画像処理装置、画像処理方法、およびプログラム
【課題】高解像度レンダリング画像を印刷機構の実解像度にあわせて低解像度多値変換して出力することによって文字バランスを改善する処理系において、小ポイント文字の字形が安定しない。
【解決手段】描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段とを有し、前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義される。
【解決手段】描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段とを有し、前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷機構の印刷解像度よりも高い解像度でレンダリング処理を行い、レンダリングイメージを印刷機構の実際の印刷解像度の多値データに変換して、印刷出力を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の印刷装置は、感光体上に光描画を行うことで生成された潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を用紙に転写する。そして、印刷装置は、用紙上のトナー像を熱および圧力で用紙に定着させ印刷出力する。ここで行われる光描画は、半導体レーザによる光走査描画ないしはLEDアレイ等による光描画が採用される。また、描画された画像の解像度は光描画によって決定される。例えば、光レーザによる走査密度が1200dpiであれば印刷解像度は1200dpiとなり、LEDアレイのLED間隔が600dpiであれば、その印刷解像度は600dpiになる。
【0003】
この場合において、印刷解像度は機構部のコストに大きく影響を及ぼすので、廉価な機械においては高解像度の印刷装置の提供は難しい。しかし、廉価な印刷機構においても可能な限り高品質の画像を提供することが望ましい。
【0004】
電子写真方式の印刷装置の光描画においては、生成される光潜像はスローブを有する電位分布を持ち、ガウス分布で近似できる。近接した複数のガウス分布は、合成された一つのガウス分布となる。したがって、近接した複数の光描画は、一つの合成潜像となる。この現象を利用して、物理的な光走査の描画座標の中間に光潜像を作ることが可能である。描画位相が物理的な印刷解像度で実現できる位相よりも微細なので、視覚的には光走査解像度よりも高い解像度の描画が実行された様に見える。印刷解像度よりも解像度の高い画像情報をレンダリングしておき、低い印刷機構の解像度に変換する処理において、このような中間座標描画を生成する変換を行うことによって擬似的に高解像度データを生成する技術が知られている。これらの技術によって、実際の印刷機構の印刷解像度よりも高い解像度の印刷出力を提供することが可能になる。また、レンダリング解像度を高めることにより、画数の多い、あるいは描線に強弱のある文字オブジェクトをバランスよく表現することが可能になる。そのため、連続する細線パターンの均等性が向上する。また中間調濃度の表現の為の網処理の品質が向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−143045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記処理系においては、印刷イメージをレンダリングする画像形成部は、印刷装置を単純に高解像度のプリンタとみなして高解像度のレンダリングを実行する。しかし、実際の印刷機構はレンダリングイメージよりも解像度の低い印刷装置であることがある。この際に、描画されるオブジェクトが印刷装置の解像度のオーダーである微細な構造を有する場合には問題が生じる。具体的には微細な文字、連続した細線等で問題が発生することがある。
【0007】
例えば、レンダリングデータの解像度と印刷機構の解像度の比率をkとする。描画されるオブジェクトにおいて0、1/k、…、(k−1)/kのk通りの位相パターンが発生する。具体的な数値をいくつか上げると、k=2である場合に、0、1/2の2つの位相パターンが発生する。また、k=3である場合においては、0、1/3、2/3の3つの位相パターンが発生する。
【0008】
X方向およびY方向共にk=2である場合に、文字オブジェクトの位相の異なる描画を行い、印刷解像度の多値データに変換した結果を図1に示す。図1(a)に示す画像は、高解像度レンダリングデータのビットマップメージである。図1(a)に示す格子状の画像において、細枠が高解像度レンダリングした座標系であり、太枠が印刷解像度の座標系を示す。つまり、k=2の場合、高解像度レンダリングの座標系は、印刷解像度の座標系に対し、2倍の解像度を有する。
【0009】
このレンダリングの例では、図1(a)の右側の文字と左側の文字でX方向およびY方向の双方において、印刷解像度とレンダリング解像度との対応関係において、画素の位相が異なる描画を行っている。図1(b)に位相の異なった同一オブジェクトを多値の印刷解像度データに変換したイメージを示す。位相の異なるレンダリングデータが、印刷解像度の多値データに変換された場合、図1(b)に示されるように同一オブジェクトであっても、異なる出力結果となる。
【0010】
高解像度レンダリングデータを低解像度の多値データに変換する機構が採用されている印刷装置においては、これらの異なる多値データが近い印刷出力になるように印刷機構は調整されている。しかし、印刷装置には個体差が有り、環境変動による特性の変化や消耗備品の寿命までの特性変動によって印刷結果に影響を与える。よって、異なる多値データを実際に印刷出力する際に、常に近い印刷出力になるように調整を行うのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は以下の構成を有する。すなわち、描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段とを有し、前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、前記補正手段は、オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、微細文字等における同一オブジェクトの描画イメージのばらつきを無くすことが可能になり、印刷品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術における課題を説明するための図。
【図2】レーザ走査型の電子写真方式印刷機構の主要部分を示す図。
【図3】実画像と印刷解像度の座標系の画像データとの対応図。
【図4】k=2の場合の高解像度レンダリング座標系と印刷解像度の座標系との対応図。
【図5】オブジェクトのレンダリングにより実解像度の多値に変換した例を示す図。
【図6】印刷機構部の画処理フロー。
【図7】第一実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理フロー。
【図8】第一実施形態に係るレンダリング処理結果を説明するための図。
【図9】第二実施形態に係る画像形成部の構成を示す図。
【図10】第二実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理フロー。
【図11】補正量ベクトルに基づく描画位置補正図。
【図12】画像処理による画像データの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態に係る画像処理装置として、印刷機構を有する印刷装置や複合機(MFP:MultiFunction Peripheral)などが挙げられる。
【0015】
〔第一実施形態〕
[システム構成]
以下に本発明に係る第一実施形態を説明する。図2に本実施形態に係るレーザ走査型の電子写真方式における印刷機構のメカニズムの主要部分を示す。この印刷機構は、本発明を適用可能な画像処理装置に搭載される。当該印刷機構である機構部200は、クロック発生回路201を有し、ラインバッファ202に保持されたデータは、クロック発生回路201が発生するクロックに同期して変調回路210へ出力される。ラインバッファ202は、内部機構I/F143から受信した画像イメージ1ライン分のデータを格納し、光走査のタイミングに合わせたクロック発生回路201によるクロックによって駆動され、変調回路210へデータを送信する。
【0016】
変調回路210は、濃度情報を光量に変換してレーザを駆動する。レーザダイオード203は、光を照射し、光潜像を感光体208の上に描画する。ポリゴンミラー204は、回転しつつレーザダイオード203からの光を反射させることで、固定されている光源(レーザダイオード203)による走査を実現する。回転するポリゴンミラー204による反射光は、等速走査ではないため、光学系205は、感光体208上で等速走査が行われるように光路を変換する。同期回路206は同期検出用のセンサである。工作精度の限界によりポリゴンミラー204は理想的な多角形ではなく、それぞれの面には正多角形からのずれが有る。そのため、ポリゴンミラー204の各面の光走査開始時間はばらつき、同一タイミングにはならない。よって、同期回路206は感光体208に対する光描画のタイミングを検出し、クロック発生回路201は同期回路206に同期した位相で動作する。さらに、同期したクロックでラインバッファ202を駆動させることにより、ラインバッファ202上の1走査分の画像データが感光体208上に走査方向に整列する。
【0017】
現像機207は、感光体208上の光潜像上に帯電したトナーを付着させ、トナー像を形成させる。感光体208は、当該感光体上に光潜像の描画が行われた後、光潜像をトナーで現像して用紙に転写する。転写機構209は、感光体208上のトナー像を用紙300に転写する。
【0018】
用紙300は、印刷動作時に内部を搬送される。感光体208上に作成されたトナー像は用紙300上に転写機構209によって転写される。そして、トナー像を転写された用紙300は定着機構(不図示)に移動され、そこでトナー像を定着され印刷出力となる。
【0019】
[実画像と画像データとの対応]
図3に、図2に示した印刷メカニズムで描画される実画像と、印刷解像度の座標系の画像データの対応図を示す。図3(a)および(b)において、画像データの座標系は主走査方向をx、副走査方向すなわち搬送方向をyとする。ここで、便宜上、本実施形態における印刷装置(印刷機構)が出力する際の解像度の座標系を「実座標系」と記載する。また、描画データにて指定される高解像度の座標系を「高解像度レンダリング座標系」と記載する。
【0020】
感光体208上を等速走査するレーザビームは図3(b)のレーザの発光パターンに示すようにクロック発生回路201によって発生されるクロックにより、等幅に区切られる。ここで、図3(a)に示すy=0の列データを内部機構I/F143から受信し、ラインバッファ202に格納しておく。
【0021】
光走査0の同期信号によってクロック発生回路201が動作し、クロック毎に1ピクセル分のデータを光源(レーザダイオード203)の変調回路210に送る。レーザダイオード203により照射されたレーザビームは、変調回路210からの信号に従って1クロック毎に発光のオンオフを行い、画像データパターンに従った光描画を行う。機構部200は、各走査線に対してこの描画を繰り返す。光走査1においては、y=1の列データをラインバッファ202に記憶した後、クロックに同期して送出する。光走査2においては、y=2の列データを同様に送出し、レーザビームを順次駆動する。最終的に感光体208上に二次元潜像が生成される。
【0022】
個々の画素において多値駆動が行われる場合は、変調回路210において多値を光量に変換し、光源であるレーザダイオード203の駆動が行われる。ここで、レーザダイオード203のような半導体レーザ部は自己発熱で自分の特性自体を変えてしまい、光強度に基づいた安定した変調は難しい。レーザ光の光強度変調においては、発光強度を一定に制御し、発光時間の制御によって光量を調整するのが一般的である。発光時間の制御としてはPWM(Pulse Width Mudulation)変調、PNM(Pulse Number Mudulation)変調等が使用される。
【0023】
本発明の適応対象である高解像度レンダリングによる印刷品位の改善を行う印刷装置においては、印刷解像度よりも高い解像度のイメージデータを用いる。このとき、高解像度レンダリング座標系と印刷機構の実座標系とは一定比率で対応関係に有る。
【0024】
図4(a)に示すように、高解像度レンダリング座標系は、実座標系よりも高い解像度でイメージデータを作成する。そして、画像処理装置は、イメージデータを図4(b)に示すような印刷機構の実座標系である多値データに変換し、図4(c)に示す発光パターンの光走査ごとにラインバッファ202に格納する。図4においては、上述したようにk=2における例を示す。ここで変数kは、高解像度レンダリングにおける高解像度レンダリング座標系と、印刷機構の実座標系との関係を示す。つまり、k=2の場合は、高解像度レンダリングの解像度は印刷機構の解像度の2倍の値を有することを意味する。以下、本実施形態においては、k=2における例示を行う。
【0025】
多値データによってレーザは画素毎に異なる光強度で描画し、感光体208上に潜像を形成する。図3および図4に示すように印刷機構の実座標系(x,y)に対して仮想的な高解像度レンダリング座標系(dx,dy)がk=2の関係である場合、相互の座標変換はx=dx/2,y=dy/2で変換できる。
【0026】
高解像度データを低解像度データに変換する場合において、単純に間引き処理を行った場合には元画像の1/(k×k)の情報しか残らず、それ以外の画素の情報は失われる。そこで複数の画素情報それぞれを参照して、一つの画素情報を作り出すことで情報の欠落を低減させる手法が一般的である。
【0027】
解像度変換においては、複数の画素から一つの画素情報を作り出す際の元画素群の重み付けが重要な技術であるが、本実施形態では、最も単純な均等加算平均値を使用した例を用いて説明する。すなわち、k=2の場合における均等加算平均値は、実座標系の画素の濃度Dとし、高解像度レンダリング座標系の画素の濃度Pとそれぞれ定義した場合、以下のように求められる。
D(a,b)=(P(2a,2b)+P(2a,2b+1)+P(2a+1,2b)+P(2a+1,2b+1))/4
【0028】
図5に最も単純なオブジェクトである三角形をレンダリングし、実座標系の多値に変換した例を示す。図5(a)において、(X0,Y0)…(X2,Y2)で示された三角形Aと同一のオブジェクトを三角形Bとして(X3,Y3)…(X5,Y5)に描画している例を示す。この場合において、図5(b)に示すように実解像度に変換しても、印刷機構の実解像度においてオブジェクトそれぞれの画素の位相が異なっていた場合には異なる多値画像に変換されてしまうのがわかる。つまり、同一オブジェクトであるにも関わらず、三角形Aと三角形Bはそれぞれ異なった描画がなされる。
【0029】
また、三角形Aを印刷機構の解像度と位相を合わせる補正を行った例を図5(a)に三角形Cとして示す。三角形Cに示すように、頂点座標の全てを印刷機構の解像度と位相を合わせた描画(X6,Y6)…(X8,Y8)では、各点の距離(オブジェクト内での画素間の相対関係)が変わり形状が崩れる。よって、印刷機構により出力される画像も使用者が意図した画像から外れる。
【0030】
したがって、本発明ではオブジェクトに含まれる画素のうち基準画素となる先頭座標に対してのみ位相パターンの制御を行う。つまり、オブジェクトの先頭座標のみ常に印刷機構の実座標系に対して一定の位相パターンになるように座標を補正する。そして、基準画素以外の座標は先頭座標との相対関係を崩さないように座標を補正することを特徴とする。
【0031】
つまり、図5(a)に示した例では、各三角形のオブジェクトにおいて、三角形Aでは座標(X0,Y0)の位相パターンを補正し、それ以外の画素の座標は三角形内の画素間の相対関係を崩さないようにする。
【0032】
[処理フロー]
図6および図7に本実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理および描画処理のフローを示す。図6は、印刷装置の全体の概略フローである。図7は、描画オブジェクトの座標系の補正処理フローである。図6および図7の処理は、制御部(不図示)により実行されるものとする。
【0033】
図6において、処理が開始されると、制御部は、外部からのデータを受信する(S1100)。ここで受信するデータは高解像度データ(印刷機構における解像度よりも大きな解像度のデータ)であるとする。制御部は、取得したオブジェクト群に対して描画オブジェクトの座標補正処理を実行する(S1200)。ここでの処理の詳細は図7を用いて述べる。制御部は、S1200にて描画オブジェクトの座標補正処理が適用されたデータを多値の印刷解像度のデータに変換する(S1300)。制御部は、変換された印刷解像度のデータに基づき印刷出力を実行する(S1400)。
【0034】
なお、本実施形態において、高解像度データのレンダリング機構は、座標群によって指定された閉領域を塗りつぶす機能を有する。この機能により、印刷装置は、受信データを変換し、描画要素(オブジェクト)を分解して閉領域に還元することができる。受信データに含まれる描画要素全てを閉領域に還元できれば、全てのオブジェクトに対する情報を一元的に処理できる。
【0035】
図7に、図6にて示すS1200の描画オブジェクトの座標補正処理に関する詳細フローについて述べる。本処理を開始すると、制御部は、描画データのレンダリング解像度と印刷機構の解像度との対応比(倍率k)を算出する(S1201)。なお、S1201で算出される対応比は、S1300で行われる解像度変換前後の解像度の比に相当する。制御部は、描画データ内のオブジェクトを解析し、同一のオブジェクトを抽出する。(S1202)。ここでの抽出方法については、従来技術による手法を用いるものとし、特に限定しない。なお、S1202は、例えば特定の属性(例えば文字)をもつオブジェクトを抽出してもよい。そして、抽出されたオブジェクトの中から、一つのオブジェクトを選択する。制御部は、S1201にて算出された対応比を用いて先頭座標の剰余を計算し、補正量ベクトルDを算出する(S1203)。ここでの先頭座標は、S1202で抽出されたオブジェクトに含まれる画素のうち、最も原点に近い画素の座標とする。本実施形態において、補正量ベクトルDは、以下の式にて算出する。
補正量ベクトルD=(先頭座標(X,Y)/倍率k)の剰余
なお、ここでの先頭座標の座標は、高解像度レンダリング座標系における座標であるとする。
【0036】
次に、制御部は、選択したオブジェクトに対応するオブジェクト構成座標情報を取得する(S1204)。制御部は、取得したオブジェクト構成座標情報に対して、S1203にて算出した補正量ベクトルDを適用し、補正座標を算出する(S1205)。本実施形態において、補正座標は以下の式にて算出する。
補正座標=オブジェクト構成座標(X,Y)−補正量ベクトルD
ここでのオブジェクト構成座標は、高解像度レンダリング座標系における座標であるとする。
【0037】
制御部は、S1205にて算出した補正座標のオブジェクトの描画処理を実行する(S1206)。制御部は、オブジェクトを構成する座標情報の全てについて描画処理を繰り返す(S1207)。一つのオブジェクトに対する処理が終了した後(S1207にてYES)、制御部は新たなオブジェクトを選択し、S1203〜S1207の処理を繰り返す(S1208)。
【0038】
本実施形態による上記処理により、一つのオブジェクトを構成する座標全てに対して同じ補正量ベクトルDの座標補正を実施する。よって、オブジェクトを構成する画素の座標の描画位置は修正されるが、オブジェクト内の画素間における相対座標には変化が無い。
【0039】
[処理結果]
図8に補正量ベクトルD=(0,0)の時の処理結果と補正量ベクトルD=(1,1)の時の処理結果を示す。
【0040】
図8(a)において、基準オブジェクトであるオブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の先頭座標は高解像度レンダリング座標系(dx,dy)において(X0,Y0)=(2,4)である。印刷機構の実座標系(x,y)では、この座標は(1,2)となり、k=2の剰余ベクトル(補正量ベクトルD)は(0,0)である。
【0041】
オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の先頭座標は、高解像度レンダリング座標系(dx,dy)において(X3,Y3)=(23,7)である。印刷機構の実座標系(x,y)では、この座標は(11,3)となり、k=2の剰余は(1,1)である。
【0042】
オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の剰余ベクトルはD=(0,0)なので印字補正量は“0”である。そのため、オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の座標は変更されない。これに対し、オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の剰余ベクトルD=(1,1)である。したがって、オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)に対して、高解像度レンダリング座標系(dx,dy)に対する印刷補正後の座標(X3,Y3)の値は(23,7)から(22,6)に変更される。同様に、座標(X4,Y4)の値は(30,10)から(29,9)に変更され、座標(X5,Y5)の値は(26,14)から(25,13)に変更される。
【0043】
図8(b)および(c)において、オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の実解像度多値データは、実座標系(x,y)では(1,2)から始まる。オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の実解像度多値データは実座標系(x,y)では(11,3)から始まる。D=(1、1)のとき、オブジェクトの描画位置は微修正されているが印刷解像度に多値変換されたデータは補正の無いオブジェクトと同一のオブジェクトになっていることがわかる。
【0044】
なお、本実施形態において、補正量ベクトルDを、オブジェクトを構成する座標に適用する際に、原点(x=0,y=0)に近づくように算出している。しかし、これに限定するものではなく、kの値などを考慮し、位相パターンが同一になるように適用すればよい。例えば、原点から遠ざかるように適用しても構わない。
【0045】
また、本実施形態において、オブジェクトに含まれる画素のうち、最も原点に近い画素を先頭座標としているが、これに限定するものではない。例えば、最も原点から遠い位置にある画素の座標を先頭座標としても構わない。
【0046】
以上により、微細文字等における同一オブジェクトの位相を一致させることにより、イメージのばらつきを無くすことが可能になり、印刷品質が向上する。
【0047】
〔第二実施形態〕
以下に本発明を実施するための第二実施形態について述べる。第二実施形態においては、ホストコンピュータ側のアプリケーションから高解像度レンダリング座標系相当の解像度のデータではなく、実際に描画される実座標系相当の解像度のデータが送信される場合に対応する。
【0048】
本実施形態において、外部機器からは実解像度の印刷装置としてみなされる。そのため、高解像度レンダリング座標系のデータを算出する必要がある。高解像度レンダリングのためには実座標系(x,y)を高解像度レンダリング座標系(dx,dy)に以下の式を用いて変換する。
dx=x×k
dy=y×k
【0049】
座標は常に印刷機構の実座標のk倍で一定位相を保つので、描画座標の補正は不要である。一般のオブジェクトの先頭座標は、高解像度でレンダリングしても実座標系の画像と座標分解能は変わらない。しかし、オブジェクトの濃度界面が多値化されるので印刷された際に画素段差が把握されにくくなり輪郭の印刷品位が上がる。
【0050】
また、文字オブジェクトの場合、外部から提供される座標情報は先頭座標のみであることがある。残りの座標情報は、属性情報として受け取った文字種と文字コードから文字情報が定義された辞書データを検索しフォントサイズで指定された大きさにスケーリングしなければ得られない。なお、通常の処理系では、指定されたフォントサイズが印刷機構の印刷解像度で正しく印刷されるように座標値をスケーリングする。
【0051】
本実施形態においては、指定されたフォントサイズが高解像度レンダリング座標系で正しい大きさになるように座標値をスケーリングする。先頭座標は、実座標系の座標を変換して生成したので、位相は実画像と合致しているが、文字オブジェクトを構成する字画の相対距離は高解像度レンダリング座標系にスケーリングされ、高解像度の文字オブジェクトとなる。
【0052】
[画像形成部の構成]
図9は、第二実施形態に係る画像処理装置が有する画像形成部の構成を示す。物理的には以下のような構成要素を有している。画像形成部は、CPU100、RAM110、ROM120、不揮発性メモリ130、および入出力機構140を有する。
【0053】
CPU100は、印刷機構を必要な手順で起動させる制御プログラム、動作状況の設定を行うユーザインタフェース(UI250)の制御、印刷情報の解釈等を実行する。RAM110は、多様な用途に使用される。本実施形態に係るRAM110においては、主な用途として以下のような要素で構成される。RAM110は、受信バッファ111、プログラムの動作上必要な作業領域112、高解像度レンダリング領域113、印刷機構制御情報114、実行プログラム展開領域115、描画多値情報116を有する。
【0054】
受信バッファ111は、印刷情報の一時的な保持領域である。高解像度レンダリング領域113は、高解像度レンダリング画像イメージを展開する展開領域に使用される。実行プログラム展開領域115は、実行プログラムを実行する際に、当該プログラムを展開するために用いられる。なお、この実行プログラム展開領域115は、構成によっては存在しない場合も有り、逆に大きなサイズで確保する場合も有る。例えば、ROM120を大きく確保した構成では、実行プログラム展開領域115が必要ない場合も有る。逆に、必要な実行プログラムを実行プログラム展開領域115にロードする機能のみを実装した小容量のROM120とした場合には、実行プログラム展開領域115のサイズを大きく確保する必要がある。描画多値情報116は、描画多値信号の格納領域である。
【0055】
不揮発性メモリ130には各種設定情報150、データ退避領域154が確保される。各種設定情報150は、印刷機構の機械部や消耗品等の動的情報であり電源遮断時にも保持が必要な情報群である。
【0056】
ROM120には、印刷機構制御プログラム151、解像度変換プログラム152、およびUI制御プログラム153を有する。印刷機構制御プログラム151は、印刷機構を動作させる為に用いられる。解像度変換プログラム152は、印刷情報を解釈し印刷出力が可能な制御情報に変換する。UI制御プログラム153は、UI250を制御する。
【0057】
ただし構成によっては上記プログラムをROM120ではなく、不揮発性メモリ130に格納し、ROM120は、上記プログラムをRAM110上の実行プログラム展開領域115に展開するだけのプログラムのみを格納した比較的小さな容量としても構わない。
【0058】
印刷装置には、省電力オペレーション動作の為にスリーブ動作を要求されることが有る。このスリーブ動作の際にデータ退避領域154が用いられる。データ退避領域154において、電源の完全遮断時には消失してもよいが、素早い動作復帰の為に必要な設定情報や初期化状態を格納する。
【0059】
入出力機構140は、操作パネルI/F141、外部機器I/F142、内部機構I/F143から構成される。操作パネルI/F141は、機器の設定等を受け取り、印刷機構内部のステータスを出力、表示し、操作者に提示する。外部機器I/F142は外部機器270とのインタフェースであり、外部から所定の形式の画像情報を受け取り、印刷機構内部のステータス情報を外部に出力する。また、ソフトウェア実装によって外部機器270上に操作パネルI/F141に相当する機能を実装してもよい。
【0060】
内部機構I/F143は、印刷機構の各部とのインタフェースである。内部機構I/Fは、印刷機構の機械部を構成するモータやクラッチ、センサ等の制御入出力、画像情報による描画手段によって構成される内部I/O等によって構成される。電子写真方式の印刷装置においては、種々の機構を所定のタイミングで動作させまた定常状態に遷移させる制御を行う。
【0061】
また、各種プログラムに従ってCPU100は、感光体208上のトナー像を用紙に転写する前にポリゴンミラー204の回転を安定させ光走査のタイミングに合わせて画像を送出、描画を行う必要が有り、その制御も実施する。
【0062】
さらに印刷装置は、光描画の前後において適切なタイミングで帯電機構を動作させ、現像も実施する。消費電力の大きな定着器は非印刷時には休止させておく一方で、用紙300が定着器に到達する前に温度を所定の温度に上昇させ安定させる必要が有る。内部機構I/F143は、これらの動作を実施するために必要なセンサ情報の確認と出力制御を実行する。
【0063】
機構部200は、第一実施形態にて図2を用いて説明したように他の印刷機構のメカニズム部分である。UI250は、操作パネルである。UI250に対する操作によって印刷モードとして高品質モードを選択するか否かをユーザが指定する。外部機器I/F142は、外部機器270に接続されている。入出力機構140は、外部機器270から描画情報を受信する、あるいは動作モードの指定が行われる。機構部200の構成概略図については、第一実施形態にて図2を用いて述べたとおりである。
【0064】
[処理フロー]
図10に本実施形態に係る印刷装置が有する印刷機構部の座標補正処理フローの構成を示す。なお、本処理は、第一実施形態にて述べた図7に対応する。また、描画処理の流れは、第一実施形態にて図6を用いて述べたものと同様である。
【0065】
本実施形態において、図6に示す処理フローにおいて、処理が開始されると、印刷機構は外部からのデータを受信する(S1100)。一般的に、外部機器270から送られてくる印刷要求は、特定のフォーマットでサイズや色や解像度などの付帯情報が付与された画像イメージか、ページ記述言語で構成されたオブジェクト群の描画指定、あるいはその複合形式で送られてくる。本実施形態では、外部機器270から送られてくる描画データの座標系は実座標系(x,y)である。すなわち、受信データの解像度と印刷機構の解像度とが同一である。
【0066】
なお、印刷装置は、ページ記述言語や画像フォーマットのインタプリタを備え、受信データを解析し、複雑な描画要求に対応する。また、印刷装置は、印刷データに対応する処理手段としての実行プログラムを実行プログラム展開領域115上に展開し、受信バッファ111にバッファされたデータの処理を行う。
【0067】
そして、描画オブジェクトの座標補正処理を行う(S1200)。ここでは、印刷機構の解像度よりも高解像度なレンダリングを実施し、印刷品位を上げるために、まずCPU100は、高解像度レンダリング領域113上に高解像度レンダリングを実行する。このとき、印刷機構の解像度との位相を考慮したレンダリングを行う。この処理の詳細については、図10を用いて説明する。
【0068】
CPU100は、解像度変換プログラム152によって高解像度レンダリング領域113上の高解像度レンダリングされたデータを描画多値情報116の多値の印刷解像度データ(実座標系のデータ)に変換する(S1300)。ここでの変換処理は単純な間引きではなく、図12に示すように近傍の複数の高解像度レンダリングデータに対して所定の重み付けを行い、累積値を算出する。更に電子写真特性の非線形性を補正する為に多くは一次変換を通してから多値濃度情報を算出する。重み付け値と一次変換値は、印刷機構の電子写真特性によって調整される。
【0069】
印刷解像度データへの変換の完了後、当該印刷解像度データに基づき、CPU100は、内部機構I/F143によって各機構部を所定のタイミングで動作させて印刷出力を実行する(S1400)。
【0070】
図10を用いて、S1200に対応する処理について述べる。処理が開始されると、CPU100は、レンダリング解像度と印刷機構の解像度との対応比(倍率k)を取得する(S1201)。本実施形態において、対応比は以下の式にて算出する。なお、本処理における座標補正のためのレンダリング解像度は、予め定義されているものとする。
対応比=レンダリング解像度/印刷機構の解像度
【0071】
CPU100は、ページ記述言語で記述された描画情報に基づき、最終的な描画座標を算出し、複合オブジェクトを解析する(S1202)。そして、CPU100は、解析したオブジェクトが複合オブジェクトか否かを判定する(S1221)。複合オブジェクトであれば(S1221にてYES)、CPU100は、画像処理装置のインタプリタにて解析した複合オブジェクトを別個のオブジェクトに分解する(S1222)。そして、CPU100は、分解したオブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを判定する(S1223)。ここで、文字オブジェクトである場合には、外部から受信される座標情報には、先頭座標のみが含まれる。したがって、先頭座標以外の座標情報は属性情報として受け取った文字種と文字コードとから文字情報が定義された辞書データを検索し、フォントサイズで指定された大きさにスケーリングしなければ得られない。
【0072】
文字オブジェクトである場合、文字の大きさは実座標系での大きさで指定されている。そのため、CPU100は、高解像度レンダリング空間において正しいサイズになるように当該文字オブジェクトをk倍にスケーリングして解釈する(S1224)。この処理によって、描画データに含まれる複数のオブジェクトに対して、印刷機構の実座標系と高解像度レンダリング座標系との位相が合致する。
【0073】
CPU100は、個々の文字オブジェクトから文字に対応するベクトル情報群を文字情報が定義された辞書データから取得する(S1225)。CPU100は、オブジェクトの先頭座標を座標変換する(S1226)。CPU100は、文字オブジェクトを構成する残りのレンダリング座標情報を座標変換し、出力用のデータを作成する(S1227)。ここで、CPU100は、ベクトル情報群をスケーリングし、先頭座標を基準にしたオブジェクトを構成する構成座標情報を生成する。
【0074】
文字でないオブジェクトの場合には(S1223にてNO)、CPU100は、単純に構成座標を以下の式を用いて変換する(S1228)。
dx=x×k
dy=y×k
【0075】
CPU100は、オブジェクトを構成する画素の構成座標情報を取得する(S1204)。CPU100は、S1204にて取得した構成座標情報に基づいて画素を配置し、描画処理を実行する(S1206)。CPU100は、オブジェクトを構成する画素に対応する座標情報の全てについて描画処理を繰り返す(S1207)。オブジェクトを構成する画素全てに対する処理が終了した後(S1207にてYES)、CPU100は、未処理の新たなオブジェクトを所得し、処理を繰り返す(S1208)。全ての描画処理を終了すると(S1208にてYES)、CPU100は、本処理フローを終了する。
【0076】
以上、入力される描画データの解像度と印刷機構の解像度とが同じであれば、文字の先頭座標が常に印刷機構の解像度に対して同相となるように配置でき、容易に図11に示すような処理が実施できる。
【0077】
なお、文字情報を定義した辞書を用いた文字オブジェクトの特定処理や、複合オブジェクトの分解処理については、第一実施形態の構成に適用しても構わない。
【0078】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷機構の印刷解像度よりも高い解像度でレンダリング処理を行い、レンダリングイメージを印刷機構の実際の印刷解像度の多値データに変換して、印刷出力を行う画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の印刷装置は、感光体上に光描画を行うことで生成された潜像をトナーで現像し、現像されたトナー像を用紙に転写する。そして、印刷装置は、用紙上のトナー像を熱および圧力で用紙に定着させ印刷出力する。ここで行われる光描画は、半導体レーザによる光走査描画ないしはLEDアレイ等による光描画が採用される。また、描画された画像の解像度は光描画によって決定される。例えば、光レーザによる走査密度が1200dpiであれば印刷解像度は1200dpiとなり、LEDアレイのLED間隔が600dpiであれば、その印刷解像度は600dpiになる。
【0003】
この場合において、印刷解像度は機構部のコストに大きく影響を及ぼすので、廉価な機械においては高解像度の印刷装置の提供は難しい。しかし、廉価な印刷機構においても可能な限り高品質の画像を提供することが望ましい。
【0004】
電子写真方式の印刷装置の光描画においては、生成される光潜像はスローブを有する電位分布を持ち、ガウス分布で近似できる。近接した複数のガウス分布は、合成された一つのガウス分布となる。したがって、近接した複数の光描画は、一つの合成潜像となる。この現象を利用して、物理的な光走査の描画座標の中間に光潜像を作ることが可能である。描画位相が物理的な印刷解像度で実現できる位相よりも微細なので、視覚的には光走査解像度よりも高い解像度の描画が実行された様に見える。印刷解像度よりも解像度の高い画像情報をレンダリングしておき、低い印刷機構の解像度に変換する処理において、このような中間座標描画を生成する変換を行うことによって擬似的に高解像度データを生成する技術が知られている。これらの技術によって、実際の印刷機構の印刷解像度よりも高い解像度の印刷出力を提供することが可能になる。また、レンダリング解像度を高めることにより、画数の多い、あるいは描線に強弱のある文字オブジェクトをバランスよく表現することが可能になる。そのため、連続する細線パターンの均等性が向上する。また中間調濃度の表現の為の網処理の品質が向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−143045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記処理系においては、印刷イメージをレンダリングする画像形成部は、印刷装置を単純に高解像度のプリンタとみなして高解像度のレンダリングを実行する。しかし、実際の印刷機構はレンダリングイメージよりも解像度の低い印刷装置であることがある。この際に、描画されるオブジェクトが印刷装置の解像度のオーダーである微細な構造を有する場合には問題が生じる。具体的には微細な文字、連続した細線等で問題が発生することがある。
【0007】
例えば、レンダリングデータの解像度と印刷機構の解像度の比率をkとする。描画されるオブジェクトにおいて0、1/k、…、(k−1)/kのk通りの位相パターンが発生する。具体的な数値をいくつか上げると、k=2である場合に、0、1/2の2つの位相パターンが発生する。また、k=3である場合においては、0、1/3、2/3の3つの位相パターンが発生する。
【0008】
X方向およびY方向共にk=2である場合に、文字オブジェクトの位相の異なる描画を行い、印刷解像度の多値データに変換した結果を図1に示す。図1(a)に示す画像は、高解像度レンダリングデータのビットマップメージである。図1(a)に示す格子状の画像において、細枠が高解像度レンダリングした座標系であり、太枠が印刷解像度の座標系を示す。つまり、k=2の場合、高解像度レンダリングの座標系は、印刷解像度の座標系に対し、2倍の解像度を有する。
【0009】
このレンダリングの例では、図1(a)の右側の文字と左側の文字でX方向およびY方向の双方において、印刷解像度とレンダリング解像度との対応関係において、画素の位相が異なる描画を行っている。図1(b)に位相の異なった同一オブジェクトを多値の印刷解像度データに変換したイメージを示す。位相の異なるレンダリングデータが、印刷解像度の多値データに変換された場合、図1(b)に示されるように同一オブジェクトであっても、異なる出力結果となる。
【0010】
高解像度レンダリングデータを低解像度の多値データに変換する機構が採用されている印刷装置においては、これらの異なる多値データが近い印刷出力になるように印刷機構は調整されている。しかし、印刷装置には個体差が有り、環境変動による特性の変化や消耗備品の寿命までの特性変動によって印刷結果に影響を与える。よって、異なる多値データを実際に印刷出力する際に、常に近い印刷出力になるように調整を行うのは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の画像処理装置は以下の構成を有する。すなわち、描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段とを有し、前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、前記補正手段は、オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、微細文字等における同一オブジェクトの描画イメージのばらつきを無くすことが可能になり、印刷品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】従来技術における課題を説明するための図。
【図2】レーザ走査型の電子写真方式印刷機構の主要部分を示す図。
【図3】実画像と印刷解像度の座標系の画像データとの対応図。
【図4】k=2の場合の高解像度レンダリング座標系と印刷解像度の座標系との対応図。
【図5】オブジェクトのレンダリングにより実解像度の多値に変換した例を示す図。
【図6】印刷機構部の画処理フロー。
【図7】第一実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理フロー。
【図8】第一実施形態に係るレンダリング処理結果を説明するための図。
【図9】第二実施形態に係る画像形成部の構成を示す図。
【図10】第二実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理フロー。
【図11】補正量ベクトルに基づく描画位置補正図。
【図12】画像処理による画像データの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態に係る画像処理装置として、印刷機構を有する印刷装置や複合機(MFP:MultiFunction Peripheral)などが挙げられる。
【0015】
〔第一実施形態〕
[システム構成]
以下に本発明に係る第一実施形態を説明する。図2に本実施形態に係るレーザ走査型の電子写真方式における印刷機構のメカニズムの主要部分を示す。この印刷機構は、本発明を適用可能な画像処理装置に搭載される。当該印刷機構である機構部200は、クロック発生回路201を有し、ラインバッファ202に保持されたデータは、クロック発生回路201が発生するクロックに同期して変調回路210へ出力される。ラインバッファ202は、内部機構I/F143から受信した画像イメージ1ライン分のデータを格納し、光走査のタイミングに合わせたクロック発生回路201によるクロックによって駆動され、変調回路210へデータを送信する。
【0016】
変調回路210は、濃度情報を光量に変換してレーザを駆動する。レーザダイオード203は、光を照射し、光潜像を感光体208の上に描画する。ポリゴンミラー204は、回転しつつレーザダイオード203からの光を反射させることで、固定されている光源(レーザダイオード203)による走査を実現する。回転するポリゴンミラー204による反射光は、等速走査ではないため、光学系205は、感光体208上で等速走査が行われるように光路を変換する。同期回路206は同期検出用のセンサである。工作精度の限界によりポリゴンミラー204は理想的な多角形ではなく、それぞれの面には正多角形からのずれが有る。そのため、ポリゴンミラー204の各面の光走査開始時間はばらつき、同一タイミングにはならない。よって、同期回路206は感光体208に対する光描画のタイミングを検出し、クロック発生回路201は同期回路206に同期した位相で動作する。さらに、同期したクロックでラインバッファ202を駆動させることにより、ラインバッファ202上の1走査分の画像データが感光体208上に走査方向に整列する。
【0017】
現像機207は、感光体208上の光潜像上に帯電したトナーを付着させ、トナー像を形成させる。感光体208は、当該感光体上に光潜像の描画が行われた後、光潜像をトナーで現像して用紙に転写する。転写機構209は、感光体208上のトナー像を用紙300に転写する。
【0018】
用紙300は、印刷動作時に内部を搬送される。感光体208上に作成されたトナー像は用紙300上に転写機構209によって転写される。そして、トナー像を転写された用紙300は定着機構(不図示)に移動され、そこでトナー像を定着され印刷出力となる。
【0019】
[実画像と画像データとの対応]
図3に、図2に示した印刷メカニズムで描画される実画像と、印刷解像度の座標系の画像データの対応図を示す。図3(a)および(b)において、画像データの座標系は主走査方向をx、副走査方向すなわち搬送方向をyとする。ここで、便宜上、本実施形態における印刷装置(印刷機構)が出力する際の解像度の座標系を「実座標系」と記載する。また、描画データにて指定される高解像度の座標系を「高解像度レンダリング座標系」と記載する。
【0020】
感光体208上を等速走査するレーザビームは図3(b)のレーザの発光パターンに示すようにクロック発生回路201によって発生されるクロックにより、等幅に区切られる。ここで、図3(a)に示すy=0の列データを内部機構I/F143から受信し、ラインバッファ202に格納しておく。
【0021】
光走査0の同期信号によってクロック発生回路201が動作し、クロック毎に1ピクセル分のデータを光源(レーザダイオード203)の変調回路210に送る。レーザダイオード203により照射されたレーザビームは、変調回路210からの信号に従って1クロック毎に発光のオンオフを行い、画像データパターンに従った光描画を行う。機構部200は、各走査線に対してこの描画を繰り返す。光走査1においては、y=1の列データをラインバッファ202に記憶した後、クロックに同期して送出する。光走査2においては、y=2の列データを同様に送出し、レーザビームを順次駆動する。最終的に感光体208上に二次元潜像が生成される。
【0022】
個々の画素において多値駆動が行われる場合は、変調回路210において多値を光量に変換し、光源であるレーザダイオード203の駆動が行われる。ここで、レーザダイオード203のような半導体レーザ部は自己発熱で自分の特性自体を変えてしまい、光強度に基づいた安定した変調は難しい。レーザ光の光強度変調においては、発光強度を一定に制御し、発光時間の制御によって光量を調整するのが一般的である。発光時間の制御としてはPWM(Pulse Width Mudulation)変調、PNM(Pulse Number Mudulation)変調等が使用される。
【0023】
本発明の適応対象である高解像度レンダリングによる印刷品位の改善を行う印刷装置においては、印刷解像度よりも高い解像度のイメージデータを用いる。このとき、高解像度レンダリング座標系と印刷機構の実座標系とは一定比率で対応関係に有る。
【0024】
図4(a)に示すように、高解像度レンダリング座標系は、実座標系よりも高い解像度でイメージデータを作成する。そして、画像処理装置は、イメージデータを図4(b)に示すような印刷機構の実座標系である多値データに変換し、図4(c)に示す発光パターンの光走査ごとにラインバッファ202に格納する。図4においては、上述したようにk=2における例を示す。ここで変数kは、高解像度レンダリングにおける高解像度レンダリング座標系と、印刷機構の実座標系との関係を示す。つまり、k=2の場合は、高解像度レンダリングの解像度は印刷機構の解像度の2倍の値を有することを意味する。以下、本実施形態においては、k=2における例示を行う。
【0025】
多値データによってレーザは画素毎に異なる光強度で描画し、感光体208上に潜像を形成する。図3および図4に示すように印刷機構の実座標系(x,y)に対して仮想的な高解像度レンダリング座標系(dx,dy)がk=2の関係である場合、相互の座標変換はx=dx/2,y=dy/2で変換できる。
【0026】
高解像度データを低解像度データに変換する場合において、単純に間引き処理を行った場合には元画像の1/(k×k)の情報しか残らず、それ以外の画素の情報は失われる。そこで複数の画素情報それぞれを参照して、一つの画素情報を作り出すことで情報の欠落を低減させる手法が一般的である。
【0027】
解像度変換においては、複数の画素から一つの画素情報を作り出す際の元画素群の重み付けが重要な技術であるが、本実施形態では、最も単純な均等加算平均値を使用した例を用いて説明する。すなわち、k=2の場合における均等加算平均値は、実座標系の画素の濃度Dとし、高解像度レンダリング座標系の画素の濃度Pとそれぞれ定義した場合、以下のように求められる。
D(a,b)=(P(2a,2b)+P(2a,2b+1)+P(2a+1,2b)+P(2a+1,2b+1))/4
【0028】
図5に最も単純なオブジェクトである三角形をレンダリングし、実座標系の多値に変換した例を示す。図5(a)において、(X0,Y0)…(X2,Y2)で示された三角形Aと同一のオブジェクトを三角形Bとして(X3,Y3)…(X5,Y5)に描画している例を示す。この場合において、図5(b)に示すように実解像度に変換しても、印刷機構の実解像度においてオブジェクトそれぞれの画素の位相が異なっていた場合には異なる多値画像に変換されてしまうのがわかる。つまり、同一オブジェクトであるにも関わらず、三角形Aと三角形Bはそれぞれ異なった描画がなされる。
【0029】
また、三角形Aを印刷機構の解像度と位相を合わせる補正を行った例を図5(a)に三角形Cとして示す。三角形Cに示すように、頂点座標の全てを印刷機構の解像度と位相を合わせた描画(X6,Y6)…(X8,Y8)では、各点の距離(オブジェクト内での画素間の相対関係)が変わり形状が崩れる。よって、印刷機構により出力される画像も使用者が意図した画像から外れる。
【0030】
したがって、本発明ではオブジェクトに含まれる画素のうち基準画素となる先頭座標に対してのみ位相パターンの制御を行う。つまり、オブジェクトの先頭座標のみ常に印刷機構の実座標系に対して一定の位相パターンになるように座標を補正する。そして、基準画素以外の座標は先頭座標との相対関係を崩さないように座標を補正することを特徴とする。
【0031】
つまり、図5(a)に示した例では、各三角形のオブジェクトにおいて、三角形Aでは座標(X0,Y0)の位相パターンを補正し、それ以外の画素の座標は三角形内の画素間の相対関係を崩さないようにする。
【0032】
[処理フロー]
図6および図7に本実施形態に係るオブジェクト座標の補正処理および描画処理のフローを示す。図6は、印刷装置の全体の概略フローである。図7は、描画オブジェクトの座標系の補正処理フローである。図6および図7の処理は、制御部(不図示)により実行されるものとする。
【0033】
図6において、処理が開始されると、制御部は、外部からのデータを受信する(S1100)。ここで受信するデータは高解像度データ(印刷機構における解像度よりも大きな解像度のデータ)であるとする。制御部は、取得したオブジェクト群に対して描画オブジェクトの座標補正処理を実行する(S1200)。ここでの処理の詳細は図7を用いて述べる。制御部は、S1200にて描画オブジェクトの座標補正処理が適用されたデータを多値の印刷解像度のデータに変換する(S1300)。制御部は、変換された印刷解像度のデータに基づき印刷出力を実行する(S1400)。
【0034】
なお、本実施形態において、高解像度データのレンダリング機構は、座標群によって指定された閉領域を塗りつぶす機能を有する。この機能により、印刷装置は、受信データを変換し、描画要素(オブジェクト)を分解して閉領域に還元することができる。受信データに含まれる描画要素全てを閉領域に還元できれば、全てのオブジェクトに対する情報を一元的に処理できる。
【0035】
図7に、図6にて示すS1200の描画オブジェクトの座標補正処理に関する詳細フローについて述べる。本処理を開始すると、制御部は、描画データのレンダリング解像度と印刷機構の解像度との対応比(倍率k)を算出する(S1201)。なお、S1201で算出される対応比は、S1300で行われる解像度変換前後の解像度の比に相当する。制御部は、描画データ内のオブジェクトを解析し、同一のオブジェクトを抽出する。(S1202)。ここでの抽出方法については、従来技術による手法を用いるものとし、特に限定しない。なお、S1202は、例えば特定の属性(例えば文字)をもつオブジェクトを抽出してもよい。そして、抽出されたオブジェクトの中から、一つのオブジェクトを選択する。制御部は、S1201にて算出された対応比を用いて先頭座標の剰余を計算し、補正量ベクトルDを算出する(S1203)。ここでの先頭座標は、S1202で抽出されたオブジェクトに含まれる画素のうち、最も原点に近い画素の座標とする。本実施形態において、補正量ベクトルDは、以下の式にて算出する。
補正量ベクトルD=(先頭座標(X,Y)/倍率k)の剰余
なお、ここでの先頭座標の座標は、高解像度レンダリング座標系における座標であるとする。
【0036】
次に、制御部は、選択したオブジェクトに対応するオブジェクト構成座標情報を取得する(S1204)。制御部は、取得したオブジェクト構成座標情報に対して、S1203にて算出した補正量ベクトルDを適用し、補正座標を算出する(S1205)。本実施形態において、補正座標は以下の式にて算出する。
補正座標=オブジェクト構成座標(X,Y)−補正量ベクトルD
ここでのオブジェクト構成座標は、高解像度レンダリング座標系における座標であるとする。
【0037】
制御部は、S1205にて算出した補正座標のオブジェクトの描画処理を実行する(S1206)。制御部は、オブジェクトを構成する座標情報の全てについて描画処理を繰り返す(S1207)。一つのオブジェクトに対する処理が終了した後(S1207にてYES)、制御部は新たなオブジェクトを選択し、S1203〜S1207の処理を繰り返す(S1208)。
【0038】
本実施形態による上記処理により、一つのオブジェクトを構成する座標全てに対して同じ補正量ベクトルDの座標補正を実施する。よって、オブジェクトを構成する画素の座標の描画位置は修正されるが、オブジェクト内の画素間における相対座標には変化が無い。
【0039】
[処理結果]
図8に補正量ベクトルD=(0,0)の時の処理結果と補正量ベクトルD=(1,1)の時の処理結果を示す。
【0040】
図8(a)において、基準オブジェクトであるオブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の先頭座標は高解像度レンダリング座標系(dx,dy)において(X0,Y0)=(2,4)である。印刷機構の実座標系(x,y)では、この座標は(1,2)となり、k=2の剰余ベクトル(補正量ベクトルD)は(0,0)である。
【0041】
オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の先頭座標は、高解像度レンダリング座標系(dx,dy)において(X3,Y3)=(23,7)である。印刷機構の実座標系(x,y)では、この座標は(11,3)となり、k=2の剰余は(1,1)である。
【0042】
オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の剰余ベクトルはD=(0,0)なので印字補正量は“0”である。そのため、オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の座標は変更されない。これに対し、オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の剰余ベクトルD=(1,1)である。したがって、オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)に対して、高解像度レンダリング座標系(dx,dy)に対する印刷補正後の座標(X3,Y3)の値は(23,7)から(22,6)に変更される。同様に、座標(X4,Y4)の値は(30,10)から(29,9)に変更され、座標(X5,Y5)の値は(26,14)から(25,13)に変更される。
【0043】
図8(b)および(c)において、オブジェクト(X0,Y0)…(X2,Y2)の実解像度多値データは、実座標系(x,y)では(1,2)から始まる。オブジェクト(X3,Y3)…(X5,Y5)の実解像度多値データは実座標系(x,y)では(11,3)から始まる。D=(1、1)のとき、オブジェクトの描画位置は微修正されているが印刷解像度に多値変換されたデータは補正の無いオブジェクトと同一のオブジェクトになっていることがわかる。
【0044】
なお、本実施形態において、補正量ベクトルDを、オブジェクトを構成する座標に適用する際に、原点(x=0,y=0)に近づくように算出している。しかし、これに限定するものではなく、kの値などを考慮し、位相パターンが同一になるように適用すればよい。例えば、原点から遠ざかるように適用しても構わない。
【0045】
また、本実施形態において、オブジェクトに含まれる画素のうち、最も原点に近い画素を先頭座標としているが、これに限定するものではない。例えば、最も原点から遠い位置にある画素の座標を先頭座標としても構わない。
【0046】
以上により、微細文字等における同一オブジェクトの位相を一致させることにより、イメージのばらつきを無くすことが可能になり、印刷品質が向上する。
【0047】
〔第二実施形態〕
以下に本発明を実施するための第二実施形態について述べる。第二実施形態においては、ホストコンピュータ側のアプリケーションから高解像度レンダリング座標系相当の解像度のデータではなく、実際に描画される実座標系相当の解像度のデータが送信される場合に対応する。
【0048】
本実施形態において、外部機器からは実解像度の印刷装置としてみなされる。そのため、高解像度レンダリング座標系のデータを算出する必要がある。高解像度レンダリングのためには実座標系(x,y)を高解像度レンダリング座標系(dx,dy)に以下の式を用いて変換する。
dx=x×k
dy=y×k
【0049】
座標は常に印刷機構の実座標のk倍で一定位相を保つので、描画座標の補正は不要である。一般のオブジェクトの先頭座標は、高解像度でレンダリングしても実座標系の画像と座標分解能は変わらない。しかし、オブジェクトの濃度界面が多値化されるので印刷された際に画素段差が把握されにくくなり輪郭の印刷品位が上がる。
【0050】
また、文字オブジェクトの場合、外部から提供される座標情報は先頭座標のみであることがある。残りの座標情報は、属性情報として受け取った文字種と文字コードから文字情報が定義された辞書データを検索しフォントサイズで指定された大きさにスケーリングしなければ得られない。なお、通常の処理系では、指定されたフォントサイズが印刷機構の印刷解像度で正しく印刷されるように座標値をスケーリングする。
【0051】
本実施形態においては、指定されたフォントサイズが高解像度レンダリング座標系で正しい大きさになるように座標値をスケーリングする。先頭座標は、実座標系の座標を変換して生成したので、位相は実画像と合致しているが、文字オブジェクトを構成する字画の相対距離は高解像度レンダリング座標系にスケーリングされ、高解像度の文字オブジェクトとなる。
【0052】
[画像形成部の構成]
図9は、第二実施形態に係る画像処理装置が有する画像形成部の構成を示す。物理的には以下のような構成要素を有している。画像形成部は、CPU100、RAM110、ROM120、不揮発性メモリ130、および入出力機構140を有する。
【0053】
CPU100は、印刷機構を必要な手順で起動させる制御プログラム、動作状況の設定を行うユーザインタフェース(UI250)の制御、印刷情報の解釈等を実行する。RAM110は、多様な用途に使用される。本実施形態に係るRAM110においては、主な用途として以下のような要素で構成される。RAM110は、受信バッファ111、プログラムの動作上必要な作業領域112、高解像度レンダリング領域113、印刷機構制御情報114、実行プログラム展開領域115、描画多値情報116を有する。
【0054】
受信バッファ111は、印刷情報の一時的な保持領域である。高解像度レンダリング領域113は、高解像度レンダリング画像イメージを展開する展開領域に使用される。実行プログラム展開領域115は、実行プログラムを実行する際に、当該プログラムを展開するために用いられる。なお、この実行プログラム展開領域115は、構成によっては存在しない場合も有り、逆に大きなサイズで確保する場合も有る。例えば、ROM120を大きく確保した構成では、実行プログラム展開領域115が必要ない場合も有る。逆に、必要な実行プログラムを実行プログラム展開領域115にロードする機能のみを実装した小容量のROM120とした場合には、実行プログラム展開領域115のサイズを大きく確保する必要がある。描画多値情報116は、描画多値信号の格納領域である。
【0055】
不揮発性メモリ130には各種設定情報150、データ退避領域154が確保される。各種設定情報150は、印刷機構の機械部や消耗品等の動的情報であり電源遮断時にも保持が必要な情報群である。
【0056】
ROM120には、印刷機構制御プログラム151、解像度変換プログラム152、およびUI制御プログラム153を有する。印刷機構制御プログラム151は、印刷機構を動作させる為に用いられる。解像度変換プログラム152は、印刷情報を解釈し印刷出力が可能な制御情報に変換する。UI制御プログラム153は、UI250を制御する。
【0057】
ただし構成によっては上記プログラムをROM120ではなく、不揮発性メモリ130に格納し、ROM120は、上記プログラムをRAM110上の実行プログラム展開領域115に展開するだけのプログラムのみを格納した比較的小さな容量としても構わない。
【0058】
印刷装置には、省電力オペレーション動作の為にスリーブ動作を要求されることが有る。このスリーブ動作の際にデータ退避領域154が用いられる。データ退避領域154において、電源の完全遮断時には消失してもよいが、素早い動作復帰の為に必要な設定情報や初期化状態を格納する。
【0059】
入出力機構140は、操作パネルI/F141、外部機器I/F142、内部機構I/F143から構成される。操作パネルI/F141は、機器の設定等を受け取り、印刷機構内部のステータスを出力、表示し、操作者に提示する。外部機器I/F142は外部機器270とのインタフェースであり、外部から所定の形式の画像情報を受け取り、印刷機構内部のステータス情報を外部に出力する。また、ソフトウェア実装によって外部機器270上に操作パネルI/F141に相当する機能を実装してもよい。
【0060】
内部機構I/F143は、印刷機構の各部とのインタフェースである。内部機構I/Fは、印刷機構の機械部を構成するモータやクラッチ、センサ等の制御入出力、画像情報による描画手段によって構成される内部I/O等によって構成される。電子写真方式の印刷装置においては、種々の機構を所定のタイミングで動作させまた定常状態に遷移させる制御を行う。
【0061】
また、各種プログラムに従ってCPU100は、感光体208上のトナー像を用紙に転写する前にポリゴンミラー204の回転を安定させ光走査のタイミングに合わせて画像を送出、描画を行う必要が有り、その制御も実施する。
【0062】
さらに印刷装置は、光描画の前後において適切なタイミングで帯電機構を動作させ、現像も実施する。消費電力の大きな定着器は非印刷時には休止させておく一方で、用紙300が定着器に到達する前に温度を所定の温度に上昇させ安定させる必要が有る。内部機構I/F143は、これらの動作を実施するために必要なセンサ情報の確認と出力制御を実行する。
【0063】
機構部200は、第一実施形態にて図2を用いて説明したように他の印刷機構のメカニズム部分である。UI250は、操作パネルである。UI250に対する操作によって印刷モードとして高品質モードを選択するか否かをユーザが指定する。外部機器I/F142は、外部機器270に接続されている。入出力機構140は、外部機器270から描画情報を受信する、あるいは動作モードの指定が行われる。機構部200の構成概略図については、第一実施形態にて図2を用いて述べたとおりである。
【0064】
[処理フロー]
図10に本実施形態に係る印刷装置が有する印刷機構部の座標補正処理フローの構成を示す。なお、本処理は、第一実施形態にて述べた図7に対応する。また、描画処理の流れは、第一実施形態にて図6を用いて述べたものと同様である。
【0065】
本実施形態において、図6に示す処理フローにおいて、処理が開始されると、印刷機構は外部からのデータを受信する(S1100)。一般的に、外部機器270から送られてくる印刷要求は、特定のフォーマットでサイズや色や解像度などの付帯情報が付与された画像イメージか、ページ記述言語で構成されたオブジェクト群の描画指定、あるいはその複合形式で送られてくる。本実施形態では、外部機器270から送られてくる描画データの座標系は実座標系(x,y)である。すなわち、受信データの解像度と印刷機構の解像度とが同一である。
【0066】
なお、印刷装置は、ページ記述言語や画像フォーマットのインタプリタを備え、受信データを解析し、複雑な描画要求に対応する。また、印刷装置は、印刷データに対応する処理手段としての実行プログラムを実行プログラム展開領域115上に展開し、受信バッファ111にバッファされたデータの処理を行う。
【0067】
そして、描画オブジェクトの座標補正処理を行う(S1200)。ここでは、印刷機構の解像度よりも高解像度なレンダリングを実施し、印刷品位を上げるために、まずCPU100は、高解像度レンダリング領域113上に高解像度レンダリングを実行する。このとき、印刷機構の解像度との位相を考慮したレンダリングを行う。この処理の詳細については、図10を用いて説明する。
【0068】
CPU100は、解像度変換プログラム152によって高解像度レンダリング領域113上の高解像度レンダリングされたデータを描画多値情報116の多値の印刷解像度データ(実座標系のデータ)に変換する(S1300)。ここでの変換処理は単純な間引きではなく、図12に示すように近傍の複数の高解像度レンダリングデータに対して所定の重み付けを行い、累積値を算出する。更に電子写真特性の非線形性を補正する為に多くは一次変換を通してから多値濃度情報を算出する。重み付け値と一次変換値は、印刷機構の電子写真特性によって調整される。
【0069】
印刷解像度データへの変換の完了後、当該印刷解像度データに基づき、CPU100は、内部機構I/F143によって各機構部を所定のタイミングで動作させて印刷出力を実行する(S1400)。
【0070】
図10を用いて、S1200に対応する処理について述べる。処理が開始されると、CPU100は、レンダリング解像度と印刷機構の解像度との対応比(倍率k)を取得する(S1201)。本実施形態において、対応比は以下の式にて算出する。なお、本処理における座標補正のためのレンダリング解像度は、予め定義されているものとする。
対応比=レンダリング解像度/印刷機構の解像度
【0071】
CPU100は、ページ記述言語で記述された描画情報に基づき、最終的な描画座標を算出し、複合オブジェクトを解析する(S1202)。そして、CPU100は、解析したオブジェクトが複合オブジェクトか否かを判定する(S1221)。複合オブジェクトであれば(S1221にてYES)、CPU100は、画像処理装置のインタプリタにて解析した複合オブジェクトを別個のオブジェクトに分解する(S1222)。そして、CPU100は、分解したオブジェクトが文字オブジェクトであるか否かを判定する(S1223)。ここで、文字オブジェクトである場合には、外部から受信される座標情報には、先頭座標のみが含まれる。したがって、先頭座標以外の座標情報は属性情報として受け取った文字種と文字コードとから文字情報が定義された辞書データを検索し、フォントサイズで指定された大きさにスケーリングしなければ得られない。
【0072】
文字オブジェクトである場合、文字の大きさは実座標系での大きさで指定されている。そのため、CPU100は、高解像度レンダリング空間において正しいサイズになるように当該文字オブジェクトをk倍にスケーリングして解釈する(S1224)。この処理によって、描画データに含まれる複数のオブジェクトに対して、印刷機構の実座標系と高解像度レンダリング座標系との位相が合致する。
【0073】
CPU100は、個々の文字オブジェクトから文字に対応するベクトル情報群を文字情報が定義された辞書データから取得する(S1225)。CPU100は、オブジェクトの先頭座標を座標変換する(S1226)。CPU100は、文字オブジェクトを構成する残りのレンダリング座標情報を座標変換し、出力用のデータを作成する(S1227)。ここで、CPU100は、ベクトル情報群をスケーリングし、先頭座標を基準にしたオブジェクトを構成する構成座標情報を生成する。
【0074】
文字でないオブジェクトの場合には(S1223にてNO)、CPU100は、単純に構成座標を以下の式を用いて変換する(S1228)。
dx=x×k
dy=y×k
【0075】
CPU100は、オブジェクトを構成する画素の構成座標情報を取得する(S1204)。CPU100は、S1204にて取得した構成座標情報に基づいて画素を配置し、描画処理を実行する(S1206)。CPU100は、オブジェクトを構成する画素に対応する座標情報の全てについて描画処理を繰り返す(S1207)。オブジェクトを構成する画素全てに対する処理が終了した後(S1207にてYES)、CPU100は、未処理の新たなオブジェクトを所得し、処理を繰り返す(S1208)。全ての描画処理を終了すると(S1208にてYES)、CPU100は、本処理フローを終了する。
【0076】
以上、入力される描画データの解像度と印刷機構の解像度とが同じであれば、文字の先頭座標が常に印刷機構の解像度に対して同相となるように配置でき、容易に図11に示すような処理が実施できる。
【0077】
なお、文字情報を定義した辞書を用いた文字オブジェクトの特定処理や、複合オブジェクトの分解処理については、第一実施形態の構成に適用しても構わない。
【0078】
<その他の実施形態>
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、
前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、
前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段と
を有し、
前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正手段は、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記描画データの解像度は、前記印刷機構が描画できる解像度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段にて抽出された複数のオブジェクトの解像度を当該描画データの解像度よりも大きな解像度へ変換する変換手段を更に有し、
前記補正手段は、前記描画データの解像度が、前記印刷機構が描画できる解像度と同一である場合、前記変換手段にて解像度を変換した複数のオブジェクトを、当該大きな解像度の座標系において位相パターンが一致するように配置することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出手段にて抽出されたオブジェクトが複数のオブジェクトから構成される複合オブジェクトである場合、当該複合オブジェクトを別個のオブジェクトに分解する分解手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記抽出手段にて抽出されたオブジェクトが文字オブジェクトである場合、辞書データを用いて、当該文字オブジェクトを構成する画素の座標を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段にて処理を行った前記印刷機構が描画できる解像度よりも高い解像度を有するデータの解像度を、前記印刷機構が描画できる解像度のデータに変換する解像度変換手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置における画像処理方法であって、
抽出手段が、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出工程と、
取得手段が、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得工程と、
補正手段が、前記取得工程にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正工程と
を有し、
前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正工程において、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段、
前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段、
前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段
として機能させ、
前記位相パターンは、当該コンピュータが有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正手段は、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
描画データに含まれる所定の属性の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記描画データの解像度の座標系における、前記抽出手段によって抽出された複数のオブジェクトの基準画素の座標を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された複数の基準画素の位相パターンが一致するように、前記複数のオブジェクトを構成する画素の座標を補正する補正手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記補正手段によって座標が補正されたオブジェクトを含む描画データの描画処理を行う処理手段と、
前記処理手段によって描画処理された後のデータの解像度を該解像度よりも低い解像度に変換する変換手段と
を更に有することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記基準画素の座標と前記変換手段における解像度変換前後の解像度の比とに基づき補正量ベクトルを算出し、該算出された補正量ベクトルを用いて前記オブジェクトを構成する画素の座標を補正することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
抽出手段が、描画データに含まれる所定の属性の複数のオブジェクトを抽出する抽出工程と、
取得手段が、前記描画データの解像度の座標系における、前記抽出工程において抽出された複数のオブジェクトの基準画素の座標を取得する取得工程と、
補正手段が、前記取得工程において取得された複数の基準画素の位相パターンが一致するように、前記複数のオブジェクトを構成する画素の座標を補正する補正工程と
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項1】
描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置であって、
前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段と、
前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段と
を有し、
前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正手段は、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記描画データの解像度は、前記印刷機構が描画できる解像度よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記抽出手段にて抽出された複数のオブジェクトの解像度を当該描画データの解像度よりも大きな解像度へ変換する変換手段を更に有し、
前記補正手段は、前記描画データの解像度が、前記印刷機構が描画できる解像度と同一である場合、前記変換手段にて解像度を変換した複数のオブジェクトを、当該大きな解像度の座標系において位相パターンが一致するように配置することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記抽出手段にて抽出されたオブジェクトが複数のオブジェクトから構成される複合オブジェクトである場合、当該複合オブジェクトを別個のオブジェクトに分解する分解手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記取得手段は、前記抽出手段にて抽出されたオブジェクトが文字オブジェクトである場合、辞書データを用いて、当該文字オブジェクトを構成する画素の座標を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記補正手段にて処理を行った前記印刷機構が描画できる解像度よりも高い解像度を有するデータの解像度を、前記印刷機構が描画できる解像度のデータに変換する解像度変換手段を更に有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
描画データに基づいて印刷を行う画像処理装置における画像処理方法であって、
抽出手段が、前記描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出工程と、
取得手段が、前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得工程と、
補正手段が、前記取得工程にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正工程と
を有し、
前記位相パターンは、当該画像処理装置が有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正工程において、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータを、
描画データから同一の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段、
前記抽出された複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の前記描画データの解像度における座標を取得する取得手段、
前記取得手段にて座標を取得した複数のオブジェクトそれぞれを構成する画素の位相パターンが、前記複数のオブジェクトにおいて対応する画素間で一致するように座標を補正する補正手段
として機能させ、
前記位相パターンは、当該コンピュータが有する印刷機構が描画できる解像度と前記描画データの解像度との対応関係における画素の座標により定義され、
前記補正手段は、
オブジェクトに含まれる画素のうちいずれかの画素を基準画素とし、
前記複数のオブジェクトにおいて対応する基準画素の位相パターンを一致させ、
前記オブジェクトを構成する基準画素以外の画素は、当該基準画素との相対関係を変化させないように座標を補正することを特徴とするプログラム。
【請求項9】
描画データに含まれる所定の属性の複数のオブジェクトを抽出する抽出手段と、
前記描画データの解像度の座標系における、前記抽出手段によって抽出された複数のオブジェクトの基準画素の座標を取得する取得手段と、
前記取得手段によって取得された複数の基準画素の位相パターンが一致するように、前記複数のオブジェクトを構成する画素の座標を補正する補正手段と
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項10】
前記補正手段によって座標が補正されたオブジェクトを含む描画データの描画処理を行う処理手段と、
前記処理手段によって描画処理された後のデータの解像度を該解像度よりも低い解像度に変換する変換手段と
を更に有することを特徴とする請求項9に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記補正手段は、前記基準画素の座標と前記変換手段における解像度変換前後の解像度の比とに基づき補正量ベクトルを算出し、該算出された補正量ベクトルを用いて前記オブジェクトを構成する画素の座標を補正することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
抽出手段が、描画データに含まれる所定の属性の複数のオブジェクトを抽出する抽出工程と、
取得手段が、前記描画データの解像度の座標系における、前記抽出工程において抽出された複数のオブジェクトの基準画素の座標を取得する取得工程と、
補正手段が、前記取得工程において取得された複数の基準画素の位相パターンが一致するように、前記複数のオブジェクトを構成する画素の座標を補正する補正工程と
を有することを特徴とする画像処理方法。
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図12】
【図3】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図1】
【図4】
【図5】
【図8】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−235307(P2012−235307A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102345(P2011−102345)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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