説明

画像データ生成装置、液晶表示装置、及び表示駆動方法

【課題】TNモードを用いた液晶表示装置において補色反転が生じないような画像データを生成可能な画像データ生成装置、及びそのような画像データ生成装置を用いた液晶表示装置、表示駆動方法を提供すること。
【解決手段】TNモードの液晶層LCを有してなる液晶表示部110における表示用の画像データを生成するための画像処理ブロック200は、液晶表示部110に表示させる画像の階調レベルを示す画像データD1を、視角θ方向から液晶表示部110が観察された際に液晶表示部110に表示される画像の色が補色に反転して観察される補色反転が発生する階調レベル以下で視角θに応じた階調レベルである画像データD2に変換するγ補正リマッピングブロック203を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツイステッドネテマティックモードを用いた液晶表示装置の表示用の画像データを生成する画像データ生成装置、及びそれを用いた液晶表示装置、表示駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、各々が平面電極を有する一対の基板間に液晶層が狭持されて構成されている。液晶表示装置に用いられる液晶の動作モードとしては種々のものがあり、この液晶の動作モードの1つとして、液晶層中の液晶分子を一方の基板から他方の基板に向けてツイスト配向させた状態で液晶の動作をさせるツイステッドネマティック(TN)モードが知られている。一般に、TNモードにおいては、液晶層内の液晶分子が90°の角度でツイスト配向させられている。そして、液晶層への光入射側と液晶層からの光出射側とにそれぞれ偏光板が配設されている。このような構成を有する液晶表示装置においては、平面電極に印加する電圧によって液晶層内の液晶分子の配向を制御できる。この液晶分子の配向の制御により、画像の表示を行うことができる。
【0003】
ここで、TNモードは、IPS(In Plane Switching)モードやVA(Vertical Alignment)モードに比べて、良好なコントラストで画像を観察することが可能な角度範囲、即ち視野角が狭いことが知られている。このTNモードの液晶表示装置の視野角を拡大するための技術の1つとして例えば特許文献1の技術がある。特許文献1では、TNモードにおいて広い視野角が得られるように、液晶セルと偏光板との間に負の屈折率異方性を有するディスコティック液晶をハイブリッド配向させてなる視野角補償フィルムを挿入するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4032568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
液晶セルと偏光板との間に視野角補償フィルムを挿入することによって、黒表示時における視野角については改善される。その反面、白表示時における補色反転の影響は、視野角補償フィルムを挿入していない場合に比べて大きくなってしまう。ここで、「補色反転」とは、液晶表示装置を特定方向から観察した際に、表示中の画像の色がその補色として観察されてしまう現象のことを言うものとする。このような補色反転により、例えば液晶表示装置に人の顔を表示した際に、その観察方向によっては、本来、肌色として観察されるべき顔がシアン系色として観察されてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、TNモードを用いた液晶表示装置において補色反転が生じないような画像データを生成可能な画像データ生成装置、及びそのような画像データ生成装置を用いた液晶表示装置、表示駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様の画像データ生成装置は、液晶層を有してなる液晶表示部における表示用の画像データを生成するための画像データ生成装置であって、前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、を具備することを特徴とする。
【0008】
また、上記の目的を達成するために、本発明の一態様の液晶表示装置は、液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部と、前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する信号側駆動部と、を具備することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するために、本発明の一態様の表示駆動方法は、液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部を有する液晶表示装置の表示駆動方法であって、前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出し、前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される前記画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに変換し、前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、TNモードを用いた液晶表示装置において補色反転が生じないような画像データを生成可能な画像データ生成装置、及びそのような画像データ生成装置を用いた液晶表示装置、表示駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置を備えた電子機器の一例としての携帯電話機の外観を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の全体構成を示す図である。
【図3】液晶表示パネルの構成を示す図である。
【図4】液晶表示部の詳細な構成を示す断面図である。
【図5】表示信号電圧生成回路の構成を示す図である。
【図6】液晶表示部の観察方向について示す図である。
【図7】図7(a)は上方視角θUを70°に固定した状態で液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを変化させた場合の表示階調の変化を示した図であり、図7(b)は上方視角θUを70°に固定した状態で液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを変化させた場合の色度の変化を示した図である。
【図8】図8(a)はαの値とそれによって決定される階調特性との関係を示す図であり、図8(b)はβの値とそれによって決定される階調特性との関係を示す図である。
【図9】視角θと非補色反転上限階調レベルγとの関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置を備えた電子機器の一例としての携帯電話機の外観を示す図である。図1に示す携帯電話機10は、マイクロフォン11と、アンテナ12と、スピーカ13と、液晶表示装置14と、操作部15と、を有している。
【0013】
マイクロフォン11は、携帯電話機10の使用者によって入力される音声を電気信号に変換するものである。アンテナ12は、携帯電話機10が図示しない基地局と通信するためのアンテナである。スピーカ13は、別の携帯電話機等から基地局を経由してアンテナ12で受信された音声信号を音声に変換して出力するものである。液晶表示装置14は、各種の画像を表示するものである。操作部15は、携帯電話機10の使用者が携帯電話機10の操作を行うための操作部である。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る液晶表示装置の全体構成を示す図である。図2に示す液晶表示装置は、液晶表示パネル100と、画像処理ブロック200とを有している。
【0015】
液晶表示パネル100は、ツイステッドネマティック(TN)モードの液晶層を有し、画像データ生成装置としての画像処理ブロック200から入力される画像データに基づく画像を表示する。この液晶表示パネル100には、撮像素子101が設けられている。撮像素子101は、例えばCCDセンサであり、液晶表示パネル100を観察している観察者を撮像して観察者の画像を取得し、撮像により得られた観察者の画像を画像処理ブロック200に出力する。
【0016】
また、液晶表示パネル100の構成は例えば図3に示すものである。図3に示すように、液晶表示パネル100は、液晶表示部110と、走査ドライバ120と、信号ドライバ130と、電源調整回路140と、を有している。
【0017】
液晶表示部110は、画像処理ブロックから入力される画像データD2に基づく画像を表示するための表示部である。この液晶表示部110は、画素基板111と対向基板112との間に液晶層LCが介在されてなる液晶セルを有している。この液晶セルを有して表示画素Pixが構成されている。詳細については後述するが、液晶セルには、薄膜トランジスタ(TFT)が形成され、このTFTのゲート電極は走査線G(i)(i=1、2、…、m)に接続され、ドレイン電極(又はソース電極)は走査線G(i)と交差するようにして延伸配設された信号線S(j)(j=1、2、…、n)に接続されている。
【0018】
図4は、液晶表示部110の詳細な構成を示す断面図である。図4に示すように、液晶表示部110は、液晶セル301と、前側偏光板302と、後側偏光板303と、前側視野角補償フィルム304と、後側視野角補償フィルム305と、を有している。そして、後側視野角補償フィルム305の背面(図示下面)にはバックライト114が配置されている。バックライト114は、図4の矢印で示す液晶セル301の方向に向けて光照射を行う。
【0019】
ここで、図4に示す液晶表示部110は所謂ノーマリーホワイトモードの液晶表示部の例である。ノーマリーホワイトモードの場合、前側偏光板302と後側偏光板303とは、光の透過軸が互いに直交するように配置されている。
【0020】
液晶セル301を構成する画素基板111と対向基板112とは、図3に示すシール材113(図4においては図示を省略している)によって所定の間隙を保った状態で接合されている。そして、液晶セル301を構成する液晶層LCは、シール材113によって漏れ出さないように封入されている。
【0021】
対向基板112の光入射面(図示下面)には、後述する表示画素Pixを区画するための開口部を形成するブラックマスク3011が配設されている。また、ブラックマスク3011によって形成された対向基板112の各開口部には、赤色カラーフィルタ3012R、緑色カラーフィルタ3012G、青色カラーフィルタ3012Bが所定の配列に従って設けられている。なお、赤色カラーフィルタ3012R、緑色カラーフィルタ3012G、青色カラーフィルタ3012Bの厚さは、各カラーフィルタが配置された画素領域毎に設定された液晶層LCの厚さ、即ち赤色画素液晶層厚dr、緑色画素液晶層厚dg、青色画素液晶層厚dbとの関係で、dr>dg>dbのように決めることが望ましい。さらに、赤色画素液晶層厚dr、緑色画素液晶層厚dg、青色画素液晶層厚dbの平均液晶層厚をdとしたときに、液晶層LCの複屈折性Δnと平均液晶層圧dとの積Δndの値は、300nm〜500nmの範囲であることが望ましい。
【0022】
赤色カラーフィルタ3012R、緑色カラーフィルタ3012G、青色カラーフィルタ3012Bの表面には、これらのカラーフィルタを覆うようにして一枚の透明導電膜からなる共通電極3013が形成されている。この共通電極3013には、電源調整回路140からコモン電圧Vcomが印加される。さらに、共通電極3013の表面には、共通電極3013を覆うようにして前側水平配向膜3014が被着されている。この前側水平配向膜3014の表面は、ラビング処理が施され、一定方向の溝が刻まれている。
【0023】
画素基板111の光出射面(図示上面)には、ITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜からなる複数の画素電極3015がマトリックス状に配置されている。各画素電極3015は、ブラックマスク3011によって形成された開口位置に対応して形成されている。さらに、各画素電極3015には、スイッチング素子としての薄膜トランジスタ(TFT)3016のソース電極(又はドレイン電極)がそれぞれ接続されている。さらに、全ての画素電極3015とTFT3016等を覆うようにして後側水平配向膜3017が被着されている。後側水平配向膜3017の表面も、前側水平配向膜3014の表面と同様に、ラビング処理が施され、一定方向の溝が刻まれている。ここで、前側水平配向膜3014の溝の方向と後側水平配向膜3017の溝の方向とは、90°の角度をなすねじれの位置の関係にある。
【0024】
前側水平配向膜3014と後側水平配向膜3017との間には、液晶層LCが形成されている。液晶層LCは、正の誘電率異方性を備えたネマティック液晶分子が封入されて構成されている。画素電極3015と共通電極3013との間に電界が形成されていない状態においては、前側水平配向膜3014と後側水平配向膜1017とのそれぞれの近傍において、液晶分子は、前側水平配向膜3014の溝の方向及び後側水平配向膜3017の溝の方向に沿って配向規制力を受けて配列している。上述のように、前側水平配向膜3014の溝の方向と後側水平配向膜3017の溝の方向とは90°の角度をなすねじれの位置の関係にあるので、電界が形成されていない状態の液晶層LC中の液晶分子はツイスト状に配向される。この場合、バックライト114からの光の直線偏光成分は後側偏光板303、前側偏光板302をそれぞれ透過する。この結果、表示画素Pixの表示が白表示となる。一方、画素電極3015と共通電極3013との間に電界が形成された場合には、液晶層LC中の液晶分子の長軸が電界の向きに対して平行な方向に配向する様に、液晶分子に力が働く。この結果、液晶層LC中の液晶分子は、前側水平配向膜3014から後側水平配向膜3017にかけて連続的に配向する。この際、前側水平配向膜3014及び後側水平配向膜3017から離れるに従って液晶分子は、その立ち上がり角度を大きくする。そして、液晶層LCの層厚方向の中間に位置する液晶分子は、ほぼ垂直に配向する。この場合、バックライト114からの光は後側偏光板303、前側偏光板302を透過できなくなる。この場合、表示画素Pixの表示が黒表示となる。
【0025】
前側視野角補償フィルム304と後側視野角補償フィルム305とはそれぞれディスコティック液晶を有して構成されている。このような構成を有する視野角補償フィルムを用いることにより、様々な角度方向の複屈折性を補償することができる。これにより、液晶表示部における表示を良好なコントラストで観察することができる観察角度範囲、即ち視野角を拡大させることが可能である。
【0026】
前側視野角補償フィルム304は、図4に示すように、前側視野角補償フィルム基板3041と、前側視野角補償フィルム配向膜3042と、ディスコティック液晶層3043と、を有している。前側視野角補償フィルム基板3041は、透明なフィルム基板であって、前側偏光板302と接するように形成されている。前側視野角補償フィルム配向膜3042は、前側視野角補償フィルム基板3041の光入射面(図示下面)に形成されている。この前側視野角補償フィルム配向膜3042の表面もラビング処理が施されている。ディスコティック液晶層3043は、一方の面から他方の面に向かって倒伏配向状態から徐々に立ち上がるハイブリッド配向してなる液晶層を有している。このディスコティック液晶層3043は、円盤形状のディスコティック液晶分子3043aを含んでいる。ディスコティック液晶分子3043aの、円盤面に対する法線方向を分子軸3043bとした場合、各ディスコティック液晶分子3043aの分子軸3043bは、前側視野角補償フィルム配向膜3042に施された配向処理の方向に従って前側視野角補償フィルム304と垂直な面内に揃っている。
【0027】
後側視野角補償フィルム305は、図4に示すように、後側視野角補償フィルム基板3051と、後側視野角補償フィルム配向膜3052と、ディスコティック液晶層3053と、を有している。後側視野角補償フィルム基板3051は、透明なフィルム基板であって、後側偏光板303と接するように形成されている。後側視野角補償フィルム配向膜3052は、後側視野角補償フィルム基板3051の光出射面(図示上面)に形成されている。この後側視野角補償フィルム配向膜3052の表面もラビング処理が施されている。ディスコティック液晶層3053は、円盤形状のディスコティック液晶分子3053aを含んでいる。ディスコティック液晶分子3053aの、円盤面に対する法線方向を分子軸3053bとした場合、各ディスコティック液晶分子3053aの分子軸3053bは、後側視野角補償フィルム配向膜3052に施された配向処理の方向に従って後側視野角補償フィルム305と垂直な面内に揃っている。
【0028】
このような構成において、ディスコティック液晶分子3043a及びディスコティック液晶分子3053aは、その倒伏方向に沿った負の光学異方性を有する。例えば前側視野角補償フィルム304のディスコティック液晶層3043は、分子軸3043bの傾斜角度を平均した方向に対して屈折率が最小となる光学軸を備えた負の光学異方性を発現する。後側視野角補償フィルム305のディスコティック液晶層3053についても同様である。これらのような構成を有する視野角補償フィルムを挿入することによって、黒表示時においては液晶層LCに垂直方向から入射した光に対するリタデーションと斜め方向から入射した光に対するリタデーションとの差が補償される。これにより、黒表示時においては様々な方向からの入射光の透過率の差を小さくして広い視野角を得ることができるようになる。
【0029】
走査ドライバ120は、シフトレジスタ等を備えて構成され、液晶表示部110の走査線G(i)に走査信号を順次印加する。この走査ドライバ120は、画像処理ブロック200の制御信号生成ブロック204から制御信号としての垂直同期信号Vsが入力される毎に、m本の走査線への走査信号の印加を開始する。この際、走査ドライバ120は、制御信号生成ブロック204から制御信号としての水平制御信号Hsを受ける毎に、1行分のTFT3016をオンするための走査信号をゲートオフレベルVglからゲートオンレベルVghに切り替える。これにより、この1行分のTFT3016に接続された信号線S(j)を介して信号ドライバ130からの表示信号電圧が画素電極3015に書き込まれる。ここで、垂直制御信号Vsは、液晶表示部110の1画面分の表示を行うための期間である1フレーム毎に印加されるものである。また、水平制御信号Hsは、液晶表示部110に1行分(1本の走査線分)の表示信号電圧(階調信号)を書き込むための期間である1水平期間毎に印加されるものである。
【0030】
信号側駆動部としての機能を有する信号ドライバ130は、液晶表示部110の信号線S(j)に表示信号電圧を印加する。この信号ドライバ130は、図5に示すように、サンプリングメモリ1301、データラッチ部1302、D/A変換回路(DAC)1303、及び表示信号電圧生成回路1304を有している。
【0031】
サンプリングメモリ1301は、制御信号生成ブロック204からの水平同期信号Hsを受けて、1水平期間分に相当するn個の表示画素Pixに対応した画像データD2を、基準クロック信号CLKに同期して1表示画素分ずつ順次記憶する。このため、サンプリングメモリ1301は、信号線S(j)の数と同数(n個)のデータ格納領域を備えている。ここで、画像データD2は、例えば8ビットのデジタルデータとして表される。
【0032】
データラッチ部1302は、制御信号生成ブロック204から水平同期信号Hsを受けてサンプリングメモリ1301の各格納領域に記憶されている1水平期間分の画像データD2を一斉に取り込み、取り込んだ画像データD2をD/A変換回路1303に出力する。
【0033】
D/A変換回路1303は、データラッチ部1302から出力された画像データD2をデコードし、デコードした結果として示される階調レベル情報に対応した表示信号電圧を表示信号電圧生成回路1304から供給される表示信号電圧の中から選択し、選択した表示信号電圧を、対応する信号線S(j)に出力する。このD/A変換回路1303は、複数のDAC部1303a及び出力アンプ部1303bを有している。DAC部1303aは、画像データD2のデコード結果に応じて、表示信号電圧生成回路1304から供給される表示信号電圧を選択する。出力アンプ部1303bは、対応するDAC部1303aによって選択された表示信号電圧を増幅して対応する信号線S(j)に出力する。信号線S(j)に出力された表示信号電圧は、走査ドライバ120によってオン状態とされたTFT3016を介して画素電極3015に印加される。これにより、表示信号電圧Vsの印加によって画素電極3015に発生する画素電極電圧Vpixと共通電極3013に印加されたコモン電圧Vcomとの差の電圧が、画素電極3015と共通電極3013との間に狭持された液晶層LCに印加され、対応する表示画素Pixでの画像表示が行われる。
【0034】
表示信号電圧生成回路1304は、画像データD2が取り得る階調レベル数(例えばD2が8ビットのデジタルデータとして表される場合には256)に対応した表示信号電圧を、例えば所定の正電源電圧VDDA、負電源電圧VSSA(VDDA>Vcom>VSSA)をそれぞれ階調レベル数に対応した複数の抵抗によって分割する抵抗分割方式によって生成する。
【0035】
ここで、液晶は、直流電圧を長時間印加すると特性が劣化する性質を有している。したがって、液晶の長寿命化等のためには、液晶に印加される電圧の極性(画素電極電圧とコモン電圧との大小関係)を交流的に変化させる必要がある。このための手法として、例えばドット反転駆動を用いることができる。ドット反転駆動は、液晶層LCに印加される電圧の極性を1表示画素単位で変化させる駆動方式である。このようなドット反転駆動を行うため、表示信号電圧生成回路1304は、電圧レベルがコモン電圧Vcomよりも高い正極側の表示信号電圧V+と電圧レベルがコモン電圧Vcomよりも低い負極側の表示信号電圧V−との2種の表示信号電圧を生成可能になされている。表示信号電圧V+と表示信号電圧V−とは、それぞれが、画像データD2が取り得る階調レベル数(例えばD2が8ビットのデジタルデータとして表される場合には256)に対応した電圧レベルを有している。このような構成において、表示信号電圧生成回路1304は、制御信号生成ブロックからの極性反転制御信号Polに応じて正極側の表示信号電圧V+と負極側の表示信号電圧V−との何れかを選択してD/A変換回路1303に供給する。ここでは、例えば極性反転制御信号Polがハイレベルの場合に表示信号電圧V+を選択し、極性反転制御信号Polがローレベルの場合に表示信号電圧V−を選択するものとする。
【0036】
なお、本実施形態ではドット反転駆動を用いた極性反転を例示しているが、ライン反転駆動等の他の駆動方式を用いても良い。
【0037】
図3において電源調整回路140は、所定の電源から、走査ドライバ120の電源電圧Vgl、Vghと、信号ドライバ130の電源電圧VSSA、VDDAと、コモン電圧Vcomと、を生成し、生成した電圧を対応するブロックに供給する。
【0038】
また、図2において画像処理ブロック200は、外部インターフェース(I/F)201と、画像データメモリ202と、γ補正リマッピングブロック203と、制御信号生成ブロック204と、制御ブロック205と、を有している。
【0039】
外部I/F201は、外部装置から画像データD1を入力するためのインターフェースである。ここで、本実施形態では、例として、外部I/F201を介して入力される画像データD1が赤(R)、緑(G)、青(B)の3成分からなるデジタルデータであるとし、外部I/F201はデジタルデータを入力可能とするためのデジタルインターフェースであるとする。デジタルデータでの入力を可能とすることにより、後段の処理が行い易く、処理速度の向上等が見込まれる。
【0040】
画像データメモリ202は、外部I/F201を介して入力された画像データD1を一時的に保持しておくためのメモリ(ビデオメモリ)である。
【0041】
データ変換部としての機能を有するγ補正リマッピングブロック203は、画像データD1を液晶表示パネル100の表示に適した画像データD2に変換する処理を行う。γ補正リマッピングブロック203で行われる処理は、γ補正処理である。γ補正処理は、画像データD1を画像データD2に変換するためのマッピングを行う処理である。なお、輝度−階調特性を特徴づけるγの値は、1.6〜2.8の範囲であることが望ましい。ここで、本実施形態においては、液晶表示パネル100を観察している観察者の視線方向に応じて異なるγ補正処理を行う。この詳細については後述する。
【0042】
制御信号生成ブロック204は、液晶表示パネル100を駆動するための制御信号を生成する。この制御信号は、上述した垂直同期信号Vs、水平同期信号Hs、基準クロック信号CLK、極性反転制御信号Polが含まれる。
【0043】
制御ブロック205は、画像処理ブロック200内の各ブロックの動作制御を行う。また、制御ブロック205は、撮像素子101で得られた観察者の画像から、観察者の視線の方向を特定する。そして、制御ブロック205は、特定した観察者の視線の方向から、液晶表示パネル100の観察角度(視角)を検出する。この観察角度(視角)は、液晶表示パネル100の液晶表示部110をなす平面上に法線を設定したときに、この方線と視線の方向を示すベクトルとのなす角度である。ここで、観察者の画像から視線の方向を特定するための手法としては例えば観察者の画像から観察者の黒目を検出し、この黒目の位置によって視線の方向を特定する手法が考えられる。この制御ブロック205と撮像素子101とが視角検出部として機能する。
【0044】
以下、本実施形態における液晶表示装置の動作について説明する。まずは、液晶表示部110の観察方向によって生ずる「補色反転現象」について説明する。このために、液晶表示部110の観察方向を図6に示すようにして定義する。
【0045】
まず、図6に示す液晶表示パネル100の液晶表示部110の表示面と平行な面内にX軸を設定する。また、液晶表示部110の表示面と平行な面内で且つX軸と直交する方向にY軸を設定する。さらに、液晶表示部110の表示面の法線方向にZ軸を設定する。図6の例では、X軸は液晶表示部110の表示面の左右方向に平行に設定している。また、Y軸は液晶表示部110の表示面の上下方向に平行に設定している。さらに、Z軸は液晶表示部110の表示面の正面方向に設定している。なお、X軸、Y軸、Z軸はそれぞれ右方、上方、正面方向を正方向とする。
【0046】
このようにしてX軸、Y軸、Z軸を設定した場合において、Z軸からX軸の正方向に向かう観察角度を右方(3時)視角θR、Z軸からX軸の負方向に向かう観察角度を左方(9時)視角θL、Z軸からY軸の正方向に向かう観察角度を上方(12時)視角θU、Z軸からY軸の負方向に向かう観察角度を下方(6時)視角θDとする。
【0047】
また、前側水平配向膜3014の配向処理方向は、液晶表示部110の表示面内でX軸と45°の角度をなす表示面左下から表示面右上に向かう方向であるとする。さらに、後側水平配向膜3017の配向処理方向は、前側水平配向膜3014の配向処理方向と直交する表示面左上から表示面右下に向かう方向であるとする。また、液晶層LCを構成する液晶は、誘電率異方性が正で、右カイラルのネマティック液晶であるとする。
【0048】
一般に、TNモードでは、良好なコントラストで表示を観察することができる観察角度の範囲、即ち視野角が観察方向に対して均一とはならない。例えば上述した図6のような液晶表示装置では、上下方向の視野角が左右方向の視野角に比べて狭くなる。黒表示時における視野角については、前側視野角補償フィルム304、後側視野角補償フィルム305を導入することによって改善されることが知られている。
【0049】
視野角補償フィルムを導入することにより黒表示時における視野角については改善される。しかしながら白表示時においては、通常、視野角とは良好なコントラストで表示を観察できる観察角度であって、高いコントラストで画像を観察できる場合であっても、階調反転によって画像の視認性が劣化してしまう場合がある。ここで、階調反転とは、特定方向の視角(図6の例では上方視角θU)がある角度を超えた場合に、液晶表示部110に表示させようとする画像の階調レベル(入力階調とする)の変化と、液晶表示部110の観察者によって実際に観察される画像の階調レベル(表示階調とする)の変化、との関係が線形関係でなくなってしまう現象である。通常、入力階調と表示階調とは対応しており、入力階調を上昇させた場合にはそれに伴って表示階調も上昇する。これに対し、上方視角θUがある角度を超えると、入力階調がある階調を超えた時点で、それ以後は表示輝度が上昇から下降に転じてしまう。このような階調反転に伴って、液晶表示部110に表示される画像の色がその補色として液晶表示部110の観察者により観察される補色反転も発生する。このような補色反転は、液晶表示部110の視認性に大きな悪影響を与えてしまう。
【0050】
本実施形態では、信号ドライバ130に入力する画像データを適切なものとすることにより、補色反転を防止する。以下、その具体的な手法について説明する。
【0051】
図7(a)は、上方視角θUを70°に固定した状態で、液晶表示部110に表示させる画像の階調レベルを変化させた場合の表示階調の変化を示した図である。ここで、図7(a)での輝度制限なしで表記されたデータの例は、画像データの取り得る階調レベル数が256の例である。また、図7(a)の横軸は、入力階調を示している。入力階調については、赤色(R)の階調レベルを255階調で固定しつつ、緑色(G)、青色(B)の階調レベルを0階調から255階調の間で変化させたものである。また、図7(a)の縦軸は、表示階調を示している。表示階調については、上方視角θUを70°に固定した場合に観察される画像の輝度(cd/m)として表している。
【0052】
図7(a)の汎例RL(輝度制限なし)で示す特性曲線は、後述するγ補正処理を行っていない場合の表示階調の変化特性を示している。この場合には、低い階調の範囲では、入力階調としてのB、Gの階調レベルの増加に伴ってほぼ線形に表示階調が上昇している。しかしながら、220階調付近で表示階調が上昇から下降に転じてしまう。即ち、従来例では、220階調付近で階調反転が発生することが分かる。
【0053】
図7(b)は、上方視角θUを70°に固定した状態で、液晶表示部110に表示させる画像の階調レベルを変化させた場合の色度の変化を示した図である。ここで、図7(b)で輝度制限なしと表記されたデータの例も、画像データの取り得る階調レベル数が256の例である。また、図7(b)の横軸は、図7(a)と同様に入力階調を示している。また、図7(b)の縦軸は、表示色度を示している。表示色度については、上方視角θUを70°に固定した場合に観察される画像のCIE L表色系に基づく色度座標(u’、v’)で表している。
【0054】
図7(b)の汎例Ru’(輝度制限なし)及びRv’(輝度制限なし)で示す特性曲線は、後述する階調制限処理を行っていない場合の色度の変化特性を示している。この場合には、100階調、即ち(R,G,B)=(255,100,100)の表示(実際には赤色として認識されるべき表示である)の時点で赤色の補色であるシアン系色への色のシフトが見え始めるという現象が発生する。そして、220階調付近で、観察される色が赤色の補色であるシアンとなる補色反転が生じる。
【0055】
ここで、図7(a)、図7(b)において輝度制限なしと表記されたデータは何れも、Rの階調レベルを255階調で固定しつつ、G、Bの階調レベルを0階調から255階調の間で変化させて得られたものである。実際、Gの階調レベルを255階調で固定しつつ、R、Bの階調レベルを0階調から255階調の間で変化させた場合、及びBの階調レベルを255階調で固定しつつ、R、Gの階調レベルを0階調から255階調の間で変化させた場合も220階調付近で補色反転が生じることが分かっている。即ち、上方視角θUを70°に固定した場合には、補色反転は、R、G、Bの何れかの階調レベルが220階調付近となった場合に発生する。
【0056】
以上のように、上方視角θUが大きい場合、入力階調のレベルによっては補色反転が発生する。逆に言えば、上方視角θUが大きくなった場合であっても、入力階調のレベルが低ければ補色反転は発生しない。このような補色反転が発生しない階調レベルを非補色反転上限階調レベルとし、本実施形態ではこの非補色反転上限階調レベルを例えば220階調とする。ここで、図7(a)、図7(b)の結果から、非補色反転上限階調レベルを220階調としている。ただし、これは上方視角θUが70°の場合である。実際には、観察方向に応じて適切に階調レベルを変更することが望ましい。
【0057】
本実施形態では、以下の式に従ってγ補正処理を行うことで補色反転を抑制する。
z=y×γ
y=(tanh(α×(2×x−1)/2)+1)/2×β+x×(1−β)
γ=K−θ×η
ここで、α、β、ηは係数である。また、xは画像データD1が示す階調レベルと液晶表示部110の表示可能な最大の階調レベル(例えば上述の例では255階調)との比である。また、zは出力としての画像データD2の階調レベルに対応している。さらに、γは非補色反転上限階調レベルに対応している。そして、Kは液晶表示部110の表示可能な最大の階調レベル(先のxの定義で用いたものと同じ値)である。また、θは視角である。ここで、x、yは何れも0から1までの値を取る。
【0058】
例えば画像データD1によって示される階調レベルが220階調の場合、xには220/255=0.8627…を代入する。この結果として求められるyにγを乗じることで実際の画像データD2が演算される。なお、演算結果が整数とならなかった場合には、四捨五入等を行って演算結果を整数とする。
【0059】
ここで、上式では、x=0の場合にyが0とはならず、またx=1の場合にyが1とはならない。即ち、画像データD1が示す階調レベルが0階調であっても画像データD2が示す階調レベルが0階調とはならない。同様に、画像データD1が示す階調レベルが最大階調であっても画像データD2が示す階調レベルが最大階調とはならない。このような表示は余り望ましくないため、一部の入力については上式を厳密に適用しないことが望ましい。この場合には、適用しない入力と出力の関係を予め定義しておく必要がある。例えばx=0のときy=0であり、y=0によって示される画像データD2の階調レベルが階調0であるとする。また、x=1のときy=1であり、y=1によって示される画像データD2の階調レベルが階調γ(=K−θ×η)であるとする。
【0060】
ここで、上式のyを求めるための係数について補足する。上式におけるαは、大まかな階調特性の形を決めるための係数である。αは、おおよそ3.0以上とすることが適当で、より好ましくは3.0〜6.0とする。図8(a)にαの値とそれによって決定される階調特性との関係を示す。ここで、図8(a)の横軸はxであり、図8(a)の縦軸はyである。また、図8(a)の各特性曲線はβを1.0に固定し、αを1.0〜6.0の間で1.0ずつ変化させたものである。図8(a)に示すように、αの値を大きくすると、中間階調域の傾きが大きくなる一方で低階調域と高階調域の傾きが小さくなる。これに対し、αの値を小さくすると、低階調域から高階調域にかけての直線性が増加する。また、αの値が小さくなるにつれて低階調域と高階調域のyの値がそれぞれ0と1から乖離する。一方、図8(b)にβの値とそれによって決定される階調特性との関係を示す。ここで、図8(b)の横軸、縦軸もx、yである。また、図8(b)の各特性曲線はαを4.0に固定し、βを0〜1.0の間で0.5ずつ変化させたものである。図8(b)に示すように、βが小さいほど直線性が増し、βが大きくなれば低階調域、高階調域の傾きが小さくなり、表示される画像のコントラストを大きくすることが可能である。
【0061】
また、図9は、視角θと非補色反転上限階調レベルγとの関係を示した図である。図9は、K=255とし、視角θを0°〜90°の範囲で変化させながら、非補色反転上限階調レベルγを測定したものである。上式でも示したように、視角θと非補色反転上限階調レベルγとは線形関係を有する。ここで、図9のグラフの傾きを示すηはη=0.5であるが、測定によれば0.4〜0.6の範囲であった。視角θに応じて非補色反転上限階調レベルγを設定することにより、補色反転を抑制しつつ、視角θに応じた最大の階調レベルを有するγ特性で画像の表示を行うことが可能である。
【0062】
以上のようなγ補正処理を行うことにより、上方視角θUが増加した際の補色反転が抑制される。なお、上述したγ補正処理は、画像データD1の取り得る階調レベル数が画像データD2の取り得る階調レベル数と同じである場合を想定している。したがって、画像データD1の取り得る階調レベル数が画像データD2の取り得る階調レベル数と異なる場合には、画像データD1の階調レベル数を画像データD2の取り得る階調レベル数と一致させるためのマッピング処理を行ってから上述のγ補正処理を行う。
【0063】
図7(a)の汎例RL(輝度制限あり)で示す特性曲線は、階調制限処理を行った場合の表示階調の変化特性を示している。図7(a)に示すように、階調制限処理を行った方が階調制限処理を行っていない場合よりも輝度が高くなる。これは、階調制限処理を行っていない場合には、R、G、Bの一色でも非補色反転上限階調レベルを超えてしまうと補色反転が発生し、これに伴って輝度の低下も発生することを示している。加えて、例えば図7(a)に示したように全ての階調の最大値をγに制限することで、輝度制限なしのときに見られた、入力階調レベルの増加に伴って輝度が下がるという部分がなくなり、入力階調レベルが増えれば輝度が減る事無く増えていくという関係を実現することができる。
【0064】
また、図7(b)の汎例Ru’(輝度制限あり)及びRv’(輝度制限あり)で示す特性曲線は、階調制限処理を行った場合の色度の変化特性を示している。図7(b)に示すように、階調制限処理を行った場合のほうが階調制限処理を行っていない場合よりもシアン系色へのシフト量が抑制されていることが分かる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、信号ドライバ130に入力する画像データD2の階調レベルを、補色反転が発生しない階調レベルである非補色反転上限階調レベルに制限することにより、上方視角が大きくなったときに発生し得る補色反転が抑制される。また、視角に応じて非補色反転上限階調レベルを設定することにより、補色反転が発生しない最大の輝度で画像の表示を行うことが可能である。
【0066】
ここで、上述した本実施形態の例において、階調反転及び補色反転が上方視角θUの増加に伴って発生するのは、前側水平配向膜3014の配向処理方向を表示面左下から表示面右上に向かう方向とし、後側水平配向膜3017の配向処理方向を表示面左上から表示面右下に向かう方向としたためである。配向処理方向を逆転させた場合には、階調反転及び補色反転が下方視角θDの増加に伴って発生する。
【0067】
以上実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
さらに、上記した実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件の適当な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、上述したような課題を解決でき、上述したような効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成も発明として抽出され得る。
【0068】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
液晶層を有してなる液晶表示部における表示用の画像データを生成するための画像データ生成装置であって、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、
を具備することを特徴とする画像データ生成装置。
【0069】
[2]
前記データ変換部は、以下の式に従って前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換し、
z=y×γ
y=(tanh(α×(2×x−1)/2)+1)/2×β+x×(1−β)
γ=K−θ×η
αとβとηとはそれぞれ係数であり、xは前記第1の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な最大の階調レベルとの比であり、zは前記第2の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルとの比であり、Kは前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルであり、θは前記視角である、
ことを特徴とする[1]に記載の画像データ生成装置。
[3]
前記ηは0.4以上0.6以下であり、前記αは3.0以上6.0以下であることを特徴とする[2]に記載の画像データ生成装置。
【0070】
[4]
前記液晶層はツイステッドネマティック液晶からなることを特徴とする[1]乃至[3]の何れかに記載の画像データ生成装置。
[5]
前記液晶層への光入射面側及び前記液晶層からの光射出面側にはそれぞれ視野角補償フィルムが設けられていることを特徴とする[1]乃至[4]の何れかに記載の画像データ生成装置。
[6]
前記視野角補償フィルムは負の光学異方性を持ち傾斜角度が連続的に変化するディスコティック液晶層からなることを特徴とする[5]に記載の画像データ生成装置。
[7]
前記画像データは、赤成分と青成分と緑成分とからなるデジタルデータであることを特徴とする[1]乃至[6]の何れかに記載の画像データ生成装置。
[8]
前記データ変換部は、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の色に補色反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換することを特徴とする[7]に記載の画像データ生成装置。
[9]
液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部と、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、
前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する信号側駆動部と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
[10]
前記データ変換部は、以下の式に従って前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換し、
z=y×γ
y=(tanh(α×(2×x−1)/2)+1)/2×β+x×(1−β)
γ=K−θ×η
αとβとηとはそれぞれ係数であり、xは前記第1の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な最大の階調レベルとの比であり、zは前記第2の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルとの比であり、Kは前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルであり、θは前記視角である、
ことを特徴とする[9]に記載の液晶表示装置。
[11]
前記ηは0.4以上0.6以下であり、前記αは3.0以上6.0以下であることを特徴とする[10]に記載の液晶表示装置。
[12]
前記液晶層はツイステッドネマティック液晶からなることを特徴とする[9]乃至[11]の何れかに記載の液晶表示装置。
[13]
前記液晶層への光入射面側及び前記液晶層からの光射出面側にはそれぞれ視野角補償フィルムが設けられていることを特徴とする[9]乃至[12]の何れかに記載の液晶表示装置。
[14]
前記視野角補償フィルムは負の光学異方性を持ち傾斜角度が連続的に変化するディスコティック液晶層からなることを特徴とする[13]に記載の液晶表示装置。
[15]
前記画像データは、赤成分と青成分と緑成分とからなるデジタルデータであることを特徴とする[9]乃至[14]の何れかに記載の液晶表示装置。
[16]
前記データ変換部は、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の色に補色反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換することを特徴とする[15]に記載の液晶表示装置。
[17]
液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部を有する液晶表示装置の表示駆動方法であって、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出し、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される前記画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに変換し、
前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する、
ことを特徴とする表示駆動方法。
【符号の説明】
【0071】
10…携帯電話機、11…マイクロフォン、12…アンテナ、13…スピーカ、14…液晶表示装置、15…操作部、100…液晶表示パネル、101…撮像素子、110…液晶表示部、111…画素基板、112…対向基板、113…シール材、114…バックライト、120…走査ドライバ、130…信号ドライバ、140…電源調整回路、200…画像処理ブロック、201…外部インターフェース(I/F)、202…画像データメモリ、203…γ補正リマッピングブロック、204…制御信号生成ブロック、205…制御ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶層を有してなる液晶表示部における表示用の画像データを生成するための画像データ生成装置であって、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、
を具備することを特徴とする画像データ生成装置。
【請求項2】
前記データ変換部は、以下の式に従って前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換し、
z=y×γ
y=(tanh(α×(2×x−1)/2)+1)/2×β+x×(1−β)
γ=K−θ×η
αとβとηとはそれぞれ係数であり、xは前記第1の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な最大の階調レベルとの比であり、zは前記第2の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルとの比であり、Kは前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルであり、θは前記視角である、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像データ生成装置。
【請求項3】
前記ηは0.4以上0.6以下であり、前記αは3.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項2に記載の画像データ生成装置。
【請求項4】
前記液晶層はツイステッドネマティック液晶からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像データ生成装置。
【請求項5】
前記液晶層への光入射面側及び前記液晶層からの光射出面側にはそれぞれ視野角補償フィルムが設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の画像データ生成装置。
【請求項6】
前記視野角補償フィルムは負の光学異方性を持ち傾斜角度が連続的に変化するディスコティック液晶層からなることを特徴とする請求項5に記載の画像データ生成装置。
【請求項7】
前記画像データは、赤成分と青成分と緑成分とからなるデジタルデータであることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の画像データ生成装置。
【請求項8】
前記データ変換部は、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の色に補色反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換することを特徴とする請求項7に記載の画像データ生成装置。
【請求項9】
液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部と、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出する視角検出部と、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データが入力され、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換するデータ変換部と、
前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する信号側駆動部と、
を具備することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項10】
前記データ変換部は、以下の式に従って前記第1の画像データを前記第2の画像データに変換し、
z=y×γ
y=(tanh(α×(2×x−1)/2)+1)/2×β+x×(1−β)
γ=K−θ×η
αとβとηとはそれぞれ係数であり、xは前記第1の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な最大の階調レベルとの比であり、zは前記第2の画像データが示す階調レベルと前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルとの比であり、Kは前記液晶表示部の表示可能な前記最大の階調レベルであり、θは前記視角である、
ことを特徴とする請求項9に記載の液晶表示装置。
【請求項11】
前記ηは0.4以上0.6以下であり、前記αは3.0以上6.0以下であることを特徴とする請求項10に記載の液晶表示装置。
【請求項12】
前記液晶層はツイステッドネマティック液晶からなることを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項13】
前記液晶層への光入射面側及び前記液晶層からの光射出面側にはそれぞれ視野角補償フィルムが設けられていることを特徴とする請求項9乃至12の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項14】
前記視野角補償フィルムは負の光学異方性を持ち傾斜角度が連続的に変化するディスコティック液晶層からなることを特徴とする請求項13に記載の液晶表示装置。
【請求項15】
前記画像データは、赤成分と青成分と緑成分とからなるデジタルデータであることを特徴とする請求項9乃至14の何れか1項に記載の液晶表示装置。
【請求項16】
前記データ変換部は、入力された前記第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される画像の色に補色反転が発生する階調レベル以下であって前記視角検出部によって検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに、変換することを特徴とする請求項15に記載の液晶表示装置。
【請求項17】
液晶層を有する表示画素が2次元状に形成された液晶表示部を有する液晶表示装置の表示駆動方法であって、
前記液晶表示部の画面を観察している観察者の視角を検出し、
前記液晶表示部に表示させる画像の階調レベルを示す第1の画像データを、前記液晶表示部が観察された際に前記液晶表示部に表示される前記画像の輝度に階調反転が発生する階調レベル以下であって前記検出された前記視角に応じた階調レベルを有する第2の画像データに変換し、
前記第2の画像データに応じた表示信号電圧を前記表示画素に供給する、
ことを特徴とする表示駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−208255(P2012−208255A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72963(P2011−72963)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】