説明

画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】ブロックひずみおよびモスキート雑音の除去を適切に行う。
【解決手段】入力画像としてのDCT圧縮画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離するTotal Variation フィルタ10と、成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うDEF(Deblocking Edge Filter)12と、骨格成分よりエッジの検出を行うSobelフィルタ14と、エッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うGaussianフィルタ16と、ブロックひずみおよびモスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と骨格成分とを合成し、復元画像を得る成分合成部18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理プログラムに関し、特に画像の雑音除去を行うものに関する。
【背景技術】
【0002】
画像信号処理において、Total Variation フィルタを用いた雑音除去は、低圧縮時の雑音を効率的に除去することができる。しかし、圧縮率を高くした場合、より多くの雑音が圧縮画像に含まれるため、画質を劣化させることなく雑音を除去することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−20605号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】F.Alter, S.Durand and J.Froment, "Adapted total variation for artifact free decompression of JPEG images",J.Mathematical Imaging and Vision,Vol.23,No.2,pp.199-211,Sep.2005.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1による画像の雑音除去では、モスキート雑音の除去は可能であるが、ブロックひずみの除去は考慮できていない。また、非特許文献1のTotal Variation フィルタを用いた雑音除去では、DCT(Discrete Cosine Transform)係数に対する全変動を最小化するため、ブロックひずみ除去が不十分となる問題がある。また、DCT係数に対する全変動を最小化するため、テクスチャ成分が失われ、ぼけた画像となる問題がある。
【0006】
本発明は上記点に鑑みて、ブロックひずみおよびモスキート雑音の除去を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、
入力画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離する成分分離手段と、
前記成分分離手段にて成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うブロックひずみ除去手段と、
前記成分分離手段にて成分分離された骨格成分よりエッジの検出を行うエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段にて検出されたエッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うモスキート雑音除去手段と、
前記ブロックひずみおよび前記モスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と前記骨格成分とを合成し復元画像を得る手段と、を備えた画像処理装置を特徴とする。
【0008】
また請求項2に記載の発明は、
コンピュータを、
入力画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離する成分分離手段と、
前記成分分離手段にて成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うブロックひずみ除去手段と、
前記成分分離手段にて成分分離された骨格成分よりエッジの検出を行うエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段にて検出されたエッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うモスキート雑音除去手段と、
前記ブロックひずみおよび前記モスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と前記骨格成分とを合成し復元画像を得る手段として機能させる画像処理プログラムを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1に、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成を示す。この画像処理装置は、入力画像としてのDCT圧縮画像を画像の骨格成分とテクスチャ成分に成分分離するTotal Variation フィルタ10と、成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うDEF(Deblocking Edge Filter)12と、骨格成分よりエッジの検出を行うSobelフィルタ14と、エッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うGaussianフィルタ16と、ブロックひずみおよびモスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と骨格成分とを合成し、復元画像を得る成分合成部18と、を備えている。
この画像処理装置は、次のように作動する。入力画像としてのDCT圧縮画像はTotal Variation フィルタ10によって骨格成分とテクスチャ成分に成分分離される。骨格成分には滑らかな輝度値変化をする信号とエッジ成分が含まれ、テクスチャ成分には細かく振動する信号が含まれる。DCT圧縮雑音は、テクスチャ成分に含まれる。
【0011】
分離されたテクスチャ成分に対しDEF12を通すことによりブロックひずみが除去される。このDEF12については、非特許文献である、ITU-T. "Video coding for low bit rate communication, 1998に開示されている。
【0012】
モスキート雑音は、エッジ信号の周辺に現れるため、Sobelフィルタ14によって骨格成分からエッジ信号を検出し、検出されたエッジ信号の周りの画素をGaussianフィルタ16によってフィルタリングすることでモスキート雑音の除去を行う。
【0013】
ブロックひずみおよびモスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と骨格成分は成分合成部18にて合成され、復元画像が得られる。
【0014】
この実施形態によれば、Total Variation フィルタによる成分分離後のテクスチャ成分に対してDEFを行うことでブロックひずみの除去を効果的に行うことができ、エッジ近辺に発生するモスキート雑音をGaussian フィルタを用いて効果的に除去でき、エッジの検出によってGaussian フィルタをかける画素を選択することで、雑音除去時にテクスチャ成分の除去が極力抑えられるため、復元画像においてぼけを発生しにくくすることができ、JPEG、MPEG、MPEG-II、H.264といったDCT圧縮画像に混入した雑音を効果的に除去することができる。
【0015】
なお、図1に示す画像処理装置は、コンピュータを用いたソフトウェアにより実現することができる。その際、図1に示す各構成部は、それぞれの機能を実現するための手段として把握され、それらにより画像処理プログラムが構成される。つまり、入力画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離する成分分離手段と、成分分離手段にて成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うブロックひずみ除去手段と、成分分離手段にて成分分離された骨格成分よりエッジの検出を行うエッジ検出手段と、エッジ検出手段にて検出されたエッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うモスキート雑音除去手段と、ブロックひずみおよびモスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と骨格成分とを合成し復元画像を得る手段として、コンピュータを機能させる画像処理プログラムとして構成される。
【0016】
また、本発明は上記した実施形態に記載のものに限定されるものではなく、成分分離手段、ブロックひずみ除去手段、エッジ検出手段、モスキート雑音除去手段としては、それぞれの機能を実現できるものであれば、Total Variation フィルタ、DEF、Sobelフィルタ、Gaussianフィルタ以外のものをそれぞれ用いてもよい。
【符号の説明】
【0017】
10 Total Variation フィルタ
12 DEF
14 Sobelフィルタ
16 Gaussianフィルタ
18 成分合成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離する成分分離手段と、
前記成分分離手段にて成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うブロックひずみ除去手段と、
前記成分分離手段にて成分分離された骨格成分よりエッジの検出を行うエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段にて検出されたエッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うモスキート雑音除去手段と、
前記ブロックひずみおよび前記モスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と前記骨格成分とを合成し復元画像を得る手段と、を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
コンピュータを、
入力画像を骨格成分とテクスチャ成分に成分分離する成分分離手段と、
前記成分分離手段にて成分分離されたテクスチャ成分に対しブロックひずみ除去を行うブロックひずみ除去手段と、
前記成分分離手段にて成分分離された骨格成分よりエッジの検出を行うエッジ検出手段と、
前記エッジ検出手段にて検出されたエッジの周りの画素に対してモスキート雑音の除去を行うモスキート雑音除去手段と、
前記ブロックひずみおよび前記モスキート雑音が除去されたテクスチャ成分と前記骨格成分とを合成し復元画像を得る手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−182093(P2011−182093A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42634(P2010−42634)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】