説明

画像処理装置

【課題】 回路規模の増大を抑えたまま、高画質の画像を得ることができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】 入力される画像データINを、画像特徴抽出回路11でフレームN−1の期間の後半から次のフレームNの期間の前半にかけて収集して画像データINの特徴を抽出し、フレームNの期間の前半の終了後に、補正係数演算回路20でフレームN+1の期間に設定される補正係数を、上記抽出した特徴に応じて演算し、その補整係数を画像補整演算回路30でフレームN+1の画像データに反映させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランキング期間によって区切られた複数のフレーム期間のそれぞれに入力される画像データを、それぞれのフレーム期間ごとに設定される補正条件に応じて補正する画像補正演算回路を有する画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上述した画像処理装置を備えた画像表示装置が知られている。近年、このような画像表示装置として、フラットパネルディスプレイが急速に普及しており、中でも液晶ディスプレイが主流となっている。
【0003】
しかし、液晶ディスプレイは、他のディスプレイである例えば陰極線管(CRT)ディスプレイと比較し、表示可能な最高輝度と暗所にて最低階調を表示したときの輝度との比率である「暗所コントラスト」が低いという短所を有する。そこで、「暗所コントラスト」が低いということを改善するために、上述した画像処理装置において、入力された画像データの、各フレーム(入力フレーム)期間それぞれにおける特徴を抽出し、抽出した特徴に応じて、出力される画像データの、各フレーム(出力フレーム)期間それぞれにおいてガンマ補正のカーブを変更したり、ゲインの調整とバックライトの明るさを制御するということが行なわれている。
【0004】
図3は、従来の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【0005】
図3に示す画像処理装置100には、画像特徴抽出回路110と、補正係数演算回路120と、画像補正演算回路130とが備えられている。
【0006】
画像特徴抽出回路110には、画像データINと、垂直同期信号VSYNCと、データ有効信号DEとが入力される。画像データINで表わされる画像は、複数のフレームから構成されており、各フレームは、それぞれ、複数のラインから構成されている。また、垂直同期信号VSYNCは、各フレームに同期して入力される。さらに、データ有効信号DEは、フレームを構成する各ライン毎に有効なレベルになる信号であり、画像データINは、このデータ有効信号DEが有効なレベルにある期間に、画像特徴抽出回路110に収集される。
【0007】
この画像特徴抽出回路110は、収集した画像データINの最大値、最小値、平均輝度レベル(APL:Average Picture Lebel)、およびヒストグラム分布などを計算して画像データINの特徴を抽出し、抽出した特徴を表わす信号を補正係数演算回路120に出力する。
【0008】
補正係数演算回路120は、画像特徴抽出回路110から出力された特徴を表わす信号を入力し、この信号に基づいて補正係数演算を行なう。具体的には、画像データ補正用のカーブを作るためのルックアップテーブル(LUT)の計算と設定を行なう。
【0009】
画像補正演算回路130は、入力された画像データINを、補正係数演算回路120で設定されたルックアップテーブル(LUT)を用いて補正して画像データOUTとして外部に出力する。
【0010】
図4は、図3に示す画像処理装置のタイミングチャートである。
【0011】
図4には、垂直同期信号VSYNCと画像データINが示されている。画像データINで表わされる画像は、複数のフレームN−1,N,N+1,…から構成されている。垂直同期信号VSYNCは、各フレームN−1,N,N+1,…に同期して入力される。また、図4には、画像データINで表わされる画像を構成する1フレーム(例えばフレームN−1)の終点と、次の1フレーム(例えばフレームN)の先頭との期間である垂直ブランキング期間Aが示されている。
【0012】
この画像処理装置100では、フレームN−1(入力フレーム)を構成する先頭のラインが入力されると、そのフレームN−1における特徴の抽出が開始される。また、フレームN−1を構成する最終のラインの入力が終了すると、そのフレームN−1における特徴の抽出が終了する。次いで、垂直ブランキング期間A内に、抽出された特徴に基づいて補正係数の演算(係数演算と略記する)が行なわれる。ここでは、係数演算に要する期間をBとする。次いで、その係数演算の結果が次のフレームN(出力フレーム)に反映される。以下、フレームN,フレームN+1,…においても、フレームN−1と同様にして、垂直ブランキング期間A内に係数演算(期間B)が行なわれ、それらの係数演算の結果それぞれがフレームN+1,…に反映される。
【0013】
ここで、以下に説明する理由により、垂直ブランキング期間A内で補正係数の演算を終了させる必要がある。
(1)画像処理装置100には、動画像を表わす画像データINが入力される場合がある。動画像では、画像が変化し続けるため、特徴抽出結果を出力フレームに反映させるタイミングを早くする必要がある。
(2)補正係数を出力フレームの途中で切り替えると、画面にちらつきが出るなどの画質劣化が発生する。
【0014】
そこで、補正係数の演算に要する時間を短縮し、垂直ブランキング期間A内で補正係数の演算を終了させるための対策が提案されている。その1つとして、画面に解析ウインドウを設け、その解析ウインドウ内の画像データに基づいて補正係数の演算を行なう技術が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2005−509340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、特許文献1に提案された、画面に解析ウインドウを設ける技術では、画面の、解析ウインドウ以外の部分に特徴がある場合、その特徴は抽出されないため、その特徴に応じた補正係数の演算処理は行なわれないこととなる。従って、高画質の画像を得ることは困難である。
【0016】
ここで、補正係数を含む補正条件を算出するために要する時間を短縮するために、高速演算用の並列処理回路を用いることが考えられる。しかし、このような並列処理回路を用いたのでは、回路規模が増大するという問題が発生する。
【0017】
本発明は、上記事情に鑑み、回路規模の増大を抑えたまま、高画質の画像を得ることができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する本発明の画像処理装置は、ブランキング期間によって区切られた複数のフレーム期間のそれぞれに入力される画像データを、それぞれのフレーム期間ごとに設定される補正条件に応じて補正する画像補正演算回路を有する画像処理装置において、
入力される画像データを、第1のフレーム期間の後半から、その第1のフレーム期間の次の第2のフレーム期間の前半にかけて収集し、その収集した画像データの特徴を抽出する画像特徴抽出回路と、
上記第2のフレーム期間の前半の終了後に、上記補正条件を、上記画像特徴量抽出回路が抽出した特徴に応じて算出する補正条件演算回路とを有することを特徴とする。
【0019】
本発明の画像処理装置は、入力される画像データを、第1のフレーム期間の後半から次の第2のフレーム期間の前半にかけて収集してその画像データの特徴を抽出し、第2のフレーム期間の前半の終了後に、フレーム期間ごとに設定される補正条件を、抽出した特徴に応じて算出する構成である。この構成では、補正条件の算出は、第2のフレーム期間の前半の終了後に行なわれるため、補正条件を算出するために要する時間(期間)を、ブランキング期間よりも長く確保することができる。従って、従来の、垂直ブランキング期間内で補正係数の演算を終了させるために画面に解析ウインドウを設ける技術と比較し、高画質の画像を得ることができる。また、補正条件を算出するために要する時間を短縮するために、高速演算用の並列処理回路を用いる必要もなく、回路規模の増大を抑えることができる。
【0020】
ここで、上記ブランキング期間の長さを計測し、その計測したブランキング期間の長さに応じて、上記補正条件演算回路による補正条件の算出が、上記第2のフレーム期間の次の第3のフレーム期間の開始までに終了するように、上記第1のフレーム期間の後半の開始時期を設定するブランキング期間測定回路をさらに有することが好ましい。
【0021】
このようにすると、ブランキング期間の長さがさまざまに変化する場合にも柔軟に対応することができる。
【0022】
また、上記第1のフレーム期間の後半と上記第2のフレーム期間の前半とは、両者を合わせて1フレーム分の画像のデータが入力される期間であることも好ましい態様である。
【0023】
このようにすると、1フレーム分全体の特徴を抽出し、その特徴に応じた画像データの補正条件を算出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、回路規模の増大を抑えたまま、高画質の画像を得ることができる画像処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図、図2は、図1に示す画像処理装置のタイミングチャートである。
【0027】
図1に示す画像処理装置1には、画像特徴抽出部10と、補正係数演算回路20と、画像補正演算回路30とが備えられている。
【0028】
画像特徴抽出部10には、画像特徴抽出回路11と、抽出開始信号生成回路12と、垂直ブランキング期間測定回路13とが備えられている。抽出開始信号生成回路12は、レジスタ12aを有する。
【0029】
画像特徴抽出回路11には、画像データINと、垂直同期信号VSYNCと、データ有効信号DEとが入力される。画像データINで表わされる画像は、図2に示すように、複数のフレームN−1,N,N+1,…から構成されており、各フレームN−1,N,N+1,…は、それぞれ、複数のラインから構成されている。また、垂直同期信号VSYNCは、各フレームに同期して入力される。さらに、データ有効信号DEは、フレームを構成する各ライン毎に有効なレベル(‘H’レベル)になる信号であり、画像特徴抽出回路11は、この‘H’レベルにある期間に、以下のようにして画像データINを収集し、収集した画像データINの特徴を抽出する。
【0030】
この画像特徴抽出回路11は、入力される画像データINを、図2に示すように、フレームN−1の期間の後半(本発明にいう第1のフレーム期間の後半に相当)から、そのフレームN−1の期間の次のフレームNの期間の前半(本発明にいう第2のフレーム期間の前半に相当)にかけて収集する。尚、本実施形態においては、フレームN−1の期間の後半とフレームNの期間の前半とは、両者を合わせて1フレーム分の画像のデータが入力される期間である。詳細には、画像特徴抽出回路11が画像データINを収集する期間は、この図2に示すように、フレームN−1の期間の後半の先頭ラインであるMラインから、フレームNの期間の前半の最終ラインであるM−1ラインまでの1フレーム分の画像データINが入力される1フレーム分の領域(特徴抽出領域(フレームN−1,N))である。
【0031】
また、この画像特徴抽出回路11は、1フレーム分の期間に収集した画像データINの特徴を抽出する。詳細には、後述する抽出開始信号生成回路12からの抽出開始信号を受けて、フレームN−1のMラインからフレームNのM−1ラインまでの1フレーム分の領域(特徴抽出領域(フレームN−1,N))における画像データINの最大値、最小値、平均輝度レベル(APL:Average Picture Lebel)、およびヒストグラム分布などを計算して画像データINの特徴を抽出する。抽出した特徴を表わす信号は、補正係数演算回路20に出力される。
【0032】
補正係数演算回路20は、本発明にいう補正条件演算回路の一例に相当し、フレームNのM−1ライン終了後に、画像特徴量抽出回路11からの特徴を表わす信号に基づいて、本発明にいう補正条件の算出の一例に相当する補正係数演算(係数演算と略記する)を行なう。具体的には、例えば画像データ補正用のカーブを作るためのルックアップテーブル(LUT)の計算と設定を行なう。係数演算に要する期間はBであり、図に示された例では、この期間Bは、垂直ブランキング期間Aよりも長い期間となっている。換言すれば、係数演算に要する期間Bよりも垂直ブランキング期間Aのほうが短くなっている。
【0033】
画像補正演算回路30は、入力された画像データINを、補正係数演算回路20で設定されたルックアップテーブル(LUT)を用いて補正して画像データOUTとして外部に出力する。具体的には、補正係数演算回路20でフレームN−1のMラインからフレームNのM−1ラインまでの1フレーム分の領域(特徴抽出領域(フレームN−1,N))における画像データINの特徴を抽出して係数演算(期間B)して設定したルックアップテーブル(LUT)を用いて、フレームN+1の期間における画像データINを補正して画像データOUTとして外部に出力する。
【0034】
以下、同様にして、フレームNのMラインからフレームN+1のM−1ラインまでの1フレーム分の領域(特徴抽出領域(フレームN,N+1))における画像データINの特徴を抽出して係数演算(期間B)し、これにより設定したルックアップテーブル(LUT)を用いて、フレームN+2の期間における画像データINを補正して画像データOUTとして外部に出力する。
【0035】
ここで、上述した、抽出開始信号生成回路12から出力される抽出開始信号は、以下のようにして生成される。
【0036】
抽出開始信号生成回路12が有するレジスタ12aには、垂直ブランキング期間測定回路13からの信号、もしくは後述する外部設定信号EXTが入力される。
【0037】
垂直ブランキング期間測定回路13は、本発明にいうブランキング期間測定回路の一例に相当し、データ有効信号DEがフレーム間で無効になる期間を計測することにより、垂直ブランキング期間Aの長さを計測する。さらに、計測した垂直ブランキング期間Aの長さと、補正係数演算回路20が係数演算に要する期間Bの長さとに応じて、補正係数演算回路20による係数演算がフレームNの期間の次のフレームN+1の期間(本発明にいう第3のフレーム期間に相当)の開始までに終了するように、フレームN−1の期間の後半の開始時期をレジスタ12aに設定する。ここで、フレームN−1の期間の後半の開始時期を、Mラインの開始時に設定し、Mラインの最初から画像デークの収集を行うことが好ましい。このためには、垂直ブランキング期間測定回路13は、データ有効信号DEが各ラインに対応して有効になるタイミングを計測することにより、各ラインの開始タイミングを計測する機能を備えることが好ましい。
【0038】
抽出開始信号生成回路12は、レジスタ12aに設定されたフレームN−1の期間の後半の開始時期(Mラインの開始時期)を表わす信号を抽出開始信号として画像特徴抽出回路11に出力する。このようにして、抽出開始信号生成回路12で、特徴抽出領域(フレームN−1,N)を設定するための抽出開始信号を生成する。
【0039】
尚、ここでは、フレームN−1の期間の後半の開始時期をレジスタ12aに設定するにあたり、垂直ブランキング期間測定回路13からの信号により設定する例で説明したが、外部からの外部設定信号EXTにより設定することもできる。例えば、コンピュータモニタ装置のように、さまざまなブランキング期間を有する画像データが入力される装置に適用する場合には、垂直ブランキング期間測定回路13を備え、入力される画像データのブランキング期間の長さに応じて柔軟にフレームN−1の期間の後半の開始時期を設定できることが好ましい。一方、例えばテレビジョン受像器のように、ブランキング期間の長さが固定の画像データが入力される装置に適用する場合には、外部から設定することにより、垂直ブランキング期間測定回路13を不要とすることが好ましい。
【0040】
本実施形態の画像処理装置1は、入力される画像データINを、図2に示すように、フレームN−1の期間の後半(Mライン)から次のフレームNの期間の前半(M−1ライン)にかけて収集して画像データINの特徴を抽出し、フレームNの期間の前半の終了後に、フレームN+1の期間に設定される補正係数を、抽出した特徴に応じて演算する構成である。この構成では、補正係数の演算は、フレームNの期間の前半の終了後に行なわれるため、図2に示すように、補正係数の演算に要する期間Bを、垂直ブランキング期間Aよりも長く確保することができる。従って、従来の、垂直ブランキング期間A内で補正係数の演算を終了させるために画面に解析ウインドウを設ける技術と比較し、高画質の画像を得ることができる。また、補正係数の演算に要する時間を短縮するために、高速演算用の並列処理回路を用いる必要もなく、回路規模の増大を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す画像処理装置のタイミングチャートである。
【図3】従来の画像処理装置の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示す画像処理装置のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0042】
1 画像処理装置
10 画像特徴抽出部
11 画像特徴抽出回路
12 抽出開始信号生成回路
12a レジスタ
13 垂直ブランキング期間測定回路
20 補正係数演算回路
30 画像補正演算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランキング期間によって区切られた複数のフレーム期間のそれぞれに入力される画像データを、該それぞれのフレーム期間ごとに設定される補正条件に応じて補正する画像補正演算回路を有する画像処理装置において、
入力される画像データを、第1のフレーム期間の後半から、該第1のフレーム期間の次の第2のフレーム期間の前半にかけて収集し、該収集した画像データの特徴を抽出する画像特徴抽出回路と、
前記第2のフレーム期間の前半の終了後に、前記補正条件を、前記画像特徴量抽出回路が抽出した特徴に応じて算出する補正条件演算回路とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ブランキング期間の長さを計測し、該計測したブランキング期間の長さに応じて、前記補正条件演算回路による補正条件の算出が、前記第2のフレーム期間の次の第3のフレーム期間の開始までに終了するように、前記第1のフレーム期間の後半の開始時期を設定するブランキング期間測定回路をさらに有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1のフレーム期間の後半と前記第2のフレーム期間の前半とは、両者を合わせて1フレーム分の画像のデータが入力される期間であることを特徴とする請求項1または2記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−16640(P2010−16640A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174867(P2008−174867)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(501285133)川崎マイクロエレクトロニクス株式会社 (449)
【Fターム(参考)】