説明

画像式車両検知器

【課題】 設置時の設置現場での作業を軽減できる画像式車両検知器を提供する。
【解決手段】 画像式車両検知器は、カメラ1で撮影された映像信号を解析して撮影画像に映る車両を検出するための昼夜判定部7、昼処理部8、夜処理部9と、映像信号から映像ファイルを生成する映像ファイル生成部4と、日時を計時する時計部5と、予め設定された閾値及び検証日時、並びに、映像ファイル生成部4により生成された映像ファイルを記録するメモリ部6とを備える。時計部5が計時する日時が検証日時に到達したとき、映像ファイル生成部4により映像ファイルを生成し、この映像ファイル及び映像信号を検証して生成した交通情報を検証用データとしてメモリ部6に記録する。検証用データとして記録された映像ファイルを後日、メモリ部6から読み出して検証を行うことができるため、現場作業が軽減され、設置作業が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路に設置して交通量や車両速度などを測定する画像式車両検知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、道路に設置する車両検知器として、超音波車両検知器やレーダ式車両検知器、画像式車両検知器などが知られている。
【0003】
画像式車両検知器は、例えば特許文献1に記載されているように、昼間は、車両が無いときの路面の輝度と車両が通過しているときの車体の輝度との相違から車両を判定し、また、夜間は、路面に比較して明るく映る車両のヘッドライトの輝度により車両の存在を判定している。画像式車両検知器では、この判定のために、昼間用及び夜間用の輝度の閾値が設定されており、閾値を超える輝度を検出した場合に、車両が通過したと識別される。 そして、単位時間に検出した車両の数から交通量を求め、フレームごとの車両の移動状況を解析して車両速度を求めている。この閾値は、画像式車両検知器が設置された環境条件などによって異なる。そのため、各画像式車両検知器には、その環境条件に応じた閾値を設定する必要がある。
【0004】
従来のレーダ式車両検知器では、特許文献2に示すように、環境条件の変化に対応した閾値を自動的に設定、変更する装置が作られている。この装置では、マイクロ波を発射し、その反射波の受信レベルを利用して閾値を設定している。しかし、映像を映すだけの画像式車両検知器では、こうした方式を採ることができないため、従来の画像式車両検知器では、その設置現場で閾値を変化させて検証を行い、最適な閾値を求めていた。
【0005】
【特許文献1】特開2000−285379号公報
【特許文献2】特開平5−323014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような、現場で閾値を変化させて検証を行う従来の車両検知器の検知方法では、昼夜それぞれに最適な閾値を求めるために、画像式車両検知器の設置現場に頻繁に出向いて検証を繰り返す必要があり、その設置作業に莫大な労力を費やしていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、設置時の設置現場での作業を軽減することができ、設置作業が容易な画像式車両検知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像式車両検知器は、路上を撮影するカメラと、前記カメラからの映像信号を解析し、車両の存在を感知する画像処理部と、前記映像信号から映像ファイルを生成する映像ファイル生成部と、前記映像信号の解析に用いる閾値と、検証日時と、生成される検証用データとを記録するメモリ部と、前記検証用データの生成処理を行う検証処理部と、を備え、前記画像処理部は、前記閾値を用いて前記映像信号を解析し、前記検証処理部は、前記検証日時と一致する日時に、前記映像ファイル生成部を利用して前記映像ファイルを生成し、生成した映像ファイルを前記検証用データとして前記メモリ部に記録するものである。
この構成により、検証用データとして記録された映像ファイルを後日、メモリ部から読み出して検証を行うことができるため、現場作業が軽減され、設置作業を容易にすることが可能となる。
【0009】
また、本発明は、上記の画像式車両検知器であって、前記検証処理部は、前記検証用データとして、前記画像処理部の解析結果を前記映像ファイルとともに前記メモリ部に記録するものとする。
この構成により、メモリ部に記録された映像ファイルと映像信号の解析結果(解析された交通情報)とを照合して検証作業を行うことができる。
【0010】
また、本発明は、上記の画像式車両検知器であって、前記検証処理部は、前記カメラからの前記映像信号の入力を待つ状態において、前記映像ファイルの生成及び前記検証用データの記録を行うものとする。
この構成により、通常の車両感知処理に影響を与えることなく、待ち受け状態において検証用の映像ファイルの生成及び記録を行うことができる。
【0011】
また、本発明は、上記の画像式車両検知器であって、前記閾値と前記検証日時は、当該画像式車両検知器に接続される端末装置によって設定され、前記メモリ部に記録された前記検証用データは、前記端末装置によって読み出されるものとする。
この構成により、作業者は、検証用データが記録された後日、端末装置を用いて検証用データを画像式車両検知器から読み出して検証を行い、閾値を調整して再設定することができるので、設置作業が軽減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、検証のための設置現場での作業時間や設置現場に出向く回数などの、設置時の人による現場作業を軽減することができ、設置作業が容易な画像式車両検知器を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本実施形態における画像式車両検知器は、カメラが撮影した映像信号を解析して車両の存在を感知するものであり、さらに、撮影した映像信号より生成した映像ファイルと、この映像信号を解析して求めた交通情報とを記録する機能を備えている。この画像式車両感知器は、カメラが撮影した映像信号を解析して交通量や車両速度などの交通情報を求めて出力する通常の処理を行いながら、予め設定された検証日時に到達すると、カメラが撮影した映像信号より生成した映像ファイルと、この映像信号を解析して求めた交通情報とを検証用データとして記録する。検証作業者は、記録された映像ファイル及び交通情報を、後日、パーソナルコンピュータ(PC)に取り込み、その交通情報が映像と合っているかを検討し、画像式車両検知器における車両感知のために設定される閾値を調整する。
【0014】
図1は本発明の実施形態における画像式車両検知器の構成を示すブロック図である。画像式車両検知器は、路上の映像を撮影するカメラ(ITVカメラ)1と、カメラ1で撮影したアナログ映像信号をデジタル映像信号に変換するA/D変換部2と、A/D変換部2から出力されたデジタル映像信号を処理して交通情報の生成などを行う演算部3と、日時を管理する時計部5と、設定データや検証用の映像ファイル及び交通情報データなどを記憶するメモリ部6とを備えており、A/D変換部2、演算部3、時計部5及びメモリ部6が車両感知部20を構成している。
【0015】
演算部3は、デジタル化された映像信号全体の輝度を解析して撮影画像が昼間に撮影されたものか夜間に撮影されたものかを判定する昼夜判定部7と、昼夜判定部7で昼間と判定された場合に昼間用の閾値を用いた映像解析を行って交通情報を生成する昼処理部8と、昼夜判定部7で夜間と判定された場合に夜間用の閾値を用いた映像解析を行って交通情報を生成する夜処理部9と、A/D変換部2から出力されたデジタル映像信号を用いて検証用の映像ファイルを生成する映像ファイル生成部4とを備えている。この演算部3において検証処理部の機能が実現される。また、演算部3の昼夜判定部7、昼処理部8、夜処理部9によって画像処理部の機能が実現される。
【0016】
また、メモリ部6は、車両感知用の閾値などの設定項目が記憶される設定データ記憶エリア6aと、検証日時が記憶される検証日時記憶エリア6bと、検証用の映像ファイル及び交通情報が記憶される映像ファイル記憶エリア6cとを有している。
【0017】
上記の画像式車両検知器は、路上に据え付けた後、閾値を変更しながら検証を繰り返して画像処理のための閾値を決定する。閾値の検証は、図1に示すように、画像式車両検知器の車両感知部20に調整用のパーソナルコンピュータ(PC)10を接続し、このパーソナルコンピュータ10から昼間用及び夜間用の閾値と検証日時とを含む検証条件を車両感知部20に設定することから始まる。設定された検証日時は、メモリ部6の検証日時記憶エリア6bに記憶され、閾値は、メモリ部6の設定データ記憶エリア6aに記憶される。
【0018】
図2は本発明の実施形態における画像式車両検知器の動作を説明するフローチャートであり、検証条件の設定後に起動された画像式車両検知器の動作を示している。
【0019】
起動された車両感知部20の演算部30は、メモリ部6の設定データ記憶エリア6aに記憶されている昼間用及び夜間用の閾値を読み出す(ステップS1)。次に、A/D変換部2は、所定の周期ごとにカメラ1から出力されるアナログ映像信号の受信待ち状態となる(ステップS2)。ステップS2において、A/D変換部2は、アナログ映像信号を受信すると、A/D変換を行い、デジタル映像信号を演算部3の昼夜判定部7に出力する(ステップS3)。
【0020】
昼夜判定部7は、デジタル化された映像信号全体の輝度を解析して昼夜を判定する(ステップS4)。つまり、撮影画像における路面全体の輝度が高ければ昼間であると判定してデジタル映像信号を昼処理部8に送出する。また、撮影画像における路面全体の輝度が低くヘッドライトの輝度のみが高ければ夜であると判定してデジタル映像信号を夜処理部9に送出する。昼処理部8は、昼間用の閾値を用いて、撮影画像の映像信号内の輝度の違いやフレームごとの車両の移動状況を解析することで、交通量や車両速度を含む交通情報を検出して生成する(ステップS5)。また、夜処理部9は、夜間用の閾値を用いて、昼処理部8と同様に交通量や車両速度を含む交通情報を検出して生成する(ステップS6)。生成された交通情報は、外部インタフェース(図示せず)に出力される(ステップS7)。
【0021】
次に、車両感知部20の演算部3は、調整用のパーソナルコンピュータ10が接続されているかをチェックする(ステップS8)。パーソナルコンピュータ10が接続されている場合は、パーソナルコンピュータ10により設定項目の閾値が変更されたかをチェックし(ステップS9)、変更された場合は、閾値をメモリ部6の設定データ記憶エリア6aに記録する(ステップS10)。また、検証時刻が設定されたかをチェックし(ステップS11)、設定された場合は、検証時刻をメモリ部6の検証日時記憶エリア6bに記録する(ステップS12)。
【0022】
演算部3は、時計部5が管理する日時が、検証日時記憶エリア6bに記憶された検証時刻に到達したかをチェックし(ステップS13)、到達した場合は、次の手順により録画ルーチンを実行する(ステップS14)。
【0023】
図3は本実施形態の画像式車両検知器における録画ルーチンの動作を説明するフローチャートである。録画ルーチンにおいて、演算部3の映像ファイル生成部4は、A/D変換部2でデジタル映像信号に変換された撮影画像の映像信号について、動画及び静止画の映像ファイルを生成する(ステップS141)。この映像ファイルと昼処理部8または夜処理部9で生成された交通情報とを共に、メモリ部6の映像ファイル記憶エリア6cに記録する(ステップS142)。そして、映像ファイル及び交通情報の記録が終了すると録画ルーチンを停止する(ステップS143)。
【0024】
上述した録画ルーチンは、測定した交通情報を外部インタフェースに出力する通常の処理ルーチンと並列的に行われるが、通常の処理ルーチンよりも優先順位が低く設定されている。このため、ステップS14の録画ルーチンは、映像受信待ち(ステップS2)等の処理のアイドリング状態時にのみ行われる。従って、録画ルーチンが通常の処理ルーチンに影響することはない。
【0025】
図2に戻り、パーソナルコンピュータ10から記録した映像ファイル及び交通情報の出力要求があるかをチェックし(ステップS15)、記録データの出力要求がある場合は、演算部3は、映像ファイル記憶エリア6cに記憶された映像ファイル及び交通情報をパーソナルコンピュータ10に出力する(ステップS16)。出力が終了すると、ステップS1に戻り、メモリ部6の設定データ記憶エリア6aに記憶されている閾値が読み出され、以降の手順が同様に繰り返される。また、ステップS15において、録画ファイルの出力要求がないときには、録画ファイルは映像ファイル記憶エリア6cに記憶されたまま、ステップS1に戻り、メモリ部6の設定データ記憶エリア6aに記憶されている閾値が読み出され、以降の手順が同様に繰り返される。
【0026】
映像ファイル記憶エリア6cに記憶された映像ファイル及び交通情報は、後日、パーソナルコンピュータ10に取り込み、検証作業者によって閾値の妥当性が検討される。例えば、昼間、交通情報に含まれる車両台数が画像に映る車両の台数より少ない場合、すなわち適切に車両を感知していない場合には、路面と車両とを判別する閾値を下げるように調整が行われる。また、夜間は闇の中のヘッドライトを検出することで車両を感知するが、隣接車線を走行する車両から漏れた光を誤感知するときは、ヘッドライトを検出する閾値を上げるように調整が行われる。
【0027】
このように、本実施形態の画像式車両検知器は、予め設定された検証日時に達すると、撮影画像の映像ファイルと、この映像信号を検証条件の閾値を用いて解析した交通情報データとを記録する。従って、この映像ファイル及び交通情報データの記録内容を後日パーソナルコンピュータに取り込んで検証することができ、現場での頻繁な検証作業が軽減され、画像式車両検知器の設置作業が容易となる。
【0028】
また、本実施形態の画像式車両検知器では、検証に供する映像ファイルの生成及び記録処理、並びに、交通情報データの記録処理の優先度を通常処理より低く設定することにより、通常処理が検証動作に影響されないようにすることができる。
【0029】
なお、上記実施形態では、検証に供するための映像ファイルと交通情報データとを共に画像式車両検知器内に記録する場合について説明したが、画像式車両検知器には映像ファイルのみを記録し、そのときの対応する交通情報データは、画像式車両検知器の外部インタフェース(図示せず)から出力してネットワークを介して伝送し、遠隔地の装置で受信して記録するようにしても良い。この場合、画像式車両検知器から映像ファイルの記録内容を後日パーソナルコンピュータに取り込み、検証日時に遠隔地で記録した交通情報データと照合して検証作業を行うことができる。
【0030】
また、上記実施形態では、カメラ1がアナログ映像信号を出力し、車両感知部20が、その映像信号をデジタル信号に変換するA/D変換部2を備える構成について説明したが、デジタル映像信号を出力するカメラを使用する場合には、車両感知部20でのA/D変換部2は不要になる。
【0031】
上述したように、本実施形態によれば、設置時の設置現場での作業の頻度を低減し、設置作業を容易にすることができる。このため、設置環境条件ごとに最適な閾値を決定する必要がある画像式車両検知器において、より効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、設置時の設置現場での作業を軽減することができる効果を有し、道路に設置して交通量や車両速度などを測定する画像式車両検知器等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態における画像式車両検知器の構成を示すブロック図
【図2】本発明の実施形態における画像式車両検知器の動作を説明するフローチャート
【図3】本実施形態の画像式車両検知器における録画ルーチンの動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
【0034】
1 カメラ
2 A/D変換部
3 演算部
4 映像ファイル生成部
5 時計部
6 メモリ部
6a 設定データ記憶エリア
6b 検証日時記憶エリア
6c 映像ファイル記憶エリア
7 昼夜判定部
8 昼処理部
9 夜処理部
10 パーソナルコンピュータ
20 車両感知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上を撮影するカメラと、
前記カメラからの映像信号を解析し、車両の存在を感知する画像処理部と、
前記映像信号から映像ファイルを生成する映像ファイル生成部と、
前記映像信号の解析に用いる閾値と、検証日時と、生成される検証用データとを記録するメモリ部と、
前記検証用データの生成処理を行う検証処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記閾値を用いて前記映像信号を解析し、
前記検証処理部は、前記検証日時と一致する日時に、前記映像ファイル生成部を利用して前記映像ファイルを生成し、生成した映像ファイルを前記検証用データとして前記メモリ部に記録する画像式車両検知器。
【請求項2】
前記検証処理部は、前記検証用データとして、前記画像処理部の解析結果を前記映像ファイルとともに前記メモリ部に記録する請求項1記載の画像式車両検知器。
【請求項3】
前記検証処理部は、前記カメラからの前記映像信号の入力を待つ状態において、前記映像ファイルの生成及び前記検証用データの記録を行う請求項1又は2記載の画像式車両検知器。
【請求項4】
前記閾値と前記検証日時は、当該画像式車両検知器に接続される端末装置によって設定され、
前記メモリ部に記録された前記検証用データは、前記端末装置によって読み出される請求項1ないし3のいずれかに記載の画像式車両検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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