画像処理方法、画像処理装置およびそれを備えた画像形成装置、画像読取装置、プログラム並びに記録媒体
【課題】筋状のノイズの除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止する。
【解決手段】画像処理装置は、筋画素を検出する筋検出部51、文字領域の画素を判別する領域分離処理部25、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではない画素に置き換える筋補間処理部53とを備える。
【解決手段】画像処理装置は、筋画素を検出する筋検出部51、文字領域の画素を判別する領域分離処理部25、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではない画素に置き換える筋補間処理部53とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに生じた筋状のノイズの除去処理を行う画像処理方法、画像処理装置およびそれを備えた画像形成装置、画像読取装置、プログラム並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としての例えば複写機や複合機は、通常、スキャナ機能を備え、このスキャナ機能により原稿画像を読み取り、読み取った画像データに基づいて印刷を行ったり、読み取った画像データを他の装置に送信したりしている。一方、スキャナ機能による原稿画像の読み取りには、利便性の点から原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)が多用されている。
【0003】
ここで、原稿自動送り装置を使用して原稿画像を読み取った場合には、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、読取画像データにおいて、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。このような筋状のノイズは、視覚的に目立つため、原稿に忠実な画像データを得るためには除去することが望まれる。
【0004】
筋状のノイズを除去する手法として、特許文献1には、画像データにおける筋状のノイズを有する画素を、その画素の周辺画素に基づいて線形補間により算出した画素値に置き換える技術が開示されている。具体的には、入力された画像データからノイズ領域を検出し、検出したノイズ領域の隣接画素の画素値に基づいて、ノイズ領域内の画素の補正用画素値を線形補間によって算出し、算出した補正用画素値にてノイズ領域内の画素の画素値を置き換えている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、筋状のノイズが網点などのテクスチャーと重なっていた場合に、図14に示すように、補間した部分において周辺のテクスチャーとギャップを生じて、ノイズを除去することができないという問題点を有している。図14は、上記特許文献1に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【0006】
一方、このような問題点を解決するための手法として、特許文献2に記載の技術が提案されている。すなわち、特許文献2に記載の技術は、画素の補間に関し、ノイズ部分の画素をテクスチャーが再現可能な方法により補間するものであり、補間する領域の周辺の画素を類似度の高い領域の画素にて置き換える構成となっている。このような補間を行う構成では、前述のような網点部分であっても、図15に示すように、周辺のテクスチャーと違和感無く筋状のノイズを除去することができる。図15は、上記特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理を示す説明図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−198838号公報(2001年12月26日公開)
【特許文献2】特開2006−332785号公報(2006年12月07日公開)
【特許文献3】特開2002−232708号公報(2002年08月16日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の構成は、類似度に基づいて補間領域の画素に最も適切と思われる画素を選択して補間しているだけであるから、画像の本来のエッジ形状を再現することができない。このため、エッジの形状に意味がある、例えば文字のような画像では、図16に示すように、エッジの形状が歪んでいることを容易に認識できてしまうといった新たな問題点を生じることになる。図16は、上記特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【0009】
したがって、本発明は、筋状のノイズの除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる画像処理方法、画像処理装置およびそれを備えた画像形成装置、画像読取装置、プログラム並びに記録媒体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出部と、前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理部と、前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理部とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の画像処理方法は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出工程と、前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理工程と、前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理工程とを備えていることを特徴としている。
【0012】
例えば原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データには、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。
【0013】
このような読取画像データからなる入力画像データに対して、上記の構成によれば、筋検出部は(筋検出工程では)、入力画像データに含まれる筋画素を検出する。領域分離処理部は(領域分離処理工程では)、入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する。筋除去処理部は(筋除去処理工程では)、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0014】
これにより、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。また、文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素を補間対象筋画素から排除しているので、筋画素が文字領域の画素に置き換えられる事態を防止することができる。
【0015】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成するマスク画像作成部と、前記マスク画像データにおいて、前記筋画素のうちの前記補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成するマスク補正部と、前記入力画像データにおける、前記筋補間マスクが示す前記補間対象筋画素を、前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋補間処理部とを備えている構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、筋除去処理部のマスク画像作成部は、入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成する。マスク補正部は、マスク画像データにおいて、筋画素のうちの補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成する。筋補間処理部は、入力画像データにおける、筋補間マスクが示す補間対象筋画素を、入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0017】
これにより、筋除去処理部は、筋補間マスクを使用して、入力画像データにおける、筋補間マスクが示す補間対象筋画素を、入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える処理を容易に行うことができる。
【0018】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記補間対象筋画素を中心とした前記補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定し、前記第1のブロックをテンプレートとして前記入力画像データを走査し、各テンプレートの位置において前記第1のブロック内の画素と前記テンプレート内の画素との類似度を求め、前記類似度が最も高い位置における前記テンプレート内の画素を置換用画素として選択し、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、補間対象筋画素を中心とした補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定する。次に、第1のブロックをテンプレートとして入力画像データを走査する。次に、各テンプレートの位置において第1のブロック内の画素とテンプレート内の画素との類似度を求め、類似度が最も高い位置におけるテンプレート内の画素を置換用画素として選択する。そして、置換用画素を補間対象筋画素と置き換える。
【0020】
これにより、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。
【0021】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記置換用画素が前記文字領域の画素である場合に、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える処理を中止する構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、選択された置換用画素が文字領域の画素である場合に、置換用画素を補間対象筋画素と置き換える処理を中止する。
【0023】
これにより、補間対象筋画素に対する誤った補間による画質の劣化を回避することができる。すなわち、筋除去処理部は、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素としている。したがって、補間対象筋画素の置換用画素として文字領域の画素が選択されることは不適切であり、筋除去処理部の誤動作を抑制することができる。
【0024】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択する構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、類似度が高い順序にて置換用画素の候補画素として複数の画素を設定する。さらに、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択する。
【0026】
これにより、例えば、置換用画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換用画素として補間対象筋画素を置換することができる。したがって、置換用画素による補間対象筋画素の置換処理(補間処理)を確実に行うことができる。また、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。
【0027】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域の画素ではなく、かつ文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択する。
【0029】
これにより、例えば、置換用画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換用画素として補間対象筋画素を置換することができる。また、文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素を置換用画素から排除しているので、実際の文字領域の画素を置換用画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われる事態を防止することができる(筋画素が文字領域の画素に置き換えられ、文字部分において形状の歪が発生するのを防止することができる)。
【0030】
すなわち、領域分離処理部にて文字領域として文字エッジを検出する場合、文字内部の画素は、文字として検出されない。したがって、領域分離処理部にて判別された文字領域の画素からの距離が第2の範囲内(文字のエッジからの文字が存在する範囲内、例えば10画素×10画素の範囲内)に存在する画素を置換用画素から排除しておけば、文字領域の画素を置換用画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われることはない。
【0031】
これにより、置換用画素による補間対象筋画素の置換処理を確実に行うことができる。また、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。さらに、文字部分の画質の劣化を防止することができる。
【0032】
本発明の画像読取装置は、原稿を搬送しながら読み取って画像データを取得する原稿搬送読取装置と、前記原稿搬送読取装置が取得した画像データを前記入力画像データとする上記いずれかの画像処理装置とを備えていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、原稿搬送読取装置にて原稿を搬送しながら取得された原稿の画像データに基づいて、画像処理装置は筋除去処理を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
例えば原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データには、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。
【0035】
このような読取画像データからなる入力画像データに対して、本発明の構成によれば、筋検出部は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する。領域分離処理部は、入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する。筋除去処理部は、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0036】
これにより、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した筋状ノイズ除去部の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した筋検出部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した領域分離処理部での領域分離処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3に示した筋検出部の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、図3に示したエッジ検出部にて使用されるソーベルフィルタを示す説明図、図6(b)は、同エッジ検出部にて使用されるラプラシアンフィルタを示す説明図である。
【図7】図3に示したエッジ検出部およびエッジ情報ヒストグラム作成部に関し、エッジ検出部にて算出されたエッジ情報に基づいてエッジ情報ヒストグラム作成部が作成するヒストグラムの一例を示す説明図である。
【図8】図8(a)は、図3に示した筋画素判定部におけるソーベルフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図、図8(b)は、同筋画素判定部におけるラプラシアンフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。
【図9】図3に示したマスク画像作成部によって作成されたマスク画像データを示す説明図である。
【図10】図10(a)は図3に示したマスク画像作成部にて作成されたマスク画像データの一例を示す説明図、図10(b)は図10(a)に示したマスク画像データから作成された筋補間マスクの一例を示す説明図である。
【図11】図2に示した筋補間処理部の動作を示す説明図である。
【図12】図2に示した筋補間処理部の動作を示すフローチャートである。
【図13】図1に示した画像入力装置としての両面原稿搬送読取装置の構造を示す概略の縦断面図である。
【図14】特許文献1に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【図15】特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理を示す説明図である。
【図16】特許文献3に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0039】
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施形態の画像形成装置は、コピーモード、プリントモード、ファクシミリ送信モード、ファクシミリ受信モードおよびイメージ送信モードによる動作が可能なデジタルカラー複合機である。画像形成装置では、こられモードの中からいずれかのモードが例えばユーザにより選択されると、選択されたモードを実行するようになっている。
【0041】
コピーモード(複写モード)は、画像データを読み込み、すなわち原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データの画像を用紙に印刷するモードである。プリントモードは、画像形成装置に接続されている端末装置から送られてくる画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0042】
ファクシミリ送信モードは、(1)原稿を読み取って得られる画像データを電話回線によって外部装置に送信する通常のファクシミリモード、および(2)前記画像データをメールに添付してインターネットによって送信するインターネットファクシミリモードを含む。ファクシミリ受信モードは、外部装置から画像データをファクシミリにて受信し、受信した画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0043】
イメージ送信モードは、(1)原稿を読み取って生成した画像データを電子メールに添付して指定されたアドレスへ送信するモード(scan to e-mailモード)、(2)原稿を読み取って生成した画像データをユーザにより指定されたフォルダに送信するモード(scan to ftpモード)、および(3)原稿を読み取って生成した画像データを画像形成装置に装着されたUSBメモリなどに送信するモード(scan to usbモード)を含む。
【0044】
なお、本実施形態においては、画像処理の動作上から、ファクシミリ送信モードとイメージ送信モードとを上記のように分類している。
【0045】
また、コピーモードあるいはプリントモードが選択されている場合、ユーザは、モノクロ画像を出力するモノクロモード、またはフルカラーの画像を出力するフルカラーモードのいずれかを選択できるようになっている。
【0046】
また、本実施の形態では、原稿カラー自動判別モードを設定することが可能である。このモードが設定されている場合、画像形成装置は、原稿がカラー原稿かモノクロ原稿であるかを判別するカラー/モノクロ原稿判定処理を行う。さらに、原稿がカラー原稿と判定された場合には上記のフルカラーモードにて出力処理を行い、原稿がモノクロ原稿と判定された場合には上記のモノクロモードにて出力処理を行うようになっている。
【0047】
画像形成装置は、図1に示すように、画像入力装置(画像読取装置)11、画像処理装置12、画像出力装置(印刷装置)13、受信装置14、送信装置15、記憶装置16、制御部17および入力装置18を有している。
【0048】
画像入力装置11は、原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)としての機能を有し、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、原稿を読み取り、読取画像データを生成する。すなわち、画像入力装置11は、CCD(Charge Coupled Device)を備えたスキャナ部を有し、ADF機能によって原稿を読み取り位置に搬送し、原稿から反射してきた光を、RGBに色分解された電気信号(アナログの画像信号)に変換し、この電気信号を画像処理装置12に入力するものである。
【0049】
なお、画像入力装置11は、上記のフルカラーモードおよびモノクロモードのいずれのモードが選択されている場合であっても、フルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。また、画像入力装置11は、画像処理装置12において前述した原稿カラー自動判別処理が行われる場合であってもフルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。
【0050】
画像処理装置12は、画像データ(画像信号)に対して画像処理を施す集積回路であり、例えばASIC(Application specific integrated circuit)にて構成されている。この画像処理装置12は、図1に示すように、A/D(アナログ/デジタル)変換部21、シェーディング補正部22、入力処理部23、カラー/モノクロ原稿判定部24、領域分離処理部25、領域分離信号圧縮部26、筋状ノイズ除去部27、圧縮部28、復号部29、領域分離信号復号部30、画質調整部31、色補正部32、黒生成/下色除去部33、空間フィルタ部34、変倍部35、出力階調補正部36および中間調生成部37の各ブロックを有している。画像処理装置12に含まれる各ブロックの処理内容については後に詳述する。
【0051】
なお、画像処理装置12は、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、画像入力装置11から送られてきた画像データに対して画像処理を行う。また、プリントモードにおいて、画像処理装置12と接続された端末装置(図示せず)から送信されてきた画像データに対して画像処理を行う。また、ファクシミリ受信モードにおいて、外部装置(図示せず)から受信した画像データに対して画像処理を行う。
【0052】
さらに、画像処理装置12は、コピーモード、プリントモードおよびファクシミリ受信モードにおいて、画像処理を施した画像データを画像出力装置13に送信する。また、ファクシミリ送信モードにおいて、画像処理を施した画像データを送信装置15に送信する。また、イメージ送信モードのscan to e-mailモードにおいて、画像処理を施した画像データをメール処理部(図示せず)に送信する。また、scan to ftpモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のフォルダに送信する。また、scan to usbモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のUSBメモリに送信する。
【0053】
画像出力装置13は、画像処理装置12から送られてきた画像データの画像を紙等のシート上に印刷する(画像形成する)。したがって、画像出力装置13は、例えば、電子写真方式またはインクジェット方式を用いたカラープリンタである。なお、本実施の形態において、「印刷」とは、プリントモードでの印刷、コピーモードでの印刷あるいはファクシミリ受信モードでの印刷のいずれかを意味する。画像出力装置13は、画像データの画像を表示する表示装置であってもよい。
【0054】
受信装置14は、電話回線またはインターネットに接続しており、ファクシミリ通信によって外部装置から画像データを受信する。送信装置15は、電話回線またはインターネットに接続しており、画像入力装置11から入力された画像データをファクシミリ通信によって外部装置へ送信する。記憶装置16は、画像処理装置12にて扱われる画像データを一旦保存するものであり、例えばハードディスク装置である。
【0055】
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサを含むコンピュータであり、画像形成装置が備える各種ハードウェアを統括的に制御する。また、制御部17は、画像形成装置が備える各ハードウェア間のデータ転送を制御する機能も有する。
【0056】
入力装置18は、表示部として例えばタッチパネル式の液晶パネルを備え、画像処理装置12すなわち画像形成装置に対してユーザから各種入力を行うためのものである。通常は、操作パネルとして備えられている。
【0057】
画像処理装置12において、A/D(アナログ・デジタル)変換部21は、画像入力装置11から送られてきたカラー画像信号(RGBアナログ信号)をデジタルの画像データ(RGBデジタル信号)に変換する。シェーディング補正部22は、A/D変換部21から送られてきた画像データに対して、画像入力装置11の照明系、結像系および撮像系にて生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。入力処理部23は、シェーディング補正部22から送られてくるRGBの画像データのそれぞれに対してγ補正処理などの階調変換処理を施す。
【0058】
カラー/モノクロ原稿判定部24は、入力処理部23から出力されたRGB信号を用いて、読取画像データがカラーの原稿のものであるか、モノクロ(白黒)の原稿のものであるかを判定する。なお、カラー/モノクロ原稿判定部24の代わりに、原稿が文字原稿、印刷写真原稿、印画紙写真原稿、文字と印刷写真とが混在する文字印刷写真原稿、あるいは文字と印画紙写真とが混在する文字印画紙写真原稿であるか等の原稿種別の判別を行う原稿種別判別部を設けてもよい。この場合、原稿種別判別部は、上記原稿種別とともに、読み取られた原稿がカラー原稿であるかモノクロ(白黒)原稿であるのかを判別する、自動カラー判別処理を行うようにしてもよい。さらに、原稿種別判別部は、無地の原稿であるか否かの判定を行うブランク原稿判別処理を行うようにしてもよい。
【0059】
領域分離処理部25は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくるRGBの画像データに基づき、入力画像データ(読取画像データ)の画素毎に、当該画素がどのような画像領域に分類されるのかを判別し、その判別結果を示す領域分離信号を生成する。ここで、領域分離処理部25において判別される画像領域は、黒文字領域、色文字領域および網点領域等である。
【0060】
領域分離信号圧縮部26は、領域分離処理25により画素毎に生成された領域分離信号に対して圧縮処理を施す。なお、領域分離信号圧縮部26における圧縮処理は、例えば、可逆圧縮方法であるMMR(Modified Modified Reed)方式あるいはMR(Modified Reed)方式に基づいて行われる。
【0061】
筋状ノイズ除去部27は、入力画像データの筋検知を行い、領域分離処理部25にて検出された文字領域の情報と筋検知結果とを用いて筋状ノイズを除去する。
【0062】
圧縮部28は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくる画像データ(RGB信号)を符号化する。なお、ここでの符号化は、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式に基づいて行われる。
【0063】
制御部17は、圧縮部28から出力された符号化コード(符号化された画像データ)と領域分離信号圧縮部26から出力された領域分離信号コード(圧縮された領域分離信号)とを一旦記憶装置16に保存し、ファイリングデータとして管理する。そして、制御部17は、コピー出力動作が指示された場合、記憶装置16から上記の符号化コードおよび当該符号化コードに対応する領域分離信号コードを読み出し、復号部28および領域分離信号復号部29にそれぞれ引き渡す。
【0064】
なお、制御部17は、上記符号化コードの保存アドレスまたはデータ名と、領域分離信号コードの保存アドレスとを対応付けて記憶装置16に設けられた管理テーブルに記入する。つまり、制御部17は、当該管理テーブルを用いて、符号化コードおよび領域分離信号コードの読み出しまたは書き込みの制御を行っている。
【0065】
復号部29は、上記符号化コードに対して復号化処理を施すことによって、上記符号化コードをRGBの画像データに伸張する。また、領域分離信号復号部29は、上記領域分離信号コードに対して復号化処理を施す。復号化した領域分離信号は、空間フィルタ部34および中間調生成部37に引き渡される。そして、空間フィルタ部34および中間調生成部37においては、画像領域の種類に応じて画像処理内容の切替えが行われる。
【0066】
画質調整部31は、復号部29から送られてくるRGBの画像データについて、下地の検出を行って下地除去補正を行う。さらに、画質調整部31は、ユーザによって例えば操作パネルである入力装置18から入力される設定情報に基づいて、RGBのバランス(カラー調整、赤み青みといった全体のカラー調整)、明るさおよび鮮やかさの調整を行う。
【0067】
色補正部32は、フルカラーモードが選択されている場合に、画質調整部31から出力されるRGBの画像データをCMYの画像データに変換する色補正処理を行う。また、当該画像データに対して色再現性を高める処理を施す。なお、上記の色補正処理は、入力値(RGB)と出力値(CMY)とを対応付けたLUT(ルックアップテーブル)を作成し、作成したLUTから出力値をルックアップすることによって実現される。
【0068】
黒生成/下色除去部33は、フルカラーモードが選択されている場合、色補正部32から出力されたCMYの画像データから黒(K)の画像データを生成する黒生成を行う。また、元のCMYの画像データから黒(K)の画像データを差し引いて新たなCMYの画像データを生成する。これにより、フルカラーモードが選択されている場合、図1に示すように、CMYの画像データは、黒生成/下色除去部33によってCMYKの4色の画像データに変換される。
【0069】
空間フィルタ部34は、黒生成/下色除去部33から出力されるCMYKまたはCMYの画像データに対して、領域分離信号(領域識別信号)に基づいて、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理(強調処理、平滑化処理等)を行う。すなわち、空間フィルタ部34では、領域分離信号に基づいて、画像領域毎に異なる画像処理が実行される。
【0070】
変倍部35は、操作パネルとしての入力装置18を介してユーザから入力される変倍コマンド(印刷画像の倍率を示した情報)に基づいて、画像の拡大や縮小処理を行う。
【0071】
出力階調補正部36は、変倍部35から出力された画像データに対して、用紙等のシートに出力するための出力γ補正処理を行う。中間調生成部37は、誤差拡散法やディザ法により、画像出力装置13において画像を印刷するために必要な階調再現処理(中間調生成処理)を行う。
【0072】
中間調生成部37から出力されるCMYKまたはCMYの画像データは、画像出力装置13に入力される。画像出力装置13は、当該画像データの画像を紙等のシート上に印刷する。
【0073】
(筋状ノイズ除去部の構成)
次に、筋状ノイズ除去部27の構成について説明する。図2は、図1に示した筋状ノイズ除去部27の構成を示すブロック図である。筋状ノイズ除去部27は、図2に示すように、筋検出部(筋除去処理部)51、マスク補正部(筋除去処理部)52および筋補間処理部(筋除去処理部)53を備えている。
【0074】
筋検出部51は、入力画像データにおける筋状ノイズの領域を検出し、検出結果(筋状ノイズの領域)をマスク画像データとしてマスク補正部52に出力する。マスク補正部52は、領域分離処理部25にて検出された文字領域の情報に基づいて、筋検出部51から出力されたマスク画像データを補正し、筋補間マスクを作成する。この筋補間マスクは、補間すべき筋画素である補間対象筋画素を示すものである。
【0075】
マスク補正部52は、筋補間マスクを作成する処理において、文字領域に近い筋の画素については補間処理が行われないように、文字領域に近い筋の画素を補間対象筋画素からから除去する。
【0076】
図3は、図2に示した筋検出部51の構成を示すブロック図である。図3に示すように、筋検出部51は、輝度算出部61、エッジ検出部62、ヒストグラム作成部63、筋画素判定部64およびマスク画像作成部65を備えている。これら各部の機能および動作については後述する。
【0077】
筋補間処理部53は、マスク補正部52にて補正されたマスク画像データを使用し、このマスク画像データにて指定された筋状ノイズの領域の画素に対して補間処理を行い、入力画像データから筋状ノイズを除去する。
【0078】
上記の構成において、本実施の形態の画像処理装置12における領域分離処理部25および筋状ノイズ除去部27の動作について、以下に説明する。
【0079】
(領域分離処理部の動作)
まず、領域分離処理部25の動作について説明する。領域分離処理部25は、入力画像データから少なくとも文字領域を抽出する。本実施の形態において、領域分離処理部25は、入力画像データの各画素を各画素が属する領域に分類する。この処理には、例えば特開2002−232708号公報に記載の手法を使用することができる。その手法を用いた場合、入力画像データの各画素は、「下地」、「印画紙写真」、「文字」あるいは「網点」の各領域に分類される。以下に、領域分離処理部25での領域分離処理の一例について説明する。図4は、領域分離処理部25での領域分離処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
図4に示すように、領域分離処理部25では、まず、注目画素を含むn×m(例えば、7×15)のブロックにおける最小濃度値および最大濃度値を算出する(S1,S2)。次に、算出した最小濃度値および最大濃度値を用いて最大濃度差を算出する(S3)。さらに、隣接する画素の濃度差における絶対値の総和である総和濃度繁雑度(例えば、主走査方向と副走査方向について算出した値の和)を算出する(S4)。
【0081】
次に、上記の最大濃度差を最大濃度差閾値と比較し、かつ上記の総和濃度繁雑度を総和濃度繁雑度閾値と比較する(S5)。なお、最大濃度差閾値および総和濃度繁雑度閾値は、上記の最大濃度差および総和濃度繁雑度に基づいて、注目画素が下地・印画紙写真領域に属する画素であるか文字・網点領域に属する画素であるかを判定するための閾値である。
【0082】
上記の比較の結果、最大濃度差<最大濃度差閾値、かつ総和濃度繁雑度<総和濃度繁雑度閾値であれば、注目画素は下地・印画紙写真領域に属する画素と判定する(S6)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は文字・網点領域に属する画素と判定する(S7)。
【0083】
次に、下地・印画紙写真領域に属すると判定された画素を注目画素とし、その注目画素についての最大濃度差を下地・印画紙写真判定閾値と比較する(S8)。なお、下地・印画紙写真判定閾値は、上記最大濃度差に基づいて、注目画素が下地画素であるか印画紙写真(写真領域、連続階調領域)画素であるかを判定するための閾値である。
【0084】
上記の比較の結果、最大濃度差<下地・印画紙写真判定閾値であれば、注目画素は下地画素であると判定する(S9)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は印画紙写真(写真領域、連続階調領域)の画素であると判定する(S10)。
【0085】
また、文字・網点領域に属すると判定された画素を注目画素とし、その注目画素についての総和濃度繁雑度を最大濃度差×文字・網点判定閾値と比較する(S11)。なお、最大濃度差×文字・網点判定閾値は、総和濃度繁雑度に基づいて、注目画素が文字画素であるか網点画素であるかを判定するための閾値である。
【0086】
上記の比較の結果、総和濃度繁雑度<最大濃度差×文字・網点判定閾値であれば、注目画素は文字画素であると判定する(S12)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は網点画素であると判定する(S13)。
【0087】
なお、最大濃度差閾値、総和濃度繁雑度閾値、下地・印画紙写真判定閾値、文字・網点判定閾値の各値は予め実験などで適切な値を決定したものである。また、上記の動作では、領域分離処理部25から得られる領域分離処理の結果(領域分離信号)のうち、文字領域の情報のみを使用している。しかしながら、その他の領域の情報は色補正部32や空間フィルタ部34など他の画像処理ブロックにおいて使用される。
【0088】
(筋検出部の動作)
次に筋検出部51の動作について説明する。筋検出部51は、筋状ノイズの位置を検出し、検出結果をマスク画像データとして出力する。マスク画像データは、例えば、筋画素を1、それ以外の画素を0で表したビットマップデータである。図3および図5〜図9を参照して、以下に筋検知処理の一例について説明する。なお、図5は、図3に示した筋検出部51の動作を示すフローチャートである。
【0089】
まず、輝度算出部61は、入力画像データのRGBデータを下記の式1により輝度信号に変換する(S31)。
【0090】
Yi=0.30Ri+0.59Gi+0.11Bi ……(式1)
Y:各画素の輝度信号
R,G,B:各画素の各色成分の値
添え字のi:画素毎に付与された値(iは1以上の整数)
上記の変換方法は一例であり、RGB信号をCIE1976L*a*b*信号(CIE:Commission International de l'Eclairage、L*:明度、a*,b*:色度)のL*信号に変換してもよく、あるいはG信号を用いてもよい。
【0091】
次に、エッジ検出部62は、輝度算出部61から出力された輝度信号から、エッジ情報を算出(エッジ画素を検出)する(S32)。
【0092】
エッジ画素の検出には公知の手法を用いることができる。一例として、図6(a)に示すソーベルフィルタ、あるいは図6(b)に示すラプラシアンフィルタを用いることができる。図6(a)は、図3に示したエッジ検出部62にて使用されるソーベルフィルタを示す説明図、図6(b)は、図3に示したエッジ検出部62にて使用されるラプラシアンフィルタを示す説明図である。
【0093】
図6(a)および図6(b)に示したのは、1次元のフィルタ処理により主に主走査方向に直交したエッジ(エッジ画素)を検出するエッジ検出部62の例である。エッジ検出部62の他の例としては、2次元のフィルタ処理を用いて全方位のエッジ成分を検出するものがある。
【0094】
また、図6(a)および図6(b)では、注目画素に隣接した画素のみを対象とした1画素×3画素のマスクによるエッジ検出の例を示している。しかしながら、マスクによるエッジ検出は、1画素×7画素などより大きなマスクサイズを用いるものであってもよい。
【0095】
次に、ヒストグラム作成部63は、図7に示すように、エッジ検出部62にて算出されたエッジ情報が示す値を主走査方向の画素毎に、副走査方向に順次累積加算してヒストグラムを作成する(S33)。図7は、エッジ検出部62にて算出されたエッジ情報に基づいてエッジ情報ヒストグラム作成部63が作成するヒストグラムの一例を示す説明図である。
【0096】
ここで、エッジ検出部62にて算出された値は正負の符号付きの値である。すなわち、上記符号は、主走査方向に向かって立ち上がるエッジの場合が正、立ち下がるエッジの場合が負である。したがって、ヒストグラム作成部63では、図7に示すように、エッジ検出部62にて算出された値を符号別に累積加算する。
【0097】
次に、筋画素判定部64は、ヒストグラム作成部63にて作成されたヒストグラムから、筋状ノイズの画素、すなわち筋画素を決定する(S34〜S36)。
【0098】
この処理では、まず、図7に示したヒストグラムの各クラスの値をHiとしたときに、|Hi|を筋画素判定閾値と比較し(S34)、|Hi|>筋画素判定閾値、の条件を満たすクラスを筋画素と判定する(S35)。ここで、筋画素判定閾値としては、予め実験などで筋が検出される適切な値を求めて、設定しておく。
【0099】
次に、筋画素判定部64は、図8(a)または図8(b)に示す処理により、S35にて筋画素と判定された画素の間の画素を筋画素と見なし、筋画素に置き換える(S36)。
【0100】
ここでは、エッジ検出部62においてソーベルフィルタを用いた場合に図8(a)に示す処理を行う。また、エッジ検出部62においてラプラシアンフィルタを用いた場合に図8(b)に示す処理を行う。図8(a)はソーベルフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。図8(b)は、ラプラシアンフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。
【0101】
図8(a)の処理では、図7に示したヒストグラムの各クラスを左から右に(主走査方向に)走査(確認)していき、最初の筋画素と最初の筋画素とは符号が異なる次の筋画素との間の画素を筋画素に置き換える。すなわち、上記両画素の間の画素を筋画素とする。なお、S35の処理において筋画素と判定されている画素につてはそのままとし、変更しない。
【0102】
次に、筋画素に置き換えた画素に対して連続する筋画素はスキップして次の筋画素を探す。次の筋画素が見つかれば、上記と同様の処理により、筋画素への置換を行う。このようにして、全ての筋画素に対して以上の処理を繰り返す。
【0103】
一方、図8(b)の処理では、図7に示したヒストグラムの各クラスを左から右に(主走査方向に)走査(確認)していき、最初に符号が変化した筋画素から次に符号が変化した筋画素までの間の画素を筋画素に置き換える(上記両画素の間の画素を筋画素とする)。
【0104】
筋画素に置き換えた画素に対して連続する筋画素はスキップして次の筋画素を探す。この処理により符号が変化した次の筋画素が見つかれば、上記と同様の処理により、筋画素への置換を行う。このようにして、全ての筋画素に対して以上の処理を繰り返す。
【0105】
マスク画像作成部65は、入力画像データと同じサイズのマスク画像データを作成する(S37〜S38)。
【0106】
マスク画像作成部65は、マスク画像データの作成において、まず入力画像データと同じサイズであって、全ての画素の画素値が非筋画素の画素値となっているマスク画像作成用画像データを作成する(S37)。このマスク画像作成用画像データでは、例えば筋画素を1(筋画素を示す画素値)とし、それ以外の画素を0(非筋画素を示す画素値)として表現される。
【0107】
次に、マスク画像作成部65は、マスク画像作成用画像データにおいて、図9に示すように、筋画素判定部64により筋画素と判定された画素の画素値を筋画素を示す画素値(例えば1)に置き換え、マスク画像データを作成する(S38)。図9は、マスク画像作成部65によって作成されたマスク画像データを示す説明図である。
【0108】
(マスク補正部の動作)
マスク補正部52は、筋検出部51のマスク画像作成部65にて作成されたマスク画像データを領域分離処理部25にて作成された文字領域信号に基づいて補正し、最終的な筋補間マスクを作成する。この筋補間マスクは、入力画像データに含まれる筋状ノイズを除する場合において、補間すべき筋画素(補間対象筋画素)を示すものである。
【0109】
具体的には、図10(a)に示すように、文字領域信号が示す文字領域画素から所定の距離内(第1の範囲内)に存在する筋画素(例えば画素値1)を、図10(b)に示すように、筋画素ではないその他の画素(例えば画素値0)に置き換えるようにした筋補間マスクを作成する。上記所定の距離内(第1の範囲内)は、例えば文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする11画素×11画素の範囲内である。なお、図10(a)は図3に示したマスク画像作成部65にて作成されたマスク画像データの一例を示す説明図である。図10(b)は図10(a)に示したマスク画像データから作成された筋補間マスクの一例を示す説明図である。
【0110】
図10(a)、図10(b)の例では、文字領域を中心とした11画素×11画素の範囲内の筋画素(画素値1)を筋画素ではないその他の画素(画素値0)に置き換えている。筋画素をその他画素に置き換える範囲は、事前に多くの画像サンプルを用いて文字を良好に再現できる範囲を上記範囲として設定すればよい。
【0111】
(筋補間処理部の動作)
筋補間処理部53は、マスク補正部52にて作成された筋補間マスクに基づいて、筋画素を補間する。すなわち、筋補間マスクは、上記のように、入力画像データに含まれる筋状ノイズを除去する場合において補間すべき筋画素(補間対象筋画素)を示しており、筋補間処理部53は、筋補間マスクによって示される補間すべき筋画素の画素値を筋状ノイズが除去されるように変更する。補間処理においては、例えば類似度に基づいて入力画像データ内から最適な画素を選択し、選択した画素に補間対象の画素を置き換える。筋補間処理部53の構成としては、例えば特許文献2に開示されている技術を利用することができる。
【0112】
以下に、筋補間処理部53の動作を図11および図12に基づいて具体的に説明する。なお、図11は筋補間処理部53の動作を示す説明図であり、図12は筋補間処理部53の動作を示すフローチャートである。
【0113】
筋補間処理部53は、例えば図11に示すように、入力画像データ(処理対象画像)において、補間対象の筋画素を中心とした15画素×15画素の範囲を類似度計算マスクとして設定する(S51)。
【0114】
次に、類似度計算マスクと同サイズの画素範囲をテンプレートとして、入力画像データ(処理対象画像)の全画素を対象に走査し、入力画像データにおけるテンプレート内の画素と類似度計算マスク内の画素とのマッチング処理を行う(S52)。
【0115】
具体的には、マッチング対象の画素(補間対象筋画素)を中心とした15画素×15画素の類似度計算マスク内の各画素と、それら各画素の位置に対応するテンプレート内の画素との画素値について差分を計算する。次に、テンプレート内全体での差分の絶対値を合計する。得られた合計値をそのテンプレート位置の画素範囲についてのマッチング対象の筋画素に対する類似度とする。類似度は、上記合計値が小さいほど高いものとなる。
【0116】
類似度の算出において、テンプレート内に筋画素が含まれる場合は、差分を計算しない。また、画像境界においてテンプレートの範囲が画像の外に出る場合にはマッチングを行わない(差分の計算をしない)。なお、画像の外の領域の画素値については、境界領域の画像の画素値に置き換えるようにしてもよい。
【0117】
次に、入力画像データの類似度が最も高いテンプレート位置における、補間対象筋画素の位置に対応する位置の画素の画素値を類似度計算マスクの補間対象筋画素の画素値として選択する。その後、類似度計算マスクの補間対象筋画素の画素値を選択した画素値に置換する(S53)。
【0118】
次に、S51〜S53の処理が全ての補間対象筋画素に対して行われた否かを判定し(S54)、全ての補間対象筋画素に対して処理が完了していれば、処理を終了する。一方、全ての補間対象筋画素に対して処理が完了していなければ、S51に戻って、S51〜S54の処理を繰り返す。
【0119】
筋補間処理部53についての上記処理は一例であり、筋補間処理部53の処理は上記処理に限定されない。すなわち、入力画像データ(処理対象画像)内から補間対象筋画素に最適な画素を選択して置き換える補間方式であれば、筋補間処理部53での処理方式として使用することができる。
【0120】
なお、筋補間処理部53は、補間対象筋画素の置換用画素(補間用画素)として選択された画素が筋画素であった場合には、補間対象筋画素の置換を行わないようにする。また、筋補間処理部53は、補間対象筋画素の置換用画素として選択された画素が文字領域の画素であった場合には、補間対象筋画素の置換を行わない(補間対象筋画素の置換を中止する)ようにしてもよい。
【0121】
また、筋補間処理部53は、補間対象筋画素に対する置換用画素の候補として複数の候補を類似度が高い順に第1の候補、第2の候補、……として適宜設定しておくようにしてもよい。この場合、筋補間処理部53は、筋画素でなくかつ文字領域でない画素であって、候補の順位が最も上の置換用画素を補間対象筋画素の置換に使用する。例えば、第1の候補の置換用画素が筋画素でなくかつ文字領域でない画素に該当せず、第2の候補の置換用画素が筋画素でなくかつ文字領域でない画素に該当する場合、第2の候補の置換用画素によって補間対象筋画素を置換する。
【0122】
このような構成では、補間対象筋画素に対する誤った補間による画質の劣化を回避することができる。すなわち、マスク補正部52にて作成される筋補間マスクは、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内(文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする所定の範囲内、例えば11画素×11画素の範囲内)に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素としている。したがって、補間対象筋画素の置換画素として文字領域の画素が選択されることは不適切であり、筋除去処理部の誤動作と考えられる。
【0123】
さらに、筋補間処理部53は、上記のように、補間対象筋画素に対する置換用画素の候補として複数の候補を類似度が高い順に第1の候補、第2の候補、……として適宜設定しておく場合において、次のような構成であってもよい。すなわち、筋補間処理部53は、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域の画素ではなく、かつ文字領域の画素からの距離が第2の範囲内(文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする予め定められた範囲内、例えば11画素×11画素の範囲内)に存在する画素ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択するものであってもよい。
【0124】
このような構成では、例えば、置換画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換画素として補間対象筋画素を置換することができる。また、文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素を置換画素から排除しているので、実際の文字領域の画素を置換画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われる事態を防止することができる。上記の例では、第1の範囲と第2の範囲を同じ値に設定しているが、上記範囲は、種々の画像サンプルを基に、文字部分での形状の歪の発生を抑制し、筋状のノイズを除去することが適切にできる範囲を設定すればよい。
【0125】
ここで、画像入力装置11として使用される両面原稿搬送読取装置(画像読取装置)について説明する。図13は、図1に示した画像入力装置11としての両面原稿搬送読取装置の構造を示す概略の縦断面図である。
【0126】
図13に示すように、両面原稿搬送読取装置200は、下部筐体201、上部筐体202および排紙トレイ203を備えている。両面原稿搬送読取装置200では、原稿を静止させて画像を読み取る静止読取モード、原稿を搬送しながら画像を読み取る走行読取モード、および原稿を搬送しながら原稿における両面の画像を読み取る両面読取モードにて原稿の画像読み取りを行えるようになっている。
【0127】
読取モードの選択は、画像形成装置が備える、ユーザが各種設定や指示入力を行うための入力装置18において行われ、選択された読取モードは、読取モード信号として伝達として伝達される。なお、原稿トレイ222に原稿がセットされた状態(原稿有無検知センサで原稿が検知された状態)で、コピーボタンが押された時は、走行読取モードによって原稿画像を読み取るように設定されている。また、両面読取モードで読み取る際は、入力装置18より両面読取モードの設定が行われる。
【0128】
両面原稿搬送読取装置200では、原稿台211に原稿が置かれると、下部筐体201内あるいは原稿台211の近傍に配置された原稿サイズセンサ(図示せず)によって原稿サイズが検知され、コピーボタンが押されると、静止読取モードにて原稿の読み取りを行う。
【0129】
両面原稿搬送読取装置200は、原稿画像の読み取りを、静止読取モードでは下部筐体201内の第1読取部(裏面用の読取光学系)210によって行う一方、走行読取モードでは上部筐体202内の第2読取部(表面用の読取光学系)223によって行うようになっている。また、両面読取モードでは、これら第1読取部210および第2読取部223の双方を同時に用いるようになっている。
【0130】
下部筐体201は、第1読取部210および原稿台211を備え、第1読取部210は、第1走査ユニット212、第2走査ユニット213、結像レンズ214、CCD215および読取ガラス216を備えている。
【0131】
原稿台211は、静止読取モードで読み取る原稿を載置するための原稿台である。第1走査ユニット212は、原稿台211に沿って左から右に一定速度Vで移動しながら原稿を露光する。このために、第1走査ユニット212は、光源ランプ250、および原稿の反射光を第2走査ユニット213に導く第1の反射ミラー251を有している。
【0132】
第2走査ユニット213は、第1走査ユニット212に追従してV/2の速度で移動するようになっており、第1反射ミラー251からの光を結像レンズ214およびCCD215に導く第2反射ミラー252および第3反射ミラー253を備えている。
【0133】
結像レンズ214は、第3反射ミラー253からの反射光を、CCD215上で結像させる。CCD215は、結像レンズ214からの光をアナログの電気信号に変換する。なお、この電気信号は、画像処理装置12によってデジタルの画像データに変換される。
【0134】
第1読取部210は、原稿台211上に載置された原稿画像の読み取り、および上部筐体202の部材によって搬送される原稿画像の読み取りを行う。
【0135】
第1走査ユニット212は、原稿台211上の原稿を読み取る際には、図13に示すPos1の位置からPos2の位置の方向に、原稿サイズ検出手段(図示せず)にて検出された原稿サイズに応じて、所定距離だけ移動する。一方、搬送されている原稿を読み取る際には、Pos3の位置に停止している。また、使用されていない待機中には、Pos1の位置とPos3の位置との中間のPos0(図示せず)の位置であるホームポジションに、停止している。
【0136】
第2読取部223は、原稿トレイ222に載置された原稿の画像を読み取るものであり、原稿搬送部231、イメージセンサ部232、原稿搬送路233および原稿排出部234を備えている。
【0137】
原稿搬送部231は、原稿トレイ222に載置された原稿を取り込み、原稿搬送路233上を搬送させるものである。イメージセンサ部232は、搬送されている原稿の画像を読み取るものである。原稿排出部234は、イメージセンサ部232によって画像を読み取られた後の原稿を、排紙トレイ203に排出するものである。
【0138】
原稿搬送部231は、給送補助ローラ261、原稿有無検知センサ262、原稿抑え板263、摩擦パッド264、給送タイミングセンサ265、給送ローラ266および整合ローラ対267を備えている。
【0139】
給送補助ローラ261および原稿抑え板263は、原稿有無検知センサ262に検知された原稿を、第2読取部223内部に引き入れるものである。摩擦パッド264、給送ローラ266および整合ローラ対267は、給送タイミングセンサ265の検知結果に基づいて、引き込まれた原稿を1枚毎にイメージセンサ部232に導くものである。
【0140】
なお、整合ローラ対267は、その駆動軸に電磁クラッチ(図示せず)を備え、駆動モータ(図示せず)からの駆動力の伝達を制御できるようになっており、原稿のない状態では停止している。そして、原稿の先端が給送タイミングセンサ265に接触し、このセンサから所定の信号が伝達されたときに、原稿を下流側に搬送する方向に回動するように設定されている。
【0141】
整合ローラ対267は、停止した状態で、摩擦パッド264および給送ローラ266により上流側より搬送されてきた原稿の先端が、整合ローラ対267のニップ部に付き当たり、原稿に所定の撓みを形成した後に、下流側に原稿を搬送するように回動する。この際に、整合ローラ対267のニップ部により、原稿の先端が搬送方向に直角となるように整合される。さらに、整合ローラ対267は、読取ガラス216との間で、原稿搬送路33の一部を形成している。
【0142】
原稿排出部234は、原稿排出ローラ対269および原稿排出センサ259を備えている。原稿排出ローラ対269の上側ローラは、駆動側のローラであり、上部筐体202の左側部に一体的に設けられて、上部筐体202中の駆動機構により駆動される。原稿排出ローラ対269の上側ローラは、下部筐体201側に回転自在に設けられた原稿排出ローラ対269の下側ローラ(従動ローラ)とで、原稿搬送路233を通った原稿を挟持搬送して、排紙トレイ203上に排出する。
【0143】
また、原稿排出センサ259は、原稿排出ローラ対269の下流側に配置されており、原稿の排出を、後述する読取制御部に伝達するものである。
【0144】
イメージセンサ部(CIS:Contact Image Sensor)232は、上部筐体202に設けられており、原稿搬送路233を走行する原稿における上側の画像を読み取る。なお、開放扉224は、イメージセンサ部232の上方の空間を開放可能となっている。
【0145】
次に、上記構成の両面原稿搬送読取装置200の動作について説明する。
両面原稿搬送読取装置200は、静止読取モードでは、片面モードだけが選択可能となり、第1読取部210だけが原稿の読み取りに用いられる。このとき、第1読取部210の第1走査ユニット212は、まずホームポジション(図13中のPos3とPos1との間にあるPos0(図示せず))に配置される。そして、読取制御部の指示に応じて、Pos1の位置から原稿台211上に載置された原稿を走査しながら、第2走査ユニット213とともにPos2側に移動する。これにより、CCD215に、原稿画像に応じた反射光を受光させることが可能となる。このように、第1読取部210は、静止した原稿の下側の面(表面)に形成されている画像を読み取ることとなる。
【0146】
走行読取モードでは、ユーザにより片面読取モードと両面読取モードの両方が選択可能となる。走行読取モードの片面読取モードでは、原稿の片面のみから読取画像を得る場合、第1読取部210だけを原稿の読み取りに用いればよい。この場合、第1読取部210の第1走査ユニット12は、ホームポジションPos0の位置からPos3の位置に移動して停止し、そのまま停止状態を保持して、走行する原稿の読み取りを行う。そして、読取制御部の指示に応じて、CCD215が、読取ガラス216を介して、原稿搬送路233を搬送される原稿の画像を下側から読み取る。すなわち、第1読取部210は、原稿の下側の面(表面)に形成されている画像を読み取ることとなる。
【0147】
走行読取モードの両面読取モードでは、第1読取部210およびイメージセンサ部232の双方が原稿の読み取りに用いられる。このとき、第1読取部210の第1走査ユニット212は、走行読取モードの片面読取モード時と同様に、Pos3の位置に停止される。
【0148】
そして、読取制御部の指示に応じて、第1読取部210が、読取ガラス216を介して、原稿搬送路233を搬送される原稿の画像を下側から読み取る。また、同様に、イメージセンサ部232が、搬送される原稿の上側の面(裏面)に形成されている画像を上側から読み取る。
【0149】
このように、両面原稿搬送読取装置200における両面読取モードでは、第1読取部210および第2読取部223が、搬送原稿の表裏両面の画像を、上下方向から一度に読み取ることとなる。
【0150】
以上のように、本実施の形態の構成によれば、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。
【0151】
(プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体に関する説明)
図1に示した画像処理装置12の各ブロック、特に領域分離処理部25および筋状ノイズ除去部27は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0152】
すなわち、画像処理装置12は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像処理装置12の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像処理装置12に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0153】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0154】
また、画像処理装置12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0155】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、本発明は、画像読取装置、デジタル複写機およびデジタル複合機などに利用することができる。
【符号の説明】
【0157】
11 画像入力装置(画像読取装置)
12 画像処理装置
13 画像出力装置(印刷装置)
17 制御部
25 領域分離処理部
27 筋状ノイズ除去部
51 筋検出部(筋除去処理部)
52 マスク補正部(筋除去処理部)
53 筋補間処理部(筋除去処理部)
61 輝度算出部
62 エッジ検出部
63 ヒストグラム作成部
64 筋画素判定部
65 マスク画像作成部(筋除去処理部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに生じた筋状のノイズの除去処理を行う画像処理方法、画像処理装置およびそれを備えた画像形成装置、画像読取装置、プログラム並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置としての例えば複写機や複合機は、通常、スキャナ機能を備え、このスキャナ機能により原稿画像を読み取り、読み取った画像データに基づいて印刷を行ったり、読み取った画像データを他の装置に送信したりしている。一方、スキャナ機能による原稿画像の読み取りには、利便性の点から原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)が多用されている。
【0003】
ここで、原稿自動送り装置を使用して原稿画像を読み取った場合には、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、読取画像データにおいて、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。このような筋状のノイズは、視覚的に目立つため、原稿に忠実な画像データを得るためには除去することが望まれる。
【0004】
筋状のノイズを除去する手法として、特許文献1には、画像データにおける筋状のノイズを有する画素を、その画素の周辺画素に基づいて線形補間により算出した画素値に置き換える技術が開示されている。具体的には、入力された画像データからノイズ領域を検出し、検出したノイズ領域の隣接画素の画素値に基づいて、ノイズ領域内の画素の補正用画素値を線形補間によって算出し、算出した補正用画素値にてノイズ領域内の画素の画素値を置き換えている。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、筋状のノイズが網点などのテクスチャーと重なっていた場合に、図14に示すように、補間した部分において周辺のテクスチャーとギャップを生じて、ノイズを除去することができないという問題点を有している。図14は、上記特許文献1に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【0006】
一方、このような問題点を解決するための手法として、特許文献2に記載の技術が提案されている。すなわち、特許文献2に記載の技術は、画素の補間に関し、ノイズ部分の画素をテクスチャーが再現可能な方法により補間するものであり、補間する領域の周辺の画素を類似度の高い領域の画素にて置き換える構成となっている。このような補間を行う構成では、前述のような網点部分であっても、図15に示すように、周辺のテクスチャーと違和感無く筋状のノイズを除去することができる。図15は、上記特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理を示す説明図である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−198838号公報(2001年12月26日公開)
【特許文献2】特開2006−332785号公報(2006年12月07日公開)
【特許文献3】特開2002−232708号公報(2002年08月16日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の構成は、類似度に基づいて補間領域の画素に最も適切と思われる画素を選択して補間しているだけであるから、画像の本来のエッジ形状を再現することができない。このため、エッジの形状に意味がある、例えば文字のような画像では、図16に示すように、エッジの形状が歪んでいることを容易に認識できてしまうといった新たな問題点を生じることになる。図16は、上記特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【0009】
したがって、本発明は、筋状のノイズの除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる画像処理方法、画像処理装置およびそれを備えた画像形成装置、画像読取装置、プログラム並びに記録媒体の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の画像処理装置は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出部と、前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理部と、前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理部とを備えていることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の画像処理方法は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出工程と、前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理工程と、前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理工程とを備えていることを特徴としている。
【0012】
例えば原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データには、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。
【0013】
このような読取画像データからなる入力画像データに対して、上記の構成によれば、筋検出部は(筋検出工程では)、入力画像データに含まれる筋画素を検出する。領域分離処理部は(領域分離処理工程では)、入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する。筋除去処理部は(筋除去処理工程では)、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0014】
これにより、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。また、文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素を補間対象筋画素から排除しているので、筋画素が文字領域の画素に置き換えられる事態を防止することができる。
【0015】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成するマスク画像作成部と、前記マスク画像データにおいて、前記筋画素のうちの前記補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成するマスク補正部と、前記入力画像データにおける、前記筋補間マスクが示す前記補間対象筋画素を、前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋補間処理部とを備えている構成としてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、筋除去処理部のマスク画像作成部は、入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成する。マスク補正部は、マスク画像データにおいて、筋画素のうちの補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成する。筋補間処理部は、入力画像データにおける、筋補間マスクが示す補間対象筋画素を、入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0017】
これにより、筋除去処理部は、筋補間マスクを使用して、入力画像データにおける、筋補間マスクが示す補間対象筋画素を、入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える処理を容易に行うことができる。
【0018】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記補間対象筋画素を中心とした前記補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定し、前記第1のブロックをテンプレートとして前記入力画像データを走査し、各テンプレートの位置において前記第1のブロック内の画素と前記テンプレート内の画素との類似度を求め、前記類似度が最も高い位置における前記テンプレート内の画素を置換用画素として選択し、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える構成としてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、補間対象筋画素を中心とした補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定する。次に、第1のブロックをテンプレートとして入力画像データを走査する。次に、各テンプレートの位置において第1のブロック内の画素とテンプレート内の画素との類似度を求め、類似度が最も高い位置におけるテンプレート内の画素を置換用画素として選択する。そして、置換用画素を補間対象筋画素と置き換える。
【0020】
これにより、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。
【0021】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記置換用画素が前記文字領域の画素である場合に、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える処理を中止する構成としてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、選択された置換用画素が文字領域の画素である場合に、置換用画素を補間対象筋画素と置き換える処理を中止する。
【0023】
これにより、補間対象筋画素に対する誤った補間による画質の劣化を回避することができる。すなわち、筋除去処理部は、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素としている。したがって、補間対象筋画素の置換用画素として文字領域の画素が選択されることは不適切であり、筋除去処理部の誤動作を抑制することができる。
【0024】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択する構成としてもよい。
【0025】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、類似度が高い順序にて置換用画素の候補画素として複数の画素を設定する。さらに、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択する。
【0026】
これにより、例えば、置換用画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換用画素として補間対象筋画素を置換することができる。したがって、置換用画素による補間対象筋画素の置換処理(補間処理)を確実に行うことができる。また、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。
【0027】
上記の画像処理装置において、前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択する構成としてもよい。
【0028】
上記の構成によれば、筋除去処理部は、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域の画素ではなく、かつ文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択する。
【0029】
これにより、例えば、置換用画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換用画素として補間対象筋画素を置換することができる。また、文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素を置換用画素から排除しているので、実際の文字領域の画素を置換用画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われる事態を防止することができる(筋画素が文字領域の画素に置き換えられ、文字部分において形状の歪が発生するのを防止することができる)。
【0030】
すなわち、領域分離処理部にて文字領域として文字エッジを検出する場合、文字内部の画素は、文字として検出されない。したがって、領域分離処理部にて判別された文字領域の画素からの距離が第2の範囲内(文字のエッジからの文字が存在する範囲内、例えば10画素×10画素の範囲内)に存在する画素を置換用画素から排除しておけば、文字領域の画素を置換用画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われることはない。
【0031】
これにより、置換用画素による補間対象筋画素の置換処理を確実に行うことができる。また、網点などのパターン部分に対しても、周辺のテクスチャーと違和感無く、適切に筋状のノイズを除去することができる。さらに、文字部分の画質の劣化を防止することができる。
【0032】
本発明の画像読取装置は、原稿を搬送しながら読み取って画像データを取得する原稿搬送読取装置と、前記原稿搬送読取装置が取得した画像データを前記入力画像データとする上記いずれかの画像処理装置とを備えていることを特徴としている。
【0033】
上記の構成によれば、原稿搬送読取装置にて原稿を搬送しながら取得された原稿の画像データに基づいて、画像処理装置は筋除去処理を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
例えば原稿自動送り装置により搬送される原稿の画像を読み取って得られた読取画像データには、原稿読み取りの光路上のガラス面に埃や紙粉が付着していると、副走査方向に平行な筋状のノイズ(筋画像)が発生する。
【0035】
このような読取画像データからなる入力画像データに対して、本発明の構成によれば、筋検出部は、入力画像データに含まれる筋画素を検出する。領域分離処理部は、入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する。筋除去処理部は、筋画素のうち、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、補間対象筋画素を入力画像データに含まれる、筋画素ではないその他の画素に置き換える。
【0036】
これにより、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示した筋状ノイズ除去部の構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示した筋検出部の構成を示すブロック図である。
【図4】図1に示した領域分離処理部での領域分離処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】図3に示した筋検出部の動作を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、図3に示したエッジ検出部にて使用されるソーベルフィルタを示す説明図、図6(b)は、同エッジ検出部にて使用されるラプラシアンフィルタを示す説明図である。
【図7】図3に示したエッジ検出部およびエッジ情報ヒストグラム作成部に関し、エッジ検出部にて算出されたエッジ情報に基づいてエッジ情報ヒストグラム作成部が作成するヒストグラムの一例を示す説明図である。
【図8】図8(a)は、図3に示した筋画素判定部におけるソーベルフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図、図8(b)は、同筋画素判定部におけるラプラシアンフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。
【図9】図3に示したマスク画像作成部によって作成されたマスク画像データを示す説明図である。
【図10】図10(a)は図3に示したマスク画像作成部にて作成されたマスク画像データの一例を示す説明図、図10(b)は図10(a)に示したマスク画像データから作成された筋補間マスクの一例を示す説明図である。
【図11】図2に示した筋補間処理部の動作を示す説明図である。
【図12】図2に示した筋補間処理部の動作を示すフローチャートである。
【図13】図1に示した画像入力装置としての両面原稿搬送読取装置の構造を示す概略の縦断面図である。
【図14】特許文献1に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【図15】特許文献2に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理を示す説明図である。
【図16】特許文献3に開示されている従来の筋状ノイズの除去処理の問題点を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施の形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0039】
(画像形成装置)
図1は、本発明の実施の形態の画像処理装置を備えた画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【0040】
本実施形態の画像形成装置は、コピーモード、プリントモード、ファクシミリ送信モード、ファクシミリ受信モードおよびイメージ送信モードによる動作が可能なデジタルカラー複合機である。画像形成装置では、こられモードの中からいずれかのモードが例えばユーザにより選択されると、選択されたモードを実行するようになっている。
【0041】
コピーモード(複写モード)は、画像データを読み込み、すなわち原稿を読み取って画像データを生成し、その画像データの画像を用紙に印刷するモードである。プリントモードは、画像形成装置に接続されている端末装置から送られてくる画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0042】
ファクシミリ送信モードは、(1)原稿を読み取って得られる画像データを電話回線によって外部装置に送信する通常のファクシミリモード、および(2)前記画像データをメールに添付してインターネットによって送信するインターネットファクシミリモードを含む。ファクシミリ受信モードは、外部装置から画像データをファクシミリにて受信し、受信した画像データの画像を用紙に印刷するモードである。
【0043】
イメージ送信モードは、(1)原稿を読み取って生成した画像データを電子メールに添付して指定されたアドレスへ送信するモード(scan to e-mailモード)、(2)原稿を読み取って生成した画像データをユーザにより指定されたフォルダに送信するモード(scan to ftpモード)、および(3)原稿を読み取って生成した画像データを画像形成装置に装着されたUSBメモリなどに送信するモード(scan to usbモード)を含む。
【0044】
なお、本実施形態においては、画像処理の動作上から、ファクシミリ送信モードとイメージ送信モードとを上記のように分類している。
【0045】
また、コピーモードあるいはプリントモードが選択されている場合、ユーザは、モノクロ画像を出力するモノクロモード、またはフルカラーの画像を出力するフルカラーモードのいずれかを選択できるようになっている。
【0046】
また、本実施の形態では、原稿カラー自動判別モードを設定することが可能である。このモードが設定されている場合、画像形成装置は、原稿がカラー原稿かモノクロ原稿であるかを判別するカラー/モノクロ原稿判定処理を行う。さらに、原稿がカラー原稿と判定された場合には上記のフルカラーモードにて出力処理を行い、原稿がモノクロ原稿と判定された場合には上記のモノクロモードにて出力処理を行うようになっている。
【0047】
画像形成装置は、図1に示すように、画像入力装置(画像読取装置)11、画像処理装置12、画像出力装置(印刷装置)13、受信装置14、送信装置15、記憶装置16、制御部17および入力装置18を有している。
【0048】
画像入力装置11は、原稿自動送り装置(ADF:Auto Document Feeder)としての機能を有し、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、原稿を読み取り、読取画像データを生成する。すなわち、画像入力装置11は、CCD(Charge Coupled Device)を備えたスキャナ部を有し、ADF機能によって原稿を読み取り位置に搬送し、原稿から反射してきた光を、RGBに色分解された電気信号(アナログの画像信号)に変換し、この電気信号を画像処理装置12に入力するものである。
【0049】
なお、画像入力装置11は、上記のフルカラーモードおよびモノクロモードのいずれのモードが選択されている場合であっても、フルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。また、画像入力装置11は、画像処理装置12において前述した原稿カラー自動判別処理が行われる場合であってもフルカラーにて原稿画像の読み取りを行う。
【0050】
画像処理装置12は、画像データ(画像信号)に対して画像処理を施す集積回路であり、例えばASIC(Application specific integrated circuit)にて構成されている。この画像処理装置12は、図1に示すように、A/D(アナログ/デジタル)変換部21、シェーディング補正部22、入力処理部23、カラー/モノクロ原稿判定部24、領域分離処理部25、領域分離信号圧縮部26、筋状ノイズ除去部27、圧縮部28、復号部29、領域分離信号復号部30、画質調整部31、色補正部32、黒生成/下色除去部33、空間フィルタ部34、変倍部35、出力階調補正部36および中間調生成部37の各ブロックを有している。画像処理装置12に含まれる各ブロックの処理内容については後に詳述する。
【0051】
なお、画像処理装置12は、コピーモード、ファクシミリ送信モードおよびイメージ送信モードにおいて、画像入力装置11から送られてきた画像データに対して画像処理を行う。また、プリントモードにおいて、画像処理装置12と接続された端末装置(図示せず)から送信されてきた画像データに対して画像処理を行う。また、ファクシミリ受信モードにおいて、外部装置(図示せず)から受信した画像データに対して画像処理を行う。
【0052】
さらに、画像処理装置12は、コピーモード、プリントモードおよびファクシミリ受信モードにおいて、画像処理を施した画像データを画像出力装置13に送信する。また、ファクシミリ送信モードにおいて、画像処理を施した画像データを送信装置15に送信する。また、イメージ送信モードのscan to e-mailモードにおいて、画像処理を施した画像データをメール処理部(図示せず)に送信する。また、scan to ftpモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のフォルダに送信する。また、scan to usbモードにおいて、画像処理を施した画像データを所定のUSBメモリに送信する。
【0053】
画像出力装置13は、画像処理装置12から送られてきた画像データの画像を紙等のシート上に印刷する(画像形成する)。したがって、画像出力装置13は、例えば、電子写真方式またはインクジェット方式を用いたカラープリンタである。なお、本実施の形態において、「印刷」とは、プリントモードでの印刷、コピーモードでの印刷あるいはファクシミリ受信モードでの印刷のいずれかを意味する。画像出力装置13は、画像データの画像を表示する表示装置であってもよい。
【0054】
受信装置14は、電話回線またはインターネットに接続しており、ファクシミリ通信によって外部装置から画像データを受信する。送信装置15は、電話回線またはインターネットに接続しており、画像入力装置11から入力された画像データをファクシミリ通信によって外部装置へ送信する。記憶装置16は、画像処理装置12にて扱われる画像データを一旦保存するものであり、例えばハードディスク装置である。
【0055】
制御部17は、CPU(Central Processing Unit)あるいはDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサを含むコンピュータであり、画像形成装置が備える各種ハードウェアを統括的に制御する。また、制御部17は、画像形成装置が備える各ハードウェア間のデータ転送を制御する機能も有する。
【0056】
入力装置18は、表示部として例えばタッチパネル式の液晶パネルを備え、画像処理装置12すなわち画像形成装置に対してユーザから各種入力を行うためのものである。通常は、操作パネルとして備えられている。
【0057】
画像処理装置12において、A/D(アナログ・デジタル)変換部21は、画像入力装置11から送られてきたカラー画像信号(RGBアナログ信号)をデジタルの画像データ(RGBデジタル信号)に変換する。シェーディング補正部22は、A/D変換部21から送られてきた画像データに対して、画像入力装置11の照明系、結像系および撮像系にて生じる各種の歪みを取り除く処理を施す。入力処理部23は、シェーディング補正部22から送られてくるRGBの画像データのそれぞれに対してγ補正処理などの階調変換処理を施す。
【0058】
カラー/モノクロ原稿判定部24は、入力処理部23から出力されたRGB信号を用いて、読取画像データがカラーの原稿のものであるか、モノクロ(白黒)の原稿のものであるかを判定する。なお、カラー/モノクロ原稿判定部24の代わりに、原稿が文字原稿、印刷写真原稿、印画紙写真原稿、文字と印刷写真とが混在する文字印刷写真原稿、あるいは文字と印画紙写真とが混在する文字印画紙写真原稿であるか等の原稿種別の判別を行う原稿種別判別部を設けてもよい。この場合、原稿種別判別部は、上記原稿種別とともに、読み取られた原稿がカラー原稿であるかモノクロ(白黒)原稿であるのかを判別する、自動カラー判別処理を行うようにしてもよい。さらに、原稿種別判別部は、無地の原稿であるか否かの判定を行うブランク原稿判別処理を行うようにしてもよい。
【0059】
領域分離処理部25は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくるRGBの画像データに基づき、入力画像データ(読取画像データ)の画素毎に、当該画素がどのような画像領域に分類されるのかを判別し、その判別結果を示す領域分離信号を生成する。ここで、領域分離処理部25において判別される画像領域は、黒文字領域、色文字領域および網点領域等である。
【0060】
領域分離信号圧縮部26は、領域分離処理25により画素毎に生成された領域分離信号に対して圧縮処理を施す。なお、領域分離信号圧縮部26における圧縮処理は、例えば、可逆圧縮方法であるMMR(Modified Modified Reed)方式あるいはMR(Modified Reed)方式に基づいて行われる。
【0061】
筋状ノイズ除去部27は、入力画像データの筋検知を行い、領域分離処理部25にて検出された文字領域の情報と筋検知結果とを用いて筋状ノイズを除去する。
【0062】
圧縮部28は、カラー/モノクロ原稿判定部24から送られてくる画像データ(RGB信号)を符号化する。なお、ここでの符号化は、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)方式に基づいて行われる。
【0063】
制御部17は、圧縮部28から出力された符号化コード(符号化された画像データ)と領域分離信号圧縮部26から出力された領域分離信号コード(圧縮された領域分離信号)とを一旦記憶装置16に保存し、ファイリングデータとして管理する。そして、制御部17は、コピー出力動作が指示された場合、記憶装置16から上記の符号化コードおよび当該符号化コードに対応する領域分離信号コードを読み出し、復号部28および領域分離信号復号部29にそれぞれ引き渡す。
【0064】
なお、制御部17は、上記符号化コードの保存アドレスまたはデータ名と、領域分離信号コードの保存アドレスとを対応付けて記憶装置16に設けられた管理テーブルに記入する。つまり、制御部17は、当該管理テーブルを用いて、符号化コードおよび領域分離信号コードの読み出しまたは書き込みの制御を行っている。
【0065】
復号部29は、上記符号化コードに対して復号化処理を施すことによって、上記符号化コードをRGBの画像データに伸張する。また、領域分離信号復号部29は、上記領域分離信号コードに対して復号化処理を施す。復号化した領域分離信号は、空間フィルタ部34および中間調生成部37に引き渡される。そして、空間フィルタ部34および中間調生成部37においては、画像領域の種類に応じて画像処理内容の切替えが行われる。
【0066】
画質調整部31は、復号部29から送られてくるRGBの画像データについて、下地の検出を行って下地除去補正を行う。さらに、画質調整部31は、ユーザによって例えば操作パネルである入力装置18から入力される設定情報に基づいて、RGBのバランス(カラー調整、赤み青みといった全体のカラー調整)、明るさおよび鮮やかさの調整を行う。
【0067】
色補正部32は、フルカラーモードが選択されている場合に、画質調整部31から出力されるRGBの画像データをCMYの画像データに変換する色補正処理を行う。また、当該画像データに対して色再現性を高める処理を施す。なお、上記の色補正処理は、入力値(RGB)と出力値(CMY)とを対応付けたLUT(ルックアップテーブル)を作成し、作成したLUTから出力値をルックアップすることによって実現される。
【0068】
黒生成/下色除去部33は、フルカラーモードが選択されている場合、色補正部32から出力されたCMYの画像データから黒(K)の画像データを生成する黒生成を行う。また、元のCMYの画像データから黒(K)の画像データを差し引いて新たなCMYの画像データを生成する。これにより、フルカラーモードが選択されている場合、図1に示すように、CMYの画像データは、黒生成/下色除去部33によってCMYKの4色の画像データに変換される。
【0069】
空間フィルタ部34は、黒生成/下色除去部33から出力されるCMYKまたはCMYの画像データに対して、領域分離信号(領域識別信号)に基づいて、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理(強調処理、平滑化処理等)を行う。すなわち、空間フィルタ部34では、領域分離信号に基づいて、画像領域毎に異なる画像処理が実行される。
【0070】
変倍部35は、操作パネルとしての入力装置18を介してユーザから入力される変倍コマンド(印刷画像の倍率を示した情報)に基づいて、画像の拡大や縮小処理を行う。
【0071】
出力階調補正部36は、変倍部35から出力された画像データに対して、用紙等のシートに出力するための出力γ補正処理を行う。中間調生成部37は、誤差拡散法やディザ法により、画像出力装置13において画像を印刷するために必要な階調再現処理(中間調生成処理)を行う。
【0072】
中間調生成部37から出力されるCMYKまたはCMYの画像データは、画像出力装置13に入力される。画像出力装置13は、当該画像データの画像を紙等のシート上に印刷する。
【0073】
(筋状ノイズ除去部の構成)
次に、筋状ノイズ除去部27の構成について説明する。図2は、図1に示した筋状ノイズ除去部27の構成を示すブロック図である。筋状ノイズ除去部27は、図2に示すように、筋検出部(筋除去処理部)51、マスク補正部(筋除去処理部)52および筋補間処理部(筋除去処理部)53を備えている。
【0074】
筋検出部51は、入力画像データにおける筋状ノイズの領域を検出し、検出結果(筋状ノイズの領域)をマスク画像データとしてマスク補正部52に出力する。マスク補正部52は、領域分離処理部25にて検出された文字領域の情報に基づいて、筋検出部51から出力されたマスク画像データを補正し、筋補間マスクを作成する。この筋補間マスクは、補間すべき筋画素である補間対象筋画素を示すものである。
【0075】
マスク補正部52は、筋補間マスクを作成する処理において、文字領域に近い筋の画素については補間処理が行われないように、文字領域に近い筋の画素を補間対象筋画素からから除去する。
【0076】
図3は、図2に示した筋検出部51の構成を示すブロック図である。図3に示すように、筋検出部51は、輝度算出部61、エッジ検出部62、ヒストグラム作成部63、筋画素判定部64およびマスク画像作成部65を備えている。これら各部の機能および動作については後述する。
【0077】
筋補間処理部53は、マスク補正部52にて補正されたマスク画像データを使用し、このマスク画像データにて指定された筋状ノイズの領域の画素に対して補間処理を行い、入力画像データから筋状ノイズを除去する。
【0078】
上記の構成において、本実施の形態の画像処理装置12における領域分離処理部25および筋状ノイズ除去部27の動作について、以下に説明する。
【0079】
(領域分離処理部の動作)
まず、領域分離処理部25の動作について説明する。領域分離処理部25は、入力画像データから少なくとも文字領域を抽出する。本実施の形態において、領域分離処理部25は、入力画像データの各画素を各画素が属する領域に分類する。この処理には、例えば特開2002−232708号公報に記載の手法を使用することができる。その手法を用いた場合、入力画像データの各画素は、「下地」、「印画紙写真」、「文字」あるいは「網点」の各領域に分類される。以下に、領域分離処理部25での領域分離処理の一例について説明する。図4は、領域分離処理部25での領域分離処理の一例を示すフローチャートである。
【0080】
図4に示すように、領域分離処理部25では、まず、注目画素を含むn×m(例えば、7×15)のブロックにおける最小濃度値および最大濃度値を算出する(S1,S2)。次に、算出した最小濃度値および最大濃度値を用いて最大濃度差を算出する(S3)。さらに、隣接する画素の濃度差における絶対値の総和である総和濃度繁雑度(例えば、主走査方向と副走査方向について算出した値の和)を算出する(S4)。
【0081】
次に、上記の最大濃度差を最大濃度差閾値と比較し、かつ上記の総和濃度繁雑度を総和濃度繁雑度閾値と比較する(S5)。なお、最大濃度差閾値および総和濃度繁雑度閾値は、上記の最大濃度差および総和濃度繁雑度に基づいて、注目画素が下地・印画紙写真領域に属する画素であるか文字・網点領域に属する画素であるかを判定するための閾値である。
【0082】
上記の比較の結果、最大濃度差<最大濃度差閾値、かつ総和濃度繁雑度<総和濃度繁雑度閾値であれば、注目画素は下地・印画紙写真領域に属する画素と判定する(S6)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は文字・網点領域に属する画素と判定する(S7)。
【0083】
次に、下地・印画紙写真領域に属すると判定された画素を注目画素とし、その注目画素についての最大濃度差を下地・印画紙写真判定閾値と比較する(S8)。なお、下地・印画紙写真判定閾値は、上記最大濃度差に基づいて、注目画素が下地画素であるか印画紙写真(写真領域、連続階調領域)画素であるかを判定するための閾値である。
【0084】
上記の比較の結果、最大濃度差<下地・印画紙写真判定閾値であれば、注目画素は下地画素であると判定する(S9)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は印画紙写真(写真領域、連続階調領域)の画素であると判定する(S10)。
【0085】
また、文字・網点領域に属すると判定された画素を注目画素とし、その注目画素についての総和濃度繁雑度を最大濃度差×文字・網点判定閾値と比較する(S11)。なお、最大濃度差×文字・網点判定閾値は、総和濃度繁雑度に基づいて、注目画素が文字画素であるか網点画素であるかを判定するための閾値である。
【0086】
上記の比較の結果、総和濃度繁雑度<最大濃度差×文字・網点判定閾値であれば、注目画素は文字画素であると判定する(S12)。一方、この条件を満たさない場合、注目画素は網点画素であると判定する(S13)。
【0087】
なお、最大濃度差閾値、総和濃度繁雑度閾値、下地・印画紙写真判定閾値、文字・網点判定閾値の各値は予め実験などで適切な値を決定したものである。また、上記の動作では、領域分離処理部25から得られる領域分離処理の結果(領域分離信号)のうち、文字領域の情報のみを使用している。しかしながら、その他の領域の情報は色補正部32や空間フィルタ部34など他の画像処理ブロックにおいて使用される。
【0088】
(筋検出部の動作)
次に筋検出部51の動作について説明する。筋検出部51は、筋状ノイズの位置を検出し、検出結果をマスク画像データとして出力する。マスク画像データは、例えば、筋画素を1、それ以外の画素を0で表したビットマップデータである。図3および図5〜図9を参照して、以下に筋検知処理の一例について説明する。なお、図5は、図3に示した筋検出部51の動作を示すフローチャートである。
【0089】
まず、輝度算出部61は、入力画像データのRGBデータを下記の式1により輝度信号に変換する(S31)。
【0090】
Yi=0.30Ri+0.59Gi+0.11Bi ……(式1)
Y:各画素の輝度信号
R,G,B:各画素の各色成分の値
添え字のi:画素毎に付与された値(iは1以上の整数)
上記の変換方法は一例であり、RGB信号をCIE1976L*a*b*信号(CIE:Commission International de l'Eclairage、L*:明度、a*,b*:色度)のL*信号に変換してもよく、あるいはG信号を用いてもよい。
【0091】
次に、エッジ検出部62は、輝度算出部61から出力された輝度信号から、エッジ情報を算出(エッジ画素を検出)する(S32)。
【0092】
エッジ画素の検出には公知の手法を用いることができる。一例として、図6(a)に示すソーベルフィルタ、あるいは図6(b)に示すラプラシアンフィルタを用いることができる。図6(a)は、図3に示したエッジ検出部62にて使用されるソーベルフィルタを示す説明図、図6(b)は、図3に示したエッジ検出部62にて使用されるラプラシアンフィルタを示す説明図である。
【0093】
図6(a)および図6(b)に示したのは、1次元のフィルタ処理により主に主走査方向に直交したエッジ(エッジ画素)を検出するエッジ検出部62の例である。エッジ検出部62の他の例としては、2次元のフィルタ処理を用いて全方位のエッジ成分を検出するものがある。
【0094】
また、図6(a)および図6(b)では、注目画素に隣接した画素のみを対象とした1画素×3画素のマスクによるエッジ検出の例を示している。しかしながら、マスクによるエッジ検出は、1画素×7画素などより大きなマスクサイズを用いるものであってもよい。
【0095】
次に、ヒストグラム作成部63は、図7に示すように、エッジ検出部62にて算出されたエッジ情報が示す値を主走査方向の画素毎に、副走査方向に順次累積加算してヒストグラムを作成する(S33)。図7は、エッジ検出部62にて算出されたエッジ情報に基づいてエッジ情報ヒストグラム作成部63が作成するヒストグラムの一例を示す説明図である。
【0096】
ここで、エッジ検出部62にて算出された値は正負の符号付きの値である。すなわち、上記符号は、主走査方向に向かって立ち上がるエッジの場合が正、立ち下がるエッジの場合が負である。したがって、ヒストグラム作成部63では、図7に示すように、エッジ検出部62にて算出された値を符号別に累積加算する。
【0097】
次に、筋画素判定部64は、ヒストグラム作成部63にて作成されたヒストグラムから、筋状ノイズの画素、すなわち筋画素を決定する(S34〜S36)。
【0098】
この処理では、まず、図7に示したヒストグラムの各クラスの値をHiとしたときに、|Hi|を筋画素判定閾値と比較し(S34)、|Hi|>筋画素判定閾値、の条件を満たすクラスを筋画素と判定する(S35)。ここで、筋画素判定閾値としては、予め実験などで筋が検出される適切な値を求めて、設定しておく。
【0099】
次に、筋画素判定部64は、図8(a)または図8(b)に示す処理により、S35にて筋画素と判定された画素の間の画素を筋画素と見なし、筋画素に置き換える(S36)。
【0100】
ここでは、エッジ検出部62においてソーベルフィルタを用いた場合に図8(a)に示す処理を行う。また、エッジ検出部62においてラプラシアンフィルタを用いた場合に図8(b)に示す処理を行う。図8(a)はソーベルフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。図8(b)は、ラプラシアンフィルタを用いた場合の筋画素の決定動作を示す説明図である。
【0101】
図8(a)の処理では、図7に示したヒストグラムの各クラスを左から右に(主走査方向に)走査(確認)していき、最初の筋画素と最初の筋画素とは符号が異なる次の筋画素との間の画素を筋画素に置き換える。すなわち、上記両画素の間の画素を筋画素とする。なお、S35の処理において筋画素と判定されている画素につてはそのままとし、変更しない。
【0102】
次に、筋画素に置き換えた画素に対して連続する筋画素はスキップして次の筋画素を探す。次の筋画素が見つかれば、上記と同様の処理により、筋画素への置換を行う。このようにして、全ての筋画素に対して以上の処理を繰り返す。
【0103】
一方、図8(b)の処理では、図7に示したヒストグラムの各クラスを左から右に(主走査方向に)走査(確認)していき、最初に符号が変化した筋画素から次に符号が変化した筋画素までの間の画素を筋画素に置き換える(上記両画素の間の画素を筋画素とする)。
【0104】
筋画素に置き換えた画素に対して連続する筋画素はスキップして次の筋画素を探す。この処理により符号が変化した次の筋画素が見つかれば、上記と同様の処理により、筋画素への置換を行う。このようにして、全ての筋画素に対して以上の処理を繰り返す。
【0105】
マスク画像作成部65は、入力画像データと同じサイズのマスク画像データを作成する(S37〜S38)。
【0106】
マスク画像作成部65は、マスク画像データの作成において、まず入力画像データと同じサイズであって、全ての画素の画素値が非筋画素の画素値となっているマスク画像作成用画像データを作成する(S37)。このマスク画像作成用画像データでは、例えば筋画素を1(筋画素を示す画素値)とし、それ以外の画素を0(非筋画素を示す画素値)として表現される。
【0107】
次に、マスク画像作成部65は、マスク画像作成用画像データにおいて、図9に示すように、筋画素判定部64により筋画素と判定された画素の画素値を筋画素を示す画素値(例えば1)に置き換え、マスク画像データを作成する(S38)。図9は、マスク画像作成部65によって作成されたマスク画像データを示す説明図である。
【0108】
(マスク補正部の動作)
マスク補正部52は、筋検出部51のマスク画像作成部65にて作成されたマスク画像データを領域分離処理部25にて作成された文字領域信号に基づいて補正し、最終的な筋補間マスクを作成する。この筋補間マスクは、入力画像データに含まれる筋状ノイズを除する場合において、補間すべき筋画素(補間対象筋画素)を示すものである。
【0109】
具体的には、図10(a)に示すように、文字領域信号が示す文字領域画素から所定の距離内(第1の範囲内)に存在する筋画素(例えば画素値1)を、図10(b)に示すように、筋画素ではないその他の画素(例えば画素値0)に置き換えるようにした筋補間マスクを作成する。上記所定の距離内(第1の範囲内)は、例えば文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする11画素×11画素の範囲内である。なお、図10(a)は図3に示したマスク画像作成部65にて作成されたマスク画像データの一例を示す説明図である。図10(b)は図10(a)に示したマスク画像データから作成された筋補間マスクの一例を示す説明図である。
【0110】
図10(a)、図10(b)の例では、文字領域を中心とした11画素×11画素の範囲内の筋画素(画素値1)を筋画素ではないその他の画素(画素値0)に置き換えている。筋画素をその他画素に置き換える範囲は、事前に多くの画像サンプルを用いて文字を良好に再現できる範囲を上記範囲として設定すればよい。
【0111】
(筋補間処理部の動作)
筋補間処理部53は、マスク補正部52にて作成された筋補間マスクに基づいて、筋画素を補間する。すなわち、筋補間マスクは、上記のように、入力画像データに含まれる筋状ノイズを除去する場合において補間すべき筋画素(補間対象筋画素)を示しており、筋補間処理部53は、筋補間マスクによって示される補間すべき筋画素の画素値を筋状ノイズが除去されるように変更する。補間処理においては、例えば類似度に基づいて入力画像データ内から最適な画素を選択し、選択した画素に補間対象の画素を置き換える。筋補間処理部53の構成としては、例えば特許文献2に開示されている技術を利用することができる。
【0112】
以下に、筋補間処理部53の動作を図11および図12に基づいて具体的に説明する。なお、図11は筋補間処理部53の動作を示す説明図であり、図12は筋補間処理部53の動作を示すフローチャートである。
【0113】
筋補間処理部53は、例えば図11に示すように、入力画像データ(処理対象画像)において、補間対象の筋画素を中心とした15画素×15画素の範囲を類似度計算マスクとして設定する(S51)。
【0114】
次に、類似度計算マスクと同サイズの画素範囲をテンプレートとして、入力画像データ(処理対象画像)の全画素を対象に走査し、入力画像データにおけるテンプレート内の画素と類似度計算マスク内の画素とのマッチング処理を行う(S52)。
【0115】
具体的には、マッチング対象の画素(補間対象筋画素)を中心とした15画素×15画素の類似度計算マスク内の各画素と、それら各画素の位置に対応するテンプレート内の画素との画素値について差分を計算する。次に、テンプレート内全体での差分の絶対値を合計する。得られた合計値をそのテンプレート位置の画素範囲についてのマッチング対象の筋画素に対する類似度とする。類似度は、上記合計値が小さいほど高いものとなる。
【0116】
類似度の算出において、テンプレート内に筋画素が含まれる場合は、差分を計算しない。また、画像境界においてテンプレートの範囲が画像の外に出る場合にはマッチングを行わない(差分の計算をしない)。なお、画像の外の領域の画素値については、境界領域の画像の画素値に置き換えるようにしてもよい。
【0117】
次に、入力画像データの類似度が最も高いテンプレート位置における、補間対象筋画素の位置に対応する位置の画素の画素値を類似度計算マスクの補間対象筋画素の画素値として選択する。その後、類似度計算マスクの補間対象筋画素の画素値を選択した画素値に置換する(S53)。
【0118】
次に、S51〜S53の処理が全ての補間対象筋画素に対して行われた否かを判定し(S54)、全ての補間対象筋画素に対して処理が完了していれば、処理を終了する。一方、全ての補間対象筋画素に対して処理が完了していなければ、S51に戻って、S51〜S54の処理を繰り返す。
【0119】
筋補間処理部53についての上記処理は一例であり、筋補間処理部53の処理は上記処理に限定されない。すなわち、入力画像データ(処理対象画像)内から補間対象筋画素に最適な画素を選択して置き換える補間方式であれば、筋補間処理部53での処理方式として使用することができる。
【0120】
なお、筋補間処理部53は、補間対象筋画素の置換用画素(補間用画素)として選択された画素が筋画素であった場合には、補間対象筋画素の置換を行わないようにする。また、筋補間処理部53は、補間対象筋画素の置換用画素として選択された画素が文字領域の画素であった場合には、補間対象筋画素の置換を行わない(補間対象筋画素の置換を中止する)ようにしてもよい。
【0121】
また、筋補間処理部53は、補間対象筋画素に対する置換用画素の候補として複数の候補を類似度が高い順に第1の候補、第2の候補、……として適宜設定しておくようにしてもよい。この場合、筋補間処理部53は、筋画素でなくかつ文字領域でない画素であって、候補の順位が最も上の置換用画素を補間対象筋画素の置換に使用する。例えば、第1の候補の置換用画素が筋画素でなくかつ文字領域でない画素に該当せず、第2の候補の置換用画素が筋画素でなくかつ文字領域でない画素に該当する場合、第2の候補の置換用画素によって補間対象筋画素を置換する。
【0122】
このような構成では、補間対象筋画素に対する誤った補間による画質の劣化を回避することができる。すなわち、マスク補正部52にて作成される筋補間マスクは、文字領域の画素と文字領域の画素からの距離が第1の範囲内(文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする所定の範囲内、例えば11画素×11画素の範囲内)に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素としている。したがって、補間対象筋画素の置換画素として文字領域の画素が選択されることは不適切であり、筋除去処理部の誤動作と考えられる。
【0123】
さらに、筋補間処理部53は、上記のように、補間対象筋画素に対する置換用画素の候補として複数の候補を類似度が高い順に第1の候補、第2の候補、……として適宜設定しておく場合において、次のような構成であってもよい。すなわち、筋補間処理部53は、置換用画素として、候補画素のうちから文字領域の画素ではなく、かつ文字領域の画素からの距離が第2の範囲内(文字のエッジを注目画素としたとき、注目画素を中心とする予め定められた範囲内、例えば11画素×11画素の範囲内)に存在する画素ではなく、かつ類似度が最も高い候補画素を選択するものであってもよい。
【0124】
このような構成では、例えば、置換画素の第1の候補画素が文字領域の画素であっても、文字領域ではない第2の候補画素を置換画素として補間対象筋画素を置換することができる。また、文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素を置換画素から排除しているので、実際の文字領域の画素を置換画素として補間対象筋画素の置換処理(補間処理)が行われる事態を防止することができる。上記の例では、第1の範囲と第2の範囲を同じ値に設定しているが、上記範囲は、種々の画像サンプルを基に、文字部分での形状の歪の発生を抑制し、筋状のノイズを除去することが適切にできる範囲を設定すればよい。
【0125】
ここで、画像入力装置11として使用される両面原稿搬送読取装置(画像読取装置)について説明する。図13は、図1に示した画像入力装置11としての両面原稿搬送読取装置の構造を示す概略の縦断面図である。
【0126】
図13に示すように、両面原稿搬送読取装置200は、下部筐体201、上部筐体202および排紙トレイ203を備えている。両面原稿搬送読取装置200では、原稿を静止させて画像を読み取る静止読取モード、原稿を搬送しながら画像を読み取る走行読取モード、および原稿を搬送しながら原稿における両面の画像を読み取る両面読取モードにて原稿の画像読み取りを行えるようになっている。
【0127】
読取モードの選択は、画像形成装置が備える、ユーザが各種設定や指示入力を行うための入力装置18において行われ、選択された読取モードは、読取モード信号として伝達として伝達される。なお、原稿トレイ222に原稿がセットされた状態(原稿有無検知センサで原稿が検知された状態)で、コピーボタンが押された時は、走行読取モードによって原稿画像を読み取るように設定されている。また、両面読取モードで読み取る際は、入力装置18より両面読取モードの設定が行われる。
【0128】
両面原稿搬送読取装置200では、原稿台211に原稿が置かれると、下部筐体201内あるいは原稿台211の近傍に配置された原稿サイズセンサ(図示せず)によって原稿サイズが検知され、コピーボタンが押されると、静止読取モードにて原稿の読み取りを行う。
【0129】
両面原稿搬送読取装置200は、原稿画像の読み取りを、静止読取モードでは下部筐体201内の第1読取部(裏面用の読取光学系)210によって行う一方、走行読取モードでは上部筐体202内の第2読取部(表面用の読取光学系)223によって行うようになっている。また、両面読取モードでは、これら第1読取部210および第2読取部223の双方を同時に用いるようになっている。
【0130】
下部筐体201は、第1読取部210および原稿台211を備え、第1読取部210は、第1走査ユニット212、第2走査ユニット213、結像レンズ214、CCD215および読取ガラス216を備えている。
【0131】
原稿台211は、静止読取モードで読み取る原稿を載置するための原稿台である。第1走査ユニット212は、原稿台211に沿って左から右に一定速度Vで移動しながら原稿を露光する。このために、第1走査ユニット212は、光源ランプ250、および原稿の反射光を第2走査ユニット213に導く第1の反射ミラー251を有している。
【0132】
第2走査ユニット213は、第1走査ユニット212に追従してV/2の速度で移動するようになっており、第1反射ミラー251からの光を結像レンズ214およびCCD215に導く第2反射ミラー252および第3反射ミラー253を備えている。
【0133】
結像レンズ214は、第3反射ミラー253からの反射光を、CCD215上で結像させる。CCD215は、結像レンズ214からの光をアナログの電気信号に変換する。なお、この電気信号は、画像処理装置12によってデジタルの画像データに変換される。
【0134】
第1読取部210は、原稿台211上に載置された原稿画像の読み取り、および上部筐体202の部材によって搬送される原稿画像の読み取りを行う。
【0135】
第1走査ユニット212は、原稿台211上の原稿を読み取る際には、図13に示すPos1の位置からPos2の位置の方向に、原稿サイズ検出手段(図示せず)にて検出された原稿サイズに応じて、所定距離だけ移動する。一方、搬送されている原稿を読み取る際には、Pos3の位置に停止している。また、使用されていない待機中には、Pos1の位置とPos3の位置との中間のPos0(図示せず)の位置であるホームポジションに、停止している。
【0136】
第2読取部223は、原稿トレイ222に載置された原稿の画像を読み取るものであり、原稿搬送部231、イメージセンサ部232、原稿搬送路233および原稿排出部234を備えている。
【0137】
原稿搬送部231は、原稿トレイ222に載置された原稿を取り込み、原稿搬送路233上を搬送させるものである。イメージセンサ部232は、搬送されている原稿の画像を読み取るものである。原稿排出部234は、イメージセンサ部232によって画像を読み取られた後の原稿を、排紙トレイ203に排出するものである。
【0138】
原稿搬送部231は、給送補助ローラ261、原稿有無検知センサ262、原稿抑え板263、摩擦パッド264、給送タイミングセンサ265、給送ローラ266および整合ローラ対267を備えている。
【0139】
給送補助ローラ261および原稿抑え板263は、原稿有無検知センサ262に検知された原稿を、第2読取部223内部に引き入れるものである。摩擦パッド264、給送ローラ266および整合ローラ対267は、給送タイミングセンサ265の検知結果に基づいて、引き込まれた原稿を1枚毎にイメージセンサ部232に導くものである。
【0140】
なお、整合ローラ対267は、その駆動軸に電磁クラッチ(図示せず)を備え、駆動モータ(図示せず)からの駆動力の伝達を制御できるようになっており、原稿のない状態では停止している。そして、原稿の先端が給送タイミングセンサ265に接触し、このセンサから所定の信号が伝達されたときに、原稿を下流側に搬送する方向に回動するように設定されている。
【0141】
整合ローラ対267は、停止した状態で、摩擦パッド264および給送ローラ266により上流側より搬送されてきた原稿の先端が、整合ローラ対267のニップ部に付き当たり、原稿に所定の撓みを形成した後に、下流側に原稿を搬送するように回動する。この際に、整合ローラ対267のニップ部により、原稿の先端が搬送方向に直角となるように整合される。さらに、整合ローラ対267は、読取ガラス216との間で、原稿搬送路33の一部を形成している。
【0142】
原稿排出部234は、原稿排出ローラ対269および原稿排出センサ259を備えている。原稿排出ローラ対269の上側ローラは、駆動側のローラであり、上部筐体202の左側部に一体的に設けられて、上部筐体202中の駆動機構により駆動される。原稿排出ローラ対269の上側ローラは、下部筐体201側に回転自在に設けられた原稿排出ローラ対269の下側ローラ(従動ローラ)とで、原稿搬送路233を通った原稿を挟持搬送して、排紙トレイ203上に排出する。
【0143】
また、原稿排出センサ259は、原稿排出ローラ対269の下流側に配置されており、原稿の排出を、後述する読取制御部に伝達するものである。
【0144】
イメージセンサ部(CIS:Contact Image Sensor)232は、上部筐体202に設けられており、原稿搬送路233を走行する原稿における上側の画像を読み取る。なお、開放扉224は、イメージセンサ部232の上方の空間を開放可能となっている。
【0145】
次に、上記構成の両面原稿搬送読取装置200の動作について説明する。
両面原稿搬送読取装置200は、静止読取モードでは、片面モードだけが選択可能となり、第1読取部210だけが原稿の読み取りに用いられる。このとき、第1読取部210の第1走査ユニット212は、まずホームポジション(図13中のPos3とPos1との間にあるPos0(図示せず))に配置される。そして、読取制御部の指示に応じて、Pos1の位置から原稿台211上に載置された原稿を走査しながら、第2走査ユニット213とともにPos2側に移動する。これにより、CCD215に、原稿画像に応じた反射光を受光させることが可能となる。このように、第1読取部210は、静止した原稿の下側の面(表面)に形成されている画像を読み取ることとなる。
【0146】
走行読取モードでは、ユーザにより片面読取モードと両面読取モードの両方が選択可能となる。走行読取モードの片面読取モードでは、原稿の片面のみから読取画像を得る場合、第1読取部210だけを原稿の読み取りに用いればよい。この場合、第1読取部210の第1走査ユニット12は、ホームポジションPos0の位置からPos3の位置に移動して停止し、そのまま停止状態を保持して、走行する原稿の読み取りを行う。そして、読取制御部の指示に応じて、CCD215が、読取ガラス216を介して、原稿搬送路233を搬送される原稿の画像を下側から読み取る。すなわち、第1読取部210は、原稿の下側の面(表面)に形成されている画像を読み取ることとなる。
【0147】
走行読取モードの両面読取モードでは、第1読取部210およびイメージセンサ部232の双方が原稿の読み取りに用いられる。このとき、第1読取部210の第1走査ユニット212は、走行読取モードの片面読取モード時と同様に、Pos3の位置に停止される。
【0148】
そして、読取制御部の指示に応じて、第1読取部210が、読取ガラス216を介して、原稿搬送路233を搬送される原稿の画像を下側から読み取る。また、同様に、イメージセンサ部232が、搬送される原稿の上側の面(裏面)に形成されている画像を上側から読み取る。
【0149】
このように、両面原稿搬送読取装置200における両面読取モードでは、第1読取部210および第2読取部223が、搬送原稿の表裏両面の画像を、上下方向から一度に読み取ることとなる。
【0150】
以上のように、本実施の形態の構成によれば、入力画像データに含まれる筋画素(筋状のノイズ)の除去処理において、文字部分での形状の歪の発生を防止することができる。
【0151】
(プログラムおよびプログラムを記録した記録媒体に関する説明)
図1に示した画像処理装置12の各ブロック、特に領域分離処理部25および筋状ノイズ除去部27は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0152】
すなわち、画像処理装置12は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである画像処理装置12の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、上記画像処理装置12に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0153】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0154】
また、画像処理装置12を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0155】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明は、本発明は、画像読取装置、デジタル複写機およびデジタル複合機などに利用することができる。
【符号の説明】
【0157】
11 画像入力装置(画像読取装置)
12 画像処理装置
13 画像出力装置(印刷装置)
17 制御部
25 領域分離処理部
27 筋状ノイズ除去部
51 筋検出部(筋除去処理部)
52 マスク補正部(筋除去処理部)
53 筋補間処理部(筋除去処理部)
61 輝度算出部
62 エッジ検出部
63 ヒストグラム作成部
64 筋画素判定部
65 マスク画像作成部(筋除去処理部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出部と、
前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理部と、
前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理部とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記筋除去処理部は、前記入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成するマスク画像作成部と、
前記マスク画像データにおいて、前記筋画素のうちの前記補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成するマスク補正部と、
前記入力画像データにおける、前記筋補間マスクが示す前記補間対象筋画素を、前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋補間処理部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記筋除去処理部は、前記補間対象筋画素を中心とした前記補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定し、前記第1のブロックをテンプレートとして前記入力画像データを走査し、各テンプレートの位置において前記第1のブロック内の画素と前記テンプレート内の画素との類似度を求め、前記類似度が最も高い位置における前記テンプレート内の画素を置換用画素として選択し、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記筋除去処理部は、前記置換用画素が前記文字領域の画素である場合に、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える処理を中止することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
原稿を搬送しながら読み取って画像データを取得する原稿搬送読取装置と、前記原稿搬送読取装置が取得した画像データを前記入力画像データとする請求項1から6の何れか1項に記載の画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置から入力された画像データに基づいてシートに画像を印刷する印刷装置とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出工程と、
前記入力画像データの文字領域の画素を判別する領域分離処理工程と、
前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理工程とを備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1から6項のいずれか1項に記載の画像処理装置の前記の各部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【請求項1】
入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出部と、
前記入力画像データの文字領域の画素を少なくとも判別する領域分離処理部と、
前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理部とを備えていることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記筋除去処理部は、前記入力画像データにおける筋画素の位置と非筋画素の位置とを示すマスク画像データを作成するマスク画像作成部と、
前記マスク画像データにおいて、前記筋画素のうちの前記補間対象筋画素以外の画素を画素の置き換えが不要な非補間対象筋画素に補正して、筋補間マスクを作成するマスク補正部と、
前記入力画像データにおける、前記筋補間マスクが示す前記補間対象筋画素を、前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋補間処理部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記筋除去処理部は、前記補間対象筋画素を中心とした前記補間対象筋画素の周囲の複数の画素からなる第1のブロックを設定し、前記第1のブロックをテンプレートとして前記入力画像データを走査し、各テンプレートの位置において前記第1のブロック内の画素と前記テンプレート内の画素との類似度を求め、前記類似度が最も高い位置における前記テンプレート内の画素を置換用画素として選択し、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記筋除去処理部は、前記置換用画素が前記文字領域の画素である場合に、前記置換用画素を前記補間対象筋画素と置き換える処理を中止することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記筋除去処理部は、前記類似度が高い順序にて前記置換用画素の候補画素として複数の画素を設定し、前記置換用画素として、前記候補画素のうちから前記文字領域の画素ではなく、かつ前記文字領域の画素からの距離が第2の範囲内に存在する画素ではなく、かつ前記類似度が最も高い候補画素を選択することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項7】
原稿を搬送しながら読み取って画像データを取得する原稿搬送読取装置と、前記原稿搬送読取装置が取得した画像データを前記入力画像データとする請求項1から6の何れか1項に記載の画像処理装置とを備えていることを特徴とする画像読取装置。
【請求項8】
請求項1から6のいずれか1項に記載の画像処理装置と、前記画像処理装置から入力された画像データに基づいてシートに画像を印刷する印刷装置とを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
入力画像データに含まれる筋画素を検出する筋検出工程と、
前記入力画像データの文字領域の画素を判別する領域分離処理工程と、
前記筋画素のうち、前記文字領域の画素と前記文字領域の画素からの距離が第1の範囲内に存在する画素とを除いた画素を補間対象筋画素とし、前記補間対象筋画素を前記入力画像データに含まれる、前記筋画素ではないその他の画素に置き換える筋除去処理工程とを備えていることを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項1から6項のいずれか1項に記載の画像処理装置の前記の各部としてコンピュータを機能させるための制御プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−115591(P2013−115591A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259622(P2011−259622)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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