説明

画像判定装置、画像判定方法及びプログラム

【課題】撮像範囲の設定自由度を向上し得る画像判定装置、画像判定方法及びプログラムを提案する。
【解決手段】画像のうち、該画像に映し出される指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に第1の範囲を設定し、該設定した第1の範囲に指における一の関節線が存在しない場合には、各領域の他方に第1の範囲を設定する。第1の範囲に一の関節線が存在するとき、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に第2の範囲を設定する。第1の範囲に一の関節線が存在し、かつ、第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在するとき、当該画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像判定装置、画像判定方法及びプログラムに関し、バイオメトリクス認証する場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオメトリクス認証対象の1つとして血管がある。この血管には、血管内の脱酸素化ヘモグロビン(静脈血)又は酸素化ヘモグロビン(動脈血)に近赤外線帯域の光(近赤外光)を特異的に吸収するといった性質があり、この性質を利用して、例えば、指の血管が撮像される。
【0003】
撮像範囲内に指を誘導する手法として、指置き台に置かれた指を撮影し、その撮影画像における指先から1番目の関節及び2番目の関節を基準として、指が撮像範囲内にあるか否かを判断し、その判断結果に応じて再撮影すべきことをガイダンス表示するものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第3100993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ある一定の解像度を得ようとした場合、撮像範囲の設定は小型化の観点では重要な要素となる。この点、上述の誘導手法は、指が撮像範囲の適正位置にあるか否かを画像により判定するに際し、1番目の関節及び2番目の関節の有無を基準としているため、第1関節から第2関節までの間における指が収まる範囲以上の撮像範囲を、必ず要するという問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、撮像範囲の設定自由度を向上し得る画像判定装置、画像判定方法及びプログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、画像判定装置であって、画像に映し出される指における識別対象の形状パターンを抽出する抽出手段と、指における関節線を検出する検出手段と、画像のうち、指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に設定される第1の範囲に一の関節線が存在し、かつ、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に設定される第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在する場合に、画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する決定手段とを設けるようにした。
【0007】
また本発明は、画像判定方法であって、画像のうち、該画像に映し出される指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に第1の範囲を設定し、該設定した第1の範囲に指における一の関節線が存在しない場合には、各領域の他方に第1の範囲を設定する第1のステップと、第1の範囲に一の関節線が存在するとき、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に第2の範囲を設定する第2のステップと、第1の範囲に一の関節線が存在し、かつ、第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在するとき、画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する第3のステップとを設けるようにした。
【0008】
さらに本発明は、プログラムであって、ワークメモリを制御する制御部に対して、制御部に入力される画像のうち、該画像に映し出される指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に第1の範囲を設定し、該設定した第1の範囲に指における一の関節線が存在しない場合には、各領域の他方に第1の範囲を設定すること、第1の範囲に一の関節線が存在するとき、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に第2の範囲を設定すること、第1の範囲に一の関節線が存在し、かつ、第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在するとき、画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定することを実行させるようにした。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明によれば、画像における一方の領域側における所定位置(第1の範囲)に一の関節線が存在する場合に、その一の関節線が指の第2関節に相当する線であるかを、他方の領域側における所定位置(第2の範囲)での血管量の程度に応じて判定することができる。
【0010】
このためこの認証装置1では、指の第1関節から第2関節までの間における指が収まる範囲以上の撮像範囲を要していなくとも、第1関節から第2関節までの間のうち第2関節近傍の領域が画像中央に位置しているか否かを、一の関節線の有無により判定することができ、かくして撮像範囲の設定自由度を向上し得る画像判定装置、画像判定方法及びプログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図面について、本発明を適用した一実施の形態を詳述する。
【0012】
(1)認証装置の全体構成
図1において、本実施の形態による認証装置1の全体構成を示す。この認証装置1は、制御部10に対して、操作部11、撮像部12、メモリ13、インターフェース14及び通知部15をそれぞれバス16を介して接続することにより構成される。
【0013】
制御部10は、認証装置1全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)と、各種プログラム及び設定情報などが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータとして構成される。
【0014】
この制御部10には、登録対象のユーザ(以下、これを登録者と呼ぶ)の血管を登録するモード(以下、これを血管登録モードと呼ぶ)の実行命令COM1又は登録者本人の有無を判定するモード(以下、これを認証モードと呼ぶ)の実行命令COM2が、ユーザ操作に応じて操作部11から入力される。
【0015】
制御部10は、かかる実行命令COM1、COM2に基づいて実行すべきモードを決定し、この決定結果に対応するプログラムに基づいて、撮像部12、メモリ13、インターフェース14及び通知部15を適宜制御し、血管登録モード又は認証モードを実行するようになされている。
【0016】
撮像部12は、この認証装置1の筐体のうち、指が配される領域上を撮像空間とするカメラを有し、該カメラにおける光学系のレンズ位置、絞りの絞り値及び撮像素子のシャッター速度(露出時間)を、御部10により設定される露出値(EV(Exposure Value)値)を基準として調整する。
【0017】
また撮像部12は、撮像空間に近赤外光を照射する近赤外光光源を有し、該近赤外光光源を、制御部10により指定される期間に点灯させるとともに、撮像素子の撮像面に映し出される被写体像を所定周期ごとに撮像し、該撮像結果として生成される画像に関する画像データを制御部10に順次出力する。
【0018】
メモリ13は、例えばフラッシュメモリでなり、制御部10により指定されるデータを記憶し、又は読み出すようになされている。
【0019】
インターフェース14は、所定の伝送路を介して接続された外部の装置との間で各種データを授受するようになされている。
【0020】
通知部15は、表示部15a及び音声出力部15bでなり、該表示部15aは、制御部10から与えられる表示データに基づく文字や図形を表示画面に表示する。一方、音声出力部15bは、制御部10から与えられる音声データに基づく音声を、スピーカから出力するようになされている。
【0021】
(1−1)血管登録モード
次に、血管登録モードについて説明する。制御部10は、実行すべきモードとして血管登録モードを決定した場合、動作モードを血管登録モードに遷移し、撮像空間に対して指を配置させなければならないことを通知部15に通知させる。
【0022】
このとき制御部10は、撮像部12におけるカメラを撮像動作させるとともに、該撮像部12における近赤外光光源を点灯動作させる。
【0023】
この状態において、撮像空間に対して指が配される場合、近赤外光光源からその指の内方を経由した近赤外光は、血管を投影する光として、カメラにおける光学系及び絞りを介して撮像素子に入射され、該撮像素子の撮像面には指内方における血管像が映し出される。したがってこの場合に撮像部12での撮像結果として生成される画像データに基づく画像には、血管が映し出されることとなる。
【0024】
制御部10は、撮像部12から入力される画像データに対して、所定の画像処理を施すことで識別対象のデータ(以下、これを識別データと呼ぶ)を生成し、これをメモリ13に記憶することにより登録する。
【0025】
このようにして制御部10は、血管登録モードを実行することができるようになされている。
【0026】
(1−2)認証モード
次に、認証モードについて説明する。制御部10は、実行すべきモードとして認証モードを決定した場合、動作モードを認証モードに遷移し、撮像空間に対して指を配置させなければならないことを通知部15に通知させ、かつ、撮像部12におけるカメラを撮像動作させるとともに、近赤外光光源を点灯動作させる。
【0027】
また制御部10は、撮像部12から入力される画像データに対して、血管登録モードと同一の画像処理を施すことで識別データを生成する。そして制御部10は、生成した識別データと、メモリ13に記憶された識別データとを照合し、この照合結果として得られるデータ相関の程度に応じて、登録者と承認することができるか否かを判定するようになされている。
【0028】
ここで、登録者と承認することができないものと判定した場合、制御部10は、その旨を表示部15a及び音声出力部15bを介して視覚的及び聴覚的に通知する。これに対して、登録者と承認することができるものと判定した場合、制御部10は、登録者と承認したことを表すデータを、インターフェース14に接続された装置に送出する。この装置では、登録者と承認したことを表すデータをトリガとして、例えば、ドアを一定期間閉錠させる、あるいは、制限対象の動作モードを解除させる等、認証成功時に実行すべき所定の処理が行われる。
【0029】
このようにしてこの制御部10は、認証モードを実行することができるようになされている。
【0030】
(2)画像処理の具体的な処理内容
次に、制御部10における画像処理について説明する。この画像処理は、機能的には、図2に示すように、パターン抽出部21、ノイズ除去部22、関節線検出部23及び位置判定部24にそれぞれ分けることができる。以下、これらパターン抽出部21、ノイズ除去部22、関節線検出部23及び位置判定部24について詳細に説明する。
【0031】
(2−1)血管の形状パターンの抽出
【0032】
パターン抽出部21は、撮像部12から入力される画像データD1により表される画像についてその画像に映し出される血管の形状パターンを抽出し、該血管の形状パターンが抽出された画像に関する画像データD2をノイズ除去部22及び関節線検出部23に送出する。
【0033】
このパターン抽出部21における抽出手法の一例を説明する。パターン抽出部21は、前処理として、画像に映し出される輪郭を、ガウシアンフィルタやLogフィルタ等の微分フィルタを用いて浮き彫りする。またパターン抽出部21は、前処理として、輪郭が浮き彫りにされた画像を、指の長手方向の輪郭が画像の垂直方向(上下方向)と平行となるように回転補正し、該回転補正した画像から、中心位置を基準として所定サイズの領域の画像を切り出す。
【0034】
この状態においてパターン抽出部21は、切り出した画像を、設定された輝度値を基準として2値画像に変換し、該2値画像に映し出される血管に相当する部分(オブジェクト)における幅の中心又は幅の輝度ピークを検出することにより血管の形状パターンを線(以下、これを血管線と呼ぶ)として抽出するようになされている。
【0035】
ここで、この抽出手法における抽出前後の画像を図3に示す。この図3からも明らかなように、撮像画像(図3(A))は、その画像に映し出される血管部分が線状にパターン化された2値画像(図3(B))として得られることとなる。
【0036】
(2−2)ノイズの除去
ノイズ除去部22は、パターン抽出部21から与えられる画像データD2により表される画像(2値画像)のうち、指の長手方向に対して直交する方向の皺(以下、これを横皺と呼ぶ)に対応する成分(以下、これを横皺成分と呼ぶ)をノイズとして除去し、該横皺成分が除去された画像に関する画像データD3を関節線検出部23及び位置判定部24に送出する。
【0037】
ちなみに、指表面の縦皺成分を除去しないのは、一般に、指の長手方向の皺(縦皺)よりも横皺が目立つ傾向にあること等によるものである。
【0038】
このノイズ除去部22における除去手法の一例を説明する。ノイズ除去部22は、例えば図4に示すように、指の長手方向に対応する垂直方向(上下方向)の画素列のうち左端列から右端列に向かって順に、当該画素列における各画素を、上端から下方向に順次着目画素として指定し、該指定した着目画素の輝度値を必要に応じて変更する。
【0039】
具体的には、例えば図5(A)に示すように、画像左上端の画素を着目画素として指定した場合、ノイズ除去部22は、当該着目画素を中心として垂直方向に連なる5つの画素に相当する範囲(以下、これを5画素範囲と呼ぶ)ARを設定し、該画像左端の画素の輝度値を、5画素範囲ARに存在する3つの画素の輝度平均値BA1に置き換える。
【0040】
また例えば例えば図5(B)に示すように、画像左上端から下方向に4番目となる画素を着目画素として指定した場合、ノイズ除去部22は、当該着目画素を中心として5画素範囲ARを設定し、当該画像左上端から下方向に4番目となる画素の輝度値を、5画素範囲ARに存在する5つの画素の輝度平均値BA2に置き換える。
【0041】
また例えば図5(C)に示すように、画像左下端の画素を着目画素として指定した場合、ノイズ除去部22は、画像左下端の画素を着目画素とした場合、当該着目画素を中心として5画素範囲ARを設定し、当該画像左下端の画素の輝度値を、5画素範囲ARに存在する3つの画素の輝度平均値BA3に置き換える。
【0042】
このようにノイズ除去部22は、各画素を着目画素とし、当該着目画素の輝度値を、その着目画素を中心として垂直方向(上下方向)に連なる所定数の画素の輝度平均値に置き換えることにより横縞成分を分散させ、かくして横皺成分を除去するようになされている。
【0043】
ここで、この除去手法における除去前後の画像を図6に示す。横縞成分除去前の画像(図6(A))と、横縞成分除去後の画像(図6(B))とを比べてみても明らかなように、横縞成分が平滑化されることでなくなることとなる。
【0044】
(2−3)関節線の検出
関節線検出部23は、パターン抽出部21から与えられる画像データD2により表される画像(図6(A))と、ノイズ除去部22から与えられる画像データD3により表される画像(図6(B))との差から得られる横皺成分のうち、連続性の高い皺成分を関節線として検出し、該検出した関節線の位置データD4を位置判定部24に送出する。
【0045】
この関節線検出部23における検出手法の一例を説明する。関節線検出部23は、図7に示すように、血管の形状パターンが抽出された画像(図6(A))と、その画像から横皺成分が除去された画像(図6(B))との差を算出することにより横皺成分を抽出する。
【0046】
そして関節線検出部23は、図8に示すように、この横皺成分(図7)の突起状部分を、モルフォロジー等の微分フィルタを用いて取り除いた後、図9に示すように、連続性の高い直線成分を残すことにより関節線を検出するようになされている。
【0047】
(2−4)撮像範囲における指位置の良否の判定
位置判定部24は、ノイズ検出部22から与えられる画像データD3により表される画像のうち、指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に設定される第1の範囲に指の関節線が存在し、かつ、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に設定される第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在する場合に、当該画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定し、当該画像を識別データD5として生成する。この識別データDISは、血管登録モードの場合には、メモリ13に登録され、認証モードの場合には、メモリ13に登録された識別データと照合される。
【0048】
この位置判定部24における判定手法の一例を説明する。位置判定部24は、例えば図10に示すように、指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインLNを境界として分けられる上側領域TR1及び下側領域TR1のうち、下側領域TR2の所定位置に、関節線の有無を検出するための第1の範囲(以下、これを関節線検出範囲と呼ぶ)S1を設定する(図11:ステップSP1)。
【0049】
この図10では、関節線検出範囲S1は、下側領域TR2に対して1/3サイズの矩形状でなり、下側領域TR2の端部に設定される。ただし、関節線検出範囲S1の形状及びサイズ並びに設定位置は、画像サイズや、指領域のなかで識別対象として着目される部位等に基づいて適宜定められる。
【0050】
そして位置判定部24は、関節線検出部23から与えられる位置データD4により関節線を認識し、関節線検出範囲S1のなかに関節線が存在しない場合(図11:ステップSP2(NO))には、該関節線検出範囲S1を、上側領域TR1のうち、中心ラインLNを対称軸として、下側領域TR2での設定位置と対称となる位置に設定する(図11:ステップSP3)。
【0051】
ここで、この上側領域TR1に設定した関節線検出範囲S1のなかにも関節線が存在しない場合(図11:ステップSP4(NO))、このことは、撮像範囲の適正位置に指が配されていないため、又は、撮像環境が粗悪なため、上側領域TR1及び下側領域TR2の所定位置に線がないもしくは2以上の線が存在することにより指の関節線として認識できないことを意味する。
【0052】
この場合、位置判定部24は、指の配置位置が撮像範囲における適正位置から大きく離れていること又は撮像環境が粗悪なことを内容として、通知部15から通知し(図11:ステップSP5)、その後にノイズ検出部22から与えられる画像データD3を処理対象として、上述の処理を繰り返す。
【0053】
一方、下側領域TR2又は上側領域TR1に設定した関節線検出範囲S1のなかに関節線を検出した場合(図11:ステップSP2(YES)又はステップSP4(YES))、位置判定部24は、例えば図12に示すように、このとき関節線検出範囲S1が設定される下側領域TR2(又は上側領域TR1)とは異なる上側領域TR1(又は下側領域TR2)の所定位置に、血管量を検出するための第2の範囲(以下、これを血管量検出範囲と呼ぶ)S2を設定する(図11:ステップSP6)。
【0054】
この図12では、血管量検出範囲S2は、上側領域TR1(又は下側領域TR2)に対して1/3サイズの矩形状でなり、該上側領域TR1(又は下側領域TR2)の端部に設定される。ただし、血管量検出範囲S2の形状及びサイズ並びに設定位置は、画像サイズ、関節線の出現方向及び指領域のなかで識別対象として着目される部位等に基づいて適宜定められ、関節線検出範囲S1と同じであっても相違していてもよい。
【0055】
ここで、この血管量検出範囲S2に所定閾値以上の血管量が存在しない場合(図11:ステップSP7(NO))、このことは、例えば図13に示すように、関節線検出範囲S1に存在した関節線が指(人差指、中指、薬指、小指)の第1関節に相当するものであることを意味する。
【0056】
この場合、位置判定部24は、指の配置位置が撮像範囲における適正位置から若干離れていることを内容として、通知部15から通知し(図11:ステップSP5)、その後にノイズ検出部22から与えられる画像データD3を処理対象として、上述の処理を繰り返す。
【0057】
一方、血管量検出範囲S2に所定閾値以上の血管量が存在する場合(図11:ステップSP7(YES))、関節線検出範囲S1に存在した関節線が第2関節に相当するものであることにより、例えば図14に示すように、該指において血管量が多い部分とされる第1関節と第2関節との間が、画像の中央に位置していることを意味する。この場合、位置判定部24は、当該画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定するようになされている。
【0058】
(3)動作及び効果
以上の構成において、この認証装置1は、画像に映し出される指における血管の形状パターンを抽出するとともに(図3)、該指における関節線を検出する(図9)。
【0059】
そして認証装置1は、指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインLNを境界として分けられる下側領域TR2(又は上側領域TR1)に設定される関節線検出範囲S1に関節線が存在し、かつ、上側領域TR1(又は下側領域TR2)に設定される血管量検出範囲S2に所定閾値以上の血管量が存在する場合(図14)、当該画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する。
【0060】
この認証装置1は、画像下側の関節線検出範囲S1に一の関節線が存在する場合に、その一の関節線が第2関節線であるかを、画像上側の血管量検出範囲S2における血管量の程度に応じて判定することができる(図13、図14)。
【0061】
このためこの認証装置1では、第1関節から第2関節までの間における指が収まる範囲以上の撮像範囲を要していなくとも、第1関節から第2関節までの間のうち第2関節近傍の領域が画像中央に位置しているか否かを、一の関節線の有無により判定することができ、この結果、撮像範囲の設定自由度を向上することができる。
【0062】
なお、撮像範囲の設定自由度が増すということは、例えば、指の固定を強要させないといった要請、デザイン上の要請、あるいは小型化の要請などに柔軟に対応することが可能となるため、第1関節から第2関節までの間のうち第2関節近傍の領域が画像中央に位置しているか否かを、一の関節線の有無により判定するこの手法は、特に有用となる。
【0063】
また、この実施の形態における認証装置1は、血管の形状パターンが抽出された画像から関節線を検出する(図3)。ここで、例えば図15に示すように、カメラの性能(撮像条件)によっては、関節を曲げた状態で撮像しなければ、関節線が撮像画像において検出できる程度に映らない場合がある。したがって、この認証装置1は、撮像画像において関節線を検出する場合に比して、カメラの性能(撮像条件)によらずに、関節線を検出できる点で特に有用となる。
【0064】
以上の構成によれば、画像下側の関節線検出範囲S1に一の関節線が存在する場合に、その一の関節線が第2関節線であるかを、画像上側の血管量検出範囲S2における血管量の程度に応じて判定するようにしたことにより、第1関節から第2関節までの間における指が収まる範囲以上の撮像範囲を要していなくとも、第1関節から第2関節までの間のうち第2関節近傍の領域が画像中央に位置しているか否かを、一の関節線の有無により判定することができ、この結果、撮像範囲の設定自由度を向上し得る認証装置1を実現できる。
【0065】
(4)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、抽出手段(パターン抽出部21)として、指の内方における血管の形状パターンを線として抽出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該血管の形状パターンを点として抽出するようにしてもよい。
【0066】
具体的には、例えば、血管の形状パターンを線(血管線)として抽出した後、該血管線における端点、分岐点及び屈曲点を、ハリスコーナーと呼ばれる抽出手法や、特願2007−46089に記載された抽出手法により抽出する。
【0067】
なお、点を抽出するようにした場合、ノイズ除去部22については省略することができ、関節検出部23については、例えば図16に示すように、パターン抽出部21により抽出された点群から、横皺成分(水平方向)に相当する点群を、ハフ変換等を用いて引き伸ばし、該引き伸ばされた点群の略中央を通る線分を関節線JNLとして検出する。このようにすれば、上述の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0068】
また、識別対象として、上述の実施の形態では、指の内方における血管を適用したが、本発明はこれに限らず、例えば、指の内方における神経や、指の表面における指紋を適用するようにしてもよい。なお、指紋を適用する場合、指に対して近赤外光を照射することなく撮像されることにより得られる画像データに対して、上述した画像処理を実行するようにすれば、上述の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0069】
また上述の実施の形態においては、撮像部12の撮像結果として得られる画像から、その画像に映し出される指における血管の形状パターンを抽出するとともに(図3)、該指における関節線を検出する場合について述べたが、本発明はこれに限らず、焦点を血管又は指表面に切り換え制御し、血管に焦点が合っているときに撮像される画像から血管の形状パターンを抽出し、指表面に焦点があっているときに撮像される画像から関節線を検出するようにしてもよい。
【0070】
かかる制御手法として、例えば、制御部10は、撮像部12での撮像結果として得られる画像のコントラストや位相に基づいて血管又は指表面までの距離を推定し、あるいは、血管又は指表面までの距離をROMに設定し、当該距離に応じた位置に撮像部12における光学系レンズを移動させる。
【0071】
このようにすれば、血管の形状パターンを抽出する場合には、横皺成分に比して血管成分を強調させた画像に基づいて抽出することでき、一方、関節線を検出する場合には、血管成分に比して横皺成分を強調させた画像に基づいて検出することができるため、当該形状パターンの抽出精度及び関節線の検出精度の双方を向上することが可能となる。
【0072】
さらに上述の実施の形態においては、血管量検出範囲S2に対して設定した血管量の閾値を固定とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、輝度ヒストグラムの波形状態に応じて可変とするようにしてもよい。
【0073】
ここで、この輝度ヒストグラムの波形状態と、血管の映り難さとの関係について述べる。一般に、血管の映り難さの程度は、生体の性別、人種、年齢及び体質等の生体要素に応じて異なることが知られている。一方、輝度ヒストグラムの波形状態は、例えば骨が細く体脂肪の多い生体(図17(A))、骨が太く体脂肪の少ない生体(図17(B)又は小児(図17(C))のように、生体要素が相違すれば異なるが、いくつかのパターンに大別することができる。このことは、本出願人により既に確認されている。
【0074】
したがって、血管の映り難さの程度は、輝度ヒストグラムの波形状態のパターンに応じてある程度特定することができる関係にある。
【0075】
血管の映り難さの程度の大きい波形パターンである場合には、血管量検出範囲S2に対する血管量の閾値が小さければ、関節線検出範囲S1に存在する血管線が第2関節であるにもかかわらず、血管の映り難いことに起因して、第2関節ではないと誤判断するといったことを、閾値が固定の場合に比して、低減することができる。
【0076】
具体的には、位置判定部24は、撮像部12から与えられる画像データD1により表される画像の輝度ヒストグラムを求め、該輝度ヒストグラムの波形パターンが血管の映り難い波形パターンであるほど、血管量検出範囲S2に対する血管量の閾値を、基準値に対して所定の割合だけ引き下げた値に切り換える。このようにすることで、関節線検出範囲S1に一の関節線が存在する場合に、その一の関節線が第2関節線であるかを、より一段と正確に判断することができる。
【0077】
さらに上述の実施の形態においては、血管量検出範囲S2の大きさを固定とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、該血管量検出範囲S2の大きさを、輝度ヒストグラムの波形状態に応じて可変とするようにしてもよい。
【0078】
具体的には、位置判定部24は、撮像部12から与えられる画像データD1により表される画像の輝度ヒストグラムを求め、該輝度ヒストグラムの波形パターンが血管の映り難い波形パターンであるほど、血管量検出範囲S2の大きさを、基準に対して大きくなるように切り換える。このようにすることで、血管量検出範囲S2に対する閾値を可変する場合と同様に、関節線検出範囲S1に一の関節線が存在する場合に、その一の関節線が第2関節線であるかを、より一段と正確に判断することができる。
【0079】
さらに上述の実施の形態においては、着目画素を中心として垂直方向(上下方向)に連な画素を例えば5画素(図5)に固定とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、輝度ヒストグラムの波形状態に応じて可変とするようにしてもよい。
【0080】
具体的には、位置判定部24は、撮像部12から与えられる画像データD1により表される画像の輝度ヒストグラムを求め、該輝度ヒストグラムの波形パターンが血管の映り難い波形パターンであるほど、着目画素を中心として垂直方向(上下方向)に連なる画素の画素数を、基準に対して少なくなるように切り換える。このようにすることで、横縞成分がより平滑化されてなる画像を生成することができる。
【0081】
さらに上述の実施の形態においては、ROMに格納されたプログラムにしたがって上述の画像処理を実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、半導体メモリ等のプログラム格納媒体からインストールし、又はインターネット上のプログラム提供サーバからダウンロードすることにより取得したプログラムにしたがって上述の画像処理を実行するようにしてもよい。
【0082】
さらに上述の実施の形態においては、上述の画像処理を制御部10が実行するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これら処理の一部をグラフィックスワークステーションで実行するようにしてもよい。
【0083】
さらに上述の実施の形態においては、撮像機能、照合機能及び登録機能を有する認証装置1を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該用途に応じて、機能ごとに又は各機能の一部を単体の装置に分けた態様で適用するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、バイオメトリクス認証する分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態による認証装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】制御部における画像処理の機能的構成を示すブロック図である。
【図3】パターン抽出前後の画像を示す略線図である。
【図4】着目画素の指定順序の説明に供する略線図である。
【図5】輝度の置き換えの説明に供する略線図である。
【図6】ノイズ除去前後の画像を示す略線図である。
【図7】横皺成分除去前の画像と、除去後の画像との差分画像を示す略線図である。
【図8】横皺成分の突起部分が除去された画像を示す略線図である。
【図9】連続性の高い直線成分が残された画像を示す略線図である。
【図10】関節線検出範囲の設定の説明に供する略線図である。
【図11】画像判定処理手順を示すフローチャートである。
【図12】血管量検出範囲の設定の説明に供する略線図である。
【図13】関節線検出範囲に第1関節が存在する場合における血管量検出範囲の血管量を示す略線図である。
【図14】関節線検出範囲に第2関節が存在する場合における血管量検出範囲の血管量を示す略線図である。
【図15】関節を曲げた場合と、伸ばした場合に撮像画像及びパターン抽出画像に映る関節線の比較を示す略線図である。
【図16】他の実施の形態による関節線の検出の説明に供する略線図である。
【図17】画像における輝度ヒストグラムの波形パターンを示す略線図である。
【符号の説明】
【0086】
1……認証装置、10……制御部、11……操作部、12……撮像部、13……メモリ、14……インターフェース、15……通知部、15a……表示部、15b……音声出力部、21……パターン抽出部、22……ノイズ除去部、23……関節線検出部、24……位置判定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に映し出される指における識別対象の形状パターンを抽出する抽出手段と、
上記指における関節線を検出する検出手段と、
上記画像のうち、上記指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に設定される第1の範囲に一の上記関節線が存在し、かつ、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に設定される第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在する場合に、上記画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する決定手段と
を具えることを特徴とする画像判定装置。
【請求項2】
上記識別対象は、上記指の内方における血管であり、
上記検出手段は、
上記血管が抽出された画像から上記関節線を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像判定装置。
【請求項3】
上記血管が抽出された画像から、指の長手方向に対して直交する方向の皺成分を除去する除去手段をさらに具え、
上記検出手段は、
上記血管が抽出された画像と、上記皺成分が除去された画像との差から得られる皺成分のうち、連続性の高い成分を上記関節線として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像判定装置。
【請求項4】
撮像手段に対して、生体内方の識別対象を撮像するように規定される第1の露出値、又は、生体表面を撮像するように規定される第2の露出値を設定する設定手段と
を具え、
上記抽出手段は、
上記第1の露出値が設定された上記撮像手段から得られる上記画像から上記血管を抽出し、
上記検出手段は、
上記第2の露出値が設定された上記撮像手段から得られる上記画像から上記関節を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像判定装置。
【請求項5】
上記識別対象は、上記指の内方における血管であり、
上記決定手段は、
上記画像における輝度ヒストグラムの波形パターンが血管の映り難い波形パターンであるほど、上記第2の範囲に対する上記閾値を、基準値に対して所定の割合だけ引き下げた値に切り換える
ことを特徴とする請求項1に記載の画像判定装置。
【請求項6】
画像のうち、該画像に映し出される指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に第1の範囲を設定し、該設定した第1の範囲に上記指における一の関節線が存在しない場合には、上記各領域の他方に上記第1の範囲を設定する第1のステップと、
上記第1の範囲に上記一の関節線が存在するとき、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に第2の範囲を設定する第2のステップと、
上記第1の範囲に上記一の関節線が存在し、かつ、上記第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在するとき、上記画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定する第3のステップと
を具えることを特徴とする画像判定方法。
【請求項7】
ワークメモリを制御する制御部に対して、
上記制御部に入力される画像のうち、該画像に映し出される指の長手方向と直交する方向に対応する中心ラインを境界として分けられる各領域の一方に第1の範囲を設定し、該設定した第1の範囲に上記指における一の関節線が存在しない場合には、上記各領域の他方に上記第1の範囲を設定すること、
上記第1の範囲に上記一の関節線が存在するとき、当該第1の範囲が設定される領域とは異なる領域に第2の範囲を設定すること、
上記第1の範囲に上記一の関節線が存在し、かつ、上記第2の範囲に所定閾値以上の血管量が存在するとき、上記画像を、登録対象とすべき画像又は登録対象と照合すべき画像として決定すること
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図16】
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【図17】
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【図3】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−211514(P2008−211514A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46123(P2007−46123)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】