説明

画像処理装置、電子カメラおよび画像処理プログラム

【課題】 暗部階調の補正を行う際に、暗部や明部に発生するオーバーシュートを抑えること。
【解決手段】 画像データを取得する取得部と、画像データに対して、第1の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第1階調変換部と、第1階調変換部により階調変換処理が施された画像データに基づいて、ボケ画像データを生成する生成部と、ボケ画像データに対して、第2の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第2階調変換部と、第2階調変換部により階調変換処理が施されたボケ画像データに基づいて、取得部により取得した画像データの暗部階調の明度を向上する補正を行う補正部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、電子カメラおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、輝度差の大きな被写体を撮影することにより、画像データの暗部階調が暗く潰れるという現象が知られている。そこで、特許文献1の発明では、暗部階調のゲインを上げることで階調を圧縮し、暗部階調の黒つぶれを改善している。
【特許文献1】特許2663189号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した特許文献1の発明においては、階調変換処理を施した後にローパス処理を行い、ローパス処理が施された画像データに基づいて、階調を圧縮する処理が行われている。しかし、輝度差が大きい領域においては、階調変換処理に起因して暗部や明部にオーバーシュートが発生する場合がある。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、暗部階調の補正を行う際に、暗部や明部に発生するオーバーシュートを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の画像処理装置は、画像データを取得する取得部と、前記画像データに対して、第1の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第1階調変換部と、前記第1階調変換部により階調変換処理が施された前記画像データに基づいて、ボケ画像データを生成する生成部と、前記ボケ画像データに対して、第2の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第2階調変換部と、前記第2階調変換部により階調変換処理が施された前記ボケ画像データに基づいて、前記取得部により取得した画像データの暗部階調の明度を向上する補正を行う補正部とを備える。
【0006】
なお、前記画像データに対して、色処理と階調変換処理との少なくとも一方を含む画像処理を施す画像処理部を備え、前記第1階調変換部と前記生成部と前記第2階調変換部との少なくとも一つは、前記画像処理部による画像処理を並行して処理を行っても良い。
【0007】
また、前記第1の入出力特性を有する階調カーブは、前記第1の入出力特性を有する階調カーブと前記第2の入出力特性を有する階調カーブとを合成した第3の入出力特性を有する階調カーブよりも直線に近い形状を有しても良い。
【0008】
また、被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、上記した何れかの画像処理装置とを備え、前記取得部は、前記撮像部から前記画像データを取得する電子カメラも本発明の具体的態様として有効である。
【0009】
また、上記発明に関する構成を、処理対象の画像データに対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムに変換して表現したものも本発明の具体的態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、暗部階調の補正を行う際に、暗部や明部に発生するオーバーシュートを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態では、本発明の画像処理装置を備えた電子カメラを例に挙げて説明する。
【0012】
まず、比較のために、従来の階調圧縮処理について説明する。
【0013】
図1は、従来の階調圧縮処理を行う電子カメラ100の構成を示す図である。図1に示すように、電子カメラ100は、撮影レンズ102、撮像素子103、アナログフロントエンド(Analog Front End)部(以下、AFE部と称する)104、画像処理部105、階調圧縮処理部106、圧縮伸長部107、記録部108の各部を備えるとともに、各部を統括的に制御する制御部109を備える。
【0014】
また、電子カメラ100は、撮像により生成された画像などを表示する不図示の表示部、レリーズ釦や設定釦などを含む不図示の操作部を備える。制御部109は、内部に不図示のメモリを備え、各部を制御するためのプログラムを予め記録するとともに、操作部の操作状態を検知する。
【0015】
撮影時、制御部109は、撮影レンズ102を介した被写体像を撮像素子103により撮像し、AFE部104によりディジタルの画像データを生成する。そして、制御部109は、画像処理部105により色処理や階調変換処理を施した後、階調圧縮処理部106により階調圧縮処理を施して鑑賞用の画像データを生成する。この画像データは、圧縮伸長部107により適宜圧縮され、記録部108に記録される。
【0016】
なお、階調圧縮処理部106は、図2に示すように、ローパス演算部121とゲイン付加部122とを有する。ローパス演算部121は、例えば図3に示すガウス型のローパスフィルタを用いたローパス処理を画像データに施し、ゲイン付加部122は、ローパス処理を施した画像データの明度に応じて、各画素にゲインを付加する。このような処理により、通常つぶれがちな暗部を明瞭に再現することが可能となる。
【0017】
以上説明した構成の電子カメラ100の撮影時の動作について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0018】
ステップS1において、制御部109は、ユーザにより不図示の操作部を介して撮影開始が指示されたか否かを判定する。そして、制御部109は、撮影開始が指示されたと判定するとステップS2に進む。
【0019】
ステップS2において、制御部109は、各部を制御し、撮像素子103およびAFE部104により被写体像を撮像して画像データを生成する。
【0020】
ステップS3において、制御部109は、画像処理部105を制御して、ステップS2で生成した画像データに色空間変換処理を行う。色空間変換処理は、以下の式1から式3により行われる。
【0021】
tR[x,y]=krr・R[x,y]+krg・G[x,y]+krb・B[x,y]…(式1)
tG[x,y]=kgr・R[x,y]+kgg・G[x,y]+kgb・B[x,y]…(式2)
tB[x,y]=kbr・R[x,y]+kbg・G[x,y]+kbb・B[x,y]…(式3)
なお、式1から式3中のR[x,y],G[x,y],B[x,y]は、それぞれRGB画像の画像データを示し、krr,krg,krbは、所定の係数である。
【0022】
ステップS4において、制御部109は、画像処理部105を制御して、ステップS3で色空間変換処理を施した画像データに階調変換処理を行う。階調変換処理は、以下の式4から式6により行われる。
【0023】
sR[x,y]=Gm[tR[x,y]]…(式4)
sG[x,y]=Gm[tG[x,y]]…(式5)
sB[x,y]=Gm[tB[x,y]]…(式6)
なお、式4から式6中のGmは、例えば、図5に示す階調カーブに相当する。
【0024】
ステップS5において、制御部109は、階調圧縮処理部106を制御して、ステップS4で階調変換処理を施した画像データに階調圧縮処理を施す。
【0025】
制御部109は、まず、ローパス演算部121を制御して、ステップS4で階調変換処理を施した画像データに対してローパス演算を行う。ローパス演算は、以下の式7から式11により行われる。
【0026】
Y[x,y]=kr・sR[x,y]+kg・sG[x,y]+kb・sB[x,y]…(式7)
Cr[x,y]=kcrr・sR[x,y]+kcrg・sG[x,y]+kcrb・sB[x,y]…(式8)
Cb[x,y]=kcbr・sR[x,y]+kcbg・sG[x,y]+kcbb・sB[x,y]…(式9)
V[x,y]=ky・Y[x,y]+kcr・|Cr[x,y]|+kcb・|Cb[x,y]|…(式10)
【0027】
【数1】

【0028】
なお、式7から式9中のkr,kg,kb,kcrr,kcrg,kcrb,kcbr,kcbg,kcbbは、所定の係数である。式7から式9により、sRGB画像がYCbCr画像に変換される。また、式10中のky,kc,kcbは、所定の係数であり、式10により、YCbCr画像からに明るさに関する画像であるV画像の画像データが生成される。また、式11中のLpwは、注目画素周りのローパスフィルタであり、このローパスフィルタは、図3に示す特性を有する。そして、式11により、V画像からローパス画像であるLV画像の画像データが生成される。なお、ローパス画像は、ボケ画像の一例であり、他のローパスフィルタを用いてローパス画像を生成しても良いし、ローパス処理以外の手法を用いてボケ画像を生成しても良い。
【0029】
次に、制御部109は、階調圧縮処理部106のゲイン付加部122を制御して、ローパス処理を施した画像データに対してゲインを付加する。ゲインの付加は、以下の式12から式14により行われる。
【0030】
sRc[x,y]=sR[x,y]・fg(LV[x,y])…(式12)
sGc[x,y]=sG[x,y]・fg(LV[x,y])…(式13)
sBc[x,y]=sB[x,y]・fg(LV[x,y])…(式14)
なお、式12から式14中のfgは階調圧縮のパラメータである。図6は、階調圧縮のパラメータfgを示す図である。パラメータfgは、図6に示すように、V画像の画像データに応じたゲインを有する。そして、V画像の画像データが小さいほど(処理画素を含む近傍範囲が暗いほど)、パラメータfgは大きくなる。逆に、V画像の画像データが大きいほど(処理画素を含む近傍範囲が明るいほど)、パラメータfgは1に近づく。
【0031】
ステップS6において、制御部109は、ステップS5で階調圧縮処理を施した画像データを、記録部108に記録し、一連の処理を終了する。なお、画像データを記録部108に記録する前に、圧縮伸長部107を介して、必要に応じて画像圧縮処理(JPEG圧縮処理など)を施しても良い。
【0032】
以上説明した従来の階調圧縮処理に対して、本実施形態では、以下の処理を行う。
【0033】
図7は、本実施形態の階調圧縮処理を行う電子カメラ1の構成を示す図である。図7に示すように、本実施形態の電子カメラ1は、従来例で説明した電子カメラ100(図1参照)の画像処理部105、階調圧縮処理部106、制御部109に代えて、画像処理部2、ローパス演算部3、ゲイン付加部4、制御部5の各部を備える。なお、その他の構成については、従来例で説明した電子カメラ100と同様であるため、同様の符号を付し、説明を省略する。
【0034】
制御部5は、内部に不図示のメモリを備え、各部を制御するためのプログラムを予め記録するとともに、操作部の操作状態を検知する。
【0035】
撮影時、制御部5は、撮影レンズ102を介した被写体像を撮像素子103により撮像し、AFE部104によりディジタルの画像データを生成する。AFE部104の出力は、画像処理部2およびローパス演算部3の両方に供給される。処理の詳細は後述する。
【0036】
なお、ローパス演算部3は、図8に示すように、第1階調変換処理部21、ローパス処理部22、第2階調変換処理部23の各部を有する。
【0037】
以上説明した構成の電子カメラ1においては、画像処理部2およびローパス演算部3による処理が、並行して行われる。撮影時に、AFE部104の出力に対して、画像処理部2においては、従来例で説明した図4のフローチャートにおけるステップS3およびステップS4と同様の処理が行われる。画像処理部2における画像処理と並行して行われるローパス演算部3における処理時の動作と、その後の処理時の動作とについて、図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0038】
ステップS11において、制御部5は、ローパス演算部3の第1階調変換処理部21を制御して、AFE部104から出力された画像データに1回目の階調変換処理を行う。1回目の階調変換処理は、以下の式15から式17により行われる。
【0039】
GR[x,y]=GmL1[R[x,y]]…(式15)
GG[x,y]=GmL1[G[x,y]]…(式16)
GB[x,y]=GmL1[B[x,y]]…(式17)
なお、式15から式17中のGmL1は、図10に示す階調カーブに相当する。この階調カーブGmL1は、図10に示すように、リニアと上述した画像処理部2における階調変換処理(図4ステップS4)に用いる階調カーブGmとの中間的な特性を有する。
【0040】
ステップS12において、制御部5は、ローパス演算部3のローパス処理部22を制御して、ステップS11において1回目の階調変換処理が施された画像データに基づいて、明るさに関する画像であるV画像の画像データを生成する。V画像の画像データの生成は、以下の式18から式21により行われる。
【0041】
Y[x,y]=kr・GR[x,y]+kg・GG[x,y]+kb・GB[x,y]…(式18)
Cr[x,y]=kcrr・GR[x,y]+kcrg・GG[x,y]+kcrb・GB[x,y]…(式19)
Cb[x,y]=kcbr・GR[x,y]+kcbg・GG[x,y]+kcbb・GB[x,y]…(式20)
V[x,y]=ky・Y[x,y]+kcr・|Cr[x,y]|+kcb・|Cb[x,y]|…(式21)
なお、式18から式20中のkr,kg,kb,kcrr,kcrg,kcrb,kcbr,kcbg,kcbbは、所定の係数である。また、式21中のky,kc,kcbは、所定の係数である。
【0042】
ステップS13において、制御部5は、ローパス演算部3のローパス処理部22を制御して、ステップS12において生成したV画像の画像データに対してローパス処理を施す。ローパス処理は、以下の式22により行われる。
【0043】
【数2】

【0044】
なお、式22中のLpwは、注目画素周りのローパスフィルタであり、このローパスフィルタは、上述した図3に示す特性を有する。
【0045】
ステップS14において、制御部5は、ローパス演算部3の第2階調変換処理部23を制御して、ステップS13でローパス処理を施した画像データに2回目の階調変換処理を行う。2回目の階調変換処理は、以下の式23により行われる。
【0046】
LV2[x,y]=GmL2[LV[x,y]]…(式23)
なお、式23中のGmL2は、図10に示す階調カーブに相当する。この階調カーブGmL2の特性は、ステップS11で説明した1回目の階調変換処理に用いる階調カーブGmL1が、階調カーブGmL1と階調カーブGmL2とを合成した階調カーブよりも直線に近い形状を有するように設定される。
【0047】
ステップ15において、制御部5は、ゲイン付加部4を制御して、画像処理部2により画像処理を施した画像データに対してゲインを付加する。ゲインの付加は、以下の式24から式26により行われる。
【0048】
sRc[x,y]=sR[x,y]・fg(LV2[x,y])…(式24)
sGc[x,y]=sG[x,y]・fg(LV2[x,y])…(式25)
sBc[x,y]=sB[x,y]・fg(LV2[x,y])…(式26)
なお、式24から式26中のfgは階調圧縮のパラメータであり、上述した図6と同様に、V画像の画像データに応じたゲインを有する。
【0049】
ステップS16において、制御部5は、ステップS15でゲインを付加した画像データを、記録部108に記録し、一連の処理を終了する。なお、画像データを記録部108に記録する前に、圧縮伸長部107を介して、必要に応じて画像圧縮処理(JPEG圧縮処理など)を施しても良い。
【0050】
図11および図12を参照して、本実施形態の階調圧縮処理の結果について説明する。図11は、従来の階調圧縮処理の結果を示し、図12は、本実施形態の階調圧縮処理の結果を示す。従来の階調圧縮処理では、図11に示すように、明部と暗部との輝度差が大きい領域における階調圧縮処理では、暗部(E1)および明部(E2)においてオーバーシュートが発生する。図11の例においては、特に明部のオーバーシュートが目立つ。
【0051】
これに対し、本実施形態の階調圧縮処理では、図12に示すように、明部(E3)のオーバーシュートを減少させることができる。図12の例では、明部のオーバーシュートが減少する代わりに、暗部(E4)のオーバーシュートが多少増大しているが、暗部におけるオーバーシュートは、一般に明部におけるオーバーシュートよりも目立たないという性質がある。
【0052】
本実施形態では、ローパス処理前に行う階調変換処理時の階調カーブGmL1と、ローパス処理後に行う階調変換処理時の階調カーブGmL2とを適宜変更することにより、階調圧縮処理によって発生するオーバーシュートを調整することが可能である。まず、階調カーブGmL1は、階調カーブGmL1と階調カーブGmL2とを合成した階調カーブよりも直線に近い形状を有する。そして、ローパス処理前に行う階調変換処理時の階調カーブGmL1をより直線に近い形状にすると、その後のローパス処理後により生成されるボケ画像が明部に重みをおいた画像となるので、暗部のオーバーシュートが増大し、明部のオーバーシュートが減少する。逆に、ローパス処理前に行う階調変換処理時の階調カーブGmL1の形状が直線から離れると、その後のローパス処理後により生成されるボケ画像が暗部に重みをおいた画像となるので、明部のオーバーシュートが増大し、暗部のオーバーシュートが減少する。したがって、階調カーブGmL1および階調カーブGmL2を連動して適宜変更することにより、階調圧縮処理によって発生するオーバーシュートを調整することができる。
【0053】
オーバーシュートは、一般に、輝度や色などが均一な部分で目立ちやすい。例えば、夜景においては、夜空などの暗部が均一である場合が多いので、暗部のオーバーシュートを抑えるように階調カーブGmL1および階調カーブGmL2を変更すれば良い。また、例えば、昼間の風景などは、空などの明部が均一である場合が多いので、明部のオーバーシュートを抑えるように階調カーブGmL1および階調カーブGmL2を変更すれば良い。
【0054】
このような変更は、ユーザ指示にしたがって行っても良いし、自動で行っても良い。自動で行う場合には、撮影モード(例えば、「ポートレートモード」、「風景モード」など)、画像のコントラストの強弱、画像の調整モード、シーン解析や顔認識による画像判断結果等に応じて変更する構成としても良い。このように階調カーブGmL1および階調カーブGmL2を適宜変更することにより、画像に最適化した階調変換処理を行うことができる。
【0055】
さらに、露出補正による影響を加味して階調カーブGmL1およびGmL2を変更する構成としても良い。例えば、露出補正により画像全体の明るさの維持をある程度実現することができる場合には、階調カーブGmL1およびGmL2の変更量を少なめとしても良い。
【0056】
また、図10に示した階調カーブGmL1および階調カーブGmL2は、一例であり、本発明はこの例に限定されない。階調カーブGmL1が、階調カーブGmL1と階調カーブGmL2とを合成した階調カーブよりも直線に近い形状を有していればどのような形状であっても良い。例えば、階調カーブGmL1および階調カーブGmL2が略同一の形状であっても良い。また、階調カーブGmL1および階調カーブGmL2の一方が下方向に凸形状を有する階調カーブであっても良い。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、画像データに対して、第1の階調カーブ(GmL1)にしたがって階調変換処理を行い、階調変換処理が施された画像データに基づいて、ボケ画像データを生成する。そして、ボケ画像データに対して、第2の階調カーブ(GmL2)にしたがって階調変換処理を行い、階調変換処理が施されたボケ画像データに基づいて、暗部階調の明度を向上する補正を行う。そのため、従来のようにモニターガンマやハイライト部の飽和を少なくするニー特性などが施されている階調カーブ(例えば、図5階調カーブGm)を用いる場合のように、ローパス画像の暗部が重視されて、暗部領域を持ち上げた場合に明部のオーバーシュートが目立つというような問題を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、階調圧縮処理に先立ったローパス処理を、鑑賞用画像を生成するための画像処理と並行して実行しておき、その画像処理が終わった時点ですぐに階調圧縮処理を実行することができる。したがって、従来例で説明した階調圧縮と同様の処理を、より高速化することができる。そのため処理時間を短縮することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、撮像により生成した画像に常に階調圧縮処理を施す場合を例に挙げて説明したが、階調圧縮処理を行う階調圧縮モードと、階調圧縮処理を行わない非階調圧縮モードとを選択可能に備える構成としても良い。これらのモードの選択は、ユーザ指示にしたがって行う構成としても良いし、自動で行う構成としても良い。自動でモードを選択する場合には、上述した撮影モード、画像のコントラストの強弱、画像の調整モード、シーン解析や顔認識による画像判断結果等に応じてモードを選択すると良い。
【0060】
また、本実施形態で説明した階調圧縮のパラメータfg(図6)を、上述した撮影モード、画像のコントラストの強弱、画像の調整モード、シーン解析や顔認識による画像判断結果等に応じて変更する構成としても良い。このように階調圧縮のパラメータfgを適宜変更することにより、画像に最適化した暗部階調の補正を行うことができる。
【0061】
また、上述した実施形態では、本発明の技術を電子カメラ1において実現する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、コンパクトタイプの電子カメラや動画撮影を行うムービーカメラなどにも本発明を同様に適用することができる。
【0062】
また、コンピュータと画像処理プログラムとにより、本実施形態で説明した画像処理装置をソフトウェア的に実現しても良い。この場合、画像処理部2、ローパス演算部3、ゲイン付加部4の各部による処理(図9のフローチャートのステップS11からステップS15の処理)の一部または全部をコンピュータで実現する構成とすれば良い。このような構成とすることにより、本実施形態と同様の処理を実施することが可能になる。
【0063】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】従来の階調圧縮処理を行う電子カメラ100の機能ブロック図である。
【図2】階調圧縮処理部106の詳細を示す機能ブロック図である。
【図3】ローパスフィルタについて説明する図である。
【図4】従来の階調圧縮処理を行う電子カメラ100の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図5】階調カーブGmについて説明する図である。
【図6】階調圧縮のパラメータfgについて説明する図である。
【図7】本実施形態の電子カメラ1の機能ブロック図である。
【図8】ローパス演算部3の詳細を示す機能ブロック図である。
【図9】本実施形態の電子カメラ1の撮影時の動作を示すフローチャートである。
【図10】階調カーブGmL1および階調カーブGmL2について説明する図である。
【図11】従来の階調圧縮処理において発生するオーバーシュートについて説明する図である。
【図12】本実施形態の電子カメラ1の階調圧縮処理について説明する図である。
【符号の説明】
【0065】
1…電子カメラ,2…画像処理部,3…ローパス演算部,4…ゲイン付加部,5…制御部,21…第1階調変換処理部,22…ローパス処理部,23…第2階調変換処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを取得する取得部と、
前記画像データに対して、第1の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第1階調変換部と、
前記第1階調変換部により階調変換処理が施された前記画像データに基づいて、ボケ画像データを生成する生成部と、
前記ボケ画像データに対して、第2の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第2階調変換部と、
前記第2階調変換部により階調変換処理が施された前記ボケ画像データに基づいて、前記取得部により取得した画像データの暗部階調の明度を向上する補正を行う補正部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記画像データに対して、色処理と階調変換処理との少なくとも一方を含む画像処理を施す画像処理部を備え、
前記第1階調変換部と前記生成部と前記第2階調変換部との少なくとも一つは、前記画像処理部による画像処理を並行して処理を行う
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の画像処理装置において、
前記第1の入出力特性を有する階調カーブは、前記第1の入出力特性を有する階調カーブと前記第2の入出力特性を有する階調カーブとを合成した第3の入出力特性を有する階調カーブよりも直線に近い形状を有する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
被写体像を撮像して画像データを生成する撮像部と、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の画像処理装置とを備え、
前記取得部は、前記撮像部から前記画像データを取得する
ことを特徴とする電子カメラ。
【請求項5】
処理対象の画像データに対する画像処理をコンピュータで実現するための画像処理プログラムであって、
画像データを取得する取得ステップと、
前記画像データに対して、第1の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第1階調変換ステップと、
前記第1階調変換処理ステップにおいて階調変換処理が施された前記画像データに基づいて、ボケ画像データを生成する生成ステップと、
前記ボケ画像データに対して、第2の入出力特性にしたがって階調変換処理を行う第2階調変換ステップと、
前記第2階調変換ステップにおいて階調変換処理が施された前記ボケ画像データに基づいて、前記取得ステップにおいて取得した画像データの暗部階調の明度を向上する補正を行う補正ステップと
を備えたことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記画像データに対して、色処理と階調変換処理との少なくとも一方を含む画像処理を施す画像処理ステップを備え、
前記第1階調変換ステップの処理と前記生成ステップの処理と前記第2階調変換ステップの処理との少なくとも一つは、前記画像処理ステップにおける画像処理を並行して行われる
ことを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の画像処理プログラムにおいて、
前記第1の入出力特性を有する階調カーブは、前記第1の入出力特性を有する階調カーブと前記第2の入出力特性を有する階調カーブとを合成した第3の入出力特性を有する階調カーブよりも直線に近い形状を有する
ことを特徴とする画像処理プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−56646(P2010−56646A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216890(P2008−216890)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】