説明

画像処理システム及びプログラム

【課題】一つの画像を複数の閲覧者が閲覧しながら議論を行う場合に、各閲覧者に、当該画像に関する議論を円滑に行うための標識を提示する画像処理システムを提供する。
【解決手段】複数の閲覧者による閲覧の対象として取得された対象画像に含まれる画像要素のそれぞれについて、当該画像要素の呼称に対応する標識画像を対象画像の当該画像要素に対応する位置に付与し、対象画像に標識画像が付与された付与後画像を出力する画像処理システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信手段の発達に伴い、例えば遠隔会議システムなど、離れた通信先に対して画像を配信する技術が登場している。このような技術によれば、一方のシステムから送信された画像が、当該システム及び送信先のシステムの両方で表示されることによって、離れた位置にいる複数の閲覧者によって同じ画像が閲覧される。このような技術の一例として、特許文献1には、遠隔地との間で共有される画像の決まった位置にラベルをオーバレイする技術が開示されている。また、画像をスクリーンに投影する画像投影装置など、同じ場所にいる複数の閲覧者に同時期に画像を閲覧させるための画像表示装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−130079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、一つの画像を複数の閲覧者が閲覧しながら議論を行う場合に、各閲覧者に、当該画像に関する議論を円滑に行うための標識を提示する画像処理システム及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、画像処理システムであって、複数の閲覧者による閲覧の対象として取得された対象画像に含まれる画像要素のそれぞれについて、当該画像要素の呼称に対応する標識画像を、前記対象画像の当該画像要素に対応する位置に付与する標識画像付与手段と、前記対象画像に前記標識画像が付与された付与後画像を出力する画像出力手段と、を含むことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の画像処理システムであって、前記標識画像付与手段は、前記対象画像内に画像要素の追加変更がなされる場合に、当該追加の画像要素に対応づけて、他の画像要素に対応づけられている標識画像とは異なる標識画像を付与することを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の画像処理システムであって、前記標識画像付与手段は、前記対象画像から画像要素の削除変更がなされた場合に、当該画像要素に対応づけられている標識画像を削除するものであり、前記追加の画像要素に対応づけて付与する標識画像は前記削除された標識画像も含めて他の画像要素に対応づけられている標識画像とは異なる標識画像であることを特徴とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項記載の画像処理システムであって、前記標識画像付与手段は、前記対象画像が文書を表す画像である場合に、当該文書に対して構造解析を行った結果に基づいて、前記標識画像を対応づける画像要素を特定することを特徴とする。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項記載の画像処理システムであって、画像を複数の閲覧者が閲覧可能に表示する表示手段をさらに備え、前記表示手段は前記複数の閲覧者の間での議論の開始を検出したタイミングで、前記付与後画像を表示することを特徴とする。
【0010】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の画像処理システムであって、前記複数の閲覧者の間での議論の終了を検出したタイミングで、前記付与後画像の表示を終了することを特徴とする。
【0011】
請求項7記載の発明は、複数の閲覧者による閲覧の対象として取得された対象画像に含まれる画像要素のそれぞれについて、当該画像要素の呼称に対応する標識画像を、前記対象画像の当該画像要素に対応する位置に付与する標識画像付与手段、及び前記対象画像に前記標識画像が付与された付与後画像を出力する画像出力手段、としてコンピュータを機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び7記載の発明によれば、付与後画像を閲覧して、画像要素に対応する標識画像を用いて該画像要素を表現することができるようになる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、付与後画像を閲覧して、追加された画像要素についても画像要素に対応しかつ他の画像要素に対応づけられている標識画像とは異なる標識画像を用いて対象とする画像要素を表現することができるようになる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、付与後画像を閲覧して、追加された画像要素について、削除された画像要素も含めて他の画像要素に対応づけられている標識画像とは異なる標識画像を用いて対象とする画像要素を表現することができるようになる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、付与後画像を閲覧して、文書の構造に基づいて付与された標識画像を用いて対象とする画像要素を表現することができるようになる。
【0016】
請求項5記載の発明によれば、閲覧者は議論の開始の検出されたあとは付与後画像を複数の閲覧者で閲覧することができる。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、閲覧者は議論の終了が検出されるまでは付与後画像を複数の閲覧者で閲覧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像処理システムの概要図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が実現する機能を示す機能ブロック図である。
【図4】標識画像が付与された対象画像の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が実行する処理の流れの一例を示すフロー図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る画像処理装置が実行する処理の流れの別の例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理システム1の概要を示す図である。本実施形態に係る画像処理システム1は、画像処理装置11と、画像表示装置12と、操作パネル13と、マイクロフォン14と、スピーカ15と、を含んで構成されている。また、画像処理システム1は、LANやインターネット等の通信手段を介して、別の場所に設置された画像処理システム(以下、通信先システム2という)と通信接続される。なお、通信先システム2は画像処理システム1と同様の構成を備える画像処理システムであってもよいし、画像処理システム1とは異なるシステム構成であってもよい。
【0021】
以下では、画像処理システム1が設置された場所を拠点A、通信先システム2が設置された場所を拠点Bと表記する。また、拠点Aで画像処理システム1を利用する利用者を利用者Ua、拠点Bで通信先システム2を利用する利用者を利用者Ubと表記する。本実施形態では、画像処理システム1と通信先システム2とが互いに通信接続されて画像及び音声情報を送受信することにより、利用者Uaと利用者Ubとの間での遠隔会議が実現される。なお、拠点A及び拠点Bのいずれにおいても複数の利用者が同時期に会議に参加することとしてもよい。
【0022】
画像処理装置11は、例えばパーソナルコンピュータ等であって、図2に示すように、制御部21と、記憶部22と、通信部23と、インタフェース部24と、を含んで構成される。
【0023】
制御部21は、CPU等を含んで構成され、記憶部22に格納されるプログラムに従って各種の情報処理を実行する。本実施形態において制御部21が実行する処理の具体例については、後述する。記憶部22は、RAMやROM、ハードディスク等を含んで構成され、制御部21によって実行されるプログラムや、各種のデータを保持する。また、記憶部22は、制御部21のワークメモリとしても動作する。
【0024】
通信部23は、例えばLANカード等の通信インタフェースであって、LANやインターネット等の通信手段を介した画像処理装置11と他の通信機器との間のデータ送受信を中継する。本実施形態では、通信部23を介して、通信先システム2との間で画像や音声のデータが送受信される。
【0025】
インタフェース部24は、制御部21と、画像表示装置12や操作パネル13、マイクロフォン14、スピーカ15と、の間の情報の授受を中継する。具体的に、インタフェース部24は、制御部21からの指示に従って、画像表示装置12及び操作パネル13のそれぞれに表示させる画像を表す映像信号を出力する。これにより、画像処理装置11は、画像表示装置12及び操作パネル13それぞれの表示画面に各種の画像を表示する。また、インタフェース部24は、画像表示装置12及び操作パネル13のそれぞれから入力される利用者の操作に関する情報を制御部21に対して出力する。また、インタフェース部24は、マイクロフォン14から入力される音声信号を制御部21に対して出力するとともに、制御部21の指示に従ってスピーカ15に対して音声信号を出力する。
【0026】
画像表示装置12は、画像処理装置11から入力される映像信号に応じた画像を表示画面上に表示する。画像表示装置12による表示対象となるのは、例えば、プレゼンテーション用の文書を作成するアプリケーションプログラムを用いて作成された文書画像である。本実施形態においては、この画像表示装置12に表示される画像が、VNC(Virtual Network Computing)などの技術によって画像処理装置11から通信先システム2に送信され、通信先システム2内の画像表示装置にも表示される。これによって、利用者Uaと利用者Ubとは、同じ画像を閲覧しながら会議を行うことになる。なお、以下では、通信先システム2との間で共有され、利用者Ua及び利用者Ubという複数の閲覧者による閲覧の対象となる画像を、対象画像Iという。
【0027】
また、画像表示装置12は、表示画面上においてペン等が触れた位置を検知して、その位置を示す情報を画像処理装置11に対して出力する機能を備えてもよい。この場合、画像処理装置11は、この位置情報に応じて、表示画面に表示中の対象画像Iを、元の文書画像にペンなどの動いた軌跡を示す付加画像を重ね合わせた画像に更新する。これによって、利用者Uaがあたかもホワイトボードにメモを書き込むように表示画面上でペンを動かす操作を行うことで、このメモ内容が追加された対象画像Iが表示画面に表示される。なお、表示画面上におけるペン等の接触位置の検知は、表示画面に重ねて配置された感圧式センサや、光学的に物体の位置を検知する受光装置など、各種の方式で実現されてよい。
【0028】
操作パネル13は、利用者Uaが画像処理装置11に対して各種の指示を入力するために用いられる操作デバイスである。本実施形態では、操作パネル13はタッチパネルであって、画像処理装置11から出力されるメニュー画面等の画像を表示画面に表示するとともに、利用者Uaが当該表示画面を指で触れることによって入力する操作指示に関する情報を、画像処理装置11に対して出力する。なお、本実施形態に係る画像処理システム1は、操作パネル13に代えて、例えばディスプレイ装置とマウス、キーボードなど、他のユーザインタフェースデバイスを備えてもよい。
【0029】
マイクロフォン14は、周辺の音声を集音して、その音声信号を画像処理装置11に対して出力する。このマイクロフォン14によって、利用者Uaの発する声が集音される。具体的に、本実施形態では、遠隔会議中、対象画像Iが画像表示装置12に表示された状態において、利用者Uaがこの対象画像Iに関して発言を行う。マイクロフォン14はこの利用者Uaの声を集音して得られる音声情報を画像処理装置11に対して出力する。この音声情報は、画像処理装置11によって通信先システム2に送信され、拠点Bにおいて利用者Uaの発言として通信先システム2に備えられたスピーカから出力される。
【0030】
スピーカ15は、画像処理装置11から出力される音声信号に従って音声を再生する。本実施形態においては、拠点Bにおいて利用者Ubによって発せられた声が、通信先システム2内のマイクロフォンによって集音され、通信先システム2から画像処理装置11に送信される。スピーカ15は、この利用者Ubの音声を再生する。
【0031】
以下、本実施形態に係る画像処理装置11が実現する機能について、説明する。画像処理装置11は、機能的に、図3に示すように、対象画像取得部31と、標識画像付与部32と、表示用画像出力部33と、を含んで構成される。これらの機能は、画像処理装置11の制御部21が記憶部22に格納されるプログラムを実行することにより、実現される。このプログラムは、インターネット等の通信手段を介して提供されてもよいし、光ディスク等の各種のコンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体に格納されて提供されてもよい。
【0032】
対象画像取得部31は、複数の閲覧者による閲覧の対象となる対象画像Iを取得する。具体例として、対象画像取得部31は、利用者Uaの指示に従って、メモリカード等の情報記憶媒体から対象画像Iを含んだプレゼンテーションデータ等を読み出すことによって、対象画像Iを取得する。あるいは対象画像取得部31は、通信手段を介して接続された他のサーバコンピュータ等からプレゼンテーションデータ等を受信することによって、対象画像Iを取得することとしてもよい。
【0033】
標識画像付与部32は、対象画像取得部31が取得した対象画像Iに含まれる画像要素Cのそれぞれについて、当該画像要素Cの呼称を表す標識画像Mを、対象画像Iの当該画像要素Cに対応する位置に付与する。具体的に、まず標識画像付与部32は、対象画像Iの画像解析を行い、当該対象画像I内に含まれる画像要素Cそれぞれの位置及び大きさを特定する。
【0034】
ここで、画像要素Cは、対象画像I内の一定の範囲を占める、意味的にまとまった画像の構成単位を指している。具体例として、画像要素Cは、対象画像Iに含まれる図や、表、絵柄、写真などであってもよいし、連続して配列された文字列(すなわち、文や段落など)であってもよい。
【0035】
このような対象画像Iに含まれる画像要素Cの特定は、各種の方法により実現される。例えば対象画像Iが文書の内容を表す画像である場合、標識画像付与部32は、当該文書に対して構造解析を行った結果に基づいて、この文書の構成要素(章や節、図表、参考文献等)を、標識画像Mを対応づける画像要素Cとして特定してもよい。文書の構造解析の具体例として、例えば特開2001−312489号公報には、文書データに含まれる章番号や、図番号などを用いて構造解析を行う手法が開示されている。また、特開平5−94535号公報には、画像中に含まれる空白領域(白ラン)を用いて文書の構造解析を行う手法が開示されている。また、対象画像Iを表すデータが構造化文書データ(例えばHTMLファイル等)の場合、標識画像付与部32は、構造化文書に含まれるタグによって特定される段落や図表、絵柄などを画像要素Cとして抽出してもよい。
【0036】
また、標識画像付与部32は、公知のT/I(Text/Image)分離処理や、特開平5−135171号公報に開示されるような各画像要素の境界検出技術、特開平5−20429号公報に開示されるような画像要素のパターンマッチング技術などを用いて、対象画像Iに含まれる画像要素Cを画定してもよい。
【0037】
上述したような方法によって対象画像Iに含まれる画像要素Cを特定した後、標識画像付与部32は、特定された画像要素Cのそれぞれについて、当該画像要素Cの呼称を表す標識画像Mを、対象画像I内の当該画像要素Cに対応する位置に付与する。具体例として、この標識画像Mは、「1」、「2」、「3」、・・・などの番号や、「A」、「B」、「C」、・・・などの文字、あるいは各種の記号などを表す画像であってよい。標識画像Mは、対象画像Iに含まれる各画像要素Cに対応づけて、かつ互いに異なるように付与される。利用者Ua及びUbが、この標識画像Mによって表される呼称で各画像要素Cを呼びながら、当該画像要素Cに関する発言を行うこととすれば、画像のどの部分を問題にしているかがお互い誤解なく意思疎通されるようになり、対象画像Iに関する議論が円滑に行われる。
【0038】
既に述べたように、標識画像Mのそれぞれは、対象画像I内において、当該標識画像Mが指し示す画像要素Cの位置に対応する位置に配置される。ここで対応する位置とは、画像要素C近傍で、画像要素Cに対して決まった方向の位置であってもよいし、画像要素C近傍の比較的他の画像要素Cとは離れた位置に定められてもよい。このような標識画像Mと画像要素Cとの対応関係を明確にするため、例えば引き出し線など、標識画像Mと当該標識画像Mによって指し示される画像要素Cとを結びつける画像が配置されてもよい。
【0039】
図4は、標識画像Mが付与された対象画像Iの一例を示す図である。この図の例では、対象画像Iの上半分に配置された文字列(画像要素C1)に対して、「1」という数字及び当該数字を囲む囲み線からなる標識画像M1が対応づけられている。また、左下に配置された表(画像要素C2)に対しては「2」という数字を含んだ標識画像M2が、右下に配置された図(画像要素C3)に対しては「3」という数字を含んだ標識画像M3が、それぞれ対応づけられている。
【0040】
なお、標識画像付与部32は、対象画像I内に既に存在する符号とは異なる種類の符号を、標識画像Mとして対象画像Iに付与することとしてもよい。例えば対象画像Iに含まれる画像要素Cを特定する際に、パターンマッチング等の画像処理によって、図表や章を指し示す番号(数字)が検出された場合、標識画像付与部32は、このような番号とは異なる種類(アルファベットや記号など)の符号を表す画像を標識画像Mとして用いることとする。こうすれば、利用者Ua及びUbが標識画像Mによって表される呼称を用いて議論を行う際に、このような呼称によって指し示される画像要素Cが他の画像要素Cと混同される状態が避けられる。また、標識画像付与部32は、予め定められた大きさ以上の画像要素Cなど、予め定められた条件を満たす画像要素Cにだけ、標識画像Mを対応づけて付与することとしてもよい。
【0041】
表示用画像出力部33は、対象画像Iに対して標識画像Mが付与されてなる画像(付与後画像)を、表示用画像Idとして出力する。具体的に、本実施形態では、表示用画像出力部33は、標識画像付与部32によって対象画像Iに標識画像Mが付与された付与後画像を、表示用画像Idとしてインタフェース部24を介して画像表示装置12に表示させるとともに、通信部23を介して通信先システム2に対して送信し、通信先システム2内の画像表示装置にも表示させる。これにより、利用者Ua及びUbの双方に標識画像Mを含んだ表示用画像Idが提示される。
【0042】
ここで、表示用画像出力部33は、遠隔会議が行われている間、常に標識画像Mが付与された対象画像Iを表示用画像Idとして出力する必要はない。例えば、複数の閲覧者のうちの一人が当該対象画像Iを用いて発表を行う発表者であり、その他の閲覧者は当該発表を聴く聴衆である場合、発表者が主体的に発表を行っている間は、各画像要素Cを識別して呼称する必要は比較的少ない。一方、聴衆が発表者に対して質問を行うなどして、閲覧者間で議論が始まった場合には、各画像要素Cを特定しながら発言を行いたい場面が生じる。そこで、表示用画像出力部33は、複数の閲覧者の間で議論が開始されたことを検出し、当該検出したタイミングで、標識画像Mが付与された対象画像Iを表示用画像Idとして出力することとし、議論の開始を検出するまでは、標識画像Mが付与されない対象画像Iそのものを表示用画像Idとして出力することとしてもよい。さらに表示用画像出力部33は、複数の閲覧者の間での議論の終了も検出することとし、当該検出したタイミングで、標識画像Mが付与された表示用画像Idの出力を終了し、標識画像Mを消去した対象画像Iを再び表示用画像Idとして出力してもよい。
【0043】
具体的に、例えば表示用画像出力部33は、発表者の音声の特徴(声紋等)を予め特定しておき、マイクロフォン14から入力される音声信号や通信先システム2から送信される音声信号を解析した結果、当該発表者以外の閲覧者の音声を検出したときに、議論が開始したと判断し、標識画像Mが付与された表示用画像Idを出力する。そして、新たな画像(例えば複数の文書画像やスライド画像のうちの次の画像)を対象画像Iとして表示すべき指示を受け付けた場合には、議論が終了したと判定し、新たな対象画像Iには標識画像Mを付与せずに出力する。また、画像表示装置12の表示画面より大きな対象画像Iの一部が表示画面に表示されている場合、表示用画像出力部33は、対象画像Iをスクロールさせてこれまで表示されていなかった部分を表示させる指示を受け付けた場合に、議論が終了したと判定してもよい。さらに表示用画像出力部33は、予め定められた時間以上にわたって発表者以外の閲覧者の音声が検出されない状態が続いた場合に、議論が終了したと判定してもよい。
【0044】
以下、このように画像処理装置11によって議論開始の検出が行われる場合に、画像処理装置11の制御部21が実行する処理の流れの一例について、図5のフロー図を用いて説明する。
【0045】
まず制御部21は、利用者Uaの操作パネル13に対する指示に従って、新たな対象画像Iを表示用画像Idとして出力する(S1)。このとき出力される表示用画像Idは、標識画像Mが付与されていない画像である。さらに制御部21は、発表者の音声特徴情報を未設定状態に初期化する(S2)。
【0046】
その後、制御部21は、マイクロフォン14から入力される音声信号や通信先システム2から送信される音声信号を解析し、その中に含まれる声の特徴を特定する話者認識処理を行う。これによって、発言を行った発言者の音声特徴情報が取得される(S3)。続いて制御部21は、発表者の音声特徴情報が設定済みか否かを判定する(S4)。最初はS2の初期化処理によって発表者の音声特徴情報は未設定の状態になっているので、S4の判定結果に応じて、制御部21はS3で取得した音声特徴情報を発表者の音声特徴情報として設定する(S5)。すなわち、対象画像Iの表示後、最初に発言を行った発言者が発表者とみなされ、その音声特徴情報が登録されることになる。
【0047】
S5の処理が終わると、S3に戻って定期的に発言者の音声特徴情報を取得する処理が繰り返される。ここで、2回目以降にS3の処理が実行されたときには、既にS5で発表者の音声特徴情報が設定済みになっているので、S4の判定結果に応じて、制御部21は、新たにS3の処理で取得した音声特徴情報が発表者の音声特徴情報か否かの判定を行う(S6)。新たに取得した音声特徴情報が発表者の音声特徴情報と一致する場合、発表者が発表を続けていると考えられるので、S3に戻って定期的に発言者の音声特徴情報を取得する処理が繰り返される。
【0048】
一方、S6で新たに取得した音声特徴情報が発表者の音声特徴情報ではないと判定された場合、発表者とは別の新たな閲覧者が発言を行ったことになる。この場合、制御部21は閲覧者間の議論が開始されたと判断して、対象画像Iに標識画像Mを付与する処理を行い(S7)、標識画像Mが付与された対象画像Iを表示用画像Idとして出力する(S8)。その後は、画像の切り替え指示など、議論の終了と判断される状態が検出されたか否かを定期的に判定し、議論の終了と判断されれば標識画像Mが付与された表示用画像Idの出力が終了される。
【0049】
なお、ここでは議論の開始が検出された後に、対象画像Iへの標識画像Mの付与が実行されることとしたが、標識画像付与部32は、対象画像Iの表示が開始された時点で、対象画像Iに含まれる画像要素Cを特定し、付与すべき標識画像Mの内容及び位置を決定する処理を実行しておいてもよい。あるいは、対象画像Iの表示が開始される前に、予めこのような処理が実行されてもよい。こうすれば、議論の開始が検出された後、すぐに標識画像Mが付与された表示用画像Idが出力される。
【0050】
また、ここでは対象画像Iの表示開始後に最初に取得された音声特徴情報を直ちに発表者の音声特徴情報として設定することとしたが、他の閲覧者が最初に発言をしてしまう場合も考えられる。そこで、制御部21は、対象画像Iの表示開始後、予め定められた回数又は時間にわたって発言者の音声特徴情報を取得する処理を実行し、最も多く取得された音声特徴情報を発表者の音声特徴情報として登録してもよい。
【0051】
なお、画像処理装置11が利用者Uaの指示操作に応じて対象画像Iの修正(内容の変更)を行うためのインタフェースを備えている場合、利用者間の議論に応じて利用者Uaが対象画像Iを修正する操作を行うことも考えられる。具体的には、画像表示装置12の表示画面に対して利用者Uaがペン等を接触させて文字等を書き込む操作や、キーボードやマウス等により対象画像Iの電子データを直接編集する操作などである。表示用画像出力部33は、このような対象画像Iの内容を変更する操作を受け付けた場合に、議論が開始されたと判断してもよい。
【0052】
さらに、標識画像Mを付与した表示用画像Idを出力中にこのような対象画像Iの修正が行われる場合、標識画像付与部32は、対象画像Iの内容変更に伴って、標識画像Mを付与し直す処理を実行してもよい。具体的に、標識画像付与部32は、対象画像I内に新たな画像要素Cを追加する修正がなされる場合、当該追加される画像要素Cに対応づけて、他の画像要素に対応づけられている標識画像Mとは異なる標識画像Mを新たに付与する。また、対象画像Iから画像要素Cを削除する修正がなされる場合、当該画像要素Cに対応づけられている標識画像Mも削除する。これによって、対象画像Iの内容に変更が生じても、変更後の対象画像Iに含まれる画像要素Cを対象とした議論を行うための標識画像Mが表示された状態が保たれる。
【0053】
また、画像要素Cを削除する修正に伴って、当該画像要素Cに対応づけられている標識画像Mを削除した後、さらに対象画像I内に新たな画像要素Cを追加する修正がなされる場合、標識画像付与部32は、当該追加される画像要素Cに対応づけて、現在付与されている他の標識画像Mだけではなく、過去に削除された標識画像Mとも異なる標識画像Mを付与することとしてもよい。
【0054】
具体例として、図4に例示したように一つの対象画像I内に3個の画像要素C1〜C3及びこれらに対応する3個の標識画像M1〜M3が含まれており、その後、利用者Uaの指示に応じて画像要素C2が削除されたとする。このとき、画像要素C2に対応づけられている標識画像M2も削除される。その後、新たに画像要素C4が追加されたときには、既に削除された数字の2を含んだ標識画像M2ではなく、例えば数字の4を含んだ標識画像M4を当該画像要素C4に対応づけて付与する。こうすれば、既に削除済みの画像要素Cも含めて、対象画像I内に含まれる各画像要素Cが標識画像Mによって識別される。
【0055】
以下、対象画像Iの修正指示を受け付けた場合に制御部21が実行する処理の流れの一例について、図6のフロー図を用いて説明する。
【0056】
まず制御部21は、当該修正指示を受け付けた時点で議論の開始が既に検出済みか否かを判定する(S11)。この判定は、例えば記憶部22に格納された議論開始フラグを参照することで行われる。
【0057】
議論の開始が検出されていない場合、制御部21は、当該修正指示を議論の開始とみなして、議論開始フラグをオンに更新する(S12)。そして、前述したS7と同様に対象画像Iに標識画像Mを付与する処理を行い(S13)、標識画像Mが付与された対象画像Iを表示用画像Idとして出力する(S14)。
【0058】
一方、S11において既に議論の開始が検出されていると判定される場合、現時点で制御部21は標識画像Mの付与された表示用画像Idが出力中であることになる。この場合、制御部21は、受け付けた修正指示に応じて修正される対象画像I内の領域を特定する(S15)。そして、当該特定された領域と重なる画像要素Cの解析を行い、標識画像Mの再付与を行う(S16)。具体的に、制御部21は、新たに追加された画像要素Cに対応する標識画像Mを追加したり、削除された画像要素Cに対応する標識画像Mを削除したり、位置が変更された画像要素Cに対応する標識画像Mの位置を更新したりする。そして、制御部21は、S16の処理によって標識画像Mが付与された対象画像Iを表示用画像Idとして出力する(S14)。
【0059】
なお、以上の説明においては、画像処理装置11が標識画像Mの付与された表示用画像Idを生成して通信先システム2に送信することとしている。しかしながら、本発明の実施の形態はこのようなものに限られない。例えば画像処理装置11は、対象画像Iに標識画像Mを付与して表示用画像Idとして画像表示装置12に対して出力する一方で、通信先システム2に対しては対象画像I自体を送信することとしてもよい。この場合、拠点Aと拠点Bとの間で同じ標識画像Mが付与された対象画像Iを共有するために、通信先システム2においても画像処理装置11から受信した対象画像Iに対して標識画像Mを付与する処理が実行される。このとき、画像処理装置11は、通信先システム2に対して標識画像Mの付与を開始するタイミングや、標識画像Mが付与された表示用画像Idの出力を終了すべきタイミングを指示することとしてもよい。さらに画像処理装置11は、このようなタイミングに係る情報だけでなく、対象画像Iに対して付与すべき標識画像Mの内容及び位置を指定する情報についても、通信先システム2に対して送信することとしてもよい。
【0060】
また、以上の説明では、遠隔地間で共有される対象画像Iに対して標識画像Mを付与する例について説明したが、これに限らず、画像処理装置11は、プロジェクタ等の画像表示装置に対して標識画像Mが付与された表示用画像Idを出力することとしてもよい。これにより、一つの拠点において複数の閲覧者が閲覧する対象画像Iについても、当該対象画像Iに関する議論が行われる際に、対象画像Iに含まれる画像要素Cに対して標識画像Mが付与されることとなる。
【符号の説明】
【0061】
1 画像処理システム、2 通信先システム、11 画像処理装置、12 画像表示装置、13 操作パネル、14 マイクロフォン、15 スピーカ、21 制御部、22 記憶部、23 通信部、24 インタフェース部、31 対象画像取得部、32 標識画像付与部、33 表示用画像出力部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の閲覧者による閲覧の対象として取得された対象画像に含まれる画像要素のそれぞれについて、当該画像要素の呼称に対応する標識画像を、前記対象画像の当該画像要素に対応する位置に付与する標識画像付与手段と、
前記対象画像に前記標識画像が付与された付与後画像を出力する画像出力手段と、
画像を複数の閲覧者が閲覧可能に表示する表示手段と、
を含み、
前記表示手段は、前記複数の閲覧者の間での議論の開始を検出したタイミングで、前記付与後画像を表示することを特徴とする画像処理システム。
【請求項2】
前記表示手段は、前記複数の閲覧者の間での議論の終了を検出したタイミングで、前記付与後画像の表示を終了することを特徴とする請求項1記載の画像処理システム。
【請求項3】
複数の閲覧者による閲覧の対象として取得された対象画像に含まれる画像要素のそれぞれについて、当該画像要素の呼称に対応する標識画像を、前記対象画像の当該画像要素に対応する位置に付与する標識画像付与手段、
前記対象画像に前記標識画像が付与された付与後画像を出力する画像出力手段、及び、
画像を複数の閲覧者が閲覧可能に表示手段に表示させる表示制御手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記表示制御手段は、前記複数の閲覧者の間での議論の開始を検出したタイミングで、前記付与後画像を前記表示手段に表示させることを特徴とするプログラム。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記複数の閲覧者の間での議論の終了を検出したタイミングで、前記付与後画像の表示を終了することを特徴とする請求項3記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−187064(P2011−187064A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51821(P2011−51821)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2009−70926(P2009−70926)の分割
【原出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】