説明

画像処理装置

【課題】光源の色温度が変化しても肌色を含む領域の画質をより安定的に向上させることが可能となる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記色検出部における所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる制御手段114を備える。この制御手段114は、ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合、撮影画像の後の撮影において、色検出部における肌色を検出する際の閾値を彩度が高い方向に変化させる機能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、撮影された画像に対し圧縮符号化を行う画像処理装置において、重要度が高いとされる所定色を含む領域を検出し、所定色が検出された領域に対して画質を向上させる処理を行う装置がある。
【0003】
このような装置で重要度が高いとされる色は一般的に人物の顔に相当する色、即ち、肌色である場合が多い。
【0004】
このように画像中の肌色を含む領域を検出し、肌色が検出された領域に対して、フィルタ処理を行い、画像圧縮時の符号割り当て量を制御することにより、画質を向上させる提案として特許文献1がある。
【0005】
図15は、従来例(特許文献1)に係る画像処理装置のブロック図である。
【0006】
図15において、撮像部1501は、レンズや撮像素子を含み映像を撮影(撮像)する。画像信号処理部1502は、ガンマ変換、色空間変換、ラスタ−ブロック変換等一連の画像信号処理を実行する。
【0007】
肌色検出処理部1503は、一連の画像処理が施された画像に対して撮影対象としての重要度が一般的に高い人物の、特に顔面部を検出する。フィルタ部1504は、撮影された画像データの任意の領域に対して選択的にその高周波成分強度を減衰させる。
【0008】
動き補償予測部1505は、予測対象画像ブロックと最も一致する参照画像ブロックを予測し、動きベクトルを生成する。直交変換部1506は、離散コサイン変換等の直交変換を行う。量子化部1507は、直交変換係数を量子化行列等で除算し、情報量を削減する。
【0009】
エントロピー符号化部1508は、ハフマン符号等で可変長符号化することにより更に情報量を削減する。バッファ部1509は、変動する単位時間あたりに発生する符号量を時間軸上で平滑化する。
【0010】
記録部1510は、磁気テープやメモリカード等の記録媒体へ符号化データを記録する。逆量子化部1511は、参照画像を再構成するため、量子化部1507により量子化された直交変換係数を逆量子化する。
【0011】
逆直交変換部1512は、逆量子化部1511により生成された逆量子化後の直交変換係数を逆直交変換する。撮影モード選択部1513は、撮影者により操作され撮影モードを選択(設定)する。
【0012】
制御部1514は、バッファ部1509の占有率を監視し、システム全体を統括的に制御する。符号化モード選択部1515は、撮影者により操作され、静止画または動画を選択する。
【0013】
図16は、図15の量子化部における符号量制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0014】
ステップS1601で撮影者により撮影開始が指示されると、ステップS1602にて制御部1514は符号化モード選択部1515に設定されている符号化モードを調べる。
【0015】
符号化モードが動画符号化モードであった場合は、ステップS1603に進んで撮影モード選択部1513に設定されている撮影モードを調べ、動画符号化モードで無い場合は処理を終了する。
【0016】
ステップS1603において、撮影モードがポートレートモードで無い場合は処理を終了する。
【0017】
一方、ステップS1603で撮影モードがポートレートモードであった場合は、ステップS1604に進む。そして、ステップS1604で、肌色検出処理部1503において肌色と検出された領域に該当する画像ブロックの量子化に際して量子化ステップ値を小さくする等して符号量を増加させ、処理を終了する。
【0018】
尚、この制御に加えて、肌色と検出された領域以外の領域に該当する画像ブロックの量子化に際しては、量子化ステップ値を大きくする等して符号量を低減させるように量子化部1507を制御する。結果的に、肌色検出処理部1503において肌色と検出された領域に対する符号量をそれ以外の領域と比べて相対的に増加するように量子化部1507を制御する。
【0019】
このような符号量制御処理により、画像中に肌色の存在が検出された領域における符号量は増加し、一方、それ以外の領域における符号量は低減するので全体の符号量を保ちながら肌色を含む領域の画質を向上させることができるような構成となっている。
【0020】
また、特許文献1では、ユーザーがポートレートモードを選択した時に限り肌色の存在が検出された領域に符号量を与えることにより、効果的に符号量を削減できる構成にもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2005―218017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
以下に特許文献1に示した従来技術における問題点について説明する。
【0023】
通常、図15に示すようなビデオカメラに代表される画像処理装置では、被写体を照らす光源の色温度変化を補正する目的で所謂ホワイトバランス補正が行われている。
【0024】
ここで、本発明が解決しようとする課題を説明するために、一般的なホワイトバランス補正の動作について述べる。
【0025】
(一般的なホワイトバランスの動作説明)
ホワイトバランス補正で制御可能な色温度範囲は、実際の撮影で使用される光源の色温度変化範囲を想定して設定されており、ある一定の有限な範囲に限定されている。
【0026】
通常、ホワイトバランスの補正可能な色温度範囲として、高色温度側は、太陽光の色温度付近に設定され、低色温度側は、白熱電球の色温度付近に設定されている。
【0027】
このように、ホワイトバランス補正で制御可能な色温度範囲を設定することにより、例えば、ろうそくや暖炉の炎のように低い色温度による光源で照らされた被写体を撮影した場合には、光源の赤みが残された画像になり、温かみのある画像を得ることができる。
【0028】
一方、日陰のように高い色温度による光源の元での被写体を撮影した場合には、光源の青みが残された画像になり、清涼感のある画像を得ることができる。
【0029】
更に、ホワイトバランス補正で制御可能な色温度範囲を所定の有限な範囲以内に定めることにより、以下の効果がある。即ち、特定の有彩色の影響を受け、カラーフェイリアと呼ばれるホワイトバランス誤補正が生じた場合でも、ホワイトバランス補正された画像の色味が極端にずれてしまう事態を防ぐ効果もある。
【0030】
また、時間的に連続した動画を撮影するビデオカメラに代表される画像処理装置では、急激なホワイトバランス補正によりシーンの途中で色味が変化しないように、単位時間当たりの補正量も制限されており、時間的に緩やかな補正が行われている。
【0031】
上記のようなホワイトバランス補正機能を持ち、肌色を含む領域を検出する場合の問題点について説明する。
【0032】
図17は被写体を示す図であり、白い衣服を着た人物の例である。図中1701、1702はそれぞれ肌色部である人物の顔部と白色の衣服部を示す。
【0033】
図18は、図17に示す被写体が撮影された場合の画像信号における色差信号のレベルを示したベクトル図である。
【0034】
ホワイトバランス補正がされた状態では、被写体の衣服部1702は白色なので、図18中、P1802に示す点となる。
【0035】
また、被写体の顔部1701は肌色であるので、図18中、P1801に示す点となる。尚、図18中、破線A1801は、肌色と判定するための色差信号の閾値を示しており、破線A1801で囲まれた内側の領域内に色差信号が存在すれば肌色と判定される。以降、この領域を肌色判定領域A1801と記す。
【0036】
画像の色差信号が図18に示した状態の時、人物の顔部1701であるP1801は肌色判定領域A1801の内側に入っているため肌色と判定される。
【0037】
また、衣服部1702であるP1802は肌色判定領域A1801の内側に入っていないため肌色とは判定されない。
【0038】
肌色を含む領域に多くの符号量を割り当てる従来の方式では、このような通常のホワイトバランス補正がなされた状態においては、図17の顔部1701は肌色と判定されるため、それ以外の領域に比べ相対的に多くの符号量が割り当てられるようになる。
【0039】
また、図17の衣服部1702は肌色と判定されないので、相対的に少ない符号量が割り当てられ、全体の符号量を保ちながら肌色を含む領域の画質を向上させることができる。
【0040】
しかしながら、色温度が通常のホワイトバランス制御範囲よりも低色温度側であったり高色温度側であったりするような場合には次に示す問題が生じる。
【0041】
図19は、低色温度の光源の元で図17に示す人物を撮影した場合の色差信号のレベルを示したベクトル図である。
【0042】
例えば、ろうそくや暖炉の炎のように、通常のホワイトバランス制御範囲よりも低い色温度による光源で照らされた場合、即ち、ホワイトバランスが低色温度側で動作している場合には、ホワイトバランス補正がなされても画像の赤みが残ってしまうことがある。
【0043】
その場合、被写体の衣服部1702は、図19中、P1902に示す点となる。また、被写体の顔部1701は、図19中、P1901に示す点となる。尚、図19中のA1901は、図18中のA1801と同じ肌色判定領域である。
【0044】
図19に示した状態では、人物の顔部であるP1901、衣服部P1902共に肌色判定領域A1901の内側に入っているため肌色と判定されてしまう。その結果、顔部1701と衣服部1702の両方に対して多くの符号量を割り当てようと動作してしまう。
【0045】
しかしながら、顔部1701以外に衣服部1702にも多くの符号量を割り当ててしまと、相対的に顔部1701のみに多くの符号量を割り当てることができなくなり、顔部1701の画質を向上させることができなくなるという問題がある。
【0046】
また、光源が低色温度の場合には、本来の人物の肌でなくとも他の被写体も肌色に類似した赤みのある色になりやすい傾向がある。その場合、肌色判定領域に対してフィルタ処理を行うと、肌色に類似した他の被写体に対しもフィルタ処理を施してしまうので人物の肌色部以外の画質も変化してしまうという問題があった。
【0047】
図20は、高色温度の光源の元で図17に示す人物を撮影した場合の画像信号の色差レベルを示したベクトル図である。
【0048】
例えば、日陰のように高い色温度による光源で照らされた場合、即ち、ホワイトバランスが高色温度側で動作している場合には画像の青みが残ってしまうことがある。
【0049】
その場合、被写体の衣服部1702は、図20中、P2002に示す点となる。また、被写体の顔部1701は、図20中P2001に示す点となる。尚、図20中、A2001は、図18中、A1801と同じ肌色判定領域である。
【0050】
この場合、人物の顔部であるP2001、衣服部P2002共に肌色判定領域A2001の内側に入っていないため肌色とは判定されない。その結果、顔部1701に対して多くの符号量を割り当てようとする動作は行わないため、顔部1701の画質を向上させることができなくなるという問題がある。
【0051】
この問題は、前述したような色温度が極端に低い場合や高い場合以外でも生じる場合がある。
【0052】
ホワイトバランス補正の動作説明でも述べたように、ホワイトバランスの補正は時間的に緩やかに変化するように制御されている。そのため、屋内から屋外にカメラが移動する等して光源の色温度が急激に変化した場合、ホワイトバランス補正が追従できない場合がある。
【0053】
例えば、色温度の低い屋内で、図17の被写体を撮影し、ホワイトバランスが図18に示すように正しく補正されている状態で、被写体が色温度の高い屋外に移動したとする。
【0054】
その場合、光源の色温度が急激に高く変化するため、色差ベクトルは一時的に図20に示す状態となる。
【0055】
その後、ホワイトバランスが屋外の色温度に追従して、図18のように正しく補正されるまでの間、肌色が本来よりも青側にずれてしまうので、人物の顔が正しく肌色と判定されない。
【0056】
同様に、色温度の高い屋外から色温度の低い屋内に移動した場合、色差ベクトルは一時的に図19のような状態となる。
【0057】
その後、ホワイトバランスが屋外の色温度に追従して、図18のように正しく補正されるまでの間は、肌色以外の衣服も肌色と誤判定されてしまう。
【0058】
このように、光源の色温度が急激に変化した場合にも、従来例では、顔部が正しく検出されず、顔部即ち肌色部に対してのみ多くの符号量を割り当てる動作が行われないという問題があった。
【0059】
本発明の目的は、光源の色温度が変化しても肌色を含む領域の画質をより安定的に向上させることが可能となる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0060】
上記目的を達成するために、請求項1記載の画像処理装置は、画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、画像データを符号化する符号化部と、撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記色検出部における所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合、前記撮影画像の後の撮影において、前記色検出部における肌色を検出する際の閾値を彩度が高い方向に変化させることを特徴とする。
【0061】
請求項4記載の画像処理装置は、入力された画像データから所定色を含む領域を検出する色検出部と、画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報を検出するホワイトバランス検出手段と、検出された前記ホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記色検出部における前記所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合、前記撮影画像の後の撮影において、前記色検出部における肌色を検出する際の閾値を彩度が高い方向に変化させることを特徴とする。
【0062】
請求項6記載の画像処理装置は、画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、画像データを符号化する符号化部と、撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記符号化部における前記所定色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を変化させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合には、前記撮影画像の後の撮影において、高色温度側である場合に比べ前記符号化部における肌色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を少なくすることを特徴とする。
【0063】
請求項8記載の画像処理装置は、画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、画像データを符号化する符号化部と、撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記フィルタ処理部における前記所定色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の種類及び強度を変化させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側の場合には、前記撮影画像の後の撮影において、高色温度側である場合に比べ前記フィルタ処理部における肌色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の強度を弱くすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0064】
本発明の画像処理装置によれば、光源の色温度変化しても肌色を含む領域の画質をより安定的に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、本発明のビデオカメラに代表される画像処理装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1におけるホワイトバランス動作モード選択部で、オートモード(オートホワイトバランスモード)が選択されている例を示す図である。
【図3】図1の画像処理装置におけるホワイトバランス制御データと色温度の関係を示す図である。
【図4】図1の画像処理装置における色温度変化と肌色判定領域の関係を示す色差ベクトル図である。
【図5】図1の画像処理装置における色温度変化と肌色判定領域と白色部、肌色部の関係を示す色差ベクトル図である。
【図6】図1の画像処理装置によって実行されるフィルタ処理及び量子化処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】図1の画像処理装置における色温度変化と量子化補正係数の関係を示す図である。
【図8】図1の画像処理装置におけるホワイトバランス動作モードと肌色判定領域の関係を示す色差ベクトル図である。
【図9】図1の画像処理装置におけるホワイトバランス制御データの現在値と目標制御値を示す図である。
【図10】図1の画像処理装置における目標制御値と肌色判定領域の関係を示す色差ベクトル図である。
【図11】本発明のビデオカメラに代表される画像処理装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【図12】図11における記録媒体上の画像データとメタデータを示す図である。
【図13】図11におけるホワイトバランス検出部でのホワイトバランス検出処理の手順を示すフローチャートである。
【図14】図11におけるフィルタ部のフィルタ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図15】従来例(特許文献1)に係る画像処理装置のブロック図である。
【図16】図15の量子化部における符号量制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図17】は被写体を示す図である。
【図18】図17に示す被写体が撮影された場合の画像信号における色差信号のレベルを示すベクトル図である。
【図19】低色温度の光源の元で図17に示す人物を撮影した場合の色差信号のレベルを示すベクトル図である。
【図20】高色温度の光源の元で図17に示す人物を撮影した場合の画像信号の色差レベルを示すベクトル図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0067】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明のビデオカメラに代表される画像処理装置の第1の構成例を示すブロック図である。
【0068】
図1において、撮像部101は、レンズや撮像素子を含み映像を撮影(撮像)する。画像信号処理部102は、ガンマ変換、色空間変換、ホワイトバランス処理、ラスタ−ブロック変換等一連の画像信号処理を実行する。
【0069】
肌色検出処理部(色検出部)103は、一連の画像処理が施された画像に対して撮影対象としての重要度が一般的に高い人物の、特に顔面部を検出する。フィルタ部(フィルタ処理部)104は、撮影された画像データの任意の領域に対して選択的にその高周波成分強度を減衰させる。
【0070】
動き補償予測部105は、予測対象画像ブロックと最も一致する参照画像ブロックを予測し、動きベクトルを生成する。直交変換部106は、離散コサイン変換等の直交変換を行う。量子化部107は、直交変換係数を量子化行列等で除算し、情報量を削減する。
【0071】
エントロピー符号化部108は、ハフマン符号等で可変長符号化することにより更に情報量を削減する。バッファ部109は、変動する単位時間当たりに発生する符号量を時間軸上で平滑化する。
【0072】
記録部110は、磁気テープやメモリカード等の記録媒体へ符号化データを記録する。逆量子化部111は、参照画像を再構成するために、量子化部107により量子化された直交変換係数を逆量子化する。
【0073】
逆直交変換部112は、逆量子化部111により生成された逆量子化後の直交変換係数を逆直交変換する。ホワイトバランス動作モード選択部113は、撮影者により操作されたホワイトバランス動作モードを選択(設定)する。
【0074】
制御部(制御手段)114は、本ビデオカメラを統括的に制御する。即ち、制御部114は、バッファ部109の占有率を監視し符号化データ量を保つ制御、後述する肌色検出処理における閾値制御、フィルタ部104の強度制御等を行う。
【0075】
制御部114は、画像撮影時のホワイトバランス制御状態及び色温度情報に応じて、肌色検出処理部103における所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる。または、制御部114は、エントロピー符号化部108における所定色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を変化させる。または、制御部114は、フィルタ部104における所定色が検出された領域に対して施すフィルタ処理の種類及び強度を変化させる。
【0076】
また、制御部114は、ホワイトバランス制御状態が所定の値に固定されている場合と自動追尾状態である場合とで肌色検出処理部103部における肌色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる。
【0077】
また、制御部114は、ホワイトバランス制御における現在の補正量と最終補正量とを求め、補正量と最終補正量との差に応じて肌色検出処理部103における所定色を検出する際の輝度信号や色信号の閾値を変化させる。
【0078】
上記構成を有する画像処理装置において、本発明の特徴的な動作について説明する。
【0079】
撮像部101より入力された画像データは、画像信号処理部102においてガンマ変換、色空間変換、ホワイトバランス処理、ラスタ−ブロック変換等一連の画像信号処理が施される。
【0080】
尚、ここでのホワイトバランス処理は、ホワイトバランス動作モード選択部113で設定された動作モードに応じて動作する。
【0081】
図2は、図1におけるホワイトバランス動作モード選択部で、オートモード(オートホワイトバランスモード)が選択されている例を示す図である。
【0082】
図2に示すように、設定可能なホワイトバランスの動作モードとしては、光源の色温度変化に対して自動てきに追尾して調整する所謂オートホワイトバランスモードがある。また、白紙等を撮影して任意の光源の色温度に調整するホワイトバランスセットモード、太陽光や蛍光灯等、予めいくつかの光源の色温度に合わせたホワイトバランス調整値に設定可能なプリセットモード等がある。
【0083】
このように選択されたホワイトバランスの動作モード、及び画像信号処理部102におけるホワイトバランスの動作状態、色温度情報は制御部114に出力される。
【0084】
次に、一連の画像処理が施された画像に対して、肌色検出処理部103は、撮影対象としての重要度が一般的に高い人物を検出する目的で肌色検出処理を行う。
【0085】
ここで、本実施の形態におけるホワイトバランスの制御状態と肌色検出処理部103、制御部114の動作について、図3、図4、図5を用いて説明する。
【0086】
図3は、図1の画像処理装置における色温度とホワイトバランスの制御データの関係を示す図である。
【0087】
図3の実線で示す特性は、色温度の変化に伴うホワイトバランス制御データR_Gain,B_Gainの制御特性であり、R_Gainは画像信号中の赤成分のゲインを調整するデータであり、B_Gainは画像信号中の青成分のゲインを調整するデータである。
【0088】
図3に示すように、R_Gain,B_Gainは、色温度が低色温度から高色温度に変化するのに伴い、それぞれRG1→RG4、BG1→BG4と変化する。
【0089】
制御部114は、R_gainがRG2以下、もしくは/かつB_gainがBG2以上である場合には、ホワイトバランス制御状態が低色温度側であると判定する。また、R_gainがRG3以上、もしくは/かつB_gainがBG3以下である場合には、ホワイトバランス制御状態が高色温度側であると判定する。制御部114は、ホワイトバランス制御状態が高色温度側でも低色温度側でもない場合には通常範囲と判定する。
【0090】
図4(a)〜(c)は、図1における制御部が判定した色温度と肌色検出処理部による肌色判定領域との関係を示す図である。
【0091】
図4(a)の破線内の領域A401aは、色温度が低色温度側と判定された場合の肌色判定領域である。
【0092】
図4(b)の破線内の領域A401bは色温度が通常範囲と判定された場合の肌色判定領域である。
【0093】
図4(c)の破線内の領域A401cは、色温度が高色温度側と判定された場合の肌色判定領域である。
【0094】
このように、図4(b)の通常範囲と判定された場合の肌色判定領域401bに比べ、低色温度側と判定された場合の肌色判定領域A401aは、図4(a)に示すように彩度が高い方向にシフトする。
【0095】
また、高色温度側と判定された場合の肌色判定領域A401cは、図4(c)に示すように彩度が低い方向にシフトする。
【0096】
このように、本実施の形態の肌色検出処理部103は、ホワイトバランスの制御状態に応じて肌色判定領域を変化させる動作を行う。
【0097】
ここで、本実施の形態における色温度が低い場合と高い場合の肌色検出の動作について図5を用いて説明する。
【0098】
図5(a)は、低色温度の光源において図17に示す人物を撮影した場合の画像信号の色差レベルを示したベクトル図である。
【0099】
前述したように、例えば、ろうそくや暖炉の炎のように低い色温度による光源で被写体が照らされた場合、即ち、ホワイトバランスが低色温度側で動作している場合には、ホワイトバランス補正がなされても画像の赤みが残ってしまうことがある。
【0100】
その場合、被写体の衣服部1702(図17)は、図5中、P502aに示す点となる。また、被写体の顔部1701(図17)は、図5中、P501aに示す点となる。
【0101】
しかし、本実施の形態での肌色判定領域は、A501aに示すように、彩度が高い方向にシフトするため、顔部の色差信号P501aのみが肌色判定領域A501a内に入り、衣服部の色差信号P502aは肌色と判定されることはない。
【0102】
また、図5(c)は、高色温度の光源において図17に示す人物を撮影した場合の画像信号の色差レベルを示したベクトル図である。
【0103】
前述したように、例えば、日陰のように高い色温度による光源で被写体が照らされた場合、即ち、ホワイトバランスが高色温度側で動作している場合には、ホワイトバランス補正がなされても画像の青みが残ってしまうことがある。
【0104】
その場合、被写体の衣服部1702は、図5(c)中、P502cに示す点となる。
【0105】
また、被写体の顔部1701は、図5(c)中、P501cに示す点となるが、本実施の形態の肌色判定領域は、A501cに示すように彩度が低い方向にシフトするため、人物の顔部であるP501cを肌色と判定することができる。
【0106】
尚、ホワイトバランス制御状態が図5(b)に示す通常範囲である場合には、従来例と同様に、人物の顔部であるP501bのみを肌色と判定することができる。衣服部1702であるP502bは、肌色と判定されない。
【0107】
このように、様々な色温度状態に適応して肌色と判定するための色差信号の閾値を変化させることにより、光源の色温度によらず安定的に肌色を検出することが可能となる。
【0108】
図6は、図1の画像処理装置によって実行されるフィルタ処理及び量子化処理の手順を示すフローチャートである。
【0109】
本処理は、図1における制御部114の制御の下に実行される。
【0110】
図6において、処理が開始されると、まず、ステップS601にて画像全体の目標符号量を元に、基本となる量子化ステップQを算出する。次に、ステップS602にてホワイトバランス制御状態から色温度判定を行う。
【0111】
ステップS602は、ホワイトバランス制御状態から色温度を判定する判定手段として機能する。色温度判定は、図3で示したように、ホワイトバランス制御データR_Gain,B_Gainの値により行う。次にステップS603にて低色温度側か否かを判定する。
【0112】
ステップS603にて低色温度側と判定された場合には、ステップS604にて量子化ステップQに補正係数K1を乗じ、補正量子化ステップQ’を算出し、ステップS605にてフィルタ強度を弱に設定する。
【0113】
ステップS603にて低色温度側と判定されない場合には、ステップS606にて高色温度側か否かを判定する。ステップS606にて高色温度側と判定された場合には、ステップS607にて量子化ステップQに補正係数K3を乗じた補正量子化ステップQ’を算出し、ステップS608にてフィルタ強度を強に設定する。
【0114】
ステップS606にて高色温度側と判定されない場合には、通常色温度とみなし、ステップS609にて量子化ステップQに補正係数K2を乗じた補正量子化ステップQ’を算出し、ステップS610にてフィルタ強度を中に設定する。
【0115】
ステップS604、S607、S609は、判定手段の判定結果に基づき画像全体の目標符号量を元に算出された量子化ステップを補正する補正手段として機能する。
【0116】
ステップS605、S608、S610は、補正手段の補正結果に基づきフィルタ強度を設定する設定手段として機能する。
【0117】
尚、前述の係数K1、K2、K3の値は数式1に示す関係とする。
【0118】
[数1]
K3 < K2 < K1 < 1.0
数式1で示すK1〜K3の各係数値を与えることにより、補正量子化ステップQ’は基本となる量子化ステップQよりも小さくなる。かつ色温度が高くなるに伴い、補正量子化ステップQ’はより小さく設定される。
【0119】
また、フィルタ強度も色温度が高くなるに伴い強く設定される。尚、本実施の形態では、フィルタ強度が強くなるにつれて画像信号中の高周波成分をより低減させる動作を行う。
【0120】
次に、ステップS611では前述の処理で設定されたフィルタ強度を用いて肌色を含むと判定された領域に対してフィルタ処理を行う。
【0121】
ステップS611は、設定手段で設定されたフィルタ強度で肌色判定領域をフィルタ処理するフィルタ処理手段として機能する。
【0122】
次に、ステップS612では前述の処理で設定された補正量子化ステップQ’を用いて肌色を含むと判定された領域に対して量子化処理を行う。
【0123】
ステップS612は、補正された量子化ステップで肌色判定領域を量子化する量子化処理手段として機能する。
【0124】
尚、図6には示していないが、肌色判定領域以外の部分に関しては基本の量子化ステップQを用いて量子化を行う。
【0125】
その後、エントロピー符号化部108により一連の符号化処理を施された後、符号化データはバッファ部109に一時蓄えられ、最終的に記録部110により磁気テープやメモリカード等の記録媒体へ記録される。
【0126】
このように、本実施の形態では、光源の色温度情報やホワイトバランス制御状態に応じて、肌色を検出する際の輝度信号や色信号の閾値、肌色判定領域に対して行うフィルタ強度及び量子化ステップを適時変更させることが可能な構成となっている。
【0127】
その結果、一般的に撮影対象としての重要度が高い人物の特に顔面部が、肌色検出処理により色温度変化の影響を受けることなく精度良く安定的に認識することができる。
【0128】
また、色温度に応じて逆直交変換部112は、顔面部に該当する画像ブロックの量子化に際して量子化ステップ値を小さくすることにより、情報量を増加させることが可能となる。
【0129】
また、肌色判定領域には色温度に対応したフィルタ処理が行われるので、色温度が低い場合に、人物以外の被写体がフィルタ処理によって画質が変化してしまうことを低減することができる。
【0130】
これらの結果として、安定的に肌色を含む領域の画質を向上させることが可能になる。
【0131】
尚、本実施の形態では、色温度に応じて3つのレベルで肌色検出のための閾値、量子化ステップ、及びフィルタ強度を変化させる構成としたが特に3つのレベルでなくても良い。
【0132】
例えば、図7の実線で示すように、光源の色温度の変化に対応して変化するホワイトバランス制御データであるR_Gainに応じて連続的に量子化補正係数を変化させることで、肌色判定領域に対する量子化ステップも連続的に変化させる構成にしても良い。
【0133】
また、色温度に応じて肌色判定領域を決める色差信号や輝度信号の閾値レベル、及びフィルタ強度も連続的に変化させても良いことはいうまでもない。
【0134】
また、本実施の形態では量子化ステップを変化させることが可能な符号化方式例に説明したが、量子化ステップが変更できない符号化方式の場合にはフィルタ強度のみを変化させる構成にしても良い。
【0135】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。尚、第2の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0136】
本実施の形態の特徴は、ホワイトバランスの制御状態、特にホワイトバランスの動作モードによって肌色判定領域を変更する点にある。
【0137】
図2で説明したように、設定可能なホワイトバランスの動作モードとしては、光源の色温度変化に対して自動的に追尾して調整する所謂オートホワイトバランスモードがある。また、白紙等を撮影して任意の光源の色温度に調整するホワイトバランスセットモード、太陽光や蛍光灯等予めいくつかの光源の色温度に合わせたホワイトバランス調整値に設定可能なプリセットモード等がある。
【0138】
ホワイトバランスセットモードでは、一旦白紙等無色の被写体を撮影してホワイトバランスを調整するため、オートホワイトバランスモードの場合と比べて正確にホワイトバランスが補正できる。また、太陽光や蛍光灯等のプリセットモードを使用する場合も、撮影者は光源の色温度状態を事前に把握した上で用いるため、比較的正しくホワイトバランス補正を行うことができる。
【0139】
それに対して、一般的にオートホワイトバランスモードでは、被写体の色の影響を受けやすく、人物を撮影した場合には僅かではあるが肌色の彩度が低下する場合がある。
【0140】
本実施の形態は、このようなオートホワイトバランスモードとそれ以外のモードにおける肌色の彩度の差に対応するためのものである。
【0141】
図8は、本実施の形態におけるホワイトバランス動作モードと肌色判定領域の変化を示す図である。
【0142】
図8(a)のA801aは、ホワイトバランスの動作モードがセットモードまたはプリセットモードの場合の肌色判定領域を示す。また図8(a)中、P801a、P802aは、図17に示す人物を撮影した場の顔部1701及び衣服部1702に対応する点である。
【0143】
図8(a)に示すように、ホワイトバランス動作モードがセットモードやプリセットモードの場合は、撮影者が光源の色温度に合わせて正しくホワイトバランス調整するため、正確に衣服部1702の白に相当するP802aがベクトル図の中心に合っている。
【0144】
本実施の形態では、このような場合には肌色判定領域A801aを変化させずに固定の領域とする。
【0145】
一方、図8(b)中、P801b、P802bは、ホワイトバランス動作モードがオートモードで、図17に示す人物を撮影した場の顔部1701及び衣服部1702に対応する点である。
【0146】
図8(b)に示すように、ホワイトバランス動作モードがオートモード場合、僅かにホワイトバランスが誤補正され、被写体の衣服部1702の白に相当する点P802bがベクトル図の中心から青方向に少しずれる。そして、それに伴い、顔部1701に相当する点P801bの彩度も低下する場合がある。
【0147】
本実施の形態では、ホワイトバランス動作モードがオートモードの場合に、図8(b)に示すように、肌色判定領域A801bを少し低彩度側にシフトさせる処理を行うことで、ホワイトバランスの動作モードに関係なく、正しく肌色を検出することが可能となる。
【0148】
結果として、第1の実施の形態と同様に、一般的に撮影対象としての重要度が高い人物の特に顔面部を、肌色検出処理により色温度変化の影響を受けることなく精度良く安定的に認識することができる。
【0149】
また、色温度に応じて逆直交変換部112は、顔面部に該当する画像ブロックの量子化に際して量子化ステップ値を小さくし、情報量を増加させることが可能となる。また、肌色判定領域には色温度に応じたフィルタ処理も行われるので、結果的に、肌色検出処理部103において肌色と検出された領域に対する符号量を、それ以外の領域と比べて相対的に増加するように量子化部107を制御することが可能となる。その結果、安定的に肌色を含む領域の画質を向上させることが可能になる。
【0150】
(第3の実施の形態)
以下、本発明の第3の実施の形態について説明する。尚、第3の実施の形態における画像処理装置の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0151】
本実施の形態は、第1の実施の形態の構成及び動作に加えてホワイトバランスがオートモードで動作している場合に、光源の色温度が急激に変化した場合にも適切に対応可能とするものである。
【0152】
また、本実施の形態の特徴は、ホワイトバランス制御データの目標補正量と現在の補正値との差に対応して肌色判定領域を変化させる点にある。
【0153】
図9、及び図10を用いて第3の実施の形態について詳しく説明する。
【0154】
ここで、光源の色温度が高く、ホワイトバランス制御データは、図9におけるTSの値を出力してホワイトバランス補正されているとする。
【0155】
その場合に、図17の被写体を撮影したときの顔部1701と白い衣服部1702の色差ベクトルは図10中、P_TS1、P_TS2となる。また、肌色判定領域は、図10中のA_TSとなる。
【0156】
その後、急速に光源の色温度が低く変化した場合、色差ベクトルは、それぞれ、図10中のP_TS1がP_TD1へ、P_TS2がP_TD2へずれてしまう。これは、ホワイトバランス補正が時間的にゆっくりと行われるので、急速に光源の色温度が変化した場合にホワイトバランス補正が追従できないためである。
【0157】
この場合、第1の実施の形態の構成のみでは、ホワイトバランスが追従するまでの間は肌色判定領域は、図10中のA_TSのままであるので、色温度変化後の肌色に相当するP_TD1がA_TSの領域外となり、肌色と検出されなくなってしまう恐れがある。
【0158】
そこで、本実施の形態では、ホワイトバランス制御データの現在の補正値と最終的に目標とすべき目標補正値との差に応じて肌色判定領域を変化させるようにしている。
【0159】
尚、ホワイトバランスの目標補正値は、例えば、白の衣服部等、白に相当する領域の色差信号の値が色差ベクトルの中心(色差ゼロの点)からどれくらいずれているかを算出することによって求めることができる。本実施の形態では、図10中のP_TD2の色差ベクトル中心からのずれ量によって求める。
【0160】
ここで、求められたホワイトバランス制御データの目標補正量が図9中のTDであった場合、現在の補正量TSとTDとの差に応じて、また肌色判定領域をシフトする。
【0161】
図9に示すように、TSとTDに対応するR_Gainの補正量をそれぞれRG_TS、RG_Tとすると、例えば、現在の制御値と目標とする制御値が図9に示すような場合は、数式2に示す関係が成り立つ。従って、目標とする色温度は現在の色温度よりも低いと判定することができる。
【0162】
[数2]
RG_TS > RG_TD
その場合は、肌色判定領域を低色温度側にシフトし、図10中のA_TDの位置にする。ここで、肌色判定領域をシフトする量は、RG_TSとRG_TDとの差に対応して行えば良い。
【0163】
その結果、色温度が低く変化した場合の肌色に相当するP_TD1がA_TDの領域内となり、肌色と検出することが可能となる。
【0164】
本実施の形態では、ホワイトバランス補正の追従速度を超える急激な光源の色温度変化が生じた場合でも、ホワイトバランス制御データの目標補正量と現在の補正値との差に対応して肌色判定領域を変化させるので、適切な肌色検出を行うことが可能となる。
【0165】
それにより、同様に逆直交変換部112は、顔面部に該当する画像ブロックの量子化に際して、量子化ステップ値を小さくし情報量を増加させることが可能となる。また、肌色判定領域には適時フィルタ処理が行われるので、結果的に、肌色検出処理部103において肌色と検出された領域に対する符号量を、それ以外の領域と比べて相対的に増加するように量子化部107を制御することが可能となる。
【0166】
その結果、重要度が高い人物の特に顔面部を、肌色検出処理により色温度変化の影響を受けることなく精度良く安定的に認識することができるので、安定的に肌色を含む領域の画質を向上させることが可能になる。
【0167】
(第4の実施の形態)
第1乃至第3の実施の形態では、画像を符号化する際に安定的に肌色を検出し、肌色を含む領域の画質を向上させる例について説明した。
【0168】
しかし、本発明は必ずしも画像を符号化して記録する場合にのみ効果を発揮するものではなく、画像を再生する場合にも有効である。
【0169】
図11は、本発明のビデオカメラに代表される画像処理装置の第2の構成例を示すブロック図である。
【0170】
図11を用いて画像を再生する場合の本実施の形態の動作について説明する。
【0171】
図11において、記録媒体1101は、メモリカード、ハードディスク、光ディスク等からなる。読み出し部1102は、記録媒体1101から後述する画像データ及びメタデータを読み出す。
【0172】
復号化部1103は、圧縮符号化された画像データをベースバンドの画像データに伸張する。ホワイトバランス検出部1104は、読み出された画像データやメタデータから後述するホワイトバランス情報を検出する。
【0173】
肌色検出処理部1105は、第1乃至第3の実施の形態と同様の動作を行う。フィルタ部1106も、第1乃至第3の実施の形態と同様の動作を行う。画像出力部1107は、画像を図示しないディスプレイや他の画像機器に出力する。制御部1108は、画像処理装置全体を統括的に制御する。
【0174】
上記構成を有する画像処理装置において、本実施の形態の特徴的な動作について説明する。
【0175】
図11中の記録媒体1101には、図12に示すように、圧縮符号化された画像データ1201とそれに付随するメタデータ1202が記録されている。
【0176】
メタデータ1202には、撮影時のホワイトバランス制御情報、撮影時の色温度情報等が記録されている。
【0177】
読み出し部1102により、符号化された画像データ及びメタデータが記録媒体1101から読み出される。読み出された画像データは、復号化部1103によりベースバンドの画像信号に復号化される。
【0178】
尚、本実施の形態において、圧縮符号化の方式は特にどのような種類のものであっても差し支えない。また、記録媒体1101に記録されている画像は必ずしも圧縮符号化されている必要もない。よって、本実施の形態では、復号化部1103の詳細構成及び動作については説明を省略する。
【0179】
復号化部1103によりベースバンド画像に復号された画像データは、ホワイトバランス検出手段であるホワイトバランス検出部1104に入力される。尚、ホワイトバランス検出部1104には、記録媒体1101から読み出されたメタデータも入力される。復号された画像データは、肌色検出処理部1105及びフィルタ部1106にも入力される。
【0180】
尚、フィルタ部1106は、再生時に処理されるフィルタであるため一般的にはポストフィルタと称される。
【0181】
ホワイトバランス検出部1104では、入力されたメタデータや画像データによってホワイトバランス制御状態や画像が撮影された光源の色温度を検出する。
【0182】
図13は、図11におけるホワイトバランス検出部でのホワイトバランス検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0183】
図13において、ホワイトバランス検出処理が開始されると、まず、ステップS1301にてメタデータの読み込みを行う。次に、ステップS1302にて入力されたメタデータ中に撮影時のホワイトバランス制御情報や光源の色温度情報等のホワイトバランス情報が含まれているかどうかを判定する。
【0184】
ホワイトバランス情報が含まれている場合、ステップS1303にてメタデータ含まれたホワイトバランス情報を抜き出し、ホワイトバランス検出データとして制御部1108に出力し処理を終える。
【0185】
ステップS1303にてメタデータにホワイトバランス情報が含まれていない場合やメタデータ自体が存在しない場合、ステップS1304にて画像データを読み込む処理を行う。次に、ステップS1305にて画像データから光源の色温度を推定する処理を行う。
【0186】
本実施の形態では、色温度の推定は画像の色差信号の平均値により行う。例えば、画像中の色差信号を平均した値が赤方向に偏っている場合、低色温度と判定する。また、画像中の色差信号を平均した値が青方向に偏っている場合、高色温度と判定する。
【0187】
これらの判定結果を、ステップS1306にてホワイトバランス検出データとして制御部1308に出力して、処理を終了する。
【0188】
肌色検出処理部1105では、ホワイトバランス検出部1104にて検出されたホワイトバランス検出情報、即ち、ホワイトバランス動作モードや色温度情報に応じた肌色検出動作を行う。
【0189】
尚、本実施の形態でも、ホワイトバランス動作モードや色温度情報に応じて肌色判定領域を変化させる肌色検出動作については第1乃至第3の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0190】
次にフィルタ部1106は、肌色検出処理部1105にて肌色と検出された領域に対してフィルタ処理を行う。
【0191】
図14は、図11におけるフィルタ部のフィルタ制御処理の手順を示すフローチャートである。
【0192】
尚、この処理は図11の制御部1108が行う。
【0193】
図14において、フィルタ制御処理が開始されると、まず、フステップS1401にてホワイトバランス検出部1104からの出力により色温度が低色温度側か否かを判定する。
【0194】
ステップS1401にて低色温度側と判定された場合には、ステップS1402にてフィルタ強度を弱に設定する。ステップS1401にて低色温度側と判定されない場合にはステップS1403にて高色温度側か否かを判定する。
【0195】
ステップS1403にて高色温度側と判定された場合には、ステップS1404にてフィルタ強度を強に設定する。ステップS1403にて高色温度側と判定されない場合には、通常色温度とみなし、ステップS1405にてフィルタ強度を中に設定する。
【0196】
このように、フィルタ強度は色温度が高くなるに伴い強く設定される。尚、本実施の形態では、フィルタ強度が強くなるにつれて画像信号中の高周波成分をより低減させる動作を行う。
【0197】
次に、ステップS1406にて前述の処理で設定されたフィルタ強度を用いて肌色を含むと判定された領域に対してフィルタ処理を行い、このフローを抜ける。
【0198】
尚、図14には示していないが、肌色判定領域以外の部分に関しては特にフィルタ処理は行わない。
【0199】
これらのフィルタ処理が行われた画像信号は、画像出力部1107や他の画像機器に出力される。
【0200】
このように、本実施の形態では、記録された画像データから光源の色温度情報やホワイトバランス制御状態を検出して、肌色判定領域の閾値及び肌色判定領域に対して行うフィルタ強度を適時変更させることが可能な構成となっている。
【0201】
一般的に、重要度が高い人物の特に顔面部が肌色検出処理により精度良く安定的に認識することができる。また、肌色判定領域には適時フィルタ処理が行われるので、安定的に肌色を含む領域の画質を向上させることが可能になる。
【0202】
尚、本実施の形態では、色温度に応じて3つのレベルでフィルタ強度を変化させる構成としたが特に3つのレベルでなくても良く、連続してフィルタ強度を変化させる構成にしても良い。
【0203】
また、本発明の目的は、以下の処理を実行することによって達成される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出す処理である。
【0204】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0205】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、次のものを用いることができる。例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等である。または、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしても良い。
【0206】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記実施の形態の機能が実現される場合も本発明に含まれる。加えて、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOステップS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0207】
更に、前述した実施形態の機能が以下の処理によって実現される場合も本発明に含まれる。即ち、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれる。その後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行う場合である。
【符号の説明】
【0208】
101 撮像部
102 画像信号処理部
103 肌色検出処理部
104 フィルタ部
105 動き補償予測部
106 直交変換部
107 量子化部
108 エントロピー符号化部
109 バッファ部
110 記録部
111 逆量子化部
112 逆直交変換部
113 ホワイトバランス動作モード選択部
114 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
画像データを符号化する符号化部と、
撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記色検出部における所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合、前記撮影画像の後の撮影において、前記色検出部における肌色を検出する際の閾値を彩度が高い方向に変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合には、高色温度側である場合に比べ前記符号化部における肌色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を少なくすることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側の場合には、高色温度側である場合に比べ前記フィルタ処理部における肌色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の強度を弱くすることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
入力された画像データから所定色を含む領域を検出する色検出部と、
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報を検出するホワイトバランス検出手段と、
検出された前記ホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記色検出部における前記所定色を検出する際の輝度信号及び色信号の閾値を変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合、前記撮影画像の後の撮影において、前記色検出部における肌色を検出する際の閾値を彩度が高い方向に変化させることを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側の場合には、高色温度側である場合に比べ前記フィルタ処理部における肌色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の強度を弱くすることを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
画像データを符号化する符号化部と、
撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記符号化部における前記所定色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側である場合には、前記撮影画像の後の撮影において、高色温度側である場合に比べ前記符号化部における肌色が検出された領域に割り当てる画像符号化時の符号量を少なくすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側の場合には、高色温度側である場合に比べ前記フィルタ処理部における肌色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の強度を弱くすることを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
画像中の所定色を含む領域を検出する色検出部と、
画像データに対してフィルタ処理を行うフィルタ処理部と、
画像データを符号化する符号化部と、
撮影画像から得られたホワイトバランス制御のための色温度情報に応じて、前記フィルタ処理部における前記所定色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の種類及び強度を変化させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記ホワイトバランス制御のための色温度情報が低色温度側の場合には、前記撮影画像の後の撮影において、高色温度側である場合に比べ前記フィルタ処理部における肌色が検出された領域に対して施す前記フィルタ処理の強度を弱くすることを特徴とする画像処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2012−120241(P2012−120241A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−28226(P2012−28226)
【出願日】平成24年2月13日(2012.2.13)
【分割の表示】特願2008−3568(P2008−3568)の分割
【原出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】