説明

画像処理装置、および、画像処理装置の制御方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラム

【課題】撮影者の技量に依存せずに、流し撮り画像を生成する。
【解決手段】奥行き情報取得部は、被写体までの奥行きを、その被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する。平滑化処理部は、画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として、その対象画素に対応する奥行きに応じた度合いの平滑化処理を対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する。これにより、画像内の所定の領域を除いた領域内の画素にぼかしを生じさせ、流し撮り画像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、画像処理装置、および、画像処理装置の制御方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。詳しくは、平滑化処理を実行する画像処理装置、および、画像処理装置の制御方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動する被写体を撮像するときに流し撮りと呼ばれる撮影手法がよく使用されていた。流し撮りとは、移動している被写体がくっきりと写り、背景等の静止している被写体において移動方向に沿ってぼけが生じた画像を撮影するための手法である。このような画像を、以下、「流し撮り画像」と称する。流し撮りにより、移動する被写体の躍動感が表現される。
【0003】
流し撮りは、シャッタースピードを通常より長く設定した状態で、撮影者が、被写体の移動に追従して撮像装置を動かすことにより行われる。シャッタースピードの設定や撮像装置の移動を適切に行うには比較的高い技量が必要であるため、流し撮り画像の仕上がり具合は、撮影者個人の技量に依存する部分が大きくなる。
【0004】
そこで、撮影者による撮像装置の動きを検出したときに被写体の移動速度を測定し、その移動速度に応じてシャッタースピードを制御する撮像装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この撮像装置によれば、シャッタースピードが適切な値に設定されるため、流し撮り画像の撮影が容易となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−229732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、流し撮りを行わずに撮った通常の画像から、流し撮り画像を生成することはできなかった。特許文献1に記載の撮像装置は、シャッタースピードの調整により流し撮りを補助するものの、撮像装置の移動は撮影者自身が行うことを想定している。このため、特許文献1に記載の撮像装置においても、流し撮り画像の仕上がり具合が、依然として、シャッタースピードの設定以外に関する撮影者の技量に依存していた。
【0007】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、撮影者の技量に依存せずに、流し撮り画像を生成する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術は、上述の問題点を解消するためになされたものであり、その第1の側面は、被写体までの奥行きを上記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得部と、上記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する上記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を上記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理部とを具備する画像処理装置、および、その制御方法ならびに当該方法をコンピュータに実行させるプログラムである。これにより、奥行きに応じた度合いの平滑化処理が対象画素の画素値に対して所定の方向において実行されるという作用をもたらす。
【0009】
また、この第1の側面において、上記平滑化処理部は、上記平滑化処理の特性を示す平滑化パラメータを設定する平滑化パラメータ設定部と、上記設定された平滑化パラメータおよび上記取得された奥行きに基づいて上記平滑化処理を実行する平滑化処理実行部と
を備えてもよい。これにより、平滑化パラメータおよび奥行きに基づいて平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0010】
また、この第1の側面において、上記平滑化処理実行部は、上記平滑化パラメータに規定される上記量および上記取得された奥行きに基づいて上記平滑化処理の度合いを算出する算出部と、上記算出された度合いの上記平滑化処理を実行する平滑化フィルタとを備えてもよい。これにより、平滑化パラメータに規定される量および奥行きに基づいて度合いが算出されるという作用をもたらす。
【0011】
また、この第1の側面において、上記平滑化パラメータ設定部は、上記所定の方向として上記平滑化処理を実行する方向を含む上記平滑化パラメータを設定し、上記平滑化処理実行部は、上記取得された奥行きに基づいて上記設定された方向において上記平滑化処理を実行してもよい。これにより、設定された方向において平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0012】
また、この第1の側面において、上記平滑化パラメータ設定部は、上記所定の領域として上記平滑化処理を実行しない領域を示す情報を含む上記平滑化パラメータを設定し、上記平滑化処理実行部は、上記設定された領域を除いた領域内の画素を上記対象画素として上記取得された奥行きに基づいて上記平滑化処理を実行してもよい。これにより、設定された領域を除いた領域内の画素を対象画素として平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0013】
また、この第1の側面において、上記平滑化パラメータ設定部は、上記所定の領域内の1つ以上の上記画素を示す情報を含む上記平滑化パラメータを設定し、上記平滑化処理実行部は、上記1つ以上の上記画素に対応する上記奥行きとの差分が所定値以下の上記奥行きに係る上記画素を含む領域を検出する領域検出部と、上記検出された領域を除いた領域内の画素を上記対象画素として上記取得された奥行きに基づいて上記平滑化処理を実行する平滑化フィルタとを備えてもよい。これにより、奥行きの差分が所定値以内の領域を除いた領域内の画素を対象画素として平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0014】
また、この第1の側面において、上記平滑化処理部は、移動平均フィルタを使用して上記平滑化処理を実行してもよい。これにより、移動平均フィルタにより平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0015】
また、この第1の側面において、上記平滑化処理部は、ガウシアンフィルタを使用して上記平滑化処理を実行してもよい。これにより、ガウシアンフィルタにより平滑化処理が実行されるという作用をもたらす。
【0016】
また、この第1の側面において、上記画像は、上記奥行きの生成において基準とされる基準画像と参照される参照画像とを含み、上記奥行き取得部は、上記基準画像内のいずれかの上記画素と当該画素に対応する上記参照画像内の上記画素との間の距離を視差として検出する視差検出部と、上記検出された視差に基づいて上記基準画像内の上記画素に対応付けて上記奥行きを生成する奥行き生成部とを備え、上記平滑化処理部は、上記基準画像内の上記所定の領域を除いた領域内の画素を上記対象画素として上記平滑化処理を実行してもよい。これにより、検出された視差に基づいて奥行きが生成されるという作用をもたらす。
【発明の効果】
【0017】
本技術によれば、通常の画像から流し撮り画像を生成することができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態における画像処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における画像データおよび奥行き情報の一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態における平滑化パラメータの設定方法の一例を説明するための図である。
【図5】第1の実施の形態における平滑化パラメータの一例を示す図である。
【図6】第1の実施の形態における移動体領域の検出方法の一例を説明するための図である。
【図7】第1の実施の形態におけるフィルタ次数の一例を示す図である。
【図8】第1の実施の形態における移動方向に基づいて平滑化した被写体の一例である。
【図9】第1の実施の形態におけるフィルタ次数に従って平滑化した被写体の一例である。
【図10】第1の実施の形態における画素値、奥行き、および、フィルタ次数の一例を示す図である。
【図11】第1の実施の形態における流し撮りを行った画像の一例を示す図である。
【図12】第1の実施の形態における平滑化処理の前後の画像の一例を示す図である。
【図13】第1の実施の形態における正規化係数の一例を示す図である。
【図14】第1の実施の形態における流し撮り画像の一例を示す図である。
【図15】第1の実施の形態における画像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図16】第1の実施の形態における平滑化処理の一例を示すフローチャートである。
【図17】第1の実施の形態における平均化処理の一例を示すフローチャートである。
【図18】第2の実施の形態における撮像装置の一構成例を示すブロック図である。
【図19】第2の実施の形態における画像処理装置の一構成例を示すブロック図である。
【図20】第2の実施の形態における奥行き情報取得部の一構成例を示すブロック図である。
【図21】第2の実施の形態における視差と奥行きとの関係の一例を示す図である。
【図22】第2の実施の形態における画像処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(画像処理:流し撮り画像を生成する例)
2.第2の実施の形態(画像処理:ステレオマッチングを使用する例)
【0020】
<1.第1の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
図1は、本技術の実施の形態における撮像装置100の一構成例を示すブロック図である。撮像装置100は、被写体を撮像して、撮像した被写体の画像から流し撮り画像を生成するものである。撮像装置100は、撮像部150、画像データ記憶部200、奥行き計測部250、操作部300、画像処理装置350、および、表示部400を備える。
【0021】
撮像部150は、被写体を撮像して画像データを生成するものである。撮像部150は、生成した画像データを画像データ記憶部200に信号線155を介して出力する。
【0022】
画像データ記憶部200は、画像データを記憶するものである。画像データ記憶部200は、撮像部150および画像処理装置350のそれぞれが生成した画像データを記憶する。
【0023】
奥行き計測部250は、被写体までの奥行きを計測するものである。例えば、奥行き計測部250は、撮像部150による撮像と同期して被写体にレーザを照射し、そのレーザの反射光を検出して、照射時刻からの検出時刻の遅延時間に基づいて奥行きを計測する。奥行き計測部250は、画像内のそれぞれの画素に対応付けて奥行きを計測し、それらの奥行きを示す奥行き情報を生成する。奥行き計測部250は、生成した奥行き情報を画像処理装置350に信号線251を介して出力する。
【0024】
操作部300は、撮像装置100を操作する操作信号を検出するものである。この操作信号は、平滑化パラメータを設定するための操作信号を含む。平滑化パラメータについては後述する。操作部300は、検出した操作信号を画像処理装置350に信号線301を介して出力する。
【0025】
画像処理装置350は、画像データに対して平滑化処理を行うことにより、流し撮り画像データを生成するものである。詳細には、画像処理装置350は、まず、操作信号に従って平滑化パラメータを設定する。
【0026】
ここで、平滑化パラメータは、平滑化処理の特性を示すパラメータであり、移動体位置、移動方向、および、移動量の値を含む。平滑化処理の詳細については後述する。移動体位置は、画像内の被写体のうち、移動しているように見せたい被写体(以下、「移動体」と称する。)が写っている領域内のいずれかの画素の座標である。以下、この移動体が写っている領域を「移動体領域」と称する。移動方向は、その移動体の移動方向として設定される方向であり、この移動方向の逆方向が平滑化処理の方向とされる。移動量は、その移動体の露光時間内の移動量として規定される量である。
【0027】
平滑化パラメータの設定後、画像処理装置350は、移動体領域以外の領域において、移動量と画素に対応する奥行きとに基づいて平滑化の度合いを算出する。例えば、画像処理装置350は、下記の式1から平滑化の度合いを算出する。
【数1】

【0028】
上記式1において、「B」は、平滑化の度合いであり、例えば、平滑化フィルタのフィルタ次数である。平滑化フィルタの次数に応じて、ぼかし量が増減する。また、「S」は、移動量であり、単位は、[m]などである。「D」は、奥行きであり、単位は、[m]などである。「A」は、S/Dの値をBに換算するための係数である。なお、画像処理装置350は、上記式1により、撮像装置100を移動体の移動方向と平行に移動させた場合のフィルタ次数B(ぼかし量)を算出しているが、代わりに撮像装置100を回転させた場合のぼかし量を算出してもよい。撮像装置100を移動体の移動に追従して回転させた場合のぼかし量は、奥行きによらずに移動量のみにより算出される。この場合のぼかし量は、例えば、上記式1の代わりにB=A×Sの式により算出される。
【0029】
画像処理装置350は、算出したフィルタ次数に従って、移動体領域以外の領域内の画素の画素値に対して移動方向の逆方向において平滑化処理を実行する。画像処理装置350は、平滑化処理を実行した画像データを流し撮り画像データとして画像データ記憶部200に信号線355を介して出力する。
【0030】
表示部400は、画像データ記憶部200から画像データまたは流し撮り画像データを読み出して表示するものである。
【0031】
[撮像装置の構成例]
図2は、第1の実施の形態における画像処理装置350の一構成例を示すブロック図である。画像処理装置350は、奥行き情報取得部360および平滑化処理部370を備える。
【0032】
奥行き情報取得部360は、奥行き計測部250が生成した奥行き情報を取得するものである。奥行き情報取得部360は、取得した奥行き情報を平滑化処理部370に信号線365を介して出力する。
【0033】
平滑化処理部370は、奥行き情報に基づいて画像データに対して平滑化処理を実行するものである。平滑化処理部370は、平滑化パラメータ設定部371および平滑化処理実行部372を備える。
【0034】
平滑化パラメータ設定部371は、操作信号に従って平滑化パラメータを設定するものである。平滑化パラメータ設定部371は、設定した平滑化パラメータを平滑化処理実行部372に出力する。
【0035】
平滑化処理実行部372は、平滑化パラメータおよび奥行き情報に基づいて平滑化処理を実行するものである。平滑化処理実行部372は、移動体領域検出部373、フィルタ次数算出部374、および、平滑化フィルタ375を備える。
【0036】
移動体領域検出部373は、移動体領域を検出するものである。具体的には、移動体領域検出部373は、平滑化パラメータに含まれる移動体位置に対応する奥行きを奥行き情報から取得する。そして、移動体領域検出部373は、その奥行きとの差分が所定値以内となる奥行きが計測された画素からなる領域を移動体領域として検出する。移動体領域検出部373は、検出した移動体領域を示す移動体領域情報を生成する。移動体領域情報は、例えば、移動体領域の輪郭の画素群を示す情報を含む。移動体領域検出部373は、生成した移動体領域情報をフィルタ次数算出部374に出力する。
【0037】
フィルタ次数算出部374は、移動体領域を除く領域において、奥行き情報および移動量に基づいてフィルタ次数を算出するものである。詳細には、フィルタ次数算出部374は、移動体領域検出部373が検出した移動体領域を除く領域を、平滑化処理の対象である対象画素とする。フィルタ次数算出部374は、平滑化パラメータに含まれる移動量「S」と、それぞれの対象画素に対応する奥行き「D」とから上記式1を使用して、それぞれの対象画素についてフィルタ次数「B」を算出する。ここで、移動体領域内の画素は、平滑化処理の対象ではないため、移動体領域内の画素のフィルタ次数は「1」に設定される。また、算出されたフィルタ次数が1未満であった場合、フィルタ次数は「1」に設定される。フィルタ次数算出部374は、それぞれの画素のフィルタ次数を平滑化フィルタ375に出力する。
【0038】
平滑化フィルタ375は、フィルタ次数に従って、対象画素に平滑化処理を実行するものである。平滑化フィルタ375は、例えば、単純移動平均法を使用して平滑化を行う単純移動平均フィルタである。
【0039】
単純移動平均法において、平滑化フィルタ375は、まず、画像内の全画素について、平滑化後の画素値I'(i,j)および正規化係数n(i,j)を初期化する。初期化において、例えば、全ての値が0とされる。ここで、iは、画素の水平座標であり、jは、画素の垂直座標である。画像の水平方向の画素数をW、垂直方向の画素数をHとすると、iは、0乃至W−1の整数であり、jは、0乃至H−1の整数である。また、正規化係数は、正規化を行う場合に乗算すべき係数である。正規化の詳細については後述する。
【0040】
初期化の後、平滑化フィルタ375は、画像内のいずれかの画素に注目して、その画素を注目画素とする。平滑化フィルタ375は、その注目画素の画素値I(i,j)およびフィルタ次数B(i,j)を取得する。平滑化フィルタ375は、注目画素から平滑化処理の方向へ連続するB(i,j)個の画素の中に、移動体領域内の画素があるか否かを判断する。移動体領域内の画素があれば、平滑化フィルタ375は、注目画素の奥行きが移動体領域内の画素の奥行きより大きい(すなわち、注目画素における被写体が移動体よりも奥に位置する)か否かを判断する。注目画素の奥行きが、移動体領域内の画素の奥行きより大きい場合、平滑化フィルタ375は、その画素の平滑化後の画素値にI(i,j)/B(i,j)を加算しない。一方、B(i,j)個の画素の中に移動体領域内の画素がない場合、または、注目画素の奥行きが移動体領域内の画素の奥行き以下である場合、平滑化フィルタ375は、B(i,j)個の画素の平滑化後の画素値にI(i,j)/B(i,j)を加算する。但し、平滑化フィルタ375は、B(i,j)個の中に移動体領域内の画素があるか否か、また、移動体が手前にあるか否かに関らず、常に、B(i,j)個の画素の平滑化後の画素値にI(i,j)/B(i,j)を加算してもよい。常に加算する構成とすれば、計算量が削減される。例えば、正規化処理の方向が−X方向であり、B(i,j)個の画素群の中に移動体領域内の画素がない場合、注目画素について下記式2の演算が実行される。
【数2】

【0041】
ここで、「+=」は、右辺の値を左辺に加算する演算を意味する。また、IijおよびBijは、I(i,j)およびB(i,j)を省略して表記したものである。
【0042】
続いて、平滑化フィルタ375は、注目画素から平滑化処理の方向へ連続するB(i,j)個の画素の中に移動体領域内の画素がない場合、または、移動体領域内の画素があっても注目画素の奥行きが移動体領域内の画素の奥行き以下である場合、正規化係数に1/B(i,j)を加算する。B(i,j)個の画素の中に移動体領域内の画素があり、かつ、注目画素の奥行きが移動体領域内の画素の奥行きより大きい場合、平滑化フィルタ375は、その画素の正規化係数に1/B(i,j)を加算しない。例えば、正規化の方向が−X方向であり、B(i,j)個の画素群の中に移動体領域内の画素がない場合、注目画素について下記式3の演算が実行される。
【数3】

【0043】
平滑化フィルタ375は、画像内の全ての画素のそれぞれを順に注目画素として、上記式2および式3の演算を実行する。これらの演算の結果、ある注目画素の平滑化後の画素値I'(i,j)において、その注目画素からX方向に連続したK個の画素の(平滑化後の画素値)/(フィルタ次数)が加算された場合を想定する。この場合、下記式4に例示するような、平滑化後の画素値が算出される。
【数4】

【0044】
また、ある画素の正規化係数n(i,j)において、その画素からX方向に連続したK個の画素の1/(フィルタ次数)が加算された場合、下記式5に例示するような、正規化係数が算出される。
【数5】

【0045】
なお、上記式4および式5は、平滑化の方向が−X方向の場合の式であるが、平滑化の方向がX方向である場合、上記式4および式5において、(i+k−1,j)を(i−k+1,j)に置き換えればよい。また、平滑化の方向が、−Y方向である場合、(i+k−1,j)が(i,j+k−1)に置き換えられる。平滑化の方向がY方向である場合、(i+k−1,j)が(i,j−k+1)に置き換えられる。
【0046】
ここで、上記式4において、加算回数であるKの値と、分母の値とが一致すれば、K個の画素出力値の平均値が算出されるが、加算回数および分母の値が一致しないことがある。例えば、画素(i,j)乃至(i+4,j)の5画素のフィルタ次数が全て「6」であるのに、6個目の画素(i+5,j)のフィルタ次数が「5」の場合である。この場合、上記式2に基づいて、画素(i,j)乃至(i+4,j)の5画素分の値がI'(i,j)に加算されるが、6個目のI(i+5,j)/B(i+5,j)の値はI'(i,j)に加算されない。このため、加算回数の「5」と、分母の「6」とが一致しなくなる。そこで、下記式6の演算が実行される。下記式6の演算を実行することを、以下、「正規化」と称する。
【数6】

【0047】
正規化により、K個の画素値の平均値、すなわちI'(i,j)が得られる。例えば、画素(i,j)乃至(i+4,j)とのフィルタ次数が全て「6」で、画素(i+5,j)のフィルタ次数が「5」である場合、上記式3に基づいてn(i,j)の値として「5/6」が算出される。このとき、上記式6の演算により、I'(i,j)の分母は「5」となり、加算回数と一致する。
【0048】
平滑化フィルタ375は、上述の平滑化処理を施した画像データを流し撮り画像データとして画像データ記憶部200に出力する。
【0049】
なお、奥行き情報取得部360は、特許請求の範囲に記載の奥行き取得部の一例である。また、フィルタ次数算出部374は、特許請求の範囲に記載の算出部の一例である。また、移動体領域検出部373は、特許請求の範囲に記載の領域検出部の一例である。
【0050】
図3は、第1の実施の形態における画像データおよび奥行き情報の一例を示す図である。図3(a)は、画像処理装置350に入力された画像データ500の一例である。画像データ500は、例えば、車およびドライバーからなる被写体501、木の被写体502、および、家の被写体503を含む。例えば、ユーザにより、被写体501が移動体として設定される。
【0051】
図3(b)は、画像データ500と同期して取得された奥行き情報510の一例を示す図である。奥行き情報510は、画像データ500に対応する、それぞれの画素に対応付けて、被写体の奥行きを画素値により示すデータである。例えば、奥行き情報510には、奥行きを示す画素値として輝度値が設定され、奥行きが小さいものほど、低い輝度値が設定される。奥行き情報510は、画像データ500における被写体501、502、503に対応する被写体511、512、513を含む。ここで、被写体511、被写体512、被写体513、および、背景のうちの被写体511の奥行きが最も小さく、被写体512、被写体513、背景の順に奥行きが大きくなるものとする。この場合、奥行き情報510において、最も手前の被写体511の輝度値が最も低く設定される。そして、被写体512、被写体513、それらの背景の順に奥行きに応じて輝度値が高くなるように設定される。なお、奥行き情報510において、奥行きが小さいほど、高い輝度値が設定されてもよい。
【0052】
図4は、第1の実施の形態における平滑化パラメータの設定方法の一例を説明するための図である。例えば、最初に、撮像装置100が画像データ500をタッチパネルに表示し、ユーザの操作の受け付けを開始する。ユーザが、画像データ500において、指などで、いずれかの画素を指定すると、撮像装置100は、その画素の位置を平滑化パラメータにおける移動体位置として設定する。続いて、ユーザが、移動体位置から画像内のいずれかの画素へ向けて指などをドラッグすると、撮像装置100は、移動体位置からドラッグ操作の終点の位置への方向を平滑化パラメータにおける移動方向として設定する。また、撮像装置100は、移動体位置から終点までの距離を平滑化パラメータにおける移動量として設定する。このように、ユーザは、移動体位置、移動方向、および、移動量を入力することにより、平滑化処理を実行しない領域、平滑化処理の方向、および、ぼかす量を任意に設定することができる。
【0053】
図5は、第1の実施の形態における平滑化パラメータの一例を示す図である。平滑化パラメータは、例えば、移動ベクトルおよび移動体位置を含む。移動ベクトルは、移動方向および移動量を示すベクトルである。例えば、始点の座標(300、500)から終点の座標(360,500)へ向けてドラッグ操作が行われた場合、始点の(300、500)が移動体位置として設定され、始点から終点へのベクトル(+60、0)が移動ベクトルとして設定される。
【0054】
図6は、第1の実施の形態における移動体領域の検出方法の一例を説明するための図である。図6(a)は、移動体位置が指定された画像データ500の一例である。図6(b)は、移動体領域が検出された奥行き情報510の一例である。図6(a)に示すように、移動体位置(300,500)が設定された場合、画像処理装置350は、奥行き情報を参照し、移動体位置に対応付けられた奥行きDtを取得する。そして、画像処理装置350は、Dt±αの範囲内の奥行きに係る画素群を移動体領域として検出する。αは、Dtとの差分として許容される値である。画像処理装置350は、検出した移動体領域の輪郭を示す情報を移動体領域として生成する。例えば、図6(b)に示すように、移動体位置を含む被写体511の領域が移動体領域として検出された場合、その被写体511の輪郭の部分(すなわち、太線の部分)の画素を示す情報が移動体領域情報として生成される。
【0055】
図7は、第1の実施の形態における、算出されたフィルタ次数の一例を示す図である。例えば、座標(0,0)および(1,0)に対応付けて奥行き20[m]が取得され、座標(200,100)および(201,100)に対応付けて奥行き10[m]が取得されたものとする。また、移動体領域内の座標(300,500)および(301,500)に対応付けて奥行き5[m]が取得されたものとする。移動量は、60[m]とし、上記式1において、係数Aは1とする。この場合、座標(0,0)および(1,0)について、上記式1より、フィルタ次数「3」が算出される。また、座標(200,100)および(201,100)について、上記(式1)より、フィルタ次数「6」が算出される。移動体領域内の座標(300,500)および(301,500)は、平滑化処理の対象でないため、上記式1が適用されず、フィルタ次数は「1」とされる。このように、移動体領域を除く領域において、奥行きが大きいほど、低いフィルタ次数が設定される。この結果、奥行きが大きいほど、ぼかし量が小さくなる。
【0056】
図8は、第1の実施の形態における、移動方向に基づいて平滑化した(すなわち、ぼかした)被写体の一例である。図8(a)は、平滑化前の被写体600の一例である。図8(b)は、左方向が移動方向として設定された場合において平滑化された被写体601の一例である。この場合、被写体600は、右方向に平滑化される。図8(c)は、右方向が移動方向として設定された場合において平滑化された被写体602の一例である。この場合、被写体600は、左方向に平滑化される。図8(d)は、下方向が移動方向として設定された場合において平滑化された被写体603の一例である。この場合、被写体600は、上方向に平滑化される。図8(e)は、左上方向が移動方向として設定された場合において平滑化された被写体604の一例である。この場合、被写体600は、右下方向に平滑化される。図8(b)乃至(e)に示すように、移動方向と逆方向に被写体が平滑化される。
【0057】
図9は、第1の実施の形態におけるフィルタ次数に従って平滑化した被写体の一例である。図9(a)は、平滑化前の被写体600の一例である。図9(b)は、フィルタ次数「6」に従って平滑化された被写体605の一例である。図9(c)は、フィルタ次数「3」に従って平滑化された被写体606の一例である。図9(b)および(c)に示すように、フィルタ次数が大きい被写体605のぼかし量の方が、フィルタ次数の小さい被写体606のぼかし量よりも大きくなる。
【0058】
図10は、第1の実施の形態における画素値、奥行き、および、フィルタ次数の一例を示す図である。図10(a)は、画像データ内の一部の画素群における画素値の一例を示す図である。画像内の座標(x,y)乃至(x+10,y)の11個の画素における画素値を、それぞれI(x,y)乃至I(x+10,y)とする。このうち、I(x,y)乃至I(x+4,y)は、移動体領域内の画素群の画素値であり、I(x+5,y)乃至I(x+10,y)は、静止している被写体の領域内の画素値である。
【0059】
図10(b)は、奥行き情報における奥行きの一例を示す図である。画像内の座標(x,y)乃至(x+10,y)に対応付けて、奥行きD(x,y)乃至D(x+10,y)が取得される。図10(c)は、設定されたフィルタ次数の一例を示す図である。画像内の座標(x,y)乃至(x+10,y)に対応付けて、フィルタ次数B(x,y)乃至B(x+10,y)が取得される。図10(b)および(c)に例示したように、それぞれの画素について奥行きが取得され、フィルタ次数が設定される。
【0060】
図11(a)乃至(f)は、第1の実施の形態における流し撮りを行った画像を示す図である。図11(a)乃至(f)は、時刻T0乃至T5のそれぞれの時刻にレンズに写る画像における画素群である。時刻T0、T1、T2、T3、T4、および、T5の順で時刻が早いものとする。また、I(x,y)乃至I(x+4,y)は、移動体領域内の画素の画素値であり、I(x+5,y)乃至I(x+10,y)は、移動体の手前に位置する被写体の画素の画素値である。移動体の移動方向は、−X方向とする。図11(a)に示すように、時刻T0においては、移動体の手前の被写体に、その移動体が隠された状態である。この移動体は、図11(b)乃至(f)に示すように、時刻T1乃至T5において、徐々に姿を現す。時刻T0乃至T5において、I(x+5,y)乃至I(x+10,y)における被写体は、実際には静止しているが、レンズに写る画像内においてはX方向に移動する。一方、I(x,y)乃至I(x+4,y)における移動体は、実際には移動しているが、レンズに写る画像内においては移動しない。これは、撮影者が移動体に追従して、移動方向に撮像装置自体を動かすためである。このため、時刻T0乃至T5の期間において撮影者がシャッターを開放して撮像すると、移動体には、ぼけが生じず、静止している被写体において移動方向と逆のX方向にぼけた流し撮り画像が得られる。撮像装置100は、このような流し撮り画像を通常の画像から生成することができる。
【0061】
図12は、第1の実施の形態における平滑化処理の前後の画像の一例を示す図である。図12(a)の上段の画素値は、平滑化処理前の画像内の画素値である。図12(a)の下段の画素値は、平滑化処理後の画像内の画素値である。図12において平滑化の方向(ぼかし方向)は、−X方向とする。また、画素(x,y)乃至(x+4,y)は移動体領域内の画素であり、画素(x+5,y)乃至(x+10,y)は、静止している被写体の画素である。画素(x+9,y)のフィルタ次数が6である場合を考える。この場合、上記式2に基づいて、下記式7に示すように、その画素から−X方向に連続する6個の画素のうち、移動体領域内の画素(x+4,y)を除く画素の平滑化後の画素値にI(x+9,y)/6が加算される。
【数7】

【0062】
ここで、画素(x+5,y)乃至(x+9,y)のフィルタ次数が全て6であるが、画素(x+10,y)のフィルタ次数が5である場合を考える。この場合、図12(b)に示すように、I(x+5,y)/6乃至I(x+9,y)/6の値が、I'(x+5,y)に加算されるが、6個目のI(x+10,y)/5の値はI'(x+5,y)に加算されない。このため、I'(x+5,y)において、加算回数の5と、分母の6とが一致しなくなる。そこで、正規化係数を演算して正規化を実行する。
【0063】
図13は、第1の実施の形態における正規化係数の一例を示す図である。図13の上段は、それぞれの画素のフィルタ次数であり、下段は、それぞれの画素の正規化係数である。画素(x+9,y)のフィルタ次数B(x+9,y)が6である場合、上記式3に基づいて、下記式8に示すように、その画素から−X方向に連続する6個の画素のうち、移動体を除く画素の正規化係数に1/6が加算される。
【数8】

【0064】
画素(x+5,y)乃至(x+9,y)のフィルタ次数が6で、画素(x+10,y)のフィルタ次数が5である場合、画素(x+5,y)の正規化係数n(x+5,y)は5/6となる。このため、I'(x+5,y)を正規化係数n(x+5,y)で除することにより、分母が加算回数に一致し、I(x+5,y)乃至I(x+9,y)の平均値がI'(x+5,y)として算出される。
【0065】
図14は、第1の実施の形態における流し撮り画像530の一例を示す図である。図14に示すように、移動体の被写体531は平滑化されず、背景の木の被写体532と家の被写体533とには平滑化処理が実行される。ここで、被写体532は、被写体533より手前に位置し、奥行きが小さいものとする。この場合、奥行きに応じて、被写体532のフィルタ次数より、被写体533のフィルタ次数が小さく設定される。このため、手前の被写体532のぼかし量より、遠くに位置する被写体533のぼかし量が小さくなる。このように、移動体の被写体531にぼけが生じず、背景においては奥行きに応じてぼかし量が変わるため、自然な流し撮り画像が得られる。
【0066】
[画像処理装置の動作例]
図15は、第1の実施の形態における画像処理装置350の動作の一例を示すフローチャートである。この動作は、画像の撮像とともに奥行きが計測され、平滑化パラメータを設定するための操作信号が入力されたときに開始する。画像処理装置350は、奥行き情報を取得する(ステップS910)。そして、画像処理装置350は、平滑化処理を実行する(ステップS920)。ステップS920の後、画像処理装置350は、画像処理のための動作を終了する。
【0067】
図16は、第1の実施の形態における平滑化処理の一例を示すフローチャートである。平滑化処理部370は、移動体位置および奥行きから、被写体領域を検出する(ステップS930)。平滑化処理部370は、被写体領域以外の領域において、移動量および奥行きから、対象画素に対応付けてフィルタ次数を算出する(ステップS940)。平滑化処理部370は、移動平均法に基づいて平均化処理を実行する(ステップS950)。ステップS950の後、平滑化処理部370は、平滑化処理を終了する。
【0068】
図17は、第1の実施の形態における平均化処理の一例を示すフローチャートである。平滑化方向は、−X方向であるものとする。平滑化フィルタ375は、まず、全ての平滑化後の画素値と正規化係数とを初期化する(ステップS951)。そして、平滑化フィルタ375は、iおよびjを0に初期化して、ループ処理を開始する。このループ処理において、平滑化フィルタ375は、後述するステップS953乃至958を実行して、iまたはjを1つ増分する。そして、平滑化フィルタ375は、iまたはjの増分後にi>W−1かつj>H−1であればループ処理を終了し、そうでなければステップS953に戻り、ループ処理を継続する(ステップS952)。
【0069】
ループ処理(ステップS952)において、平滑化フィルタ375は、画素(i,j)を注目画素としてする(ステップS953)。そして、平滑化フィルタ375は、kの値を1に初期化する。kは、1以上の整数である(ステップS954)。平滑化フィルタ375は、平滑化方向において注目画素からk番目の画素(i−k+1,j)の平滑化後の画素値に、Iij/Bijを加算する(ステップS955)。また、平滑化フィルタ375は、注目画素からk番目の画素(i−k+1,j)の正規化係数に、1/Bijを加算する(ステップS956)。平滑化フィルタ375は、kに1を加算する(ステップS957)。そして、平滑化フィルタ375は、画素(i−k+1,j)が移動体領域内の画素であり、かつ、画素(i−k+1,j)における被写体が移動体よりも奥に位置するか否かを判断する。被写体が移動体よりも奥に位置するか否かは、画素(i−k+1,j)の奥行きが移動体領域内の画素の奥行きより大きいか否かにより判断される(ステップS958)。画素(i−k+1,j)が移動体領域内の画素であり、かつ、被写体が移動体より奥に位置する場合(ステップS958:Yes)、平滑化フィルタ375は、ステップS957に戻る。画素(i−k+1,j)が移動体領域内の画素でない場合、または、被写体が移動体よりも奥に位置しない場合(ステップS958:No)、平滑化フィルタ375は、kがBijより大きいか否かを判断する(ステップS959)。kがBij以下であれば(ステップS959:No)、平滑化フィルタ375は、ステップS954に戻る。kがBijより大きければ(ステップS959:Yes)、平滑化フィルタ375は、iまたはjを1つ増分してループ処理(ステップS952)の終了判定を行う。ループ処理(ステップS952)が終了していなければ、平滑化フィルタ375は、ステップS953に戻る。
【0070】
ループ処理(ステップS952)が終了したのであれば、平滑化フィルタ375は、上記式4を実行して、全ての平滑化後の画素値を正規化する(ステップS960)。ステップS960の後、平滑化フィルタ375は、平均化処理を終了する。
【0071】
このように、第1の実施の形態によれば、画像処理装置350が、被写体までの奥行きを、画像内の画素に対応付けて取得する。そして、画像処理装置350は、移動体領域を除いた領域内の対象画素に対応する奥行きに応じた度合いの平滑化処理を、対象画素の画素値に対して所定の方向において実行して、ぼかしを生じさせる。移動体領域は平滑化されず、それ以外の領域は奥行きに応じた度合いで平滑化されるため、流し撮りを行って得られた画像と同様の画像が、撮影者の技量に依存せずに通常の画像から生成される。
【0072】
また、平滑化処理部370は、移動体位置が設定されると、その移動体位置の奥行きとの差分が所定値以内となる奥行きの画素群を移動体領域として検出する。このため、平滑化処理部370は、移動体領域全体が設定されていなくても、移動体位置から、移動体領域を検出することができる。
【0073】
また、平滑化処理部370は、単純移動平均フィルタを使用して前記平滑化処理を実行する。単純移動平均フィルタの使用により、平滑化処理部370は、被写体の輪郭を容易にぼかすことができる。
【0074】
なお、画像処理装置350を撮像装置100に内蔵しているが、画像処理装置350を撮像装置100に内蔵しないで画像処理装置350と撮像装置100とを別々の装置とすることもできる。
【0075】
また、画像処理装置350は、上記式1に基づいて移動量および奥行きからフィルタ次数を算出している。しかし、移動量が大きくなるほどフィルタ次数が大きくなり、奥行きが大きくなるほどフィルタ次数が小さくなるのであれば、フィルタ次数を算出する式は、上記式1に限定されない。例えば、画像処理装置350は、移動量Sや奥行きDのn乗(nは、2以上の整数)に基づいて、フィルタ次数を算出することもできる。
【0076】
また、平滑化パラメータ設定部371は、移動体位置を設定しているが、移動体領域の輪郭をユーザがスタイラスなどでなぞる操作などを検出して、平滑化パラメータ設定部371が、移動体領域そのものを設定する構成とすることもできる。
【0077】
また、画像処理装置350は、移動体領域の輪郭の画素を示す情報を移動体領域情報として生成しているが、移動体領域を示す情報であれば、移動体領域情報は、移動体領域の輪郭の画素を示す情報に限定されない。例えば、画像処理装置350は、移動体領域内の全ての画素を示す情報を移動体領域情報として生成することもできる。また、画像処理装置350は、移動体領域内の全画素を、1および0のうちの一方の値にし、それ以外の領域内の全画素を他方の値にした画像データを移動体領域情報とすることもできる。
【0078】
また、画像処理装置350は、単純移動平均フィルタを使用して平滑化処理を実行しているが、単純移動平均フィルタ以外のフィルタを使用して平滑化処理を実行することもできる。例えば、画像処理装置350は、単純移動平均フィルタの代わりに、加重移動平均フィルタや指数移動平均フィルタなどの移動平均フィルタを使用することができる。また、画像処理装置350は、これらの移動平均フィルタの代わりに、ガウシアンフィルタなどを使用して平滑化処理を実行することもできる。
【0079】
また、画像処理装置350は、奥行きに応じてフィルタ次数を設定しているが、平滑化の度合いを変更するパラメータであれば、フィルタ次数以外のパラメータを奥行きに応じて設定することもできる。例えば、画像処理装置350は、加重平均フィルタを使用する場合に、重み係数を奥行きに応じて設定することもできる。
【0080】
また、撮像装置100は、タッチパネルにおけるドラッグ操作を検出して、平均値パラメータを設定しているが、撮像装置100は、それ以外の操作を検出して平均値パラメータを設定してもよい。例えば、撮像装置100は、数値をボタンなどで入力する操作を検出して平均値パラメータを設定することもできる。
【0081】
<2.第2の実施の形態>
[撮像装置の構成例]
次に、図18乃至22を参照して、本技術の第2の実施の形態について説明する。図18は、第2の実施の形態における撮像装置101の一構成例を示すブロック図である。撮像装置101は、ステレオマッチング法により奥行き情報を生成する点において第1の実施の形態の撮像装置100と異なる。ステレオマッチング法の詳細については後述する。撮像装置101は、撮像部150の代わりに基準画像撮像部151および参照画像撮像部152を備え、画像処理装置350の代わりに画像処理装置351を備え、奥行き計測部250を備えない点において撮像装置100と異なる。
【0082】
基準画像撮像部151は、基準画像を撮像するものである。ここで、基準画像は、奥行きの算出において基準とされる画像である。例えば、撮像装置101の右側のレンズで撮像された右画像と左側のレンズで撮像された左画像とのうちの、いずれかが基準画像とされる。基準画像撮像部151は、撮像した基準画像を示す基準画像データを画像データ記憶部200に信号線155を介して出力する。
【0083】
参照画像撮像部152は、参照画像を撮像するものである。ここで、参照画像は、基準画像と同期して撮像された画像であり、奥行きの算出において参照される画像である。例えば、右画像および左画像のうちの、基準画像以外の画像が参照画像とされる。参照画像撮像部152は、撮像した参照画像を示す参照画像データを画像データ記憶部200に信号線156を介して出力する。
【0084】
画像処理装置351は、画像データ記憶部200から、基準画像データおよび参照画像データを読み出す。画像処理装置351は、基準画像および参照画像からステレオマッチング法を使用して、画素に対応付けて奥行きを算出する。画像処理装置351は、平滑化パラメータおよび奥行きに基づいて基準画像に対し、平滑化処理を実行する。
【0085】
[画像処理装置の構成例]
図19は、第2の実施の形態における画像処理装置351の一構成例を示すブロック図である。画像処理装置351は、奥行き情報取得部360の代わりに奥行き情報取得部361を備える点において第1の実施の形態の画像処理装置350と異なる。
【0086】
図20は、第2の実施の形態における奥行き情報取得部361の一構成例を示すブロック図である。奥行き情報取得部361は、視差検出部362および奥行き生成部363を備える。
【0087】
視差検出部362は、基準画像および参照画像から視差を検出するものである。具体的には、視差検出部362は、画像データ記憶部200から、基準画像データおよび参照画像データを読み出す。視差検出部362は、基準画像内のいずれかの画素を対象点とし、参照画像内において、その対象点と対応する対応点を求める。視差検出部362は、対象点の水平座標と、対応点の水平座標との間の差分の絶対値を視差として検出する。視差検出部362は、全ての画素について、視差を検出して奥行き生成部363に出力する。
【0088】
奥行き生成部363は、視差から奥行き情報を生成するものである。視差から奥行きを求める方法については、後述する。奥行き生成部363は、画素に対応付けて奥行きを求め、奥行き情報を生成する。奥行き生成部363は、奥行き情報を平滑化処理部370に出力する。
【0089】
図21は、第2の実施の形態における視差と奥行きとの関係の一例を示す図である。基準画像における対象点の水平座標をXとし、参照画像における対応点の水平座標をXとする。この場合、視差dは、下記の式9により算出される。
d=|X−X|・・・式9
【0090】
そして、基準画像撮像部151と参照画像撮像部152とのそれぞれのレンズ間の間隔をBとし、焦点距離をfとする。この場合、対象点、対応点、および、被写体がなす三角形と、基準画像撮像部151のレンズ、参照画像撮像部152のレンズ、および、被写体がなす三角形とは相似である。このため、下記の式10に示す関係式が成立する。
d:f=B:D・・・式10
【0091】
上記式10において「D」は、被写体までの奥行きである。上記式10を変形することにより、下記の式11が得られる。
D=Bf/d・・・式11
【0092】
およびfは、既知の値であるから、検出された視差dを上記式11に代入することにより、奥行きDが算出される。
【0093】
[画像処理装置の動作例]
図22は、第2の実施の形態における画像処理装置351の動作の一例を示すフローチャートである。画像処理装置351の動作は、ステップS910の代わりにステップS911およびS912を実行する点において第1の実施形態の画像処理装置350の動作と異なる。
【0094】
画像処理装置351は、基準画像および奥行き画像から視差を検出する(ステップS911)。そして、画像処理装置351は、上記式11に基づいて視差から奥行きを算出する(ステップS912)。
【0095】
このように、本技術の第2の実施の形態によれば、画像処理装置351は、基準画像および参照画像から視差を検出し、その視差に基づいて奥行きを生成する。このため、画像処理装置351自身が奥行き情報を生成することができる。
【0096】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0097】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disk)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))等を用いることができる。
【0098】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得部と、
前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理部と
を具備する画像処理装置。
(2)前記平滑化処理部は、
前記平滑化処理の特性を示す平滑化パラメータを設定する平滑化パラメータ設定部と、
前記設定された平滑化パラメータおよび前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する平滑化処理実行部と
を備える前記(1)記載の画像処理装置。
(3)前記平滑化処理実行部は、
前記平滑化パラメータに規定される前記量および前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理の度合いを算出する算出部と、
前記算出された度合いの前記平滑化処理を実行する平滑化フィルタと
を備える
前記(2)記載の画像処理装置。
(4)前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の方向として前記平滑化処理を実行する方向を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、前記取得された奥行きに基づいて前記設定された方向において前記平滑化処理を実行する
前記(2)または(3)記載の画像処理装置。
(5)前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の領域として前記平滑化処理を実行しない領域を示す情報を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、前記設定された領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する
前記(2)乃至(4)のいずれかに記載の画像処理装置。
(6)前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の領域内の1つ以上の前記画素を示す情報を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、
前記1つ以上の前記画素に対応する前記奥行きとの差分が所定値以下の前記奥行きに係る前記画素を含む領域を検出する領域検出部と、
前記検出された領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する平滑化フィルタと
を備える前記(2)乃至(4)のいずれかに記載の画像処理装置。
(7)前記平滑化処理部は、移動平均フィルタを使用して前記平滑化処理を実行する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の画像処理装置。
(8)前記平滑化処理部は、ガウシアンフィルタを使用して前記平滑化処理を実行する
前記(1)乃至(6)のいずれかに記載の画像処理装置。
(9)前記画像は、前記奥行きの生成において基準とされる基準画像と参照される参照画像とを含み、
前記奥行き取得部は、
前記基準画像内のいずれかの前記画素と当該画素に対応する前記参照画像内の前記画素との間の距離を視差として検出する視差検出部と、
前記検出された視差に基づいて前記基準画像内の前記画素に対応付けて前記奥行きを生成する奥行き生成部とを備え、
前記平滑化処理部は、前記基準画像内の前記所定の領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記平滑化処理を実行する
前記(1)乃至(8)のいずれかに記載の画像処理装置。
(10)奥行き取得部が、被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得手順と、
平滑化処理部が、前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理手順と
を具備する画像処理装置の制御方法。
(11)奥行き取得部が、被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得手順と、
平滑化処理部が、前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0099】
100、101 撮像装置
150 撮像部
151 基準画像撮像部
152 参照画像撮像部
200 画像データ記憶部
250 奥行き計測部
300 操作部
350、351 画像処理装置
360、361 奥行き情報取得部
362 視差検出部
363 奥行き生成部
370 平滑化処理部
371 平滑化パラメータ設定部
372 平滑化処理実行部
373 移動体領域検出部
374 フィルタ次数算出部
375 平滑化フィルタ
400 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得部と、
前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理部と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記平滑化処理部は、
前記平滑化処理の特性を示す平滑化パラメータを設定する平滑化パラメータ設定部と、
前記設定された平滑化パラメータおよび前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する平滑化処理実行部と
を備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記平滑化処理実行部は、
前記平滑化パラメータに規定される前記量および前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理の度合いを算出する算出部と、
前記算出された度合いの前記平滑化処理を実行する平滑化フィルタと
を備える
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の方向として前記平滑化処理を実行する方向を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、前記取得された奥行きに基づいて前記設定された方向において前記平滑化処理を実行する
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の領域として前記平滑化処理を実行しない領域を示す情報を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、前記設定された領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する
請求項2記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記平滑化パラメータ設定部は、前記所定の領域内の1つ以上の前記画素を示す情報を含む前記平滑化パラメータを設定し、
前記平滑化処理実行部は、
前記1つ以上の前記画素に対応する前記奥行きとの差分が所定値以下の前記奥行きに係る前記画素を含む領域を検出する領域検出部と、
前記検出された領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記取得された奥行きに基づいて前記平滑化処理を実行する平滑化フィルタと
を備える請求項2記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記平滑化処理部は、移動平均フィルタを使用して前記平滑化処理を実行する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記平滑化処理部は、ガウシアンフィルタを使用して前記平滑化処理を実行する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記画像は、前記奥行きの生成において基準とされる基準画像と参照される参照画像とを含み、
前記奥行き取得部は、
前記基準画像内のいずれかの前記画素と当該画素に対応する前記参照画像内の前記画素との間の距離を視差として検出する視差検出部と、
前記検出された視差に基づいて前記基準画像内の前記画素に対応付けて前記奥行きを生成する奥行き生成部とを備え、
前記平滑化処理部は、前記基準画像内の前記所定の領域を除いた領域内の画素を前記対象画素として前記平滑化処理を実行する
請求項1記載の画像処理装置。
【請求項10】
奥行き取得部が、被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得手順と、
平滑化処理部が、前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理手順と
を具備する画像処理装置の制御方法。
【請求項11】
奥行き取得部が、被写体までの奥行きを前記被写体が撮像された画像内の画素に対応付けて取得する奥行き取得手順と、
平滑化処理部が、前記画像内の所定の領域を除いた領域内の画素を対象画素として当該対象画素に対応する前記奥行きに応じた度合いの平滑化処理を前記対象画素の画素値に対して所定の方向において実行する平滑化処理手順と
をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−253713(P2012−253713A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127098(P2011−127098)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】