数の成分を含む第2の成分関数422を供給する。さらなるローパスフィルタ432がターゲット関数表現を受け取り、フィルタ430よりも低いカットオフ周波数と、加算器412の減算入力へ供給される出力とを有するため、成分関数422は、ローパスフィルタ430及び432のカットオフ周波数の間のバンドパス周波数を有する。
【0035】
カットオフ周波数が徐々に低くなるさらなるローパスフィルタを含むさらなるチャネルを設けて、バンドパス周波数が徐々に低くなるさらなる成分関数を得ることができる。したがって、例えば、加算器414もまたローパスフィルタ434からの出力と、その減算入力において別のフィルタの出力とを受け取って、第3の成分信号424を供給することができる。
【0036】
実際には、フィルタバンク400は、データを受け取り、格納し、成分関数420、422等が連続した時刻に生成されるように処理するプロセッサを使用して実装される。少なくとも1つの、好ましくはそれぞれの、成分関数は、パワー測定部(PMU)450へ別個に供給されて、各成分関数中に存在するパワーが測定される。これらの測定値は制御部(CU)460へ送られる。CU460はチャネル数を制御し、ひいては生成され信号の特徴付けにも使用することができる成分関数の数を制御する。このように、制御部460は、最も新しい成分関数のパワーが所定のしきい値を下回るとフィルタ動作を終了させることができる。したがって、チャネル及び成分関数の数は適応的に制御される。
【0037】
欧州特許出願第1306805号明細書では、ターゲット関数表現が窓領域に分割されており、各領域の中で、関数を一定値の基準レベルと比較することにより関数が解析される。しかし、適応的な基準レベルを使用することによって、より良い特徴付けを得ることができる。適応的に変化するレベルは、ローパスフィルタ430、432等により得られる。
【0038】
適応的な基準レベルは走査画像シーケンスfから、各フィルタにおいて2つの以下の操作を行うことによって得られる。
1.シーケンスfに再帰フィルタ
=γk−1+(1−γ)f,0<γ<1,k=1,2,...,K
を適用して、補助シーケンスvを生成し、
2.補助シーケンスvに、逆方向に動く同じ再帰フィルタ、すなわち、
(1)K+1−k=γ(1)K+2−k+(1−γ)vK+1−k,0<γ<1,k=1,2,...,K
を適用して、必要とされる適応的な基準レベルを表すシーケンスf(1)を生成する。
【0039】
同じ再帰フィルタを順方向及び逆方向に動かす主な目的は、ちょうどゼロの群遅延を有するローパスフィルタリングを得ることである。シーケンスf(1)の一例を図6に示す。ターゲットシーケンスfとの位相関係(位置合わせ)が維持されることが観測されるであろう。
【0040】
2つの上記操作は、任意の順序で行うことができることを指摘しておく。さらに、それらの実施は、同時に(concurrently)動作するように構成されることもできる。
【0041】
パラメータγは、単極アナログローパスフィルタの指数関数インパルス応答exp(−γτ)に関連する。しかし、順方向及び逆方向に動く再帰フィルタの組み合わせ動作は、処理される関数を、exp(−γ|τ|)の形の対称な指数関数インパルス応答で畳み込むことに等しい。インパルス応答の対称性により、関連する群遅延は常にゼロとなる。
【0042】
一般に、再帰フィルタの使用には、その初期条件(v及びf(1)K+1等)を決めることが必要である。これは、閉じた走査曲線の使用により容易になり、フィルタが不連続点に行き当たることなく曲線の始点と終点との間の境界にわたる値を使用することを可能にする。すなわち、閉じた走査曲線は、処理すべき周期的なシーケンスを効果的に生成する。したがって、当業者に既知の方法を適用することによって初期条件を正確に決めることが可能である。しかし、遥かに単純で実用的な手法は、処理中のシーケンスの期間の概念的な開始の前に適切な「試走」期間を使用することであろう。
【0043】
フィルタリング動作の改善のために、異なる再帰フィルタを
=2γk−1−γk−2+(1−γ,0<γ<1,k=1,2,...,K
のように使用して補助シーケンスvを生成することができる。必要とされる適応的な基準レベルを表すシーケンスf(1)が次に、補助シーケンスvにフィルタを逆方向にかけることによって得られる。
【0044】
順方向及び逆方向に動く改良型の再帰フィルタの組み合わせ動作は、処理中の関数を(1+γ|τ|)exp(−γ|τ|)の形のインパルス応答で畳み込むことに等しい。またこの場合、インパルス応答の対称性により、関連する群遅延はゼロとなる。
【0045】
フィルタの等価インパルス応答はガウス応答によく似ている。等価インパルス応答は、処理中のシーケンスに同じ再帰フィルタ又は異なる再帰フィルタを連続して複数回(順方向及び逆方向)かけると、ガウス応答をさらに良く近似することができる。
【0046】
図6はまた、走査画像シーケンスfから適応的な基準レベルf(1)を減算し、成分関数420を生成した結果を示す。成分関数{f−f(1)}のゼロ交差点は次に、走査画像シーケンスfをこの初期解析レベルで表すために使用することができる。
【0047】
上述の全ての操作は、さらなるローパスフィルタを使用して繰り返し行われ、さらなる成分関数が得られる。その度に、前の適応的な基準レベルが元の初期走査画像シーケンスfとして扱われる。しかし、その度に、新たなフィルタパラメータがγ1新=(γ1旧κ及びγ2新=(γ2旧κのように修正され、ここで、1/3≦κ≦1/2である。最後の適応的な基準レベルがほぼ一定の値となるとプロセス全体が終了される。ほとんどの実用途では、プロセス全体における反復回数は3回又は4回に限定されるであろう。
【0048】
ローパスフィルタは、「隣接する」チャネルのフィルタのカットオフ周波数の比が2〜3となるように設計されていることが好ましい。これはこの値が多くの場合にターゲット関数スペクトルを効率的にカバーするからである。使用されるプロセッサチャネル数は、信号fのスペクトル属性に依存し、このスペクトル属性は画像属性に依存する。通常の画像の場合、3つのチャネルがシステムの複雑さと性能との良いトレードオフを提供する。希望により、システムは、適応的な可変数ではなく固定数(例えば3つ)のチャネルを有することができる。
【0049】
成分関数は特徴解析ブロック(FAB)500へ送出される。特徴解析ブロック(FAB)500において行われる信号解析は、用途に依存するであろう。例えば、画像テクスチャ解析の場合、信号解析は、成分関数のゼロ交差点の抽出と、ゼロ交差点及び/又はゼロ交差点の信号からの統計特徴(記述子)の計算とを含んでもよい。図示の実施形態は、欧州特許出願第1306805号明細書に開示される対応のユニットと同様に動作する、交差レート推定器(CRE)510、交差傾き推定器(CSE)520、及び滞在期間推定器(STE)530を使用する。しかし、この場合、推定器は、適応的な基準レベルが減算された信号シーケンスに対して動作するため、ゼロ交差検出器(ZCD)540により検出されるゼロの基準レベルを使用して動作する。信号から検出される特徴の上記の例は、例示のみを目的として提示され、網羅的であること、又は本発明を限定することは意図されない。
【0050】
多くの修正及び変形が存在し、意図される特定のタスクに見合う様々な実施形態で当業者が本発明を利用することを可能にするであろう。例えば、上述のフィルタリング動作はターゲット表現を分解するために行われたが、閉じた走査曲線を使用する利点は、ノイズ低減(例えば非線形メディアンフィルタを使用する)又はエッジ強調(例えばハイパスフィルタを使用する)等の異なる目的でフィルタリングが使用される状況でも得られるであろう。また、上記のフィルタは再帰的であるが、有限インパルス応答フィルタを代替的に使用することも可能であるだろう。この場合も、閉じた走査曲線の使用から同様の利点が生じる。本発明を二次元画像の解析の文脈で説明してきたが、この技法は、適切な空間充填曲線を使用することによって、多モードのデータ、特に多次元画像の解析に拡張することができる。画像は従来の可視画像であっても、電磁スペクトルの不可視部分の画像であっても、又は超音波画像のような異なる領域のものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明によるテクスチャ分類システムのブロック図である。
【図2】既知のヒルベルト平面充填曲線及びそれから構築される閉じた走査曲線を示す図である。
【図3】既知のペアノ平面充填曲線及びそれから構築される閉じた走査曲線を示す図である。
【図4】別の既知のペアノ平面充填曲線及びそれから構築される閉じた走査曲線を示す図である。
【図5】六角形のラスターを対象とする閉じた走査曲線を示す図である。
【図6】画像を表す一次元関数及びそれをフィルタリングした関数の一例の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表す信号の処理方法であって、
(a)レベルが連続的に変化して前記画像の隣接する複数のエリアを表す、前記画像の一次元表現を、所定のマッピング関数を使用して導き出すことと、
(b)前記表現にフィルタを適用して、前記画像を表す出力関数を導き出すことと
を含み、
前記マッピング関数は隣接する複数のエリア内に始点及び終点を有することを特徴とし、かつ、
前記フィルタは、前記始点と前記終点との間の境界にわたる前記一次元表現の値を組み合わせるように動作可能であることを特徴とする、画像を表す信号の処理方法。
【請求項2】
画像を表す信号の処理方法であって、
(a)レベルが連続的に変化して前記画像の隣接する複数のエリアを表す、前記画像の一次元表現を、所定のマッピング関数を使用して導き出すことと、
(b)前記表現のそれぞれの周波数領域をそれぞれ表す成分関数を生成することによって、前記表現を分解することと、
(c)前記画像を表す特徴ベクトルを与えるように前記成分関数を解析することと
を含む、画像を表す信号の処理方法。
【請求項3】
ローパスフィルタを使用して前記表現のあるバージョンを得ることと、
前記バージョンを、より高い周波数の成分を含む前記表現の別のバージョンから減算することと
によって、成分関数を生成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルタは実質的に対称なインパルス応答を有し、それによって、前記フィルタの群遅延が実質的にゼロとなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの成分関数のパワーを測定すると共に、それに応じて前記成分関数の数を制御するステップを含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
フィルタリング動作が行われて前記成分関数が導き出され、
前記マッピング関数は隣接する複数のエリア内に始点及び終点を有し、
前記フィルタリング動作は、前記始点と前記終点との間の境界にわたる前記表現の値を組み合わせるように動作可能である、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記マッピング関数は、主走査曲線及びその複数の複製を含む合成走査曲線を定義し、
各複製は前記主曲線の平行移動、回転及び/又は鏡像である、請求項1又は6に記載の方法。
【請求項8】
二次元画像を表す特徴ベクトルを導き出すために使用される場合の請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法を使用して特徴ベクトルを導き出すことと、
次に、特徴空間内の複数の所定の領域のいずれが前記特徴ベクトルを包含するかを判定することと
を含む、画像の分類方法。
【請求項10】
請求項8に記載の方法を使用して特徴ベクトルを導き出すように構成される画像解析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−533603(P2008−533603A)
【公表日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−501403(P2008−501403)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【国際出願番号】PCT/GB2006/000908
【国際公開番号】WO2006/097713
【国際公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(501253316)ミツビシ・エレクトリック・インフォメイション・テクノロジー・センター・ヨーロッパ・ビーヴィ (77)
【氏名又は名称原語表記】MITSUBISHI ELECRIC INFORMATION TECHNOLOGY CENTRE EUROPE B.V.
【住所又は居所原語表記】20 Frederick Sanger Road, The Surrey Research Park, Guildford, Surrey GU2 5YD, Great Britain
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】