画像処理装置,電気光学装置,電子機器および画像処理方法
【課題】補正値の記憶に必要な記憶容量を削減しながら階調ムラを有効に防止する。
【解決手段】補正値取得回路64は、X方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置Rの各々の補正値A[1]〜A[H]を記憶回路62から取得する。補間回路66は、相互に隣合う2個の基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した補正値A[1]〜A[H]を補間することで基準位置間の各位置の補正値α[n]を算定する。補正回路68は、X方向の各位置に対応する画素Pの階調値Gをその位置の補正値α[n]に応じて補正する。
【解決手段】補正値取得回路64は、X方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置Rの各々の補正値A[1]〜A[H]を記憶回路62から取得する。補間回路66は、相互に隣合う2個の基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した補正値A[1]〜A[H]を補間することで基準位置間の各位置の補正値α[n]を算定する。補正回路68は、X方向の各位置に対応する画素Pの階調値Gをその位置の補正値α[n]に応じて補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素を利用して表示される画像の階調ムラを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、X方向に延在する複数の走査線12とY方向に延在する複数の信号線14との各交差に対応して複数の画素Pが行列状に配列された電気光学装置が従来から提案されている。複数の信号線14は、所定の本数毎に複数のブロックBに区分される。各画素Pに指定された階調値に応じた画像信号がブロックB毎に時分割で各信号線14に供給される。
【0003】
以上のように各信号線14に対してブロックB毎に時分割で画像信号を供給する構成では、相互に隣合うブロックBの境界線に対応する縦線状の階調ムラ(以下「縦線ムラ」という)が発生するという問題がある。特許文献1には、各ブロックBの両端の信号線14に供給される画像信号を補正することで縦線ムラを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−47971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像信号の伝送距離(画像信号の入力端から各信号線までの距離)や各信号線14に対する画像信号の供給地点はブロックBごとに相違するから、ブロックB間の縦線ムラの度合はX方向の位置に応じて相違する。しかし、特許文献1の技術では、各信号線14の画像信号の補正に適用される補正値が複数のブロックBについて共通するから、X方向の位置に応じた縦線ムラの相違を充分に補償できないという問題がある。
【0006】
各信号線14に供給される画像信号を個別に補正できるように信号線14毎の補正値を記憶回路に保持しておく構成も想定され得るが、補正値の記憶に必要な記憶容量が増加するという問題がある。なお、以上の説明ではブロックB毎に時分割で画像信号を各信号線に供給する場合を例示したが、例えば、各ブロックB内の複数の信号線14の各々に順次に画像信号を供給する処理を複数のブロックBについて並列に実行する構成でも同様にブロックB単位の縦線ムラは発生し得る。以上の事情を考慮して、本発明は、補正値の記憶に必要な記憶容量を削減しながら階調ムラを有効に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、相互に交差する第1方向(例えばX方向)および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理装置であって、第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、相互に隣合う2個の基準位置について補正値取得手段が取得した補正値を補間することで2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段とを具備する。以上の構成によれば、第1方向の各位置について個別に補正値が生成されるから、縦線ムラ等の階調ムラの度合が第1方向の位置に応じて相違する場合でも、各位置の階調ムラを有効に低減して均一な表示を実現することが可能である。また、2個の基準位置の補正値を補間することで基準位置間の各位置の補正値が算定されるから、補正値の保持に必要な記憶容量が削減されるという利点もある。
【0008】
本発明の好適な態様の電気光学装置は、複数の基準位置のうちの第1基準位置について補正値を記憶し、第1基準位置以外の第2基準位置について第1基準位置の補正値を基準とする相対値を記憶する記憶手段を具備し、補正値取得手段は、記憶手段に記憶された相対値と第1基準位置の補正値とから第2基準位置の補正値を算定する。以上の態様では、第2基準位置の補正値が第1基準位置の補正値に対する相対値として記憶手段に記憶されるから、例えば第1基準位置の補正値を変更することで、各基準位置の補正値を一括的に変更できるという利点がある。
【0009】
本発明の電気光学装置は、相互に交差する第1方向および第2方向に沿って行列状に配置された複数の画素を含む画素部と、各画素の階調値を指定する画像信号を生成する以上の各態様の画像処理回路と、画像処理回路が生成した画像信号に応じて各画素を駆動する駆動回路とを具備する。したがって、本発明の画像処理装置と同様の作用および効果が実現される。本発明の電気光学装置は、画像を表示する表示体として各種の電子機器(例えば携帯電話機や投射型表示装置)に搭載され得る。
【0010】
電気光学装置の各画素の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理方法としても本発明は実現され得る。本発明の画像処理方法は、第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得し、相互に隣合う2個の基準位置について取得した補正値を補間することで2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定し、第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する。以上の画像処理方法でも本発明の画像処理装置と同様の作用および効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。
【図2】画素の回路図である。
【図3】電気光学装置の動作のタイミングチャートである。
【図4】信号線駆動回路のブロック図である。
【図5】画像処理回路のブロック図である。
【図6】補正処理回路のブロック図である。
【図7】記憶回路の記憶内容および補間処理の説明図である。
【図8】第2実施形態における記憶回路の記憶内容および補間処理の説明図である。
【図9】電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図10】電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図11】電子機器の形態(投射型表示装置)を示す斜視図である。
【図12】背景技術における問題点を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置100のブロック図である。電気光学装置100は、画像を表示する表示体として様々な電子機器に搭載される液晶装置である。図1に示すように、電気光学装置100は、複数の画素(画素回路)Pが平面状に配列された画素部10と、上位装置から供給される画像データDAを処理することでK系統(Kは2以上の自然数)の画像信号V[1]〜V[K]を生成する画像処理回路20と、画素部10内の各画素Pを駆動する駆動回路30とを具備する。駆動回路30は、走査線駆動回路32と信号線駆動回路34とを含んで構成される。
【0013】
画素部10には、X方向に延在するM本の走査線12とY方向に延在するN本の信号線14とが形成される(M,Nは自然数)。複数の画素Pは、各走査線12と各信号線14との交差に対応した位置に配置され、相互に交差するX方向およびY方向に沿って縦M行×横N列の行列状に配列する。図1に示すように、画素部10内のN本の信号線14は、画像信号V[1]〜V[K]の総数に相当するK本を単位としてQ個(Q=N/K)のブロックB[1]〜B[Q]に区分される。
【0014】
図2は、各画素Pの回路図である。図2に示すように、各画素Pは、液晶素子42と選択スイッチ44とを含んで構成される。液晶素子42は、相互に対向する画素電極421および共通電極423と両電極間の液晶425とで構成される電気光学素子である。画素電極421は画素P毎に相互に間隔をあけて形成され、共通電極423は複数の画素Pにわたり連続に分布する。画素電極421と共通電極423との間の印加電圧に応じて液晶425の配向を制御することで液晶素子42の透過率(表示階調)が変化する。選択スイッチ44は、例えば薄膜トランジスターで構成され、走査線12の選択時にオン状態に遷移することで画素電極421と信号線14とを導通させる。なお、液晶素子42に並列に接続される補助容量等の図示は省略した。また、画素Pの構成は適宜に変更され得る。
【0015】
図1の走査線駆動回路32は、各走査線12に走査信号G[1]〜G[M]を供給することでM本の走査線12の各々を水平走査期間H毎に順次に選択する。図3に示すように、第m行(m=1〜M)の走査線12に供給される走査信号G[m]は、各垂直走査期間F内のM個の水平走査期間Hのうち第m番目の水平走査期間Hにてアクティブレベル(走査線12の選択を意味する電位)に設定される。走査線駆動回路32が第m行の走査線12を選択すると、第m行のN個の画素Pの選択スイッチ44がオン状態に遷移する。
【0016】
図4は、信号線駆動回路34のブロック図である。図4に示すように、信号線駆動回路34と画像処理回路20とは、K本の画像信号線L[1]〜L[K]で相互に接続される。画像処理回路20が生成する画像信号V[k]は画像信号線L[k]を介して信号線駆動回路34に供給される。信号線駆動回路34は、画像処理回路20から供給される画像信号V[1]〜V[K]を走査線駆動回路32による走査線12の選択に同期して順次に取込んでN本の信号線14の各々に階調信号Sとして供給する。
【0017】
図4に示すように、信号線駆動回路34は、選択回路52と出力回路54とを具備する。選択回路52は、ブロックB[1]〜B[Q]の総数に相当するQ系統の選択信号SEL[1]〜SEL[Q]を生成する。図3に示すように、選択信号SEL[1]〜SEL[Q]は、各水平走査期間H内で順番にアクティブレベル(ブロックB[1]〜B[Q]の各々の選択を意味する電位)に設定される。
【0018】
図4の出力回路54は、ブロックB[1]〜B[Q]の総数に相当するQ個の単位回路56[1]〜56[Q]を具備する。各単位回路56[q](q=1〜Q)は、画像信号V[1]〜V[K]の総数に相当するK個のスイッチ58[1]〜58[K]を含んで構成される。単位回路56[q]内の第k番目のスイッチ58[k]は、ブロックB[q]内の第k列目の信号線14と画像信号線L[k]との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。選択回路52から供給される選択信号SEL[q]がアクティブレベルに設定されると、単位回路56[q]内のK個のスイッチ58[1]〜58[K]が同時にオン状態に遷移する。したがって、画像信号線L[k]に供給される画像信号V[k]は、水平走査期間Hのうち選択信号SEL[q]がアクティブレベルとなる期間にて単位回路56[q]内のスイッチ58[k]を経由してブロックB[q]内の第k列目の信号線14に階調信号Sとして供給される。
【0019】
図1の画像処理回路20は、各画素Pの階調値Gを指定するデジタルの画像データDAからK系統の画像信号V[1]〜V[K]を生成する。図5は、画像処理回路20のブロック図である。図5に示すように、画像処理回路20は、S/P(Serial to Parallel)変換回路22と補正処理回路24とD/A(Digital to Analog)変換回路26と極性制御回路28とを具備する。S/P変換回路22は、画像データDAをK系統に分配するとともに時間軸上でK倍に伸長する相展開(S/P変換)でK系統の画像データDB[1]〜DB[K]を生成する。
【0020】
補正処理回路24は、S/P変換回路22が生成したK系統の画像データDB[1]〜DB[K]の各々を補正することでK系統の画像データDC[1]〜DC[K]を生成する。D/A変換回路26は、補正処理回路24による処理後のK系統の画像データDC[1]〜DC[K]の各々をアナログの画像信号VA[1]〜VA[K]に変換する。
【0021】
極性制御回路28は、D/A変換回路26による処理後のK系統の画像信号VA[1]〜VA[K]の各々の極性を所定の基準電位VC(例えば共通電極423の電位)を基準として制御することでK系統の画像信号V[1]〜V[K]を生成する。図3に示すように、画像信号V[k]の極性は、基準電位VCの高位側を意味する正極性と基準電位VCの低位側を意味する負極性との間で垂直走査期間F毎に反転される(フレーム反転)。なお、各画像信号V[k]の極性を水平走査期間H毎に反転させる構成(ライン反転)やX方向およびY方向に隣合う画素Pで極性を反転させる構成(ドット反転)も採用され得る。また、S/P変換回路22と補正処理回路24とD/A変換回路26と極性制御回路28とによる処理の順序は適宜に変更される。
【0022】
図6は、補正処理回路24のブロック図である。図6に示すように、補正処理回路24は、記憶回路62と補正値取得回路64と補間回路66と補正回路68とを含んで構成される。記憶回路62は、例えばROM(Read Only Memory)やEPROM(Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリで構成され、図7に示すように、画素部10においてX方向に相互に間隔をあけて設定されたH個(Hは2以上の自然数)の基準位置Rに対応する補正値A[1]〜A[H]を記憶する。補正値A[1]〜A[H]の個数Hは信号線14の本数Nを下回る。例えば画素部10をX方向にH等分した領域毎に補正値Aが用意される。
【0023】
図6の補正値取得回路64は、各基準位置Rに対応するH個の補正値A[1]〜A[H]を記憶回路62から取得する。補間回路66は、補正値取得回路64が取得したH個の補正値A[1]〜A[H]から、画素部10内におけるX方向の各位置に対応するN個(各列の信号線14に対応するN個)の補正値α[1]〜α[N]を生成する。具体的には、補間回路66は、X方向に隣合う2個の基準位置Rの間の各信号線14の補正値α[n]を、その位置の両側の各基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した2個の補正値A[h](h=1〜H)を補間することで算定する。補正値A[h]の補間には、直線補間等の公知の補間演算が任意に採用される。基準位置Rに対応する各信号線14の補正値α[n]は、その基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した補正値A[h]に設定される。
【0024】
図6の補正回路68は、画素部10内の第n列の画素Pについて画像データDB[k]が指定する階調値Gを、補間回路66が第n列について算定した補正値α[n]に応じて補正し、補正後の階調値Gを示す画像データDC[k](DC[1]〜DC[K])を出力する。補正回路68による補正後の画像データDC[1]〜DC[K]がD/A変換回路26に供給されたうえで画像信号V[1]〜V[K]の生成に利用される。
【0025】
具体的には、補正回路68は、画像信号V[k](階調信号S)が正極性に設定される垂直走査期間Fでは画像データDB[k]が示す階調値Gに補正値α[n]を加算し、画像信号V[k]が負極性に設定される垂直走査期間Fでは画像データDB[k]が示す階調値Gから補正値α[n]を減算する。したがって、図3に示すように、補正値α[n]が正数(+)である場合、画像信号V[k]の極性(正極性/負極性)に関わらず、画像信号V[k]の電位は非補正時(α[n]=0)よりも高位側に変化し、補正値α[n]が負数(−)である場合、画像信号V[k]の極性に関わらず、画像信号V[k]の電位は非補正時よりも低位側に変化する。
【0026】
補正回路68は、K系統の画像データDB[1]〜DB[K]の各々について補正の有無を個別に設定することが可能である。例えば、前掲の特許文献1に開示されるように各ブロックB[q]の境界線に対応する縦線ムラが発生する場合、S/P変換回路22から供給されるK系統の画像データDB[1]〜DB[K]のうち第1系統の画像データDB[1]と第K系統の画像データDB[K]とについて補正値α[n]を適用した補正が実行される。画素部10内の全部の画素Pに画像データDAで共通の階調値Gを指定するとともに補正値α[1]〜α[N]による補正後の画像信号V[1]〜V[K]を信号線駆動回路34に供給した場合の各画素Pの表示階調が均一化される(具体的には各画素Pの表示階調の差異が所定の範囲内に収まる)ように、例えば電気光学装置100の出荷前に各基準位置RのH個の補正値A[1]〜A[H]が実験的または統計的に選定されたうえで記憶回路62に格納される。
【0027】
以上に説明した第1実施形態では、画素部10内のX方向の各位置について個別に補正値α[n]が算定されるから、縦線ムラ等の階調ムラの度合がX方向の位置毎に相違する場合でも、各位置の階調ムラを有効に低減して均一な表示を実現することが可能である。また、記憶回路62に格納されたH個の補正値A[1]〜A[H]の補間により画素部10内の列毎の補正値α[1]〜α[N]が算定されるから、例えば各列に対応するN個の補正値α[1]〜α[N]を記憶回路62に格納する構成と比較して、記憶回路62に必要な記憶容量が削減される。すなわち、第1実施形態によれば、記憶回路62の記憶容量の削減と階調ムラの低減とを高い水準で両立できるという利点がある。
【0028】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
【0029】
図8は、第2実施形態の記憶回路62による記憶内容の説明図である。画素部10内のX方向に配列するH個の基準位置Rは、H個から選択された1個の基準位置(以下「第1基準位置」という)R1と残余の(H−1)個の基準位置(以下「第2基準位置」という)R2とに区分される。第1基準位置R1は、例えば画素部10内のX方向における中点である。第1基準位置R1についてはその第1基準位置R1の補正値A0が記憶回路62に格納され、例えば外部からの指示に応じて変更される。他方、H個の基準位置Rのうち(H−1)個の第2基準位置R2の各々については、第1基準位置R1の補正値A0を基準とした補正値A[h]の相対値(差分値)δAが記憶回路62に記憶される。
【0030】
補正値取得回路64は、第1基準位置R1の補正値A0と各第2基準位置R2の相対値δAとを利用して各基準位置R(R1,R2)のH個の補正値A[1]〜A[H]を生成する。具体的には、補正値取得回路64は、(H−1)個の第2基準位置R2の各々について、記憶回路62に記憶されたその第2基準位置R2の相対値δAと第1基準位置R1の補正値A0とを加算することで補正値A[h](A[h]=A0+δA)を算定する。第1基準位置R1については記憶回路62に記憶された補正値A0が補正値A[h]として確定される。補間回路66は、以上の手順で生成されたH個の補正値A[1]〜A[H]を利用して第1実施形態と同様の方法でN個の補正値α[1]〜α[N]を生成する。補正回路68の動作は第1実施形態と同様である。
【0031】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第1実施形態では、各基準位置Rに対応するH個の補正値A[1]〜A[H]を同等の変化量だけ変更する場合に、記憶回路62に記憶されたH個の補正値A[1]〜A[H]の全部を変更する必要がある。第2実施形態では、第1基準位置R1の補正値A0を基準とした補正値A[h]の相対値δAが各第2基準位置R2について記憶回路62に記憶されるから、第1基準位置R1の補正値A0を変更すれば、(H−1)個の第2基準位置R2については記憶回路62の記憶内容を変更する必要がない。したがって、第2実施形態によれば、各基準位置Rの補正値A[1]〜A[H]の変更が第1実施形態と比較して容易であるという利点がある。
【0032】
<C:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0033】
(1)前述の各形態では、信号線14に対する階調信号Sの供給をブロックB[q]毎に時分割で実行したが、信号線駆動回路34の構成(各信号線14に対する階調信号Sの供給の方法)は適宜に変更される。例えば特開2010−91967号公報に開示されるように各ブロックB[q]のK本の信号線14の各々に階調信号Sを時分割で供給する処理をQ個のブロックB[1]〜B[Q]について並列に実行する構成や、信号線駆動回路34がブロックB[q]毎に別個のICチップとして実装された構成においても、ブロックB[q]毎の周期的な縦線ムラが発生し得るから、本発明を同様に適用することが可能である。
【0034】
(2)前述の各形態では、X方向に等間隔にH個の基準位置Rを設定したが、各基準位置Rの選定の仕方や個数は任意である。例えば、相互に隣合う2個の基準位置Rの間隔がX方向の位置に応じて相違するようにH個の基準位置Rを設定する(H個の基準位置を不均等に分布させる)ことも可能である。
【0035】
(3)液晶素子42は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率や反射率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電界(電圧)の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、有機EL素子,無機EL素子,LED(Light Emitting Diode),電界電子放出素子(FE(Field-Emission)素子),表面伝導型電子放出素子(SE(Surface conduction Electron emitter)素子),弾道電子放出素子(BS(Ballistic electron Emitting)素子),電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を利用した電気光学装置100に本発明は適用される。すなわち、電気光学素子は、電流の供給や電圧(電界)の印加といった電気的な作用に応じて階調(透過率や輝度などの光学的な特性)が変化する電気光学物質(例えば液晶)を利用した被駆動素子(典型的には、階調信号Sに応じて階調が制御される表示素子)として包括される。
【0036】
<D:応用例>
以上の各形態に例示した電気光学装置100は、各種の電子機器に利用され得る。図9から図11には、電気光学装置100を採用した電子機器の具体的な形態が例示されている。
【0037】
図9は、電気光学装置100を採用した可搬型のパーソナルコンピュータの斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。
【0038】
図10は、電気光学装置100を適用した携帯電話機の斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0039】
図11は、電気光学装置100を適用した投射型表示装置(3板式のプロジェクタ)4000の模式図である。投射型表示装置4000は、相異なる表示色(赤色,緑色,青色)に対応する3個の電気光学装置100(100R,100G,100B)を含んで構成される。照明光学系4001は、照明装置(光源)4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置100Rに供給し、緑色成分gを電気光学装置100Gに供給し、青色成分bを電気光学装置100Bに供給する。各電気光学装置100は、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調する光変調器(ライトバルブ)として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置100からの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0040】
なお、本発明に係る電気光学装置100が適用される電子機器としては、図9から図11に例示した機器のほか、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants),デジタルスチルカメラ,テレビ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置,車載用の表示器(インパネ),電子手帳,電子ペーパー,電卓,ワードプロセッサ,ワークステーション,テレビ電話,POS端末,プリンタ,スキャナ,複写機,ビデオプレーヤ,タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
100…電気光学装置、10……画素部、P……画素、12……走査線、14……信号線、20……画像処理回路、22……S/P変換回路、24……補正処理回路、26……D/A変換回路、28……極性制御回路、30……駆動回路、32……走査線駆動回路、34……信号線駆動回路、52……選択回路、54……出力回路、62……記憶回路、64……補正値取得回路、66……補間回路、68……補正回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画素を利用して表示される画像の階調ムラを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示すように、X方向に延在する複数の走査線12とY方向に延在する複数の信号線14との各交差に対応して複数の画素Pが行列状に配列された電気光学装置が従来から提案されている。複数の信号線14は、所定の本数毎に複数のブロックBに区分される。各画素Pに指定された階調値に応じた画像信号がブロックB毎に時分割で各信号線14に供給される。
【0003】
以上のように各信号線14に対してブロックB毎に時分割で画像信号を供給する構成では、相互に隣合うブロックBの境界線に対応する縦線状の階調ムラ(以下「縦線ムラ」という)が発生するという問題がある。特許文献1には、各ブロックBの両端の信号線14に供給される画像信号を補正することで縦線ムラを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−47971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、画像信号の伝送距離(画像信号の入力端から各信号線までの距離)や各信号線14に対する画像信号の供給地点はブロックBごとに相違するから、ブロックB間の縦線ムラの度合はX方向の位置に応じて相違する。しかし、特許文献1の技術では、各信号線14の画像信号の補正に適用される補正値が複数のブロックBについて共通するから、X方向の位置に応じた縦線ムラの相違を充分に補償できないという問題がある。
【0006】
各信号線14に供給される画像信号を個別に補正できるように信号線14毎の補正値を記憶回路に保持しておく構成も想定され得るが、補正値の記憶に必要な記憶容量が増加するという問題がある。なお、以上の説明ではブロックB毎に時分割で画像信号を各信号線に供給する場合を例示したが、例えば、各ブロックB内の複数の信号線14の各々に順次に画像信号を供給する処理を複数のブロックBについて並列に実行する構成でも同様にブロックB単位の縦線ムラは発生し得る。以上の事情を考慮して、本発明は、補正値の記憶に必要な記憶容量を削減しながら階調ムラを有効に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明の電気光学装置は、相互に交差する第1方向(例えばX方向)および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理装置であって、第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、相互に隣合う2個の基準位置について補正値取得手段が取得した補正値を補間することで2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段とを具備する。以上の構成によれば、第1方向の各位置について個別に補正値が生成されるから、縦線ムラ等の階調ムラの度合が第1方向の位置に応じて相違する場合でも、各位置の階調ムラを有効に低減して均一な表示を実現することが可能である。また、2個の基準位置の補正値を補間することで基準位置間の各位置の補正値が算定されるから、補正値の保持に必要な記憶容量が削減されるという利点もある。
【0008】
本発明の好適な態様の電気光学装置は、複数の基準位置のうちの第1基準位置について補正値を記憶し、第1基準位置以外の第2基準位置について第1基準位置の補正値を基準とする相対値を記憶する記憶手段を具備し、補正値取得手段は、記憶手段に記憶された相対値と第1基準位置の補正値とから第2基準位置の補正値を算定する。以上の態様では、第2基準位置の補正値が第1基準位置の補正値に対する相対値として記憶手段に記憶されるから、例えば第1基準位置の補正値を変更することで、各基準位置の補正値を一括的に変更できるという利点がある。
【0009】
本発明の電気光学装置は、相互に交差する第1方向および第2方向に沿って行列状に配置された複数の画素を含む画素部と、各画素の階調値を指定する画像信号を生成する以上の各態様の画像処理回路と、画像処理回路が生成した画像信号に応じて各画素を駆動する駆動回路とを具備する。したがって、本発明の画像処理装置と同様の作用および効果が実現される。本発明の電気光学装置は、画像を表示する表示体として各種の電子機器(例えば携帯電話機や投射型表示装置)に搭載され得る。
【0010】
電気光学装置の各画素の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理方法としても本発明は実現され得る。本発明の画像処理方法は、第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得し、相互に隣合う2個の基準位置について取得した補正値を補間することで2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定し、第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する。以上の画像処理方法でも本発明の画像処理装置と同様の作用および効果が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。
【図2】画素の回路図である。
【図3】電気光学装置の動作のタイミングチャートである。
【図4】信号線駆動回路のブロック図である。
【図5】画像処理回路のブロック図である。
【図6】補正処理回路のブロック図である。
【図7】記憶回路の記憶内容および補間処理の説明図である。
【図8】第2実施形態における記憶回路の記憶内容および補間処理の説明図である。
【図9】電子機器の形態(パーソナルコンピュータ)を示す斜視図である。
【図10】電子機器の形態(携帯電話機)を示す斜視図である。
【図11】電子機器の形態(投射型表示装置)を示す斜視図である。
【図12】背景技術における問題点を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置100のブロック図である。電気光学装置100は、画像を表示する表示体として様々な電子機器に搭載される液晶装置である。図1に示すように、電気光学装置100は、複数の画素(画素回路)Pが平面状に配列された画素部10と、上位装置から供給される画像データDAを処理することでK系統(Kは2以上の自然数)の画像信号V[1]〜V[K]を生成する画像処理回路20と、画素部10内の各画素Pを駆動する駆動回路30とを具備する。駆動回路30は、走査線駆動回路32と信号線駆動回路34とを含んで構成される。
【0013】
画素部10には、X方向に延在するM本の走査線12とY方向に延在するN本の信号線14とが形成される(M,Nは自然数)。複数の画素Pは、各走査線12と各信号線14との交差に対応した位置に配置され、相互に交差するX方向およびY方向に沿って縦M行×横N列の行列状に配列する。図1に示すように、画素部10内のN本の信号線14は、画像信号V[1]〜V[K]の総数に相当するK本を単位としてQ個(Q=N/K)のブロックB[1]〜B[Q]に区分される。
【0014】
図2は、各画素Pの回路図である。図2に示すように、各画素Pは、液晶素子42と選択スイッチ44とを含んで構成される。液晶素子42は、相互に対向する画素電極421および共通電極423と両電極間の液晶425とで構成される電気光学素子である。画素電極421は画素P毎に相互に間隔をあけて形成され、共通電極423は複数の画素Pにわたり連続に分布する。画素電極421と共通電極423との間の印加電圧に応じて液晶425の配向を制御することで液晶素子42の透過率(表示階調)が変化する。選択スイッチ44は、例えば薄膜トランジスターで構成され、走査線12の選択時にオン状態に遷移することで画素電極421と信号線14とを導通させる。なお、液晶素子42に並列に接続される補助容量等の図示は省略した。また、画素Pの構成は適宜に変更され得る。
【0015】
図1の走査線駆動回路32は、各走査線12に走査信号G[1]〜G[M]を供給することでM本の走査線12の各々を水平走査期間H毎に順次に選択する。図3に示すように、第m行(m=1〜M)の走査線12に供給される走査信号G[m]は、各垂直走査期間F内のM個の水平走査期間Hのうち第m番目の水平走査期間Hにてアクティブレベル(走査線12の選択を意味する電位)に設定される。走査線駆動回路32が第m行の走査線12を選択すると、第m行のN個の画素Pの選択スイッチ44がオン状態に遷移する。
【0016】
図4は、信号線駆動回路34のブロック図である。図4に示すように、信号線駆動回路34と画像処理回路20とは、K本の画像信号線L[1]〜L[K]で相互に接続される。画像処理回路20が生成する画像信号V[k]は画像信号線L[k]を介して信号線駆動回路34に供給される。信号線駆動回路34は、画像処理回路20から供給される画像信号V[1]〜V[K]を走査線駆動回路32による走査線12の選択に同期して順次に取込んでN本の信号線14の各々に階調信号Sとして供給する。
【0017】
図4に示すように、信号線駆動回路34は、選択回路52と出力回路54とを具備する。選択回路52は、ブロックB[1]〜B[Q]の総数に相当するQ系統の選択信号SEL[1]〜SEL[Q]を生成する。図3に示すように、選択信号SEL[1]〜SEL[Q]は、各水平走査期間H内で順番にアクティブレベル(ブロックB[1]〜B[Q]の各々の選択を意味する電位)に設定される。
【0018】
図4の出力回路54は、ブロックB[1]〜B[Q]の総数に相当するQ個の単位回路56[1]〜56[Q]を具備する。各単位回路56[q](q=1〜Q)は、画像信号V[1]〜V[K]の総数に相当するK個のスイッチ58[1]〜58[K]を含んで構成される。単位回路56[q]内の第k番目のスイッチ58[k]は、ブロックB[q]内の第k列目の信号線14と画像信号線L[k]との間に介在して両者の電気的な接続(導通/非導通)を制御する。選択回路52から供給される選択信号SEL[q]がアクティブレベルに設定されると、単位回路56[q]内のK個のスイッチ58[1]〜58[K]が同時にオン状態に遷移する。したがって、画像信号線L[k]に供給される画像信号V[k]は、水平走査期間Hのうち選択信号SEL[q]がアクティブレベルとなる期間にて単位回路56[q]内のスイッチ58[k]を経由してブロックB[q]内の第k列目の信号線14に階調信号Sとして供給される。
【0019】
図1の画像処理回路20は、各画素Pの階調値Gを指定するデジタルの画像データDAからK系統の画像信号V[1]〜V[K]を生成する。図5は、画像処理回路20のブロック図である。図5に示すように、画像処理回路20は、S/P(Serial to Parallel)変換回路22と補正処理回路24とD/A(Digital to Analog)変換回路26と極性制御回路28とを具備する。S/P変換回路22は、画像データDAをK系統に分配するとともに時間軸上でK倍に伸長する相展開(S/P変換)でK系統の画像データDB[1]〜DB[K]を生成する。
【0020】
補正処理回路24は、S/P変換回路22が生成したK系統の画像データDB[1]〜DB[K]の各々を補正することでK系統の画像データDC[1]〜DC[K]を生成する。D/A変換回路26は、補正処理回路24による処理後のK系統の画像データDC[1]〜DC[K]の各々をアナログの画像信号VA[1]〜VA[K]に変換する。
【0021】
極性制御回路28は、D/A変換回路26による処理後のK系統の画像信号VA[1]〜VA[K]の各々の極性を所定の基準電位VC(例えば共通電極423の電位)を基準として制御することでK系統の画像信号V[1]〜V[K]を生成する。図3に示すように、画像信号V[k]の極性は、基準電位VCの高位側を意味する正極性と基準電位VCの低位側を意味する負極性との間で垂直走査期間F毎に反転される(フレーム反転)。なお、各画像信号V[k]の極性を水平走査期間H毎に反転させる構成(ライン反転)やX方向およびY方向に隣合う画素Pで極性を反転させる構成(ドット反転)も採用され得る。また、S/P変換回路22と補正処理回路24とD/A変換回路26と極性制御回路28とによる処理の順序は適宜に変更される。
【0022】
図6は、補正処理回路24のブロック図である。図6に示すように、補正処理回路24は、記憶回路62と補正値取得回路64と補間回路66と補正回路68とを含んで構成される。記憶回路62は、例えばROM(Read Only Memory)やEPROM(Erasable Programmable ROM)等の不揮発性メモリで構成され、図7に示すように、画素部10においてX方向に相互に間隔をあけて設定されたH個(Hは2以上の自然数)の基準位置Rに対応する補正値A[1]〜A[H]を記憶する。補正値A[1]〜A[H]の個数Hは信号線14の本数Nを下回る。例えば画素部10をX方向にH等分した領域毎に補正値Aが用意される。
【0023】
図6の補正値取得回路64は、各基準位置Rに対応するH個の補正値A[1]〜A[H]を記憶回路62から取得する。補間回路66は、補正値取得回路64が取得したH個の補正値A[1]〜A[H]から、画素部10内におけるX方向の各位置に対応するN個(各列の信号線14に対応するN個)の補正値α[1]〜α[N]を生成する。具体的には、補間回路66は、X方向に隣合う2個の基準位置Rの間の各信号線14の補正値α[n]を、その位置の両側の各基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した2個の補正値A[h](h=1〜H)を補間することで算定する。補正値A[h]の補間には、直線補間等の公知の補間演算が任意に採用される。基準位置Rに対応する各信号線14の補正値α[n]は、その基準位置Rについて補正値取得回路64が取得した補正値A[h]に設定される。
【0024】
図6の補正回路68は、画素部10内の第n列の画素Pについて画像データDB[k]が指定する階調値Gを、補間回路66が第n列について算定した補正値α[n]に応じて補正し、補正後の階調値Gを示す画像データDC[k](DC[1]〜DC[K])を出力する。補正回路68による補正後の画像データDC[1]〜DC[K]がD/A変換回路26に供給されたうえで画像信号V[1]〜V[K]の生成に利用される。
【0025】
具体的には、補正回路68は、画像信号V[k](階調信号S)が正極性に設定される垂直走査期間Fでは画像データDB[k]が示す階調値Gに補正値α[n]を加算し、画像信号V[k]が負極性に設定される垂直走査期間Fでは画像データDB[k]が示す階調値Gから補正値α[n]を減算する。したがって、図3に示すように、補正値α[n]が正数(+)である場合、画像信号V[k]の極性(正極性/負極性)に関わらず、画像信号V[k]の電位は非補正時(α[n]=0)よりも高位側に変化し、補正値α[n]が負数(−)である場合、画像信号V[k]の極性に関わらず、画像信号V[k]の電位は非補正時よりも低位側に変化する。
【0026】
補正回路68は、K系統の画像データDB[1]〜DB[K]の各々について補正の有無を個別に設定することが可能である。例えば、前掲の特許文献1に開示されるように各ブロックB[q]の境界線に対応する縦線ムラが発生する場合、S/P変換回路22から供給されるK系統の画像データDB[1]〜DB[K]のうち第1系統の画像データDB[1]と第K系統の画像データDB[K]とについて補正値α[n]を適用した補正が実行される。画素部10内の全部の画素Pに画像データDAで共通の階調値Gを指定するとともに補正値α[1]〜α[N]による補正後の画像信号V[1]〜V[K]を信号線駆動回路34に供給した場合の各画素Pの表示階調が均一化される(具体的には各画素Pの表示階調の差異が所定の範囲内に収まる)ように、例えば電気光学装置100の出荷前に各基準位置RのH個の補正値A[1]〜A[H]が実験的または統計的に選定されたうえで記憶回路62に格納される。
【0027】
以上に説明した第1実施形態では、画素部10内のX方向の各位置について個別に補正値α[n]が算定されるから、縦線ムラ等の階調ムラの度合がX方向の位置毎に相違する場合でも、各位置の階調ムラを有効に低減して均一な表示を実現することが可能である。また、記憶回路62に格納されたH個の補正値A[1]〜A[H]の補間により画素部10内の列毎の補正値α[1]〜α[N]が算定されるから、例えば各列に対応するN個の補正値α[1]〜α[N]を記憶回路62に格納する構成と比較して、記憶回路62に必要な記憶容量が削減される。すなわち、第1実施形態によれば、記憶回路62の記憶容量の削減と階調ムラの低減とを高い水準で両立できるという利点がある。
【0028】
<B:第2実施形態>
本発明の第2実施形態を以下に説明する。なお、以下に例示する各態様において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の説明を適宜に省略する。
【0029】
図8は、第2実施形態の記憶回路62による記憶内容の説明図である。画素部10内のX方向に配列するH個の基準位置Rは、H個から選択された1個の基準位置(以下「第1基準位置」という)R1と残余の(H−1)個の基準位置(以下「第2基準位置」という)R2とに区分される。第1基準位置R1は、例えば画素部10内のX方向における中点である。第1基準位置R1についてはその第1基準位置R1の補正値A0が記憶回路62に格納され、例えば外部からの指示に応じて変更される。他方、H個の基準位置Rのうち(H−1)個の第2基準位置R2の各々については、第1基準位置R1の補正値A0を基準とした補正値A[h]の相対値(差分値)δAが記憶回路62に記憶される。
【0030】
補正値取得回路64は、第1基準位置R1の補正値A0と各第2基準位置R2の相対値δAとを利用して各基準位置R(R1,R2)のH個の補正値A[1]〜A[H]を生成する。具体的には、補正値取得回路64は、(H−1)個の第2基準位置R2の各々について、記憶回路62に記憶されたその第2基準位置R2の相対値δAと第1基準位置R1の補正値A0とを加算することで補正値A[h](A[h]=A0+δA)を算定する。第1基準位置R1については記憶回路62に記憶された補正値A0が補正値A[h]として確定される。補間回路66は、以上の手順で生成されたH個の補正値A[1]〜A[H]を利用して第1実施形態と同様の方法でN個の補正値α[1]〜α[N]を生成する。補正回路68の動作は第1実施形態と同様である。
【0031】
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。なお、第1実施形態では、各基準位置Rに対応するH個の補正値A[1]〜A[H]を同等の変化量だけ変更する場合に、記憶回路62に記憶されたH個の補正値A[1]〜A[H]の全部を変更する必要がある。第2実施形態では、第1基準位置R1の補正値A0を基準とした補正値A[h]の相対値δAが各第2基準位置R2について記憶回路62に記憶されるから、第1基準位置R1の補正値A0を変更すれば、(H−1)個の第2基準位置R2については記憶回路62の記憶内容を変更する必要がない。したがって、第2実施形態によれば、各基準位置Rの補正値A[1]〜A[H]の変更が第1実施形態と比較して容易であるという利点がある。
【0032】
<C:変形例>
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は相矛盾しない限り適宜に併合され得る。
【0033】
(1)前述の各形態では、信号線14に対する階調信号Sの供給をブロックB[q]毎に時分割で実行したが、信号線駆動回路34の構成(各信号線14に対する階調信号Sの供給の方法)は適宜に変更される。例えば特開2010−91967号公報に開示されるように各ブロックB[q]のK本の信号線14の各々に階調信号Sを時分割で供給する処理をQ個のブロックB[1]〜B[Q]について並列に実行する構成や、信号線駆動回路34がブロックB[q]毎に別個のICチップとして実装された構成においても、ブロックB[q]毎の周期的な縦線ムラが発生し得るから、本発明を同様に適用することが可能である。
【0034】
(2)前述の各形態では、X方向に等間隔にH個の基準位置Rを設定したが、各基準位置Rの選定の仕方や個数は任意である。例えば、相互に隣合う2個の基準位置Rの間隔がX方向の位置に応じて相違するようにH個の基準位置Rを設定する(H個の基準位置を不均等に分布させる)ことも可能である。
【0035】
(3)液晶素子42は電気光学素子の例示に過ぎない。本発明に適用される電気光学素子について、自身が発光する自発光型と外光の透過率や反射率を変化させる非発光型(例えば液晶素子)との区別や、電流の供給によって駆動される電流駆動型と電界(電圧)の印加によって駆動される電圧駆動型との区別は不問である。例えば、有機EL素子,無機EL素子,LED(Light Emitting Diode),電界電子放出素子(FE(Field-Emission)素子),表面伝導型電子放出素子(SE(Surface conduction Electron emitter)素子),弾道電子放出素子(BS(Ballistic electron Emitting)素子),電気泳動素子、エレクトロクロミック素子など様々な電気光学素子を利用した電気光学装置100に本発明は適用される。すなわち、電気光学素子は、電流の供給や電圧(電界)の印加といった電気的な作用に応じて階調(透過率や輝度などの光学的な特性)が変化する電気光学物質(例えば液晶)を利用した被駆動素子(典型的には、階調信号Sに応じて階調が制御される表示素子)として包括される。
【0036】
<D:応用例>
以上の各形態に例示した電気光学装置100は、各種の電子機器に利用され得る。図9から図11には、電気光学装置100を採用した電子機器の具体的な形態が例示されている。
【0037】
図9は、電気光学装置100を採用した可搬型のパーソナルコンピュータの斜視図である。パーソナルコンピュータ2000は、各種の画像を表示する電気光学装置100と、電源スイッチ2001やキーボード2002が設置された本体部2010とを具備する。
【0038】
図10は、電気光学装置100を適用した携帯電話機の斜視図である。携帯電話機3000は、複数の操作ボタン3001およびスクロールボタン3002と、各種の画像を表示する電気光学装置100とを備える。スクロールボタン3002を操作することによって、電気光学装置100に表示される画面がスクロールされる。
【0039】
図11は、電気光学装置100を適用した投射型表示装置(3板式のプロジェクタ)4000の模式図である。投射型表示装置4000は、相異なる表示色(赤色,緑色,青色)に対応する3個の電気光学装置100(100R,100G,100B)を含んで構成される。照明光学系4001は、照明装置(光源)4002からの出射光のうち赤色成分rを電気光学装置100Rに供給し、緑色成分gを電気光学装置100Gに供給し、青色成分bを電気光学装置100Bに供給する。各電気光学装置100は、照明光学系4001から供給される各単色光を表示画像に応じて変調する光変調器(ライトバルブ)として機能する。投射光学系4003は、各電気光学装置100からの出射光を合成して投射面4004に投射する。
【0040】
なお、本発明に係る電気光学装置100が適用される電子機器としては、図9から図11に例示した機器のほか、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants),デジタルスチルカメラ,テレビ,ビデオカメラ,カーナビゲーション装置,車載用の表示器(インパネ),電子手帳,電子ペーパー,電卓,ワードプロセッサ,ワークステーション,テレビ電話,POS端末,プリンタ,スキャナ,複写機,ビデオプレーヤ,タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【符号の説明】
【0041】
100…電気光学装置、10……画素部、P……画素、12……走査線、14……信号線、20……画像処理回路、22……S/P変換回路、24……補正処理回路、26……D/A変換回路、28……極性制御回路、30……駆動回路、32……走査線駆動回路、34……信号線駆動回路、52……選択回路、54……出力回路、62……記憶回路、64……補正値取得回路、66……補間回路、68……補正回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理装置であって、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、
相互に隣合う2個の基準位置について前記補正値取得手段が取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の基準位置のうちの第1基準位置について補正値を記憶し、前記第1基準位置以外の第2基準位置について前記第1基準位置の補正値を基準とする相対値を記憶する記憶手段を具備し、
前記補正値取得手段は、前記記憶手段に記憶された相対値と前記第1基準位置の補正値とから前記第2基準位置の補正値を算定する
請求項1の画像処理装置。
【請求項3】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って行列状に配置された複数の画素を含む画素部と、
前記各画素の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理回路と、
前記画像処理回路が生成した画像信号に応じて前記各画素を駆動する駆動回路とを具備し、
前記画像処理回路は、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、
相互に隣合う2個の基準位置について前記補正値取得手段が取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段と
を含む電気光学装置。
【請求項4】
請求項3の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項5】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理方法であって、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得し、
相互に隣合う2個の基準位置について取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定し、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する
画像処理方法。
【請求項1】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理装置であって、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、
相互に隣合う2個の基準位置について前記補正値取得手段が取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段と
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記複数の基準位置のうちの第1基準位置について補正値を記憶し、前記第1基準位置以外の第2基準位置について前記第1基準位置の補正値を基準とする相対値を記憶する記憶手段を具備し、
前記補正値取得手段は、前記記憶手段に記憶された相対値と前記第1基準位置の補正値とから前記第2基準位置の補正値を算定する
請求項1の画像処理装置。
【請求項3】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って行列状に配置された複数の画素を含む画素部と、
前記各画素の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理回路と、
前記画像処理回路が生成した画像信号に応じて前記各画素を駆動する駆動回路とを具備し、
前記画像処理回路は、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得する補正値取得手段と、
相互に隣合う2個の基準位置について前記補正値取得手段が取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定する補間手段と、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する補正手段と
を含む電気光学装置。
【請求項4】
請求項3の電気光学装置を具備する電子機器。
【請求項5】
相互に交差する第1方向および第2方向に沿って電気光学装置の画素部内に行列状に配列された複数の画素の各々の階調値を指定する画像信号を生成する画像処理方法であって、
前記第1方向に相互に間隔をあけて設定された複数の基準位置の各々の補正値を取得し、
相互に隣合う2個の基準位置について取得した補正値を補間することで前記2個の基準位置の間の各位置の補正値を算定し、
前記第1方向の各位置に対応する画素の階調値をその位置の補正値に応じて補正する
画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−3364(P2013−3364A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134847(P2011−134847)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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