説明

画像受容体要素

画像受容要素は、支持体上に、順に、押出されたコンプライアント層と、水性コートされた下引き層と、押出しされたものであってもよい画像受容層とを含む多層の複合体である。押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、10〜40質量%の少なくとも1種のエラストマーポリマーを含む。この画像受容要素を支持体上に配置して感熱色素受容要素、電子写真画像受容要素又は感熱ワックス受容要素を形成することができる。水性コートされた下引き層によって、押出されたコンプライアント層と画像受容層との間に優れた接着性がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像受容体要素、例えば、水性コートされた下引き層が片面で押出されたコンプライアント層に接着されており、その反対面で画像受容層(必要に応じて押出される)に接着されている感熱色素転写受容体要素に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ又はスキャン装置から生成した映像からプリントを得るための感熱転写システムが開発されている。かかるプリントを得る方法の一つによると、まず電子映像をカラーフィルターにより色分解する。次に、各色分解画像を電気信号に変換する。次に、これらの信号を感熱プリンターへ伝送する。プリントを得るため、シアン、マゼンタ又はイエローの色素供与体素子を色素受容体要素と向い合わせて配置する。次に、それら二つの要素を感熱プリントヘッドとプラテンローラーとの間に挿入する。ラインタイプ感熱プリントヘッドを使用して、色素供与体シートの裏側から加熱する。感熱プリントヘッドは多くの加熱要素を有し、シアン信号、マゼンタ信号又はイエロー信号の一つに応じて逐次加熱される。次に、この処理を他の2色について繰り返す。スクリーンで見た原映像に対応するカラーハードコピーがこのように得られる。
【0003】
感熱色素転写において使用される色素受容体要素は、一般的に、色素画像受容層、及び必要に応じて存在するさらなる層、例えば支持体と色素受容層の間にコンプライアント又はクッション層などを、その片面上に担持する支持体(透明又は反射性)を含む。コンプライアント層は、サーマルヘッドにより発生した熱をプリントの表面に保つための断熱をもたらし、しかも、均一なプリント品質に必要な供与体リボンと受容シートの間の密着ももたらす。かかるコンプライアント層を提供することについて、様々な手法が提案されてきた。米国特許第5,244,861号明細書(Campbell他)には、ミクロボイド化コア層と少なくとも1つの実質的にボイドのない熱可塑性スキン層を含む複合フィルムが記載されている。かかる手法は、複合フィルムを支持体に積層するさらなる製造工程を加え、フィルムの均一性が変動しうることにより高い廃棄要因をもたらす。米国特許第6,372,689号明細書(Kuga他)には、支持体と色素受容層の間に中空粒子層を使用することが記載されている。かかる中空粒子層は、しばしば、水溶液からコートされるため、製造プロセスで強力な乾燥段階を必要とし、生産性を低下させるおそれがある。さらに、中空粒子は、仕上がったプリントに表面粗さの増加をもたらし、この表面粗さの増加は表面光沢を減少させる。高光沢プリントを得ることを可能にするコンプライアント層を提供することが都合良いであろう。かかるコンプライアント層を提供するために使用される技術が、低光沢仕上げが望まれた場合には艶消様プリントを得ることも可能にするのであれば、なお都合良いであろう。この低光沢仕上げが、水性下引き層中に艶消しビーズのような添加剤を含めることにより高まるのであれば、さらに都合良いであろう。
【0004】
米国特許第6,897,183号明細書(Arrington他)には、画像記録要素において有用な多層フィルムの製造方法が記載されている。この多層フィルムは支持体と外層又は表面層を含み、支持体と外層の間に、予め選択された帯電防止接着特性及び粘弾性を有する熱可塑性帯電防止ポリマー又は組成物を含む「帯電防止下引き層」が存在する。かかる多層フィルムは、支持体と色素受容層を含む支持体と色素受容層の間に下引き層が存在する感熱色素転写受容体要素を製造する際に使用できる。しかしながら、この特許明細書は、印刷中及び印刷が行われた直後の色素受容層に対する及び支持体(又は基材)に対する帯電防止下引き層の接着性についての重要性に関して言及されていない。また、高温で湿気のある条件のもとでの印刷の重要性について言及されておらず、下引き層組成物の感湿性について言及されていない。米国特許出願公開第2004/0167020号明細書(Arrington他)には、印刷中、印刷直後、高温で湿気のある条件のもとで印刷する場合の、支持体に対する色素受容層の接着性や下引き層組成物の感湿性について言及されていないという点で同様の開示を有する。
【0005】
色素受容体要素の表側(画像形成側)に使用される周知のポリマー複合材料積層体は、ポリプロピレン(PP)の最上部スキン層を有し、このスキン層の上にポリエステル/ポリカーボネートブレンドを含む色素受容層(DRL)を押出すことができる。複合材料支持体積層体と色素受容層(DRL)との間に使用される周知の下引き層は、帯電防止性であり、かつ、70質量%のPELESTAT(登録商標)300(ポリエチレン−ポリエーテルコポリマー)と30質量%のポリプロピレン(PP)のブレンドである。これらの2種の成分の流動学的性質は、PELESTAT(登録商標)300がポリプロピレン(PP)を包み込んで、下引き層中の連続相がPELESTAT(登録商標)300となるようなものである。PELESTAT(登録商標)300は帯電防止材料として機能するとともに、ポリマー積層体支持体スキン層と色素受容層(DRL)に対して接着成分として機能する。しかしながら、この帯電防止下引き層は、著しく感湿性であり、不十分な接着性を有し、高温で湿気のある条件、例えば36℃/86%RHのもとで試験した場合にボーダーレス印刷(エッジ・ツー・エッジ(edge-to-edge))に耐えられない。さらに、この下引き層を含む受容体要素は不十分な耐擦過性を示す。さらに、前述のように、複合材料積層体フィルムの適用はさらなる製造工程を必要とする。
【0006】
同時係属の同一出願人による米国特許出願第12/490,455号及び第12/490,464号(両方ともDontula他により2009年6月24日に出願された)には、押出されたコンプライアント層及び帯電防止下引き層を含む複数の押出層を有する画像形成要素が記載されている。この画像受容層は、有機溶剤から押出し又はコートすることができる。必要に応じて、任意の押出スキン層とともに2又は3以上のかかる層を共押出することができる。
【0007】
さらに、同時係属の同一出願人による米国特許出願公開第2008/0220190号明細書(Majumdar他)には、支持体を含み、支持体上に水性下引き層と押出色素受容層を有する画像記録要素が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,244,861号明細書
【特許文献2】米国特許第6,372,689号明細書
【特許文献3】米国特許第6,897,183号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2004/0167020号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
縁なし(ボーダーレス)又はエッジ・ツー・エッジ印刷中の離層がなくなるように、押出されたコンプライアント層を含むことがある下側にある基材に対する画像受容層(例えば色素転写受容層)の接着性の改善が必要とされている。さらに、かかる画像形成要素において、帯電防止性能の改善が必要とされている。さらに、有効で費用効果の高いやり方で要素に組み込むことのできるコンプライアント及び帯電防止下引き層技術を提供することが必要とされている。画像受容要素の擦過に対する感受性を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、画像受容層と、押出されたコンプライアント層(extruded compliant layer)と、当該押出されたコンプライアント層と画像受容層の間にある水性コートされた下引き層(aqueous-coated subbing layer)とを含み、画像受容層は必要に応じて押出されたものであってもよく、押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、10〜40質量%の少なくとも1種のエラストマーポリマーを含む画像形成要素を提供する。
本発明の幾つかの実施態様は、支持体と、押出されたコンプライアント層と、水性コートされた下引き層(必要に応じて帯電防止層である)と、押出された感熱色素転写画像受容層とを順に含み、さらに、押出されたコンプライアント層の少なくとも1つの表面に隣接して少なくとも1つの押出されたスキン層を含み、
押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、
35〜80質量%のマトリックスポリマーと、
10〜40質量%の、熱可塑性ポリオレフィンブレンド、スチレン/アルキレンブロックコポリマー、ポリエーテルブロックポリアミド、コポリエステルエラストマーもしくは熱可塑性ウレタン又はこれらの混合物である少なくとも1種のエラストマーポリマーと、
2〜25質量%のアモルファス又は半結晶性ポリマー添加剤、
を含む。
【0011】
実施態様によっては、セルロース紙繊維又は合成紙を含む支持体上に複数の層が配置される。
他の実施態様では、押出されたスキン層が押出されたコンプライアント層の片面又は両面に隣接して位置する。これらのスキン層及びコンプライアント層は共押出できる。
さらに、実施態様によっては、水性コートされた下引き層は、ポリウレタンを含み、必要に応じて半導電性金属酸化物又は導電性ポリマーを含んでもよい。
【0012】
さらに他の実施態様において、本発明の要素は、押出された感熱色素転写層を含み、当該要素は感熱色素転写受容要素である。
本発明の画像受容要素は、画像供与体要素との集成体で使用でき、例えば感熱色素受容要素と感熱色素供与体要素の集成体として使用できる。
本発明の要素は、画像又は材料を提供するために使用でき、この画像は縁なし(ボーダーレス)であることができ、あるいは、縁を有することができる。
【0013】
本発明は、幾つかの利点を含むがそれらの利点の全てが1つの実施態様でもたらされるわけではない。ボイド化されていないコンプライアント層をスキン層(1又は2以上)と共押出して、さらなる製造工程の必要性をなくしてもよい。本発明において使用されるボイド化されていないコンプライアント層は接着性の向上をもたらし、特に、支持体又は基材と当該基材又は支持体上に押出された画像受容層との間、特にパーホレーション、及び他の切れ目、スリット又は穿孔エッジの周りでの離層を防止する。ボイド化されていないコンプライアント層は、セルロース系材料、例えば製紙原料又は合成紙を含む基材に対して特に有用である。
【0014】
実施態様によっては、押出されたコンプライアント層の片面又は両面に隣接する押出された「スキン」層を含むことも都合良い。ほとんどの場合、生産効率に寄与するためにこれらのスキン層をコンプライアント層と共押出する。
【0015】
本発明は、典型的にはアモルファスである押出された色素受容層と、低表面エネルギーを有する押出されたコンプライアント層との間の望ましい接着を提供する。その優れた接着性に加えて、水性下引き層の使用は、以下の利点を有する(特に感熱受容要素に対して):
1)水性コートされるので、下引きコーティング配合物は環境的に魅力的であり、様々な装置を使用してコートできる。
2)下引き層は、薄い(<1μm)ものであることができ、そのため、画像受容層と高絶縁性押出されたコンプライアント層との間での分離が起こりにくくなり、低電圧での印刷が可能となる。
3)水性コートされた下引き層は、典型的には熱的に処理するのが困難な比較的湿度(RH)依存性のない導電性材料の導入を可能にする。
4)水性コートされた下引き層は、画図受容層との共押出の必要性をなくす。
5)押出されたコンプライアント層は、複合フィルムを支持体に積層する必要性をなくすことによって生産上の利点をもたらす。
6)水性コートされた下引き層は、押出されたコンプライアント層を含む画像受容要素の耐擦過性を改善する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
特に断らない限り、本明細書で使用する場合に、「画像形成要素」、「感熱色素受容要素」及び「受容体要素」という用語は、本発明の実施態様を指す。
本発明は、画像記録要素において画像形成要素として有用な多層フィルムに関する、このフィルムは、画像受容層(IRL)、押出されたコンプライアント層、及び当該押出されたコンプライアント層とIRLとの間にある水性コートされた下引き層とを含む。押出されたコンプライアント層の片面又は両面に隣接して1又は2以上の押出されたスキン層が配置されていてもよい。この多層フィルムは、適切な支持体(下記)に適用できる。
本発明に一実施態様において、多層フィルムを使用して支持体とその上に配置された2又は4つ以上の層を含む感熱色素転写受容体要素を提供する。
本明細書において、「画像形成要素」は、ボイド化されていないコンプライアント層、水性コートされた下引き層、及び少なくとも1つの画像受容層などの本明細書に記載した様々な層を含み、画像形成要素上への画像の熱転写を制御する多くの技術で使用できる。かかる技術としては、感熱色素転写、電子写真印刷、感熱ワックス転写、又はインクジェット印刷が挙げられる。反射観察の場合には、不透明支持体を有する画像形成要素が望ましく、透過光による観察の場合には、透明支持体を有する画像形成要素が望ましいであろう。
本明細書で使用する場合に、用語「最上部(top)」「上側(upper)」及び「表側(face)」は、画像形成層を有するか、画像を有するか、又は画像を受容する層を有する画像形成部材の側又はその側の方向を意味する。
用語「底部(bottom)」、「下側(lower side)」及び「裏側(back)」は、画像形成層を有するか、画像を有するか、又は画像を受容する層を有する側とは反対側の画像形成部材の側又はその側の方向を意味する。
用語「ボイド化されていない(non-voided)」は、添加された固体もしくは液体物質又はガス含有ボイドのない押出されたコンプライアント層を意味する。
用語「ボイド化ポリマー」は、当該技術分野で知られているミクロボイド化ポリマーお及びマイクロポーラス材料を含む材料を包含する。発泡剤を使用して形成されたフォーム又はポリマーフォームは本発明の目的上、ボイド化ポリマーとは見なされない。
「画像受容層」(IRL)は、「色素受容層」(DRL)であることができる。
用語「水性コート」は、コーティング媒体が実質的(少なくとも75体積%)に水であるコーティング配合物からコートされた層を意味する。
【0017】
コンプライアント層
押出された画像形成要素中に存在するコンプライアント層は、1又は2種以上の弾性ポリマー、例えば熱可塑性ポリオレフィンブレンド、スチレン/アルキレンブロックコポリマー、ポリエーテルブロックポリアミド、コポリエステルエラストマー、又は熱可塑性ウレタンなどを押出すことにより得られる。一般的に、コンプライアント層は、複数の樹脂(そのうちの少なくとも幾つかはエラストマーである)を含む。当該樹脂としては、ポリオレフィンブレンド、スチレンブロックコポリマー(SBC)、例えばスチレン−エチレン/ブチレンスチレン(SEBS)もしくはスチレン−エチレン/プロピレンスチレン(SEPS)もしくはスチレンブタジエンスチレン(SBS)又はスチレンイソプレンスチレン(SIS)、ポリエーテルブロックポリアミド(Pebax(登録商標)型ポリマー)、熱可塑性コポリエステルエラストマー(COPE)、熱可塑性ウレタン(TPU)及び半結晶性ポリオレフィンポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー(例えば、Vistamaxx(登録商標)ポリマーとして入手可能)のような熱可塑性エラストマーが挙げられるが、これらに限定されない。1又は2種以上のエラストマー樹脂が1〜40質量%、又は典型的には15〜30質量%の量で存在する。
【0018】
コンプライアント層は、一般的にエラストマーでない1又は2種以上の「マトリックス」ポリマーも一般的に含む。かかるポリマー材料としては、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、それらのコポリマー、官能化又はグラフト化ポリオレフィン、ポリスチレン、アモルファスポリアミド(Selarなど)などのポリアミド、及びポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。コンプライアント層中の1又は2種以上のマトリックスポリマーの量は、一般的に35〜80質量%、典型的には40〜65質量%である。
【0019】
実施態様によっては、コンプライアント層は、添加剤アモルファス又は半結晶性ポリマー、例えば環状オレフィン、ポリスチレン、マレイン酸化ポリエチレンなど(例えば、Dupont Bynel(登録商標)諸グレード、ArkemaのLotader(登録商標)諸グレードなど)である第3成分も含み、第3成分は、2〜25質量%、典型的には5〜20質量%の量で存在することができる。
【0020】
押出されたコンプライアント層の製造方法及び厚さに応じて、様々なタイプの樹脂が個別に又は混合物若しくはブレンドで使用される。例えば、有用なコンプライアント層樹脂ブレンドとしては、エチレン/エチルアクリレートコポリマー(EEA)、エチレン/ブチルアクリレートコポリマー(EBA)又はエチレン/メチルアクリレートコポリマー(EMA)と、例えばKraton(登録商標)G1657MなどのSEBSとのブレンド;EEA、EBA又はEMAとSEBS及びポリプロピレンとのブレンド;EEA,EBA又又はEMAポリマーとSEBS及びポリスチレンとのブレンド:EEA又はEMAとSEBS及び環状ポリオレフィン(Topasなど)とのブレンド;ポリプロピレンとKraton(登録商標)ポリマー、例えばFG1924、G1702、G1730Mなどのブレンド;ポリプロピレンとエチレンプロピレンコポリマー、例えばExxon Mobil製のVistamaxx(登録商標)諸グレードなどとのブレンド;又は、低密度ポリエチレン(LDPE)とアモルファスポリアミド、例えばDupont製のSelar及びKraton(登録商標)FGグレードのポリマー及び添加剤化合物、例えばマレイン酸化ポリエチレン(Dupont Bynel(登録商標)諸グレード、Arkema製のLotader(登録商標)諸グレード)とのブレンドが挙げられる。
【0021】
例えば、実施態様によっては、押出されたコンプライアント層中に複数のポリマーの組み合わせを含み、これらのポリマーは、40〜65質量%のマトリックスポリマーと、10〜40質量%のエラストマーポリマーと、5〜20質量%のアモルファス又は半結晶性ポリマー添加剤から構成される。これら3つの成分の質量比を変えることができ、使用される層構造及び樹脂に基づいて最適化することができる。
【0022】
押出されたコンプライアント層中の樹脂組成物は、プリンターの性能及び押出コーティングのような高温プロセスを使用して高速度で製造する能力に応じて最適化される。押出しは、樹脂が熱安定性を有し、引落し(drawn down)される能力を有しなくてはならず、適切な剪断粘度及び溶融強度を有し、チルロールから良好に剥離することを必要とする。コンプライアント層の樹脂及び樹脂ブレンドの剪断粘度の範囲は、1s−1の剪断速度で200℃で1,000〜100,000ポアズであるか、又は1s−1の剪断速度で200℃で2,000〜50,000ポアズであるべきである。
押出されたコンプライアント層の乾燥最終厚さは一般的に15〜70μm、典型的には20〜45μmである。
【0023】
コンプライアント層樹脂配合物を、高温押出プロセスのようなキャスト押出もしくは押出コーティング又はホットメルトを使用して、200〜285℃の温度で、0.0508m/秒〜5.08m/秒の押出速度で適用できる。生産性についての制約及び経済的な理由から、有用な押出速度は高速である。実施態様によっては、得られるコンプライアント層を最終厚さよりも厚い厚さで低速で押出すことができ、次に、延伸プロセスに延伸されるか、より薄くされ、支持体上に高速でコーティングをもたらす。延伸方法についての望ましさがより低い別法は、押出されたコンプライアント層を二軸延伸し、それを支持体に積層するというものである。
以下により詳しく記載するように、コンプライアント層は、画像形成要素中の1又は2以上の他の押出層(例えば下記スキン層)との共押出により形成できる。
【0024】
高温押出方法の1つの利点は、要素(画像受容層)の最上面の粗さがチルロール又はキャスティングホイールにより決まることである。これは、粗さ平均Raが0.4μm未満、Rzが1.5μm未満であるというものであることができる。支持体の上側に、押出されたコンプライアント、水性コート下引き及び画像受容層(下記)をコーティングする際に、画像受容要素の粗さ特性は、下側の支持体の上面の粗さと異なっていても異なっていなくてもよい。
押出されたコンプライアント層は、添加剤、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウムのような不透明化剤、着色剤、ステアリン酸亜鉛のような分散助剤、チルロール剥離剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、及び蛍光増白剤などを含んでもよい。
【0025】
スキン層(1又は2以上)
画像形成要素は、押出されたコンプライアント層の片面又は両面に1又は2以上のスキン層を含んでもよい。かかるスキン層は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン、エチレンのコポリマー、例えばエチレン/メチルアクリレート(EMA)コポリマー、エチレン/ブチルアクリレート(EBA)コポリマー、エチレン/エチルアクリレート(EEA)コポリマー、エチレン/メチルアクリレート/無水マレイン酸コポリマー、又はこれらのポリマーのブレンドから構成することができる。スキンがロール形態で粘着しないようにスキン中のアクリレート含有量を調節しなくてはならないか、あるいは粘着防止剤を層配合物に添加することができる。押出されたコンプライアント層の両面で異なるスキン層を使用できる。必要に応じて、スキン層中にエラストマー(押出されたコンプライアント層について先に記載したとおり)が存在してもよい。
【0026】
画像側のスキン層の厚さは10μm以下、典型的には8μm以下であることができる。支持体の最上面の樹脂の選択及び全体的な組成を最適化して水性コートされた下引き層に対して良好な接着性を得るとともに良好なチルロール又はキャスティングホイール剥離を可能にする。
押出されたコンプライアント層の支持体側のスキン層を同様に構成することができ、70μm以下、典型的には15μm以下の厚さを有する。
【0027】
スキン層は、0.0508m/秒〜5.08m/秒の速度で200〜285℃の高温で個別に押出すことができる。代わりに、それらをコンプライアント層と共押出(同時押出)し、チルロール、キャスティングホイール、又は冷却スタックにキャストすることができる。特に有用な構成は、支持体の最上面上にスキン層が存在するというものである。
【0028】
水性コートされた下引き層
水性コートされた下引き層は、押出されたコンプライアント層(及び、スキン層が存在する場合にはスキン層)及び画像色素受容層(これは押出されたものであってもよい)に対する優れた接着性をもたらすポリマー材料を含む。典型的には、下引き層は、水溶性ポリマー、親水性コロイド又は水不溶性ポリマーラテックスもしくは分散体のうちの1又は2以上であることができる皮膜形成性ポリマーを含む。しかし、消費者の広範囲な湿度条件のもとで不変な性能を確保するためには、皮膜形成性ポリマーは一般的に湿度不感受性である。この点について、層中の皮膜形成性ポリマー(1又は2種以上)は、乾燥によって、80%RH及び23℃で、その質量の10%未満、典型的には5%未満又は2%未満、あるいは1%未満の湿気を吸収する。
【0029】
有用なポリマーとしては、エチレン不飽和モノマー、例えばスチレン、スチレン誘導体、アクリル酸又はメタクリル酸及びそれらの誘導体、オレフィン、塩素化オレフィン、(メタ)アクリロニトリル、イタコン酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、第1級アミン付加塩を有するビニルモノマー、アミノスチレン付加塩を有するビニルモノマーなどが挙げられる。ポリウレタン及びポリエステルも有用である。帯電防止下引き層上への色素受容層の熱押出中に十分に流れて所望の接着がもたらされるように、バインダーポリマーのTgは一般的に45℃未満、典型的には40℃未満、又は25℃未満、理想的には15℃以下である。バインダーポリマーは、半結晶性又はアモルファスであることができる。有用なバインダーポリマーは、それらの優れた接着特性のために、例えば米国特許第6,171,769号、第6,120,979号、第6,077,656号、第6,811,724号及び第6,835,516号に開示されている。
【0030】
画像形成要素に、その製造、仕上げ及びエンドユーズ中の適切な帯電防止性を付与するために、水性コートされた下引き層が「帯電防止層」であり、1又は2種以上の帯電防止剤、例えば導電性材料を含むことが望ましい。この目的のために任意の導電性材料を使用できる。
【0031】
導電性材料は、(i)イオン伝導体と(ii)電子伝導体の2つの大きなグループに分けることができる。イオン伝導体では、電解質を通しての電荷を帯びた化学種のバルク拡散により電荷が移動する。電子伝導体、例えば共役導電性ポリマー、シングルウォール又はマルチウォールカーボンナノチューブなどの導電性カーボン粒子、結晶性半導電性粒子、アモルファス半導電性フィブリル、及び連続導電性金属又は半導電性薄膜などを本発明において使用でき、湿度に依存しない、処理に耐える帯電防止保護が得られる。様々なタイプの電子伝導体のうち、導電性金属含有粒子、例えば半導電性金属酸化物、及び導電性ポリマー、例えば置換又は非置換ポリチオフェン、置換又は非置換ポリピロール、及び置換又は非置換ポリアニリンが有効である。
【0032】
使用できる導電性金属含有粒子としては、例えば米国特許第4,275,103号、第4,394,441号、第4,416,963号、第4,418,141号、第4,431,764号、第4,495,276号、第4,571,361号、第4,999,276号及び第5,122,445号明細書に記載されているような、導電性金属粒子、無機酸化物、アンチモン酸金属塩、及び無機非酸化物、例えば結晶性無機酸化物、例えば酸化亜鉛、チタニア、酸化錫、アルミナ、酸化インジウム、シリカ、マグネシア、酸化バリウム、酸化モリブデン、酸化タングステン、及び酸化バナジウム、又はこれらの複合酸化物などが挙げられる。酸化錫が特に有用である。導電性結晶性無機酸化物は0.01〜30モル%の範囲内で「ドーパント」を含んでもよく、ドーパントは、例えば、酸化亜鉛の場合にはアルミニウム又はインジウムであり、チタニアの場合にはニオブ又はタンタルであり、酸化錫の場合にはアンチモン、ニオブ又はハロゲンである。代わりに、当該技術分野でよく知られている方法により酸素欠陥を形成することによって、電導性を増加させることができる。米国特許第5,484,694号明細書に教示されているような、アンチモンドーピングレベルが少なくとも8原子数%であり、100Å未満のX線結晶子サイズを有し、平均等価球直径が15nm未満であるがX線結晶子サイズ以上であるアンチモンドープ酸化錫が特に考えられる。
【0033】
帯電防止下引き層において使用できる導電性金属含有粒子の別の有用なカテゴリーとしては、針状のドープされた金属酸化物、針状の金属酸化物粒子、及び酸素欠陥を含む針状金属酸化物が挙げられる。針状導電性粒子は一般的に0.02μm以下の断面直径及び5:1以上のアスペクト比を有する。これらの針状導電性粒子の幾つかは、米国特許第5,719,016号、第5,731,119号、第5,939,243号明細書及びそれらに記載されている引用文献に記載されている。
【0034】
使用される場合、乾燥した帯電防止下引き層中の針状導電性金属酸化物粒子の体積分率は、最適な物理的特性を得るために、1〜70%であることができ、典型的には2〜50%である。非針状導電性金属酸化物粒子の場合、体積分率は1〜90%であることができ、典型的には5〜80%である。
【0035】
本発明は、導電性「アモルファス」ゲル、例えば、多くの周知の方法で製造できる酸化バナジウムリボン又は繊維から構成される酸化バナジウムゲルなどを含んでもよい。酸化バナジウムゲルは、導電性を高めるために銀をドープしたものであってもよい。
【0036】
有用な導電性アンチモン酸金属塩としては、例えば米国特許第5,368,995号及び第5,457,013号明細書に開示されているものが挙げられる。幾つかのコロイド導電性アンチモン酸金属塩分散体は、水性又は有機分散体としてNissan Chemical Companyから市販されている。使用される場合、乾燥した耐電防止層中のアンチモン酸金属塩の体積分率は15〜90%であることができる。
【0037】
導電性粒子として使用するのに好適な導電性無機非酸化物としては、金属窒化物、金属ホウ化物及び金属ケイ化物が挙げられ、これらは針状又は非針状の形状のものであることができる。これらの無機非酸化物の例としては、窒化チタン、ホウ化チタン、炭化チタン、ホウ化ニオブ、炭化タングステン、ホウ化ランタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデンなどが挙げられる。導電剤として帯電防止下引き層に組み入れるのに好適な導電性炭素粒子の例としては、カーボンブラック及びカーボンフィブリル又はシングルウォールもしくはマルチウォール形態のナノチューブが挙げられる。かかる好適な導電性炭素粒子の例は米国特許第5,576,162号明細書に記載されている。
【0038】
好適な導電性ポリマーとしては、米国特許第6,025,119号、第6,060,229号、第6,077,655号、第6,096,491号、第6,162,596号、第6,187,522号及び第6,190,846号明細書に例示されているものなどの電子伝導性ポリマーが挙げられる。これらの電子伝導性ポリマーとしては、置換又は非置換アニリン含有ポリマー(米国特許第5,716,550号、第5,093,439号及び第4,070,189号明細書に開示)、置換又は非置換ポリチオフェン(米国特許第5,300,575号、第5,312,681号、第5,354,613号、第5,370,981号、第5,372,924号、第5,391,472号、第5,403,467号、第5,443,944号、第5,575,898号、第4,987,042号及び第4,731,408号明細書に開示)、置換又は非置換ピロール含有ポリマー(米国特許第5,665,498号及び第5,674,654号明細書に開示)並びにポリ(イソチアナフテン)又はそれらの誘導体が挙げられる。これらの伝導性ポリマーは有機溶剤もしくは水又はそれらの混合物中に可溶性であるか分散性であることができる。有用な伝導性ポリマーとしては、それらの色のため、ポリピロールスチレンスルホネート(米国特許第5,674,654号明細書ではポリピロール/ポリ(スチレンスルホン酸)と称されている)、3,4−ジアルコキシ置換ポリピロールスチレンスルホネート及び3,4−ジアルコキシ置換ポリチオフェンスチレンスルホネートが挙げられる。有用な置換された電子伝導性ポリマーとしては、比較的大量でのその入手のしやすさから、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェンスチレンスルホネート)、例えばClevios(登録商標)P、PHC及びPAG(全てH.C.Starck Corporationにより供給)などが挙げられる。米国特許第7,427,441号明細書及びそこに記載されている引用文献に記載されているように、導電性向上のため、好適な導電性向上剤(CEA)としては、例えば、ジヒドロキシ、ポリヒドロキシ、カルボキシル、アミド又はラクタム基を含有する有機化合物を導電性ポリマーに加えることができる。特に好適なCEAとしては、糖類、糖誘導体、エチレングリコール、グリセロール、ジ−又はトリエチレングリコール、N−メチルピロリドン、ピロリドン、カプロラクタム、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド及びN−オクチルピロリドンが挙げられる。本発明の乾燥した帯電防止下引き層中の導電性ポリマーの質量%は、1〜99%であるが、最適な物理的特性のために典型的には2〜30%である。
【0039】
湿度依存性のイオン伝導体は、従来、電子伝導体よりも費用効果が高く、反射性媒体、例えば紙などにおいて普及している。水性コート帯電防止下引き層にいかなるかかるイオン伝導体を組み入れてもよい。アルカリ金属塩、特にポリ酸のアルカリ金属塩が有効である。上記アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム又はカリウムを含むことができ、上記ポリ酸は、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ポリスルホン酸、又はこれらの化合物の混合ポリマー、並びにセルロース誘導体を含むことができる。ポリスチレンスルホン酸のアルカリ金属塩、ナフタレンスルホン酸のアルカリ金属塩又はセルロース硫酸アルカリ金属塩が有用である。
【0040】
米国特許第4,542,095号及び第5,683,862号明細書に開示されているアルキレンオキシド重合物、特にアルキレンオキシド重合物とアルカリ金属塩との組み合わせも有用である。特に、ポリエチレンエーテルグリコールと硝酸リチウムの組み合わせは、その性能及びコストのために、望ましい1つの選択肢である。かかる組み合わせにおいて、乾燥した下引き層中のポリエチレンエーテルグリコールと硝酸リチウムの合計質量%は1〜50%、典型的には1〜30%である。さらに、かかる組み合わせにおいて、乾燥した下引き層におけるポリエチレンエーテルグリコールと硝酸リチウムとの質量比は1:99〜99:1、又は10:90〜90:10である。
【0041】
例えば導電性の合成又は天然スメクタイトクレーなどの無機粒子も帯電防止下引き層において導電剤として有用である。米国特許第5,683,862号、第5,869,227号、第5,891,611号、第5,981,126号、第6,077,656号、第6,120,979号、第6,171,769号明細書及びそれらに記載の引用文献に開示されているイオン伝導体も有用である。
【0042】
水性コート帯電防止下引き層に組み入れることができる導電性粒子は粒子のサイズ又は形状で特に限定されない。粒子形状はおよそ球形又は等軸の粒子から高アスペクト比粒子、例えば繊維、ホイスカー、チューブ、板状又はリボン状まで様々である。さらに、上記の導電性材料を、様々な他の粒子(形状又は組成で特に限定されない)上にコートしてもよい。例えば、導電性無機材料を、非導電性のシリカ、アルミナ、チタニア及びマイカに粒、ホイスカー又は繊維上にコートしてもよい。
【0043】
水性コートされた下引き層は、物理的特性、例えば耐久性、粗さ、摩擦係数などを改善するため、及びコストを低減するために、導電性であってもなくてもよいコロイドゾルを含むことができる。有用なコロイドゾルとしては、液体媒体、例えば水などの中にある無機微粒子が挙げられる。無機粒子は、例えば酸化錫、チタニア、酸化アンチモン、ジルコニア、セリア、イットリア、シリケート、シリカ、アルミナ、例えばベーマイトなど、アルミニウム変性シリカ、及び周期表第III族及び第IV族の他の無機酸化物、並びにそれらの混合物などの金属酸化物に基づくものであることができる。無機金属酸化物ゾルの選択は、所望の特性とコストの究極のバランスに依存する。例えば炭化ケイ素、窒化ケイ素及びフッ化マグネシウムなどの無機粒子は、ゾルの形態にある場合も有用である。ゾルの無機粒子は、100nm未満、典型的には70nm未満又は40nm未満の平均粒子サイズを有する。様々な有用なコロイドゾルはDuPont、Nalco Chemical Co.、及びNyacol Products Inc.から市販されている。
所望の物理的特性を達成するために、上記ゾルの無機粒子の質量%は、乾燥した層の、一般的に少なくとも5%、典型的には少なくとも10%である。
【0044】
水性コートされた下引き層は、任意の特定の理由のために任意の数の添加剤、例えばざらつき提供添加剤(米国特許第5,405,907号明細書に記載)、界面活性剤、消泡剤又はコーティング助剤、電荷調節剤、増粘剤又は粘度調節剤、融合助剤、架橋剤又は硬化剤、可溶性及び/又は固体粒子状色素、防曇剤、充填剤、艶消しビーズ、無機又はポリマー粒子、接着促進剤、溶解溶剤(bite solvents)又は化学エッチング剤、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、ボイド形成剤、着色剤又は色味剤、粗面化剤、スリップ剤、紫外線吸収剤、及び当該技術分野で知られている他の添加剤を含んでいてもよい。
【0045】
望ましい静電気保護のため、水性コートされた下引き層は、13logΩ/平方未満、典型的には12logΩ/平方未満、より典型的には11logΩ/平方未満、及び10logΩ/平方未満の表面電気抵抗率又は内部電気抵抗率を有することができる。導電剤及び/又は静電気散逸剤を帯電防止下引き層以外の画像要素中のどこに組み入れてもよいことが理解されるであろう。最適な静電気保護を得るために、要素の表面電気抵抗率又は内部電気抵抗率は13logΩ/平方未満、典型的には12logΩ/平方未満、又は典型的には11logΩ/平方未満であることが望ましい。
【0046】
水性コートされた下引き層は、いかなる被覆量(厚さ)のものであってもよい。しかし、乾燥層被覆量が少なすぎると、接着が適切でなくなるおそれがある。一方、乾燥層被覆量が多すぎると、印刷中の色素転写効率が低下し、しかも不必要な高いコストがかかるおそれがある。下引き層の乾燥被覆量は一般的には100mg/m〜2000mg/m、典型的には300mg/m〜600mg/mである。水性コートされた下引き層の最終厚さは一般的に0.5〜10μm、典型的には0.75μm〜5μmである。
【0047】
水性コートされた下引き層の接着は、赤外線(IR)熱処理を使用してさらに増進することができる。この赤外線熱処理では、製造又は仕上げ中に画像受容層又は色素受容層(DRL)をIR熱に暴露する。IR加熱後の接着性の改善は、IR熱のもとでの表面温度及び時間に依存する。DRLの最適な表面温度は93〜109℃(200〜228°F)であることが必要である。IR加熱で消費される時間は、製造又は仕上げ工程のライン速度の関数であり、約1秒であるべきである。
【0048】
画像受容層
画像形成要素において使用される画像受容層は、任意の適切な方法、例えば溶剤又は水性コーティング法、当該技術分野、例えば米国特許第5,411,931号、第5,266,551号、第6,096,685号、第6,291,396号、第5,529,972号及び第7,485,402号明細書で知られているようなカーテンコーティング、浸漬コーティング、溶液コーティング、印刷、又は押出コーティングなどで形成できる。
【0049】
ほとんどの実施態様において、画像受容層(例えば感熱色素画像受容層)が水性コートされた下引き層上に押出される。かかる画像受容層についての詳細は例えば米国特許第7,091,157号(Kung他)に示されている。例えば、かかる層は、例えば、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)、ポリ(カプロラクトン)、又はこれらの混合物もしくはブレンドを含んでもよい。例えば米国特許第4,775,657号明細書(Harrison他)に記載されているように、画像受容層上にオーバーコート層をさらにコートしてもよい。
【0050】
画像受容層は一般的には少なくとも100μm、典型的には100〜800μmの厚さで押出し、次に10μm未満に一軸延伸することができる。画像受容層の最終厚さは一般的には1〜10μm、典型的には1μm〜5μmであり、最適な厚さは意図する用途に応じて決定される。被覆量は、例えば、0.5〜20g/m、典型的には1〜15g/mであることができる。
【0051】
画像受容層が他の添加剤、例えば、プリンター内での搬送性の改善を可能にすることのできる滑剤を含んでもよい。滑剤の一例は、ポリジメチルシロキサン含有コポリマー、例えばビスフェノールAとジエチレングリコールとポリジメチルシロキサンブロック単位のポリカーボネートランダムターポリマーであり、画像受容層の10%〜30%の量で存在することができる。他の添加剤としては可塑剤、例えば1,3−ブチレングリコールアジペートとジオクチルセバケートの混合物から形成されたエステル又はポリエステルなどがある。可塑剤は、典型的には、色素画像受容層の総質量の4%〜20%の量で存在することができる。
【0052】
色素受容層は、支持体の片側又は両側に存在することができ、単層又は多層であることができる。画像(色素)受容層と水性コートされた下引き層の厚さ比は一般的には0.5:1〜30:1、典型的には2:1〜15:1であり、2:1〜10:1である場合が多い。
【0053】
要素中の様々な層の作製
本発明の幾つかの実施態様によると、押出されたコンプライアント層の片面上又は押出されたコンプライアント層の両面上にスキン層を形成することができる、これらのスキン層は、押出コーティングもしくはキャストコーティング又はホットメルト押出のような押出法のいずれかによって、後述の支持体上に個別に押出すことができる。これらの方法では、ポリマー又は樹脂ブレンドを最初の工程で溶融させる。第2の工程で、溶融物を均質化して温度エクスカーションを低減するか、溶融物を調節し、ダイに供給する。第3の工程で、スキン層を支持体又は改質された支持体上に供給し、それらの転移温度(融点又はガラス転移)未満に急冷し、剛性を得る。支持体のより近くにあるスキン層の場合、樹脂を支持体上に供給し、一方、画像受容層のより近くにあるスキン層は、支持体上にすでにコートされたコンプライアント層(これは改質された支持体として知られている)上に供給される。
【0054】
個別にスキン層をレイダウン(これは複数のステーション又は複数の操作を必要とする)する代わりに、コンプライアント層と同時にスキン層をレイダウンする有用な方法がある。これは典型的には多層同時押出として知られている。この方法では、2又は3種以上のポリマー又は樹脂配合物を押出し、フィードブロック又はダイ内で合流させて、複数の層を有する1つの構造体を形成する。典型的には、共押出の場合には、2つの基本的なダイのタイプ、すなわち、マルチマニホールドダイと、シングルマニホールドダイとの組み合わせでフィードブロック、が使用されるが、フィードブロックとマルチマニホールドダイとを組み合わせたハイブリッドバージョンが存在する。マルチマニホールドダイの場合、ダイは全幅にわたる個別の複数のマニホールドを有する。マニホールドのそれぞれはポリマー層を均一に分配する。複数の層の結合(この場合にはスキン(1又は2以上)とコンプライアント層)は、最終ダイランドの前のダイの内側、又はダイの外側で起こる。フィードブロック法では、フィードブロックは、溶融流れを、ダイ入口の前で、所望の層構造に整える。押出機の流速とともにモジュラーフィードブロックのデザインは、層の順序及び厚さ分布の制御を可能にする。
【0055】
スキン層(1又は2以上)を生成させるための第1工程の全体で、ポリマー又は樹脂ブレンド組成物を溶融させて共押出コンフィギュレーションに供給する。同様に、コンプライアント層の場合、樹脂ブレンド組成物を溶融させて共押出コンフィギュレーションに供給する。良好な拡幅及び層均一性を得るために、スキン層の粘度特性は、コンプライアント層を形成する溶融物の粘度との粘度差で10倍又は1:10を超えるものであるべきではなく、あるいは3倍又は1:3を超えるものであるべきではない。これは、効率的で高クオリィティの共押出を促進し、不均一層を防止する。層の均一性は、溶融温度を変えることにより調節できる。良好な層間接着を可能にするために、材料の組成を最適化することができ、層厚を変えることができ、流れの溶融温度を共押出コンフィギュレーションで調節することができる。
【0056】
コンプライアント層とのスキン層(1又は2以上)の共押出構造を生成させる第3工程では、共押出された層又は積層体を延伸又は配向させて厚さを減少させる。第4工程において、押出され延伸された積層体を後述する支持体に適用すると同時に、例えば、艶消し、粗い光沢又は鏡面仕上げなどの同じ又は異なる仕上げを有していてもよい2つのニップロールの間で急冷することによって、温度をスキン層(1又は2以上)の溶融温度(T)又はガラス転移温度(T)未満の範囲に下げる。
【0057】
さらに、スキン層を、別々に押出(上記のとおり)するか、あるいは1又は2以上のその他の層と共押出してもよい。
下引き層は、水性配合物(下記実施例参照)として押出されたコンプライアント層上に適用でき、次に、画像受容層を、水性コートされた下引き層上に別々に適用(押出又は溶剤もしくは水性コート)できる。画像受容層が溶剤又は水性コートされる場合、紫外線などの外部手段により画像受容層をコーティング又は乾燥工程中又はその後に架橋させることができる。
【0058】
要素の構造及び支持体
本発明の画像形成要素(例えば、感熱色素受容要素)の特定の構造は様々なものとすることができるが、一般的には、画像受容層の下方に水性コートされた下引き層、押し出しコンプライアント層及び支持体(押出されたコンプライアント層の下方にある全ての層として定義される)を含む多層構造である。支持体は、ベース支持体、例えばセルロース紙繊維を含むセルロース紙、剛性ポリマー繊維を含む合成紙、又は樹脂コート紙を含む。しかし、他のベース支持体、例えば、布地及びポリマーシートも使用できる。ベース支持体は、画像形成用途で典型的に使用されているいかなる支持体であってもよい。本発明の画像形成要素のいずれも、画像形成要素の有用性を高めるために、基材又は支持体にさらに積層してもよい。
【0059】
紙ベースの底部又はワイヤ側(裏側)に使用される樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、これらの樹脂のコポリマー、これらの樹脂のブレンドなどのポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂である。原基材の底部側の樹脂層の厚さは5μm〜75μm、典型的には10〜40μmであることができる。所望のカール特性が得られるように樹脂層の厚さ及び樹脂組成を調節することができる。画像形成プリンターにおける望ましい搬送性が得られるように樹脂層の表面粗さを調節することができる。
【0060】
ベース支持体は、透明又は不透明で、反射性又は非反射性であることができる。不透明支持体としては、普通紙、コート紙、樹脂コート紙、例えばポリオレフィンコート紙、合成紙、低密度フォームコアに基づく支持体、及び低密度フォームコアに基づく紙、写真紙支持体、溶融押出コート紙、及びポリオレフィンラミネート紙が挙げられる。
【0061】
紙としては、高級紙、例えば写真印画紙などから低級紙、例えば新聞紙までの広範囲にわたる紙が挙げられる。一実施態様において、米国特許第5,288,690号及び第5,250,496号明細書(両方とも本明細書に援用)に記載されているような、Eastman Kodak Co.により製造されたEktacolor(登録商標)ペーパーを使用できる。紙は、標準的な連続長網抄紙機により又は他の近代的な抄紙機により製造できる。紙を提供することが当該技術分野で知られているいかなるパルプも使用できる。漂白硬木化学パルプは、強度を維持しつつ、明るさ、滑らかな出発面及び良好な形成性をもたらすため、漂白硬木化学パルプが有用である。本発明において有用な紙は、50μm〜230μm、典型的には100μm〜190μmの厚さを有するものである。というのは、画像形成された要素の全厚が消費者により望まれる範囲内にあり、かつ、現在の装置での処理に適する範囲内にあるからである。紙は、画像の観察を妨げないように、「滑らか」であることができる。疎水性(サイジング)、湿潤強度及び乾燥強度を付与するための化学添加剤を必要に応じて使用してもよい。光学的特性を向上させ、コストを低減するために、必要に応じて、無機充填剤、例えばTiO、タルク、マイカ、BaSO及びCaCOクレイなどを使用できる。必要に応じて、色素、殺生物剤及び処理用化学薬剤を使用してもよい。紙を、平滑化工程、例えば乾燥又は湿潤カレンダー処理にかけても、インライン又はオフラインペーパーコーターによりコーティングにかけてもよい。
【0062】
特に有用な支持体は、樹脂を片面にコートした紙ベースである。二軸延伸ベース支持体は、紙ベースと、紙ベースの片側又は両側に積層された二軸延伸されたポリオレフィンシート、典型的にはポリプロピレンを含む。市販の延伸及び未延伸ポリマーフィルム、例えば不透明二軸延伸ポリプロピレン又はポリエステルを使用できる。かかる支持体は、それらの不透明性を高めるために、顔料、エアボイド又はフォームボイドを含んでもよい。ベース支持体は、マイクロポーラス材料、例えば、PPG Industries,Inc.(ペンシルバニア州ピッツバーグ)からTeslin(登録商標)の商品名で販売されているポリエチレンポリマー含有材料、Tyvek(登録商標)合成紙(DuPont Corp.)、含浸紙、例えばDurafoam(登録商標)、及びOPPalyte(登録商標)フィルム(Mobil Chemical Co.)、並びに米国特許第5,244,861号に挙げられている他の複合フィルムなどから成っていてもよい。マイクロボイド化複合材料二軸延伸シートを使用でき、コアと表面層を共押出し、次に二軸延伸することによりコア層中に含まれるボイド誘発材料のまわりにボイドを形成することによって、都合よく製造される。かかる複合材料シートは、例えば米国特許第4,377,616号、第4,758,462号及び第4,632,869号明細書に開示されている。
【0063】
「ボイド」は本明細書中では、添加された固形及び液体物質を欠くことを意味するのに用いるが、「ボイド」は往々にして気体を含む。完成したパッケージングシートコア中に残留するボイド誘発粒子は、所望の形状及びサイズのボイドを生成するように、直径が0.1〜10μmであり、典型的には丸い形状のものであるべきである。ボイドのサイズは、縦方向及び横方向の延伸度にも依存する。理想的には、ボイドは、縁部同士が接触する2つの向かい合う凹面状ディスクによって画定される形状を有すると考えられる。換言すれば、これらのボイドはレンズ状又は両凸形の形状を有する傾向がある。その長手方向と幅方向がシートの縦方向及び横方向と並ぶようにこのボイドは配向する。Z方向軸は副次的な次元であり、おおよそ、ボイド生成粒子の断面直径のサイズである。ボイドは一般的に独立気泡である傾向があり、従って、気体又は液体が横切ることができるような、ボイド含有コアの一方の側から他方の側に開いた通路は実質的にない。
【0064】
二軸延伸シートは、少なくとも1つの層を有するものとして説明してきたが、二軸延伸シートの特性を変えるのに役立つことができるさらなる層が設けられていてもよい。かかる層は、独特の特性を有するシートが生じるように、色味剤、帯電防止性又は導電性材料、あるいはスリップ剤を含んでよい。本明細書ではスキン層と呼ぶ表面層を有する二軸延伸シートを形成することができる。スキン層は、支持体及び写真要素に改善された接着性又は外観を付与する。二軸延伸押出は、幾つかの特に望ましい特性を達成するために、必要に応じて、10層もの多層で実施できる。二軸延伸シートは、同じポリマー材料の層を使用して製造でき、あるいは、二軸延伸シートは、ポリマー組成が異なる層を使用して製造できる。適合性の点で、複数の層の接着を促進するために、補助層を使用できる。
【0065】
透明支持体としては、ガラス、セルロース誘導体、例えばセルロースエステル、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなど、ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリ(ブチレンテレフタレート)、及びそれらのコポリマー、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンなど、ポリスルホン、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド、及びそれらの混合物が挙げられる。本明細書で使用する用語「透明」は、実質的に偏向又は吸収なしに可視光を透過する能力を意味する。
【0066】
本発明において使用される画像形成要素は、50〜500μm、典型的には75〜300μmの厚さを有することができる。必要に応じて、酸化防止剤、増白剤、帯電防止又は導電剤、可塑剤及び他の周知の添加剤を支持体に組み込んでもよい。一実施態様において、要素は、80を超えるL*UVO及び0〜−6.0のb*UVOを有する。L*、a*及びb*は、D65法を使用するハンター(Hunter)分光光度計を使用して測定することができるCIEパラメータ(例えば、Addison,Wesley,Longman Inc.,により1997年に出版されたGiorgianni and MaddenによるDigital Color Management中のAppendix A参照)である。「UVアウト」(UVO)は、試料の紫外線励起の効果がないように特性評価中にUVフィルターを使用することを意味する。
【0067】
別の実施態様において、ベース支持体は、少なくとも1つのフランジ層に接着されたポリマーコアを有する合成紙(典型的にはセルロースを含まない)を含む。ポリマーコアは、ホモポリマー、例えばポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、又は他の典型的な熱可塑性ポリマー、それらのコポリマー又はそれらのブレンド、あるいは、ポリウレタン及びポリイソシアヌレートのような他のポリマー系を含む。これらの材料は、ボイドをもたらす延伸により又は発泡剤の使用により、固体ポリマーマトリックスと気相の2つの相から成るように膨張されたものであってもなくてもよい。他の固体相が、有機(ポリマー、繊維状)又は無機(ガラス、セラミック、金属)由来のものである充填剤の形態で存在してもよい。コアの物理的特性、光学的特性(明度、白色度及び不透明度)、化学的特性、又は加工性の向上のために、上記充填剤を使用できる。
【0068】
さらに別の実施態様において、支持体は、発泡ポリマーコア、又は少なくとも1つのフランジ層に接着された発泡ポリマーコアを有する合成紙(典型的にはセルロースを含まない)を含む。ポリマーコアにおける使用について記載した上記ポリマーも、幾つかの機械的、化学的又は物理的手段を通じて行われる発泡ポリマーコア層の製造において使用できる。機械的方法としては、ポリマー溶融物、溶液又は懸濁液中にガスをホイッピングすることが挙げられる。ポリマー溶融物、溶液又は懸濁液は、次に触媒作用若しくは熱又はそれらの両方により硬化され、マトリックス中にガスバブルを封じ込める。化学的方法としては、加熱又は重合中の反応の発熱により窒素又は二酸化炭素などのガスを生成する科学発泡剤の熱分解などの方法が挙げられる。物理的方法としては、系の圧力を低下させることによりポリマー塊中に溶解していたガスを膨張させる、低沸点液体、例えばフルオロカーボン又は塩化メチレンなどを揮発させること、又はポリマーマトリックス中に中空微小球を組み入れることなどの方法が挙げられる。発泡方法の選択は、所望のフォーム密度の減少、所望の特性及び製造プロセスにより決定される。発泡ポリマーコアは、発泡剤の使用により膨張したポリマーを含んでよい。
【0069】
多くの実施態様において、ポリオレフィン、例えばポリエチレン及びポリプロピレン、それらのブレンド及びそれらのコポリマーを発泡ポリマーコアにおけるマトリックスポリマーとして使用し、それとともに、化学発泡剤、例えば、重炭酸ナトリウム及びそれとクエン酸との混合物、有機酸塩、アゾジカルボンアミド、アゾビスホルムアミド、アゾビスイソブチロールニトリル、ジアゾアミノベンゼン、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチルテトラミン(DNPA)、水素化ホウ素ナトリウム及び当該技術分野において周知の他の発泡剤を使用する。有用な化学発泡剤は、重炭酸ナトリウム/クエン酸混合物、アゾジカルボンアミドであるが、他のものも使用できる。必要に応じて、これらの発泡剤を、補助発泡剤、核形成剤及び架橋剤とともに使用してもよい。
【0070】
本発明の一実施態様は、ベース支持体及びその片側にある押出されたコンプライアント層、水性コートされた下引き層、及び押出感熱色素画像受容層、必要に応じて、押出されたコンプライアント層の片側又は両側にある1又は2以上のスキン層を含む、感熱色素転写用の感熱色素受容要素である。
【0071】
実施態様によっては、画像受容体要素は「両側型」である。これは、画像受容体要素が支持体の両側に画像受容層(例えば感熱色素受容層)を有することを意味する。かかる実施態様において、支持体の両側にある画像受容層の下方に、押出されたコンプライアント層、水性コートされた下引き層及び任意のスキン層が存在することができる。従って、幾つかの実施態様では、支持体の各側で、複数の層(例えば、画像受容層、水性コートされた下引き層及び押出されたコンプライアント層)について同じ構成を有することができる。水性コートされた下引き層は、支持体の片側又は両側に帯電防止特性を有することができる。
【0072】
色素供与体要素
押出画像形成要素とともに使用できるインク又は感熱色素供与体要素は一般的に支持体を含み、当該支持体上にインク又は色素含有層を有する。
熱の作用により感熱インク又は色素受容又は記録層に転写可能である限り、任意のインク又は色素を感熱インク又は色素供与体に使用できる。インク又は色素供与体要素は、例えば米国特許第4,916,112号、第4,927,803号及び第5,023,228号明細書に記載されている。上記のように、インク又は色素供与体要素を使用して、インク又は色素転写画像を形成する。かかるプロセスは、インク又は色素供与体要素を像様加熱し、インク又は色素画像を上記のとおりのインク又は色素受容又は記録要素に転写してインク又は色素転写画像を形成することを含む。感熱インク又は色素転写印刷方法では、シアン、マゼンタ又はイエローのインク又は色素の逐次反復する領域でコートされたポリ(エチレンテレフタレート)支持体を含むインク又は色素供与体要素を使用でき、インク又は色素転写工程を各色に対して逐次行って多色のインク又は色素転写画像を得ることができる。当該支持体は黒色インクを含んでよい。当該支持体は、転写された色素画像上に転移させることのできる透明保護層を含んでもよい。このプロセスが1つの色だけを使用して行われる場合には、単色インク又は色素転写画像が得られる。
【0073】
色素受容要素とともに使用できる色素供与体要素は、通常、色素含有層を上に有する支持体を含む。色素供与体要素の色素層中にいかなる色素も、熱の作用により色素受容層に転写可能である限り使用できる。拡散性色素、例えば米国特許第7,160,664号明細書(Goswami他)に記載されているマゼンタ色素などを使用して良好な結果が得られた。
色素供与体層は、感熱印刷に適する色素を含む単色領域(パッチ)又は多色領域(パッチ)を含むことができる。本明細書で使用する場合に、「色素」は、1又は2種以上の色素、顔料、着色剤、又はそれらの組み合わせであることができ、必要に応じて、当業者に知られているようにバインダー又はキャリヤー中に存在してよい。例えば、色素層は、マゼンタ色素の組み合わせを含むことができ、さらに、少なくとも1種のビス−ピラゾロン−メチン色素及び少なくとも1種の他のピラゾロン−メチン色素を含むイエロー色素供与体パッチと、少なくとも1種のインドアニリンシアン色素を含むシアン供与体パッチとを含む。
【0074】
熱により転写可能な任意の色素を色素供与体要素の色素供与体層に使用することができる。当該色素は、色相、耐光堅牢性、並びに色素供与体層及び色素画像受容層バインダーへの色素の溶解性を考慮して選択できる。
有用な色素のさらなる例は、米国特許第4,541,830号、第4,698,651号、第4,695,287号、第4,701,439号、第4,757,046号、第4,743,582号、第4,769,360号、第4,753,922号、第4,910,187号、第5,026,677号、第5,101,035号、第5,142,089号、第5,374,601号、第5,476,943号、第5,532,202号、第5,804,531号、第6,265,345号及び第7,501,382号明細書(Foster他)、並びに米国特許出願公開第2003/0181331号及び第2008/0254383号明細書(Soejima他)に見出すことができる。
単色色素供与体層又は黒色色素供与体層を得るために、色素を単独で又は組み合わせで使用できる。色素は、0.05g/m〜1g/mの被覆量で使用できる。様々な実施態様によれば、色素は疎水性であることができる。
【0075】
画像形成及び集成体
上記のとおり、色素転写画像を形成するために色素供与体要素及び画像受容要素を使用できる。かかるプロセスは、感熱色素供与体要素を像様加熱し、色素画像を上記のような感熱色素受容体要素に転写して色素転写画像を形成することを含む。
シアン、マゼンタ及びイエロー色素の逐次反復領域でコートされたポリ(エチレンテレフタレート)支持体を含む感熱色素供与体要素を使用でき、3色色素転写画像を得るために各色について色素転写工程が逐次実施される。色素供与体要素は、保護オーバーコートを得るために画像受容要素に転写することにできる無色領域を含んでもよい。
【0076】
インク又は色素をインク又は色素供与体要素から画像受容体要素に転写するのに使用できるサーマルプリントヘッドは市販されている。例えば、Fujitsuサーマルヘッド(FTP−040 MCS001)、TDKサーマルヘッドF415 HH7−1089、又はRohmサーマルヘッドKE 2008−F3を使用できる。代わりに、感熱インク又は色素転写のための他の公知のエネルギー源、例えば英国特許出願公開第2,083,726A号に記載されているように、例えばレーザーなどを使用できる。
【0077】
別の実施態様において、画像形成要素は電子写真画像形成要素であることができる。エレクトログラフィー及び電子写真プロセス並びにそれらの個々の工程は当該技術分野で十分に説明されており、例えば米国特許第2,297,691号明細書(Carlson)に記載されている。これらのプロセスは、静電画像を生成し、その画像を電荷を帯びた着色粒子(トナー)で現像し、必要に応じて、得られた画像を第2の基材に転写させ、その画像を基材に定着させるという基本的な工程を含む。これらのプロセス及び基本工程には多くのバリエーションがあり、例えば乾燥トナーの代わりに液体トナーを使用することは単にそれらのバリエーションの1つである。
【0078】
上記の最初の基本的工程、すなわち、静電画像の生成は、様々な方法により達成できる。複写機の静電写真プロセスでは、均一に電荷を帯びた光伝導体のアナログ又はデジタル露光による像様光放電を利用する。光導電体は、一回使用システムのものでもよいし、あるいはセレン又は有機受容体に基づくもののような、再帯電可能で再画像形成可能なものでもよい。
【0079】
別のエレクトログラフィープロセスでは、静電画像を、イオノグラフィーで生成させる。潜像を、誘電性(電荷保持)媒体(紙又はフィルム)上に形成する。電圧を、媒体の幅全体にわたって間隔をおいて配置された針の列から、選択された金属針又は書き込みニブに加えて、選択された針と媒体との間の空気の絶縁破壊を生じさせる。イオンが形成され、媒体上に潜像が形成される。
【0080】
しかしながら、生成した静電画像は、反対の電荷を帯びたトナー粒子で現像される。液体トナーで現像する場合、液体現像剤を、静電画像に直接接触させる。通常、流動する液体を用いて、十分なトナー粒子が現像に確実に使用されるようにする。静電画像により生成した電界により、非導電性液体中に懸濁された帯電粒子が電気泳動により移動する。静電潜像の電荷は、反対の電荷を帯びた粒子によりこのように中和される。液体トナーによる電気泳動現像の理論と物理的過程は、数多くの書籍及び刊行物に十分に記載されている。
【0081】
再画像形成可能な光受容体又は電子写真マスターが使用される場合、トナー画像は、電子写真画像受容要素に転写される。受容要素を、トナー粒子が受容要素に転写されるように選択された極性で静電的に帯電させる。最後に、階調画像を受容要素に定着させる。自己定着トナーの場合、残留液体を空気乾燥又は加熱により受容要素から除去する。溶剤の蒸発によって、それらのトナーは、画像受容要素の結合したフィルムを形成する。熱可融性トナーの場合、熱可塑性ポリマーが粒子の一部として使用される。加熱によって、残留液体が除去されるとともに、受容要素にトナーが定着される。
【0082】
本発明の別の実施態様において、例えば米国特許第7,381,254号明細書(Wu他)、米国特許第7,541,406号明細書(Banning他)及び米国特許第7,501,015号明細書(Odell他)に記載されているように転写される「相変化インク(phase change ink)」として知られているものを使用してインクジェットプリントヘッドからワックスをベースとするインクを受容するために画像受容要素を使用できる。
【0083】
感熱集成体(thermal transfer assemblage)は、(a)インク又は色素供与体要素、及び(b)本発明のインク又は色素画像受容体要素を含むことができる。インク又は色素画像受容体要素がインク又は色素供与体要素と重なり合う関係で存在するので、供与体要素のインク又は色素層がインク又は感熱色素画像受容層と接触していてもよい。周知の方法を使用してこの集成体を使用して画像が得られる。
【0084】
3色画像を得ようとする場合、熱をサーマルプリントヘッドにより適用できる間の3つの機会で上記集成体を形成することができる。第1の色素を転写した後、要素を剥離する。第2の色素供与体要素(異なる色素領域を有する供与体要素の別の領域)を次に感熱色素受容層に見当合わせし、このプロセスを繰り返す。同様にして、第3の色を得ることができる。
【0085】
以下の実施態様及びそれらの組み合わせが本発明の範囲内に含まれるものの代表である:
1:画像受容層と、押出されたコンプライアント層と、押出されたコンプライアント層と画像受容層の間にある水性コートされた下引き層とを含み、画像受容層は必要に応じて押出されたものであってもよく、押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、10〜40質量%の少なくとも1種のエラストマーポリマーを含む、画像形成要素。
2:水性コートされた下引き層がポリウレタンを含む、実施態様1の要素。
3:前記水性コートされた下引き層が1又は2種以上の帯電防止剤を含む、実施態様1の要素。
4:前記水性コートされた下引き層が半導電性金属酸化物又は導電性ポリマーを含む、実施態様3の要素。
5:前記半導電性金属酸化物が酸化錫であり、前記導電性ポリマーがポリチオフェンである、実施態様3又は4の要素。
6:前記水性コートされた下引き層が湿度不感受性である、実施態様1〜5のいずれか一つの要素。
7:前記水性コート耐電防止下引き層が、80%RH及び23℃の条件のもとで、その質量の10%未満の湿気を吸収する、実施態様6の要素。
8:前記エラストマーポリマーが15〜30質量%の量で前記押出されたコンプライアント層中に存在する、実施態様1〜7のいずれか一つの要素。
9:前記エラストマーポリマーが熱可塑性ポリオレフィンブレンド、スチレン/アルキレンブロックコポリマー、ポリエーテルブロックポリアミド、コポリエステルエラストマー、エチレン/プロピレンコポリマーもしくは熱可塑性ウレタン又はこれらの混合物を含む、実施態様1〜8のいずれか一つの要素。
10:前記押出されたコンプライアント層が35〜80質量%のマトリックスポリマー、10〜40質量%のエラストマーポリマー、及び2〜25質量%のアモルファス又は半結晶性ポリマー添加剤を含む、実施態様1〜9のいずれか一つの要素。
【0086】
11:さらに、前記押出されたコンプライアント層の片面又は両面に隣接して押出されたスキン層を含む、実施態様1〜9のいずれか一つの要素。
12:前記押出されたスキン層(1又は2以上)及び押出されたコンプライアント層が共押出層である、実施態様11の要素。
13:前記コンプライアント層が、200℃及び1s−1の剪断速度で1000〜100,000ポアズの剪断粘度を有する配合物として押出される、実施態様1〜12のいずれか一つの要素。
14:前記画像受容層、水性コートされた下引き層、押出されたコンプライアント層及び任意の押出スキン層(1又は2以上)が支持体上に一緒に配置されている、実施態様1〜13のいずれか一つの要素。
15:セルロース紙繊維又は合成紙を含む支持体を含む、実施態様14の要素。
16:前記押出されたコンプライアント層が15〜70μmの最終厚さを有し、どの押出されたスキン層も押出されたコンプライアント層の画像側で10μm以下の最終厚さを有し、支持体側で70μm以下の厚さを有する、実施態様12の要素。
17:帯電防止層が0.5〜10μmの最終厚さ又は100〜2,000mg/mの乾燥被覆量を有する、実施態様1〜12のいずれか一つの要素。
18:前記画像受容層がポリエステル、ポリカーボネート、ビニルポリマー、又はそれらの組み合わせを含む、実施態様1〜17のいずれか一つの要素。
19:前記画像受容層が感熱色素転写画像受容層であり、前記要素が感熱色素転写受容体要素である、実施態様1〜13のいずれか一つの要素。
20:支持体上に順に押出されたコンプライアント層、水性コートされた下引き層(これは必要に応じて耐電防止層である)、及び押出された感熱色素転写画像受容層を含み、さらに、押出されたコンプライアント層の少なくとも1つの表面に隣接する少なくとも1つの押出されたスキン層を含み、押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、
35〜80質量%のマトリックスポリマーと、
10〜40質量%の、熱可塑性ポリオレフィンブレンド、スチレン/アルキレンブロックコポリマー、ポリエーテルブロックポリアミド、コポリエステルエラストマー、エチレン/プロピレンコポリマーもしくは熱可塑性ウレタン又はこれらの混合物である少なくとも1種のエラストマーポリマーと、
2〜25質量%のアモルファス又は半結晶性ポリマー添加剤、
を含む感熱色素転写受容体要素である、請求項1〜19のいずれか一つの要素。
21:実施態様1〜20のいずれか一つの画像形成要素と画像供与体要素を含む集成体。
22:前記画像形成要素が感熱色素転写受容体要素であり、前記画像供与体要素が感熱色素供与体要素である、実施態様21の集成体。
本発明を説明するために以下の例を示す。全ての例において、支持体を以下のように作製した。
【実施例】
【0087】
0.0635m単軸スクリュー押出機を0.0254m単軸スクリュー押出機とともに使用してコンプライアント層構造体を作製した。コンプライアント層は全て、紙の画像形成側に75.76m/分で押出した。幾つかの構造体の場合に、コンプライアント層を単層として押出し、他の構造体の場合には、共押出フォーマットを使用して二層構造を生成させた。これらの構造体を作製するために、適切なフィードプラグコンフィギュレーションを使用した。さらに、コンプライアント層について選択した材料の効果を目立たせるため、及びプリントの粗さ及び印刷適性に及ぼす効果を観察するために、異なるチルロールを使用して実験を行った。チルロールと支持体の間のニップにおいて、チルロールにより溶融物カーテンを急冷した。
ハロゲン化銀支持体用の紙ロールの樹脂コーティングで使用されるチルロールには、最終プリントで光沢仕上げが望まれるか又は艶消仕上げが望まれるかに応じて様々な粗さのものがある。粗さは、標準的な表面粗さパラメーターR、R及びRmaxにより特徴付けられる。これらの実施例で使用したチルロールは、鏡面的な又は滑らかで光沢のあるチルロールとして記述される。これらのチルロールの特性を下記表1に示す。
表I.マール・ペルソメーター・コンセプト(Mahr Perthometer Concept)・スタイラス・プロファイロメーターを使用して測定されたチルロール表面の特性.
【0088】
【表1】

【0089】
対照(比較用)支持体は、押出されたコンプライアント層を有する紙支持体から成っていた。これらの支持体のコンプライアント層側に非水性帯電防止下引き層及び色素受容層を2つの溶融物の共押出によりコーティングした。色素受容層及び耐電防止層の成分を以下に記載するようにペレット状にした。
色素受容体ペレットを液冷式ホッパーに導入し、それをBlack Clawson製の0.063m単軸スクリュー押出機に供給した。色素受容体ペレットを押出機内で溶融させ、265℃に加熱した。次に、溶融物ポンプを通して圧力を上昇させ、DRL溶融物をCloeren共押出フィードブロックに供給した。
【0090】
帯電防止下引き層ペレットを別の0.0254m単軸スクリュー押出機の液冷式ホッパーに導入した。下引き層ペレットも、当該組成物の要件により決まる温度に加熱し、次にCloeren共押出フィードブロックに供給した。全てのバリエーションで、ダイから出る溶融物を約299℃に調節した。
ダイギャップを約0.46mmに設定した幅1270mmのダイを通して上記の複数の層を共押出し、支持体上にコートした。ダイ出口とチルロール及び圧力ロールにより形成されたニップとの間の距離は約120mmに保った。全てのバリエーションでライン速度は243.8m/分であり、延伸共鳴が観察されなかった。
帯電防止下引き層を押出して支持体上で1μmの厚さを達成した。それを色素受容体層(DRL)と、DRLの厚さと帯電防止下引き層の厚さとの比が2:1となるように共押出した。DRL配合物及び帯電防止下引き層配合物を以下に記載する。
【0091】
色素受容層(DRL):
ポリエステルE−2(構造及び製法が本明細書で引用した米国特許第6,897,183号明細書(第15欄、第3〜32行)及び本明細書で引用した米国特許第7,091,157号明細書(第31欄第23〜51行)に記載されている分岐ポリエステル)を、Novatech乾燥剤乾燥機内で、43℃で24時間乾燥させた。この乾燥機は、乾燥剤を最充填する間に温度が43℃を超えないように二次的な熱交換器を備えていた。露点は−40℃であった。
GE製のLexan(登録商標)151ポリカーボネート、GE製のLexan(登録商標)EXRL14141TNA8A005Tポリカーボネート、及びDow Chemical Co.製のMB50−315シリコーンを0.819:1:0.3の比で混合し、露点−40℃で120℃で2〜4時間乾燥させた。
ジオクチルセバケート(DOS)を83℃に予熱し、次いで、リン酸濃度が0.4%になるようにリン酸を混合した。この混合物を83℃に保ち、使用前に窒素下で1時間混合した。
【0092】
次に、これらの材料を配合工程で使用した。配合は、長さ対直径比30:1のLeistritz ZSK 27押出機内で行った。まず、Lexan(登録商標)ポリカーボネート/MB50−315シリコーン材料を配合機に導入し、次に溶融させた。ジオクチルセバケート/リン酸溶液を加え、最後にポリエステルを加えた。最終的な配合率は、ポリエステルが2.1%、Lexan(登録商標)151ポリカーボネートが10%、Lexan(登録商標)EXRL14141TNA8A005Tが6.55質量%、MB50−315シリコーンが6%、DOSが5.33%、及びリン酸が0.02%であった。溶融混合物を次にストランドダイを通して押出し、32℃の水中で冷却し、ペレット化した。次に、ペレット化した色素受容体配合物を2週間エージングした。
溶融配合を使用して、又は水性分散体を調製し支持体上にコーティングすることによって、様々な帯電防止下引き層を作製した。
【0093】
押出下引き層(TL1):
Sanyo Chemical Co.製のポリエーテルポリオレフィン帯電防止材料 PELESTAT(登録商標)300とHuntsman P4G2Z−159ポリプロピレンホモポリマーを比70:30で240℃で配合し溶融混合することによりTL1を形成した。配合前に、PELESTAT(登録商標)300をNovatech乾燥機内で77℃で24時間乾燥させた。次に、ポリマーをストランドダイに通し、20℃の水浴中に入れ、ペレット化した。配合した帯電防止下引き層ペレットを次に再びNovatech乾燥機内で77℃で24時間乾燥させ、乾燥空気を使用して押出機に搬送した。
【0094】
水性下引き層(TL2):
本発明の実施例の水性下引き層に以下の成分を使用した:
Neorez(登録商標)R 600、ポリウレタンラテックスの30質量%水性分散体(Tg=−32℃、DSM Neoresinsにより供給)、
FS 10D、Ishihara Corporationにより供給されたアンチモンドープ導電性酸化錫の20質量%水性分散体。
本発明の例の場合に、次の組成を用いて水性下引き層を作製した:18323.86gのNeorez(登録商標)R600、30243.38gのFS10D及び7691.76gの水。下記表IIに、例に記載のコンプライアント層及び押し出しされた下引き層に使用して各種樹脂を列記する。
【0095】
【表2】

【0096】
KODAK(登録商標)Professional EKTATHERMリボン(カタログ番号106−7347のドナー要素)を使用するKODAK(登録商標)6800プリンターを使用して印刷を行い、各種印刷特性を評価した。顧客が取扱う場合を代表する試験である耐擦過性についてもプリントを評価した。耐擦過性は、バランスド・ビーム・スクレイプ・アンド・マー・テスター(balanced beam scrape adhesion and Mar Tester)(ASTM D2197)を使用して黒色(Dmax)画像から評価した。この試験では、角度を垂直方向に対して30度に固定されたチップにより2インチ/秒(又は5.08cm/秒)のおおよその速度でプリントを擦過した。次に、プリントを、擦過傷について視覚的に評価した。プリントを擦過して白くなる荷重を記録した。これは、プリントが永久的に損傷した荷重又は重さに対応する。プリント上の擦過傷に関する顧客の苦情をより少なくするには、プリントが高い耐擦過性を有すること、換言すれば、プリントに擦過傷を付けるのに必要な荷重が高いことが有用であろう。
【0097】
比較例1
支持体の作製:170μm厚の写真用生ベース(photographic raw base)の裏側に着色されていないポリエチレンを14g/mの被覆量でコートした。写真用生ベースの画像形成側に、コンプライアント層とスキン層の共押出構造体を、2つの樹脂層を、スキン層がチルロールに対してキャストされるように、チルロールC(鏡面又は滑らかで光沢のある)に対して共押出コーティングすることにより生成させた。コンプライアント層は、53.6%のAmplify(登録商標)EA102、25.05%のKraton(登録商標)G1657、11%のP9H8M015 PP、10%のTiO、0.25%のステアリン酸亜鉛及び0.1%のIrganox(登録商標)1076から構成されていた(全て質量基準)。スキン層は、89.75%の811A LDPE、10%のTiO及び0.25%のステアリン酸亜鉛から構成されていた(全て質量基準)。コンプライアント層とスキン層の層質量比は5:1であり、一方、両方の層の全被覆量は29.29g/mであった。コンプライアント層の樹脂とスキン層の樹脂は両方ともLeistritz ZSK27配合機で配合することにより調製した。
この支持体に押出された帯電防止下引き層(TL1)及びDRLをコートした。帯電防止下引き層が約232℃の温度で押出機から排出されるように、帯電防止下引き層を溶融させた。DRLと帯電防止下引き層の厚さ比は2:1であった。得られた画像形成受容要素を印刷しプリントの擦過性能について評価した。
【0098】
発明例1
支持体の作製:170μm厚の写真用生ベースの裏側に着色されていないポリエチレンを14g/mの被覆量でコートした。写真用生ベースの画像形成側に、コンプライアント層とスキン層の共押出構造体を、2つの樹脂層を、スキン層がチルロールに対してキャストされるように、チルロールC(鏡面又は滑らかで光沢のある)に対して共押出コーティングすることにより生成させた。コンプライアント層は、53.6%のAmplify(登録商標)EA102、25.05%のKraton(登録商標)G1657、11%のP9H8M015 PP、10%のTiO、0.25%のステアリン酸亜鉛及び0.1%のIrganox(登録商標)1076から構成されていた(全て質量%)。スキン層は、89.75%の811A LDPE、10%のTiO及び0.25%のステアリン酸亜鉛から構成されていた(全て質量%)。コンプライアント層とスキン層の層質量比は5:1であり、一方、両方の層の全被覆量は29.29g/mであった。コンプライアント層の樹脂とスキン層の樹脂は両方ともLeistritz ZSK27配合機で配合することにより調製した。
この支持体に押出された帯電防止下引き層(TL2)を0.344g/mの被覆量でコートし、次にDRLを2μm厚(比較例1と同じ厚さ)となるように押出コートした。得られた画像形成受容要素を印刷しプリントの擦過性能について評価した。
【0099】
比較例2
支持体の作製:170μm厚の写真用生ベースの裏側に着色されていないポリエチレンを14g/mの被覆量でコートした。写真用生ベースの画像形成側に、コンプライアント層とスキン層の共押出構造体を、2つの樹脂層を、スキン層がチルロールに対してキャストされるように、チルロールC(鏡面又は滑らかで光沢のある)に対して共押出コーティングすることにより生成させた。コンプライアント層は、53.8%のP9H8M015 PP、35.9%のVistamaxx(登録商標)6202、10%のTiO、0.25%のステアリン酸亜鉛及び0.1%のIrganox(登録商標)1076から構成されていた(全て質量%)。スキン層は、89.75%の811A LDPE、10%のTiO及び0.25%のステアリン酸亜鉛から構成されていた(全て質量%)。コンプライアント層とスキン層の層質量比は5:1であり、一方、両方の層の全被覆量は27.83g/mであった。コンプライアント層の樹脂とスキン層の樹脂は両方ともLeistritz ZSK27配合機で配合することにより調製した。
この支持体に押出された帯電防止下引き層(TL1)及びDRLをコートした。帯電防止下引き層が約232℃の温度で押出機から排出されるように、帯電防止下引き層を溶融させた。DRLと帯電防止下引き層の厚さ比は2:1であった。得られた画像形成受容要素を印刷しプリントの擦過性能について評価した。
【0100】
発明例2
支持体の作製:170μm厚の写真用生ベースの裏側に着色されていないポリエチレンを14g/mの被覆量でコートした。写真用生ベースの画像形成側に、コンプライアント層とスキン層の共押出構造体を、2つの樹脂層を、スキン層がチルロールに対してキャストされるように、チルロールC(鏡面又は滑らかで光沢のある)に対して共押出コーティングすることにより生成させた。コンプライアント層は、53.8%のP9H8M015 PP、35.9%のVistamaxx(登録商標)6202、10%のTiO、0.25%のステアリン酸亜鉛及び0.1%のIrganox(登録商標)1076から構成されていた(全て質量%)。スキン層は、89.75%の811A LDPE、10%のTiO及び0.25%のステアリン酸亜鉛から構成されていた(全て質量%)。コンプライアント層とスキン層の層質量比は5:1であり、一方、両方の層の全被覆量は27.83g/mであった。コンプライアント層の樹脂とスキン層の樹脂は両方ともLeistritz ZSK27配合機で配合することにより調製した。
この支持体に押出された帯電防止下引き層(TL2)を0.344g/mの被覆量でコートし、次にDRLを2μm厚(比較例2と同じ厚さ)となるように押出コートした。得られた画像形成受容要素を印刷しプリントの擦過性能について評価した。
以下の表IIIは、画像印刷後の比較例及び発明例についての耐擦過性に関する比較データを示す。本発明に従う水性下引き層を使用することによって、得られるプリントの耐擦過特性が、押出された帯電防止タイ(tie)層を含む比較例から得られたプリントと比べて著しく改善されたことが判る。これは、水性下引き層が非常に薄く、耐擦過性に及ぼすそのポジティブな影響は予想されなかったため、非常に驚くべき結果である。
【0101】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像受容層と、押出されたコンプライアント層と、当該押出されたコンプライアント層と画像受容層の間にある水性コートされた下引き層とを含み、画像受容層は必要に応じて押出されたものであってもよく、押出されたコンプライアント層はボイド化されておらず、かつ、10〜40質量%の少なくとも1種のエラストマーポリマーを含む、画像形成要素。
【請求項2】
水性コートされた下引き層がポリウレタンを含む、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
水性コートされた下引き層が1又は2種以上の帯電防止剤を含む、請求項1又は2に記載の要素。
【請求項4】
水性コートされた下引き層が半導電性金属酸化物又は導電性ポリマーを含む、請求項3に記載の要素。
【請求項5】
半導電性金属酸化物が酸化錫であり、導電性ポリマーがポリチオフェンである、請求項4に記載の要素。
【請求項6】
水性コートされた耐電防止下引き層が、80%RH及び23℃の条件のもとで、その質量の10%未満の湿気を吸収する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
エラストマーポリマーが、押出されたコンプライアント層中に、15〜30質量%の量で存在する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の要素。
【請求項8】
エラストマーポリマーが熱可塑性ポリオレフィンブレンド、スチレン/アルキレンブロックコポリマー、ポリエーテルブロックポリアミド、コポリエステルエラストマー、エチレン/プロピレンコポリマーもしくは熱可塑性ウレタン又はこれらの混合物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の要素。
【請求項9】
押出されたコンプライアント層が35〜80質量%のマトリックスポリマー、10〜40質量%のエラストマーポリマー、及び2〜25質量%のアモルファス又は半結晶性ポリマー添加剤を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の要素。
【請求項10】
さらに、押出されたコンプライアント層の片面又は両面に隣接して、押出されたスキン層を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の要素。
【請求項11】
セルロース紙繊維又は合成紙を含む支持体を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の要素。
【請求項12】
押出されたコンプライアント層が15〜70μmの最終厚さを有し、押出されたスキン層が10μm以下の最終厚さを有する、請求項10に記載の要素。
【請求項13】
帯電防止層が0.5〜10μmの最終厚さ又は100〜2,000mg/mの乾燥被覆量を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の要素。
【請求項14】
画像受容層が感熱色素転写画像受容層であり、要素が感熱色素転写受容体要素である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の要素。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の画像形成要素と画像供与体要素を含む集成体。

【公表番号】特表2013−503058(P2013−503058A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526711(P2012−526711)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/002222
【国際公開番号】WO2011/028230
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】