説明

画像処理装置及び方法

【課題】ノイズ除去処理によるエッジぼけの発生を防止することができる画像処理装置及び方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る画像処理装置では、ウェーブレット変換部は、入力画像に対してウェーブレット変換を実行して、低周波数成分と複数の高周波数成分とを含み、それぞれ異なる基準を有する複数の分解レベルに入力画像を分解する。補償テンプレート生成部は、各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて、該分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映するための補償テンプレートを生成する。ノイズ除去部は、各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、補償テンプレートを利用して、該分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実行する。ウェーブレット逆変換部は、補償処理後の低周波数成分と高周波数成分とを利用してウェーブレット逆変換を実行して、ノイズ除去処理後の画像を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は画像処理技術に関し、特に、ウェーブレット変換を利用して入力画像に対してノイズ除去処理を実施する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノイズ除去は画像処理技術における一つの重要なアイテムである。有効なノイズ除去方法として、ウェーブレット変換が広く応用されている。
【0003】
ウェーブレットノイズ除去方法において、先ずウェーブレット変換を利用して入力画像を複数分解レベルに分解し、その後、少なくとも2つの分解レベルにおける各分解レベルの異なる基準に依存するパラメータを利用して、この2つの分解レベルのウェーブレット係数に対して縮小拡大を実行し、ウェーブレット係数に対して補正を行うことにより、ノイズ処理効果を改善させる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0210186A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、ノイズ除去処理によるエッジぼけの発生を防止することができる画像処理装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る画像処理装置は、ウェーブレット変換部と、補償テンプレート生成部と、ノイズ除去部と、ウェーブレット逆変換部とを備える。ウェーブレット変換部は、入力画像に対してウェーブレット変換を実行して、低周波数成分と複数の高周波数成分とを含む複数の分解レベルであって、それぞれ異なる基準を有する複数の分解レベルに前記入力画像を分解する。補償テンプレート生成部は、前記ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて、該分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映するための補償テンプレートであって、各分解レベルに対応する補償テンプレートを生成する。ノイズ除去部は、各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、各分解レベルの補償テンプレートを利用して、該分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実行し、補償処理後の低周波数成分を得る。ウェーブレット逆変換部は、各分解レベルにおける補償処理後の低周波数成分と高周波数成分とを利用してウェーブレット逆変換を実行して、ノイズ除去処理後の画像を得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、本実施形態の一例に基づく画像処理方法を示すフロー図である。
【図2】図2は、図1に基づく一例において補償テンプレートを生成する方法の具体的な例を示すフロー図である。
【図3】図3は、補償テンプレートを利用して各分解レベルのノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を実施する具体的な例を示すフロー図である。
【図4】図4は、本実施形態の他の一例に基づく画像処理方法を示すフロー図である。
【図5】図5は、本実施形態の一例に基づく画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、本実施形態の具体的な一例に基づくノイズ除去部の構成を示すブロック図である。
【図7】図7は、本実施形態の具体的な一例に基づく高周波数成分を利用して補償テンプレートを生成する方法を示す図である。
【図8】図8は、本実施形態の実施例を実現可能なコンピュータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態では、ウェーブレット変換を利用して入力画像に対してノイズ除去処理を実施する画像処理装置および画像処理方法に関する。
【0009】
以下では、本発明の基本的理解のために、本発明の一つの実施形態についての概要を紹介する。この概要は、本発明の鍵となる部分あるいは重要な部分を確定するものではなく、また本発明の範囲を限定するものでもない。その目的は、ただ簡略的に説明することによって、その後に説明する更に詳細な記述のイントロダクションのために説明するものである。
【0010】
本実施形態における画像処理装置によれば、入力画像に対してウェーブレット変換を実行し、この入力画像をそれぞれ異なる基準を有する複数の分解レベルに分解し、各分解レベルは、低周波数成分と複数の高周波線分を含むものであるウェーブレット変換部と、ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいてこの分解レベルに対する補償テンプレートを生成し、この補償テンプレートはこの分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映するための補償テンプレート生成部と、各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、各分解レベルの補償テンプレートを利用してこの分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実行し、補償処理後の低周波数成分を得るためのノイズ除去部と、各分解レベルの補償処理後の低周波数成分と高周波数成分を利用してウェーブレット逆変換を実行し、ノイズ除去処理後の画像を得るためのウェーブレット逆変換部とを具備することを特徴とする。
【0011】
また、本実施形態における画像処理方法によれば、入力画像に対してウェーブレット変換を実行して、該入力画像をそれぞれ異なる基準を有しかつ低周波数成分と複数の高周波線分を含む複数の分解レベルに分解し、ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて該分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映する補償テンプレートを生成し、各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、かつ該分解レベルの補償テンプレートを利用してこの分解レベルのノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を実行し、更に、各分解レベルの補償処理後の低周波数成分と高周波数成分を利用してウェーブレット逆変換を実行し、ノイズ除去処理後の画像を得ることを特徴とする。
また、本実施形態では、上記方法を実現するためのプログラムを含む。
【0012】
さらに、本実施形態では、コンピュータが読み取り可能な媒体形式のプログラム製品を含み、そのプログラム製品は、上記方法を実現するためのプログラムコードを読み取ることができる。
【0013】
以下、図面を参照しながら本実施形態の説明することにより、さらに本実施形態の目的、特徴、利点を理解し易くすることができる。図面中の構成は、ただ本実施形態の原理を示すためのものである。図面において、同じあるいは類似の技術的特徴あるいは構成は、同様のあるいは類似の図面表記を用いて表現することとする。
【0014】
以下、図面を参照しながら本実施形態について説明をする。なお、説明において、一つの図面あるいは一つの実施形態において記載した構成や特徴は、一つあるいは複数の他の図面あるいは実施形態において示した構成や特徴の組み合わせることができる。さらに、明瞭にするため、図面や説明において本実施形態と無関係な内容や、当業者にとって周知の構成や処理については、表示や記載を省略する。
【0015】
本実施形態の一例において、ウェーブレット変換を利用して入力画像に対してノイズ除去処理を実施するための画像処理装置および画像処理方法を示す。
【0016】
本実施形態に係る装置や方法は、各種の画像に対するノイズ除去処理を実施するために適用することができる。例えば、本実施形態に係る装置や方法は、医用画像に対するノイズ除去に適用することができる。ここで言う医用画像は、医用画像生成装置にて得られた被検体のデータに基づいて作成された画像である。ここで言う医用画像生成装置は、X線画像診断装置、超音波(UL)画像診断装置、コンピュータ断層(CT)画像診断装置、核磁気共鳴画像(MRI)診断装置、PET装置等であるが、この限りではない。具体的に言えば、本実施形態に係る装置や方法において処理された入力画像は、医用画像生成装置を利用して、同一部位の異なる領域に対して撮影を行って得られたものであり、例えば、CT装置により得られた患者の脳動脈に関する画像等である。ただし、これに限らず、これはただの一例にすぎない。
【0017】
なお、本実施形態における装置や方法は、n次元画像に対して適用することができる(n=1,2,3,・・・,N N≧1)。
【0018】
図1は、本実施形態の一例に基づく画像処理方法を示すフロー図である。
【0019】
ウェーブレットノイズ除去方法を利用してノイズ除去処理を実施する場合、画像における必要な情報も平滑化されてしまう可能性があり、画像がぼけてしまうことになる。この実施形態においては、先ず、ウェーブレット変換を利用して入力画像を異なる基準(尺度)を有する複数の分解レベルに分解し、分解レベル毎に低周波数成分と複数の高周波数成分を含む。その後、各分解レベルの高周波数成分を利用して、これら高周波数成分の組み合わせ特徴を反映する補償テンプレートを生成し、該補償テンプレートを利用してノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を実施する。このような処理方法を採用することによって、ノイズ除去処理によるエッジぼけの発生を防止することができる。
【0020】
図1に示すように、該画像処理方法は、ステップ102、104、106、108、110、112を含む。
【0021】
ステップ102において、入力画像に対してウェーブレット変換を実行し、該入力画像を複数分解レベルに分解する。各分解レベルはそれぞれ異なる基準(尺度)を有する。本実施形態において、例えばウェーブレット変換により入力画像をm+1級(即ち、第0、1、・・・、m級)に分解したとする。図1に示すように、後続の処理は、最高基準級(例えば、第m級)から開始する。
【0022】
選択的に、級数m+1は任意の数値に設定することができ、例えば、2、3あるいは4など(即ち、mは1、2、あるいは3等)に設定できる。ただし、ここでは便宜上、実際の適用に基づいてウェーブレット分解の級数を決定できるものであり、上述の具体的な数値に限定されるものではない。なお、いずれかの適切な計算方法によるウェーブレット変換を採用することができ、例えば、直交ウェーブレット変換や、双直交ウェーブレット変換等の方法を採用することができる。ただし、本実施形態はこれらの具体的なウェーブレット変換方法に限定されるものではない。
【0023】
つづいて、ステップ104において、ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて、該分解レベルに対する補償テンプレートを生成する。生成された補償テンプレートは、入力画像の該分解レベルにおいて保留されるエッジ情報を反映する。ウェーブレット変換後に、比較的大きい基準(尺度)の分解レベルの各方向の高周波数成分において、いくつかの情報(例えば、エッジや筋模様等)を保留できる。それゆえ、各分解レベルの複数の高周波数成分を組み合わせて補償テンプレートを生成し、生成された補償テンプレートは該分解レベルの高周波数成分の組み合わせ特徴を反映させ、更に、入力画像の該分解レベルの各方向の高周波数成分において保留されたエッジ情報を反映させることができる。
【0024】
例えば、入力画像を2次元画像とすると、ウェーブレット変換後、各一基準(尺度)分解レベルはLL、HL、LHおよびHHの4つの周波数成分(即ち、周波数サブボリューム)を有し、その中で、LLはXとYの2方向において均等な低周波数を示し、これを低周波数成分と呼ぶ。HL、LHおよびHHのそれぞれはXとYの2方向のいずれか一方向において高周波数を示す。例えば、HLはX方向において高周波数を示し、かつY方向において低周波数を示す。LHはX方向において低周波数を示し、かつY方向において高周波数を示す。HHはXとYの2方向において高周波数を示す。これにより、HL、LHおよびHHは3つの異なる方向において高周波数を示す。また、例えば、入力画像を3次元画像とすると、ウェーブレット変換後、各分解レベルはLLL、LHL、LHH、LLH、HLL、HHL、HLHおよびHHHの8つの周波数成分を有し、その中で、LLLはX、YおよびZの3方向において均等な低周波数を示し、これを低周波数成分と呼ぶ。LHL、LHH、LLH、HLL、HHL、HLHおよびHHHのそれぞれはX、YおよびZの3方向の少なくとも一方向において高周波数を示す。例えば、LHLはXとZの2方向において低周波数を示し、Y方向において高周波数を示す。その他についても同様にして類推することができる。このようにして、LHL、LHH、LLH、HLL、HHL、HLHおよびHHHは7つの異なる方向の高周波数成分を成す。図7では入力画像が3次元画像の場合の一例を示す。図7の一例において、ウェーブレット変換により得られた各一基準分解レベルはLLH、LHL、LHH、LLH、HLL、HHL、HLHおよびHHHの7つの方向の高周波数成分を有し、この7つの高周波数成分を組み合わせることにより該分解レベルの補償テンプレートを生成する。以下文章中の図2を参照して説明した各分解レベルの高周波数成分を組み合わせによる補償テンプレートの生成の一例を採用することによって補償テンプレートを生成することができる。
【0025】
その後、ステップ106において、各分解レベルの低周波数成分に対してノイズ除去処理を実施する。いずれかの適切な方法を採用してノイズ除去処理を実施することができる。例えば、ガウシアンフィルタ(Gaussian filter)、等方性拡散フィルタ(Isotropic Diffusion filter)、異方性拡散フィルタ(Anisotropic Diffusion filter)等が適用できる。ただし、本実施形態はこれらの具体的なフィルタリング方法に限定されるものではない。
【0026】
ここで、ステップ106とステップ104の順序は交換可能であり、例えば、先に低周波数成分に対してノイズ除去処理を実施(ステップ106)し、その後で補償テンプレートを生成(ステップ104)してもよい。
【0027】
ステップ108において、各分解レベルに応じた補償テンプレートを利用して各分解レベルのノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を実施する。
【0028】
上記のように、上記ステップにおいて生成された補償テンプレートは、入力画像の該分解レベルにおいて保留されるエッジ情報を反映することができる。したがって、補償テンプレートにおけるエッジ情報を利用することにより、低周波数成分の中で失ったエッジ情報を補償することができ、ノイズ除去処理後の低周波数成分に対するエッジ補償を実現することができる。具体的な一例として、以下の図3を参照して説明した方法により、各分解レベルの低周波数成分に対して補償を実施することができる。
【0029】
ステップ110において、各分解レベルの補償実施後の低周波数成分と高周波数成分を利用して、ウェーブレット逆変換を実施する。ここで、いかなる適切な方法でも前記ウェーブレット逆変換として適用することができるが、ここでは詳細な説明や具体的限定をしない。
【0030】
その後、ステップ112において、最低基準分解レベルの処理がすでに完了したが否かを判断する。即ち、第0分解レベル(即ち、mは0に等しい)か否かを判断する。もし、判断結果がNo(即ち、第m分解レベルでの処理が未完)であれば、ステップ104まで戻り、第m−1分解レベルに対して上記の処理を継続する。もし、判断結果がYes(即ち、第m分解レベルでの処理が完了)であれば、処理を終了し、ノイズ除去処理後の画像を出力する。
【0031】
上記実施形態では、各分解レベルの高周波数成分の組み合わせ特性を反映した補償テンプレートを利用してノイズ除去処理後の画像に対してエッジ補償を実施するので、ノイズ除去処理による画像ボケを防止することができる。
【0032】
なお、通常のウェーブレットノイズ除去方法では、ノイズ除去プロセスにて画像ボケが発生してしまうので、通常は折衷方法を採用してノイズをフィルタリングすると同時に、画像のエッジがそれほどボケないようにしている。それに対して本実施形態では、上記のようなエッジ補償処理を使用しているので、ノイズ除去ステップにおいて、いかなる適切なノイズ除去方法を採用してもできるだけ多くのノイズを除去できると共に、画像のエッジがボケてしまうという問題を考慮する必要もなくなる。本実施形態の方法を利用することにより、大きい基準(尺度)のノイズを除去することが可能になると共に、画像のエッジがボケないようにすることができる。
【0033】
以下、図2を参照しながら補償テンプレートを生成する方法の一例について具体的に説明する。
【0034】
図2に示すように、各分解レベルの高周波数成分を加算(ステップ204−1)し、得られた加算値を該分解レベルの補償テンプレートとする。例えば、それぞれの高周波数成分におけるウェーブレット係数の絶対値を加算し、各高周波数成分の方向性情報は考慮しない。一具体例として、以下の式(1)により各分解レベルの補償テンプレートを計算することができる。
【0035】
【数1】

【0036】
ここで、Viは該基準(尺度)分解レベルの高周波数成分(あるいは、その絶対値)(1≦i≦N)を表し、Nは該分解レベルにおける高周波数成分の個数を表し、Vaddedは該分解レベルにおける複数の高周波数成分の和を表し、これらの和を該分解レベルの補償テンプレートとすることができる。このような方法を利用して生成された補償テンプレートは、該基準(尺度)分解レベルにおいて保留されるそれぞれの方向上の高周波情報(エッジ情報)を反映することができる。また、このようにして補償テンプレートを生成する方法は計算が簡単であり、画像のノイズ除去処理の効率を向上させることができる。
【0037】
その他の一例として、その他の適切な方法を採用して複数の高周波数成分を組み合わせて、生成された補償テンプレートがこれらの高周波数成分の組み合わせの特性を反映するだけでよい。例えば、各高周波数成分の勾配を計算し、これら高周波数成分の勾配の和を計算し、この和を前記補償テンプレートとすればよい。また、例えば、各高周波数成分に対してエッジ検出処理を実施し、処理後の高周波数成分の和を計算し、その和を前記補償テンプレートとしてもよい。あるいは、各高周波数成分の重み付け加算を計算し、この計算結果を補償テンプレートとしてもよい。
【0038】
ウェーブレットノイズ除去処理のプロセスにおいて、ウェーブレット係数の特異点(Singularity)付近での変化がギブス現象(Gibbs phenomenon)を呈する場合がある。一つの顕著な例として、例えば図2に示すように、各分解レベル毎の各高周波数成分の和を計算した後、高周波数成分の和に対して膨張あるいは拡散処理を実施(図中の破線で囲ったブロック204−2)し、膨張あるいは拡散処理により生成された補償テンプレートの範囲を拡大することができる。例えば、計算して得られた高周波数成分の和を外向きにいくつかの点分拡大して(例えば、一つあるいはいくつかの点であって、具体的な数は実際の適用に基づいて決定されるものである。ここでは特に限定せず、本実施形態においても特に具体的な数値に限定されるものではない)、補償テンプレートの範囲を該分解レベルのそれぞれの周波数成分の範囲よりも大きくすればよい。これにより、補償テンプレートで完全にエッジを覆うことができ、高周波のエッジ情報が失われることや断ち消えすることが無いようにすることができ、ギブス現象とエッジボケを除去することができ、ローカルフィルタリングの効果の連続性などの効果を得ることができる。ここで、いかなる適切な膨張あるいは拡散の計算方法を採用することができる。例えば、拡散フィルタリング法、デジタル幾何学における膨張計算法、オープン・クローズ演算等である。なお、本実施形態では、いずれかの具体的な膨張あるいは拡散の計算方法に限定されるものではない。
【0039】
以下、図3を参照しながら、生成した各分解レベルの補償テンプレートを利用して、該分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実施する具体的な一例について説明する。
【0040】
図3は、補償テンプレートを利用して各分解レベルのノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を実施する具体的な例を示すフロー図である。上記のように、ノイズ除去処理にてノイズとしてフィルタリングする成分の中には、実際上誤って有用な情報(例えば、エッジ情報)もノイズの中に含まれてしまう場合がある。図3に示す方法において、補償テンプレートにおいて反映されたエッジ情報を利用して、誤って除去されてしまった有用な情報に対して回復させる処理を実施する。具体的には、ノイズとしてフィルタリングされた成分(即ち、ノイズ除去処理においてフィルタリングされたフィルタ成分)に対して重み付けを行い、フィルタ成分に含まれる有用な情報部分(例えば、エッジ情報)の重みを大きく、無用な情報部分の重みを小さくし、重み付け後のフィルタ成分とノイズ除去処理後の低周波数成分との和を計算し、それを補償後の低周波数成分とするので、ノイズ除去処理により失った情報を回復可能とするだけでなく、ノイズ除去処理におけるフィルタリングの成分の中に含まれる有用な情報(例えば、エッジ情報)を強調することもできる。
【0041】
図3に示すように、先ず、ステップ308−1において、ノイズ除去ステップ(例えば、ステップ104および以下に記述するステップ404)にてノイズとしてフィルタリングするフィルタ成分を推定する。具体的には、ウェーブレット変換により得られた各分解レベルの元の低周波数成分とノイズ除去処理後の低周波数成分とに基づいて前記ノイズ除去処理におけるフィルタ成分を推定する。具体的な一例として、元の低周波数成分とノイズ除去処理後の低周波数成分との間の差を計算し、それをフィルタ成分とする。例えば、元の低周波数成分をIlと表し、ノイズ除去処理後の低周波数成分をIdと表した場合、前記フィルタ成分Inは、以下の式(2)を用いて表すことができる。
【0042】
【数2】

【0043】
ここで、(x1,x2,・・・,xn)は入力画像における画素位置を表し、nは入力画像の次元数を表し、Id(x1,x2,・・・,xn)は該分解レベルにおける元の低周波数成分に対してノイズ除去処理を実施して得られた低周波数成分Idの該画素位置に対応するウェーブレット係数を表し、Idは該分解レベルの元の低周波数成分Il(x1,x2,・・・,xn)における該画素位置に対応するウェーブレット係数を表し、In(x1,x2,・・・,xn)は推定されたフィルタ成分Inにおける該画素位置に対応するウェーブレット係数を表す。
【0044】
他の一例として、元の低周波数成分とノイズ除去処理後の低周波数成分の間の差の絶対値を計算し、それを前記ノイズ除去処理においてノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分とすることができる。その他、適切な方法により前記フィルタ成分を推定することができるが、ここでは特に上述の例に限定はしない。
【0045】
その後、ステップ308−2において、該分解レベルの補償テンプレートを利用して、ノイズ除去ステップ106におけるノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分に対して重み付けを行う。具体的には、補償テンプレートにおけるエッジ情報を利用して、フィルタ成分に含まれる有用な情報部分(例えば、エッジ)の重みを大きくし、フィルタ成分に含まれる無用な情報部分の重みを小さくすることにより、有用な情報に由来する信号を増強させることができると共に無用な情報に由来する信号を抑制することができる。その後、ステップ308−3において、重み付けされたフィルタ成分を利用して、ノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を行う。
【0046】
具体的な一例として、以下の式(3)に基づいてノイズ除去処理後の低周波数成分に対して補償を行うことができる。
【0047】
【数3】

【0048】
ここで、(x1,x2,・・・,xn)はウェーブレット空間上の位置を表し、nは入力画像の次元数を表し、Id(x1,x2,・・・,xn)は該分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理後に得られた低周波数成分Idのウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、In(x1,x2,・・・,xn)は推定したノイズ除去処理においてノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分Inのウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、Ttemplate(x1,x2,・・・,xn)は補償テンプレートTtemplateのウェーブレット空間上の位置に対応する値を表し、Tthは予め定められた閾値を表し、I’l(x1,x2,・・・,xn)は補償後低周波数成分Ilのウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表す。
【0049】
式(3)に示す具体例において、補償テンプレートの値と閾値Tthとの比の2乗に基づいて、ノイズ成分における相応の位置の値に対して重み付けを行う。ノイズ除去処理にてノイズとしてフィルタリングされる成分における補償テンプレートの該閾値よりも大きい値に対応する部分を保護が必要な部分とし、該閾値よりも小さい値に対応する部分を抑制あるいは除去が必要な部分とする。このような補償方法により、ノイズ除去処理プロセスにおいてフィルタリングされてしまう有用な情報(例えば、エッジ)を有効に補償することができるので、画像エッジのボケを有効に防止することができる。なお、閾値Tthを用いるので、異なる位置での重み値を滑らかに変化させることができるので、局部フィルタリング効果の連続性を保持する効果を得ることができる。
【0050】
この他、前記比の2乗を用いることにより、保護が必要な部分の重みを更に大きくすることができると共に、抑制あるいはノイズ除去が必要な部分の重みを更に小さくすることができるので、保護と抑制の効果を更に向上させることができる。
【0051】
なお、閾値Tthは、実際の適用場面に基づいて予め確定された値とすることができ、異なる類型(あるいは特性)の画像に対して分析して得られた実験値あるいは経験値であってもよい。エッジ(画像における有用な情報)とノイズの間の値を選択して該閾値としてもよい。異なる類型の入力画像に対して、該閾値は異なる値をとることができる。例えば、前記入力画像が医用画像診断装置により得られたデータに基づいて生成された医用画像である場合、実験あるいは経験に基づいて、各種スキャンプロトコルあるいは画像生成装置の類型に従って予め確定された閾値であってもよい。複数のスキャンプロトコルあるいは画像生成装置に従う複数の閾値(例えば、設定ファイル(configuration file)等の形式)を記憶部(該記憶部は画像処理装置内部に設けられたものでも、画像処理装置外部に設けられ、画像処理装置から記憶部へアクセスするものであってもよい)に保存可能である。このように、画像ノイズを除去する過程において、入力画像のスキャンプロトコルあるいは画像生成装置の類型に基づいて、相対する閾値を得る(例えば、記憶部から読み出す)ことができるので、画像処理の自動化レベルを更に向上させることができる。
【0052】
ここで、上記の式(3)において、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth>1の場合、有用な情報に対して信号増強することに相当する。一例として、上記の式(3)に示す方法において、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth>1の場合、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth=1とすることができる。言いかえれば、補償テンプレートの中のある位置の値が閾値Tthより大きいあるいは等しい場合、ノイズ成分の相応部分をそのまま低周波数成分として用い、信号の増強はしない。このような方法により、元の画像における有用な情報(例えば、エッジ)に対してただ保留して増強を実施しない。それゆえ、画像エッジ情報を保護することができ、処理後の画像を更に自然な状態にさせることができると共に、ギプス現象を防止することができる。
【0053】
図4は、本実施形態の他の一例に基づく画像処理方法を示すフロー図である。図4の実施例と図1の実施例は相似するものであり、異なるのは、更に生成された補償テンプレートを利用して各分解レベルの高周波成分に対してフィルタリングを実施することである。
図4に示すように、前記方法は、ステップ402、404、406、408、410および412を有し、ステップ410の前に更にステップ414を有する。
【0054】
ステップ402、404、406、408、410および412はそれぞれ上記の図1乃至3を参照しながら説明したステップ102、104、106、108、110および112に相似するものであり、ここでは重複する内容の説明は割愛する。ここで、その他の例において、図4に示す各ステップの実行する順序については、必ずしもその順序が必須ということではなく、例えば、ステップ408とステップ414の順序は交換することができ、ステップ404とステップ406の順序も交換することができる。
【0055】
ステップ414において、各分解レベルの補償テンプレートを利用して、該分解レベルの高周波数成分に対してフィルタ処理を実施する。ここで記載する補償テンプレートは、ステップ404において該分解レベルの複数の高周波数成分を利用して生成した補償テンプレートである。具体的には、補償テンプレートのエッジ情報を利用して、各高周波数成分のエッジ情報に対応する部分を強調し、各高周波数成分のその他の部分(ノイズ)を抑制する。このようにして、有用な情報を増強できると共に、無用な情報を抑制することができる。
具体的な一例として、以下の式(4)を用いて各分解レベルの各高周波数成分に対してフィルタリングを行うことができる。
【0056】
【数4】

【0057】
ここで、(x1,x2,・・・,xn)はウェーブレット空間上の位置を表し、nは入力画像の次元数を表し、Ih(x1,x2,・・・,xn)は入力画像に対してウェーブレット変換を実施して得られた該分解レベルの高周波数成分Ihのウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、Ttemplate(x1,x2,・・・,xn)は該分解レベルの補償テンプレートTtemplateのウェーブレット空間上の位置に対応する値を表し、Tthは予め定められた閾値を表し、I’h(x1,x2,・・・,xn)はフィルタ処理後の高周波数成分I’hのウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表す。
【0058】
式(4)の例において、補償テンプレートの値と閾値Tthとの比の2乗により、高周波数成分に対してフィルタリングを行う。各高周波数成分の補償テンプレートの中の該閾値より大きい値に対応する部分は強調すべき部分(即ち、保護すべき部分)とし、該閾値より小さい値に対応する部分は抑制すべき部分とする。このように、閾値Tthを用いることにより、異なる位置での重みの値を滑らかに変化させることができるので、局部フィルタリング効果の連続性を保持する効果を得ることができる。また、上記比の2乗を用いることにより、保護と抑制の効果を更に向上させることができる。
【0059】
一例として、式(4)の方法を利用して、高周波数成分に対して補償を行う際、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth>1の場合、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth=1とすることができる。このような方法により、強ノイズ点(strong noise points)がフィルタリング計算に対してもたらす影響を防止することができる。
【0060】
ここで述べる予め定められた閾値Tthと上記の図1乃至3を参照して記述した例は相似するものであり、ここでは重複する内容の説明は割愛する。
【0061】
図5は、本実施形態の一例に基づく画像処理装置の構成を示すブロック図である。上記の方法の実施例と相似するものであり、図5の画像処理装置500はウェーブレット変換を利用して入力画像をそれぞれ異なる基準(尺度)を有する複数の分解レベルへ分解し、その後、各分解レベルの高周波数成分により、これらの高周波数成分の組み合わせ特徴を反映する補償テンプレートを生成し、該補償テンプレートを利用してノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を行うことにより、ノイズ除去処理により画像エッジがボケてしまうという問題を回避することができる。
【0062】
図5に示すように、画像処理装置500は、ウェーブレット変換部501、補償テンプレート生成部503、ノイズ除去部505、およびウェーブレット逆変換部509を具備する。
【0063】
ウェーブレット変換部501は、入力画像に対してウェーブレット変換を実行し、該入力画像を複数の分解レベルに分解する。各分解レベルはそれぞれ異なる基準(尺度)を有し、分解レベル毎に低周波数成分と複数の高周波数成分を含む。例えば、m+1級(即ち、第0、1、・・・、m級、m≧1)に分解したとする。図1あるいは図4に示すのと同様に、後続の処理は、最高基準級(例えば、第m級)から開始する。ウェーブレット変換部501は、ステップ102あるいはステップ402と相似の計算方法によりウェーブレット変換を行うことができる。ここでは重複する内容の説明は割愛する。
【0064】
補償テンプレート生成部503は、ウェーブレット変換部501により得られた分解レベル毎の複数の高周波数成分に基づいて該分解レベルに対する補償テンプレートを生成する。補償テンプレート生成部503は、分解レベル毎の複数の高周波数成分を組み合わせて該分解レベルの補償テンプレートを生成することにより、生成された補償テンプレートは該分解レベルの高周波数成分の組み合わせ特性を反映させるようにしたので、入力画像の該分解レベルにて保留するエッジ情報を反映することができる。
【0065】
補償テンプレート生成部503は、ステップ104あるいはステップ404における方法により補償テンプレートを生成することができる。具体的な例として、補償テンプレート生成部503は、上記の図2を参照しながら記述した、分解レベル毎の高周波数成分を組み合わせて補償テンプレートを生成する方法の実施例により補償テンプレートを生成することができる。例えば、補償テンプレート生成部503は、ウェーブレット変換部501で得られた分解レベル毎の複数の高周波数成分の和を計算し、その結果を該分解レベルの補償テンプレートとする。あるいは、補償テンプレート生成部503は、分解レベル毎の複数の高周波数成分の和に対して膨張あるいは拡散処理を行い、その結果を該分解レベルの補償テンプレートとしてもよい。ここでは、重複する内容の説明については割愛する。
【0066】
ノイズ除去部505は、ウェーブレット変換部501で得られた分解レベル毎の低周波数成分に対してノイズ除去処理を行う。いずれかの適切な方法(例えば、ステップ106あるいはステップ406における方法)によりノイズ除去処理を行うことができるが、ここでは重複して説明はしない。
【0067】
ノイズ除去部505は、更に、補償テンプレート生成部503にて生成された分解レベル毎の補償テンプレートを利用して、該分解レベルのノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を行う。上記のように、補償テンプレート生成部503にて生成された補償テンプレートは、入力画像の該分解レベルでの保留するエッジ情報を反映することができる。それゆえ、補償テンプレートのエッジ情報を利用することにより、ノイズ除去処理後の低周波成分に対するエッジ補償を実現することができる。具体的な例として、ノイズ除去部505は、ステップ108あるいはステップ408における方法(例えば、上記の図3を参照しながら記述した方法)により、分解レベル毎の低周波数成分に対して補償を行う。ここでは、重複する説明はしない。
【0068】
ウェーブレット逆変換部509は、ノイズ除去部505から出力された分解レベル毎の補償実施後の低周波数成分および高周波数成分を利用してウェーブレット逆変換を行う。なお、ウェーブレット逆変換部509は、いずれかの適切な計算方法によりウェーブレット逆変換を行うことができる。ここでは詳細な説明や具体的限定はしない。
【0069】
最高基準(尺度)レベル(例えば、第mレベル)から開始し、補償テンプレート生成部503、ノイズ除去部505およびウェーブレット逆変換部509は、上述の方法により各分解レベルに対して上述処理を繰り返し、最低基準(尺度)レベル(第0レベル)まで処理を続け、ノイズ除去処理された画像を得る。
【0070】
上述の画像処理装置において、分解レベル毎の高周波数成分の組み合わせ特性を反映した補償テンプレートを利用して、ノイズ除去処理後の画像に対してエッジ補償を行う。これにより、ノイズ除去処理により画像ボケが発生してしまうという問題を回避することができる。また、通常のウェーブレットノイズ除去方法においては、ノイズ除去処理の過程で画像がボケてしまうという問題が発生し得る。それゆえ、通常は折衷の計算方法を用いてノイズをフィルタリングすると共に画像のエッジ部分をあまりボケないようにしている。一方で、上述の画像処理装置においては、補償テンプレート生成部とノイズ除去部により上述のエッジ補償処理を行うことにより、ノイズ除去部は、いずれかの適切なノイズ除去方法により画像エッジがボケてしまうという問題を考慮する必要無く、できるだけノイズを除去できるものである。このような画像処理装置により、大きな基準(尺度)のノイズを除去できると共に、画像のエッジ部の鮮明さをも保証できるものである。
【0071】
図6は、本実施形態の具体的な一例に基づくノイズ除去部の構成を示すブロック図である。上記のように、ノイズ除去処理にて除去されるノイズ成分の中には有用な情報(例えば、エッジ)が含まれる場合がある。図6に示すノイズ除去部は、補償テンプレートの中で反映するエッジ情報を利用して、フィルタリングされるノイズ成分に対して重み付けを行い、フィルタリングされるノイズ成分の中に含まれる有用な情報部分(例えば、エッジ)の重みを大きくし、ノイズ成分の中に含まれる無用な情報部分の重みを小さくし、重み付け後のノイズ成分をノイズ除去処理後の低周波数成分に加算し、その結果を補償後の低周波数成分とする。
【0072】
図6に示すように、ノイズ除去部505は、ノイズフィルタ推定部505−1と低周波数成分補償部505−2を有する。
【0073】
ノイズフィルタ推定部505−1は、ウェーブレット変換部501で得られた分解レベル毎の低周波成分に対してノイズ除去処理を実行する。具体的なノイズ除去処理方法(例えば、ステップ106あるいは406による方法)を採用することができるが、ここでは詳細な説明については割愛する。ノイズフィルタ推定部505−1は、分解レベル毎の低周波数成分からノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分を推定する。具体的には、ノイズフィルタ推定部505−1は、ウェーブレット変換部で得られる分解レベル毎の元の低周波数成分と該分解レベルの低周波数成分に基づいて前記フィルタ成分を推定する。具体的な例として、ノイズフィルタ推定部505−1は、上記の図3を参照しながら記述した実施例における推定方法を用いることができる。ここでは、重複して説明はしない。
【0074】
低周波数成分補償部505−2は、補償テンプレート生成部503にて生成された補償テンプレートを利用して、ノイズフィルタ推定部505−1にて推定したノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分に対して重み付けを行う。具体的には、低周波数成分補償部505−2は、補償テンプレートの中のエッジ情報を利用して、ノイズ除去部505でフィルタリングされるフィルタ成分に含まれる有用な情報部分(例えば、エッジ)に対する重みを大きな値に設定し、フィルタ成分に含まれる無用な情報部分に対する重みを小さな値に設定することにより、有用な情報に基づく信号を強調し無用な情報に基づく信号を抑制するようにする。この後、低周波数成分補償部505−2は、重み付け後のフィルタ成分を利用して、ノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を行い、補償後の低周波数成分をウェーブレット逆変換部509へ出力する。
【0075】
具体的な例として、低周波数成分補償部505−2は、上述の図3を参照しながら記述した補償方法(例えば、式(3))により、ノイズ除去処理後の低周波数成分に対してエッジ補償を行う。ここでは重複して説明はしない。
【0076】
その他の具体的な例として、ノイズ除去部505は、更に高周波数成分フィルタ部505−3(図6において破線で囲まれたブロック)を有する。高周波数成分フィルタ部505−3は、補償テンプレート生成部503にて生成された補償テンプレートを利用して、分解レベル毎の複数の高周波数成分に対してフィルタリングを行い、補償後の各高周波数成分をウェーブレット逆変換部509へ出力する。具体的には、高周波数成分フィルタ部505−3は、補償テンプレートの中のエッジ情報を利用して、各高周波数成分の中のエッジ情報に対応する部分を強調し、該高周波数成分の中の他の情報に対応する部分を抑制する。このようにして、有用な信号を強調し、無用な信号を抑制する効果を得ることができる。
【0077】
具体的な例として、高周波数成分フィルタ部505−3は、上記の図4を参照しながら記述した補償方法(例えば、式(4))により、各高周波数成分に対してフィルタ処理を行う。ここでは、重複して説明はしない。
【0078】
本実施形態に基づく画像処理方法や画像処理装置は、各種画像のノイズ除去処理に適用することができる。これらの画像は、一次元あるいは多次元(例えば、2次元あるいは3次元)であって、例えば、本実施形態に基づく画像処理方法と画像処理装置は、医用画像(例えば、医用画像診断装置により取得されたデータに基づいて生成された画像)のノイズ除去処理に応用可能である。その一例として、上述方法の各ステップおよび上述装置の各構成および/あるいは部分は、医用画像診断装置(例えば、X線診断装置、超音波診断装置、CT装置、磁気共鳴診断装置、PET装置等)のソフトウエア、ファームウエア、ハードウエアあるいはそれらの組み合わせとして、また、該医用画像診断装置の中の一部分として実施することができる。その一例として、既存の医用画像診断装置において、本実施形態の上述方法および/または装置に基づいて実施することができ、しかも、既存の医用画像診断装置の各構成部分に対してある程度改良をするだけで即実施可能となる。その他の例として、上述方法の各ステップおよび上述装置の各構成および/または部分は、前記医用画像診断装置とは独立した装置として実施してもよい。上述装置の各構成や部分は、ソフトウエア、ファームウエア、ハードウエアあるいはそれらの組み合わせた方式により構成することができるが、使用する具体的手段や方式は当業者の周知のものであり、ここでは特に述べることはしない。
【0079】
一例として、上述方法の各ステップおよび上述装置の各構成および/または部分はソフトウエア、ファームウエア、ハードウエアあるいはそれらの組み合わせとして実施してもよい。ソフトウエアあるいはファームウエアを介して実現した場合、上述方法のソフトウエアプログラムを実施するため、メモリ媒体からあるいはネットワークを介して専用のハードウエア構造のコンピュータ(例えば、図8に示す汎用コンピュータ800)へダウンロードして構成することができ、該コンピュータに各種プログラムがダウンロードされた状態で、各種機能等を実施することができる。
【0080】
図8において、演算処理部(即ち、CPU)801は、読み出し専用メモリ(ROM)802の中に記憶されているプログラム、あるいは、記憶部808から読み書き兼用メモリ(RAM)803へ書き込まれたプログラムに基づいて、各種処理を実施する。RAM803では、必要に応じて、CPU801が各種処理等を実施するときに必要なデータも記憶しておく。CPU801、ROM802およびRAM803は、バス804を経由してそれぞれ接続されている。入力/出力インターフェース805も、バス804につながっている。
【0081】
入力部806(キーボード、マウス等を含む)、出力部807(モニタ、例えば、ブラウン管(CRT)、液晶モニタ(LCD)等や、スピーカ等を含む)、記憶部808(キーボードを含む)、通信部809(ネットワークインターフェースカード、例えば、LANカード、モデム等)は、入力/出力インターフェース805に接続されている。通信部809は、ネットワーク(例えば、インターネット)を介して通信処理を実施する。必要に応じて、駆動部810も入力/出力インターフェース805に接続可能である。取り外し可能な媒体811は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、MO、半導体メモリ等であって、必要に応じて駆動部810に装着され、必要に応じてコンピュータプログラムを読み出して、記憶部808へダウンロードされる。
【0082】
ソフトウエアを介して上述システム処理を実施する場合、ネットワーク(例えば、インターネットあるいは記憶媒体(例えば、取り外し可能な媒体811))からプログラムをダウンロードしてもよい。
【0083】
当業者においては、このような記憶媒体は、図8に示すような、プログラムを記憶して、装置とは離れたところからユーザにプログラムを提供する取り外し可能な媒体811に限らない。取り外し可能な媒体811の例としては、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、光ディスク(CD−ROMやDVDを含む)、磁気光ディスク(MiniDisc(MD、登録商標)を含む)らを含む。また、記憶媒体はROM802であっても良く、記憶部808に含まれるハードディスク等、その中にプログラムが記憶され、それらを含む装置からユーザへプログラムが送られる形態でもよい。
【0084】
本実施形態では、更に、メモリとして、機器読み取り可能なコマンドコードを記憶しているプログラム製品でも応用でき、前記コマンドコードが機器を介して読み取られると、本実施形態の実施例における方法が実施される。
【0085】
上述機器読み取り可能なコマンドコードを記憶しているプログラム製品を受け入れるための記憶媒体も本実施形態に適用できる。その記憶媒体は、ハードディスク、光ディスク、磁気光ディスク、メモリカード、メモリスティックには限定されない。
【0086】
上記の本実施形態の具体的実施例においては、一つの実施方式に示す特徴について、同様の方法を一つあるいは複数のほかの実施方法方の中で適用したり、その他の実施方法と組み合わせたり、あるいはその他の実施方法における特徴に替えるといったことも可能である。
【0087】
さらに、“包含する/含む”といった用語を使用したときは、特徴・構成・ステップあるいは構造の存在を指し示す。ただし、その他の特徴・構成・ステップあるいは構造の存在や付加の排除を意味するものではない。
【0088】
上記実施例においては、数字構成の図番記号を用いて各ステップや構成を表記している。ただし、これらの図番記号は単なる説明や画図の都合への考慮によるものであって、その順序やいかなるほかの限定を表すものではない、と当業者は理解すべきである。
【0089】
このほか、本実施形態の方法は、詳細な説明の欄において説明された時間順序に沿って実施されるものに限らず、その他の時間順序に沿って、同時に、あるいは独立して実施されてもよい。それゆえ、本願の詳細な説明において説明された方法の実施順序は、本実施形態の技術範囲に対する構成を制限するものではない。
【0090】
上記では、既に、本実施形態の具体的実施例の説明をもって、本実施形態の説明を行っているものの、上述のすべての実施例はすべて単なる例示に過ぎず、限定するものではない。当業者は、特許請求の主旨や範囲において、本実施形態の各種手直し・改良あるいは同等物の設計を行うことが可能である。これらの手直し・改良あるいは同等物は、本実施形態の保護範囲内に含まれるものである。
【符号の説明】
【0091】
501 ウェーブレット変換部
503 補償テンプレート生成部
505 ノイズ除去部
509 ウェーブレット逆変換部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に対してウェーブレット変換を実行して、低周波数成分と複数の高周波数成分とを含む複数の分解レベルであって、それぞれ異なる基準を有する複数の分解レベルに前記入力画像を分解するウェーブレット変換部と、
前記ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて、該分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映するための補償テンプレートであって、各分解レベルに対応する補償テンプレートを生成する補償テンプレート生成部と、
各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、各分解レベルの補償テンプレートを利用して、該分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実行し、補償処理後の低周波数成分を得るノイズ除去部と、
各分解レベルにおける補償処理後の低周波数成分と高周波数成分とを利用してウェーブレット逆変換を実行して、ノイズ除去処理後の画像を得るウェーブレット逆変換部と
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記補償テンプレート生成部は、前記ウェーブレット変換部によって得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分の和を計算し、計算した結果を前記補償テンプレートとすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記補償テンプレート生成部は、前記複数の高周波数成分の和に対して膨張又は拡散処理を実行し、処理した結果を前記補償テンプレートとすることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ノイズ除去部は、
各分解レベルにおける低周波成分に対してノイズ除去を実行し、各分解レベルにおける低周波数成分と該分解レベルでのノイズ除去処理後の低周波数成分とに基づいて、前記ノイズ除去部によってノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分を推定するノイズフィルタ推定部と、
前記分解レベルでの補償テンプレートを利用して、前記ノイズフィルタ推定部によって推定されたフィルタ成分に対して重み付け加算を計算し、重み付け加算後のフィルタ成分を利用して、ノイズ除去処理後の低周波数成分に対して補償を実施する低周波数成分補償部と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記低周波数成分補償部は、(x1,x2,・・・,xn)はウェーブレット空間上の位置を表し、nは前記入力画像の次元数を表し、Id(x1,x2,・・・,xn)は各分解レベルでのノイズ除去処理後の低周波数成分における前記ウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、In(x1,x2,・・・,xn)は前記ノイズ推定部によって推定されたノイズとしてフィルタリングされるフィルタ成分における前記ウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、Ttemplate(x1,x2,・・・,xn)は該分解レベルでの補償テンプレートにおける前記ウェーブレット空間上の位置に対応する値を表し、Tthは予め定められた閾値を表し、Il(x1,x2,・・・,xn)は補償後低周波数成分における前記ウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表すとしたときに、以下の式(3)に基づいて、各分解レベルでの補償テンプレートを利用して、該分解レベルでのノイズ除去処理後の低周波数成分に対して補償を実施することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【数3】

【請求項6】
前記低周波数成分補償部は、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth>1である場合に、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth=1とすることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ノイズ除去部は、各分解レベルでの補償テンプレートを利用して、該分解レベルでの複数の高周波数成分に対してフィルタリングを実施するための高周波数成分フィルタ部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記高周波数成分補償部は、(x1,x2,・・・,xn)はウェーブレット空間上の位置を表し、nは前記入力画像の次元数を表し、Ih(x1,x2,・・・,xn)は前記各分解レベルの高周波数成分における前記ウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表し、Ttemplate(x1,x2,・・・,xn)は該分解レベルの補償テンプレートにおける前記ウェーブレット空間上の位置に対応する値を表し、Tthは予め定められた閾値を表し、I’h(x1,x2,・・・,xn)はフィルタリング後の高周波数成分の前記ウェーブレット空間上の位置に対応するウェーブレット係数を表すとしたときに、以下の式(4)に基づいて、各分解レベルでの補償テンプレートを利用して、該分解レベルでの高周波数成分に対してフィルタリングを実施することを特徴とする請求項7に記載の画像処理装置。
【数4】

【請求項9】
前記高周波数成分フィルタ部は、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth>1の場合に、(Ttemplate(x1,x2,・・・,xn))/Tth=1とすることを特徴とする請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記入力画像は、医用画像診断装置により得られたデータに基づいて生成された画像であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の画像処理装置。
【請求項11】
入力画像に対してウェーブレット変換を実行して、低周波数成分と複数の高周波数成分とを含む複数の分解レベルであって、それぞれ異なる基準を有する複数の分解レベルに前記入力画像を分解するステップと、
前記ウェーブレット変換により得られた各分解レベルにおける複数の高周波数成分に基づいて、該分解レベルにおける複数の高周波数成分の組み合わせを反映するための補償テンプレートであって、各分解レベルに対応する補償テンプレートを生成するステップと、
各分解レベルにおける低周波数成分に対してノイズ除去処理を実行し、各分解レベルの補償テンプレートを利用して、該分解レベルの低周波数成分に対してエッジ補償を実行し、補償処理後の低周波数成分を得るステップと、
各分解レベルにおける補償処理後の低周波数成分と高周波数成分とを利用してウェーブレット逆変換を実行して、ノイズ除去処理後の画像を得るステップと
を含んだことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−65302(P2013−65302A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−203604(P2012−203604)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】