説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】文字又は線画の画質劣化を防止する。
【解決手段】エッジ抽出部は画像に含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出する。判定部は前記オブジェクトが複数色からなる画像であって、かつ各色の画像の画素値が一定値以上の黒オブジェクトである可能性を、前記画像に基づいて判定する。エッジ処理部は前記判定部による判定結果に応じて、前記抽出されたオブジェクトのエッジに細線化処理又は輪郭強調処理等を施してその画素値を調整する(ステップS12、S14、S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のプリンタはインクを用いたプリンタに比べてドットゲインが大きいため、同じフォント文字を印刷しても文字が太く印刷されてしまうことがある。そのため、画像処理によって文字の線幅を細くする処理(以下、細線化処理という)を施すことがなされている(例えば、特許文献1参照)。細線化処理は、ソリッド文字(文字部分の画素値が最大値付近となっている文字をいう)の画像のエッジを捉えて中間調レベルに変換することにより、文字の輪郭部分の画素値を一様に下げる処理である。これにより、太りやすいソリッド文字も細く見せることができる。
【特許文献1】特開2005−341249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ハーフトーン文字(文字部分の画素値が中間調となっている文字をいう)の場合、文字の太りよりもスクリーン処理によって生じるジャギーが問題となり、これを軽減する目的で輪郭強調処理を施す場合がある。しかし、輪郭強調は輪郭線を描き足していくものであるため、文字を太らせる傾向がある。加えて、上記特許文献1に記載のようにソリッド文字に細線化処理を施し、ハーフトーン文字に輪郭強調処理を施して両者を比較すると、ハーフトーン文字がより太く見えてしまい、アンバランスな結果となる場合がある。
【0004】
特に、黒の文字を印刷する場合にはこの傾向が顕著になる場合がある。同じ黒のソリッド文字であっても、黒単色で出力される場合だけでなく、C(シアン)、M(マジェンタ)、Y(イエロー)、K(黒)の4色により出力される場合があるためである。例えば、ワープロソフトで作成されたドキュメントを、直接ワープロソフトによって印刷した場合には黒のソリッド文字は黒単色で出力されるが、ドキュメントを一旦PDF等の別のファイル形式に変換して印刷した場合には、黒のソリッド文字はCMYKの4色を用いて出力される場合がある。また、プリンタドライバソフトにおける設定が変更された場合にも同様のことが起こる可能性がある。
【0005】
4色を用いて黒を表現するドキュメントにおいて、細線化処理と輪郭強調処理の両方を行う場合を考える。黒を表現するには一般的にCMYKの各色の画像をそれぞれ20〜30%程度の濃度で重ねて出力する。つまり、それぞれの色の画像は中間調であるため、細線化はなされずに輪郭強調が行われることとなる。
【0006】
図11は、CMYKの4色の中間調の画像を重ねることで黒の文字を表す際に、各色の元画像にスクリーン処理、輪郭強調処理を施したものを示す図である。図12は各色の画像を重ねたところを用紙上面から見た図と印刷時の断面イメージ図である。図11に示すように、中間調の画像についてスクリーン処理するとジャギーが生じるため、輪郭強調処理を施す必要がある。しかし、輪郭強調されるとCMYK各色で輪郭を描くことになるので、図12に示すように印刷時には文字の輪郭部分において常に各色のトナーが付着した状態となる。そうすると、図12の断面イメージとして示すように各色のトナーが重なり盛り上がってしまうため、輪郭部分が広がって文字が太くなる。つまり、文字のエッジを必要以上に強調する可能性があり、それに伴って黒文字全体が太る傾向となってしまうのである。
【0007】
これに対し、黒単色で黒を表現する場合、図13に示すように最大値である100%付近の高濃度で黒を出力する。この場合、文字の太りを防止するため細線化処理が行われるので、図13に示すように文字は細る傾向にある。
そうすると、同じフォント文字であるにも拘わらず、黒単色で出力されるか、CMYKの4色で出力するかによって、ある文字は細く、ある文字は太くなるという不都合が生じる。
【0008】
本発明の課題は、文字又は線画の画質劣化を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、
画像に含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出部と、
前記オブジェクトが複数色からなる画像であって、かつ各色の画像の画素値が一定値以上の黒オブジェクトである可能性を、前記画像に基づいて判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記抽出されたオブジェクトのエッジの画素値を調整するエッジ処理部と、
を備える画像処理装置が提供される。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性があると判定された場合、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施して画素値を調整する請求項1に記載の画像処理装置が提供される。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性がないと判定された場合、前記オブジェクトのエッジに輪郭強調処理を施して画素値を調整する請求項1又は2に記載の画像処理装置が提供される。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、
前記判定部は、黒オブジェクトである可能性を複数の段階に分けて判定し、
前記エッジ処理部は、前記判定された可能性の段階に応じた調整を行う請求項1に記載の画像処理装置が提供される。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、
前記判定部により判定される可能性の段階が、黒オブジェクトである可能性は非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性がある段階である場合に、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施すか、或いは輪郭強調処理を施すかを選択するための操作部を備え、
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性が非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性があると判定される段階である場合、前記オブジェクトのエッジに対し、前記操作部により選択された処理を施して画素値の調整を行う請求項4に記載の画像処理装置が提供される。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、
前記判定部は、各色の画像の画素値と閾値との比較結果に基づいて判定を行う請求項1〜5の何れか一項に記載の画像処理装置が提供される。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、
画像に含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記オブジェクトが複数色からなる画像であって、かつ各色の画像の画素値が一定値以上の黒オブジェクトである可能性を、前記画像に基づいて判定する判定工程と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記抽出されたオブジェクトのエッジの画素値を調整するエッジ処理工程と、
を含む画像処理方法が提供される。
【0016】
請求項8に記載の発明によれば、
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性があると判定された場合、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施して画素値を調整する請求項7に記載の画像処理方法が提供される。
【0017】
請求項9に記載の発明によれば、
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性がないと判定された場合、前記オブジェクトのエッジに輪郭強調処理を施して画素値を調整する請求項7又は8に記載の画像処理方法が提供される。
【0018】
請求項10に記載の発明によれば、
前記判定工程は、黒オブジェクトである可能性を複数の段階に分けて判定し、
前記エッジ処理工程は、前記判定された可能性の段階に応じた調整を行う請求項7に記載の画像処理方法が提供される。
【0019】
請求項11に記載の発明によれば、
前記判定工程により判定される可能性の段階が、黒オブジェクトである可能性は非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性がある段階である場合に、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施すか、或いは輪郭強調処理を施すかを選択するための操作工程を備え、
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性が非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性があると判定される段階である場合、前記オブジェクトのエッジに対し、前記操作工程により選択された処理を施して画素値の調整を行う請求項10に記載の画像処理方法が提供される。
【0020】
請求項12に記載の発明によれば、
前記判定工程は、各色の画像の画素値と閾値との比較結果に基づいて判定を行う請求項7〜11の何れか一項に記載の画像処理方法が提供される。
【発明の効果】
【0021】
請求項1〜3、6〜9、12に記載の発明によれば、太りやすい黒オブジェクトの可能性があると判定された場合にはエッジの画素値を細線化処理により小さくするよう調整することができる。よって、中間調の画像を複数色分重ねて黒色を表す場合であっても、線画が太るという画質劣化を防止することができる。また、黒単色のソリッドの線画であってもCMYKの複数色からなる中間調の線画であっても見た目に異なる太さとなることを防止することができる。
【0022】
請求項4、10に記載の発明によれば、可能性に応じた処理を施すことができ、段階に応じて適切な調整を行うことができる。
【0023】
請求項5、11に記載の発明によれば、少なくとも黒オブジェクトの可能性があるのであれば細線化処理を行うことにより、黒オブジェクトの太りを確実に防止できるよう図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本実施形態では、本発明をMFP(Multi Function Peripheral)に適用した例を説明する。
【0025】
まず、構成を説明する。
図1に、MFP100を示す。
MFP100は、外部PC(パーソナルコンピュータ)200と接続されており、当該外部PC200から送信されたPDL(Page Description Language)形式のデータから画像データを生成して画像処理した後、印刷出力するものである。
【0026】
図1に示すように、MFP100は、画像処理部10、制御部11、コントローラ12、操作部13、表示部14、記憶部15、画像メモリ16、出力装置17を備えて構成されている。
制御部11は、記憶部15に記憶された各種制御プログラムとの協働によりMFP100の各部を集中制御する。
【0027】
コントローラ12は、ラスタライズ処理により画素毎の画像Gのデータと、属性情報TAGを生成する。属性情報TAGとは、画像Gの各画素について文字、線画又は写真画の何れの属性にあたるかを示す情報である。コントローラ12は、画像Gに属性情報TAGを付帯して画像処理部10に出力する。
【0028】
具体的には、外部PC200において作成したドキュメントのデータがプリンタドライバソフトによってPDL形式に変換されて、コントローラ12に送信されるので、コントローラ12はラスタライズ処理によって画素毎の画像Gのデータを生成する。ラスタライズ処理では、PDLコマンドを解析し、描画すべき画像単位(これをオブジェクトという)毎にCMYKそれぞれの色の画像Gのデータ及び属性情報TAGを生成する。画像Gは、描画するオブジェクトについて画素を割り当て、この割り当てた画素毎に画素値を設定することにより生成する。
【0029】
操作部13は、オペレータの操作指示を入力するためのものであり、各種キーや表示部14と一体に構成されるタッチパネル等を備えて構成されている。操作部13は、操作に応じた操作信号を生成して制御部11に出力する。
表示部14は、制御部11の制御に従ってディスプレイ上に操作画面等を表示する。
記憶部15は、各種制御プログラムの他、処理に必要なパラメータや設定データ等を記憶している。
画像メモリ16は、画像のデータを記憶するためのメモリである。
【0030】
出力装置17は、画像処理部10から出力される画像Goutに基づいて印刷を行う。画像Goutは、プリンタコントローラ12によって生成された画像Gに、画像処理部10が画像処理を施して生成したものである。
出力装置17は、電子写真方式による印刷を行い、例えば給紙部、露光部、現像部、定着部等からなる。印刷時には、画像Goutのデータに基づいて露光部が感光ドラム上にレーザ光を照射して静電潜像を形成する。そして、現像部によりトナーを付着させてトナー像を形成すると、これを給紙部から給紙された用紙上に転写させ、定着部により用紙への定着を行う。
【0031】
次に、図2を参照して本実施形態に係る画像処理部10について説明する。
図2に示すように、画像処理部10はエッジ抽出部11、判定部12、スクリーン処理部13、エッジ処理部14を備えて構成されている。画像処理部10に入力された画像Gは、エッジ抽出部11、判定部12、スクリーン処理部13、エッジ処理部14の処理に用いられる。
以下、各部の働きについて説明する。
【0032】
エッジ抽出部11は、画像Gに含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出する。具体的には、画像Gの全画素について文字又は線画のオブジェクトを構成する画素か、当該オブジェクトのエッジを構成する画素かを判定する(以下、判定の対象となる画素を注目画素という)。判定は全ての色の画像Gについて行う。そして、各画素につき文字又は線画のオブジェクトのエッジを構成する画素か否かを示すエッジ情報Edを出力する。Ed=ONはエッジを構成する画素であることを示し、Ed=OFFはそうでないことを示す情報である。
【0033】
まず、エッジ抽出部11は注目画素について属性情報TAGを参照し、文字又は線画のオブジェクトを構成する画素であるかどうかを判別する。写真画の画素である場合にはエッジ情報EdをEd=OFFとしてエッジ処理部14に出力する。
文字又は線画の画素である場合には、注目画素の位置を中心として画像Gに、図3に示す3×3画素のオペレータopをあてはめ、注目画素に隣接する4つの画素の画素値I0〜I3を得る。
【0034】
次いで、注目画素の画素値(Gで示す)と隣接画素の画素値I0〜I3との差E0〜E3を、下記式により求める。なお、[ch]はCMYKの色を示す記号である。
E0[ch]=G[ch]-I0[ch]
E1[ch]=G[ch]-I1[ch]
E2[ch]=G[ch]-I2[ch]
E3[ch]=G[ch]-I3[ch]
【0035】
次いで、E0[ch]〜E3[ch]のうちの最大値を求め、これを正のエッジ信号PEDGEとする。
同様に、E0[ch]〜E3[ch]の符号を反転させたもののうち、最大値を求め、これを負のエッジ信号REDGEとする。PEDGE、REDGEは下記式により示される。なお、Max()は、かっこ内の値のうち最大値を出力する関数を示す。
PEDGE=Max(E0[ch]、E1[ch]、E2[ch]、E3[ch])
ただし、PEDGE<REDGEのときPEDGE=0
REDGE=Max(-E0[ch]、-E1[ch]、-E2[ch]、-E3[ch])
ただし、REDGE<PEDGEのときREDGE=0
【0036】
このようにして求めたE0[ch]〜E3[ch]と、PEDGE、REDGEがエッジ強度である。次に、求めたPEDGEと、PEDGEについて予め定められた閾値THとを比較し、注目画素がエッジを構成する画素かどうかを判定する。PEDGE>THであれば、エッジ情報EdをEd=ONとしてエッジ処理部14に出力する。一方、PEDGE≦THであればEd=OFFとしてエッジ情報Edを出力する。
【0037】
判定部12は、画像Gの全画素につき、黒オブジェクトを構成する画素である可能性を判定し、その判定結果を示す判定情報Pを生成してエッジ処理部14に出力する。黒オブジェクトとは、文字又は線画のオブジェクトの中でも複数色の画像を重ねてなるオブジェクトであって、その各色の画素値が一定値以上のものをいう。黒オブジェクトは、例えばYMCの各色が20〜30%、Kが30%以上等、一定値以上の画素値(濃度)を有する複数色の画像が重なることにより黒色に見える。
【0038】
黒オブジェクトである可能性は、複数の段階に分けて判定する。ここでは、黒オブジェクトである可能性がない(P=0)、少なくとも黒オブジェクトの可能性がある(P=1)、黒オブジェクトの可能性が高い(P=2)、黒オブジェクトの可能性が非常に高い(P=3)、ソリッドのオブジェクトである(P=4)の5段階で判定する例を説明する。判定は閾値α、β、γ(α<β<γ)と各色の画素値を比較することにより行う。閾値α、β、γは判定のために予め準備された閾値である。閾値αはCMYKの各色の画像を重ねたときに黒色に見えるかどうかの境界となる濃度を、閾値βは確実に黒色に見える境界となる濃度を、閾値γは単色でソリッド(最大値付近の濃度)に見えるかどうかの境界となる濃度を経験的に求めて設定すればよい。例えばα=10%、β=20%、γ=90%の値を適用することができる。つまり、取りうる画素値の最大値が255の場合、その10%、20%、90%にあたる25.5、51、229.5と注目画素の画素値とを比較する。なお、閾値α、β、γは色毎に異なる値を適用してもよい。
【0039】
以下、図4を参照して具体的に判定方法を説明する。判定は画素毎に行う。
図4に示すように、判定部12はCMYKの4色の画像Gそれぞれについて注目画素における画素値(以下、各色の画素値をCMYKで示す。)を参照し、各色の画素値C、M、Y、Kと閾値γとを比較する(ステップS1)。各画素値C、M、Y、Kのうち何れか1つでもγ以上となる場合(ステップS1;N)、何れかの色が100%付近の濃度を持つと考えられるので、判定部12はオブジェクトは黒オブジェクトではなく、ソリッドのオブジェクトであると判定し、判定情報P=4を出力する(ステップS2)。
【0040】
一方、画素値C<γかつ画素値M<γかつ画素値Y<γかつ画素値K<γである場合(ステップS1;Y)、黒以外の色の各画素値C、M、Yと閾値αとを比較する。画素値C>αかつ画素値M>αかつ画素値Y>αではない場合(ステップS3;N)、各色の画素値C、M、Yは小さく各色の画像を重ねても黒色に見えることはないと考えられるので、判定部12は黒オブジェクトの可能性はないと判定する。判定部12は判定情報PをP=0に設定し、出力する(ステップS4)。
【0041】
一方、画素値C>αかつ画素値M>αかつ画素値Y>αであるが、画素値K>αではない場合(ステップS3;Y、S5;N)、α以上の値を有することから少なくともグレー色になり、黒オブジェクトではないとは断定できない。よって、判定部12は少なくとも黒オブジェクトである可能性があると判定し、判定情報PをP=1に設定して出力する(ステップS6)。
【0042】
画素値C>αかつ画素値M>αかつ画素値Y>αであり、さらに画素値K>αである場合(ステップS3;Y、S5;Y)、黒以外の各色の画素値C、M、Yと閾値β(α<β)と比較する。画素値C>βかつ画素値M>βかつ画素値Y>βではない場合(ステップS7;N)、各色の画像を重ねた場合に確実に黒色に見えるとは断定できないが、黒色に見える可能性は高い。よって、判定部12は黒オブジェクトである可能性が高いと判定して、判定情報PをP=2に設定して出力する(ステップS8)。
【0043】
一方、画素値C>βかつ画素値M>βかつ画素値Y>βである場合(ステップS7;Y)、黒以外の色だけでもβ以上の大きい値となるため、CMYKの各色の画像を重ねた場合には確実に黒色になると考えられる。よって、判定部12は黒オブジェクトである可能性が非常に高いと判定し、判定情報PをP=3に設定して出力する(ステップS9)。
【0044】
スクリーン処理部13は、CMYKの4色の画像についてスクリーン処理を施す。スクリーン処理後の画像SCはエッジ処理部14に出力する。以下、スクリーン処理後の画像SCの画素値をSCで示す場合がある。
【0045】
エッジ処理部14は、画像Gに含まれる黒オブジェクトのエッジを構成する画素の画素値を調整し、調整後の画像Goutを出力する。以下、画像Goutの各画素の画素値をGoutで示す場合がある。すなわち、黒オブジェクトは印刷されたときに一定値以上の画素値を持つ画像が複数色重ねられるため、エッジにおいてトナーが広がり、太る傾向にある。そこで、エッジにおいてトナーの重なりが小さくなるように画素値の調整を行うのである。また、黒オブジェクトではなく、オブジェクトの画素値が中間調であればスクリーン処理によるジャギーが問題となるので、輪郭強調処理によりエッジの画素値を大きくするよう調整する必要がある。
【0046】
図5は、エッジ処理部14の調整の全体的な流れを示すフローチャートである。調整は画素毎に行う。
図5に示すように、エッジ処理部14は調整の対象となる注目画素について、エッジ抽出部11から入力されたエッジ情報Edを参照し、文字又は線画のオブジェクトのエッジを構成する画素であるか否かを判別する(ステップS11)。Ed=OFFであり、オブジェクトのエッジを構成する画素ではないと判別された場合(ステップS11;N)、細線化処理も輪郭強調処理も施さない無処理とし、注目画素の画素値Goutとして、スクリーン処理部13から入力されたスクリーン処理後の画素値SCを出力する(ステップS12)。
【0047】
Ed=ONであり、注目画素が文字又は線画のオブジェクトのエッジを構成する画素である場合(ステップS11;Y)、エッジ処理部14は、判定部12から入力される判定情報Pに基づいて注目画素が黒オブジェクトの画素を構成する可能性を判定する。P=3であり、注目画素は黒オブジェクトを構成する画素である可能性が非常に高い場合(ステップS13;Y)、注目画素について細線化処理を施す(ステップS14)。エッジ処理部14は、細線化処理後の画素値ISを注目画素の画素値Goutとして出力する。
【0048】
細線化処理では、エッジにおける背景よりも前景が見た目に濃いかどうか、つまりPEDGE>REDGEであるかどうかを判断する。PEDGE>REDGEであれば、下記式により細線化処理後の画素値ISを算出する。
IS[ch]=G[ch]+(REDGE[ch]-PEDGE[ch])×STVL/256
なお、STVLは細線化の程度を調整する係数であり、0〜256の値の範囲を持つ。
PEDGE>REDGEでない場合はIS[ch]=G[ch]として、元の画素値Gをそのまま出力する。
【0049】
図6(a)は、黒オブジェクトである「T」の文字の元画像を示す図である。細線化処理を経ると、図6(b)に示すように文字のエッジを構成する画素については、画素値が引き下げられることになる。結果として、CMYKの各色の画像を重ねたとしてもエッジ部分では印刷時のトナーの重なりが小さくなるので、トナーの広がりも少なく文字の太りを防止することができる。
【0050】
一方、判定情報Pが0〜2である場合(ステップS13;N)、黒オブジェクトを構成する画素である可能性が非常に高いとはいえないが、少なくとも可能性があるかどうかを判別する(ステップS15)。P=1又は2であり、少なくとも可能性がある場合(ステップS15;Y)、注目画素について細線化処理を施す(ステップS14)。エッジ処理部14は、細線化処理後の画素値ISを注目画素の画素値Goutとして出力する。
【0051】
判定情報PがP=0であり、黒オブジェクトを構成する画素である可能性がない場合(ステップS15;N)、ソリッドのオブジェクトであるかどうか、つまり判定情報PがP=4かどうかを判断する(ステップS16)。ソリッドのオブジェクトである場合(ステップS16;Y)、注目画素について細線化処理を施す(ステップS14)。ソリッドのオブジェクトではない場合(ステップS16;N)、注目画素について輪郭強調処理を施す(ステップS17)。エッジ処理部14は、輪郭強調処理後の画素値LAを注目画素の画素値Goutとして出力する。
【0052】
輪郭強調処理では、図7に示す処理を経て輪郭強調処理後の画素値が決定される。
図7に示すように、まず注目画素についてスクリーン処理後の画素値SCと、閾値LADTONとを比較し、SC≧LADTONか否かを判別する(ステップS21)。閾値LADTONはスクリーン処理後、ドットが有る程度視認できる濃度で出力されるかどうかの境界値として予め設定されている閾値である。
【0053】
SC≧LADTONである場合(ステップS21;Y)、画素値SCと閾値pvとを比較し、SC<pvであるかどうかを判別する(ステップS22)。閾値pvはドットが低濃度となるかを判定するための閾値であり、図8に示す関数により求める。図8に示す関数は画素値Gの1次関数であり、次式により表される。
pv=LAAV×G
ただし、pv<0のときpv=0であり、pv>Maxのときpv=Maxである。LAAVは関数の傾きを示し、0〜2の値をとり得る。
すなわち、pvは元の画素値Gに比例し、元の画素値Gが大きければpvも大きくなる。
【0054】
SC<pvである場合(ステップS22;Y)、注目画素の画素値LAをLA=pvとする(ステップS23)。一方、SC<pvではない場合(ステップS22;N)、注目画素の画素値LAをLA=SCとして、スクリーン処理の結果をそのまま出力する(ステップS26)。このようにpvとSCのうち、より大きい方の値を選択することにより、輪郭強調を行う。
【0055】
次に、SC≧LADTONではない場合(ステップS21;N)、元の画素値Gと閾値LAHDENを比較し、G≧LAHDENであるか判別する(ステップS24)。閾値LAHDENは元の画素値Gが大きい値かどうかを判定するための閾値である。G≧LAHDENである場合(ステップS24;Y)、注目画素の画素値LAをLA=pwとする(ステップS25)。
pwは次式で示す関数により求められる。
pw=LAAW×G
ただし、pw<0のときpw=0であり、pw>Maxのときpw=Maxである。LAAWは関数の傾きを示し、0〜2の値をとり得る。
【0056】
一方、G≧LAHDENではない場合(ステップS24;N)、スクリーン処理後の画素値SCはそれほど大きくないので、スクリーン処理後の画素値SCを注目画素の画素値LAとする(ステップS26)。
このように、元の画素値Gが大きい値であればpwを選択して元の画素値Gに応じたドットを出力するようにし、画素値Gが大きい値でなければSCを選択して低濃度のドットとする。
【0057】
4色(CMYK)の中間調の画像Gを重ねて黒オブジェクトを形成する場合において、上記調整を行った例を図9に示す。スクリーン処理部13からは各色の画像Gにスクリーン処理を施した画像SCが得られる。元画像Gは中間調であるため、スクリーン処理を施すことによりジャギーが発生していることが分かる。ジャギーを防ぐためエッジに輪郭強調処理が施すと画像Gout1が得られる。しかし、画像Gout1はエッジ部分における各色のトナーの重なりが大きく太ることとなる。これに対し、エッジ調整部14では、黒オブジェクトについてはエッジに細線化処理を施すので、得られるのはエッジが画素値IS、それ以外は画素値SCの画像Gout2である。画像Gout2はエッジ部分の画素値が小さいため、エッジ部分で各色のトナーを重ね合わせても広がることはなく、太りを抑制することができる。
【0058】
図10に、図9の4色の画像を重ね合わせたものの上面図を示す。
図10に示すように、画像Gout1を印刷すると、エッジ部分のトナーの重なりが大きくなる。一方、画像Gout2の場合、エッジ部分については細線化処理することにより、印刷時にはエッジにおける各色のトナーの重なりが小さくなることから、太りが抑制される。
【0059】
以上のように、本実施形態によれば、エッジ抽出部11において画像に含まれる線画のオブジェクトのエッジを抽出し、エッジ情報Edを出力する。また、判定部12において線画のオブジェクトが黒オブジェクトである可能性を判定し、判定情報Pを出力する。エッジ処理部14では、エッジ情報Ed及び判定情報Pに基づいて、オブジェクトのエッジについては輪郭強調処理又は細線化処理を施すか、或いはスクリーン処理の結果をそのまま出力する等して、エッジの画素値を調整する。これにより、太りやすい黒オブジェクトのエッジについては、細線化処理を施して太らないよう調整することができる。
【0060】
従って、中間調の画像を複数色分重ねて黒色を表す場合であっても、線画が太るという画質劣化を防止することができる。また、同じ黒色を表現する線画であるにも拘わらず、黒単色のソリッドの線画とYMCK混合色の中間調の線画とで、一方は太り他方は細るといった現象が生じるのを防止することができる。結果として、安定した黒オブジェクトの再現が可能となる。
【0061】
また、黒オブジェクトである可能性は複数段階に分けて判定する。P=0で黒オブジェクトの可能性がない場合には輪郭強調処理、Pが1〜3で少なくとも可能性があるのであれば細線化処理等、可能性に応じた処理を施すことができ、段階に応じて適切な調整を行うことができる。また、P=4でソリッドのオブジェクトである場合には細線化処理を施すので、ソリッドの場合にも適切な処理を施すことが可能である。
【0062】
なお、上述した実施形態は本発明を適用した好適な一例であり、これに限定されない。
例えば、上記実施形態ではP>1で少なくとも可能性があるのであれば細線化処理とすることしたが、確実に黒オブジェクトであるとは断定できないP=1、2については、黒オブジェクトの可能性が非常に高いP=3と同様に細線化処理を施すのか、それとも輪郭強調処理を施すのかは、ユーザが選択操作できることとしてもよい。操作部13からの選択操作に応じた処理を施すことにより、画質の調整について自由度が向上する。
【0063】
また、黒オブジェクトの可能性があると判定された場合、細線化処理のみを施す構成としたが、黒オブジェクトについても輪郭強調処理を施し、当該輪郭強調処理の強調の程度を小さくすることとしてもよい。この場合、細線化処理を施す場合に比べれば線画の太りがあるかもしれないが、スクリーン処理によるジャギーの抑制を図るとともに、エッジが太らないようにも図ることができる。
【0064】
また、MFPに適用した例を説明したが、画像処理を行うコンピュータ装置に適用してもよい。ソフトウェア化して前記コンピュータ装置に上述した画像処理機能を実現させるプログラムとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】MFPの構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係る画像処理部を示す図である。
【図3】エッジを抽出するためのオペレータ例を示す図である。
【図4】黒オブジェクトの可能性を判定する処理の流れを説明するフローチャートでる。
【図5】エッジ調整を行う際の処理の流れを説明するフローチャートである。
【図6】(a)は黒オブジェクトの元画像を示し、(b)は(a)の画像を細線化処理した処理結果を示す図である。
【図7】輪郭強調処理の流れを説明するフローチャートである。
【図8】輪郭強調処理で用いるpvを求めるための関数を示す図である。
【図9】4色の元画像に対し、各種画像処理を施した画像の例を示す図である。
【図10】4色の画像を重ねたところの図である。
【図11】従来行われている画像処理を説明する図である。
【図12】従来の方法で中間調による黒文字を画像処理したときの処理結果を示す図である。
【図13】従来の方法でソリッドの黒文字を画像処理したときの処理結果を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
100 MFP
10 画像処理部
11 エッジ抽出部
12 判定部
13 スクリーン処理部
14 エッジ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出部と、
前記オブジェクトが複数色からなる画像であって、かつ各色の画像の画素値が一定値以上の黒オブジェクトである可能性を、前記画像に基づいて判定する判定部と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記抽出されたオブジェクトのエッジの画素値を調整するエッジ処理部と、
を備える画像処理装置。
【請求項2】
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性があると判定された場合、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施して画素値を調整する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性がないと判定された場合、前記オブジェクトのエッジに輪郭強調処理を施して画素値を調整する請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定部は、黒オブジェクトである可能性を複数の段階に分けて判定し、
前記エッジ処理部は、前記判定された可能性の段階に応じた調整を行う請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定部により判定される可能性の段階が、黒オブジェクトである可能性は非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性がある段階の場合に、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施すか、或いは輪郭強調処理を施すかを選択するための操作部を備え、
前記エッジ処理部は、前記判定部により黒オブジェクトである可能性が非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性があると判定される段階である場合、前記オブジェクトのエッジに対し、前記操作部により選択された処理を施して画素値の調整を行う請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定部は、各色の画像の画素値と閾値との比較結果に基づいて判定を行う請求項1〜5の何れか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像に含まれる文字又は線画のオブジェクトのエッジを抽出するエッジ抽出工程と、
前記オブジェクトが複数色からなる画像であって、かつ各色の画像の画素値が一定値以上の黒オブジェクトである可能性を、前記画像に基づいて判定する判定工程と、
前記判定部による判定結果に応じて、前記抽出されたオブジェクトのエッジの画素値を調整するエッジ処理工程と、
を含む画像処理方法。
【請求項8】
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性があると判定された場合、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施して画素値を調整する請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項9】
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性がないと判定された場合、前記オブジェクトのエッジに輪郭強調処理を施して画素値を調整する請求項7又は8に記載の画像処理方法。
【請求項10】
前記判定工程は、黒オブジェクトである可能性を複数の段階に分けて判定し、
前記エッジ処理工程は、前記判定された可能性の段階に応じた調整を行う請求項7に記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記判定工程により判定される可能性の段階が、黒オブジェクトである可能性は非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性がある段階の場合に、前記オブジェクトのエッジに細線化処理を施すか、或いは輪郭強調処理を施すかを選択するための操作工程を備え、
前記エッジ処理工程は、前記判定工程により黒オブジェクトである可能性が非常に高くはないが少なくとも黒オブジェクトである可能性があると判定される段階である場合、前記オブジェクトのエッジに対し、前記操作工程により選択された処理を施して画素値の調整を行う請求項10に記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記判定工程は、各色の画像の画素値と閾値との比較結果に基づいて判定を行う請求項7〜11の何れか一項に記載の画像処理方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−70128(P2009−70128A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237706(P2007−237706)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】