説明

画像化された要素の印刷機上現像

ネガ型画像形成性要素を熱画像化して、融合したコアシェル粒子から本質的になる露光領域と非露光領域とを有する画像化された要素を得る工程と、前記画像化された要素を印刷機上で、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて現像して、前記非露光領域のみを除去する工程とを含む方法を用いて、画像を得ることができる。この画像形成性要素は、赤外線吸収性化合物および熱画像化時に融合するコアシェル粒子から本質的になる単一の感熱画像形成性層を含む。前記コアシェル粒子のコアは、疎水性熱可塑性ポリマーから成り、前記コアシェル粒子のシェルは、前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーに共有結合している親水性ポリマーから成り、前記感熱画像形成性層は、10重量%未満の遊離ポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成性層中の熱融合性コアシェル粒子を用いる画像化およびネガ型画像形成性要素の印刷機上現像の方法に関する。その画像化された要素は、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて印刷機上で現像することができる。
【背景技術】
【0002】
従来の、すなわち「湿式の」平版印刷では、画像領域として知られているインク受容領域は、親水性表面上に作り出される。この表面が水で湿らされ、インクが適用された場合に、親水性領域は水を保持してインクをはじき、そしてインク受容領域はインクを受容して水をはじく。そのインクは画像が再生されるべき材料の表面に転写される。
【0003】
平版印刷版を調製するために有用な画像形成性要素は、一般的には基板の親水性表面の上に適用される1つまたは複数の画像形成性層を含んでいる。この画像形成性層は、適切なバインダー中に分散することができる1つまたは複数の放射光感受性成分を含んでいる。代替として、この放射光感受性成分はバインダー材料でもよい。画像化に続いて、この画像形成性層の画像化された領域または画像化されていない領域のいずれかが、適切な現像液によって取り除かれて、下にある基板の親水性表面を露出させる。画像化された領域が取り除かれる場合には、この要素はポジ型とみなされる。反対に、画像化されていない領域が取り除かれる場合には、この要素はネガ型とみなされる。それぞれの場合において、残っている画像形成性層の領域(すなわち、画像領域)は、インク受容性であり、そして現像プロセスによって露出された親水性表面の領域は水および水溶液、一般的には湿し水を受容し、インクをはじく。
【0004】
直接デジタル画像化が、印刷業界においてますます重要になってきている。平板印刷版の調製のための画像形成性要素が、赤外レーザーで使用するために開発されており、それは、コンピューター内の画像のデジタルコピー(プレートセッター)からの信号に応じて画像化する。この「CTP(computer-to-plate)」技術は、マスキングフィルムが要素を画像化するために使用されていたかつての技術を広く置き換えた。
【0005】
熱画像化は、周辺光に対するそれらの安定性のためにデジタル画像化システムに対して特に重要になっている。その要素は、熱または赤外線放射に感応性であるように設計されており、サーマルヘッドまたはより普通には赤外線レーザーダイオードを用いて露光することができる。この露光から発生する熱は、多くのやり方で、例えば、画像領域を物理的に除去する切除、感光性組成物の重合、架橋性ポリマーによる不溶化、ポリマーをアルカリ溶液に可溶性にすること、熱可塑性粒子の分解または凝集などに使用することができる。これらの画像化技術の殆どは、露光した(ポジ型の)または露光してない(ネガ型の)領域の画像化層(1つまたは複数)を除去するためのアルカリ現像液の使用を必要とする。
【0006】
表面に官能基を有する熱溶融性または熱融解性粒子が、例えば、米国特許第6218073号(Shimizuら)、米国特許第6509133号(Watanabeら)、および米国特許第6627380号(Saitoら)に記載されているように、画像形成性要素中で使用されている。その他の溶融性ポリマー粒子が、米国特許第6692890号(Huangら)に記載されている。
【0007】
画像形成性要素の親水性バインダー中に分散された融合性熱可塑性ポリマー粒子が、例えば、米国特許第6030750号(Vermeerschら)および米国特許第6110644号(Vermeerschら)に記載されている。
【0008】
米国特許第5609980号(Matthewsら)によれば、コアシェル粒子が、画像形成性層で使用され、熱画像化時に融合する。その粒子のシェルは、水性媒体中で可溶性または膨潤性である。
【0009】
EP 514145A1(Matthewsら)は、熱軟化性コアシェル粒子を画像化層中に含有している感熱性画像形成性要素について記載している。そのような粒子は加熱すると融合し、非融合粒子はアルカリ現像液を用いて除去する。これらの粒子のシェルは、特に非水溶性である。同様の組成物がEP 1642714Al(Wilkinsonら)に記載されており、そこではコアシェル粒子を、親水性バインダー中に分散させている。露光されなかった粒子は、アルカリ現像液の代わりにガム溶液を用いて除去する。
【0010】
同時係属で同一出願人による米国特許出願第12/017366号(Jarekにより2008年1月22日出願)は、水またはアルカリ溶液を用いて印刷機から離れて現像する融合性コアシェル粒子を含有するネガ型の画像形成性要素について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6218073号
【特許文献2】米国特許第6509133号
【特許文献3】米国特許第6627380号
【特許文献4】米国特許第6692890号
【特許文献5】米国特許第6030750号
【特許文献6】米国特許第6110644号
【特許文献7】米国特許第5609980号
【特許文献8】EP 514145A1
【特許文献9】EP 1642714Al
【特許文献10】米国特許出願第12/017366号
【特許文献11】米国特許第5713287号
【特許文献12】米国特許第4973572号
【特許文献13】米国特許第5208135号
【特許文献14】米国特許第5244771号
【特許文献15】米国特許第5401618号
【特許文献16】EP 0823327 A1
【特許文献17】米国特許出願公開第2005-0130059号
【特許文献18】WO 2004/101280
【特許文献19】米国特許第6309792号
【特許文献20】米国特許第6264920号
【特許文献21】米国特許第6153356号
【特許文献22】米国特許第5496903号
【特許文献23】米国特許第5488025号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】国際純正・応用化学連合(「IUPAC」)、「高分子科学の基本的述語の用語集(Glossary of Basic Terms in Polymer Science)」、Pure Appl. Chem.、68巻、1996年、2287〜2311頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
いくつかの参考文献に記されているように、融合性コアシェル粒子は、画像形成性要素中で用いられることが知られているが、それらの粒子は通常は親水性バインダー中に分散される。その上、そのような粒子を有する画像化された要素は、多くの場合、普通の現像液のようなアルカリ溶液中で、または、ガム溶液により現像しなければならない。印刷機上で現像することができる融合性粒子を有する画像形成性要素を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、
A) ネガ型画像形成性要素を熱画像化して、融合したコアシェル粒子から本質的になる露光領域と非露光領域とを有する画像化された要素を得る工程と、
B) 前記画像化された要素を印刷機上で、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて現像して、前記非露光領域のみを除去する工程と
を含み、
前記画像形成性要素が、親水性基板を含んでおり、かつその上には、赤外線吸収性化合物および熱画像化時に融合するコアシェル粒子から本質的になる単一の感熱画像形成性層を有しており、
前記コアシェル粒子のコアが、疎水性熱可塑性ポリマーからなり、
前記コアシェル粒子のシェルが、前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーに共有結合している親水性ポリマーからなり、
前記感熱画像形成性層が、10重量%未満の遊離ポリマーを含む、
画像形成方法
を提供する。
【0015】
本発明は、また、本発明の方法によって調製される親水性表面を含むアルミニウム含有基板を有する平版印刷版も提供する。
【0016】
本発明者らは、融合性粒子を含有し、印刷機上で処理または現像もできるネガ型画像形成性要素の設計手法を見出した。これが可能なのは、特定の融合性粒子、すなわち、あるコアシェル粒子が、画像形成性層中で使用されるためである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
定義
文脈から他のことを示していない限り、本明細書で使用する場合、用語「画像形成性要素」、「ネガ型画像形成性要素」、および「平版印刷版原版」は、本発明の実施に役立つ実施形態の言及であることを意図している。
【0018】
加えて、文脈から他のことを示していない限り、本明細書に記載の様々な成分、例えば、「コアシェル粒子」、「赤外線吸収性化合物」、および類似の用語は、そのような成分の混合物も指す。したがって、(原文における)冠詞の「1つの(aまたはan)」は、必ずしも単一の成分のみを指すことを意図していない。
【0019】
「単層」又は「単一・・・層」の画像形成性要素とは、画像を得るために必要な1つの層のみを有する本発明の画像形成性要素を意味する。コアシェル粒子(以下で定義する)が、通常は最外層であるこの画像形成性単層中に位置づけられている。しかしながら、そのような要素は、基板のどちらか一方の側および画像形成性層の下部にさらなる非画像化層を含むことができる。
【0020】
別段の指摘がない限り、百分率は、乾燥重量によるパーセントを指す。
【0021】
ポリマーに関する用語に対する定義の明確化のために、国際純正応用化学連合(「IUPAC」、the International Union of Pure and Applied Chemistry)によって出版された「高分子科学の基本的述語の用語集(Glossary of Basic Terms in Polymer Science)」、Pure Appl. Chem.、68巻、1996年、2287〜2311頁を参照すべきである。しかしながら、本明細書に明確に示されている定義は、支配的なものとみなすべきである。
【0022】
別段の指摘がない限り、用語「ポリマー」は、オリゴマーを含む高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーを指し、ホモポリマーおよびコポリマーを含める。
【0023】
用語「コポリマー」は、2つ以上の異なるモノマーから生じるポリマーを指す。すなわち、それらは、少なくとも2つの異なる化学構造を有する繰り返し単位を含む。
【0024】
用語「主鎖」は、複数のペンダント基が結合することができるポリマー中の原子の鎖を指す。そのような主鎖の例は、1つまたは複数のエチレン性不飽和重合性モノマーの重合から得られる「全部炭素の」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ポリマーが縮合反応またはいくつかのその他の方法によって形成されてヘテロ原子を含むことができる。
【0025】
コアシェル粒子
本発明の実施に使用されるコアシェル粒子は、一般的には、1つまたは複数の疎水性ポリマーを含有する疎水性ポリマーコアを有する。有用な疎水性ポリマーは、「熱可塑性」であり、一般に、少なくとも40℃または典型的には少なくとも50℃のガラス転移温度を有しており、かくして、ガラス転移温度より高い適切な温度で加熱する熱画像化中に、溶融または融合させることができることを意味する。有用な疎水性熱可塑性ポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチレンラクトン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリアミドが挙げられるが、これらに限定されない。これらの種類の中で代表的なポリマーとしては、ポリスチレン、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリメチレンラクトン、ポリ[(メタ)アクリロニトリル]、およびポリ塩化ビニルが挙げられる。
【0026】
該コアは、概して20〜120nm、一般的には30〜100nmの平均直径を有しており、コアポリマー(1つまたは複数)の体積は、その粒子の体積の75〜95%である。
【0027】
有用なコアシェル粒子のシェルは、該コア用疎水性ポリマー(1つまたは複数)と結合することができる反応性の基を有する1つまたは複数の親水性ポリマーから成る。いくつかの例において、該シェルポリマーは、それらが該コアポリマー(1つまたは複数)よりも一層水を好むという意味で「親水性」である。例えば、該シェルポリマーは、水酸化物等の適当な塩基によって部分的または完全に中和されているカルボキシ、スルホ、またはホスホ基等の酸性基を含有することができる。例えば、該シェルポリマーは、カルボキシ基を含有することができ、そのカルボキシ基の5〜80モル%が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または水酸化アンモニウムにより中和されている。かくして、該シェルポリマー(1つまたは複数)は、少なくとも一部は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルテトラゾール、(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、環状尿素メタクリレート(Plex-O 6850)ビニルホスホン酸、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、およびスルホン化(メタ)アクリレートの1つまたは複数から誘導することができる。そのようなポリマーは、例えば、1つまたは複数の(メタ)アクリルアミドと組み合わせて使用することができる。
【0028】
いくつかの実施形態において、該シェルは、(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、N-(メタ)アクリロイルテトラゾール、ビニルピロリドン、またはそれらの混合物から誘導された繰り返し単位を含むポリマーを含む。
【0029】
他の実施形態において、該シェルポリマーは、(メタ)アクリル酸、スルホン化(メタ)アクリレート、リン酸エステル(メタ)アクリレート、ビニルホスホン酸、またはそれらの混合物の1つまたは複数と、1つまたは複数の(メタ)アクリルアミドとから誘導される。
【0030】
該親水性シェルポリマーは、該疎水性コアポリマーに該疎水性コアポリマー中の反応性(メタ)アクリル酸基を介して共有結合することが望ましい。
【0031】
該シェルの厚さは、一般に1〜10nmであり、一般に、平均して該コアシェル粒子の体積の5〜25%である(いくつかの粒子は5%未満であり得、その他は25%を超えるが、その平均の体積は書き留めた範囲内である)。該シェルは、殆どまたはすべての粒子のコアを完全に覆うと考えられるが、シェルがコアを一部分のみ覆っているいくつかの粒子があり得る。
【0032】
結果として生じるコアシェル粒子は、一般に、25〜150nmまたは35〜110nmの平均粒径を有する。
【0033】
該コアシェル粒子は、一般に、以下の実施例に対して記載されているような分散液として調製される。一般に、該コアポリマーは、既知の反応物質および条件を用いて初期の分散液を得る、乳化重合または懸濁重合によって形成される。適当な反応時間の後、モノマーおよび遊離基開始剤をその分散液に加えてその個々のポリマーコアの周りにシェルポリマー(1つまたは複数)を形成する。そのコアシェル分散液は、もちろん沈殿に対して安定でもよいが、または、界面活性剤を添加してそのコアシェル粒子を適当な時間安定化させることができる。
【0034】
シェルを形成するために使用されるいくつかのポリマーは、水溶性が高いこともあり、そのため得られる分散液は、その反応媒体中に懸濁されたいくらかの遊離ポリマーを含むこともある。
【0035】
いくつかの実施形態において、該コアシェル粒子のシェルまたはコアのいずれかは、任意の適当な架橋性化学反応を用いて少なくとも部分的に架橋されている。
【0036】
シェルを形成するために使用されるその他のポリマーは、水溶性がより少なく、反応媒体中に懸濁している遊離ポリマーは非常に少ないか無しである。そのようなポリマーは、遊離ポリマーの除去が必要でないために有用である。
【0037】
画像形成性要素
この画像形成性要素は、上記の融合性コアシェル粒子を単一で最も外側の画像形成性層の中に含む。
【0038】
一般に、単層の画像形成性要素は、融合性コアシェル粒子を含有する画像形成性層の配合物を画像形成性層を形成するために適切な基板に適切に塗布することによって形成される。この基板は、通常は、この配合物を塗布する前に下記のような様々な方法で処理またはコートする。この基板は、接着性または親水性を改善するための「中間層」を設けるために処理することができ、前記単一の画像形成性層は、その中間層上に塗布される。
【0039】
この基板は、一般に、親水性表面、または少なくとも画像化面に塗布された画像形成性層の配合物よりもより親水性である表面を有する。この基板は、平版印刷版等の画像形成性要素を調製するために標準的に使用される任意の材料から構成することができる支持体を含む。それは、通常、シート、フィルム、またはホイルの形をしており、強く、安定で、かつフレキシブルであり、使用条件下での寸法変化に耐性を示し、その結果、色の記録はフルカラーの画像を残す。一般的に、この支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー、およびポリスチレンのフィルム等)、ガラス、セラミックス、金属シートもしくはホイル、または硬紙(樹脂コート紙および金属化紙を含む)、あるいは任意のこれら材料の積層物(例えば、ポリエステルフィルム上のアルミニウムホイルの積層物)を含めた任意の自己支持性材料でもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン、およびそれらの合金のシートまたはホイルが挙げられる。
【0040】
ポリマーフィルム支持体は、一方または両方の表面を「下地」層により変性して親水性を高めることができ、または、紙支持体は、平面性を高めるために同様にコートすることができる。下地層材料の例としては、アルコキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、グリシジオキシプロピルトリエトキシシラン、およびエポキシ官能性ポリマー、ならびにハロゲン化銀写真用フィルムで使用されている標準的な親水性下地材料(例えば、ゼラチンおよびその他の天然に存在するか合成の親水性コロイドおよび塩化ビニリデンコポリマーを含めたビニルポリマー等)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0041】
有用な基板は、物理研磨、電気化学研磨、化学研磨、および陽極酸化処理を含めた当技術分野で公知の技術を用いてコートまたは処理し得る親水性表面を有するアルミニウム含有支持体から成る。例えば、アルミニウムシートは、従来の手順を用いてホスホン酸または硫酸を用いて陽極酸化することができる。
【0042】
任意選択の中間層は、アルミニウム支持体を、例えば、ケイ酸塩、デキストリン、フッ化カルシウムジルコニウム、ヘキサフルオロケイ酸、リン酸塩/フッ化物、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸-アクリル酸コポリマー、ポリ(アクリル酸)、または(メタ)アクリル酸コポリマー、あるいはそれらの混合物と共に処理することによって形成することができる。例えば、研磨および/または陽極酸化したアルミニウム支持体は、平版の親水性基板を得るために、既知の手順を用いてポリ(ホスホン酸)と共に処理して表面の親水性を改善することができる。
【0043】
該基板の厚さは、変化させることができるが、印刷による磨耗にもちこたえるのに十分であり、印刷版の周りに巻きつくのに十分な薄さであるべきである。かかる実施形態は、一般的に、100〜600μmの厚さを有する処理したアルミニウムホイルを含む。
【0044】
該基板の裏面(非画像化面)は、帯電防止剤および/または滑性層あるいはマット層をコートして画像形成性要素の取り扱いおよび「感触」を改善することができる。
【0045】
該基板は、また、その上に塗布された放射光感受性の組成物を有している円筒形の表面であり、したがって、印刷機の一体部分または印刷機シリンダーに組み込まれているスリーブであることができる。そのような画像化シリンダーの使用は、例えば、米国特許第5713287号(Gelbart)に記載されている。
【0046】
該画像形成性要素は、また、1つまたは複数の放射光吸収性化合物を含む。これらの化合物は、任意の適当なエネルギー形態(例えば、UVまたは可視光)に感受性となり得るが、通常は赤外線に感受性であり、したがって、該放射光吸収性化合物は、700〜1400nm、一般的には700〜1200nmの放射光を吸収する赤外線吸収性化合物(「IR吸収性化合物」)となり得る。
【0047】
適切なIR染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、ヘミシアニン染料、ストレプトシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料およびビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、ポリメチン染料、スクアライン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、および上記の染料の種類の置換形態またはイオン性形態が挙げられるが、これらに限定されない。好適な染料は、例えば米国特許第4973572号(DeBoer)、米国特許第5208135号(Patelら)、米国特許第5244771号(Jandrue Sr.ら)および米国特許第5401618号(Chapmanら)ならびにEP 0823327 A1(Nagasakaら)に記載されている。
【0048】
陰イオン性発色団を有するシアニン染料も有用である。例えば、シアニン染料は、2個の複素環式基を有する発色団を有することができる。別の実施形態において、シアニン染料は、少なくとも2個のスルホン酸基を有することができ、より詳しくは2個のスルホン酸基と2個のインドレニン基を有することができる。このタイプの有用なIR感受性シアニン染料は、例えば米国特許出願公開第2005-0130059号(Tao)に記載されている。好適なシアニン染料の1つの種類についての概要が、WO 2004/101280(Munnellyら)の段落0026中に式で示されている。
【0049】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6309792号(Hauckら)、米国特許第6264920号(Achilefuら)、米国特許第6153356号(Uranoら)および米国特許第5496903号(Watanateら)に記載されている。適切な染料は、通常の方法および出発物質を使って製造することができ、あるいは、American Dye Source(カナダ、ケベック州、べ・ウルフェ)およびFEW Chemicals(ドイツ国)などの様々な商業的供給源から入手可能である。近赤外ダイオードレーザービーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4973572号(上記)に記載されている。
【0050】
有用なIR吸収性化合物としては、カーボンブラックを包めた様々な顔料、例えば可溶化基により表面官能化されたカーボンブラックなど、が挙げられ、当該技術分野でよく知られている。親水性の非イオン性ポリマーにグラフト化したカーボンブラック、例えばFX-GE-003(日本触媒製)など、または、陰イオン性基により表面官能化されたカーボンブラック、例えばCAB-O-JET(登録商標)200またはCAB-O-JET(登録商標)300(Cabot Corporation製)も有用である。他の有用な顔料としては、ヘリオゲングリーン(Heliogen Green)、ニグロシンベース(Nigrosine Base)、酸化鉄(III)、酸化マンガン、プルシアンブルーおよびパリスブルーが挙げられるが、これらに限定されない。顔料粒子の大きさは、画像形成性層の厚さを超えてはならない。
【0051】
放射光吸収性化合物は、一般に、適切な放射光への露光後に、感熱画像形成性層を水性現像液に対して不溶性にするのに十分な量で画像形成性層の中に存在する。この量は、一般に少なくとも1重量%で最大30重量%まで、一般的には5〜30重量%である(全体の乾燥画像形成性層の重量に基づく)。この目的に対して必要な特定量は、使用される具体的な化合物および使用されるアルカリ性現像液の特性によって、当業者には容易に明らかとなろう。殆どの実施形態において、該放射光吸収性化合物は単一の画像形成性層の中に存在する。別法ではまたはさらに、放射光吸収性化合物は、単一の画像形成性層と熱的に接触している別の層中に位置づけることができる。したがって、画像化中に、放射光吸収性化合物の作用を、放射光吸収性化合物を含んでいない画像形成性層に移すことができる。
【0052】
該画像形成性層は、画像形成性層の全乾燥重量の一般に、少なくとも50重量%、典型的には60〜95重量%を占めるのに十分な量で、上記のコアシェル粒子を含む。
【0053】
そのコアシェル粒子(通常は、水性分散液)、1つまたは複数の放射光感受性化合物および任意のその他の添加剤(以下に記載されている)を含んでいる画像形成性層は、適当な溶剤媒(以下に記載されている)中にその成分を分散させることによって調製することができる。
【0054】
この画像形成性層は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、被覆性またはその他の特性のための界面活性剤、粘度上昇剤、書き込まれた画像の可視化を可能にする染料または着色剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤またはこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷技術分野で通常使用されている任意のその他の追加すべきものを含めた様々な添加剤を通常の量でさらに含むことができる。
【0055】
一般に、この画像形成性層には、融合性コアシェル粒子のシェルが、一般的にはこの粒子内の特殊なシェルポリマーが原因で一旦溶媒が除去されるとその層中のバインダーとして作用するので、コアシェル粒子を形成しているもの以外のポリマーは存在しない。したがって、遊離のポリマーは、一般に、画像形成性層の乾燥重量に対して、10%未満、典型的には5%未満の量で存在する。
【0056】
実施形態によっては、この感熱画像形成性層は、水溶性または水分散性である。
【0057】
この単層の画像形成性要素は、通常の塗被法または積層法を用いて基板表面(およびその上に設けられた任意の他の親水性層)の表面上に層配合物(およびその上に設ける任意のその他の親水性の層)を塗布することにより作製することができる。かくして、その配合物は、所望の成分を適切なコーティング溶媒に分散または溶解させ、得られた配合物を、適切な装置および方法、例えば、スピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティングまたは押出ホッパーコーティングなど、を使用して、基材に逐次的または同時に適用することができる。これらの配合物は、また、適切な支持体(例えば機上印刷シリンダーまたは印刷スリーブ)上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0058】
その単一の画像形成性層に対する塗布量は、0.4〜2g/m2、典型的には0.5〜1g/m2でもよい。
【0059】
画像形成性層の配合物をコートするために使用される溶剤の選択は、当該配合物中のコアシェルポリマー材料および他の成分の性質に依存する。一般に、この画像形成性層の配合物は、当該技術分野で周知の条件および技術を使用して、アセトン、メタノール、またはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n-プロパノール、n-ブタノールを含有する水溶液、およびそれらの混合物によってコートされる。
【0060】
様々な層の配合物の塗布の間に、中間の乾燥工程を用いて、他の配合物をコートする前に溶媒(1つまたは複数)を除去することができる。乾燥工程は、各種の層の混合を防止するのにも役立つ。
【0061】
画像化および現像
単層の画像形成性要素は、印刷版原版、印刷シリンダー、輪転印刷部材として知られる印刷スリーブ(塊状または中空の鉄心)、および印刷テープ(フレキシブル印刷を含む)を含むがこれらには限定されない任意の有用な形態を有することができる。例えば、当該画像形成性部材は、親水性基板を有する平版印刷版を得るのに有用な印刷版原版でもよい。
【0062】
この単層の画像形成性要素は、使用中、適当な熱エネルギーの源、例えば、その要素中に存在する放射光吸収性化合物に応じて、例えば、700〜1400nmの波長の赤外線など、に露光される。いくつかの実施形態において、画像化は、700〜1400nm、典型的には700〜1200nmの波長の赤外線レーザーを用いて行なうことができる。この画像形成性要素を露光するために使用されるレーザーは、ダイオードレーザーシステムの信頼性および低保守のために、通常はダイオードレーザーであるが、その他のレーザー、例えば、気体または固体レーザー等も使用することができる。レーザー画像化に対する出力、強度および露光時間の組合せは、当業者には容易に分かるであろう。現在、商業的に入手可能なイメージセッターで使用される高性能レーザーまたはレーザーダイオードは、800〜850nmまたは1040〜1120nmの赤外線を放つ。
【0063】
画像化装置は、もっぱらプレートセッターとして機能することができ、または、それは平版印刷機中に組み込むことができる。後者の場合、印刷は画像化後直ちに始めて、それによって印刷機のセットアップ時間をかなり短縮することができる。画像化装置は、ドラムの内側または外側のシリンダー状表面に取り付けられた画像形成性部材を有する平台式レコーダーとしてかまたはドラム式レコーダーとして構成することができる。有用な画像化装置の例は、830nmの波長の近赤外線を放つレーザーダイオードを含有するEastman Kodak Company(カナダ、ブリティッシュコロンビア、バーナビー)から入手できるKodak(登録商標) Trendsetterイメージセッターのモデルとして入手可能である。その他の適切な画像化源としては、1064nmの波長で作動するCrescent 42T PlatesetterおよびScreen PlateRite 4300シリーズまたは8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州、シカゴ、Screenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な放射光の源としては、要素をそれが印刷版シリンダーに取り付けられている間に使用して画像化することができる直接画像化印刷機が挙げられる。適切な直接画像化印刷機の例としては、Heidelberg SM74-DI印刷機(オハイオ州、デイトン、Heidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0064】
画像化速度は、100〜1500mJ/cm2、典型的には100〜400mJ/cm2の範囲内とし得る。
【0065】
レーザー画像化は本発明の実施に役立つが、熱エネルギーを像様に供給する任意のその他の手段によっても、画像化を実現することができる。例えば、画像化は、例えば米国特許第5488025号(Martinら)に記載されているような「サーマルプリンティング」として知られており、熱ファックスマシンおよび昇華型プリンターで使用されているものの中の熱抵抗性ヘッド(サーマルプリンティングヘッド)を使用して達成することができる。サーマルプリントヘッドは、市販されている(例えば、富士通サーマルヘッドFTP-040 MCS001およびTDKサーマルヘッドF415 HH7-1089として)。
【0066】
直接デジタル画像化が画像化には一般に使用される。その画像信号は、コンピューターにビットマップデータファイルとして保存される。ラスタ画像プロセッサ(RIP)またはその他の適切な手段がそのようなファイルを発生させるために使用することができる。このビットマップは、色相ならびにスクリーンの周波数および角度を決めるために構成される。
【0067】
画像形成性要素の画像化は、画像化(露光された)領域および画像化されない(露光されない)領域の潜像を含む画像化された要素を生ずる。その画像化された要素を印刷機上で現像することによって(以下に記載されている)、画像形成性層の非露光領域および下層の下にある部分が除去されて、該基板の親水性表面が露出される。熱画像化により融合したコアシェル粒子は、その露光領域に留まる。したがって、この画像形成性要素は、「ネガ型」(例えば、ネガ型平版印刷版原版)である。親水性表面の非露光(または非画像化)領域は、インクをはじき、一方、要素に留まっている露光(または画像化)領域はインクを受け入れる。
【0068】
「印刷機上」現像の間に、画像化された要素は、印刷機上に直接取り付けられ、最初の試し刷り(printed impressions)が行なわれるときに、画像形成性層中の非露光領域が、適当な湿し水、平版印刷インク、またはその両方の組合せによって除去される。湿し水の典型的な成分としては、pH緩衝剤、脱感作剤、界面活性剤および湿潤剤、保湿剤、低沸点溶剤、殺生物剤、消泡剤、ならびに金属イオン封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W + Varn PAR(アルコール代用品)(イリノイ州、アディソン、Varn Internationalから入手可能)である。
【0069】
以下の実施形態は、本発明によって提供されるものを代表する。
実施形態1: A) ネガ型画像形成性要素を熱画像化して、融合したコアシェル粒子から本質的になる露光領域と非露光領域とを有する画像化された要素を得る工程と、
B) 前記画像化された要素を印刷機上で、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて現像して、前記非露光領域のみを除去する工程と
を含み、
前記画像形成性要素が、親水性基板を含んでおり、かつその上には、赤外線吸収性化合物および熱画像化時に融合するコアシェル粒子から本質的になる単一の感熱画像形成性層を有しており、
前記コアシェル粒子のコアが、疎水性熱可塑性ポリマーからなり、
前記コアシェル粒子のシェルが、前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーに共有結合している親水性ポリマーからなり、
前記感熱画像形成性層が、10重量%未満の遊離ポリマーを含む、
画像を得る方法。
実施形態2: 前記画像形成性層が、5重量%未満の遊離ポリマーバインダーを含む、実施形態1に記載の方法。
実施形態3: 前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、40℃より高いガラス転移温度を有する、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4: 前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチレンラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリアミドである少なくとも1つのポリマーを含む、実施形態1から3のいずれかに記載の方法。
実施形態5: 前記コアシェル粒子が、25〜150nmの平均粒径を有する、実施形態1から4のいずれかに記載の方法。
実施形態6: 前記コアシェル粒子のシェルが、1〜10nmの平均厚さを有しており、平均して前記コアシェル粒子の体積の5〜25%を占め、前記コアが、20〜120nmの平均サイズを有する、実施形態1から5のいずれかに記載の方法。
実施形態7: 前記シェルが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルテトラゾール、スルホン化(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの1つまたは複数から誘導されたポリマーを含む、実施形態1から6のいずれかに記載の方法。
実施形態8: 前記親水性シェルポリマーが、前記疎水性熱可塑性コアポリマーに、前記疎水性コアポリマー中の反応性(メタ)アクリル酸基を介して共有結合している、実施形態1から7のいずれかに記載の方法。
実施形態9: 前記赤外線吸収性化合物が、画像形成性層の全乾燥重量に対して、前記単一の感熱画像形成性層中に5〜30%の量で存在する、実施形態1から8のいずれかに記載の方法。
実施形態10: 前記コアシェル粒子のシェルまたはコアのいずれかが、少なくとも部分的に架橋している、実施形態1から9のいずれかに記載の方法。
実施形態11: 前記画像化が、700〜1400nmの波長の赤外レーザーを用いて行なわれる、実施形態1から10のいずれかに記載の方法。
実施形態12: 前記画像形成性要素が、平版印刷版原版であり、親水性表面を有するアルミニウム含有基板を有する、実施形態1から11のいずれかに記載の方法。
実施形態13: 親水性表面を含むアルミニウム含有基板を有し、実施形態1から12までのいずれかに記載の方法によって調製される平版印刷版。
【0070】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図しているが、いかようにも限定することは意図していない。
【0071】
(実施例)
(実施例1a)
本発明のコアシェル分散液の合成:
2リットルのフラスコに800.00gの蒸留水を入れ、それに12.00gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解した。その混合物を70℃に加熱した。次に、119.24gのスチレン、60.76gのアクリロニトリル、および2.70gの過硫酸カリウムを加え、窒素下で重合を2時間行なった。アクリル酸(20.00g)および2.70gの過硫酸カリウムを次に加え、重合をさらに2時間にわたって続けた。
【0072】
(実施例1b)
比較用のポリマー粒子分散液の合成:
2リットルのフラスコに800.00gの蒸留水を入れ、それに12.00gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解した。その混合物を70℃に加熱した。次に、180.00gのスチレンおよび2.70gの過硫酸カリウムを加え、窒素下で重合を2時間行なった。
【0073】
(実施例1c)
本発明のコアシェル分散液の合成:
2リットルのフラスコに800.00gの蒸留水を入れ、それに12.00gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解した。その混合物を70℃に加熱した。次に、180.00gのスチレンおよび2.70gの過硫酸カリウムを加え、窒素下で重合を2時間行なった。エチレングリコールメタクリレートホスフェート(20g)および2.70gの過硫酸カリウムを次に加え、重合をさらに2時間にわたって続けた。
【0074】
(実施例1d)
本発明のコアシェル分散液の合成:
2リットルのフラスコに800.00gの蒸留水を入れ、それに12.00gのラウリル硫酸ナトリウムを溶解した。その混合物を70℃に加熱した。次に、180.00gのメチルメタクリレートおよび2.70gの過硫酸カリウムを加え、窒素下で重合を2時間行なった。アクリル酸(20g)および2.70gの過硫酸カリウムを次に加え、重合をさらに2時間にわたって続けた。
【0075】
(実施例2a)
コアシェル粒子を含む本発明のコーティング配合物:
以下の成分を混合した:
0.0784gの水溶性IR染料(S0306、FEW)、
2.4300gの水性のコアシェル粒子分散液(分散液1a)、
0.25gの2%水酸化ナトリウム(シェルポリマーのCOOH基の約20%を中和する)。
得られた配合物を、陽極酸化してポリ(ビニルホスホン酸)で処理されているアルミニウム含有基板にコートし、コーティング重量0.6g/m2を与えた。
【0076】
(実施例2b)
非コアシェルポリマー粒子を含む比較用のコーティング配合物:
以下の成分を混合した:
0.0784gの水溶性IR染料、
2.4300gの水性の粒子分散液(分散液1b)、
2.2500gのメタノール、および
0.25gの2%水酸化ナトリウム。
得られた配合物を、上記と同じアルミニウム含有基板に、0.6g/m2のコーティング重量までコートした。
【0077】
(実施例2c)
非コアシェルポリマー粒子を含む本発明のコーティング配合物:
以下の成分を混合した:
0.0784gの水溶性IR染料、
2.4300gの水性の粒子分散液(分散液1c)、
2.2500gのメタノール、および
0.25gの2%水酸化ナトリウム。
得られた配合物を、上の2aで記したものと同じアルミニウム含有基板に、0.6g/m2のコーティング重量までコートした。
【0078】
(実施例2d)
非コアシェルポリマー粒子を含む本発明のコーティング配合物:
以下の成分を混合した:
0.0784gの水溶性IR染料、
2.4300gの水性の粒子分散液(分散液1d)、
2.2500gのメタノール、および
0.25gの2%水酸化ナトリウム。
得られた配合物を、上の2aで記したものと同じアルミニウム含有基板に、0.6g/m2のコーティング重量までコートした。
【0079】
画像化後、その要素を印刷機に取り付け、Sun Chemical S7184/CF01平版印刷インクおよびBottcher GmbH Fount S-3021湿し水を用いてプレダンプニング処理をした。
【0080】
配合物2aにより形成されて得られた本発明の印刷版は、50枚後でも良好なクリーンアウトを示し、それに対して、配合物2bによる比較用の印刷版は、100枚後でさえひどいトーニングを示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A) ネガ型画像形成性要素を熱画像化して、融合したコアシェル粒子から本質的になる露光領域と非露光領域とを有する画像化された要素を得る工程と、
B) 前記画像化された要素を印刷機上で、平版印刷インク、湿し水、またはその両方を用いて現像して、前記非露光領域のみを除去する工程と
を含み、
前記画像形成性要素が、親水性基板を含んでおり、かつその上には、赤外線吸収性化合物および熱画像化時に融合するコアシェル粒子から本質的になる単一の感熱画像形成性層を有しており、
前記コアシェル粒子のコアが、疎水性熱可塑性ポリマーからなり、
前記コアシェル粒子のシェルが、前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーに共有結合している親水性ポリマーからなり、
前記感熱画像形成性層が、10重量%未満の遊離ポリマーを含む、
画像形成方法。
【請求項2】
前記画像形成性層が、5重量%未満の遊離ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、40℃より高いガラス転移温度を有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記コア用疎水性熱可塑性ポリマーが、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリメチレンラクトン、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリビニルエステル、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリウレタン、およびポリアミドである少なくとも1つのポリマーを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記コアシェル粒子が、25〜150nmの平均粒径を有する、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記コアシェル粒子のシェルが、1〜10nmの平均厚さを有しており、平均して前記コアシェル粒子の体積の5〜25%を占め、前記コアが、20〜120nmの平均サイズを有する、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記シェルが、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルテトラゾール、スルホン化(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレートホスフェート、ホスホネート化(メタ)アクリレート、およびジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドの1つまたは複数から誘導されたポリマーを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記親水性シェルポリマーが、前記疎水性熱可塑性コアポリマーに、前記疎水性コアポリマー中の反応性(メタ)アクリル酸基を介して共有結合している、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記赤外線吸収性化合物が、画像形成性層の全乾燥重量に対して、前記単一の感熱画像形成性層中に5〜30%の量で存在する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記コアシェル粒子のシェルまたはコアのいずれかが、少なくとも部分的に架橋している、請求項1から9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記画像化が、700〜1400nmの波長の赤外レーザーを用いて行なわれる、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記画像形成性要素が、平版印刷版原版であり、親水性表面を有するアルミニウム含有基板を有する、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
親水性表面を含むアルミニウム含有基板を有し、請求項1から12までのいずれかに記載の方法によって調製される平版印刷版。

【公表番号】特表2012−528749(P2012−528749A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513927(P2012−513927)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/001588
【国際公開番号】WO2010/141067
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】