説明

画像処理装置、撮像装置、画像記録再生装置、および起動制御方法

【課題】画像処理装置および撮像装置において、複数の画像フォーマットに対応可能で、かつ消費電力を抑制する。
【解決手段】FPGA回路として構成された信号処理回路には、複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を信号処理回路に構築するための複数のコンフィグレーションデータが格納されたフラッシュメモリが接続されている。カムコーダに電源が投入されると(ステップS5)、最初にシステムCPUが起動され(ステップS6)、つぎに、画像処理装置内の各ブロックが起動されるとともに(ステップS7)、前回の終了時に設定されていた画像フォーマットに対応するコンフィグレーションデータが選択されて(ステップS8)、フラッシュメモリから対応する信号処理回路にロードされ、その画像フォーマットの処理に特化したロジック回路が構築される(ステップS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の動作フォーマットで映像信号を処理するカムコーダなどに好適な画像処理装置、撮像装置、画像記録再生装置、および起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、映像信号処理においてディジタル信号処理化がすう勢であり、ビデオカメラなどの画像処理装置に用いられる信号処理回路もディジタル化されている。ビデオカメラでは、そこに用いられる信号処理回路がディジタル化されると、たとえば、カメラヘッド部においてフレーム画像の画素数やアスペクト比を変えるだけで、一台のカメラをある時は映画撮影用のフォーマットで使用し、別のときには、ニュース取材用のENG(Electronic News Gathering)フォーマットで使用することが可能になる。
【0003】
従来のビデオカメラでは、動作フォーマットの切換えに対応するには、複数のディジタル映像信号処理回路を具備しなければならず、回路規模や装置規模が膨大になるという問題があった。
【0004】
一方、最近のビデオカメラでは、任意に論理回路構成が変更できるFPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)回路を組み込んでおき、様々な仕様変更などに容易に対応できるようにしたものが多くなっていた。FPGA回路は、多数の論理回路セルと、各セルを任意に切換えて配線するスイッチングトランジスタと、配線状態を記憶するメモリなどから構成され、このFPGA回路に外部のROM(Read Only Memory)などに格納されたコンフィグレーションデータ(以下、コンフィグデータという)をロードすることによって、様々な信号処理回路を構築することが可能になる。
【0005】
上述したように、ビデオカメラにおいては、その使用目的に応じて内部の映像信号処理回路をそれぞれ異なる画像フォーマットを処理するように切換えれば、一台で多様なディジタル映像信号を処理することができる。FPGA回路を用いた場合、ビデオカメラ内部のそれぞれの信号処理回路を構成するFPGA回路に対して、あらかじめすべての画像フォーマットでの処理に対応する回路機能を構築しておいて、どの画像フォーマットが選択されても、それに応じてカメラ内部でスイッチ回路などを切換えることによって、FPGA回路内の必要な回路領域が動作するように構成されていた。
【0006】
なお、FPGA回路を用いた従来の装置としては、アプリケーションプログラムとともにFPGAボードに書き込むべき回路データをロードし、FPGAボードをそのアプリケーションプログラムにおける専用の論理回路として使用できるようにしたコンピュータ装置があった(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−150943号公報(段落番号〔0015〕〜〔0016〕、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、FPGA回路を構成するメモリはSRAM(Static Random Access Memory)などであって、装置電源をオフすると、書き込まれたデータがすべて消えるため、起動時やリスタート時には常にコンフィグデータによる回路構築が必要である。しかし、ビデオカメラにFPGA回路を設けた場合、そのFPGA回路にあらゆる画像フォーマットに対応する回路構築がなされていると、ビデオカメラで現実には使用されていない回路部分にも電流が流れ、プログラム切換えのスイッチでも電流が消費されるなど、消費電流が大きくなって電源消費量が増える。そのため、バッテリ使用のビデオカメラでは連続撮影可能時間が短くなるなどの不具合があった。
【0008】
また、ビデオカメラで処理可能な画像フォーマットが多様化してくると、電源投入などの起動時においてFPGA回路にすべてのコンフィグデータをダウンロードする時間が長くなり、あるいはコンフィグデータが多くなってプログラム容量が不足するおそれも生じていた。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、複数の画像フォーマットに対応可能で、かつ消費電力が抑制された画像処理装置、撮像装置、画像記録再生装置、および画像処理装置における起動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では上記問題を解決するために、画像信号を処理する画像処理装置において、ディジタル画像信号を処理する回路となるプログラム可能なロジック回路と、前記プログラム可能なロジック回路に複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を構築するためのコンフィグレーションデータを格納したデータ記憶部と、前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記コンフィグレーションデータのいずれか1つを選択して、前記プログラム可能なロジック回路に前記画像フォーマットのいずれか1つに対応する回路構築を指示する起動制御部とを有することを特徴とする画像処理装置が提供される。
【0011】
このような画像処理装置では、複数の画像フォーマットの処理に個別に対応したコンフィグレーションデータがデータ記憶部に格納され、それらのうちの1つのコンフィグレーションデータをプログラム可能なロジック回路に対してロードすることで、そのロジック回路が対応する画像フォーマットのディジタル画像信号の処理に特化した回路として構築される。そして、起動制御部は、画像処理装置の起動のタイミングで、データ記憶部内のいずれか1つのコンフィグレーションデータを選択してプログラム可能なロジック回路にロードさせて、特定の画像フォーマットに対応する信号処理回路を構築させるように制御する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プログラム可能なロジック回路を用いることで複数の画像フォーマットの処理に対応でき、かつ、画像処理装置を起動した際には、ある1つの画像フォーマットの処理に特化した回路がそのロジック回路に構築されるので、その画像フォーマットの処理に必要のない回路が構築されて動作することがなくなり、そのロジック回路の消費電力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の画像処理装置として、撮像手段と記録手段とが一体となったカムコーダについて図面を参照して説明する。なお、ここでは例として、磁気テープを用いた記録手段を備えるものとする。
【0014】
図1は、カムコーダの主要構成を示すブロック図である。
カメラとVTR(Video Tape Recorder)とが一体に構成されたカムコーダでは、カメラヘッドブロック(CHB)1、A/D変換回路(AD)2およびデジタルカメラプロセッサ(DCP)3によってカメラ信号処理部A1が構成され、ビデオプロセッサ(VPR)4、イコライザ/ECC(Error Correcting Code)回路(EQ/ECC)5、およびドラムヘッド6によって記録テープ7に対する記録再生部A2が構成されている。
【0015】
カメラ信号処理部A1のカメラヘッドブロック(CHB)1には、CCD(Charge Coupled Devices)や光学系部品が含まれ、結像した画像を電気的な映像信号に変換して、A/D変換回路(AD)2に出力している。なお、このカメラヘッドブロック(CHB)1では、出力する映像信号のフレーム周波数が可変とされていてもよい。
【0016】
A/D変換回路(AD)2は、カメラヘッドブロック(CHB)1からのアナログ映像信号をディジタル信号に変換し、R(赤)、G(緑)、B(青)の3原色信号の状態でデジタルカメラプロセッサ(DCP)3に出力する。なお、このA/D変換回路(AD)2では、変換時の量子化ビット数が可変とされていてもよい。
【0017】
デジタルカメラプロセッサ(DCP)3は、映像信号に補正、補償などを加えて、所定の規格に合致したフォーマットのディジタル映像信号になるように処理している。ここでは、A/D変換回路(AD)2からの10ビットあるいは12ビットのディジタル映像信号(LVDS:Low Voltage Differential Signaling)が入力され、この信号をシリアル変換したフレーム単位の画像信号(S−LVDS)が記録再生部A2のビデオプロセッサ(VPR)4に出力される。
【0018】
記録再生部A2のビデオプロセッサ(VPR)4は、メモリPR,MYを使用して、画像の動き補償処理を含む、MPEG(Moving Picture Experts Group)方式などに従ったエンコード(圧縮)処理およびデコード(展開)処理を行っている。イコライザ/ECC回路(EQ/ECC)5は、記録再生信号に適応的なイコライジング処理を施して特性補償を行うフィルタ回路や、エラー訂正処理回路、ドラムヘッド6の回転を制御するための制御回路などから構成される。
【0019】
カメラ信号処理部A1を制御するカメラコントロール部A3は、カメラコントローラ(AT)8およびビデオD/A変換回路(VDA)9から構成されている。カメラコントローラ(AT)8は、カメラヘッドブロック(CHB)1でのレンズフォーカスやズーム制御、デジタルカメラプロセッサ(DCP)3での画質制御、露出制御、ホワイトバランス制御などを行っている。また、ビデオD/A変換回路(VDA)9は、デジタルカメラプロセッサ(DCP)3で処理された画像信号を受け取って、ヴューファインダなどにモニタ映像を映し出すための映像信号を出力している。
【0020】
ビデオD/A変換回路(VDA)9には、外部機器を接続するコネクタCN1,CN2を介して、それぞれオーディオ入力などのためのカメラアダプタ(CA1,CA2)9a,9bが接続されている。また、カメラコントローラ(AT)8には内部パネル8aを介して各種端末装置などが接続される。
【0021】
VTR側のシステムコントロール部A4は、システムコントローラ(SA)10、サーボコントローラ(SV)11、センサ回路12、メカデッキ13、コネクタパネル14、ブルートゥース(Bluetooth,登録商標)端子(BT)15aを介して遠隔操作するコントロールパネル15、および主電源(PS)16などから構成されている。主電源(PS)16には図示しない電源スイッチが設けられ、複数のDC/DCコンバータからなるレギュレータ17a,17bを介して、各ブロックへ電源供給している。さらに、各ブロックの電源供給は、コントロールパネル15の電源スイッチの操作によっても可能となっている。
【0022】
ここで、システムコントローラ(SA)10には、レギュレータ17aを介して主電源(PS)16が接続されて電源供給されている。また、システムコントローラ(SA)10は、コネクタパネル14を介して各種のスイッチ類からの信号が入力され、ビデオプロセッサ(VPR)4に対する制御を行っている。さらに、カメラコントローラ(AT)8を介してカメラ側を制御している。なお、サーボコントローラ(SV)11は複数のモータドライバを備え、メカデッキ13による記録テープ7の走行制御を行っている。
【0023】
つぎに、カムコーダを構成する各ブロックの詳細構成について説明する。
図2は、デジタルカメラプロセッサ3の詳細構成を示すブロック図である。
デジタルカメラプロセッサ3は、プリプロセッサ(PRE)31、カメラプロセッサ32、信号処理回路33〜35などから構成されている。プリプロセッサ31は、ディジタル映像信号を受け入れるための信号処理回路である。カメラプロセッサ32は、A/D変換回路2から入力された映像信号に対して、RAM32aに記憶したデータに基づいてγ補正などの非線形処理や輪郭強調、色補正など各種のカメラプロセス処理を施し、この画像信号を、所定の色空間フォーマットの信号に変換する。ここでは例として、いわゆる4:2:2モードのYC(輝度/色差)信号と、4:4:4モードと呼ばれるRGB信号として出力することができるものとする。信号処理回路33は、記録用の映像信号をシリアルデータに変換して出力するとともに、再生用の映像信号をパラレルデータに変換するものである。また、信号処理回路34は再生映像とカメラ映像のいずれかを選択し、文字などの付加情報を生成する回路であり、信号処理回路35は、再生用の映像信号をカメラコントロール部A3に出力する信号に変換するための回路である。
【0024】
このうち、プリプロセッサ31と信号処理回路33,35には後述する構成のFPGA回路が用いられており、それぞれのFPGA回路に対応するコンフィグデータを格納するための記憶回路として、フラッシュメモリ(CF:コンフィグ・フラッシュ)31a,33aおよび35aがそれぞれに接続されている。また、カメラプロセッサ32には外部メモリとしてRAM32aが接続されている。
【0025】
図3は、ビデオプロセッサ4の詳細構成を示すブロック図である。
ビデオプロセッサ4は、回路内で信号をやり取りするための信号処理回路41、カメラ側から送られてくるディジタル映像信号を圧縮符号化する圧縮回路42、記録テープ7から再生された再生映像信号を伸張復号化するための伸張回路43、圧縮回路42および伸張回路43にそれぞれ接続されたRAM42aおよび43a、イコライザ/ECC回路(EQ/ECC)5に出力する圧縮信号をシリアル変換するパラレルシリアル(P/S)回路44、およびイコライザ/ECC回路(EQ/ECC)5からシリアル信号として送られてくる再生映像信号をパラレル変換するシリアルパラレル(S/P)回路45などから構成されている。圧縮回路42には、圧縮時に隣接フレームを格納する予測回路4aが接続され、信号処理回路41には送信バッファ用のメモリ回路4bが接続されている。このうち、信号処理回路41には後述する構成のFPGA回路が用いられており、対応するコンフィグデータを格納するための記憶回路としてフラッシュメモリ41aが接続されている。
【0026】
図4は、カメラコントローラ8とビデオD/A変換回路9の詳細構成を示すブロック図である。
カメラコントローラ8はカメラ用CPU(Central Processing Unit)81を備え、ビデオD/A変換回路9は映像および音声信号を変換して出力するための信号処理回路91を備えている。
【0027】
カメラコントローラ8には、冷却用のファン82、レンズ信号入力端子83、リモート信号端子84、メタ入力端子85、メモリスロット86のほか、内部パネル8aを介してメニューエンタ端子81a、メニュースイッチ81b、液晶モニタ(LCD:Liquid Crystal Display)端子81c、アサイナブルボタン81d、およびVTRスタートストップボタン81eなどが接続され、これら端子や機器類との間で授受される制御信号などはカメラ用CPU81で制御される。
【0028】
ビデオD/A変換回路9は、ヴューファインダへの2つの信号出力端子VF1,VF2、映像同期(Y/SYNC/VBS)信号の出力端子92、HD−SDI(High Definition−Serial Digital Interface)信号を取り出してモニタに出力するための端子93、およびRS232C端子94などを備えている。また、D/A変換用の信号処理回路91には後述する構成のFPGA回路が用いられており、対応するコンフィグデータを格納するための記憶回路としてフラッシュメモリ91aが接続されている。
【0029】
図5は、システムコントローラ10の詳細構成を示すブロック図である。
システムコントローラ10は、VTRシステム全体を制御するためのシステムCPU100、ディジタル音声とアナログ音声との変換を行うオーディオコンバータ101、および映像編集用のタイムコードやタイミング信号などを生成する信号処理回路102などから構成されている。システムコントローラ10には、冷却用のファン103、表示用LED(Light Emitting Diode)104、カセット排出ボタン105のほか、コネクタパネル14を介してUSB(Universal Serial Bus)端子14a、オーディオ入力端子14b、音声ボリューム14c、オーディオ出力端子14d、タイムコード(TC)の入出力端子14e,14fなどが接続されている。
【0030】
ここで、システムCPU100は、カメラコントローラ8との間でCam−VTRプロトコルなどのコントロール信号をやり取りし、ビデオD/A変換回路(VDA)9の信号処理回路91との間で音声出力制御信号をやり取りしている。また、信号処理回路102には後述する構成のFPGA回路が用いられており、対応するコンフィグデータを格納するための記憶回路としてフラッシュメモリ102aが接続されている。
【0031】
つぎに、このカムコーダに設けられた各FPGA回路に対するコンフィグデータのロード手順について説明する。
図6は、カムコーダの終了および起動手順を示すフローチャートである。
【0032】
ステップS1において、システムCPU100は、カムコーダの電源オフが指示されたかどうかを判断する。電源オフが指示されるまでは、このステップS1が繰り返し実行される。電源オフが指示されると、ステップS2に進む。
【0033】
ステップS2において、システムCPU100は、次回の画像フォーマットの変更が指示されたかどうかを判断する。フォーマット変更の指示があった場合にはステップS3に進み、指示がなかった場合にはステップS4に進む。
【0034】
ステップS3において、システムCPU100は、新たな画像フォーマットを示す識別情報を、このシステムCPU100に接続された図示しない不揮発性メモリに保存する。なお、ステップS2で画像フォーマットの変更が指示されていなかった場合には、その時点で処理されている画像フォーマットを示す識別情報が、不揮発性メモリに記憶されていることになる。
【0035】
ステップS4において、システムCPU100は、カムコーダの各部の終了処理を実行し、カムコーダの電源がオフされる。
ステップS5では、カムコーダの電源スイッチによって、カムコーダに電源が投入される。その結果、ステップS6において起動メインCPUであるシステムCPU100が立ち上がる。
【0036】
システムCPU100の起動処理が終了すると、続くステップS7において、システムCPU100からの指令に応じてカムコーダの各ブロックを立ち上げる処理が実行される。これとともに、ステップS8において、各FPGA回路に接続されたフラッシュメモリから読み出すコンフィグデータが選択される。具体的には、システムCPU100は、不揮発性メモリに記憶された画像フォーマットの識別情報に応じて、各フラッシュメモリに対して選択信号を出力し、各フラッシュメモリの制御回路は、システムCPU100からの選択信号に応じた読み出しアドレスから、指定されている画像フォーマットに対応するコンフィグデータを読み出す。つぎに、ステップS9において、フラッシュメモリから読み出されたコンフィグデータが対応するFPGA回路に供給され、所定の画像フォーマットに対応した回路構築が開始される。
【0037】
なお、ここではカムコーダの終了および電源投入に伴うカムコーダの終了・起動手順として説明したが、カムコーダの再起動時であっても、不揮発性メモリに保存された画像フォーマットの識別情報に基づいて、選択されたコンフィグデータだけをFPGA回路に供給することができる。たとえば、ある画像フォーマットで処理中に、コントロールパネル15などから画像フォーマットの変更が指示されたときに、システムにリセットがかけられ、図6に示すような電源オフおよび電源オンの処理が自動的に実行されるようにしてもよい。
【0038】
また、上記の説明では、色空間フォーマットの異なる2種類の画像フォーマット(4:2:2モード、4:4:4モード)の画像信号を処理できるようにした場合の例を示したが、このような色空間フォーマットの違いだけでなく、色成分間あるいは色成分と輝度成分との間のビット割り当て(ピクセルフォーマット)、フレーム周波数、量子化ビット数の異なる画像フォーマット、あるいはこれらを複合的に組み合わせた多くの画像フォーマットに対応することも可能である。このような場合には、基本的に、画像フォーマットごとにコンフィグデータが個別に用意されてフラッシュメモリに格納され、システムCPU100からの制御に応じていずれか1つのコンフィグデータが選択されて、対応するFPGA回路に供給される。また、カムコーダの全体に設けられた複数のFPGA回路を考えた場合、異なる画像フォーマットが指定されて起動または再起動された場合でも、たとえば上記のフレーム周波数が同じであれば、同じコンフィグデータがロードされるFPGA回路があってもよい。
【0039】
以上の処理によれば、カムコーダの立ち上げ時において、各FPGA回路に短時間で必要なコンフィグデータだけをダウンロードできる。しかも、カメラ信号処理部A1、記録再生部A2、カメラコントロール部A3、システムコントロール部A4における信号処理回路が、それぞれ所定の画像フォーマットに対応するように構築されたFPGA回路によって構成されるので、カムコーダのモード変更への対応が容易になる。
【0040】
また、FPGA回路に必要な回路機能だけを構築するようにしたので、信号処理回路の内部における不要な回路電流を削減できる。カムコーダがたとえば4:2:2フォーマットに対応する機能だけを必要とする場合に、4:4:4フォーマットに対応する機能部分を持たないFPGA回路が構成されることになるため、たとえば選択された画像フォーマットの処理に必要な回路部分を選択するためのスイッチング部分における電流消費がなくなる。したがって、FPGA回路における電流消費を抑制して、カムコーダなどの省電力化が可能である。
【0041】
さらに、上述した色空間フォーマットやピクセルフォーマット、フレーム周波数、量子化ビット数などの異なる複数の画像フォーマットの画像データを処理できるようになっている場合、カムコーダ内のFPGA回路で構成されていない部分においては、それらの画像フォーマットのすべてに対応できるように必要な回路が設けられているが、FPGA回路に特定の画像フォーマットで必要な回路機能だけを構築することで、その他の回路部分においては現在の画像フォーマットで必要とならない回路領域の動作を完全に停止させることができるようになる。たとえば、画像信号の処理帯域が比較的小さい画像フォーマットが選択されているときには、そのときに不要な信号線をたとえばハイインピーダンス状態としてその信号線に画像信号や制御信号を流さないようにしたり、動作しない回路ブロックへのクロック供給や電源供給を停止させることなどができるようになる。したがって、カムコーダにおける不要な回路電流を一層削減し、消費電力を抑制できる。特に、色空間フォーマットやピクセルフォーマット、フレーム周波数、量子化ビット数などの組合せに応じた多数の画像フォーマットに対応できるようにしたカムコーダでは、このような省電力効果が大きくなる。
【0042】
つぎに、上記のカムコーダにおける別の起動手順の例を挙げる。ここでは、上述したシステムコントローラ10の信号処理回路102を例にして説明する。
図7は、FPGA回路のプログラム制御装置の一例を示す図である。
【0043】
カムコーダのコントロールパネル15には電源スイッチなどが設けられ、カムコーダに電源が投入されると、上述したように、最初にシステムCPU100が起動するように構成されている。モード切換え回路110は、不揮発性(NV)メモリ111とスイッチ回路112とから構成されていて、フラッシュメモリ102aとシステムCPU100との間がスイッチ回路112によって接続されている。フラッシュメモリ102aは、FPGA回路である信号処理回路102に接続され、そこには複数の画像フォーマットのそれぞれに対応した回路を信号処理回路102に構築するための複数のコンフィグデータが格納されている。
【0044】
不揮発性(NV)メモリ111は、システムCPU100からディジタル画像信号の処理モードに応じたモード指令信号を受け取り、その後、フラッシュメモリ102aから信号処理回路102に所定のコンフィグレーションデータを供給するように、フラッシュメモリ102aに対して指令する。すなわち、システムCPU100から直接指令を受けることなく、このモード切換え回路110から出力された指令によって2種類のモードデータ、すなわち4:2:2モードと4:4:4モードのいずれか1つのコンフィグデータが選択され、信号処理回路102に読み込まれる。
【0045】
図8は、上記のプログラム制御装置を用いた場合の終了および起動の手順を示すフローチャートである。
ステップS11において、システムCPU100は、カムコーダの電源オフが指示されたかどうかを判断する。電源オフが指示されるまでは、このステップS11が繰り返し実行される。電源オフが指示されると、ステップS12に進む。
【0046】
ステップS12において、システムCPU100は、次回の画像フォーマットの変更が指示されたかどうかを判断する。フォーマット変更の指示があった場合にはステップS13に進み、指示がなかった場合にはステップS14に進む。
【0047】
ステップS13において、システムCPU100は、新たな画像フォーマットに対応するモード指令信号を生成してスイッチ回路112に出力する。スイッチ回路112では、モード指令信号が不揮発性メモリ111に保存される。なお、ステップS12で画像フォーマットの変更が指示されていなかった場合には、その時点で処理されている画像フォーマットに対応するモード指令信号が、不揮発性メモリ111に記憶されていることになる。
【0048】
ステップS14において、システムCPU100は、カムコーダの各部の終了処理を実行し、カムコーダの電源がオフされる。
ステップS15では、カムコーダの電源スイッチによって、カムコーダに電源が投入される。その結果、ステップS16において起動メインCPUであるシステムCPU100が立ち上がる。そして、システムCPU100の起動処理が終了すると、続くステップS17において、システムCPU100からの指令に応じてカムコーダの各ブロックを立ち上げる処理が実行される。
【0049】
一方、ステップS18の処理は、ステップS16でのシステムCPU100の起動処理の完了後、あるいはその完了の前に実行される。ステップS18では、不揮発性(NV)メモリ111からモード指令信号が読み出され、この信号に応じてフラッシュメモリ102aから読み出し対象のコンフィグデータが選択される。ステップS19では、選択されたコンフィグデータだけがFPGA回路である信号処理回路102に供給され、所定の画像フォーマットに対応した回路構築が開始される。
【0050】
このように、図7の構成によれば、システムCPU100の起動処理の完了を待つことなく、フラッシュメモリから必要なコンフィグデータをFPGA回路にロードすることが可能となり、カムコーダの起動処理に要する時間を一層短縮できる。特に、画像フォーマットの変更操作を行ったときに必ずシステムがリセットされる構成とした場合には、変更後の画像フォーマットでの処理を短時間で開始できるようになり、効果的である。
【0051】
以上の実施の形態では、本発明をカムコーダに適用した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、たとえばVTRなどの画像記録再生機能だけを持つ装置に適用しても同様の効果を得ることができるし、逆に画像記録再生機能を持たず、撮像機能や撮像画像の画像処理機能などを持つカメラに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】カムコーダの主要構成を示すブロック図である。
【図2】デジタルカメラプロセッサの詳細構成を示すブロック図である。
【図3】ビデオプロセッサの詳細構成を示すブロック図である。
【図4】カメラコントローラとビデオD/A変換回路の詳細構成を示すブロック図である。
【図5】システムコントローラの詳細構成を示すブロック図である。
【図6】カムコーダの終了および起動手順を示すフローチャートである。
【図7】FPGA回路のプログラム制御装置の一例を示す図である。
【図8】図7のプログラム制御装置を用いた場合の終了および起動の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1……カメラヘッドブロック、2……A/D変換回路、3……デジタルカメラプロセッサ、4……ビデオプロセッサ、5……イコライザ/ECC回路、6……ドラムヘッド、7……記録テープ、8……カメラコントローラ、8a……内部パネル、9……ビデオD/A変換回路、9a,9b……カメラアダプタ、10……システムコントローラ、11……サーボコントローラ、12……センサ回路、13……メカデッキ、14……コネクタパネル、15……コントロールパネル、15a……ブルートゥース端子、16……主電源、17a,17b……レギュレータ、A1……カメラ信号処理部、A2……記録再生部、A3……カメラコントロール部、A4……システムコントロール部、CN1,CN2……コネクタ、PR,MY……メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号を処理する画像処理装置において、
ディジタル画像信号を処理する回路となるプログラム可能なロジック回路と、
前記プログラム可能なロジック回路に複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を構築するためのコンフィグレーションデータを格納したデータ記憶部と、
前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記コンフィグレーションデータのいずれか1つを選択して、前記プログラム可能なロジック回路に前記画像フォーマットのいずれか1つに対応する回路構築を指示する起動制御部と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
起動時に適用する前記画像フォーマットを示す情報を記憶するフォーマット記憶部をさらに有し、
前記起動制御部は、前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記フォーマット記憶部の記憶情報に基づく前記画像フォーマットに対応する前記コンフィグレーションデータを前記ロジック回路に読み出すように制御することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像フォーマットの選択入力を受け付ける選択操作部をさらに有し、
前記フォーマット記憶部は、前記選択操作部が選択入力を受けると、選択された最新の前記画像フォーマットを示す情報を記憶し、
前記起動制御部は、前記選択操作部が選択入力を受けると、前記フォーマット記憶部における記憶情報の更新後に、前記画像処理装置の再起動処理を実行して、前記フォーマット記憶部の記憶情報に基づいて前記コンフィグレーションデータの読み出しを制御する、
ことを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記起動制御部は、
前記画像処理装置の初期起動処理を実行する初期起動制御部と、
前記フォーマット記憶部の記憶情報に対応する前記コンフィグレーションデータを前記データ記憶部から前記ロジック回路に読み出す処理を制御する読み出し制御部と、
を備え、
前記画像処理装置の起動時には、前記初期起動制御部による前記初期起動処理が完了する前に、前記読み出し制御部による前記コンフィグレーションデータの前記プログラム可能なロジック回路への適用処理が開始されることを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ロジック回路では、当該ロジック回路に接続された信号線のうち、ロードされた前記コンフィグレーションデータに対応する前記画像フォーマットの画像信号の処理で必要とされない信号線に不要な信号を流さないような回路が構築されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記データ記憶部には、前記ディジタル画像信号における複数の色空間フォーマット、色成分間または色成分と輝度成分との間のビット割り当て、量子化ビット数、およびフレーム周波数のうちの少なくとも1つが異なる前記画像フォーマットごとに、前記コンフィグレーションデータが格納されていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プログラム可能なロジック回路は、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)回路であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項8】
固体撮像素子を用いて画像を撮像する撮像装置において、
撮像により得られたディジタル画像信号を処理する回路となるプログラム可能なロジック回路と、
前記プログラム可能なロジック回路に複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を構築するためのコンフィグレーションデータを格納したデータ記憶部と、
前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記コンフィグレーションデータのいずれか1つを選択して、前記プログラム可能なロジック回路に前記画像フォーマットのいずれか1つに対応する回路構築を指示する起動制御部と、
を有することを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
画像信号を記録媒体に記録し、その画像信号を再生する画像記録再生装置において、
前記記録媒体に記録するディジタル画像信号または前記記録媒体から再生されたディジタル画像信号の少なくとも一方を処理する回路となるプログラム可能なロジック回路と、
前記プログラム可能なロジック回路に複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を構築するためのコンフィグレーションデータを格納したデータ記憶部と、
前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記コンフィグレーションデータのいずれか1つを選択して、前記プログラム可能なロジック回路に前記画像フォーマットのいずれか1つに対応する回路構築を指示する起動制御部と、
を有することを特徴とする画像記録再生装置。
【請求項10】
ディジタル画像信号を処理する回路となるプログラム可能なロジック回路を備えた画像処理装置を起動するための起動制御方法において、
前記プログラム可能なロジック回路に複数の画像フォーマットの処理にそれぞれ個別に対応した回路を構築するためのコンフィグレーションデータをデータ記憶部にあらかじめ記憶しておき、
起動制御部が、前記画像処理装置の起動のタイミングで、前記コンフィグレーションデータのいずれか1つを選択して、前記プログラム可能なロジック回路に前記画像フォーマットのいずれか1つに対応する回路構築を指示する、
ことを特徴とする起動制御方法。
【請求項11】
起動時に適用する前記画像フォーマットを示す情報をフォーマット記憶部に随時記憶しておき、
前記画像処理装置が起動されると、前記起動制御部が、前記フォーマット記憶部の記憶情報に基づく前記画像フォーマットに対応する前記コンフィグレーションデータを前記ロジック回路に読み出すように制御することを特徴とする請求項10記載の起動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−141642(P2008−141642A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327931(P2006−327931)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】