説明

画像処理装置及び方法

【課題】 白黒プリンタで、グラフィックの中にグラフィックと同じ色値の文字を描いたようなデータでは、ディスプレイではグラフィックと同じ濃度の文字はグラフィックにとけ込み目視することができないが、プリントアウトするとハーフトーンの違いにより文字が浮き出てしまう
【解決手段】 背景のグラフィックの濃度とその上に描画される文字の濃度を比較して、同じ濃度の場合は文字の属性をグラフィックにあわせ、背景と同じハーフトーンにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDL(Printer Description Language)を利用したプリントに関するもので、オブジェクトに適した画像処理を行う画像処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在PDL(Printer Description Language)を利用したプリンタではテキスト、グラフィック、イメージのそれぞれのオブジェクトに適した画像処理を適用することがカラープリンタだけでなく、モノクロプリンタでも一般化している。例えばテキスト、グラフィック、イメージに最適なハーフトーンを切り替え、細かい構造がメインの文字は高い線数のハーフトーンを用いて高解像度で再現して文字の再現を良くし、グラフィックやイメージの階調部では階調を重視した低い線数を用いて階調の安定性を図っている。また、白黒プリンタでは文字をくっきり見せるために文字部のコントラストをあげてさらに文字の再現を向上させたものをある。
【特許文献1】特開2000-115561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のオブジェクトに適した画像処理を適用した弊害として、図1のaように黄色のグラフィックの背景にグレーの文字を記載し文字を強調していたものを、この文字は見せたくないとユーザーが判断し後で修正もあるかもしれないということで文字を残し見えなくするために、文字を消すのではなく背景の黄色を文字と同じ色に変更したような場合、図1のbのように文字と同じ色値のグラフィックが指定されているため画面ではグラフィックと同じ濃度の文字はグラフィックにとけ込み目視することができなくなる。しかし、上記オブジェクトに適した画像処理を適用した白黒プリンタでプリントアウトするとハーフトーンやコントラストの違いにより、図1のcのように文字が浮き出てしまう現象が発生していた。
【0004】
すなわちユーザーがプリントアウトする前にみている画面とプリントアウトしたものが異なる現象が起きていた。
【0005】
従来処理の概略処理内容を図2を用いて以下に記載する。
【0006】
アプリケーションなどで描いた図1のbのPDLコマンドはStep201のPDL解釈部で解釈されStep202の描画命令のDisplay Listになる。そこでは簡単に説明すると図4の描画命令のような形式になる。次のこの描画命令からStep203のRIP部で描くオブジェクトの上下関係によりビットマップと属性信号が生成される。ビットマップとしては色値だけなので図1のbのようになる。次に属性信号としては文字部、グラフィック部と分けられ図4のbのようになる。ここではグレー部がグラフィックで、黒が文字部を示す。また文字の部分を拡大したものが図cになる。次にStep204とStep205でオブジェクトに応じた画像処理が行われる。Step204ではγ処理、Step205ではハーフトーン処理がそれぞれ行われる。その際、文字は文字らくしく高解像度に、グラフィック、イメージは階調を滑らかになるよう図3のような設定で処理される。具体的にはテキストはコントラストをあげ、高線数で文字をくっきり、高解像度に出力され、グラフィック、イメージはそのままに低線数で階調を安定化して滑らかに出力され、図4のdのように出力される。ここでみてわかるが文字の部分がグラフィックの部分より濃度が高くなり図1のcのような出力として出力されることがあった。図3の処理の内容は一例であってこれに限ったものではないことは言うまでもない。
【0007】
また、図12のbのようにオブジェクトごとにハーフトーンを描画しているようなときはパターンの書き出し位置が赤枠で囲ったようにドットが重なってしまうなどの現象で同じパターンにしても文字とグラフィックの境界が見えることがある。図12のaのようにオブジェクトごとにハーフトーンを描画するのではなく描画するときの全体の座標でハーフトーンを描画しているときは問題とならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明では、上記課題を解決するため文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較して、同じ濃度の場合は文字属性をグラフィックに合わせる。これにより背景のグラフィックと文字の画像処理が同じになり、処理の違いによる文字部の浮き出しを防止することが可能となる。
【0009】
図1のbのような描画に関しては本来文字の下に描かれるグラフィックは文字の部分を白くクリップされその部分に文字を描くことになるが、図12のbのようにオブジェクトごとにハーフトーンを描画しているようなときの網点の書き出し位置が異なっているときは、図9のようなときはグラフィックの上に文字を描画するところを文字の上にグラフィックを描画するように描画を変更する。また、図11のような文字が完全にグラフィックで隠れてしまうようなときは文字の描画を削除してしまう。そうすることで従来のような画面で見えないものがプリントして見えてくるようなことが防ぐ効果がある。また、文字の描画をなくすことで文字を描画する時間も短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
以上から本発明では、文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較して、同じ濃度の場合は文字属性をグラフィックに合わせる。これにより背景のグラフィックと文字の画像処理が同じになり、処理の違いによる文字部の浮き出しを防止することが可能となる。
【0011】
また、文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較して、同じ濃度の場合は文字の描画をグラフィックの描画の下にすることで、グラフィック部はグラフィックだけになり背景のグラフィックだけになることで、画像処理の違いによる文字部の浮き出しを根本的に防止することが可能となる。
【0012】
さらに、文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較し、同じ濃度の場合でさらに文字部がグラフィック部にすべて入るときは文字の描画を削除することで、グラフィック部はグラフィックだけになり背景のグラフィックだけになることで、画像処理の違いによる文字部の浮き出しを根本的に防止することが可能となる。また、第3の実施例では文字の描画をなくすことで文字を描画する時間も短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(第一の実施例)
本発明の第1の実施例を図5のシステム構成図と図6の処理フォローを用いて説明する。
【0014】
まずはじめにシステム構成を図5を用いて説明する。PCパーソナルコンピュータ(501)内のアプリやドライバなどによって作成されたPDL(Printer Description Language)データがネットワーク(502)を介して、プリンタ(503)に送られる。プリンタに送られたPDLデータはPDL解釈部(504)でPDLで書かれたコマンドを解釈し、それぞれのコマンドをDisplay Listに変換し、RIP(Raster Image Processer)でビットマップと属性信号に変換されたデータは随時メモリーRAM(509)やハードディスクHD(507)に格納され、画像処理部(505)でγ変換のコントラスト変換や濃度変換、ハーフトーン処理などさまざまな画像処理が行われ、プリンタエンジン部(506)に送られプリント印刷される。また、各種設定などはユーザーインターフェースUI(510)により指定できるようになっており、それらの命令や前記各種処理の制御は中央演算部CPU(508)により制御されている。
【0015】
次に本件の処理フローを図6を用いて説明する。アプリケーションなどで描いた図1のbのPDLコマンドはStep201のPDL解釈部で解釈されStep202の描画命令のDisplay List(DL)になる。そこでは簡単に説明すると図4の描画命令のような形式になる。次のこの描画命令からStep203のRIP部で描くオブジェクトの上下関係によりビットマップと属性信号が生成される。ビットマップとしては色値だけなので図1のbのようになる。次に属性信号としては文字部、グラフィック部と分けられ図7のaのようになる。ここではグレー部がグラフィックで、黒が文字部を示す。また文字の部分を拡大したものが図bになる。次にStep601で作成されたビットマップの色値と属性信号の比較を行い必要な部分に関しては属性変更Flagを生成する。この必要な部分というのが図4のaのような描画にあたる。この図4のaのような描画を判断する方法としては、図7のbのような1x6のようなウィンドウの中でグラフィックに囲まれた文字部を検索する、その次にグラフィックに囲まれた文字部の色値と囲んだグラフィック部の色値を比較して同じであれば属性変更Flagを0から1に変更し、属性変更Flagを生成する。ここでは説明を簡単にするため1x6のウィンドーで説明したがこれに限ったことではないことはいうまでもなく、6x6などでもかまわない。また、ここでは色値を比較しているが濃度値、輝度値でもかまわなく、本件と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0016】
次に属性変更Flagがあるかどうかを属性変更Flagが0か1かをStep602で判断する。判断した結果が1でYesならばStep603で図7のbの属性信号の文字部を図7のcのグラフィックに属性変更する。次にStep204とStep205でオブジェクトに応じた画像処理が行われる。その際、Step603で属性信号を図7のcに変更しているのでStep204のγ処理、Step205のハーフトーン処理は図3に示しているように本来文字の部分もグラフィックになっているためグラフィックと同じ処理になり、結果図7のdのようになる。すなわち従来では文字部が浮き出てしまったが、本処理フローにより画面と同じようにすることができる。
【0017】
以上から文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較して、同じ濃度の場合は文字属性をグラフィックに合わせる。これにより背景のグラフィックと文字の画像処理が同じになり、処理の違いによる文字部の浮き出しを防止することが可能となる。
【0018】
(第二の実施例)
本発明の第一の実施例では図12のbのようにオブジェクトごとにハーフトーンを描画しているようなときはパターンの書き出し位置が赤枠で囲ったようにドットが重なってしまうなどの現象で第1の実施例のように同じパターンにしても文字とグラフィックの境界が見えることがある。
【0019】
そこで第一の実施例よりは処理が複雑になるが、前記のような場合でも効果がある例を図8の処理フローを用いて以下に説明する。
【0020】
アプリケーションなどで描いた図9のaのように文字の一部がグラフィックと重なっているときにおいて、PDLコマンドはStep201のPDL解釈部で解釈されStep202の描画命令のDisplay List(DL)になる。そこでは簡単に説明すると図9の描画命令(1)のような形式になる。この際描画命令(2)の文字はグラフィックに一部かかるように描画されるように位置が指定されている。そこでStep801でグラフィック部の色値と文字部の色値を比較して、同じなら文字とグラフィックが重なるように描画されるようになっているか判断し、もしグラフィックの上に文字が重なるようになっていた場合は描画変更Flagを0から1に変更する。
【0021】
次のStep802で描画変更Flagが0か1か判断し、1であるときはStep803へ、0であるときはStep203へ進む。Step803では図9の描画命令(1)から描画命令(2)のようにグラフィックの上に文字を描くのではなく文字の上にグラフィックを描くように変更する。こうすることでグラフィック上の文字がなくなるので処理の違いによる文字部の浮き出しを根本的に防ぐことが可能になる。
【0022】
次にStep203で描画命令からビットマップと属性信号を生成する。この際属性信号はグラフィック部の上にいた文字はStep803でグラフィックの下に移動したので、文字の属性はグラフィックに上書きされグラフィック部の文字は最終的にはグラフィックになる。次にStep204とStep205でオブジェクトに応じた画像処理が行われる。その際、Step803で描画命令を変更しているのでStep204のγ処理、Step205のハーフトーン処理は本来グラフィック部の上の文字のところもグラフィックになっているためグラフィック処理になり、結果図8のbのようになる。すなわち従来では文字部が浮き出てしまったが、本処理フローにより画面と同じようにすることができる。
【0023】
以上から文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較して、同じ濃度の場合は文字の描画をグラフィックの描画の下にすることで、グラフィック部はグラフィックだけになり背景のグラフィックだけになることで、画像処理の違いによる文字部の浮き出しを根本的に防止することが可能となる。
【0024】
(第三の実施例)
本発明の第二の実施例では描画の順序を変えるだけだったが、図11のようにグラフィック部に文字が完全に覆われるようときは文字を描く必要がないので描かなくするように図10のSetp801で文字の重なり具合を判断し、一部重なっているときはFlagを1にして、完全に重なっているときはFlagを2にするようにした。この描画変更Flagを参照し、Flagが1のときは第2の実施例のように図9の描画命令(1)から描画命令(2)のようにグラフィックの上に文字を描くのではなく文字の上にグラフィックを描くように変更する。Flagが2のときは図11の描画命令(3)のように文字の部分の描画命令を削除する。
【0025】
以上から文字背景のグラフィックの色値とその上の文字の色値を比較し、同じ濃度の場合でさらに文字部がグラフィック部にすべて入るときは文字の描画を削除することで、グラフィック部はグラフィックだけになり背景のグラフィックだけになることで、画像処理の違いによる文字部の浮き出しを根本的に防止することが可能となる。また、第3の実施例では文字の描画をなくすことで文字を描画する時間も短縮することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】従来描画例。
【図2】従来例の処理フロー。
【図3】従来例の画像処理設定。
【図4】従来例のデータの流れ。
【図5】本実施例のシステム構成例。
【図6】本実施例の処理フロー。
【図7】本実施例のデータの流れ。
【図8】本実施例の処理フロー。
【図9】本実施例の描画命令と描画例。
【図10】本実施例の処理フロー。
【図11】本実施例の描画命令と描画例。
【図12】ハーフトーン描画例。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PDL(プリンタ記述言語)を解釈する手段を有し、文字の背景のグラフィックの色値と前記グラフィック部の上に描画される文字の色値を比較する比較手段、同じ色値の場合は文字の属性をグラフィックに変更する手段を有する画像処理装置及び方法。
【請求項2】
PDL(プリンタ記述言語)を解釈する手段を有し、文字の背景のグラフィックの色値と前記グラフィック部の上に描画される文字の色値を比較する比較手段、同じ色値の場合は文字の描画をグラフィックの下に変更する描画変更手段を有する画像処理装置及び方法。
【請求項3】
請求項2記載の画像処理装置で描画変更手段において、同じ色値で文字がグラフィック部にすべて含まれ描画される場合は文字の描画を削除する描画削除手段を有することを特徴とする画像処理装置及び方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−129342(P2009−129342A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306043(P2007−306043)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】