説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム

【課題】印刷画像の観察距離に応じて決定される観測視野角の違いを考慮したカラーマッチング処理を行う。
【解決手段】画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング手段と、を備え、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むことを特徴とする画像処理装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、及びプログラムに関し、特に、異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像を相互にカラーマッチングさせる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々なカラー印刷装置が普及している。そのため、以前は高価で大掛かりな装置を必要とした高品質な印刷物も、パーソナルコンピュータ(PC)とカラー印刷装置とを組み合わせることにより、手軽に得ることが可能である。
【0003】
また、いろいろな画像形成プロセスを採用したカラー印刷装置が存在する。そこで、目的とする印刷物の特性に適したカラー印刷装置を使い分けることが行われている。例えば、A4サイズのカラー印刷を高速に行う場合はカラー複写機を使用し、ポスター等の大判印刷を行う場合はカラー大判プリンタを使用するといった具合に、それぞれの目的に適ったカラー印刷装置が選択される。
【0004】
しかしながら、これらのカラー印刷装置を使用して画像データをそのまま印刷したとしても、必ずしもユーザが満足する品質の印刷画像が得られない。そのため、画像データに補正処理を施すことが行われている。例えば、デジタルカメラで撮影された画像データをカラープリンタで印刷する場合を考える。この場合、画像データの特性に合わせて、「明るさ・コントラスト」「トーンカーブ」「色相・彩度」「カラーバランス」「アンシャープマスク」「エッジ強調」などの処理を組み合わせた画像補正処理を行う。その後、画像補正処理が適用された画像データをカラー印刷装置で印刷することにより、高品質の印刷画像が得られる。
【0005】
ところで、各種ショーやイベントにおいては、いろいろな種類の(例えば、いろいろなサイズ、用途、或いは部数(以下、「用途等」と呼ぶ)の)印刷物が必要になる。そこで、複数種類の印刷装置から、必要な用途等に適したものを選択して印刷することが行われている。印刷物の種類としては、例えば、チラシ、パンフレット(中綴じ)、ブックレット(中綴じ)、ポスター(大)、ポスター(小)などがある。一般に、チラシやパンフレットは、比較的小さなサイズで多くの部数が必要とされ、ポスターは大判のものがチラシなどに比較すると比較的小部数必要とされる。
【0006】
いろいろな種類の印刷物を効率的に生成する方法の1つとして、ワンコントローラオンデマンドソリューションが提案されている。これは、1つ(或いは、比較的少数)の画像データに対して、印刷物の用途等に応じた設定処理を適用して印刷データを生成し、最適な印刷装置に印刷ジョブを割り振ることにより、効率的に印刷データの生成及び出力(印刷)を行うものである。例えば、チラシはA4サイズのものを大量に印刷する必要があるので、高速カラー複写機で印刷を行い、ポスターはB0サイズになるので大判プリンタにより印刷を行うといった具合である。ここで、設定処理は、例えば、面つけ処理、文字入れ処理、余白処理、トンボの設定、サイズ設定、フチ無し印刷処理などを含む。
【0007】
従来のワンコントローラオンデマンドソリューションでは、少数の同じ画像データに基づいて用途等に応じた印刷データを生成する。そのため、画像データに共通の画像補正処理を施した後、その画像データからそれぞれの用途等に応じた加工処理を行い、各印刷装置に合わせてカラーマッチング処理を行って印刷データを生成する。同一の画像データに基づく印刷画像であっても、その色味は、使用された印刷装置によって異なる場合がある。そこで、使用される印刷装置が異なっても印刷画像の色味が同じになることを意図して、カラーマッチング処理が実行される。
【0008】
しかしながら、印刷画像の色味の違いは、印刷装置の違いのみならず、印刷画像を観察する角度(観測視野角)の違いによっても発生し得るものである。ヒトの目は、視野角4度を超える大きな視野においてはその中心部と周辺部では等色データが異なることが知られている。CIE(国際照明委員会)は、標準観測視野を定量化するための等色実験を行い、2度観測視野と10度観測視野を確立し、それぞれの場合に適した等色関数を採択している。
【0009】
観測視野角の違いに着目した発明としては、手元で印刷物を見る際に印刷物のサイズが2L版以下であるか2L版を越えるか否かに応じて2度観測視野と10度観測視野を選択的に使用する発明(例えば特許文献1)がある。
【0010】
しかし、この発明では、手元にある印刷物のサイズを対象とした発明であり、あるイベントのチラシ(例えばA4サイズ)のような手元にある印刷物と遠く離れて見るポスター(例えばB0サイズ)に対する観察距離の違いに着目した発明ではない。
【特許文献1】特開2007−108969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述したように、従来のカラーマッチング処理では、印刷物毎に観測視野角が異なる場合に、色味が違って見える場合がある。この問題は、特に、前述のワンコントローラオンデマンドソリューションを用いて印刷物を生成する場合に重大である。
【0012】
各種ショーやイベントに必要な印刷物のサイズは、チラシなどの小さいもの(例えば、B4サイズやA4サイズ程度)から、判ポスターなどの大きいもの(例えば、数メーター四方のサイズ)まで、広範に亘る。また、それぞれの印刷物が担う役割も大きく異なる。
【0013】
例えば、チラシやパンフレットのサイズは、B4サイズやA4サイズなど手に取りやすいサイズであり、その目的は、それを手に取っている人に比較的詳細な情報を伝達することである。この情報は、イベントの開催日時、場所、その地図、出演者、イベント内容の詳細な説明などを含み、印刷画像における絵と文字は同程度に重要である。そして、チラシやパンフレットを見ている人が手に取った状態からある程度、部分部分に集中して詳細な内容を読むことが想定される。
【0014】
それに対して、大判のポスターはショーやイベントが開催されることを報知するのが主たる目的であり、そのサイズからしてもそれを見る人は比較的離れた場所から全体を眺めることが想定される。換言すれば、チラシやパンフレットは30cm程度の距離から、文字など細かい部分も含めて細部を見るものであるのに対し、大判ポスターは数メートルから数十メートル離れた距離から全体を眺めるものである。
【0015】
従って、複数の用途等の印刷物を生成するワンコントローラオンデマンドソリューションによれば、印刷物の想定される観測視野角が異なる場合が多い。
【0016】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、印刷画像の観察距離に応じて決定される観測視野角の違いを考慮したカラーマッチング処理を行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、第1の本発明は、画像データを取得する画像データ取得手段と、前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得手段と、前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング手段と、を備え、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むことを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0018】
また、第2の本発明は、画像データを取得する画像データ取得工程と、前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得工程と、前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング工程と、を備え、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むことを特徴とする画像処理方法を提供する。
【0019】
また、第3の本発明は、コンピュータを、画像データを取得する画像データ取得手段、前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得手段、前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング手段、として機能させるためのプログラムであって、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むプログラムを提供する。
【0020】
なお、その他の本発明の特徴は、添付図面及び以下の発明を実施するための最良の形態における記載によって更に明らかになるものである。
【発明の効果】
【0021】
以上の構成により、本発明によれば、印刷画像の観察距離に応じて決定される観測視野角の違いを考慮したカラーマッチング処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念から下位概念までの種々の概念を理解するために役立つであろう。
【0023】
なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせすべてが、本発明に必須とは限らない。
【0024】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の画像処理装置をパーソナルコンピュータ(PC)に適用した印刷システムの一例を示す図である。
【0025】
印刷システム100は、PC101、RIP(Raster Image Processor)102、印刷装置A103、印刷装置B104、及び印刷装置C105を含む。
【0026】
RIP102は、画像データのラスタライズ処理を行い、各印刷装置への出力処理を行う。また、本実施形態では、一例として、印刷装置A103は60インチサイズの大判プリンタ、印刷装置B104は24インチサイズの大判プリンタ、印刷装置C105はカラー複写機であるものとする。RIP102と、各印刷装置とは、ネットワーク106を介して相互に接続されている。
【0027】
図2は、PC101及びRIP102の機能構成を示すブロック図である。本実施形態では、ラスタライズ部211及びデータ転送部212はRIP102に備えられ、他の構成要素はPC101に備えられるものとするが、これに限られるものではない。例えば、印刷システム100からRIP102を除き、図2の全ての構成要素をPC101に含めてもよい。
【0028】
図2において、201は画像データを記憶する画像データ記憶部、202はユーザの指示に従って画像データ記憶部201から画像データを取得する画像データ取得部、203は取得された画像データの編集を行う画像編集部である。205は印刷物の用途等を設定する用途等設定部である。204は、設定された用途等に基づいて、画像編集部203が使用する画像編集パラメータを設定する編集パラメータ決定部である。206は画像データに画像補正処理(シャープネス補正処理及びガンマ補正処理など)を適用する画像補正部である。207は、設定された用途等に基づいて、画像補正部206が使用する補正パラメータを決定する補正パラメータ決定部である。
【0029】
208は、それぞれ異なる印刷装置によって形成される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、画像データにカラーマッチング処理(第2色補正処理)を適用するカラーマッチング部である。209は、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、画像データに対して色補正処理(第1色補正処理)を適用する色補正部である。
【0030】
210は、設定された用途等に基づいて、色補正部209が使用する色補正パラメータを決定する色補正パラメータ決定部である。211は各種処理が適用された画像データをラスタライズするラスタライズ部、212はユーザの設定した印刷装置へ画像データを転送するデータ転送部である。213は、画像の印刷に用いる印刷装置を選択する印刷装置選択部であり、カラーマッチング部208は、選択された印刷装置に基づいて使用するカラーマッチングプロファイルを決定する。
【0031】
図3は、PC101がディスプレイ(不図示)に表示する、印刷画像の基となる画像データ、用途等、及び使用する印刷装置をユーザが設定するための設定画面300の一例を示す図である。設定画面300は、画像データを選択する画像データフィールド301、用途を選択する用途フィールド302、印刷サイズを選択する印刷サイズフィールド303、印刷装置を選択する印刷装置フィールド304、及び決定ボタン305を含む。
【0032】
決定ボタン305が押下されると、画像データ取得部202は、画像データフィールド301で選択された画像データを画像データ記憶部201から取得する。また、用途等設定部205は、用途フィールド302および印刷サイズフィールド303で選択された内容を用途等として設定する。また、用途等設定部205は、印刷装置フィールド304で選択された内容(装置情報)を印刷装置選択部213へ通知する。従って、印刷装置選択部213は、装置情報取得を行う。
【0033】
本実施形態において、用途等は、印刷画像の観測視野角に関連するパラメータである。即ち、例えば印刷サイズが大きく、ユーザが遠くから観察することが期待される用途(例えば、ポスター)であれば、観測視野角は大きいと考えられる。反対に、印刷サイズが小さく、ユーザが近くから観察することが期待される用途(例えば、パンフレット)であれば、観測視野角は小さいと考えられる。従って、用途等設定部205は、観測視野角に関連するパラメータ取得を行う。
【0034】
本発明の特徴の1つは、観測視野角に応じた色補正処理を実現することであるので、設定画面300は、観測視野角に関連するパラメータを選択することができれば、図3の例に限られない。例えば、設定画面300は、観測視野角を直接入力するためのフィールドを備えていてもよい。
【0035】
図4は、第1の実施形態に係る画像処理の流れを示すフローチャートである。
【0036】
図4において、S401はユーザが画像データを選択する画像データ選択ステップ、S402はユーザが印刷物の用途を選択する用途選択ステップ、S403はユーザが印刷物のサイズを選択する印刷物サイズ選択ステップである。S404は画像を印刷する印刷装置を選択する印刷装置選択ステップ、S405は印刷物の用途と印刷物のサイズから印刷物が実際に使用される際の観察距離を決定する観察距離決定ステップである。
【0037】
S406はユーザの決定した印刷物のサイズからシャープネスの補正係数を決定するシャープネス補正係数決定ステップ、S407はユーザの決定した印刷物のサイズからガンマ補正係数を決定するガンマ補正係数決定ステップである。S408はシャープネスの補正処理とガンマ補正処理を行う画像補正処理実行ステップ、S409は選択された印刷装置にあわせてカラーマッチング処理を行うカラーマッチング処理実行ステップである。
【0038】
S410は決定された印刷物の用途等に基づいて印刷画像の観測視野角を決定する観測視野角決定ステップ、S411は観測視野角に応じて色補正処理を行う色補正処理実行ステップである。
【0039】
シャープネス補正処理及びガンマ補正処理は、次に説明する理由により実行される。印刷物が小さい場合は画像全体が締まって見え、同じ画像データで大きな印刷物を作成すると何となく眠く見える。同様にして、同じ画像でも小さい印刷物の場合はシャープに見え、大きくすると一般にはシャープさに欠ける傾向にある。これは、印刷物のサイズ、観察距離に加え、画像データの拡大率にも関係してくる。画像データの拡大処理をしないで大判ポスターを印刷できるような巨大な画像データは稀で、一般にはそれほど大きくない画像データを拡大処理して大判ポスターを印刷できるサイズにする。よって、印刷物のサイズが小さい場合は拡大率が低く、大判ポスターのような大きい印刷物になるにつれて拡大率が高くなる。画像データを拡大処理により拡大した場合、印刷画像は一般的に、拡大率が大きく元の画像データとの差が大きいほど眠く、シャープさに欠ける印象になる傾向にある。そこで、本実施形態では、印刷物の用途等に関わらず印刷画像がシャープで締まって見えるように、シャープネス補正処理及びガンマ補正処理を実行する。
【0040】
以下、再び図1の印刷システム100を参照して、ワンコントローラオンデマンドソリューションの概略を説明する。各種ショーやイベントにおいては、様々な目的や意図を持って、いろいろなサイズや部数の印刷物が必要とされる。その一例としては、チラシ、パンフレット(中綴じ)、ブックレット(中綴じ)、ポスター(特大)、ポスター(小)などがあげられる。これらの印刷物の中でチラシやパンフレットはそれほど大きなサイズで無いものが数多く必要であり、ポスターは大判のものがチラシなどに比較すると比較的小部数必要とされる。これらの印刷物は、サイズや用途は異なるが、多くの場合は同じ画像データ或いは数種類の画像データをベースにして編集、作成されることが多い。
【0041】
ユーザは、PC101において、作成する印刷物のベースとなる画像データを取り込む。取り込まれた画像データは、PC101にインストールされているワンコントローラオンデマンドソリューションを実現するソフトウェアによって読み込まれる。そして、ユーザが設定した印刷物の用途等に合わせて、面つけ処理、文字入れ処理、余白処理、トンボの設定、サイズ設定、フチ無し印刷処理などが行われる。
【0042】
こうして得られた印刷データには、用途等に応じて割り当てられた各種印刷装置に合わせてカラーマッチング処理が適用される。この際、印刷装置が異なっても同じ色味にマッチングされることは言うまでも無いことである。画像編集処理、カラーマッチング処理が終了した画像データ(ベクター画像データ)は、RIP102により、印刷装置で印刷可能なラスター画像データ形式に変換される(ラスタライズ処理)。
【0043】
印刷可能なデータ形式に変換された画像データは、用途等に応じて選択された印刷装置にジョブとして割り振られる。例えば、チラシやパンフレットはA4程度のサイズのものを大量に印刷する必要があるので、高速カラー印刷が可能な印刷装置C105に割り振られる。また、特大ポスターは非常に大きなサイズが印刷可能な印刷装置A103に割り振られ、それよりも小さいサイズのポスターは24インチサイズの印刷が可能な印刷装置B104に割り振られる。それぞれの印刷装置はネットワーク106に接続されており、指定された大きさ、枚数の印刷処理が各印刷装置で並行して処理され、それぞれの印刷装置から各目的に適う印刷物が並行して得られる。
【0044】
再び図2を参照して、より詳細に説明する。必要とする印刷物の基となる画像データがPC101に読み込まれ、画像データ記憶部201に記憶される。画像データ記憶部201は、ハードディスクなどの記憶装置もしくはメモリを含む。
【0045】
ユーザは図4のS401において、図3に示す設定画面300の画像データフィールド301を利用して、画像データ記憶部201により記憶された画像データの中から、これから作成する印刷物の基となる画像データを選択する。図示しないが、それぞれの印刷物の用途等に応じて複数の画像データを選択するように設定画面300を構成することも可能である。
【0046】
ユーザはS402において、用途フィールド302を利用して、印刷物の用途を選択する。
【0047】
ユーザはS403において、印刷サイズフィールド303を利用して、印刷サイズを選択する。
【0048】
ユーザはS404において、印刷装置フィールド304を利用して、印刷装置の選択を行う。
【0049】
以上の印刷パラメータが決定されると、S405において、印刷物が実際に使用される際の観察距離が決定される。また、ユーザにより選択されたそれぞれの用途等に応じて画像データの加工が行われる。即ち、編集パラメータ決定部204において画像編集に必要な編集パラメータが決定される。編集パラメータには、トンボの位置、余白、文字入れ処理、文字入れの位置のパラメータ、レイアウト処理のパラメータ、中綴じ処理のパラメータ、ポスターのフチ無し印字処理のパラメータなどが含まれる。また、拡大処理など印刷物を作成するための印刷用画像データの作成に必要なその他のパラメータが全て含まれる。
【0050】
画像編集部203は、決定された編集パラメータを用いて、画像データを編集する。用途等に応じて編集されたそれぞれの印刷用画像データは、画像補正部206において、ユーザが選択した用途等に応じた画像補正処理が適用される。画像補正処理は補正処理パラメータ決定部207において決定された画像補正パラメータに基づいて実施される。
【0051】
本実施形態においては、画像補正処理としてガンマ補正処理とシャープネス補正処理が行われる。そこで、S406とS407において、シャープネス補正とガンマ補正の係数が決定される。一般に、印刷物が小さい場合には、画像全体が締まってシャープに見え、同じ画像データで大きな印刷物を作成すると眠く、シャープさに欠ける傾向にある。そこで、本実施形態では、印刷物のサイズに注目して画像補正処理を行う。
【0052】
印刷物のサイズは、ユーザがS402及びS403において選択した印刷物の用途等に応じて決まる。例えば、チラシ、パンフレットはA4程度のサイズ、通常サイズポスターがA2程度のサイズ、大判ポスターは2m×4mのサイズ、とする。チラシ、パンフレットに対しては画像補正処理を行わないとすれば、通常サイズのポスター、大判ポスターとなるにつれて、ガンマをきつく、シャープネスを強く処理することにより、サイズが大きくなったことによる眠さやシャープさに欠ける傾向を緩和する。
【0053】
本実施形態においては、S406及びS407において、図5に示すように、用途及び印刷サイズの組み合わせが6つ(1〜6)あるものとする。そして、それぞれに適したシャープネス補正処理のパラメータ、及びガンマ補正処理のパラメータが事前に(例えば不図示のメモリに)格納されている。そして、これを読み出すことにより、画像補正処理パラメータが得られる。もちろん、画像補正処理パラメータは、メモリから読み出すのではなく、何らかの演算処理により求めても構わない。
【0054】
こうして得られた画像補正処理パラメータを用いて、S409において、印刷用画像データは画像補正部206により用途等に応じた画像補正処理が行われる。
【0055】
次いで、ユーザが選択した印刷装置が、印刷装置選択部213にて選択される。本発明は、各種ショーやイベントに必要な印刷物を一度に同時に作成する構成を用いている。選択された印刷装置により得られる印刷画像のカラーマッチングを実現するために、S409において、カラーマッチング部208が、それぞれの印刷装置に応じたカラーマッチング処理を印刷用画像データに対して適用する。カラーマッチング処理は、事前に作成されたカラーマッチングプロファイルを読み込むことにより、印刷装置毎に、ユーザの設定した用途等に応じて作成された各印刷用画像データに対して行われる。
【0056】
カラーマッチング処理が終了すると、S410において、印刷物のサイズと用途から、観測視野角が決定される。印刷用画像データには、色補正部209において、ユーザが設定した印刷物の用途等に応じた色補正処理が適用される。但し、第1の実施形態における色補正処理は、主に印刷物のサイズと用途(或いは、用途から定まる観察距離)に影響される観測視野角に基づいて行われる。
【0057】
図6に示すように、チラシやパンフレットのサイズはA4サイズなど手に取りやすいサイズであり、その目的とすることはそれを手に取っている人に比較的詳細な情報を伝達することである。それは、イベントの開催日時、場所、その地図、出演者、イベント内容の詳細な説明などであり、印刷された画像とそこに記載されている文字情報は同じ程度に重要である。そして、それを見ている人(観察者)が手に取った状態からある程度、部分部分に集中して詳細な内容を読むことが想定される印刷物である。
【0058】
それに対して、大判ポスターは、ショーやイベントが開催されることを報知するのが主たる目的であり、そのサイズからしても観察者は比較的離れた場所から全体を眺めるといったことが想定される。すなわち、チラシやパンフレットは30cm程度の距離から、文字など細かい部分も含めて細部を見るのに対し、大判ポスターは数メートルから数十メートル離れた距離から全体を眺めるということになる。
【0059】
従って、図6に示すように、印刷物のサイズと観察距離により、ヒトの見る視野角が異なる。前述の通り、ヒトの目は視野角4度を超える大きな視野においてはその中心部と周辺部では等色データが異なる。CIE(国際照明委員会)は視野角が狭い2度観測視野と視野角の広い10度観測視野を確立し、それぞれの場合に適した等色関数を採択している。よって、サイズや観察距離の異なる印刷物のカラーマッチングを実現するためには、印刷物のサイズと観察距離に応じた色補正処理が必要となる(S411で実行される)。
【0060】
第1の実施形態においては、図7に示すように、用途及び印刷サイズの組み合わせ6つ(1〜6)あるものとする。そして、各組み合わせに対応する観測視野角に適した色補正パラメータがメモリなどに事前に格納されており、用途等に応じた色補正パラメータがそこから読み出される。
【0061】
図8は、色補正パラメータを図7とは異なる視点から説明する図である。色補正パラメータ決定部210は、設定された用途等に基づき、観測視野角が2度と10度のどちらに近いかを決定する。カラーマッチング部208は、各印刷装置について、観測視野角が2度の場合に適したカラーマッチング処理を行う。そのため、観測視野角が2度の場合、色補正部209は、これ以上の色補正処理を行う必要がない(図8では、「0」で表現されている)。一方、観測視野角が10度の場合、観測視野角が2度の場合とカラーマッチングするように、予め設定された色補正パラメータに基づいて色補正部209は色補正処理を行う。
【0062】
S411において色補正処理が終了した印刷用画像データは、ラスタライズ部211でラスタライズされる。一般に、面つけ処理や文字入れ処理された画像データは、データ編集の容易さを理由に、ベクター画像として編集されることが多い。ベクター画像データは、画像データがコマンドにより記述された状態である。一般に出力装置で印刷するには、ベクター画像データのコマンドを解釈し、ビットマップ画像であるラスター画像データに予め変換しておく必要がある。もちろん、はじめからラスター画像データを直接編集することも可能であり、その場合、ラスタライズ部211は必要ない。ラスタライズされた印刷画像データは、データ転送部212により、印刷装置選択部が選択した印刷装置へ転送される。転送先の印刷装置は、転送された画像データに基づいて印刷画像を形成し、印刷物を生成する。
【0063】
以上説明したように、本実施形態によれば、色補正パラメータ決定部210は、ユーザにより設定された印刷物の用途等に基づき、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像を相互にカラーマッチングさせる色補正パラメータを決定する。色補正部209は、色補正パラメータ決定部210が決定した色補正パラメータを用いて、印刷対象の画像データに色補正処理を適用する。
【0064】
これにより、印刷画像の観察距離に応じて決定される観測視野角の違いを考慮したカラーマッチング処理を行うことが可能となる。
【0065】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、カラーマッチング部208が印刷装置の違いに関する色補正処理(第1色補正処理)を行い、色補正部209が観測視野角の違いに関する色補正処理(第2色補正処理)を行った。即ち、第1の実施形態では、色補正処理が2回に分けて行われる。この構成には、従来の画像処理装置に比較的小さな変更を加えるだけで本発明の画像処理装置を実現できるという利点がある。
【0066】
これに対し、第2の実施形態では、カラーマッチング部208が、第1色補正処理及び第2色補正処理を併せて実現するカラーマッチングプロファイルを用いて、印刷装置及び観測視野角の違いに関する色補正処理を画像データに適用する。
【0067】
これにより、本発明の画像処理装置の構成が簡略化される。
【0068】
なお、本実施形態において、第1の実施形態と共通の部分については、説明を省略する。
【0069】
図9は、PC101及びRIP102の機能構成を示すブロック図である。図9において、図2と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、第1の実施形態と同様、ラスタライズ部211及びデータ転送部212はRIP102に備えられ、他の構成要素はPC101に備えられるものとするが、これに限られるものではない。例えば、印刷システム100からRIP102を除き、図9の全ての構成要素をPC101に含めてもよい。
【0070】
図9において、901は、ユーザが設定した印刷物の用途等に適したカラーマッチングプロファイルを選択する、カラーマッチングプロファイル選択部である。カラーマッチングプロファイルは、印刷装置毎、且つ種々の観測視野角(例えば、2度観測視野及び10度観測視野)毎に予め生成され、例えばPC101のメモリ(不図示)に格納されている。
【0071】
第1の実施形態と同様、ユーザは、図3の設定画面300において、画像データ、用途等、及び印刷装置を選択する。そして、カラーマッチングプロファイル選択部901は、印刷装置選択部213から通知された印刷装置、及び用途等設定部から通知された用途等に基づき、カラーマッチングプロファイルを選択する。カラーマッチング部208は、選択されたカラーマッチングプロファイルを用いて、色補正処理(第1色補正処理及び第2色補正処理)を、選択された印刷対象の画像データに適用する。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、カラーマッチング部208が、第1色補正処理及び第2色補正処理を併せて実現するカラーマッチングプロファイルを用いて、印刷装置及び観測視野角の違いに関する色補正処理を画像データに適用する。
【0073】
これにより、本発明の画像処理装置の構成が簡略化される。
【0074】
[その他の実施形態]
上述した各実施形態の機能を実現するためには、各機能を具現化したソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体をシステム或は装置に提供してもよい。そして、そのシステム或は装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)が記録媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することによって、上述した各実施形態の機能が実現される。この場合、記録媒体から読み出されたプログラムコード自体が上述した各実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記録した記録媒体は本発明を構成することになる。このようなプログラムコードを供給するための記録媒体としては、例えば、フロッピィ(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスクなどを用いることができる。或いは、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることもできる。
【0075】
また、上述した各実施形態の機能を実現するための構成は、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することだけには限られない。そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施形態の機能が実現される場合も含まれている。
【0076】
更に、記録媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書きこまれてもよい。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって上述した各実施形態の機能が実現される場合も含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の画像処理装置をパーソナルコンピュータ(PC)に適用した印刷システムの一例を示す図である。
【図2】第1の実施形態に係るPC及びRIPの機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係るPCがディスプレイに表示する、印刷画像の基となる画像データ、用途等、及び使用する印刷装置をユーザが設定するための設定画面の一例を示す図である。
【図4】第1の実施形態に係る画像処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】印刷物の用途及び印刷サイズと、シャープネス補正係数及びガンマ補正係数との関係を示す図である。
【図6】印刷物の用途等に応じた観測視野角の違いを示す図である。
【図7】印刷物の用途及び印刷サイズと、色補正パラメータとの関係を示す図である。
【図8】色補正パラメータを図7とは異なる視点から説明する図である。
【図9】第2の実施形態に係るPC及びRIPの機能構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0078】
201 画像データ記憶部
202 画像データ取得部
203 画像編集部
204 編集パラメータ決定部
205 用途等設定部
206 画像補正部
207 補正パラメータ決定部
208 カラーマッチング部
209 色補正部
210 色補正パラメータ決定部
211 ラスタライズ部
212 データ転送部
213 印刷装置選択部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する画像データ取得手段と、
前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得手段と、
前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング手段と、
を備え、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の用途及びサイズに関する情報を含み、
前記カラーマッチング手段が前記画像データに適用する前記第1色補正処理を、前記印刷画像の用途及びサイズに基づいて決定する決定手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1色補正処理の前に、前記印刷画像の用途及びサイズに応じたシャープネス補正処理及びガンマ補正処理を前記画像データに適用する画像補正手段を更に備えることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像データに基づく印刷画像の形成に使用する印刷装置に関連する装置情報を取得する装置情報取得手段を更に備え、
前記カラーマッチング手段は、前記画像データに基づく、それぞれ異なる印刷装置によって形成される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記装置情報に応じた第2色補正処理を前記画像データに適用する
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記カラーマッチング手段は、前記第1色補正処理及び前記第2色補正処理を併せて実現するカラーマッチングプロファイルを用いて、前記第1色補正処理及び前記第2色補正処理を前記画像データに適用することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得工程と、
前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング工程と、
を備え、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
コンピュータを、
画像データを取得する画像データ取得手段、
前記画像データに基づく印刷画像の観測視野角に関連するパラメータを取得するパラメータ取得手段、
前記画像データに基づく、それぞれ異なる観測視野角で観察される複数の印刷画像が相互にカラーマッチングするように、前記パラメータに応じた第1色補正処理を前記画像データに適用するカラーマッチング手段、
として機能させるためのプログラムであって、前記パラメータは、前記画像データに基づく印刷画像の観察距離に関連する情報を含むプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−147753(P2009−147753A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324008(P2007−324008)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】