説明

画像の類似性評価装置及びその評価方法

【課題】対比する画像が類似しているか類似していないかを評価する。
【解決手段】画像を入力する画像入力装置10と、画像入力装置10によって入力した画像を記憶する画像記憶部20と、画像記憶部20から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を柄画像と色画像に分離する色変換部30と、色変換部30によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、画像の周期性、画像の輝度分布、画像の乱雑さ、画像の連続量、画像の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する特徴量抽出部40と、対比する2枚の画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を特徴量抽出部40から取得し2枚の柄画像間の特徴量の差と2枚の色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を評価する類似性評価部50と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対比する画像が類似しているか類似していないかを評価することができる、画像の類似性評価装置及びその評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の内装材として木目パネルを使用することがある。木目パネルを車室内に貼り付けるときには、木目の色柄に類似性のある木目パネルを選択する。
【0003】
従来、対比する木目の色柄に類似性があるかどうかは、例えば下記特許文献1に示すような装置で木目の画像を入力し、例えば下記特許文献2に示すような装置でその入力した木目の画像の類似性を評価することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−267600号公報
【特許文献2】特開平7−284090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1及び2に記載されている装置を用いたとしても、対比する木目の類似性を正確に評価することは困難である。これらの装置は、木目の類似性を的確に評価するために特化された構成とはなっていないからである。
【0006】
一般的に木目パネルの表面には微小な凹凸がある。このため、対比する木目がある角度では類似した見え方であっても、角度が異なるとその見え方が異なる。また、この見え方は角度が同じでも光の方向によって異なる。木目の類似性を評価する場合には、角度や光の方向によって見え方が異なる木目を総合的に見て類似しているか類似していないかを評価できるようにすることが重要である。
【0007】
本発明は、対比する画像が類似しているか類似していないかを評価することができる、画像の類似性評価装置及びその評価方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、画像入力装置、画像記憶部、色変換部、特徴量抽出部および類似性評価部を有する。
【0009】
画像入力装置は画像を入力する。画像記憶部は画像入力装置によって入力した画像を記憶する。色変換部は、画像記憶部から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を柄画像と色画像に分離する。特徴量抽出部は、色変換部によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、画像の周期性、画像の輝度分布、画像の乱雑さ、画像の連続量、画像の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する。類似性評価部は、対比する画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を特徴量抽出部から取得し柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を評価する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対比する画像から柄画像と色画像を分離し、柄画像間の特徴量の差と色画像間の特徴量の差の両方から類似性を評価するので、角度や光の方向によって見え方が異なる画像の類似性を総合的に評価できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価装置のブロック図である。
【図2】図1に示した画像入力装置の構成図である。
【図3】図1に示した画像入力装置の構成図である。
【図4】図1に示した画像入力装置の他の構成図である。
【図5】図1に示した色変換部の動作説明に供する図である。
【図6】図1に示した類似性評価部のブロック図である。
【図7】図6に示した正規化処理部により正規化した後の特徴量の差の大きさを示すグラフである。
【図8】図6に示した識別値演算部により演算される識別値の演算手法の説明に供する図である。
【図9】図6に示したデータベースが格納する閾値の情報の説明に供する図である。
【図10】グレースケールで表示した木目画像1、木目画像2と、濃淡、配置、周期性、縮尺、乱雑さ、回転を考慮した木目画像1のイメージと木目画像2のイメージを示す図である。
【図11】本発明に係る画像の類似性評価方法の手順の概略説明図である。
【図12】本発明に係る画像の類似性評価方法の手順を示すフローチャートである。
【図13】図12の画像読込のサブルーチンフローチャートである。
【図14】図12の画像編集のサブルーチンフローチャートである。
【図15】コンピュータシステムの画像読込/画像編集画面である。
【図16】コンピュータシステムの分析条件設定画面である。
【図17】コンピュータシステムの分析結果表示設定画面である。
【図18】コンピュータシステムの関連付け設定画面である。
【図19】図12の前処理のサブルーチンフローチャートである。
【図20】図12の特徴量抽出のサブルーチンフローチャートである。
【図21】図12の後処理のサブルーチンフローチャートである。
【図22】図12の類似性判定のサブルーチンフローチャートである。
【図23】図12の分析結果表示のサブルーチンフローチャートである。
【図24】コンピュータシステムの類似性分析結果表示画面である。
【図25】図12の分析結果・分析条件保存のサブルーチンフローチャートである。
【図26】特徴量と設計パラメータとの関連付けの説明に供する図である。
【図27】本発明の他の実施形態に係る画像の類似性評価装置のブロック図である。
【図28】図27に示した画像入力装置の構成図である。
【図29】図28に示した画像入力装置のさらに詳細な構成図である。
【図30】図28に示した画像入力装置のさらに詳細な構成図である。
【図31】本発明に係る画像の類似性評価方法の他の実施形態の手順を示すフローチャートである。
【図32】図31の特徴量抽出のサブルーチンフローチャートである。
【図33】図32のステップS141の処理の説明図である。
【図34】図32のステップS142の処理の説明図である。
【図35】図32のステップS143の処理の説明図である。
【図36】図32のステップS144の処理の説明図である。
【図37】図32のステップS144の処理の説明図である。
【図38】本実施形態の効果の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態1]
以下に、本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価装置について詳細に説明する。以下では、画像の一例として木目パネルの木目を例示する。しかし、本発明に係る画像の類似性評価装置は、パネルや革の表面の皺の画像、布地の織りの画像に対しても適用することができる。
【0013】
(画像の類似性評価装置の全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価装置のブロック図である。
【0014】
図1に示すように、画像の類似性評価装置100は、画像入力装置10、画像記憶部20、色変換部30、特徴量抽出部40、類似性評価部50および出力装置60を有する。
【0015】
画像入力装置10は木目パネル5の表面の木目画像を入力する。木目画像の入力は、暗室内に置いた木目パネル5の表面に均一に光を当て、その木目パネル5の表面をカメラで撮影することによって行われる。画像入力装置10の詳細な構成は後述する。
【0016】
画像記憶部20は、画像入力装置10によって入力した木目パネル5の木目画像を記憶しておくメモリである。画像記憶部20は、画像入力装置10によって入力した木目画像を一時的に記憶しておく第1領域と入力した木目画像を一時的にではなく保存しておく第2領域とを有している。第1領域はキャッシュメモリで構成され、第2領域は一般的に用いられるRAMなどの半導体記憶装置またはCDやHDDなどの記録媒体で構成される。
【0017】
色変換部30は、画像記憶部20の第1領域または第2領域から複数の木目画像を取得して色変換し、取得したそれぞれの木目画像を柄画像と色画像に分離する。本実施形態の場合、画像記憶部20から2枚の木目画像を取得して、2枚の木目画像を、2枚の柄画像と4枚の色画像に分離する。色変換の手法および木目画像を柄画像と色画像に分離する手法の詳細は後述する。
【0018】
特徴量抽出部40は、色変換部30によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する。本実施形態の場合、色変換部30は、2枚の木目画像を、2枚の柄画像と4枚の色画像に分離する。このため、特徴量抽出部40は、2枚の柄画像と4枚の色画像の合計6枚の画像のそれぞれについていずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する。この6枚の画像については、同一種類の特徴量を抽出する。たとえば、2枚の柄画像について、木目の周期性および木目の輝度分布に関する特徴量を抽出したときには、4枚の色画像についても、木目の周期性および木目の輝度分布に関する特徴量を抽出する。特徴量の抽出の手法の詳細は後述する。
【0019】
類似性評価部50は、対比する2枚の木目画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を特徴量抽出部40から取得し、2枚の柄画像間の特徴量の差と2枚を一組とする各組2枚の色画像間の特徴量の差に基づいて木目の類似性を評価する。たとえば、上記のように、特徴量抽出部40が木目の周期性および木目の輝度分布に関する特徴量を抽出したとする。このときには、2枚の柄画像間と各組2枚の色画像間の木目の周期性に関する特徴量の差および木目の輝度分布に関する特徴量の差に基づいて木目の類似性を評価する。木目の類似性を評価する手法の詳細は後述する。
【0020】
出力装置60は、画像入力装置10が入力した木目画像および画像記憶部20から取得した木目画像を表示したり、木目の類似性を評価するために抽出した特徴量の差を表示したり、木目の類似性の評価結果を表示したりする。
【0021】
本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価装置100は以上のような構成を有するので、角度によって見え方が異なる木目の類似性を高精度に評価することができる。
【0022】
このような効果が得られるのは、対比する木目画像から柄画像と色画像を分離していることと、柄画像と色画像の両方の画像に対して特徴量を求めているからである。特に、色画像の特徴量を求めていることがこの効果を得ることに大きく寄与している。さらに、柄画像間の特徴量の差と色画像間の特徴量の差の両方から類似性を評価しているため、木目の類似性を総合的に評価することができる。
【0023】
(画像入力装置の構成)
図2〜図4は画像入力装置10の構成図である。
【0024】
画像入力装置10は、暗室12、光源14およびカメラ16を有している。
【0025】
暗室12は木目パネル5の表面を撮像するときに、外光の影響を受けずに撮像できるように、暗室12に進入しようとする外光を遮光する役割を果たす。本実施形態では暗室12の形状は半球状としている。
【0026】
光源14は暗室12の内面に取り付ける。光源14はカメラ16を移動させる移動レール18上に配置する。光源14は木目パネル5の表面に対して110度の角度から光を照射する。木目パネル5の表面から反射する光源14の反射光がカメラ16に直接入射されないようにするためである。光源14は面発光となる有機ELを用いる。このため、光源14は暗室12内に置いた木目パネル5の表面を均一に照らすことができる。光源14は発光面の面積を図3のように可変できるようにしてある。木目パネル5の表面に照射する光の面積を小さくしたいときには、図3のように光源14の発光面の面積を小さく絞る。なお、光源14に面発光ではない電球、蛍光灯、LEDを用いても良い。この場合には、導光板、拡散板、光拡散フィルムを組み合わせて面発光となるようにしたり、暗室12の形状を球状にして積分球として木目パネル5の表面を均一に照らすことができるようにしたりする。光源14から照射する光は波長が360〜780nmの主に可視光領域の光を用いる。しかし、光源14から照射する光は可視光領域以外の領域の光を用いても良い。
【0027】
カメラ16は、光源14から照射する光によって均一に照らされている木目パネル5の表面を撮像する。カメラ16は暗室12の内面に取り付けた移動レール18に移動自在に取り付ける。そのため、移動レール18に沿ってカメラ16を移動させ木目パネル5の表面を複数の角度から撮像することができる。本実施形態では、木目パネル5の表面に対して5度の角度(図2のA位置)、35度の角度(図2のB位置)、80度の角度(図2のC位置)、の3種類の角度(撮像角度)から木目画像を撮像できるようにする。それぞれの角度から撮像した木目画像はRGB木目画像(カラー画像)として画像記憶部20に送られる。撮像した木目画像には撮像角度が付加される。なお、図4に示すように、暗室12の内面に3台のカメラ16を、木目パネル5の表面に対して5度の角度(図4のA位置)、35度の角度(図4のB位置)、80度の角度(図4のC位置)にそれぞれ固定して取り付けても良い。3台のカメラ16を暗室12の内面に取り付けておけば、同時に複数の角度からの木目画像を撮像できる。木目の撮像角度は上記の3種類の角度に限られない。
【0028】
このように、画像入力装置10は、暗室12で木目パネルに外光が当たらないようにし、光源14で木目パネルの表面を均一に照らすことができるので、カメラ16は複数の木目パネルの木目を同じ条件で撮影できる。また、カメラ16は木目パネルの表面を複数の角度から撮影できるので、異なる角度から撮影した木目の類似性を評価することで、木目の類似性の評価精度が向上する。
【0029】
(色変換部の動作)
図5は色変換部30の動作説明に供する図である。
【0030】
色変換部30は、画像記憶部20から取得したRGB木目画像をYC1C2木目画像またはLab木目画像に変換する。図5に示すように、画像記憶部20から取得したRGB木目画像をYC1C2木目画像に変換すると、RGB木目画像の情報を輝度情報と色情報に分離することができる。RGB木目画像をYC1C2木目画像に変換した場合、Y木目画像がRGB木目画像の輝度情報(明度)を示し、C1木目画像とC2木目画像がRGB木目画像の色情報(色相・彩度)を示す。このため、Y木目画像は柄画像となり、C1木目画像とC2木目画像は色画像となる。
【0031】
RGB色空間の画像をYC1C1色空間の画像に変換するには、下記の計算を行う。
【0032】
RGB→YC1C2色変換
Y = 0.299R+0.587G+0.114B
C1=R−Y= 0.701R−0.587G−0.114B
C2=B−Y=−0.299R−0.587G+0.886B
また、画像記憶部20から取得したRGB木目画像をLab木目画像に変換しても、RGB木目画像の情報を輝度情報と色情報に分離することができる。RGB木目画像をLab木目画像に変換した場合、L木目画像がRGB木目画像の輝度情報(明度)を示し、a木目画像とb木目画像がRGB木目画像の色情報(色相・彩度)を示す。このため、L木目画像は柄画像となり、a木目画像とb木目画像は色画像となる。
【0033】
RGB色空間の画像をLab色空間の画像に変換するには、まず、RGB色空間の画像をXYZ色空間の画像に変換し、次に、XYZ色空間の画像をLab色空間の画像に変換する。具体的には、下記の計算を行う。
【0034】
RGB→Lab色変換
RGB→XYZ変換
X= 0.412453R+0.35758G+0.180423B
Y= 0.212671R+0.71516G+0.072169B
Z= 0.019334R+0.119193G+0.950227B
XYZ→Lab変換
【0035】
【数1】

【0036】
色変換部30は、以上の計算により、RGB木目画像をYC1C2木目画像またはLab木目画像に変換する。色変換部30は、Y木目画像またはL木目画像を柄画像とし、C1木目画像、C2木目画像またはa木目画像、b木目画像を色画像とする。
【0037】
このように、色変換部30は、RGB木目画像をYC1C2木目画像またはLab木目画像に変換している。このため、柄画像としてY木目画像またはL木目画像を取得できるだけではなく、色画像としてC1木目画像、C2木目画像またはa木目画像、b木目画像を取得することができる。特に、C1木目画像、C2木目画像またはa木目画像、b木目画像を取得していることが木目の類似性の評価精度の向上に大きく寄与している。
【0038】
(特徴量抽出部の動作)
特徴量抽出部40は、色変換部30によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する。対比する2枚の木目パネルの木目の色柄が類似しているか否かを評価するためには、木目の色柄の特徴を解析する必要がある。木目の色柄の特徴は、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率が考えられる。特徴量抽出部40は、これらの木目の色柄の特徴を、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列を求めることによって明らかにする。
【0039】
次に、特徴量抽出部40が木目の色柄の特徴を求めるために用いる、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列について説明する。
【0040】
[フーリエスペクトル]
木目の周期性に関する特徴量は、画像のフーリエスペクトルを求めることによって知ることができる。フーリエスペクトルは柄画像と色画像の両方の画像に対して求める。
【0041】
木目には方向性を持っているものと方向性をもっていないものとがある。木目が方向性を持っている場合には、木目の線がどちらの方向に伸びているものが多いか、つまり木目の方向性がどの方向により強いかをフーリエスペクトルによって求めることができる。木目に離散フーリエ変換を施すと、木目の周波数特性に着目した特徴量を得ることができる。木目のデジタル画像f(i,j)の離散フーリエ変換F(u,v)、F(u,v)のパワースペクトルP(u,v)、特徴ベクトルP(θ)、P(r)は次式で表すことができる。
【0042】
【数2】

【0043】
上式において、m、nは、画像の水平方向、垂直方向それぞれの画素数を示す。P(u,v)は、原点(u,v)=(0,0)を中心として水平軸からの角度θおよび中心点からの距離rを用いて、曲座標P(θ,r)に書き換える。rmaxはrに関して計測する最大値、△θはθに関する計測幅をそれぞれ表している。θmaxはθに関して計測する最大値、△rはrに関する計測幅をそれぞれ表している。特徴ベクトルP(θ)、P(r)は、それぞれ扇状の領域と同心円状の領域についてのパワースペクトルの和である。このようにして柄画像と色画像のフーリエスペクトルを求めると、柄画像と色画像においてどの様な方向性、空間周波数を持った波が強く含まれているかを知ることができる。つまり、柄画像と色画像のフーリエスペクトルを求めると、曲座標空間の動径方向と角度方向にどのように木目が分布しているかがわかり、木目の周期性を知ることができる。
【0044】
[輝度ヒストグラム]
木目の輝度分布に関する特徴量は、画像の輝度ヒストグラムを求めることによって知ることができる。輝度ヒストグラムは柄画像と色画像の両方の画像に対して求める。
【0045】
柄画像と色画像の各画素の輝度ヒストグラムから得られる特徴量には、MEN、CNT、VAR、STD、SKWがある。MENは画像領域中の輝度値の平均値を示す。CNTはコントラストを示し、輝度ヒストグラムの分布が偏っているほど大きな値になる。VARは分散を示し、平均値から離れた輝度値が多くなるほど大きな値になる。STDは標準偏差を示す。SKWはひずみ度を示し、輝度ヒストグラムが対称な形からどれだけひずんでいるのかを表す。SKWは、平均値よりも小さな輝度レベル側に偏ったヒストグラムの場合には負の値になり、平均値よりも大きな輝度レベル側に偏ったヒストグラムの場合には正の値になる。
【0046】
輝度ヒストグラムからMEN、CNT、VAR、STD、SKWは次式によって求める。
【0047】
【数3】

【0048】
上式のP(l)は、正規化した輝度ヒストグラムにおける輝度値lのときの値を表す。lmin、lmaxは、デジタル画像の階調数をLとすると、lmin=0、lmax=L−1になる。
【0049】
このようにして柄画像と色画像の輝度ヒストグラムを求め、MEN、CNT、VAR、STD、SKWの値を求めることによって、木目の輝度分布を知ることができる。
【0050】
[フラクタル次元]
木目の乱雑さに関する特徴量は、画像のフラクタル次元を求めることによって知ることができる。フラクタル次元は柄画像と色画像の両方の画像に対して求める。
【0051】
フラクタル次元とは、1次元、2次元、3次元、…のような整数次元からはみ出した半端な次元の総称である。フラクタル次元は次式によって求める。
【0052】
フラクタル次元
S(r)=rN(r)
logS(r)=(1−D)logr+logk
S(r)=kr1−D
上式において、S(r)は表面積である。N(r)は柄画像と色画像の濃度曲面の表面を一辺の長さrの立方体で被覆したときの面の数である。Dはフラクタル次元である。kは正の定数であり、一辺の長さがr=1の立方体で濃度曲面を被覆したときの面の数である。
【0053】
logr−logS(r)のグラフの傾き、1−Dからフラクタル次元Dを求めることができる。フラクタル次元は、画像濃度曲面の起伏の複雑さを表す特徴量であり、木目の乱雑さを知ることができる。
【0054】
[ランレングス行列]
木目の連続量に関する特徴量は、画像のランレングス行列を求めることによって知ることができる。ランレングス行列は柄画像と色画像の両方の画像に対して求める。
【0055】
画像内において、ある方向に連続して並ぶ同一輝度の画素列をランと呼ぶ。その画素列の長さをランレングスという。ランレングスから木目の特徴量を抽出する場合には、各画素の輝度の階調数を減少させ画素のわずかの変動が無視できるようにする。ランレングス行列では、次式によってSRE、LRE、GLN、RLN、Pを求める。
【0056】
【数4】

【0057】
上式のlはθ方向の各画素の輝度値、rはランレングス、LおよびRは輝度の階調数およびランレングスの最大値、Pθ(l、r)はθ方向のランレングス行列の輝度値l、ランレングスrの成分を示す。Pはランレングス行列の和である。
【0058】
SREは短いランの発生率が高いほど大きな値になる。LREは長いランの発生率が高いほど大きな値になる。GLNは濃淡レベルでより偏ったラン発生率が高いほど大きな値になる。RLNはより偏ったランレングス発生率が高いほど大きな値になる。ランレングス行列は木目を形成する線の長さや途切れ状態を数値として表すことができるため、木目の連続量を知ることができる。
【0059】
[同時生起行列]
木目の一致確率に関する特徴量は、画像の同時生起行列を求めることによって知ることができる。同時生起行列は柄画像と色画像の両方の画像に対して求める。
【0060】
同時生起行列は画像の局所的性質を調べる統計的手法であり、画像内の一定の位置関係にある2点が、ある画素濃度を有する確率を全ての組合せにおいて求めるものである。具体的には、ある画素iから変位δ(θ、r)だけ相対的に離れた画素jについて、それらの画素対の輝度値がそれぞれL、Lである確率Pθ(L、L)を同時生起行列という。同時生起行列から計算されるスカラー特徴量ASM、CNT、CRR、VAR、IDMは、次式によって求める。
【0061】
【数5】

【0062】
上式のASMは角二次モーメントであり、特定の画素対が多く存在し一様性が大きい場合には大きな値となる。CNTはコントラストであり、画像全体についての平均値を表し、濃度差が大きいほど大きな値となる。CRRは縦方向の相関を示す。VARは同時生起行列の分散を示す。IDMは均質性である。同時生起行列は木目の一致性を統計的に求めているので、木目の一致確率を知ることができる。
【0063】
以上のように、特徴量抽出部40は、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を求めている。そして、これらの特徴量は、それぞれフーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列によって求めている。木目の特徴量として、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちのいずれかを用いれば、対比する木目が類似しているか類似していないかを精度良く評価することができる。もちろん、木目の特徴量として、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちの複数または全てを用いれば、対比する木目の類似性はいっそう高精度に評価できる。
【0064】
(類似性評価部の構成)
類似性評価部50は、特徴量抽出部40から、対比する木目画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を取得し、柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差に基づいて木目の類似性を評価する。
【0065】
図6に示すように、類似性評価部50は、演算部52、正規化処理部53、識別値演算部54、比較評価部55、データベース56を有している。
【0066】
木目の類似性の評価は、柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差に基づいて行う。このため、類似性評価部50は、特徴量抽出部40が抽出した特徴量を取得して、柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差を求める演算部52を有している。
【0067】
また、特徴量の大きさはその種類ごとに固有の最大値(スケール)を持っている。このため、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列で求めた特徴量の大きさは、それぞれ特徴量の種類によって異なる。したがって、演算部52で求めた特徴量の差も、それぞれ特徴量の種類ごとに固有の大きさを持っている。異なる種類の特徴量の差の比較を容易に行えるようにするためには、それぞれの特徴量の固有の最大値(スケール)を1として、求めた特徴量の差の大きさがその種類の固有の最大値の何パーセントであるかを求めればよい。すなわち特徴量の差を正規化処理すれば良い。このため、類似性評価部50は、求めた特徴量の差の大きさを正規化処理する正規化処理部53を有している。
【0068】
各特徴量の差を画像間で単純に比較しただけでも木目の類似性を評価することはできる。しかし、2枚の柄画像間の特徴量の差と4枚の色画像間の特徴量の差を全ての種類の特徴量について比較することが必要である。これでは情報量が大きすぎるので、2枚のY木目画像(柄画像)、2枚のC1木目画像(色画像)、2枚のC2木目画像(色画像)のそれぞれについて、特徴量抽出部40で抽出した全ての特徴量の差を木目画像ごとに圧縮する。すなわち、抽出した全ての特徴量の差を3つの木目画像ごとに圧縮処理する。圧縮処理により3つの識別値が求まる。なお、色画像の識別値には、C1木目画像またはC2木目画像のいずれかを用いる。この識別値は、特徴量抽出部40で抽出した、全ての特徴量の差の平均、全ての種類の特徴量の差の中央値、全ての種類の特徴量の差の平均値のいずれかを演算することによって求める。または、0から一定の数値を増加させて段階的に刻んだ各数値範囲に特徴量の差の大きさが当てはまる特徴量の種類の頻度を求める処理をし、その頻度の最も大きい最頻値を識別値としても良い。このため、類似性評価部50は、特徴量の差を圧縮して識別値を演算する識別値演算部54を有している。識別値演算部54の詳細な動作は後述する。
【0069】
以上のようにして、2枚のY木目画像(柄画像)、2枚のC1木目画像(色画像)、2枚のC2木目画像(色画像)のそれぞれの識別値が得られる。求めた少なくともいずれか1つの識別値は柄画像および色画像(C1木目画像またはC2木目画像)の双方と関連付けた閾値と比較される。識別値が閾値以内であれば、対比する木目は類似しており、識別値が閾値よりも大きければ、対比する木目は非類似である。識別値と閾値との比較をして木目の類似性を評価するために比較評価部55を有している。
【0070】
正規化処理部53が特徴量の差を正規化し、比較評価部55が木目の類似性を評価するためには、正規化のための情報と閾値の情報が必要である。このため、類似性評価部50は、正規化のための情報と閾値の情報を格納しているデータベース56を有している。データベース56に格納させる正規化のための情報と閾値の情報については、後で詳しく説明する。
【0071】
(類似性評価部の動作)
類似性評価部50の動作を、図を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0072】
演算部52は、柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差を求める。例えば、
2枚のY木目画像(柄画像)と2枚のC1木目画像(色画像)に対して、個々に、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全ての種類の特徴量の差を求める。具体的には、それぞれの木目画像間の、フーリエスペクトルで求めたPr、Pt、輝度ヒストグラムで求めたMEN、CNT、VAR、STD、SKW、フラクタル次元で求めたDF、ランレングス行列で求めたSRE、LRE、GLN、RLN、RP、同時生起行列で求めたASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差を求める。したがって、演算部52は、柄画像と色画像について、それぞれの画像の18の特徴量の差を求める。
【0073】
なお、上記の例では、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラム、フラクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全ての種類の特徴量の差を求めた。しかし、例えば、フーリエスペクトル、輝度ヒストグラムだけを用いて特徴量の差を求めた場合には、演算部52は、柄画像と色画像について、それぞれの画像のPr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKWの7つの特徴量の差を求める。柄画像と色画像について、特徴量は同一の種類のものを求める。
【0074】
正規化処理部53は、データベース56から正規化のための情報を取り出して、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差を正規化する。データベース56に格納してある正規化のための情報は、各特徴量の最大値である。例えば、Prの最大値がa、Ptの最大値がb、MENの最大値がc、…、VAR2最大値がq、IDMの最大値がrという数値である。正規化処理部53は、この正規化のための情報に基づいて、各特徴量の差が最大値を1としたときにいくつの値になるかを演算する。
したがって、例えば、2枚のY木目画像(柄画像)と2枚のC1木目画像(色画像)について求めたPr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差を正規化し、合計36の特徴量の差を求める。柄画像と色画像について求めた36の特徴量の差を並べると図7の棒グラフのようになる。
【0075】
図7の棒グラフにおいて、手前側は、2枚のY木目画像(柄画像)について正規化した後の18の特徴量の差を示す棒グラフである。また、奥側は、2枚のC1木目画像(色画像)について、正規化した後の18の特徴量の差を示す棒グラフである。正規化処理によって、それぞれの特徴量の最大値を1として、求めたそれぞれの特徴量の差の大きさを棒グラフで表しているので、特徴量の差の程度がわかりやすくなっている。
【0076】
識別値演算部54は、例えば、2枚のY木目画像(柄画像)、2枚のC1木目画像(色画像)について、正規化処理部で正規化された特徴量の差を圧縮する。特徴量の差を圧縮することによって柄画像と色画像の2つの識別値を求める。
【0077】
特徴量の差の圧縮は次のいずれかの手法によって行う。まず、1つの手法は、全ての特徴量の差の合計値を求める手法である。具体的には、図7に示してあるように、正規化した、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差の合計を求める。全ての特徴量の差は、正規化によって単位のない数値になっているので、特徴量の差の大きさを加算できる。18の特徴量の差の合計値を識別値とする。
【0078】
もう1つの手法は、全ての特徴量の差の中央値を求める手法である。具体的には、正規化した、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差を小さい順に並べる。特徴量の差が小さい順から9番目または10番目に位置する特徴量の差を識別値とする。
【0079】
さらにもう1つの手法は、全ての特徴量の差の平均を求める手法である。具体的には、正規化した、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差の平均を求める。18の特徴量の差の合計値を18で割った値を識別値とする。
【0080】
そして最後の手法は、特徴量の種類の最頻値を求める手法である。具体的には、正規化した、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差を特徴量の種類ごとに並べる。たとえば、図8に示すように、正規化した特徴量の差を特徴量の種類ごとに並べる(図8では特徴量の種類は13である)。特徴量の種類ごとに、正規化した特徴量の差の大きさは異なるので、異なる高さの棒グラフになっている。そして、図8に示すように、0から一定の数値を増加させて段階的に刻んだ各数値範囲に特徴量の差の大きさが当てはまる特徴量の種類の頻度を求める処理をし、その頻度の最も大きい最頻値を求める。たとえば、特徴量の差が0か0.1の間にある特徴量の種類の数(頻度)が0、特徴量の差が0.1から0.2の間にある特徴量の種類の数が1、特徴量の差が0.2から0.3の間にある特徴量の種類の数が2、…、特徴量の差が0.6から0.7の間にある特徴量の種類の数が5、…特徴量の差が0.9から1.0の間にある特徴量の種類の数が0というように、0.1刻みで各数値範囲に特徴量の差の大きさが当てはまる特徴量の種類の数を求める。そして、その特徴量の種類の数の最も大きい頻度値を識別値とする。上記の場合、最も大きい頻度値が5であれば、識別値は5である。
【0081】
前述のように、いずれかの手法で求めた識別値は、柄画像と色画像について1つずつ合計2つの識別値が求められる。この2つの識別値を閾値と比較することで、対比する2つの木目が類似しているか、類似していないかの評価がされる。
【0082】
比較評価部55は、データベース56に格納されている閾値の情報を取り出して、識別値で演算した柄画像と色画像の識別値と比較する。閾値の情報とは、柄画像と色画像の双方と関連付けた閾値である。
【0083】
閾値は、柄画像の識別値と色画像の識別値の両方から求める。したがって、閾値は図9に示すような二次元マップ上に描かれる点線で表される。例えば、柄画像から得られた識別値の値が0.4、色画像から得られた識別値の値が0の場合には対比する木目は類似していると判断する。また、柄画像から得られた識別値の値が0、色画像から得られた識別値の値が3.5の場合にも対比する木目は類似していると判断する。さらに、柄画像から得られた識別値と色画像から得られた識別値の値が共に0.2の場合には対比する木目は類似していると判断する。しかし、柄画像から得られた識別値の値が0.5、色画像から得られた識別値の値が0.2の場合には対比する木目は非類似であると判断する。また、柄画像から得られた識別値の値が0.2、色画像から得られた識別値の値が0.4の場合には対比する木目は非類似であると判断する。さらに、柄画像から得られた識別値と色画像から得られた識別値の値が共に0.3の場合には対比する木目は非類似であると判断する。
【0084】
以上のように、類似性評価部50は、識別値演算部54と比較評価部55を有しているので、特徴量の差を圧縮した識別値を求めることができ、識別値を閾値と比較することによって、木目の類似性を容易に評価することができる。
【0085】
データベース56に格納されている閾値の情報は、木目の類似性を評価する上で非常に重要な値である。したがって、閾値の情報は次のような手順により作成する。まず、人間の官能評価で類似と判断された2枚の木目パネルの組合せ、または非類似と判断された2枚の木目パネルの組合せを何十通りも用意する。これらの木目パネルを本発明の装置にかけ、柄画像と色画像の識別値だけを求める。求めた識別値を、図9のグラフ上にプロットする。このプロットを用意した全ての木目パネルの組合せに対して行う。最後に、木目の類似、非類似を分けられるところに線を引き、その線で分けられる領域を類似、非類似の領域とする。
【0086】
このようにして求めた閾値によって、閾値の線の角度や曲がりを微調整する。このようにして作成した閾値の情報を用いていろいろな木目の類似性を評価してみたところ、完全ではないが、ほぼ100%の割合で人間の官能評価と本発明の装置の評価結果が一致した。
【0087】
人間は、異なる木目パネルの木目の類似性を判断するときには、木目の模様だけでなく、木目や木目周辺の色合いも判断材料にしている。したがって、木目や木目周辺の色合いや色合いの変化の仕方を特徴量として用いると、人間の官能評価と機械の評価結果を一致させることができる。
【0088】
図10に示すように、グレースケールで表示した木目画像1と木目画像2を比較すると、図の左半分は類似性があるかのように見える。ところが、本発明の装置で濃淡、配置、周期性、縮尺、乱雑さ、回転を考慮した下の木目画像1のイメージ図と木目画像2のイメージ図とを比較すると、木目の類似性がないことが明らかである。このように、木目の類似性を判断するためには、濃淡、配置、周期性、縮尺、乱雑さ、回転(設計パラメータ)を考慮することが重要である。
【0089】
本発明では、閾値の値を厳密に求めているほか、濃淡、配置、周期性、縮尺、乱雑さ、回転に関係する特徴量の差が類似性の評価に影響を与えることから、求めた特徴量の差とこれらの設計パラメータの関連付けも行っている。
【0090】
次に、本発明に係る画像の類似性評価方法について説明する。
【0091】
図11は、本発明に係る画像の類似性評価方法の手順の概略説明図である。また、図12は、本発明に係る画像の類似性評価方法の手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートは本発明に係る画像の類似性評価装置の動作でもある。
【0092】
まず、図11に基づいて、本発明の一実施形態に係る木目の類似性評価方法の概略を説明する。
【0093】
木目パネル5の表面の木目画像を画像入力装置10が入力する。画像入力装置10は木目パネル5の表面に対して5度、35度、80度の角度から木目画像を撮影することができる。全ての角度について木目画像を撮影しても良いし、いずれかの角度から木目画像を撮影しても良い。画像入力装置10によって入力した木目画像はコンピュータシステムの画像記憶部に記憶される。このときには、何度の角度から撮影された木目画像であるかがわかるように、撮影角度が付加される。なお、コンピュータシステムは、図1の画像記憶部20、色変換部30、特徴量抽出部40、類似性評価部50、出力装置60を備える。
【0094】
コンピュータシステムは、画像記憶部20に記憶されている木目画像の中から類似性を評価したい2枚の木目画像を読み込む。選択する2枚の木目画像は撮影角度が同じものが好ましい。2枚の木目画像は、画像1、画像2としてコンピュータシステムに入力され、アルゴリズム演算が行われる。
【0095】
アルゴリズム演算はコンピュータシステムに記憶されている解析ソフトウェアで実施される。アルゴリズム演算は、前処理、特徴量抽出、後処理、類似性判別の順番に行われる。
【0096】
前処理では、木目画像を色変換し木目画像を柄画像と色画像に分離する。前処理は色変換部30が行う。
【0097】
特徴量抽出では、柄画像と色画像のそれぞれについて、木目の周期性、木目の輝度分布、木目の乱雑さ、木目の連続量、木目の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する。特徴量抽出は特徴量抽出部40が行う。
【0098】
後処理では、抽出した特徴量から2枚の柄画像間の特徴量の差と2枚の色画像間の特徴量の差を演算する。そして、特徴量の差を圧縮して識別量を求める。後処理は類似性評価部50が行う。
【0099】
類似性判別では、求めた識別量を閾値と比較して木目の類似性を評価する。類似性判別も類似性評価部50が行う。
【0100】
アルゴリズム演算で得られた類似性の評価結果、特徴量、設計パラメータとの関係はシステム出力として表示される。
【0101】
本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価方法は以上のような動作をするので、角度によって見え方が異なる木目の類似性を高精度に評価することができる。
【0102】
このような効果が得られるのは、前処理で、木目画像から柄画像と色画像を分離していることと、特徴量抽出で、柄画像と色画像の両方の画像に対して特徴量を求めているからである。特に、色画像の特徴量を求めていることがこの効果を得ることに大きく寄与している。さらに、後処理と類似性判別では、柄画像間の特徴量の差と色画像間の特徴量の差の両方から類似性を評価しているため、木目の類似性を総合的に評価することができる。
【0103】
次に、図12以降の図面を参照しながら、本発明に係る画像の類似性評価方法の手順を説明する。
【0104】
まず、画像入力装置10は、木目パネル5の表面を撮影して木目画像を読込む(S10)。
【0105】
具体的には、画像読込は図13に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、画像入力装置10を起動して木目パネル5の表面から木目画像を撮影できるようにする(S11)。次に、コンピュータシステムは、画像入力装置10で撮影した木目画像を記憶する(S12)。コンピュータシステムは、対比する2枚の木目画像を画像記憶部から取得する(S13)。そして、コンピュータシステムは、取得した2枚の木目画像を、図15に示すように「画像1」、「画像2」として画面上に表示する(S14)。
【0106】
次に、取得した画像を編集する(S20)。
【0107】
具体的には、画像編集は図13に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、2枚の木目画像のサイズを合わせる(S21)。コンピュータシステムは、画像記憶部20から取得した2枚の木目画像の大きさを拡大または縮小させて、木目画像の大きさを図15に示した読込画像ウインドウ全体に映る大きさに合わせる。次に、2枚の木目画像の解像度を合わせる(S22)。解像度が異なると、木目の類似性の評価結果に悪影響を与えるからである。解像度が異なる場合には、両方の木目画像を解像度の低いほうに合わせる。
【0108】
次に、コンピュータシステムは、画面上で設定した分析条件設定、分析結果表示設定、関連付け設定の内容を読み込む(S30)。コンピュータシステムが有する表示画面には、図16の分析条件設定画面、図17の分析結果表示設定画面、図18の関連付け設定画面を表示させることができる。これらの画面を表示させてチェックボックスにチェックを入れると、チェックを入れた項目がそれぞれの画面で設定される。コンピュータシステムは、設定された項目を読み込む。
【0109】
例えば、分析条件設定画面では、特徴量抽出として、フーリエスペクトル、輝度スペクトル、ラフクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全てにチェックが入っているので、特徴量の抽出は、これらに関する全ての特徴量を求めることになる。また、後処理として平均値にチェックが入っているので、後処理で識別値を求めるときには、全ての特徴量の差の合計の平均値を求めることになる。さらに識別として固有閾値(SVM)にチェックが入っているので、木目の類似性の評価は図9に示した閾値を用いる。
【0110】
また、分析結果表示設定画面では、柄画像と色画像の特徴量として、フーリエスペクトル、輝度スペクトル、ラフクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列で求められる特徴量にチェックが入っている。具体的には、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量にチェックが入っている。したがって、色画像と柄画像について、全ての特徴量の大きさが後述する類似性分析結果表示画面(図24参照)に表示される。
【0111】
さらに、関連付け設定画面では、フーリエスペクトルのPtに0.5が設定され、輝度スペクトルのSTDに0.5が設定されている。また、設計パラメータの、値9:回転のチェックボックスにチェックが入っている。したがって、関連付け設定の処理で、設計パラメータの回転について、Ptの0.5とSTDの0.5が関連付けられる。
【0112】
次に、コンピュータシステムは前処理を実行する(S40)。
【0113】
具体的には、前処理は、図19に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、画像編集が行われた後の2枚の木目画像を色変換する(S41)。つまり、2枚のRGB木目画像をYC1C2木目画像またはLab木目画像に変換する。この色変換の詳細は色変換の動作の説明において詳述した。次に、色変換後の2枚の木目画像を柄画像と色画像に分離する(S42)。つまり、2枚のRGB木目画を像色変換して求めたYC1C2木目画像またはLab木目画像を、Y木目画像またはL木目画像(柄画像)とC1C2木目画像またはab木目画像(色画像)に分離する。
【0114】
そして、コンピュータシステムは柄画像と色画像について特徴量を抽出する(S50)。
【0115】
具体的には、特徴量抽出は、図20に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、コンピュータシステムは図16に示した分析条件設定画面で設定した特徴量検出の項目を読込む(S51)。そして、前処理で分離した2枚の木目画像の柄画像と色画像を取得する(S52)。例えば、2枚のY木目画像、2枚のC1木目画像、2枚のC2木目画像を取得する。そして、これらの柄画像と色画像の特徴量を抽出する(S53)。分析条件設定画面ではフーリエスペクトル、輝度スペクトル、ラフクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全てにチェックを入れたので、Pr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量を抽出することになる。特徴量の抽出については類似性評価部の動作の説明において詳述した。
【0116】
コンピュータシステムは後処理を実行する(S60)。
【0117】
具体的には、前処理は、図21に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。コンピュータシステムは特徴量抽出の処理で求めた2枚の柄画像の各特徴量の差および2枚の色画像の各特徴量の差を演算する(S61)。2枚の柄画像の各特徴量の差および2枚の色画像の各特徴量の差の演算については類似性評価部の動作の説明において詳述した。そして、コンピュータシステムは、求めた特徴量の種類別に特徴量の差を正規化する(S62)。特徴量の差を正規化する処理については類似性評価部の動作の説明において詳述した。さらに、コンピュータシステムは、柄画像と色画像の特徴量の差を圧縮処理して2つの識別値を求める(S63)。圧縮処理は、正規化した特徴量の差の合計値を求めたり、正規化した特徴量の差の平均値を求めたり、正規化した特徴量の差の中央値を求めたり、0から一定の数値を増加させて段階的に刻んだ各数値範囲に特徴量の差の大きさが当てはまる特徴量の種類の頻度を求める処理をする。特徴量の差を圧縮する処理ついては類似性評価部の動作の説明において詳述した。
【0118】
コンピュータシステムは類似性判定を実行する(S70)。
【0119】
具体的には、類似性判定の処理は図22に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。コンピュータシステムは、データベースに格納してある類似性判定のための閾値(図9参照)を取得する(S71)。そして、この閾値と柄画像と色画像について求めた2つの識別値とを比較する。柄画像と色画像について求めた2つの識別値の位置する領域が類似性ありの閾値の領域であるときには2つの木目は類似していると判定される。一方、柄画像と色画像について求めた2つの識別値の位置する領域が類似性なしの閾値の領域であるときには2つの木目は非類似であると判定される(S72)。
【0120】
次に、コンピュータシステムは分析結果を表示する(S80)。
【0121】
具体的には、分析結果表示は、図23に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、コンピュータシステムは図17に示した分析結果表示設定画面で設定した柄画像と色画像の特徴量の設定項目を読込む(S81)。次に、コンピュータシステムは、柄画像と色画像の特徴量の設定項目を、図24に示す類似性分析結果表示画面に表示する(S82)。そして、対比する木目の類似性の判定結果も表示する(S83)。
【0122】
図16に示した分析条件設定画面ではフーリエスペクトル、輝度スペクトル、ラフクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全てにチェックを入れた。したがって、画面には、図24に示すように、柄画像のPr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差の値が表示される。また、色画像のPr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差が表示される。さらに、対比する木目の類似性の判定結果(NG)も表示される。
【0123】
コンピュータシステムは分析結果・分析条件を保存する(S90)。
【0124】
具体的には、分析結果・分析条件保存は、図25に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。まず、コンピュータシステムは、表示した分析結果をデータベースに保存する(S91)。つまり、柄画像と色画像のPr、Pt、MEN、CNT、VAR、STD、SKW、DF、SRE、LRE、GLN、RLN、RP、ASM、CNT、CRR、VAR2、IDMの18の特徴量の差の値と、対比する木目の類似性の判定結果が(NG)であったことを保存する。また、コンピュータシステムは、設定した分析条件をデータベースに保存する(S92)。つまり、図16に示した分析条件設定画面で、フーリエスペクトル、輝度スペクトル、ラフクタル次元、ランレングス行列、同時生起行列の全てにチェックを入れたことを保存する。
【0125】
最後に、コンピュータシステムは、関連付け設定を保存する(S100)。関連付け設定は、図18の関連付け設定画面で設定された事項である。具体的には、フーリエスペクトルのPtに0.5が設定され、輝度スペクトルのSTDに0.5が設定されていること、および、設計パラメータの、値9:回転のチェックボックスにチェックが入っていることを保存する。
【0126】
関連付けの設定は、図26に示すように、特徴量を関連付ける設計パラメータの選択と、特徴量を関連付ける重み付け(係数)の設定である。関連付けの設定が的確であると、人間の官能評価と機械の評価結果を一致させることが容易になる。
【0127】
以上のように、本発明によれば、人間の官能評価と機械の評価結果を一致させることができるため、角度によって見え方が異なる木目の類似性を高精度に評価することができる。
【0128】
[実施形態2]
次に、本発明の他の実施形態に係る画像の類似性評価装置について詳細に説明する。以下では、実施形態1と同様に、画像の一例として木目パネルの木目を例示する。しかし、本発明に係る画像の類似性評価装置は、パネルや革の表面の皺の画像、布地の織りの画像に対しても適用することができる。
【0129】
(画像の類似性評価装置の全体構成)
図27は、本発明の他の実施形態に係る画像の類似性評価装置のブロック図である。
【0130】
図27に示すように、画像の類似性評価装置200は、画像入力装置110、画像記憶部120、色変換部130、特徴量抽出部140、類似性評価部150および出力装置160を有する。
【0131】
画像入力装置110は木目パネル105の表面の木目画像を入力する。木目画像の入力は、暗室内に置いた木目パネル105の表面に均一に光を当て、その木目パネル105の表面をカメラで撮影することによって行われる。本実施形態では、カメラを固定し光の当てる方向を変えて木目パネル105の表面をカメラで撮影する。画像入力装置110の詳細な構成は後述する。
【0132】
画像記憶部120は、画像入力装置110によって入力した木目パネル105の木目画像を記憶しておくメモリである。画像記憶部120の構成及び動作は実施形態1と同一である。
【0133】
色変換部130は、画像記憶部120から複数の木目画像を取得して色変換し、取得したそれぞれの木目画像を柄画像と色画像に分離する。色変換部130の構成及び動作は実施形態1と同一である。
【0134】
特徴量抽出部140は、色変換部130によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、輝度差と頻度とのヒストグラムから特徴量を求める。特徴量の抽出の手法の詳細は後述する。
【0135】
類似性評価部150は、特徴量抽出部140で求めた特徴量に基づいて木目の類似性を評価する。木目の類似性を評価する手法の詳細は後述する。
【0136】
出力装置160は、画像入力装置110が入力した木目画像および画像記憶部120から取得した木目画像を表示したり、木目の類似性を評価するために抽出した特徴量を表示したり、木目の類似性の評価結果を表示したりする。
【0137】
本発明の一実施形態に係る画像の類似性評価装置100は以上のような構成を有するので、角度によって見え方が異なる木目の類似性を高精度に評価することができる。
【0138】
このような効果が得られるのは、対比する木目画像から柄画像と色画像を分離していることと、柄画像と色画像の両方の画像に対して輝度差と頻度とのヒストグラムから特徴量を求めているからである。
(画像入力装置の構成)
図28〜図30は画像入力装置110の構成図である。
【0139】
画像入力装置110は、暗室112、光源114およびカメラ116を有している。
【0140】
暗室112は木目パネル105の表面を撮像するときに、外光の影響を受けずに撮像できるように、暗室112に進入しようとする外光を遮光する役割を果たす。本実施形態では暗室112の形状は半球状としている。
【0141】
光源114は暗室112の内面に移動可能に取り付ける。光源114は木目パネル105の表面に対し一定の角度範囲から光を照射できる。たとえば、光源114は、図30に示すように、木目パネル105の表面に対して直行する方向(0度)から±50度の範囲で自在に調整できるようにしてある。また、カメラ116は一定の角度で固定してある。たとえば、カメラ116は、図29に示すように、木目パネル105の表面に直行する方向(0度)から20度の角度で固定してある。木目パネル105の表面から反射される光源114の反射光がカメラ116に直接入射されないようにするため、光源114の角度範囲とカメラ116の固定角度を考慮する。本実施形態の画像入力装置110の構成は、実施形態1に適用することもできる。
光源114は面発光となる有機ELを用いる。このため、光源114は暗室112内に置いた木目パネル105の表面を均一に照らすことができる。光源114は発光面の面積を図28のように可変できるようにしてある。木目パネル105の表面に照射する光の面積を小さくしたいときには、図28のように光源114の発光面の面積を小さく絞る。なお、光源114に面発光ではない電球、蛍光灯、LED、メタルハライドランプを用いても良い。この場合には、導光板、拡散板、光拡散フィルムを組み合わせて面発光となるようにしたり、暗室112の形状を球状にして積分球として木目パネル105の表面を均一に照らすことができるようにしたりする。光源114の光色は自然白色が好ましい。光源114から照射する光は波長が360〜780nmの主に可視光領域の光を用いる。しかし、光源114から照射する光は可視光領域以外の領域の光を用いても良い。
【0142】
カメラ116は、光源114から照射する光によって均一に照らされている木目パネル105の表面を撮像する。光源114は様々な角度で木目パネル105の表面を照らすので、同一の木目であっても、図30に示すように、−55度、−50度、−45度、−40度、−35度、…、の角度から光を照射した場合に撮像した木目パネル105の表面の様子はそれぞれ異なる。それぞれの角度で撮像した木目画像はRGB木目画像(カラー画像)として画像記憶部120に送られる。撮像した木目画像には光の照射角度が付加される。
このように、画像入力装置110は、暗室112で木目パネル105に外光が当たらないようにし、光源114で木目パネル105の表面を様々な角度から均一に照らすことができるので、カメラ116は複数の木目パネルの木目を同じ条件で撮影できる。また、カメラ116は木目パネル105の表面を複数の光の照射方向で撮影できるので、異なる角度の照射方向から撮影した木目の類似性を評価することで、木目の類似性の評価精度が向上する。
【0143】
(画像の類似性評価装置の動作)
次に、本実施形態に係る画像の類似性評価装置の動作について説明する。画像の類似性評価装置の動作は、画像の類似性評価方法と同一である。図31は、本発明に係る画像の類似性評価方法の他の実施形態の手順を示すフローチャートである。
【0144】
まず、画像入力装置110は、木目パネル105の表面を撮影して木目画像を読込む(S110)。
【0145】
具体的には、画像入力装置110を起動して木目パネル105の表面の木目画像を撮影できるようにする。木目画像は、木目パネル105に照射する光の角度を少しずつ変えて撮影する。たとえば、図30に示すように、−55度で撮影し、−50度で撮影し、−45度で撮影し、というように、5度刻みで撮影する。本実施形態では5度刻みであるが、類似性評価の精度を上げたければ角度の刻みを小さくし、精度を下げても良ければ角度の刻みを大きくする。
【0146】
次に、画像記憶部120は、画像入力装置110で撮影した木目画像を記憶する(S120)。
色変換部130は、対比する2枚の木目画像を画像記憶部120から取得し、取得した2枚の木目画像を色変換する。つまり、実施形態1の場合と同様に、2枚のRGB木目画像をYC1C2木目画像またはLab木目画像に変換する。次に、色変換後の2枚の木目画像を柄画像と色画像に分離する。つまり、2枚のRGB木目画を像色変換して求めたYC1C2木目画像またはLab木目画像を、Y木目画像またはL木目画像(柄画像)とC1C2木目画像またはab木目画像(色画像)に分離する(S130)。
【0147】
そして、特徴量抽出部140は柄画像と色画像について所定の領域の特徴量を抽出する(S140)。具体的には、特徴量抽出は、図32に示すサブルーチンフローチャートの手順で行う。この手順は後述する。
【0148】
次に類似性評価部150は類似性判定を実行する(S150)。類似性判定の処理は実施形態1で説明した。次に、出力装置160は分析結果を表示する(S160)。
【0149】
以上、本実施形態に係る画像の類似性評価装置は、木目画像の入力と特徴量抽出の動作を除いて、実施形態1に説明した手順と同一である。
【0150】
次に、図32のフローチャートに基づいて特徴量抽出の手順を詳細に説明する。図32は図31の特徴量抽出(S140)のサブルーチンフローチャートである。
【0151】
まず、抽出部140は、色変換部130で変換した柄画像と色画像を入力し、入力した柄画像と色画像のそれぞれについて、所定面積の領域の画像を切り出す(S141)。具体的には、図33に示すように、1つの画像の中のX画素(pixcel)×X画素の領域を切り出す。所定面積の大きさの画像を切り出すのは、人間が焦点を合わせて見ていることができる領域を類似性判定の対象とするためである。どの程度の面積とするかは、人間の眼の中心視の角度、観察距離を考慮して選定する。この切り出しは、光の照射角度が異なるすべての画像に対して行う。たとえば、図30に示したように、−55度から0度まで5度刻みで撮影した場合には、12枚の柄画像と色画像のそれぞれに対して切り出しをする。
【0152】
次に、ステップS141で行った切り出しを、図34に示すように、X/2画素ずつ画像の縦方向及び横方向にずらして行う(S142)。類似性判定の対象となる画像をもれなく抽出するためである。
【0153】
ステップS142で切り出したすべての画像について、各画像間の輝度差を取得する(S143)。具体的には、光の照射角度が異なるすべての木目画像から分離した柄画像と色画像について、図35及び図36に示すように、切り出した位置が同一の画像の輝度を求め、画素ごとの輝度差を求める。そして、同一の輝度となっている部分の数(頻度)を求め、図37に示すように、輝度差と頻度のヒストグラムを作成する(S144)。
【0154】
本実施形態によって類似性判定をした結果と従来のように人間の官能評価の結果の相関傾向の有無を調べた。その結果は、図38に示すように、類似性判定の結果と人間の官能評価の結果には相関傾向があることが判った。したがって、本実施形態の類似性判定の手法は、木目の類似性を判定する上で有効であることが判る。
【符号の説明】
【0155】
10、110 画像入力装置、
20、120 画像記憶部、
30、130 色変換部、
40、140 特徴量抽出部、
50、150 類似性評価部、
52 演算部、
53 正規化処理部、
54 識別値演算部、
55 比較評価部、
56 データベース、
60 出力装置、
100、200 画像の類似性評価装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を入力する画像入力装置と、
前記画像入力装置によって入力した画像を記憶する画像記憶部と、
前記画像記憶部から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を柄画像と色画像に分離する色変換部と、
前記色変換部によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、画像の周期性、画像の輝度分布、画像の乱雑さ、画像の連続量、画像の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
対比する画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を前記特徴量抽出部から取得し柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を評価する類似性評価部と、
を有することを特徴とする画像の類似性評価装置。
【請求項2】
前記特徴量抽出部は、
前記柄画像と前記色画像の各々の特徴量として、フーリエスペクトルを求めることによって画像の周期性を抽出するか、輝度ヒストグラムを求めることによって画像の輝度分布を抽出するか、フラクタル次元を求めることによって画像の乱雑さを抽出するか、ランレングス行列を求めることによって画像の連続量を抽出するか、同時生起行列を求めることによって画像の一致確率を抽出することを特徴とする請求項1に記載の画像の類似性評価装置。
【請求項3】
前記類似性評価部は、
対比する柄画像間の特徴量の差と対比する色画像間の特徴量の差から、前記柄画像と前記色画像の各々について、前記特徴量抽出部で抽出した、全ての種類の特徴量の差の合計値、全ての種類の特徴量の差の中央値、全ての種類の特徴量の差の平均値、または、0から一定の数値を増加させて段階的に刻んだ各数値範囲に特徴量の差の大きさが当てはまる特徴量の種類の数の最頻値、のうちの少なくともいずれか1つを識別値として求める識別値演算部と、
前記柄画像と前記色画像の各々について求めた識別値を前記柄画像および前記色画像の双方と関連付けた閾値と比較することによって画像の類似性を評価する比較評価部と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像の類似性評価装置。
【請求項4】
前記色変換部は、前記画像記憶部から取得したRGB画像をYC1C2画像またはLab画像に変換し、Y画像またはL画像を柄画像とし、C1C2画像またはab画像を色画像として分離することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像の類似性評価装置。
【請求項5】
前記画像入力装置は、
外光を遮光する暗室と、
前記暗室内に置いたパネルの表面を均一に照らす光源と、
暗室内に配置して前記パネルの表面を複数の角度から撮像するカメラと、
を有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像の類似性評価装置。
【請求項6】
画像を入力する画像入力装置と、
前記画像入力装置によって入力した画像を記憶する画像記憶部と、
前記画像記憶部から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を柄画像と色画像に分離する色変換部と、
前記色変換部によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、所定の領域の画像の輝度を求め、前記所定の領域の画像間の輝度差と頻度のヒストグラムに関する特徴量を抽出する特徴量抽出部と、
対比する画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を前記特徴量抽出部から取得し柄画像間の特徴量の差および色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を評価する類似性評価部と、
を有することを特徴とする画像の類似性評価装置。
【請求項7】
前記画像入力装置は、
外光を遮光する暗室と、
前記暗室内に置いたパネルの表面を複数の角度から均一に照らす光源と、
暗室内に配置して前記パネルの表面を撮像するカメラと、
を有することを特徴とする請求項7に記載の画像の類似性評価装置。
【請求項8】
前記画像は、木目パネルの木目の画像であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の画像の類似性評価装置。
【請求項9】
画像を画像入力装置に入力する段階と、
前記画像入力装置によって入力した画像を画像記憶部に記憶する段階と、
前記画像記憶部から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を色変換部により柄画像と色画像に分離する段階と、
前記色変換部によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、画像の周期性、画像の輝度分布、画像の乱雑さ、画像の連続量、画像の一致確率のうちの少なくともいずれか1つに関する種類の特徴量を特徴量抽出部により抽出する段階と、
対比する2枚の画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を前記特徴量抽出部から取得し2枚の柄画像間の特徴量の差と2枚の色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を類似性評価部により評価する段階と、
を含むことを特徴とする画像の類似性評価方法。
【請求項10】
画像を画像入力装置に入力する段階と、
前記画像入力装置によって入力した画像を画像記憶部に記憶する段階と、
前記画像記憶部から複数の画像を取得して色変換しそれぞれの画像を色変換部により柄画像と色画像に分離する段階と、
前記色変換部によって分離した柄画像と色画像のそれぞれについて、所定の領域の画像の輝度を求め、前記所定の領域の画像間の各画素における輝度差と頻度のヒストグラムに関する特徴量を特徴量抽出部により抽出する段階と、
対比する2枚の画像の柄画像と色画像の各々について抽出した特徴量を前記特徴量抽出部から取得し2枚の柄画像間の特徴量の差と2枚の色画像間の特徴量の差に基づいて画像の類似性を類似性評価部により評価する段階と、
を含むことを特徴とする画像の類似性評価方法。
【請求項11】
前記画像は、木目パネルの木目の画像であることを特徴とする請求項9または10に記載の画像の類似性評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図31】
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【図32】
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【図37】
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【図38】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図24】
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【図30】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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