説明

画像処理装置

【課題】カラー原稿及び無彩色原稿の両方の画像データについて適度な裏写り除去効果を得ることができると共に,無彩色原稿の画像データの読み取り時間を短縮することのできる画像処理装置を提供すること。
【解決手段】カラー原稿である場合には,複数の色成分データで表現される複数の色ごとの頻度を示す色ヒストグラムを算出し,該色ヒストグラムに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定すると共に,該下地色の近傍の色を該下地色に略均一化させるべく色成分データ各々を変換するために用いられる濃度変換情報を生成し,画像データのうち下地色の近傍の色である画像データの色成分データ各々を濃度変換情報に基づいて変換することにより裏写りを除去する。一方,無彩色原稿である場合には,画像データに対して予め設定されたガンマ補正情報を用いて所定のガンマ補正処理を施すことにより裏写りを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,原稿から読み取られる画像データに対して各種の画像処理を施す画像処理装置に関し,特に,原稿の裏写りを除去する裏写り除去処理に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,スキャナ装置や複写機,ファクシミリ装置,複合機などに搭載される画像処理装置によって,表裏面に画像が形成された原稿の表面の画像のみを読み取る場合,その読み取られた画像に原稿の裏面の画像が写り込む所謂「裏写り」が生じることが問題となっている。そのため,例えばガンマ補正処理によって原稿の画像全体の濃度を下げることで裏写りの除去を図ることがある。
また,例えば特許文献1では,濃度及び頻度の関係を二次元で示す濃度ヒストグラムを算出して,その頻度が高いものを下地色の濃度と認識し,その下地色の濃度付近の濃度を下地色と同レベルに一律に変換することにより,裏写りを除去することが提案されている。これにより,全体の濃度変化を防止しつつ裏写りを除去することができる。
【0003】
さらに,原稿の画像をカラーで読み取る場合にも,同じく複数の色成分データごとに濃度ヒストグラムを算出し,その濃度ヒストグラムごとにおいて最も頻度の高い濃度をその下地色における濃度として特定し,裏写りを防止するように色成分データの変換を行うことも考えられる。但し,この場合には,例えばR色成分の濃度のうち下地色のR色成分の濃度付近の濃度をその下地色の濃度に合わせるように変換すると,裏写り部分ではなく原稿表面に形成された本来の画像に含まれるR色成分の濃度についても下地色に合わせて変換が行われる。そのため,原稿の本来の画像におけるR色成分が強調され或いは抑制されることとなって画像全体の色合いが変化することとなる。
そこで,複数の色成分データで表現される複数の色と頻度との関係を三次元で示す色ヒストグラム(図3参照)を用いて裏写り除去処理を実行することが考えられる。
具体的には,画像データから色ヒストグラムを算出してその色ヒストグラムに基づいて原稿の下地色を特定する下地色特定処理や,その下地色に対応して下地色の近傍の色を該下地色に略均一化させるべく色成分データ各々を変換するために用いられる濃度変換テーブルを生成する濃度変換テーブル生成処理,画像データのうち下地色の近傍の色を表現する画像データの色成分データ各々をその濃度変換テーブルに基づいて変換する濃度変換処理などを順に実行することが考えられる。これにより,下地色の近傍の色を除く色を表現する画像データについては色成分データ各々の変換が行われないため,画像全体の色再現性は損なわれない。また,前記色ヒストグラムの算出前に画像データを低解像度に変換する縮小処理を実行して色ヒストグラムの算出処理の負荷を軽減することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−187266号公報
【特許文献2】特開2004−120022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,上述の裏写り除去処理を実行する際には,画像処理装置において,前記下地色特定処理や前記濃度変換テーブル生成処理,前記濃度変換処理,前記縮小処理などの各種の画像処理を実行する必要があるが,画像処理装置の簡素化,低コスト化のためには,該画像処理装置に設けられるハードウェア(電気回路など)をできるだけ小規模にすることが望ましい。
そのため,前記下地色特定処理及び前記濃度変換テーブル生成処理をソフトウェアによって実行し,前記濃度変換処理及び前記縮小処理は,例えばガンマ補正処理やスケーリング(拡大・縮小)処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理など(以下,「通常の画像処理」という)を施すために一般的な画像処理装置に設けられている画像処理回路(ASIC)を利用して実行することが考えられる。
しかしながら,この場合には,画像データの読み取り時に,前記画像処理回路により前記縮小処理,前記濃度変換処理,前記通常の画像処理を直列的に使用することになるため,画像データの読み取りに要する時間が長くなるという問題が生じる。
一方,原稿がモノクロ原稿やグレースケール原稿などの無彩色原稿である場合は,上述の裏写り除去処理を施してもその効果がカラー原稿である場合に比べて著しく低く,該無彩色原稿については,従来のようにガンマ補正処理のみによって裏写り除去を図ることでほぼ同等の効果が得られることが実験により明らかとなった。なお,例えば特許文献2に開示されているように,原稿がカラー原稿であるかモノクロ原稿であるかを判定するACS判定処理が周知である。この特許文献2では,そのACS判定処理の結果に応じて,読み取られた画像データの変換フォーマットを変更することも提案されている。
従って,本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり,その目的とするところは,カラー原稿及び無彩色原稿の両方の画像データについて適度な裏写り除去効果を得ることができると共に,無彩色原稿の画像データの読み取り時間を短縮することのできる画像処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は,原稿の画像を複数の色成分データを含む画像データとして読み取る画像読取手段と,前記画像読取手段によって読み取られた画像データに基づいて前記原稿がカラー原稿であるか無彩色原稿であるかを判定する自動原稿色判定手段とを備えてなる画像処理装置であって,前記画像読取手段により読み取られた画像データについて前記複数の色成分データで表現される複数の色ごとの頻度を示す色ヒストグラムを算出し,該色ヒストグラムに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定すると共に,該下地色の近傍の色を該下地色に略均一化させるべく前記色成分データ各々を変換するために用いられる濃度変換情報を生成し,前記画像データのうち前記下地色の近傍の色である画像データの色成分データ各々を前記濃度変換情報に基づいて変換することにより裏写りを除去する第1の裏写り除去手段と,前記画像読取手段により読み取られた画像データに対して予め設定されたガンマ補正情報を用いて所定のガンマ補正処理を施すことにより裏写りを除去する第2の裏写り除去手段と,前記自動原稿色判定手段による判定結果がカラー原稿である場合は前記第1の裏写り除去手段により裏写りを除去し,無彩色原稿である場合は前記第2の裏写り除去手段により裏写りを除去する裏写り除去切替手段とを備えてなることを特徴とする画像処理装置として構成される。
これにより,カラー原稿については,前記第1の裏写り除去処理により十分な裏写り除去効果を得ることができ,無彩色原稿については,画像データの読み取り時間をカラー原稿に比べて短縮しつつ前記第2の裏写り除去処理による適度な裏写り除去効果を得ることができる。
ここで,前記第1の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データの色成分データ各々を所定単位ごとに平均化しつつ前記色成分データ各々の解像度を予め設定された低解像度に変換し,該変換後の色成分データ各々で表現される複数の色から前記下地色を特定するものであることが考えられる。これにより,前記第1の裏写り除去手段による前記色ヒストグラムの生成処理などの負荷が軽減される。
さらに,前記第1の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データを平滑化し,該平滑化後の画像データのうち前記下地色の近傍の色である画像データの色成分データ各々を前記濃度変換情報に基づいて変換することにより裏写りを除去するものであることが考えられる。これにより,原稿の網点部分に裏写りが生じている場合に,その網点上の裏写りを除去することが可能となる。
また,前記第2の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データについて前記複数の色成分データで表現される複数の色ごとの頻度を示す色ヒストグラムを算出し,該色ヒストグラムに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定し,該下地色に応じて前記ガンマ補正情報を設定することも考えられる。これにより,前記色ヒストグラムの算出処理や前記下地色の特定処理が必要となるが,前記無彩色原稿の画像データにおける裏写りの除去効果を高めて画像品質の向上を図ることができる。
ところで,前記第1の裏写り除去手段が,前記下地色が複数特定された場合は,該下地色ごとに対応して前記濃度変換情報を生成し,前記下地色の近傍の色である前記画像データの前記色成分データ各々を該下地色に対応する前記濃度変換情報に基づいて変換するものであることが望ましい。これにより,原稿の画像に下地色が複数存在する場合でも,その複数箇所における裏写りを防止することが可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば,カラー原稿については,前記第1の裏写り除去処理により十分な裏写り除去効果を得ることができ,無彩色原稿については,画像データの読み取り時間をカラー原稿に比べて短縮しつつ前記第2の裏写り除去処理による適度な裏写り除去効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される画像読取処理の手順の一例を説明するためのフローチャート。
【図3】色ヒストグラムの一例を説明するための図。
【図4】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される画像読取処理で生成される濃度変換テーブルの一例を説明するための図。
【図5】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される画像読取処理で生成される濃度変換テーブルの一例を説明するための図。
【図6】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される画像読取処理における画像データの流れ(カラー原稿)を説明するための図。
【図7】本発明の実施の形態に係る複合機Xで実行される画像読取処理における画像データの流れ(無彩色原稿)を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る複合機Xの概略構成について説明する。
図1に示すように,前記複合機Xは,制御部1,操作表示部2,画像読取部3,画像処理部4,DRAM5,画像形成部6などを備えて概略構成されている。なお,複写機,スキャナ装置,ファクシミリ装置なども本発明に係る画像処理装置に該当する。
前記制御部1は,CPU及びROM,RAM等の周辺装置を有しており,前記CPUで前記ROMに格納された所定の制御プログラムに従った処理を実行することにより,当該複合機Xを統括的に制御するメイン制御部である。なお,前記制御部1は,前記DRAM5の作業領域の割り当て制御(メモリハンドリング)や前記DRAM5のデータの入出力処理なども実行する。例えば,前記制御部1は,不図示のDMAコントローラに制御指示を与えることによって,前記DRAM5にデータを記憶させ,或いは該DRAM5からデータを読み出す。
前記操作表示部2は,当該複合機Xにおける各種の情報の表示や,ユーザによる入力操作を行うための液晶ディスプレイ,タッチパネル,各種操作キーなどを有している。
【0010】
前記画像読取部3は,原稿台(不図示)に載置された原稿或いは自動原稿送り装置(ADF,不図示)により搬送された原稿の画像を読み取るCCD等を有する画像読取手段である。ここに,前記画像読取部3は,前記原稿の画像をR(赤),G(緑),B(青)の3色の色成分データ(以下,R色成分データ,G色成分データ,B色成分データという)を含む画像データとして読み取るものである。特に,前記画像読取部3は,原稿がカラー,無彩色(モノクロやグレースケールなど)のいずれである場合でも,その画像をR,G,B色成分データを含む画像データとして読み取る。
前記画像読取部3は,原稿から読み取った画像データを前記DRAM5に一時記憶する。前記DRAM5は,前記画像処理部4による各種の画像処理過程における作業領域として用いられる半導体メモリである。
また,前記画像読取部3は,原稿から読み取られた画像データに基づいて,該原稿がカラー原稿であるか無彩色原稿(グレースケール原稿やモノクロ原稿など)であるかを判定するACS(Auto Color Selection)判定機能を有している。ここに,係るACS判定機能を具現するときの前記画像読取部3が自動原稿色判定手段に相当する。なお,前記ACS判定機能については従来周知であるため,詳細な説明は省略するが,例えば画像データに含まれたカラー画素の数を計数し,カラー画素が所定数(所定割合)以上に達した場合に,原稿がカラー原稿であると判定することが考えられる。
【0011】
前記画像処理部4は,前記画像読取部3によって読み取られた画像データに対して,後述の裏写り除去処理やガンマ補正処理,スケーリング処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理などの各種の画像処理を施すものである。具体的に,前記画像処理部4は,前記各種の画像処理機能を具現するために構成された一つの集積回路(ASIC)である。このように,前記複合機Xでは,一つの前記画像処理部4を用いて各種の画像処理が実行されるため構成が簡素化されており,低コストが実現される。但し,前記画像処理部4で同時に実行可能な処理は制限されるため,一連の画像読取処理において前記画像処理部4を直列的に用いる回数が多いほど,該画像読取処理に要する時間が長くなる。
なお,前記複合機Xにおいてスキャン処理が実行される場合,前記画像処理部4は,前記画像処理後の画像データをハードディスク等の記憶手段に記憶し,或いはLAN等のネットワークを介して所定の情報処理装置などに送信する。
また,前記複合機Xにおいて複写処理が実行される場合,前記画像処理部4は,前記画像処理後の画像データを前記画像形成部6に入力する。前記画像形成部6は,CMYKの各色に対応する感光体ドラムや現像装置などの周知の電子写真方式の画像形成部の構成要素を備えており,給紙カセットから供給された用紙に対し,前記画像処理部4による画像処理後の画像データ(色成分データ各々)に基づいてカラー画像や無彩色画像(モノクロ画像,グレースケール画像など)を形成する。
【0012】
そして,前記複合機Xは,前記制御部1が後述の画像読取処理(図2参照)を実行することにより,前記画像読取部3で原稿から読み取られる画像データに対してその原稿の色種別に応じて適切な裏写り除去処理が施される点に特徴を有している。このように,原稿の色種別に応じて裏写り除去処理の内容を切り替えるときの前記制御部1が裏写り除去切替手段に相当する。
以下,図2のフローチャートに従って,前記複合機Xで実行される画像読取処理の手順の一例について説明する。なお,図中のS1,S2,…は処理手順(ステップ)の番号を表している。ここに,当該画像読処理は,前記操作表示部2に対するユーザ操作などによって画像読取開始の要求がなされた後,1ページの原稿から画像データが読み取られる毎に実行される。
【0013】
(ステップS1,S9,S10)
まず,ステップS1において,前記制御部1は,予め前記操作表示部2のユーザ操作などによって,無彩色原稿として画像を読み取る無彩色モードに設定されているか否かを判断する。
ここで,前記無彩色モードに設定されていると判断された場合(S1のYes側),処理はステップS9に移行する。そして,前記ステップS9において,前記制御部1は,裏写りを除去するために予め設定された裏写り除去用のガンマ補正情報(ガンマテーブルやガンマ曲線など)を用いる旨の制御指示を前記画像処理部4に与える。
これにより,前記画像処理部4では,前記制御部1からの制御指示に応じて前記裏写り除去用のガンマ補正情報が選択される。ここに,前記裏写り除去用のガンマ補正情報は,例えば原稿の画像全体の濃度を下げることにより裏写りを除去するように,或いは原稿における所定の濃度レベルの部分のみについて該濃度レベルを下げることにより裏写りを除去するように予め設定されたものである。
具体的には,前記画像処理部4の内部メモリに通常時に用いるガンマ補正情報と前記裏写り除去用のガンマ補正情報とが予め記憶されており,該画像処理部4が前記制御部1からの制御指示に応じていずれか一方のガンマ補正情報を選択する構成が考えられる。もちろん,前記制御部1から前記画像処理部4に対していずれか一方のガンマ補正情報を入力してもよい。
そして,続くステップS10では,前記制御部1が前記画像処理部4を制御することにより,該画像処理部4によってガンマ補正処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理などの通常の画像処理を実行させる。このとき,前記ガンマ補正処理では,前記ステップS9で選択された前記裏写り除去用のガンマ補正情報が用いられるため,前記画像読取部3で読み取られた無彩色原稿の画像データにおける裏写りが除去される。ここに,係る手法(ステップS9〜S10)により裏写りを除去するための処理を実行する前記制御部1が第2の裏写り除去手段に相当する。
【0014】
ここに,図6は,無彩色原稿である場合の当該画像読取処理における画像データの流れを示している。
図6に示すように,無彩色原稿である場合には,前記画像読取部3で読み取られた1ページ分の画像データが前記DRAM5に記憶された後,該画像データは,前記画像処理部4に入力されて通常の画像処理(S10)が施され,前記画像形成部6に出力される。
従って,前記複合機Xでは,読み取り原稿が無彩色原稿である場合,前記画像処理部4により前記通常の画像処理のみを実行しているため,無彩色原稿についてもカラー原稿である場合と同様に後述の縮小処理(S4)や濃度変換処理(S5〜S8),通常の画像処理(S10)を前記画像処理部4で直列的に実行する場合に比べて画像データの読み取りに要する時間が短縮される。しかも,前述したように原稿が無彩色原稿である場合には,ガンマ補正処理を利用した裏写り除去処理により適度に裏写り除去効果を得ることができる。
このように,前記複合機Xでは,無彩色原稿である場合にはカラー原稿と同様の裏写り除去処理を実行してもその効果が低いことに鑑みて,無彩色原稿である場合には,適度に効果が得られる裏写り除去処理を採用することで処理時間短縮を優先させている。
【0015】
(ステップS2)
一方,前記無彩色モードに設定されておらず,カラー原稿として画像を読み取るカラーモードや,原稿がカラー原稿であるか無彩色原稿であるかを自動的に判定するACS判定モードなどに設定されている場合(S1のNo側),処理はステップS2に移行し,前記制御部1は前記画像読取部3にACS判定処理を実行させる。
このように,前記複合機Xでは,前記ACS判定モードに設定されている場合だけでなく,前記カラーモードに設定されている場合にも前記画像読取部3によるACS判定処理が実行される。もちろん,前記ACS判定モードに設定されている場合にのみ,前記画像読取部3によるACS判定処理が実行されることも他の実施例として考えられる。
【0016】
(ステップS3)
そして,ステップS3において,前記制御部1は,前記画像読取部3によるACS判定結果がカラー原稿であるか否かを判断する。ここで,ACS判定結果がカラー原稿であると判断された場合(S3のYes側),処理はステップS4に移行し,カラー原稿でないと判断された場合(S3のNo側),処理は前記ステップS9に移行する。即ち,例えばユーザが意図的にカラーモードを選択している場合であっても,前記ACS判定処理によって無彩色原稿であると判定された場合には,前記ステップS9に移行して前記ガンマ補正処理による原稿の裏写り除去が行われることとなる。
【0017】
(ステップS4)
他方,前記画像読取部3によるACS判定結果がカラー原稿である場合(S3のYes側),前記制御部1は,続くステップS4〜S8を順に実行することにより,前記画像読取部3で読み取られた画像データにおける原稿の裏写りを除去する。ここに,係る手法(ステップS4〜S8)により裏写りを除去するための処理を実行する前記制御部1が第1の裏写り除去手段に相当する。以下,ステップS4〜S8の処理について詳説する。
まず,ステップS4において,前記制御部1は,前記画像処理部4により前記画像読取部3で読み取られた画像データのR,G,B色成分データ各々の解像度を予め設定された低解像度に変換させて画像データを縮小する縮小処理を実行させる。これにより,前記画像データが縮小されるため,例えば前記制御部1によって実行される後述の下地色特定処理(S5)の処理負担を軽減することができる。
例えば,前記画像処理部4は,解像度600dpiのR,G,B色成分データを,8×8の64ドット(所定単位の一例)ごとに平均化しつつ解像度75dpi程度の低解像度のR,G,B色成分データに変換する。そして,このように低解像度に変換された後の画像データは前記DRAM5に一時記憶される。なお,当該ステップS4を省略することも他の実施例として考えられる。
【0018】
(ステップS5)
そして,ステップS5において,前記制御部1は,前記ステップS4による変換後のR,G,B色成分データに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定する下地色特定処理を実行する。
具体的に,前記制御部1は,まずR,G,B色成分データで表現される複数の色を予め定められた所定範囲の色ごとの色群に分類したときに,該R,G,B色成分データ各々で表現される全画像データに含まれる前記色群ごとの画素の頻度(数)を示す第一の色ヒストグラム(三次元ヒストグラム)を算出する。
ここに,図3は,前記第一の色ヒストグラムの一例を示している。図3に示すように,前記第一の色ヒストグラムは,画像データを構成するR,G,B色成分データ各々の濃度値を三次元に配置したとき,その三次元の濃度値(R,G,B)で示される所定範囲の色を含む色群ごとの頻度を算出したものである。具体的に,図3に示す例は,R,G,B色成分データ各々の値の組み合わせによって表現される256×256×256の16,777,216色を,16×16×16の4096個の色群に分類し,原稿の画像に含まれるその色群ごとの画素の頻度を算出したものである。この場合,前記色群各々に含まれる所定範囲の色は,(R,G,B)=(0〜15,0〜15,0〜15),(16〜31,0〜15,0〜15),(32〜47,0〜15,0〜15),…(239〜255,239〜255,239〜255)となる。
次に,前記制御部1は,前記第一の色ヒストグラムに基づいて,予め設定された所定頻度以上である下地色群を抽出する。前記所定頻度は,例えばその色が原稿の画像において裏写りが顕著となる程の面積を占めていることを判断するために予め設定されたものである。このように,前記制御部1は,最も頻度の高い色群のみを特定するものではなく,前記所定頻度以上である下地色群を抽出するものであるため,該下地色群が複数抽出される場合もある。
そして,前記制御部1は,前記下地色群ごとに,該下地色群に含まれた色ごとの頻度を示す第二の色ヒストグラムを算出する。例えば,図3に示したように,前記第一の色ヒストグラムが,R,G,B色成分データ各々の値により表現される256×256×256の16,777,216色を16×16×16の4096個の色群に分類し,その色群ごとの頻度を算出したものである場合,前記第二の色ヒストグラムは,その色群に含まれた16×16×16の4096の色ごとの頻度を個別に算出したものとなる。
その後,前記変換ポイント算出部42は,前記第二の色ヒストグラムに基づいて,前記下地色群ごとにおいて最も頻度の高い色を前記高頻度条件を満たす下地色として特定する。このとき,前述したように前記下地色群が複数抽出される場合には,ここでも複数の下地色が特定されることになる。即ち,本実施の形態における前記所定の高頻度条件を満たす下地色とは,前記所定頻度以上の色群に属し,且つその色群の中で最も頻度が高い色である。
このように,前記制御部1は,まず粗レベルの前記第一の色ヒストグラムを算出した後,その中で所定頻度以上である一又は複数の色群を抽出し,その一又は複数の色群についてのみ,より詳細な前記第二の色ヒストグラムを算出する。そのため,初めから全ての色(上記例では16,777,216色)の頻度を示すヒストグラムを算出する場合に比べて処理負担は著しく軽減される。
【0019】
(ステップS6)
次に,ステップS6において,前記制御部1は,前記ステップS5で特定された下地色ごとに対応して,前記下地色の近傍の色を該下地色に略均一化させるべく前記R,G,B色成分データ各々を変換するために用いられる濃度変換テーブル(濃度変換情報の一例)を生成する。なお,前記制御部1は,前記ステップS5で特定された下地色が複数である場合には,前記RGB色成分データごとに対応する複数の濃度変換テーブルを生成する。ここに,図4,5は,前記ステップS5で特定された下地色が2つである場合に前記制御部1で生成される濃度変換テーブルの一例を示す図である。
図4は,一つ目の下地色が,R,G,B各々の色成分データが変換ポイントPr1,Pg1,Pb1で表現される色である場合に,該下地色に対応して生成される濃度変換テーブルの一例を示すものであって,(a),(b),(c)は,R,G,B色成分データ各々に対応する濃度変換テーブルTr1,Tg1,Tb1を示している。また,図5は,二つ目の下地色が,R,G,B各々の色成分データが変換ポイントPr2,Pg2,Pb2で表現される色である場合に,該下地色に対応して生成される濃度変換テーブルの一例を示すものであって,(a),(b),(c)は,R,G,B色成分データ各々に対応する濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2を示している。
具体的に,図4(a)に示すように,前記濃度変換テーブルTr1は,前記変換ポイントPr1を中心とする所定範囲の濃度をその変換ポイントPr1に略均一化させるように変換する際に用いられるものである。同じく,図4(b),(c)に示すように,前記濃度変換テーブルTg1,Tb1は,前記変換ポイントPg1,Pb1を中心とする所定範囲の濃度をその変換ポイントPg1,Pb1に略均一化させるように変換する際に用いられるものである。なお,図5に示す前記濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2も同様である。もちろん,前記濃度変換テーブルは,前記下地色の近傍の色を該下地色に近似させて略均一化させることにより裏写りを除去し得るものであれば,図4,図5に示す形態に限らない。
【0020】
(ステップS7〜S8)
その後,ステップS7〜S8において,前記制御部1は,前記画像読取部3で読み取られた画像データを前記DRAM5から1バンド毎に前記画像処理部4に入力し,前記下地色の近傍の色を表現する画像データの色成分データ各々を前記濃度変換テーブルに基づいて変換することにより裏写りを除去する濃度変換処理を前記画像処理部4に実行させる。
具体的に,前記ステップS7において,前記画像処理部4は,まずR,G,B色成分データ各々に対して平滑化処理を施して網点成分を除去する。これにより,前記原稿が網点成分を含むものである場合に,その網点上に存在する裏写り部分についても前記下地色の近傍の色を表現するものであると判断し,その裏写りを除去することが可能となる。なお,前記R,G,B色成分データ各々の平滑化には,例えば周知のメディアンフィルタや平均化フィルタ等を用いればよい。
そして,前記画像処理部4は,前記画像読取部3で読み取られて平滑化処理が施された後の画像データのうちR,G,B色成分データ各々で表現される色が前記下地色の近傍の色である前記画像データについて,前記R,G,B色成分データ各々を該下地色に対応して生成された前記濃度変換テーブルに基づいて変換する濃度変換処理を実行することにより,該下地色近傍の色を下地色に均一化して裏写りを除去する。即ち,前記下地色の近傍の色を除く他の色の画像データについては濃度変換が行われない。
例えば,前記R,G,B色成分データで表現される色が,図4に示した変換ポイントPr1,Pg1,Pb1で表現される下地色の近傍の色である画素の画像データが入力された場合には,その下地色に対応して前記ステップS6で生成された前記濃度変換テーブルTr1,Tg1,Tb1に基づいて,前記R,G,B色成分データが変換される。同じく,図5に示した変換ポイントPr2,Pg2,Pb2で表現される下地色の近傍の色である画素の画像データが入力された場合には,その下地色に対応して前記ステップS6で生成された前記濃度変換テーブルTr2,Tg2,Tb2に基づいて,前記R,G,B色成分データが変換される。
【0021】
ここで,前記制御部1は,前記DRAM5から1バンドごとに出力した画像データを,前記画像処理部4による濃度変換後,前記DRAM5に再度記憶させる。このとき,前記濃度変換後の画像データは,元の画像データに施される前記平滑化処理や前記濃度変換処理により均されてエッジ部などが減少するため,該画像データが圧縮される際の圧縮率が高くなる。
そこで,前記制御部1は,前記DRAM5に記憶されていた元の画像データの記憶領域に,前記画像処理部4による濃度変換後の画像データを順に上書き保存させる。これにより,前記DRAM5内に,前記元の画像データと前記濃度変換後の画像データとの両方を記憶させるための記憶領域を確保する必要が無く,該画像読取処理で使用する前記DRAM5の記憶領域を省減することができる。
特に,前記DRAM5の前記記憶領域には,前記元の画像データと前記濃度変換後の画像データとのデータ量の差に相当する空き領域ができるため,前記制御部1は,その空き領域を順に開放することが望ましい。これにより,前記空き領域を当該複合機Xにおける他の処理の作業領域として用いることができ,該複合機Xにおける処理効率を向上させることができる。例えば,前記制御部1は,前記空き領域を次ページの画像読取処理やFAX受信処理などに利用する。
【0022】
(ステップS10)
そして,1ページ分の画像データについての濃度変換が終了すると(S8のYes側),処理は前記ステップS10に移行し,前記画像処理部4による通常の画像処理(ガンマ補正処理やスケーリング処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理など)が実行される。
このときは,前記ガンマ補正処理において,前記ステップS9で選択される前記裏写り除去用のガンマ補正情報ではなく通常のガンマ補正情報を用いたガンマ補正が実行される。
【0023】
ここに,図7は,カラー原稿である場合の当該画像読取処理における画像データの流れを示している。
図7に示すように,カラー原稿である場合には,前記画像読取部3で読み取られた画像データが前記DRAM5に記憶された後,該画像データは,前記画像処理部4に入力されて縮小され(S4),再度前記DRAM5に記憶される。なお,縮小後の画像データは,前記画像読取部3で読み取られた元の画像データの記憶領域とは別の記憶領域に記憶される。そして,前記制御部1では,前記DRAM5に記憶された縮小後の画像データに基づいて前記濃度変換テーブルが生成される(S5〜S6)。
次に,前記画像読取部3で読み取られて前記DRAM5に記憶されていた元の画像データが前記画像処理部4に入力され,前記制御部1で生成された前記濃度変換テーブルに基づいて濃度変換された後(S7〜S8),再度前記DRAM5に記憶される。このとき,前記濃度変換後の画像データは,前述したように前記元の画像データが記憶されている記憶領域に上書き保存される。
その後,前記DRAM5に記憶された濃度変換後の画像データは,1バンド毎に前記画像処理部4に入力されて該画像処理部4において通常の画像処理(ガンマ補正処理,スケーリング処理,シェーディング補正処理,平滑・強調処理,CMYK変換処理など)が施された後,前記画像形成部6に順に出力される
このように,前記複合機Xでは,カラー原稿である場合は高い裏写り除去効果を得ることができる裏写り除去処理を採用することで画像品質を優先させている。
【0024】
以上説明したように,前記複合機Xでは,原稿がカラー原稿であるか無彩色原稿であるかによって,前記画像読取部3で読み取られた画像データに対して施す裏写り除去処理の内容が変更されることにより,カラー原稿については高い裏写り除去効果を得ることができ,無彩色原稿については,画像データの読み取り時間をカラー原稿に比べて短縮しつつ適度な裏写り除去効果を得ることができる。
なお,本実施の形態では,R,G,B色成分データに対して裏写り除去処理を施す場合を例に挙げて説明するが,例えばRGBデータをCMYデータに変換した後,そのC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)各々の画像データに対して裏写り除去処理を施してもよい。
【実施例】
【0025】
ところで,前記実施の形態で説明した画像読取処理(図2)では,原稿が無彩色原稿である場合,予め定められたガンマ補正情報に基づいてガンマ補正を行うことにより裏写りを除去することを例に挙げて説明した。
一方,前記制御部1が,無彩色原稿である場合にも,前記ステップS9において,前記制御部1が,前記ステップS4や前記ステップS5と同様の処理を実行して無彩色原稿における下地色を特定し,その下地色近傍の色がその下地色に均一化されるようにガンマ補正情報を設定することが他の実施例として考えられる。ここに,係る設定処理を実行するときの前記制御部1がガンマ補正情報設定手段に相当する。
これにより,無彩色原稿の場合の裏写り除去効果を高めて出力画像の品質を向上させることができる。もちろん,この場合でも前記ステップS6〜S8における濃度変換テーブル生成処理や濃度変換処理は省略されるため,カラー原稿に比べれば,画像データの読み取りに要する時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0026】
1:制御部
2:操作表示部
3:画像読取部
4:画像処理部
5:DRAM
6:画像形成部
S1,S2,…:処理手順(ステップ)番号
Tr1,Tr2,Tg1,Tg2,Tb1,Tb2:濃度変換テーブル
Pr1,Pr2,Pg1,Pg2,Pb1,Pb2:変換ポイント
X:複合機(画像処理装置の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像を複数の色成分データを含む画像データとして読み取る画像読取手段と,前記画像読取手段によって読み取られた画像データに基づいて前記原稿がカラー原稿であるか無彩色原稿であるかを判定する自動原稿色判定手段とを備えてなる画像処理装置であって,
前記画像読取手段により読み取られた画像データについて前記複数の色成分データで表現される複数の色ごとの頻度を示す色ヒストグラムを算出し,該色ヒストグラムに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定すると共に,該下地色の近傍の色を該下地色に略均一化させるべく前記色成分データ各々を変換するために用いられる濃度変換情報を生成し,前記画像データのうち前記下地色の近傍の色である画像データの色成分データ各々を前記濃度変換情報に基づいて変換することにより裏写りを除去する第1の裏写り除去手段と,
前記画像読取手段により読み取られた画像データに対して予め設定されたガンマ補正情報を用いて所定のガンマ補正処理を施すことにより裏写りを除去する第2の裏写り除去手段と,
前記自動原稿色判定手段による判定結果がカラー原稿である場合は前記第1の裏写り除去手段により裏写りを除去し,無彩色原稿である場合は前記第2の裏写り除去手段により裏写りを除去する裏写り除去切替手段と,
を備えてなることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記第1の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データの色成分データ各々を所定単位ごとに平均化しつつ前記色成分データ各々の解像度を予め設定された低解像度に変換し,該変換後の色成分データ各々で表現される複数の色から前記下地色を特定するものである請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データを平滑化し,該平滑化後の画像データのうち前記下地色の近傍の色である画像データの色成分データ各々を前記濃度変換情報に基づいて変換することにより裏写りを除去するものである請求項1又は2のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2の裏写り除去手段が,前記画像読取手段により読み取られた画像データについて前記複数の色成分データで表現される複数の色ごとの頻度を示す色ヒストグラムを算出し,該色ヒストグラムに基づいて所定の高頻度条件を満たす下地色を特定し,該下地色に応じて前記ガンマ補正情報を設定するガンマ補正情報設定手段を含んでなる請求項1〜3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の裏写り除去手段が,前記下地色が複数特定された場合は,該下地色ごとに対応して前記濃度変換情報を生成し,前記下地色の近傍の色である前記画像データの前記色成分データ各々を該下地色に対応する前記濃度変換情報に基づいて変換するものである請求項1〜4のいずれかに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−54642(P2012−54642A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193477(P2010−193477)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】