説明

画像処理装置、画像形成システム、及び画像形成方法

【課題】 印刷データに係るPDLデータを電子文書フォーマットに変換する画像形成装置を提供する。
【解決手段】 端末の汎用アプリケーションから印刷用データを作成する。この印刷用データは、デバイスドライバによりPDLデータに変換する。変換されたPDLデータは、画像形成装置に送信する。画像形成装置は、PDLデータを受信し、電子文書フォーマットのデータに変換する。画像形成装置は、変換した電子文書フォーマットのデータを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、画像形成システム、及び画像形成方法に係り、特にPCのドライバから画像形成装置で電子文書フォーマットに変換する画像処理装置、画像形成システム、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、PC(パーソナル・コンピュータ)の普及に伴って、PCからデータをプリントするプリンタ等の印刷装置と、プリンタとスキャナやFAX等を含む複合機、MFP(Multifunction Peripheral)といった画像形成装置が普及してきている。
このプリンタとしては、レーザープリンタ、LEDプリンタ、インクジェットプリンタ(ピエゾ方式、熱バブルインク放出方式)、ドットインパクトプリンタ、熱転写プリンタ、固形ロウ溶出プリンタ、ピクトロニクス(登録商標)方式のプリンタ等の様々な方式の印刷装置が存在する。
このうち、ページ単位で印刷するプリンタをページプリンタという。ページプリンタの一種である、例えばレーザープリンタの場合は、1ページごとに、レーザーを用いて、感光体(ドラム・転写ベルト等)に印刷するイメージに対応する電荷パターンを描画し、このパターンに従いトナー粉末を感光体に付着させ、トナー粉末をカット紙等に転写して熱と圧力で定着させることで印刷を行う。
【0003】
このページプリンタにおいては、印刷時に印刷されるデータが、PDL(Page Description Language、ページ記述言語)と呼ばれるコンピュータ言語で記載されることが多い。
PDLは、例えば、紙の上のどの座標からどの座標に線を引くといったベクトル情報や、文字の形状であるフォント情報といった情報を備えている。
このPDLの一種としては、アドビ社が作成したポストスクリプト(PostScript、登録商標)が著名である。
また、各プリンタのベンダーごとに、独自形式によるPDLを作成して画像形成装置に送信するようにすることも多い。
【0004】
一方、近年、文書を電子化してPC(パーソナル・コンピュータ)等で保存・閲覧するための電子文書フォーマットが普及してきている。
この電子文書フォーマットとしては、アドビ社がポストスクリプトを基に作成したPDF(Portable Document Format)や、マイクロソフト社がフォーマットの規格を作成したXPS(XML Paper Specification)等が存在する。
【0005】
電子文書フォーマットは、文書を紙に印刷された場合の見た目と近い状態で保持することができるファイル形式(フォーマット)である。つまり、電子文書フォーマットに従った文書データ(ファイル)は、異なる環境のPC等で、元のレイアウトに近い状態で表示したり、印刷したりできるという特徴がある。
さらに、電子文書フォーマットには、フォントやハイパーリンク等が埋め込まれる(データとして含んでいる)ことがあり、PC等で閲覧すると利便性が高いという特徴がある。
【0006】
これらの電子文書フォーマットのファイルを、PC上で閲覧したり印刷するためには、例えば、電子文書フォーマットの閲覧や印刷のための機能が組み込まれていない、マイクロソフト社製のウィンドウズ(登録商標)XPのようなOS(オペレーティング・システム)の場合、各電子フォーマット用の専用ソフトウェアをインストールする必要がある。
つまり、PDFの場合はアドビ・リーダー(Adobe Reader、登録商標)、XPSの場合にはMicrosoft XPS Essentials Packといった、専用ソフトウェアをインストールして使用する必要がある。
【0007】
また、電子文書フォーマットのファイルを作成する場合、通常、ワードプロセッサや表計算ソフト等のアプリケーションソフトウェア(アプリケーション)から、電子文書フォーマット変換用ソフトウェアを使用して作成することができる。PDFの場合は、例えば、アドビ社製のアクロバット(Acrobat、登録商標)と呼ばれる専用ソフトウェアを使用して作成できる。
アクロバットの使用法としては、例えば、マイクロソフト社製のワード等から「印刷」を行う際に、印刷先に画像形成装置ではなくアクロバット(の仮想デバイスドライバ、Acrobat Distiller)を選択する。
これにより、アプリケーションが作成した印刷用の描画データが、アクロバットによりPDFに変換されてPCの記憶部に作成される。つまり、アクロバットにより、描画データは、プリンタで印刷するためのPDL等に変換されずに、直接、PDFに変換される。
XPSの場合も、Microsoft XPS Document Writerという専用ソフトウェアを使用すると、同様な手法でアプリケーションの描画データをXPSに変換して、XPSのファイルを作成することができる。
【0008】
また、PDLのデータそのものを、専用ソフトウェアを用いて、PC上で電子文書フォーマットに変換することもできる。
たとえば、上述のアクロバットにより、ポストスクリプトのファイルをPDFのファイルに変換することができる。
【0009】
しかしながら、このように、ウィンドウズ(登録商標)等のOSがPC上で電子文書フォーマットを作成する際には、電子文書フォーマット用の専用ソフトウェアを用いる必要があるため、様々な問題が発生していた。
たとえば、アドビ社製のアドビ・リーダーは無料で配布されているものの、アクロバットは有料であるため、コストが発生していた。
【0010】
しかし、PCは汎用のコンピュータであるため、多数のソフトウェア上の構成が可能であり、ソフトウェアをインストールしてゆくと、他のソフトウェアとの整合性の問題(いわゆる「相性」問題)が発生し不安定になったり、ソフトウェアが使用できなったり、最悪の場合はOSが起動しなくなったりすることがある。
これらの知識に対処するためには、PCに関する知識やスキルが必要であり、一般的なユーザにとっては難しかった。
【0011】
XPSに関しては、Microsoft XPS Document Writerは、無料(マイクロソフト社のライセンスの下)で提供されているものの、同様の問題があった。
【0012】
そこで、近年の複合機においては、スキャンした画像を、複合機に内蔵されたPDF変換機能を用いてPDFのファイルを作成するというソリューション(問題解決の方式)が提案されており、PC上で専用ソフトウェアをインストールしなくても、電子文書フォーマットに変換するということが可能になった。
【0013】
しかしながら、このような従来の複合機に内蔵されたPDF変換機能を用いてPDFのファイルを作成する場合は、一旦、アプリケーションから紙に印刷し、それをスキャンする必要があった。
すなわち、直接PC上で印刷用の描画データ(以下、印刷データとする。)から、印刷データに係るPDLデータを画像形成装置にてPDF変換して、それをPCで取得するということができないという問題があった。
また、複合機からスキャンしてPCに送信する場合には、そのPCのIPアドレスのようなネットワーク上の位置を示す情報を指定せねばならず、ネットワークの知識がない一般的なユーザには難しいという問題があった。
【0014】
ここで、特許文献1を参照すると、分光光度計等の分析装置による解析結果レポート文書を、PDFに変換するサーバ/クライアントシステムが提案されている(以下、従来技術1と呼ぶ。)。
従来技術1のサーバにおいては、まず、クライアントPCが、サーバにデータ解析処理の実行を指示する。すると、サーバが分析レポートのPDFファイルを作成して、クライアントのPCに送信することができる。
この際に、サーバによりPDFが作成されるために、クライアントPCにはアクロバット等のPDF変換用の専用ソフトウェアをインストールする必要がないという効果が得られる。
【0015】
また、同様に、特定のアプリケーション用のファイルをPDFに変換することができる機能を持つサーバ用のソフトウェアが存在する。
たとえば、株式会社日本ディベロップメント製のpdfFactory 3 SE(Server Edition)というソフトウェア(http://www.nsd.co.jp/share/pdffact/server.html)は、サーバにインストールすると、マイクロソフト社製のオフィス用のファイルを該サーバにてPDFのファイルに変換可能である(以下、従来技術2と呼ぶ。)。
【0016】
このようなサーバ用のPDF変換用のソフトウェアを用いると、上述のPDF変換機能を内蔵した従来の複合機と異なり、いちいち印刷をしたものをスキャンし直す必要がないという効果も得られる。
【特許文献1】特開2005−309736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかし、従来技術1のサーバにおいては、データ解析処理の結果をPDFファイルにすることができるだけであり、汎用的なワードプロセッサや表計算ソフト等のソフトウェアである汎用アプリケーションの描画データをPDFファイル化することはできなかった。
また、その他のサーバにインストールするPDF変換用ソフトウェアに関しても、そのPDF変換用ソフトウェアが変換可能であるアプリケーションのファイルをPDFファイル化することができるだけで、汎用性がなかった。
【0018】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の画像形成装置は、印刷データに係るPDLデータを、端末の指示により電子文書フォーマットのデータに変換する、電子文書フォーマット変換部を備えることを特徴とする。
本発明の画像形成装置は、前記印刷データに係るPDLデータは、前記端末の汎用アプリケーションから印刷用に描画された印刷データを、画像形成装置用のデバイスドライバにより変換したPDLデータであることを特徴とする。
本発明の画像形成システムは、印刷データをPDLデータに変換する画像形成装置用のデバイスドライバを備えた端末と、前記PDLデータを受信するコントローラ部と、前記PDLデータを電子文書フォーマットのデータに変換する電子文書フォーマット変換部を有する画像形成装置とを備えることを特徴とする。
本発明の画像形成システムは、前記デバイスドライバには公開鍵が備えられており、前記画像形成装置は、秘密鍵を備えており、前記公開鍵で暗号化された文書を復号化する画像形成装置であることを特徴とする。
本発明の画像形成システムは、前記電子文書フォーマット変換部は、前記画像形成装置でのみ印刷することができる電子文書フォーマットのデータを作成することを特徴とする。
本発明の画像形成方法は、端末の汎用アプリケーションから印刷用データを作成し、前記印刷用データを、デバイスドライバによりPDLデータに変換し、変換された前記PDLデータを画像形成装置に送信し、前記画像形成装置で、前記PDLデータを受信し、前記PDLデータを電子文書フォーマットのデータに変換し、前記電子文書フォーマットのデータを前記端末に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、PC上の画像形成装置デバイスドライバから画像形成装置の電子文書フォーマット変換機能を用いることで、PC上に電子文書フォーマット変換機能をもつ専用ソフトウェアをインストールせずに、汎用アプリケーションから電子文書フォーマットを作成する画像形成システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<第1の実施の形態>
(システム構成)
図1を参照すると、本発明の実施の形態に係る画像形成システムXは、プリンタやデジタル複合機やMFP等である画像形成装置10と、PCや携帯端末(携帯電話、PDA等)等であるPC20(端末)とが、インターネットやイントラネット等であるネットワーク5を介して接続している。
ネットワーク5は、LAN、無線LAN、PLC、c.link等のイントラネット/インターネット等のIPネットワーク等であり、外部のネットワークと接続することもできる。
なお、ネットワーク5の代わりに、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)やi.link(登録商標、IEEE1394)等の端子や専用線等を用いて、画像形成装置10とPC20とを直接接続することも可能である。その場合でも、画像形成装置10かPC20のうち1つが、IPネットワークに接続されていれば、後述するメール配信機能等を使用することができる。
【0022】
(制御構成)
次に、図2を参照して、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の制御構成について説明する。
画像形成装置10は、画像形成装置10の総合的な制御を行うコントローラ部110と、FAX送信を行うFAX部120と、光学スキャナを備えたスキャナ部130と、ユーザにより画像形成装置の設定を閲覧・変更するための操作パネル部140と、印刷用エンジンであるエンジン部150等を備えている。
これらの各部位は、例えば、共通のバスで接続されてコントロールされる。
【0023】
さらに詳しく説明すると、コントローラ部110は、CPUやMPU(マイクロ・プロセッシング・ユニット)やDSP(デジタル・シグナル・プロセッサ)等の制御部、RAMやROMやHDDやフラッシュメモリ等である記憶部と、USB、LANインターフェイス、等のインターフェイス、バスコントローラ等、各種I/O等を備えており、画像形成装置10の全体的な制御を行う部位である。
また、コントローラ部110は、記憶部に組み込み(Embedded)用LinuxやRTOS(リアルタイムOS)等である組み込み用OSがインストールされており、制御部により、WWW(World Wide Web)サーバやFTP(File Transfer Protocol)サーバやSMTP・POPサーバ等のネットワーク用の各種のデーモン(サービス)や、SQLサーバ等が実行されている。これらの機能を使って、FAX部120から取得したFAX画像の画像データや、スキャナ部130から取得した画像データを記憶部に記憶し、FTPやメール等で送信可能である。
さらに、コントローラ部110は、ネットワーク5に接続するための、LANインターフェイス等を備えている。このLANインターフェイスは脱着可能であり、無線LAN、PLC、c.link、専用線等の各種のネットワークに対応できる。
このLANインターフェイスは、ネットワーク5を介してPC20から送信されてきたPDLのデータを受信し、記憶部に記憶する。
【0024】
また、コントローラ部110は、PDF変換部115(電子文書フォーマット変換部)と、ユーザデータベース117と、秘密鍵記憶部119とを更に備えている。これらの機能は、専用ハードウェアとこのコントロールソフトウェアとして提供してもよいし、上述の組み込み用OS上で制御部が実行する、記憶部に記憶されたソフトウェアとして提供されていてもよい。
PDF変換部115は、PDLのデータをPDFやXPS等の電子文書フォーマットのデータに変換する部位である。特に、PDF変換部115は、この画像形成装置10専用のPDLを電子文書フォーマットに変換した際に、PDLを直接印刷するのと、ほぼ同じ印刷結果が得られるような電子文書フォーマットのデータを作成することができるという特徴がある。
ユーザデータベース117は、PC20のユーザや他のPCのユーザのIPアドレスや電子メールアドレス等が記憶されたデータベースである。
秘密鍵記憶部119は、ハッシュ関数により符号化されたデータを復号するような秘密鍵(のデータ)を記憶する部位である。
【0025】
FAX部120は、FAX送受信を行う部位であり、通常の電話回線やISDN回線等と接続されている。また、FAX部120は、FAXで送信されてきた画像を、コントローラ部110の記憶部に記憶することができる。
スキャナ部130は、光学スキャナと、オートシードフィーダ等を備える部位である。光学スキャナは、CCD素子、CIS(Contact Image Sensor)素子、CCDアレイ、CISアレイ等の光学素子を使用することができる。このスキャナ部130で取得した画像データについても、コントローラ部110の記憶部に記憶することができる。
【0026】
操作パネル部140は、画像形成装置10をユーザが単独で使用する場合の指示や、各種設定のインターフェイスの機能をもつ部位である。このため、操作パネル部140は、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイやLED等である表示部145と、テンキーやボタン等である入力部146とを含む。
操作パネル部140は、入力部146に入力されたユーザのボタン操作等の指示を検知して、コントローラ部110のユーザデータベース117の設定や、秘密鍵記憶部119の設定等についても変更することができる。また、これらの設定の変更について、表示部145に表示することができる。
【0027】
エンジン部150は、レーザー及びポリゴンミラーやLEDアレイ等、感光体(ドラム、転写ベルト等)、トナーカートリッジを着脱可能なトナー供給部、制御部、RAM・ROM・フラッシュメモリ等を備えているような、公知のMFPの印刷部と同等の部位である。
エンジン部150は、PDLのデータをビットマップデータに変換(ラスタライズ)して、感光体への描画による印刷を行うことができる。この際に、PDLのデータそのものではなく、内部コマンドのような具体的なコマンドに変換されたデータを描画することもできる。
【0028】
次に、図3を参照して、本発明の実施の形態に係るPC20の制御構成をさらに詳しく説明する。
PC20は、PC/AT互換機規格等のPC、携帯電話、スマートフォンやPDA等の携帯端末等であり、汎用性をもった計算機である。
PC20は、CPU(中央処理装置)等である制御部210と、RAM(主記憶装置)やROMやフラッシュメモリやHDD(補助記憶装置)等である記憶部220とが、RAMコントローラやビデオコントローラや各種I/O等であるチップセット230と接続されている。チップセット230には、ネットワーク5に接続するためのLANインターフェイス等であるネットワーク接続部240も接続している。
また、PC20には、液晶ディスプレイ等である表示部250と、キーボードやテンキーやポインティングデバイス(マウス、タッチパッド等)等である入力部260とを備えている。
なお、AMD社製のCPU等では、チップセットにはRAMコントローラを内蔵せずに、CPUに内蔵している。また、チップセット230と表示部250との間に、ビデオカード等を備えていてもよい。
【0029】
また、PC20には、記憶部220のHDD等に各種ウィンドウズ(登録商標)やLinux(登録商標)等のOSがインストールされている。
このOS上で動作する、各種プログラムやデータとしては、更に、アプリケーション221や、デバイスドライバ225や、電子メールアプリケーション227や、データ保存部229等が、記憶部220のHDD等にインストールされて備えられている。
【0030】
アプリケーション221は、一般的なワードプロセッサや表計算ソフトやベクトルデータの描画ソフトやウェブブラウザや電子メールソフト等、汎用的なアプリケーション・ソフトウェアであって、PC20のOS上で動作し、印刷機能をもっているものを全て含む。すなわち、従来技術1のように特定のソフトウェアやに対応するという訳ではなく、従来技術2のサーバのように、特定のバージョンの特定のワードプロセッサのソフトウェアのファイルのみ対応するという訳ではない。
【0031】
デバイスドライバ225(ドライバ)は、OS上で動作する画像形成装置10用のデバイスドライバである。デバイスドライバとは、OS上で周辺機器に各種の処理を遂行ためのプログラム(ソフトウェア)のことである。画像形成装置10用のデバイスドライバ225は、印刷データに係るPDLを作成し、これと設定情報等をOSが送信するための橋渡しを行なう。
また、デバイスドライバ225は、PDF変換機能をもつ画像形成装置10のネットワーク上の座標に関する情報等であるIPアドレスと、保存先フォルダ(によって管理されるファイル)と、公開鍵の、それぞれのデータをアクセス/記憶することができる。
なお、デバイスドライバ225は、記憶部220のうち、スーパーバイザ・モードやプロテクテッド・メディア・パスや仮想化や暗号化等が行われた領域に記憶して、ハッキングが行われないよう、更に作成したPDLが他のソフトウェアから閲覧できないようにすることが好適である。
【0032】
電子メールアプリケーション227は、例えば、マイクロソフト社製のウィンドウズ(登録商標)メールのような、汎用的な電子メール用アプリケーションソフトである。
データ保存部229は、特定のフォルダであり、例えば、FTP送信されたPDFファイル等をまとめて保存(記憶)することができる。
【0033】
(PDF変換処理)
次に、図4〜6の画面例、図7のタイミングチャート、図8のフローチャートを参照して、実際にPC20から、画像形成装置10を用いて印刷データに係るPDLデータをPDFデータに変換して取得する際の処理の流れについて詳細に説明する。
【0034】
〔デバイスドライバ設定機能のためのウィンドウ〕
まず、図4を参照して、PC20の制御部210が、デバイスドライバ225のプログラムの指示を基に、OSの機能を用いて表示部250に描いた、デバイスドライバの設定機能のためのウィンドウについて説明する。
ユーザは、OSのGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)の機能を用いて、入力部260のマウスで、「データ変換を行う」のチェックボックスにチェックを入れることができる。
【0035】
また、ユーザは、「データ受信方法」についても指示することが可能である。この「データ受信方法」に関しては、「直接受信」、「e−mail」、「IPアドレス」のラジオボックスにより、変換したPDFをどこに送信するのかについて、直接指定することができる。
実際のe−mailアドレスやIPアドレスについては、「設定」ボタンの押下により別ウィンドウを開いて、より細かい指示を与えることも可能である。また、「e−mail」と「IPアドレス」は、この「設定」を行って入力していない限り、選択できないように(例えば、灰色に表示されてチェックできなくなっている等)することができる。
【0036】
さらに、ユーザは、「変換データフォーマット」についても指示することができる。この変換データフォーマットは、ビットマップ系やベクトル系のフォーマットや、PDFやXPSのような電子文書フォーマットを選択することができる。
また、「変換データフォーマット」の左下にある「暗号化」チェックボックスは、暗号化されたデータを作成するかどうかについての選択をユーザがするためものである。この「暗号化」チェックボックスをチェックすると、パスワードを入力するためのダイアログボックスが開き、ユーザはパスワードを入力することができる。このパスワードは、デバイスドライバ225の管理下にある記憶部220の記憶領域に記憶される。
また、「印刷制限」チェックボックスは、印刷できなくなる、もしくは印刷しても判別できない(真っ黒に印刷されたり、レイアウトや印刷品質が著しく低下する)ような電子文書フォーマットのファイルを作成するための選択をユーザがするためのものである。なお、この「印刷制限」チェックボックスを用いて作成した電子文書フォーマットのファイルは、後述のように、画像形成装置10で印刷した場合のみ、通常の品質で印刷するように設定することができる。
【0037】
これらのユーザの指示は、GUIとデバイスドライバ225のプログラムの機能により、制御部210が検出することができる。
【0038】
図5を参照すると、ユーザが図4の「データ受信方法」のラジオボックスを「e−mail」にチェックして、「設定」ボタンを押下した際に開くウィンドウについて示す。
この図5によると、「e−mailアドレス」欄におけるアドレスをユーザがクリックすることで、変換したPDFファイルを送信するための電子メールのアドレスを設定することができる。選択されたアドレスは、反転表示等で表示することができる。たとえば、図5によると、「hoge@hogehoge.com」というアドレスが選択されている。また、選択されたアドレスは保存され、次回の図5のウィンドウの設定時に「デフォルトe−mailアドレス」として、同様に選択された状態で表示される。
【0039】
また、「追加」や「削除」ボタンで、この「e−mailアドレス」欄に表示される電子メールのアドレスを追加したり削除したりすることもできる。
また、「インポート」「エクスポート」により、他の電子メールアプリケーションやファイル(アドレスが記載された「.csv」ファイル等)等から、電子メールアドレスを追加したり(「インポート」)、書き出したり(「エクスポート」)することができる。
この「e−mailアドレス」欄におけるアドレスと、デフォルトe−mailアドレスは、ユーザが「OK」ボタンを押下したことを検知して、PC20の制御部210によりデバイスドライバ用の記憶部220内の領域に記憶される。それと同時に、セキュア(暗号化された)状態で、ネットワーク接続部240からネットワーク5を介して画像形成装置10に送信され、ユーザデータベース117の当該ユーザの領域に記憶され、このウィンドウを開いた際にまた読み出される。
【0040】
図6を参照すると、ユーザが図4の「データ受信方法」のラジオボックスを「IPアドレス指定」にチェックして、「設定」ボタンを押下した際に開くウィンドウについて示す。
このウィンドウでは、まず、IPアドレスの「自動指定」と「手動設定」のラジオボタンをチェックすることができる。「自動指定」においては、後述するように、PC20の設定や画像形成装置10のユーザデータベース117の設定等に従って送信するIPアドレスを設定する。「手動設定」においては、下の「IPアドレス」と「フォルダー名」欄を基にして指定することができる。この例においては、「IPアドレス」については「172.16.1.33」で、「フォルダー名」については「〜yin/PDFdata」が選択され指定されている。このように、「フォルダー名」では、UNIX(登録商標)形式やウィンドウズ(登録商標)形式やweb形式のように、様々な形式のフォルダ名を設定可能である。また、「IPアドレス」に関しても、一般的なIPv4のアドレスだけではなく、IPv6アドレスやネットワーク名やドメイン名等、ネットワーク上のアドレスを示すアドレスを指定できる。
「追加」「削除」「インポート」「エクスポート」ボタンを押下すると、上述の「e−mailアドレス」のウィンドウの場合と同様に、「IPアドレス」欄と「フォルダー名」欄を設定可能である。
「編集」ボタンに関しては、選択されたIPアドレス又はフォルダー名を修正・編集するために用いる。
ユーザが「OK」ボタンを押下したことを検知しすると、PC20の制御部210は、デバイスドライバ用の記憶部220内の領域にこれらの設定を記憶すると同時に、画像形成装置10のユーザデータベース117にも送信する。画像形成装置10は、ユーザデータベース117にこれを記憶する。
【0041】
〔PDF変換のタイミング〕
次に、図7を参照すると、PC20は、アプリケーションから印刷を開始して、ステップS100にて、印刷データ・PDL作成処理を行う。この処理は後述するように、印刷データの作成から、PDFへの変換指示フラグを入れ込んだPDLデータの作成処理までを含む。
次に、PC20は、ステップS109にて、印刷データに係るPDLのデータを画像形成装置10に送信する。
画像形成装置10においては、コントローラ部110は、実際にPDLのデータを受信する。この際、コントローラ部110は、PC20にてPDFへの変換指示がでていた場合は、PDLのデータをPDFのデータに変換する。
コントローラ部110は、PDF変換部115が変換したPDFのデータを、ステップS204にてPC20に送信する。
PC20においては、変換されたPDFのデータをPDFファイルとして受信する。
画像形成装置10では、PC20から実際の印刷を行う印刷指示がでていた場合は、実際に印刷処理を行う。
以下で、PC20又は画像形成装置10にて行われる処理の詳細について詳しく説明する。
【0042】
〔PC20の処理〕
ここで、図8を参照して、主にPC20の制御部210が行う処理についてさらに詳しく説明する。
上述のステップS100については、以下のステップS101〜ステップS108までの各ステップを実行する。
【0043】
(ステップS101)
まず、ステップS101において、PC20の制御部210は、印刷開始処理を行う。
具体的には、PC20の制御部210は、PC20のアプリケーション221のプログラムに従い、印刷データを作成する。
このアプリケーション221は、汎用的なアプリケーションであるので、OS上のAPI(アプリケーショ・プログラム・インターフェイス)と呼ばれるルーチンを用いて印刷データの作成を行う。たとえば、ウィンドウズ(登録商標)XPの場合には、アプリケーション221は、デバイスコンテキストというオブジェクトを用いて、描画先をプリンタに指定した上で描画処理を行うと、印刷データが作成される。
この印刷データは、この後の処理を経て、OSによりデバイスドライバ225に送信される。
【0044】
なお、アプリケーション221の描画については、そのアプリケーション221に従った描画が行われる。
これにより、例えば、バージョンが微妙に異なるアプリケーション221を用いて印刷した場合に、その結果がそのまま反映された印刷データが作成される。
これは、例えば、同じ「word(.doc)」ファイルを使用しても、マイクロソフト社製のワード97とワード2007等で印刷結果が異なることがあるような場合でも、アプリケーション221を使用しているユーザの意図に従った印刷データを作成できることを意味する。
つまり、従来技術1や従来技術2のように、サーバにインストールされているソフトウェアに依存していない。
【0045】
(ステップS102)
次に、ステップS102において、制御部210は、ユーザがPDF変換を行うよう指示しているか判定する。
具体的には、ユーザがデバイスドライバの設定機能で指示していた値を基に、判定を行う。
このデバイスドライバの設定機能については、図7を参照すると、アプリケーション221でユーザが印刷を指示した際に、例えば「プリンタのプロパティ」を選択することで呼び出すことができる。
【0046】
制御部210は、プリンタの機能設定ウィンドウの「データ変換を行う」チェックボックスがチェックされている場合に、ステップS102において「Yes」と判定する。それ以外の場合は、「No」と判定する。
Yesの場合、制御部210は、処理をステップS103に進める。
Noの倍、制御部210は、処理をステップS107に進める。
【0047】
(ステップS103)
次に、ステップS103において、制御部210は、メールアドレスが指定されているかについて判定する。
実際には、上述のデバイスドライバの設定機能のウィンドウの「データ受信方法」のラジオボックスのうち、ユーザが「e−mail」にチェックを入れていたかについて検知する。制御部210は、「e−mail」のチェックを検知した場合は、Yesと判定する。それ以外の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部210は、処理をステップS106に進める。
Noの場合、制御部210は、処理をステップS104に進める。
【0048】
(ステップS104)
次に、ステップS104において、制御部210は、IPアドレスが指定されているかについて判定する。
実際には、上述のデバイスドライバの設定機能のウィンドウの「データ受信方法」のラジオボックスのうち、ユーザが「IPアドレス」にチェックを入れていたかについて検知する。制御部210は、「IPアドレス」のチェックを検知した場合は、Yesと判定する。それ以外の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部210は、処理をステップS106に進める。
Noの場合、制御部210は、処理をステップS105に進める。
【0049】
(ステップS105)
次に、ステップS105において、制御部210は、直接受信が指定されているかについて判定する。
具体的には、上述のデバイスドライバの設定機能のウィンドウの「データ受信方法」のラジオボックスのうち、ユーザが「直接受信」にチェックを入れていたかについて検知する。制御部210は、「直接受信」のチェックを検知した場合は、Yesと判定する。それ以外の場合は、Noと判定する。
Yesの場合、制御部210は、処理をステップS106に進める。
Noの場合、制御部210は、「変換後のファイルの保存場所が指定されていません。印刷します」という警告を表示して、処理をステップS107に進める。
【0050】
(ステップS106)
ステップS106において、制御部210は、PDF変換フラグ処理を行う。
具体的には、アプリケーション221で描画された印刷データからPDLを作成する際に、PDFに変換指示を行うコマンドを入れ込むようにするPDF変換指示のフラグ等を、記憶部220に記憶する。
記憶した後、制御部210は、処理をステップS108に進める。
【0051】
(ステップS107)
ステップS107において、制御部210は、印刷フラグ処理を行う。
この処理においては、制御部210は、印刷データから通常の印刷用のPDLを作成する印刷指示のフラグ等を、記憶部220に記憶する。
記憶した後、制御部210は、処理をステップS108に進める。
【0052】
(ステップS108)
ステップS108において、制御部210は、PDL作成処理を行う。
具体的には、上述のアプリケーション221により制御部210が作成した印刷データを、デバイスドライバ225のプログラムにより画像形成装置10専用のPDLに変換してPDLデータを作成する。
この際に、上述のPDF変換指示のフラグ等や印刷指示のフラグ等の内容に従い、PDF変換指示や印刷指示等のデータをPDL内に記述する。
また、制御部210は、上述の「暗号化」チェックボックスの情報を検知して、パスワードをPDLに記述する。その他のデバイスドライバの設定でユーザに指定された情報についても、PDLに記述する。ここで、これらの印刷データ以外のPDL内に記述される情報をオプション情報と称する。
制御部210は、作成したPDLデータを、記憶部220に記憶する。
【0053】
(ステップS109)
次に、ステップS109において、制御部210は、PDL送信処理を行う。
具体的には、制御部210は、作成したPDLデータを、デバイスドライバ225に記憶されている公開鍵にて暗号化してネットワーク接続部240から画像形成装置10へ送信する。
暗号化することにより、作成されたPDLデータは、ネットワーク上で他の者に盗み見等される心配がないという効果が得られる。これにより、企業等のセキュリティを向上させることができる。また、インターネット・プリンティング等を用いてPDFを作成する際にも安全であるという効果が得られる。
なお、デバイスドライバの設定により、このような暗号化を行わないで送信することも可能である。
この送信処理を行った後、制御部210は、変換されたPDF変換情報とPDFのファイルを受信するまで待機する。
【0054】
(ステップS110)
次に、ステップS110において、制御部210は、PDF受信処理を行う。
PDF変換情報は、画像形成装置10から送信された、PDF変換と印刷の状態に関する情報である。
ステップS110の処理においては、制御部210は、このPDF変換情報を、ネットワーク5を介して、ネットワーク接続部240にて受信する。
【0055】
ここで、ステップS103にて、メールアドレスの指定がYesだった場合は、制御部210は、「PDF変換終了、※(送信したe−mailアドレス)にメールを発信しました」というようなメッセージを表示する。メールアドレスにエラーが検出された場合は、その旨の警告を表示する。
また、ステップS104にて、IPアドレスが指定がYesだった場合には、制御部210は、「PDF変換終了、※(送信したIPアドレス)にFTP送信しました」というようなメッセージを表示する。ここでも、IPアドレスが存在しなかった等の場合には、その旨のメッセージや警告を表示する。デバイスドライバ225は、このFTPプロトコルで送信されたファイルの受信(get)を実行することができる。
また、ステップS105にて、直接受信の指定がYesだった場合には、制御部210は、実際に画像形成装置10から送信されたPDF等の変換済みのファイル受信して、データ保存部229に記憶する。この際に、アドビ・リーダー等で直接、このファイルを閲覧できるように設定しておくこともできる。
これらの処理により、PDF変換処理を終了する。
【0056】
〔画像形成装置10の処理〕
次に、図7を再度、参照して、主に画像形成装置10のコントローラ部110が行うPDF変換処理について説明する。
【0057】
(ステップS201)
まず、ステップS201において、コントローラ部110の制御部は、PDL受信処理を行う。
具体的には、上述のステップS109にてPC20から送信されたPDLデータを、ネットワーク5を介して、コントローラ部110のLANインターフェイス等により受信する。
受信したPDLデータは、コントローラ部110の記憶部に記憶する。
【0058】
(ステップS202)
次に、ステップS202において、コントローラ部110の制御部は、PDF変換指示があるかについて判定する。具体的には、記憶したPDLデータに、PDF変換指示が含まれているかについて判定する。
Yesの場合は、コントローラ部110の制御部は、処理をステップS203に進める。
Noの場合は、コントローラ部110の制御部は、処理をステップS205に進める。
【0059】
(ステップS203)
次に、ステップS203において、コントローラ部110のPDF変換部115は、PDF作成処理を行う。
具体的には、PDF変換部115は、PDLのデータは暗号化されているため、秘密鍵記憶部119のデータを用いて復号化する。
その上で、上述の様々なオプション情報に従って、PDLのデータから、PDF等の電子文書フォーマット(やその他のフォーマット)のデータを作成する。
【0060】
(ステップS204)
次に、ステップS204において、コントローラ部110の制御部は、PDF送信処理を行う。
この処理においては、まず、コントローラ部110の制御部は、PDF変換と印刷の状態に関するPDF変換情報を受信する。このPDF変換情報は、上述のように、変換が成功したか失敗したかのフラグと、送信のためのメールアドレスやIPアドレスが適切であったかについての(エラーメッセージを含む)情報である。
【0061】
次に、コントローラ部110の制御部は、作成された電子文書フォーマットのデータとなるファイルを、上述のオプション情報に従って、例えば、指定されたe−mailアドレスにSMTPデーモンを用いてメールを送信したり、指定されたIPアドレスにFTPで送信したりする。
これらのメールアドレスやIPアドレスは、元々、ユーザの指示に従ってPC20のデバイスドライバで指定されているために、画像形成装置10においては、印刷時に設定する必要はない。
【0062】
たとえば、PC20に電子メールで電子文書フォーマットのファイルを送信する場合には、PC20のユーザのメールアドレスに添付ファイルで送信する。これにより、ユーザは、電子メールアプリケーション227にて、いつでもそのファイルを受信することが可能になる。
また、FTP(File Transfer Protocol)で送信する場合は、PC20のIPアドレスは印刷時にPC20のアドレスを取得できるため、このアドレスに向かってファイルをFTPデーモンが送信(put)するだけでよい。この際に、デバイスドライバ225はFTPの働きもするために、ファイルをデータ保存部229に記憶することができる。
【0063】
なお、送信を行わずに、ユーザデータベース117の各ユーザのフォルダに記憶しておくようなオプションも可能である。
また、上述のFTPについては、実際には、特別なポート番号を用い、さらにSFTP等のセキュアなプロトコルを用いることが望ましい。
【0064】
(ステップS205)
次に、ステップS205において、コントローラ部110の制御部は、PDLのオプション情報に印刷指示があるかについて判定する。
Yesの場合は、コントローラ部110の制御部は、処理をステップS206に進める。
Noの場合は、コントローラ部110の制御部は、PDF変換処理を終了する。
【0065】
(ステップS206)
次に、ステップS206において、コントローラ部110の制御部は、印刷処理を行う。
具体的には、通常の印刷用のPDLや変換されたPDFを用いてラスタライズを行い、ラスタライズされたデータを、エンジン部150により印刷する。
すなわち、このラスタライズにおいては、PDLデータもPDF等の電子文書ファイルのデータも同様に描画することができる。
以上により、印刷処理を終了する。
【0066】
このように構成することで、以下のような効果を得ることができる。
まず、従来のPCでは、PDFに変換する機能がないOSがインストールされている場合は、PDFを作成するためには専用ソフトウェアをインストールする必要があった。
また、従来の複合機では、PDF変換用の専用ソフトウェアをインストールする必要はないものの、PC20側からPDLを送信して、画像形成装置10のPDF変換機能を用いてPDFを作成して、画像形成装置10で作成されたPDFをPC20で受信することはできなかった。すなわち、いちいち、紙に印刷してから、それを再読込してPDF化するという必要があった。
そして、従来技術1の機器分析用データ処理システムにおいては、特定の分析機器用のデータをPDFに変換することができたが、汎用的なアプリケーションからPDFに変換することはできなかった。
また、従来技術2のPDF変換ソフトをインストールしたサーバにおいても、特定の種類のファイルをPDFに変換できるだけで、汎用的なアプリケーションからPDFに変換することはできなかった。
【0067】
これに対して、本発明の実施の形態に係る画像形成システムXにおいては、PC20の汎用的なアプリケーションから印刷したデータを、電子文書フォーマットに変換することができるという効果が得られる。
この際に、電子文書フォーマットの変換用の専用ソフトウェアをインストールする必要がなく、いちいち紙に打ち出す必要がない。また、特定のソフトウェアだけでなく、印刷機能のあるソフトウェアなら、どのようなソフトウェアにも対応できる。
【0068】
これに加えて、以下のような効果も得られる。
まず、従来のPCでは、アドビ社のアクロバットは商用ソフトウェアなのでコストが発生した。また、PDFの仕様は公開されているため、アクロバットとほぼ同様の働きをする、GhostScript(GS)と呼ばれるフリー(GPL、GNU General Public License)の専用ソフトウェアも存在するものの、互換性の問題があり、煩雑なため、メンテナンス等のコストが発生した。また、マイクロソフト社製のXPS用の専用ソフトウェアも、対応していないOS(Windows(登録商標)XP等)にインストールすると互換性の問題がでることがあり、メンテナンスコストが発生した。さらに、複数台のPCに専用ソフトウェアを印刷するのは煩雑であると同時に上述のコストが発生するという問題があった。
また、従来の複合機では、紙に印刷してから再PDF化するという煩雑な手順をとるため、紙代のコストがかかるだけでなく、印刷→再読込の手順を経るので、画質が劣化するという問題があった。さらに、文字を埋め込んだPDFを作成する場合は、OCR(光学文字認識)等を用いる必要があったが、誤認識が発生するという問題があった。
さらに、従来技術1の分析用データ処理システムや、従来のPDF変換ソフトウェアをインストールしたサーバにおいては、PDF変換ソフトウェアをインストールしたサーバを印刷用の複合機とは別に用意する必要があるために、サーバ代と変換ソフトウェア代のコストが発生した。この変換ソフトウェアは、PCの台数により、ライセンス代が増大するというコストが発生することもあった。
【0069】
これに対し、本発明の実施の形態に係る画像形成システムXにおいては、電子文書フォーマット変換用の専用ソフトウェアをインストールするコストが発生せず、各PCに印刷用のデバイスドライバ225をインストールするだけで、PDF等の電子文書フォーマットに変換することができる。
デバイスドライバのインストールは、ウィンドウズ(登録商標)の場合は、相性問題が出やすいアクロバット等のソフトウェアよりも容易に通常の手順でインストール可能であり、一般的なユーザにも容易に設定可能である。すなわち、専用ソフトウェアをインストールすることによる、互換性等の問題はほとんど発生しない。このため、サポートのコストが発生することが少ない。
また、いちいち紙に印刷する必要がない。
さらに、サーバにインストールして設定を行う必要がないため、サーバのコストがかからない。すなわち、サーバのコストはなく、サーバの専用ソフトウェアのコストもなく、サーバ管理者等の負担(コスト)がかからない。
これにより、コストを削減できるという効果が得られる。
加えて、紙に印刷することによるA/D変換とD/A変換による情報のロスがないので、文字情報を保ったまま、画質の劣化の少ない電子文書フォーマットのファイルを作成できるという効果が得られる。
【0070】
また、従来の電子文書フォーマットの変換用の専用ソフトウェアにおいては、変換後の電子文書フォーマットを印刷すると、意図通りの印刷にならないことがあった。すなわち、汎用アプリケーションから直接印刷する場合と、電子文書フォーマットのファイルを(電子文書フォーマットの閲覧ソフトにより)印刷する場合で、印刷結果が異なることがあった。
また、アクロバットやGhostScriptにより作成・変換されたPDFのファイルは、アドビ・リーダーで閲覧する際と印刷する際に、意図した変換が行われないことがあるという、互換性の問題もあった。
たとえば、アドビ・リーダーで該ファイルを閲覧する際には、一見、変換の再現性が高く見えるものの、印刷すると、フォントがおかしくなったり、図形描画に誤差が生じるという問題があった。
これは、ポストスクリプト等のPDLには「方言」のような各機種依存の機能・仕様の差があり、また、実際に複合機において実現できる機能が異なっており、それを汎用的な電子文書フォーマットに変換するために生じる問題であった。
また、従来技術2のPDF変換機能をインストールしたサーバにおいても、変換するためのファイルを作成したPC側のアプリケーションの差で印刷結果が異なる場合に対応できなかった。たとえば、マイクロソフト社のワードプロセッサ・ソフトウェアの「ワード」の場合は、ワード97とワード2003は同じ「.doc」ファイルを用いるが、サーバでは一律的に「.doc」をワードのファイルをワード2003で変換するようになっているような場合がありうる。
【0071】
これに対し、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10のPDF変換部115は、画像形成装置10の機能に合わせて印刷されるPDLをそのまま同様の形式を保った状態でPDF等の電子文書フォーマットに変換することができる。
これにより、画像形成装置10でほぼ同じ印刷結果を再現する電子文書フォーマットのファイルを作成することができるという効果が得られる。
また、このPDF変換部115の開発においては、アドビ・リーダーに対して互換性チェックを行うだけでよいため、閲覧時にも互換性の高い電子文書フォーマットのファイルを得ることができるという効果が得られる。
【0072】
また、従来のPDF変換機能をもった複合機は、紙をスキャンして作成したPDFのIPアドレス等を指定する必要があり、煩雑だった。
また、従来のアクロバット等の電子文書フォーマット変換専用のソフトウェアを使用した場合には、PDFに変換するためには、印刷時にプリンタの選択をその専用ソフトウェアにしなければならず、いつも同じプリンタで印刷したいユーザにとっては面倒であるという問題があった。
さらに、従来技術1のサーバや、従来技術2のPDF変換機能をインストールしたサーバに関しても、通常の印刷とは異なるインターフェイス(例えば、専用の計測用ソフトウェアや、IPアドレスを指定して、web用のCGI(コモン・ゲートウェイ・インターフェイス)から呼び出す必要がある等)を用いてPDFに変換する必要があり、ユーザにとっては面倒であった。
【0073】
これに対し、本発明の実施の形態に係る画像形成システムXにおいては、通常のプリンタの印刷プロパティからPDF等への変換を指示するだけであるので、操作が易しくユーザの操作性がよくなるという効果が得られる。
【0074】
また、従来のPDF変換機能をもった複合機は、暗号化されたデータをPDFとして送信することはあまり考えられていなかった。そもそも、印刷物が残るため、セキュリティ上の問題が存在した。
従来技術1のサーバや、従来技術2のPDF変換機能をインストールしたサーバも、暗号化を行うと使い勝手が低下した。そもそも、汎用的なサーバを用いているため、セキュリティ・ホールがあると、ハッキング等されるという問題があった。
【0075】
これに対し、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10は、最小限のデーモン(サービス)を実行する組み込み用OSがインストールされているだけであり、セキュリティ・ホールが少ない。また、PDLと電子文書フォーマットに変換したファイルが暗号化されて送受信されるため、パケットをチェックするソフトウェアでも、解読することが困難である。
これにより、よりセキュリティが向上したPDF変換環境を提供することができる。
【0076】
さらに、ユーザデータベース117を画像形成装置10にのみ記憶しておき、電子メール送信者は、PC20のデバイスドライバのプロパティから閲覧するたびに暗号化された状態で呼び出すようにすることで、PC20にユーザ情報を置かないため、よりセキュリティを向上させることができる。
また、画像形成装置10でのみ印刷できる電子文書フォーマットを作成できるため、印刷による情報の流出を防ぐことができる。
これにより、機密情報の外部持ち出しを防ぐことが可能になり、強固なセキュリティをもつ電子文書フォーマットのファイルを蓄積できる、画像形成システムを提供することが可能となる。
【0077】
以上のように、本発明の実施の形態に係る画像形成システムXは、従来技術の単なる設計変更や従来技術の組み合わせではない、顕著な効果を得ることができる。
【0078】
なお、上述のPC20での処理や、画像形成装置10での処理においては、電子文書フォーマットのうちPDFを作成する場合について説明したが、XPSにおいても、まったく同様の手順で変換可能である。さらに、他の電子文書フォーマットであっても、同様に変換可能である。加えて、ビットマップデータやベクトルデータのようなフォーマット(TIFF、JPG、PNG、SVG、EPS、DXF等)についても、PDF変換部115の機能により変換可能である。
【0079】
加えて、本発明の実施の形態においては、レーザープリンタを用いて説明したが、本発明の画像処理装置は他の方式の画像形成装置にも当然、適用できる。ずなわち、ページプリンタでないシリアルプリンタのような画像形成装置であっても、PDLを読み込み、電子フォーマットに変換する機能を備えていればよい。
【0080】
また、PDLに「暗号化」で設定されたパスワードのデータを記憶するように記載したが、これらのデータはPDLのデータとは別に送信することも可能である。
【0081】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態に係る画像形成システムXのシステム構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の制御構成図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るPC20の制御構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るデバイスドライバの設定機能のためのウィンドウを示す画面例である。
【図5】本発明の実施の形態に係る「e−mail」設定のためのウィンドウを示す画面例である。
【図6】本発明の実施の形態に係る「IPアドレス」設定のためのウィンドウを示す画面例である。
【図7】本発明の実施の形態に係るPDLデータをPDFデータに変換して取得する処理のタイミングチャートである。
【図8】本発明の実施の形態に係るPDLデータをPDFデータに変換して取得する処理のPC20での処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0083】
5 ネットワーク
10 画像形成装置
20 PC
110 コントローラ部
115 PDF変換部
117 ユーザデータベース
119 秘密鍵記憶部
120 FAX部
130 スキャナ部
140 操作パネル部
145、250 表示部
146、260 入力部
150 エンジン部
210 制御部
220 記憶部
221 アプリケーション
225 デバイスドライバ
227 電子メールアプリケーション
229 データ保存部
230 チップセット
240 ネットワーク接続部
X 画像形成システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷データに係るPDLデータを、端末の指示により電子文書フォーマットのデータに変換する、電子文書フォーマット変換部
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記印刷データに係るPDLデータは、前記端末の汎用アプリケーションから印刷用に描画された印刷データを、画像形成装置用のデバイスドライバにより変換したPDLデータである
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
印刷データをPDLデータに変換する画像形成装置用のデバイスドライバを備えた端末と、
前記PDLデータを受信するコントローラ部と、前記PDLデータを電子文書フォーマットのデータに変換する電子文書フォーマット変換部を有する画像形成装置とを備える
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項4】
前記デバイスドライバには公開鍵が備えられており、
前記画像形成装置は、秘密鍵を備えており、前記公開鍵で暗号化された文書を復号化する画像形成装置である
ことを特徴とする請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記電子文書フォーマット変換部は、前記画像形成装置でのみ印刷することができる電子文書フォーマットのデータを作成する
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の画像形成システム。
【請求項6】
端末の汎用アプリケーションから印刷用データを作成し、
前記印刷用データを、デバイスドライバによりPDLデータに変換し、
変換された前記PDLデータを画像形成装置に送信し、
前記画像形成装置で、前記PDLデータを受信し、
前記PDLデータを電子文書フォーマットのデータに変換し、
前記電子文書フォーマットのデータを前記端末に送信する
ことを特徴とする画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−292014(P2009−292014A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147160(P2008−147160)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】