説明

画像データ転送装置

【課題】受信側での画像認識に耐え得る画像を短い通信時間で転送できる画像データ転送装置を提供する。
【解決手段】監視側端末N1は、画像の分割パターンを指定する分割パターン指定部103と、分割画像の転送順序を指定する転送順序指定部105と、分割パターンおよび転送順序を含む要求信号を被監視側端末N2へ送信する条件要求部110と、被監視側端末N2から送信された分割画像を前記分割パターンの対応位置に逐次表示する復号部106,展開部107,画像メモリ108および表示部109とを具備する。被監視側端末N2は、分割パターンに基づいて画像を複数の画像ブロックに分割する画像分割部203と、画像ブロックを前記転送順序に従って監視側端末N1へ順次に転送する転送部207とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ転送装置に係り、特に、デジタルMCA(Multi-Chanenel Access)無線システムを利用した画像データ転送に好適な画像データ転送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線チャンネルを多数の利用者が共有することで電波の有効利用と利便性を実現したデジタルMCA(Multi-Channel-Access)無線システムが特許文献1に開示されている。このようなデジタルMCA無線システムでは、携帯電話では困難な一斉・同報型通信が可能であるため、防災用途に有効な手段となっている。また、デジタルMCA無線システムでは、通信時間に制限時間(たとえば、5秒程度)を設けることで、電波の更なる有効利用が図られている。
【特許文献1】特開2008−53795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
デジタルMCA無線システムでは通信時間に制限時間が設けられているので、データ量の大きな画像データを転送しようとすると、転送完了前に制限時間を迎えてしまい、受信側では画像データの内容を認識することができないという技術課題があった。
【0004】
また、データ量を削減するために符号化効率の高い符号化方式を導入すると、送信側および受信側での符号化および復号の処理負荷が増大するのみならず、一般的に符号化効率の高い符号化方式は不可逆変換であるために画質の劣化を余儀なくされる。
【0005】
さらに、画像データのデータ量を小さくしても、無線通信は有線通信に較べて降雨減衰などの外因の影響を受けて通信品質が低下し易いので、画像データが確実に転送されるとは限らない。
【0006】
本発明の目的は、上記した従来技術の課題を解決し、受信側での画像認識に耐え得る情報を含む画像を短い通信時間で転送できる画像データ転送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、被監視側端末(送信側)で撮影された画像のデータを監視側端末(受信側)へ転送して表示する画像データ転送装置において、以下のような手段を講じた点に特徴がある。
【0008】
(1)監視側端末は、画像を複数の画像ブロックに分割する分割パターンを指定する手段と、各画像ブロックの転送順序を指定する手段と、前記分割パターンおよび転送順序を含む要求信号を被監視側端末へ送信する手段と、被監視側端末から転送される画像ブロックを受信する手段と、受信した各画像ブロックを前記分割パターンの対応位置に逐次表示する手段とを具備した。
【0009】
(2)被監視側端末は、要求信号に応答して被写体を撮影する撮像手段と、前記分割パターンに基づいて被写体の画像を複数の画像ブロックに分割する手段と、各画像ブロックを前記転送順序に従って監視側端末へ順次に転送する手段とを具備した。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、画像が複数の画像ブロックに分割され、予め指定した画像ブロックから順に転送が行われて画像ブロック単位で表示が進行するので、画像内の主要部分の画像ブロックから順に転送が行われるようにすれば、受信側での画像認識に耐え得る画像を短い通信時間で転送できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の最良の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明に係る画像データ転送システムの主要部の構成を示した機能ブロック図であり、監視側端末N1および被監視側端末N2が制御局(図示せず)を中継して、または中継することなく無線接続されている。
【0012】
監視側端末N1において、撮影位置指定部101は、後述する被監視側端末N2に接続されたWebカメラ208の撮影位置を指定する。画像サイズ指定部102は、前記Webカメラ208で撮影する画像のサイズを指定する。分割パターン指定部103は、前記Webカメラ208で撮影された画像を複数の画像ブロックに分割する際の分割パターンを指定する。本実施形態では、図2に一例を示したように、4分割、9分割、16分割等の複数の分割パターンが予め用意されており、そのいずれかを選択することで分割パターンが指定される。要求画質指定部104は、画像に要求する画質を指定する。転送順序指定部105は、画像ブロックの転送順序を指定する。条件要求部110は、前記指定された各条件を被監視側端末N2へ要求する。
【0013】
データパケット受信部111は、被監視側端末N2から転送される各画像ブロックのデータパケットを受信する。復号部106は、符号化されたデータパケットを復号する。画像展開部107は、復号されたデータパケットを画像メモリ108上に展開する。表示部109は、画像メモリ108上に展開された画像データを可視表示する。
【0014】
被監視側端末N2において、条件応答部206は、前記監視側端末N1から送信された各種の指定条件を受信して、これに応答する。撮影位置設定部201は、Webカメラ208の撮影位置を前記指定された撮影位置に設定する。画像取得部202は、前記指定された画像サイズの画像をWebカメラ208から取得する。画像分割部203は、前記取得した画像を前記指定された分割パターンに基づいて複数の画像ブロックに分割する。
【0015】
符号化部204は、前記各画像ブロックを前記指定された要求画質に対応した符号化モードで符号化圧縮する。パケット化部205は、符号化された各画像ブロックをパケット化して複数のデータパケットを生成する。転送部207は、前記指定された転送順序にしたがって、各画像ブロックのデータパケットを監視側端末N1へ順次転送する。
【0016】
次いで、図3、4のフローチャートを参照して本実施形態の動作を詳細に説明する。図3は、前記監視側端末N1の動作を示したフローチャートであり、図4は、前記被監視側端末N2の動作を示したフローチャートである。
【0017】
図3において、監視側端末N1では、ステップS10において画像取得条件がオペレータにより指定される。本実施形態では、Webカメラ208の撮影位置が前記撮影位置指定部101により指定され、画像サイズが前記画像サイズ指定部102により指定され、画像の分割パターンが前記分割パターン指定部103により指定され、要求画質が前記要求画質指定部104により指定され、画像ブロックの転送順序が前記転送順序指定部105により指定される。
【0018】
本実施形態では、分割パターンとして図2(c)に示した16分割が指定され、転送順序として、画像中央部の第6,7,10,11画像ブロックからの転送が指定されたものとして説明する。したがって、本実施形態では16分割された画像のうち、最初は第6画像ブロックが転送され、次いで第7画像ブロックが転送され、次いで第10画像ブロックが転送され、次いで第11画像ブロックが転送され、その後は各画像ブロックがブロック番号に基づいて昇順で転送される。ステップS11では、前記撮影位置および画像サイズを含む画像取得要求が、前記条件要求部110から被監視側端末N2へ送信される
【0019】
図4において、被監視側端末N2では、前記画像取得要求がステップS31で受信されるとステップS32へ進み、前記監視側端末N1により指定された撮影位置が、撮影位置設定部201によりWebカメラ208の撮影条件として設定される。ステップS33では、前記指定された画像サイズで前記Webカメラ208から画像取得部202により画像データが取得される。画像が取得されるとステップS34へ進み、画像取得応答が条件応答部206から監視側端末N1へ返信される。
【0020】
図3へ戻り、監視側端末N1では、ステップS12で前記画像取得応答が取得されるとステップS13へ進み、前記要求画質および分割パターンを含む画像加工要求が被監視側端末N2へ送信される。
【0021】
図4へ進み、被監視側端末N2では、ステップS35で前記画像加工要求が受信されるとステップS36へ進む。ステップS36では、前記Webカメラ208から取得した画像が前記指定された分割パターンで複数の画像ブロックに分割(本実施形態では、16分割)される。ステップS37では、前記指定された要求画質が維持されるように各画像ブロックが符号化圧縮される。ステップS38では、画像加工応答が監視側端末N1へ返信される。
【0022】
図3へ戻り、監視側端末N1では、ステップS14で前記画像加工応答が受信されるとステップS15へ進む。ステップS15では、転送を要求する分割ブロックの番号(ブロック番号)を含む画像ブロック要求が被監視側端末N2へ送信される。本実施形態では、ブロック転送順序として第6ブロック、第7ブロック…が指定されているので、最初はブロック番号「6」を含む画像ブロック要求が送信される。
【0023】
図4へ進み、被監視側端末N2では、ステップS39で前記画像ブロック要求が受信されるとステップS40へ進む。ステップS40では、要求された第6画像ブロックがパケット化されて複数のデータパケットが生成される。ステップS41では、データパケット数Mを含む画像ブロック応答が監視側装置N1へ返信される。
【0024】
図3へ戻り、監視側端末N1では、ステップS16で前記画像ブロック応答が受信されるとステップS17へ進む。ステップS17では、データパケット要求が被監視側端末N2へ送信される。
【0025】
図4へ進み、被監視側端末N2では、ステップS42で前記データパケット要求が受信されるとステップS43へ進み、前記ステップS39で受信した画像ブロック要求で指定された画像ブロックのデータパケットが順次転送される。ステップS44では、データパケット転送が完了したか否かが判定され、完了するまではステップS42へ戻って残りのデータパケットの転送が繰り返される。
【0026】
今回の画像ブロックに関して全てのデータパケットの転送が完了するとステップS45へ進み、転送完了通知を監視側端末N1へ送信してステップS46へ進む。ステップS46では、全ての画像ブロックの転送が完了したか否かが判定される。完了していなければステップS39へ戻り、次に監視側端末N1から受信する画像ブロック要求で指定される画像ブロックに関して、上記と同様の手順が繰り返されて画像ブロックが転送される。
【0027】
図3へ戻り、監視側端末N1では、ステップS18でデータパケットが受信されるとステップS19へ進み、当該データパケットが復号される。ステップS20では、復号されたデータパケットが画像メモリ108の対応アドレス上に展開される。ステップS21では、前記画像メモリ108のデータが表示部109へ出力されて表示される。ステップS22では、オペレータにより表示の中断が指示されたか否かが判定され、指示されていなければステップS17へ戻って上記の処理が繰り返される。
【0028】
図5は、最初に転送される第6画像ブロックに関して、受信されたデータパケットが画像メモリ上に順次に展開されて表示が進行する様子を模式的に示した図である。画像が同図(a)から同図(d)まで進行して第6画像ブロックの表示が完了し、図3のステップS24で前記転送完了通知が受信されるとステップS25へ進む。ステップS25では、全ての画像ブロックに関してデータパケットの取得が完了したか否かが判定され、ここでは第6画像ブロックが完了しているだけなのでステップS15へ戻り、続いて第7画像ブロックに関して上記の処理が繰り返される。
【0029】
図6は、上記の処理が進行して各画像ブロックが前記転送順序にしたがって順次に転送されて逐次表示される様子を模式的に表現した図であり、最初は第6画像ブロックが表示され、次いで第7画像ブロックが表示され、次いで第10画像ブロックが表示され、次いで第11画像ブロックが表示される。
【0030】
ここで、オペレータが画像を十分に認識できたために、これ以上の表示を不要と判断して中断指令を入力すると、これがステップS22で検知されてステップS23へ進む。ステップS23では、中断要求が被監視側端末N2へ送信される。被監視側端末N2では、この中断要求に応答してデータパケットの転送を終了する。
【0031】
なお、中断指示が検知されなければ、残りの画像ブロックがブロック番号の昇順で制限時間まで引き続き転送される。すなわち、図7に一例を示したように、第11画像ブロックに続いて第1ブロックが転送[同図(a)]され、次いで第2画像ブロックが転送[同図(b)]され、さらに第3,4,5,8,9,12,13…16画像ブロックが順次に転送される。全ての画像ブロックが転送される前に中断指示が検知されるか、あるいは制限時間を迎えると、当該タイミングで転送が強制終了される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る画像データ転送システムの構成を示した機能ブロック図である。
【図2】画像の分割パターンの一例を示した図である。
【図3】監視側端末の動作を示したフローチャートである。
【図4】被監視側端末の動作を示したフローチャートである。
【図5】画像ブロックの表示が順次に進行する様子を示した図である。
【図6】画像表示が画像ブロックの転送順に進行する様子(その1)を示した図である。
【図7】画像表示が画像ブロックの転送順に進行する様子(その2)を示した図である。
【符号の説明】
【0033】
101…撮影位置指定部,102…画像サイズ指定部,103…分割パターン指定部,104…要求画質指定部,105…転送順序指定部,106…復号部,107…画像展開部,108…画像メモリ,109…表示部,110…条件要求部,111…データパケット受信部,201…撮影位置設定部,202…画像取得部,203…画像分割部,204…符号化部,205…パケット化部,206…条件応答部,207…転送部,208…Webカメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被監視側端末で撮影された画像のデータを監視側端末へ転送して表示する画像データ転送装置において、
前記監視側端末が、
画像を複数の画像ブロックに分割する分割パターンを指定する手段と、
各画像ブロックの転送順序を指定する手段と、
前記分割パターンおよび転送順序を含む要求信号を被監視側端末へ送信する手段と、
被監視側端末から転送される画像ブロックを受信する手段と、
受信した各画像ブロックを前記分割パターンの対応位置に逐次表示する手段とを具備し、
前記被監視側端末が、
前記要求信号に応答して被写体を撮影する撮像手段と、
前記分割パターンに基づいて前記被写体の画像を複数の画像ブロックに分割する手段と、
前記各画像ブロックを前記転送順序に従って監視側端末へ順次に転送する手段とを具備したことを特徴とする画像データ転送装置。
【請求項2】
前記監視側端末が、
要求画質を指定する手段と、
前記要求画質を被監視側端末へ通知する手段とを具備し、
前記被監視側端末が、
前記各画像ブロックを前記要求画質に基づいて符号化圧縮する手段を具備したことを特徴とする請求項1に記載の画像データ転送装置。
【請求項3】
前記被監視側端末が、
各画像ブロックをパケット化して複数のデータパケットを生成する手段を具備し、
前記転送手段は、各画像ブロックをデータパケット単位で転送し、
前記監視側端末は、受信した各画像ブロックのデータパケットを対応位置に逐次表示することを特徴とする請求項1または2に記載の画像データ転送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−282675(P2009−282675A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133027(P2008−133027)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000110778)ニシム電子工業株式会社 (9)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】