説明

画像処理装置、画像処理方法、表示装置及びプログラム

【課題】様々な表示環境において好ましい立体視を実現する。
【解決手段】移動通信端末110,130は、例えば通話及びデータ通信が可能な携帯電話機などのコンピュータであり、移動通信網100を介して他の移動通信端末10と通話やデータ通信を行ったり、画像データ変換装置120とデータ通信を行う。画像データ変換装置120は、例えばデータ通信が可能なサーバ装置などのコンピュータであり、立体視が可能となるように画像データの変換処理を行う。このとき画像データ変換装置120は、移動通信端末130の機種を特定し、その表示環境に応じた画像データの変換処理を行う。これにより、移動通信端末130の表示環境において好ましい立体視が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置において立体視を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、携帯電話機、パーソナルコンピュータ或いはテレビジョンなどの、表示機能を有する電子機器において、立体感がある画像を表示することが可能なディスプレイが実装されつつある。一方で、このような立体感のある画像を表示するための画像データを生成する機能を備えた電子機器も普及しつつある。例えば、一定の距離を隔てて設けられた2つのカメラで同時に被写体を撮影して1組の画像データを生成するといったものが知られている。また、特に被写体が静止している場合には、1つのカメラの位置を移動させてそれぞれ1回ずつ撮影することで、上記のような1組の画像データを生成することも可能である。これら1組の画像は、人間の右目と左目にそれぞれ対応しており、ステレオ画像と呼ばれている。
【0003】
このようなステレオ画像以外にも、一定の距離を隔てて設けられた3以上の複数のカメラで同時に被写体を撮影して得られた1組の画像や、1つのカメラを移動させて3回以上撮影することで得られた1組の画像などが、立体感のある画像を表示するものとして知られている。また、レンジセンサによる計測処理や所定の画像処理等を経て取得された被写体の深度情報を含む単一または複数の画像も、立体視を実現するものである。これら画像の画像データは、いずれも、利用者の左目及び右目に異なる映像を提示して立体感のある画像(立体画像)を表示可能とする画像データであり、以下では、立体画像データと呼ぶこととする。
【0004】
このように、エンドユーザがステレオ画像を含む各種の立体画像データを作成し得る環境が整いつつあるが、これを表示する電子機器においては、ディスプレイの大きさや、利用者の視点からディスプレイまでの距離(視距離という)などの表示環境に応じて、画像の立体感が変化する。このため、立体画像データの生成時に想定していた表示環境と、それを現実に表示する電子機器における表示環境とが整合していないと、例えば立体感が乏しくて迫力が無い画像が表示されるとか、逆に、立体感が強すぎて両目で見た画像を一つの画像として認識すること(融像という)が困難になる場合がある。さらに、ディスプレイが立体視を前提とした表示方式であるか否かとか、また、立体視を前提とした表示方式であったときの視点数なども、立体画像の見え方に大きな影響を与える。このような理由から、立体視を前提とした立体画像データを生成する際には、それを現実に表示する表示装置におけるディスプレイの物理的サイズ、表示方式、視点数または視距離等の、様々な表示環境を予め正確に特定しておかないと、好ましい立体視が実現できない。
【0005】
例えば特許文献1には、ディスプレイを有する電子機器が自身のディスプレイの表示環境に適合するように画像データを変換する技術が開示されている。特許文献2には、ステレオ画像の拡大または縮小時に、最大視差と最小視差の情報を用いた視差調整を行って、過度な立体感を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−221699号公報
【特許文献2】特開2004−349736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術は、ディスプレイを有する電子機器自身が画像データの変換を行うため、電子機器にとってその変換にかかる処理負担が大きいという問題がある。特にこの電子機器が携帯電話機などのリソースに乏しい小型の電子機器である場合には、このような処理負担の増大は無視できない。また、例えばパーソナルコンピュータに接続されたディスプレイを新たなものに交換するような場合を想定すると、特許文献1に記載の技術では、新しいディスプレイの表示環境を逐一入力又は指定するという煩雑な作業が利用者に強いられることになる。また、特許文献2に記載の技術は、画像の拡大時または縮小時においてのみ視差調整を実現するものに過ぎず、その適用範囲が限定的であるため、例えば、世の中に流通している様々な表示環境の電子機器において好ましい立体視を実現する手段として活用するには不十分である。
【0008】
そこで、本発明の目的は、様々な表示環境において好ましい立体視を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、利用者の左目及び右目にそれぞれ異なる画像を提示可能な立体画像データを受信する受信手段と、画像を表示する表示装置における表示環境を特定する特定手段と、前記受信手段によって受信された立体画像データに対し、前記特定手段によって特定された表示環境に応じた画像データ変換処理を施す画像データ変換手段と、前記画像データ変換手段によって画像データ変換処理が施された立体画像データを前記表示装置に送信する送信手段とを備えることを特徴とする画像処理装置を提供する。
【0010】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記表示装置の表示環境に応じて前記立体画像データにおける右目と左目に提示する画像の視差量を調整する処理が含まれるようにしてもよい。
【0011】
前記表示装置における表示環境として、2視点よりも視点数が多い多視点での画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて前記多視点の視点数分の立体画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理とが含まれるようにしてもよい。
【0012】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置でないことが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて、視点がそれぞれ異なる立体画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理とが含まれるようにしてもよい。
【0013】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置でないことが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて、視点がそれぞれ異なる立体画像データを補間により生成する処理とが含まれるようにしてもよい。
【0014】
前記表示装置における表示環境として、前記受信された立体画像データにおける視点数よりも少ない視点での画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記受信された立体画像データに含まれる複数の画像から、当該表示装置における視点数分の画像を選択する処理が含まれるようにしてもよい。
【0015】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記立体画像データに含まれるオブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて前記表示装置で提示する画像の視点数より多い数の画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理と、生成された複数の画像データから前記表示装置で提示する画像の視点数分の画像データを選択する処理とが含まれるようにしてもよい。
【0016】
また、本発明は、画像処理装置において、利用者の左目及び右目にそれぞれ異なる画像を提示可能な立体画像データを受信するステップと、画像処理装置において、画像を表示する表示装置における表示環境を特定するステップと、画像処理装置において、受信された前記立体画像データに対して、特定された前記表示環境に応じた画像データ変換処理を施すステップと、画像処理装置において、前記画像データ変換処理が施された立体画像データを前記表示装置に送信するステップとを備えることを特徴とする画像処理方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、画像の立体視に対応していない表示手段と、立体画像データ及び当該立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトの深度とを取得する取得手段と、
基準方向に対する自装置の傾きを検出する検出手段と、取得した前記立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトをその深度に応じて3次元空間に投影することで3次元モデルを構築し、視点がそれぞれ異なる複数の立体画像データを補間により生成するレンダリング手段と、前記検出手段により検出された傾きに応じて、前記レンダリング手段により生成された複数の立体画像データを選択的に前記表示手段に表示させる表示制御手段とを備えることを特徴とする表示装置を提供する。
【0018】
また、本発明は、画像の立体視に対応していない表示手段を備えるコンピュータに、立体画像データ及び当該立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトの深度とを取得する取得手段と、基準方向に対する自装置の傾きを検出する検出手段と、取得した前記立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトをその深度に応じて3次元空間に投影することで3次元モデルを構築し、視点がそれぞれ異なる複数の立体画像データを補間により生成するレンダリング手段と、前記検出手段により検出された傾きに応じて、前記レンダリング手段により生成された複数の立体画像データを選択的に前記表示手段に表示させる表示制御手段とを実現させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、様々な表示環境の表示装置において好ましい立体視を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【図2】画像データ変換装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図3】移動通信端末のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図4】画像データ変換装置及び移動通信端末の機能的構成を示すブロック図である。
【図5】機種情報テーブルの一例を示す図である。
【図6】移動通信端末の動作を示すフローチャートである。
【図7】画像データ変換装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】画像データ変換装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】平行化処理を説明する図である。
【図10】最大視差及び最小視差を説明する図である。
【図11】多視点の画像を説明する図である。
【図12】画像の補間を説明する図である。
【図13】円弧状の仮想視点を例示する図である。
【図14】変形例における移動通信端末の機能的構成を示すブロック図である。
【図15】ローパスフィルタの効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
<構成>
図1は、実施形態にかかる通信システム1の全体構成を示す図である。通信システム1は、利用者によって所持される移動通信端末110、130と、広範なエリアに設けられた移動通信網100と、この移動通信網100に接続された画像データ変換装置120とを備えている。なお、この通信システム1において移動通信端末は多数存在し得るが、図1では、説明の便宜のため、被写体を撮影する撮影装置として機能する移動通信端末110と、その被写体の画像を表示する表示装置として機能する移動通信端末130のみを示している。
【0022】
移動通信端末110,130は、例えば通話及びデータ通信が可能な携帯電話機などのコンピュータであり、移動通信網100を介して他の移動通信端末110との間で通話やデータ通信を行ったり、移動通信網100を介して画像データ変換装置120との間でデータ通信を行う。画像データ変換装置120は、例えばデータ通信が可能なサーバ装置などのコンピュータであり、主に画像データの変換処理等を行う画像処理装置として機能する。移動通信網100は、移動通信端末110,130に通話サービス及びデータ通信サービスを提供するネットワークシステムである。この移動通信網100は、移動通信端末110,130と無線通信を行う基地局、網内のルーティングを行う交換局、及び移動通信端末110,130の位置登録などを行う制御局などの各種ノードと、これらのノード間を相互に接続する通信線とを備えている。
【0023】
図2は、画像データ変換装置120のハードウェアの構成を示すブロック図である。画像データ変換装置120は、制御部11と、記憶部12と、通信部13とを備えている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置と、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などのメモリとを備えている。CPUがRAMをワークエリアとして用いてROMや記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、画像データ変換装置120の各部の動作を制御する。記憶部12は、HDD(Hard Disk Drive)等の、大容量で不揮発性の記憶装置であり、制御部11が実行するプログラムや画像データなどを記憶する。通信部13は、移動通信網100を介してデータ通信を行うインタフェース装置である。
【0024】
図3は、移動通信端末110,130のハードウェアの構成を示すブロック図である。移動通信端末110,130の構成は共通であり、いずれも、制御部15と、無線通信部16と、操作部17と、ディスプレイ部18と、音声入出力部19と、撮影部20と、センサ部21とを備えている。制御部15は、CPU、ROM及びRAMのほか、書き込み可能な不揮発性の記憶手段として、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)やバックアップ電源を備えたSRAM(Static Random Access Memory)を備えている。CPUがRAMをワークエリアとして用いてROMやEEPROM等に記憶されたプログラムを実行することにより、移動通信端末110,130の各部の動作を制御する。無線通信部16は、アンテナや無線通信回路を備えており、移動通信網100の基地局との間で無線通信を行う。操作部17は、複数のキーやタッチスクリーンなどの操作子を備え、利用者の操作に応じた操作信号を制御部15に供給する。制御部15は、この操作信号に応じた処理を行う。
【0025】
ディスプレイ部18は、液晶パネルや液晶駆動回路を備えた表示装置であり、制御部15からの指示に応じて各種の情報を表示する。このディスプレイ部18における表示環境は、移動通信端末の機種ごとに様々に異なっている。ここでいう表示環境とは、立体視を前提として人間の右目と左目にそれぞれ対応した、異なる視点の画像を表示する能力に関する環境のことをいう。音声入出力部19は、小型のマイクロホンやスピーカを備えており、移動通信端末110,130における音声の入出力を行う。撮影部20は、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどの撮像素子と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの画像信号処理回路とを備え、撮像素子によって2つ以上の異なる視点から撮影された画像を1組とした画像データを生成する。具体的には、例えば、撮像部20において複数の撮像素子が一定の距離を隔てて設けられており、被写体を同時に撮影するものであってもよいし、また、被写体が静止している場合には、1つの撮像素子が異なる視点から被写体を撮影するものであってもよい。センサ部21は、移動通信端末110,130の、或る基準方向に対する傾きの方向及び量を検出する(以下では単に、傾きを検出する、という)手段であり、例えば加速度センサ、ジャイロセンサ、地磁気センサまたは撮像素子などである。
【0026】
図4は、画像データ変換装置120及び移動通信端末110,130の機能的な構成を示すブロック図である。これら画像データ変換装置120及び移動通信端末110,130において、各々の制御部11,15がプログラムを実行し、自装置又は自端末の各部の動作を制御することによって、図4に示した各機能を実現する。
【0027】
移動通信端末110において、画像データ生成部111は、主に制御部15及び撮影部20によって実現される機能であり、送信部112は、主に制御部15及び無線通信部16によって実現される機能である。例えば、画像データ生成部111は、2つ以上の異なる視点から被写体をそれぞれ静止画として撮影して立体画像データを生成する。また、画像データ生成部111は、深度情報を含む、単視点または複数視点の画像を表す立体画像データを生成するようにしてもよい。送信部112は、利用者によって指定された宛先である移動通信端末130に対し、この画像データを電子メールに添付するなどして送信する。このとき、送信部112は、立体画像データをファイル形式にして電子メールに添付するが、このファイル形式を立体画像データであることを意味するものにしておく。例えば、2視点から被写体を静止画として撮影したステレオ画像の場合は、その拡張子が「.MPO」、「.JPS」、「.STJ」、「.SSI」等のファイル形式である。
【0028】
移動通信端末130において、機種情報記憶部132は主に制御部15によって実現される機能であり、アップロード部133、ダウンロード部134及び受信部131は主に制御部15及び無線通信部16によって実現される機能であり、表示部135は、主に制御部15、ディスプレイ部18及びセンサ部21によって実現される機能である。受信部131は、移動通信端末110から送信された電子メールに添付されているデータを受信すると、このデータのファイル形式を参照して、立体画像データに対応するファイル形式であるか否かを判断する。機種情報記憶部132は、移動通信端末130の機種を特定し得る機種情報を記憶している。この機種情報は、例えば移動通信端末130に割り当てられ、制御部15のROMに記憶されている個体識別情報である。この固体識別情報の上位ビット列が機種情報そのものを意味しているか、或いは、各々の固体識別情報がどのような機種の移動通信端末のものであるかが予め分かっている。アップロード部133は、受信した立体画像データ及び機種情報を画像データ変換装置120にアップロードする。ダウンロード部134は、画像データ変換装置120から画像データをダウンロードする。表示部135は、ダウンロードされた画像データに応じた画像を表示する。
【0029】
画像データ変換装置120において、受信部121、機種情報取得部122及び送信部126は、主に制御部11及び通信部13によって実現される機能であり、表示環境特定部123、変換要否判断部124及び画像データ変換部125は主に制御部11及び記憶部12によって実現される機能である。
【0030】
受信部121は、移動通信端末130から送信されてくる立体画像データを受信し、変換要否判断部124に渡す。機種情報取得部122は、移動通信端末130から送信されてくる機種情報を受信し、表示環境特定部123に渡す。表示環境特定部123は、この機種情報から、その機種情報の送信元である移動通信端末130における表示環境を特定する。このため、表示環境特定部123(ハードウェアとしては記憶部12)は、図5に示すような、移動通信端末の全機種の表示環境を表す機種別表示環境情報を記憶している。この機種別表示環境情報には、機種の別を意味する機種情報の一例である機種名と、その機種に該当する移動通信端末のディスプレイ部18の表示面の物理的サイズと、そのディスプレイ部18の解像度と、そのディスプレイ部18が3Dディスプレイ(画像の立体視に対応したディスプレイ)であるか又は2Dディスプレイ(画像の立体視に対応していない通常のディスプレイ)であるかと、3Dディスプレイの方式及びその視点数と、そのディスプレイ部18において予め想定されている視距離である想定視距離と、画像の表示に関係する物理量を検知するセンサに関するセンサ情報とが含まれている。3Dディスプレイの方式としては、視差バリア方式とか、レンチキュラー方式とか、時分割方式などが知られている。表示環境特定部123は、この機種別表示環境情報を参照して、取得した機種情報に対応する表示環境を特定する。
【0031】
変換要否判断部124は、立体画像データに対して画像データ変換部125が画像データ変換処理を施す必要があるか否かを判断する。画像データ変換処理が必要ないと判断する場合とは、表示環境特定部123が特定した表示環境が、“移動通信端末130のディスプレイ部18が2Dディスプレイであり且つセンサ部21がない(つまり機種別表示環境情報にセンサ情報が含まれていない)”と判断した場合である。それ以外の場合には、立体画像データに対して画像データ変換処理を施す必要があると判断されるが、この場合、画像データ変換部125は、移動通信端末130において適切な立体視を実現するため、その表示環境に応じた画像データ変換処理を行う。一方、立体画像データに対して画像データ変換処理を施す必要がないと判断された場合には、画像データ変換部125は、この立体画像データに含まれる画像のうち、いずれかの視点以外の画像を削除するとか、各視点の画像をアニメーション合成するなどして、2Dディスプレイでの表示に対応した1つの画像データ(例えば、JPEG(Joint Photographic Experts Group)、ビットマップ、或いはアニメーションGIF(Graphic Interchange Format)などの形式の画像データ)を生成する。送信部126は、画像データ変換部125から供給される変換処理後の画像データを、上記の機種情報及び立体画像データの送信元である移動通信端末130に送信する。
【0032】
<動作>
次に実施形態の動作を説明する。以下では、立体画像データとして、2視点から被写体を静止画として撮影したステレオ画像の画像データを用いる場合を例に挙げて、動作説明を行う。
図6は、移動通信端末130の制御部15の動作を示す図である。まず移動通信端末110において、ステレオ画像である立体画像データが生成され、この立体画像データが移動通信端末110から移動通信端末130に送信されてくる。この立体画像データは、移動通信端末110が予め想定している表示環境に対応したものであり、本動作例では、2視点の3Dディスプレイという表示環境に対応したものとなっている。移動通信端末130の制御部15は、移動通信端末110から送信される立体画像データを受信して取得すると(ステップS1)、この立体画像データのファイル形式を参照して、ステレオ画像に対応するファイル形式であるか否かを判断する(ステップS2)。前述のようなステレオ画像に対応するファイル形式である場合には(ステップS2;YES)、制御部15は、機種情報を読み出して取得し(ステップS3)、立体画像データと機種情報とを画像データ変換装置120にアップロードする(ステップS4)。より具体的には、まず制御部15は、立体画像データの送信に先立って、画像データ変換装置120に対してHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)リクエストを送信する。このHTTPリクエストヘッダには、ユーザエージェントと呼ばれる領域があるから、制御部15は、このユーザエージェントに、機種情報を記述することで、これを画像データ変換装置120に通知する。
【0033】
次に、制御部15は、上記HTTPリクエストに対する画像データ変換装置120からの応答を受け取ると、立体画像データを画像データ変換装置120に送信する。この後、画像データ変換装置120によって画像データ変換処理がなされる。移動通信端末130の制御部15は、画像データ変換装置120によって画像データ変換処理がなされた画像データを、その画像データ変換装置120からダウンロードし(ステップS5)、これを解釈して、立体視が可能な画像をディスプレイ部18に表示する(ステップS6)。なお、制御部15は、ステップS1にて取得した画像データがステレオ画像(立体画像データ)に対応するものでない場合には(ステップS2;NO)、これを解釈して、通常どおりの画像をディスプレイ部18に表示する(ステップS6)。
【0034】
次に、図7は、画像データ変換装置120の制御部11の動作を示す図である。制御部11は、移動通信端末130から立体画像データ及び機種情報を受信して取得すると(ステップS11)、受信した機種情報から、その機種情報の送信元である移動通信端末130の表示環境を特定し、特定した表示環境に基づいて、受信した画像データに画像データ変換処理を施す必要があるか否かを判断する(ステップ12)。前述したように、移動通信端末の表示環境が2Dディスプレイであり且つセンサ部21が無いというケース以外の場合には、受信した画像データに画像データ変換処理を施す必要があると判断される。立体画像データに対して画像データ変換処理を施す必要があると判断された場合には(ステップS13;YES)、制御部11は、画像データ変換処理を行う(ステップS14)。そして、制御部11は、画像データ変換処理を経て得た画像データを移動通信端末130に送信する(ステップS15)。一方、前述したように、表示環境が2Dディスプレイであり且つセンサ部21が無い場合には、画像データに対して画像データ変換処理を施す必要がないと判断されて(ステップS13;NO)、制御部11は、前述した所定の処理を実施する。つまり、制御部12は、1つの視点の画像にするか又は各視点の画像をアニメーション合成するなどした上で、ファイル形式をJPEG、ビットマップ、或いはアニメーションGIFなどに変換してから(ステップS16)、これを移動通信端末130に送信する(ステップS15)。
【0035】
次に、図8は、上記のステップS14における画像データ変換処理の詳細を示す図である。まず、制御部11は、立体画像データに対して平行化処理を実行する(ステップS21)。これは、ステレオ画像に含まれる1組の画像どうしの縦ズレを小さくするために行われる処理である。制御部11は、図9に示すように、ステレオ画像に含まれる画像のうち、左目に対応する画像(左画像という)と右目に対応する画像(右画像という)とが、利用者の視点から見て上下方向(X方向)にずれている場合には、いずれか一方の画像(ここでは右画像)をX軸方向にズレ量に応じた量だけ移動させることで、ズレを小さくする。制御部11は、この平行化処理を行うために、左画像と右画像との間で互いに対応する特徴点を求める必要があるが、これには、例えばSIFT法(Scale-Invariant Feature Transform)やSURF(Speeded-Up Robust Features)法などの、画像から特徴点を抽出するための周知の手法を用いればよい。制御部11は、この特徴点の対応関係からエピポーラ拘束条件を用いて得られた基礎行列(Fundamental Matrix)を用いた演算を行って、X軸方向のずれを小さくした立体画像データを得る。なお、あらかじめ撮影部20に対するキャリブレーション処理を経て、撮影部20の内部環境に関するパラメータ及び外部環境に関するパラメータを制御部11が取得できている場合は、上記のような特徴点の対応関係を取得しなくても平行化処理を実現可能である。
【0036】
次に、制御部11は、平行化処理を施した立体画像データにおいて、画像に含まれるオブジェクトの深度に関する情報(深度情報)を取得し、その深度情報から、ステレオ画像の最大視差及び最小視差を特定する(ステップS22)。図10は、画像中のオブジェクトの深度と視差との関係を説明するための模式図であり、ディスプレイ部18の表示面に平行な方向から見たときの様子を表している。図10において、利用者の視点から見たときのディスプレイ部18の左右方向(Y方向)のサイズをs[cm]、左右の目の間隔をe[cm]、ディスプレイ部18の表示面から、左右の目を結んだ線分までの距離(視距離)をd[cm]、最大視差をDmax[pixel]、最小視差をDmin[pixel]とする。このステレオ画像によって実現される仮想的な3次元空間において、最も大きい飛び出し量を持つ(深度が浅い)点と、最も大きい奥行き量を持つ(深度が深い)点と、ディスプレイ部18の表示面上の点とに対する、左右の目の輻輳角をそれぞれα、β、γとする。制御部11は、ステレオ画像から特定し得る深度情報から、そのステレオ画像に含まれるオブジェクトの、表示面からの最大飛び出し量p[cm]および最大奥行き量q[cm]を特定し、さらに、図示のような幾何学的関係から最大視差Dmax及び最小視差Dminを算出する。最大飛び出し量pに対応する最大視差Dmaxは正の値をとり、最大奥行き量qに対応する最小視差Dminは負の値をとる。なお、ステレオ画像から深度情報を求める手法としては、例えばピクセルマッチング、ブロックマッチング、グラフカット、または、動的計画法といった手法が知られているので、制御部11はこれらを用いればよい。また、立体画像データがそもそも深度情報を含む単視点の画像を表す画像データである場合は、制御部11は上記処理を行わず、その立体画像データが有する深度情報をそのまま用いればよい。
【0037】
図8の説明に戻り、制御部11は、図6のステップS3にて取得した機種情報に基づいて、移動通信端末130のディスプレイ部18が2視点の3Dディスプレイであるか否かを判断する(ステップS23)。移動通信端末130のディスプレイ部が2視点の3Dディスプレイである場合には(ステップS23;YES)、制御部11は、移動通信端末130のディスプレイ部18の表示面の物理的サイズに応じて、右目と左目の視差量を調整する視差調整処理を行う(ステップS24)。具体的には、制御部11は、まず、移動通信端末130のディスプレイ部18において快適に立体視を行い得る最大視差及び最小視差の範囲である適正視差範囲を特定する。制御部11は、この適正視差範囲の具体的な数値については、例えば3Dコンソーシアムガイドライン(http://www.3dc.gr.jp/jp/scmt_wg_rep/3dc_guideJ_20100420.pdf)で定義される「快適な立体視」が可能となる視差量に基づいて求めればよい。図10において、輻輳角の差の絶対値|α-γ|及び|γ-β|を視差角と呼ぶ。上記3Dコンソーシアムガイドラインにおいては、これらを各々1度以内にすることが推奨されている。また、3Dコンソーシアムガイドラインによれば、輻輳角の差|α-β|も1度以内であることが推奨されている。
【0038】
ここで、図10においては、γ=2tan-1(e/2d)という数式が成り立つ。また、ディスプレイの左右方向(Y方向)の解像度をr[pixel]として、最大視差Dmaxのときに最大飛び出し量pとなるという条件から、Dmax=2p・r/s・tan(α/2)いう数式が成り立つ。ここで、輻輳角の差が1度以内という上記3Dコンソーシアムガイドラインに基づくと、α=γ+1が限界条件であるから、制御部11は、これを上記の数式に代入することで、適正視差範囲における最大視差Dmaxを求めることができる。制御部11は、同様にして、適正視差範囲における最小視差Dminも求めることができる。そして、制御部11は、図8のステップS22で特定したステレオ画像の深度情報から求められた最大視差及び最小視差が、この適正視差範囲を超えていなければ、移動通信端末130において過度な立体感は発生しないと判断し、視差調整処理を行わない。一方、制御部11は、ステップS22で特定したステレオ画像の深度情報から求められた最大視差及び最小視差が、この適正視差範囲を超えていれば、視差調整処理を行う。なお、制御部11は、適切な見え方となる輻輳角の条件を用いて最大視差Dmaxを求め、ステレオ画像の最大視差が適性視差範囲内だがその大きさをもう少し大きくしたいというような場合にも、ステレオ画像の最大視差が最大視差Dmaxになるように視差調整を行ってもよい。
【0039】
この視差調整処理には、2つの方法があることが知られている。1つは、ステレオ画像に含まれる1組の画像のうち、いずれか一方を左右方向(Y方向)にシフトして、最大視差及び最小視差の差を適正視差範囲に収める方法である。この方法は、最大視差及び最小視差のいずれか一方が適正視差範囲を超え、かつ、いずれか一方の画像をシフトした場合に、シフト後のステレオ画像における最大視差及び最小視差が適正視差範囲に収まる場合に好適である。この方法は、比較的簡易な手法である点がメリットであるが、いずれか一方の画像全体をシフトするため、視差の正負が逆転し、本来表現したかった立体の凹凸が逆になってしまう可能性があることが知られている。もう1つの視差調整の方法としては、ステレオ画像に含まれるオブジェクトごとにその深度を求めて、その深度に応じた量だけ各々のオブジェクトをシフトする方法である。この方法による処理は、後述する補間処理を行って補間した画像と補間前のステレオ画像から、適正視差に収まる2枚の画像を選択して、これらを新たにステレオ画像とするということに相当する。この方法では、上述した画像全体のシフトとは異なり、同じ深度を持つオブジェクト単位でシフトするから、上記のような視差の正負の逆転は起きない。よって、本来表現したかった立体の凹凸を維持したまま、全体的な立体感を調整し得るという効果がある。
【0040】
図8の説明に戻り、移動通信端末130のディスプレイ部18が多視点の3Dディスプレイであるときの動作を説明する。この場合、ステップS23において2視点の3Dディスプレイではないと判断されるから(ステップS23;NO)、制御部11は、2視点よりも多い数の多視点の3Dディスプレイであるとして、補間処理を行う(ステップS25)。補間処理とは、多視点に対応するべく、移動通信端末110において実際には撮影されていない視点から見たときの画像を、実際に撮影された視点から見たときの画像と、その画像に含まれるオブジェクトの深度情報とを元に予測的に生成することで、撮影された画像における視点数(ステレオ画像の場合は2)よりも多い視点数の画像を得る処理である。まず、制御部11は、機種情報から特定される表示環境や上記の適正視差量に基づいて、移動通信端末110において実際には撮影されていない視点である仮想視点を決める。例えば5視点の3Dディスプレイに提示する画像をステレオ画像から生成する場合は、制御部11は、図11に模式的に示すように、ステレオ画像に含まれている、2視点に対応する1組の画像53a,53eから、仮想視点に対応する画像(仮想視点画像という)53b,53c,53dを生成する。5視点の3Dディスプレイには、この53a〜53eの画像が提示される。なお、図11では2視点のステレオ画像から間の3視点分の画像を補間し合計5視点としているが、画像の深度情報を持っていれば、入力画像の視点数や、補間する仮想視点の数に制限はない。
【0041】
ここで、より具体的な補間処理の内容を説明すると、以下のとおりである。制御部11は、特定した深度情報に基づき、3次元空間における各オブジェクトの視差を求め、さらに、このオブジェクトが仮想視点からどのように見えるかを3次元的に予測する。つまり、制御部11は、深度情報から求められた視差を元に、仮想視点画像における各画素に投影されるオブジェクトが、実際に撮影された画像のどの画素に投影されているかを特定し、特定した後者の画素(参照画素という)の輝度を元に、仮想視点画像における各画素の輝度を決定して、仮想視点画像を生成する。制御部11は、輝度を決定する際に、参照画素が一つの場合は、その参照画素の輝度をコピーして仮想視点画像における各画素の輝度を決定するし、参照画素が複数の場合は、線形補間等の処理を実施して仮想視点画像における各画素の輝度を決定する。
【0042】
図12を参照しながら、具体的な例を上げて説明する。これは、一定の距離を隔てて配置された2つの撮像素子から撮影された画像53a,53eから、2つの撮像素子の中間にあると仮想した仮想視点(以下、中間視点という)より見たときの画像53cを補間によって求める例である。ここで、予め特定された深度情報から画像53a,53e間の視差がD[pixel]であると分かっている場合、中間視点から見たときの仮想視点画像53cのオブジェクトは、その半分であるD/2の視差を、画像53a,53eに対してそれぞれ有する。よって、制御部11は、仮想視点画像53cのオブジェクトに含まれる画素63cの輝度を求める場合は、画像53a,53eにおいてそれぞれD/2の視差を持つ画素63a,63eを参照画素とし、この参照画素の輝度を元に画素63cの輝度を決定する。輝度決定に関しては、前述のように線形補間等の処理を用いればよい。例えば図12の例において線形補間を用いる場合は、制御部11は、画素63cの輝度=(画素63aの輝度/2)+(画素63eの輝度/2)という数式で画素63cの輝度を求めればよい。制御部11は、中間視点から見たときの仮想視点画像に含まれる各画素に対し、上記と同様の処理を実施することで、画像53cを生成する。
【0043】
また、制御部11は次のようにしてもよい。例えば、移動通信端末130のディスプレイ部18が2Dディスプレイで、さらにセンサ部21によってディスプレイ部18の表示面に対する利用者の正対方向のズレを認識できる場合は、制御部11は、ステレオ画像から特定した各オブジェクトの深度情報に基づき、例えば仮想視点を±30度の範囲において円弧状に1度ずつずらしたときの仮想視点画像を上記のような補間処理を用いて生成する。この場合には、合計61枚の画像を表す画像データが生成される。このときの動作の概念図を図13に示す。この図の例では仮想視点が5つであり、図示のように円弧状の仮想視点画像73a〜73eが制御部11によって生成される。
以上のようにして得られた画像データは移動通信端末130に送信される。
【0044】
移動通信端末130において、制御部15は、受信した画像データを解釈してディスプレイ部18に表示する。移動通信端末130が2視点の3Dディスプレイに対応した機種であり、かつ、受信した画像データが平行化処理や視差調整処理の施された、2視点の3Dディスプレイに対応したステレオ画像を表すものである場合には、制御部15がこの画像データに応じた画像を表示するだけで、利用者にとって好ましい立体視が可能となる。また、受信した画像データが多視点の3Dディスプレイに対応したステレオ画像を表すものである場合には、制御部15は、センサ部21によって検出された移動通信端末130の傾きに応じて、この画像データに含まれる多視点の画像データのうちいずれか2つを選択して表示することで、表示面に対して移動する利用者の視線に応じた立体視、いわゆる運動視差に応じた立体視が可能となる。また、移動通信端末130のディスプレイ部18が2Dディスプレイであっても、センサ部21がある場合には、センサ部21によって検出された移動通信端末130の傾きに応じて、この画像データに含まれる多視点の画像データのうち、移動通信端末130で提示する画像の視点数分のものを選択して表示することで、表示面に対する利用者の視線に応じた擬似的な立体視、つまり運動視差に応じた擬似的な立体視が可能となる。これはつまり、図13で例示した円弧状に補間された仮想視点画像73a〜73eを移動通信端末130の傾きに応じて選択的に表示することに相当する。
【0045】
次に、受信した画像データに3以上の多視点の画像が含まれる場合について説明する。まず、移動通信端末130のディスプレイ部18が、2視点の3Dディスプレイである場合、制御部15は、上記のような複数の多視点画像から適正視差範囲内の画像を2つ(つまり移動通信端末130のディスプレイ部18における視点数分)だけ選択して、ステレオ画像を生成する。この画像選択の際には、前述したステレオ画像の視差調整時と同様に、制御部15は、異なる視点の画像間の最大視差・最小視差に基づいて適正視差範囲に収まる画像を選択する。
【0046】
また、移動通信端末130が、受信した画像データにおける視点数よりも少ない視点数の、多視点の3Dディスプレイである場合、制御部15は、複数の多視点画像から適正視差範囲内の画像を、移動通信端末130のディスプレイ部18における視点数分だけ選択する。この画像選択の際には、前述したステレオ画像の視差調整時と同様に、制御部15は、異なる視点の画像間の最大視差・最小視差に基づいて適正視差範囲に収まる画像を選択する。
【0047】
また、移動通信端末130が、受信した画像データにおける視点数よりも多い視点数の、多視点の3Dディスプレイである場合、または、受信した画像データにおける視点数よりも少ない視点数の多視点の3Dディスプレイであって、上記画像データにおける最大視差及び最小視差が適正視差範囲を超えている場合は、制御部15は、多視点画像に対して補間処理を行って、適正視差範囲に収まる画像であって、ディスプレイ部18における視点数分の画像を生成する。このとき用いられる補間アルゴリズムは前述したステレオ画像の補間処理と同様のものである。
【0048】
以上説明した実施形態によれば、様々な表示環境において好ましい立体視を実現することができる。また、画像データ変換装置120が画像データの変換処理を行うので、表示端末としての移動通信端末130のリソースが乏しい場合であっても、移動通信端末130の処理負担は、自身が画像データ変換処理を行う場合に比べて小さくなる。
【0049】
<変形例>
上述した実施形態は次のような変形が可能である。以下の変形例を互いに組み合わせて実施してもよい。
<変形例1>
画像データ変換装置120が立体画像データから、その立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度のみを求めて、それを立体画像データとともに、表示装置としての移動通信端末130に送信するようにしてもよい。この場合、移動通信端末130が、立体視に対応していない2Dディスプレイであるときには、次のような処理を行う。図14は、この場合の移動通信端末130の機能的構成を示すブロック図である。移動通信端末130において、制御部15がプログラムを実行して各部の動作を制御することによって、図14に示した各機能を実現する。端末傾き検出部144は、センサ部21によって実現され、或る基準方向に対する、移動通信端末130の傾きの量及び方向を検出する。3次元モデル生成部143は、画像データ変換装置120から送信されてくる立体画像データ及び深度を取得し、取得した立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトの各画素をその深度に応じて3次元空間に投影し、その3次元空間における各オブジェクトの位置・輝度を求めることで3次元モデルを構築する。レンダリング部147は、各オブジェクトを、例えば±30度の範囲において1度ずつ視点をずらして見たときにどのように見えるかを予測してレンダリングを行う。レンダリングとは、3次元モデルに対し、ある仮想的な視点を設定してその視点からの画像を生成することを言う。このとき、例えばオブジェクトの一部または全部をコピーして、新たな視点で見えるはずのオブジェクトの面に貼り付けるなどの、補間アルゴリズムを用いてレンダリングを行う。これにより、視点がそれぞれ異なる複数の立体画像データが生成されることになる。表示部148は、レンダリング部147で得られた複数の立体画像データから、端末傾き検出部144によって検出された移動通信端末130の傾きの量及び方向に応じた画像データを選択し、選択した画像データに応じた画像を表示する。なお、端末傾き取得部144は、センサ部21によって検出された値に対し、図15に示すように、ローパスフィルタを適用したり、ヒステリシス特性を持たせることで、検出値の微小な増減によって視点が細かくぶれながら移動するチャタリングを防止することができる。このようなローパスフィルタやヒステリシス特性は、実施形態で説明した内容に対しても適用可能である
【0050】
<変形例2>
実施形態では、表示装置としての移動通信端末130が、撮影装置としての移動通信端末110から立体画像データを受信してから、画像データ変換装置120にその立体画像データを送信するようにしていた。これを、撮影装置としての移動通信端末110が、立体画像データの宛先である表示装置としての移動通信端末130の機種情報とともに、立体画像データを画像データ変換装置120に送信し、これに応じて画像データ変換装置120から得た画像データを移動通信端末130に送信するようにしてもよい。このようにすれば、表示装置としての移動通信端末130は、画像データ変換装置120に立体画像データを送信する手間が省ける。
【0051】
<変形例3>
実施形態では、画像データ変換装置120が、表示装置としての移動通信端末130から受信した立体画像データに画像データ変換処理を施していたが、移動通信端末130自身が画像データ変換処理を行ってもよい。このようにすれば、表示装置としての移動通信端末130は、画像データ変換装置120に立体画像データを送信する手間が省ける。
【0052】
<変形例4>
実施形態では、画像データ変換装置120が、表示装置としての移動通信端末130から受信した立体画像データに画像データ変換処理を施していたが、撮影装置としての移動通信端末110が立体画像データに画像データ変換処理を行ってから移動通信端末130に送信してもよい。
【0053】
<変形例5>
画像データ変換装置120が立体画像データから深度のみを求めて、それを、表示装置としての移動通信端末130に送信するようにしてもよい。この場合、移動通信端末130は、受信した深度に関する情報に基づいて、画像データ変換装置120に代わって実施形態で説明した視差調整や補間処理を行う。このようにすれば、移動通信端末130が画像データ変換装置120から受信するデータのサイズを減らすことができる。
【0054】
<変形例6>
実施形態及び上記の変形例2,5において、表示装置としての移動通信端末130の通信環境や移動通信端末130のスペックに応じて、画像データ変換処理を、画像データ変換装置120と移動通信端末130とで役割分担して行ってもよい。例えば、移動通信端末130のスペックが高い場合は、深度のみを画像データ変換装置120で特定し、視差調整や補間処理を移動通信端末130で行う。これにより、多視点の3Dディスプレイや2Dディスプレイにおいては、画像データ変換装置120と移動通信端末130との間で多視点の画像データを送受信する必要がないため、通信にかかるデータ量を削減することが可能となる。また、実施形態及び変形例2,5において、既に一度生成して送信した立体画像データを、別の表示装置に送信する際に、画像データ変換装置120において、以前に特定した深度や視差調整処理の結果等を保有していれば、これを再度利用してもよい。これにより、画像データ変換装置120における処理量を減らすことが可能となる。
【0055】
<変形例7>
例えば、移動通信網100などのネットワーク上のサーバ装置に、移動通信端末の機種ごとに、前述した画像データ変換処理に含まれる処理である視差調整等が既に施され、適正視差範囲内に最適化された立体画像データが予め記憶されていてもよい。この場合、表示装置としての移動通信端末130がそのサーバ装置に対して、HTTPリクエストのユーザエージェントに機種情報を記述して通知し、サーバ装置が、通知された機種情報に対応する立体画像データを移動通信端末130に送信する。このようにすれば、ダウンロードするたびにリアルタイムで画像データ変換処理を行う必要が無くなり、多くの利用者が見る画像(例えば立体視が可能なプロモーションビデオ等)を配信する際にサーバ装置の処理負担を軽減することができる。
【0056】
<変形例8>
図6のステップ2の判断において、利用者が操作部17を用いて自らの意思で、ステレオ画像か否か、つまり、画像データ変換装置120による処理を行うか否かを選択するようにしてもよい。このようにすれば、利用者自らの意思により、移動通信端末において、立体画像データを変換することなくそのまま表示させることが可能となる。
【0057】
<変形例9>
表示装置や撮影装置は、実施形態で例示した携帯電話機以外に、例えばノートパソコン、デジタルフォトフレームまたはテレビジョンなどの電子機器であってもよい。
画像データ変換装置120の機能を分散化して複数の装置が実装してもよい。
立体画像データは、1つのカメラ(単眼カメラ)で少しずれた位置で二回以上撮影した1組の画像であっても、3以上の複数のカメラで同時に撮影した画像でも、レンジセンサによる計測処理や所定の画像処理等を経て取得された被写体の深度情報を含む単一又は複数の画像であってもよい。
移動通信端末110から移動通信端末130へ画像データを送信するときの形態は、実施形態で例示した電子メールのほか、ブルートゥース(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)または無線LANなどのデータ授受手段を用いてもよい。また、メモリーカードやHDMI等の物理I/Oなどのデータ授受手段を用いてもよい。
また、立体画像データは静止画に限らず、動画であってもよい。
【0058】
<変形例10>
上述した実施形態におけるプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶した状態で、画像データ変換装置や移動通信端末に提供し得る。この場合には、記録媒体を読み取るインターフェースをこれらの画像データ変換装置や移動通信端末に設ければよい。また、ネットワーク経由でこれらの画像データ変換装置や移動通信端末にダウンロードさせることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1・・・通信システム、110,130・・・移動通信端末、120・・・画像データ変換装置、11・・・制御部、12・・・記憶部、13・・・通信部、15・・・制御部、16・・・無線通信部、17・・・操作部、18・・・ディスプレイ部、19・・・音声入出力部、20・・・撮影部、21・・・センサ部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の左目及び右目にそれぞれ異なる画像を提示可能な立体画像データを受信する受信手段と、
画像を表示する表示装置における表示環境を特定する特定手段と、
前記受信手段によって受信された立体画像データに対し、前記特定手段によって特定された表示環境に応じた画像データ変換処理を施す画像データ変換手段と、
前記画像データ変換手段によって画像データ変換処理が施された立体画像データを前記表示装置に送信する送信手段と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記表示装置の表示環境に応じて前記立体画像データにおける右目と左目に提示する画像の視差量を調整する処理が含まれる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記表示装置における表示環境として、2視点よりも視点数が多い多視点での画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて前記多視点の視点数分の立体画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理とが含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置でないことが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて、視点がそれぞれ異なる立体画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理とが含まれる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置でないことが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う変換処理には、前記立体画像データに含まれる各オブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて、視点がそれぞれ異なる立体画像データを補間により生成する処理とが含まれる
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示装置における表示環境として、前記受信された立体画像データにおける視点数よりも少ない視点での画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記受信された立体画像データに含まれる複数の画像から、当該表示装置における視点数分の画像を選択する処理が含まれる
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示装置における表示環境として、画像の立体視に対応した表示装置であることが前記特定手段によって特定された場合、前記画像データ変換手段が行う画像データ変換処理には、前記立体画像データに含まれるオブジェクトの深度を特定する処理と、特定した当該深度に基づいて前記表示装置で提示する画像の視点数より多い数の画像データを前記受信された立体画像データから生成する処理と、生成された複数の画像データから前記表示装置で提示する画像の視点数分の画像データを選択する処理とが含まれる
ことを特徴とする請求項1、2または6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像処理装置において、利用者の左目及び右目にそれぞれ異なる画像を提示可能な立体画像データを受信するステップと、
画像処理装置において、画像を表示する表示装置における表示環境を特定するステップと、
画像処理装置において、受信された前記立体画像データに対して、特定された前記表示環境に応じた画像データ変換処理を施すステップと、
画像処理装置において、前記画像データ変換処理が施された立体画像データを前記表示装置に送信するステップと
を備えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
画像の立体視に対応していない表示手段と、
立体画像データ及び当該立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトの深度とを取得する取得手段と、
基準方向に対する自装置の傾きを検出する検出手段と、
取得した前記立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトをその深度に応じて3次元空間に投影することで3次元モデルを構築し、視点がそれぞれ異なる複数の立体画像データを補間により生成するレンダリング手段と、
前記検出手段により検出された傾きに応じて、前記レンダリング手段により生成された複数の立体画像データを選択的に前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
画像の立体視に対応していない表示手段を備えるコンピュータに、
立体画像データ及び当該立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトの深度とを取得する取得手段と、
基準方向に対する自装置の傾きを検出する検出手段と、
取得した前記立体画像データが表す画像に含まれる各オブジェクトをその深度に応じて3次元空間に投影することで3次元モデルを構築し、視点がそれぞれ異なる複数の立体画像データを補間により生成するレンダリング手段と、
前記検出手段により検出された傾きに応じて、前記レンダリング手段により生成された複数の立体画像データを選択的に前記表示手段に表示させる表示制御手段と
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−23488(P2012−23488A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−158751(P2010−158751)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】