説明

画像加熱装置

【課題】装置の大型化を招くことなく、定着ベルト1の非通紙領域の過昇温を抑制することである。
【解決手段】最大幅の記録材よりも幅狭の記録材に画像形成を行う場合、定着ベルト1の非通紙領域が過昇温しないように外側コア7aを退避させるが、この非通紙領域のうち領域Wにおいて定着ベルト1は昇温し得る関係となっている。つまり、磁束遮蔽板11により定着ベルト1の領域Wにおける磁束が遮蔽されない関係となっている。そこで、この領域Wにおける定着ベルト1の過昇温を抑制するため、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させることにより、間接的に定着ベルト1を冷却する。その結果、磁束遮蔽板11の幅方向長さを長くすることによる装置の大型化を回避しつつ、定着ベルトの熱劣化を防ぐことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録材上のトナー像を加熱する画像加熱装置に関する。この画像加熱装置は、例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ及びこれらの機能を複数備えた複合機等の画像形成装置において用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
電子写真画像形成装置は定着装置(画像加熱装置)を備える。定着装置では、従来より、記録材(記録紙)に形成されたトナー像を、定着ベルト(エンドレスベルト)と加圧ローラ(駆動回転体)間のニップ部において、加熱及び加圧することにより定着処理(画像加熱処理)している。
【0003】
このような定着装置において、定着ベルトの温度を素早く立ち上げる(高速昇温させる)べく定着ベルトの熱容量を小さくし、そして、加熱効率の良い電磁誘導加熱方式を採用することが提案されている。
【0004】
ところが、熱容量を小さくするために薄肉の定着ベルトを用いると、定着ベルトの幅方向への熱移動率が低くなる。この傾向は薄肉なほど顕著であり、熱伝導率の低い樹脂等の材質ではさらに低くなる。これは、熱伝導率をλ、2点間の温度差をθ1−θ2、長さをLとしたとき、単位時間に伝わる熱量Qは、Q=λ・f(θ1−θ2)/Lで表されるというフーリエの法則からも明らかである。
【0005】
このように定着ベルトの幅方向における熱伝導率が低い場合、装置に使用可能な最大幅の記録材よりも幅狭の記録材に定着処理を施す際、記録材と接触しない定着ベルトの幅方向端部の領域が過度に昇温してしまう恐れがある。
【0006】
そこで、磁性コアの一部を定着ベルトから離すことにより、定着ベルトの幅方向端部の領域が過度に昇温することを抑制する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−194940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように磁性コアの一部を定着ベルトから離したとしても、定着ベルトの幅方向端部の領域は、励磁コイルにより定着ベルトが完全に加熱されなくなる訳ではない。このため、定着処理が連続して行われるうちに、やはり無視できないレベルに昇温してしまう。なお、定着ベルトの幅方向端部の領域の昇温を無視できる程度に磁性コアの一部を定着ベルトから大きく引き離せば解決する可能性があるが、そのための磁性コアの大きな退避スペースが必要となり、現実的な対策にはなり得ない。
【0009】
また、励磁コイルから定着ベルトの幅方向端部の領域に向かう全磁束を磁束遮蔽板(磁束抑制部材)により遮蔽し、その領域において定着ベルトが電磁誘導加熱されないようにすることも考えられる。但し、その為には、磁束遮蔽板を回動式もしくは定着ベルトの幅方向に沿うスライド式にすることが求められる。
【0010】
しかしながら、磁束遮蔽板を回動式にした場合、定着ベルトの断面径が小さいと、定着ベルトの周囲に配置された機器(分離機構等)が邪魔になり、非遮蔽時に磁束遮蔽板を回動させて退避するためのスペースを設けることができない。また、磁束遮蔽板をスライド式にした場合、最小幅の記録材に対応できる長さを備えた磁束遮蔽板を、非遮蔽時に定着ベルトの幅方向端部よりも外側へ完全に退避させるためのスペースを設けなければならず、その結果、装置の大型化に繋がってしまう。
【0011】
本発明の目的は、装置の大型化を招くことなく、エンドレスベルトが過剰に昇温してしまうのを抑制することができる画像加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、記録材上のトナー像をニップ部にて加熱するエンドレスベルトと、前記エンドレスベルトを電磁誘導加熱する励磁コイルと、前記エンドレスベルトとの間で前記ニップ部を形成するとともに前記エンドレスベルトを回転駆動する駆動回転体と、画像加熱装置に使用可能な最大幅の記録材よりも幅狭の所定の記録材に画像加熱処理を施すとき、前記励磁コイルから前記エンドレスベルトに向かう磁束のうち、前記エンドレスベルトが前記所定の記録材と接触し得る領域よりも前記エンドレスベルトの幅方向外側の領域の一部に向かう磁束を抑制する磁束抑制部材と、前記駆動回転体に当接して前記駆動回転体から吸熱する吸熱回転体と、を備えた、ことを特徴とする画像加熱装置にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、駆動回転体に当接して駆動回転体から吸熱する吸熱回転体を備えるため、装置の大型化を招くことなく、エンドレスベルトが過剰に昇温してしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成断面図。
【図2】第1の実施形態における定着装置の通紙領域の概略構成横断面図。
【図3】定着ベルトの層構造図。
【図4】(a)は第1の実施形態における定着装置の概略構成縦断図、(b)は均熱ローラを移動させる駆動部を拡大して示す概略構成横断面図。
【図5】定着装置の主要部を分解して示す斜視図。
【図6】第1の実施形態における定着装置の非通紙領域の概略構成横断面図。
【図7】第1の実施形態で使用するトナーの温度と溶融粘度との関係を示す図。
【図8】均熱ローラがジョブの開始から加圧ローラに当接している場合の、通紙枚数に対する定着ベルトの表面温度の変化を示す図。
【図9】通紙領域に対する定着ベルト表面の温度分布を示す図。
【図10】第1の実施形態の制御を説明するためのブロック図。
【図11】第1の実施形態の制御を説明するためのフローチャート。
【図12】第1の実施形態の制御を説明するためのタイミングチャート。
【図13】第1の実施形態の効果を説明するために、本実施例と従来例との通紙枚数に対する定着ベルトの表面温度の変化を示す図。
【図14】第1の実施形態における通紙枚数と非通紙部昇温との関係を説明する図。
【図15】本発明の第2の実施形態の制御を説明するためのブロック図。
【図16】第2の実施形態の制御を説明するためのフローチャート。
【図17】第2の実施形態の効果を説明するために、通紙枚数に対する定着ベルトの表面温度の変化を示す図。
【図18】第2の実施形態における通紙500枚目の非通紙部昇温を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では、複数の感光体を有する電子写真方式カラー複写機に適用する場合について説明する。但し、本発明は、これに限らず、各種方式の電子写真複写機、あるいはプリンタ、モノカラー方式、電子写真以外の画像形成装置にも適用できることは言うまでもない。
【0016】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図1ないし図14を用いて説明する。まず、図1を用いて、本実施形態の画像形成装置の概略構成について説明する。
【0017】
[画像形成装置]
原稿台ガラス302上に置かれた原稿は、光源303によって照射され、光学系304を介してCCDセンサ305に結像される。この読取光学系ユニットは矢印の方向に走査することにより、原稿をライン毎の電気信号データ列に変換する。CCDセンサ305により得られた画像信号は、プリンタ部に送られ、プリンタ制御部309でプリンタにあわせた画像処理がされる。また、プリンタ制御部309は画像信号としてプリントサーバ等からの外部入力も受けられる。
【0018】
次にプリンタ部の説明を行う。画像信号はプリンタ制御部309によりPWM(パルス幅変調)されたレーザービームに変換される。図1において、310はポリゴンスキャナでレーザービームを走査して、画像形成部Pa〜Pdの像担持体である感光ドラム200a〜200dに照射される。ここで、Paはイエロー色(Y)画像形成部、Pbはマゼンタ色(M)画像形成部、Pcはシアン色(C)画像形成部、Pdはブラック色(Bk)画像形成部で、それぞれ対応する色の画像を形成する。画像形成部Pa〜Pdは、それぞれ略同一の構成なので、以下に、代表してYの画像形成部Paの詳細を説明して、他の画像形成部の説明は省略する。
【0019】
画像形成部Paにおいて、200aは感光ドラムで、ポリゴンスキャナ310からのレーザービームによってその表面に静電潜像が形成される。201aは1次帯電器で、感光ドラム200aの表面を所定の電位に帯電させて静電潜像形成の準備を施す。202aは現像器で、感光ドラム200a上の静電潜像を現像してトナー像を形成する。203aは転写ローラで、中間転写ベルト204の背面から放電を行いトナーと逆極性の一次転写バイアスを印加し、感光ドラム200a上のトナー像を中間転写ベルト204上へ転写する。転写後の感光ドラム200aは、クリーナー207aでその表面が清掃される。
【0020】
また、中間転写ベルト204上のトナー像は次の画像形成部に搬送され、M、C、Bkの順に、順次それぞれの画像形成部にて形成された各色のトナー像が転写され、4色の画像がその表面に形成される。Bk画像形成部を通過したトナー像は、中間転写ベルト204を挟んで配置される2次転写内ローラ205aと2次転写外ローラ205bで構成される2次転写部206に搬送される。そして、2次転写部206において、トナーと逆極性の2次転写電界が印加されることにより、中間転写ベルト204上のトナー像が記録材としての記録紙Pに2次転写される。その後記録材上(記録紙上)の未定着トナー像は、定着装置500で記録紙に画像として定着される。
【0021】
[定着装置]
以下の説明において、画像加熱装置としての定着装置またはこれを構成している部材の長手方向とは記録紙搬送路面内において記録紙搬送方向に直交する方向である。また短手方向とは記録紙搬送方向に並行な方向である。定着装置に関し、正面とは装置を記録紙入口側からみた面、背面とはその反対側の面(記録紙出口側)、左右とは装置を正面から見て左または右である。上流側と下流側とは記録紙搬送方向に関して上流側と下流側である。さらに、定着ベルトの幅方向とは、上記の記録紙搬送方向と直交する方向と実質平行である。
【0022】
図2は、本実施形態における定着装置500の記録紙が通る領域(通紙領域)の断面図である。定着装置500は、加熱回転体である定着ベルト1と、加圧回転体(駆動回転体)である加圧ローラ2と、誘導加熱装置100と、均熱部材(吸熱回転体)である均熱ローラ9とを備える。定着ベルト1は、金属層を有するエンドレスベルトである。加圧ローラ2は、定着ベルト1の外周と当接してニップ部Nを形成する。3は定着ベルト1と加圧ローラ2との間に押圧力を作用させて、上述のニップ部Nを形成する圧力付与部材であり、金属製のステー4に保持されている。
【0023】
誘導加熱装置100は、定着ベルト1を電磁誘導加熱する加熱源(誘導加熱手段)である。この誘導加熱装置100は、励磁コイル6と、外側コア7aとを有する。励磁コイル6は、磁束発生手段であり、定着ベルト1の外側近傍に配置されている。具体的には、励磁コイル6は、電線として例えばリッツ線を用い、これを横長・船底状にして定着ベルト1の周面と側面の一部に対向するように巻回してなる。外側コア7aは、励磁コイル6によって発生した磁束が定着ベルト1の金属層(導電層)以外に実質漏れないように励磁コイル6の外側を覆う磁性コアである。この磁性コアは、定着ベルトの幅方向に並んで複数配置されている。これら励磁コイル6と外側コア7aとは、電気絶縁性の樹脂製のモールド部材7cに支持されている。
【0024】
このように構成される誘導加熱装置100は、定着ベルト1の外周面の加圧ローラ2と反対側において、定着ベルト1に所定のギャップ(隙間)を介して対向して配設されている。また、定着ベルト1内で、ステー4の励磁コイル6側には、外側コア7aとの間で磁気閉回路を構成するための内側コア5が設けられている。
【0025】
定着ベルト1の回転状態において、誘導加熱装置100の励磁コイル6には電源装置(励磁回路)101から20〜50kHzの高周波電流が印加されて、励磁コイル6によって発生した磁界により定着ベルト1の金属層(導電層)が誘導発熱する。即ち、本実施形態の定着ベルト1は、誘導加熱装置100が発生させる磁束が通過することにより発熱する。なお、本実施形態では、電源装置101はプリンタ制御部309内に設けられている。
【0026】
TH1は、例えばサーミスタ等の温度センサ(温度検出素子)であり、定着ベルト1の幅方向中央内面部の位置に当接させて配設してある。この温度センサTH1は、通紙領域になる定着ベルト部分の温度を検知し、その検知温度情報がプリンタ制御部309内の制御回路部102にフィードバックされる。なお、温度センサTH1は、定着ベルト1の内周面の温度を検知しているが、その検知情報は、制御回路部102で例えばメモリに記憶されたテーブルなどにより定着ベルト1の表面温度に変換される。したがって、温度センサTH1により定着ベルト1の表面温度を検知できる。
【0027】
制御回路部(制御手段)102は、この温度センサTH1から入力する検知温度が所定の目標温度(定着温度)に維持されるように、電源装置101から励磁コイル6に入力する電力を制御している。即ち、定着ベルトの検出温度が所定温度に昇温した場合、励磁コイル6への通電が遮断される。本実施形態では、定着ベルト1の表面温度が目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて励磁コイル6に入力する電力を制御して温度調節を行っている。
【0028】
上記の温度センサTH1は、圧力付与部材3に弾性支持部材を介して取り付けられており、定着ベルトの当接面が波打つなどの位置変動が生じたとしても、これに追従して良好な接触状態が維持されるように構成されている。
【0029】
少なくとも画像形成実行時には、制御回路部102で制御されるモータ(駆動手段)によって加圧ローラ2が回転駆動され、定着ベルト1はこの加圧ローラによって従動回転する構成となっている。この際、2次転写部206側から搬送されてくる、未定着トナー像を担持した記録紙Pの搬送速度とほぼ同一の周速度で回転駆動される。本実施例の場合、定着ベルト1の表面回転速度が、300mm/secで回転し、フルカラーの画像を1分間にA4サイズで80枚、A4Rサイズで58枚定着することが可能である。
【0030】
また、励磁コイル6に電源装置101から電力供給がなされて定着ベルト1が所定の定着温度に立ち上がって温調された状態で、ニップ部Nに未定着トナー像を有する記録紙Pが、そのトナー像担持面側を定着ベルト1側に向けて導入される。そして、ニップ部Nにおいて定着ベルト1の外周面に密着し、定着ベルト1と一緒にニップ部Nを挟持搬送されていく。これにより、主に定着ベルト1の熱が付与され、またニップ部Nの加圧力を受けて未定着トナー像が記録紙Pの表面に熱圧定着される。
【0031】
ニップ部Nを通った記録紙Pは、定着ベルト1の表面がニップ部Nの出口部分で変形することによって、定着ベルト1の外周面から自己分離されて定着装置外へ搬送される。
【0032】
均熱ローラ9は、加圧ローラ2に従動回転可能なローラであり、加圧ローラ2に当接することにより、加圧ローラ2の熱を分散させるものである。このために均熱ローラ9は、高熱伝導性のローラであり、金属層又は炭素材料からなる層を有し、外周面を円筒状とした部材により構成されている。後述する接離手段により、加圧ローラに対して着脱可能に配置されている。このような均熱ローラ9は、軸方向の長さが加圧ローラ2と同じ若しくは少し短く、加圧ローラ2と当接することにより、この加圧ローラ2に従動して回転する。この際、定着ベルト1の通紙領域以外の昇温が加圧ローラ2で吸熱され、その吸熱された加圧ローラの熱が均熱ローラ9により分散し、定着ベルト1の過昇温を抑制する。
【0033】
均熱ローラ9は、例えば熱伝導率が100〜250℃で100W/m・K以上であり、且つ熱容量が100〜250℃で3.0kJ/m・K以下の材料からなる円筒部材であることが好ましい。例えば、熱伝導率が高い、アルミニウムや銅などの金属層、或いは、カーボンファイバーやカーボンナノチューブなどの炭素材料からなる層を有するように構成する。具体的な例としては、上述の金属或いは炭素材料製の円柱状の部材の両端部の中心に回転軸を設けて、均熱ローラ9を構成する。また、各部の寸法は、例えば、回転軸の径(軸径)を8mm、円柱部分の外径を20mm、円柱部分の長手方向長さを300mmである。また、円柱部分は、上述の材料で内部が埋まっている中実構成である。なお、均熱ローラ9として、基層(金属層)上に表面層となる離型層(例えば、PFA樹脂)を設けた構成としても良い。
【0034】
[定着ベルト]
次に、図3を用いて、本実施形態の定着ベルト1についてより詳しく説明する。図3は、定着ベルト1の層構成を示すために、一部を切断した図である。定着ベルト1は、例えば内径が30mmで電気鋳造法によって製造したニッケルを基層(金属層)1aとして有している。この基層1aの厚さは40μmである。
【0035】
基層1aの外周には、弾性層1bとして耐熱性シリコーンゴム層が設けられている。シリコーンゴム層の厚さは100〜1000μmの範囲内で設定するのが好ましい。本実施形態では、定着ベルト1の熱容量を小さくしてウォーミングアップタイムを短縮し、かつカラー画像を定着するときに好適な定着画像を得ることを考慮して、シリコーンゴム層の厚みは300μmとしている。このシリコーンゴムは、JIS−A20度の硬度を持ち、熱伝導率は0.8W/mKである。更に弾性層1bの外周には、表面離型層1cとしてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられている。
【0036】
基層1aの内面側には、定着ベルト内面と温度センサTH1との摺動摩擦を低下させるために、フッ素樹脂やポリイミドなどの樹脂層(滑性層)1dを10〜50μm設けても良い。本実施形態では、この層1dとしてポリイミドを20μm設けた。
【0037】
なお、定着ベルト1の基層1aにはニッケルのほかに鉄合金や銅、銀などを適宜選択可能である。また、樹脂基層にそれら金属を積層させるなどの構成でも良い。基層1aの厚みは、後で説明する励磁コイルに流す高周波電流の周波数と金属層の透磁率・導電率に応じて調整して良く、5〜200μm程度の間で設定すると良い。
【0038】
[加圧ローラ]
定着ベルト1との間でニップ部Nを形成するための加圧ローラ2(駆動回転体)は、例えば、外径が30mmで長手方向中央部の径が20mmで両端部の径が19mmである鉄合金製の芯金に、弾性層としてシリコーンゴム層が設けてなる。表面は、離型層としてフッ素樹脂層(例えばPFAやPTFE)が30μmの厚みで設けられる。加圧ローラ2の長手方向中央部における硬度は、ASK−C70℃である。
【0039】
本実施形態における定着ベルト1と加圧ローラ2とのニップ部Nの回転方向の幅は、定着ニップ圧が600Nにおいては、長手方向両端部で約9mm、中央部では約8.5mmである。これは記録紙Pの両端部での搬送速度が中央部と比べて速くなるので、紙しわが発生しにくくなるという利点がある。
【0040】
図4により、ニップ部Nを形成するための圧力を付与する構成、及び、均熱ローラ9の加圧ローラ2に対する接離手段である接離機構501について説明する。まず、ニップ部Nを形成するための構成について説明する。
【0041】
図4(a)に示す様に、10は定着ベルト1の長手方向移動および周方向の形状を規制する規制部材としての左右の定着フランジである。定着フランジ10内に挿通して配設したステー4の両端部と、装置シャーシ側のステー用バネ受け部材9aとの間に、ステー加圧バネ9bを縮設することで、ステー4に加圧ローラ2に向かう力を作用させている。3は、上述したような圧力付与部材であり、金属製のステー4に保持されている。圧力付与部材3は耐熱性樹脂であり、ステー4は圧接部に圧力を加えるために剛性が必要であるため、本実施形態では鉄製である。
【0042】
上述のように、ステー加圧バネ9bによりステー4に加圧ローラ2に向かう力が作用することにより、ステー4に保持された圧力付与部材3と加圧ローラ2とが定着ベルト1を挟んで圧設する。そして、定着ベルト1と加圧ローラ2の間に所定幅のニップ部Nが形成される。
【0043】
なお、回転する定着ベルト1は、基層が金属で構成されているので、回転状態にあっても幅方向への寄りを規制するための手段としては、定着ベルト1の端部を単純に受け止めるだけの定着フランジ10を設ければ十分である。これにより、定着装置の構成を簡略化できるという利点がある。12は定着ベルト1を支持するための支持側板である。支持側板12により、定着ベルト1の長手方向の位置が規制されている。
【0044】
均熱ローラ9と加圧ローラ2との加圧は、図4(a)に示す様に、接離機構501の加圧バネ501bにより行う。加圧バネ501bは、装置側のバネ受け部材501aと均熱ローラ9の回転軸9cとの間に、弾性的に圧縮した状態で設けられることで、均熱ローラ9に、加圧ローラ2に向かう力を作用させている。これにより、均熱ローラ9と加圧ローラ2とが圧接して所定幅の均熱ローラ、加圧ローラ間のニップ部が形成される。その結果、均熱ローラ9は加圧ローラ2に従動回転する構成となっている。
【0045】
一方、接離機構501は、図4(b)に示す様に、均熱ローラ9の回転軸9cに接触するように設けられたカム501cと、カム501cとを回転駆動するモータ501dとを有する。そして、モータ501dによりカム501cを回転させ、回転軸9cを上述の加圧バネ501bの弾性力に抗して加圧ローラ2から離れる方向に移動させる。これにより、均熱ローラ9を加圧ローラ2から離間させる。これに対して、カム501cを回転させてこの離間の状態とは位相を変えることにより、均熱ローラ9が加圧ローラ2に近づくことを許容し、加圧バネ501bの弾性力により均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させる。
【0046】
[誘導加熱装置]
次に、本実施形態の誘導加熱装置100について、図5及び図6を参照してより詳細に説明する。例えば、定着ベルト1と誘導加熱装置100の励磁コイル6は0.5mmの厚さを有するモールド部材7cにより電気絶縁の状態を保つ。また、定着ベルト1と励磁コイル6との間隔は1.5mm(モールド部材7cの表面と定着ベルト表面の距離は1.0mm)で長手方向に一定であり、定着ベルト1は長手方向に均一に加熱される。
【0047】
前述したように、励磁コイル6には、20〜50kHzの高周波電流が印加されて、定着ベルト1の基層(金属層)1aが誘導発熱する。そして、定着ベルト1の目標温度である180℃で一定になるように、温度センサTH1の検出値に基づいて高周波電流の周波数を変化させて励磁コイル6に入力する電力を制御して温度調節される。
【0048】
励磁コイル6を含む誘導加熱装置100は、高温になる定着ベルト1の内部ではなく外部に配置されているので、励磁コイル6の温度が高温になりにくく、電気抵抗も上昇せず高周波電流を流してもジュール発熱による損失を軽減する事が可能となる。また、励磁コイル6を外部に配置したことで定着ベルト1の小径化(低熱容量化)にも寄与しており、しいては省エネルギー性にも優れていると言える。
【0049】
本実施形態の定着装置500のウォーミングアップタイムは、非常に熱容量が低い構成であるため、例えば励磁コイル6に1200W入力すると約15秒で目標温度である180℃に到達する。このため、スタンバイ中の加熱動作が不要となり、電力消費量を非常に低く抑える事が可能である。
【0050】
また、本実施形態の場合、定着ベルト1の発熱分布を変更するために、外側コア7aを移動させる。このために、本実施形態の場合、図5に示す様に、複数の外側コア7aを、定着ベルト1に対向する位置に、定着ベルト1の回転軸線方向(長手方向)に並べて配置している。これら複数の外側コア7aは、励磁コイル6の巻き中心部と周囲を囲むように形成されたそれぞれの略円弧状部分の中央部に、突起7bを設けてなる。そして、この突起7bを励磁コイル6に形成された透孔6aを貫通させるようにしている。なお、励磁コイル6の長手方向両端部の透孔6aが形成されていない部分に対向する外側コア7aには、突起7bを設けていない。
【0051】
このように構成される外側コア7aは、励磁コイル6より発生した交流磁束を効率よく定着ベルト1に導く役割をする。すなわち、磁気回路(磁路)の効率を上げるためと磁気遮蔽のために用いている。外側コア7aの材質としては、フェライト等の高透磁率残留磁束密度の低いものを用いると良い。
【0052】
外側コア7aが定着ベルト1に近づき、前述の図2に示したように、突起7bが透孔6aを貫通した状態で、外側コア7aと内側コア5とで磁気閉回路を構成する。そして、励磁コイル6により発生させた磁束を外側コア7aにより定着ベルト1に導き、定着ベルト1を発熱させる。一方、図6に示す様に、外側コア7aを定着ベルト1から遠ざけると、励磁コイル6により発生させた磁束が外側コア7aを通じて定着ベルト1を通過しにくくなり、定着ベルト1の発熱量が低下する傾向となる。なお、後述するように、外側コア7aを定着ベルトから離れる方向へ退避させたとしても、その外側コア7aと対向する定着ベルトの領域は電磁誘導加熱され得る関係となっている。
【0053】
このように外側コア7aを定着ベルト1に遠近動させるために、図6に示す様に、磁性コア移動手段(退避機構)としてのカム機構70を、外側コア7aの定着ベルト1と反対側に配置している。カム機構70は、複数のカム71と、これらカム71を回転駆動するモータ72とにより構成される。複数のカム71は、図5に示す2つの長手方向端部側の領域Eに、例えば3個ずつの外側コア7aに1個、それぞれ対応するように配置されている。そして、各カム71の位相を互いに変えることにより、少なくとも一部の外側コア7aを定着ベルト1から選択的に離すことができるようにしている。即ち、一部の外側コア7aを定着ベルト1に対して遠近動させる。
【0054】
また、領域Eの外側コア7aに定着ベルト1から離れる方向に、バネなどにより弾性力を付与する。そして、カム71が回転することによりこの弾性力に抗して、一部の外側コア7aを定着ベルト1に近づけるようにする。そして、定着ベルト1の回転軸線方向の発熱分布を制御する。なお、長手方向中央の領域Dは、小サイズ紙幅に対応した通紙領域幅となっており、領域Dと領域Eを合わせた幅は大サイズ紙幅に対応した通紙領域幅となっている。このため、領域Dに対応する外側コア7aは移動不能にハウジングに固定されている。
【0055】
また、1個のカム71により移動させる外側コア7aの数は、1個でも複数でも良いが、複数のサイズの記録紙の通紙幅に対応できるように設定することが好ましい。即ち、種々の紙サイズ、例えばハガキ、A5、B4、A4、A3ノビサイズの非通紙部昇温の回避に対応できるよう、通紙端部の領域Eにおいて、複数の外側コア7aを定着ベルト1に円起動させる。
【0056】
例えば、外側コア7aの長手方向の幅は10mmとする。そして、記録紙のサイズに対応して外側コア7aが移動することで、非通紙部での昇温を抑制する。
【0057】
また、本実施形態の場合、定着ベルト1の回転軸線方向の発熱分布を制御するために、励磁コイル6により発生する磁束が定着ベルト1を通過するのを実質的に防止する磁束抑制部材としての磁束遮蔽板11を設けている。このような磁束遮蔽板11は、移動手段(移動機構)であるスクリュー機構11aにより、定着ベルトの幅方向に実質沿う方向にスライド移動自在としている。本実施形態では、スクリュー機構11aは、磁束遮蔽板11を定着ベルト1と外側コア7a及び励磁コイル6との間のうちの、少なくとも回転軸線方向の一部の領域に進退させる。そして、定着ベルト1の回転軸線方向の発熱分布を制御するようにしている。具体的には、画像加熱装置に使用可能な最大幅の記録紙よりも幅狭の所定の記録紙に画像加熱処理を施すとき、磁束遮蔽板11を、定着ベルト1が所定の記録紙Pと接触し得る領域よりも定着ベルト1の幅方向外側の領域に移動させる。そして、励磁コイル6から定着ベルト1に向かう磁束のうち、この定着ベルト1の幅方向外側の領域の一部に向かう磁束を抑制する。
【0058】
本実施形態では、最大幅の記録紙よりも幅狭の所定の記録紙Pに画像形成を行う場合、定着ベルト1の非通紙領域が過昇温しないように外側コア7aを退避させるが、この非通紙領域のうち領域Wにおいて定着ベルト1は昇温し得る関係となっている。つまり、磁束遮蔽板11により定着ベルト1の領域Wにおける磁束が遮蔽されない関係となっている。そこで、この領域Wにおける定着ベルト1の過昇温を抑制するため、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させることにより、間接的に定着ベルト1を冷却する。その結果、磁束遮蔽板11の幅方向(記録紙の搬送方向と直交する方向)長さを長くすることによる装置の大型化を回避しつつ、定着ベルトの熱劣化を防ぐことが可能となる。
【0059】
詳細には、図9に示すように、A4サイズの記録紙Pに定着処理(画像加熱処理)を施す場合、制御回路部(制御手段)により移動機構を制御することにより、磁束遮蔽板11を記録紙の幅方向長さに応じて移動させる。このとき、最大幅の記録紙に定着処理を施す場合、磁束遮蔽板11を定着ベルト1の幅方向端部から完全に退避させた状態にすることになる。ここで、本実施形態では、この退避スペースが大きくなってしまうのを避ける為、磁束遮蔽板11の幅方向長さを短くしている。従って、磁束遮蔽板11を図9に示す位置に移動した場合、図9のWで示す領域に向かう磁束を磁束遮蔽板11により遮蔽できない構成となっており、この領域において定着ベルト1の過昇温が課題となる。具体的には、この領域Wにおいて、外側コア7aが定着ベルト1(及び励磁コイル)から退避しているものの、装置の大型化を避ける為、外側コア7aの退避量を大きく確保できない。このため、定着ベルト1が相当程度加熱されてしまう関係にある。
【0060】
そこで、本実施形態では、後述するように、均熱ローラ9を用いて加圧ローラ2を冷却することにより、間接的に定着ベルト1の領域Wを冷却する構成としている。なお、定着ベルト1の領域Wのうち幅方向端部側は自然放熱により過剰に昇温し難い関係にあることから、本実施形態では、領域Wの全領域を冷却することはしていない。
【0061】
より具体的に説明する。前述したように、非通紙部においては励磁コイル6と外側コア7aの隙間を広げることで、定着ベルト1を通過する磁束密度を低め、定着ベルト1の発熱量を低下させている。本実施形態の場合、この状態で、図6に示す様に、磁束遮蔽板11を非通紙部の外側コア7a及び励磁コイル6と定着ベルト1との間に進入させて、定着ベルト1に磁束が向かうのを実質阻止している。そして、非通紙部の昇温を抑制するようにしている。
【0062】
磁束遮蔽板11としては、アルミニウム、銅、銀、金、真鍮などの非磁性金属やその合金でも良いし、高透磁率部材であるフェライトやパーマロイなどの材料でもよい。また、磁束遮蔽板11は励磁コイル6と外側コア7aの間、励磁コイル6と定着ベルト1の間、もしくは定着ベルト1と内側コア5の間などに進退させることにより、定着ベルト1に磁束が向かうのを抑制する。
【0063】
本実施形態においては、図6に示すように、磁束遮蔽板11として銅板を用い、励磁コイル6と定着ベルト1の間に磁束遮蔽板11を挿入する。銅板の厚みとしては表皮深さ以上である0.5mmのものを用いる。磁束遮蔽板11をとして銅板を使用することにより、コア移動より磁束を弱め定着ベルト1の基層1aの発熱量を低下する効果をより大きくできる。
【0064】
磁束遮蔽板11を移動させるスクリュー機構11aは、外側コア7aの移動機構であるカム機構70と連動して移動することで、外側コア7aの分割幅よりも細かく長手発熱分布を制御できる。スクリュー機構11aは、図6に示す様に、定着ベルト1の長手方向と平行に配置されたスクリュー11bと、このスクリュー11bを回転させるモータ11cと、モールド部材11dとを有する。
【0065】
モールド部材11dは、磁束遮蔽板11と一体に形成され、スクリュー11bの回転によりこのスクリュー11bに沿って移動する。したがって、本実施形態の場合、モータ11cを制御することにより、磁束遮蔽板11を移動させ、定着ベルト1の長手方向一部で磁束を遮蔽する。
【0066】
このような磁束遮蔽板11は長手方向において定着ベルト1の両端部に配置される。また、両端部にそれぞれ配置された磁束遮蔽板11は、互いに逆方向に移動する。即ち、記録紙の通紙幅が小さい時は互いに近づく方向に移動し、通紙幅が大きい時は互いに離れる方向に移動する。また、それぞれの端部に配置される磁束遮蔽板11の長手幅(記録紙搬送方向と交差する方向の幅)は、次のように設定することが好ましい。即ち、磁束遮蔽効果を発揮する十分な幅を持つこと、最大サイズ紙に対応する最大発熱幅を低減しないこと、そして、定着器の長手幅も拡大することなく配置出来る幅とした。具体的には、20mmとした。
【0067】
[トナーの温度と溶融粘度との関係]
ここで、本実施形態で使用するトナーの温度と溶融粘度との関係を調べた結果を、図7に示す。トナーの溶融粘度はフローテスターで測定した。フローテスターによるトナーの溶融粘度の測定は、フローテスターCFT−500D(株式会社島津製作所製)を用い、装置の操作マニュアルに従い、下記の条件で測定を行った。
・サンプル:トナーを1.0g秤量し、これを直径1cmの加圧成型器により荷重20kNで1分間加圧することで成型してサンプルとする。
・ダイ穴径:1.0mm
・ダイ長さ:1.0mm
・シリンダ圧力:9.807×105(Pa)
・測定モード:昇温法・昇温速度:4.0℃/min
【0068】
上記の方法により、50℃乃至200℃におけるトナーの粘度(Pa・s)を測定した。
【0069】
[通紙枚数と定着ベルトの表面温度との関係]
次に、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104A4サイズの記録紙を連続通紙した時の通紙枚数に対する定着ベルト1の表面温度(ベルト表面温度)の推移を図8に示す。ベルト表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト中央部の温度を測定した。この測定は、画像形成のジョブの開始時から均熱ローラ9を加圧ローラ2に常に当接させて行った。
【0070】
図8より、均熱ローラが加圧ローラに常に着した状態であるため、加圧ローラの熱が均熱ローラに奪われ、そしてベルト表面温度も低下した。即ち、定着ベルト1の表面温度は、図8に示す様に、ジョブの開始、即ち、ニップ部に通紙を開始すると同時に低下し始める。この際、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させているため、均熱ローラ9に熱を奪われる分、温度低下が著しくなる。そして、通紙枚数が所定枚数(図8では12枚)を超えると、温度低下が終了し、以降は、徐々に温度が上昇していく。即ち、通紙枚数が所定枚数となった時に、ベルト表面温度が最下点温度となる。
【0071】
ここで、図8に示す様に、ジョブ開始時から均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させておくと、最下点温度が175℃未満となる。上述の図7に示したように、トナーの溶融粘度は、温度が低くなる高くなるため、ベルト表面温度が低いほどトナーが溶融していないことになる。特に、本実施形態のトナーの場合、ベルト表面温度が175℃未満となると、溶融が不十分となり、記録紙からトナーが剥がれ易くなる。したがって、記録紙からトナーが剥がれることを防止するためには、上述の最下点温度が175℃以上となるようにするのが好ましい。
【0072】
[通紙領域に対する定着ベルト表面の温度分布について]
次に、通紙領域に対する定着ベルト表面の温度分布について示す。図9に、A4サイズの記録紙を通紙したときの定着ベルト表面の温度分布を示す。なお、図9は、上側に示す記録紙を通紙する定着装置の模式図に対応させて、下側に定着ベルト表面の温度分布を示している。
【0073】
ここでは、励磁コイル6に投入する電力は1200wに設定し、通紙する記録紙はA4サイズであるので、図9の上側に示すように、外側コア7aは両端部の4つを定着ベルト1から離している。また、磁束遮蔽板11の位置は、定着ベルト1の端部から35mmの位置(記録紙端部から外側に15mmの位置)に設定してある。均熱ローラ9は加圧ローラ2に対して、常に当接させたままである。また、図9の下側に示す定着ベルト1の長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。
【0074】
図9に示したように、通紙枚数に因らず、非通紙部のベルト表面温度は、ベルトへの熱の影響を及ぼしやすくなる臨界温度を超えることは無かった。このように、外側コア7aの移動と、磁束遮蔽板11と、均熱ローラ9とを適宜組み合わせて、小サイズ紙の非通紙部の過昇温を防止して、定着ベルト1が熱により破損することを防止できる。但し、図8に示したように、最下点温度が低すぎると、トナーが記録紙から剥がれてしまう。
【0075】
そこで、本実施形態では、均熱ローラ9を、画像形成ジョブの開始時には加圧ローラ2から離しておき、所定の条件を満たしてから加圧ローラ2に当接させるようにしている。即ち、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるタイミングを遅らせている。本実施形態の場合、所定の条件は、連続通紙枚数が所定の枚数を超えた場合としている。即ち、最大幅の記録紙よりも幅狭の複数の所定の記録紙に連続して画像形成を行う連続画像形成ジョブの開始から所定数(所定枚数)の記録紙がニップ部Nを通過した場合(画像加熱処理を行った際)に、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させる。この所定枚数は、定着ベルトの表面温度が、前述の最下点温度に到達する枚数である。言い換えれば、本実施形態では、ベルトの温度が最下点温度を過ぎてから(所定温度に降下した際に)均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるようにしている。
【0076】
このような均熱ローラ9を加圧ローラ2に接離させるのは、前述した接離機構501である。また、この接離機構501は、制御手段である均熱ローラ制御部1006(次述する図10参照)により制御される。
【0077】
以下、このような本実施形態の構成について、より詳しく説明する。なお、本実施形態の定着装置500の初期状態(プリントのジョブを受け付ける前の状態)の外側コア7a、磁束遮蔽板11の位置の初期位置はA4サイズ(最大幅の記録紙よりも幅狭の所定の記録紙)に対応している。具体的には、前述の図9に示したように、外側コア7aは端部から4個上げ、磁束遮蔽板11は定着ベルト端部から35mmの位置としている。また、均熱ローラ9の初期位置は加圧ローラ2から離している。加圧ローラ2の初期位置は定着ベルト1から離している。
【0078】
本実施形態の制御を図10に示すブロック図を使って説明する。操作部301またはPCから、ユーザが出力する記録材種の情報(用紙サイズおよび用紙種類)が記録材情報処理部1002に送られ、記録材情報処理部1002の情報が、CPU1000に転送される。CPU1000は、メモリ1001を参照し、記録材情報処理部1002の情報によって、外側コア7aの移動制御量、磁束遮蔽板の制御量を判断し、それぞれの制御量を、コア移動制御部1004、磁束遮蔽板制御部1005に転送する。そして、コア移動制御部1004は所定の外側コア7aを定着ベルト1から離し、磁束遮蔽板制御部1005は、所定の位置に磁束遮蔽板11を移動させる。
【0079】
また、画像形成の枚数がカウンタ1003によりカウントされ、その情報が、CPU1000に転送される。このカウント枚数は、定着装置500のニップ部Nを通過した記録紙の枚数とする。CPU1000ではその情報により、メモリを参照し、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるタイミングを判断する。CPU1000は均熱ローラ9を当接させるタイミングであると判断したら、均熱ローラ制御部1006に指令を出し、均熱ローラ制御部は均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させる。即ち、カウンタ1003によりカウントされた枚数が所定枚数(例えば12枚)となったときに、均熱ローラ制御部は均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させる。
【0080】
なお、このように、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるトリガーとなる所定枚数は、記録紙の坪量、サイズ、環境温度、定着装置に投入する電力の大きさ、ジョブの開始時の加圧ローラの表面温度などを考慮して適宜設定する。例えば、3〜50枚の範囲で設定する。この設定枚数は、このような条件を考慮して可変にしても良いし、一定にしても良い。
【0081】
本実施形態の制御フローについて、図11を用いて説明する。まず操作パネルまたは、PCから記録材の種類を設定し、コピーまたは、プリントしたいジョブ(JOB)を画像形成装置に送りJOBをスタートさせる(S11)。各部材(外側コア7a、磁束遮蔽板11、均熱ローラ9、加圧ローラ2)のホームポジション検知を行う(S12)。
【0082】
その後、紙サイズに応じて、外側コア7a、磁束遮蔽板をそれぞれ移動させる(S13、S14)。加圧ローラ2を定着ベルト1に当接させ、加圧し、ニップ部Nを形成する(S15)。加圧ローラ2を回転駆動させ、定着ベルト1を回転させる(S16)。励磁コイル6に電流を流し、定着ベルト1を発熱させ、定着ベルト1を温調する(S17)。各画像形成部において、各色の画像を形成し、記録紙に転写し、定着し、画像を出力する(S18)。
【0083】
その後、画像形成JOBが終了であれば(S19のYes)、励磁コイル6に流れている電流を遮断し、定着ベルト1の温調を停止する(S20)。均熱ローラ9が加圧ローラ2に当接していれば、均熱ローラ9を加圧ローラ2から離す(S21)。また、加圧ローラ2を定着ベルト1から離す(S22)。外側コア7a、磁束遮蔽板11を初期位置(ホームポジション位置)に移動させ(S23)、JOBを終了させる。
【0084】
画像形成JOBが終了でなければ(S19のNo)、画像形成枚数が所定枚数(12枚目)かをCPU1000が判断する(S24)。画像形成枚数が所定枚数未満(12枚未満)であれば(S24のNo)、S18に戻り、引き続き画像形成動作を繰り返す。画像形成枚数が所定枚数以上(12枚以上)であれば(S24のYes)、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させ、非通紙部昇温を抑制する制御を行う(S25)。ここでは、12枚目をカウントしたら均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させ、12枚以上ではこの当接状態を維持する。その後画像形成動作をJOBが終了するまで行う。
【0085】
本実施形態の制御をタイミングチャートについて、図12を用いて説明する。図12はA5サイズの記録紙を出力するときのタイミングチャートである。図12において、スタートはプリント命令(画像形成ジョブを開始させる信号)を画像形成装置が受け付けた状態である。通紙サイズがA5であるので、まず、外側コア7aを移動させるモータ72が作動して、外側コア7aを両端部から6個持ち上げる制御を行う。外側コア7aを動かしている間に、磁束遮蔽板11を移動させるモータ11cを作動させて、磁束遮蔽板11をベルト端部から80mmの位置に移動させる。
【0086】
その後、加圧ローラを定着ベルト1に接離させるためのモータを駆動させ、加圧ローラ2を定着ベルト1に当接させ、ニップ部Nを形成する。次に加圧ローラ2を駆動モータにより駆動させ、加圧ローラ2及び定着ベルト1を回転駆動させる。励磁コイル6に電圧を印加し、定着ベルト1を温調させる。画像成形を開始し、記録紙上に画像を出力する。
【0087】
通紙枚数が所定枚数に達したら、均熱ローラ9を加圧ローラ2に接離させるモータ501dを駆動させ、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させ、定着ベルト1の非通紙部の過昇温を抑制する。なお、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるタイミングは、カウントした枚数が所定の枚数となった後であり、例えば、12枚目をカウントしてから13枚目がカウントされるまでに当接させる。
【0088】
画像形成が終了したら、温調を停止し、モータ501dを駆動させ、均熱ローラ9を加圧ローラ2から離す。その後加圧ローラ駆動モータを停止し、加圧ローラ2の駆動を停止する。加圧ローラ着脱モータを駆動させ、加圧ローラ2を定着ベルト1から離す。その後、外側コア7aを移動させるモータ72、磁束遮蔽板11を移動させるモータ11cを駆動させ、外側コア7a及び磁束遮蔽板11をホームポジションに移動させ、ジョブを終了させる。
【0089】
本実施形態によれば、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるため、磁束遮蔽板11を長くすることなく、記録紙の端部に対応する領域の過昇温を抑制できる。この結果、装置の大型化を招くことなく、定着ベルト1が過剰に昇温してしまうのを抑制することができる。
【0090】
また、ジョブの開始時には均熱ローラ9を加圧ローラ2から離し、所定の条件を満たしてから、即ち、所定枚数をカウントしてから均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させるようにしている。上述したように、定着ベルト1はジョブの開始時に最も温度低下が生じる。このため、このように均熱ローラ9の当接のタイミングを遅らせることで、均熱ローラ9を当接させることによる定着ベルト1の温度低下を抑制し、定着ベルト1の温度が低下し過ぎることを防止できる。そして、トナーが記録紙から剥がれることを抑制できる。
【0091】
なお、本実施形態では、均熱ローラを当接させる所定枚数は、最下点温度に到達する枚数としているが、この所定枚数の設定は、その他の条件としても良い。例えば、最下点温度を過ぎてから一定の枚数となった場合としても良い。また、最下点温度に到達する前の或る枚数で均熱ローラを当接させても、最下点温度が、トナーが記録紙から剥がれる温度にならない場合には、この枚数を所定の枚数とすることもできる。要は、最下点温度が、トナーが記録紙から剥がれる温度に到達しないようなタイミングで、均熱ローラを当接させれば良い。
【0092】
[検証結果]
次に、本実施形態の構成を検証した結果について説明する。上述の構成の定着装置500で、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104 A4サイズの記録紙を連続通紙した。まず、通紙枚数に対するベルト表面温度の推移を、図13に示す。ベルト表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト中央部の温度を測定した。図13より、記録紙からトナーが剥がれてしまう温度である175℃よりベルト表面温度が低下せず、記録紙からトナーが剥がれてしまうことは無かった。
【0093】
次に、定着装置500において、記録紙を80ppm(枚数/分)で500枚通紙したときの、通紙枚数に対する、長手方向の温度分布を図14に示す。長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。
【0094】
図14より、連続通紙枚数が500枚後においても、非通紙部の昇温温度は、臨界温度である230℃以下となり、非通紙部の昇温を抑えることができた。なお、臨界温度よりも定着ベルト温度が高くなってしまうと、ベルトが劣化し、耐久通紙可能枚数が大幅に低減してしまう。
【0095】
以上説明したように、本例の定着装置を用いると、記録紙の幅サイズが多種類であっても、装置の大型化を阻止しつつ、非通紙部昇温を充分に回避することができる。
【0096】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図15ないし図18を用いて説明する。上述の第1の実施形態では、均熱ローラを加圧ローラに当接させるタイミングが、通紙枚数が所定枚数を過ぎた場合について説明した。これに対して本実施形態では、定着ベルトの表面温度を検知して、定着ベルトの表面温度が最下点温度を過ぎたことを把握してから(所定温度に降下した際に)、均熱ローラを加圧ローラに当接させる。
【0097】
このような本実施形態の定着装置の構成は、第1の実施形態と同様であり、図2に示したように、温度検知手段である温度センサ(サーミスタ、温度検出素子)TH1が定着ベルト1の幅方向中央内面部の位置に当接させて配設してある。なお、温度センサTH1は、定着ベルト1の内周面の温度を検知しているが、その検知情報は、制御回路部102で例えばメモリに記憶されたテーブルなどにより定着ベルト1の表面温度に変換される。したがって、温度センサTH1により定着ベルト1の表面温度を検知できる。なお、温度センサを定着ベルト1の表面(外周面)に対向或いは当接させて、直接、定着ベルト1の表面温度を検知するようにしても良い。
【0098】
このように、温度センサTH1により定着ベルトの表面温度を検知し、通紙中の定着ベルトの最下点温度を計測することができる。最下点温度は、環境、紙種などにより変り、事前の検討で、環境、紙種と最下点温度の関係は把握しており、その情報は画像形成装置のメモリに格納されている。即ち、温度センサTH1の検知結果が、メモリに記憶されている最下点温度となった場合に、均熱ローラ9を加圧ローラ2に当接させる。
【0099】
なお、最下点温度が事前に分かっていなくても、温度センサTH1の検知結果から最下点温度を把握できる。この点について説明する。まず、温度センサTH1が最下点温度を検知した時点では、その温度が最下点温度であるかどうかはわからない。前述したように、定着ベルトの温度は、ジョブの開始から徐々に低下し、或る通紙枚数を超えた後は上昇していく。したがって、温度がそれ以上、下がらなくなったことを把握できた時点で、最下点温度を過ぎたことを把握できる。即ち、温度が上昇に転じた時点が分かれば、最下点温度を過ぎたことを把握できる。
【0100】
本実施形態の制御について、図15のブロック図を用いて説明する。操作部301またはPCから、ユーザが出力する記録材種の情報(用紙サイズおよび用紙種類)が記録材情報処理部1002に送られ、記録材情報処理部1002の情報が、CPU1000に転送される。CPU1000では、メモリ1001を参照し、記録材情報処理部1002の情報によって、外側コア7aの移動制御量、磁束遮蔽板の制御量を判断する。そして、それぞれの制御量を、コア移動制御部1004、磁束遮蔽板制御部1005に転送する。コア移動制御部1004は所定の外側コア7aを定着ベルト1から離し、磁束遮蔽板制御部1005は、所定の位置に磁束遮蔽板11を移動させる。
【0101】
サーミスタ1007の情報が、CPU1000に転送される。サーミスタ1007の情報とは、温度センサTH1の検知結果である。CPU1000ではその情報より、定着ベルトの表面温度がそのジョブの中で1度の最下点温度を過ぎたか判断する。この判断では、上述のように予め調べてメモリに記憶された最下点温度を参照しても良いし、温度が上昇に転じたことにより最下点温度を過ぎたことを把握するようにしても良い。定着ベルト温度が最下点温度を過ぎていたら、CPU1000は、制御手段である均熱ローラ制御部1006に指令を出し、均熱ローラ制御部1006は均熱ローラを加圧ローラに当接させる。
【0102】
本実施形態の制御フローを図16のフローチャートを用いて説明する。まず操作パネルまたは、PCから記録材の種類を設定し、コピーまたは、プリントしたいジョブ(JOB)を画像形成装置に送りJOBをスタートさせる(S31)。各部材(外側コア、磁束遮蔽板、均熱ローラ、加圧ローラ)のホームポジション検知を行う(S32)。
【0103】
その後紙サイズに応じて、外側コア、磁束遮蔽板を移動させる(S33、S34)。加圧ローラを定着ベルトに当接させ、加圧し、ニップ部を形成する(S35)。加圧ローラを回転駆動させ、定着ベルトを回転させる(S36)。励磁コイルに電流を流し、定着ベルトを発熱させ、定着ベルトを温調する(S37)。各画像形成部において、各色の画像を形成し、記録紙に転写し、定着し、画像を出力する(S38)。
【0104】
その後、画像形成を続け、1つのJOB内で定着ベルトの表面温度が最下点温度を過ぎたかをCPUが判断する(S39)。1JOB内で定着ベルトの表面温度が1度も最下点温度を過ぎておらず(S39のNo)、画像形成が終了していなければ(S40のNo)、S38に戻り、引き続き画像形成動作を繰り返す。1JOB内で定着ベルトの表面温度が1度最下点温度を過ぎれば(S39のYes)、均熱ローラを加圧ローラに当接させ、非通紙部昇温を抑制する制御を行う(S41)。
【0105】
画像形成JOBが終了かどうかをCPUが判断し、終了でなければ(S42のNo)、画像形成動作を引き続き繰り返す(S43)。画像形成JOBが終了であれば(S42のYes)、励磁コイルに流れている電流を遮断し、定着ベルトの温調を停止する(S44)。また、均熱ローラが加圧ローラに当接していれば、均熱ローラを加圧ローラから離す(S45)。また、加圧ローラを定着ベルトから離す(S46)。外側コア、磁束遮蔽板を初期位置(ホームポジション位置)に移動させ(S47)、JOBを終了させる。
【0106】
本実施形態の場合、温度センサTH1により検知する定着ベルトの表面温度が最下点温度を過ぎてから、均熱ローラを加圧ローラに当接させている。このとき、定着ベルトの表面の温度は上昇に転じているため、均熱ローラを当接させても、再び温度が低下することはなく、定着ベルトの温度が低下しすぎることを防止できる。そして、トナーが記録紙から剥がれることを抑制できる。
【0107】
なお、上述の説明では、温度センサTH1が最下点温度を検知した後に、均熱ローラを加圧ローラに当接させている。但し、この均熱ローラを当接させるタイミングは、温度センサTH1が最下点温度を検知してからニップ部を通過する記録紙の数が所定の数となった場合としても良い。即ち、定着ベルトの表面温度が最下点温度を過ぎた後に、均熱ローラを加圧ローラに当接させるようにすれば、上述したような効果が得られるため、この最下点温度の検知後、すぐに均熱ローラを当接させなくても良い。但し、非通紙昇温を有効に抑制するためには、上述の所定の数は50枚とすることが好ましい。
【0108】
[検証結果]
次に、本実施形態の構成を検証した結果について説明する。上述の構成の定着装置で、温度15℃、湿度15%の環境下において、キヤノン(株)製のGF−C104 A4サイズの記録紙を連続通紙した。まず、通紙枚数に対するベルト表面温度の推移を図17に示す。ベルト表面温度は、KEYENCE社製 赤外放射温度計IT2−50を用いて、ベルト中央部の温度を測定した。図17より本実施例では、記録紙からトナーが剥がれてしまう温度である175℃よりベルト表面温度が低下せず、記録紙からトナーが剥がれてしまうことは無かった。
【0109】
次に定着装置において、記録紙を80ppmで500枚通紙したときの、通紙枚数に対する、長手方向の温度分布を図18に示す。長手方向の温度分布は、株式会社アピステ製 赤外線サーモグラフィFSV−7000Sを用いて測定した。
【0110】
図18より、連続通紙枚数が500枚後においても、非通紙部の昇温温度は、臨界温度である230℃以下となり、非通紙部の昇温を抑えることができた。なお、臨界温度よりも定着ベルト温度が高くなってしまうと、ベルトが劣化し、耐久通紙可能枚数が大幅に低減してしまう。
【0111】
以上説明したように、本実施例の定着装置を用いると、装置の大型化を招くことなく、記録紙のサイズが多種類であっても非通紙部昇温を充分に回避することができる。
【0112】
なお、本実施形態では、定着ベルト温度が最下点温度を過ぎてから均熱ローラを加圧ローラに着する構成で説明したが、他の形態として定着ベルトの非通紙部の温度を検知しておき、その温度情報に基づいて均熱ローラを加圧ローラに着する構成でも良い。
【0113】
<他の実施形態>
上述の各実施形態では、画像加熱装置が、記録紙に形成された未定着のトナー像を記録紙に定着させる定着装置を例に、説明した。但し、本発明は、画像加熱装置が、記録紙に定着された定着画像を加熱して画像の光沢度を向上させる光沢付与装置である場合にも、適用可能である。このような光沢付与装置の場合も、定着装置と同様の非通紙部の過昇温が生じる場合があり、均熱ローラを当接させることにより、この過昇温を抑制できる。
【0114】
また、均熱ローラをジョブの開始から当接させれば、最下点温度が低下しすぎて、例えば、所望の光沢を付与できない可能性がある。したがって、上述の各実施形態と同様に、通紙枚数や検知した定着ベルトの表面温度から判断して、均熱ローラを加圧ローラに当接させるタイミングを遅らせることにより、最下点温度が低下しすぎるとことを防止できる。
【0115】
以上、本発明を適用できる実施例について詳細に説明したが、本発明の思想の範囲内において、各種機器を他の公知の構成に置き換えることは可能である。
【符号の説明】
【0116】
1・・・定着ベルト(エンドレスベルト)、2・・・加圧ローラ(駆動回転体)、6・・・励磁コイル、7・・・外側コア(磁性コア)、70・・・カム機構(退避機構)、11・・・磁束遮蔽板(磁束抑制部材)、11a・・・スクリュー機構(移動機構)、500・・・定着装置(画像加熱装置)、501・・・接離機構、1006・・・均熱ローラ制御部(制御手段)、Pa、Pb、Pc、Pd・・・画像形成部、TH1・・・温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上のトナー像をニップ部にて加熱するエンドレスベルトと、
前記エンドレスベルトを電磁誘導加熱する励磁コイルと、
前記エンドレスベルトとの間で前記ニップ部を形成するとともに前記エンドレスベルトを回転駆動する駆動回転体と、
画像加熱装置に使用可能な最大幅の記録材よりも幅狭の所定の記録材に画像加熱処理を施すとき、前記励磁コイルから前記エンドレスベルトに向かう磁束のうち、前記エンドレスベルトが前記所定の記録材と接触し得る領域よりも前記エンドレスベルトの幅方向外側の領域の一部に向かう磁束を抑制する磁束抑制部材と、
前記駆動回転体に当接して前記駆動回転体から吸熱する吸熱回転体と、を備えた、
ことを特徴とする画像加熱装置。
【請求項2】
前記吸熱回転体を前記駆動回転体に接離させる接離機構を更に有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の画像加熱装置。
【請求項3】
前記接離機構の動作を制御する制御手段を更に有し、前記制御手段は所定枚数の前記所定の記録材に連続して画像加熱処理を行った際に前記吸熱回転体を前記駆動回転体に当接させる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像加熱装置。
【請求項4】
前記エンドレスベルトの幅方向端部側の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの出力に基づいて前記接離機構の動作を制御する制御手段とを更に有し、前記制御手段は前記温度センサによる検知温度が所定温度に降下した際に前記吸熱回転体を前記駆動回転体に当接させる、
ことを特徴とする、請求項2に記載の画像加熱装置。
【請求項5】
記録材の前記幅方向長さに応じて前記磁束抑制部材を前記エンドレスベルトの幅方向に実質沿って移動させる移動機構を更に有する、
ことを特徴とする、請求項1ないし4のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項6】
前記励磁コイルは前記エンドレスベルトの外側近傍に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1ないし5のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項7】
前記励磁コイルよりも前記エンドレスベルトから離れた側に配置され、且つ、前記エンドレスベルトの幅方向に並んで配置された複数の磁性コアを更に有する、
ことを特徴とする、請求項6に記載の画像加熱装置。
【請求項8】
記録材の前記幅方向長さに応じて前記複数の磁性コアのうち少なくとも1つの磁性コアを前記励磁コイルから離れる方向へ退避させる退避機構を更に有する、
ことを特徴とする、請求項7に記載の画像加熱装置。
【請求項9】
前記画像加熱装置は記録材上の未定着トナー像を前記ニップ部にて定着する、
ことを特徴とする、請求項1ないし8のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項10】
前記吸熱回転体は前記駆動回転体に従動回転可能なローラである、
ことを特徴とする、請求項1ないし9のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項11】
記録材上のトナー像をニップ部にて加熱するエンドレスベルトと、
前記エンドレスベルトを電磁誘導加熱する励磁コイルと、
前記エンドレスベルトの幅方向に並んで配置された複数の磁性コアと、
前記エンドレスベルトとの間で前記ニップ部を形成するとともに前記エンドレスベルトを回転駆動する駆動回転体と、
記録材の前記幅方向長さに応じて前記複数の磁性コアのうち少なくとも1つの磁性コアを前記励磁コイルから離れる方向へ退避させる退避機構と、
前記駆動回転体に当接して前記駆動回転体から吸熱する吸熱回転体と、を備えた、
ことを特徴とする画像加熱装置。
【請求項12】
前記吸熱回転体を前記駆動回転体に接離させる接離機構を更に有する、
ことを特徴とする、請求項11に記載の画像加熱装置。
【請求項13】
前記接離機構の動作を制御する制御手段を更に有し、前記制御手段は所定枚数の前記所定の記録材に連続して画像加熱処理を行った際に前記吸熱回転体を前記駆動回転体に当接させる、
ことを特徴とする、請求項12に記載の画像加熱装置。
【請求項14】
前記エンドレスベルトの幅方向端部側の温度を検知する温度センサと、前記温度センサの出力に基づいて前記接離機構の動作を制御する制御手段とを更に有し、前記制御手段は前記温度センサによる検知温度が所定温度に降下した際に前記吸熱回転体を前記駆動回転体に当接させる、
ことを特徴とする、請求項12に記載の画像加熱装置。
【請求項15】
前記励磁コイルは前記エンドレスベルトの外側近傍に配置されており、前記複数の磁性コアは前記励磁コイルよりも前記エンドレスベルトから離れた側に配置されている、
ことを特徴とする、請求項11ないし14のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項16】
前記画像加熱装置は記録材上の未定着トナー像を前記ニップ部にて定着する、
ことを特徴とする、請求項11ないし15のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。
【請求項17】
前記吸熱回転体は前記駆動回転体に従動回転可能なローラである、
ことを特徴とする、請求項11ないし16のうちの何れか1項に記載の画像加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2013−64997(P2013−64997A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−184435(P2012−184435)
【出願日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】