説明

画像処理方法及び装置

【課題】どのような出力階調でも高精度な補正値を得、自動補正の精度向上を図る。
【解決手段】デジタルカメラで撮影された画像データに対して、色・濃度・階調変更処理を行う画像処理装置であって、前記画像データを撮影したデジタルカメラの機種に応じた機種階調特性を用いて、前記画像データに対して前記機種階調特性を吸収する処理を行う手段と、前記階調変更処理の内容に応じてオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の目標値を調整する調整手段と、前記調整手段によって調整された目標値に従って前記画像データに対してオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の処理を行う自動補正手段と、前記自動補正手段による処理が行われた後に階調補正処理を行う階調補正処理手段と、を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理方法及び装置に係り、特に、デジタルカメラの機種毎の階調特性を吸収して画像処理を行う際の自動補正の精度を向上させる画像処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルスチルカメラ(DSC)の撮影によって得られるデジタル画像データを、適正な画質の画像でプリントしたり、モニタに表示したりするために、前記デジタル画像データに対して種々の画像処理を施すことが行われている。
【0003】
デジタルカメラにおいては、カメラ内部において、AE(オート露出制御)処理、AWB(オートホワイトバランス調整)処理あるいは階調変換などの画像処理が行われているが、これらはデジタルカメラの製造メーカや機種などに応じて異なるため、高画質の再生画像を得るためには、カメラ機種等を考慮した階調変更等の画像処理を再度行う必要がある。
【0004】
例えば、デジタルカメラの機種に拘らず取得された画像データに対して効率よく高画質の再生画像が得られるように階調を変更するものとして、デジタルカメラで取得したデジタル画像データに対して、カメラ機種毎の階調特性による影響を吸収する前処理を施すことにより、カメラ機種に依存しない階調特性を有する画像データに対してAE(オート露出制御)処理/AWB(オートホワイトバランス調整)処理等の自動補正処理を行うことを可能として、AE/AWB処理後に階調変更処理を行うようにしたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【特許文献1】特開2002−16821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された技術においては、AE/AWB処理後に基準階調曲線(出力階調)によるγ変換(階調変更処理)を行っており、この基準階調曲線は標準となる階調の他、曇天用の階調や逆光用の階調など様々な階調を選択できるようになっている。
【0006】
しかし、ここでどのような階調曲線を与えるのかによって、AE/AWB処理における適切な補正値が異なるため、このままでは前記出力階調が変わったときに、AE/AWB処理の精度の良い結果が得られない場合があるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、どのような出力階調においても高精度な補正値を得られるようにし、自動補正の精度向上を図った画像処理方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、デジタルカメラで撮影された画像データに対して、色・濃度・階調変更処理を行う画像処理装置であって、前記画像データを撮影したデジタルカメラの機種に応じた機種階調特性を用いて、前記画像データに対して前記機種階調特性を吸収する処理を行う手段と、前記階調変更処理の内容に応じてオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の目標値を調整する調整手段と、前記調整手段によって調整された目標値に従って前記画像データに対してオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の処理を行う自動補正手段と、前記自動補正手段による処理が行われた後に階調補正処理を行う階調補正処理手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0009】
これにより、自動補正の制動を向上させることが可能となるとともに、自動補正自体のアルゴリズムをカメラ機種によってチューニングする必要がなく、カメラ機種が増えた際の開発コストもかからない。
【0010】
また、同様に前記目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、デジタルカメラで撮影された画像データに対して、色・濃度・階調変更処理を行う画像処理方法であって、前記画像データを撮影したデジタルカメラの機種に応じた機種階調特性を用いて、前記画像データに対して前記機種階調特性を吸収する処理を行う工程と、前記階調変更処理の内容に応じてオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の目標値を調整する工程と、前記調整手段によって調整された目標値に従って前記画像データに対してオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の処理を行う工程と、前記自動補正手段による処理が行われた後に階調補正処理を行う工程と、を有することを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0011】
これにより、自動補正の制動を向上させることが可能となるとともに、自動補正自体のアルゴリズムをカメラ機種によってチューニングする必要がなく、カメラ機種が増えた際の開発コストもかからない。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、自動補正の制動を向上させることが可能となるとともに、自動補正自体のアルゴリズムをカメラ機種によってチューニングする必要がなく、カメラ機種が増えた際の開発コストもかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る画像処理方法及び装置について詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明に係る画像処理装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、本実施形態に係る画像処理装置10は、メモリカード12、読出手段14、対数変換手段(Log)16、入力手段18、DCMYキー20、メモリ22、階調変更手段24、逆対数変換手段(Log−1)26、他の処理手段28、モニタ表示用処理部30、プリント出力用処理部32、モニタ34及びプリンタ36とを備えている。
【0016】
メモリカード12は、デジタルカメラにより被写体を撮像して取得されたオリジナルのデジタル画像データD0を記憶するものである。メモリカード12には、画像データが通常圧縮されて記憶されている。
【0017】
読出手段14は、メモリカード12から色データR0、G0、B0からなる画像データD0を読み出すものであり、そのため読出手段14は、メモリカード12から画像データを読み出すカードリーダなどを有している。メモリカード12から読み出された画像データは通常圧縮されているため、読出手段14には図示を省略した解凍手段が設けられており、この解凍手段はメモリカード12から読み出された画像データを解凍して画像データD0とするものである。
【0018】
また、画像データD0には撮影を行ったデジタルカメラの機種を表す情報(カメラ情報)がタグ情報として付与されているため、このカメラ機種情報も同時に読み出される。タグ情報には撮影時にストロボを使用した場合にストロボを使用して撮影を行った旨を表す情報(ストロボ情報)も記録される。なお、画像データD0は、デジタルカメラによる被写体を撮影して得たデータであり、撮影過程中にデジタルカメラによりAE/AWB処理及び階調特性変更処理などが施されるため、被写体に対して必ずしも1ではないγ特性を有するものである。
【0019】
対数変換手段(Log)16は、画像データD0を対数変換して画像データD1を得るものである。
【0020】
入力手段18及びDCMYキー20は、階調変更手段24に種々の入力を行うためのものである。入力手段18は、キーボードやマウスなどからなり、詳しくは後述するが、階調補正時の基準となる階調(基準階調)の種類が入力される。階調の種類としては、標準的な階調、曇天用の階調、近接ストロボシーン用の階調などが選択可能とされている。
【0021】
DCMYキー20は、画像全体の濃度D及びC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の各色の濃度を補正するための4つのキーからなり、キーを押下した回数に応じて画像全体濃度及び各色の濃度が変更される。なお、入力手段18から入力された階調曲線の修正及びDCMYキー20から入力された濃度の変更は、リアルタイムでモニタ34に表示される。
【0022】
メモリ22は、複数の階調補正曲線を記憶しており、入力手段18から選択された基準階調が入力されると、選択された基準階調を表す階調曲線がメモリ22から呼び出されて、後述する階調補正処理に用いられる。メモリ22には、標準的な階調曲線、曇天用の階調曲線、逆光用の階調曲線及び近接ストロボシーン用の階調曲線からなる基準階調曲線及びカメラ機種に応じた複数の階調曲線とデフォルト階調曲線が記憶されている。また、所望とする階調が得られるように階調曲線を修正する場合には、階調曲線をモニタ34に表示して、入力手段18を用いて階調曲線を修正する。
【0023】
なお、画像データD0にカメラ機種情報が付随されていない場合には、入力手段18からカメラ機種情報をマニュアル入力することもできる。
【0024】
階調変更手段24は、対数変換された画像データD1に対して階調変更処理を施して画像データD2を得るものであり、機種階調特性吸収処理部24a、AE/AWB目標値調整手段24b、プリンタAE/AWB処理部24c、階調補正処理部24dによって構成されている。なお、階調変更手段24について、詳しくは後述する。
【0025】
逆対数変換手段(Log−1)26は、画像データD2を逆対数変換して色データR3
、G3、B3からなる画像データD3を得るものである。
【0026】
他の処理手段28は、画像データD3に対して、所望に応じて色補正などの画像処理を施し、画像データD4を得るものである。
【0027】
モニタ表示用処理部30は、他の処理手段28により得た画像データD4に対して、sRGB変換などモニタ表示用処理を施し、モニタ34に表示するための画像データD5を得るものである。
【0028】
プリント出力用処理部32は、画像データD4に対して、シャープネス処理などプリント出力用処理を施してプリント出力用の画像データD6を得るものである。
【0029】
また、モニタ34は、このモニタ表示用の画像データD5を表示するものであり、プリンタ36は、プリント出力用処理が施された画像データD6をプリント出力するものである。
【0030】
以下、階調変更手段24について詳しく説明する。
【0031】
図2に、階調変更手段24における階調変更処理の手順を示す。階調変更手段24においては、図2に示す手順で画像データが変換される。
【0032】
図2の第1象限、第2象限、第3象限及び第4象限の順に、階調変更手段24の機種階調特性吸収処理部24a、AE/AWB目標値調整手段24b、プリンタAE/AWB処理部24c及び階調補正処理部24dにおける処理が引き続いて行われ、入力画像データD1を構成する色データR1、G1、B1に対して階調変換が施され、出力画像データD2を構成する色データR2、G2、B2が得られる。
【0033】
図2において、第1象限のC1は、カメラ機種階調補正曲線であり、カメラ機種毎の階調特性による影響を吸収するもので、カメラ機種による階調特性をキャンセルし、被写体輝度に対してリニアなデータ(ここでは対数データ)を得るものである。
【0034】
また、図2の第2象限のC2は、AE/AWB補正を行うためのものであり、必ず直線である。C2により、撮影時に適切でなかった露光量やホワイトバランスの調整が行われる。
【0035】
また、図2の第3象限のC3は、出力階調補正曲線であり、対数露光量データをγ補正することで出力画像データに変換するものである。
【0036】
また、図2の第4象限のC4は、絵作り階調補正曲線であり、シーンに応じて適切な階調となるように、あるいは出力デバイスに応じて適切な階調となるように補正を行うためのものである。なお、C4は図2に示すようにひとつの曲線でなく、目的に応じてC5、C6・・・のように複数の補正曲線に分かれていてもよいし、C3と結合していてもよい。また、C4は図2ではC3の後に行うようになっているが、この順序は逆で、C4の処理がC3の前にあってもよい。
【0037】
機種階調特性吸収処理部24aは、読出手段14により読み出されたデジタルカメラの機種情報または入力手段18により入力された機種情報に基づいて、メモリ22からそのデジタルカメラの機種に応じた階調曲線C1を読み出す。
【0038】
図2の第1象限に示すように、このカメラ機種階調補正曲線C1により、色データR1、G1、B1はリニアなデータに変換され、対数露光量を表すデータとなる。デジタルカメラにおいては、その製造メーカや機種などに応じて再生画像の画質が異なるので、カメラ機種階調補正曲線C1は、カメラの機種に拘わらず高品質の画像をえるために個々のデジタルカメラの階調特性を吸収するようにカメラの機種毎に作成される。
【0039】
AE/AWB目標値調整手段24bは、本発明のポイントとなる部分であり、階調変更処理の内容に応じてAE/AWB処理の目標値を調整するものであるが、これについては後述する。
【0040】
また、プリンタAE/AWB処理部24cは、図2の第2象限に示すC2により、ホワイトバランスを含む露光量補正を行うものである。デジタルカメラのAE/AWBは、撮像画像をプリントに再現するために最適化されたものではないため、ここでプリントに最適な撮像時の露光量に補正される。この露光量及びホワイトバランスを補正するC2は基本的に原点を通る直線であるが、プリンタAE/AWB処理部24cは、機種階調特性吸収処理部24aにより得た画像データを構成するRGB色信号毎にプリントに最適な露光量及びホワイトバランスを補正するために必要な補正量を推定し、この補正量に基づいて、補正直線C2を図2中の矢印A方向に平行移動させて、露光量及びホワイトバランスを補正する。
【0041】
階調補正処理部24dは、図2の第3象限に示す出力階調補正曲線C3による補正を行う。階調補正処理部24dは、さらに、通常、プリントは濃度の再現域が狭いため、画像のハイライト部に飛びが、シャドー部に潰れが生じやすい状態にあるため、出力階調補正曲線C3により変換された画像データに対して絵作り階調補正曲線C4に基づいて階調の変更処理を施す。
【0042】
具体的には、階調補正処理部24dは、例えば、プリンタAE/AWB処理によりプリントの濃度が大きくなるような場合には、ハイライト側の階調を硬調化させると共に、シャドー側の階調を軟調化させ、逆にプリントの濃度が小さくなるような場合には、ハイライト側の濃度を軟調化させると共にシャドー側の階調を硬調化させるように、階調のハイライト部とシャドー部を非線形に修正する。
【0043】
このように階調変更手段24における処理によって、階調変更処理が施された画像データD2を構成する色データR2、G2、B2を得ることができる。
【0044】
この画像データD2に対して、逆対数変換手段(Log−1)26により、画像データD2が色データR3、G3、B3からなる画像データD3に変換される。画像データD3は、色補正などの所望による他の処理手段28を経て、さらにsRGB変換などのモニタ表示用処理によりモニタ34に表示するための出力用画像データD5に変換されると共に、シャープネスなどのプリント用処理によってプリンタ36から出力するための出力用画像データD6に変換され、プリンタ36から出力される。
【0045】
次に、本発明のポイントとなるAE/AWB目標値調整手段24bについて説明する。
【0046】
AE/AWB目標値調整手段24bは、予めある特定の機種階調特性のセットC1、C3、C4を基本階調補正セットとして決め、これに対してAE/AWB補正の目標値を決めておいた場合に、実際に入力される画像データを撮影したカメラの機種の階調特性に応じてAE/AWB補正の目標値を修正するものである。
【0047】
まず、露出(AE)・ホワイトバランス(AWB)及び絵作り階調の補正が何もなされない基本階調補正セット(基本ケース)とする。すなわち、AE/AWB処理を行うC2及び絵作り階調補正曲線C4は、いずれも原点を通り傾き1の直線とする。この基本ケースでは、何も補正がなされないので、入力画像D1(R1、G1、B1)と出力画像D2(R2、G2、B2)が等しくなるようにする。従ってカメラ機種階調補正曲線C1と出力階調補正曲線C3は、逆γの関係となる必要がある。つまり、カメラ機種階調補正曲線C1を入力画像のカメラ機種に対応して選択するときには、出力階調補正曲線C3も同じようにカメラ機種階調補正曲線C1に対応して選択することが必要となる。
【0048】
ここで、このようにカメラ機種階調補正曲線C1と出力階調補正曲線C3を逆γの関係にしたときの問題点について説明する。
【0049】
C2によるAE/AWB補正は、例えば画像中の顔の色濃度を好ましくする等何らかの目標に従って補正を行うものであるが、この目標を満たす補正値は、絵作り階調補正曲線C4による処理後の最終出力画像上で定められる。そのため、C2の対数露光量データ上での補正の目標値は、出力階調補正曲線C3及び絵作り階調補正曲線C4(特に、出力階調補正曲線C3)による補正がどのようになっているかによって変化する。
【0050】
図3に、図2の第3象限を抜き出して示す。いま図3に示すように、出力階調補正曲線C3がC31とC32のように2つあったとする。
【0051】
いま、AE/AWB補正の目標値がS1であるとすると、このS1は、出力階調補正曲線C31によってはD1に変換され、出力階調補正曲線C32によってはD2に変換される。このように、出力階調補正曲線によってAE/AWB補正の補正結果にバラツキが生じてしまう。この場合には、D2−D1の差が発生する。
【0052】
逆に出力階調補正曲線による出力γ変換後のD2がAE/AWB補正による補正目標であるとすると、出力階調補正曲線C31の場合には、S2を対数露光量データ上でのC2の目標値として補正する必要がある。
【0053】
そこで、カメラ機種階調補正曲線C1をある特定のカメラ機種階調特性に定め、これをC1xとする。また、出力階調補正曲線C3をC1xの逆γとし、これをC3xとする。また、絵作り階調補正曲線C4をある特定の補正階調特性として、例えば何もしないリニアなもの(原点を通り傾き1の直線)とし、これをC4xとする。このように定めたC1x、C3x及びC4xの組み合わせを基本階調補正セットとする。
【0054】
次に、直線C2によるAE/AWB補正処理は、事前に上のように決められた基本階調補正セット(C1x、C3x、C4x)に対してチューニングを行いAE/AWB補正の目標値を決定する。
【0055】
そして、実際に処理を行う場合には、入力された画像データについて、カメラ機種階調補正曲線C1、出力階調補正曲線C3及び絵作り階調補正曲線C4が決まった後に、AE/AWB目標値調整手段24bによって、基本階調補正セットとの差分に基づいて上記AE/AWB補正の目標値の修正値が算出される。プリンタAE/AWB処理部24cは、この修正値をAE/AWB補正処理で出力した補正値に加算して補正を実行する。AE/AWB目標値調整手段24bは、このようにAE/AWB補正処理の目標値を修正(調整)する。
【0056】
上述した修正値については、例えば、C3xが図3におけるC32であり、予めチューニングされたAE/AWB目標値がD2(入力値でS1)としたときに、実際の機種階調特性がC31で、C4が何もしないリニアであったとすると、S2−S1がこの修正値となる。
【0057】
なお、この修正値は、C1、C3、C4のセットが決まった時点で各々の階調曲線から計算によって算出してもよいし、予めパラメータとして持っていてもよい。さらに、パラメータとして持つ場合には、機種階調特性データとは別に保存しておいてもよいし、階調特性データと合わせて全体を「階調特性プロファイル」として持っていてもよい。
【0058】
このように、本実施形態においては、出力階調曲線に依存してAE/AWB補正の目標値を調整する(変化させる)ことによって、どのような出力階調においても高精度な補正値を得ることができる。また、自動補正自体のアルゴリズムはカメラ機種によってチューニングをする必要がなく、カメラ機種が増えた場合における開発コストがかからないという効果もある。
【0059】
以下、本実施形態に係る画像処理装置10の作用として、本発明に係る画像処理方法における階調変更処理について説明する。
【0060】
図4は、本実施形態における階調変更処理の流れを示すフローチャートである。
【0061】
まず、図4のステップS100において、デジタルカメラにより得られた画像データが記憶されたメモリカード12から読出手段14によって読み出される。このとき、デジタルカメラの機種情報が付随されている場合には、機種情報も同時に読み出される。
【0062】
次に、ステップS105において、読出手段14に備えられた解凍手段により、上記読み出された画像データが解凍され画像データD0が得られる。次に、ステップS110において、この画像データD0は、対数変換手段(Log)16により画像データD1に変換される。
【0063】
次に、ステップS115において、機種階調特性吸収処理部24aは、画像データD1にデジタルカメラの機種情報が付随されているかどうかを調べる。
【0064】
ステップS115における判断で、カメラ機種情報がある場合には、ステップS120においてデジタルカメラの機種情報に応じたカメラ機種階調補正曲線C1をメモリ22から読み出した後、ステップS140において画像データD1に対して、デジタルカメラの機種階調特性を吸収する処理を施す。
【0065】
一方、ステップS115における判断で画像データD1にデジタルカメラの機種情報が付随されていないとされた場合には、ステップS125において入力手段18からカメラ機種情報がマニュアル入力されていないか判断し、マニュアル入力されていない場合には、ステップS135において機種階調特性吸収処理部24aはメモリ22からデフォルト階調曲線C1’を読み出した後、ステップS140においてこのデフォルト階調曲線C1’を用いて画像データD1に対して機種階調特性吸収処理を施す。
【0066】
また、ステップS115における判断で画像データD1にデジタルカメラの機種情報が付随されていないとされ、さらにステップS125において入力手段18からカメラ機種情報が入力されていると判断された場合には、ステップS130において機種階調特性吸収処理部24aはメモリ22から入力されたカメラ機種情報に応じたカメラ機種階調補正曲線C1を読み出し、ステップS140において、このカメラ機種階調補正曲線C1を用いて画像データD1に対して機種階調特性吸収処理を施す。
【0067】
次に、ステップS145において、AE/AWB目標値調整手段24bは、上記カメラ機種階調補正曲線C1と絵作り階調補正曲線C4に対応するAE/AWB補正の目標値の修正値を算出する。これは、前述したように、C1、C3(C3はC1と逆γの関係にありC1が決まれば決まる)、C4の各階調曲線から計算によって算出してもよいし、予めパラメータとしてメモリに持っていて、それをメモリから読み出すようにしてもよい。
【0068】
機種階調特性吸収処理部24aにより処理された画像データは、デジタルカメラの機種が持つ独自の機種階調特性を吸収され、被写体に対してγ=1の階調特性を有するものとなっている。
【0069】
次に、ステップS150において、プリンタAE/AWB処理部24cは、この機種階調特性が吸収された画像データに対してAE/AWB補正処理を行い、露光量が補正された画像データを得る。このとき、プリンタAE/AWB処理部24cが出力した補正値に上で算出された修正値が加算される。
【0070】
次に、ステップS155において、AE/AWB補正処理が施された画像データに対して、階調補正処理部24dにより、入力手段18により選ばれた出力階調補正曲線C3とハイライト部及びシャドー部非線形のための補正曲線(絵作り階調補正曲線C4)によって階調補正処理が施される。
【0071】
次に、ステップS160において、上で階調変更処理が施された画像データに対してプリントのための濃度補正や階調補正が必要か否か判断し、修正が必要な場合には、ステップS165においてDCMYキー20により濃度を修正した後、再度ステップS155において、階調補正処理部24dにより階調が補正され、画像データD2が得られる。
【0072】
次に、ステップS170において、逆対数変換手段(Log−1)26により、色データR3、G3、B3からなる画像データD3に変換され、所望による色補正などの他の処理を行うため他の処理手段28に出力される。
【0073】
以上で、階調変更処理は終了するが、その後は、モニタ表示用処理部30によりsRGB変換などのモニタ表示用処理が施されモニタ34に表示するための出力用画像データD5に変換されてモニタ34に表示されると共に、プリント出力用処理部32によりシャープネスなどのプリント用処理が施されプリンタ36から出力するための出力用画像データD6に変換されてプリンタ36から出力される。
【0074】
なお、上述した実施形態においては、AE/AWB目標値調整手段24bによるAE/AWB補正の目標値の修正値を算出する(あるいは読み出す)処理は、図4に示すようにステップS145において行っていたが、この処理を行う順序は、これに限定されるものではなく、図4のステップS120の階調曲線C1を読み出す処理から、ステップS150のプリンタAE/AWB処理の間で行えばよい。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、自動補正(AE/AWB)処理結果の出力階調による差分を修正値として加算することにより吸収するようにしたため、自動補正(AE/AWB)の精度を向上させることが可能となった。
【0076】
さらに、自動補正自体のアルゴリズムはカメラ機種によってチューニングをする必要がなく、カメラ機種が増えた際にも開発コストがかからないという効果もある。
【0077】
以上、本発明の画像処理方法及び装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係る画像処理装置の一実施形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明における階調変更処理の手順を示す説明図である。
【図3】図2の第3象限を抜き出したAE/AWB補正目標値の出力階調による差を示す説明図である。
【図4】本実施形態に係る画像処理方法の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
10…画像処理装置、12…メモリカード、14…読出手段、16…対数変換手段(Log)、18…入力手段、20…DCMYキー、22…メモリ、24…階調変更手段、24a…機種階調特性吸収処理部、24b…AE/AWB目標値調整手段、24c…プリンタAE/AWB処理部、24d…階調補正処理部、26…逆対数変換手段(Log−1)、28…他の処理手段、30…モニタ表示用処理部、32…プリント出力用処理部、34…モニタ、36…プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルカメラで撮影された画像データに対して、色・濃度・階調変更処理を行う画像処理装置であって、
前記画像データを撮影したデジタルカメラの機種に応じた機種階調特性を用いて、前記画像データに対して前記機種階調特性を吸収する処理を行う手段と、
前記階調変更処理の内容に応じてオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の目標値を調整する調整手段と、
前記調整手段によって調整された目標値に従って前記画像データに対してオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の処理を行う自動補正手段と、
前記自動補正手段による処理が行われた後に階調補正処理を行う階調補正処理手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
デジタルカメラで撮影された画像データに対して、色・濃度・階調変更処理を行う画像処理方法であって、
前記画像データを撮影したデジタルカメラの機種に応じた機種階調特性を用いて、前記画像データに対して前記機種階調特性を吸収する処理を行う工程と、
前記階調変更処理の内容に応じてオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の目標値を調整する工程と、
前記調整手段によって調整された目標値に従って前記画像データに対してオート露出制御処理及びオートホワイトバランス処理の少なくとも一方の処理を行う工程と、
前記自動補正手段による処理が行われた後に階調補正処理を行う工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−236545(P2008−236545A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75254(P2007−75254)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】