説明

画像処理用メモリ誤動作検出装置、これを用いた画像表示装置、および画像処理用メモリ誤動作検出方法

【課題】画像処理用メモリが異常動作となった場合に、画像信号を監視することなく正しく異常動作を検出できる画像処理用メモリ誤動作検出装置、これを用いた画像表示装置、および画像処理用メモリ誤動作検出方法を得ることを目的とする。
【解決手段】画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を測定する電源電流測定部7と、画像処理用メモリであるDRAM5の予め決められた電源電流の範囲(IthL〜IthH)を保持する電流範囲保持部であるメモリ9と、測定した電源電流とメモリ9に保持している電流範囲(IthL〜IthH)とを比較して、測定した電源電流が電流範囲(IthL〜IthH)から外れているか否かを判定する判定部である故障判定部8と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理用メモリ誤動作検出装置、これを用いた画像表示装置、および画像処理用メモリ誤動作検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像処理においては、画素ごとの信号の並べ替えや階調表示のための信号修正をフレームレートにあわせて処理する必要があるので、画像処理用メモリとのデータのやり取りが不可欠である。しかし、データのやり取りにおいて、やり取りするデータにエラーが発生するとメモリが誤動作することがある。そこで、例えば、CPUとメモリとのデータ通信分野では、メモリに書き込む画像データにパリティ信号を付加し、メモリからの読出し時にそのパリティを読んでデータエラーを検出するようにしていた。あるいは、メモリに与えられるアドレス信号に対してパリティビットを付加し、メモリ側で付加したパリティビットをチェックするDRAMアクセス制御装置が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−13657(第2頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、パリティ信号を使って誤動作を検出する場合、例えば機器自身の異常のようにデータ誤り以外の原因で動作不能となった場合には検出は困難である。また、画像処理用メモリのように高速で画像のリード/ライトを繰り返す場合は、メモリのアクセス時間制限のために上記監視ができない場合が多い。とくに画像処理用メモリの場合、他の機器に予め組み込まれている場合があり、上記のような監視回路が付加できない場合などがある。このような場合、メモリの動作が異常になったとしてもシステム側でメモリ異常を検出できず、画像の表示が停止したままとなる問題がある。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、画像処理用メモリが異常動作となった場合に、画像信号を監視することなく正しく異常動作を検出できる画像処理用メモリ誤動作検出装置、これを用いた画像表示装置、および画像処理用メモリ誤動作検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる画像処理用メモリ誤動作検出装置は、画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する装置であって、前記画像処理用メモリの電源電流を測定する電源電流測定部と、前記画像処理用メモリの予め決められた電源電流の範囲を保持する電流範囲保持部と、前記測定した電源電流と前記電流範囲とを比較して、前記測定した電源電流が前記電流範囲から外れているか否かを判定する判定部と、を備えるものである。
【0007】
また、本発明にかかる画像表示装置は、光源から入射した光を映像光に変換する光変調素子と、前記光変調素子を制御するための画像信号を出力する画像信号処理部と、前記画像信号処理部において前記画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する上記画像処理用メモリ誤動作検出装置と、を備えるものである。
【0008】
また、本発明にかかる画像処理用メモリ誤動作検出方法は、画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する方法であって、前記画像処理用メモリの電源電流を測定する電源電流測定ステップと、前記画像処理用メモリの予め決められた電源電流の範囲を保持する通常電流範囲保持ステップと、前記測定した電源電流と前記通常電流範囲とを比較して、前記測定した電源電流が前記通常電流範囲から外れていると、前記画像処理用メモリが故障していると判定する故障判定ステップと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像処理用メモリの電源電流の値によって画像処理用メモリの故障を検出するので、画画像処理用メモリが異常動作となった場合に、画像信号を監視することなく正しく異常動作を検出することができる画像処理用メモリ誤動作検出装置、これを用いた画像表示装置、および画像処理用メモリ誤動作検出方法が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1にかかる画像表示装置の構成を示すブロック図である。本画像表示装置100は、光源から入射した光を映像光に変換する光変調素子(ライトバルブ)としてDMD素子30(Digital Micro Mirror Device)を使用する投射型表示装置であり、DMD素子30を制御するための画像信号を出力するための画像処理部20と、画像処理部20において画像信号の書込み/読出しを行う画像信号処理用メモリであるDRAM5の誤動作を検出する画像処理用メモリ誤動作検出装置10とを備えている。また、図示しないが、光源と、光変調素子から出射された映像光を拡大投写する投写レンズ系と拡大された映像光を表示させるスクリーンも備えている。以下、詳細について説明する。
【0011】
図において、光変調素子であるDMD素子30は、投射する映像光の各画素に対応する微小なミラーを多数(例えば、数十万個)平面的に配列したものであり、画素情報に応じて各ミラーを動作させることで、光源から入射された光を基に映像光を出射する。
【0012】
画像処理部20は、映像信号が入力される入力端子1と、入力端子から入力された映像信号に対してフレームレート周波数変換、画素変換などの画像処理を行う映像信号処理回路2と、DMD素子30を駆動するための画像信号を生成するために、映像信号処理回路2によって変換された映像信号をもとに、信号の並べ替えや階調表示のためのPWM(Pulse Width Modulation)処理を行うDMD制御回路3と、DMD制御回路3で画像信号を生成処理する過程において画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリであるDRAM5と、DRAM5を含む全体の動作のためのクロック信号を発生するクロック発生回路4と、DRAM5を駆動させるため駆動電流を供給する電源6と、を有している。
【0013】
上述した階調表示のためのPWM処理では、映像信号のフレーム毎に各画素に対応する微小ミラーのオンデューティーを計算してDRAM5に書込み、フレーム周波数にあわせて読み出して画像信号として出力する必要がある。例えば、水平1920画素、垂直1080ライン、フレーム周波数60Hzのハイビジョン映像では、1秒間に億単位のデータの書込み/読み込みが行われることになる。そのため、DRAM5には動作クロックが非常に高い高速のメモリを使用することによって、画像処理に適応可能な高速のデータ書込み/読み出しが可能となっている。したがって、上述したような高速な書込み/読出し中のデータを監視することは困難であり、また、DMD素子用の画像処理部自体がカスタマイズされている場合が多く、書込み/読出し中のデータをサンプリングすること自体が事実上困難になっている。
【0014】
一方、DRAM5には当然のことながら電源6より電源が供給されるが、この電源電流の測定は、カスタマイズされた画像処理部に対しても容易に行うことができる。そこで、本実施の形態では、図示しないシャント抵抗を電源6−DRAM5間に直列に接続し、シャント抵抗の電圧を計測することによりDRAM5の電源電流を測定している。これにより、電流検出回路7は画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を常に監視することができる。なお、電流の測定については電源6−DRAM5の間に直列に接続する方法に限る必要はなく、配線の磁力線を計測して測定するようにしてもよい。
【0015】
画像処理用メモリ誤動作検出装置10は、上述した画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を測定する電源電流測定部である電流検出回路7と、DRAM5の通常動作時における電源電流の範囲として予め決められた電源電流の範囲を保持する通常電流範囲保持部であるメモリ9と、測定した電源電流とメモリ9が保持している通常電流範囲とを比較して、測定した電源電流が通常電流範囲から外れているか判定する判定部である故障判定部8と、を備えている。
【0016】
つぎに、動作について説明する。
図2は画像表示装置100における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置10の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図であり、画像表示装置100により画像を表示しているときのDRAM5の電源電流、および故障判定部8内の比較出力の時間変化を示したものである。図において、上段部の縦軸はDRAM5の電源電流を下段部の縦軸は故障判定部8の回路内での比較出力Lを示し、横軸は上下共通で時間を示している。図2に示すように、DRAM5の電源電流は映像信号などの変化によって時間とともに変化する。また、本実施形態では、下段部の故障判定部8の回路内での比較出力Lについては、誤動作状態をハイレベル、正常状態をローレベルと設定している。なお、図2では、簡略化のため、装置起動直後の不安定な部分を省き、動作が安定した状態からの電源電流の変化を示している。図2においてIopmaxは温度特性(動作の温度条件に対する依存性)を含めた、DRAM5の最大電源電流を示し、Iopminは温度特性を含めた、DRAM5の最少電源電流を示している。通常、映像信号として細かな映像あるいは全白信号が入力されたときはDRAM5の電源電流が最大に近くなるためIopmaxに近い値を示し、全黒信号が入力されたときなどはIopminに近い値を示す。
【0017】
通常動作状態においてはDRAM5の電源電流はIopminからIopmaxの間を推移するが、たとえばクロック発生回路4などの信号が一旦途切れる、あるいは、DRAM5の制御コマンドなどに誤りが生じた場合などにDRAM5がスタンバイあるいはパワーセーブモードなどに移行し、通常の動作消費電流より低い値Iminを示すことがある。この誤動作が発生した場合においても、画像信号処理用メモリ誤動作検出装置10からの信号がない限り、DMD制御回路3は誤動作を認識することはできない。
【0018】
本発明の実施の形態1では、この誤動作を検出するために、DRAM5の通常動作電流の最低値Iopminと誤動作状態のIminとの間で閾値IthLをあらかじめ設定し、DRAM5の通常動作時における電源電流の下限値としてメモリ9に保存している。判定部である故障判定部8では電流検出回路7の出力信号と、メモリ9に保持された下限値IthLとを比較し、DRAM5の電源電流が下限値IthLより小さいか否かを判定し、その結果により、DRAM5が誤動作状態にあるのか正常動作状態なのかを判別する。つまり、画像処理用メモリ誤動作検出装置10は、DRAM5の電源電流があらけじめ決められた通常電流範囲からはずれていると、DRAM5が故障していると判定する。図2において、DRAM5の電源電流の値がIthLを下回ったタイミングTaLで故障判定部8は、回路内の比較出力Lがハイレベルに転じ、DRAM5が誤動作していることを検出する。
【0019】
故障判定部8は、回路内の比較出力Lがハイレベルに転じると、DMD制御回路3に対し、I2Cなどシリアル通信などの手段にて、リセットするように指示する。DMD制御回路3はこの指令を受けて、DRAM5のイニシャライズ処理を実行し、誤動作状態の画像処理用メモリであるDRAM5を正常動作状態に移行させる。
【0020】
また、メモリの種類によっては誤動作を起こした場合に、電源電流が通常状態より大きくなる場合もある。図3も図2と同様に画像表示装置100における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置10の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図であり、画像表示装置100により画像を表示しているときのDRAM5の電源電流、および故障判定部8内の比較出力Hの時間変化を示したものである。図において、Imaxは誤動作時の電流を示している。この場合、誤動作を判別するためには閾値電流IthHを通常消費電流の最大値Iopmaxと誤動作時の電流Imaxの間に設定し、メモリ9に保持すればよい。誤動作状態のレベルは演算回路7において設定すればよく、本実施の形態では誤動作状態をハイレベル、正常状態をローレベルとしている。誤動作検出(TaH)後の復帰シーケンスはIthLによりハイレベルとなったTaLの場合と同様である。
【0021】
なお、電源電流がIthLを下回った場合とIthHを上回った場合とで、DRAM5を復帰させる場合の対処が異なる場合は、どちらで故障を検出したかによってその後の処理を替えるようにしてもよい。
【0022】
また、図2及び図3では、DRAM5の電源電流の変化と回路内比較出力Hと回路内比較出力Lの変化を別々に示しているが、両方同時に監視してよいことはいうまでもない。その場合、故障判定部8は、DRAM5の電源電流が下限値IthLと上限値IthHで規定される通常電流の範囲から外れると、回路内比較出力Lまたは回路内比較出力Hがハイレベルとなり、画像処理用メモリであるDRAM5が故障していることを判定することができる。
【0023】
以上のように、本発明の実施の形態1にかかる画像処理用メモリ誤動作検出装置10によれば、画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を測定する電源電流測定部7と、画像処理用メモリであるDRAM5の通常動作時における電源電流として予め決められた電源電流の範囲(IthL〜IthH)を保持する電流範囲保持部であるメモリ9と、測定した電源電流とメモリ9に保持している電流範囲(IthL〜IthH)とを比較して、測定した電源電流が通常電流範囲(IthL〜IthH)から外れているか否かを判定する判定部である故障判定部8と、を備えるように構成したので、DRAM5が書込み/読込み処理を行っているデータを監視したり、DMD制御回路3自身が誤動作を判別できなくても、確実にDRAM5の誤動作を検出することができる。そして、その検出結果に基づく処理を行うことにより、画像処理装置20を再起動させ、適切に画像表示を行うことができる。
【0024】
また、本発明の実施の形態1にかかる画像処理用メモリ誤動作検出方法10によれば、画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を測定する電源電流測定ステップと、画像処理用メモリであるDRAM5の通常動作時における電源電流として予め決められた電源電流の範囲(IthL〜IthH)を保持する電流範囲保持ステップと、測定した電源電流とメモリ9に保持している電流範囲(IthL〜IthH)とを比較して、測定した電源電流が電流範囲(IthL〜IthH)から外れているか否かを判定する判定ステップと、を備えるように構成したので、DRAM5が書込み/読込み処理を行っているデータを監視したり、DMD制御回路3自身が誤動作を判別できなくても、確実にDRAM5の誤動作を検出することができる。そして、その検出結果に基づく処理を行うことにより、画像処理装置20を再起動させ、適切に画像表示を行うことができる。
【0025】
とくに、画像処理用メモリ誤動作検出装置10を、階調表示にPWM制御が必要で高速な画像データの読込み/書込みが必要とされ、画像データの監視が困難なDMD素子30を光変調素子に用いる画像表示装置100に適用したので、DRAM5が書込み/読込みしているデータの監視や、DMD制御回路3自身が誤動作を判別できなくても、確実にDRAM5の誤動作を検出することができる。
【0026】
したがって、DRAM5が予め画像処理部20に組み込まれており、画像データのサンプリングが困難な場合でも、DRAM5の電源電流を計測すれば、画像処理用メモリ誤動作検出装置10は確実にDRAM5の誤動作を検出することができる。
【0027】
なお、上記の実施の形態1では電源電流の閾値IthLまたはIthHをメモリ9にあらかじめ格納した場合について説明しているが、DRAM5の電源電流は、環境温度やDRAM5自身のばらつきにより変化する場合がある。そこで、環境温度や個体ばらつきに応じて閾値を修正したい場合が生ずる。この場合、下限値であるIthLについては、全黒状態の電源電流Iopminを測定し、電流検出回路の精度に応じてIopminより若干低い値をIthLとして設定する、あるいは、個別に設定してもよい。また、上限値であるIthHについては、全白状態またはギャザ等の高周波データ時の電源電流Iopmaxを測定し、電流検出回路の精度に応じてIopmaxより若干高い値をIthHとして設定する、あるいは、個別に設定してもよい。
【0028】
さらに経年変化等により、DRAM5の動作電流が変化する場合も想定される。この場合は、定期的に上記全黒状態や全白状態での電源電流Iopmin、Iopmaxを測定して閾値IthL、IthHを更新するように制御を行ってもよい。
【0029】
また、故障判定部8とDMD制御回路3との通信はI2Cなどのシリアル通信としたが、通信方式についてはこれに限定されるものではなく、パラレル方式などDMD制御回路3の方式にしたがった方式を採ればよい。
【0030】
なお、本実施の形態1では、光変調素子であるDMD素子30を制御する画像信号の書込み/読込みのためのDRAM5に対して画像処理用メモリ誤動作検出装置10を用いた例について説明したが、光変調素子として液晶を用いた場合でも適用できる。また、光変調素子を用いていなくとも、高速な画像信号の書込み/読込みを要求される画像処理用メモリであれば、光変調素子を使用していない場合であっても効果を発揮できることはいうまでもない。また、画像処理用メモリとしてはDRAM以外のメモリであってもよい。
【0031】
実施の形態2.
本実施の形態2では、画像処理用メモリであるDRAM5の電源電流を電源電流に伴って変化するDRAM5の周囲温度との温度差を計測することにより測定することとした。 これは、DRAM5に供給される電源電流によりDRAM5自身が発熱することにより、周囲温度(環境温度)に対して温度差が生じ、その温度差がDRAM5に流れる電源電流に比例して大きくなるので、温度差を計測することによって電源電流を直接計測する代わりに電源電流を測定することになるからである。以下、詳細について説明する。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態2にかかる画像表示装置のブロック図を示すものである。図において、実施の形態1と同じ番号を付したものは実施の形態1と同様のものである。本実施の形態2においては、実施の形態1における電流検出部7の代わりに、DRAM5の周囲温度との温度差を検出する温度差検出部17を備えており、故障判定部18は、メモリ9に保持された温度差の範囲と温度差出部17が検出したDRAM5の温度差とを比較してDRAM5の故障を検出するものである。そして、温度差検出部17は、DRAM5の温度を計測するメモリ温度計測部17Aと周囲温度を計測する周囲温度計測部17Bを有し、故障判定部18はメモリ温度計測部17Aから出力されるDRAM5の温度を示す信号と周囲温度計測部17Bから出力される周囲温度を示す信号とからDRAM5の周囲温度との温度差を検出する。したがって、故障判定部8の一部も温度差検出部として機能することになる。
【0033】
図において、メモリ温度計測部17AはDRAM5と近接あるいは接触させて配置されており、DRAM5に流れる電源電流に伴うDRAM5の動作温度の変化を検出する。また、周囲温度計測部17Bは、周囲温度Taとして、画像処理部20の筐体内の温度あるいはその周囲の温度を測定する。これは、DRAM5に流れる電源電流が変化していなくても、周囲温度Taが変化した場合は、動作温度もそれにしたがって変化するため、これを補正するために使用する。通常メモリ温度計測部17Aの出力から周囲温度計測部17Bの出力を差し引けばDRAM5の温度上昇による温度差ΔTを検出することが可能となる。これらの演算は上述したように故障判定部18内で行われる。DRAM5が正常に動作しているとき(通常動作時)のDRAM5の周囲温度Taとの温度差の範囲をΔTopminからΔTopmaxとし、DRAM5に誤動作(低電流側)が生じた場合のDRAM5の周囲温度Taとの温度差をΔTmin(Iminに対応)とすれば、ΔTminとΔTopminの間に誤動作時の温度差の下限値となる閾値ΔTthLをメモリ9に設定する。また、DRAM5に誤動作(高電流側)が生じた場合のDRAM5の周囲温度Taとの温度差をΔTmax(Imaxに対応)とすれば、ΔTmaxとΔTopmaxの間に誤動作時の温度差の上限値となる閾値ΔTthHをメモリ9に設定する。
【0034】
図5は画像表示装置200における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置210の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図であり、画像表示装置200により画像を表示しているときのDRAM5の周囲温度との温度差ΔT、および故障判定部18内の比較出力の時間変化を示したものである。図において、上段部の縦軸はDRAM5の周囲温度Taとの温度差ΔTを下段部の縦軸は故障判定部18の回路内での比較出力Lを示し、横軸は上下共通で時間を示している。図5に示すように、DRAM5の周囲温度Ta(周囲温度計測部17Bが計測)との温度差ΔT(メモリ温度計測部17Aが計測したDRAM5の動作温度と周囲温度との差)は映像信号などの変化によって時間とともに変化する。また、本実施の形態でも、下段部の故障判定部18の回路内での比較出力Lについては、誤動作状態をハイレベル、正常状態をローレベルと設定している。なお、図5では、画像表示装置200の起動直後でDRAM5自体の温度や周囲温度Taとなる画像処理部20の筐体の温度が変化する部分を省き、動作温度、周囲温度Taともに安定し、温度差ΔTが一定となった状態からの温度差ΔTの変化を示している。
【0035】
故障判定部18ではメモリ温度計測部17Aと周囲温度計測部17Bの出力信号から算出した温度差ΔTと、メモリ9に保持された下限値ΔTthLとを比較し、DRAM5の周囲温度との温度差ΔTが下限値ΔTthLより小さいか否かで、DRAM5が誤動作状態にあるのか正常動作状態なのかを判別する。つまり、DRAM5の温度差ΔTが通常温度差の範囲からはずれていると、DRAM5が故障していると判定する。図5において、DRAM5の周囲温度との温度差ΔTの値がΔTthLを下回ったタイミングTaLで故障判定部18は、回路内の比較出力Lがハイレベルに転じ、DRAM5が誤動作していることを検出する。
【0036】
上記のように、電流の代わりに温度差を測定することによっても、DRAM5の周囲温度Taとの温度差ΔTがメモリ9に設定された下限値ΔTthLを下回った場合、DRAM5の誤動作として検出可能である。誤動作と検出した場合は、第1の実施の形態と同様、DMD制御回路3に対し、I2Cなどシリアル通信などの手段にて、DMD制御回路3をリセットするように指示する。DMD制御回路3はこの指令を受けて、画像処理用メモリであるDRAM5のイニシャライズ処理を実行し、誤動作状態のDRAM5を正常動作状態に移行させる。
【0037】
ただし、温度差の変化はDRAM5内の発熱部分と温度計測部分間の伝熱経路により電源電流の変化と時間差が生ずるため、故障判定部18には不感期間が設定され、例えば、起動後数秒間は温度差ΔTが0でも故障と判定しないようにしている。
【0038】
また、図5では温度差ΔTが下限値ΔTthLを下回るか否かでDRAM5が故障しているか否かを判定する例を示したが、実施の形態1と同様に温度差ΔTの上限値ΔTthHを上回るか否かでDRAM5が故障しているか否かを判定できることはいうまでもない。つまり、故障判定部18は、DRAM5の周囲温度との温度差ΔTが通常温度差範囲からはずれていると、DRAM5が故障していると判定する。ただし、本実施の形態2ではDRAM5の温度と周囲温度の差分を使用しているが、機器立ち上げ時には局所的な温度上昇があるため周囲温度との差分をみた場合、温度バラツキが存在する可能性がある。この場合は機器立ち上げ後一定期間は故障判定を行わない不感期間を設けるようにすればよい。
【0039】
以上のように、本実施の形態2にかかる画像処理用メモリ誤動作検出装置210によれば、画像処理用メモリであるDRAM5の周囲温度Taとの温度差ΔTを測定する温度差測定部17と、DRAM5の通常動作時の温度範囲として予め決められた温度差ΔTの範囲(ΔTthL〜ΔTthH)を保持する温度差範囲保持部であるメモリ9と、測定した温度差ΔTと温度差範囲(ΔTthL〜ΔTthH)とを比較して、測定した温度差ΔTが温度差範囲(ΔTthL〜ΔTthH)から外れているか否かを判定する判定部である故障判定部18と、を備えるように構成したので、DRAM5が書込み/読込み処理を行っているデータを監視しなくても、DRAM5の誤動作を検出することができる。そして、その検出結果に基づく処理を行うことにより、画像処理装置20を再起動させ、適切に画像表示を行うことができる。
【0040】
また、本実施の形態2にかかる画像処理用メモリ誤動作検出方法によれば、画像処理用メモリであるDRAM5の周囲温度Taとの温度差ΔTを測定する温度差測定ステップと、DRAM5の通常動作時の温度範囲として予め決められた温度差ΔTの範囲(ΔTthL〜ΔTthH)を保持する温度差範囲保持ステップと、測定した温度差ΔTと温度差範囲(ΔTthL〜ΔTthH)とを比較して、測定した温度差ΔTが温度差範囲(ΔTthL〜ΔTthH)から外れているか否かを判定する判定ステップと、を備えるように構成したので、DRAM5が書込み/読込み処理を行っているデータを監視しなくても、DRAM5の誤動作を検出することができる。そして、その検出結果に基づく処理を行うことにより、画像処理装置20を再起動させ、適切に画像表示を行うことができる。
【0041】
つまり、DRAM5の誤動作を、その電源電流の変化にともなう周囲温度Taとの温度差Δを計測することで検出しているため、実施の形態1と同様にDMD制御回路3自身が誤動作を認識できない場合でも誤動作を検出でき、さらにDRAM5の電源電流を測定できない場合でも、DRAM5の誤動作を検出し、再起動させることができる。
【0042】
また、本実施の形態2においても、温度差の閾値ΔTthL、ΔTthHをメモリ9にあらかじめ格納しているが、DRAM5の特性ばらつきや経時変化を考慮して閾値を補正してもよい。例えば、下限値であるΔTthLについては、全黒状態の温度差ΔTopminを測定し、温度差検出部17の精度に応じてΔTopminより若干低い値をΔTthLとして設定する、あるいは、個別に設定してもよい。また、上限値であるΔTthHについては、全白状態またはギャザ等の高周波データ時の電源電流ΔTopmaxを測定し、温度差検出部17の精度に応じてΔTopmaxより若干高い値をΔTthHとして設定する、あるいは、個別に設定してもよい。
【0043】
また、故障判定部18とDMD制御回路3との通信はI2Cなどのシリアル通信としたが、通信方式についてはこれに限定されるものではなく、パラレル方式などDMD制御回路の方式にしたがった方式を採ればよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる画像表示装置における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる画像表示装置における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2にかかる画像表示装置の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態2にかかる画像表示装置における画像信号処理用メモリ誤動作検出装置の動作および画像信号処理用メモリ誤動作検出方法を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 映像入力端子、 2 映像信号処理回路、 3 DMD制御回路、 4 クロック発生回路、 5 DRAM(画像処理用メモリ)、 6 電源、 7 電流検出部(電源電流測定部)、 8,18 故障判定部(判定部)、 9 メモリ(電流範囲保持部、温度差範囲保持部)、 10,210 画像信号処理用メモリ誤動作検出装置、17 温度差測定部、 17A メモリ温度計測部、 17B 周囲温度計測部、
20 画像処理部、 30 DMD素子(光変調素子)、 100,200 画像表示装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する装置であって、
前記画像処理用メモリの電源電流を測定する電源電流測定部と、
前記画像処理用メモリの予め決められた電源電流の範囲を保持する電流範囲保持部と、
前記測定した電源電流と前記電流範囲とを比較して、前記測定した電源電流が前記電流範囲から外れているか否かを判定する判定部と、
を備えてなる画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項2】
画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する装置であって、
前記画像処理用メモリの周囲温度との温度差を測定する温度差測定部と、
前記画像処理用メモリの予め決められた温度差の範囲を保持する温度差範囲保持部と、
前記測定した温度差と前記温度差範囲とを比較して、前記測定した温度差が前記温度差範囲から外れているか否かを判定する判定部と、
を備えてなる画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項3】
前記電流範囲の下限値を前記画像処理用メモリに全黒状態を示す画像信号が入力されたときの電源電流に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項4】
前記電流範囲の上限値を前記画像処理用メモリに全白状態を示す画像信号が入力されたときの電源電流に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項5】
前記温度差範囲の下限値を前記画像処理用メモリに全黒状態を示す画像信号が入力されたときの温度差に基づいて補正することを特徴とする請求項2に記載の画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項6】
前記温度差範囲の上限値を前記画像処理用メモリに全白状態を示す画像信号が入力されたときの温度差に基づいて補正することを特徴とする請求項2に記載の画像処理用メモリ誤動作検出装置。
【請求項7】
光源から入射した光を映像光に変換する光変調素子と、
前記光変調素子を制御するための画像信号を出力する画像信号処理部と、
前記画像信号処理部において前記画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する請求項1ないし6のいずれかに記載の画像処理用メモリ誤動作検出装置と、
を備えてなる画像表示装置。
【請求項8】
前記光変調素子はDMD素子で構成されていることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する方法であって、
前記画像処理用メモリの電源電流を測定する電源電流測定ステップと、
前記画像処理用メモリの予め決められた電源電流の範囲を保持する電流範囲保持ステップと、
前記測定した電源電流と前記電流範囲とを比較して、前記測定した電源電流が前記電流範囲から外れているか否かを判定する判定ステップと、
を備えてなる画像処理用メモリ誤動作検出方法。
【請求項10】
画像信号の書込み/読出しを行う画像処理用メモリの誤動作を検出する方法であって、
前記画像処理用メモリの周囲温度との温度差を測定する温度差測定ステップと、
前記画像処理用メモリの予め決められた温度差の範囲を保持する温度差範囲保持ステップと、
前記測定した温度差と前記温度差範囲とを比較して、前記測定した温度差が前記温度差範囲から外れているか否かを判定する判定ステップと、
を備えてなる画像処理用メモリ誤動作検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−276814(P2009−276814A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−124596(P2008−124596)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】