説明

画像処理プログラムおよび画像処理装置

【課題】読み込んだ帳票の画像から高い精度で印鑑色画素を適切に抽出することが可能な画像処理プログラムおよび画像処理装置を提供すること。
【解決手段】所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像をHLS値から、楕円方程式((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)を算出し、読み込んだ帳票画像がその楕円方程式内にあるか否かを判断することにより、帳票に押印された印影を含む印鑑色画素を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み込んだ帳票の画像から印影を適切に抽出する画像処理プログラムおよび画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナやデジタルカメラ等の画像読取装置を用いて取得した画像から、文字や図形等の情報を抽出する画像処理技術がある。画像は、複数の画素で構成され、画素の情報には、赤色値(R:Red)、緑色値(G:Green)及び青色値(B:Blue)の各色を示す信号が含まれている。これらの連続する画素のRGB信号のレベルを解析することで、文字や図形等の情報を抽出することができる。
【0003】
また、画像処理技術では、RGB信号のレベルに所定の演算を施して、色相値(H:Hue)、輝度値(L:Lightness)及び彩度値(S:Saturation)と呼ばれる色表現の信号に変換(HLS変換)することが行われる。HLS変換を行うことで、画像から抽出する対象によっては、RGB信号をそのまま解析するよりも低負荷で効率的に抽出処理を実行することができる。
【0004】
一般に金融機関等で用いる帳票は、予め印刷された、または後に書き込まれた文字や罫線等と、朱肉を用いて押印された印鑑による印影とで構成されている。金融機関等で使用されている営業店端末では、登録されている印影と帳票の印影を照合する際、通常黒色の文字等と赤色の印影とから構成される帳票の画像から、印影を抽出する処理(印影抽出処理)を行う必要がある。
【0005】
従来、帳票から印影を抽出する印影抽出処理は、上述のような画像処理技術が用いられ、スキャナ等の画像読込装置で読込んだカラー帳票の各画素を、RGB形式のデータからHLS形式のデータに変換し、HLS形式のデータの各値が、所定の閾値以内であれば印影の色とみなして印影を抽出していた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−108242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のような印影抽出処理においては、変換したHLS形式のデータを所定の閾値を用いて判断する際、閾値の設定が不適切であるため、印影色でない画素を印影であると判断してしまう、という問題点があった。
【0008】
図11は、従来の印影抽出処理における閾値を説明するための図である。
図11は、赤色の色相0(360)における輝度値と彩度の関係を表しており、輝度値が0.3乃至0.7、かつ彩度値が0.3乃至1.0の範囲1101を印影の色とみなすことを示している。この範囲1101に入るHLS形式のデータは、概ね印影の色であるが、例えば、領域1102の辺りは、印影と判断するには不適切であるような輝度値及び彩度値であった。
【0009】
本発明は、上述のような実状に鑑みたものであり、読み込んだ帳票の画像から高い精度で印影を適切に抽出することが可能な画像処理プログラムおよび画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するため、下記のような構成を採用した。
すなわち、本発明の一態様によれば、本発明の画像処理プログラムは、画像処理装置のコンピュータを、所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像を画像読取装置で読み取るモデルシート読取手段、前記モデルシート読取手段によって読み取ったモデルシート画像の各モデル領域における赤色値(R)、緑色値(G)及び青色値(B)を含むRGB信号値を色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)を含むHLS信号値に変換するモデルシートHLS算出手段、予め定められメモリに格納された前記モデルシートの各モデル領域の色相値、輝度値及び彩度値を前記メモリから読み込み、前記読み込んだ色相値、輝度値及び彩度値と、前記モデルシートHLS算出手段によって変換された前記モデルシート画像の各モデル領域における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記画像読取装置の色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)の読取誤差を補正するための補正値を算出するHLS補正値算出手段、帳票の画像を前記画像読取装置で読み取る帳票読取手段、前記帳票読取手段によって読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する帳票HLS算出手段、特定画像の色を表す範囲として、前記モデルシートの各モデル領域のうち、特定色の純色を示す第1のモデル領域の輝度値L1及び彩度値S1を楕円方程式((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)の中心座標(x1,y1)とし、下限値を示す第4のモデル領域の輝度値L2と、上限値を示す第5のモデル領域の輝度値L3との差分を前記楕円方程式の第1の径aとし、下限値を示す第6のモデル領域の彩度値S4と、前記第1のモデル領域の前記彩度値S1との差分の2倍を前記楕円方程式の第2の径bとした場合の、前記楕円方程式を算出する特定色範囲算出手段、前記帳票HLS算出手段によって変換した前記帳票画像のHLS信号値を前記HLS補正値算出手段によって算出した補正値で補正するHLS補正手段、前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像のHLS信号値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出する特定画像抽出手段として機能させるための画像処理プログラムである。
【0011】
また、本発明の画像処理プログラムは、前記特定画像抽出手段が、前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の色相値が所定の範囲内にあるか判断し、さらに前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の輝度値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあるか判断し、さらに前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の彩度値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあるか判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出することが望ましい。
【0012】
また、本発明の画像処理プログラムは、前記帳票読取手段が、印鑑を押印した前記帳票の画像を読み取り、前記特定画像が、前記印鑑の画像であり、前記特定色が、赤色であることが望ましい。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、本発明の画像処理装置は、所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像を画像読取装置で読み取るモデルシート読取手段と、前記モデルシート読取手段によって読み取ったモデルシート画像の各モデル領域における赤色値(R)、緑色値(G)及び青色値(B)を含むRGB信号値を色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)を含むHLS信号値に変換するモデルシートHLS算出手段と、予め定められメモリに格納された前記モデルシートの各モデル領域の色相値、輝度値及び彩度値を前記メモリから読み込み、前記読み込んだ色相値、輝度値及び彩度値と、前記モデルシートHLS算出手段によって変換された前記モデルシート画像の各モデル領域における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記画像読取装置の色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)の読取誤差を補正するための補正値を算出するHLS補正値算出手段と、帳票の画像を前記画像読取装置で読み取る帳票読取手段と、前記帳票読取手段によって読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する帳票HLS算出手段と、特定画像の色を表す範囲として、前記モデルシートの各モデル領域のうち、特定色の純色を示す第1のモデル領域の輝度値L1及び彩度値S1を楕円方程式((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)の中心座標(x1,y1)とし、下限値を示す第4のモデル領域の輝度値L2と、上限値を示す第5のモデル領域の輝度値L3との差分を前記楕円方程式の第1の径aとし、下限値を示す第6のモデル領域の彩度値S4と、前記第1のモデル領域の前記彩度値S1との差分の2倍を前記楕円方程式の第2の径bとした場合の、前記楕円方程式を算出する特定色範囲算出手段と、前記帳票HLS算出手段によって変換した前記帳票画像のHLS信号値を前記HLS補正値算出手段によって算出した補正値で補正するHLS補正手段と、前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像のHLS信号値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出する特定画像抽出手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、読み込んだ帳票画像が印影の色であるか否かを判断する際に用いる、HLS空間の印鑑色範囲を、楕円方程式とすることで、読み込んだ帳票の画像から高い精度で印影を適切に抽出することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用した画像処理装置の機能ブロック図である。
【図2】モデルシートの例を示す図である。
【図3】補正量算出処理部11が実行する補正量算出処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】HLS色空間モデルを示す図である。
【図5】モデルシート20の各モデル領域21乃至26の色相値、輝度値及び彩度値の例を示す図である。
【図6】閾値テーブル601のデータ構造例を示す図である。
【図7】本発明を適用した印影抽出処理における閾値を説明するための図である。
【図8】印鑑色抽出処理部12が実行する印鑑色抽出処理の流れを示すフローチャートである。
【図9】印鑑色抽出処理のサブルーチン「印鑑色範囲算出処理」の流れを示すフローチャートである。
【図10】印鑑色範囲算出処理のサブルーチン「彩度値(S)範囲決定処理」の流れを示すフローチャートである。
【図11】従来の印影抽出処理における閾値を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明を適用した画像処理装置の機能ブロック図である。
【0018】
図1において、画像処理装置1は、補正量算出処理部11、印鑑色抽出処理部12及び印影照合処理部13を備える。
【0019】
補正量算出処理部11は、モデルシート読取部111、モデルシートHLS算出部112、HLS補正値算出部113及び設定ファイル出力部114を備え、スキャナ2でモデルシートを読込み、モデルシートの色と読取り後のイメージの色を比較し、スキャナ2に固有の補正量を算出する処理である。
【0020】
モデルシート読取部111は、所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像をスキャナ2で読み取り、予め決められている位置の各モデル領域分の画素を取得する。
【0021】
図2は、モデルシートの例を示す図である。
図2において、モデルシート20は、第1乃至第6のモデル領域21乃至26を有している。
【0022】
ここで、モデルシート20とは、予め決められた位置に印鑑色範囲決定用の色が表示されている帳票のことである。例えば、第1のモデル領域21は、赤色の純色(H=0、L=0.5、S=1.0)である。また、第2のモデル領域22は、赤色乃至黄色の間で印鑑色だと判断する色である第1の境界色(H=1〜59の任意値、L=0.5、S=1.0)であり、第3のモデル領域23は、赤色乃至青色の間で印鑑色だと判断する色である第2の境界色(H=300〜359の任意値、L=0.5、S=1.0)である。
【0023】
また、第4のモデル領域24は、第3の境界色(H=0、L=0〜1.0の任意の値、S=1.0)であり、第5のモデル領域25は、第4の境界色(H=0、L=0〜1.0の任意の値、S=1.0)であり、第6のモデル領域26は、第5の境界色(H=0、L=0.5、S=0〜1.0の任意の値)である。ただし、第4のモデル領域24の輝度値は、第5のモデル輝度値25よりも小さい。
【0024】
モデルシートHLS算出部112は、前記モデルシート読取部111によって読み取ったモデルシート画像の各モデル領域における赤色値(R)、緑色値(G)及び青色値(B)を含むRGB信号値を色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)を含むHLS信号値に変換する。このようなHLS変換処理については後述する。
【0025】
HLS補正値算出部113は、予め定められ設定ファイル3に格納された前記モデルシート20の各モデル領域21乃至26の色相値、輝度値及び彩度値を前記設定ファイル3から読み出し、前記読み出した色相値、輝度値及び彩度値と、前記モデルシートHLS算出部112によって変換された前記モデルシート画像の各モデル領域21乃至26における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記スキャナ2の色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)の読取誤差を補正するための補正値を算出する。
【0026】
設定ファイル出力部114は、前記HLS補正値算出部113によって算出された補正値を設定ファイル3に出力し、設定ファイル3は、その補正値を格納する。
【0027】
図3は、補正量算出処理部11が実行する補正量算出処理の流れを示すフローチャートである。
【0028】
まず、ステップS301において、モデルシート読取部111が、所定の各基準色で表された複数のモデル領域21乃至26を有するモデルシート20の画像をスキャナ2で読み取り、予め決められている位置の各モデル領域21乃至26分の画素を取得する。
【0029】
次に、ステップS302において、モデルシートHLS算出部112が、ステップS301で読み取ったモデルシート画像の各モデル領域21乃至26におけるRGB信号値をHLS信号値に変換する。
HLS変換処理は、例えば次にようにして実行される。
【0030】
図4は、HLS色空間モデルを示す図である。
図4に示したようなHLS色空間は、図中の底辺を共有し、互いに上下逆向きの2つの6角錐を合わせた図形で表すことができる。底辺の各頂点が赤、黄、緑、シアン、青およびマゼンタの各色を表す。
【0031】
色相値を示すHは、底辺の中心と赤を表す頂点とを結ぶ辺を含む直線を0の位置とし、黄を表す頂点方向への回転を正として、この回転の角度によって0〜360(=0)の数値で表される。例えば、H=0が赤に対応し、H=60が黄に対応する。
【0032】
輝度を示すLは、図形の最下部の頂点から最上部の頂点を結ぶ直線で表すことができる。Lは、最下部の頂点が0(黒)、最上部の頂点が1(白)であり、中間の0.5に各色相の純色が対応する。
【0033】
彩度を示すSは、底辺の中心から底辺の各頂点に向かう線分の長さで表すことができる。Sは、底辺の中心が0(灰色)、底辺の各頂点が1(純色)である。
【0034】
モデルシートHLS算出部112は、モデルシート20のRGB成分により取得した画像データを、HLS成分の画像データにHLS変換する。例えば、RGB成分の各パラメータ(R,G,B)をそれぞれ0〜1に対応付け、以下のアルゴリズムによって、HLS変換を行う。
【0035】
(a)MAX=max(R,G,B)(ただし、max演算は、RGBのうち最大の値を取得することを示す)、MIN=min(R,G,B)(ただし、min演算は、RGBのうち最小の値を取得することを示す)。
(b)L=(MAX+MIN)/2とする。
(c)MAX=MINの場合、S=0,H=0とする。これにより、変換処理は完了となる。
(d)MAX=MIN以外の場合、L≦0.5ならば、S=(MAX−MIN)/(MAX+MIN)とする。また、L>0.5ならば、(MAX−MIN)/(2−MAX−MIN)とする。また、CN=(MAX−N)/(MAX−MIN)(ただし、添え字Nは、R,G,Bのいずれかを示す)を求める。そして、MAX=RならばH’=CB−CGとし、MAX=GならばH’=2+CR−CBとし、MAX=BならばH’=4+CG−CRとする。そして、H=H’×60とする。なお、H<0であれば、H=H+360とする。これにより、変換処理は完了となる。
【0036】
次に、図3のステップS303において、HLS補正値算出部113が、まず、予め定められメモリである設定ファイル3に格納された前記モデルシート20の各モデル領域21乃至26の色相値、輝度値及び彩度値を前記設定ファイル3から読み出す。
【0037】
図5は、モデルシート20の各モデル領域21乃至26の色相値、輝度値及び彩度値の例を示す図である。
【0038】
図3のステップS303において、HLS補正値算出部113は、各モデル領域21乃至26の色相値、輝度値及び彩度値、例えば、モデル領域21の色相値として0、輝度値として0.5、及び彩度値として1.0を、設定ファイル3から読み出す。
【0039】
また、図3のステップS303においては、HLS補正値算出部113が、設定ファイル3から読み出した色相値、輝度値及び彩度値と、ステップS302で変換された前記モデルシート画像の各モデル領域21乃至26における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記スキャナ2の色相値、輝度値及び彩度値の読取誤差を補正するための補正値を算出する。
【0040】
例えば、設定ファイル3から読み出した色相値をHs、輝度値をLs、彩度値をSs、スキャナ2で読み込みHLS変換後の色相値をHr、輝度値をLr、彩度値をSrとした場合、色相値の補正量はHs−Hr、輝度値の補正量はLs−Lr、彩度値の補正量はSs−Srとなる。
【0041】
次に、設定ファイル出力部114は、前記HLS補正値算出部113によって算出された補正値を設定ファイル3に出力し、設定ファイル3は、その補正値を格納する。
【0042】
この補正値を用いることにより、同一の帳票でもスキャナ2の個体差等に起因して読み込み後の画像の色が異なり、印影の判断がスキャナ2によって異なるということもなく、スキャナ2毎の読取りイメージの相違を意識する必要がなくなる。よって、スキャナ2毎のチューニング作業は不要である。
【0043】
図1の説明に戻る。
印鑑色抽出処理部12は、帳票読取部121、帳票HLS算出部122、設定ファイル読込部123、印鑑色範囲算出部124、HLS補正部125及び印鑑色抽出部126を備え、スキャナ2で読込んだ帳票イメージから、印鑑色だと判定した画素を黒に設定し、判定されなかった画素を白に設定したイメージを作成する処理である。
【0044】
帳票読取部121は、帳票の画像、例えば印鑑を押印した帳票の画像を前記スキャナ2で読み取り、画素を取得する。
【0045】
帳票HLS算出部122は、前記帳票読取部121によって読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する。ここでのHLS変換処理は、上述したHLS変換処理と同様である。
【0046】
設定ファイル読込部123は、予め定められ設定ファイル3に格納された前記モデルシート20に対応付けられている閾値テーブル601から、各情報を読み込む。
【0047】
図6は、閾値テーブル601のデータ構造例を示す図である。
図6に示したように、閾値テーブル601には、要素を示す項目、下限値を示す項目および上限値を示す項目が設けられている。各項目の横方向に並べられた情報同士が互いに関連付けられて、HLS色空間の各要素に関する情報を構成する。
【0048】
要素を示す項目には、パラメータの名称を示す情報が設定される。下限値を示す項目には、各パラメータの抽出対象範囲の下限を示す値が設定される。上限値を示す項目には、各パラメータの抽出対象範囲の上限を示す値が設定される。例えば、要素が“輝度(L)”、下限値が“0.3”、上限値が“0.7”という情報が設定される。これは、“輝度(L)”が“0.3〜0.7”の範囲に含まれる画素を抽出対象とすることを示している。なお、“色相(H)”に対しては、下限値と上限値とがそれぞれ2つずつ設定される。これは、印鑑色である朱色がHLS色空間において、0(度)を跨った値を取る可能性があるためである。この場合、“色相(H)”に関する抽出対象の範囲は、例えば、“340〜359”および“0〜20”として設定される。
【0049】
印鑑色範囲算出部124は、モデルシート20上の各色のHLS値に基づいて印鑑色範囲を決定する。印鑑色範囲は、下記のようにして算出した楕円方程式に基づいて、HLS色空間モデルに従いLS平面において半楕円領域とする。半楕円領域とすることで、印鑑色らしい色のみ検出することができ、帳票背景等が検出されることを抑えられる。
【0050】
図7は、本発明を適用した印影抽出処理における閾値を説明するための図である。
すなわち、印鑑の画像である特定画像の色を表す範囲として、前記モデルシート20の各モデル領域21乃至26のうち、例えば赤色等の特定色の純色を示す第1のモデル領域21の輝度値L1(0.5)及び彩度値S1(1.0)を楕円方程式701((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)の中心座標(x1,y1)=(0.5,1.0)(図7中のA)とし、下限値を示す第4のモデル領域の輝度値L2(0.3)と、上限値を示す第5のモデル領域の輝度値L3(0.7)との差分を前記楕円方程式701の第1の径a(0.4)とし、下限値を示す第6のモデル領域の彩度値S4(0.3)と、前記第1のモデル領域の前記彩度値S1(1.0)との差分の2倍を前記楕円方程式701の第2の径b(0.7)とした場合の、前記楕円方程式701((x−0.5)2/0.42+(y−1.0)2/0.72=1)を算出する。
【0051】
HLS補正部125は、前記帳票HLS算出部122によって変換した前記帳票画像のHLS信号値を前記HLS補正値算出部113によって算出した補正値で補正する。例えば、変換した前記帳票画像の色相値に算出した色相値の補正値を加算して補正する。同様に、変換した前記帳票画像の輝度値に算出した輝度値の補正値を加算して補正し、変換した前記帳票画像の彩度値に算出した彩度値の補正値を加算して補正する。
【0052】
印鑑色抽出部126は、前記HLS補正部125によって補正した前記帳票画像のHLS信号値が前記印鑑色範囲算出部124によって算出した前記楕円方程式701で定められた半楕円領域で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像としての印鑑色の色を抽出する。例えば、スキャナ2で読み込んだ帳票イメージの色相値が、上述のようにして設定された範囲、すなわち、“340〜359”および“0〜20”の範囲内であり、輝度値が“0.3〜0.7”の範囲であり、彩度値が前記輝度値における前記楕円方程式701内にあることにより、判断する。
【0053】
そして、印鑑色であるとして抽出された対象の画素を黒に設定する。他方、抽出されなかった印鑑色範囲外の値であれば対象画素を白に設定する。
【0054】
図8は、印鑑色抽出処理部12が実行する印鑑色抽出処理の流れを示すフローチャートであり、図9は、印鑑色抽出処理のサブルーチン「印鑑色範囲算出処理」の流れを示すフローチャートであり、図10は、印鑑色範囲算出処理のサブルーチン「彩度値(S)範囲決定処理」の流れを示すフローチャートである。
【0055】
まず、ステップS801において、設定ファイル読込部123が、予め定められ設定ファイル3に格納された前記モデルシート20に対応付けられている閾値テーブル901から、各情報を読み込み、ステップS802において、帳票読取部121は、例えば印鑑を押印した帳票の画像を前記スキャナ2で読み取り、画素を取得する。
【0056】
次に、ステップS803において、帳票HLS算出部122が、ステップS802で読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する。
【0057】
そして、ステップS804において、HLS補正部125が、ステップS803でHLS変換した前記帳票画像のHLS信号値を、図3のステップS303で算出した補正値で補正する。
【0058】
次に、ステップS805において、印鑑色範囲算出部124が、モデルシート20上の各色のHLS値に基づいて印鑑色範囲を決定する。
【0059】
より具体的には、図9のステップS601において、色相値の範囲を決定する。例えば、赤色の色相の場合、モデルシート20の第2の境界色(第3のモデル領域23)で示した330から360(すなわち0)までと、0から第1の境界色(第2のモデル領域22)で示した30までを色相値の範囲として決定する。さらに、ステップS902において、輝度値の範囲を決定する。例えば、モデルシート20の第3の境界色(第4のモデル領域24)で示した輝度値0.3から、第4の境界色(第5のモデル領域25)で示した輝度値0.7までを輝度値の範囲として決定する。さらに、ステップS903において、彩度値の範囲を決定する。
【0060】
彩度値の範囲の決定は、例えば、図10のフローチャートに示すようにして決定する。
まず、ステップS1001において、印鑑色範囲である楕円方程式の中心座標を補正する。例えば、x´=x−(帳票イメージの対象画素の輝度値)、y´=y−(モデルシート20の第1のモデル領域21の彩度値)を設定する。
【0061】
そして、ステップS1002において、楕円方程式の長径a及び短径bを決定する。例えば、a=(モデルシート20の第5のモデル領域25の輝度値)−(モデルシート20の第1のモデル領域21の輝度値)、b=(モデルシート20の第6のモデル領域26の彩度値)−(モデルシート20の第1のモデル領域21の彩度値)を決定する。
【0062】
そして、ステップS1003において、彩度値を算出する。すなわち、前記楕円方程式を変形し、
【0063】
【数1】

のx´に帳票イメージの対象画素の輝度値を代入し、彩度値を算出する。
【0064】
そして、ステップS1004において、彩度値を補正する。例えば、y=y´+(モデルシート20の第1のモデル領域21の彩度値)を算出する。
【0065】
そして、図8のステップS806において、印鑑色抽出部126が、ステップS804で補正した前記帳票画像のHLS信号値がステップS805で算出した前記楕円方程式701で定められた半楕円領域で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像としての印鑑色の色を抽出する。
【0066】
図1の説明に戻る。
印影照合処理部13は、印影検出部131、登録印検索部132、印鑑照合部133及び照合結果表示部134を備える。
【0067】
印影検出部131は、印鑑色であるとして印鑑色抽出部126が黒に設定した画素の並びを抽出する。
【0068】
次に、登録印検索部132は、印鑑サーバ4に登録してある登録印を検索し、印鑑照合部133は、印影検出部131が抽出した帳票の印影と、登録印検索部132が検索した登録印とが一致するか否かを照合する。
【0069】
そして、照合結果表示部134は、登録印検索部132が照合した結果を表示装置5に出力する。
【0070】
以上、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明してきたが、上述してきた本発明の実施の形態は、画像処理装置の一機能としてハードウェアまたはDSP(Digital Signal Processor)ボードやCPUボードでのファームウェアもしくはソフトウェアにより実現することができる。
【0071】
また、本発明が適用される画像処理装置は、その機能が実行されるのであれば、上述の実施の形態に限定されることなく、単体の装置であっても、複数の装置からなるシステムあるいは統合装置であっても、LAN、WAN等のネットワークを介して処理が行なわれるシステムであってもよいことは言うまでもない。
【0072】
また、バスに接続されたCPU、ROMやRAMのメモリ、入力装置、出力装置、外部記録装置、媒体駆動装置、ネットワーク接続装置で構成されるシステムでも実現できる。すなわち、前述してきた実施の形態のシステムを実現するソフトェアのプログラムを記録したROMやRAMのメモリ、外部記録装置、可搬記録媒体を、画像処理装置に供給し、その画像処理装置のコンピュータがプログラムを読み出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0073】
この場合、可搬記録媒体等から読み出されたプログラム自体が本発明の新規な機能を実現することになり、そのプログラムを記録した可搬記録媒体等は本発明を構成することになる。
【0074】
プログラムを供給するための可搬記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、DVD−ROM、DVD−RAM、磁気テープ、不揮発性のメモリーカード、ROMカード、電子メールやパソコン通信等のネットワーク接続装置(言い換えれば、通信回線)を介して記録した種々の記録媒体などを用いることができる。
【0075】
また、コンピュータ(情報処理装置)がメモリ上に読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施の形態の機能が実現される他、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現される。
【0076】
さらに、可搬型記録媒体から読み出されたプログラムやプログラム(データ)提供者から提供されたプログラム(データ)が、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施の形態の機能が実現され得る。
【0077】
すなわち、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または形状を取ることができる。
【符号の説明】
【0078】
1 画像処理装置
2 スキャナ
3 設定ファイル
4 印鑑サーバ
5 表示装置
11 補正量算出処理部
12 印鑑色抽出処理部
13 印影照合処理部
20 モデルシート
21 第1のモデル領域
22 第2のモデル領域
23 第3のモデル領域
24 第4のモデル領域
25 第5のモデル領域
26 第6のモデル領域
111 モデルシート読取部
112 モデルシートHLS算出部
113 HLS補正値算出部
114 設定ファイル出力部
121 帳票読取部
122 帳票HLS算出部
123 設定ファイル読込部
124 印鑑色範囲算出部
125 HLS補正部
126 印鑑色抽出部
131 印影検出部
132 登録印検索部
133 印鑑照合部
134 照合結果表示部
601 閾値テーブル
701 楕円方程式
1101 範囲
1102 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置のコンピュータを、
所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像を画像読取装置で読み取るモデルシート読取手段、
前記モデルシート読取手段によって読み取ったモデルシート画像の各モデル領域における赤色値(R)、緑色値(G)及び青色値(B)を含むRGB信号値を色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)を含むHLS信号値に変換するモデルシートHLS算出手段、
予め定められたメモリに格納された前記モデルシートの各モデル領域の色相値、輝度値及び彩度値を前記メモリから読み込み、前記読み込んだ色相値、輝度値及び彩度値と、前記モデルシートHLS算出手段によって変換された前記モデルシート画像の各モデル領域における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記画像読取装置の色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)の読取誤差を補正するための補正値を算出するHLS補正値算出手段、
帳票の画像を前記画像読取装置で読み取る帳票読取手段、
前記帳票読取手段によって読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する帳票HLS算出手段、
特定画像の色を表す範囲として、前記モデルシートの各モデル領域のうち、特定色の純色を示す第1のモデル領域の輝度値L1及び彩度値S1を楕円方程式((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)の中心座標(x1,y1)とし、下限値を示す第4のモデル領域の輝度値L2と、上限値を示す第5のモデル領域の輝度値L3との差分を前記楕円方程式の第1の径aとし、下限値を示す第6のモデル領域の彩度値S4と、前記第1のモデル領域の前記彩度値S1との差分の2倍を前記楕円方程式の第2の径bとした場合の、前記楕円方程式を算出する特定色範囲算出手段、
前記帳票HLS算出手段によって変換した前記帳票画像のHLS信号値を前記HLS補正値算出手段によって算出した補正値で補正するHLS補正手段、
前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像のHLS信号値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出する特定画像抽出手段、
として機能させるための画像処理プログラム。
【請求項2】
前記特定画像抽出手段は、前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の色相値が所定の範囲内にあるか判断し、さらに前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の輝度値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあるか判断し、さらに前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像の彩度値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあるか判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理プログラム。
【請求項3】
前記帳票読取手段は、印鑑を押印した前記帳票の画像を読み取り、
前記特定画像は、前記印鑑の画像であり、
前記特定色は、赤色である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理プログラム。
【請求項4】
所定の各基準色で表された複数のモデル領域を有するモデルシートの画像を画像読取装置で読み取るモデルシート読取手段と、
前記モデルシート読取手段によって読み取ったモデルシート画像の各モデル領域における赤色値(R)、緑色値(G)及び青色値(B)を含むRGB信号値を色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)を含むHLS信号値に変換するモデルシートHLS算出手段と、
予め定められたメモリに格納された前記モデルシートの各モデル領域の色相値、輝度値及び彩度値を前記メモリから読み込み、前記読み込んだ色相値、輝度値及び彩度値と、前記モデルシートHLS算出手段によって変換された前記モデルシート画像の各モデル領域における色相値、輝度値及び彩度値とに基づいて、前記画像読取装置の色相値(H)、輝度値(L)及び彩度値(S)の読取誤差を補正するための補正値を算出するHLS補正値算出手段と、
帳票の画像を前記画像読取装置で読み取る帳票読取手段と、
前記帳票読取手段によって読み取った帳票画像の赤色値、緑色値及び青色値を含むRGB信号値を色相値、輝度値及び彩度値を含むHLS信号値に変換する帳票HLS算出手段と、
特定画像の色を表す範囲として、前記モデルシートの各モデル領域のうち、特定色の純色を示す第1のモデル領域の輝度値L1及び彩度値S1を楕円方程式((x−x12/a2+(y−y12/b2=1)の中心座標(x1,y1)とし、下限値を示す第4のモデル領域の輝度値L2と、上限値を示す第5のモデル領域の輝度値L3との差分を前記楕円方程式の第1の径aとし、下限値を示す第6のモデル領域の彩度値S4と、前記第1のモデル領域の前記彩度値S1との差分の2倍を前記楕円方程式の第2の径bとした場合の、前記楕円方程式を算出する特定色範囲算出手段と、
前記帳票HLS算出手段によって変換した前記帳票画像のHLS信号値を前記HLS補正値算出手段によって算出した補正値で補正するHLS補正手段と、
前記HLS補正手段によって補正した前記帳票画像のHLS信号値が前記特定色範囲算出手段によって算出した前記楕円方程式で囲まれた範囲内にあると判断することにより、前記帳票画像から前記特定画像を抽出する特定画像抽出手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図2】
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【図7】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−181618(P2012−181618A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43080(P2011−43080)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】