画像データ処理装置
【課題】 ある特徴量を基にして複数の画像処理を行う際、この特徴量を各処理にそれぞれ最適な形に補正し、より高品質の画像を形成できる画像データ処理装置を提供する。
【解決手段】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得してこの特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置に対し、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を設け、この特徴量補正手段による補正量を画像データに施される処理に応じて変更する。
【解決手段】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得してこの特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置に対し、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を設け、この特徴量補正手段による補正量を画像データに施される処理に応じて変更する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像データ処理装置にかかり、特に画像データに対して複数の種類の処理を施す画像データ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】画像をディジタル信号化した情報(画像データ)を、画像形成するために処理する画像データ処理装置がある。現在、このような画像データ処理装置は、コピー機やファクシミリ、あるいはネットワークなどを通じて受け取った画像データをプリントアウトするプリンタなどに適用されている。
【0003】こうした画像データ処理装置では、オリジナルとなる画像を画像データ上で複数の領域に分割し、分割された領域を、文字を表す文字領域と絵柄を表す絵柄領域とに分離するよう処理(像域分離)している。像域分離された文字領域、絵柄領域には、それぞれ文字、あるいは絵柄に適した処理が施されて画像が再現される。この結果、画像データ処理装置は、文字や絵柄が混在する画像全域を高画質に再現することができる。
【0004】上記した画像データ処理装置としては、例えば、特開平3−89677号公報に記載された発明がある。特開平3−89677号公報に記載された発明は、像域分離の結果、画像データを非文字エッジ、色文字エッジ、中間彩度文字エッジ、黒文字エッジといった領域に分割している。そして、分割された領域ごとに、空間フィルタ処理、γ変換処理、スクリーン処理の内容を切り替えている。この切り替えによれば、文字(特に黒文字)については、文字領域と非文字領域とのコントラストが強調され、文字がシャープに再現されるようになる。
【0005】ただし、特開平3−89677号公報に記載された発明では、文字であるか背景であるかによってだけで処理内容が切り替えられるため、文字領域と非文字領域とで処理内容の違いが比較的大きい。このため、文字領域と非文字領域とが誤って像域分離された場合、再現された画像中に急激なテクスチュア変化が発生し、画質を低下させる虞がある。
【0006】このような虞を回避するためになされた発明としては、例えば、特公平7−108019号公報に記載されたものがある。この発明では、画像のエッジ量を多値信号として検出し、このエッジ量に応じて多段階に処理を切り替るようにしている。このような技術によれば、処理の切り換えがなされた境界での階調の差が小さくなり、より自然な画像を得ることができる。ただし、エッジ部、背景部を信号化したときの応答(レスポンス)は、非常に狭い範囲で変化する。また、エッジ量の算出には5×5程度のフィルタが用いられることから、処理の切り換えによる境界の違和感を充分に無くすことはできなかった。
【0007】なお、処理の切り換えによる境界の違和感は、エッジ量によって切り替えられる処理内容の変化が大きいほど顕著になる。一般的には、下色除去(Under Color Removal)の処理のために切り換えをした場合、比較的このような不具合が起こりやすいとされている。
【0008】一方、図11に示すような網点上に文字が存在する画像、つまり文字と網点とがすぐ近くにある画像に対し、文字に対してはエッジ強調を施し、網点に対して非エッジ強調(あるいは平滑化)を施したい場合がある。このような場合、特公平6−5885号公報のように、エッジ検出のためのフィルタを多段階に切り替え、必要に応じてエッジ部から背景部までのレスポンスを狭い範囲で切り替えて制御することが違和感を抑止するのに有効である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、下色除去、エッジ強調および平滑化といった空間フィルタ処理について最適な特徴量(例えばエッジ量)の抽出の仕方は、その処理によって異なる。このため、画像の特徴量に応じて下色除去、空間フィルタ処理を段階的に行う場合、複数の処理を同様に抽出された特徴量に基づいて処理すると、いずれかの処理で不具合が生じる虞がある。
【0010】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、ある特徴量を基にして複数の画像処理を行う際、この特徴量を各処理にそれぞれ最適な形に補正し、より高品質の画像を形成できる画像データ処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】以上述べた課題は、以下の手段によって解決できる。すなわち、請求項1記載の発明は、画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を有してなり、前記特徴量補正手段による補正量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とするものである。
【0012】このように構成することにより、複数の処理がなされる場合、各処理に応じて独立に特徴量を補正することができる。
【0013】請求項2記載の発明は、前記特徴量補正手段は、一次変換によって画像データの特徴量を補正することを特徴とするものである。
【0014】このように構成することにより、比較的簡単に特徴量の補正が実行できる。
【0015】請求項3記載の発明は、画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を膨張する特徴量膨張手段を有してなり、前記特徴量膨張手段による膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とするものである。
【0016】このように構成することにより、複数の処理がなされる場合、各処理に応じて独立に特徴量を膨張することができる。
【0017】請求項4記載の発明は、前記特徴量は、多値情報であるエッジ量、あるいはエッジ量を二値的に表す二値情報であることを特徴とするものである。
【0018】このように構成することにより、必要に応じて特徴量を多値、二値のいずれとしても本発明の画像データ処理装置を構成することができる。
【0019】請求項5記載の発明は、前記画像データは、所定の領域の画像を表す領域画像データであることを特徴とするものである。
【0020】このように構成することにより、複数の画像データに基づいて特定の画像データを補正する空間フィルタ処理についても特徴量に応じた各処理ごとの補正ができるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態1、実施の形態2について説明する。
(実施の形態1)図1は、実施の形態1の画像データ処理装置の構成を示すブロック図である。図示した構成は、画像を読み取ってR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色の画像信号を生成するCCD(Charged Coupled Device)素子を用いたカラー入力装置1と、カラー入力装置1で生成された画像データを処理する平滑化フィルタ2と、γ変換部3と、適応エッジ強調部4とを有している。以上の構成では、3色の画像データは各色ごとに処理されるものであって、平滑化フィルタ2、γ変換部3、適応エッジ強調部4は、それぞれ3つずつ設けられている。
【0022】また、図示した構成は、適応エッジ強調部4で処理された3色の画像データをすべて入力し、この画像データに色補正および墨生成処理を行う色補正/墨生成部5、画像の特徴量に基づいて下色除去量を調整する適応下色除去部6、プリンタの特性に応じて画像データに基づく信号を変換するプリンタγ変換部7、ディザ処理などを行う中間調処理部8と、以上の処理を経た画像データをプリントアウトするプリンタであるカラー出力装置9とを有している。
【0023】さらに、実施の形態1の画像データ処理装置は、図示したように、適応エッジ強調部4、適応下色除去部6の制御に用いられるエッジ量を算出するエッジ量算出部10と、算出されたエッジ量に基づいてエッジ量算出部10から出力する制御信号kを制御信号mに補正して適応エッジ強調部4に出力する第1補正部11と、制御信号kを制御信号nに補正して適応下色除去部6に出力する第2補正部12とを有している。なお、この第1補正部11、第2補正部12は、実施の形態1の特徴量を補正する特徴量補正手段として機能する構成である。
【0024】以上述べた構成では、面順次でカラー画像を形成していて、画像データは、色補正/墨生成部5までR、G、Bの3信号として入力している。その後、適応下色除去部6まではK(黒)の画像データとR、G、Bのいずれか一色との2信号がプリンタγ変換部7に入力し、以降は1回にプリントアウトされる画像データが1信号ずつ流れていくようになっている。
【0025】以上の構成のうち、適応エッジ強調部4は、空間フィルタによって画像データを処理する構成であって、画像データにエッジ強調処理を施す際、所定の特徴量に基づいてエッジ強調の度合いを制御するものである。この制御により、画像データは、所定の領域の画像を表す画像データ(領域画像データ)として処理される。
【0026】このような適応エッジ強調部4は、図2のようにエッジ強調フィルタ21、混合機22とを有している。混合機22は、γ変換部3でγ変換された画像データを、直接、あるいはエッジ強調フィルタ21を通してそれぞれ信号s1、信号s2として入力し、後述する制御信号mに基づいて両者の混合割合を調整し、信号s3として出力する構成である。
【0027】また、適応下色除去部6は、画像データに下色除去処理を施す際、所定の特徴量に基づいて下色除去量を制御するものである。なお、本発明の実施の形態では、この所定の特徴量をエッジ量とするものとする。
【0028】第1補正部11、第2補正部12から出力する制御信号m、制御信号nは、その補正対象であるエッジ強調処理、下色除去処理の別によって信号kの補正量を異にして生成された信号である。すなわち、第1補正部11から適応エッジ強調部4に出力する制御信号mは、エッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように制御信号kを補正する制御信号であり、第2補正部12から下色除去部6に出力する制御信号nは、エッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように制御信号kを補正する制御信号である。
【0029】図3は、エッジ量算出部10の構成を説明するためのブロック図である。エッジ量算出部10は、文字画素検出部18と、距離算出部19とを有している。文字画素検出部18は、エッジ強調がかけられた画像データGを所定のレベルで二値化する。そして、この画像データGから黒画素を、例えば図4に示す(a)ないし(d)のパターンを用いてパターンマッチングし、棒状の黒塊を検出する。
【0030】続いて、距離算出部19は、検出した黒塊中の注目画素と、注目画素と最短距離にあるマスク内の文字画素(アクティブ画素)との距離を値Vとして算出する。この処理によれば、図5に示す注目画素(○)の値Vは、マスク内のアクティブ画素黒(〇)の座標を(x,y)とした場合、以下の式で求められる。なお、この式は、マックス値を255とし、マスク内にある中心画素から外周に向かって同心円上にレスポンスを減衰するものである。そして、図5に示した9×9のマスクにおいて、その最外周辺でレスポンスをほぼ0にするようにするものである。
V=255−255×dis/6ただし、dis=(x2+y2)1/2、
【0031】距離算出部19は、以上のようにして注目画素から遠ざかるにしたがって小さくなるようなレスポンスを示す信号を算出し、注目画素がエッジである度合いを判定する構成である。そして、この判定結果に基づいて制御信号kを第1補正部11、第2補正部12に出力している。なお、実施の形態1の距離算出部19では、値Vを計算式によって求めるよう構成したが、計算結果を予め記憶したテーブルをRAMなどに記憶しておき、文字画素検出部18の検出結果をこのテーブルに対照するようにしても良い。
【0032】第1補正部11および第2補正部は、いずれもテーブル変換部として構成されている。図6は、この第1補正部11、第2補正部12で行われる補正について説明するためのグラフを示す図であって、横軸には第1補正部11、第2補正部12に入力する制御信号(距離算出部19による距離算出結果に基づく制御信号)、縦軸には第1補正部11、第2補正部12によって補正されて出力される制御信号m、nを示している。また、図6中、破線で示した直線Aは、比較のために制御信号を補正することなく出力した状態を示す直線である。なお、図6中では、説明を簡単にするために第1補正部11、第2補正部12に入出力する信号を〔0,1〕でアナログ的に正規化したように記述している。しかし、この信号は、実際には必要ビット数に応じたディジタルサンプリング信号として得られる信号である。
【0033】このような図6によれば、第1補正部11、第2補正部12の補正は、直線Aを直線m、あるいは直線nに一次変換することによって行っている、つまり、一次変換によって画像データの特徴量を補正するものであることが分かる。また、第1補正部11から適応エッジ強調部4に出力する制御信号mは、エッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように補正する制御信号であり、第2補正部12から下色除去部6に出力する制御信号nは、エッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように補正する制御信号であることから、エッジ強調部の処理にあってはエッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように制御され、下色除去の処理にあってはエッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように制御されることが分かる。
【0034】次に、以上説明した構成の動作について説明する。カラー入力装置1は、原稿の画像を読み取ってA/D変換した後、読み取られた各画素ごとに反射率に略リニアであって8bitの画像データを出力する。この画像データは、R、G、Bの3信号としてすべて平滑化フィルタ2に入力すると共に、少なくともその1つがエッジ量算出部10に入力する。エッジ量算出部10に入力した画像データは、第1補正部11、第2補正部12に入力してそれぞれ制御信号m、制御信号nを生成する。
【0035】平滑化フィルタ2に入力した画像データは、ここで例えば図7に示すフィルタによってフィルタリングされる。このフィルタリングにより、プリントアウトされる画像にモアレやテクスチュアが発生することを防ぐことができる。平滑化フィルタ2によってフィルタリングされた画像データは、さらにγ変換部3に入力する。γ変換部3は、反射率にリニアであった画像データの属性を濃度にリニアに変換する。この変換により、後段の色補正/墨生成部5における濃度信号からプリンタ駆動信号への変換の際に両者の関係をより線形に近づけ、色補正時の変換精度向上を図ることができる。
【0036】γ変換された画像データは、さらに適応エッジ強調部4に入力する。この画像データは、適応エッジ強調部4の内部で分岐し、その一方が直接混合機22(図2)に信号s1として入力し、他の一方がエッジ強調フィルタ21を介して混合機22に信号s2として入力する。エッジ強調フィルタ21を通った画像データは、ここで例えば図8に示したエッジ強調フィルタによってフィルタリングされてエッジ強調がなされることになる。
【0037】このとき、第1補正部11で生成された制御信号mも混合機21に入力する。混合機21では、信号s1と信号s2とを制御信号mに基づいて混合し、信号s3として色補正/墨生成部5に出力する。制御信号mに基づく信号s1、信号s2の混合割合(信号s3生成の混合比)は、以下の式によって求められる。
s3=m×s2+(1−m)×s1
【0038】このような処理によれば、図11に示した網点上の文字がある画像に対しても、エッジを強調したい特徴量の影響を周囲に及ぼすことが抑えられ、文字エッジにはエッジ強調を施す一方、背景部にはエッジ強調を施すことなくモアレやテクスチュアの抑制が実現できる。
【0039】適応エッジ強調部4で処理された画像データは、色補正/墨生成部5に入力する。色補正/墨生成部5の色補正は、カラー入力装置1(スキャナ)での色分解フィルタやインクの濁り成分を除去する処理であり、一般的な方法に、マスキング方式、メモリマップ方式(補間方式)の二つがある。実施の形態1では、前者のマスキング方式を用いて線形な変換を行う例を説明するものとする。
【0040】マスキング方式によれば、R、G、Bの画像データは、以下の式によってC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の色データに置き換えられる。すなわち、C=k11×R+k12×G+k13×B+k14M=k21×R+k22×G+k23×B+k24Y=k31×R+k32×G+k33×B+k34ここで、k11〜k34は実験によって決定された定数である。
【0041】また、墨生成処理では、上記した式に従って決定されたC、M、Yの色データから、さらに以下の式に従ってKの色データを作成する。
K=min(C,M,Y)
【0042】このようにして得られたC、M、Y、Kの色データは、さらに適応下色除去部6に入力して変更される。適応下色除去部6は、C、M、Y、Kの色データを、以下の式を使って変更している。
K1=α×KC1=C−K1M1=M−K1Y1=Y−K1なお、上記した式中、αは画像の特徴量を反映する係数であり、C1、M1、Y1、K1は、それぞれ変更後のC、M、Y、Kの色データである。
【0043】このとき、適応下色除去部6には、色データと共に第2補正部12で生成された制御信号nが入力している。実施の形態1では、この制御信号nをαに反映させることにより、下色除去に際してエッジがなだらかに変化するように処理するものである。
【0044】図9は、制御信号nと係数αとの関係を説明するためのグラフを示す図で、横軸に適応下色除去部6に入力する制御信号n(〔0,1で規格化〕)を示し、縦軸に係数αの値を示したものである。図9によれば、制御信号nが大きくなる(文字部である確率が高い)に従って係数αを1.0に近づける。また、制御信号nが小さくなるに従って(絵柄部である確率が高い)係数αを、絵柄領域に対して一般的に行われる処理に使用される係数である0.6に近づけることが分かる。
【0045】実施の形態1の制御信号nは、第2補正部12によって画像の広い範囲でなだらかに変化するように補正されている。このため、係数αの変化もなだらかになり、下色除去量が比較的画像の狭い範囲で変化した場合に起こる、色の濁りの差、グレーバランスの差が目に付くといった現象がなくなって、プリントされる画像を高画質にすることができる。
【0046】以上のようにして下色除去の処理が施された画像データは、プリンタγ変換部7でプリンタの特性に合わせてテーブル変換される。このとき、地肌を除去する処理やコントラストを積極的につける処理をこのテーブルで施すようにしても良い。
【0047】中間調処理部8では、ディザ処理や誤差拡散法によって画像の中間調を再現するよう画像データを処理する。なお、後述する実施の形態2では、ディザ処理によって中間調を再現する場合の処理について詳述する。中間調処理部8からは、以上の処理がなされた画像データを再現するようにカラー出力装置9を制御する制御信号が出力する。カラー出力装置9は、この制御信号に従って駆動し、画像を面順次にプリントアウトする。
【0048】以上述べた実施の形態1によれば、画像の特徴量として抽出されたエッジ量をエッジ強調処理に使用する場合には比較的急峻に変化するように補正し、下色除去にあたっては比較的なだらかに変化するように補正できる。このため、実施の形態1では、エッジ強調、下色除去の処理でそれぞれ発生する不具合(網点上の文字エッジ強調、濁り量変化が目立つなど)を解決し、高画質な画像を形成することができる。
【0049】なお、本発明は、以上述べた実施の形態1に限定されるものではない。例えば、第1補正部11、第2補正部12で行われる制御信号の補正は、図6に示した例に限定されるものでなく、他の形に補正されるものであっても良い。また、必要に応じて一次変換以外の変化方法で補正されるものであっても良い。このような他の補正も、第1補正部11、第2補正部12で用いた変換テーブルの形を変更することによって比較的容易に可能になる。
【0050】また、実施の形態1では、エッジ強調を適応エッジ強調として空間フィルタ処理を制御する例を挙げたが、平滑化フィルタを制御して同様の効果を得ることも可能である。
【0051】(実施の形態2)次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2で説明する処理は、下色除去部6で係数αを固定(例えば0.6)し、適応中間階調部8でディザサイズが異なるディザ処理によって生成された信号を特徴量に基づく混合比で混合する処理を行う場合、ある程度の幅を持つ文字に中抜けと呼ばれる現象が発生することを防ぐために好適なものである。
【0052】図10は、本発明の実施の形態2の画像データ処理装置の構成を説明するためのブロック図である。なお、図10では、図1で示した構成と同様のものについては同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0053】実施の形態2の画像データ処理装置は、実施の形態1の画像データ処理装置と同様に画像データの特徴量を取得し、この特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置である。このため、実施の形態2の画像データ処理装置は、CCD素子を用いたカラー入力装置1と、カラー入力装置1で生成された画像データを処理する3つの平滑化フィルタ2、γ変換部3、適応エッジ強調部4と、色補正/墨生成部5と、適応下色除去部6と、プリンタγ変換部7と、適応中間調処理部80と、カラー出力装置9と、エッジ量算出部10と、エッジ量算出部10が算出したエッジ量に基づいて適応エッジ強調部4に制御信号mを出力する第1補正部11と、適応中間調処理部80に制御信号oを出力する第3補正部13を有している。
【0054】以上の構成のうち、実施の形態2では、第3補正部13が特徴量膨張手段として機能する。そして、第3補正部13によって膨張されるエッジ量の膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されるよう構成されている。
【0055】エッジ量算出部10は、第1補正部11、第3補正部13に制御信号を入力する。この制御信号は、第1補正部11では実施の形態1と同様の制御信号mに補正され、第3補正部13では制御信号oに補正される。制御信号oの補正は、第3補正部13が例えば3×3のマスクを備え、この中心画素に対する制御信号をマスク内にある値の最大値と置き換えるようにするものである。
【0056】このような第3補正部13の処理によれば、中心画素が常にマスク内の最大値で処理されるように制御される。このため、処理後の画素は、処理前に比べて一回り大きな画素として表現されるように(膨張)なり、白抜けが発生することが無くなる。一方、このような処理が望ましくないエッジ強調にあたっては、実施の形態1で述べた補正信号mが使用されるから、当然のことながら膨張処理はなされない。
【0057】したがって、実施の形態2によれば、画像の特徴量として抽出されたエッジ量を中間調処理に使用する場合にだけエッジ量を膨張し、白抜けを解決して高画質な画像を形成することができる。
【0058】なお、第3補正部13で行われる膨張の膨張量(膨張サイズ)は、マスクサイズを変えることによって可能になる。このため、処理すべき画像の質に応じてマスクサイズを適当に変え、処理に適切な膨張量を選択することができる。また、膨張された制御信号に対し、さらに図6に示したようなテーブル変換するようにすることもできる。
【0059】また、本発明は、以上述べた実施の形態1、実施の形態2に限定されるものではない。例えば、実施の形態1、実施の形態2では、いずれも特徴量を多値情報であるエッジ量としているが、この特徴量であるエッジ量を適当な閾値で二値化し、処理を0/1的に制御するようにしても良い。また、周知の像域分離処理で画像を切り分け、この結果に基づいて処理を制御するようにしても良い。なお、この場合には、制御信号の示す領域が、空間フィルタや中間調処理といった処理に伴って変わることになる。
【0060】さらに、実施の形態1、実施の形態2では、いずれも単体として機能するプリンタを例にして構成しているが、本発明の画像データ処理装置は、ネットワークに接続されて画像データ処理を行うプリンタとして構成することも可能である。このように構成した場合、カラー入力装置は不要になる。また、画像データと共に特徴量であるエッジ量が入力するよう構成することも可能であって、この場合には、特徴量算出部も不要になる。
【0061】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、複数の処理のうち、各処理に応じて独立に特徴量を補正し、各処理をそれぞれ最適に制御することができる。したがって、形成される画像の品質をより高めることができる。
【0062】請求項2記載の発明は、比較的簡単に特徴量の補正が実行でき、本発明の画像データ処理装置を比較的簡易な構成で実現できる。また、処理にかかる時間を短縮できる上、装置の小型化にも寄与することができる。
【0063】請求項3記載の発明は、複数の処理のうち、独立に特徴量を膨張し、各処理をそれぞれ最適に制御することができる。したがって、形成される画像の品質をより高めることができる。
【0064】請求項4記載の発明は、必要に応じて特徴量を多値、二値のいずれにもでき、本発明の画像データ処理装置の使い勝手をいっそう高めることができる。
【0065】請求項5記載の発明は、空間フィルタ処理についても特徴量に応じた各処理ごとの補正ができ、本発明の画像データ処理装置の使い勝手をいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態で共通の、適応エッジ強調部を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態で共通の、エッジ量算出部の構成を説明するためのブロック図である
【図4】図3に示したエッジ量算出に用いられるパターンを例示する図である。
【図5】図3に示した距離算出部の処理を説明するための図である。
【図6】図1に示した第1補正部、第2補正部で行われる補正について説明するためのグラフを示す図である。
【図7】図1に示した平滑化フィルタで使用されるフィルタを説明するための図である。
【図8】図2に示したエッジ強調部で使用されるフィルタを説明するための図である。
【図9】図1に示した第2補正部で行われる補正の具体的な方法を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】網点上に文字が存在する画像を例示した図である。
【符号の説明】
1 カラー入力装置
2 平滑化フィルタ
3 γ変換部
4 適応エッジ強調部
5 色補正/墨生成部
6 適応下色除去部
7 プリンタγ変換部
8 中間調処理部
9 カラー出力装置
10 エッジ量算出部
11 第1補正部
12 第2補正部
13 第3補正部
18 文字画素検出部
19 距離算出部
21 エッジ強調部
22 混合機
80 適応中間調処理部
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像データ処理装置にかかり、特に画像データに対して複数の種類の処理を施す画像データ処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】画像をディジタル信号化した情報(画像データ)を、画像形成するために処理する画像データ処理装置がある。現在、このような画像データ処理装置は、コピー機やファクシミリ、あるいはネットワークなどを通じて受け取った画像データをプリントアウトするプリンタなどに適用されている。
【0003】こうした画像データ処理装置では、オリジナルとなる画像を画像データ上で複数の領域に分割し、分割された領域を、文字を表す文字領域と絵柄を表す絵柄領域とに分離するよう処理(像域分離)している。像域分離された文字領域、絵柄領域には、それぞれ文字、あるいは絵柄に適した処理が施されて画像が再現される。この結果、画像データ処理装置は、文字や絵柄が混在する画像全域を高画質に再現することができる。
【0004】上記した画像データ処理装置としては、例えば、特開平3−89677号公報に記載された発明がある。特開平3−89677号公報に記載された発明は、像域分離の結果、画像データを非文字エッジ、色文字エッジ、中間彩度文字エッジ、黒文字エッジといった領域に分割している。そして、分割された領域ごとに、空間フィルタ処理、γ変換処理、スクリーン処理の内容を切り替えている。この切り替えによれば、文字(特に黒文字)については、文字領域と非文字領域とのコントラストが強調され、文字がシャープに再現されるようになる。
【0005】ただし、特開平3−89677号公報に記載された発明では、文字であるか背景であるかによってだけで処理内容が切り替えられるため、文字領域と非文字領域とで処理内容の違いが比較的大きい。このため、文字領域と非文字領域とが誤って像域分離された場合、再現された画像中に急激なテクスチュア変化が発生し、画質を低下させる虞がある。
【0006】このような虞を回避するためになされた発明としては、例えば、特公平7−108019号公報に記載されたものがある。この発明では、画像のエッジ量を多値信号として検出し、このエッジ量に応じて多段階に処理を切り替るようにしている。このような技術によれば、処理の切り換えがなされた境界での階調の差が小さくなり、より自然な画像を得ることができる。ただし、エッジ部、背景部を信号化したときの応答(レスポンス)は、非常に狭い範囲で変化する。また、エッジ量の算出には5×5程度のフィルタが用いられることから、処理の切り換えによる境界の違和感を充分に無くすことはできなかった。
【0007】なお、処理の切り換えによる境界の違和感は、エッジ量によって切り替えられる処理内容の変化が大きいほど顕著になる。一般的には、下色除去(Under Color Removal)の処理のために切り換えをした場合、比較的このような不具合が起こりやすいとされている。
【0008】一方、図11に示すような網点上に文字が存在する画像、つまり文字と網点とがすぐ近くにある画像に対し、文字に対してはエッジ強調を施し、網点に対して非エッジ強調(あるいは平滑化)を施したい場合がある。このような場合、特公平6−5885号公報のように、エッジ検出のためのフィルタを多段階に切り替え、必要に応じてエッジ部から背景部までのレスポンスを狭い範囲で切り替えて制御することが違和感を抑止するのに有効である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、下色除去、エッジ強調および平滑化といった空間フィルタ処理について最適な特徴量(例えばエッジ量)の抽出の仕方は、その処理によって異なる。このため、画像の特徴量に応じて下色除去、空間フィルタ処理を段階的に行う場合、複数の処理を同様に抽出された特徴量に基づいて処理すると、いずれかの処理で不具合が生じる虞がある。
【0010】本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、ある特徴量を基にして複数の画像処理を行う際、この特徴量を各処理にそれぞれ最適な形に補正し、より高品質の画像を形成できる画像データ処理装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】以上述べた課題は、以下の手段によって解決できる。すなわち、請求項1記載の発明は、画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を有してなり、前記特徴量補正手段による補正量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とするものである。
【0012】このように構成することにより、複数の処理がなされる場合、各処理に応じて独立に特徴量を補正することができる。
【0013】請求項2記載の発明は、前記特徴量補正手段は、一次変換によって画像データの特徴量を補正することを特徴とするものである。
【0014】このように構成することにより、比較的簡単に特徴量の補正が実行できる。
【0015】請求項3記載の発明は、画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を膨張する特徴量膨張手段を有してなり、前記特徴量膨張手段による膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とするものである。
【0016】このように構成することにより、複数の処理がなされる場合、各処理に応じて独立に特徴量を膨張することができる。
【0017】請求項4記載の発明は、前記特徴量は、多値情報であるエッジ量、あるいはエッジ量を二値的に表す二値情報であることを特徴とするものである。
【0018】このように構成することにより、必要に応じて特徴量を多値、二値のいずれとしても本発明の画像データ処理装置を構成することができる。
【0019】請求項5記載の発明は、前記画像データは、所定の領域の画像を表す領域画像データであることを特徴とするものである。
【0020】このように構成することにより、複数の画像データに基づいて特定の画像データを補正する空間フィルタ処理についても特徴量に応じた各処理ごとの補正ができるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態1、実施の形態2について説明する。
(実施の形態1)図1は、実施の形態1の画像データ処理装置の構成を示すブロック図である。図示した構成は、画像を読み取ってR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の3色の画像信号を生成するCCD(Charged Coupled Device)素子を用いたカラー入力装置1と、カラー入力装置1で生成された画像データを処理する平滑化フィルタ2と、γ変換部3と、適応エッジ強調部4とを有している。以上の構成では、3色の画像データは各色ごとに処理されるものであって、平滑化フィルタ2、γ変換部3、適応エッジ強調部4は、それぞれ3つずつ設けられている。
【0022】また、図示した構成は、適応エッジ強調部4で処理された3色の画像データをすべて入力し、この画像データに色補正および墨生成処理を行う色補正/墨生成部5、画像の特徴量に基づいて下色除去量を調整する適応下色除去部6、プリンタの特性に応じて画像データに基づく信号を変換するプリンタγ変換部7、ディザ処理などを行う中間調処理部8と、以上の処理を経た画像データをプリントアウトするプリンタであるカラー出力装置9とを有している。
【0023】さらに、実施の形態1の画像データ処理装置は、図示したように、適応エッジ強調部4、適応下色除去部6の制御に用いられるエッジ量を算出するエッジ量算出部10と、算出されたエッジ量に基づいてエッジ量算出部10から出力する制御信号kを制御信号mに補正して適応エッジ強調部4に出力する第1補正部11と、制御信号kを制御信号nに補正して適応下色除去部6に出力する第2補正部12とを有している。なお、この第1補正部11、第2補正部12は、実施の形態1の特徴量を補正する特徴量補正手段として機能する構成である。
【0024】以上述べた構成では、面順次でカラー画像を形成していて、画像データは、色補正/墨生成部5までR、G、Bの3信号として入力している。その後、適応下色除去部6まではK(黒)の画像データとR、G、Bのいずれか一色との2信号がプリンタγ変換部7に入力し、以降は1回にプリントアウトされる画像データが1信号ずつ流れていくようになっている。
【0025】以上の構成のうち、適応エッジ強調部4は、空間フィルタによって画像データを処理する構成であって、画像データにエッジ強調処理を施す際、所定の特徴量に基づいてエッジ強調の度合いを制御するものである。この制御により、画像データは、所定の領域の画像を表す画像データ(領域画像データ)として処理される。
【0026】このような適応エッジ強調部4は、図2のようにエッジ強調フィルタ21、混合機22とを有している。混合機22は、γ変換部3でγ変換された画像データを、直接、あるいはエッジ強調フィルタ21を通してそれぞれ信号s1、信号s2として入力し、後述する制御信号mに基づいて両者の混合割合を調整し、信号s3として出力する構成である。
【0027】また、適応下色除去部6は、画像データに下色除去処理を施す際、所定の特徴量に基づいて下色除去量を制御するものである。なお、本発明の実施の形態では、この所定の特徴量をエッジ量とするものとする。
【0028】第1補正部11、第2補正部12から出力する制御信号m、制御信号nは、その補正対象であるエッジ強調処理、下色除去処理の別によって信号kの補正量を異にして生成された信号である。すなわち、第1補正部11から適応エッジ強調部4に出力する制御信号mは、エッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように制御信号kを補正する制御信号であり、第2補正部12から下色除去部6に出力する制御信号nは、エッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように制御信号kを補正する制御信号である。
【0029】図3は、エッジ量算出部10の構成を説明するためのブロック図である。エッジ量算出部10は、文字画素検出部18と、距離算出部19とを有している。文字画素検出部18は、エッジ強調がかけられた画像データGを所定のレベルで二値化する。そして、この画像データGから黒画素を、例えば図4に示す(a)ないし(d)のパターンを用いてパターンマッチングし、棒状の黒塊を検出する。
【0030】続いて、距離算出部19は、検出した黒塊中の注目画素と、注目画素と最短距離にあるマスク内の文字画素(アクティブ画素)との距離を値Vとして算出する。この処理によれば、図5に示す注目画素(○)の値Vは、マスク内のアクティブ画素黒(〇)の座標を(x,y)とした場合、以下の式で求められる。なお、この式は、マックス値を255とし、マスク内にある中心画素から外周に向かって同心円上にレスポンスを減衰するものである。そして、図5に示した9×9のマスクにおいて、その最外周辺でレスポンスをほぼ0にするようにするものである。
V=255−255×dis/6ただし、dis=(x2+y2)1/2、
【0031】距離算出部19は、以上のようにして注目画素から遠ざかるにしたがって小さくなるようなレスポンスを示す信号を算出し、注目画素がエッジである度合いを判定する構成である。そして、この判定結果に基づいて制御信号kを第1補正部11、第2補正部12に出力している。なお、実施の形態1の距離算出部19では、値Vを計算式によって求めるよう構成したが、計算結果を予め記憶したテーブルをRAMなどに記憶しておき、文字画素検出部18の検出結果をこのテーブルに対照するようにしても良い。
【0032】第1補正部11および第2補正部は、いずれもテーブル変換部として構成されている。図6は、この第1補正部11、第2補正部12で行われる補正について説明するためのグラフを示す図であって、横軸には第1補正部11、第2補正部12に入力する制御信号(距離算出部19による距離算出結果に基づく制御信号)、縦軸には第1補正部11、第2補正部12によって補正されて出力される制御信号m、nを示している。また、図6中、破線で示した直線Aは、比較のために制御信号を補正することなく出力した状態を示す直線である。なお、図6中では、説明を簡単にするために第1補正部11、第2補正部12に入出力する信号を〔0,1〕でアナログ的に正規化したように記述している。しかし、この信号は、実際には必要ビット数に応じたディジタルサンプリング信号として得られる信号である。
【0033】このような図6によれば、第1補正部11、第2補正部12の補正は、直線Aを直線m、あるいは直線nに一次変換することによって行っている、つまり、一次変換によって画像データの特徴量を補正するものであることが分かる。また、第1補正部11から適応エッジ強調部4に出力する制御信号mは、エッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように補正する制御信号であり、第2補正部12から下色除去部6に出力する制御信号nは、エッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように補正する制御信号であることから、エッジ強調部の処理にあってはエッジ量が狭い範囲で急峻に変化するように制御され、下色除去の処理にあってはエッジ量が広い範囲でなだらかに変化するように制御されることが分かる。
【0034】次に、以上説明した構成の動作について説明する。カラー入力装置1は、原稿の画像を読み取ってA/D変換した後、読み取られた各画素ごとに反射率に略リニアであって8bitの画像データを出力する。この画像データは、R、G、Bの3信号としてすべて平滑化フィルタ2に入力すると共に、少なくともその1つがエッジ量算出部10に入力する。エッジ量算出部10に入力した画像データは、第1補正部11、第2補正部12に入力してそれぞれ制御信号m、制御信号nを生成する。
【0035】平滑化フィルタ2に入力した画像データは、ここで例えば図7に示すフィルタによってフィルタリングされる。このフィルタリングにより、プリントアウトされる画像にモアレやテクスチュアが発生することを防ぐことができる。平滑化フィルタ2によってフィルタリングされた画像データは、さらにγ変換部3に入力する。γ変換部3は、反射率にリニアであった画像データの属性を濃度にリニアに変換する。この変換により、後段の色補正/墨生成部5における濃度信号からプリンタ駆動信号への変換の際に両者の関係をより線形に近づけ、色補正時の変換精度向上を図ることができる。
【0036】γ変換された画像データは、さらに適応エッジ強調部4に入力する。この画像データは、適応エッジ強調部4の内部で分岐し、その一方が直接混合機22(図2)に信号s1として入力し、他の一方がエッジ強調フィルタ21を介して混合機22に信号s2として入力する。エッジ強調フィルタ21を通った画像データは、ここで例えば図8に示したエッジ強調フィルタによってフィルタリングされてエッジ強調がなされることになる。
【0037】このとき、第1補正部11で生成された制御信号mも混合機21に入力する。混合機21では、信号s1と信号s2とを制御信号mに基づいて混合し、信号s3として色補正/墨生成部5に出力する。制御信号mに基づく信号s1、信号s2の混合割合(信号s3生成の混合比)は、以下の式によって求められる。
s3=m×s2+(1−m)×s1
【0038】このような処理によれば、図11に示した網点上の文字がある画像に対しても、エッジを強調したい特徴量の影響を周囲に及ぼすことが抑えられ、文字エッジにはエッジ強調を施す一方、背景部にはエッジ強調を施すことなくモアレやテクスチュアの抑制が実現できる。
【0039】適応エッジ強調部4で処理された画像データは、色補正/墨生成部5に入力する。色補正/墨生成部5の色補正は、カラー入力装置1(スキャナ)での色分解フィルタやインクの濁り成分を除去する処理であり、一般的な方法に、マスキング方式、メモリマップ方式(補間方式)の二つがある。実施の形態1では、前者のマスキング方式を用いて線形な変換を行う例を説明するものとする。
【0040】マスキング方式によれば、R、G、Bの画像データは、以下の式によってC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の色データに置き換えられる。すなわち、C=k11×R+k12×G+k13×B+k14M=k21×R+k22×G+k23×B+k24Y=k31×R+k32×G+k33×B+k34ここで、k11〜k34は実験によって決定された定数である。
【0041】また、墨生成処理では、上記した式に従って決定されたC、M、Yの色データから、さらに以下の式に従ってKの色データを作成する。
K=min(C,M,Y)
【0042】このようにして得られたC、M、Y、Kの色データは、さらに適応下色除去部6に入力して変更される。適応下色除去部6は、C、M、Y、Kの色データを、以下の式を使って変更している。
K1=α×KC1=C−K1M1=M−K1Y1=Y−K1なお、上記した式中、αは画像の特徴量を反映する係数であり、C1、M1、Y1、K1は、それぞれ変更後のC、M、Y、Kの色データである。
【0043】このとき、適応下色除去部6には、色データと共に第2補正部12で生成された制御信号nが入力している。実施の形態1では、この制御信号nをαに反映させることにより、下色除去に際してエッジがなだらかに変化するように処理するものである。
【0044】図9は、制御信号nと係数αとの関係を説明するためのグラフを示す図で、横軸に適応下色除去部6に入力する制御信号n(〔0,1で規格化〕)を示し、縦軸に係数αの値を示したものである。図9によれば、制御信号nが大きくなる(文字部である確率が高い)に従って係数αを1.0に近づける。また、制御信号nが小さくなるに従って(絵柄部である確率が高い)係数αを、絵柄領域に対して一般的に行われる処理に使用される係数である0.6に近づけることが分かる。
【0045】実施の形態1の制御信号nは、第2補正部12によって画像の広い範囲でなだらかに変化するように補正されている。このため、係数αの変化もなだらかになり、下色除去量が比較的画像の狭い範囲で変化した場合に起こる、色の濁りの差、グレーバランスの差が目に付くといった現象がなくなって、プリントされる画像を高画質にすることができる。
【0046】以上のようにして下色除去の処理が施された画像データは、プリンタγ変換部7でプリンタの特性に合わせてテーブル変換される。このとき、地肌を除去する処理やコントラストを積極的につける処理をこのテーブルで施すようにしても良い。
【0047】中間調処理部8では、ディザ処理や誤差拡散法によって画像の中間調を再現するよう画像データを処理する。なお、後述する実施の形態2では、ディザ処理によって中間調を再現する場合の処理について詳述する。中間調処理部8からは、以上の処理がなされた画像データを再現するようにカラー出力装置9を制御する制御信号が出力する。カラー出力装置9は、この制御信号に従って駆動し、画像を面順次にプリントアウトする。
【0048】以上述べた実施の形態1によれば、画像の特徴量として抽出されたエッジ量をエッジ強調処理に使用する場合には比較的急峻に変化するように補正し、下色除去にあたっては比較的なだらかに変化するように補正できる。このため、実施の形態1では、エッジ強調、下色除去の処理でそれぞれ発生する不具合(網点上の文字エッジ強調、濁り量変化が目立つなど)を解決し、高画質な画像を形成することができる。
【0049】なお、本発明は、以上述べた実施の形態1に限定されるものではない。例えば、第1補正部11、第2補正部12で行われる制御信号の補正は、図6に示した例に限定されるものでなく、他の形に補正されるものであっても良い。また、必要に応じて一次変換以外の変化方法で補正されるものであっても良い。このような他の補正も、第1補正部11、第2補正部12で用いた変換テーブルの形を変更することによって比較的容易に可能になる。
【0050】また、実施の形態1では、エッジ強調を適応エッジ強調として空間フィルタ処理を制御する例を挙げたが、平滑化フィルタを制御して同様の効果を得ることも可能である。
【0051】(実施の形態2)次に、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2で説明する処理は、下色除去部6で係数αを固定(例えば0.6)し、適応中間階調部8でディザサイズが異なるディザ処理によって生成された信号を特徴量に基づく混合比で混合する処理を行う場合、ある程度の幅を持つ文字に中抜けと呼ばれる現象が発生することを防ぐために好適なものである。
【0052】図10は、本発明の実施の形態2の画像データ処理装置の構成を説明するためのブロック図である。なお、図10では、図1で示した構成と同様のものについては同様の符号を付し、その説明を一部略すものとする。
【0053】実施の形態2の画像データ処理装置は、実施の形態1の画像データ処理装置と同様に画像データの特徴量を取得し、この特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置である。このため、実施の形態2の画像データ処理装置は、CCD素子を用いたカラー入力装置1と、カラー入力装置1で生成された画像データを処理する3つの平滑化フィルタ2、γ変換部3、適応エッジ強調部4と、色補正/墨生成部5と、適応下色除去部6と、プリンタγ変換部7と、適応中間調処理部80と、カラー出力装置9と、エッジ量算出部10と、エッジ量算出部10が算出したエッジ量に基づいて適応エッジ強調部4に制御信号mを出力する第1補正部11と、適応中間調処理部80に制御信号oを出力する第3補正部13を有している。
【0054】以上の構成のうち、実施の形態2では、第3補正部13が特徴量膨張手段として機能する。そして、第3補正部13によって膨張されるエッジ量の膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されるよう構成されている。
【0055】エッジ量算出部10は、第1補正部11、第3補正部13に制御信号を入力する。この制御信号は、第1補正部11では実施の形態1と同様の制御信号mに補正され、第3補正部13では制御信号oに補正される。制御信号oの補正は、第3補正部13が例えば3×3のマスクを備え、この中心画素に対する制御信号をマスク内にある値の最大値と置き換えるようにするものである。
【0056】このような第3補正部13の処理によれば、中心画素が常にマスク内の最大値で処理されるように制御される。このため、処理後の画素は、処理前に比べて一回り大きな画素として表現されるように(膨張)なり、白抜けが発生することが無くなる。一方、このような処理が望ましくないエッジ強調にあたっては、実施の形態1で述べた補正信号mが使用されるから、当然のことながら膨張処理はなされない。
【0057】したがって、実施の形態2によれば、画像の特徴量として抽出されたエッジ量を中間調処理に使用する場合にだけエッジ量を膨張し、白抜けを解決して高画質な画像を形成することができる。
【0058】なお、第3補正部13で行われる膨張の膨張量(膨張サイズ)は、マスクサイズを変えることによって可能になる。このため、処理すべき画像の質に応じてマスクサイズを適当に変え、処理に適切な膨張量を選択することができる。また、膨張された制御信号に対し、さらに図6に示したようなテーブル変換するようにすることもできる。
【0059】また、本発明は、以上述べた実施の形態1、実施の形態2に限定されるものではない。例えば、実施の形態1、実施の形態2では、いずれも特徴量を多値情報であるエッジ量としているが、この特徴量であるエッジ量を適当な閾値で二値化し、処理を0/1的に制御するようにしても良い。また、周知の像域分離処理で画像を切り分け、この結果に基づいて処理を制御するようにしても良い。なお、この場合には、制御信号の示す領域が、空間フィルタや中間調処理といった処理に伴って変わることになる。
【0060】さらに、実施の形態1、実施の形態2では、いずれも単体として機能するプリンタを例にして構成しているが、本発明の画像データ処理装置は、ネットワークに接続されて画像データ処理を行うプリンタとして構成することも可能である。このように構成した場合、カラー入力装置は不要になる。また、画像データと共に特徴量であるエッジ量が入力するよう構成することも可能であって、この場合には、特徴量算出部も不要になる。
【0061】
【発明の効果】請求項1記載の発明は、複数の処理のうち、各処理に応じて独立に特徴量を補正し、各処理をそれぞれ最適に制御することができる。したがって、形成される画像の品質をより高めることができる。
【0062】請求項2記載の発明は、比較的簡単に特徴量の補正が実行でき、本発明の画像データ処理装置を比較的簡易な構成で実現できる。また、処理にかかる時間を短縮できる上、装置の小型化にも寄与することができる。
【0063】請求項3記載の発明は、複数の処理のうち、独立に特徴量を膨張し、各処理をそれぞれ最適に制御することができる。したがって、形成される画像の品質をより高めることができる。
【0064】請求項4記載の発明は、必要に応じて特徴量を多値、二値のいずれにもでき、本発明の画像データ処理装置の使い勝手をいっそう高めることができる。
【0065】請求項5記載の発明は、空間フィルタ処理についても特徴量に応じた各処理ごとの補正ができ、本発明の画像データ処理装置の使い勝手をいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1の構成を説明するためのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態で共通の、適応エッジ強調部を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態で共通の、エッジ量算出部の構成を説明するためのブロック図である
【図4】図3に示したエッジ量算出に用いられるパターンを例示する図である。
【図5】図3に示した距離算出部の処理を説明するための図である。
【図6】図1に示した第1補正部、第2補正部で行われる補正について説明するためのグラフを示す図である。
【図7】図1に示した平滑化フィルタで使用されるフィルタを説明するための図である。
【図8】図2に示したエッジ強調部で使用されるフィルタを説明するための図である。
【図9】図1に示した第2補正部で行われる補正の具体的な方法を説明するための図である。
【図10】本発明の実施の形態2の構成を説明するためのブロック図である。
【図11】網点上に文字が存在する画像を例示した図である。
【符号の説明】
1 カラー入力装置
2 平滑化フィルタ
3 γ変換部
4 適応エッジ強調部
5 色補正/墨生成部
6 適応下色除去部
7 プリンタγ変換部
8 中間調処理部
9 カラー出力装置
10 エッジ量算出部
11 第1補正部
12 第2補正部
13 第3補正部
18 文字画素検出部
19 距離算出部
21 エッジ強調部
22 混合機
80 適応中間調処理部
【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、当該特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を有してなり、前記特徴量補正手段による補正量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項2】 前記特徴量補正手段は、一次変換によって画像データの特徴量を補正することを特徴とする請求項1記載の画像データ処理装置。
【請求項3】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、当該特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を膨張する特徴量膨張手段を有してなり、前記特徴量膨張手段による膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項4】 前記特徴量は、多値情報であるエッジ量、あるいはエッジ量を二値的に表す二値情報であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の画像データ処理装置。
【請求項5】 前記画像データは、所定の領域の画像を表す領域画像データであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像データ処理装置。
【請求項1】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、当該特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を補正する特徴量補正手段を有してなり、前記特徴量補正手段による補正量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項2】 前記特徴量補正手段は、一次変換によって画像データの特徴量を補正することを特徴とする請求項1記載の画像データ処理装置。
【請求項3】 画像に基づいて生成される画像データの特徴量を取得し、当該特徴量に基づいて画像データに複数の処理を施す画像データ処理装置であって、取得した特徴量を膨張する特徴量膨張手段を有してなり、前記特徴量膨張手段による膨張量は、画像データに施される処理に応じて変更されることを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項4】 前記特徴量は、多値情報であるエッジ量、あるいはエッジ量を二値的に表す二値情報であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の画像データ処理装置。
【請求項5】 前記画像データは、所定の領域の画像を表す領域画像データであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の画像データ処理装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図1】
【図10】
【図8】
【図9】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図1】
【図10】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2001−14458(P2001−14458A)
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−188212
【出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成13年1月19日(2001.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年7月1日(1999.7.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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