説明

画像処理装置

【課題】ブランキング領域を有する画像に対するコントラスト補正や輪郭補正の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等を目立たなくし、高品位な補正画像を得ることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像中の少なくとも一部の画素に対して当該画素の周辺画素の輝度情報を利用して補正処理を行う画像補正回路11を備えた画像処理装置であって、前記画像中のブランキング領域と画像領域との境界を検出するブランキング境界検出回路126と、前記画像領域中で、ブランキング境界検出回路126によって検出された境界に隣接する所定範囲において、画像補正回路11による画像の補正効果を抑制する効果抑制処理係数算出回路127とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテレビジョン映像信号等の画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等で得られた画像の品位を向上させるために、コントラスト補正等の種々の補正を行う画像処理装置が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。このような画像処理装置では、補正対象とする画素の周辺画素の輝度情報を用いて、補正量が決定される。
【0003】
また、画像の補正処理の一つとして、輪郭補正も周知である。従来の一般的な輪郭補正では、ハイパスフィルタを用いて映像信号から広域成分を抽出し、この抽出した広域成分を輪郭補正信号として、加算器において遅延した映像信号と輪郭補正信号とを合成することにより、輪郭部分の鮮鋭度を向上させる。
【0004】
特許文献3には、輪郭補正に関して、映像信号に含まれる注目画素と、その注目画素の左右に連続する2つの画素とを抽出し、抽出された画素間の輝度差分を検出する手法が開示されている(同文献の図4参照)。また、特許文献4には、注目画素の左右に連続する左右画素に対する輪郭補正量を設定する手法が開示されている(同文献の図2参照)。
【特許文献1】特開2003−333331号公報
【特許文献2】特開2004−38842号公報
【特許文献3】特許第3675704号公報(図4)
【特許文献4】特開2000−209463号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、テレビジョン用映像信号等には、画面の左右両端や上限両端に、ブランキング領域(有意な映像が存在せず黒く表示される領域)を含むフォーマットが存在する。例えば、図7に示すように、画像領域の左右両側に存在するブランキング領域は、サイドブランキング領域と称される。なお、本明細書では、ブランキング領域と画像領域との境界を、ブランキング境界と称する。
【0006】
このようなブランキング領域を有する画像を補正対象とする場合、図8に示すように、補正対象画素92がブランキング境界に近い場合、当該画素に対する補正がブランキング領域の影響を受けることがある。これは、当該画素の補正が、例えば、その画素の周辺画素群93(ブランキング領域の画素を含む)の輝度情報を利用して行われるためである。
【0007】
例えば、特許文献1,2に開示されているコントラスト補正を行う場合、コントラストの補正量は、補正対象画素の近傍画素の画素値(輝度)に基づいて決定されるので、補正対象画素の近傍にブランキング領域がある場合、ブランキング領域の画素の輝度が低いため、これに基づいて補正された後の画素の輝度が非常に高くなってしまうことがある。
【0008】
また、特許文献3に開示された手法によれば、注目画素とその左右の数画素との輝度差分に基づいて輪郭補正がなされるが、サイドブランキングを含む映像信号の場合には、適切な輪郭補正を行うことができない。具体的には、同文献の図2に示すように、サイドブランキング領域の画像を含む画素と映像信号の画像を含む画素とからなるブロックを輪郭補正した場合には、サイドブランキング領域の輝度が低いため、サイドブランキング領域と画像領域との境界周辺では輪郭補正後の輝度が非常に高くなってしまう。このように、サイドブランキング領域の画像を含む画素と映像信号の画像を含む画素からなるブロックでは適切な輪郭補正を行うことができないという問題が生じる。特許文献4に開示された補正処理においても同様の問題が生じる。
【0009】
これらの問題により、ブランキング領域を含む画像の補正を行った際に、例えば図7に示すように、ブランキング領域近傍の画像領域にグラデーション状の輝度変化やシュート(輝度の高い縦線)等の表示ムラ91が生じるという現象が見られた。
【0010】
本発明は、上記の課題を鑑みなされたもので、従来、コントラスト補正や輪郭補正の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等を目立たなくし、高品位な補正画像が得られる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる第1の画像処理装置は、画像中の少なくとも一部の画素に対して当該画素の周辺画素の輝度情報を利用して補正処理を行う補正処理部を備えた画像処理装置であって、前記画像中のブランキング領域と画像領域との境界を検出する境界検出部と、前記画像領域中で、前記境界検出部によって検出された境界に隣接する所定範囲において、前記補正処理部による画像の補正効果を抑制する効果抑制処理部とを備えたことを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、ブランキング領域と画像領域との境界を検出し、その境界に隣接する所定範囲において、前記補正処理部による画像の補正効果を抑制することにより、従来、コントラスト補正や輪郭補正等の補正処理の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等を目立たなくし、高品位な補正画像が得られる。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明にかかる第2の画像処理装置は、画像中の少なくとも一部の画素に対して当該画素の周辺画素の輝度情報を利用して補正処理を行う補正処理部を備えた画像処理装置であって、前記画像中のブランキング領域と画像領域との境界を検出する境界検出部と、前記境界検出部によって検出された境界の情報に基づいて、前記補正処理部による補正処理の対象画像から、前記ブランキング領域に属する画素を除外する補正領域調整部とを備えたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、ブランキング領域と画像領域との境界を検出し、その境界の情報に基づいて、前記補正処理部による補正処理の対象画像から、前記ブランキング領域に属する画素を除外することにより、従来、コントラスト補正や輪郭補正等の補正処理の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等を目立たなくし、高品位な補正画像が得られる。
【0015】
上記の第1または第2の画像処理装置において、前記境界検出部が、前記画像の各画素と、当該画素に隣接する少なくとも一画素との輝度の差分を求める輝度差分検出部と、前記輝度差分検出部が求めた差分または当該差分を正規化した値を、ブランキング境界に平行な一連の画素毎に累積加算する累積加算部とを備え、前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づいて、ブランキング境界の位置を決定するブランキング境界検出部とを備えたことが好ましい。この構成においてさらに、前記輝度差分検出部が、前記画像の各画素と、当該画素の水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて少なくとも片方に隣接する画素との輝度の差分を求めることがより好ましい。
【0016】
上記の第1または第2の画像処理装置において、前記境界検出部が、前記画像を複数のブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の輝度の平均値を当該ブロックの輝度として求めるブロック化処理部と、前記ブロックのそれぞれと、当該ブロックに隣接する少なくとも一ブロックとの輝度の差分を求める輝度差分検出部と、前記輝度差分検出部が求めた差分または当該差分を正規化した値を、ブランキング境界に平行な一連のブロック毎に累積加算する累積加算部とを備え、前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づいて、ブランキング境界の位置を決定するブランキング境界検出部とを備えたことが好ましい。この構成においてさらに、前記輝度差分検出部が、前記画像の各ブロックと、当該ブロックの水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて少なくとも片方に隣接するブロックとの輝度の差分を求めることがより好ましい。なお、前記ブランキング境界検出部が、前記累積加算部により得られた累積加算の結果を補間処理することによってブランキング境界の位置を画素単位で検出しても良いし、あるいは、前記ブランキング境界検出部が、前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づき、隣接する2つのブロック間をブランキング境界の位置として検出しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来、ブランキング領域を有する画像に対してコントラスト補正や輪郭補正を行った際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等を目立たなくし、高品位な補正画像が得られる画像処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態として、画像の左右両端にサイドブランキング領域を有する画像に対して各種の補正処理を行う画像処理回路(画像処理装置)について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は、サイドブランキング領域を有する画像を処理対象とするものに限定されず、画像の上下にブランキング領域を有する画像(いわゆるシネマモードまたはレターボックス)に対しても、同様に適用可能である。
【0019】
[第1の実施形態]
以下、図1〜図3を参照し、本発明の第1の実施形態にかかる画像処理回路(画像処理装置)の構成と動作について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。第1の実施形態にかかる画像処理回路10は、画像補正回路11と、補正量調整回路12とを備えている。
【0020】
画像補正回路11は、入力映像信号に対して、コントラスト調整や輪郭補正等の任意の補正処理を行って出力する回路である。このため、画像補正回路11は、特徴検出回路111と輝度補正回路112とを備えている。特徴検出回路111は、入力映像信号中、補正すべき画素の特徴を検出する。特徴検出回路111が検出する特徴としては、例えば、補正すべき画素を中心とした周囲の画素の平均輝度等が考えられる。輝度補正回路112は、特徴検出回路111による検出結果に基づいて、補正対象画素に対して、画像補正回路11が達成すべき補正目的に応じて予め定められた処理手法で、輝度補正を行う。
【0021】
補正量調整回路12は、サイドブランキング領域と画像領域との境界付近で、画像補正回路11による補正処理がサイドブランキング領域の影響を受けないように、輝度補正回路112における補正量を調整するための回路である。このため、補正量調整回路12は、メモリ121,122と、輝度差分検出回路123と、差分レベル判定回路124と、累積加算回路125と、ブランキング境界検出回路126と、効果抑制係数算出回路127と、遅延素子128とを備えている。
【0022】
メモリ121,122は、ラインメモリ等によって構成される。メモリ121は、注目画素の直下の1ライン分(水平方向の全画素)の入力映像信号を保持するために、少なくとも1ライン分の入力映像信号を一時的に格納しておく容量があればよい。メモリ122は、累積加算回路125の演算処理に利用される。
【0023】
輝度差分検出回路123、差分レベル判定回路124、累積加算回路125、およびブランキング境界検出回路126は、後に詳述する手順により、入力映像信号からサイドブランキング領域と画像領域との境界(以下、「ブランキング境界」と称する。)を検出するための回路である。効果抑制係数算出回路127は、前段の回路により検出されたブランキング境界の近傍においては、画像補正回路11の輝度補正回路112に対して、緩やかなゲイン制御を行うよう指示する信号を出力する。
【0024】
ここで、補正量調整回路12におけるブランキング境界の検出手順について、図1に加えて、図2のフローチャートを参照しながら詳しく説明する。以下の説明において、画像データの各画素をP(i,j)と表記し、iは当該画素の垂直方向の位置を表し、jは当該画素の水平方向の位置を表すものとする。なお、i,jの始点は画像の左端上端の画素であるものとし、iの最大値をimax、jの最大値をjmaxと表す。言い換えると、imaxは補正対象画像における垂直方向の画素数、jmaxは水平方向の画素数である。
【0025】
補正量調整回路12は、注目画素P(i,j)の直下の1ライン分の入力映像信号を取り込み、メモリ121に格納する(図2のステップS1)。そして、輝度差分検出回路123が、iの初期値を1とし、jの初期値を1として、ステップS2h,S2vの処理を開始する。すなわち、輝度差分検出回路123は、メモリ121を参照し、注目画素P(i,j)を基準として、この注目画素P(i,j)と右隣の画素P(i,j+1)との輝度の差分を算出する(ステップS2h)。なお、注目画素の右隣の画素P(i,j+1)の輝度は、入力映像を1画素分ディレイさせる遅延素子128から得られる。また、輝度差分検出回路123は、メモリ121を参照し、注目画素P(i,j)と垂直下の画素P(i+1,j)との輝度の差分を算出する(ステップS2h)。例えば、図3において注目画素をP(1,1)とした場合、この画素P(1,1)とその右隣の画素P(1,2)との輝度の差分、および、画素P(1,1)とその垂直下の画素P(2,1)との輝度の差分が、それぞれ算出される。
【0026】
ステップS2h,S2vで算出された差分の値は、輝度差分検出回路123から差分レベル判定回路124へ送られる。差分レベル判定回路124は、輝度差分検出回路123で求められた差分の値を、所定の閾値と比較する(ステップS3h,S3v)。そして、差分レベル判定回路124は、ステップS2hで求められた水平方向の差分が所定の閾値以下であれば(ステップS3hの結果がYES)、変数sub(i,j)_hに1を代入し、そうでなければ(ステップS3hの結果がNO)、変数sub(i,j)_hに0を代入する(ステップS4h)。同様に、差分レベル判定回路124は、ステップS2vで求められた垂直方向の差分が所定の閾値以下であれば(ステップS3vの結果がYES)、変数sub(i,j)_vに1を代入し、そうでなければ(ステップS3vの結果がNO)、変数sub(i,j)_vに0を代入する(ステップS4v)。
【0027】
なお、上述のS2h〜S4hの一連の処理と、S2v〜S4vの一連の処理とは、差分レベル判定回路124内で必ずしも並列に実行されなくても良い。また、ステップS3hで用いられる閾値と、ステップS3vで用いられる閾値とは、必ずしも同じ値でなくても良い。
【0028】
次に、差分レベル判定回路124は、ステップS4h,S4vでそれぞれ求められたsub(i,j)_hとsub(i,j)_vの値が両方1であるか否かを判断し(ステップS5)、その結果がYESであれば、変数sub(i,j)に0を代入し、そうでなければ1を代入する(ステップS6)。ステップS6で得られたsub(i,j)の値は、累積加算回路125へ逐次出力される。すなわち、注目画素P(i,j)の輝度が、周囲の画素(右隣および垂直下)の輝度とあまり差がない場合はsub(i,j)の値は0となり、差がある場合はsub(i,j)の値は1となる。
【0029】
上記のS2h(S2v)〜S6の処理を、水平1ラインの全ての画素について変数sub(i,j)を算出するまで(ステップS7の結果がYESとなるまで)、jの値を1ずつインクリメントしながら(ステップS8)、繰り返し実行する。さらに、上記のS1〜S8の処理を、全ラインについて変数sub(i,j)を算出するまで(ステップS9の結果がYESとなるまで)、iの値を1ずつインクリメントしながら(ステップS10)、繰り返し実行する。これにより、ステップS9の結果がYESとなったときには、画像データにおいて最下ラインの画素を除く全ての画素P(i,j)のそれぞれについて、sub(i,j)の値が求められていることとなる。なお、図2においては、ステップS7,S9のそれぞれにおいて、i,jがそれぞれimax,jmaxに到達するまで処理を繰り返しているが、注目画素が画像の右端部および最下部となった場合、隣接画素がないのでステップS2h,S2vが実行できないことを考慮し、i,jがそれぞれimax-1,jmax-1に到達したときに処理を終了しても良い。
【0030】
次に、累積加算回路125は、同一の列内の画素P(i,j)のsub(i,j)の値を累積加算し、得られた値をsb(j)とする(ステップS11)。例えば、sb(1)は、sub(1,1)+sub(2,1)+sub(3,1)+…+sub(imax,1)より得られる。サイドブランキング領域内ではsub(i,j)の値は通常0であり、画像領域ではsub(i,j)の値は必ずしも0ではない。従って、sub(i,j)の値を列内で累積加算して得られるsb(j)の値は、サイドブランキング領域では0ないしは0に近い値となり、画像領域では0よりも大きい値をとる(図3参照)。
【0031】
そして、ブランキング境界検出回路126は、得られたsb(j)の値を所定の閾値と比較し(ステップS12)、sb(j)が所定の閾値以上であれば(ステップS12の結果がYES)、変数sb_w(j)に1を代入し、そうでなければ変数sb_w(j)に0を代入する(ステップS13)。つまり、変数sb_w(j)は、補正対象画像の第j列がサイドブランキング領域であれば0、サイドブランキング領域外(すなわち画像領域)であれば1、をそれぞれ表す。
【0032】
以上の手順により、補正量調整回路12において、第j列がサイドブランキング領域か否かを表すsb_w(j)の値を求めることができる。sb_w(j)は、ブランキング境界検出回路126から効果抑制係数算出回路127へ出力される。そして、効果抑制係数算出回路127は、ブランキング境界検出回路126から出力されるsb_w(j)の値に応じて、補正対象画像のブランキング境界を判断し、この判断結果に従って、輝度補正回路112のゲインを制御するための効果抑制係数Kを出力する。
【0033】
例えば、図3に示すように補正対象画像の左右両端にそれぞれ6画素分のサイドブランキング領域が存在する場合、sb_w(1),sb_w(2),…,sb_w(6)は0となり、sb_w(7),sb_w(8),…,sb_w(jmax−6)は1となり、sb_w(jmax−5),sb_w(jmax−4),…,sb_w(jmax)は0となる。これにより、効果抑制係数算出回路127は、サイドブランキング領域と画像領域との境界(ブランキング境界)が、第6列と第7列との間と、第(jmax−6)列と第(jmax−5)列との間との2箇所に存在すると判断できる。効果抑制係数算出回路127は、この判断に基づいて、例えば、ブランキング領域内では効果抑制係数Kの値を0とし、ブランキング境界から画像領域にかけての所定のm列(mは自然数)においては効果抑制係数Kの値を0〜1の範囲の所定の値αとし、両端の前記m列を除く画像領域においては効果抑制係数Kの値を1とする。なお、mの値は、補正処理の種類や補正対象画像の種類等により、適宜に設定すれば良い。また、αの値は、上記m列内で一定としても良いし、ブランキング境界から離れた列になるほどαの値を大きく(1に近く)しても良い。
【0034】
そして、輝度補正回路112のゲインをAとした場合、効果抑制係数算出回路127から出力される効果抑制係数Kに基づいてゲインAを以下のように調整して得られるゲインBを用いて、輝度補正を行う。
【0035】
B=(1−K)+K×A
上述のとおり、本実施形態にかかる画像処理回路10によれば、サイドブランキング領域が存在する画像に対して補正を行う場合、補正量調整回路12においてブランキング境界を検出し、ブランキング境界付近の補正時には、輝度補正回路112において上記のようなゲイン調整を行うことにより、ブランキング境界付近の輝度補正の効果をゆるやかにできる。この結果、従来、コントラスト補正や輪郭補正の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート(輝度の高い縦線)等が目立たなくなり、高品位な補正画像を得ることができる。
【0036】
[第2の実施形態]
以下、図4および図5を参照し、本発明の第2の実施形態にかかる画像処理回路(画像処理装置)の構成と動作について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。図5は、本実施形態における補正量調整回路22において、補正対象画像の画素の第j列がサイドブランキング領域であるか否かを表す変数sb_w(j)を求める処理の手順を示すフローチャートである。なお、図5では、各ステップの処理対象ブロックをB(I,J)と表している。Iは、当該ブロックの垂直方向の位置を表し、Jは当該ブロックの水平方向の位置を表す。なお、I,Jの始点は画像の左端上端のブロックである。I,Jのそれぞれの最大値を、Imax、Jmaxと表す。言い換えると、Imaxは補正対象画像における垂直方向のブロック数、Jmaxは水平方向のブロック数である。また、本実施形態においても、第1の実施形態と同様に、iは補正対象画像における画素の垂直方向の位置を表し、jは画素の水平方向の位置を表すものとする。また、i,jの始点は画像の左端上端の画素である。
【0037】
第2の実施形態にかかる画像処理回路20は、ブランキング境界を検出する際に、第1の実施形態のように画素毎の輝度の差分をとるのではなく、複数画素からなるブロックの平均輝度を求め、ブロック毎の平均輝度の差分をとることにより、演算回数を減らし、処理の高速化を図るものである。
【0038】
図4に示すように、第2の実施形態にかかる画像処理回路20は、画像補正回路11と、補正量調整回路22とを備えている。画像補正回路11は、第1の実施形態と同じであるので、説明を省略する。補正量調整回路22は、ブロック化回路221、メモリ222,224、輝度差分検出回路225、差分レベル判定回路226、累積加算回路227、ブロック−画素変換回路228、ブランキング境界検出回路229、効果抑制係数算出回路230を備えている。
【0039】
輝度差分検出回路225、差分レベル判定回路226、累積加算回路227、ブランキング境界検出回路229、および効果抑制係数算出回路230は、第1の実施形態にかかる輝度差分検出回路123、差分レベル判定回路124、累積加算回路125、ブランキング境界検出回路126、および効果抑制係数算出回路127と同様の機能を有する。
【0040】
ブロック化回路221は、補正対象画像を、例えば水平方向q画素×垂直方向q画素の合計q2画素からなるブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の輝度の平均値を、当該ブロックの輝度とする。なお、qは2以上の自然数である。
【0041】
輝度差分検出回路225は、あるブロックB(I,J)を注目ブロックとし、右隣のブロックB(I,J+1)との輝度の差分と、垂直下のブロックB(I+1,J)との輝度の差分とを、それぞれ検出する。差分レベル判定回路226および累積加算回路227においても、処理単位が画素ではなくブロックである以外は、第1の実施形態と同様の処理を行う。これにより、差分レベル判定回路226は、ブロック毎に隣接ブロック(右隣および垂直下)との差分値が所定値よりも大きいか否かを表すsub(I,J)の値を求め、累積加算回路227は、差分レベル判定回路226で求められたsub(I,J)の値を各列で垂直方向に累積加算することにより、ブロック単位のsb(J)の値を求める。
【0042】
次に、ブロック−画素変換回路228が、ブロック単位で求められたsb(J)を画素単位のsb(j)に変換する処理を行う。この変換処理は、例えば補間処理によって実現できる。上述のように、1ブロックの水平方向の画素数がqである場合、sb(J)のブロック内で、sb(J+1)のブロック側に向かってブロック中心からh個目の画素のsb(j)は、
sb(j)={sb(J)×(q−h)+h×sb(J+1)}/q
なる式から求めることができる。
【0043】
このようにして求められた画素単位のsb(j)に基づき、ブランキング境界検出回路229が第1の実施形態のブランキング境界検出回路126と同様の処理を行ってsb_w(j)の値を求め、効果抑制係数算出回路230が、第1の実施形態の効果抑制係数算出回路127と同様の処理を行って効果抑制係数Kを決定する。
【0044】
図5に示すように、本実施形態において変数sb_w(j)を求める処理の手順は、図2に示した第1の実施形態の処理手順と比較すると、以下の点に違いがある。まず、補正対象画像が入力後にブロックに分割される(ステップS21)。また、ステップS22h〜ステップS24h、ステップS22v〜ステップS24vにおける処理単位が、画素ではなくブロックである。さらに、ブロック単位のsb(J)を求めた後、これをブロック−画素変換回路228が画素単位のsb(j)に変換する処理(ステップS32)が追加されている。それ以外は、基本的には第1の実施形態で説明した処理手順と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0045】
以上のとおり、第2の実施形態にかかる画像処理回路20によれば、第1の実施形態の画像処理回路10と同様に、サイドブランキング領域が存在する画像に対して補正を行う場合、補正量調整回路22においてブランキング境界を検出し、ブランキング境界付近の補正時には、輝度補正回路112において効果抑制係数Kに応じたゲイン調整を行うことにより、ブランキング境界付近の輝度補正の効果をゆるやかにできる。この結果、従来、コントラスト補正や輪郭補正の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等が目立たなくなり、高品位な補正画像を得ることができる。さらに、第2の実施形態にかかる画像処理回路20は、ブランキング境界の検出をブロック単位で処理するため、第1の実施形態よりも高速な演算処理が可能であるという利点がある。
【0046】
なお、第2の実施形態に関して、以下のようなバリエーションが考えられる。例えば、上記の例では、ブロック単位で求められたsbの値を補間処理して画素単位のsb(j)の値を求めるために、ブロック−画素変換回路228を備えた構成を例示した。しかしながら、ブロック−画素変換回路228を省略し、ブランキング境界検出回路229の処理もブロック単位で行うようにしても良い。この場合、sb_wの値もブロック単位で求め、sb_wが0であるブロックと、sb_wが1であるブロックとの間にブランキング境界があると判断することができる。この構成によれば、ブロック−画素変換回路228が省略されるので、画像処理回路20の回路構成を簡略化することができると共に、補間処理が不要となるので処理速度がさらに向上するという利点がある。
【0047】
[第3の実施形態]
以下、図6を参照し、本発明の第3の実施形態にかかる画像処理回路(画像処理装置)の構成と動作について説明する。第3の実施形態にかかる画像処理回路は、ブランキング境界の検出は、第1の実施形態と同じ構成および処理によって行う。ただし、ブランキング境界を検出した後、検出したブランキング境界の情報に基づいて、サイドブランキング領域の画素を除去し、画像領域の画素のみに基づいて注目画素の特徴量(例えば、注目画素を中心とした周囲の画素の平均輝度等)を検出する点において、第1の実施形態と異なる処理を行う。
【0048】
図6は、本発明の第3の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。第3の実施形態にかかる画像処理回路30は、画像補正回路31と、補正領域調整回路32とを備えている。画像補正回路31は、特徴検出回路311と、輝度補正回路312とを備えている。特徴検出回路311は、サイドブランキング領域の画素を除去し、画像領域の画素のみから注目画素の特徴量を検出する点において、第1の実施形態にかかる特徴検出回路111と異なっている。補正領域調整回路32は、効果抑制係数算出回路がない点において、第1の実施形態にかかる補正量調整回路12と異なっている。メモリ321,322、輝度差分検出回路323、差分レベル判定回路324、累積加算回路325、ブランキング境界検出回路326、遅延素子328は、第1の実施形態にかかるメモリ121,122、輝度差分検出回路123、差分レベル判定回路124、累積加算回路125、ブランキング境界検出回路126、遅延素子128と同じ構成である。
【0049】
すなわち、補正領域調整回路32は、第1の実施形態で説明したものと同じ処理手順により、ブランキング境界を表すsb_w(j)を求める。求められたsb_w(j)は、特徴検出回路311と輝度補正回路312とに送られる。特徴検出回路311は、sb_w(j)が0の画素列、すなわちサイドブランキング領域の画素を除外し、画素領域の画素のみを用いて注目画素の特徴量を検出し、その情報をG2として出力する。また、sb_w(j)は輝度補正回路312へ送られ、輝度補正回路312は、sb_w(j)が0である画素列については、その列はサイドブランキング領域であるため、入力映像信号G1をそのまま出力する。一方、輝度補正回路312は、sb_w(j)が1である画素列については、その列は画素領域であるため、特徴検出回路311からの出力G2を用いて入力映像信号G1を補正し、補正した結果を出力する。
【0050】
このように、本実施形態の画像処理回路30によれば、サイドブランキング領域が存在する画像に対して補正を行う場合、補正領域調整回路32においてブランキング境界を検出し、サイドブランキング領域の画素を除外して特徴検出回路311が検出処理を行うことにより、ブランキング境界付近の輝度補正の効果に対する、サイドブランキング領域からの影響を抑制できる。この結果、従来、コントラスト補正や輪郭補正の際に、ブランキング境界付近で生じていた縦縞ムラやシュート等が目立たなくなり、高品位な補正画像を得ることができる。
【0051】
なお、本実施形態における上記の説明では、ブランキング境界の検出処理を第1の実施形態と同じ構成および処理によって行うものとしたが、ブランキング境界の検出処理を、第2の実施形態と同じ構成および処理によって行うものとしても良い。この場合、ブロック単位でブランキング境界の検出を行うので、処理速度が向上するという利点がある。
【0052】
また、前述したように、本発明は、サイドブランキング領域を有する画像を処理対象とするものに限定されず、画像の上下にブランキング領域を有する画像(いわゆるシネマモードまたはレターボックス)を処理する画像処理装置としても実施可能である。この場合は、ブランキング境界の検出を、水平方向ではなく垂直方向において行うように、上述の各実施形態を適宜変更すれば良い。
【0053】
また、上記の各実施形態では、注目画素(またはブロック)とその右隣および垂直下の画素(またはブロック)との輝度差を求めるものとしたが、サイドブランキング領域の境界の検出は、注目画素(またはブロック)とその右隣または左隣との輝度差のみを求める構成によっても可能である。ただし、上記の各実施形態のように、水平方向と垂直方向のそれぞれにおいて少なくとも片側に隣接する画素(またはブロック)との輝度差を求めることにより、輝度が一様なサイドブランキングを精度良く検出できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。
【図2】第1の実施形態にかかる画像処理装置において、補正対象画像の第j列がサイドブランキング領域であるか否かを表す変数sb_w(j)を求める処理の手順を示すフローチャートである。
【図3】サイドブランキング領域を有する画像の一例を示す模式図である。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施形態にかかる画像処理装置において、補正対象画像の第j列がサイドブランキング領域であるか否かを表す変数sb_w(j)を求める処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態にかかる画像処理回路の概略構成を示すブロック図である。
【図7】サイドブランキング領域を有する画像の一例を示す図である。
【図8】サイドブランキング領域を有する画像において表示ムラが生じる理由を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
10 画像処理回路
11 画像補正回路
12 補正量調整回路
121 メモリ
122 メモリ
123 輝度差分検出回路
124 差分レベル判定回路
125 累積加算回路
126 ブランキング境界検出回路
127 効果抑制係数算出回路
128 遅延素子
20 画像処理回路
22 補正量調整回路
221 ブロック化回路
222 メモリ
224 メモリ
225 輝度差分検出回路
226 差分レベル判定回路
227 累積加算回路
228 ブロック−画素変換回路
229 ブランキング境界検出回路
230 効果抑制係数算出回路
30 画像処理回路
31 画像補正回路
32 補正領域調整回路
321 メモリ
322 メモリ
323 輝度差分検出回路
324 差分レベル判定回路
325 累積加算回路
326 ブランキング境界検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像中の少なくとも一部の画素に対して当該画素の周辺画素の輝度情報を利用して補正処理を行う補正処理部を備えた画像処理装置であって、
前記画像中のブランキング領域と画像領域との境界を検出する境界検出部と、
前記画像領域中で、前記境界検出部によって検出された境界に隣接する所定範囲において、前記補正処理部による画像の補正効果を抑制する効果抑制処理部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
画像中の少なくとも一部の画素に対して当該画素の周辺画素の輝度情報を利用して補正処理を行う補正処理部を備えた画像処理装置であって、
前記画像中のブランキング領域と画像領域との境界を検出する境界検出部と、
前記境界検出部によって検出された境界の情報に基づいて、前記補正処理部による補正処理の対象画像から、前記ブランキング領域に属する画素を除外する補正領域調整部とを備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記境界検出部が、
前記画像の各画素と、当該画素に隣接する少なくとも一画素との輝度の差分を求める輝度差分検出部と、
前記輝度差分検出部が求めた差分または当該差分を正規化した値を、ブランキング境界に平行な一連の画素毎に累積加算する累積加算部とを備え、
前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づいて、ブランキング境界の位置を決定するブランキング境界検出部とを備えた、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記輝度差分検出部が、前記画像の各画素と、当該画素の水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて少なくとも片方に隣接する画素との輝度の差分を求める、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記境界検出部が、
前記画像を複数のブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の輝度の平均値を当該ブロックの輝度として求めるブロック化処理部と、
前記ブロックのそれぞれと、当該ブロックに隣接する少なくとも一ブロックとの輝度の差分を求める輝度差分検出部と、
前記輝度差分検出部が求めた差分または当該差分を正規化した値を、ブランキング境界に平行な一連のブロック毎に累積加算する累積加算部とを備え、
前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づいて、ブランキング境界の位置を決定するブランキング境界検出部とを備えた、請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記輝度差分検出部が、前記画像の各ブロックと、当該ブロックの水平方向および垂直方向のそれぞれにおいて少なくとも片方に隣接するブロックとの輝度の差分を求める、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記ブランキング境界検出部が、前記累積加算部により得られた累積加算の結果を補間処理することによってブランキング境界の位置を画素単位で検出する、請求項5または6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記ブランキング境界検出部が、前記累積加算部により得られた累積加算の結果に基づき、隣接する2つのブロック間をブランキング境界の位置として検出する、請求項5または6に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−267516(P2009−267516A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111631(P2008−111631)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】