説明

画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム

【課題】生体内管腔画像から異常部を精度良く検出すること。
【解決手段】本発明のある実施の形態の画像処理装置1において、閉領域抽出部22は、設定範囲に初期閉領域を設定する初期閉領域設定部23と、勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定部24と、少なくとも閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび閉領域の境界における勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出部30と、複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出部31とを備え、加重和をもとに初期閉領域を変形していくことで閉領域を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像を処理する画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者等の被検者の体内に導入されて体内管腔内を観察する医用観察装置として、内視鏡が広く普及している。また、近年では、カプセル型の筐体内部に撮像装置やこの撮像装置によって撮像された画像データを体外に無線送信する通信装置等を備えた飲み込み型の内視鏡(カプセル内視鏡)が開発されている。これらの医用観察装置によって撮像された体内管腔内の画像(生体内管腔画像)の観察・診断は、多くの経験を必要とするため、医師による診断を補助する医療診断支援機能が望まれている。この機能を実現する画像認識技術の1つとして、生体内管腔画像から病変等の異常部を自動的に検出して医師等に提示する技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、形状依存性フィルタを用い、粗大構造や線構造の影響を受けることなく乳癌の癌化部分の特徴の1つである微小石灰化陰影の候補を安定的に検出する技術が開示されている。この特許文献1では、想定される微小石灰化陰影の形状をもとに、撮影条件や読取り条件、画像コントラスト、微小石灰化陰影のサイズといった各種条件、あるいはこれらを組み合わせた条件等に応じてフィルタ特性を最適化した第2の形状依存性フィルタを事前に準備しておく。そして、先ず、モルフォロジーフィルタ(例えば非特許文献1,2を参照)である第1の形状依存性フィルタを用いて画像中の直線構造を除去することで、微細構造部分を表す微細構造画像を生成する。その後、微細構造画像に対して準備しておいた第2の形状依存性フィルタを用いた強調処理を施すことにより、周囲(第1の形状依存性フィルタで除ききれなかった粗大構造部分や線構造部分等を含む微小石灰化陰影候補以外の部分)と比較して相対的に微小石灰化陰影候補のみを強調した強調処理済画像を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−99896号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小畑他,「多重構造要素を用いたモルフォロジーフィルタによる微小石灰化像の抽出」,電子情報通信学会論文誌,D-II,Vol.J75-D-II,No.7,P1170〜1176,July 1992
【非特許文献2】小畑他,「モルフォロジーの基礎とそのマンモグラム処理への応用」,MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY,Vol.12,No.1,January 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記した内視鏡やカプセル内視鏡等の医用観察装置によって撮像される生体内管腔画像には、例えば消化管内壁の粘膜構造の折りたたみやうねりによって発生する溝や、粘膜ひだの輪郭等、曲率が大きく折れ曲がったような箇所が多く存在する。このため、特許文献1を生体内管腔画像に適用し、病変等の異常部を検出しようとすると、直線構造を除去する第1の形状依存性フィルタ(モルフォロジーフィルタ)では、フィルタのサイズに依存して、前述のような生体組織が形成する溝位置や輪郭部分等のように、曲率が大きく折れ曲がったような箇所が微細構造画像に残ってしまう。また、特許文献1の第2の形状依存性フィルタは特定の形状(微小石灰化陰影の形状)を強調するためのものであるが、生体内管腔画像に映る異常部は決まった形状を持たない。このため、特許文献1のように、異常部の形状を事前に想定し、第1の形状依存性フィルタで残る構造、例えば前述のような曲率が大きく折れ曲がったような箇所と異常部とを区別するための最適な形状依存性フィルタを設計するのは難しい。したがって、2種類の形状依存性フィルタを組み合わせても、異常部を溝位置や輪郭部分と区別して検出するのは困難であった。
【0007】
一方で、生体内管腔画像に映る溝位置や輪郭部分は、エッジとして抽出できる。このエッジをもとに生体内管腔画像から閉領域を抽出すれば、溝位置や輪郭部分以外の領域を対象とした異常部検出が行える。これによれば、溝位置や輪郭部分以外の領域から異常部を検出できるので、溝位置や輪郭部分を異常部として誤検出する事態を抑制することが可能である。ここで、エッジをもとに閉領域を抽出する手法としては、例えば、公知の動的輪郭抽出法を用いた手法が挙げられる。動的輪郭抽出法は、画像内のエッジを閉曲線として抽出する方法であり、初期閉曲線の形状を変形させながら、閉曲線の連続性や滑らかさ、閉曲線上でのエッジ強度に基づくエネルギーの値の和が最も安定するような閉曲線を抽出するものである。
【0008】
しかしながら、前述のような動的輪郭抽出法を単に適用して閉領域を抽出する場合、閉領域の初期位置や、各エネルギーの値をどのように定義するのかによって抽出される閉領域が大きく異なる。このため、必ずしも閉領域を適切に抽出することができず、この結果溝位置や輪郭部分に対して異常部検出を行ってしまい、これらを誤検出する場合があった。
【0009】
本発明は、上記に鑑み為されたものであって、生体内管腔画像から異常部を精度良く検出することができる画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決し、目的を達成するための、本発明のある態様にかかる画像処理装置は、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理装置であって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出手段と、を備え、前記閉領域抽出手段は、前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定手段と、前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定手段と、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出手段と、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出手段と、を備え、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理装置は、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理装置であって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出手段と、を備え、前記閉領域抽出手段は、前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定手段と、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出手段と、前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定手段と、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出手段と、を備え、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする。
【0012】
上記態様の画像処理装置によれば、勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定し、設定した設定範囲に初期閉領域を設定することができる。したがって、生体内管腔画像においてエッジとなって現れる溝位置や輪郭部分を考慮して初期閉領域を設定することができる。また、勾配強度をもとに初期閉領域を設定し、設定した初期閉領域の位置をもとに、閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび閉領域の境界における勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定することができる。したがって、溝位置や輪郭部分を考慮して重み付けを行って各エネルギーの加重和を算出することができる。これによれば、勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界がこの領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しない条件を満たす閉領域を適切に抽出することができ、抽出した閉領域内部の異常部を検出することができる。このように、上記態様の画像処理装置によれば、溝位置や輪郭部分を異常部として誤検出する事態を抑制し、生体内管腔画像から異常部を精度良く検出することができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理方法は、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理方法であって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出工程と、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出工程と、を含み、前記閉領域抽出工程は、前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定工程と、前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定工程と、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出工程と、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出工程と、を含み、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理方法は、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理方法であって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出工程と、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出工程と、を含み、前記閉領域抽出工程は、前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定工程と、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出工程と、前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定工程と、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出工程と、を含み、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする。
【0015】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理プログラムは、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出するための画像処理プログラムであって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出ステップと、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出ステップと、をコンピュータに実行させ、前記閉領域抽出ステップは、前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定ステップと、前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定ステップと、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出ステップと、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出ステップと、を前記コンピュータに実行させ、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出させることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の別の態様にかかる画像処理プログラムは、生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理プログラムであって、前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出ステップと、前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出ステップと、をコンピュータに実行させ、前記閉領域抽出ステップは、前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定ステップと、少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出ステップと、前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定ステップと、前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出ステップと、を前記コンピュータに実行させ、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、生体内管腔画像から異常部を精度良く検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施の形態1の画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図2】図2は、閉領域の抽出原理を説明する説明図である。
【図3】図3は、内部に溝位置等であるエッジを含む閉領域を示す図である。
【図4】図4は、図3中に一点鎖線で示すライン上の画素値の変化曲線を示す図である。
【図5】図5は、輪郭部分等である大きく屈曲するエッジを境界に含む閉領域を示す図である。
【図6】図6は、図5中に一点鎖線で示すライン上の画素値の変化曲線を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態1の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図8】図8は、生体内管腔画像の一例を示す模式図である。
【図9】図9は、実施の形態1における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、図8の生体内管腔画像から抽出した平坦領域を示す模式図である。
【図11】図11は、図10の平坦領域の中心線上に配置した候補点を示す図である。
【図12】図12は、平坦領域内の設定範囲に設定された初期閉領域の一例を示す図である。
【図13】図13は、制御点数決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図14】図14は、実施の形態1におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図15】図15は、閉領域抽出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図16】図16は、異常部検出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図17】図17は、実施の形態2の画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図18】図18は、実施の形態2の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図19】図19は、実施の形態2における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図20】図20は、生体内管腔画像の一例を示す模式図である。
【図21】図21は、実施の形態2におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図22】図22は、実施の形態3の画像処理装置の機能構成を説明するブロック図である。
【図23】図23は、実施の形態3の画像処理装置が行う処理手順を示す全体フローチャートである。
【図24】図24は、実施の形態3における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図25】図25は、実施の形態3におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【図26】図26は、本発明を適用したコンピューターシステムの構成を示すシステム構成図である。
【図27】図27は、図26のコンピューターシステムを構成する本体部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、各図面の記載において、同一部分には同一の符号を付して示している。
【0020】
本実施の形態の画像処理装置は、例えば内視鏡やカプセル内視鏡等の医用観察装置が被検者の体内の消化管等の生体内管腔を撮像した画像(生体内管腔画像)を処理し、生体内管腔画像から例えば病変や出血部位等の異常部を検出する処理を行うものである。上記したように、生体内管腔画像には、粘膜構造等の生体組織が形成する溝の陰影や輪郭が映る。本実施の形態では、この溝位置や輪郭部分を異常部として誤検出する事態を抑制するため、生体内管腔画像中においてこれら溝位置や輪郭部分を内部や境界に含まないように閉領域を抽出し、抽出した閉領域毎に異常部を検出する。なお、本実施の形態において、生体内管腔画像は、例えば、画素毎にR(赤),G(緑),B(青)の各波長成分に対する画素値を持つカラー画像である。
【0021】
(実施の形態1)
先ず、実施の形態1の画像処理装置について説明する。図1は、実施の形態1の画像処理装置1の機能構成を説明するブロック図である。実施の形態1の画像処理装置1は、図1に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14と、演算部20と、画像処理装置1全体の動作を制御する制御部15とを備える。
【0022】
画像取得部11は、医用観察装置によって撮像された生体内管腔画像の画像データを取得するためのものであり、この画像取得部11によって取得された生体内管腔画像の画像データは記録部14に記録され、演算部20によって処理された後、必要に応じて適宜表示部13に表示される。画像取得部11は、例えば医用観察装置がカプセル内視鏡の場合等のように医用観察装置との間の画像データの受け渡しに可搬型の記録媒体が使用される場合であれば、この記録媒体を着脱自在に装着して保存された生体内管腔画像の画像データを読み出すリーダ装置で構成される。また、医用観察装置によって撮像された生体内管腔画像の画像データを保存しておくサーバを適所に設置し、このサーバから取得する構成の場合には、画像取得部11を、サーバと接続するための通信装置等で構成する。そして、この画像取得部11を介してサーバとデータ通信を行い、生体内管腔画像の画像データを取得する。また、この他、内視鏡等の医用観察装置からの画像信号をケーブルを介して入力するインターフェース装置等で構成してもよい。
【0023】
入力部12は、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、各種スイッチ等によって実現されるものであり、入力信号を制御部15に出力する。表示部13は、LCDやELディスプレイ等の表示装置によって実現されるものであり、制御部15の制御のもと、生体内管腔画像を含む各種画面を表示する。
【0024】
記録部14は、更新記録可能なフラッシュメモリ等のROMやRAMといった各種ICメモリ、内蔵或いはデータ通信端子で接続されたハードディスク、CD−ROM等の情報記録媒体およびその読取装置等によって実現されるものであり、画像処理装置1を動作させ、この画像処理装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、このプログラムの実行中に使用されるデータ等が予めあるいは処理の都度一時的に記録される。この記録部14には、画像取得部11によって取得された生体内管腔画像の画像データが記録される。また、記録部14には、実施の形態1の処理を実現して生体内管腔画像から異常部を検出するための画像処理プログラム141が記録される。
【0025】
演算部20は、CPU等のハードウェアによって実現され、生体内管腔画像を処理して異常部を検出するための種々の演算処理を行う。この演算部20は、勾配強度算出手段としての勾配強度算出部21と、閉領域抽出手段としての閉領域抽出部22と、異常部検出手段としての異常部検出部32とを含む。
【0026】
勾配強度算出部21は、生体内管腔画像の各画素の画素値をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する。
【0027】
閉領域抽出部22は、勾配強度が予め設定される所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界がこの領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件とし、生体内管腔画像から前述の条件を満たす閉領域を抽出する。この閉領域抽出部22は、初期閉領域設定手段としての初期閉領域設定部23と、エネルギー重み設定手段としてのエネルギー重み設定部29と、エネルギー算出手段としてのエネルギー算出部30と、エネルギー加重和算出手段としてのエネルギー加重和算出部31とを備え、エネルギー加重和算出部31が算出した加重和をもとに初期閉領域を変形していくことで閉領域を抽出する。
【0028】
初期閉領域設定部23は、閉領域の初期形状である初期閉領域を設定する。この初期閉領域設定部23は、範囲決定手段としての範囲決定部24と、閉領域サイズ決定手段としての閉領域サイズ決定部27と、制御点数決定手段としての制御点数決定部28とを備える。範囲決定部24は、各画素の勾配強度をもとに、初期閉領域を設定する生体内管腔画像中の範囲(設定範囲)を決定する機能部であり、平坦領域抽出手段としての平坦領域抽出部241と、領域形状情報算出手段としての領域形状情報算出部242とを備える。平坦領域抽出部241は、生体内管腔画像から勾配強度の値がある程度小さく周囲と類似する画素で構成された領域を平坦領域として抽出する。領域形状情報算出部242は、平坦領域の形状情報を算出する。この領域形状情報算出部242は、平坦領域の中心線を算出する中心線算出手段としての中心線算出部243と、中心線の曲率を算出する曲率算出手段としての曲率算出部244とを備える。閉領域サイズ決定部27は、範囲決定部24が決定した初期閉領域の設定範囲をもとに、初期閉領域のサイズを決定する。実施の形態1では、この閉領域サイズ決定部27において、内接領域サイズ決定手段としての内接領域サイズ決定部271が、所定の形状(例えば円形状)を有し、初期閉領域の設定範囲に内接する大きさを初期閉領域のサイズとして決定する。なお、初期閉領域の形状は円形状に限定されるものではなく、適宜の形状としてよい。制御点数決定部28は、初期閉領域のサイズをもとに初期閉領域の後述する制御点の数を決定する。ここで、制御点とは、閉領域の境界に位置する座標点のことをいう。この制御点数決定部28は、初期閉領域の面積を算出する面積算出手段としての面積算出部281と、初期閉領域の周囲長を算出する周囲長算出手段としての周囲長算出部282とを備える。
【0029】
エネルギー重み設定部29は、初期閉領域の位置をもとに、エネルギー算出部30が算出する複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定する。実施の形態1では、後述する内部エネルギーに対する重みとして2種類の重み(制御点数重み,領域形状重み)を設定する。このエネルギー重み設定部29は、制御点数重み設定部291と、領域形状重み設定部292とを備える。制御点数重み設定部291は、制御点数決定部28が決定した制御点数をもとに、制御点数重みを設定する。また、詳細は後述するが、実施の形態1では、平坦領域抽出部241が抽出した平坦領域内で設定範囲が決定され、この設定範囲に初期閉領域が設定される。領域形状重み設定部292は、初期閉領域の設定位置における平坦領域の形状情報をもとに、領域形状重みを設定する。
【0030】
エネルギー算出部30は、少なくとも閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび閉領域の境界における勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出する。実施の形態1では、エネルギー算出部30は、内部エネルギー算出手段としての内部エネルギー算出部301と、画像エネルギー算出手段としての画像エネルギー算出部302と、外部エネルギー算出手段としての外部エネルギー算出部303とを備え、閉領域の外形によって定まるエネルギーに相当する内部エネルギーおよび外部エネルギーと、閉領域の境界における勾配強度によって定まるエネルギーに相当する画像エネルギーの3つのエネルギーの各値を算出する。ここで、内部エネルギーは、閉領域の境界の滑らかさを表し、閉領域の形状が滑らかなほど小さい値を示すエネルギーである。画像エネルギーは、閉領域の境界における勾配強度の値が大きいほど小さい値を示すエネルギーである。外部エネルギーは、閉領域の大きさが大きいほど小さい値を示すエネルギーである。
【0031】
エネルギー加重和算出部31は、エネルギー算出部30が算出した複数のエネルギーの加重和を算出する。このとき、実施の形態1では、エネルギー加重和算出部31は、エネルギー重み設定部29が設定した制御点数重みおよび領域形状重みを用いて内部エネルギーを重み付けした上で、この内部エネルギー、画像エネルギー、および外部エネルギーの加重和を算出する。なお、必ずしもこれら3つのエネルギーの加重和を算出する必要はなく、これら3つのうちのいずれか2つのエネルギーの加重和を算出することとしてもよい。
【0032】
異常部検出部32は、閉領域毎にその境界の内側(内部)の異常部を検出する。
【0033】
制御部15は、CPU等のハードウェアによって実現される。この制御部15は、画像取得部11によって取得された画像データや入力部12から入力される入力信号、記録部14に記録されるプログラムやデータ等をもとに画像処理装置1を構成する各部への指示やデータの転送等を行い、画像処理装置1全体の動作を統括的に制御する。
【0034】
ここで、実施の形態1において閉領域抽出部22が行う閉領域の抽出原理について説明する。図2は、閉領域の抽出原理を説明する説明図であり、閉領域抽出部22において初期閉領域設定部23が設定する初期閉領域E1を模式的に示している。図2に示すように、初期閉領域E1は、その境界上の画素に複数の制御点Pcを配置し、これら制御点Pcを結んだものとして設定される。配置する制御点Pcの数は、初期閉領域のサイズをもとに決定する。そして、各制御点Pcの位置やその位置における勾配強度、重心(中心)P1からの各制御点Pcの距離等から上記した内部エネルギー、画像エネルギー、および外部エネルギーを制御点Pc毎に算出し、これら3つのエネルギーの加重和が最小となるように制御点Pcを移動させることで初期閉領域E1を領域が広がる方向に変形させていき、閉領域を抽出する。
【0035】
このようにして閉領域を抽出したならば、閉領域内部の異常部を検出する。本例では、詳細を後述するように、モルフォロジー処理、例えば球形の構造要素を用いた3次元モルフォロジー処理(濃淡モルフォロジー)を行って異常部を検出する。ここで、モルフォロジー処理には、オープニング(Opening)処理(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P179〜P180,収縮・膨張処理)とクロージング(Closing)処理(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P179〜P180,収縮・膨張処理)とがある。オープニング処理は、画素値を高度とみなした3次元空間において、構造要素と呼ばれる基準図形(本例では球形)を対象領域の画素値の小さい方(下側)から外接させて移動させた際に構造要素の外周の最大値が通過する軌跡(面)を算出する処理である。一方、クロージング処理は、同様の3次元空間において、構造要素を対象領域の画素値の大きい方(上側)から外接させて移動させた際に構造要素の外周の最小値が通過する軌跡(面)を算出する処理である。そして、オープニング処理を用いた場合には、得られた軌跡上の値を基準値として用い、実際の画素値との差分が大きい画素を異常部として検出する。クロージング処理を用いた場合も同様に、得られた軌跡上の基準値と実際の画素値との差分が大きい画素を異常部として検出する。
【0036】
ところで、前述のオープニング処理やクロージング処理を含むモルフォロジー処理を適用して閉領域毎に異常部を検出する場合、溝位置を閉領域の内部に含むと、この溝位置を異常部として誤検出する場合があった。図3は、閉領域の一例を示す模式図であり、内部に溝位置等であるエッジ51を含むように作成された閉領域を示している。また、図4は、横軸を図3中に一点鎖線で示すライン(エッジ51を跨ぐライン)上の境界画素P31,P32間の画素位置とし、縦軸を該当する各画素の画素値として画素値の変化曲線L31を示したものである。エッジ51を跨ぐライン上では、図4に示すように、その画素値の変化がエッジ位置で局所的に大きく窪む。このため、内部にエッジ51を含む閉領域に対してモルフォロジー処理(クロージング処理)を行い、構造要素F3を上側から外接させて移動させた際(矢印A31)、前述の窪んだ部分の幅に対して構造要素F3が大きいとこの部分に構造要素F3が入り込まないため、図4中に一点鎖線で示すような軌跡L32(実際には面)が得られる。このように、閉領域の内部に溝位置等であるエッジ51を含むと、構造要素F3の形状に依存して、得られる基準値が実際の画素値から大きく逸脱する。一方で、上記したように、異常部の検出は、得られた軌跡L32上の値を基準値として用い、各画素の画素値を基準値と比較することで差の大きい画素を異常部として検出する。したがって、溝位置等であるエッジを閉領域の内部に含むような閉領域を作成してしまうと、矢印A32で示す差分によってエッジ51の部分が異常部として誤検出されてしまう場合がある。
【0037】
同様に、所定の曲率以上で内側に屈曲する輪郭部分を閉領域の境界が含むと、この輪郭部分を異常部として誤検出する場合があった。図5は、閉領域の他の例を示す模式図であり、輪郭部分等である所定の曲率以上で内側に屈曲するエッジ52を境界に含むように作成された閉領域を示している。また、図6は、横軸を図5中に一点鎖線で示すライン(エッジ52の屈曲部分を跨ぐライン)上の境界画素P41,P44間の画素位置とし、縦軸を閉領域の内部である境界画素P41,P42間および境界画素P43,P44間の各画素の画素値として画素値の変化曲線L41を示したものである。エッジ52の屈曲部分を跨ぐライン上では、図6に示すように、その画素値の変化が屈曲位置で途切れる。ここで、境界が内側に大きく屈曲するエッジ52を含む閉領域に対してモルフォロジー処理(クロージング処理)を行い、構造要素F4を上側から外接させて移動させた際(矢印A41)、前述の途切れた部分の間隔に対して構造要素F4が大きいとこの部分に構造要素F4が入り込まないため、図6中に一点鎖線で示すような軌跡L42(実際には面)が得られる。このように、閉領域の境界が輪郭部分等である内側に大きく屈曲するエッジを含むと、閉領域の内部に溝位置等であるエッジを含む場合と同様に、構造要素の形状に依存して得られる基準値が実際の画素値から大きく逸脱してしまい、矢印A42で示す差分によって輪郭部分が異常部として誤検出されてしまう場合がある。
【0038】
以上のような事態を抑制するため、実施の形態1では、閉領域抽出部22は、勾配強度が所定の値以上である画素(エッジ部分の画素)を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件とした閉領域の抽出を行う。これにより、モルフォロジー処理を適用して行う後段の異常部検出において、基準値を適正に得ることが可能となる。
【0039】
次に、実施の形態1の画像処理装置1が行う具体的な処理手順について説明する。図7は、実施の形態1の画像処理装置1が行う処理手順を示す全体フローチャートである。ここで説明する処理は、演算部20が記録部14に記録された画像処理プログラム141を実行することにより実現される。
【0040】
図7に示すように、先ず演算部20は、処理対象の生体内管腔画像を取得する(ステップa1)。ここでの処理によって、演算部20は、画像取得部11によって取得され、記録部14に記録された処理対象の生体内管腔画像を読み出して取得する。図8は、生体内管腔画像の一例を示す模式図である。図8に示すように、生体内管腔画像には、基本的に消化管内壁の粘膜6等の生体組織が映り、時として出血部位等の異常領域(不図示)が映る。また、生体内管腔画像には、粘膜6の折りたたみやうねり等によって発生する溝、粘膜6の輪郭等がエッジ61,62となって現れる。なお、図8では、一方のエッジ62を大きく屈曲するエッジとして示している。
【0041】
続いて、勾配強度算出部21が、生体内管腔画像の各画素の例えばG値をもとに画素毎に勾配強度を算出する(ステップa3)。これは、例えばソーベル(Sobel)フィルタ等の1次微分フィルタやラプラシアン(Laplacian)フィルタ等の2次微分フィルタを用いた公知のエッジ抽出処理(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P114〜P121,エッジ抽出)等を適用することで実現できる。G値を用いるのは、ヘモグロビンの吸収波長帯域に近く、感度も得易いことから、生体内管腔画像の構造をよく表すためである。なお、ここでは、各画素のG値をもとに勾配強度を算出することとしたが、各画素の輝度値を算出し、輝度値をもとに各画素の勾配強度を算出することとしてもよい。
【0042】
続いて、範囲決定部24が、設定範囲決定処理を実行する(ステップa5)。図9は、実施の形態1における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0043】
図9に示すように、設定範囲決定処理では、先ず、平坦領域抽出部241が、図7のステップa3で画素毎に算出した勾配強度をもとに、処理対象の生体内管腔画像から勾配強度の値がある程度小さい領域、例えば勾配強度の値が予め設定される閾値以下である領域を平坦領域として抽出する(ステップb1)。これは、例えば公知の領域統合法(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P196,領域分割処理)等を適用することで実現できる。なお、ここでは、勾配強度の値が所定の閾値以下の領域を平坦領域として抽出することとしたが、色(画素値)を加味して平坦領域を抽出することとしてもよい。具体的には、図7のステップa3で画素毎に算出した勾配強度の値と、処理対象の生体内管腔画像の画素値とをもとに、勾配強度の値がある程度小さく(勾配強度の値が所定の閾値以下であり)、且つ、画素値が周囲と類似する画素で構成された領域を平坦領域として抽出するようにしてもよい。
【0044】
続いて、中心線算出部243が、ステップb1で抽出した平坦領域の中心線を算出する処理として、先ず、平坦領域の輪郭線を抽出する(ステップb3)。これは、例えば公知の輪郭追跡法(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P178〜P179,輪郭追跡)等を適用することで実現できる。
【0045】
続いて、中心線算出部243は、画素毎にステップb3で抽出した輪郭線との距離を算出し、各画素の画素値を該当する画素について算出した距離の値として距離画像を作成する(ステップb5)。そして、中心線算出部243は、距離画像の尾根を検出し、平坦領域の中心線とする(ステップb7)。これは、例えば骨格抽出(スケルトン)処理を適用することで実現できる。図10は、図8の生体内管腔画像から抽出した平坦領域の1つを示す模式図であり、図8中のエッジ61とエッジ62とに挟まれた部分である平坦領域E51を示している。図9のステップb7では、図10の平坦領域E51からその中心線L5を得る。
【0046】
続いて、曲率算出部244が、ステップb7で算出した中心線の曲率を平坦領域の形状情報として算出する。すなわち先ず、曲率算出部244は、中心線上に等間隔で複数の候補点を配置する(ステップb9)。続いて、曲率算出部244は、ステップb9で配置した候補点毎に隣接する2つの候補点に対する内積を算出し、該当する候補点における中心線の曲率とする(ステップb11)。図11は、図10の平坦領域E51の中心線L5上に配置した候補点P5を示す図である。ここで、候補点P5のうちの例えば候補点P5−1に着目すれば、図9のステップb11では、隣接する各候補点P5−2,P5−3のそれぞれへ向かうベクトルV51,V52の内積を算出し、候補点P5−1における中心線L5の曲率の値とする。
【0047】
続いて、範囲決定部24が、ステップb11で候補点毎に算出した曲率を閾値処理する。そして、範囲決定部24は、曲率が予め設定される閾値以下である候補点を選出し、選出した候補点の範囲を平坦領域内における初期閉領域の設定範囲として決定する(ステップb13)。ステップb11で得られた曲率の値が大きい候補点位置、すなわち中心線が大きく屈曲している位置では、その候補点付近の平坦領域の外側においてエッジの端点あるいは大きく屈曲するエッジが存在する可能性が高い。例えば、図11の候補点P5−1における中心線L5の曲率は他の候補点よりも大きい値として得られるが、平坦領域E51の内側においてこの候補点P5−1の付近には、図8に示したように大きく屈曲するエッジ62が存在している。図9のステップb13では、この候補点P5−1のような曲率の値が大きい候補点以外の候補点(曲率の値が小さい候補点)を選出し、選出した候補点P5の範囲を初期閉領域の設定範囲とする。例えば、図11の例では、候補点P5−1を除く候補点P5を全て選出し、選出した候補点P5の範囲を初期閉領域の設定範囲とする。
【0048】
なお、ステップb1で検出した平坦領域が複数存在する場合には、平坦領域毎にステップb3〜ステップb13の処理を行い、各平坦領域における初期閉領域の設定範囲をそれぞれ決定する。平坦領域毎に初期閉領域の設定範囲を決定したならば、図7のステップa5にリターンし、その後ステップa6に移行する。
【0049】
そして、ステップa6では、内接領域サイズ決定部271が、図9のステップb13で決定した設定範囲内の候補点の中から候補点を1つ選択する。例えば、設定範囲内の各候補点(画素)の図9のステップb5で作成した距離画像における画素値をもとに、距離画像における画素値が最も大きい候補点を選択する。なお、設定範囲内の候補点の中からランダムに選択することとしてもよい。
【0050】
続いて、内接領域サイズ決定部271は、ステップa6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とした円形領域であって、平坦領域の輪郭線に内接する円形領域の半径rを算出して初期閉領域のサイズとする(ステップa7)。そして、初期閉領域設定部23が、ステップa6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とし、ステップa7で該当する中心位置について算出した平坦領域の輪郭線に内接する半径rの円形領域を初期閉領域として設定する(ステップa9)。図12は、図11に示す候補点P5の中から設定範囲として決定された候補点の範囲の中から選択した1つの候補点P5−4について半径rの円形領域として設定された初期閉領域E52を示す図である。
【0051】
以上のようにして設定範囲内に初期閉領域(閉領域の初期形状)を設定したならば、続いて、制御点数決定部28が制御点数決定処理を実行し、初期閉領域の制御点の数を決定する(ステッププa11)。図13は、制御点数決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
図13に示すように、制御点数決定処理では、先ず、面積算出部281が、初期閉領域の面積を算出する(ステップc1)。続いて、周囲長算出部282が、初期閉領域の周囲長を算出する(ステップc3)。そして、制御点数決定部28が、面積または周囲長をもとに、初期閉領域の制御点数を決定する(ステップc5)。例えば、次式(1)に従い、面積が大きいほどまたは周囲長が長いほど制御点数を多く設定する。
制御点数=面積または周囲長/所定係数 ・・・(1)
【0053】
なお、ここでは、面積または周囲長をもとに制御点数を設定することとしたが、両方を用いて制御点数を決定することとしてもよい。また、面積をもとに制御点数を設定する場合にはステップc3の処理は行わなくてもよく、同様に周囲長をもとに制御点数を設定する場合にはステップc1の処理は行わなくてもよい。制御点数を決定したならば、図7のステップa11にリターンし、その後ステップa13に移行する。
【0054】
そして、ステップa13では、エネルギー重み設定部29がエネルギー重み設定処理を実行し、初期閉領域の制御点数重みおよび領域形状重みを設定する。図14は、実施の形態1におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0055】
図14に示すように、エネルギー重み設定処理では、先ず、制御点数重み設定部291が、初期閉領域の制御点数をもとに、内部エネルギーに対する制御点数重みを設定する(ステップd1)。図2を参照して上記したように、初期閉領域は、複数の制御点を結んだものとして設定されるため、制御点の数が多くなるほど滑らかな曲線となり、閉領域の境界の滑らかさを表す内部エネルギーは小さな値となる。そこで、閉領域毎の内部エネルギーの比率を一定にするため、制御点数が多いほど値が大きくなるように、次式(2)に従って内部エネルギーに対する制御点数重みを設定する。
制御点数重み=制御点数×所定係数 ・・・(2)
【0056】
続いて、領域形状重み設定部292が、初期閉領域の中心位置における平坦領域の形状情報(中心位置とした候補点について図9のステップb11で算出した中心線の曲率)をもとに、内部エネルギーに対する領域形状重みを設定する(ステップd3)。上記したように、初期閉領域の中心位置における中心線の曲率が大きいと、その周辺の平坦領域の外側においてエッジの端点や大きく屈曲するエッジが存在する可能性が高い。ステップd3では、このようなエッジの端点が内部に入り込んだ閉領域や、その境界が大きく屈曲するエッジを含むような閉領域を抽出しないよう、平坦領域の形状情報(中心位置とした候補点における中心線の曲率)が大きいほど値が大きくなるように次式(3)に従って内部エネルギーに対する領域形状重みを設定する。
領域形状重み=中心位置とした候補点における中心線の曲率×所定係数 ・・・(3)
【0057】
制御点数重みおよび領域形状重みを設定したならば、図7のステップa13にリターンし、ステップa15の閉領域抽出処理に移る。図15は、閉領域抽出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0058】
図15に示すように、閉領域抽出処理では、先ず、内部エネルギー算出部301が、初期閉領域について、閉領域の境界が滑らかなほど小さい値を示す内部エネルギー(Einternal)を制御点毎に算出する(ステップe1)。例えば、次式(4)に従い、注目する制御点(xi,yi)と隣接する2つの制御点(xi-1,yi-1),(xi+1,yi+1)との間のベクトルの内積をもとにエネルギーEを算出する。そして、得られたエネルギーEの値に図14のエネルギー重み設定処理で設定した制御点数重みおよび領域形状重みを重み付けし、内部エネルギーEinternalの値とする。この内部エネルギーEinternalは、注目する制御点が、隣接する制御点の位置に対して閉領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないように制限する。
【数1】

【0059】
続いて、画像エネルギー算出部302が、初期閉領域について、閉領域の境界における勾配強度が大きいほど小さい値を示す画像エネルギー(Eimage)を制御点毎に算出する(ステップe3)。例えば、画像エネルギーEimageは、次式(5)によって表され、注目する制御点位置の画素の勾配強度の逆数として算出する。
【数2】

【0060】
そして、外部エネルギー算出部303が、初期閉領域について、閉領域の大きさが大きいほど小さい値を示す外部エネルギー(Eexternal)を制御点毎に算出する(ステップe5)。この外部エネルギーEexternalは、注目する制御点が閉領域の広がる方向へ受けるエネルギーであり、例えば、次式(6)によって表され、閉領域の重心と注目する制御点との距離の逆数として算出する。
【数3】

【0061】
なお、式(5)のβ、および式(6)のγは、それぞれ該当するエネルギーに対する重み係数を表し、経験則に従って値を決定すればよい。また、このβ,γの各値は、固定値としてもよいし、例えばユーザによる操作入力等に従って可変に設定する構成としてもよい。
【0062】
そして、エネルギー加重和算出部31は、動的輪郭抽出法(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P196〜P200,領域分割処理)を用い、内部エネルギー、画像エネルギー、および外部エネルギーの加重和の最小値を求めることで閉領域を抽出する(ステップe7)。
【0063】
より詳細には、各エネルギーの加重和は、上記したように制御点毎に算出し、制御点数重みおよび領域形状重みによって重み付けして得た内部エネルギーEinternal、制御点毎に算出した画像エネルギーEimage、および制御点毎に算出した外部エネルギーEexternalの3つのエネルギーの加重和の総和として算出され、その算出式は次式(7)で表される。
【数4】

【0064】
ここで、Nは制御点の個数を表す。ステップe7では、この加重和が最小となるように初期閉領域を変形していくことで閉領域を抽出する。閉領域を抽出したならば、図7のステップa15にリターンし、その後ステップa17に移行する。
【0065】
そして、ステップa17では、初期閉領域設定部23が、設定範囲内に選択可能な候補点があるか否かを判定する。例えば、設定範囲内の候補点のうち、その位置が既に抽出済みの閉領域外である候補点を選択可能な候補点としてその有無を判定することで、既に抽出済みの閉領域の内部に含まれる候補点については選択しないようにする。なお、ここでの判定は、候補点位置が既に抽出済みの閉領域外か否かの判定であり、その候補点位置を中心位置とした初期閉領域が既に抽出済みの閉領域と重なっても構わない。選択可能な候補点がある場合には(ステップa17:Yes)、ステップa6に戻り、内接領域サイズ決定部271が、選択可能な候補点の中から、例えば距離画像における画素値が最も大きい候補点を選択する。その後、選択した候補点についてステップa7以降の処理を行う。
【0066】
一方、設定範囲内に選択可能な候補点がない場合には(ステップa17:No)、続いて、閉領域抽出部22が、閉領域として抽出されていない領域の有無を判定する。そして、閉領域として抽出されていない領域がある場合には(ステップa19:Yes)、閉領域抽出部22は、この閉領域として抽出されていない領域に初期閉領域を設定する(ステップa21)。ここでの初期閉領域の設定は、単に閉領域として抽出されていない領域を含むように例えば円形状の初期閉領域を設定すればよい。ただし、初期閉領域は、その中心位置が既に抽出済みの閉領域の内部に含まれないように、且つ、エッジ位置の画素(勾配強度の値が大きい画素)を含まないように設定する。そして、閉領域抽出部22は、設定した初期閉領域について閉領域抽出処理を実行する(ステップa23)。この閉領域抽出処理は、図15の閉領域抽出処理と略同様の手順で実行すればよいが、ここでの処理では、内部エネルギーに対する制御点数重みおよび領域形状重みの重み付けは行わない。
【0067】
その後、ステップa19に戻り、生体内管腔画像内の全域(エッジ位置を除く)が閉領域として抽出されたと判定するまで上記した処理を繰り返す。そして、閉領域として抽出されていない領域がないと判定した場合には(ステップa19:No)、異常部検出部32が異常部検出処理を実行する(ステップa25)。実施の形態1では、例えば、公知のクロージング処理を行ったクロージング画像に対して、公知のオープニング処理を行い、得られた画素値(基準値)と元の画素値との差分を閾値処理することで異常部を検出する方法である。
【0068】
図16は、異常部検出処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。図16に示すように、異常部検出処理では、異常部検出部32は、閉領域毎にループAの処理を実行する(ステップf1〜ステップf9)。このループAでは、異常部検出部32は、先ず、処理対象の閉領域の画素毎に基準値を算出する(ステップf3)。続いて、異常部検出部32は、処理対象の閉領域の各画素について、その画素値とステップf3で算出した基準値との差分を算出する(ステップf5)。そして、異常部検出部32は、差分を閾値処理し、差分が予め設定される閾値以上である画素を異常部として検出する(ステップf7)。全ての閉領域についてループAの処理を実行したならば、図7のステップa25にリターンし、その後処理を終える。なお、図16の異常部検出処理の結果(ステップf7での異常部の検出結果)は表示部13に出力され、例えば生体内管腔画像中の異常部を他の領域と識別可能に表して表示するといったことが行われて医師等のユーザに提示される。
【0069】
以上説明したように、実施の形態1では、生体内管腔画像から平坦領域を抽出し、この平坦領域内で決定した設定範囲に初期閉領域を設定することとした。したがって、エッジを内部に含まない初期閉領域を設定することができる。また、このとき、平坦領域の形状情報としてその中心線の曲率を算出し、中心線の曲率が大きく、外側にエッジの端点あるいは大きく屈曲するエッジが存在する可能性の高い位置を除く中心線上の範囲を設定範囲として決定することとした。そして、閉領域の境界の滑らかさを表す内部エネルギーに対し、制御点数が多いほど値が大きくなるように設定した制御点数重みを重み付けるとともに、初期閉領域の中心位置とした中心線上の位置における曲率が大きい程その値が大きくなるように設定した領域形状重みを重み付けた上で、動的輪郭抽出法によって閉領域を抽出することとした。
【0070】
上記したように、閉領域は、初期閉領域を領域が広がる方向に変形させていくことで抽出するため、初期閉領域の外側にエッジの端点や大きく屈曲するエッジが存在すると、初期閉領域を変形させていく過程で閉領域の内部にエッジが入り込んだり、あるいは閉領域の境界がエッジに沿って広がっていってしまい、その境界が大きく屈曲するエッジを含むような閉領域が抽出される場合がある。実施の形態1によれば、平坦領域内において中心線上の屈曲が小さい位置を設定範囲とし、中心線上の屈曲が大きい位置には初期閉領域を設定しないようにすることができる。そして、中心線上であって屈曲が小さい位置を中心位置として初期閉領域を設定するとともに、その内部エネルギーに対し、中心位置とした中心線上の位置における中心線の曲率に応じた重み付け(領域形状重みによる重み付け)を行うことができる。そして、このようにして位置および重み付けの設定を行った初期閉領域を広げていくことで、生体内管腔画像中に映る溝位置を内部に含まず、その境界が輪郭部分を含まないように閉領域を抽出することができ、閉領域毎にモルフォロジー処理を適用することで閉領域内部の異常部を検出することができる。これによれば、溝位置や輪郭部分を異常部として誤検出することなく生体内管腔画像から異常部を精度良く検出することができる。
【0071】
なお、実施の形態1では、選択した候補点の候補点位置を中心位置とし、平坦領域の輪郭線に内接する半径rの円形領域を初期閉領域として設定することとした。また、図7のステップa21では、閉領域として抽出されていない領域を含むように例えば円形状の初期閉領域を設定することとした。これに対し、選択した候補点の距離画像における画素値をもとに初期閉領域として設定する円形領域の半径rを算出し、初期閉領域のサイズとしてもよい。また、図7のステップa21において、設定する初期閉領域の中心位置の距離画像における画素値をもとに円形領域の半径rを算出するようにしてもよい。具体的には、次式(8)に従って半径rを算出する。あるいは、次式(9)に従って半径rを算出することとしてもよい。次式(8),(9)において、原点位置は、候補点位置または図7のステップa21において設定する初期閉領域の中心位置である。また、距離画像値は、原点位置の距離画像における画素値である。
半径r=原点位置の距離画像値×所定係数 ・・・(8)
半径r=原点位置の距離画像値−所定値 ・・・(9)
【0072】
また、実施の形態1では、内部エネルギーに対する重みとして2種類の重み(制御点数重み,領域形状重み)を設定することとしたが、いずれか一方の重みを設定することとしてもよい。また、領域形状重みのみを設定する場合には、初期閉領域に設定する制御点数を固定としてもよい。
【0073】
また、図1に示した機能構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図1では、範囲決定部24において平坦領域抽出部241および領域形状情報算出部242を備えた構成としたが、演算部20において平坦領域の形状情報が算出可能であり、範囲決定部24が平坦領域の形状情報をもとに設定範囲を決定し、エネルギー重み設定部29において領域形状重み設定部292が平坦領域の形状情報をもとに領域形状重みを設定できれば範囲決定部24が備える構成に限定されるものではない。
【0074】
(実施の形態2)
先ず、実施の形態2の画像処理装置の構成について説明する。図17は、実施の形態2の画像処理装置1aの機能構成を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。実施の形態2の画像処理装置1aは、図17に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14aと、演算部20aと、画像処理装置1a全体の動作を制御する制御部15とを備える。
【0075】
記録部14aには、実施の形態2の処理を実現して生体内管腔画像から異常部を検出するための画像処理プログラム141aが記録される。
【0076】
また、演算部20aは、勾配強度算出部21と、閉領域抽出部22aと、異常部検出部32とを含む。そして、実施の形態2において、閉領域抽出部22aは、初期閉領域設定部23aと、エネルギー重み設定部29aと、エネルギー算出部30と、エネルギー加重和算出部31とを備える。
【0077】
初期閉領域設定部23aは、初期閉領域を設定する。この初期閉領域設定部23aは、範囲決定部25aと、閉領域サイズ決定部27aと、制御点数決定部28とを備え、範囲決定部25aおよび閉領域サイズ決定部27aの構成が実施の形態1と異なる。実施の形態3では、範囲決定部25aは、エッジ抽出手段としてのエッジ抽出部251aと、端点検出手段としての端点検出部252aと、方向算出手段としての方向算出部253aとを備える。エッジ抽出部251aは、生体内管腔画像の各画素の勾配強度をもとに、勾配強度が所定の値以上の画素をエッジとして抽出する。端点検出部252aは、エッジの端点を検出する。方向算出部253aは、端点と連続するエッジ(端点から延びるエッジ)の方向を端点方向として算出する。
【0078】
また、閉領域サイズ決定部27aは、実施の形態1と同様に、範囲決定部26aが決定した初期閉領域の設定範囲をもとに初期閉領域のサイズを決定するが、実施の形態2では、エッジからの距離をもとに、設定範囲内に設定する初期閉領域のサイズを決定する。なお、実施の形態2においても、初期閉領域の形状を円形状とするが、これに限定されるものではなく、適宜の形状としてよい。
【0079】
エネルギー重み設定部29aは、初期閉領域の位置をもとに、エネルギー算出部30が算出する複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定する。このエネルギー重み設定部29aは、制御点数重み設定部291と、端点方向重み設定部293aとを備え、内部エネルギーに対する重みとして2種類の重み(制御点数重み,端点方向重み)を設定する。端点方向重み設定部293aは、初期閉領域の設定位置と端点方向とをもとに端点方向重みを設定する。
【0080】
次に、実施の形態2の画像処理装置1aが行う具体的な処理手順について説明する。図18は、実施の形態2の画像処理装置1aが行う処理手順を示す全体フローチャートである。なお、ここで説明する処理は、演算部20aが記録部14aに記録された画像処理プログラム141aを実行することにより実現される。また、図18において、実施の形態1と同一の処理工程には、同一の符号を付する。
【0081】
図18に示すように、実施の形態2では、ステップa3で勾配強度算出部21が処理対象の生体内管腔画像の各画素の勾配強度を算出した後、範囲決定部26aが、設定範囲決定処理を実行する(ステップg5)。図19は、実施の形態2における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0082】
図19に示すように、設定範囲決定処理では、先ず、エッジ抽出部251aが、図18のステップa3で画素毎に算出した勾配強度をもとに、処理対象の生体内管腔画像から勾配強度の値が例えば予め設定される閾値以上の画素をエッジとして抽出する(ステップh1)。これは、公知のCanny,Harris等のエッジ抽出技術を適用することで実現できる。
【0083】
続いて、端点検出部252aが、ステップh1で抽出したエッジの端点を検出する(ステップh3)。エッジの端点の検出は、例えば公知の特徴点抽出技術(参考:CG−ARTS協会,ディジタル画像処理,P188,細線の特徴点抽出)を適用することで実現できる。
【0084】
続いて、方向算出部253aが、検出した端点をもとに、端点と連続するエッジの方向を端点方向として算出する(ステップh5)。具体的には、端点と連続するエッジ上の画素であって、端点の画素から所定距離離れた位置の画素とを結ぶ方向を端点方向として算出する。端点が複数検出された場合には、端点毎に端点方向を算出する。
【0085】
続いて、範囲決定部25aが、端点とを結ぶ直線とステップh5で算出した端点方向との成す角度(以下、「端点方向角度」とも呼ぶ。)が所定の閾値以下である画素の領域を初期閉領域の設定範囲として決定する(ステップh7)。端点方向角度の算出は、例えば次のようにして行う。すなわち、先ず、生体内管腔画像の各画素を順次処理対象とし、処理対象の画素と端点とを結ぶ直線と、ステップh5で算出した端点方向との成す角度を端点方向角度として算出する。ここで、端点が複数存在する場合には、処理対象の画素と最も近い端点を選び、処理対象の画素と選んだ端点とを結ぶ直線と、その端点についてステップh5で算出した端点方向との成す角度を端点方向角度として算出する。あるいは、処理対象の画素との距離が予め設定される所定距離内である端点との端点方向角度を算出するようにしてもよい。このとき、処理対象の画素との距離が所定距離内の端点が複数ある場合には、各端点との端点方向角度をそれぞれ算出し、最も小さい端点方向角度を処理対象の画素についての端点方向角度とする。図20は、生体内管腔画像の一例を示す模式図である。図20では、粘膜7の溝位置や輪郭部分であるエッジ71,72を示している。この図20の例では、図19のステップh3の処理によってエッジ72の端点P61が検出され、ステップh5の処理によって端点P61とエッジ72上で端点P61から所定の距離離れた画素P62とを結ぶ方向が端点方向として算出される。そして、ステップh7では、例えば、エッジ71によって囲まれた領域の内部において、端点P61とを結ぶ直線と端点方向との成す端点方向角度が所定の閾値以下である画素の領域を初期閉領域の設定範囲とする。
【0086】
端点とを結ぶ直線と端点方向との成す端点方向角度が大きい画素位置では、その画素位置付近においてエッジの端点あるいは大きく屈曲するエッジが存在する可能性が高い。例えば、端点P61とを結ぶ直線と端点方向との成す角度θ3が大きい画素P65の付近には、エッジ72の端点P61が存在している。そこで、図19のステップh5では、この画素P65のような端点方向角度が大きい画素を除く領域を初期閉領域の設定範囲とする。すなわち、例えば、画素P63と端点P61とを結ぶ直線と端点方向との成す角度θ1、あるいは画素P64と端点P61とを結ぶ直線と端点方向との成す角度θ2はある程度小さいため、このような画素P63や画素P64は初期閉領域の設定範囲内とする。
【0087】
その後、範囲決定部25aは、ステップh7で決定した設定範囲内に候補点を配置する(ステップh9)。例えば、範囲決定部25aは、設定範囲として決定した画素を連結成分毎に区切り、区切った領域毎に重心を算出する。そして、範囲決定部25aは、算出した重心位置にそれぞれ候補点を配置する。
【0088】
なお、ステップh1で検出したエッジによって生体内管腔画像が複数の領域に区切られる場合には、その領域毎にステップh3〜ステップh9の処理を行い、初期閉領域の設定範囲をそれぞれ決定する。初期閉領域の設定範囲を決定したならば、図18のステップg5にリターンし、その後ステップg6に移行する。
【0089】
そして、ステップg6では、閉領域サイズ決定部27aが、図19のステップh9において設定範囲内に配置した候補点の中から1つを選択する(ステップg6)。例えば、設定範囲内の候補点の中から、図19のステップh7で算出した端点方向角度が最も小さい候補点を選択する。なお、候補点の選択の仕方は特に限定されるものではなく、設定範囲内の候補点の中からランダムに選択することとしてもよい。
【0090】
続いて、閉領域サイズ決定部27aは、ステップa6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とした円形領域であって、エッジまでの距離よりも短く、エッジと重ならない大きさの円形領域の半径rを算出し、初期閉領域のサイズとする(ステップg7)。そして、初期閉領域設定部23aが、ステップg6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とし、ステップg7で該当する中心位置について算出したエッジまでの距離よりも短い半径rの円形領域を初期閉領域として設定する(ステップg9)。
【0091】
以上のようにして設定範囲内に初期閉領域(閉領域の初期形状)を設定したならば、続いて、制御点数決定部28が制御点数決定処理(図13を参照)を実行し、初期閉領域について制御点の数を決定する(ステップa11)。そして、続くステップg13において、エネルギー重み設定部29aがエネルギー重み設定処理を実行し、初期閉領域について制御点数重みおよび端点方向重みを設定する。図21は、実施の形態2におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0092】
図21に示すように、エネルギー重み設定処理では、先ず、制御点数重み設定部291が、初期閉領域の制御点数をもとに、内部エネルギーに対する制御点数重みを設定する(ステップi1)。これは、図14のステップd1と同様の処理で実現できる。
【0093】
続いて、端点方向重み設定部293aが、初期閉領域の中心位置とした重心について算出した端点方向角度をもとに、内部エネルギーに対する端点方向重みを設定する(ステップi3)。上記したように、初期閉領域の中心位置における端点方向角度が大きいと、その周辺にエッジの端点や大きく屈曲するエッジが存在する可能性が高い。ステップi3では、このようなエッジの端点が内部に入り込んだ閉領域や、その境界が大きく屈曲するエッジを含むような閉領域を抽出しないよう、端点方向角度が大きいほど値が大きくなるように次式(10)に従って内部エネルギーに対する端点方向重みを設定する。
端点方向重み=中心位置とした重心における端点方向角度×所定係数 ・・・(10)
【0094】
制御点数重みおよび端点方向重みを設定したならば、図18のステップg13にリターンし、その後ステップg15に移行する。そして、ステップg15では、閉領域抽出部22aが、閉領域抽出処理を実行する。これは、実施の形態1で説明した図15の閉領域抽出処理と同様の処理手順で実現できる。ただし、実施の形態2では、ステップe7の処理として、エネルギー加重和算出部31は、図21のエネルギー重み設定処理で設定した制御点数重みおよび端点方向重みを重み付けした内部エネルギー、画像エネルギー、および外部エネルギーの加重和の最小値を求めることで閉領域を抽出する。
【0095】
続いて、初期閉領域設定部23aが、設定範囲内に選択可能な候補点があるか否かを判定する。ここでの判定は、実施の形態1で説明した図7のステップa17と同様に行う。そして、選択可能な候補点がある場合には(ステップg17:Yes)、ステップg6に戻り、閉領域サイズ決定部27aが、選択可能な候補点の中から、例えば距離画像における画素値が最も大きい候補点を選択する。その後、選択した候補点についてステップg7以降の処理を行う。一方、設定範囲内に選択可能な候補点がない場合には(ステップg17:No)、ステップa19に移行する。
【0096】
以上説明したように、実施の形態2では、生体内管腔画像からエッジを抽出し、その端点を検出することとした。そして、端点とを結ぶ直線と端点方向との成す端点方向角度が小さく、外側にエッジの端点あるいは大きく屈曲するエッジが存在する可能性の高い画素を除く領域を初期閉領域の設定範囲として決定することとした。そして、閉領域の境界の滑らかさを表す内部エネルギーに対して初期閉領域の中心位置における端点方向角度が大きい程その値が大きくなるように設定した端点方向重みを重み付けた上で、動的輪郭抽出法によって閉領域を抽出することとした。この実施の形態2によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0097】
なお、実施の形態2では、設定範囲内の候補点の中から、図19のステップh7で算出した端点方向角度が最も小さい候補点を選択することとした。一方、図18のステップa21では、実施の形態1で説明したように、閉領域として抽出されていない領域を含むように例えば円形状の初期閉領域を設定することとした。これに対し、次式(11)に従って各候補点の評価値を算出し、評価値が最も高いものから順番に候補点を選択するようにしてもよい。また、図18のステップa21において、次式(11)に従って閉領域として抽出されていない領域の各画素の評価値を算出し、評価値が高い画素を中心位置とした初期閉領域を設定するようにしてもよい。次式(11)において、距離画像値は、評価対象の画素の距離画像における画素値である。
評価値=端点方向角度×所定係数+距離画像値 ・・・(11)
【0098】
また、図17に示した機能構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図17では、範囲決定部25aにおいてエッジ抽出部251a、端点検出部252a、および方向算出部253aを備えた構成としたが、演算部20aにおいて端点方向が算出可能であり、範囲決定部25aが端点方向をもとに設定範囲を決定し、エネルギー重み設定部29aにおいて端点方向重み設定部293aが端点方向をもとに端点方向重みを設定できれば範囲決定部25aが備える構成に限定されるものではない。
【0099】
(実施の形態3)
先ず、実施の形態3の画像処理装置の構成について説明する。図22は、実施の形態3の画像処理装置1bの機能構成を説明するブロック図である。なお、実施の形態1で説明した構成と同一の構成については、同一の符号を付する。実施の形態3の画像処理装置1bは、図22に示すように、画像取得部11と、入力部12と、表示部13と、記録部14bと、演算部20bと、画像処理装置1b全体の動作を制御する制御部15とを備える。
【0100】
記録部14bには、実施の形態3の処理を実現して生体内管腔画像から異常部を検出するための画像処理プログラム141bが記録される。
【0101】
また、演算部20bは、勾配強度算出部21と、閉領域抽出部22bと、異常部検出部32とを含む。そして、実施の形態3において、閉領域抽出部22bは、初期閉領域設定部23bと、エネルギー重み設定部29bと、エネルギー算出部30と、エネルギー加重和算出部31とを備える。
【0102】
初期閉領域設定部23bは、初期閉領域を設定する。この初期閉領域設定部23bは、範囲決定部26bと、閉領域サイズ決定部27bと、制御点数決定部28とを備え、範囲決定部26bおよび閉領域サイズ決定部27bの構成が実施の形態1と異なる。実施の形態3では、範囲決定部26bは、エッジ抽出手段としてのエッジ抽出部261bと、距離画像算出手段としての距離画像算出部262bと、尾根検出手段としての尾根検出部263bと、尾根形状情報算出手段としての尾根形状情報算出部264bとを備える。エッジ抽出部261bは、生体内管腔画像の各画素の勾配強度をもとに、勾配強度が所定の値以上の画素をエッジとして抽出する。距離画像算出部262bは、エッジからの距離を示す距離画像を算出する。尾根検出部263bは、距離画像の尾根を検出する。尾根形状情報算出部264bは、尾根の形状情報を算出する。この尾根形状情報算出部264bは、尾根の曲率を算出する尾根曲率算出手段としての尾根曲率算出部265bを備える。
【0103】
また、閉領域サイズ決定部27bは、実施の形態1と同様に、範囲決定部26bが決定した初期閉領域の設定範囲をもとに初期閉領域のサイズを決定するが、実施の形態3では、この閉領域サイズ決定部27bにおいて、尾根閉領域サイズ決定手段としての尾根閉領域サイズ決定部272bが、設定範囲内のエッジから尾根までの距離をもとに、設定範囲内に設定する初期閉領域のサイズを決定する。なお、実施の形態3においても、初期閉領域の形状を円形状とするが、これに限定されるものではなく、適宜の形状としてよい。
【0104】
エネルギー重み設定部29bは、初期閉領域の位置をもとに、エネルギー算出部30が算出する複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定する。このエネルギー重み設定部29bは、制御点数重み設定部291と、尾根形状重み設定手段としての尾根形状重み設定部294bとを備え、内部エネルギーに対する重みとして2種類の重み(制御点数重み,尾根形状重み)を設定する。そして、尾根形状重み設定部294bは、初期閉領域の設定位置における尾根の形状情報をもとに、尾根形状重みを設定する。
【0105】
次に、実施の形態3の画像処理装置1bが行う具体的な処理手順について説明する。図23は、実施の形態3の画像処理装置1bが行う処理手順を示す全体フローチャートである。なお、ここで説明する処理は、演算部20bが記録部14bに記録された画像処理プログラム141bを実行することにより実現される。また、図23において、実施の形態1と同一の処理工程には、同一の符号を付する。
【0106】
図23に示すように、実施の形態3では、ステップa3で勾配強度算出部21が処理対象の生体内管腔画像の各画素の勾配強度を算出した後、範囲決定部26bが、設定範囲決定処理を実行する(ステップj5)。図24は、実施の形態3における設定範囲決定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0107】
図24に示すように、設定範囲決定処理では、先ず、エッジ抽出部261bが、図23のステップa3で画素毎に算出した勾配強度をもとに、処理対象の生体内管腔画像から勾配強度の値が例えば予め設定される閾値以上の画素をエッジとして抽出する(ステップk1)。これは、例えば公知のCanny,Harris等のエッジ抽出技術を適用することで実現できる。
【0108】
続いて、距離画像算出部262bが、画素毎にステップk1で抽出したエッジとの距離を算出し、各画素の画素値を該当する画素について算出した距離の値として距離画像を作成する(ステップk3)。そして、尾根検出部263bが、距離画像の尾根を検出する(ステップk5)。これは、例えば骨格抽出(スケルトン)処理等を適用することで実現できる。
【0109】
続いて、尾根曲率算出部265bが、ステップk5で算出した尾根の曲率を尾根の形状情報として算出する。すなわち先ず、尾根曲率算出部265bは、尾根上に等間隔で複数の候補点を配置する(ステップk7)。続いて、尾根曲率算出部265bは、ステップk7で配置した候補点毎に隣接する2つの候補点に対する内積を算出し、尾根の曲率とする(ステップk9)。
【0110】
続いて、範囲決定部26bが、ステップk9で候補点毎に算出した曲率を閾値処理する。そして、範囲決定部26bは、曲率が予め設定される閾値以下である候補点を選出し、選出した候補点の範囲を初期閉領域の設定範囲として決定する(ステップk11)。
【0111】
なお、ステップk1で検出したエッジによって生体内管腔画像が複数の領域に区切られる場合には、その領域毎にステップk3〜ステップk11の処理を行い、初期閉領域の設定範囲をそれぞれ決定する。初期閉領域の設定範囲を決定したならば、図23のステップj5にリターンし、その後ステップj6に移行する。
【0112】
そして、ステップj6では、尾根閉領域サイズ決定部272bが、図24のステップk7で決定した設定範囲内の候補点の中から候補点を1つ選択する。例えば、設定範囲内の各候補点(画素)の図24のステップk3で作成した距離画像における画素値をもとに、距離画像における画素値が最も大きい候補点を選択する。なお、候補点の選択の仕方は特に限定されるものではなく、設定範囲内の候補点の中からランダムに選択することとしてもよい。
【0113】
続いて、尾根閉領域サイズ決定部272bは、ステップj6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とした円形領域の半径rを算出して初期閉領域のサイズとする(ステップj7)。このとき、半径rは、その初期閉領域の中心位置からエッジまでの距離をもとに、距離が遠いほど値を大きく設定する。そして、初期閉領域設定部23bが、ステップj6で選択した候補点の候補点位置を中心位置とし、ステップj7で該当する中心位置について算出した半径rの円形領域を初期閉領域として設定する(ステップj9)。
【0114】
以上のようにして設定範囲内に初期閉領域(閉領域の初期形状)を設定したならば、続いて、制御点数決定部28が制御点数決定処理(図13を参照)を実行し、初期閉領域について制御点の数を決定する(ステップa11)。そして、続くステップj13において、エネルギー重み設定部29bがエネルギー重み設定処理を実行し、初期閉領域について制御点数重みおよび尾根形状重みを設定する。図25は、実施の形態3におけるエネルギー重み設定処理の詳細な処理手順を示すフローチャートである。
【0115】
図25に示すように、エネルギー重み設定処理では、先ず、制御点数重み設定部291が、初期閉領域の制御点数をもとに、内部エネルギーに対する制御点数重みを設定する(ステップl1)。これは、図14のステップd1と同様の処理で実現できる。
【0116】
続いて、尾根形状重み設定部294bが、初期閉領域の中心位置における尾根の形状情報(中心位置とした候補点について図24のステップk9で算出した尾根の曲率)をもとに、内部エネルギーに対する尾根形状重みを設定する(ステップl3)。ここで、尾根は、生体内管腔画像中のエッジ位置からの距離が遠い画素位置として検出される。この尾根について図24のステップk9で得られた曲率の値が大きい候補点位置、すなわち尾根が大きく屈曲している位置では、実施の形態1の場合と同様に、その候補点付近にエッジの端点あるいは大きく屈曲するエッジが存在する可能性が高い。ステップl3では、エッジの端点が内部に入り込んだ閉領域や、その境界が大きく屈曲するエッジを含むような閉領域を抽出しないよう、尾根の形状情報(中心位置とした候補点における尾根の曲率)が大きいほど値が大きくなるように次式(12)に従って内部エネルギーに対する尾根形状重みを設定する。
尾根形状重み=中心位置とした候補点における尾根の曲率×所定係数 ・・・(12)
【0117】
制御点数重みおよび尾根形状重みを設定したならば、図23のステップj13にリターンし、その後ステップj15に移行する。そして、ステップj15では、閉領域抽出部22bが、閉領域抽出処理を実行する。これは、実施の形態1で説明した図15の閉領域抽出処理と同様の処理手順で実現できる。ただし、実施の形態3では、ステップe7の処理として、エネルギー加重和算出部31は、図25のエネルギー重み設定処理で設定した制御点数重みおよび尾根形状重みを重み付けした内部エネルギー、画像エネルギー、および外部エネルギーの加重和の最小値を求めることで閉領域を抽出する。
【0118】
続いて、初期閉領域設定部23bが、設定範囲内に選択可能な候補点があるか否かを判定する。ここでの判定は、実施の形態1で説明した図7のステップa17と同様に行う。そして、選択可能な候補点がある場合には(ステップj17:Yes)、ステップj6に戻り、尾根閉領域サイズ決定部272bが、選択可能な候補点の中から、例えば距離画像における画素値が最も大きい候補点を選択する。その後、選択した候補点についてステップj7以降の処理を行う。一方、設定範囲内に選択可能な候補点がない場合には(ステップj17:No)、ステップa19に移行する。
【0119】
以上説明したように、実施の形態3では、実施の形態1の平坦領域の中心線にかえて、エッジからの距離が遠い尾根を検出し、その曲率をもとに初期閉領域の設定範囲を決定し、内部エネルギーに対する尾根形状重みを設定することとした。この実施の形態3によれば、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0120】
なお、実施の形態3では、設定範囲内の各候補点の距離画像における画素値をもとに、距離画像における画素値が大きいものから順番に候補点を選択することとした。また、図23のステップa21では、実施の形態1で説明したように、閉領域として抽出されていない領域を含むように例えば円形状の初期閉領域を設定することとした。これに対し、次式(13)に従って各候補点の評価値を算出し、評価値が最も高いもの、詳細には、尾根上において距離画像における画素値が大きいものから順番に候補点を選択するようにしてもよい。また、図23のステップa21において、次式(13)に従って閉領域として抽出されていない領域の各画素の評価値を算出し、評価値が高い画素を中心位置とした初期閉領域を設定するようにしてもよい。次式(13)において、尾根位置フラグは、評価対象の画素(候補点または閉領域として抽出されていない領域の画素)が尾根上の位置か否かのフラグ情報であり、候補点の場合の尾根位置フラグ=1、閉領域として抽出されていない領域の画素の尾根位置フラグ=0となる。また、距離画像値は、評価対象の画素の距離画像における画素値である。
評価値=尾根位置フラグ×所定係数+距離画像値 ・・・(13)
【0121】
また、図22に示した機能構成は一例であって、これに限定されるものではない。例えば、図22では、範囲決定部26bにおいてエッジ抽出部261b、距離画像算出部262b、尾根検出部263b、および尾根形状情報算出部264bを備えた構成としたが、演算部20bにおいて尾根の形状情報が算出可能であり、範囲決定部26bが尾根の形状情報をもとに設定範囲を決定し、エネルギー重み設定部29bにおいて尾根形状重み設定部294bが尾根の形状情報をもとに尾根形状重みを設定できれば範囲決定部26bが備える構成に限定されるものではない。
【0122】
また、上記した実施の形態1の画像処理装置1、実施の形態2の画像処理装置1a、および実施の形態3の画像処理装置1bは、予め用意されたプログラムをパソコンやワークステーション等のコンピュータシステムで実行することによって実現することができる。以下、各実施の形態1〜3で説明した画像処理装置1,1a,1bと同様の機能を有し、画像処理プログラム141,141a,141bを実行するコンピュータシステムについて説明する。
【0123】
図26は、本変形例におけるコンピューターシステム400の構成を示すシステム構成図であり、図27は、このコンピューターシステム400を構成する本体部410の構成を示すブロック図である。図26に示すように、コンピューターシステム400は、本体部410と、本体部410からの指示によって表示画面421に画像等の情報を表示するためのディスプレイ420と、このコンピューターシステム400に種々の情報を入力するためのキーボード430と、ディスプレイ420の表示画面421上の任意の位置を指定するためのマウス440とを備える。
【0124】
また、このコンピューターシステム400における本体部410は、図26および図27に示すように、CPU411と、RAM412と、ROM413と、ハードディスクドライブ(HDD)414と、CD−ROM460を受け入れるCD−ROMドライブ415と、USBメモリ470を着脱可能に接続するUSBポート416と、ディスプレイ420、キーボード430およびマウス440を接続するI/Oインターフェース417と、ローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワーク(LAN/WAN)N1に接続するためのLANインターフェース418とを備える。
【0125】
さらに、このコンピューターシステム400には、インターネット等の公衆回線N3に接続するためのモデム450が接続されるとともに、LANインターフェース418およびローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1を介して、他のコンピューターシステムであるパソコン(PC)481、サーバ482、プリンタ483等が接続される。
【0126】
そして、このコンピューターシステム400は、記録媒体に記録された画像処理プログラム(例えば実施の形態1の画像処理プログラム141や実施の形態2の画像処理プログラム141a、実施の形態3の画像処理プログラム141b)を読み出して実行することで画像処理装置(例えば実施の形態1の画像処理装置1や実施の形態2の画像処理装置1a、実施の形態3の画像処理装置1b)を実現する。ここで、記録媒体とは、CD−ROM460やUSBメモリ470の他、MOディスクやDVDディスク、フレキシブルディスク(FD)、光磁気ディスク、ICカード等を含む「可搬用の物理媒体」、コンピューターシステム400の内外に備えられるHDD414やRAM412、ROM413等の「固定用の物理媒体」、モデム450を介して接続される公衆回線N3や、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が接続されるローカルエリアネットワークまたは広域エリアネットワークN1等のように、プログラムの送信に際して短期にプログラムを記憶する「通信媒体」等、コンピューターシステム400によって読み取り可能な画像処理プログラムを記録するあらゆる記録媒体を含む。
【0127】
すなわち、画像処理プログラムは、「可搬用の物理媒体」「固定用の物理媒体」「通信媒体」等の記録媒体にコンピューター読み取り可能に記録されるものであり、コンピューターシステム400は、このような記録媒体から画像処理プログラムを読み出して実行することで画像処理装置を実現する。なお、画像処理プログラムは、コンピューターシステム400によって実行されることに限定されるものではなく、他のコンピューターシステムであるPC481やサーバ482が画像処理プログラムを実行する場合や、これらが協働して画像処理プログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0128】
また、本発明は、上記した各実施の形態1〜3およびその変形例そのままに限定されるものではなく、各実施の形態や変形例に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって、種々の発明を形成できる。例えば、各実施の形態や変形例に示される全構成要素からいくつかの構成要素を除外して形成してもよい。あるいは、異なる実施の形態や変形例に示した構成要素を適宜組み合わせて形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上のように、本発明の画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラムは、生体内管腔画像から異常部を精度良く検出するのに適している。
【符号の説明】
【0130】
1,1a,1b 画像処理装置
11 画像取得部
12 入力部
13 表示部
14,14a,14b 記録部
141,141a,141b 画像処理プログラム
20,20a,20b 演算部
21 勾配強度算出部
22,22a,22b 閉領域抽出部
23,23a,23b 初期閉領域設定部
24,25a,26b 範囲決定部
241 平坦領域抽出部
242 領域形状情報算出部
243 中心線算出部
244 曲率算出部
251a エッジ抽出部
252a 端点検出部
253a 方向算出部
261b エッジ抽出部
262b 距離画像算出部
263b 尾根検出部
264b 尾根形状情報算出部
265b 尾根曲率算出部
27,27a,27b 閉領域サイズ決定部
271 内接領域サイズ決定部
272b 尾根閉領域サイズ決定部
28 制御点数決定部
281 面積算出部
282 周囲長算出部
29,29a,29b エネルギー重み設定部
291 制御点数重み設定部
292 領域形状重み設定部
293a 端点方向重み設定部
294b 尾根形状重み設定部
30 エネルギー算出部
301 内部エネルギー算出部
302 画像エネルギー算出部
303 外部エネルギー算出部
31 エネルギー加重和算出部
32 異常部検出部
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理装置であって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出手段と、
を備え、
前記閉領域抽出手段は、
前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定手段と、
前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定手段と、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出手段と、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出手段と、
を備え、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記エネルギー算出手段は、
前記閉領域の形状が滑らかなほど小さい値を示す内部エネルギーを算出する内部エネルギー算出手段と、
前記閉領域の境界における前記勾配強度の値が大きいほど小さい値を示す画像エネルギーを算出する画像エネルギー算出手段と、
前記閉領域の大きさが大きいほど小さい値を示す外部エネルギーを算出する外部エネルギー算出手段と、
を備え、
前記閉領域抽出手段は、前記内部エネルギー、前記画像エネルギー、および前記外部エネルギーのうちの少なくとも2つのエネルギーの加重和が最小となるように前記初期閉領域を変形していくことで、前記閉領域を抽出することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記範囲決定手段は、前記生体内管腔画像から前記勾配強度の値が類似する画素で構成された平坦領域を抽出する平坦領域抽出手段を備え、前記平坦領域内において前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記範囲決定手段は、前記平坦領域の形状情報を算出する領域形状情報算出手段を備え、前記平坦領域の形状情報をもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記領域形状情報算出手段は、
前記平坦領域の中心線を算出する中心線算出手段と、
前記中心線の曲率を算出する曲率算出手段と、
を備え、前記中心線の曲率を前記平坦領域の形状情報とすることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記範囲決定手段は、前記生体内管腔画像の各画素のうち、前記勾配強度が所定の値以上である画素をエッジとして抽出するエッジ抽出手段を備え、前記エッジをもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記範囲決定手段は、
前記エッジの端点を検出する端点検出手段と、
前記端点と連続する前記エッジの方向を端点方向として算出する方向算出手段と、
を備え、
前記端点方向をもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記範囲決定手段は、前記エッジからの距離を示す距離画像を算出する距離画像算出手段を備え、前記距離画像をもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記初期閉領域設定手段は、前記設定範囲の画素の前記距離画像における画素値をもとに、該画素値の大きい位置に前記初期閉領域を設定することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記初期閉領域設定手段は、前記設定範囲の画素の前記距離画像における画素値をもとに、前記初期閉領域のサイズを決定する閉領域サイズ決定手段を備えることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記範囲決定手段は、前記距離画像の尾根を検出する尾根検出手段を備え、前記尾根をもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記初期閉領域設定手段は、前記設定範囲に含まれる前記尾根上の画素の前記距離画像における画素値をもとに、該画素値の大きい位置に前記初期閉領域を設定することを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記範囲決定手段は、前記尾根の形状情報を算出する尾根形状情報算出手段を備え、前記尾根の形状情報をもとに前記設定範囲を決定することを特徴とする請求項11に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記尾根形状情報算出手段は、前記尾根の曲率を算出する尾根曲率算出手段を備え、前記尾根の曲率を前記尾根の形状情報とすることを特徴とする請求項13に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記初期閉領域設定手段は、前記設定範囲をもとに前記初期閉領域のサイズを決定する閉領域サイズ決定手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項16】
前記閉領域サイズ決定手段は、所定形状を有し、前記設定範囲に内接する大きさを前記初期閉領域のサイズとして決定する内接領域サイズ決定手段を備えることを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項17】
前記生体内管腔画像の各画素のうち、前記勾配強度が所定の値以上である画素をエッジとして抽出するエッジ抽出手段と、
前記エッジからの距離を示す距離画像を算出する距離画像算出手段と、
前記距離画像の尾根を検出する尾根検出手段と、
を備え、
前記閉領域サイズ決定手段は、前記エッジから前記尾根までの距離をもとに前記初期閉領域のサイズを決定する尾根閉領域サイズ決定手段を備えることを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項18】
前記初期閉領域は、複数の制御点を結んだものとして設定され、該制御点が移動されて前記変形がされていくものであり、
前記初期閉領域設定手段は、前記初期閉領域のサイズをもとに前記制御点の数を決定する制御点数決定手段を備えることを特徴とする請求項15に記載の画像処理装置。
【請求項19】
前記制御点数決定手段は、前記初期閉領域の面積を算出する面積算出手段を備え、前記面積をもとに前記制御点数を決定することを特徴とする請求項18に記載の画像処理装置。
【請求項20】
前記制御点数決定手段は、前記初期閉領域の周囲長を算出する周囲長算出手段を備え、前記周囲長をもとに前記制御点数を決定することを特徴とする請求項18に記載の画像処理装置。
【請求項21】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理装置であって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出手段と、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出手段と、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出手段と、
を備え、
前記閉領域抽出手段は、
前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定手段と、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出手段と、
前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定手段と、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出手段と、
を備え、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする画像処理装置。
【請求項22】
前記初期閉領域は、複数の制御点を結んだものとして設定され、該制御点が移動されて前記変形がされていくものであり、
前記初期閉領域のサイズをもとに前記制御点数を決定する制御点数決定手段を備え、
前記エネルギー重み設定手段は、前記制御点数に応じた前記重みを設定することを特徴とする請求項21に記載の画像処理装置。
【請求項23】
前記初期閉領域設定手段は、前記生体内管腔画像中の前記勾配強度の値が類似する画素で構成された平坦領域内に前記初期閉領域を設定し、
前記平坦領域の形状情報を算出する領域形状情報算出手段を備え、
前記エネルギー重み設定手段は、前記平坦領域の形状情報をもとに、前記初期閉領域の設定位置における前記平坦領域の形状に応じた重みを設定する領域形状重み設定手段を備えることを特徴とする請求項21に記載の画像処理装置。
【請求項24】
前記領域形状情報算出手段は、
前記平坦領域の中心線を算出する中心線算出手段と、
前記中心線の曲率を算出する曲率算出手段と、
を備え、
前記領域形状重み設定手段は、前記中心線の曲率が大きいほど前記閉領域の外形によって定まるエネルギーに対する重みを大きく設定することを特徴とする請求項23に記載の画像処理装置。
【請求項25】
前記初期閉領域設定手段は、前記生体内管腔画像中の前記勾配強度の値が所定の値以上であるエッジをもとに前記初期閉領域を設定し、
前記エッジの端点を検出する端点検出手段と、
前記端点と連続する前記エッジの方向を端点方向として算出する方向算出手段と、
を備え、
前記エネルギー重み設定手段は、前記初期閉領域の設定位置と前記端点方向とをもとに前記重みを設定することを特徴とする請求項21に記載の画像処理装置。
【請求項26】
前記エネルギー重み設定手段は、前記端点と前記初期閉領域の設定位置とを結ぶ直線と前記端点方向との成す角度が大きいほど前記閉領域の外形によって定まるエネルギーに対する重みを大きく設定することを特徴とする請求項25に記載の画像処理装置。
【請求項27】
前記初期閉領域設定手段は、前記生体内管腔画像中の前記勾配強度の値が所定の値以上であるエッジをもとに前記初期閉領域を設定し、
前記エッジからの距離を示す距離画像を算出する距離画像算出手段と、
前記距離画像の尾根を検出する尾根検出手段と、
前記尾根の形状情報を算出する尾根形状情報算出手段と、
を備え、
前記エネルギー重み設定手段は、前記尾根の形状情報をもとに、前記初期閉領域の設定位置における前記尾根の形状に応じた重みを設定する尾根形状重み設定手段を備えることを特徴とする請求項21に記載の画像処理装置。
【請求項28】
前記尾根形状情報算出手段は、前記尾根の曲率を算出する尾根曲率算出手段を備え、
前記尾根形状重み設定手段は、前記尾根の曲率が大きいほど前記閉領域の外形によって定まるエネルギーに対する重みを大きく設定することを特徴とする請求項27に記載の画像処理装置。
【請求項29】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理方法であって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出工程と、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出工程と、
を含み、
前記閉領域抽出工程は、
前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定工程と、
前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定工程と、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出工程と、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出工程と、
を含み、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする画像処理方法。
【請求項30】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理方法であって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出工程と、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出工程と、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出工程と、
を含み、
前記閉領域抽出工程は、
前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定工程と、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出工程と、
前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定工程と、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出工程と、
を含み、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出することを特徴とする画像処理方法。
【請求項31】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出するための画像処理プログラムであって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出ステップと、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記閉領域抽出ステップは、
前記勾配強度をもとに初期閉領域の設定範囲を決定する範囲決定ステップと、
前記設定範囲に前記初期閉領域を設定する初期閉領域設定ステップと、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出ステップと、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出ステップと、
を前記コンピュータに実行させ、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項32】
生体内管腔を撮像した生体内管腔画像から異常部を検出する画像処理プログラムであって、
前記生体内管腔画像をもとに、各画素の画素値の勾配強度を算出する勾配強度算出ステップと、
前記勾配強度が所定の値以上である画素を領域の内部に含まず、かつ、領域の境界が該領域の内側に所定の曲率以上で屈曲しないことを条件として該条件を満たす閉領域を抽出する閉領域抽出ステップと、
前記閉領域内部の異常部を検出する異常部検出ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記閉領域抽出ステップは、
前記勾配強度をもとに初期閉領域を設定する初期閉領域設定ステップと、
少なくとも前記閉領域の外形によって定まるエネルギーおよび前記閉領域の境界における前記勾配強度によって定まるエネルギーを含む複数のエネルギーの値を算出するエネルギー算出ステップと、
前記初期閉領域の位置をもとに、前記複数のエネルギーのうちの少なくとも1つのエネルギーに対する重みを設定するエネルギー重み設定ステップと、
前記複数のエネルギーの加重和を算出するエネルギー加重和算出ステップと、
を前記コンピュータに実行させ、前記加重和をもとに前記初期閉領域を変形していくことで前記閉領域を抽出させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−45055(P2012−45055A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187678(P2010−187678)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】