説明

画像処理装置

【課題】超解像処理の収束判定の誤判定をなくし、超解像処理の精度を向上させることが可能な画像処理装置を提供する。
【解決手段】被写体との距離を計測する距離計測部2と、被写体の画像を反復計算によって復元する劣化画像復元部134と、画像復元処理の終了判定を行う終了判定手段とを具備する。そして、画像復元処理の終了判定を行う場合には、距離計測部2によって計測された距離情報に基づく特定の距離レイヤのみ又は距離情報に基づく距離レイヤ毎に終了判定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化画像を復元する画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、デジタルカメラ等の撮像装置で撮像した場合、後で見るとピンぼけ等により劣化画像となることがある。このような場合、超解像処理により劣化画像を復元する試みがなされており、超解像のアルゴリズムが種々考えられている。例えば、非特許文献1には、イラニー・ペレッグ法と呼ばれる代表的な方法が開示され、複数のボケ画像からの復元を行う方法が提案されている。
【0003】
イラニー・ペレッグ法の画像復元処理には式(1)が用いられる。本方式では、繰り返し処理において劣化画像から未知の元画像を徐々に推定していく。その際、式(1)に示す直前の復元画像に想定したボケを表す点広がり関数(hPSF)をコンボリューションして作成した疑似ボケ画像g(n)と、撮影で得られたボケ画像g(0)のノルム(画素毎の差分2乗和)を計算する。即ち、式(2)のe(n)を計算し最小となった場合を画像復元完了とする。
【0004】
(n+1)=f(n)+(g−g(n))×hAUX/c
=f(n)+(g−f(n)×hPSF)×hAUX/c …式(1)
cは正規化定数である。
【0005】
AUXは全てのωで、0<|1−HPSF(ω)・HAUX(ω)/c|<1
を満たすものなら良く、一般的にはHPSFが使われる。Hはhのフーリエ変換である。
【0006】
(n)=‖g(n)−g(0)‖ …式(2)
但し、‖ ‖はノルムであり、画素毎の差分2乗和か差分絶対値和を示す。
【0007】
また、特許文献1には元画像の推定にベイズ推定を用いた代表的なリチャードソン・ルーシ法を改良したアルゴリズムが開示されている。特許文献2には、超解像処理に関する15種の非特許文献が記載されている。
【0008】
一方、被写体との距離を測定し、画素毎の距離情報を取得する技術も知られている。例えば、特許文献3にはステレオ法と呼ばれる被写体までの距離を測定する技術に望遠鏡を組み合わせて遠距離での距離計測精度を向上させる方法が開示されている。
【非特許文献1】Improving Resolution by Image Registration CVGIP:GRAPHICAL MODELS AND IMAGE PROCESSING Vol.53,No.3 May,pp.231-239,1991
【特許文献1】特開2006−242746号公報
【特許文献2】特開2006−195856号公報
【特許文献3】特開平11−257951号公報
【特許文献4】特開平05−205048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
劣化画像復元処理を行う場合、各被写体のピンぼけ度合いの違いから、反復復元部の処理で画像内の複数の被写体の最適劣化復元回数が異なるのが普通である。即ち、図9に示すように収束判定用の評価関数、例えば、処理前後の画像や復元画像とボケを表す点広がり関数(hPSF)とのコンボリューションとボケ画像のノルムが複数の極小値を取り、どれが正解か分からないという問題があった。
【0010】
これに対し、特許文献4には、画素毎に最適劣化復元判定を行い、復元完了画素の処理は凍結することで全ての画素の復元を行う技術が開示されている。この方法では、復元画像の各画素の近傍領域に対して隣接画素の差分を取るフィルタリングを施すことにより、当該近傍領域におけるノイズ(=高域強調フィルタによるリンギング)を推定し、推定されたノイズの分散を求める。そして、画素値の分散とノイズの分散の差分が所定値より小さくなった画素については収束したと判定する。しかしながら、本方式はあくまで推定に基づいた方法であり、リンギングノイズと実画像とが混在した部分の誤差の混入の可能性は否めない。
【0011】
本発明の目的は、超解像処理の収束判定の誤判定をなくし、超解像処理の精度を向上させることが可能な画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、劣化画像を復元する画像処理装置であって、被写体との距離を計測する手段と、被写体の画像を反復計算によって復元する画像復元手段と、前記画像復元処理の終了判定を行う終了判定手段とを具備し、前記終了判定手段は、前記計測手段によって計測された距離情報に基づく特定の距離レイヤのみ又は前記距離情報に基づく距離レイヤ毎に前記終了判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、被写体との距離情報に基づく特定の距離レイヤ又は距離レイヤ毎に超解像処理の収束判定を行うため、判定結果を示す極小値が複数発生して誤判定することが無くなり、精度の良い画像復元処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は本発明に係る画像処理装置の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。特に、第1の実施形態は特定の距離レイヤに属する被写体の解像度復元処理を行う例を示すものである。
【0016】
図中1は撮影部、2は距離測定部である。距離測定部2には2眼ステレオ法を用いた例を示す。撮影部1内には撮像レンズ120、絞り121、CCD等の撮像テバイス122が配置されている。123は撮像テバイス122からの撮像信号をAD変換するADC(AD変換器)、124はフィルタ処理等を行うカメラ処理部、130はメモリコントローラ、131はSDRAM等のメモリである。
【0017】
また、132は画像縮小部、133はPSFテーブル、134は劣化画像復元部、135は画像処理効果判定部、140はコーディク、141はフラッシュメモリインターフェース、142はフラッシュメモリを示す。更に、143は表示インターフャース、144は液晶等の表示部、98は十字パッド、99はシャッター、100はシステム全体を制御するシステムコントローラである。
【0018】
距離計測部2には、撮像レンズ104Rと104Lが配置され、各撮像レンズに対応して絞り105Rと105L、撮像デバイス(CCD等)106Rと106L、ADC(AD変換器)107Rと107Lが配置されている。また、108は被写体との距離を判定する距離判定部、109は距離画像作成部である。ADC123及びADC107Rと107LはAGC機能を持つ。
【0019】
なお、図1の左下に被写体の一例を示す(被写体は俯瞰図で示す)。図1では被写体を3つ示しているが、101は遠景被写体(実際は矢印で示す遙か左に存在する)、102は中間距離被写体、103は近景被写体を示す。
【0020】
次に、本実施形態の撮影処理動作を図1、図2、図3を用いて説明する。図2は本実施形態の撮影処理を示すフローチャートである。図3は距離画像作成部109による距離画像の一例を示す。
【0021】
1.撮影準備時
まず、シャッター99が半押しされると(図2のS101)、システムコントローラ100は撮影準備のため、撮影部1と距離計測部2のAE(オートエクスポーズ)、AF(オートフォーカス)の処理を行う(S102)。通常、AE処理は重要な被写体の位置する中央部の明るさが露出オーバでも露出アンダーでも無い所定の値になるように絞り121、絞り105Lと105Rや、ADC107Lと107R、ADC123内のAGCを制御する。
【0022】
一方、AF処理はAEの場合と同様に中央部のADC出力の高周波成分が多くなるように撮像レンズ104Rと104L、撮像レンズ120を山登り法で調整する。距離計測部2は上述のように2眼ステレオ法を用いている。一般的に距離計測部2は撮影部1に対して小径レンズと小径且つモノクロのCCDを使用することで被写界深度が深く、高感度となっている。
【0023】
2.撮影時
次にシャッター99が全押しされると(S103)、撮影部1で撮像処理を行い、距離測定部2で距離画像の計測を行う(S104)。その際、ADC123の出力はカメラ処理部124でフィルタ処理によりBayer配列画像からRGB画像に変換され、メモリコントローラ130を経由してメモリ131へ書き込まれる。
【0024】
また、距離計測部2ではADC107RとADC107Lの各画素の出力が距離判定部108に入力される。ここで各画素の左右複数画素を左右方向にシフトして1ノルム(差分絶対値和)を計算し、最小値を得た時のシフト量からその画素の属するレイヤの距離を算出する。距離画像作成部109ではそれを各画素毎に算出することで、図3に示すような距離画像の作成を行い、撮影画像と同様にメモリコントローラ130を経由してメモリ131に書き込む。
【0025】
図3に示す距離画像において、近景は黒、中距離は灰色(黒と白の中間で表す)、遠景は白で表す。図1の左下に示すように近景被写体103は撮像デバイス106L、106Rで撮像される位置が外側にずれるが、殆ど平行光線となる実質無限遠の遠景被写体101は両撮像デバイスの同一位置に撮像される。このことは、特許文献3に詳しく記載されている。
【0026】
撮影後にはメモリ131に書き込まれた撮影画像と距離画像に加えて撮影パラメータ(フォーカス、ズーム、絞りの情報等)がメモリコントローラ130を経由して読み出される。必要に応じて撮影画像はコーデック140を経由し、フラッシュメモリコントローラ141を経由してフラッシュメモリ142に書き込まれる。
【0027】
3.撮影後の画像確認
撮影後、操作者が十字パッド98を操作して指示することで、システムコントローラ100によりフラッシュメモリ142から撮影済み画像がフラッシュメモリコントローラ141経由で読み出される。そして、メモリコントローラ130を経由してメモリ131へ書き込まれる。
【0028】
読み出された数メガピクセルの画像は、まず、小型のVGA程度の表示部144に画像縮小部132で縮小して表示される。縮小度合いを下げながら被写体の画像を注意深く確認すると、AFの位置が所望の被写体(近景被写体)103でなく、背景の中間距離被写体102に合焦していることがある。
【0029】
特に、図1に示すような構図の場合、スポット測距方式だと、中心にフォーカスが合い、いわゆる中抜け後ピン現象が起こりやすい。しかし無限遠の遠景被写体101にピントが合っている大ボケ状態ではないので、撮影直後、小さなモニタ画面で簡単に見た程度では後ピン状態が確認できない場合が多い。
【0030】
4.画像復元
図4は本実施形態の画像復元処理を示すフローチャートである。図5は距離情報により撮影画像を分離した部分画像の例を示す。本実施形態の画像復元時の動作を図1、図4、図5を用いて説明する。
【0031】
4.1画像復元前処理
そこで画像復元処理を行う。その際、劣化画像を反復計算により画像復元処理を行う。まず、操作者が十字パッド98を操作して何処の画像を復元したいかを指示することで、システムコントローラ100は現在表示画像の復元処理を開始する。この例では近景の人物のどちらかを指示した場合を想定する。システムコントローラ100は指示された画素の存在する距離画像から復元を行う領域を近景と判断し、収束判定には劣化画像gN(n)の画素を用いることとする。
【0032】
gN(n)は劣化画像g(n)の中で図3に黒で示す距離画像で近景(Near)に相当する部分の画素の集合であり、図5に示すNearの画像である。メモリ131にある撮像パラメータと劣化画像(g(0)とする)をメモリコントローラ130を経由して劣化画像復元部134に送り、画像修復処理回数をカウントする繰り返し処理カウンタn=0(初期化)とする。
【0033】
また、劣化画像処理の初期画像f(0)=g(0)とするため、g(0)をメモリ内でコピーする。撮像パラメータとPSFテーブル133から撮像時におけるgN(n)の点広がり関数hNPSFを得る(図4のS201)。
【0034】
4.2画像復元繰り返し処理
次に、劣化画像復元部134は1ステップの画像復元処理を行い(S202)、再度メモリコントローラ130を経由してメモリ130の別領域に書き込み、これを新しい復元途中画像f(n+1)とする。画像復元処理はイラニー・ペレッグ法を用いる場合を例とし、背景技術で説明した式(1)を使用する。
【0035】
その場合の計算式を図4に示す。hNPSFは点広がり関数である。また、正規化定数cやhAUXは背景技術で説明した通りである。
【0036】
4.3収束判定
次に、システムコントローラ100は収束判定(終了判定)を行う(S203)。具体的には、‖gN(n)−gN(0)‖を計算して保持する。gNは図3の黒い部分の近景Nearと判断された領域における画素の、画像復元処理後の画像fN(n)と点広がり関数hNPSFをコンボリューションして作った疑似ボケ画像gN(n)と撮影時に得たボケ画像gN(0)とのノルムである。
【0037】
ここで、‖gN(n)−gN(0)‖と‖gN(n+1)−gN(0)‖を比較し、後に処理した値が前者より大きい場合には過剰処理として収束と判断(終了判定)し、最適復元処理画像fをこの時点のf(n)とする。もし、まだならば、システムコントローラ100はf(n)=f(n+1)と代入し、S202(4.2の処理)に戻って画像修復処理を行い、S203にて終了判定を行う。
【0038】
収束したと判定した場合には、システムコントローラ100は最適復元画像fをメモリ131からメモリコントローラ130を経由して読み出し、フラッシュメモリコントローラ141を経由してフラッシュメモリ142へ書き込む(S204)。以上で画像復元処理を終了する。ここで、コーデック140で再度圧縮するか、以前のボケ画像を丸ごと重ね書きして消去するか、ボケ画像の近景(Near)部のみを最適復元画像fで置き換えるかは操作者が十字パッド98で指示して決める等すれば良い。
【0039】
本実施形態では、指定された距離レイヤの画素のみを超解像処理を行う際の収束判定関数に使用する。即ち、距離情報から距離レイヤを作成し、特定の距離レイヤのみ超解像処理の終了判定を行うため、収束評価の極小値の数は1つとなる。従って、判定結果を示す極小値が複数発生することがないため、誤判定をすることが全くなくなり、精度の良い画像復元処理を行うことが可能となる。
【0040】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図1、図3、図6を用いて説明する。図6は本実施形態の画像復元処理を示すフローチャートである。本実施形態は、すべての距離レイヤ、この場合には近景(N)、中間距離(M)、遠景(F)の3つの距離レイヤに属する被写体の解像度復元処理を行う例である。それぞれの距離レイヤにおける画像復元処理は基本的に第1の実施形態と同様である。また、本実施形態の構成は図1と同様である。なお、1.撮影準備時の動作、2.撮影時の動作、3.撮影後画像確認の動作は第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0041】
4.画像復元
4.1画像復元前処理
操作者が十字パッド98を操作してすべての距離の画像を復元したいと指示することでシステムコントローラ100は現在表示画像の復元処理を開始する。システムコントローラ100は距離画像から復元を行う領域が近景(N)、中間距離(M)、遠景(F)の3つのレイヤに分けられると判断し、収束判定には各劣化画像gN、gM、gFの画素を用いることとする。
【0042】
また、システムコントローラ100は撮像時のパラメータと撮影画像に存在する距離情報から、想定される点広がり関数、本実施形態では、hNPSF、hMPSF、hFPSFをPSFテーブル133から得る(S301)。
【0043】
更に、復元途中画像の初期画像fN(0)=fM(0)=fF(0)=g(0)とするため、画像修復処理回数をカウントする繰り返し処理カウンタn=0(初期化)とする(S301)。
【0044】
4.2画像復元繰り返し処理
次にシステムコントローラ100は、メモリ131にある復元途中画像(fN(n)、fM(n)、fF(n))をメモリコントローラ130を経由して劣化画像復元部134に送り、1ステップの画像復元処理を行う。また、再度メモリコントローラ130を経由してメモリ131の別領域に書き込み、これを新しい復元途中画像(fN(n+1)、fM(n+1)、fF(n+1))とする。近景画像、中間距離画像、遠景画像の画像復元処理に上記式(1)を用いるのは第1の実施形態と同様である。
【0045】
図6では近景画像に関しては近景画像修復処理をS302にて行い、中間距離画像に関しては中間画像修復処理をS305にて行い、遠景画像に関しては遠景画像修復処理をS308にて行う。S302の近景画像、S305の中間距離画像、S308の遠景画像の画像復元処理には上述のように式(1)を用いる。
【0046】
図6にはそれぞれの画像復元処理の計算式を示すが、hNPSF、hMPSF、hFPSFは上述のように点広がり関数である。
【0047】
4.3収束判定
図6では近景画像収束判定(終了判定)をS303にて行い、中間距離画像終了判定をS306にて行い、遠景画像終了判定をS309にて行う。S303、S306、S309における収束判定処理に関して詳しく説明する。システムコントローラ100は、‖gN(n+1)−gN(0)‖、‖gM(n+1)−gM(0)‖、‖gF(n+1)−gF(0)‖を計算し、それぞれ保持する。
【0048】
‖gN(n+1)−gN(0)‖に関して説明する。即ち図3の近景Nearと判断されたレイヤの画像復元処理後の画像と該当距離のボケ関数hNPSFをコンボリューションして作った疑似ボケ画像gN(n+1)と撮影時に得たボケ画像g(0)の領域gN(0)とから計算されるノルムである。
【0049】
‖gM(n+1)−gM(0)‖に関した説明する。即ち図3の中間距離Middleと判断されたレイヤの画像復元処理後の画像と該当距離のボケ関数hMPSFをコンボリューションして作った疑似ボケ画像gM(n+1)と撮影時に得たボケ画像g(0)の領域gM(0)とから計算されるノルムである。
【0050】
‖gF(n+1)−gF(0)‖に関して説明する。図3の遠景Farと判断されたレイヤの画像復元処理後の画像と該当距離のボケ関数hFPSFをコンボリューションして作った疑似ボケ画像gF(n+1)と撮影時に得たボケ画像g(0)の領域gF(0)とから計算されるノルムである。
【0051】
次に、近景画像に関して、‖gN(n)−g(0)‖と‖gN(n+1)−g(0)‖を比較し、後に処理した結果が前者より大きい場合には過剰処理として収束と判断する(S303)。そして、最適復元処理画像をこの時点のnを付したfN(n)として保持する(S304)。同様にして、他の中間距離画像や遠景画像の距離部分に関しても計算し、S306或いはS309にて過剰処理と判断した時点の、fM(n)、fF(n)を保持する(S307、S310)。
【0052】
それぞれの距離部分において収束していないと判定した場合には、システムコントローラ100は収束が完了していない距離、例えば、近景画像の場合には、fN(n)=fN(n+1)を代入し、S302(4.2の画像復元処理)に戻る。そして、同様に近景画像修復処理を行い、S303にて収束判定を行う。
【0053】
また、中間距離画像の場合には、fM(n)=fM(n+1)を代入し、S305に戻って同様に中間距離画像修復処理を行い、S306にて収束判定を行う。更に、遠景画像の場合には、fF(n)=fF(n+1)を代入し、S308に戻って同様に遠景画像修復処理を行い、S309にて収束判定を行う。
【0054】
図7は距離情報毎(Far、Middle、Near)の画像復元時のノルムを示す。いずれの場合も収束評価の極小値の数は1つであり、判定結果を示す極小値が複数発生することはない。
【0055】
5.画像合成
次に、図3に示す距離画像の黒い近景部分はS304で保持したfN(n)を、中距離部分はS307で保持したfM(n)を、遠景部分はS310で保持したfF(n)(各nは異なる)を用いて合成する(S311)。そうすることで、全ての距離において劣化画像が復元された画像fを得ることが可能となる。
【0056】
次に、システムコントローラ100は、復元画像fをメモリ131からメモリコントローラ130を経由して読み出し、フラッシュメモリコントローラ141を経由してフラッシュメモリ142へ書き込む(S311)。以上で画像復元処理を終了する。コーデック140で再度圧縮するか、以前のボケ画像を重ね書きして消去するかは操作者が十字パッド98で指示して決める等すれば良いのは第1の実施形態と同様である。
【0057】
本実施形態では、距離情報から距離レイヤを作成し、距離レイヤ毎に超解像処理の収束判定を行うため、収束評価の極小値の数は1つとなり、判定結果を示す極小値が複数発生することがない。従って、誤判定をすることが全くなくなり、精度の良い画像復元処理を行うことが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、3つの距離レイヤに属する被写体の解像度復元処理を行う例を示したが、本発明はこれに限ることはなく、それ以下或いはそれ以上の距離レイヤ毎に処理を行っても良い。
【0059】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態を説明する。本実施形態はPC側で劣化画像を復元する場合の例を示す。即ち、図1のカメラで撮影した画像をPCに送り、PC側で劣化画像を復元する例を示すものである。図8は本実施形態の処理を示すフローチャートである。なお、1.撮影準備時の動作、2.撮影時の動作、3.撮影後画像確認の動作はカメラ側の処理なので第1の実施形態と同様である。
【0060】
図8において、ユーザはフラッシュメモリをPCに装着し、劣化画像復元処理アプリケーションをPC上で起動する。すると、劣化画像復元処理アプリケーションは撮像した画像、距離画像、カメラパラメータをフラッシュメモリから読み出し、PCの記録媒体に書き込み各画像を表示する(S401)。
【0061】
ユーザは画面で画像を確認し、第1の実施形態の特定の領域の劣化画像復元処理か、第2の実施形態の全領域の劣化画像復元処理かの希望条件を入力し、画像を修復する方式の指定を行う(S402)。
【0062】
劣化画像復元処理アプリケーションはその指定に応じて第1又は第2の実施形態で説明したアルゴリズムで処理を行う(S403)。その際、第2の実施形態では3つの距離レイヤに関して画像を復元しているが、これに限ることはない。
【0063】
PCはS404で画像修復が完了すると、処理完了後の復元画像をユーザに提示する。ユーザは復元画像がOKなら(S405)、その画像をPCの記録媒体に書き込む(S406)。例えば、全領域の劣化画像を復元したが、背景にはボケ味が欲しいからNGと判断すると、再度特定領域の劣化画像復元処理を指示し、修復条件を変更して劣化画像復元処理をする。処理終了後にその画像を確認の上、PCの記録媒体に書き込む。
【0064】
具体的には、S405でユーザがNoと判断すれば、S402に戻って上述のように希望条件で画像を修復する指定を行い、画像の修復条件を変更する。その際、例えば、背景にボケ味が欲しいのであれば、その背景部分は劣化画像のままとし、他の人物等の画像は画像復元処理を行うように条件を指定すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る画像処理装置の第1の実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の撮影処理を説明するフローチャートである。
【図3】距離画像の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図5】距離情報により撮影画像を分離した部分画像の一例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の画像処理を説明するフローチャートである。
【図7】距離情報毎の画像復元時のノルムを示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態のPCでの処理を示すフローチャートである。
【図9】全画面のノルムを示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 撮影部
2 距離計測部
98 十字パッド
99 シャッター
100 システムコントローラ
101 遠景被写体(実際は矢印で示す遙か左に存在する)
102 中間距離被写体
103 近景被写体
104R、104L、120 撮像レンズ
105R、105L、121 絞り
106R、106L、122 撮像デバイス
107R、107L、123 ADC(+AGC)
108 距離判定部
109 距離画像作成部
123 SDRAMメモリインターフェース
124 カメラ画像処理部
131 メモリ
132 画像縮小部
133 PSFテーブル
134 劣化画像復元部
135 画像処理効果判定部
140 コーデック
141 フラッシュメモリインターフェース
142 フラッシュメモリ
143 表示インターフェース
144 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
劣化画像を復元する画像処理装置であって、
被写体との距離を計測する計測手段と、
前記被写体の画像を反復計算によって復元する画像復元手段と、
前記画像復元処理の終了判定を行う終了判定手段とを具備し、
前記終了判定手段は、前記計測手段によって計測された距離情報に基づく特定の距離レイヤのみ又は前記距離情報に基づく距離レイヤ毎に前記終了判定を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像復元手段は、前記距離情報に基づく距離レイヤ毎に前記終了判定を行う場合には、前記距離レイヤ毎の復元画像を合成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
更に、画像の修復条件を指定する手段と、復元された復元画像を提示する手段とを具備し、前記提示された復元画像を変更する場合には、再度、前記指定手段により前記画像の修復条件を指定して、劣化画像の修復を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記指定手段により前記画像の修復条件を指定して、再度、劣化画像を復元する際に、前記復元画像のうち劣化画像のままとする画像がある場合には、当該画像は劣化画像のままとし、他の距離レイヤの画像を復元処理することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−61440(P2010−61440A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226976(P2008−226976)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】