説明

画像処理装置及びその制御方法

【課題】 従来はレンダリング処理の自由度とリアルタイム性を両立させることが不可能であった。
【解決手段】 描画命令401を受け取って動画描画命令106とグラフィックス描画命令204とに分離する。グラフィックス描画部202は、グラフィックス描画命令に従ってグラフィックス描画結果を得、動画描画部102は、動画描画命令に従って処理した動画データを生成する。そして合成部103は、グラフィックス描画部202により描画されたグラフィックス描画結果と、動画描画部102により生成された動画データとを合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフィックスと動画データとを入力して合成する画像処理装置及びその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
グラフィックスと動画像トを合成して出力する技術は大別すると次の2種類に分けられる。
(1) 動画データをフレーム単位で取得して瞬間的な静止画データを生成し、その静止画データをグラフィックス要素の一部としてグラフィックスと共にレンダリング処理する。
(2) 動画データの処理系統とグラフィックスデータの処理系統とを分離し、それぞれ別々の処理を施した後に、それらデータを合成する。
【0003】
(1)の方式の代表的なものとして、コンピュータ上で動作するビデオ編集ソフト等がある。また(2)の方式として、描画コマンドを処理するグラフィックス生成部とビデオデータを出力するビデオデータ生成部とを別々に設け、それらの出力を描画コマンドに含まれる透過データを基に切り替えて出力する技術(特許文献1参照)がある。また特許文献2には、動画用のフレームバッファとグラフィックス用のフレームバッファとを分離し、ウインドウシステムの制御によって重ね合わせる技術が記載されている。更に特許文献3には、グラフィックス生成部とビデオ処理部とを別々に設けた表示装置が記載されている。これによれば、グラフィックス生成部は、描画コマンドからグラフィックスを生成し、そのグラフィックス領域に含まれるビデオ情報(領域情報、半透明情報)を生成して保持する。一方、ビデオ処理部は、これらのビデオ情報を用いてビデオの縮小処理を行う。そして合成部により、これらグラフィックスとビデオとを半透過合成する技術が記載されている。
【特許文献1】特開平06−335022号公報
【特許文献2】特開平07−72850号公報
【特許文献3】特開2002−222428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来技術では、静止画データに対して適用される一般的なレンダリング処理(変形、回転、透過等)を動画データに施しながら、リアルタイムでグラフィックスと動画データとを合成して出力できないという欠点があった。
【0005】
上述した(1)の方式は、動画像データに対して適用できるレンダリング処理の種類は充実しているが、リアルタイムに処理を行うことができない。一方(2)の方式は、リアルタイム性は保証されるものの、動画像データに対する自由なレンダリング処理は殆ど不可能である。即ち、従来はレンダリング処理の自由度とリアルタイム性を両立させることが不可能であった。
【0006】
また(1)の方式では、非常に高速な描画処理装置を導入することで機能的な問題は解決できるものの、このような装置は非常に高価であるため、コンシューマを対象とした機器には組み込むことが出来ない。
【0007】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決することにある。
【0008】
本発明の一態様によれば、動画とグラフィックスのそれぞれを画像展開しながら、それらを合成して合成画像を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像処理装置は以下のような構成を備える。即ち、
動画描画命令及びグラフィックス描画命令とを含む描画命令を受け取って描画処理を行なう画像処理装置であって、
前記描画命令を受け取って前記動画描画命令と前記グラフィックス描画命令とを分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された前記描画命令に含まれる前記グラフィックス描画命令に従ってグラフィックス描画結果を得るグラフィックス描画手段と、
前記分離手段により分離された前記動画描画命令に従って処理した動画データを生成する動画描画手段と、
前記グラフィックス描画手段により描画された前記グラフィックス描画結果と前記動画描画手段により生成された前記動画データとを合成する合成手段と、
を有することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る画像処理装置の制御方法は以下のような工程を備える。即ち、
動画描画命令及びグラフィックス描画命令とを含む描画命令を受け取って描画処理を行なう画像処理装置の制御方法であって、
前記描画命令を受け取って前記動画描画命令と前記グラフィックス描画命令とを分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記描画命令に含まれる前記グラフィックス描画命令に従ってグラフィックス描画結果を得るグラフィックス描画工程と、
前記分離工程で分離された前記動画描画命令に従って処理した動画データを生成する動画描画工程と、
前記グラフィックス描画工程で描画された前記グラフィックス描画結果と前記動画描画工程により生成された前記動画データとを合成する合成工程と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、動画とグラフィックスのそれぞれを画像展開しながら、それらを合成した合成画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものでなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を表すブロック図である。
【0014】
図において、この画像処理装置100は、描画制御部101、動画描画部102及び合成部103を有している。描画制御部101は、描画命令104を描画命令パス110を介して受け取り、その描画命令104から動画描画命令106を作成して動画描画部102に出力する。またその描画命令104に基づいてグラフィックス描画を行ってグラフィックスを生成し、グラフィックス107として合成部103に出力する。動画描画部102は、動画パス111を介して動画データ105を入力し、描画制御部101から供給される動画描画命令106に従って処理済み動画データ108を生成して合成部103に供給する。合成部103は、グラフィックス107と処理済み動画データ108とを合成して合成画像109を生成して出力する。
【0015】
図2は、本発明の実施形態1に係る描画制御部101の機能構成を示すブロック図で、前述の図1と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。
【0016】
描画命令分離部201は、描画命令104からグラフィックス描画命令204と動画描画命令106を生成する。グラフィックス描画部202は、グラフィックス描画命令204の指示に従ってグラフィックスの描画処理を行い、その出力をグラフィックス保持部203へ出力して格納する。このグラフィックス保持部203から、前述したグラフィックス107が合成部103に出力される。
【0017】
図3は、本実施形態1に係る画像処理装置100を使用する画像処理システム300の構成を示すブロック図である。
【0018】
この画像処理システム300は、アプリケーション301、制御ソフトウェア302、画像処理装置100及び画像デコーダ303を有している。制御ソフトウェア302は、アプリケーション301が生成するドキュメントをドキュメントパス305を介して受け取って画像処理装置100に渡す。尚、このドキュメントは、画像の描画指示及びURI情報等に代表される、外部ドキュメントの参照情報を含む。画像ソース308は、画像ソース入力パス309を介して入力される。画像ソース入力パス309は物理的に1つ、或は複数であってもよい。また或は、物理的に1つの画像ソース入力パス309を時分割で使用して複数の画像ソースを入力できるように構成しても良い。
【0019】
次に画像処理システム300におけるシステム全体の動作概略を説明した後、画像処理装置100の動作について詳述する。
(1)画像処理システム300の動作
この画像処理システム300が画像処理装置100に対して行う処理は、(1−1)動画生成処理、(1−2)描画命令の生成処理の2つに大別される。
(1−1)動画生成処理の説明
ここでは画像処理システム300が行う動画データの生成処理に関し、主に制御ソフトウェア302の動作を中心に説明する。
【0020】
制御ソフトウェア302は、動画入力処理として、ドキュメントに含まれる外部ドキュメントの参照情報を抽出して解析する。そして制御ソフトウェア302は、制御バス304を介して画像デコーダ303に、画像ソース308が格納されている場所と画像ソース308の形式とを指示する。更に、画像デコーダ303が画像ソース308を出力するための動画パス111の情報、及び画像ソース308のダウンロードに使用すべき画像ソース308の入力パス309を指示する。いま画像ソース308が複数ある場合、制御ソフトウェア302は、合成画像109の表示に必要となる全ての画像ソース308に対して動画の入力処理を行う。また動画パス111は、一つでも複数であってもよい。
【0021】
画像デコーダ303は、画像ソース308が圧縮画像である場合は、その画像ソース308をデコードし、画像デコーダ303は、制御ソフトウェア302によって指示された動画パス111に非圧縮の画像を出力する。また画像ソース308が非圧縮画像である場合は、画像デコーダ303は画像ソース308をデコードせずに、制御ソフトウェア302によって指示された動画パス111に出力する。以上の処理により、動画パス111とそれに対応した動画データ105が生成される。
(1−2)描画命令の生成処理の説明
ここでは画像処理システム300が行う描画命令の生成処理を、主に制御ソフトウェア302の動作を中心に説明する。
【0022】
制御ソフトウェア302は、アプリケーション301から受取ったドキュメントを参照して動画の描画に関する記述を探す。次に動画に関するセクションに含まれる外部ドキュメントの参照情報を、動画パス111の情報と置換する。制御ソフトウェア302は、経路情報が置換された動画描画記述とともに、グラフィックス描画記述を含めて描画命令104を生成し、描画命令パス110へ出力する。尚、描画命令104の詳細に関しては後述する。
(2)画像処理装置100の動作
次に画像処理装置100の動作に関して説明する。ここでは、(2−1)入出力の定義、(2−2)動作の順に解説する。
(2−1)入出力の定義
図1において、画像処理装置100は、入力として描画命令104、及び動画データ105を受け取る。また出力として合成画像109を生成する。
(2−1−1)描画命令の定義
描画命令104は、SVGやフラッシュメモリに代表されるアニメーショングラフィックス及び動画の表示が可能な描画命令である。このような描画命令104は一般的にグラフィックス描画タグ、動画タグ及び描画完了タグを含む。
(2−1−1−1)グラフィックス描画タグ
グラフィックス描画タグは、テキスト、基本図形、パス情報、リンク情報などのグラフィックス要素定義と、アニメーション等の描画指示と、各グラフィック要素の描画指示において、描画時に必要となるパラメータ群を含む。グラフィックス描画タグを構成するこれらのグラフィック要素と描画指示及び当該描画指示に必要となるパラメータ群の関連付けは、一般的技術として公知であるためここでは詳述しない。
(2−1−1−2)動画タグ
動画タグは、動画の基点座標情報、サイズ情報、動画に適用する動画描画指示情報、画像処理装置100に非圧縮の動画データ105を入力する際に使用する動画パス111の指示情報を持つ。この他に、後述する動画描画処理において必要となる動画のプロパティを動画タグに含めてもよい。例えば画像処理装置100で動画の色変換を行う場合、動画の色空間情報を付与して渡す。
(2−1−1−3)描画完了タグ
描画完了タグは、一連の描画シーケンスの終了を通知するのに使用される。
(2−1−2)入力動画の定義
動画データ105は、テレビ放送やビデオ入力信号をデコードした、非圧縮のデータである。一般的に動画の形状は矩形であるが、入力動画の形状は本発明を制限するものではない。
(2−1−3)合成画像109の定義
合成画像109は、グラフィックスと動画を合成した結果である。合成画像109は、ラスタフォーマットの色情報を持つ。
【0023】
次に本実施形態に係る描画制御部101の動作について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0024】
図4は、本実施形態に係る描画制御部101による処理を説明するフローチャートである。
【0025】
描画命令104を受け取った描画命令分離部201は、入力した描画命令104を解析してタグを検出する。ステップS1では、その検出されたタグが有効なタグかどうかを判定し、有効なタグでないときはステップS9に進み、エラー処理を行って処理を終了する。尚、エラー処理の内容については様々なものが考えられるが、本発明の本質とは関連しないのでここでは詳述しない。また、本実施形態ではエラー処理後に処理を中断するシーケンス例が示されているが、何らかのリカバリ手段を講じて復帰する動作を行うことも勿論可能である。
【0026】
一方、ステップS1で、検出されたタグが有効な描画タグであると判断した場合はステップS2に進み、描画完了タグかどうかを判定し、描画完了タグであった場合は処理を終了する。このステップS2で描画完了タグではないと判断した場合はステップS3に進み、動画タグかどうかを判定する。動画タグであると判定した場合はステップS4に進み、ステップS7で表される動画描画命令の生成処理を行う。一方、ステップS3で動画タグでないと判定した場合はグラフィックス描画タグであるとみなしてステップS8に進み、グラフィック描画処理を行う。
【0027】
次にステップS4〜S7に示す動画描画命令の生成処理に関して説明する。
【0028】
この動画タグを検出した描画命令分離部201は、ステップS4で、動画ハンドルを生成する。本実施形態1では、動画ハンドルは、入力された動画の幅、高さ、及び変換後の動画の画質情報とデフォルト透過度を指定して作成する。尚、動画ハンドルに渡すパラメータの種類は本発明を制限するものではない。この他に動画ハンドルとグラフィックスのZ-orderは、本実施形態1では描画順序によって規定するが、明示的に動画ハンドルにてZ-orderを指示してもよい。画質情報は、動画再生時に画質、速度のどちらを優先するかを決定する品質情報を持つ。動画のデフォルト透過度は、透過度を持たない動画に対する透過度を指定する。画像処理装置100に入力される動画データ105が透過度を持つ場合、最終出力には、その動画データ105が有する透過度を用いてよい。
【0029】
次にステップS5に進み、描画命令分離部201は、ステップS4で生成した動画ハンドルと、動画パス111との対応付けを行う。次にステップS6に進み、描画命令分離部201は、ステップS5で、動画パス111との対応付けを行った動画ハンドルに対し、動画の描画命令を生成する。ここで動画の描画命令生成とは、動画の描画命令の生成対象となる動画ハンドルを指定し、動画の回転、変倍、移動、マスキング、クリッピング、台形変換、色変換、フィルタ処理、及び動画再生の処理指示を含む。更に、その処理に必要なパラメータ群を指定することを含む。パラメータの指定では、回転、変倍等はアフィン変換の行列要素の指定、色変換は色変換行列の指定、フィルタ処理ではフィルタの種類、マスキングではマスクパターンの指示、LUTの設定等を行う。これらの動画描画指示、及び動画ハンドルの描画指示と、その描画指示に必要となるパラメータ群の関連付けは、一般的技術として公知であるためここでは詳述しない。尚、動画の描画命令の生成時に指定する具体的な動画処理とそのパラメータ群、及びその関連付けは、本発明を制限するものではない。そしてステップS7に進み、これらの設定値は、動画描画命令として動画描画命令106から出力される。
(2−2−1−2)グラフィックス描画処理
ここではステップS8で表されるグラフィックス描画処理に関して説明する。
【0030】
グラフィックス描画タグを検出した描画命令分離部201は、タグを解析してグラフィックス描画命令204を生成する。生成されたグラフィックス描画命令204はグラフィックス描画部202に送られ、ここで実際の描画が行われる。尚、このグラフィックス描画部202で用いられる描画アルゴリズムは、例えばペインタアルゴリズム等の一般的に知られたあらゆる方式を適用可能である。またグラフィックス描画命令204は、上記描画アルゴリズムに適したあらゆる形式の命令形態が適用可能である。これら描画アルゴリズム及びグラフィックス描画命令形式は、本発明の範囲を制限するものではない。
【0031】
グラフィックス描画部202では、入力されたグラフィックス描画命令204に従ってグラフィックスを描画し、生成されたラスタイメージをグラフィックス保持部203へ出力して格納する。ここで生成されたラスタイメージは、ピクセルごとの色情報の他に、透過率、Z-order等を含むことが可能である。またラスタイメージは、実際にイメージが存在しない領域を含んで生成することも可能であるし、イメージが存在する矩形領域に限定された出力であっても良い。前者の場合は、イメージが存在しない領域における透過率を完全透過に設定し、後者の場合は出力されるイメージに領域情報(最終出力座標系における開始座標、領域の幅と高さ等)を付加しておくことも可能である。グラフィックス保持部203は、出力されたイメージデータを保持する。
【0032】
尚、本実施形態では、グラフィックス保持部203は、グラフィックス描画結果のZ-orderに対応する複数の格納領域を有しても良い。この場合、グラフィックス保持部203は、グラフィックス描画命令204から出力された描画結果をZ-order毎に異なる格納領域へ格納することが可能となる。このような面ごとの分割格納に関する技術は公知であるため、ここでは詳述しない。
(2−2−2)動画描画部102の動作
動画描画部102では、描画命令分離部201から出力された動画描画命令106を解析して、処理対象となる動画パス111を特定する。次に、その特定した動画パス111を通して入力される動画データ105に対して、指定された変換を行って処理済み動画データ108を出力する。処理済み動画データ108のフォーマットはラスタイメージであり、色情報の他に透過率、Z-order等を含むことが可能である。また、ラスタイメージは実際にイメージが存在しない領域を含んで生成することも可能であるし、イメージが存在する矩形領域に限定された出力であっても良い。前者の場合は、イメージが存在しない領域における透過率を完全透過に設定し、後者の場合は、出力されるイメージに領域情報(最終出力座標系における開始座標、領域の幅と高さ等)を付加しても良い。尚、動画描画部102は、物理的に複数の動画パス111に一対一で対応するように構成しても良く、或は、物理的には一つの動画パス111に対し、時分割に構成される複数の論理的なパスに対応するように構成しても良い。
(2−2−3)合成部103の動作
合成部103では、処理済み動画データ108とグラフィックス107とを合成して合成画像109を生成して出力する。ここで用いられる合成手法としては、画素ごとにZ-order順に逐次合成してゆく一般的な手法など、あらゆる手法を用いることが可能である。
【0033】
以上説明したように本実施形態1によれば、動画とグラフィックスを統合的にレンダリングして合成することができる。
【0034】
[実施形態2]
以下本発明の実施形態2について、添付の図面を参照して説明する。尚、前出の説明と同じ機能を持つものに対しては同じ参照符号を記し、説明を省略する。
【0035】
図5は、本発明の実施形態2に係る画像処理装置200の構成を表すブロック図である。
【0036】
同図において、描画制御部402は、複数の描画コンテキストから生成された複数の描画命令401を並列に描画命令パス110から受け取って処理し動画描画命令106を出力するとともに、グラフィックス描画を行ってグラフィックス107を生成する。ここに描画コンテキストとは、それを用いて描画を行う主体に対し、一対一で独立に定義される概念である。一般的には、異なるスレッド或いは異なるプロセスがそれぞれ一つの描画コンテキストを持つことになる。
【0037】
図6は、本実施形態2に係る画像処理装置200を使用する画像処理システム300の構成を示すブロック図で、前述の実施形態1の図3と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。図から明らかなように、本実施形態2に係る画像処理システムの構成要素は、画像処理装置200以外、全て前述の実施形態1に係る構成と同一である。但し、本実施形態2では、描画命令401が複数の描画コンテキストを有することを前提としているので、アプリケーション301又は制御ソフトウェア302が複数の独立したスレッド或いはプロセスに分割されている状態と等価である。
【0038】
次に画像処理装置200の動作について説明する。図5から明らかなように本実施形態2に特有の構成は、描画命令401及び描画制御部402であるので、ここではこれらについて説明する。
(3−1)描画命令401の定義
本実施形態2で用いられる描画命令401の基本的な構成は、前述の実施形態1における描画命令104と同一である。異なる点は、描画コンテキスト全体のZ-orderを指定するためのグローバル(Global)Z-orderタグ701が存在する点にある。グローバルZ-order701は、アプリケーション301及び制御ソフトウェア302により異なる描画コンテキスト間でユニークに決定されるものである。ある描画コンテキストに属するグラフィックスと動画の最終座標系におけるZ-orderは、描画コンテキスト内の局所的な(Local)Z-order702とグローバルZ-order701の組み合わせで決定される。
【0039】
図7は、本発明の実施形態2に係るZ-orderの構成を表す図である。
【0040】
図7において、グローバルZ-order701がMSB側に設定されていることから明らかなように、描画コンテキストは一つの描画レイヤーを定義することになる。
(3−2)描画制御部402の動作
本実施形態2に係る描画制御部402の構成を図8に示す。
【0041】
図8は、実施形態2に係る描画制御部402の機能構成を表すブロック図で、前述の実施形態1に係る図2と共通する部分は同じ記号で示し、それらの説明を省略する。
【0042】
図において、描画命令分離部801は、複数の描画コンテキストから生成された描画命令401からグラフィックス描画命令204と動画描画命令106とを生成する。それ以外の動作は前述の図2と同一であるため説明を省略する。
【0043】
次に、この実施形態2に描画制御部402の動作を図9のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
図9は、本実施形態2に係る描画制御部402による処理を説明するフローチャートである。尚、図9において、ステップS11,S12及びステップS17〜S23は、図4のステップS1,S2及びステップS3〜S9に対応している。
【0045】
描画命令401を受け取った描画命令分離部801は、ステップS11,S12の処理を実行した後、ステップS13に進み、各描画コンテキストのIDを獲得する。前述したように、各描画コンテキストは、それぞれ異なるプロセス或はスレッドに属しているため、プロセスIDやスレッドIDを求めることで描画コンテキストに対応したユニークなIDを定義できる。次にステップS14に進み、描画タグがグローバルZ-orderタグ701かどうかを判断する。ここでグローバルZ-orderタグ701であると判断するとステップS15に進み、前述した描画コンテキストIDに対応したグローバルZ-orderの値を更新する。ここで描画コンテキストIDとグローバルZ-orderの対応関係は、テーブルとして保持されているものとする。
【0046】
一方ステップS14で、描画タグがグローバルZ-orderタグ701でない場合、或はステップS15を実行した後ステップS16に進み、上述したテーブルを検索して描画コンテキストIDに対応したグローバルZ-orderを決定する。そしてステップS17に進む。
【0047】
ステップS17では、動画タグかどうかを判定する。動画タグであると判定した場合はステップS18に進み、動画描画命令の生成処理を行う。一方、ステップS17で動画タグでないと判定した場合はグラフィックス描画タグであるとみなしてステップS22に進み、グラフィック描画処理を行う。このステップS22と図4のステップS8との違いは、上記と同様に図7に示したZ-orderを用いることのみである。但し、本実施形態2におけるグラフィックス保持部203の構成は、Z-order毎に異なるデータ格納領域を持つことを前提としている。この構成に関しては、前述の実施形態1で既に説明済みであるが、Z-order毎に振り分ける際に、グローバルZ-orderを抽出して用いる点が特徴である。
【0048】
動画タグを検出した描画命令分離部201は、ステップS18で、動画ハンドルを生成する。本実施形態2では、動画ハンドルへ設定するZ-orderの値として、前述したグローバルZ-orderと局所的なZ-orderを組み合わせて作成した図7の値を用いる点が前述の実施形態1と異なっている。この局所的なZ-orderは、前述の実施形態1で定義されたものと同じものである。
【0049】
次にステップS19に進み、描画命令分離部801は、ステップS18で生成した動画ハンドルと、動画パス111との対応付けを行う。次にステップS20に進み、描画命令分離部801は、ステップS19で、動画パス111との対応付けを行った動画ハンドルに対し、動画の描画命令を生成する。ここで動画の描画命令生成とは、動画の描画命令の生成対象となる動画ハンドルを指定し、動画の回転、変倍、移動、マスキング、クリッピング、台形変換、色変換、フィルタ処理、及び動画再生の処理指示を含む。更に、その処理に必要なパラメータ群を指定することを含む。パラメータの指定では、回転、変倍等はアフィン変換の行列要素の指定、色変換は色変換行列の指定、フィルタ処理ではフィルタの種類、マスキングではマスクパターンの指示、LUTの設定等を行う。これらの動画描画指示、及び動画ハンドルの描画指示と、その描画指示に必要となるパラメータ群の関連付けは、一般的技術として公知であるためここでは詳述しない。尚、動画の描画命令の生成時に指定する具体的な動画処理とそのパラメータ群、及びその関連付けは、本発明を制限するものではない。そしてステップS21に進み、これらの設定値は、動画描画命令として動画描画命令106から出力される。
【0050】
以上説明したように本実施形態2によれば、複数の描画命令を並行して実行することが可能となり、処理速度を向上できるという効果がある。
【0051】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、複数の機器から構成されるシステムに適用しても良いし、また一つの機器からなる装置に適用しても良い。
【0052】
なお、本発明は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムを、システム或いは装置に直接或いは遠隔から供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータが該供給されたプログラムを読み出して実行することによっても達成され得る。その場合、プログラムの機能を有していれば、形態は、プログラムである必要はない。
【0053】
従って、本発明の機能処理をコンピュータで実現するために、該コンピュータにインストールされるプログラムコード自体も本発明を実現するものである。つまり、本発明のクレームでは、本発明の機能処理を実現するためのコンピュータプログラム自体も含まれる。その場合、プログラムの機能を有していれば、オブジェクトコード、インタプリタにより実行されるプログラム、OSに供給するスクリプトデータ等、プログラムの形態を問わない。
【0054】
プログラムを供給するための記録媒体としては、様々なものが使用できる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、MO、CD−ROM、CD−R、CD−RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM、DVD(DVD−ROM,DVD−R)などである。
【0055】
その他、プログラムの供給方法としては、クライアントコンピュータのブラウザを用いてインターネットのホームページに接続し、該ホームページからハードディスク等の記録媒体にダウンロードすることによっても供給できる。その場合、ダウンロードされるのは、本発明のコンピュータプログラムそのもの、もしくは圧縮され自動インストール機能を含むファイルであってもよい。また、本発明のプログラムを構成するプログラムコードを複数のファイルに分割し、それぞれのファイルを異なるホームページからダウンロードすることによっても実現可能である。つまり、本発明の機能処理をコンピュータで実現するためのプログラムファイルを複数のユーザに対してダウンロードさせるWWWサーバも、本発明のクレームに含まれるものである。
【0056】
また、本発明のプログラムを暗号化してCD−ROM等の記憶媒体に格納してユーザに配布する形態としても良い。その場合、所定の条件をクリアしたユーザに対し、インターネットを介してホームページから暗号化を解く鍵情報をダウンロードさせ、その鍵情報を使用することにより暗号化されたプログラムが実行可能な形式でコンピュータにインストールされるようにする。
【0057】
また、コンピュータが、読み出したプログラムを実行することによって、前述した実施形態の機能が実現される形態以外の形態でも実現可能である。例えば、そのプログラムの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOSなどが、実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によっても前述した実施形態の機能が実現され得る。
【0058】
更に、記録媒体から読み出されたプログラムが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれるようにしてもよい。この場合、その後で、そのプログラムの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行ない、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る描画制御部の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態1に係る画像処理装置を使用する画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本実施形態1に係る描画制御部による処理を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態2に係る画像処理装置の構成を表すブロック図である。
【図6】本実施形態2に係る画像処理装置を使用する画像処理システムの構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施形態2に係るZ-orderの構成を表す図である。
【図8】実施形態2に係る描画制御部の機能構成を表すブロック図である。
【図9】本実施形態2に係る描画制御部による処理を説明するフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画描画命令及びグラフィックス描画命令とを含む描画命令を受け取って描画処理を行なう画像処理装置であって、
前記描画命令を受け取って前記動画描画命令と前記グラフィックス描画命令とを分離する分離手段と、
前記分離手段により分離された前記描画命令に含まれる前記グラフィックス描画命令に従ってグラフィックス描画結果を得るグラフィックス描画手段と、
前記分離手段により分離された前記動画描画命令に従って処理した動画データを生成する動画描画手段と、
前記グラフィックス描画手段により描画された前記グラフィックス描画結果と前記動画描画手段により生成された前記動画データとを合成する合成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記描画命令は、複数の描画コンテキストを基に生成されており、
前記分離手段及び前記グラフィックス描画手段は、前記描画命令を前記描画コンテキストごとに並行して処理することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記動画描画命令は、入力された動画の幅、高さ、及び変換後の動画の画質情報とデフォルト透過度、Z-orderの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記描画命令は、グラフィックス描画方法を定義する複数のグラフィックス描画タグと、動画描画方法を定義する複数の動画タグと、描画完了を通知するための描画完了タグを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記描画命令は、グラフィックス描画方法を定義する複数のグラフィックス描画タグと、動画描画方法を定義する複数の動画タグと、描画完了を通知するための描画完了タグと、描画レイヤーのZ-orderを指定するZ-orderタグを有することを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
動画描画命令及びグラフィックス描画命令とを含む描画命令を受け取って描画処理を行なう画像処理装置の制御方法であって、
前記描画命令を受け取って前記動画描画命令と前記グラフィックス描画命令とを分離する分離工程と、
前記分離工程で分離された前記描画命令に含まれる前記グラフィックス描画命令に従ってグラフィックス描画結果を得るグラフィックス描画工程と、
前記分離工程で分離された前記動画描画命令に従って処理した動画データを生成する動画描画工程と、
前記グラフィックス描画工程で描画された前記グラフィックス描画結果と前記動画描画工程により生成された前記動画データとを合成する合成工程と、
を有することを特徴とする画像処理装置の制御方法。
【請求項7】
前記描画命令は、複数の描画コンテキストを基に生成されており、
前記分離工程及び前記グラフィックス描画工程では、前記描画命令を前記描画コンテキストごとに並行して処理することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項8】
前記動画描画命令は、入力された動画の幅、高さ、及び変換後の動画の画質情報とデフォルト透過度、Z-orderの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項9】
前記描画命令は、グラフィックス描画方法を定義する複数のグラフィックス描画タグと、動画描画方法を定義する複数の動画タグと、描画完了を通知するための描画完了タグを含むことを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置の制御方法。
【請求項10】
前記描画命令は、グラフィックス描画方法を定義する複数のグラフィックス描画タグと、動画描画方法を定義する複数の動画タグと、描画完了を通知するための描画完了タグと、描画レイヤーのZ-orderを指定するZ-orderタグを有することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−15447(P2010−15447A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175906(P2008−175906)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】