説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報から副情報を高速に安定して抽出することが可能となり、抽出処理時間を削減し得る画像処理装置を提供する。
【解決手段】主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録するとともに、当該可視状態で記録された合成画像情報に対し、さらに副情報の抽出を補助するための抽出補助情報としてのコード情報を不可視状態で重ねて記録し、抽出処理では、可視状態で記録された副情報を含む合成画像情報と不可視状態で記録された抽出補助情報としてのコード情報の両方を用いることで副情報を抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば、記録媒体に出力するようなアナログ情報を対象として、可視状態の主画像情報(顔画像等)に対し付加的な副情報(セキュリティ情報等)を不可視状態で埋込むことによって作成された合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録し、この記録媒体上に記録された合成画像情報を読取り、この読取った合成画像情報から上記副情報を抽出する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の電子化やインターネットの普及に伴って、画像の偽造や変造防止のために電子透かし、電子署名などの技術が重要視されるようになってきた。特に、主画像情報に付加的な副情報を不可視状態で埋め込む電子透かし技術は、IDカードなどの個人認証媒体や著作権情報を埋め込んだ写真に対する不正コピー、偽造、改ざん対策として提案されている。
【0003】
たとえば、記録物へ出力される画像データに対して、人間が感知しにくい高い空間周波数成分および色差成分の特性を利用して人間の分別能力外にすることにより、データを埋め込む電子透かし挿入方法が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
また、光学フィルタで確認できる電子透かしの記録装置が知られている(たとえば、特許文献2参照)。
【0004】
これらの電子透かし埋め込み処理方式では、
(1) 人間の視覚特性を利用
・画像の周波数が高くなるほど階調識別能力が低下
・輝度情報よりも色差情報の方が判別困難
(2) 補色の関係 例…赤色+シアン色=無彩色(白)(加法混色の場合)
(3) 高周波キャリアパターン画像に補色の関係及び色差情報を適用(色差変調処理)
を用いることにより、画質劣化を招くことなく、主画像情報に副情報(副画像情報)を不可視状態で埋め込むことを可能にしている。
【0005】
上記(2)の例でいえば、赤色とシアン色(=緑色+青色)は、加法混色の場合、補色の関係にあり、赤色とシアン色とが隣り合っていても人間の目には判別しにくく無彩色に見える。
【0006】
上記(3)の例のように、高周波キャリアパターンを用いることで、赤色リッチな画素とシアン色リッチな画素が繰り返し配置されるため、人間の目ではこれらの細かな色差の違いを識別できず、色差量はプラスマイナス「0」と判断してしまう人間の視覚特性を利用している。
【0007】
もし、上記電子透かし技術を適用した画像が記録された記録物の真偽判定が必要になった場合は、上記特許文献等に記載されている復元処理を鍵情報を利用して行ない、不可視状態で記録されていた副情報を抽出することにより、真偽判定が行なわれる。
【0008】
具体的には、まず、スキャナやデジタルカメラ等の画像入力デバイスを用いて、カードなどの記録物に記録された、色差情報として副情報を埋め込んだ合成画像情報をデジタル情報として読取る。次に、鍵情報の特定周波数の情報に応じた周波数成分を有するデジタルフィルタを合成画像情報に施すことにより、色差情報として埋め込まれた副情報を復元する。最後に、復元により得られた結果から真偽判定を行なう。
【特許文献1】特開平9−248935号公報
【特許文献2】特開2001−268346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、記録媒体に記録された電子透かし入り画像情報を読取り、上記方式を使って復元処理をした場合、読取時の色変化、入力レンジ、解像度、位置、傾き、および、記録媒体が持つ下地などの影響により復元性能は悪化する。よりよい復元抽出結果を得るためには上記影響要因を改善する必要があるが、使用環境を考えた場合、制御できない要因が多い。このため、制御可能な解像度を上げ、高解像度読取り画像を用いることとなるが、抽出処理には多大な時間がかかるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報から副情報を高速に安定して抽出することが可能となり、抽出処理時間を削減し得る画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の画像処理装置は、可視状態の主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋込むことによって作成された合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録し、この記録媒体上に記録された合成画像情報を読取り、この読取った合成画像情報から前記副情報を抽出する画像処理装置において、主画像情報に対して2値または多値の濃淡画像で表現されるコード情報で構成された副情報を不可視状態で埋込むことにより合成画像情報を作成する合成画像生成手段と、前記合成画像情報から副情報の抽出を補助するためのコード情報を生成する抽出補助情報生成手段と、前記合成画像生成手段により生成された合成画像情報を記録媒体上に可視材料を用いて記録する可視情報記録手段と、前記抽出補助情報生成手段により生成されたコード情報を、前記可視情報記録手段により記録された合成画像情報に重ねて不可視材料を用いて記録する不可視情報記録手段と、前記可視情報記録手段により記録媒体上に記録された合成画像情報を読取る可視情報読取手段と、前記不可視情報記録手段により記録媒体上に記録されたコード情報を読取る不可視情報読取手段と、前記不可視情報読取手段により読取られたコード情報から、合成画像情報から副情報を抽出するために必要な抽出補助情報を復元する抽出補助情報復元手段と、この抽出補助情報復元手段により復元された抽出補助情報を用いて、前記可視情報読取手段により読取られた合成画像情報から副情報を抽出する副情報抽出手段とを具備している。
【0012】
また、本発明の画像処理方法は、可視状態の主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋込むことによって作成された合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録し、この記録媒体上に記録された合成画像情報を読取り、この読取った合成画像情報から前記副情報を抽出する画像処理方法において、主画像情報に対して2値または多値の濃淡画像で表現されるコード情報で構成された副情報を不可視状態で埋込むことにより合成画像情報を作成する合成画像生成ステップと、前記合成画像情報から副情報の抽出を補助するためのコード情報を生成する抽出補助情報生成ステップと、前記合成画像生成ステップにより生成された合成画像情報を記録媒体上に可視材料を用いて記録する可視情報記録ステップと、前記抽出補助情報生成ステップにより生成されたコード情報を、前記可視情報記録ステップにより記録された合成画像情報に重ねて不可視材料を用いて記録する不可視情報記録ステップと、前記可視情報記録ステップにより記録媒体上に記録された合成画像情報を読取る可視情報読取ステップと、前記不可視情報記録ステップにより記録媒体上に記録されたコード情報を読取る不可視情報読取ステップと、前記不可視情報読取ステップにより読取られたコード情報から、合成画像情報から副情報を抽出するために必要な抽出補助情報を復元する抽出補助情報復元ステップと、この抽出補助情報復元ステップにより復元された抽出補助情報を用いて、前記可視情報読取ステップにより読取られた合成画像情報から副情報を抽出する副情報抽出ステップとを具備している。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報から副情報を高速に安定して抽出することが可能となり、抽出処理時間を削減し得る画像処理装置および画像処理方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る画像処理装置および画像処理方法が適用される画像処理システムの構成を概略的に示すものである。この画像処理システムは、大きく分けて画像入力手段としての画像入力装置11、記録手段としてのプリンタ12、各種処理を行なう計算機13、および、これら画像入力装置11、プリンタ12と計算機13とを通信可能に接続する双方向通信手段14,15によって構成されている。
【0015】
画像入力装置11は、写真(印刷物)P1上の顔画像などの多階調画像をR(赤)、G(緑)、B(青)のデジタル画像として入力するもので、たとえば、デジタルカメラ、ビデオカメラやフラットベッドスキャナなどで構成されている。本実施の形態では、たとえば、スキャナを用いている。
【0016】
プリンタ12は、多階調画像や文字などの2値画像を記録媒体に記録することにより、IDカードなどの個人認証媒体として用いられる記録物P2を出力するもので、可視画像記録部12aおよび不可視画像記録部12bを有しており、本実施の形態では専用の中間転写方式のプリンタとしている。
【0017】
計算機13は、画像入力装置11によって入力された多階調画像情報に対して色変換処理などの記録用画像処理を行なう記録用画像処理手段としての記録用画像処理部16、記録用画像処理部16により記録用画像処理された多階調画像情報に対して、人間の肉眼で不可視状態で副情報を埋め込むことにより合成画像情報を作成する合成画像生成手段としての電子透かし埋め込み部17、および、電子透かし埋め込み部17で使用した情報を基に、取得した記録媒体上の合成画像情報から副情報を抽出する処理を補助するための情報に加工し、かつ、2次元バーコード(以下、2DBCと称する)などのコード情報に変換する抽出補助情報生成手段としての抽出補助情報生成部18を有して構成される。
【0018】
ここに、計算機13は、たとえば、パーソナルコンピュータ(以降、単にパソコンと略称する)であってもよいし、CPU、半導体メモリ、ハードディスク装置、画像キャプチャーボードなどから構成される専用のボードであってもよく、本実施の形態ではパソコンを用いている。
【0019】
なお、本実施の形態における記録用画像処理部16、電子透かし埋め込み部17、および、抽出補助情報生成部18は、パソコンで動作するアプリケーションプログラムの一部によって構成されている。
【0020】
双方向通信手段14,15は、たとえば、USBやSCSIなどの信号を双方向に通信できる手段であればなんでもよく、本実施の形態ではUSB2.0を用いている。
【0021】
以下、このように構成された画像処理システムの全体的な処理動作について説明する。
まず、画像入力装置11により顔画像などの多階調画像を入力する。ここで、多階調画像は、たとえば、写真(印刷物)P1上のカラー顔画像とするが、これに限定されるものではない。入力された画像情報は、計算機13において、アプリケーションプログラムの一部である前処理、記録用画像処理、電子透かし埋め込み処理、抽出用補助情報生成処理、後処理が順次施され、プリンタ12へと送られる。
【0022】
すなわち、まず、記録用画像処理部16では、画像入力装置11により入力された顔画像に対し色変換処理が行なわれる。たとえば、デジタルカメラなどの画像入力系で用いているレッド、グリーン、ブルー(以降、R、G、Bと称す)の画像情報を、プリンタで持ちられるシアン、マゼンタ、イエロー(以降、C、M、Yと称す)の画像情報に変換する色変換処理などが行なわれる。こうして記録用色変換処理が施された顔画像は、電子透かし埋め込み部17に送られる。
【0023】
電子透かし埋め込み部17では、記録用画像処理部16で記録用色変換処理が施された顔画像に対し、副情報が人間に認知されない形で埋め込まれる。こうして電子透かし埋め込み処理が施された顔画像は、抽出補助情報生成部18に送られる。
【0024】
抽出補助情報生成部18では、電子透かし埋め込み処理で使用した情報を基に、記録媒体上の合成画像情報をなんらかの方法で読取り副情報を抽出する処理の鍵となる情報に加工し、かつ、その情報がわからないように2DBCなどの情報に変換したコード情報が生成される。
【0025】
電子透かし埋め込み部17で電子透かし埋め込み処理された顔画像、および、抽出補助情報生成部18で生成された抽出補助情報としてのコード情報は、それぞれプリンタ12に送られる。プリンタ12では、副情報が埋め込まれた顔画像は可視波長で透過で、かつ、不可視波長で透過の特徴を持つ材料にて記録媒体上に記録され、抽出補助情報としてのコード情報は可視波長で透過で、かつ、不可視波長で反射の特性を有する材料にて顔画像の上に重ねて記録される。この記録処理により、IDカードなどの記録物P2が得られる。
【0026】
ここで、電子透かし埋め込み処理と副情報の復元処理(抽出処理)について説明する。
まず、簡単のため、デジタルデータを用いた電子透かし埋め込み処理および副情報の復元処理の原理について説明する。
【0027】
背景技術の欄で説明したように、色差を利用した電子透かし埋め込み処理の技術では、8ビットのデジタルデータから色差量を足すか引くかなどして副情報を埋め込んでいる。また、副情報を復元(抽出)するための処理は、デジタルバンドパスフィルタ処理により行なわれる。本実施の形態で用いている色差として副情報を埋め込む電子透かし技術は、高周波キャリアパターンの画像に色差を重畳することにより副情報を埋め込んでいる。このため、キャリアパターンの周波数のみを通すバンドパスフィルタにより副情報を抽出することができる。
【0028】
キャリアパターンの色差、つまりキャリアパターンの振幅が大きいほど、バンドパスフィルタで通りやすくなり、復元性は向上する。復元性を向上させるためには、色差を増やす必要があるが、色差を増やすとキャリアパターンが人間の目に認知できるようになってしまうため、画質が劣化する。
【0029】
次に、デジタルデータではなく、電子透かしを記録した記録媒体(アナログデータ)からの副情報の復元(抽出)について説明する。
電子透かしを記録した記録媒体からの副情報の復元は、電子透かしが埋め込まれた記録媒体の画像の取得手段によりデジタル化された情報に対し、上記デジタルデータと同様、周波数フィルタを施すことで副情報を復元する。その復元結果は、種々の原因によりデジタルデータのそれよりも一般的に悪い。
【0030】
劣化の要因としては、
(1) 記録処理(色変換、階調処理など)、記録方法(面積階調変換など)による媒体に記録する処理までのものと、
(2) 記録媒体自体が持つ下地記録、紙の繊維などのノイズ、
(3) 記録媒体からの画像入力時の階調、色再現性、角度、歪み、色再現性などの画像入力部に起因するものがある。
【0031】
復元処理を同じで考えた場合、復元性を向上させるためには、上記(1)〜(3)の部分を改善する必要がある。(1)は記録方式にしたがい色再現性など最適化されており、また、(2)は記録媒体が持つ特性のため変更できない。そのため、現状、ある程度の復元結果を確保するため、解像度を上げて画像情報を取得することで相対的に情報量を上げ、復元処理を行なっている。しかし、情報量が多いため処理時間が多くかかる問題がある。
【0032】
そこで、本実施の形態では、主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録するとともに、当該可視状態で記録された合成画像情報に対し、さらに副情報の抽出を補助するための抽出補助情報を不可視状態で重ねて記録し、抽出処理では、可視状態で記録された副情報を含む合成画像情報と不可視状態で記録された抽出補助情報の両方を用いることで副情報を高速に安定して抽出するものである。
【0033】
以下、本実施の形態に係る画像処理システムの記録物出力までの処理について図2に示す流れ図を参照して説明する。
【0034】
まず、スキャナ入力処理201あるいはカメラ撮影処理202により主画像情報101を取得する。次に、パターン画像入力処理203あるいはパターン画像作成処理204により埋め込まれる副情報となるパターン画像情報102を取得する。これらの処理は画像入力装置11により行なわれる。
【0035】
次に、計算機13において、上記処理により得られた主画像情報101およびパターン画像情報102を用い、前述した色差を用いた合成処理(電子透かし埋め込み処理)205を行なうことで合成画像情報103を生成する。
【0036】
また、主画像情報101およびまたはパターン画像情報102を用いて、抽出補助情報生成処理206を行なうことで、記録媒体上の合成画像情報を読取り副情報を復元する際に利用する情報を生成し、さらに2DBCなどのコード化を行なうことで、抽出補助情報としてのコード情報104を生成する。ここでは、副情報の復元時に利用する抽出補助情報としてのコード情報104は、合成処理205で使用する周波数キャリアパターンとし、キャリアパターン画像の情報を2DBC化したものとして説明する。
【0037】
次に、合成画像情報103およびコード情報104をプリンタ12に送り、記録処理207を行なう。このとき、合成画像情報103は、可視波長で反射/不可視波長で透過する材料で記録を行なう可視画像記録処理208(可視画像記録部12a)で記録を行ない、コード情報104は、可視波長で透過/不可視波長で反射する材料で記録を行なう不可視画像記録処理209(不可視画像記録部12b)により、可視画像記録処理208で記録した合成画像情報103の上に重ねて記録を行なう。これらの記録処理を行なうことで、記録媒体105(記録物P2)を得る。
【0038】
図3、図4は、本実施の形態に係る画像処理システムにおける記録媒体から電子透かし埋め込みの合成画像情報を読取り、副情報を復元(抽出)するまでの処理の流れを示すものであり、以下、それについて説明する。
【0039】
まず、記録媒体301(記録媒体105)の副情報を含む合成画像情報が記録された領域について、可視情報読取処理401により可視画像を取得することで合成画像情報302を得る。次に、読取位置をずらさず、そのままの状態で、不可視画像読取処理402により抽出補助情報である不可視画像(コード情報)303を得る。具体的には、R,G,Bおよび不可視帯域に感度を持つ4つのセルを有する撮像素子で所望の解像度のそれぞれの画像を取得することができる。
【0040】
次に、取得したコード情報303から、抽出情報復元処理403により、決められたコード復元手順にしたがい復元を行なうことで、副情報の復元に必要な情報(マスク画像)304を得る。ここでは、前記抽出補助情報生成処理206での例えに合わせるため、復元されたマスク画像304は周波数キャリアパターン画像であるものとする。
【0041】
次に、合成画像情報302およびマスク画像304を入力として、差分画像生成処理404により差分画像305を生成する。記録時に可視画像および不可視画像を重畳して記録しているためマスク位置の探索などを実施することなく効率よく必要な差分画像305を生成することができる。今回は抽出用マスク画像304があるため、合成画像302を抽出用マスク画像304でマスクするものとする。この処理により差分画像305が生成される。
【0042】
最後に、副情報抽出処理405を行なうことで、差分画像305から副情報を抽出する。
【0043】
図5〜図7は、副情報抽出処理405を説明する模式図でであり、以下、それについて説明する。
【0044】
先に説明しているように、本実施の形態で利用する色差を用いた電子透かし埋め込み方法は周波数情報を持っている。図6に示すように、網点で示す赤色画素RSと斜線で示すシアン色画素CSで構成される4画素単位の周期がそれに相当する。ここでは、8×8画素を1ブロックとし、周波数の方向を90度変えることでブロックごとに「1」、「0」の情報を持たせており、左のブロックから「1」、「0」、「1」という副情報を得ることができる。
【0045】
実際の処理で上記副情報を得る方法を説明する。まず、図6に示す合成画像情報に対し図5に示すようなマスク画像(交差斜線部Maはマスクが閉じている部分、白色部Mbはマスクが開いている部分を示す)を重ね合わせると、図7に示すような画像を得ることができる。図7において、マスク画像のマスクが開いている部分(白色部Mb)の横4つの画素を見ると、シアン色画素CSが連続している部分Aと、シアン色画素CSと赤色画素RSが交互に出現する部分Bが存在することになる。この連続性を、隣接画素との色差計算を行ない、大きな値となった場合は「0」、そうでない場合は「1」と判定すれば、上記と同じ結果を得ることができる。具体的には、たとえば、図7に示すように、ΔE1,ΔE2,ΔE3,ΔE3,ΔE5,ΔE6,ΔE7,ΔE8,…の計算を行ない、
ΔE1<ΔE3:1
ΔE5>ΔE7:0
の比較判定を行なう。
【0046】
図8は、本実施の形態に係るプリンタ12における画像記録層構成の具体例を示すものである。これは、フィルムに画像を形成したのち当該画像を紙に転写する中間転写方式の画像形成方式を用いたもので、フィルム上にシアン、マゼンタ、イエローで可視画像を形成し、画像と媒体との接着性を保つ目的で接着層を介して媒体に形成された像の断面を示したものである。
【0047】
具体的には、媒体508の上にシアン、マゼンタ、イエローで構成される画像と媒体との間の接着性を確保するための接着層507、画像を形成するためのイエロー層(Y、赤外透過)506、マゼンタ層(M、赤外透過)505、シアン層(C、赤外透過)504、像を形成する基礎となる受像層503、形成された画像を外部から守るための保護層502が順に積層された形となっており、これらを合わせて記録媒体501(記録媒体105)を構成している。そして、この例では、接着層507がIR(可視透過、赤外吸収)層を兼ねるように構成し、当該接着層507に不可視情報(抽出補助情報としてのコード情報)を記録するようにしている。
【0048】
なお、前記実施の形態では、主画像情報の入力手段としてスキャナやカメラを用いた場合について説明したが、電子化されたデータを得る画像入力手段であればこれに限らない。
また、主画像情報を人物顔画像としているが、これに限るものではない。
【0049】
また、抽出補助情報としてのコード情報に含まれる情報は、合成画像生成時に使用する周波数キャリアパターンとしているが、副情報抽出の助けになる情報であればよく、合成時に使用する主画像情報であっても同様の効果がある。
また、抽出補助情報としてのコード情報のコード化を2DBCとしているが、その他のコード体系でもなんら問題ない。
【0050】
また、記録処理207内で可視画像記録処理208を行なった後に不可視画像記録処理209を行なっているが、この順番を変更しても効果は変わらない。
また、記録媒体からの画像読取時、可視情報読取処理401の後に不可視画像読取処理402を行なっているが、この順番を変更しても効果は変わらない。
【0051】
また、画像読取時の具体的方法として、R,G,Bおよび不可視帯域に感度を持つセルを有する撮像素子での取得としているが、セル自体はブロードの感度を持ち、光源でそれぞれの画像を取得して必要に応じて合成する方法でもなんら問題ない。
【0052】
また、差分画像生成処理404の具体的処理として、マスク処理としたがこれに限るものではない。抽出補助情報に差分画像処理の方法と差分の基となるデータを持つことで、どのようにも変更できる。
【0053】
以上説明したように、上記実施の形態によれば、主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録するとともに、当該可視状態で記録された合成画像情報に対し、さらに副情報の抽出を補助するための抽出補助情報としてのコード情報を不可視状態で重ねて記録し、抽出処理では、可視状態で記録された副情報を含む合成画像情報と不可視状態で記録された抽出補助情報としてのコード情報の両方を用いることで副情報を抽出することにより、主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋め込んだ合成画像情報から副情報を高速に安定して抽出することが可能となり、抽出処理時間を削減し得る。
【0054】
また、抽出補助情報をコード化しているため、記録処理問題が発生して一部欠損してしまった場合でも、抽出補助情報を生成することが可能であるという別の効果もある。
また、抽出補助情報をコード化しているため、抽出補助情報を簡単には確認することができないので、副情報の抽出から埋め込み方式の推定ができず、セキュリティ性向上も見込める。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る画像処理装置および画像処理方法が適用される画像処理システムの構成を概略的に示すブロック図。
【図2】画像処理システムの記録物出力までの処理の流れを説明する流れ図。
【図3】記録媒体から電子透かし埋め込みの合成画像情報を読取り、副情報を復元(抽出)するまでの処理の流れを説明するフローチャート。
【図4】記録媒体から電子透かし埋め込みの合成画像情報を読取り、副情報を復元(抽出)するまでの処理の流れを説明する流れ図。
【図5】抽出用マスク画像の指定エリアの拡大図。
【図6】合成画像情報の指定エリアの拡大図。
【図7】差分画像生成処理を行なった後の差分画像の指定エリアの拡大図。
【図8】プリンタにおける画像記録層構成の具体例を示す模式図。
【符号の説明】
【0056】
P1…写真(印刷物)、P2…記録物、11…画像入力装置(画像入力手段)、12…プリンタ(記録手段)、12a…可視画像記録部、12b…不可視画像記録部、13…計算機、14,15…双方向通信手段、16…記録用画像処理部(記録用画像処理手段)、17…電子透かし埋め込み部(合成画像生成手段)、18…抽出補助情報生成部(出補助情報生成手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視状態の主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋込むことによって作成された合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録し、この記録媒体上に記録された合成画像情報を読取り、この読取った合成画像情報から前記副情報を抽出する画像処理装置において、
主画像情報に対して2値または多値の濃淡画像で表現されるコード情報で構成された副情報を不可視状態で埋込むことにより合成画像情報を作成する合成画像生成手段と、
前記合成画像情報から副情報の抽出を補助するためのコード情報を生成する抽出補助情報生成手段と、
前記合成画像生成手段により生成された合成画像情報を記録媒体上に可視材料を用いて記録する可視情報記録手段と、
前記抽出補助情報生成手段により生成されたコード情報を、前記可視情報記録手段により記録された合成画像情報に重ねて不可視材料を用いて記録する不可視情報記録手段と、
前記可視情報記録手段により記録媒体上に記録された合成画像情報を読取る可視情報読取手段と、
前記不可視情報記録手段により記録媒体上に記録されたコード情報を読取る不可視情報読取手段と、
前記不可視情報読取手段により読取られたコード情報から、合成画像情報から副情報を抽出するために必要な抽出補助情報を復元する抽出補助情報復元手段と、
この抽出補助情報復元手段により復元された抽出補助情報を用いて、前記可視情報読取手段により読取られた合成画像情報から副情報を抽出する副情報抽出手段と、
を具備したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記抽出補助情報生成手段で生成される抽出補助情報は、前記合成画像生成手段で必要となる主画像情報および空間周波数情報のうち少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記副情報抽出手段は、
前記可視情報読取手段により読取られた合成画像情報から、前記抽出補助情報復元手段により得られた抽出補助情報を用いて差分画像を生成する差分画像生成手段と、
この差分画像生成手段により生成された差分画像から周囲データとの色差計算を行なう色差計算手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記不可視情報記録手段は、中間転写媒体に画像情報を形成した後、その形成した画像情報を記録媒体に転写する中間転写方式の画像形成方式で、中間転写媒体上に形成されたシアン、マゼンタ、イエローで構成される画像と中間転写媒体との接着性を保つ目的で利用されている接着剤にて記録されることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
可視状態の主画像情報に対し付加的な副情報を不可視状態で埋込むことによって作成された合成画像情報を記録媒体上に可視状態で記録し、この記録媒体上に記録された合成画像情報を読取り、この読取った合成画像情報から前記副情報を抽出する画像処理方法において、
主画像情報に対して2値または多値の濃淡画像で表現されるコード情報で構成された副情報を不可視状態で埋込むことにより合成画像情報を作成する合成画像生成ステップと、
前記合成画像情報から副情報の抽出を補助するためのコード情報を生成する抽出補助情報生成ステップと、
前記合成画像生成ステップにより生成された合成画像情報を記録媒体上に可視材料を用いて記録する可視情報記録ステップと、
前記抽出補助情報生成ステップにより生成されたコード情報を、前記可視情報記録ステップにより記録された合成画像情報に重ねて不可視材料を用いて記録する不可視情報記録ステップと、
前記可視情報記録ステップにより記録媒体上に記録された合成画像情報を読取る可視情報読取ステップと、
前記不可視情報記録ステップにより記録媒体上に記録されたコード情報を読取る不可視情報読取ステップと、
前記不可視情報読取ステップにより読取られたコード情報から、合成画像情報から副情報を抽出するために必要な抽出補助情報を復元する抽出補助情報復元ステップと、
この抽出補助情報復元ステップにより復元された抽出補助情報を用いて、前記可視情報読取ステップにより読取られた合成画像情報から副情報を抽出する副情報抽出ステップと、
を具備したことを特徴とする画像処理方法。
【請求項6】
前記抽出補助情報生成ステップで生成される抽出補助情報は、前記合成画像生成ステップで必要となる主画像情報および空間周波数情報のうち少なくともいずれか一方であることを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。
【請求項7】
前記副情報抽出ステップは、
前記可視情報読取ステップにより読取られた合成画像情報から、前記抽出補助情報復元ステップにより得られた抽出補助情報を用いて差分画像を生成する差分画像生成ステップと、
この差分画像生成ステップにより生成された差分画像から周囲データとの色差計算を行なう色差計算ステップと、
を具備したことを特徴とする請求項5記載の画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−33443(P2009−33443A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194819(P2007−194819)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】