説明

画像処理装置および画像形成装置

【課題】 比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を行う。
【解決手段】 画像処理装置において、LUT3−1,3−2は、注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値に対応する指数関数部の値を有し、演算回路2は、注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値を演算し、演算回路4は、その差分絶対値についての、LUT3−1,3−2による指数関数部の値に基づいてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像に含まれるノイズの低減には、ノイズ除去処理の対象画素(以下、「注目画素」という)の値と注目画素の近傍に存在する画素(以下、「近傍画素」という)の値との平均をとる平均化フィルターが多く用いられている。例えば、フィルターサイズが3×3である平均化フィルターは、式(1)で表される。
【0003】
【数1】

【0004】
ここで、f(i,j)は注目画素(i,j)の入力信号(画素値)であり、g(i,j)は注目画素の出力信号(フィルタリング後の画素値)であり、f(i+m,j+n)は近傍画素(i+m,j+n)の入力信号、(画素値)である。
【0005】
平均化フィルターの場合、h(m,n)=1とされるが、式(1)におけるh(m,n)を式(2)に示すガウス分布関数とすると、ローパスフィルターと同じ効果を持つガウシアンフィルターになる。σは、ガウス分布の標準偏差である。
【0006】
【数2】

【0007】
上述の平均化フィルターは画像に含まれるエッジをぼけさせてしまう問題があり、その問題を解決するために注目画素の信号値と近傍画素の信号値との差分値に応じて各近傍画素に対する重み付けを行う、バイラテラルフィルターが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0008】
バイラテラルフィルターの場合、式(1)におけるh(m,n)は、式(3)で表される注目画素と周辺画素の差分値のガウス分布関数を上述のガウシアンフィルターに畳み込んだものとなる。
【0009】
【数3】

【0010】
したがって、σをガウス分布の標準偏差としたとき、フィルターサイズが3×3であるバイラテラルフィルターは、式(4)で表される。
【0011】
【数4】

【0012】
この他、特許文献1では、LR(Linear Retinex)処理を応用してエッジぼけを低減する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2010−193199号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】「Bilateral Filtering for Gray and Color Images」C.Tomasi, R. Manduchi著、Proceedings of the 1998 IEEE International Conference on Computer Vision, pp.839-846, IEEE, 1998年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のバイラテラルフィルターの演算では、指数関数部の浮動小数点演算が要求される。具体的には、上述の式(3)の値は注目画素と周辺画素の差分値によって変動するため注目画素ごとに指数関数部の浮動小数点演算が要求されることになる。このため、バイラテラルフィルターの演算をハードウェア処理で行う場合、回路規模が大きくなってしまうという問題がある。また、バイラテラルフィルターの演算をソフトウェア処理で行う場合、処理時間が長くなってしまうという問題があり、複写機などのように高速な画像処理が要求される機器では、ソフトウェア処理によるバイラテラルフィルターの使用が困難である。
【0016】
なお、ガウシアンフィルターの場合(式(2)の場合)には、平方根や指数関数が使われているが、式(2)の値は、注目画素および近傍画素の値に依存しないため、注目画素に対する近傍画素の相対位置(m,n)ごとに定数となる。このため、ガウシアンフィルターの演算をハードウェア処理で行う場合には、この定数を予め計算しておけば、単なる四則演算の組合せだけで済むが、バイラテラルフィルターの場合(式(4)の場合)には、指数関数部の値が注目画素および近傍画素の値に依存するため、単なる四則演算の組合せだけで演算することが困難である。
【0017】
なお、特許文献1に記載されている技術ではLR処理を使用しているため演算量が低減するものの、データのソートが要求されるため、高速な処理が困難である。
【0018】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を高速に行う画像処理装置および画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明では以下のようにした。
【0020】
本発明に係る画像処理装置は、注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値に対応するバイラテラルフィルターにおける指数関数部の値を有する変換テーブルと、注目画素の画素値についての差分絶対値を演算する第1演算回路と、変換テーブルにおける第1演算回路による差分絶対値に対応する指数関数部の値に基づいてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する第2演算回路とを備える。
【0021】
これにより、指数関数部の値を変換テーブルで得るため、第1演算回路および第2演算回路での演算が四則演算のみとなり、比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を高速に行うことができる。
【0022】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置に加え、次のようにしてもよい。この場合、注目画素からの距離が同一である複数の近傍画素について、1つの変換テーブルが割り当てられている。
【0023】
これにより、変換テーブルの数が最小限とされ、回路規模がより小さくなる。
【0024】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、変換テーブルは、バイラテラルフィルターの分散の値に応じた範囲の差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。
【0025】
これにより、指数関数部の値がほぼ一定となる範囲についての差分絶対値に対応する指数関数部の値を含めないことで変換テーブルのサイズが小さくなり、回路規模がより小さくなる。
【0026】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、第2演算回路は、差分絶対値が上述の範囲内である場合には、変換テーブルによる指数関数部の値に基づいてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算し、差分絶対値が上述の範囲外である場合には、指数関数部の値をゼロとしてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0027】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、変換テーブルは、上述の範囲内で所定の間隔ごとの差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。第2演算回路は、差分絶対値が上述の範囲内である場合、変換テーブルにおいて差分絶対値に対応する指数関数部の値があるときには、その指数関数部の値を使用し、変換テーブルにおいて差分絶対値に対応する指数関数部の値がないときには、補間により得られる指数関数部の値を使用して、バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算し、差分絶対値が上述の範囲外である場合には、指数関数部の値をゼロとしてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0028】
これにより、補間可能な指数関数部の値を含めないことで変換テーブルのサイズが小さくなり、回路規模がより小さくなる。
【0029】
また、本発明に係る画像処理装置は、上記の画像処理装置のいずれかに加え、次のようにしてもよい。この場合、変換テーブルは、所定の間隔ごとの差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。そして、第2演算回路は、変換テーブルにおいて差分絶対値に対応する指数関数部の値があるときには、その指数関数部の値を使用し、変換テーブルにおいて差分絶対値に対応する指数関数部の値がないときには、補間により得られる指数関数部の値を使用して、バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0030】
これにより、補間可能な指数関数部の値を含めないことで変換テーブルのサイズが小さくなり、回路規模がより小さくなる。
【0031】
本発明に係る画像形成装置は、上記の画像処理装置のいずれかを備える。
【0032】
これにより、画像形成装置において、比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を高速に行うことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を高速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、フィルターサイズ3×3の場合の近傍画素と近傍画素についての指数関数部の値の特定に使用するLUTとの関係を示す図である。
【図3】図3は、図1におけるLUT3−1の入出力特性の一例を示す図である。
【図4】図4は、図1におけるLUT3−2の入出力特性の一例を示す図である。
【図5】図5は、図1におけるLUT3−1の入出力特性の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0036】
実施の形態1.
【0037】
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置の構成を示すブロック図である。図1に示す画像処理装置は、フィルターサイズが3×3であるバイラテラルフィルターの演算を行う。
【0038】
図1において、ラインメモリー1−1〜1−3は、縦列に接続され、画像データ(入力データ)を1ラインずつ順次記憶するメモリーである。ラインメモリー1−2に第i番目のラインが記憶されているとき、ラインメモリー1−1には第(i+1)番目のラインが記憶され、ラインメモリー1−3には第(i−1)番目のラインが記憶されている。
【0039】
演算回路2は、注目画素の画素値f(i,j)と近傍画素の画素値f(i+m,j+n)との差分絶対値|f(i,j)−f(i+m,j+n)|を演算する。
【0040】
ルックアップテーブル(以下、LUTという)3−1,3−2は、上述の差分絶対値に対応するバイラテラルフィルターにおける指数関数部の値を有する。この指数関数部は、式(4)における式(5)に示す部分である。
【0041】
【数5】

【0042】
注目画素からの距離が同一である近傍画素について、1つのLUT3−iが割り当てられている。図2は、フィルターサイズ3×3の場合の近傍画素と近傍画素についての指数関数部の値の特定に使用するLUT3−iとの関係を示す図である。図2に示すように、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i+1,j)との距離、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i−1,j)との距離、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i,j+1)との距離、および注目画素f(i,j)と近傍画素f(i,j−1)との距離は同一の距離(第1の距離)であり、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i+1,j+1)との距離、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i−1,j+1)との距離、注目画素f(i,j)と近傍画素f(i+1,j−1)との距離、および注目画素f(i,j)と近傍画素f(i−1,j−1)との距離は同一の距離(第2の距離)であり、第1の距離と第2の距離とは異なる。そして、注目画素から第1の距離にある近傍画素についての指数関数部の値は、LUT3−1により得られ、注目画素から第2の距離にある近傍画素についての指数関数部の値は、LUT3−2により得られる。
【0043】
画素値が0〜255の範囲のいずれかの値である場合、差分絶対値|f(i,j)−f(i+m,j+n)|も、0〜255の範囲のいずれかの値となる。このため、実施の形態1では、各LUT3−iは、0〜255の範囲の各入力値(整数値)に対応する出力値を有する。
【0044】
このように、画像データの値は整数値であり、差分絶対値も所定の範囲の整数値となるため、式(5)に示す入出力関係は、LUT3−1,3−2で実現可能である。特に、注目画素からの距離が同一である近傍画素については(m+n)が同一となり、式(5)は同一の式となるため、注目画素からの距離が同一である近傍画素について1つのLUT3−iが割り当てられている。
【0045】
演算回路4は、式(4)に従って、LUT3−1,3−2による指数関数部の値に基づいてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0046】
制御回路5は、演算回路2,4に対して注目画素を順番に指定する回路である。つまり、演算回路2,4は、制御回路5により指定された注目画素およびその近傍画素の値をラインメモリー1−1〜1−3から読み出し、それらの値とLUT3−1,3−2の出力値からバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0047】
次に、上記画像処理装置の動作について説明する。
【0048】
制御回路5により注目画素(i,j)を指定されると、演算回路2は、注目画素(i,j)の画素値f(i,j)をラインメモリー1−2から読み出してレジスター等で保持し、次に8個の近傍画素の画素値f(i−1,j+1),f(i,j+1),f(i+1,j+1),f(i−1,j),f(i+1,j),f(i−1,j−1),f(i,j−1),f(i+1,j−1)をラインメモリー1−1〜1−3から順次読み出して、各近傍画素についての差分絶対値を演算する。
【0049】
演算回路2は、近傍画素(i,j+1),(i−1,j),(i+1,j),(i,j−1)についての差分絶対値をLUT3−1に順次入力し、演算回路4は、近傍画素(i,j+1),(i−1,j),(i+1,j),(i,j−1)についての指数関数部の値をLUT3−1から順次取得する。また、演算回路2は、近傍画素(i−1,j+1),(i+1,j+1),(i−1,j−1),(i+1,j−1)についての差分絶対値をLUT3−2に順次入力し、演算回路4は、近傍画素(i−1,j+1),(i+1,j+1),(i−1,j−1),(i+1,j−1)についての指数関数部の値をLUT3−2から順次取得する。
【0050】
演算回路4は、式(4)の分母の値を、LUT3−1,3−2の出力値から演算し、近傍画素の画素値をラインメモリー1−1〜1−3から読み出し、式(4)の分子の値を、近傍画素の画素値とLUT3−1,3−2の出力値とから演算し、式(4)の分母および分子の値から式(4)の値を演算する。なお、m=n=0の場合、式(5)の値は1であるので、演算回路4は、式(4)の分母および分子の演算において、m=n=0については式(5)の値を、LUT3−1,3−2を使用せずに1とする。
【0051】
演算回路4は、その式(4)の値を、フィルタリング後の注目画素の画素値g(i,j)として出力する。
【0052】
以上のように、上記実施の形態1によれば、LUT3−1,3−2は、注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値に対応する指数関数部の値を有し、演算回路2は、注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値を演算し、演算回路4は、その差分絶対値についての、LUT3−1,3−2による指数関数部の値に基づいてバイラテラルフィルターによるフィルタリング後の注目画素の画素値を演算する。
【0053】
これにより、指数関数部の値を変換テーブルで得るため、演算回路2,4での演算が四則演算のみとなり、比較的小さい回路規模でハードウェア処理によりバイラテラルフィルターの演算を行うことができる。
【0054】
また、上記実施の形態1によれば、注目画素からの距離が同一である近傍画素について、1つのLUT3−iが割り当てられている。これにより、LUT3−1,3−2の数が最小限とされ、回路規模がより小さくなる。
【0055】
実施の形態2.
【0056】
本発明の実施の形態2では、LUT3−1,3−2は、バイラテラルフィルターの分散σの値に応じた範囲の差分絶対値に対応する指数関数部の値を有し、その範囲外の差分絶対値については、指数関数部の値をゼロとして、フィルタリング後の注目画素の画素値が計算される。
【0057】
なお、実施の形態2に係る画像処理装置の構成は、実施の形態1(図1)のものとほぼ同一であるので、その説明を省略する。ただし、LUT3−1,3−2と演算回路2,4は、以下のように構成される。
【0058】
図3は、図1におけるLUT3−1の入出力特性の一例を示す図である(入力値は差分絶対値であり出力値は指数関数部の値である)。図3に示す入出力特性は、σを10に固定し、σを10から50まで変化させたものである。図4は、図1におけるLUT3−2の入出力特性の一例を示す図である。図4に示す入出力特性は、σを10に固定し、σを10から50まで変化させたものである。
【0059】
図3および図4に示すように、σの値が小さい場合、入力値が大きくなると、出力値が急峻にゼロに収束していく。例えば、図3に示す入出力特性では、σが15以下である場合、入力値(差分絶対値)が64以上であれば、出力値はほぼゼロとなる。
【0060】
また、図5は、図1におけるLUT3−1の入出力特性の別の例を示す図である。図5に示す入出力特性は、σを35に固定し、σを1,3,4,17と変化させたものである。図5に示すように、σを1,3,4,17と変化させても、ほぼ同一の入力値(図5では128)付近で、出力値がゼロに収束していく。
【0061】
したがって、実施の形態2では、バイラテラルフィルターの分散σの値に応じて、LUT3−1,3−2の出力値がゼロとならない範囲についてのみ、LUT3−1,3−2は、差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。つまり、その範囲外の差分絶対値に対応する指数関数部の値はすべてゼロとする。
【0062】
例えば、標準偏差σが15以下である場合には、LUT3−1,3−2は、差分絶対値が0から63までの範囲(つまり、全範囲0〜255の一部)についてのみ、指数関数部の値を有し、演算回路2は、差分絶対値が63以下である場合には、LUT3−1,3−2にその差分絶対値を入力して、LUT3−1,3−2の出力値を演算回路4に取得させ、差分絶対値が64以上である場合には、LUT3−1,3−2の出力値の代わりにゼロを演算回路4に供給する。
【0063】
以上のように、上記実施の形態2によれば、LUT3−1,3−2は、バイラテラルフィルターの分散の値に応じた範囲の差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。
【0064】
これにより、指数関数部の値がほぼ一定となる範囲についての差分絶対値に対応する指数関数部の値を含めないことで変換テーブルのサイズが小さくなり、回路規模がより小さくなる。
【0065】
実施の形態3.
【0066】
本発明の実施の形態3では、実施の形態1または実施の形態2に係る画像処理装置において、LUT3−1,3−2は、所定の間隔ごとの差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。
【0067】
図3〜図5において、入出力特性がほぼ線形とみなせる区間においては、所定の間隔(例えば間隔が2または3)ごとの差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。例えば間隔が2である場合、LUT3−1,3−2の回路規模は間隔が1の場合(実施の形態1,2)の半分となる。
【0068】
演算回路2は、演算した差分絶対値についてLUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値があるときには、演算した差分絶対値をLUT3−1,3−2に入力し、その差分絶対値に対する指数関数部の値を演算回路4に取得させる。
【0069】
一方、演算回路2は、演算した差分絶対値についてLUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値がないときには、演算した差分絶対値の近傍であって、LUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値がある1または複数の差分絶対値をLUT3−1,3−2に入力し、その差分絶対値に対する指数関数部の値を演算回路4に取得させ、その指数関数部の値から、演算した差分絶対値に対応する指数関数部の値を補間させる。
【0070】
例えば、標準偏差σが15より大きく35以下である場合には、LUT3−1,3−2は、差分絶対値が0から127までという一部範囲についての指数関数部の値を間隔2ごとに有する。つまり、LUT3−1,3−2は、0,2,4,6,・・・,126の差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。そして、この場合、演算回路2は、差分絶対値が0,2,4,6,・・・,126のいずれかであるときには、LUT3−1,3−2にその差分絶対値を入力して、LUT3−1,3−2の出力値を演算回路4に取得させ、差分絶対値が0,2,4,6,・・・,126のいずれでもないときには、その差分絶対値の近傍であって、LUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値がある1または複数の差分絶対値をLUT3−1,3−2に入力し、その差分絶対値に対する指数関数部の値を演算回路4に取得させ、その指数関数部の値から、その差分絶対値に対応する指数関数部の値を補間させる。また、演算回路2は、その差分絶対値が128以上である場合には、LUT3−1,3−2の出力値の代わりにゼロを演算回路4に供給する。
【0071】
また、例えば、標準偏差σが35より大きい場合には、LUT3−1,3−2は、差分絶対値が0から255までの全範囲についての指数関数部の値を間隔3ごとに有する。つまり、LUT3−1,3−2は、0,3,6,9,・・・,255の差分絶対値に対応する指数関数部の値を有する。そして、この場合、演算回路2は、差分絶対値が0,3,6,9,・・・,255のいずれかであるときには、LUT3−1,3−2にその差分絶対値を入力して、LUT3−1,3−2の出力値を演算回路4に取得させ、差分絶対値が0,3,6,9,・・・,255のいずれでもないときには、その差分絶対値の近傍であって、LUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値がある1または複数の差分絶対値をLUT3−1,3−2に入力し、その差分絶対値に対する指数関数部の値を演算回路4に取得させ、その指数関数部の値から、その差分絶対値に対応する指数関数部の値を補間させる。
【0072】
以上のように、上記実施の形態3によれば、LUT3−1,3−2は、所定の間隔ごとの差分絶対値に対応する指数関数部の値を有し、演算回路2により演算された差分絶対値についてLUT3−1,3−2において対応する指数関数部の値がないときには、補間により指数関数の値が高速に演算される。
【0073】
これにより、補間可能な指数関数部の値を含めないことで変換テーブルのサイズが小さくなり、回路規模がより小さくなる。
【0074】
なお、上述の実施の形態は、本発明の好適な例であるが、本発明は、これらに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【0075】
例えば、上記実施の形態に係る画像処理装置を、スキャナー、複写機、複合機などの画像形成装置に内蔵し、画像処理装置により画像データをバイラテラルフィルターでフィルタリングし、フィルタリングした後の画像データに基づき印刷などを行うようにしてもよい。
【0076】
また、上記実施の形態ではフィルターサイズが3×3であるが、その代わりに、5×5またはそれ以上のフィルターサイズとしてもよい。例えば、5×5のフィルターサイズの場合、ラインメモリーを5本にし、LUTを5つ設ければよい。
【0077】
また、上記実施の形態において、演算回路2を、注目画素と近傍画素との距離の数だけ設け、並列処理するようにしてもよい。例えば、上記実施の形態の場合(フィルターサイズ3×3の場合)、注目画素と近傍画素との距離の数は2となり、2つの演算回路2が設けられ、一方が、LUT3−1に対応する近傍画素についての演算(差分絶対値の計算)を行い、他方が、LUT3−2に対応する近傍画素についての演算(差分絶対値の計算)を行う。
【0078】
また、上記実施の形態において、LUT3−1,3−2をそれぞれ複数(例えば2つずつ、計4つ)設け、注目画素から同一距離の近傍画素についての指数関数部分の値を並列に出力させるようにしてもよい。これにより、より高速に、バイラテラルフィルターの演算を行うことができる。
【0079】
また、上記実施の形態において、次の式(5b)の指数関数部をLUTとし、式(5a)の部分を予め計算して得られる定数とし、演算回路4で、そのLUTの出力とその定数とを乗算して、フィルタリング後の画像データを演算するようにしてもよい。
【0080】
【数6】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、例えば、画像形成装置における画像データのフィルタリングに適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
2 演算回路(第1演算回路の一例)
3−1,3−2 LUT(変換テーブルの一例)
4 演算回路(第2演算回路の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データをバイラテラルフィルターでフィルタリングする画像処理装置において、
注目画素の画素値と近傍画素の画素値との差分絶対値に対応する前記バイラテラルフィルターにおける指数関数部の値を有する変換テーブルと、
前記注目画素の画素値についての前記差分絶対値を演算する第1演算回路と、
前記変換テーブルにおける前記第1演算回路による前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値に基づいて前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算する第2演算回路と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記注目画素からの距離が同一である複数の前記近傍画素について、1つの前記変換テーブルが割り当てられていることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記変換テーブルは、前記バイラテラルフィルターの分散の値に応じた範囲の前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2演算回路は、前記差分絶対値が前記範囲内である場合には、前記変換テーブルによる前記指数関数部の値に基づいて前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算し、前記差分絶対値が前記範囲外である場合には、前記指数関数部の値をゼロとして前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算することを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記変換テーブルは、前記範囲内で所定の間隔ごとの前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値を有し、
前記第2演算回路は、前記差分絶対値が前記範囲内である場合、前記変換テーブルにおいて前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値があるときには、その指数関数部の値を使用し、前記変換テーブルにおいて前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値がないときには、補間により得られる前記指数関数部の値を使用して、前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算し、前記差分絶対値が前記範囲外である場合には、前記指数関数部の値をゼロとして前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算すること、
を特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記変換テーブルは、所定の間隔ごとの前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値を有し、
前記第2演算回路は、前記変換テーブルにおいて前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値があるときには、その指数関数部の値を使用し、前記変換テーブルにおいて前記差分絶対値に対応する前記指数関数部の値がないときには、補間により得られる前記指数関数部の値を使用して、前記バイラテラルフィルターによるフィルタリング後の前記注目画素の画素値を演算すること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のうちの画像処理装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−226399(P2012−226399A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90525(P2011−90525)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】