画像処理装置及び方法、並びに電子機器
【課題】ドライブレコーダー等において用いられる画像処理装置において、ハイダイナミックレンジ合成によって白とびや黒つぶれの少ない画像を得る一方、画像の不自然さや擬似輪郭等を回避して、記録される画像の画質を改善する。
【解決手段】この画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する画像評価部とを含む。
【解決手段】この画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する画像評価部とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故に関する情報を記録するために自動車に設置されるドライブレコーダー等において用いられる画像処理装置及び画像処理方法に関し、さらに、そのような画像処理装置を搭載した電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダーは、自動車事故が発生した場合に、どの自動車の運転手に過失があったか等を立証するために用いられるので、明瞭な画像を記録する必要がある。しかしながら、例えば、ドライブレコーダーによってトンネルの出口付近を昼間に撮影した場合に、露光量が小さければ、トンネルの外の明るい被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの中の暗い被写体は黒くつぶれて撮影されてしまう(黒つぶれ)。一方、露光量が大きければ、トンネルの中の暗い被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの外の明るい被写体は白く飽和して撮影されてしまう(白とび)。
【0003】
そこで、ドライブレコーダーにおいて、ハイダイナミックレンジ合成(HDR:high dynamic range imaging)を用いることが考えられる。ハイダイナミックレンジ合成とは、露光量を変化させながら複数枚の画像を撮影し、それらを合成することによって、白とびや黒つぶれの少ない広大なダイナミックレンジを有する画像(HDR画像)を生成する技法である(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ハイダイナミックレンジ合成によれば、自動車がトンネルの出口付近を走行する場合や逆光の場合に、白とびや黒つぶれの少ない画像を得ることができる。その一方で、被写体が瞬間的に大きく動いた場合には、露光量の異なる複数枚の画像を適切に合成できなくなり、不自然な画像となることがある。また、合成される複数枚の画像の輝度レベルが異なるので、合成の境目に擬似輪郭と呼ばれる虚像が出現する場合がある。さらに、合成によって画像のコントラストが低下し、HDR画像よりも通常の画像の方が鮮明になる場合もある。
【0005】
関連する技術として、特許文献2には、通常撮影モードで撮影を開始して、複数の領域毎の輝度積算値の平均値を算出し、明領域における明平均値と暗領域における暗平均値との差が所定値より小さい場合には通常撮影モードでの撮影を継続する一方、明平均値と暗平均値との差が所定値以上となった場合には撮影モードを合成撮影モードに切り替える撮像装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の発明をドライブレコーダーに適用した場合に、1つのフレームにおける輝度積算値に基づいて次のフレームにおける撮影モードを切り替えたのでは、不明瞭な画像が撮影された後に撮影モードが切り替えられることになるので、不明瞭な画像が記録されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−263345号公報(段落0002−0009)
【特許文献2】特開2002−84449号公報(段落0077−0080、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の幾つかの観点によれば、ドライブレコーダー等において被写体を撮影して画像信号を記録する際に、ハイダイナミックレンジ合成によって白とびや黒つぶれの少ない画像を得る一方、ハイダイナミックレンジ合成の欠点である画像の不自然さや擬似輪郭等を回避して、記録される画像の画質を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する画像評価部とを具備する。
【0010】
ここで、画像評価部が、複数の画像の内の1つを表す1フレーム分の画像データについて、全ての色成分の輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分の輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成しても良い。
【0011】
本発明の第2の観点に係る画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像データに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出し、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成する動き検出部とを具備する。
【0012】
本発明の第3の観点に係る画像処理装置は、撮像部を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、加速度を感知して感知信号を出力する加速度センサーと、加速度センサーから出力される感知信号に基づいて、撮像部が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定し、撮像部が設定限度以上振動したと判定した場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成し、撮像部が設定限度以上振動していないと判定した場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成する動き判定部とを具備する。
【0013】
以上において、ダイナミックレンジ拡張部が、合成画像データのビット数を、複数の画像の内の1つを表す画像データのビット数に一致させる処理を行うトーンマップ処理部を含むようにしても良い。
【0014】
本発明の1つの観点に係る電子機器は、異なる露光量で撮影対象を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する撮像部と、撮像部によって生成される画像信号が供給される本発明のいずれかの観点に係る画像処理装置と、画像処理装置から出力される画像データを格納する画像データ格納部とを具備する。
【0015】
また、本発明の第1の観点に係る画像処理方法は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得するステップ(a)と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するステップ(b)と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成するステップ(c)と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力するステップ(d)とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影により得られる画像データの状態、又は、感知される加速度の大きさに従って、撮影により得られる複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択することにより、ハイダイナミックレンジ合成によって白とびや黒つぶれの少ない画像を得る一方、ハイダイナミックレンジ合成の欠点である画像の不自然さや擬似輪郭等を回避して、記録される画像の画質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【図2】CCDカメラが異なる露光時間で撮影対象を撮影する動作を説明する図。
【図3】異なる露光時間の画像においてオレンジ色を構成する色成分を示す図。
【図4】画像合成処理の第1の例を説明するための図。
【図5】合成画像データにおける元の画像データの混合割合の例を示す図。
【図6】ドライブレコーダーによって撮影された画像の例を示す図。
【図7】標準画像の評価のために領域を設定する例を説明するための図。
【図8】図1に示す画像処理装置において行われる画像処理方法の例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【図10】動き検出の具体例を説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態によれば、交通事故に関する情報を記録するために自動車に設置されるドライブレコーダー等の電子機器を実現することができる。
【0019】
図1に示すように、この電子機器は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等によって構成される撮像部10と、半導体集積回路等によって構成される画像処理装置20と、SDカード等の記録媒体を用いる画像データ格納部30とを含んでいる。
【0020】
撮像部10は、異なる露光量で撮影対象(被写体)を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する。撮像部10によって生成される画像信号は、画像処理装置20に供給される。この画像信号は、ディジタル画像信号(画像データ)でも良いし、アナログ画像信号でも良い。画像処理装置20に供給される画像信号がアナログ画像信号である場合には、画像処理装置20が、アナログ画像信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換して画像データを取得する。
【0021】
画像処理装置20は、取得した画像データに画像処理等を施すことにより、記録すべき画像データを生成して出力し、画像データ格納部30に画像データを記録させる。画像データ格納部30は、画像処理装置20から出力される画像データをSDカード等の記録媒体に格納する。なお、SDカードは、フラッシュメモリーに属する持ち運び可能な記録媒体である。
【0022】
以下の実施形態においては、撮像部10が、露光時間を変更することによって、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像データA、B、Cを生成する場合について説明する。画像データAによって表される画像の露光時間T1と、画像データBによって表される画像の露光時間T2と、画像データCによって表される画像の露光時間T3とは、T1<T2<T3の関係にあって、T1:T2:T3=2:3:6であるものとする。
【0023】
ここで、中間的な露光量が得られる露光時間T2を標準露光時間とし、標準露光時間で撮影された撮影対象の画像を標準画像とする。なお、4種類以上の露光量で撮影対象を撮影することにより4つ以上の画像を得る場合には、最小の露光量で撮影された画像及び最大の露光量で撮影された画像を除く画像の内から1つの画像を標準画像として選択すれば良い。また、各画像を表す画像データは、複数の色成分を含んでも良い。本実施形態においては、画像データが、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分(例えば、各成分について8ビット)を含むものとする。
【0024】
以下の実施形態においては、撮像部の例として、CCDカメラについて説明する。図2は、CCDカメラが異なる露光時間で撮影対象を撮影する動作を説明するための図である。CCDカメラに搭載されるCCD101aを含むセンサセルアレイ101の露光領域には、CCD101aに蓄積された電荷を読み出すために3つの読出しラインL1、L2、L3が設けられている。CCD101aは、図中に示すスキャン方向に繰り返しスキャンされて、CCD101aに蓄積された電荷が読み出される。
【0025】
読出しラインL1は、最も多くのCCD101aに蓄積された電荷を読み出すと共に、CCD101aをリセットするために用いられる読出しラインである。リセットを伴う読出しは、破壊読出しとも呼ばれている。読出しラインL1から読み出された電荷は、図示しないAFE(Analog Front End)を介してA/D変換部に入力され、画像データに変換される。読出しラインL1から読み出された電荷に基づく画像データは、露光時間が最も長い画像を表す画像データCとなる。
【0026】
読出しラインL2から読み出された画像データは、標準露光時間による画像(標準画像)を表す画像データ(標準画像データ)Bとなる。また、読出しラインL3は、最も少ないCCD101aに蓄積された電荷を読み出すために用いられる読出しラインである。読出しラインL3から読み出された画像データは、露光時間が最も短い画像を表す画像データAとなる。なお、読出しラインL2、L3からの読出しは、いずれもリセットを伴わない非破壊読出しである。
【0027】
1回の撮影において、読出しラインL3からの非破壊読出しと、読出しラインL2からの非破壊読出しと、読出しラインL1からの破壊読出しとは、それぞれ独立に実行される。このような読出しタイミングの制御は、電子シャッター機能によって実現される。ただし、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、撮像部の絞りを制御して露光量を変更するようにしても良い。
【0028】
再び図1を参照すると、画像処理装置20は、画像データ取得部21と、ダイナミックレンジ拡張部22と、画像選択部(SW2)23と、標準画像評価部24とを含んでいる。画像データ取得部21は、画像切換部(SW1)211と、複数のメモリー212a、212b、212cとを含み、撮像部10を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。
【0029】
画像切換部211は、撮像部10から順次供給される画像データA、B、Cを、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ振り分ける。これにより、メモリー212aは画像データAを蓄積し、メモリー212bは画像データBを蓄積し、メモリー212cは画像データCを蓄積する。
【0030】
ダイナミックレンジ拡張部22は、正規化部221と、画像信頼性評価部222と、画像合成部223と、トーンマップ処理部224とを含み、画像データ取得部21によって取得された複数の画像を表す画像データA、B、Cを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データDを生成する。
【0031】
正規化部221は、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積された画像データA、B、Cを読み出して正規化する。これと並行して、画像信頼性評価部222は、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積された画像データA、B、Cの信頼性を評価して、信頼性の評価結果を画像合成部223に供給する。
【0032】
画像合成部223は、画像信頼性評価部222から供給される信頼性の評価結果に基づいて、正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cをハイダイナミックレンジ合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された画像を表す合成画像データDを生成する。
【0033】
トーンマップ処理部224は、画像合成部223から出力されるダイナミックレンジが拡張された画像を表す合成画像データDのビット数を、画像データ取得部21によって取得された画像データのビット数(例えば、R、G、B成分の各々について8ビット)に一致させるトーンマップ処理を行う。
【0034】
画像選択部23は、選択信号に従って、画像データ取得部21によって取得された複数の画像の内の1つを表す画像データ(ここでは、標準画像データB)と、ダイナミックレンジ拡張部22によって生成された合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力される画像データは、画像データ格納部30によって記録媒体に格納される。
【0035】
標準画像評価部24は、画像データ取得部21によって取得された複数の画像の内の1つを表す画像データ(ここでは、標準画像データB)について、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成することにより、画像選択部23を制御する。
【0036】
即ち、ハイダイナミックレンジ合成によれば、自動車がトンネルの出口付近を走行する場合や逆光の場合に、白とびや黒つぶれの少ない画像を得ることができるが、その一方で、画像の不自然さ、擬似輪郭、コントラストの低下等を招く場合がある。また、ドライブレコーダーに要求される画像として、多くの場合には、標準露光で撮影された画像で十分である。そこで、標準画像評価部24は、標準画像データBの輝度レベルを評価することにより、標準画像データBを記録すべきか合成画像データDを記録すべきかの判断を行っている。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係る電子機器の動作例について詳しく説明する。
まず、図1に示す正規化部221において行われる正規化処理の例について説明する。以下の式において、「x、y」は画素の座標を表し、「R」はR成分を表す。正規化部221に入力される正規化前の画像データA、B、CのR成分の輝度レベルを、それぞれ、A_T1(x、y、R)、B_T2(x、y、R)、C_T3(x、y、R)とする。また、正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cの輝度レベルを、それぞれ、A_NT3(x、y、R)、B_NT3(x、y、R)、C_NT3(x、y、R)とする。正規化における両者の関係は、次式で表される。
【0038】
A_NT3(x、y、R)=A_T1(x、y、R)×(T3/T1)
B_NT3(x、y、R)=B_T2(x、y、R)×(T3/T2)
C_NT3(x、y、R)=C_T3(x、y、R)
これらの式は、画像データのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0039】
次に、図1に示す画像信頼性評価部222によって行われる画像データの信頼性評価の第1の例について説明する。図3は、異なる露光時間で同一の撮影対象を撮影することにより得られた画像においてオレンジ色を構成するR、G、B成分の輝度レベルを示している。図3において、横軸は、R、G、B成分を区別しており、縦軸は、各成分の輝度レベルを表している。また、図3(A)は、最も短い露光時間T1で撮影された画像を表す画像データAの輝度レベルを示し、図3(B)は、標準露光時間T2で撮影された画像を表す画像データBの輝度レベルを示し、図3(C)は、最も長い露光時間T3で撮影された画像を表す画像データCの輝度レベルを示している。
【0040】
画像信頼性評価部222は、輝度レベルに基づいて画像データの信頼性を評価することにより、信頼性の評価結果を表す値である信頼度を求める。本実施形態においては、輝度レベルが大きければS/N比が高くなることから、より大きい輝度レベルに、より高い信頼度を付与している。ただし、輝度レベルが高過ぎて最大値255に達している(飽和している)場合には、元の画像の正確な輝度レベルが得られない。従って、最大値255よりもやや低い輝度レベル(例えば、224)に、信頼度の最高値を付与するようにしている。
【0041】
このような信頼度の付与は、予め設定されている式に輝度レベルを代入するか、あるいは、輝度レベルに基づいてLUT(Look Up Table)を参照することによって実現される。以下に、画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルが224を超えた場合に信頼度E_T1(x、y、R)を算出するための式を例示する。
【0042】
if A_T1(x、y、R)>224
then E_T1(x、y、R)=(255−A_T1(x、y、R))/31
else E_T1(x、y、R)=A_T1(x、y、R))/224
これらの式は、画像データのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0043】
上式中の数字「31」は、輝度レベルの最大値255と信頼度が最高値となる輝度レベル224との差である。輝度レベルの最大値255と輝度レベル224との差によって、輝度レベルの最大値255と画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルとの差を除算することにより、画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルが飽和に近くなると信頼度を低下させることができる。
【0044】
画像信頼性評価部222は、以上述べた信頼性の評価を実行し、算出された信頼度を画像合成部223に出力する。なお、信頼度を算出する式は、上記のような形式に限定されるものではなく、出力特性やノイズ特性を考慮して輝度レベルの信頼性の指標となるものであれば、どのような形式のものであっても良い。また、信頼性の評価は、信頼度を用いることに限定されるものではなく、最も高い信頼性を有する画像データを特定する信号を出力するようにしても良い。
【0045】
上式に従って、図3(A)〜(C)に示す輝度レベルを評価すると、R成分については、図3(A)に示す画像データAのR成分R1が、図3(B)に示す画像データBのR成分R2や図3(C)に示す画像データCのR成分R3よりも高い信頼度を得る。また、G成分については、図3(B)に示す画像データBのG成分G2が、図3(A)に示す画像データAのG成分G1や図3(C)に示す画像データCのG成分G3よりも高い信頼度を得る。さらに、B成分については、図3(C)に示す画像データCのB成分B3が、図3(A)に示す画像データAのG成分B1や図3(B)に示す画像データBのG成分B2よりも高い信頼度を得ることになる。
【0046】
次に、図1に示す画像合成部223によって行われる画像合成処理の第1の例について説明する。画像合成部223は、R、G、B成分の各々について、画像データA、B、Cの内で信頼度が最も高い画像データを選択する。そして、選択された画像データのR、G、B成分を合成することにより、オレンジ色を表示する合成画像データDを生成する。
【0047】
図4は、画像合成処理の第1の例を説明するための図である。図4(A)、図4(B)、図4(C)は、図1に示す正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cの各色成分の輝度レベルをそれぞれ示しており、図4(D)は、図1に示す画像合成部223によって合成された合成画像データDの各色成分の輝度レベルを示している。
【0048】
画像合成部223は、図4(A)に示す画像データAのR成分R1と、図4(B)に示す画像データBのG成分G2と、図4(C)に示す画像データCのB成分B3とを選択して合成することにより、図4(D)に示す合成画像データDを生成する。この合成画像データDは、図3(A)に示す輝度レベルが飽和していない短時間露光のR成分R1と、図3(B)に示す輝度レベルが適切な標準露光のG成分G2と、図3(C)に示す輝度レベルが改善された長時間露光のB成分B3とに基づいて生成されるので、図3(B)に示す標準露光の画像データBと比較してダイナミックレンジが拡張されている。
【0049】
ただし、図4(D)に示す合成画像データDにおいては、正規化によって、輝度レベルの最大値が255を超えている。そこで、図1に示すトーンマップ処理部224は、画像合成部223から出力される合成画像データDのビット数を、画像データ取得部21によって取得された画像データのビット数(ここでは、R、G、B成分の各々について8ビット)に一致させるトーンマップ処理を行う。このトーンマップ処理は、例えば、合成画像データDの各色成分の輝度レベルに(T1/T3)を掛けることによって行われる。
【0050】
次に、画像データの信頼性評価及び画像合成処理の第2の例について説明する。第2の例においては、画像合成部223が、露光量が異なる複数の画像データA、B、Cの同一の色成分を混合することにより、合成画像データDを生成する。そのために、画像信頼性評価部222は、信頼性評価結果として、複数の画像データA、B、Cの各色成分の混合割合(重み付け係数)を算出して画像合成部223に供給する。画像合成部223は、供給された混合割合に従って、複数の画像データA、B、Cの同一の色成分を混合する。
【0051】
このような混合の結果、画像データAのR成分R1と画像データBのR成分R2と画像データCのR成分R3とが混合されて、合成画像データDのR成分が生成される。同様に、画像データAのG成分G1と画像データBのG成分G2と画像データCのG成分G3とが混合されて、合成画像データDのG成分が生成される。また、画像データAのB成分B1と画像データBのB成分B2と画像データCのB成分B3とが混合されて、合成画像データDのB成分が生成される。混合されたR、G、B成分によって、合成画像データDが構成される。
【0052】
画像信頼性評価部222は、次のようにして、複数の画像データA、B、Cの各色成分の重み付け係数を決定しても良い。ここで、重み付け係数とは、画像データA、B、Cの混合割合を示すものであって、重み付け係数が大きいほど混合割合が大きいものとする。画像データAのR成分の重み付け係数W_T1(x、y、R)は、例えば、信頼度に基づいて、次式によって算出される。
【0053】
W_T1(x、y、R)=E_T1(x、y、R)/Esum
W_T2(x、y、R)=E_T2(x、y、R)/Esum
W_T3(x、y、R)=E_T3(x、y、R)/Esum
ただし、Esum=E_T1(x、y、R)+E_T2(x、y、R)+E_T3(x、y、R)である。これらの式は、画像データA、B、CのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0054】
画像信頼性評価部222によって算出された重み付け係数は、画像合成部223に供給される。画像合成部223は、それらの重み付け係数を画像データA、B、Cのそれぞれの色成分に乗算し、乗算後の輝度レベルを色成分毎に加算して、合成画像データDを生成する。
【0055】
D(x、y、R)=W_T1(x、y、R)×A_NT3(x、y、R)
+W_T2(x、y、R)×B_NT3(x、y、R)
+W_T3(x、y、R)×C_NT3(x、y、R)
これらの式は、画像データA、B、C、DのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0056】
図5は、合成画像データにおける元の画像データの混合割合の例を示す図である。この例においては、合成画像データDのR、G、B成分が、全ての画像データA、B、CのR、G、B成分をそれぞれ含んでいるが、信頼性の最も低い画像データの色成分の重み付け係数をゼロに設定することにより、信頼性の最も低い画像データの色成分を排除しても良い。
【0057】
以上述べたダイナミックレンジ拡張処理によれば、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像データの信頼性を、画像データの色成分毎に評価することができる。また、評価された信頼性に基づいて、それらの画像データの色成分の内から信頼性の高い色成分を採用し、採用された色成分を合成して合成画像データを生成することができる。
【0058】
図6は、本発明が適用されるドライブレコーダーによって撮影された画像の例を示す図である。図6には、露光時間を3段階に変えてトンネルの出口付近を撮影して得られた画像、及び、それらの画像を合成して得られた合成画像が示されている。
【0059】
図6(A)は、短時間露光の画像を示している。短時間露光の場合には、トンネルの外の被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの中の被写体は黒つぶれによって不明瞭となる。一方、図6(C)は、長時間露光の画像を示している。長時間露光の場合には、トンネルの中の被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの外の被写体は白とびによって不明瞭となる。図6(B)は、標準露光の画像を示している。標準露光の場合には、トンネルの中の一部において黒つぶれが発生し、トンネルの外の一部において白とびが発生する。
【0060】
図6(D)は、図6(A)〜(C)に示す画像を合成して得られた合成画像を示している。図6(A)〜(C)に示す画像から、輝度が適切な領域(画素)の画像を切り出して合成することにより、黒つぶれや白とびのない1枚(1フレーム)の画像を得ることができる。
【0061】
次に、図1に示す標準画像評価部24によって行われる標準画像の評価の例について説明する。標準画像評価部24は、画像データ取得部21によって取得された1フレーム分の標準画像データBについて、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成する。
【0062】
このような評価は、フレーム毎に行われる。なお、上記の「少なくとも1つの領域」は、撮影された1枚の標準画像の一部の領域でも良いし、撮影された1枚の標準画像の全領域でも良い。また、上記の「閾値」は、「1」又は「2」以上でも良いし、少なくとも1つの領域における全画素数でも良い。
【0063】
例えば、標準画像評価部24は、1フレーム分の標準画像データBについて、領域X1において少なくともN1個(N1は自然数)の画素の色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値に達している場合(条件1)に、標準画像に白とびが発生するので合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択しても良い。
【0064】
あるいは、標準画像評価部24は、1フレーム分の標準画像データBについて、領域X2において少なくともN2個(N2は自然数)の画素の色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である場合(条件2)に、標準画像に黒つぶれが発生するので合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択しても良い。
【0065】
あるいは、標準画像評価部24は、条件1と条件2との内の一方又は両方を満たした場合に、合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択するようにしても良い。その場合に、領域X1と領域X2とは、等しくても良いし、異なっても良く、閾値N1と閾値N2とは、等しくても良いし、異なっても良い。
【0066】
図7は、標準画像の評価のために領域を設定する例を説明するための図である。この例においては、図7(A)に示すような1枚の標準画像を12分割することにより、図7(B)に示す領域(1)〜(12)において標準画像の各色成分の輝度レベルが評価される。
【0067】
図1に示す標準画像評価部24は、領域(1)〜(12)の内の少なくとも1つの領域において、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である画素の数が閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である画素の数が閾値以上である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成しても良い。
【0068】
例えば、標準画像評価部24は、領域(1)〜(12)の内の何れか1つの領域において、全画素の色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である場合、及び/又は、全画素の色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成する。
【0069】
これによって、画素単位で白とび又は黒つぶれを評価する際の誤評価を回避することができる。誤評価の原因としては、撮像部10の欠陥画素により、輝度レベルが常に飽和値又はゼロ値になる場合等が考えられる。また、1枚の標準画像における全ての画素について評価を行わなくても良い。例えば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)の内の幾つかの領域について評価を行っても良いし、1つの領域内の幾つかの画素について評価を行っても良い。
【0070】
次に、本発明の第1の実施形態に係る画像処理方法について、図1及び図8を参照しながら説明する。図8は、図1に示す画像処理装置において行われる画像処理方法の例を示すフローチャートである。なお、図1に示すダイナミックレンジ拡張部22〜標準画像評価部24の機能は、コンピューターが行うことも可能である。その場合に、それらのステップは、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(画像処理プログラム)とによって実現される。
【0071】
図8に示すステップS1において、画像データ取得部21が、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる1組の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。画像データA、B、Cは、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積される。
【0072】
ステップS2〜S5において、ダイナミックレンジ拡張部22が、1組の画像を表す画像データA、B、Cを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データDを生成する。
【0073】
具体的には、ステップS2において、正規化部221が、メモリー212a、212b、212cからそれぞれ読み出された画像データA、B、Cの各色成分を正規化する。ステップS2と並行して、ステップS3において、画像信頼性評価部222が、画像データA、B、Cの各色成分の信頼性を評価する。
【0074】
ステップS2及びS3が終了すると、ステップS4において、画像合成部223が、R、G、Bの各色成分について、正規化された画像データA、B、Cの内から最も高い信頼性の評価結果を得た画像データを選択することにより、画像データA、B、Cを合成して合成画像データDを生成する。ステップS5において、トーンマップ処理部224が、合成画像データDのビット数を、標準画像データBのビット数に一致させる。
【0075】
ステップS2〜S5と並行して、ステップS6において、標準画像評価部24が、標準画像データBについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する。
【0076】
ステップS5及びS6が終了すると、ステップS7において、画像選択部23が、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0077】
ステップS7が終了すると、処理がステップS1に戻って、画像データ取得部21が、次の1組の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。取得すべき画像データが存在しない場合には、処理が完了する。
【0078】
第1の実施形態によれば、標準画像において白とびや黒つぶれが発生しない場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。一方、標準画像において白とびや黒つぶれが発生した場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態においては、撮影対象(被写体)が瞬間的に大きく動いた場合(例えば、自動車の速度が一定値以上になった場合)には、標準画像が記録され、それ以外の場合には、合成画像が記録される。
【0080】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態は、図1に示す第1の実施形態における標準画像評価部24の替わりに動き検出部25が設けられている点で第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては第1の実施形態と同様である。
【0081】
動き検出部25は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データA、B、Cに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出する。さらに、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成する。
【0082】
画像選択部23は、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0083】
動き検出部25における動き検出は、露光量の異なる複数の画像を表す画像データ、即ち、短時間露光によって得られた画像データAと、標準露光によって得られた標準画像データBと、長時間露光によって得られた画像データCとの内の2つ以上の画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係に基づいて行うようにしても良い。
【0084】
図10は、動き検出の具体例を説明するための図である。例えば、標準露光によって得られた標準画像データBにおけるある位置の画素の色成分R2、G2、B2の輝度レベルV(R2)、V(G2)、V(B2)の関係がV(R2)>V(G2)>V(B2)である場合に、長時間露光によって得られた画像データCにおける同じ位置の画素の色成分R3、G3、B3の輝度レベルV(R3)、V(G3)、V(B3)の関係がV(G3)>V(R3)>V(B3)のように変化したとすれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いた可能性が高い。一方、画像データCにおける同じ位置の画素の色成分R3、G3、B3の輝度レベルV(R3)、V(G3)、V(B3)の関係がV(R3)>V(G3)>V(B3)のままで変化しなかったとすれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いていない可能性が高い。
【0085】
露光量の異なる複数の画像を表す画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係の比較は、1フレームの画像の1つ又は複数の特定の画素に対して行っても良いし、1フレームの画像の全画素に対して行っても良い。例えば、比較対象の画素の内で色成分R、G、Bの輝度レベルの関係が変化した画素の数が閾値以上である場合に、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定する。一方、比較対象の画素の内で色成分R、G、Bの輝度レベルの関係が変化した画素の数が閾値未満である場合に、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定する。なお、上記「閾値」は、「1」でも良いし、「2」以上でも良い。
【0086】
また、露光量の異なる複数の画像を表す画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係の比較は、画素ではなく、所定の大きさを有する領域に対して行っても良い。例えば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)において、短時間露光によって得られた画像データAの色成分R1、G1、B1の輝度レベルの領域内平均値Va(R1)、Va(G1)、Va(B1)の関係がVa(R1)>Va(G1)>Va(B1)である場合に、標準露光によって得られた標準画像データBの色成分R2、G2、B2の輝度レベルの領域内平均値Va(R2)、Va(G2)、Va(B2)の関係がVa(R2)>Va(G2)>Va(B2)であり、長時間露光によって得られた画像データCの色成分R3、G3、B3の輝度レベルの領域内平均値Va(R3)、Va(G3)、Va(B3)の関係がVa(R3)>Va(G3)>Va(B3)であれば、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定する。一方、図7(B)に示す領域(1)〜(12)のいずれかにおいて、画像データA、B、Cの間で色成分R、G、Bの輝度レベルの領域内平均値の関係が異なっていれば、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定する。
【0087】
これによって、画素単位で撮影対象の動きを判定する際の誤判定を回避することができる。また、1枚の画像における全ての画素について比較を行わなくても良い。たとえば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)の内の幾つかの領域について評価を行っても良いし、1つの領域内の幾つかの画素について評価を行っても良い。
【0088】
第2の実施形態によれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いていない場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。一方、撮影対象が瞬間的に大きく動いている場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。
【0089】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態においては、例えば、自動車が走行する路面の状態が悪く、撮像部10が大きく振動して撮影対象(被写体)が瞬間的に大きくぶれた場合には、標準画像が記録され、それ以外の場合には、合成画像が記録される。
【0090】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。第3の実施形態は、図9に示す第2の実施形態における動き検出部25の替わりに加速度センサー26及び動き判定部27が設けられている点で第2の実施形態と異なっており、その他の点に関しては第2の実施形態と同様である。
【0091】
加速度センサー26は、例えば、撮像部10が設けられた自動車の車内に搭載されており、撮像部10に印加される加速度を感知して感知信号を出力する。動き判定部27は、加速度センサー26から出力される感知信号に基づいて、撮像部10が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定する。
【0092】
例えば、動き判定部27は、撮影期間において感知信号の振幅が閾値以上となった場合に、撮像部10が設定限度以上振動したと判定し、撮影期間において感知信号の振幅が閾値未満である場合に、撮像部10が設定限度以上振動していないと判定する。
【0093】
さらに、動き判定部27は、撮像部10が設定限度以上振動したと判定した場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成し、撮像部10が設定限度以上振動していないと判定した場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成する。
【0094】
画像選択部23は、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0095】
第3の実施形態によれば、撮像部10が大きく振動していない場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。一方、撮像部10が大きく振動している場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。
【符号の説明】
【0096】
10…撮像部、101…センサセルアレイ、101a…CCD、20…画像処理装置、21…画像データ取得部、211…画像切換部、212a〜212c…メモリー、22…ダイナミックレンジ拡張部、221…正規化部、222…画像信頼性評価部、223…画像合成部、224…トーンマップ処理部、23…画像選択部、24…標準画像評価部、25…動き検出部、26…加速度センサー、27…動き判定部、30…画像データ格納部
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通事故に関する情報を記録するために自動車に設置されるドライブレコーダー等において用いられる画像処理装置及び画像処理方法に関し、さらに、そのような画像処理装置を搭載した電子機器等に関する。
【背景技術】
【0002】
ドライブレコーダーは、自動車事故が発生した場合に、どの自動車の運転手に過失があったか等を立証するために用いられるので、明瞭な画像を記録する必要がある。しかしながら、例えば、ドライブレコーダーによってトンネルの出口付近を昼間に撮影した場合に、露光量が小さければ、トンネルの外の明るい被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの中の暗い被写体は黒くつぶれて撮影されてしまう(黒つぶれ)。一方、露光量が大きければ、トンネルの中の暗い被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの外の明るい被写体は白く飽和して撮影されてしまう(白とび)。
【0003】
そこで、ドライブレコーダーにおいて、ハイダイナミックレンジ合成(HDR:high dynamic range imaging)を用いることが考えられる。ハイダイナミックレンジ合成とは、露光量を変化させながら複数枚の画像を撮影し、それらを合成することによって、白とびや黒つぶれの少ない広大なダイナミックレンジを有する画像(HDR画像)を生成する技法である(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
ハイダイナミックレンジ合成によれば、自動車がトンネルの出口付近を走行する場合や逆光の場合に、白とびや黒つぶれの少ない画像を得ることができる。その一方で、被写体が瞬間的に大きく動いた場合には、露光量の異なる複数枚の画像を適切に合成できなくなり、不自然な画像となることがある。また、合成される複数枚の画像の輝度レベルが異なるので、合成の境目に擬似輪郭と呼ばれる虚像が出現する場合がある。さらに、合成によって画像のコントラストが低下し、HDR画像よりも通常の画像の方が鮮明になる場合もある。
【0005】
関連する技術として、特許文献2には、通常撮影モードで撮影を開始して、複数の領域毎の輝度積算値の平均値を算出し、明領域における明平均値と暗領域における暗平均値との差が所定値より小さい場合には通常撮影モードでの撮影を継続する一方、明平均値と暗平均値との差が所定値以上となった場合には撮影モードを合成撮影モードに切り替える撮像装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2の発明をドライブレコーダーに適用した場合に、1つのフレームにおける輝度積算値に基づいて次のフレームにおける撮影モードを切り替えたのでは、不明瞭な画像が撮影された後に撮影モードが切り替えられることになるので、不明瞭な画像が記録されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−263345号公報(段落0002−0009)
【特許文献2】特開2002−84449号公報(段落0077−0080、図13)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の幾つかの観点によれば、ドライブレコーダー等において被写体を撮影して画像信号を記録する際に、ハイダイナミックレンジ合成によって白とびや黒つぶれの少ない画像を得る一方、ハイダイナミックレンジ合成の欠点である画像の不自然さや擬似輪郭等を回避して、記録される画像の画質を改善することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の観点に係る画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する画像評価部とを具備する。
【0010】
ここで、画像評価部が、複数の画像の内の1つを表す1フレーム分の画像データについて、全ての色成分の輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分の輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成しても良い。
【0011】
本発明の第2の観点に係る画像処理装置は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、複数の画像データに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出し、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成する動き検出部とを具備する。
【0012】
本発明の第3の観点に係る画像処理装置は、撮像部を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、加速度を感知して感知信号を出力する加速度センサーと、加速度センサーから出力される感知信号に基づいて、撮像部が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定し、撮像部が設定限度以上振動したと判定した場合に、複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように選択信号を生成し、撮像部が設定限度以上振動していないと判定した場合に、合成画像データを選択するように選択信号を生成する動き判定部とを具備する。
【0013】
以上において、ダイナミックレンジ拡張部が、合成画像データのビット数を、複数の画像の内の1つを表す画像データのビット数に一致させる処理を行うトーンマップ処理部を含むようにしても良い。
【0014】
本発明の1つの観点に係る電子機器は、異なる露光量で撮影対象を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する撮像部と、撮像部によって生成される画像信号が供給される本発明のいずれかの観点に係る画像処理装置と、画像処理装置から出力される画像データを格納する画像データ格納部とを具備する。
【0015】
また、本発明の第1の観点に係る画像処理方法は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得するステップ(a)と、複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するステップ(b)と、複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成するステップ(c)と、選択信号に従って、複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力するステップ(d)とを具備する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影により得られる画像データの状態、又は、感知される加速度の大きさに従って、撮影により得られる複数の画像の内の1つを表す画像データと合成画像データとの内の一方を選択することにより、ハイダイナミックレンジ合成によって白とびや黒つぶれの少ない画像を得る一方、ハイダイナミックレンジ合成の欠点である画像の不自然さや擬似輪郭等を回避して、記録される画像の画質を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【図2】CCDカメラが異なる露光時間で撮影対象を撮影する動作を説明する図。
【図3】異なる露光時間の画像においてオレンジ色を構成する色成分を示す図。
【図4】画像合成処理の第1の例を説明するための図。
【図5】合成画像データにおける元の画像データの混合割合の例を示す図。
【図6】ドライブレコーダーによって撮影された画像の例を示す図。
【図7】標準画像の評価のために領域を設定する例を説明するための図。
【図8】図1に示す画像処理装置において行われる画像処理方法の例を示す図。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【図10】動き検出の具体例を説明するための図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。本発明の第1の実施形態によれば、交通事故に関する情報を記録するために自動車に設置されるドライブレコーダー等の電子機器を実現することができる。
【0019】
図1に示すように、この電子機器は、CCD(Charge Coupled Device)カメラ等によって構成される撮像部10と、半導体集積回路等によって構成される画像処理装置20と、SDカード等の記録媒体を用いる画像データ格納部30とを含んでいる。
【0020】
撮像部10は、異なる露光量で撮影対象(被写体)を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する。撮像部10によって生成される画像信号は、画像処理装置20に供給される。この画像信号は、ディジタル画像信号(画像データ)でも良いし、アナログ画像信号でも良い。画像処理装置20に供給される画像信号がアナログ画像信号である場合には、画像処理装置20が、アナログ画像信号をA/D(アナログ/ディジタル)変換して画像データを取得する。
【0021】
画像処理装置20は、取得した画像データに画像処理等を施すことにより、記録すべき画像データを生成して出力し、画像データ格納部30に画像データを記録させる。画像データ格納部30は、画像処理装置20から出力される画像データをSDカード等の記録媒体に格納する。なお、SDカードは、フラッシュメモリーに属する持ち運び可能な記録媒体である。
【0022】
以下の実施形態においては、撮像部10が、露光時間を変更することによって、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像データA、B、Cを生成する場合について説明する。画像データAによって表される画像の露光時間T1と、画像データBによって表される画像の露光時間T2と、画像データCによって表される画像の露光時間T3とは、T1<T2<T3の関係にあって、T1:T2:T3=2:3:6であるものとする。
【0023】
ここで、中間的な露光量が得られる露光時間T2を標準露光時間とし、標準露光時間で撮影された撮影対象の画像を標準画像とする。なお、4種類以上の露光量で撮影対象を撮影することにより4つ以上の画像を得る場合には、最小の露光量で撮影された画像及び最大の露光量で撮影された画像を除く画像の内から1つの画像を標準画像として選択すれば良い。また、各画像を表す画像データは、複数の色成分を含んでも良い。本実施形態においては、画像データが、R(赤)、G(緑)、B(青)の3色の色成分(例えば、各成分について8ビット)を含むものとする。
【0024】
以下の実施形態においては、撮像部の例として、CCDカメラについて説明する。図2は、CCDカメラが異なる露光時間で撮影対象を撮影する動作を説明するための図である。CCDカメラに搭載されるCCD101aを含むセンサセルアレイ101の露光領域には、CCD101aに蓄積された電荷を読み出すために3つの読出しラインL1、L2、L3が設けられている。CCD101aは、図中に示すスキャン方向に繰り返しスキャンされて、CCD101aに蓄積された電荷が読み出される。
【0025】
読出しラインL1は、最も多くのCCD101aに蓄積された電荷を読み出すと共に、CCD101aをリセットするために用いられる読出しラインである。リセットを伴う読出しは、破壊読出しとも呼ばれている。読出しラインL1から読み出された電荷は、図示しないAFE(Analog Front End)を介してA/D変換部に入力され、画像データに変換される。読出しラインL1から読み出された電荷に基づく画像データは、露光時間が最も長い画像を表す画像データCとなる。
【0026】
読出しラインL2から読み出された画像データは、標準露光時間による画像(標準画像)を表す画像データ(標準画像データ)Bとなる。また、読出しラインL3は、最も少ないCCD101aに蓄積された電荷を読み出すために用いられる読出しラインである。読出しラインL3から読み出された画像データは、露光時間が最も短い画像を表す画像データAとなる。なお、読出しラインL2、L3からの読出しは、いずれもリセットを伴わない非破壊読出しである。
【0027】
1回の撮影において、読出しラインL3からの非破壊読出しと、読出しラインL2からの非破壊読出しと、読出しラインL1からの破壊読出しとは、それぞれ独立に実行される。このような読出しタイミングの制御は、電子シャッター機能によって実現される。ただし、本発明は、このような構成に限定されるものではなく、撮像部の絞りを制御して露光量を変更するようにしても良い。
【0028】
再び図1を参照すると、画像処理装置20は、画像データ取得部21と、ダイナミックレンジ拡張部22と、画像選択部(SW2)23と、標準画像評価部24とを含んでいる。画像データ取得部21は、画像切換部(SW1)211と、複数のメモリー212a、212b、212cとを含み、撮像部10を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。
【0029】
画像切換部211は、撮像部10から順次供給される画像データA、B、Cを、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ振り分ける。これにより、メモリー212aは画像データAを蓄積し、メモリー212bは画像データBを蓄積し、メモリー212cは画像データCを蓄積する。
【0030】
ダイナミックレンジ拡張部22は、正規化部221と、画像信頼性評価部222と、画像合成部223と、トーンマップ処理部224とを含み、画像データ取得部21によって取得された複数の画像を表す画像データA、B、Cを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データDを生成する。
【0031】
正規化部221は、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積された画像データA、B、Cを読み出して正規化する。これと並行して、画像信頼性評価部222は、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積された画像データA、B、Cの信頼性を評価して、信頼性の評価結果を画像合成部223に供給する。
【0032】
画像合成部223は、画像信頼性評価部222から供給される信頼性の評価結果に基づいて、正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cをハイダイナミックレンジ合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された画像を表す合成画像データDを生成する。
【0033】
トーンマップ処理部224は、画像合成部223から出力されるダイナミックレンジが拡張された画像を表す合成画像データDのビット数を、画像データ取得部21によって取得された画像データのビット数(例えば、R、G、B成分の各々について8ビット)に一致させるトーンマップ処理を行う。
【0034】
画像選択部23は、選択信号に従って、画像データ取得部21によって取得された複数の画像の内の1つを表す画像データ(ここでは、標準画像データB)と、ダイナミックレンジ拡張部22によって生成された合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力される画像データは、画像データ格納部30によって記録媒体に格納される。
【0035】
標準画像評価部24は、画像データ取得部21によって取得された複数の画像の内の1つを表す画像データ(ここでは、標準画像データB)について、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成することにより、画像選択部23を制御する。
【0036】
即ち、ハイダイナミックレンジ合成によれば、自動車がトンネルの出口付近を走行する場合や逆光の場合に、白とびや黒つぶれの少ない画像を得ることができるが、その一方で、画像の不自然さ、擬似輪郭、コントラストの低下等を招く場合がある。また、ドライブレコーダーに要求される画像として、多くの場合には、標準露光で撮影された画像で十分である。そこで、標準画像評価部24は、標準画像データBの輝度レベルを評価することにより、標準画像データBを記録すべきか合成画像データDを記録すべきかの判断を行っている。
【0037】
次に、本発明の第1の実施形態に係る電子機器の動作例について詳しく説明する。
まず、図1に示す正規化部221において行われる正規化処理の例について説明する。以下の式において、「x、y」は画素の座標を表し、「R」はR成分を表す。正規化部221に入力される正規化前の画像データA、B、CのR成分の輝度レベルを、それぞれ、A_T1(x、y、R)、B_T2(x、y、R)、C_T3(x、y、R)とする。また、正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cの輝度レベルを、それぞれ、A_NT3(x、y、R)、B_NT3(x、y、R)、C_NT3(x、y、R)とする。正規化における両者の関係は、次式で表される。
【0038】
A_NT3(x、y、R)=A_T1(x、y、R)×(T3/T1)
B_NT3(x、y、R)=B_T2(x、y、R)×(T3/T2)
C_NT3(x、y、R)=C_T3(x、y、R)
これらの式は、画像データのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0039】
次に、図1に示す画像信頼性評価部222によって行われる画像データの信頼性評価の第1の例について説明する。図3は、異なる露光時間で同一の撮影対象を撮影することにより得られた画像においてオレンジ色を構成するR、G、B成分の輝度レベルを示している。図3において、横軸は、R、G、B成分を区別しており、縦軸は、各成分の輝度レベルを表している。また、図3(A)は、最も短い露光時間T1で撮影された画像を表す画像データAの輝度レベルを示し、図3(B)は、標準露光時間T2で撮影された画像を表す画像データBの輝度レベルを示し、図3(C)は、最も長い露光時間T3で撮影された画像を表す画像データCの輝度レベルを示している。
【0040】
画像信頼性評価部222は、輝度レベルに基づいて画像データの信頼性を評価することにより、信頼性の評価結果を表す値である信頼度を求める。本実施形態においては、輝度レベルが大きければS/N比が高くなることから、より大きい輝度レベルに、より高い信頼度を付与している。ただし、輝度レベルが高過ぎて最大値255に達している(飽和している)場合には、元の画像の正確な輝度レベルが得られない。従って、最大値255よりもやや低い輝度レベル(例えば、224)に、信頼度の最高値を付与するようにしている。
【0041】
このような信頼度の付与は、予め設定されている式に輝度レベルを代入するか、あるいは、輝度レベルに基づいてLUT(Look Up Table)を参照することによって実現される。以下に、画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルが224を超えた場合に信頼度E_T1(x、y、R)を算出するための式を例示する。
【0042】
if A_T1(x、y、R)>224
then E_T1(x、y、R)=(255−A_T1(x、y、R))/31
else E_T1(x、y、R)=A_T1(x、y、R))/224
これらの式は、画像データのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0043】
上式中の数字「31」は、輝度レベルの最大値255と信頼度が最高値となる輝度レベル224との差である。輝度レベルの最大値255と輝度レベル224との差によって、輝度レベルの最大値255と画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルとの差を除算することにより、画像データA_T1(x、y、R)の輝度レベルが飽和に近くなると信頼度を低下させることができる。
【0044】
画像信頼性評価部222は、以上述べた信頼性の評価を実行し、算出された信頼度を画像合成部223に出力する。なお、信頼度を算出する式は、上記のような形式に限定されるものではなく、出力特性やノイズ特性を考慮して輝度レベルの信頼性の指標となるものであれば、どのような形式のものであっても良い。また、信頼性の評価は、信頼度を用いることに限定されるものではなく、最も高い信頼性を有する画像データを特定する信号を出力するようにしても良い。
【0045】
上式に従って、図3(A)〜(C)に示す輝度レベルを評価すると、R成分については、図3(A)に示す画像データAのR成分R1が、図3(B)に示す画像データBのR成分R2や図3(C)に示す画像データCのR成分R3よりも高い信頼度を得る。また、G成分については、図3(B)に示す画像データBのG成分G2が、図3(A)に示す画像データAのG成分G1や図3(C)に示す画像データCのG成分G3よりも高い信頼度を得る。さらに、B成分については、図3(C)に示す画像データCのB成分B3が、図3(A)に示す画像データAのG成分B1や図3(B)に示す画像データBのG成分B2よりも高い信頼度を得ることになる。
【0046】
次に、図1に示す画像合成部223によって行われる画像合成処理の第1の例について説明する。画像合成部223は、R、G、B成分の各々について、画像データA、B、Cの内で信頼度が最も高い画像データを選択する。そして、選択された画像データのR、G、B成分を合成することにより、オレンジ色を表示する合成画像データDを生成する。
【0047】
図4は、画像合成処理の第1の例を説明するための図である。図4(A)、図4(B)、図4(C)は、図1に示す正規化部221によって正規化された画像データA、B、Cの各色成分の輝度レベルをそれぞれ示しており、図4(D)は、図1に示す画像合成部223によって合成された合成画像データDの各色成分の輝度レベルを示している。
【0048】
画像合成部223は、図4(A)に示す画像データAのR成分R1と、図4(B)に示す画像データBのG成分G2と、図4(C)に示す画像データCのB成分B3とを選択して合成することにより、図4(D)に示す合成画像データDを生成する。この合成画像データDは、図3(A)に示す輝度レベルが飽和していない短時間露光のR成分R1と、図3(B)に示す輝度レベルが適切な標準露光のG成分G2と、図3(C)に示す輝度レベルが改善された長時間露光のB成分B3とに基づいて生成されるので、図3(B)に示す標準露光の画像データBと比較してダイナミックレンジが拡張されている。
【0049】
ただし、図4(D)に示す合成画像データDにおいては、正規化によって、輝度レベルの最大値が255を超えている。そこで、図1に示すトーンマップ処理部224は、画像合成部223から出力される合成画像データDのビット数を、画像データ取得部21によって取得された画像データのビット数(ここでは、R、G、B成分の各々について8ビット)に一致させるトーンマップ処理を行う。このトーンマップ処理は、例えば、合成画像データDの各色成分の輝度レベルに(T1/T3)を掛けることによって行われる。
【0050】
次に、画像データの信頼性評価及び画像合成処理の第2の例について説明する。第2の例においては、画像合成部223が、露光量が異なる複数の画像データA、B、Cの同一の色成分を混合することにより、合成画像データDを生成する。そのために、画像信頼性評価部222は、信頼性評価結果として、複数の画像データA、B、Cの各色成分の混合割合(重み付け係数)を算出して画像合成部223に供給する。画像合成部223は、供給された混合割合に従って、複数の画像データA、B、Cの同一の色成分を混合する。
【0051】
このような混合の結果、画像データAのR成分R1と画像データBのR成分R2と画像データCのR成分R3とが混合されて、合成画像データDのR成分が生成される。同様に、画像データAのG成分G1と画像データBのG成分G2と画像データCのG成分G3とが混合されて、合成画像データDのG成分が生成される。また、画像データAのB成分B1と画像データBのB成分B2と画像データCのB成分B3とが混合されて、合成画像データDのB成分が生成される。混合されたR、G、B成分によって、合成画像データDが構成される。
【0052】
画像信頼性評価部222は、次のようにして、複数の画像データA、B、Cの各色成分の重み付け係数を決定しても良い。ここで、重み付け係数とは、画像データA、B、Cの混合割合を示すものであって、重み付け係数が大きいほど混合割合が大きいものとする。画像データAのR成分の重み付け係数W_T1(x、y、R)は、例えば、信頼度に基づいて、次式によって算出される。
【0053】
W_T1(x、y、R)=E_T1(x、y、R)/Esum
W_T2(x、y、R)=E_T2(x、y、R)/Esum
W_T3(x、y、R)=E_T3(x、y、R)/Esum
ただし、Esum=E_T1(x、y、R)+E_T2(x、y、R)+E_T3(x、y、R)である。これらの式は、画像データA、B、CのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0054】
画像信頼性評価部222によって算出された重み付け係数は、画像合成部223に供給される。画像合成部223は、それらの重み付け係数を画像データA、B、Cのそれぞれの色成分に乗算し、乗算後の輝度レベルを色成分毎に加算して、合成画像データDを生成する。
【0055】
D(x、y、R)=W_T1(x、y、R)×A_NT3(x、y、R)
+W_T2(x、y、R)×B_NT3(x、y、R)
+W_T3(x、y、R)×C_NT3(x、y、R)
これらの式は、画像データA、B、C、DのR成分に関するものであるが、G成分及びB成分についても同様に成立する。
【0056】
図5は、合成画像データにおける元の画像データの混合割合の例を示す図である。この例においては、合成画像データDのR、G、B成分が、全ての画像データA、B、CのR、G、B成分をそれぞれ含んでいるが、信頼性の最も低い画像データの色成分の重み付け係数をゼロに設定することにより、信頼性の最も低い画像データの色成分を排除しても良い。
【0057】
以上述べたダイナミックレンジ拡張処理によれば、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像データの信頼性を、画像データの色成分毎に評価することができる。また、評価された信頼性に基づいて、それらの画像データの色成分の内から信頼性の高い色成分を採用し、採用された色成分を合成して合成画像データを生成することができる。
【0058】
図6は、本発明が適用されるドライブレコーダーによって撮影された画像の例を示す図である。図6には、露光時間を3段階に変えてトンネルの出口付近を撮影して得られた画像、及び、それらの画像を合成して得られた合成画像が示されている。
【0059】
図6(A)は、短時間露光の画像を示している。短時間露光の場合には、トンネルの外の被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの中の被写体は黒つぶれによって不明瞭となる。一方、図6(C)は、長時間露光の画像を示している。長時間露光の場合には、トンネルの中の被写体は明瞭に撮影されるが、トンネルの外の被写体は白とびによって不明瞭となる。図6(B)は、標準露光の画像を示している。標準露光の場合には、トンネルの中の一部において黒つぶれが発生し、トンネルの外の一部において白とびが発生する。
【0060】
図6(D)は、図6(A)〜(C)に示す画像を合成して得られた合成画像を示している。図6(A)〜(C)に示す画像から、輝度が適切な領域(画素)の画像を切り出して合成することにより、黒つぶれや白とびのない1枚(1フレーム)の画像を得ることができる。
【0061】
次に、図1に示す標準画像評価部24によって行われる標準画像の評価の例について説明する。標準画像評価部24は、画像データ取得部21によって取得された1フレーム分の標準画像データBについて、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成する。
【0062】
このような評価は、フレーム毎に行われる。なお、上記の「少なくとも1つの領域」は、撮影された1枚の標準画像の一部の領域でも良いし、撮影された1枚の標準画像の全領域でも良い。また、上記の「閾値」は、「1」又は「2」以上でも良いし、少なくとも1つの領域における全画素数でも良い。
【0063】
例えば、標準画像評価部24は、1フレーム分の標準画像データBについて、領域X1において少なくともN1個(N1は自然数)の画素の色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値に達している場合(条件1)に、標準画像に白とびが発生するので合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択しても良い。
【0064】
あるいは、標準画像評価部24は、1フレーム分の標準画像データBについて、領域X2において少なくともN2個(N2は自然数)の画素の色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である場合(条件2)に、標準画像に黒つぶれが発生するので合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択しても良い。
【0065】
あるいは、標準画像評価部24は、条件1と条件2との内の一方又は両方を満たした場合に、合成画像データDを選択し、それ以外の場合には、標準画像データBを選択するようにしても良い。その場合に、領域X1と領域X2とは、等しくても良いし、異なっても良く、閾値N1と閾値N2とは、等しくても良いし、異なっても良い。
【0066】
図7は、標準画像の評価のために領域を設定する例を説明するための図である。この例においては、図7(A)に示すような1枚の標準画像を12分割することにより、図7(B)に示す領域(1)〜(12)において標準画像の各色成分の輝度レベルが評価される。
【0067】
図1に示す標準画像評価部24は、領域(1)〜(12)の内の少なくとも1つの領域において、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である画素の数が閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である画素の数が閾値以上である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成しても良い。
【0068】
例えば、標準画像評価部24は、領域(1)〜(12)の内の何れか1つの領域において、全画素の色成分R、G、Bの輝度レベルが飽和値である場合、及び/又は、全画素の色成分R、G、Bの輝度レベルがゼロ値である場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成し、それ以外の場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成する。
【0069】
これによって、画素単位で白とび又は黒つぶれを評価する際の誤評価を回避することができる。誤評価の原因としては、撮像部10の欠陥画素により、輝度レベルが常に飽和値又はゼロ値になる場合等が考えられる。また、1枚の標準画像における全ての画素について評価を行わなくても良い。例えば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)の内の幾つかの領域について評価を行っても良いし、1つの領域内の幾つかの画素について評価を行っても良い。
【0070】
次に、本発明の第1の実施形態に係る画像処理方法について、図1及び図8を参照しながら説明する。図8は、図1に示す画像処理装置において行われる画像処理方法の例を示すフローチャートである。なお、図1に示すダイナミックレンジ拡張部22〜標準画像評価部24の機能は、コンピューターが行うことも可能である。その場合に、それらのステップは、中央演算装置(CPU)と、CPUに各種の処理を行わせるためのソフトウェア(画像処理プログラム)とによって実現される。
【0071】
図8に示すステップS1において、画像データ取得部21が、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる1組の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。画像データA、B、Cは、メモリー212a、212b、212cにそれぞれ蓄積される。
【0072】
ステップS2〜S5において、ダイナミックレンジ拡張部22が、1組の画像を表す画像データA、B、Cを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データDを生成する。
【0073】
具体的には、ステップS2において、正規化部221が、メモリー212a、212b、212cからそれぞれ読み出された画像データA、B、Cの各色成分を正規化する。ステップS2と並行して、ステップS3において、画像信頼性評価部222が、画像データA、B、Cの各色成分の信頼性を評価する。
【0074】
ステップS2及びS3が終了すると、ステップS4において、画像合成部223が、R、G、Bの各色成分について、正規化された画像データA、B、Cの内から最も高い信頼性の評価結果を得た画像データを選択することにより、画像データA、B、Cを合成して合成画像データDを生成する。ステップS5において、トーンマップ処理部224が、合成画像データDのビット数を、標準画像データBのビット数に一致させる。
【0075】
ステップS2〜S5と並行して、ステップS6において、標準画像評価部24が、標準画像データBについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成する。
【0076】
ステップS5及びS6が終了すると、ステップS7において、画像選択部23が、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0077】
ステップS7が終了すると、処理がステップS1に戻って、画像データ取得部21が、次の1組の画像を表す画像データA、B、Cを取得する。取得すべき画像データが存在しない場合には、処理が完了する。
【0078】
第1の実施形態によれば、標準画像において白とびや黒つぶれが発生しない場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。一方、標準画像において白とびや黒つぶれが発生した場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。
【0079】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態においては、撮影対象(被写体)が瞬間的に大きく動いた場合(例えば、自動車の速度が一定値以上になった場合)には、標準画像が記録され、それ以外の場合には、合成画像が記録される。
【0080】
図9は、本発明の第2の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。第2の実施形態は、図1に示す第1の実施形態における標準画像評価部24の替わりに動き検出部25が設けられている点で第1の実施形態と異なっており、その他の点に関しては第1の実施形態と同様である。
【0081】
動き検出部25は、異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データA、B、Cに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出する。さらに、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成する。
【0082】
画像選択部23は、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0083】
動き検出部25における動き検出は、露光量の異なる複数の画像を表す画像データ、即ち、短時間露光によって得られた画像データAと、標準露光によって得られた標準画像データBと、長時間露光によって得られた画像データCとの内の2つ以上の画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係に基づいて行うようにしても良い。
【0084】
図10は、動き検出の具体例を説明するための図である。例えば、標準露光によって得られた標準画像データBにおけるある位置の画素の色成分R2、G2、B2の輝度レベルV(R2)、V(G2)、V(B2)の関係がV(R2)>V(G2)>V(B2)である場合に、長時間露光によって得られた画像データCにおける同じ位置の画素の色成分R3、G3、B3の輝度レベルV(R3)、V(G3)、V(B3)の関係がV(G3)>V(R3)>V(B3)のように変化したとすれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いた可能性が高い。一方、画像データCにおける同じ位置の画素の色成分R3、G3、B3の輝度レベルV(R3)、V(G3)、V(B3)の関係がV(R3)>V(G3)>V(B3)のままで変化しなかったとすれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いていない可能性が高い。
【0085】
露光量の異なる複数の画像を表す画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係の比較は、1フレームの画像の1つ又は複数の特定の画素に対して行っても良いし、1フレームの画像の全画素に対して行っても良い。例えば、比較対象の画素の内で色成分R、G、Bの輝度レベルの関係が変化した画素の数が閾値以上である場合に、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定する。一方、比較対象の画素の内で色成分R、G、Bの輝度レベルの関係が変化した画素の数が閾値未満である場合に、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定する。なお、上記「閾値」は、「1」でも良いし、「2」以上でも良い。
【0086】
また、露光量の異なる複数の画像を表す画像データにおける色成分R、G、Bの輝度レベルの関係の比較は、画素ではなく、所定の大きさを有する領域に対して行っても良い。例えば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)において、短時間露光によって得られた画像データAの色成分R1、G1、B1の輝度レベルの領域内平均値Va(R1)、Va(G1)、Va(B1)の関係がVa(R1)>Va(G1)>Va(B1)である場合に、標準露光によって得られた標準画像データBの色成分R2、G2、B2の輝度レベルの領域内平均値Va(R2)、Va(G2)、Va(B2)の関係がVa(R2)>Va(G2)>Va(B2)であり、長時間露光によって得られた画像データCの色成分R3、G3、B3の輝度レベルの領域内平均値Va(R3)、Va(G3)、Va(B3)の関係がVa(R3)>Va(G3)>Va(B3)であれば、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定する。一方、図7(B)に示す領域(1)〜(12)のいずれかにおいて、画像データA、B、Cの間で色成分R、G、Bの輝度レベルの領域内平均値の関係が異なっていれば、動き検出部25は、撮影対象が設定限度以上動いたと判定する。
【0087】
これによって、画素単位で撮影対象の動きを判定する際の誤判定を回避することができる。また、1枚の画像における全ての画素について比較を行わなくても良い。たとえば、図7(B)に示す領域(1)〜(12)の内の幾つかの領域について評価を行っても良いし、1つの領域内の幾つかの画素について評価を行っても良い。
【0088】
第2の実施形態によれば、撮影対象が瞬間的に大きく動いていない場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。一方、撮影対象が瞬間的に大きく動いている場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。
【0089】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。第3の実施形態においては、例えば、自動車が走行する路面の状態が悪く、撮像部10が大きく振動して撮影対象(被写体)が瞬間的に大きくぶれた場合には、標準画像が記録され、それ以外の場合には、合成画像が記録される。
【0090】
図11は、本発明の第3の実施形態に係る電子機器の構成例を示すブロック図である。第3の実施形態は、図9に示す第2の実施形態における動き検出部25の替わりに加速度センサー26及び動き判定部27が設けられている点で第2の実施形態と異なっており、その他の点に関しては第2の実施形態と同様である。
【0091】
加速度センサー26は、例えば、撮像部10が設けられた自動車の車内に搭載されており、撮像部10に印加される加速度を感知して感知信号を出力する。動き判定部27は、加速度センサー26から出力される感知信号に基づいて、撮像部10が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定する。
【0092】
例えば、動き判定部27は、撮影期間において感知信号の振幅が閾値以上となった場合に、撮像部10が設定限度以上振動したと判定し、撮影期間において感知信号の振幅が閾値未満である場合に、撮像部10が設定限度以上振動していないと判定する。
【0093】
さらに、動き判定部27は、撮像部10が設定限度以上振動したと判定した場合に、標準画像データBを選択するように選択信号を生成し、撮像部10が設定限度以上振動していないと判定した場合に、合成画像データDを選択するように選択信号を生成する。
【0094】
画像選択部23は、選択信号に従って、標準画像データBと合成画像データDとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する。画像選択部23から出力された画像データは、画像データ格納部30によって記録される。
【0095】
第3の実施形態によれば、撮像部10が大きく振動していない場合には、合成画像を選択することにより、白とびや黒つぶれのない合成画像が記録されることになる。一方、撮像部10が大きく振動している場合には、標準画像を選択することにより、画像の不自然さや擬似輪郭のない標準画像が記録されることになる。
【符号の説明】
【0096】
10…撮像部、101…センサセルアレイ、101a…CCD、20…画像処理装置、21…画像データ取得部、211…画像切換部、212a〜212c…メモリー、22…ダイナミックレンジ拡張部、221…正規化部、222…画像信頼性評価部、223…画像合成部、224…トーンマップ処理部、23…画像選択部、24…標準画像評価部、25…動き検出部、26…加速度センサー、27…動き判定部、30…画像データ格納部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
前記複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って前記選択信号を生成する画像評価部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
前記複数の画像データに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出し、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成する動き検出部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項3】
撮像部を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
加速度を感知して感知信号を出力する加速度センサーと、
前記加速度センサーから出力される感知信号に基づいて、前記撮像部が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定し、前記撮像部が設定限度以上振動したと判定した場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成し、前記撮像部が設定限度以上振動していないと判定した場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成する動き判定部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項4】
前記画像評価部が、前記複数の画像の内の1つを表す1フレーム分の画像データについて、全ての色成分の輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分の輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成し、それ以外の場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ダイナミックレンジ拡張部が、前記合成画像データのビット数を、前記複数の画像の内の1つを表す画像データのビット数に一致させる処理を行うトーンマップ処理部を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
異なる露光量で撮影対象を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部によって生成される画像信号が供給される請求項1〜5のいずれか1項記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置から出力される画像データを格納する画像データ格納部と、
を具備する電子機器。
【請求項7】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得するステップ(a)と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するステップ(b)と、
前記複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成するステップ(c)と、
前記選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力するステップ(d)と、
を具備する画像処理方法。
【請求項1】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
前記複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って前記選択信号を生成する画像評価部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
前記複数の画像データに基づいて、少なくとも1つの領域における撮影対象の相対的な動きを検出し、撮影対象が設定限度以上動いたと判定した場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成し、撮影対象が設定限度以上動いていないと判定した場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成する動き検出部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項3】
撮像部を用いて異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得する画像データ取得部と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するダイナミックレンジ拡張部と、
選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力する画像選択部と、
加速度を感知して感知信号を出力する加速度センサーと、
前記加速度センサーから出力される感知信号に基づいて、前記撮像部が撮影時に設定限度以上振動したか否かを判定し、前記撮像部が設定限度以上振動したと判定した場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成し、前記撮像部が設定限度以上振動していないと判定した場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成する動き判定部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項4】
前記画像評価部が、前記複数の画像の内の1つを表す1フレーム分の画像データについて、全ての色成分の輝度レベルが飽和値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合、及び/又は、全ての色成分の輝度レベルがゼロ値である画素の数が少なくとも1つの領域において閾値以上である場合に、前記合成画像データを選択するように前記選択信号を生成し、それ以外の場合に、前記複数の画像の内の1つを表す画像データを選択するように前記選択信号を生成する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記ダイナミックレンジ拡張部が、前記合成画像データのビット数を、前記複数の画像の内の1つを表す画像データのビット数に一致させる処理を行うトーンマップ処理部を含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の画像処理装置。
【請求項6】
異なる露光量で撮影対象を撮影し、異なる露光量で撮影対象が撮影された複数の画像を表す画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部によって生成される画像信号が供給される請求項1〜5のいずれか1項記載の画像処理装置と、
前記画像処理装置から出力される画像データを格納する画像データ格納部と、
を具備する電子機器。
【請求項7】
異なる露光量で撮影対象を撮影することにより得られる複数の画像を表す画像データを取得するステップ(a)と、
前記複数の画像を表す画像データを合成することにより、ダイナミックレンジが拡張された1つの画像を表す合成画像データを生成するステップ(b)と、
前記複数の画像の内の1つを表す画像データについて、少なくとも1つの領域の少なくとも1つの画素における輝度レベルを評価し、評価結果に従って選択信号を生成するステップ(c)と、
前記選択信号に従って、前記複数の画像の内の1つを表す画像データと前記合成画像データとの内の一方を選択し、選択された画像データを出力するステップ(d)と、
を具備する画像処理方法。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図6】
【図7】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−93786(P2013−93786A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235733(P2011−235733)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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