説明

画像信号処理装置、ビューファインダ、表示装置、画像信号処理方法、記録媒体及びプログラム

【課題】着目する特定周波数成分を選択的に強調して空間周波数の高い模様を見やすくして、ビューファインダその他の小画面での焦点合わせを容易化する。
【解決手段】帯域通過フィルタを使用して、画像信号から選択的に抽出された特定帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長手段を用いて、前記パルス幅伸長手段の出力信号と前記画像信号とを合成出力することにより、絵柄のうち特定帯域の部分、特に高周波成分だけ線を太くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号の処理装置に関する。また、同技術を適用したビューファインダ及び表示装置に関する。また、同技術を実現する画像信号処理方法及びプログラムに関する。また、同プログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、画像には非常に高い画質が求められる。特に、大画面では、撮像時のわずかな焦点のずれが画質に影響する。このため、レンズの焦点合わせが非常に重要になる。
ところが、撮像する画像は、必ずしも焦点合わせの容易な絵柄ばかりではない。例えば、コントラストの低い絵柄は焦点合わせが難しい。焦点がずれてもコントラストの変化を確認しづらいからである。
このため、コントラストの低い絵柄に焦点を合わしたい場合には、コントラスト強調後の撮像信号を用いて焦点合わせが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−139952号公報
【特許文献2】特開平09−46576号公報
【特許文献3】特開2002−135801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焦点合わせをする場合には、なるべく模様の細かい部分、すなわち空間周波数の高い模様を見ながら行うのが望ましい。これは、図2(A)及び(B)に示すよう、焦点がずれた場合の振幅変化が大きいからである。
【0005】
しかし、ビューファインダその他の小画面において、空間周波数の高い模様を見ることは一般に難しい。このため、結局のところ、空間周波数のあまり高くないところを見て焦点合わせを行わざるを得なかった。なお、空間周波数の高い模様を見易くするため、撮像信号を増幅する手法も考えられる。しかし、この場合には、当該模様部分の映像信号が表示装置のダイナミックレンジで飽和するために、焦点ずれをコントラストの低下として確認できない問題があった。
【0006】
本発明は、以上の問題を考慮してなされたものであり、着目する周波数成分を選択的に強調して空間周波数の高い模様を見やすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための、本発明の画像信号処理装置は、画像信号から選択的に抽出された帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長手段を有することを特徴としている。具体的には、以下のような画像処理技術を提案するものである。
【0008】
本発明の一形態は、画像信号から選択的に抽出された帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長部である。このパルス幅伸長部を用いれば、絵柄のうち特定帯域の部分だけ線を太くできる。特に、高周波成分を太くするのに用いれば、小さな画面上で高域成分を見易くできる。なお、振幅は一定のまま出力されるので、従来装置のように表示装置のダイナミックレンジを越える心配もない。このパルス幅伸長部を用いれば、例えば、以下の画像処理装置を実現できる。
【0009】
図3に、本発明の一形態である画像処理装置を示す。この画像処理装置は主に3つの機能部を有する。
機能の一つは、画像信号S11から所定の帯域成分S12を選択的に抽出するフィルタ11である。フィルタ11には既知のものを使用する。なお、フィルタ11の通過帯域は固定でも良いし、可変でも良い。なお帯域の可変制御は制御信号やスイッチにより行えば良い。また、通過帯域の幅は広くても狭くても良い。勿論、特定の周波数成分に注目する場合には帯域幅を狭くすれば良い。なお、単に高域成分に着目するのであればハイパスフィルタを用いても良い。
【0010】
また機能の一つは、前述のパルス幅伸長部12である。すなわち帯域成分S12を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長部12である。他の機能の一つは、パルス幅伸長部12の出力信号S13と、フィルタの入力信号である画像信号S11とを合成して出力する合成器13である。合成器13には、例えば加算器を用いれば良い。この結果、合成出力S14として、特定帯域のみパルス幅が太くなった画像信号が現れる。
【0011】
なお好適には、パルス幅伸長部12と合成器13との間に増幅器を配置し、出力信号S13を増幅することが望ましい。増幅器を用いることにより、信号成分の振幅が小さく確認が難しい場合でも画面上での視認性を高めることができる。また、振幅を大きくすることにより、コントラストの低下も視認しやすくなる。
【0012】
なお、第1の形態又は第2の形態におけるパルス幅伸長部12は、次の2つの機能部で構成されるものが望ましい。図4にパルス幅伸長部12の構成例を示す。
機能部の一つは、画像信号S11から選択的に抽出された帯域成分S12により、搬送波を振幅変調して出力する振幅変調部12Aである。この振幅変調により搬送波の周波数を中心として2つの側波帯成分が現れる。なお、搬送波は発振器より与えられる。搬送波の周波数は帯域成分S12の帯域幅も考慮して決定する。なお、搬送波の周波数は固定でも良いし、可変でも良い。搬送波の周波数を制御することにより、側波帯成分の出現位置を調整できる。
【0013】
もう一つの機能部は、振幅変調部12Aの出力信号S12Aから下側波帯成分S13を抽出するフィルタ12Bである。このフィルタ12Bには既知のものを使用する。例えば、バンドパスフィルタを用いる。これにより、搬送波の周波数に対して下側の側波帯成分のみを抽出できる。なお、ローパスフィルタを使用することもできる。
【0014】
なお、下側波帯成分には帯域成分S12の信号波形がそのまま保存される。すなわち、下側波帯成分の信号波形は、帯域成分S12の信号波形と同じになる。一方、周波数帯域は、変調前よりも低域側にシフトされている。このことは、絵柄はそのままで、パルス幅だけが広くなったことを意味する。すなわち、画面上では、細線部分を太く強調して見せることができる。
【0015】
また、第1の形態又は第2の形態におけるパルス幅伸長部12には、次の4つの機能部で構成されるもの用いることもできる。図5にパルス幅伸長部12の構成例を示す。なお、図5には図4との対応部分に同一符号を付して示す。4つの機能部のうち2つは、第3の形態で提案するパルス幅伸長部と同じである。すなわち、振幅変調部12Aとフィルタ12Bは同じである。
【0016】
新たに追加する機能部の一つは、画像信号S11から選択的に抽出された帯域成分S12をオーバーサンプリングして出力するオーバーサンプリング部12Cである。このオーバーサンプリング部12Cは、帯域成分S12をサンプル補間して信号波形をより忠実に再現するために用いられる。因みに、サンプル補間後のサンプル出力S12Bは、振幅変調部12Aに与えられる。なお、オーバーサンプリング時には不要な高調波成分も多数発生する。このため、不要な高調波はローパスフィルタ等を用いて出力前に除去する。
【0017】
もう一つの機能部は、フィルタ12Bで抽出された下側波帯成分S12Cをダウンサンプリングして出力するダウンサンプリング部12Dである。このダウンサンプリング部12Dは、フィルタ12Bの出力信号S12Cを元のサンプルレートに戻すために用いられる。なお、下側波帯成分S12Cをそのままダウンサンプリングするとエイリアスが生じるので、予め下側波帯成分S12Cの高域成分を除去しておくのが望ましい。ここでのオーバーサンプリング部12Cやダウンサンプリング部12Dには既知のものを使用する。
この形態のように、オーバーサンプリングの手法を採用すると、帯域成分S12の選択範囲を広げることができる。
【0018】
また、第1の形態又は第2の形態におけるパルス幅伸長部12には、次の4つの機能部で構成されるものを用いることもできる。図6にパルス幅伸長部12の構成例を示す。
機能部の一つは、画像信号S11から選択的に抽出された帯域成分S12の絶対値S12Dを求めて出力する絶対値部12Eである。この絶対値部12Eは、次の最大値検出部12Fと共に帯域成分S12の最大振幅を検出するために用いられる。
なお、より高い精度で最大振幅を抽出するためには、帯域成分S12を前述のオーバーサンプリング部12Cでサンプル補間しておくことが望ましい。
【0019】
また、もう一つの機能部は、前述の通り、最大値検出部12Fである。この最大値検出部12Fは、所定のサンプル期間について絶対値S12Dの最大値を検出する。ここで、所定のサンプル期間は、帯域成分S12を抽出する際に用いたフィルタ12Bのインパルス応答の及ぶ範囲内であることが望ましい。サンプル期間を適切に選択することにより、最大振幅の検出精度を高めることができる。
【0020】
またもう一つの機能部は、帯域成分S12を振幅方向に伸長して出力する増幅部12Gである。この増幅部12Gによる増幅により、信号波形は相似形状の大きな振幅波形に変形される。
残る一つの機能部は、増幅部12Gの出力信号S12Fにおける振幅の上限を、対応する帯域成分S12から検出された最大値S12Eに制限する振幅制限部12Hである。
【0021】
この振幅制限部12Hでは、先に検出された最大値S12E以下の信号成分だけが出力される。つまり、前段の増幅部12Hの出力信号S12Fのうち最大値を超えた部分は全てカットされ、当該期間だけ最大値が出力される。このことは、帯域波形S12の元の振幅は保持したまま、パルス幅を拡張しているのと同じである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、画像全体の視認性を損なうことなく、着目する周波数成分のみを選択的に強調することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来回路のコントラスト調整機能とその問題点を示す図である。
【図2】空間周波数の高い模様を焦点合わせに用いる理由を示す図である。
【図3】パルス幅の選択的強調技術を適用した画像処理装置の形態例の一つを示す図である。
【図4】パルス幅伸長部の形態例を示す図である。
【図5】パルス幅伸長部の他の形態例を示す図である。
【図6】パルス幅伸長部の他の形態例を示す図である。
【図7】ビューファインダの構成例を示す図である。
【図8】コントラスト強調回路の第1の実施例を示す図である。
【図9】係数発生器の入出力特性を示す図である。
【図10】入出力特性の具体例を示す図である。
【図11】フィルタ係数とステップ応答との関係を示す図である。
【図12】コントラスト強調回路の第2の実施例を示す図である。
【図13】FIR型ローパスフィルタの構成例を示す図である。
【図14】差分値とフィルタ係数の組との関係を示す図である。
【図15】コントラスト強調回路の第3の実施例を示す図である。
【図16】コントラスト強調回路の第4の実施例を示す図である。
【図17】ピーキング回路の構成例を示す図である。
【図18】パルス幅伸長部の第1の実施例を示す図である。
【図19】図18に示すパルス幅伸長部の各部の信号波形を示す図である。
【図20】パルス幅伸長部の第2の実施例を示す図である。
【図21】オーバーサンプリングによるサンプリング点の補間を示す図である。
【図22】図20に示すパルス幅伸長部の各部の信号波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本明細書で特に図示又は記載されない特質は、当該技術分野において知られているものから選択されても良い。
以下の説明では、好適な実施の形態をハードウェアとして実現する場合について説明するが、かかるハードウェアと等価なコンピュータプログラムによっても実現できる。
【0025】
本発明がコンピュータプログラムとして実現される場合、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記憶媒体に記憶される。
この記憶媒体には、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスク又はハードディスク)又は磁気テープのような磁気記憶媒体、光ディスク、光テープ又はマシン読取り可能なバーコードのような光記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)又はリードオンリメモリ(ROM)のような半導体記憶装置の他、コンピュータプログラムを記憶するために使用される他の物理装置又は媒体が含まれる。
【0026】
また本発明がハードウェアで実現される場合、特定用途向け集積回路(ASIC)のような集積回路、又は当該技術分野において公知の他の手段として実現されてもよい。なお、本発明は、ディジタル回路に限らず、アナログ回路としても実現できる。
【0027】
(a)システム適用例
ここでは、本発明をビューファインダに適用する場合について説明する。なお、後述するように、本発明の適用例はビューファインダに限られるものではない。
図7に、ビューファインダのシステム構成例を示す。このビューファインダは、主に5つの回路ブロックで構成される。コントラスト強調回路20と、ピーキング回路30と、コントラスト・ブライトネス回路40と、表示デバイス駆動回路50と、表示デバイス60の5つである。
【0028】
この実施形態におけるコントラスト強調回路20は、低コントラスト成分を選択的に強調するための回路ブロックである。この回路ブロックは、前述した発明の一つの実施例に相当する。なお、コントラスト強調回路20には、固体撮像素子その他の撮像装置から撮像信号が入力される。このコントラスト強調回路20の詳細構成は後述する。
【0029】
ピーキング回路30は、焦点合わせに適した高周波成分だけをパルス幅方向に伸長する回路ブロックである。この回路ブロックも、前述した発明の一つの実施例に相当する。なお、ピーキング回路30には、前段のコントラスト強調回路20の出力信号が入力される。このピーキング回路30の詳細構成も後述する。
【0030】
コントラスト・ブライトネス回路40は、コントラストとブライトネスを個別に調整するための回路ブロックである。この回路ブロックには既知のものを用いれば良い。従って、ここでのコントラスト調整は、全帯域を対象とした調整である。
表示デバイス駆動回路50は、表示デバイス60の駆動ブロックである。因みに、表示デバイス60には、一般に液晶パネルを使用する。なお一般に、被写体の確認に用いられる接眼部のものをビューファインダと言うが、ここでの表示デバイスはより大型の液晶モニタと呼ばれるものでも良い。また、表示デバイス駆動回路50と表示デバイス60とは、これらで一体のユニットを構成し、コントラスト強調回路20やピーキング回路30を搭載する撮像ユニットに対して外付けされるものでも良い。
【0031】
このように、本発明の実施例回路を2つ搭載する図7のビューファインダの場合には、低コントラスト部分へ焦点合わせの容易なだけでなく、高周波部分にも焦点合わせの容易なビューファインダを実現することができる。
なお、図7の場合には、本発明の適用例を説明するため、本発明の実施例回路を2つとも搭載しているが、本発明の実施例回路を1つだけ搭載するシステム構成とすることもできる。
【0032】
例えば、コントラスト強調回路20とピーキング回路30のうち、ピーキング回路30には既知の回路を用いる構成としても良い。この場合には、低コントラスト部分に焦点合わせの容易なビューファインダを実現できる。
また、選択的な強調機能を有するコントラスト強調回路20は使用せず、本発明の一つの実施例回路であるピーキング回路30だけを搭載する構成としても良い。この場合には、高周波部分に焦点合わせの容易なビューファインダを実現できる。
【0033】
(b)コントラスト強調回路
以下、コントラスト強調回路20の実施例を説明する。コントラスト強調回路20には、無限インパルス応答型(以下「IIR(Infinite Impulse Response)型」という。)のローパスフィルタを用いるものと、有限インパルス応答型(以下「FIR(Finite Impulse Response)型」という。)のローパスフィルタを用いるものとに分類できる。以下、各場合の実施例を説明する。
【0034】
(b−1)第1の実施例
図8に、コントラスト強調回路20の第1の実施例を示す。このコントラスト強調回路20は、IIR型のローパスフィルタを用いるものである。このコントラスト強調回路20は、前述の図4に示す画像処理装置のタイプに属する。
【0035】
このコントラスト強調回路20は、6つの機能部から構成されている。画像信号Sinのコントラストを検出する機能部(21A、21B)と、検出されたコントラストに応じてフィルタ係数を発生する機能部(21E)と、入力された画像信号Sinの低域成分を濾波するローパスフィルタ部(21C、21G、21I、21K)と、ローパスフィルタ部の出力を画像信号Sinから減算する減算部(21D、21F)と、強調度を調整するのに用いられる増幅部(21H)と、選択的に強調された低コントラスト成分を元の画像信号Sinに合成する合成部(21J)の6つである。
【0036】
コントラストを検出する機能部(21A、21B)は、フリップフロップ21Aと減算器21Bとで構成する。フリップフロップ21Aには、画素クロックが入力されている。このフリップフロップ21Aにより画像信号Sinとして入力された画素データは1画素分遅延される。この実施例では、減算器21Bにおいて、水平方向に隣接する画素の信号レベル差を計算する。
【0037】
この機能部において、減算器21Bで求められる値の絶対値が小さいほど、コントラストの低い絵柄であると判断される。
なお、更にフリップフロップ等の遅延素子を追加すれば、上下左右の広い範囲についてコントラストの高低を見分けることができる。高い検出精度が要求される場合に好適である。
【0038】
ローパスフィルタ部(21C、21G、21I、21K)は、減算器21Cと、乗算器21Gと、加算器21Iと、フリップフロップ21Kとで構成する。このローパスフィルタ部は、1次のIIR型ローパスフィルタを構成する。このフィルタ特性は、乗算器21Gに与えられるフィルタ係数によって可変することができる。この実施例の場合、フィルタ係数がゼロのとき、全域通過特性になる。一方、フィルタ係数が1に近づくほど遮断周波数が低くなり、フィルタ係数が1のとき直流まで完全に遮断される。
【0039】
フィルタ係数を発生する機能部(21E)は、係数発生器21Eで構成する。この実施例では、係数発生器21Eとして、ルックアップテーブルを用いる。図9に、ルックアップテーブルで実現する入出力特性の一例を示す。図9の太い実線部分が入出力特性を表す曲線である。出力されるフィルタ係数は、差分値(ここでは入力)の絶対値が小さいほど1に近い値になる。またフィルタ係数は、差分値の絶対値が大きくなるほどゼロに近い値となり、差分値が一定以上大きい範囲では全てゼロに固定されている。
【0040】
かかる入出力特性を設定すると、ローパスフィルタ部の出力(フリップフロップ21Kの出力)に前述の特性を現すことができる。すなわち、コントラストが高い部分は入力信号が素通しされ、コントラストが低い部分は低周波まで濾波される特性を実現することができる。
なお、入出力特性曲線には、フィルタ係数の可変制御を規定する差分値の設定範囲内で唯一の極値(極大値)を、出力座標軸上に有するn次関数曲線(nは2以上の自然数)を採用することが望ましい。またこの入出力特性曲線は、差分値の絶対値が同じであれば同じフィルタ値を有する左右対称形であるものが望ましい。
【0041】
かかる曲線を採用すれば、差分値が小さい範囲に対しては、フィルタ係数の変化量を差分値の変化量に対して小さく抑えることができる。すなわち、差分値が小さいある一定の範囲では、ローパスフィルタの出力をほぼゼロにできる。このことは、減算器21Fから入力画素データがそのまま出力できることを意味する。すなわち低コントラスト成分が抽出されることに通じる。
【0042】
一方、かかる曲線を採用すれば、差分値がある程度以上大きい範囲に対しては、差分値の変化量に対してフィルタ係数の変化量を非常に大きくし、フィルタ係数を急速にゼロに近づけることができる。すなわち、差分値がある一定以上大きくなると、急速に遮断周波数を大きくさせることができる。このことは、ローパスフィルタに現れる入力画素データが急速に変化することを意味する。すなわち、差分値がある程度大きくなると、入力画素データが減算器21Fで打ち消されるようにできる。
【0043】
なお、入出力特性は図9に限るものではない。例えば、差分値がゼロのときを頂点とする三角形状に設定しても良い。すなわち、差分値の変化量に応じ、フィルタ係数が一定の割合で変化するように設定することもできる。このように、入出力特性曲線の形状は、適用するシステムや処理対象とする画像に応じて適切なものを設定することができる。
【0044】
また図9には、差分値がゼロの付近に細い破線を描いている。この破線で示す入出力特性は、雑音成分までもが細かい模様と同時に強調されてしまった結果、画面がかえって見づらくなる場合に有効である。この入出力特性は、雑音か模様か区別がつかないくらいコントラストの非常に低い領域に設定する。この特性を設定した領域では、コントラストが小さいほどフィルタ係数が急激にゼロになる。すなわち、この領域におけるローパスフィルタの特性は全域通過特性となる。このことは、雑音と区別がつかない成分は減算器21Fで打ち消されることを意味する。
【0045】
図10に、入出力特性曲線の具体例を示す。この例は、画像信号Sinが8ビットで量子化されている場合を表している。この例では、差分値が−1〜+1の範囲と絶対値が16以上の範囲でフィルタ係数をゼロに設定している。この設定により、振幅が−1〜+1の範囲の雑音を積極的に除去している。なお、フィルタ係数をゼロに設定する範囲を調整することにより、除去できる雑音の振幅を自由に制御することができる。
【0046】
参考までに、図11に、フィルタ係数とステップ応答との関係を示す。図面より、フィルタ係数がゼロのときの応答時間が非常に短いことが分かる。これは入力信号が素通しされるからである。また、フィルタ係数が0.5の場合にも応答時間が短いが、これは素通しされる入力信号が多いためである。そして、図10の最大値に当たるフィルタ係数が0.9375の場合には、応答時間が非常に長くなっている。これは信号がほぼ遮断されるためである。
【0047】
減算部(21D、21F)は、フリップフロップ21Dと減算器21Fで構成する。フリップフロップ21Dは遅延合わせ用である。減算器21Fは、フリップフロップ21Dの出力から、ローパスフィルタ部の出力を減算するのに用いられる。減算器21Fの出力には、コントラストの高いところと、前述のように雑音除去のためにフィルタ係数をゼロにしたコントラストの非常に低いところでゼロが現れる。一方、減算器21Fの出力には、前述の範囲を除いて、コントラストが低いほど、対応する信号成分が低周波まで現れる。
【0048】
増幅部(21H)は、乗算器21Hで構成する。乗算器21Hは、減算器21Fの出力に適当な利得Sccを乗算する。コントラスト制御用の利得Sccは固定でも良い。この実施例では、電子ボリュームによって発生した任意の利得Sccを与える。利得Sccを調整することにより、抽出された低コントラスト成分だけを任意のコントラストに増幅できる。
【0049】
合成部(21J)は、加算器21Jで構成する。加算器21Jは、選択的に増幅されたコントラスト成分を、原画像(フリップフロップ21Dの出力)に加算して出力する。言うまでもなく、選択的に強調されなかった画像部分は原画像のままである。すなわち、コントラスト比が元々高いところには何も加算されない。従って、従来回路のような白潰れや黒潰れ等の問題は生じない。
【0050】
以上のように、コントラスト強調回路20を図8の構成とすれば、コントラストに応じてフィルタ特性が変化するフィルタ(ローパスフィルタと減算器21F)によって、雑音成分を含まない低コントラスト成分を抽出することができる。そして、抽出された低コントラスト成分を所望の利得で増幅し、原画像信号に加算することができる。
【0051】
(b−2)第2の実施例
図12に、コントラスト強調回路20の第2の実施例を示す。ここでは、FIR型のローパスフィルタを用いるコントラスト強調回路20について説明する。なお、IIR型のローパスフィルタをFIR型のローパスフィルタに置き換えただけでるため、基本的な構成は第1の実施例と同じである。このため、図12には、図8と対応する部分に同一符号を付して示している。なお、図にはフリップフロップ21Dが描かれていないが、これはFIR型ローパスフィルタ22の遅延段を用いて時間合わせを行うためである。
【0052】
図13に、このFIR型ローパスフィルタ22の回路構成例を示す。このローパスフィルタ22は、中央タップに対して左右対称にフィルタ係数を配置するタイプのフィルタである。従って、48個の遅延器22Aに対して、23個の加算器22Bを配置する構成を採る。各加算器22Bの出力と中央タップの出力のそれぞれには、対応するフィルタ係数を乗算するための24個の乗算器22Cが配置される。そして、各乗算結果を1個の加算器22Dで加算し、ローパスフィルタ22の出力とする。
【0053】
なお、この実施例における係数発生器21Eは、24個のフィルタ係数を一組として検出されたコントラスト成分に最適なフィルタ係数を出力する。この実施例では、図14に示すように、フィルタ係数の組を15種類用意する。図14は、画像信号Sinが8ビットで量子化されている場合を表している。図中、“フィルタ0”で表されるフィルタ係数の組は、図10でフィルタ係数がゼロになる場合に相当する。この“フィルタ0”では、中央タップの出力のみが加算器22Dへ出力されるようフィルタ係数の組が設定される。この第2の実施例の場合も、雑音を除去する特性をもたせるため、差分の絶対値がゼロと1の場合には“フィルタ0”を割り当てている。
【0054】
また、“フィルタ1”,“フィルタ2”,“フィルタ3”…“フィルタ15”で表されるフィルタ係数の組は、通し番号が大きくなる順番に、図10のフィルタ係数が大きくなるのと同じ関係にある。図14は、差分の絶対値が2のとき、図10のフィルタ係数を最大値として差分値が大きくなるほどフィルタ係数を所定の特性曲線に沿って低減させるのと同じ関係を表している。因みに、この実施例の場合も、差分の絶対値が17以上では“フィルタ0”を割り当てて全域通過特性を与えている。このような設定としても、第1の実施例と同様に動作するコントラスト強調回路20を実現できる。
【0055】
(b−3)第3の実施例
図15に、コントラスト強調回路20の第3の実施例を示す。このコントラスト強調回路20は、IIR型のローパスフィルタを用いるものである。このコントラスト強調回路20は、前述の図5に示す画像処理装置のタイプに属する。
【0056】
この実施例の場合も、基本的な構成は第1の実施例と同じである。このため、図15には、図8と対応する部分に同一符号を付して示している。第3の実施例が第1の実施例と異なる点は2つである。1つは、n−1倍(nは1より大きい実数)の増幅部23を乗算器21Hの後段に設けた点である。もう一つは、1/n倍の減衰部24を加算器21Jの後段に設けた点である。
【0057】
この実施例の場合、コントラスト制御用の利得Sccの値にもよるものの、乗算器23と加算器21Jとによってn倍に増幅された原画像の低コントラスト部分は、減衰器24で1/n倍されるため、ほとんど入力時と同じコントラストのまま出力される。一方、原画像においてコントラストが高かった部分については、減衰器24によってコントラストが1/n倍に落とされる。このことは、画像全体のコントラストが平均化できることを意味する。従って、高コントラスト部分が含まれるために、見えづらかった原画像の低コントラスト部分も画面上で確認しやすくできる。
【0058】
なお言うまでもなく、変更するのは原画像の高コントラスト部分だけであり、絵柄(模様)については原画像の情報がそのまま保存される。本実施形態は、監視カメラの信号処理回路に用いる場合や撮像された画像を後処理する場合に有効である。例えば、特殊効果その他の画像編集に用いて好適である。
【0059】
(b−4)第4の実施例
図16に、コントラスト強調回路20の第4の実施例を示す。このコントラスト強調回路20も、IIR型のローパスフィルタを用いるものであり、前述の図4に示す画像処理装置のタイプに属するものである。なお、図16には、図8との対応部分に同一符号を付して表している。
【0060】
第4の実施例は、第1の実施例のコントラスト検出機能(21A、21B)を、ローパスフィルタ部の減算器21Cとフリップフロップ21Kによって実現している点を特徴とする。このため、第1の実施例では必要であったフリップフロップ21Aと減算器21Bとが不要になり、その分、回路構成が簡略化されている。以下、簡単に動作内容を説明する。
【0061】
この第4の実施例では、減算器21Cにおいて、現在の出力(フリップフロップ21Dの出力)と現在の入力との差分が算出され、その差分値が係数発生器21Eに与えられる。係数発生器21Eは、図10に示す入出力特性に従い、検出されたコントラストに応じたフィルタ係数を発生して乗算器21Gに与える。
【0062】
なお、差分値が大きいほどコントラストが高いものと判断し、差分値が小さいほどコントラストが小さいと判断するのは第1の実施例と同じである。そして、第1の実施例と同様、コントラストが低いほど低周波まで濾波されたローパスフィルタ出力が得られることになる。
【0063】
ところで、このような構成で得られるコントラスト検出出力(減算器21Cの出力)は、厳密には、実際の入力画像のコントラストと違う部分があるのを避け得ない。
しかしながら、かかる誤差が生じるとしても、第4の実施例の場合には、自動的に誤差がキャンセルされるため、実用上支障は生じない。この自動キャンセル機能は、IIR型のローパスフィルタの特性と係数発生器21Eの入出力特性との組み合わせで実現される。
【0064】
IIR型のローパスフィルタでは、誤差成分が入力信号に含まれると、誤差成分が無限に集積されてしまう。このため、大きな値となった誤差分によりローパスフィルタ出力(フリップフロップ21Kの出力)と入力との差が徐々に大きくなってしまう。
しかし、係数発生器21Eは、差分が大きくなるとフィルタ係数を小さくするように作用するため、集積されていた誤差がある程度大きくなると、自動的にリセットされることになる。すなわち、係数発生器21Eは、フィルタ係数をゼロに近づけるため、誤差の循環量が自動的に抑制されることになる。
このように、この実施形態の場合にも、前述の他の実施例と同様の精度を実現できる。
【0065】
(c)ピーキング回路
以下、ピーキング回路30の実施例を説明する。図17は、ピーキング回路30の実施例である。ピーキング回路30は、バンドパスフィルタ31と、パルス幅伸長部32と、増幅部33と、合成部34とで構成される。
【0066】
バンドパスフィルタ31は、画像信号から注目する帯域成分を選択的に抽出する機能部である。バンドパスフィルタ31には、通過帯域が固定のものを用いても良いし、通過帯域を任意に設定できるものを用いても良い。また、通過帯域の異なるバンドパスフィルタ31を複数用意しても良い。いずれにしても、既知のバンドパスフィルタを用い得る。
【0067】
なお、焦点合わせに用いること考えると、一般に通過帯域はなるべく高い周波数であることが望ましい。実際には、レンズの特性、撮像装置の信号処理帯域やS/N比等を考慮して、画面上で一番見やすい周波数を選択する。なお、一般には、帯域幅を狭く設定した方が見易くなる。
【0068】
パルス幅伸長部32は、バンドパスフィルタ31で濾波された帯域成分を振幅一定のままパルス幅方向に伸長する機能部である。すなわち、振幅が飽和しないで、パルス幅だけを選択的に太くする。これにより、画面上で高周波成分を確認し易くできる。このパルス幅伸長部32が、前述した発明の一つの実施例に相当する。詳細な構成は後述する。
【0069】
増幅部33は、パルス幅伸長部32の出力を任意の利得で増幅するための機能部である。利得は、ピークゲイン制御用の利得Spgで設定される。例えば、乗算器で構成する。
合成部34は、増幅後の画像信号と原画像信号とを合成するための機能部である。合成部34は、例えば、加算器で構成する。かくして、合成部34からは、原画像のおおよその絵柄はそのままに、特定の帯域成分だけパルス幅が伸長された(線が太くなった)画像信号が出力される。
【0070】
以下、このピーキング回路30の主要な構成であるパルス幅伸長部32の実施例を説明する。
【0071】
(c−1)第1の実施例
図18に、パルス幅伸長部32の第1の実施例を示す。このパルス幅伸長部32は、振幅変調の特性を利用する。具体的には、ラジオのスーパーヘテロダイン方式と同様、適当な搬送波を信号波で振幅変調して側帯波を発生し、これを濾波することによって高周波を低周波に変換する。このように、帯域成分を低域側にシフトすることで、パルス幅を広く見せることができる。
【0072】
パルス幅伸長部32は、主に4つの機能部から構成される。オーバーサンプリング部(32A、32B)と、振幅変調部(32C、32D)と、下側帯波抽出部(32E)と、ダウンサンプリング部(32F)の4つである。
【0073】
オーバーサンプリング部(32A、32B)は、画像信号Sinをオーバーサンプリングして出力する機能部である。このオーバーサンプリング部は、ゼロ挿入部32Aと、ローパスフィルタ32Bで構成する。
【0074】
ゼロ挿入部32Aは、前段のバンドパスフィルタ31で濾波された画像信号Sinにn−1個のゼロを挿入し、n倍オーバーサンプリング結果を得る。なお、nは1以上の自然数である。バンドパスフィルタ31の通過帯域の中心周波数をfとすると、画像信号Sinは、図19(A)のスペクトラムで表される。
【0075】
ゼロ挿入部32Aでオーバーサンプリングすると、複数の折り返し成分が発生する。図23(B)にそのスペクトラムを示す。ここでは、余分な折り返しが生じないように、ローパスフィルタ32Bにて、もともとのサンプリング周波数fsの1/2までに帯域制限する。図19(C)に、ローパスフィルタ32Bの出力スペクトラムを示す。
【0076】
振幅変調部(32C、32D)は、発振器32Cで発生された搬送波をローパスフィルタ32Bの出力で振幅変調する。振幅変調は、乗算器32Dで行う。ここで、搬送波の周波数をFとして表すと、搬送波の周波数Fの両側に中心周波数F−fとF+fの2つの側波帯が発生する。図19(D)に、そのスペクトラムを示す。
【0077】
このとき、周波数F又はF+fがnfs/2を超えると、nfsからの折り返しが生じ思わぬ妨害が起こる。このため、問題がおきないように倍率nを選択する。因みに、n=1で問題ない場合は、オーバーサンプリング部(32A、32B)とダウンサンプリグ部(32F)を省略可能である。
【0078】
下側帯波抽出部(32E)は、周波数F−fを中心とした側波帯だけを取り出すバンドパスフィルタ32Eで構成する。図19(E)に、バンドパスフィルタ32Eの出力スペクトラムを示す。なお、ダウンサンプリング部(32F)は、バンドパスフィルタ32Eの出力をダウンサンプリングして、もとの標本化周波数に戻す。この結果、画像信号Sinの中心周波数fがより低域のF−fに変換される。
【0079】
以上の通り、搬送波の周波数Fを適当に選ぶことにより、焦点合わせに適した周波数f付近を抽出し、表示装置で見やすい周波数F−f付近に変換することができる。
【0080】
(c−2)第2の実施例
図20に、パルス幅伸長部32の第2の実施例を示す。このパルス幅伸長部32は、振幅方向に増幅した波形を、増幅前の振幅で制限することによりパルス幅を広げる手法を採用する。
このパルス幅伸長部32は、4つの機能部から構成される。オーバーサンプリング部(32G、32H)と、最大振幅検出部(32I、32J、32K)と、増幅部(32L)と、振幅制限部(32M)の4つである。
【0081】
オーバーサンプリング部(32G、32H)は、画像信号Sinをオーバーサンプリングして出力する機能部である。このオーバーサンプリング部の構成は、第1の実施例で用いたオーバーサンプリング部と同じである。すなわち、ゼロ挿入部32Gと、ローパスフィルタ32Hとで構成されている。なお、各部の詳細な説明は重複するため省略する。
【0082】
なお、本実施例においてオーバーサンプリングする理由は、後段の最大振幅検出部(32I、32J、32K)において、正しいピーク値を検出させるためである。その理由を、図21を用いて説明する。
一般に、ピーキングにはパルス波形として幅の狭いものが使用される。このため、サンプリングデータは、図21(A)に黒丸で示したように離散的となり、その最大値は真のピーク値よりも小さな値になる。そこで、オーバーサンプリングによりサンプリング点を補間する手法を採用する。
【0083】
図21(B)に示すように、2倍にオーバーサンプリングするだけでも、真のピーク値にかなり近いデータを求めることが可能となる。従って、このオーバーサンプリング後のデータを用いることにより、精度良くピーク値を求めることができる。なお、この実施例では倍率を2倍とするが、より高い倍率を採用することもできる。倍率を高めるほど精度を向上することができる。
【0084】
オーバーサンプリングされた画像信号Sinは、最大振幅検出部(32I、32J、32K)に入力され、そのピーク値が検出される。最大振幅検出部(32I、32J、32K)は、絶対値回路32Iと、遅延器を構成する複数のシフトレジスタ32Jと、最大値回路32Kで構成される。
絶対値回路32Iは、画像信号の絶対値を抽出する回路である。
【0085】
最大値回路32Kは、シフトレジスタ32Jの段数分のサンプル値の中から最大値を検出する回路である。最大値回路32Kは、検出された最大値をバンドパスフィルタ31で抽出された画像信号(パルス波)のピーク値として出力する。
ここで、ピーク値の探索範囲を決定するシフトレジスタ32Jの段数は、前段のバンドパスフィルタ31のインパルス応答の及ぶ範囲内(すなわち、バンドパスフィルタ31のタップ数分)とする。
以上の2つの機能部により、原画像信号の振幅が検出され、保存される。
【0086】
増幅部(32L)は、画像信号Sinを振幅方向(正確には、パルス幅方向にも)増幅する。この増幅部は、乗算器32Lで構成する。乗算器32Lは、パルス幅制御用の利得Spcに応じて画像信号Sinを増幅する。図22(A)は画像信号Sinの波形を、図22(B)は増幅後の信号波形を示す。なお、利得を大きくするほど、波形整形後のパルス幅を太くできる。増幅後の画像信号は、振幅制限部(32M)に出力される。
【0087】
振幅制限部(32M)は、リミッタ回路32Mで構成する。リミッタ回路32Mには、前述の最大値回路32Kより入力パルスのピーク値が入力されている。リミッタ回路32Mは、入力信号の振幅がこのピーク値以下となるように制限する。
これにより、リミッタ32Mからは、図22(C)に示すように信号波形の上部を切り取った台形形状のパルス波が出力される。
なお、リミッタ回路32Mの前段には、乗算器32Lの出力と最大値回路32Kの出力の遅延を合わせるために不図示の遅延回路が配置されている。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば放送用のカメラユニット、映画撮影用のカメラユニット、民生用のカメラユニット、工業用のカメラユニット、監視用のカメラユニットその他の信号処理回路に適用し得る。なお、これらのカメラユニットは、撮像信号を記録媒体への記録ユニットと一体化されていても良い。記録媒体としては、例えば磁気記録媒体(テープ状のもの、ディスク状のものを含む。)、光磁気記録媒体、光ディスク、半導体メモリその他を用い得る。
【0089】
また本発明は、例えば電子カメラの信号処理回路にも適用し得る。なお、電子カメラ付の各種電子機器にも適用し得る。例えば、電子カメラ付き携帯電話や情報端末にも適用し得る。また、これらの付属ユニットとしても適用し得る。
【0090】
また本発明は、撮像ユニットから出力された撮像信号に特殊効果その他の画像処理を施す編集装置にも適用し得る。また、かかる編集装置に搭載する回路ボードや回路ユニットにも適用し得る。
【0091】
また本発明は、コンピュータ上で動作する画像編集ソフトにも適用できる。すなわち、カメラレンズの焦点合わせ用だけでなく、模様や絵柄といった原画像の特徴を残したまま低コントラスト部分を強調するといった用途や、細線を太い線に変換するといった用途にも使用できる。
【符号の説明】
【0092】
1、11…フィルタ、2、13…合成器、3…増幅器、4…減衰器、12、32…パルス幅伸長部、12A…振幅変調部、12C…オーバーサンプリング部、12D…ダウンサンプリング部、12E…絶対値部、12F…最大値検出部、12G…増幅部、12H…振幅制限部、20…コントラスト強調回路、21E…係数発生器、30…ピーキング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号から選択的に抽出された帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長手段
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
画像信号から所定の帯域成分を選択的に抽出するフィルタと、
前記帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するパルス幅伸長手段と、
前記パルス幅伸長手段の出力信号と、前記画像信号とを合成して出力する合成手段と
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像信号処理装置において、
前記パルス幅伸長手段は、
画像信号から選択的に抽出された帯域成分により、搬送波を振幅変調して出力する振幅変調手段と、
前記振幅変調手段の出力信号から下側波帯成分を抽出するフィルタと
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像信号処理装置において、
前記パルス幅伸長手段は、
画像信号から選択的に抽出された帯域成分をオーバーサンプリングして出力するオーバーサンプリング手段と、
前記オーバーサンプリング手段の出力信号により、搬送波を振幅変調して出力する振幅変調手段と、
前記振幅変調手段の出力信号から下側波帯成分を抽出して出力するフィルタと、
抽出された下側波帯成分をダウンサンプリングして出力するダウンサンプリング手段と
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の画像信号処理装置において、
前記パルス幅伸長手段は、
画像信号から選択的に抽出された帯域成分の絶対値を求めて出力する絶対値手段と、
所定のサンプル期間について前記絶対値の最大値を検出する最大値検出手段と、
前記帯域成分を増幅して出力する増幅手段と、
前記増幅手段の出力信号における振幅の上限を、対応する帯域成分から検出された最大値に制限する振幅制限手段と
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の画像信号処理装置と、
前記画像信号処理装置の出力信号を表示する表示手段と
を有することを特徴とするビューファインダ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の画像信号処理装置と、
前記画像信号処理装置の出力信号に基づいて表示手段を駆動し、表示手段に画像を表示させる表示制御手段と
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項8】
画像信号から所定の帯域成分を選択的に抽出するステップと、
前記帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長するステップと、
パルス幅方向に伸張された帯域成分と、前記画像信号とを合成して出力するステップと
を有することを特徴とする画像信号処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
画像信号から所定の帯域成分を選択的に抽出する機能と、
前記帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長する機能と、
パルス幅方向に伸張された帯域成分と、前記画像信号とを合成して出力する機能と
を実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項10】
コンピュータに、
画像信号から所定の帯域成分を選択的に抽出する機能と、
前記帯域成分を、その振幅は一定のままパルス幅方向に伸長する機能と、
パルス幅方向に伸張された帯域成分と、前記画像信号とを合成して出力する機能と
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−189031(P2009−189031A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79964(P2009−79964)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【分割の表示】特願2003−301204(P2003−301204)の分割
【原出願日】平成15年8月26日(2003.8.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】