説明

画像処理装置及び画像処理方法、並びにプログラム

【課題】リアルな水墨画により近い画像を得ること。
【解決手段】原画像取得部51は、原画像のデータを取得する。特徴領域検出部61は、原画像のデータから、特徴領域を検出する。筆運びパターン決定部62は、筆運びパターン記憶部71に予め記憶されている、少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、特徴領域に対して適用する筆運びパターンのデータを決定する。筆運びパターン変換部63は、決定された筆運びのパターンのデータに基づいて、特徴領域中の原画像のデータを変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、演出効果を高める目的で、原画像のデータに対して芸術性を高める加工を施す画像処理が施されるようになっている。
例えば、上述の目的を達成すべく、顔を被写体として含む原画像のデータについて、エッジ検出することで、当該原画像のデータを、芸術性の高い画像の一種である水墨画のような画像(以下、「水墨画調画像」と呼ぶ)のデータに変換をする画像処理が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−114024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された画像処理では、顔の部位によって変換後の輪郭線の太さが変換されるだけであり、例えば、水墨表現についてはなんら考慮に入れられていないため、変換後の画像は、実際の水墨画とはかけ離れた画像となる場合があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、リアルな水墨画により近い画像を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の画像処理装置は、
原画像のデータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された原画像のデータから、当該原画像の特徴領域を検出する特徴領域検出手段と、
記録手段により予め記録されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記特徴領域検出手段により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際の水墨画により近い画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【図2】図1の画像処理装置の機能的構成のうち、水墨画調画像処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
【図3】筆運びパターンの一例を示す図である。
【図4】エッジ画像の一例を示す図である。
【図5】図4のエッジ画像から変換された水墨画調画像の一例を示す図である。
【図6】図2の機能的構成を有する図1の画像処理装置が実行する水墨画調画像生成処理の流れを説明するフローチャートである。
【図7】図6の水墨画調画像生成処理のうち水墨画変換処理の詳細の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置のハードウェアの構成を示すブロック図である。
【0011】
画像装置1は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、画像処理部14と、バス15と、入出力インターフェース16と、入力部17と、出力部18と、記憶部19と、通信部20と、ドライブ21と、を備えている。
【0012】
CPU11は、ROM12に記録されているプログラム、又は、記憶部19からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
【0013】
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0014】
画像処理部14は、DSP(Digital Signal Processor)や、VRAM(Video Random Access Memory)等から構成されており、CPU11と協働して、画像のデータに対して各種画像処理を施す。
【0015】
CPU11、ROM12、RAM13及び画像処理部14は、バス15を介して相互に接続されている。このバス15にはまた、入出力インターフェース16も接続されている。入出力インターフェース16には、入力部17、出力部18、記憶部19、通信部20及びドライブ21が接続されている。
【0016】
入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部18は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
記憶部19は、ハードディスク或いはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種画像のデータを記憶する。
通信部20は、インターネットを含むネットワークを介して他の装置(図示せず)との間で行う通信を制御する。
【0017】
ドライブ21には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなるリムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ21によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部19にインストールされる。また、リムーバブルメディア31は、記憶部19に記憶されている画像のデータ等の各種データも、記憶部19と同様に記憶することができる。
【0018】
図2は、このような画像処理装置1の機能的構成のうち、水墨画調画像生成処理を実行するための機能的構成を示す機能ブロック図である。
ここで、水墨画調画像生成処理とは、画像処理の対象として入力された原画像のデータから、水墨画調画像のデータを生成するまでの一連の処理をいう。
【0019】
CPU11の制御に基づいて水墨画調画像生成処理が実行される場合には、画像処理部14において、原画像取得部51と、重要度検出部52と、エッジ画像生成部53と、水墨画変換部54と、が機能する。
また、記憶部19の一領域として、筆運びパターン記憶部71が設けられる。
【0020】
原画像取得部51は、別装置から送信されて通信部20に受信された画像のデータや、リムーバブルメディア31からドライブ21によって読み出された画像のデータ等を、原画像のデータとして取得して、重要度検出部52及びエッジ画像生成部53に供給する。
【0021】
重要度検出部52は、色、輝度、又はエッジの方向等を重要度の指標として用いて、原画像を構成する各画素の重要度をそれぞれ検出し、各画素毎に検出された重要度の空間的な分布を示す重要度マップを生成する。このようにして重要度検出部52により生成された重要度マップは、水墨画変換部54に供給される。
【0022】
エッジ画像生成部53は、原画像のデータに対してエッジ検出処理を施し、例えば、検出されたエッジを黒色として、それ以外を白色とする2値画像(以下、このような2値画像を「エッジ画像」と呼ぶ)のデータを生成する。このようにしてエッジ画像生成部53により生成されたエッジ画像のデータは、水墨画変換部54に供給される。
【0023】
水墨画変換部54は、エッジ画像のデータを水墨調画像のデータに変換する処理を実行する。このような処理を、以下、「水墨画変換処理」と呼ぶ。
本実施形態の水墨画変換処理として、書道用の筆の筆跡を模したテクスチャを原画像に貼り付ける画像処理が採用されている。この「書道用の筆の筆跡を模したテクスチャ」のパターンを、本明細書では、「筆運びパターン」と呼称している。
【0024】
筆運びパターンとして採用されるテクスチャの形状や大きさ等は特に限定されない。ただし、本実施形態では、図3に示す2種類の筆運びパターンが採用されている。
図3は、筆運びパターンの一例を示す図である。
図3(A)は、筆の「命毛」の部分(筆の先端部分)で書いた際の筆跡を模した筆運びパターンを示している。なお、以下、図3(A)に示すような筆運びパターンを、「直筆パターン」と呼ぶ。
図3(B)は、筆の「のど」から「腹」又は「腰」までの側部分(「穂」の一部分)で書いた際の筆跡を模した筆運びパターンを示している。なお、以下、図3(B)に示すような筆運びパターンを、「側筆パターン」と呼ぶ。
図3(A)と図3(B)とを比較すると容易にわかるが、直筆パターンは、長手方向と直交する方向の長さ(以下、「幅」と呼ぶ)が狭く、その分だけ濃淡の差が小さいという特徴を有している。これに対して、側筆パターンは、幅が広く、その分だけ濃淡の差が大きいという特徴を有している。
本実施形態では、このような直筆パターン及び側筆パターンの各データは、筆運びパターン記憶部71に記憶されている。
なお、筆運びパターンのデータの生成手法は、特に限定されず、例えばCG(Computer Graphics)を利用して生成する手法を採用してもよい。ただし、本実施形態では、実際に、墨を付けた筆により紙媒体に書かれた筆跡を、スキャナやデジタルカメラ等によって画像のデータ化したものを、筆運びパターンのデータとするという手法が採用されている。
【0025】
水墨画変換部54は、エッジ画像のデータを処理対象として、エッジ領域に直筆パターンを貼り付け、エッジ領域の周囲領域に側筆パターンを貼り付け、エッジ領域が閉領域を形成する場合には、閉領域の内部に側筆パターンを貼り付ける水墨画変換処理を実行する。
【0026】
具体的には例えば、水墨画変換部54は、図4に示すようなエッジ画像のデータに対して水墨画変換処理を施すことで、図5に示すような水墨画調画像のデータを生成する。
【0027】
図4は、エッジ画像の一例を示している。
図4において、黒くて細い領域がエッジ領域である。
例えば、エッジ領域E1は山の輪郭を示しており、エッジ領域E2は雲の輪郭を示しており、エッジ領域E3は家の輪郭を示している。
【0028】
図5は、図4のエッジ画像から変換された水墨画調画像の一例を示している。
山の輪郭を示すエッジ領域E1に直筆パターンD1が貼り付けられ、当該エッジ領域E1の右側の周囲領域に側筆パターンS1が貼り付けられている。
また、雲の輪郭を示すエッジ領域E2は閉領域を形成しているため、当該エッジ領域E2に直筆パターンD2が貼り付けられ、当該閉領域の内部には側筆パターンS2が塗りつぶされるように貼り付けられている。
同様に、家の輪郭を示すエッジ領域E3は閉領域を形成しているため、当該エッジ領域E3に直筆パターンD3が貼り付けられ、当該閉領域の内部には側筆パターンS3が塗りつぶされるように貼り付けられている。
【0029】
より具体的には、本実施形態の水墨画変換部54は、このような水墨画変換処理を施すべく、図2に示すように、特徴領域検出部61と、筆運びパターン決定部62と、筆運びパターン変換部63と、濃淡調整部64と、ぼかし部65と、を備えている。
【0030】
特徴領域検出部61は、エッジ画像のデータについて特徴領域を検出する。特徴領域として検出される対象は、特に限定されないが、本実施形態ではエッジ領域であるものとする。
【0031】
筆運びパターン決定部62は、特徴領域検出部61により検出された特徴領域に基づいて、筆運びパターン記憶部71に各データが記憶されている各筆運びパターンから、筆運びパターン変換部63において使用される筆運びパターンを決定する。
即ち、本実施形態では、筆運びパターン決定部62は、特徴領域であるエッジ領域に対して使用される筆運びパターンとして、直筆パターンを決定する。また、筆運びパターン決定部62は、特徴領域であるエッジ領域の周囲領域、又は閉曲線を形成しているエッジ領域の当該閉曲線内部の領域に対して使用される筆運びパターンとして、側筆パターンを決定する。
【0032】
筆運びパターン変換部63は、筆運びパターン決定部62により決定された筆運びパターンのデータを用いて、エッジ画像のデータを水墨画調画像のデータに変換する。
具体的には、筆運びパターン変換部63は、エッジ領域に直筆パターンを貼り付けるように、当該エッジ領域のデータを直筆パターンのデータに変換する。同様に、筆運びパターン変換部63は、エッジ領域の周囲領域に側筆パターンを貼り付けるように、当該エッジ領域の周囲領域のデータを側筆パターンのデータに変換する。また、エッジ領域が閉領域を形成する場合には、筆運びパターン変換部63は、閉領域の内部に側筆パターンを貼り付けて塗りつぶすように、当該閉領域の内部のデータを側筆パターンのデータに変換する。
【0033】
濃淡調整部64は、重要度検出部52により生成された重要度マップに基づいて、筆運びパターン変換部63で使用される筆運びパターンの各々の色、即ち墨の濃淡の度合いを調整する。
具体的には、重要度マップは、上述したように、各画素毎の重要度の空間方向の分布を示している。一方で、濃淡は、複数の画素群からなる領域を占有する筆運びパターン毎に決定される。
そこで、濃淡調整部64は、調整対象の筆運びパターンが占有する領域に含まれる複数の画素群の各々の重要度を重要度マップから抽出し、抽出した複数の重要度に基づいて、当該領域全体の統合的な重要度を演算する。
なお、領域全体の統合的な重要度の求め方は、当該領域を構成する複数の画素の重要度を用いる手法であれば特に限定されず、例えば二乗平均や中間値を取る手法を採用することが可能である。ただし、本実施形態では、少ない演算量及び演算時間で容易に求めるべく、複数の画素の重要度の単純な平均を取る手法が採用されている。
濃淡調整部64は、領域全体の総合的な重要度が高いほど、当該領域を占める筆運びパターンが濃く(黒色に近く)なるように、逆に、領域全体の総合的な重要度が低いほど、当該領域を占める筆運びパターンが薄く(白色に近く)なるように、濃淡を調整する。
【0034】
ぼかし部65は、墨のにじみを表現するために、筆運びパターン変換部63により筆運びパターンに変換された(貼り付けられた)領域の各々のデータを処理対象として、処理対象の領域を周辺にぼかすための画像処理(以下、「ぼかし処理」と呼ぶ)を実行する。
ぼかし処理におけるぼかし量(幅)は、処理対象の領域の濃淡の度合いにより決定される。即ち、上述したように処理対象の領域の濃淡は重要度マップに基づいて調整されるため、当該処理対象の領域のぼかし量もまた重要度マップに基づいて決定される。この場合、重要度が高いほど濃くなる(黒色に近づく)ので、ぼかし量は小さくなり、逆に、重要度が低いほど薄くなる(白色に近づく)ので、ぼかし量は大きくなる。
また、画素毎のぼかし方は、処理対象の領域(筆運びパターン)の端からの距離xに依存する手法であれば足り、特に限定されないが、本実施形態では、距離xが大きくなるほど薄くなる手法が採用されている。より具体的には、本実施形態では、画像の階調(濃淡を示す輝度の範囲)は256階調として、次の式(1)に従って処理対象の画素のぼかす色(濃淡を示す輝度)を演算する手法が採用されている。
B=(255−L)×(1−exp(−x×x/f(D+n)))+L・・・(1)
式(1)において、Bは、処理対象の画素のぼかす色(濃淡を示す輝度)を示している。Lは、処理対象の画素に貼り付けられた筆運びパターンの色(処理対象の領域全体についての濃淡を示す輝度)を示している。f(D+n)は、入力パラメータ(D+n)に従って出力値が大きくなる任意の関数を示している。Dは、処理対象の画素に貼り付けられた筆運びパターン(処理対象の領域)のぼかし量を示している。nは、任意の整数を示している。
【0035】
次に、このような図2の機能的構成を有する画像処理装置1が実行する水墨画調画像生成処理について説明する。
図6は、水墨画調画像生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
原画像取得部51により原画像のデータが取得されると、水墨画調画像生成処理が開始され、次のような一連の処理が実行される。
【0036】
ステップS1において、重要度検出部52は、原画像のデータについて、各画素の重要度をそれぞれ検出し、各画素毎の重要度の空間的な分布を示す重要度マップを生成する。
【0037】
ステップS2において、エッジ画像生成部53は、原画像のデータに対してエッジ保存平滑化処理を施す。エッジ保存平滑化処理とは、水墨画調画像においては、原画像に含まれるノイズや細かなテクスチャによりエッジは不要と考え、これらを原画像から除去又は低減して、被写体の輪郭を示すエッジを保存するように、原画像を平滑化するような画像処理をいう。
ステップS3において、エッジ画像生成部53は、ステップS2のエッジ保存平滑化処理が施された原画像のデータから、エッジ画像のデータを生成する。
【0038】
ステップS4において、水墨画変換部54は、水墨画変換処理を実行することで、エッジ画像のデータを水墨調画像のデータに変換する。
これにより、水墨画調画像生成処理は終了となる。
【0039】
さらに以下、ステップS4の水墨画変換処理の詳細について説明する。
図7は、図6の水墨画調画像生成処理のうち、ステップS4の水墨画変換処理の詳細について説明するフローチャートである。
【0040】
ステップS21において、特徴領域検出部61は、エッジ画像のデータから、エッジを探索する。
ステップS22において、特徴領域検出部61は、ステップS21の処理結果に基づいて、エッジが存在するか否かを判定する。
エッジが存在する場合には、ステップS23において、特徴領域検出部61は、当該エッジを追跡する。
【0041】
具体的には、特徴領域検出部61は、エッジ画像の左上からいわゆるラスター順に走査していき、エッジ領域に属する画素を探索する(ステップS21)。特徴領域検出部61は、このようなエッジ領域に属する画素が存在すれば(ステップS22YES)、当該エッジ領域に属する他の画素を探索するようにエッジを追跡していく(ステップS23)。
【0042】
ステップS24において、筆運びパターン決定部62は、このようにして追跡されたエッジ領域に基づいて、筆運びパターン記憶部71に各データが記憶されている各筆運びパターンから、次ステップ以降において使用される筆運びパターンを決定する。
即ち、筆運びパターン決定部62は、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域に対して使用される筆運びパターンとして、直筆パターンを決定する。また、筆運びパターン決定部62は、当該エッジ領域の周囲領域に対して使用される筆運びパターンとして、側筆パターンを決定する。さらに、筆運びパターン決定部62は、当該エッジ領域が閉曲線の領域である場合には、当該閉曲線の内部に使用される筆運びパターンとして、側筆パターンを決定する。
【0043】
ステップS25において、筆運びパターン変換部63は、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域に直筆パターンを貼り付けるように、当該エッジ領域のデータを直筆パターンのデータに変換する処理(以下、「貼り付け処理」と呼ぶ)を実行する。
具体的には、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域の長さ(長手方向の曲線の長さ)はその都度異なるため、筆運びパターン変換部63は、筆運びパターン記憶部71から読み出した直筆パターンのデータを、エッジ領域の長さに応じて拡大又は縮小他はする。そして、筆運びパターン変換部63は、当該エッジ領域の始点のデータから、拡大又は縮小された直筆パターンのデータに変換(貼り付け)していく。
【0044】
ステップS26において、濃淡調整部64は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS25の貼り付け処理の対象となった直筆パターンの濃淡を調整する。
【0045】
ステップS27において、ぼかし部65は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS25の貼り付け処理の対象となった直筆パターンのぼかし処理を実行する。
【0046】
ステップS28において、筆運びパターン変換部63は、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域の周囲領域に側筆パターンを貼り付けるように、貼り付け処理を実行する。
【0047】
ステップS29において、濃淡調整部64は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS28の貼り付け処理の対象となった側筆パターンの濃淡を調整する。
【0048】
ステップS30において、ぼかし部65は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS28の貼り付け処理の対象となった側筆パターンのぼかし処理を実行する。
【0049】
ステップS31において、筆運びパターン変換部63は、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域が閉曲線の領域か否かを判定する。
エッジ領域が閉曲線の領域でない場合、即ち始点と終点とがある領域である場合、ステップS31においてNOであると判定されて、処理はステップS21に戻され別のエッジが探索されて、ステップS22以降の処理が繰り返される。
これに対して、エッジ領域が閉曲線の領域でない場合、即ち始点と終点とがある領域である場合、ステップS31においてYESであると判定されて、処理はステップS32に進む。
【0050】
ステップS32において、筆運びパターン変換部63は、ステップS23の処理で追跡されたエッジ領域の閉曲線の内側に側筆パターンを貼り付けるように、貼り付け処理を実行する。
【0051】
ステップS33において、濃淡調整部64は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS32の貼り付け処理の対象となった側筆パターンの濃淡を調整する。
【0052】
ステップS34において、ぼかし部65は、ステップS1(図6)の処理で生成された重要度マップに基づいて、ステップS32の貼り付け処理の対象となった側筆パターンのぼかし処理を実行する。
【0053】
その後、処理はステップS21に戻され別のエッジが探索されて、ステップS22以降の処理が繰り返される。
このようにして、エッジ画像に含まれるエッジ領域毎に、上述したステップS21乃至S34のループ処理が繰り返し実行される。そして、最後のエッジ領域についての処理が終了すると、次のステップS21の処理でエッジの探索ができないので、その次のステップS22においてNOであると判定されて、水墨画調画像生成処理は終了となる。即ち、図6のステップ4の処理が終了し、水墨画調画像処理の全体が終了する。
【0054】
以上のように構成される本実施形態の画像処理装置は、原画像取得部51と、特徴領域検出部61と、筆運びパターン決定部62と、筆運びパターン変換部63と、を備えている。
原画像取得部51は、原画像のデータを取得する。
特徴領域検出部61は、原画像のデータから、特徴領域(本実施形態ではエッジ領域)を検出する。
筆運びパターン決定部62は、筆運びパターン記憶部71に予め記憶されている、少なくとも2種類以上の筆運びパターン(本実施形態では直筆パターンと側筆パターン)のデータの中から、特徴領域、及び特徴領域により特定される1以上の領域(本実施形態ではエッジ領域の周囲領域や、エッジ領域が形成する閉曲線の領域の内部)の各々に対して適用する筆運びパターンのデータを決定する。
筆運びパターン変換部63は、決定された筆運びのパターンのデータで、特徴領域の領域、及び特徴領域により特定される1以上の領域の各々のデータを変換する。
このように、2種類以上の筆運びパターンを用意することで、水墨画の基本的な筆の描画を忠実に表現することができる。その結果、実際の水墨画により近い画像を得ることができる。
【0055】
本実施形態の画像処理装置は、重要度検出部52と、濃淡調整部64と、をさらに備えている。
重要度検出部52は、原画像を構成する各画素の重要度を検出し、各画素毎に検出された重要度の分布を示す重要度マップを生成する。
濃淡調整部64は、重要度マップに基づいて、特徴領域、及び特徴領域により特定される1以上の領域の各々に適用される筆運びパターンのデータについての濃淡を調整する。
このように重要度に応じて濃淡を調整することで、水墨画特有の濃淡の違いを適切に表現することが可能になる。その結果、さらに一段と、実際の水墨画により近い画像を得ることができる。
【0056】
本実施形態の画像処理装置は、特徴領域、及び特徴領域により特定される1以上の領域の各々に適用される筆運びパターンのデータをそれぞれ処理対象にして、重要度マップに基づいてぼかし処理を実行する。
このように重要度に応じてぼかし処理を実行することで、水墨画特有の墨のにじみを適切に表現することが可能になる。その結果、さらに一段と、実際の水墨画により近い画像を得ることができる。
【0057】
本実施形態の画像処理装置においては、
特徴領域検出部61は、特徴領域として原画像のエッジ領域を検出し、
筆運びパターン決定部62は、検出されたエッジ領域に適用する第1の筆運びパターン(本実施形態では直筆パターン)を決定し、エッジ領域の周囲領域及びエッジ領域が閉領域を形成する場合の当該閉領域の内部に適用するに第2の筆運びパターン(本実施形態では側筆パターン)を決定する。
これにより、紙面に当接する筆の領域を変化させながら対象物の輪郭線とその周囲を描き分けるといった水墨画特有の描き方を模倣した画像処理の実現が可能になる。その結果、さらに一段と、実際の水墨画により近い画像を得ることができる。
【0058】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0059】
例えば、原画像から検出される特徴領域としては、上記実施形態ではエッジ領域が採用されたが、特にこれに限定されず、その他例えば、いわゆる注目領域や合焦領域等各種各様の領域を採用してもよい。
例えば、筆パターンを特徴領域と異ならせる領域は、上記実施形態ではエッジ領域の周囲領域や、エッジ領域が形成する閉曲線の領域の内部が採用されたが、特徴領域から特定される領域であれば特にこれに限定されず、その他例えば、エッジ領域から所定距離だけ離間した距離にある領域を採用してもよい。
例えば、筆パターンの種類は、上記実施形態では直筆パターンと側筆パターンが採用されたが、2種類以上であれば特にこれに限定されない。例えば、側筆パターンとして、幅の異なるパターンを複数種類採用してもよい。この場合、エッジ領域に適用する第1の筆運びパターンとして直筆パターンを適用し、エッジ領域が閉領域である場合の当該閉領域に適用する第2の筆運びパターンとして、1種類目の側筆パターンを適用し、エッジ領域の周囲領域に適用する第3の筆運びパターンとして、2種類目の側筆パターンを適用してもよい。また、これら第2の筆運びパターンと第3の筆運びパターンとは同一パターンであってもよい。
例えば、筆パターンの濃淡調整やぼかしは、上記実施形態では画像度の重要度に基づいて行われたが特にこれに限定されない。その他例えば、水墨画を描く紙媒体やキャンパスを模した背景画像をつくり、この背景画像の種類(紙媒体やキャンバスの材質に相当する種類)に基づいて、筆パターンの濃淡調整やぼかしが行われてもよい。
【0060】
また例えば、本発明の画像処理装置は、上述の画像処理を実行可能な電子機器一般に適用することができる。具体的には例えば、本発明は、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、プリンタ、テレビジョン受像機、ビデオカメラ、携帯ナビゲーション装置、携帯電話機、ポータブルゲーム機等に適用可能である。
【0061】
上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
換言すると、図2の機能的構成は例示に過ぎず、特に限定されない。即ち、上述した一連の処理を全体として実行できる機能が画像処理装置1に備えられていれば足り、この機能を実現するためにどのような機能ブロックを用いるのかは特に図2の例に限定されない。
また、1つの機能ブロックは、ハードウェア単体で構成してもよいし、ソフトウェア単体で構成してもよいし、それらの組み合わせで構成してもよい。
【0062】
一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであってもよい。また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えば汎用のパーソナルコンピュータであってもよい。
【0063】
このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に配布される図1のリムーバブルメディア31により構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。リムーバブルメディア31は、例えば、磁気ディスク(フロッピディスクを含む)、光ディスク、又は光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD−ROM(Compact Disk−Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini−Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体は、例えば、プログラムが記録されている図1のROM12や、図1の記憶部19に含まれるハードディスク等で構成される。
【0064】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例示に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。本発明はその他の様々な実施形態を取ることが可能であり、さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略や置換等種々の変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、本明細書等に記載された発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0066】
以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
原画像のデータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された原画像のデータから、当該原画像の特徴領域を検出する特徴領域検出手段と、
記録手段により予め記録されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記特徴領域検出手段により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
[付記2]
前記取得手段により取得された原画像のデータを構成する各画素の重要度を検出する重要度検出手段と、
前記重要度検出手段により画素毎に検出された前記重要度の分布を示す重要度マップを生成する重要度マップ生成手段と、
前記重要度検出手段により生成された重要度マップに基づいて、前記特徴領域に適用される前記筆運びパターンのデータの濃淡を調整する調整手段と、
をさらに備えたことを特徴する付記1に記載の画像処理装置。
[付記3]
前記重要度検出手段により生成された重要度マップに基づいて、前記特徴領域検出手段により検出される特徴領域及び当該特徴領域内の1以上の領域の各々に適用される前記筆運びパターンのデータを処理対象として、ぼかし処理を実行するぼかし手段と、
をさらに備えたことを特徴する付記2に記載の画像処理装置。
[付記4]
前記特徴領域検出手段は、前記特徴領域として前記原画像のエッジ領域を検出し、
前記決定手段は、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域が閉領域を形成する場合、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域に適用する第1の筆運びパターンと前記閉領域の内部に適用する第2の筆運びパターンを決定する、
ことを特徴とする付記1乃至3の何れか1つに記載の画像処理装置。
[付記5]
前記決定手段は、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域の周囲領域に適用する第3の筆運びパターンを決定する、
ことを特徴とする付記4に記載の画像処理装置。
[付記6]
前記第2の筆運びパターンと前記第3の筆運びパターンとは同一パターンである、
ことを特徴とする付記5に記載の画像処理装置。
[付記7]
原画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
前記原画像の特徴領域を検出する検出ステップと、
記憶手段によりに予め記憶されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記検出ステップの処理により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定ステップと、
前記決定ステップの処理により決定された前記筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
[付記8]
原画像のデータに対して施す画像処理を制御するコンピュータを、
前記原画像のデータから、当該原画像の特徴領域を検出する特徴領域検出手段、
記憶手段に予め記憶されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記特徴領域検出手段により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定手段、
前記決定手段により決定された前記筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0067】
1・・・画像処理装置、11・・・CPU、12・・・ROM、13・・・RAM、14・・・画像処理部、15・・・バス、16・・・入出力インターフェース、17・・・入力部、18・・・出力部、19・・・記憶部、20・・・通信部、21・・・ドライブ、31・・・リムーバブルメディア、51・・・原画像取得部、52・・・重要度検出部、53・・・エッジ画像生成部、54・・・水墨画変換部、61・・・特徴領域検出部、62・・・筆運びパターン決定部、63・・・筆運びパターン変換部、64・・・濃淡調整部、65・・・ぼかし部、71・・・筆運びパターン記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原画像のデータを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された原画像のデータから、当該原画像の特徴領域を検出する特徴領域検出手段と、
記録手段により予め記録されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記特徴領域検出手段により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換手段と、
を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記取得手段により取得された原画像のデータを構成する各画素の重要度を検出する重要度検出手段と、
前記重要度検出手段により画素毎に検出された前記重要度の分布を示す重要度マップを生成する重要度マップ生成手段と、
前記重要度検出手段により生成された重要度マップに基づいて、前記特徴領域に適用される前記筆運びパターンのデータの濃淡を調整する調整手段と、
をさらに備えたことを特徴する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記重要度検出手段により生成された重要度マップに基づいて、前記特徴領域検出手段により検出される特徴領域及び当該特徴領域内の1以上の領域の各々に適用される前記筆運びパターンのデータを処理対象として、ぼかし処理を実行するぼかし手段と、
をさらに備えたことを特徴する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記特徴領域検出手段は、前記特徴領域として前記原画像のエッジ領域を検出し、
前記決定手段は、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域が閉領域を形成する場合、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域に適用する第1の筆運びパターンと前記閉領域の内部に適用する第2の筆運びパターンを決定する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記決定手段は、前記特徴領域検出手段により検出されたエッジ領域の周囲領域に適用する第3の筆運びパターンを決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2の筆運びパターンと前記第3の筆運びパターンとは同一パターンである、
ことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
原画像のデータに対して画像処理を施す画像処理装置が実行する画像処理方法であって、
前記原画像の特徴領域を検出する検出ステップと、
記憶手段によりに予め記憶されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記検出ステップの処理により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定ステップと、
前記決定ステップの処理により決定された前記筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換ステップと、
を含むことを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
原画像のデータに対して施す画像処理を制御するコンピュータを、
前記原画像のデータから、当該原画像の特徴領域を検出する特徴領域検出手段、
記憶手段に予め記憶されている少なくとも2種類以上の筆運びパターンのデータの中から、前記特徴領域検出手段により検出された特徴領域に適用すべき筆運びパターンのデータを決定する決定手段、
前記決定手段により決定された前記筆運びのパターンのデータに基づいて、前記特徴領域中の原画像のデータを変換する変換手段、
として機能させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−29876(P2013−29876A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163413(P2011−163413)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】