説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】 印字して背景色に侵食されてもはっきりと確認できる文字の太さが得られ、適切なレベルの膨張処理を行うことができ、過度の膨張を抑えることができる画像処理装置の提供。
【解決手段】 画像処理装置は入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出部3と、文字エッジ検出部3で検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定部4と、白抜き文字判定部4で白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、白抜き文字の外エッジの白レベルと、白抜き文字の外エッジの白レベルと白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理部5と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像処理方法に関し、特に黒または高濃度を背景とした白または低濃度の文字(以下、「白抜き文字」と表示する)に膨張処理を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する画像処理装置および画像処理方法では、白抜き文字を印字すると、背景色に浸食されて白抜き文字が細くなり、あるいはつぶれてしまうことがある。特にサイズの小さい白抜き文字は、読み取りが困難になることがある。その解決方法として白抜き文字を膨張させる画像処理方法の一例が知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
まず、特許文献1には白抜き文字の周囲2画素の背景を文字のデータに変えることで膨張処理を行う白抜き文字膨張処理が記載されている。また、特許文献2には用意した膨張処理フィルタによって、白抜き文字の周囲3画素に対して膨張処理を行う白抜き文字膨張処理が記載されている。また、特許文献3にはビットマップデータおよびタグ情報を受け取ると、たとえば3X3画素程度のエッジ抽出フィルタを用いてエッジ抽出処理を行う画像処理装置が記載されている。また、特許文献4には画像処理方法で生成された画像データを出力する画像形式装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290212号公報
【特許文献2】特開2008−114556号公報
【特許文献3】特開2006−262204号公報
【特許文献4】特開2007−125826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術では、周囲2画素すべてに処理を行っているのではなく背景の画像データから膨張度合を計算し、その結果によって周囲2画素のうち処理を行う画素と行わない画素を分けている。そのためこの処理では白抜き文字の周囲2画素が歯抜けの状態(ギザギザの状態)になり、その結果画質の劣化につながるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の技術では、この膨張処理フィルタによる膨張処理は、白抜き文字の周囲が白抜き文字色と背景色とのまだらの状態になり、その結果画質の劣化につながるという問題がある。
【0007】
また、この文献2に記載の技術では膨張処理の特徴上、真の白文字(R=G=B=255)にしか対応していないはずである。この文献の段落0076に「色文字について応用することも可能である」と記載されているが、文字に色がついたとき背景が有色であったとしても、それに膨張処理が必要な抜き文字であるかの判定の説明は一切記載されていない。
【0008】
たとえば、文字がおおよそ黒の色文字で背景が薄いグレーならば抜き文字とは言えず、膨張処理は必要ないはずである。これに対し、本発明では文字に色が付いたとき、膨張処理が必要か否かの判断基準についても説明している。
【0009】
また、この文献2に記載の技術では、膨張処理の特徴上、明言は避けているが、一色の背景上の文字にしか対応していないはずである。つまり、様々に色が変化する写真上の文字等には対応していない。これに対し、本発明では一つの文字に背景色が複数あった場合でも、適切な膨張処理を行っている。
【0010】
また、特許文献3に記載の技術は、本発明の「画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する」技術に対応するが、これは公知の技術である。また、特許文献4に記載の技術は、画像処理方法で処理した画像データを紙に出力する画像形式装置であり、本発明とは目的が全く異なる。
【0011】
そこで、本発明の目的は、印字して背景色に侵食されてもはっきりと確認できる文字の太さが得られ、適切なレベルの膨張処理を行うことができ、過度の膨張を抑えることができ、さらに真の白文字以外の文字に対して対応が可能で、しかも膨張処理によって歯抜けの状態あるいはまだらの状態を作ることがない画像処理装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、本発明による画像処理装置は、入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出部と、前記文字エッジ検出部で検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定部と、前記白抜き文字判定部で白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理部と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による画像処理方法は、入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出ステップと、前記文字エッジ検出ステップで検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定ステップと、前記白抜き文字判定ステップで白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理ステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明によるプログラムは、コンピュータに、入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出ステップと、前記文字エッジ検出ステップで検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定ステップと、前記白抜き文字判定ステップで白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理ステップと、を実行させるためのものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、印字して背景色に侵食されてもはっきりと確認できる文字の太さが得られ、適切なレベルの膨張処理を行うことができ、過度の膨張を抑えることができ、さらに真の白文字以外の文字に対して対応が可能で、しかも膨張処理によって歯抜けの状態あるいはまだらの状態を作るのを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】タグデータと属性の一例を示す図である。
【図3】文字エッジ検出に用いる画素の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る画像処理装置の画像処理方法の一例を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係る画像処理方法を実行するための画像処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】文字と背景に対する外エッジと内エッジ領域の一例を示す図である。
【図7】エッジ検出方法の一例を示す模式図である。
【図8】白抜き文字に対する白抜き文字エッジ領域の一例を示す図である。
【図9】エッジ検出に用いる注目画素と上下n−1(nは2以上の整数)画素および左右m−1(mは2以上の整数)画素のデータ参照領域の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明に係る画像処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。同図に示すように本発明に係る画像処理装置は画像データ保存メモリ(データ保存メモリ)1と、タグデータ保存メモリ(タグ保存メモリ)2と、文字エッジ検出部(文字エッジ検出)3と、白抜き文字判定部4と、膨張処理部(膨張処理)5とを含んでいる。なお、タグデータは入力される画像データの写真や文字、図形、表、背景等を示す1画素に対して2〜3ビット程度のデータで、予め作成されているデータである。
【0018】
図2はタグデータと属性の一例を示す図である。同図を参照すると、タグの値が“00”の場合は属性が“背景”であり、タグの値が“01”の場合は属性が“文字”であり、タグの値が“10”の場合は属性が“図”であり、タグの値が“11”の場合は属性が“写真”である場合を示している。
【0019】
図1に戻り、画像データ保存メモリ1は、一例として、注目画素を含む1ラインとその上下4ライン、計5ラインの画像データを保存する。タグデータ保存メモリ2は注目画素の上下4ラインと左右4画素のデータを保存する。
【0020】
図3は文字エッジ検出に用いる画素の一例を示す図である。同図を参照すると、文字エッジ検出部3は、注目画素(同図の斜線部)と、タグデータ保存メモリ2に保存されている上下4画素a1,a2,a6,a5と、左右4画素a7,a8,a4,a3のタグデータより、注目画素が文字のエッジ部であるかを判定する。
【0021】
白抜き文字判定部4は前工程で文字のエッジ部と判定された注目画素に対して、図3に示すように画像データ保存メモリ1に保存されている注目画素とその上下4画素a1,a2,a6,a5、左右4画素a7,a8,a4,a3の画像データにより、白抜き文字のエッジ部であるかを判定する。
【0022】
膨張処理部5は前工程で白抜き文字エッジ部と判定された画素に対して、どの程度の膨張処理を行う情報が格納されているテーブルを参照して膨張処理を行う。
【0023】
次に本発明の第1実施形態の動作について説明する。図4は本発明に係る画像処理装置の画像処理方法の一例を示すフローチャート、図5は本発明に係る画像処理方法を実行するための画像処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0024】
まず、図5を参照して、画像処理方法を実行するための画像処理装置の構成の一例について説明する。なお、図5において図1と同様の構成部分には同一番号を付し、その説明を省略する。図5が図1と異なる点は、制御部11が追加されたことであり、その他の構成は図1と同様である。
【0025】
図5を参照すると、制御部11は画像データ保存メモリ1と、タグデータ保存メモリ2と、文字エッジ検出部3と、白抜き文字判定部4と、膨張処理部5とを制御する。したがって、以下説明する動作は、制御部11が画像データ保存メモリ1と、タグデータ保存メモリ2と、文字エッジ検出部3と、白抜き文字判定部4と、膨張処理部5とを制御することにより実行される。
【0026】
図4を参照すると、画像データ保存メモリ1は入力された画像データの保存を行う( ステップS1) 。また、これと並行して、タグデータ保存メモリ2は入力されたタグデータの保存を行う( ステップS2) 。
【0027】
また、画像データ保存メモリ1は注目画素を含む1ラインと上下4ライン、計5ラインの画像データの入力が完了するまで繰り返しデータを入力して保存を行う( ステップS3) 。また、これと並行して、タグデータ保存メモリ2は注目画素の上下4ラインと左右4画素のタグデータの入力が完了するまで繰り返しデータを入力して保存を行う( ステップS4) 。
【0028】
図6は文字と背景に対する外エッジと内エッジ領域の一例を示す図である。同図を参照すると、左側の図は斜線部の6列が文字を示し、他の空白部分が背景を示している。右側の図は文字エッジ検出後の一例を示しており、文字の内エッジ( 左右2画素) が検出された例を示している。
【0029】
文字エッジ検出部3は、注目画素が膨張処理を行う文字の外側のエッジ部(以下外エッジ)であるかを判定するため、図3に示すように注目画素とその上下4画素、左右4画素の計9画素のタグデータからXOR(エクスクルーシブオア;排他的論理和)を求める。
【0030】
図7はエッジ検出方法の一例を示す模式図である。同図の例に示すようにXORの結果であるエッジ情報が“1”ならばエッジ部と判定されるが、注目画素のタグデータが文字の場合、図6が示すように注目画素は文字の内側のエッジ部(以下内エッジ)となる。そのため注目画素が文字の外エッジと判定されるのは以下の条件のときである。
【0031】
条件1:“エッジ情報が1”であり、かつ“注目画素が文字ではない”であり、かつ“注目画素の上下左右8画素の中に文字がある”である。
【0032】
注目画素が文字の外エッジと判定されなかった場合、文字エッジ検出部3の処理は終了する。また白抜き文字判定部4と膨張処理部5の処理はスルーされ、最終的に入力された画像データのまま出力される。一方、注目画素が文字の外エッジと判定された場合、次工程の白抜き文字判定部4の処理が行われる。
【0033】
図8は白抜き文字に対する白抜き文字エッジ領域の一例を示す図である。白抜き文字判定部4は同図に示すように、文字の外エッジと判定された注目画素が白抜き文字の外エッジであるかを判定するため、注目画素の上下左右8画素で文字である画素に以下の計算を行う( ステップS6) 。
【0034】
WL=a*C+b*M+c*Y+d*K ・・・(1)
上記計算結果のWLはその画素の白レベルを表す値である。Cはシアン、Mはマゼンタ、Yはイエロー、Kはブラックの注目画素の画像データである(0<=C,M,Y,K<=255) 。a,b,c,dは白レベルを求めるための係数で、以下の条件で設定可能とする。
【0035】
条件2:(a+b+c+d=1)であり、かつ(0<=a,b,c,d<=1)である。
【0036】
WLの値が以下を満たすとき注目画素を白文字と判定する。
WL<WTHL ・・・(2)
【0037】
ここに、WTHLは白判定閾値であり、以下の条件で設定可能とする。
0<=WTHL<=255 ・・・(3)
【0038】
注目画素の上下左右8画素のなかに白文字と判定される画素がなかった場合、白抜き文字判定部4の処理は終了する。また膨張処理部5の処理はスルーされ、最終的に入力された画像データのまま出力される。一方、注目画素の上下左右8画素のなかに少なくとも1つ以上白文字と判定された画素がある場合、注目画素は白抜き文字エッジ部と判定され、次工程の膨張処理部5の処理が行われる。
【0039】
膨張処理部5は先ず、白抜き文字エッジ部と判定された注目画素の白レベル(WL1)を求め、その値と、上下左右8画素で白文字と判定された画素の白レベル(WL2)との差分を計算する( ステップS7) 。
【0040】
そのとき、上下左右8画素で白文字と判定された画素が複数存在する場合は、差分の計算に用いる白レベルは以下の4種類から選択可能とする。
(1)白レベルが一番大きい値。
(2)白レベルが一番小さい値。
(3)白レベルの平均値。
(4)上下左右8画素の場所に優先順位をつけ、その順による値。
【0041】
以下の計算で白レベルの差分を求める。
WDIF =|WL1―WL2|0<=WDIF<=255) ・・・(4)
【0042】
膨張処理部5は次に、注目画素が図8に示すように白抜き文字エッジ部の1画素目か2画素目かの判定を行う。図3に示すように注目画素に隣接する画素a2,a4,a6,a8の中に白文字と判定された画素があるときは、注目画素を白抜き文字エッジ部1画素目とする。そうでなければ注目画素を白抜き文字エッジ部2画素目とする。
【0043】
膨張処理部5は最後に、白レベルの差分WDIFと白抜き文字エッジ部が1画素目か2画素目かの情報をもとに膨張処理係数BLT(0<=BLT<=1)を求めて、膨張処理を行う。BLTは、WDIFが取り得る0〜255の256個の値に対応している0〜1までの256個の値が設定可能な膨張処理テーブル(BLTtable)から得られる。
【0044】
膨張処理テーブルの設定の一例として、WDIFが小さい場合は膨張処理を小さくするためにBLTも小さく設定し、逆にWIDFが大きい場合は膨張処理を大きくするためにBLTも大きく設定することが挙げられる。
【0045】
膨張処理テーブルは白抜き文字エッジ部1画素目と2画素目で2面分あり、BLTtable[2][256]のサイズである。なお、BLT[0][X]が白抜き文字エッジ部1画素目用テーブルに対応し、BLT[1][X]が白抜き文字エッジ部2画素目テーブルに対応する。
【0046】
BLT = BLTtable[白抜き文字エッジ部情報][WDIF] (5)
求めたBLTと以下の計算により注目画素に対して膨張処理を行う。
COUT =C1―BLT*(C1―C2) ・・・(6)
MOUT =M1―BLT*(M1―M2) ・・・(7)
YOUT =Y1―BLT*(Y1―Y2) ・・・(8)
KOUT =K1―BLT*(K1―K2) ・・・(9)
【0047】
COUT,MOUT,YOUT,KOUTは膨張処理結果として出力する画像データである(0<=COUT,MOUT,YOUT,KOUT<=255)。C1,M1,Y1,K1は注目画素の画像データである。C2,M2,Y2,K2はWL2を求めた白文字画素の画像データである。膨張処理の結果を出力して膨張処理部5の処理は終了する。
【0048】
なお文字エッジ検出部3において、図3に示すように注目画素とその上下左右8画素のフィルタを用いているが、本発明はこのフィルタが図9に示すような場合も必要なメモリ量を変更して対応することが可能である。図9はエッジ検出に用いる注目画素と上下n−1(nは正の整数)画素および左右m−1(mは正の整数)画素のデータ参照領域の一例を示す図である。
【0049】
以上説明したように、本発明の第1実施形態によれば、以下に記載するような効果を奏する。
【0050】
第1の効果は白抜き文字に対して膨張処理をすることで、印字して背景色に浸食されてもはっきりと確認できる文字の太さを得ることである。
【0051】
第2の効果は文字と背景の白レベルの差からテーブル参照して膨張処理の度合を決めているので、適切なレベルの膨張処理を行うことができることである。
【0052】
第3の効果は白抜き文字エッジ部の1画素目と2画素目に対して別々に処理をしているので、2画素目は膨張度合を小さくしたり、無くしたり設定することができる。そうすることで膨張のやり過ぎを抑えることができることである。
【0053】
第4の効果は真の白文字以外の文字に対して対応ができ、しかも膨張処理によって歯抜けの状態あるいはまだらの状態を作るのを防止することができることである。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態として、文字の背景が写真であるときの文字強調が考えられる。濃度変化の激しい写真を背景とする文字は濃度が高い場合(たとえば黒文字)でも、背景の濃度変化によって見えづらくなることがある。その解決法として本発明を応用して、白抜き文字に関わらず文字に膨張処理を行うことが考えられる。その動作の説明として図4のフローチャートより示す。
【0055】
まず、画像データ保存メモリ1は入力された画像データの保存を行う(ステップS1)。これと並行してタグデータ保存メモリ2は入力されたタグデータの保存を行う(ステップS2)。
【0056】
次に、画像データ保存メモリ1は注目画素を含む1ラインと上下4ライン、計5ラインの画像データの入力が完了するまで繰り返しデータを入力して保存を行う(ステップS3)。これと並行して、タグデータ保存メモリ2は注目画素の上下4ラインと左右4画素のタグデータの入力が完了するまで繰り返しデータを入力して保存を行う(ステップS4)。
【0057】
次に、文字エッジ検出部3は注目画素が写真上の文字外エッジであるかを以下の条件を満たすことで判定する(ステップS5)。
条件3:“エッジ情報が1”であり、かつ“注目画素が写真”であり、かつ“注目画素の上下左右8画素の中に文字がある”である。
【0058】
注目画素が写真上の文字外エッジと判定されなかった場合、文字エッジ検出部3の処理は終了する。また白抜き文字判定部4と膨張処理部5の処理はスルーされ、最終的に入力された画像データのまま出力される。一方、注目画素が写真上の文字外エッジと判定された場合、次工程に移るが、写真上文字強調は白抜き文字に関わらず文字に膨張処理を行うので、白抜き文字判定部4の処理(ステップS6)はスルーされ、膨張処理部5の処理が行われる。
【0059】
膨張処理部5は先ず、注目画素の白レベル(WL1)を求め、その値と、上下左右8画素で文字である画素の白レベル(WL2)との差分を計算する。そのとき、上下左右8画素で文字が複数存在するならば差分の計算に用いる白レベルは以下の4種類から選択可能とする。
【0060】
(1)白レベルが一番大きい値。
(2)白レベルが一番小さい値。
(3)白レベルの平均値。
(4)上下左右8画素の場所に優先順位をつけ、その順による値。
【0061】
以下の計算で白レベルの差分を求める。
WDIF =|WL1―WL2|(0<=WDIF<=255) ・・・(4)
【0062】
膨張処理部5は次に、注目画素が外エッジの1画素目か2画素目かの判定を行う。図3に示すように注目画素に隣接する画素a2,a4,a6,a8の中に文字があるときは、注目画素を外エッジ部1画素目とする。そうでなければ注目画素を外エッジ部2画素目とする。
【0063】
膨張処理部5は最後に、白レベルの差分WDIFと外エッジ部が1画素目か2画素目かの情報をもとに膨張処理係数BLT(0<=BLT<=1)を求めて、膨張処理を行う。BLTは、WDIFが取り得ル0〜255の256個の値に対応している0〜1までの256個の値が設定可能な膨張処理テーブル(BLTtable)から得られる。
【0064】
膨張処理テーブルの設定の一例として、WDIFが小さい場合は膨張処理を小さくするためにBLTも小さく設定し、逆にWIDFが大きい場合は膨張処理を大きくするためにBLTも大きく設定することが挙げられる。
【0065】
膨張処理テーブルは白抜き文字エッジ部1画素目と2画素目で2面分あり、BLTtable[2][256]のサイズである。なお、BLT[0][X]が白抜き文字エッジ部1画素目用テーブルに対応し、BLT[1][X]が白抜き文字エッジ部2画素目テーブルに対応する。
【0066】
BLT = BLTtable[外エッジ部情報][WDIF] ・・・(10)
求めたBLTと以下の計算により注目画素に対して膨張処理を行う。
COUT =C1―BLT*(C1―C2) ・・・(6)
MOUT =M1―BLT*(M1―M2) ・・・(7)
YOUT =Y1―BLT*(Y1―Y2) ・・・(8)
KOUT =K1―BLT*(K1―K2) ・・・(9)
【0067】
COUT,MOUT,YOUT,KOUTは膨張処理結果として出力する画像データである(0<=COUT,MOUT,YOUT,KOUT<=255)。C1,M1,Y1,K1は注目画素の画像データである。C2,M2,Y2,K2はWL2を求めた白文字画素の画像データである。膨張処理の結果を出力して膨張処理部5の処理は終了する。
【0068】
以上説明したように、本発明の第2実施形態によれば、文字の背景が写真である場合にも、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0069】
すなわち、第1の効果は白抜き文字に対して膨張処理をすることで、印字して背景色に浸食されてもはっきりと確認できる文字の太さを得ることである。
【0070】
第2の効果は文字と背景の白レベルの差からテーブル参照して膨張処理の度合を決めているので、適切なレベルの膨張処理を行うことができることである。
【0071】
第3の効果は白抜き文字エッジ部の1画素目と2画素目に対して別々に処理をしているので、2画素目は膨張度合を小さくしたり、無くしたり設定することができる。そうすることで膨張のやり過ぎを抑えることができることである。
【0072】
第4の効果は真の白文字以外の文字に対して対応ができ、しかも膨張処理によって歯抜けの状態あるいはまだらの状態を作るのを防止することができることである。
【0073】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、画像処理装置における画像処理方法のプログラムに関するものである。前述の第1実施形態の図5の説明で、制御部11は画像データ保存メモリ1と、タグデータ保存メモリ2と、文字エッジ検出部3と、白抜き文字判定部4と、膨張処理部5とを制御すると述べた。一方、画像処理装置の図示しないメモリに、図4にフローチャートで示す画像処理方法のプログラムが格納されている。
【0074】
制御部11(“コンピュータ”)は、図示しないメモリからそのプログラムを読み出し、そのプログラムにしたがって画像データ保存メモリ1と、タグデータ保存メモリ2と、文字エッジ検出部3と、白抜き文字判定部4と、膨張処理部5とを制御する。その制御内容については既に述べたので、ここでの説明は省略する。
【0075】
以上説明したように、本発明の第3実施形態によれば、印字して背景色に侵食されてもはっきりと確認できる文字の太さが得られ、適切なレベルの膨張処理を行うことができ、過度の膨張を抑えることができ、さらに真の白文字以外の文字に対して対応ができ、しかも膨張処理によって歯抜けの状態あるいはまだらの状態を作るのを防止することができる画像処理方法のプログラムが得られる。
【0076】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0077】
(付記1) 白抜き文字判定ステップは、文字の外エッジであると判定された注目画素の上下左右8画素のうちの文字である画素に対して所定の計算を行って白レベルを算出し、その算出結果と所定の白判定閾値を比較することにより、前記注目画素が白抜き文字の外エッジであるか否かを判定することを特徴とする画像処理方法。
【0078】
(付記2) 前記膨張処理ステップは、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分を計算するに際し、前記白抜き文字に白文字と判定された画素が複数存在する場合、前記白抜き文字の白レベルとして、白レベルが最大のもの、最小のもの、それらの平均値、優先順位の高い順のうちのいずれかを採用することを特徴とする付記1に記載の画像処理方法。
【0079】
(付記3) 文字の背景が写真であることを特徴とする付記1または2に記載の画像処理方法。
【0080】
(付記4) 文字エッジ検出ステップは、注目画素とその上下4画素および左右4画素の計9画素のタグデータから排他的論理和を用いて前記注目画素が文字エッジであるか否かを検出することを特徴とするプログラム。
【0081】
(付記5) 前記文字エッジ検出ステップは、前記注目画素が文字エッジであり、かつ前記注目画素が文字でなく、かつ前記注目画素の上下左右8画素の中に文字がある場合に前記注目画素が文字の外エッジであると判定することを特徴とする付記4に記載のプログラム。
【0082】
(付記6) 白抜き文字判定ステップは、文字の外エッジであると判定された注目画素の上下左右8画素のうちの文字である画素に対して所定の計算を行って白レベルを算出し、その算出結果と所定の白判定閾値を比較することにより、前記注目画素が白抜き文字の外エッジであるか否かを判定することを特徴とする付記4または5に記載のプログラム。
【0083】
(付記7) 膨張処理ステップは、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分を計算するに際し、前記白抜き文字に白文字と判定された画素が複数存在する場合、前記白抜き文字の白レベルとして、白レベルが最大のもの、最小のもの、それらの平均値、優先順位の高い順のうちのいずれかを採用することを特徴とする付記4から6のいずれかに記載のプログラム。
【0084】
(付記8) 文字の背景が写真であることを特徴とする付記4から7のいずれかに記載のプログラム。
【符号の説明】
【0085】
1 画像データ保存メモリ(データ保存メモリ)
2 タグデータ保存メモリ(タグ保存メモリ)
3 文字エッジ検出部(文字エッジ検出)
4 白抜き文字判定部
5 膨張処理部(膨張処理)
11 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出部と、
前記文字エッジ検出部で検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定部と、
前記白抜き文字判定部で白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理部と、
を含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記文字エッジ検出部は、注目画素とその上下4画素および左右4画素の計9画素のタグデータから排他的論理和を用いて前記注目画素が文字エッジであるか否かを検出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記文字エッジ検出部は、前記注目画素が文字エッジであり、かつ前記注目画素が文字でなく、かつ前記注目画素の上下左右8画素の中に文字がある場合に前記注目画素が文字の外エッジであると判定することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記白抜き文字判定部は、文字の外エッジであると判定された注目画素の上下左右8画素のうちの文字である画素に対して所定の計算を行って白レベルを算出し、その算出結果と所定の白判定閾値を比較することにより、前記注目画素が白抜き文字の外エッジであるか否かを判定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記膨張処理部は、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分を計算するに際し、前記白抜き文字に白文字と判定された画素が複数存在する場合、前記白抜き文字の白レベルとして、白レベルが最大のもの、最小のもの、それらの平均値、優先順位の高い順のうちのいずれかを採用することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
文字の背景が写真であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出ステップと、
前記文字エッジ検出ステップで検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定ステップと、
前記白抜き文字判定ステップで白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
前記文字エッジ検出ステップは、注目画素とその上下4画素および左右4画素の計9画素のタグデータから排他的論理和を用いて前記注目画素が文字エッジであるか否かを検出することを特徴とする請求項7記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記文字エッジ検出ステップは、前記注目画素が文字エッジであり、かつ前記注目画素が文字でなく、かつ前記注目画素の上下左右8画素の中に文字がある場合に前記注目画素が文字の外エッジであると判定することを特徴とする請求項8記載の画像処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
入力される画像データの属性を示すタグデータより文字エッジを検出する文字エッジ検出ステップと、
前記文字エッジ検出ステップで検出された文字エッジが白抜き文字の外エッジであるか否かを判定する白抜き文字判定ステップと、
前記白抜き文字判定ステップで白抜き文字の外エッジであると判定された文字の1画素目と少なくともその画素に隣接する2画素目の各々に対し、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと、前記白抜き文字の外エッジの白レベルと前記白抜き文字の白レベルとの差分とに応じて膨張処理を行う膨張処理ステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−254271(P2011−254271A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126384(P2010−126384)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】