画像形成システムおよび画像形成方法
【課題】画像形成システムおよび画像形成方法を提供すること。
【解決手段】本発明の画像形成方法は、3次元の物体24の表面に画像を形成するために用いられ、物体24の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、光照射システムからのレーザ光により像状露光を行って、物体24の表面に担持された粒子を照射して溶融させ、物体24の表面に粒子を像状に融着させる工程と、物体24の表面から表面に融着していない粒子を除去する現像工程とを含んでいて、多様な形状の表面に対しても高いコントラストの画像を形成することができる。また、本発明は、上記工程を行なう画像形成システムを提供する。
【解決手段】本発明の画像形成方法は、3次元の物体24の表面に画像を形成するために用いられ、物体24の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、光照射システムからのレーザ光により像状露光を行って、物体24の表面に担持された粒子を照射して溶融させ、物体24の表面に粒子を像状に融着させる工程と、物体24の表面から表面に融着していない粒子を除去する現像工程とを含んでいて、多様な形状の表面に対しても高いコントラストの画像を形成することができる。また、本発明は、上記工程を行なう画像形成システムを提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に関し、より詳細には、物体表面に融着された着色画像を形成する画像形成システムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、金属、ガラス、樹脂、紙、木材など材質を問わず、着色箇所の凹凸形状に左右されず、所望の色を繊細に所望の箇所に着色して画像形成を行なう種々の方法が知られている。形成される画像としては、例えば、商品のロゴ、製造年月日やロット番号、電化製品や携帯電話のボタンの名称や説明、デザイン、キャラクタ商品などを挙げることができる。
【0003】
従来、商品に対する印字などの画像形成のため、画像形成方法は、レーザ・ダイレクト・マーキング、スクリーン印刷、転写印刷、インクジェット印刷が用いられている。また、シート状の部材に対してはインパクト・ドットプリンタ、電子写真プリンタ、インクジェット・プリンタ、感熱式プリンタが実用されている。この他にも、本発明者らにより提案された着色・画像形成方法として、レーザ・プラスチック着色法(以下、LPC法として参照する。)がある。
【0004】
以下、従来の画像形成方法について説明すると、概ね以下のように纏めることができる。
【0005】
<レーザ・ダイレクト・マーキング>
レーザ・ダイレクト・マーキングは、レーザ光を画像形成対象の表面へ照射し、表面の融解、発泡、改質などにより視覚的差異を生成する方法である。画像形成対象は、レーザ光に対して吸収がある材質であれば特に限定されず、形状も自由であり、画像形成対象に非接触にて処理を行なうことができるという利点がある。
【0006】
<スクリーン印刷>
スクリーン印刷は、孔版印刷の一種で版に絹、テトロン、ナイロンなどの化学繊維のスクリーンを利用し、版自体に穴をあけ、この穴からインクを擦りつける方式である。スクリーン印刷は、これまで紙、布、プラスチック、金属、ガラス、木、プリント回路基板など、あらゆる素材に印刷可能で、平面物だけでなく、ある程度の立体物や曲面でも印刷可能であることが知られている。
【0007】
<転写印刷>
転写印刷は、紙、フィルムなどに一旦印刷した転写可能画像を、水、熱、圧力などを利用して対象部材に転着させる方法である。転写印刷は、フィルムが密着できる程度の凹凸形状であれば印刷可能であり、また印刷精度が高く、印刷ミスが少ないというメリットを有している。
【0008】
<インパクト印刷>
この印刷方式は、インパクト・ドットプリンタとしてシステム化されており、インパクト・ドットプリンタは、複数の点で表現される文字や画像の形状を金属製のワイヤで打撃する。打撃されたインクリボンは、像状に物体に定着され、画像が形成できる。現在、インパクト・ドットプリンタは、多くカーボン複写をとるための業務用プリンタとして利用されている。
【0009】
<インクジェット印刷>
インクジェット印刷は、インク粒子を対象部材に噴射して画像形成対象に画像を形成する方法である。インクジェット印刷は、インクの種類や噴射方式により、缶・プラスチック・ボトル、ガラス板、コーティングされた箱、パイプ、電子部品、自動車部品など、幅広い着色対象部材の材質や形状に対応可能であるというメリットを有している。
【0010】
この印刷方式は、インクジェット・プリンタとしてシステム化され、インク滴を用紙に噴射させることにより文字、映像を形成する。インクジェット印刷としては、インク滴の噴出形態や噴出エネルギーの発生方法によって、インク滴を連続的に噴出し、必要なインク滴のみを用紙の所定位置に導く連続方式と、必要なときだけインク滴を噴出されるオンデマンド方式とがある。オンデマンド方式の分類の中でも電気的機械変換方式と電気熱変換方式が広く採用されている。
【0011】
<電子写真印刷>
電子写真印刷は、電子写真複写機や、電子写真プリンタとしてシステム化されており、光導電性と静電気の性質を利用し、着色剤は、トナーとして参照される粒子が用いられる。画像形成方式を概説すると、電子写真プリンタは、帯電器により感光ドラムに静電気を帯電させ、印刷する文字、映像に従って感光ドラムにレーザ光線を照射すると、その部分の静電気が消失し、所謂静電潜像が形成される。この時点で、帯電したトナーが感光ドラムに接触すると、帯電した部分のみにトナーが付着して像状露光に対応した画像を形成する方式である。その後、感光ドラム上に付着したトナーを普通紙やOHPシートに対して転写し、熱と圧力によってトナーを融着させ、普通紙やOHPシート上にトナーを定着させる。感光ドラム表面に光を照射する方式に応じて、レーザ・ビーム方式、LED方式、液晶シャッタ方式などが提案されている。
【0012】
<感熱転写印刷>
感熱転写印刷は、熱を利用して文字や画像を印刷する方式である。感熱転写方式を利用したプリンタとしては、過熱すると黒くなる感熱紙を用いた感熱式プリンタと、インクリボンのインクと溶かして用紙に転写する転写方式、加熱により染料などを昇華または気化させて、受像材料に転写する感熱昇華転写方式が知られており、熱転写方式のプリンタとしては、インクリボンの材料によって顔料系インクを溶融させる熱溶融型プリンタおよび染料系インクを溶融昇華させる感熱昇華型プリンタが提案されている。
【0013】
<LPC法>
本発明者らが提案した、LPC法は、アクリルなどの樹脂物体に染料を拡散させて像状に着色を行なう方式である。LPC法は、樹脂用染料を樹脂プレートまたは樹脂フィルムなどの着色対象の表面へ密着させ、レーザ光を像状に照射することにより、レーザ光の照射された部位を加熱し、照射箇所にのみ染料を移動・浸透させることにより着色対象着を着色する。LPC法による染料の付着方法としては、シート方法および噴射方法があり、前者は平面、後者は立体物への着色に多くの場合用いられている。
【0014】
なお、上述した画像形成方式の詳細については、下記の非特許文献に詳細が解説されている。また、特表2004−525992号公報(特許文献1)では、プラスチック表面に着色剤を含むレーザ感受層を設け、レーザ光線の像状照射によりその色相を変化させることで画像形成を行なう方法が開示されている。特表2004−525992号公報に開示された方法でも物体表面上に直接画像を描画することができるものの、そもそも光照射を行なうことで退色する着色剤を使用していることから、形成された画像の堅牢性が低く、また3次元形状の物体に対する画像形成性を問題にするものではない。
【非特許文献1】竹田他編集、株式会社学会出版センター発行、「記憶・記録・感光材料」、1985年10月20日
【非特許文献2】梶光雄著、印刷学会出版部発行、「印刷・電気系技術者のための印刷画像工学」、昭和63年6月15日
【非特許文献3】電子写真学会編集、株式会社コロナ社発行、「電子写真技術の基礎と応用」、昭和63年6月15日
【特許文献1】特表2004−525992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、種々の画像形成方法が提案されているものの、これまで知られていた画像形成方法を特に3次元形状を有する印刷対象物に適用する場合には、以下の問題点があった。レーザ・ダイレクト・マーキングでは、画像形成する物体に直接形成される視覚的差異を利用しているため、自由な色表現が困難であるという問題点がある。また、スクリーン印刷では、印刷のために型を製造する必要があり、スクリーンを着色対象表面に沿わせる必要があるため、急激な凹凸形状には印刷が困難であるという不都合がある。
【0016】
転写印刷では、フィルムが着色対象表面に密着する必要があるため、急激な凹凸形状には印刷が困難であり、多様な3次元物体に対する画像形成性に劣るという不都合がある。また、インクジェット印刷は、インクの噴出安定性の問題から、印刷欠陥が生じやすいという不都合がある。この他、インクジェット印刷は、インク粒の飛来時間がノズルと対象表面の間隔に依存するため、急激な凹凸形状への高速印刷が困難であるという特有の問題点を有している。
【0017】
また、各種プリンタ・システムでは、画像形成の利便性は向上されているものの、すべてのプリンタの構成は、シート形状を前提とした構成のため、凹凸形状には印刷が困難であり、また画像形成対象となる材質に制限が大きいという不都合がある。一方、LPC法では、着色対象部材が樹脂材料に限定されること、着色濃度が低く、充分な着色濃度を得るためにはレーザを複数回同一画素部分に照射する必要があること、凹凸面に対して安定的な着色が困難であることなどに加え、着色コントラストが低いために高い解像度を得ることが困難であるという問題点があった。
【0018】
上述したように、これまで種々の画像形成技術が提案されているにも拘わらず、3次元立体など形状の多様性に富む画像形成対象に対して充分な耐久性およびコントラストの画像を形成することが可能な画像形成システムおよび方法が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、本発明の目的は、様々な材質と複雑な形状の物体に対して、所望の位置に選択的に所望の着色を行なうことができ、所謂、立体カラー・プリンタを実現することができる着色方法および着色システムを提供することにある。
【0020】
本発明者は鋭意検討を加えた結果、粒子を、物体表面に担持させ、担持された粒子をレーザにより直接溶融させて、物体表面に融着させることにより、充分なコントラストの画像を複雑な形状を有する物体に対して良好に形成できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明によれば、
物体の表面に画像を形成するための画像形成システムであって、
前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する粒子供給部材と、
前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる光照射システムと、
前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する粒子除去部材と
を備える画像形成システムが提供できる。
【0022】
本発明では、前記物体は、3次元物体であり、前記物体の前記表面は、非平面形状を備えることができる。前記光照射システムは、レーザ装置と前記レーザ装置からのレーザ光を像状に変調する光学系とを含むことが好ましい。前記光学系は、光反射要素または光学マスクを備えることができる。さらに、前記物体の表面に前記粒子の担持を促進するための静電荷発生部材または磁場形成部材を含むことができる。
【0023】
また、本発明によれば、画像形成システムを用いて物体の表面に画像を形成するための画像形成方法であって、
物体を前記画像システムに供給する工程と、
粒子供給部材から前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、
光照射システムから像状露光を行って、前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる工程と、
粒子除去部材により前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する工程と
を含む画像形成方法が提供できる。
【0024】
本発明の前記物体を供給する工程は、前記物体の前記表面が非平面形状である3次元物体を提供する工程を含むことができる。前記融着させる工程は、光学系を使用してレーザ装置からのレーザ光を像状に変調する工程を含むことができる。前記融着させる工程は、0.5J/cm2以上の光エネルギーを前記粒子に対して供給し、溶融させる工程を含むことができる。本発明では、前記供給する工程の前に静電荷発生部材または磁場形成部材により前記物体の表面に前記粒子の担持を促進する工程を含むことができる。本発明では、前記光エネルギーを変化させて、画像の線幅および濃度を変化させる工程を含むことができる。また、前記供給する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に前記粒子を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を供給する工程を含むことができる。本発明では、また前記除去する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に流体を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を除去する工程を含むことができる。
【0025】
本発明の画像形成方法は、さらに、形成された画像状にさらに前記物体上に異なる色相の粒子を付着させる工程と、
付着した前記異なる色相の粒子を前記レーザ光により溶融させ、すでに形成された画像の色相と色相混合する工程と
を含むことができる本発明では、さらに、本発明では、前記粒子は、異なる色相の着色粒子を含み、前記融着させる工程は、前記レーザ照射により前記異なる色相の着色粒子を前記物体の表面上で混色する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多様な形状を有し、種々の材料で形成された3次元物体に対して高いコントラストで、堅牢性の高い良好な画像形成を可能とする、画像形成システムおよび画像形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示した実施の形態を以て説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の画像形成システムの概略図である。図1に示す画像形成システム10は、概ね、レーザ装置12と制御コンピュータ14とを備えている。制御コンピュータ14は、これまで知られたいかなるコンピュータでも使用することができ、例えばPENTIUM(登録商標)シリーズなどの中央処理装置(CPU)を備え、ウィンドウズ(登録商標)、MACOS、ユニックス(登録商標)、リナックス(登録商標)といったオペレーティング・システムを動作させることができるコンピュータを使用することができる。
【0029】
制御コンピュータ14は、図示しないハードディスク、EEPROMなどのメモリを備えており、形成するべき画像のデータを、ビットマップ、JPEG、JPEG2000、TIFF、ウィンドウズ(登録商標)メタファイル、GIFなどの適切なフォーマットとして格納している。制御コンピュータ14は、ユーザによる画像処理および形成するべき画像の作成の後、ユーザ指令に応答してスキャナ・コントローラ16へと、形成する画像に応答した制御信号を送信する。スキャナ・コントローラ16は、制御コンピュータ14からのデータに基づいてスキャナ光学系18およびレーザ装置12の発振を制御して、画像形成の行なわれる対象物24に向けて像状露光を行っている。
【0030】
本発明で使用することができるレーザ装置12は、トナーといった粒子を溶融させることが可能なエネルギーを所定の時間内に粒子に供給して、画像形成を行なう対象物に粒子を付着させる。本発明において使用されるレーザ装置には特に制限はなく、気体レーザ、半導体レーザ、特に本発明に必要な光エネルギー密度を供給することができる高出力半導体レーザ、固体レーザなどを使用することができる。これらのレーザの中でもエネルギー密度の点から言えば、気体レーザとしては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザなどが好ましく用いられ、固体レーザとしては、Nd−YAGレーザ、ルビー・レーザ、サファイヤ・レーザ、アレキサンドライト・レーザなどが好ましく用いられる。
【0031】
スキャナ光学系18は、図示する実施の形態では、さらに、レーザ光線を集光するための集光レンズ20と光反射要素である反射ミラー22とを備えている。集光レンズ20は、形成する画像に対応して所望するドット・サイズを与えるようにレーザ光を集光する。また、反射ミラー22は、ガルバノメータを使用してレーザ光線を偏向させており、画像の所定の位置にレーザ光線を照射させている。反射ミラー22および集光レンズ20は、それぞれスキャナ・コントローラ16により制御されるモータなどを含むアクチュエータ機構にマウントされており、スキャナ・コントローラ16からの指令に応答して位置および角度が制御されている。なお、本発明は、スキャナ光学系18に代えて、フーリエ変換によりコヒーレント光から所望のパターンを形成する光学マスクを使用して物体に対して像状露光を行なう光学系を使用することができる。
【0032】
レーザ装置12は、光シャッタまたはパルス・モジュレータによりスキャナ・コントローラ16の指令に対応したレーザ光線を出力し、像状露光を可能としている。図1では、反射ミラー22により反射されたレーザ光線は、画像形成する物体24に向かって照射される。物体24上には、トナーといった粒子が、化学的または静電的または磁力などの物理的相互作用により付着している。物体24上の粒子は、レーザ光線により像状に溶融され、物体24表面に融着する。融着は、本発明では、像状に発生する。このため、溶融しなかった粒子を物体24の表面から除去すると、図1に示すような融着画像26が得られる。
【0033】
本発明で使用することができる粒子は、特に制限されるものではない。しかしながら、本発明で使用する粒子は、量産性およびコストの面から、電子写真法で使用されるトナーを使用することができる。上述したトナーは、通常では、熱可塑性の樹脂組成物とされ、熱可塑性樹脂と、着色剤と、帯電制御剤と、シリカ、アルミナなどの無機微粒子または有機微粒子が使用される流動制御剤とを含んで形成されている。粒子の溶融開始温度は、約70℃〜150℃の範囲とすることができ、本発明において複数の色相、CMYKを溶融混色することを考えると、フルカラー画像形成用のトナーを使用することが好ましい。このようなトナーとしてはこれまで知られたいかなる材料、製造方法、材料組成のものでも使用できる。また、粒子の粒子サイズは、体積平均粒径で、2μm〜20μmの範囲とすることが好ましく、混色性を高め、より微細な画像を形成する点から、2μm〜6μmの範囲とすることができる。
【0034】
また、本発明に使用する粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、アクリル・モノマーを重合して形成されるアクリル重合体またはアクリル共重合体を使用することができる。本発明で使用することができるアクリル系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の他、ビニル誘導体、具体的には例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;β−クロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、ブタジエン等のジエン化合物を挙げることができる。
【0035】
また、粒子の物体表面への担持性を調節するために、粒子自体に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、リン酸含有単量体、具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、スルホン酸基含有単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクロイルモルホリン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾールなどを添加して、好ましい付着性を付与することもできる。また、これらの帯電制御剤を物体表面にスプレーなどの方法により付着させておき、粒子とは別に担持性を制御するために使用することができる。
【0036】
本発明で使用する粒子は、これまで知られたいかなる着色成分を使用して着色することができ、着色成分としては、例えば、カーボンブラックの他有機着色料、具体的には例えばC.I.ダイレクトレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6といった染料;カドミウムイエロー、ミネラルファーストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの着色成分は、適宜混合して用いることができ、さらに形成すべき画像の用途によっては、着色剤を特に使用しなくとも良い。
【0037】
この他、粒子の付着性を静電荷により制御する場合には、帯電性を制御するため、荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、これまで知られた正荷電制御剤もしくは負荷電制御剤のいずれでも利用できる。
【0038】
本発明で使用する粒子の体積平均粒径は、沈降法、慣性法、拡散法、モビリティ・アナライザ、光散乱法、細孔電気抵抗法などを使用して測定することができ、具体的には、例えば、Coulter社製のMULTISIZER(商標)などのこれまで知られたいかなる装置を使用して測定することができる。
【0039】
本発明で画像を形成する物体24は、種々の形状、材質が考えられ例えば、物体24の材質としては、プラスチック・フィルム、強磁性または軟磁性の金属プレート、ガラス、紙などが想定される。本発明においては、上述した材質で、かつ複雑な表面形状を有する物体24の表面に粒子を付着させる必要がある。本発明においては、刷毛またはファーブラシなどに粒子を担持させておき、物体表面に擦りつけるだけで物体表面に粒子を担持させることもできる。しかしながら、種々の物体および環境にわたり安定して粒子を付着させるためには、種々の方法により粒子の物体表面への付着性を促進することが好ましい場合も想定できる。本発明において、粒子付着を促進する方法としては、具体的には、例えば磁性を使用する方法および静電相互作用を使用する方法を挙げることができる。
【0040】
図2には、静電吸着を使用して粒子を担持させるプロセスを示した図である。図2を使用して物体24に対して粒子を担持させるための処理を物体24に対して施すプロセスについて説明する。
【0041】
図2(a)に示すプロセスは、静電荷発生部材としてファーブラシを使用して物体の表面に静電荷を与えるプロセスである。物体24は、その表面が複雑な形状を有しており、搬送ステージ、ベルトコンベアなどの搬送装置28上に載置されている。搬送装置28は、画像形成処理が行われている場合には、搬送を停止し、画像形成が終了した段階で、矢線Aで示される方向へと物体を移動させ、次処理プロセスに物体24を搬送する。また、搬送装置28は、形成する部分画像が形成された後、物体24の表面の次領域がレーザ照射されるように物体を順次送り、全画像の形成処理後、次プロセスに搬送するように制御することもできる。
【0042】
物体24の上部には、ファーブラシ30が回動自在に保持されており、図2に示す実施の形態ではファーブラシ30は、矢線Bで示す方向へと、物体の移動する方向に対してカウンタ方向に回動する。物体24が、プラスチック・フィルム、プラスチック・フィルム、紙など誘電体であり、摩擦帯電が可能な場合には、ファーブラシ30には、帯電を制御することができる物質、所謂、帯電制御済などをコーティングしておくことができる。ファーブラシ30の柔毛は、物体24の表面に当接し、物体24の表面に所望する摩擦帯電を付与している。なお、ファーブラシ30の回動方向は、本発明においては特に限定されるものではなく、矢線Bの反対方向に回動させることもできる。
【0043】
また、物体24が金属プレート、金属フィルム、メッキなどの導電処理を施されたプラスチック材料である場合には、摩擦帯電ではなくファーブラシ30と物体24との間にバイアス電位を印加しておき、物体24の表面に静電荷を付与することもできる。この場合、ファーブラシ30は、導電性繊維または導電処理を施した繊維から製造することができる。
【0044】
また、図2(b)に示した実施の形態は、静電荷発生部材としてコロナ放電を使用して物体24の表面に静電荷を与えるプロセスである。図2(b)では、コロナ放電装置34は、バイアス電源32により物体24に対してバイアスされ、物体24の上側の適切な位置に保持されている。コロナ放電装置34により発生した荷電粒子は、バイアス電位に従い物体24へと移動して物体24の表面を帯電させる。
【0045】
なお、本発明では、ファーブラシなどを使用するだけで充分なコントラストの画像を形成することができる場合には、特に静電荷発生部材を使用することは必要な処理ではないが、環境安定性や付着安定性などの点からは、粒子の担持を促進するプロセスまたはそのための部材を使用することが、工業上の観点から好ましい。
【0046】
図3は、本発明において粒子を物体24の表面上に担持させる、粒子供給工程のプロセスを示した図である。図3(a)および(b)は、静電プロセスを使用して粒子を担持させる場合の実施の形態であり、図3(c)に示すプロセスは、磁性を使用して、粒子の担持を行なうプロセスを示す。
【0047】
図3(a)では、帯電した物体24の上部に、粒子を担持したファーブラシ36が粒子供給部材として配置されている。ファーブラシ36には、表面の電荷と逆の極性に帯電した粒子が保持されている。ファーブラシ36は、搬送装置28の搬送方向に対して矢線Bで示す方向へとカウンタ方向に回動し、ファーブラシ36は、担持した粒子を物体24の表面に粒子を移動させ。この場合、ファーブラシ36は、バイアスされていても良いし、またバイアスされていなくとも良い。
【0048】
図3(b)に示した実施の形態では、帯電した物体24の上部に、粒子供給部材として使用されるエアブラシ38が保持されている。エアブラシ38は、粒子を物体表面に向かって噴射し、物体24の表面に粒子を担持させる。なお、エアブラシ38は、粒子を収容する図示しない容器に接続されていて、ノズルから空気などの圧力により粒子を噴射させている。本発明では、エアブラシ38から粒子を噴射する前に、粒子に物体24の表面電荷と反対の電荷を与えておき、その後エアブラシ38から噴出させることもできる。また、他の実施の形態では、エアブラシ38のノズルに摩擦帯電を可能とする部材またはコーティングを施しておき、粒子がノズルを通過する際の摩擦により粒子に所望する帯電を付与することもできる。
【0049】
また、図3(c)に示す実施の形態では、粒子として磁性粒子を使用する場合に好適に用いられる実施の形態である。図3(c)では、磁性トナーなどの磁性粒子を、搬送装置28を介した反対側に設置した永久磁石または電磁石といった磁石40を磁場形成部材として使用して、磁気的に物体24の表面に保持させる。図3(c)に示した実施の形態では、搬送装置28は、例えば鉄などの強磁性体を使用して構成されており、また物体24は、鋼板などの磁性体から形成されている。粒子は、エアブラシまたはファーブラシから供給され、磁力により物体24の表面に担持される。また、本発明の別の実施の形態では、搬送装置28を磁性材料から形成しておくことができる。搬送装置28を磁性材料から構成すれば、搬送装置28と磁石とを一体とすることができ、物体24が移動した場合にでも、物体24が搬送装置28上に載置されている限り、物体24の表面に粒子を保持させておくことができる。
【0050】
図3(c)に示した実施の形態は、物体24の材質によりある程度制限を受けるものの、図2で示した物体24の帯電プロセスを省略することができるので、プロセスの簡略化および低コスト化が可能となる。また、上述したように、ファーブラシなどだけで充分に物体表面に粒子を付着させることができ、また担持させることができる場合には、図3(c)で説明する磁石または電磁石による粒子吸着処理は必要とされない。
【0051】
図3で説明した処理後、物体24の表面には、粒子が静電引力または磁力により付着する。この状態で、レーザ光を像状に照射して、照射部分の粒子を溶融させ、物体表面に融着させることで像形成が可能となる。本発明では、レーザ照射による像形成プロセスの後、非加熱領域、すなわち非画像部の粒子を除去して形成された画像を現像する。
【0052】
図4は、本発明の画像形成方法における現像プロセスの実施の形態を示した図である。図4の状態では、搬送装置28上には、物体24が載置され、物体24上には、すでに像状に画像が形成されている。この場合では、非画像部にも粒子が付着しているので、画像は、顕像化されていない。本発明の現像プロセスは、非画像部の粒子を除去することにより行われる。本発明では、粒子除去方式として、接触式除去方式と非接触式除去方式とが可能である。図4(a)が接触式現像プロセスであり、図4(b)が非接触式現像プロセスである。図4(a)の接触式現像プロセスを説明すると、搬送部材28上に載置された物体24の上部に、物体24に当接する配置で、粒子除去部材として現像ファーブラシ42が配設されている。
【0053】
現像ファーブラシ42は、物体の搬送方向とはカウンタ方向に回動し、回動につれて物体24の表面に付着した粒子を除去する。一方、画像部の粒子は、レーザ照射により物体24表面に融着されているので、現像ファーブラシ42により摺擦されても物体表面からは除去されず、この結果、形成された画像が現像される。本発明では、現像ファーブラシ42は、現像効率を調節するためにバイアス電位が印加されていても良い。また、最適な現像を行なうために、現像ファーブラシ42の材質、物性また摺擦圧などを適宜調整して最適な現像条件を得る構成とすることができる。
【0054】
図4(b)は、非接触式現像プロセスの実施の形態を示した図である。本発明における非接触式の現像プロセスでは、図4(b)に示すように、物体24の上側に粒子除去部材として空気または物体の特性に応じて水、溶媒などの流体を噴霧する現像エアブラシ44を配置する。現像エアブラシ44は、物体24の表面に向けて加圧された流体を噴射している。非画像部の粒子は、噴射された流体により除去され、像状に物体24の表面に融着した粒子のみが物体表面に残留し、現像が完了する。本発明の非接触式現像プロセスでは、粒子の飛散を防止し、なおかつ未使用粒子を回収することができるように、現像領域を遮蔽ボックスなどの遮蔽部材により遮蔽し、遮蔽部材内部から図示しない集塵機などを使用して余剰の粒子を回収するプロセスを追加することもできる。
【0055】
図5は、本発明の画像形成システムの画像形成方法の実施の形態を示した工程図である。図5に示すように、本発明の画像形成方法では、物体24は、搬送装置28上に載置されており、搬送装置28は、連続的、または工程上のタイミングに応答して、間歇的に移動している。図5には、粒子付着プロセスの後、レーザ照射プロセスおよび現像プロセスへと搬送された状態での物体24を、仮想線で示す。
【0056】
物体24は、粒子供給部材であるファーブラシまたはエアブラシを使用して粒子が供給され、粒子付着プロセスが施される。その後、物体24は、レーザ照射システムによりレーザ照射プロセスが施され、レーザ照射プロセスにおける像状照射により、物体24上には、粒子が像状に融着する。
【0057】
その後、物体24は、遮蔽部材46の内部に搬送されて粒子除去部材を使用して摺擦またはエアにより未定着の粒子を除去する現像プロセスが施される。現像プロセスは、図4で説明したように、現像ファーブラシによる接触式現像または現像エアブラシを使用する非接触現像により行なうことができる。また、図5に示した実施の形態では、遮蔽部材46には集塵機48が接続され、非画像部から除去された廃粒子を回収する。現像プロセスを経た物体24の表面には、制御コンピュータ14によりユーザが指令した画像が形成されていて、必要に応じて最終的な洗浄・リンスなどの処理を経た後、表面に画像が形成された製品とされる。
【0058】
本発明は、複雑な3次元形状を有する物体の表面に像形成する画像形成プロセスに好適に使用することができるが、本発明は、言うまでもなく平面的な物体に対しても像形成を行なうことができる。この場合には造形性する対象物である物体は、プリント基板、プリント配線板、オフセット印刷版とすることができ、粒子の物性を最適化することにより、レジスト、マスク、または網点などとして提供するための直接描画システムとして使用することもできる。
【0059】
さらに、本発明では、粒子の色相、材料などの物性を換えて粒子付着−レーザ照射−現像のプロセスを繰り返すことにより、粒子の色相および物性を複合化させた画像形成を行なうこともでき、例えば色相の異なる粒子を使用する場合には、所望する色相をCMYKの色相を有する粒子のドットから生成させることで、フルカラー画像形成も可能となる。
【0060】
また、本実施の形態の画像形成システムにおいては、以下、CO2レーザ光の照射により粒子を物体に定着するものとして説明するが、トナーを物体に定着させる方法はこれに限られるものではない。例えば、Nd−YAGレーザ光等の赤外レーザの照射により粒子を物体に融着することもできるし、処理効率が特に必要とされない場合には、自然光を集光して粒子に照射することにより融着させるようにしてもよい。
【0061】
また、本発明の画像形成システムにおいては、ビーム状のレーザ光をスキャナにより走査し、搬送部材により搬送するものとして説明したが、本発明の別の実施の形態では、物体を固定し、レーザ光線を変調させる要素として、光学マスクを利用して、フーリエ変換を使用して物体の所定の箇所に所望のパターンを形成させることもできる。また、着色対象部材を移動させ、所望の位置に光が照射されるようにしてもよい。また、レーザ光の走査は、反射ミラーとしてポリゴン・ミラーやプリズムなどを使用しても行なうことができるし、集光レンズとして、f−θレンズを使用することもできる。
【0062】
さらに、本発明の画像形成システムにおいては、流体の噴射やファーブラシによって粒子の余剰分を物体表面から除去するようにしたが、粒子の余剰分を着色対象部材から除去させる方法はこれに限られるものではない。例えば、余剰粒子の除去は、磁石や電磁石による引力や斥力を適宜形成させ、粒子除去に適用することができる。また、粒子付与プロセスについても同様に、引力または斥力を形成させて適用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を具体的な実施例を以て説明するが、本発明の実施例は、例示的なものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0064】
A.画像形成システムおよびプロセス条件
A−1.画像形成対象の物体および粒子
画像形成の対象物体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂板、ガラス、紙フェノール、アルミ、ステンレス、木材、光沢紙、天然ゴム、凹凸面を備えるリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂板、アルミ、ステンレスを使用した。また、粒子として、沖電気工業株式会社製のカラー・トナーを使用した。
【0065】
A−2.画像形成システム
レーザ装置としては、高周波励起導波路型CO2レーザであるシンラッド社製のG48−2−28Sを用いた。レーザ装置を、スキャナ・コントローラにより入力する制御信号に基づいて、所望のパワーのレーザ光を発振させた。制御コンピュータには、予め予備実験で取得しておいた物体のデータ、描画する図形データおよび文字データおよび色データを含む絵柄データ、トナーの種類や量などのデータ、およびレーザ光の条件などに基づいて、物体に対して画像を形成するため予め取得しておいたデータを入力した。制御コンピュータは、入力されたデータに基づいてスキャナ・コントローラを制御し、レーザ出力および走査速度を入力されたデータを使用してスキャナ・コントローラにより制御した。
【0066】
本発明の実施例では、スキャナ・コントローラは、ゼネラルスキャニング社製のDE3000を使用した。DE3000は、制御用コンピュータからのコマンドに基づき、XYZスキャナを走査させるコントローラである。このDE3000を使用して、XYZサーボ・ドライバ(EDD)、幾何学的エラー補正機能を有するCPUボード、インターフェース・ボード(ECI)を有し、X/Y/Z軸それぞれ、16ビットの分解能で画像描画の座標を指定した。また、DE3000を使用して、走査データに合わせてレーザをON/OFF変調するための制御信号を出力させた。
【0067】
また、レーザ光の走査は、スキャナ光学系をスキャナ・コントローラからの制御信号により指令し、レーザ装置から出射されたレーザ光を、物体の指令された位置に照射し、レーザ光を物体上で走査させた。スキャナ光学系としては、ゼネラルスキャニング社製のCO2用レーザスキャナM2XY9.5mmヘッドを用いた。このスキャナ光学系のX、Yミラーの破損閾値は、連続(CW)発振で500W/cm2、パルス発振(100ns)で400MW/cm2、ミラーの反射率は、99.5%以上であった。レーザ光の走査は、スキャナ光学系のミラーおよびレンズの位置を制御することにより、レーザ光の照射位置と焦点位置を制御して、画像形成のできるエネルギーが得られる条件とした。
【0068】
A−3.プロセス条件
上述した画像形成システムを使用して、画像形成を行った。トナーとしては、カラー・プリンタ用のトナーを用い、トナーをファーブラシにより物体の表面に付着させた。その後、物体を、物体の基準位置、載置方向とスキャナの座標基準位置とが所定の関係になるように固定した。物体の固定後、着色したい色、図柄などの情報や、着色条件、レーザ発振条件などの情報を制御コンピュータに入力し、画像形成処理を開始させ、レーザ光により像状露光を施した。
【0069】
画像形成処理では、制御コンピュータにより制御されたスキャナ・コントローラがレーザ装置を制御し、レーザ装置から出射されるレーザ光を制御した。レーザ光の制御と同期して、スキャナ・コントローラにより、スキャナ光学系4のX、Y方向のミラーを動かすモータ、およびZ方向のレンズを駆動するリニア・モータを制御し、物体の表面に照射されるレーザ光の位置およびビーム・サイズを制御した。
【0070】
レーザ光がトナーに吸収されると、光エネルギーは、熱に変換され、レーザを照射した部分の温度が局所的に高くなる。その結果、トナーが溶解し部材表面へ融着し、その部分がそのトナーの色に着色されて、画像として識別される。画像形成の後、現像プロセスを、物体表面に付着しているトナーの余剰分をエアブラシから噴射される流体の圧力により除去して現像を行った。
【0071】
また、色相混合の検討は、所定の色相のトナーの画像形成の後に、異なった色相のトナーを塗布し、上述したプロセスを再度適用することにより行った。
【0072】
B.画像形成およびその評価
上述した画像形成システムおよびプロセスを、種々の条件を変更して画像形成を行なう、形成された画像を目視観測することにより検討した。表1に、画像形成検討した実施例1〜6の条件を示す。また、形成された画像を、図6〜図11に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
B−1.実施例1
実施例1では、各種材料に対する画像形成を検討した。実施例1では、平板状の各種材料を使用して、本発明の画像形成について検討した。その結果を図6に示す。図6(a)は、ガラス、図6(b)は、紙フェノール、図6(c)は、アクリル、図6(d)は、PET、図6(e)は、光沢紙、図6(f)は、天然ゴム、図6(g)は、木材、図6(h)は、アルミニウム、図6(i)は、ステンレスに対する画像形成の結果を示す。画像形成条件は、図6(a)〜(g)は、レーザ・パワー3.75W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、そして図6(h)および(i)は、レーザ・パワー5W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回の条件とした。図6に示されるように、本発明によれば、各種材料に対して良好な画像が形成できた。
【0075】
B−2.実施例2
実施例2として、物体の表面形状適応性を検討した。実施例2では、物体を屈曲させることで、物体の表面を急峻な凹凸の形状とした。図7(a)は、凹凸形状のアクリル、図7(b)は、凹凸形状のPET、図7(c)は、凹凸形状のアルミニウム、図7(d)は、凹凸形状のステンレスに対する画像形成の結果を示す。各条件は、図7(a)および(b)は、レーザ・パワー3.75W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、そして図7(c)および(d)は、レーザ・パワー5W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回である。図7に示すように、本実施の形態の画像形成システムにより、物体の材質を問わず、凹凸形状の物体に対しても所望の位置に良好な画像形成を行なうことができた。
【0076】
B−3.実施例3
実施例3として、画像とレーザ光の照射回数との関係を検討した。図8は、レーザ・パワー3W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、ライン長10mmの条件下でPETに対するライン画像の画像形成の結果を示す。図8(a)は、照射回数1回、図8(b)は、照射回数2回、図8(c)は、照射回数3回、図8(d)は、照射回数4回、図8(e)は、照射回数5回の条件下でライン描画を行なった場合の着色結果を示す。図8に示されるように、レーザ照射の回数を増加させるにつれ線幅および画像濃度が増加しているのがわかる。これは粒子に対して供給される光エネルギーが増加すると、より多数の粒子が溶融して融着したためと考えられる。
【0077】
B−4.実施例4
実施例4として、レーザ・パワーと画像形成性との検討を行った。図9には、その結果を示す。図9では、照射レーザ光を、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件でPETに照射した。図9(a)は、レーザ・パワー3.25W、図9(b)は、レーザ・パワー3W、図9(c)は、レーザ・パワー2.75W、図9(d)は、レーザ・パワー2.50W、図9(e)は、レーザ・パワー2.00Wの条件下でライン描画を行なった場合の着色結果を示す。図9に示すように、レーザ光によるエネルギー供給が増加すると、図8で示した実施例と同様に、線幅および濃度が増加するのが確認されたものの、いずれの場合にも、良好な画像形成が可能であることが確認できた。
【0078】
B−5.実施例5
実施例5として、レーザ光のスキャン速度と画像形成性との関係を検討した。図10にその結果を示す。図10では、レーザ・パワー22.5W、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件下でPETに対するライン・マーキング着色の結果を示す図である。図10(a)はスキャン・スピード400mm/s、図10(b)はスキャン・スピード600mm/s、図10(c)はスキャン・スピード800mm/s、図10(d)はスキャン・スピード1000mm/s、図10(e)はスキャン・スピード1200mm/sの条件下でライン画像の形成を行なった場合の着色結果を示す。図10に示した実施例ではスキャン速度を増加させると、それに対応して供給光エネルギーが減少することに伴い、線幅の減少および濃度の低下が観測されるものの、良好な画像が形成できるのがわかった。
【0079】
図8〜図10に示すように、実施例3〜5についても本発明の画像形成システムおよび方法により良好な画像が形成できることが示された。すなわち、本実施の形態の着色システムにより、同一箇所へのレーザ光の照射回数、レーザ光の光強度密度、レーザ光の走査速度を変えることにより、線の幅および色濃度を変化させることができ、さらに、その線の幅は非常に細かいものであり、非常に繊細な図柄が描画できることが示された。
【0080】
B−6.実施例6
実施例6として、異なる色相の粒子を使用した混色および隣接画像の形成を検討した。実施例6では、レーザ・パワー15W、スキャン・スピード400mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件下でPETに画像形成を行った。図11(a)は、シアン、図11(b)は、マゼンタ、図11(c)は、イエローのトナーを塗布しライン描画を行なった場合である。図11(d)は、シアンとマゼンタ、図11(e)は、マゼンタとイエロー、図11(f)は、イエローとシアンの混合トナーを塗布しライン描画を行なった場合、図11(g)は、シアン既着色箇所にマゼンタのトナーを、図11(h)は、マゼンタ既着色箇所にシアンのトナーを、図11(i)は、マゼンタ既着色箇所にイエローのトナーを、図11(j)は、イエロー既着色箇所にマゼンタのトナーを、図11(k)は、イエロー既着色箇所にシアンのトナーを、図11(l)は、シアン既着色箇所にイエローのトナーを塗布しライン描画を行なった場合の結果を示す。
【0081】
同様に、図11(m)は、シアン既着色箇所近傍にマゼンタ、図11(n)は、マゼンタ既着色箇所近傍にイエロー、図11(o)は、イエロー既着色箇所近傍にシアンのトナーを塗布し交互にそれぞれの色について2本のライン、計4本ライン描画を行なった場合の着色結果を示す。
【0082】
図11に示すように、本実施の形態の画像形成方法により、色むらなどのない、良好な混色が可能とされているのがわかる。また、本発明では、複数色のトナーを混合する方法や、複数色のトナーを重ねて着色する方法や、複数色の着色箇所を近傍に設置する方法により、色相を変化させることができ、さらに、その線の幅は非常に細かいものであり、非常に繊細な図柄が描画できることが示された。
【0083】
B−7.実施例7
実施例7として、アクリル部材に対する本実施の形態の着色システムにおけるレーザの照射エネルギー密度に対する着色濃度を測定した。レーザ照射の積算エネルギーは、(OPHIR社製の300W−HP、日本レーザー社製のJLP−300W−HPを使用して測定した。)また、着色濃度の測定は、着色結果を撮像し、PCにデジタル画像として取り込み、画像ソフト(Adobe社製のPhotoshop(登録商標))を使用して測定した。)図12には、その結果を、比較例としてLPC法を用いた画像形成方法についてのレーザの照射エネルギー密度に対する着色濃度の比較を着色状態と共に示す。図12に示されるように、本発明の画像形成システムにより得られる画像は、最大着色濃度がLPC法の着色システムにおける最大着色濃度の約10倍程度の濃度となることがわかる。
【0084】
さらに、本発明の画像形成システムにおける着色可能な照射エネルギー密度は、LPC法の着色システムにおける着色可能な照射エネルギー密度の約0.1倍程度の密度で可能となることがわかった。これらのことから、本発明の画像形成システムにより、省エネルギーで効率の良い着色が可能であることが示された。
【0085】
また、比較例であるLPC法の着色システムにおける照射エネルギー密度に対する着色状態を見ると、LPC法の着色システムでは、画像濃度の立ち上がりまでのエネルギーを多く必要としていることがわかる。このことは、LPC法では、まず物体表面の改質などが発生し、その痕跡に着色が行なわれているものと考えることができる。すなわち、LPC法では、物体表面の改質と着色とが同時に行なわれていることがわかる。
【0086】
一方、本発明の実施例で得られる着色状態の結果は、概ね0.5J/cm2以上の光エネルギーを供給することにより目視可能な濃度の画像を形成することができ、本発明の画像形成システムが0.5〜1.3J/cm2の範囲でアクリル物体の表面に加工や改質の痕が残らない状態で画像形成でき、このため、着色の除去により着色前の状態へ戻すことが可能であることがわかった。さらに、本発明では、画像の堅牢度の点からは、1.3J/cm2以上の光エネルギーを照射することで堅牢な画像を形成することができることがわかる。
【0087】
B−8.実施例8
実施例8として、アクリル部材に対する本実施の形態の着色システムにおけるドット着色の断面濃度分布を検討した。その結果を図13に、比較例としたLPC法の着色システムにおけるドット着色の断面濃度分布と共に示す。縦軸は、本発明で得られた画像の濃度の相対値を示し、横軸は、ドットの径方向の相対位置である。なお、濃度測定は、実施例7で使用した測定方法を使用して測定した。径方向の切断線は、図13の右手側に併せて示した。
【0088】
図13に示されるように、比較例であるLPC法の着色システムの濃度分布が不均一、低濃度、そして周辺部までなだらかな分布広がっているのに対し、本発明により得られた画像は、濃度分布が均一であり、高濃度であり、さらに周辺部からの濃度コントラストが著しく高いということがわかる。このことは、比較例であるLPC法の着色システムにおける着色が、低コントラスト、低濃度、比較的大きな着色最小単位であったのに対して、本発明の画像形成システムにおける着色は、高コントラスト、高濃度、微細な着色が可能であることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に依れば、様々な材質と複雑な形状の部材に対して、所望の位置に選択的に所望の着色を行なうことができる画像形成システムおよび画像形成方法が提供でき、本発明は、レーザによる直接描画に適した立体カラー・プリンタに適用することができる。そして、本発明は、スポット印刷分野、プリント配線分野、平版印刷分野、ロゴ印刷、キャラクタ商品への印刷などの画像形成分野において広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の画像形成システムのブロック図。
【図2】本発明の静電荷付与工程のプロセスを示した図。
【図3】本発明の粒子供給工程のプロセスを示した図。
【図4】本発明の粒子除去工程(現像プロセス)のプロセスを示した図。
【図5】本発明の画像形成プロセスを要素工程順に示した工程図。
【図6】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図7】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図8】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図9】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図10】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図11】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図12】アクリル部材に対する本発明の画像形成システムにおけるドット着色の濃度と着色状態を、LPC法により得られた画像を比較例として示した図。
【図13】アクリル部材に対する本発明の画像形成システムにおけるドット着色の断面濃度分布を、LCD法により得られた画像を比較例として示した図。
【符号の説明】
【0091】
10…画像形成システム、12…レーザ装置、14…制御コンピュータ、16…スキャナ・コントローラ、18…スキャナ光学系、20…集光レンズ、22…反射ミラー、24…物体、26…融着画像、28…搬送装置、30…ファーブラシ、32…バイアス電源、34…コロナ放電装置、36…ファーブラシ、38…エアブラシ、40…磁石、42…ファーブラシ、
44…エアブラシ、46…遮蔽部材、48…集塵機
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成に関し、より詳細には、物体表面に融着された着色画像を形成する画像形成システムおよび画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、金属、ガラス、樹脂、紙、木材など材質を問わず、着色箇所の凹凸形状に左右されず、所望の色を繊細に所望の箇所に着色して画像形成を行なう種々の方法が知られている。形成される画像としては、例えば、商品のロゴ、製造年月日やロット番号、電化製品や携帯電話のボタンの名称や説明、デザイン、キャラクタ商品などを挙げることができる。
【0003】
従来、商品に対する印字などの画像形成のため、画像形成方法は、レーザ・ダイレクト・マーキング、スクリーン印刷、転写印刷、インクジェット印刷が用いられている。また、シート状の部材に対してはインパクト・ドットプリンタ、電子写真プリンタ、インクジェット・プリンタ、感熱式プリンタが実用されている。この他にも、本発明者らにより提案された着色・画像形成方法として、レーザ・プラスチック着色法(以下、LPC法として参照する。)がある。
【0004】
以下、従来の画像形成方法について説明すると、概ね以下のように纏めることができる。
【0005】
<レーザ・ダイレクト・マーキング>
レーザ・ダイレクト・マーキングは、レーザ光を画像形成対象の表面へ照射し、表面の融解、発泡、改質などにより視覚的差異を生成する方法である。画像形成対象は、レーザ光に対して吸収がある材質であれば特に限定されず、形状も自由であり、画像形成対象に非接触にて処理を行なうことができるという利点がある。
【0006】
<スクリーン印刷>
スクリーン印刷は、孔版印刷の一種で版に絹、テトロン、ナイロンなどの化学繊維のスクリーンを利用し、版自体に穴をあけ、この穴からインクを擦りつける方式である。スクリーン印刷は、これまで紙、布、プラスチック、金属、ガラス、木、プリント回路基板など、あらゆる素材に印刷可能で、平面物だけでなく、ある程度の立体物や曲面でも印刷可能であることが知られている。
【0007】
<転写印刷>
転写印刷は、紙、フィルムなどに一旦印刷した転写可能画像を、水、熱、圧力などを利用して対象部材に転着させる方法である。転写印刷は、フィルムが密着できる程度の凹凸形状であれば印刷可能であり、また印刷精度が高く、印刷ミスが少ないというメリットを有している。
【0008】
<インパクト印刷>
この印刷方式は、インパクト・ドットプリンタとしてシステム化されており、インパクト・ドットプリンタは、複数の点で表現される文字や画像の形状を金属製のワイヤで打撃する。打撃されたインクリボンは、像状に物体に定着され、画像が形成できる。現在、インパクト・ドットプリンタは、多くカーボン複写をとるための業務用プリンタとして利用されている。
【0009】
<インクジェット印刷>
インクジェット印刷は、インク粒子を対象部材に噴射して画像形成対象に画像を形成する方法である。インクジェット印刷は、インクの種類や噴射方式により、缶・プラスチック・ボトル、ガラス板、コーティングされた箱、パイプ、電子部品、自動車部品など、幅広い着色対象部材の材質や形状に対応可能であるというメリットを有している。
【0010】
この印刷方式は、インクジェット・プリンタとしてシステム化され、インク滴を用紙に噴射させることにより文字、映像を形成する。インクジェット印刷としては、インク滴の噴出形態や噴出エネルギーの発生方法によって、インク滴を連続的に噴出し、必要なインク滴のみを用紙の所定位置に導く連続方式と、必要なときだけインク滴を噴出されるオンデマンド方式とがある。オンデマンド方式の分類の中でも電気的機械変換方式と電気熱変換方式が広く採用されている。
【0011】
<電子写真印刷>
電子写真印刷は、電子写真複写機や、電子写真プリンタとしてシステム化されており、光導電性と静電気の性質を利用し、着色剤は、トナーとして参照される粒子が用いられる。画像形成方式を概説すると、電子写真プリンタは、帯電器により感光ドラムに静電気を帯電させ、印刷する文字、映像に従って感光ドラムにレーザ光線を照射すると、その部分の静電気が消失し、所謂静電潜像が形成される。この時点で、帯電したトナーが感光ドラムに接触すると、帯電した部分のみにトナーが付着して像状露光に対応した画像を形成する方式である。その後、感光ドラム上に付着したトナーを普通紙やOHPシートに対して転写し、熱と圧力によってトナーを融着させ、普通紙やOHPシート上にトナーを定着させる。感光ドラム表面に光を照射する方式に応じて、レーザ・ビーム方式、LED方式、液晶シャッタ方式などが提案されている。
【0012】
<感熱転写印刷>
感熱転写印刷は、熱を利用して文字や画像を印刷する方式である。感熱転写方式を利用したプリンタとしては、過熱すると黒くなる感熱紙を用いた感熱式プリンタと、インクリボンのインクと溶かして用紙に転写する転写方式、加熱により染料などを昇華または気化させて、受像材料に転写する感熱昇華転写方式が知られており、熱転写方式のプリンタとしては、インクリボンの材料によって顔料系インクを溶融させる熱溶融型プリンタおよび染料系インクを溶融昇華させる感熱昇華型プリンタが提案されている。
【0013】
<LPC法>
本発明者らが提案した、LPC法は、アクリルなどの樹脂物体に染料を拡散させて像状に着色を行なう方式である。LPC法は、樹脂用染料を樹脂プレートまたは樹脂フィルムなどの着色対象の表面へ密着させ、レーザ光を像状に照射することにより、レーザ光の照射された部位を加熱し、照射箇所にのみ染料を移動・浸透させることにより着色対象着を着色する。LPC法による染料の付着方法としては、シート方法および噴射方法があり、前者は平面、後者は立体物への着色に多くの場合用いられている。
【0014】
なお、上述した画像形成方式の詳細については、下記の非特許文献に詳細が解説されている。また、特表2004−525992号公報(特許文献1)では、プラスチック表面に着色剤を含むレーザ感受層を設け、レーザ光線の像状照射によりその色相を変化させることで画像形成を行なう方法が開示されている。特表2004−525992号公報に開示された方法でも物体表面上に直接画像を描画することができるものの、そもそも光照射を行なうことで退色する着色剤を使用していることから、形成された画像の堅牢性が低く、また3次元形状の物体に対する画像形成性を問題にするものではない。
【非特許文献1】竹田他編集、株式会社学会出版センター発行、「記憶・記録・感光材料」、1985年10月20日
【非特許文献2】梶光雄著、印刷学会出版部発行、「印刷・電気系技術者のための印刷画像工学」、昭和63年6月15日
【非特許文献3】電子写真学会編集、株式会社コロナ社発行、「電子写真技術の基礎と応用」、昭和63年6月15日
【特許文献1】特表2004−525992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述したように、種々の画像形成方法が提案されているものの、これまで知られていた画像形成方法を特に3次元形状を有する印刷対象物に適用する場合には、以下の問題点があった。レーザ・ダイレクト・マーキングでは、画像形成する物体に直接形成される視覚的差異を利用しているため、自由な色表現が困難であるという問題点がある。また、スクリーン印刷では、印刷のために型を製造する必要があり、スクリーンを着色対象表面に沿わせる必要があるため、急激な凹凸形状には印刷が困難であるという不都合がある。
【0016】
転写印刷では、フィルムが着色対象表面に密着する必要があるため、急激な凹凸形状には印刷が困難であり、多様な3次元物体に対する画像形成性に劣るという不都合がある。また、インクジェット印刷は、インクの噴出安定性の問題から、印刷欠陥が生じやすいという不都合がある。この他、インクジェット印刷は、インク粒の飛来時間がノズルと対象表面の間隔に依存するため、急激な凹凸形状への高速印刷が困難であるという特有の問題点を有している。
【0017】
また、各種プリンタ・システムでは、画像形成の利便性は向上されているものの、すべてのプリンタの構成は、シート形状を前提とした構成のため、凹凸形状には印刷が困難であり、また画像形成対象となる材質に制限が大きいという不都合がある。一方、LPC法では、着色対象部材が樹脂材料に限定されること、着色濃度が低く、充分な着色濃度を得るためにはレーザを複数回同一画素部分に照射する必要があること、凹凸面に対して安定的な着色が困難であることなどに加え、着色コントラストが低いために高い解像度を得ることが困難であるという問題点があった。
【0018】
上述したように、これまで種々の画像形成技術が提案されているにも拘わらず、3次元立体など形状の多様性に富む画像形成対象に対して充分な耐久性およびコントラストの画像を形成することが可能な画像形成システムおよび方法が必要とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0019】
すなわち、本発明の目的は、様々な材質と複雑な形状の物体に対して、所望の位置に選択的に所望の着色を行なうことができ、所謂、立体カラー・プリンタを実現することができる着色方法および着色システムを提供することにある。
【0020】
本発明者は鋭意検討を加えた結果、粒子を、物体表面に担持させ、担持された粒子をレーザにより直接溶融させて、物体表面に融着させることにより、充分なコントラストの画像を複雑な形状を有する物体に対して良好に形成できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0021】
すなわち、本発明によれば、
物体の表面に画像を形成するための画像形成システムであって、
前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する粒子供給部材と、
前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる光照射システムと、
前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する粒子除去部材と
を備える画像形成システムが提供できる。
【0022】
本発明では、前記物体は、3次元物体であり、前記物体の前記表面は、非平面形状を備えることができる。前記光照射システムは、レーザ装置と前記レーザ装置からのレーザ光を像状に変調する光学系とを含むことが好ましい。前記光学系は、光反射要素または光学マスクを備えることができる。さらに、前記物体の表面に前記粒子の担持を促進するための静電荷発生部材または磁場形成部材を含むことができる。
【0023】
また、本発明によれば、画像形成システムを用いて物体の表面に画像を形成するための画像形成方法であって、
物体を前記画像システムに供給する工程と、
粒子供給部材から前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、
光照射システムから像状露光を行って、前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる工程と、
粒子除去部材により前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する工程と
を含む画像形成方法が提供できる。
【0024】
本発明の前記物体を供給する工程は、前記物体の前記表面が非平面形状である3次元物体を提供する工程を含むことができる。前記融着させる工程は、光学系を使用してレーザ装置からのレーザ光を像状に変調する工程を含むことができる。前記融着させる工程は、0.5J/cm2以上の光エネルギーを前記粒子に対して供給し、溶融させる工程を含むことができる。本発明では、前記供給する工程の前に静電荷発生部材または磁場形成部材により前記物体の表面に前記粒子の担持を促進する工程を含むことができる。本発明では、前記光エネルギーを変化させて、画像の線幅および濃度を変化させる工程を含むことができる。また、前記供給する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に前記粒子を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を供給する工程を含むことができる。本発明では、また前記除去する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に流体を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を除去する工程を含むことができる。
【0025】
本発明の画像形成方法は、さらに、形成された画像状にさらに前記物体上に異なる色相の粒子を付着させる工程と、
付着した前記異なる色相の粒子を前記レーザ光により溶融させ、すでに形成された画像の色相と色相混合する工程と
を含むことができる本発明では、さらに、本発明では、前記粒子は、異なる色相の着色粒子を含み、前記融着させる工程は、前記レーザ照射により前記異なる色相の着色粒子を前記物体の表面上で混色する工程を含むことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多様な形状を有し、種々の材料で形成された3次元物体に対して高いコントラストで、堅牢性の高い良好な画像形成を可能とする、画像形成システムおよび画像形成方法が提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図面に示した実施の形態を以て説明するが、本発明は、後述する実施の形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本発明の画像形成システムの概略図である。図1に示す画像形成システム10は、概ね、レーザ装置12と制御コンピュータ14とを備えている。制御コンピュータ14は、これまで知られたいかなるコンピュータでも使用することができ、例えばPENTIUM(登録商標)シリーズなどの中央処理装置(CPU)を備え、ウィンドウズ(登録商標)、MACOS、ユニックス(登録商標)、リナックス(登録商標)といったオペレーティング・システムを動作させることができるコンピュータを使用することができる。
【0029】
制御コンピュータ14は、図示しないハードディスク、EEPROMなどのメモリを備えており、形成するべき画像のデータを、ビットマップ、JPEG、JPEG2000、TIFF、ウィンドウズ(登録商標)メタファイル、GIFなどの適切なフォーマットとして格納している。制御コンピュータ14は、ユーザによる画像処理および形成するべき画像の作成の後、ユーザ指令に応答してスキャナ・コントローラ16へと、形成する画像に応答した制御信号を送信する。スキャナ・コントローラ16は、制御コンピュータ14からのデータに基づいてスキャナ光学系18およびレーザ装置12の発振を制御して、画像形成の行なわれる対象物24に向けて像状露光を行っている。
【0030】
本発明で使用することができるレーザ装置12は、トナーといった粒子を溶融させることが可能なエネルギーを所定の時間内に粒子に供給して、画像形成を行なう対象物に粒子を付着させる。本発明において使用されるレーザ装置には特に制限はなく、気体レーザ、半導体レーザ、特に本発明に必要な光エネルギー密度を供給することができる高出力半導体レーザ、固体レーザなどを使用することができる。これらのレーザの中でもエネルギー密度の点から言えば、気体レーザとしては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザなどが好ましく用いられ、固体レーザとしては、Nd−YAGレーザ、ルビー・レーザ、サファイヤ・レーザ、アレキサンドライト・レーザなどが好ましく用いられる。
【0031】
スキャナ光学系18は、図示する実施の形態では、さらに、レーザ光線を集光するための集光レンズ20と光反射要素である反射ミラー22とを備えている。集光レンズ20は、形成する画像に対応して所望するドット・サイズを与えるようにレーザ光を集光する。また、反射ミラー22は、ガルバノメータを使用してレーザ光線を偏向させており、画像の所定の位置にレーザ光線を照射させている。反射ミラー22および集光レンズ20は、それぞれスキャナ・コントローラ16により制御されるモータなどを含むアクチュエータ機構にマウントされており、スキャナ・コントローラ16からの指令に応答して位置および角度が制御されている。なお、本発明は、スキャナ光学系18に代えて、フーリエ変換によりコヒーレント光から所望のパターンを形成する光学マスクを使用して物体に対して像状露光を行なう光学系を使用することができる。
【0032】
レーザ装置12は、光シャッタまたはパルス・モジュレータによりスキャナ・コントローラ16の指令に対応したレーザ光線を出力し、像状露光を可能としている。図1では、反射ミラー22により反射されたレーザ光線は、画像形成する物体24に向かって照射される。物体24上には、トナーといった粒子が、化学的または静電的または磁力などの物理的相互作用により付着している。物体24上の粒子は、レーザ光線により像状に溶融され、物体24表面に融着する。融着は、本発明では、像状に発生する。このため、溶融しなかった粒子を物体24の表面から除去すると、図1に示すような融着画像26が得られる。
【0033】
本発明で使用することができる粒子は、特に制限されるものではない。しかしながら、本発明で使用する粒子は、量産性およびコストの面から、電子写真法で使用されるトナーを使用することができる。上述したトナーは、通常では、熱可塑性の樹脂組成物とされ、熱可塑性樹脂と、着色剤と、帯電制御剤と、シリカ、アルミナなどの無機微粒子または有機微粒子が使用される流動制御剤とを含んで形成されている。粒子の溶融開始温度は、約70℃〜150℃の範囲とすることができ、本発明において複数の色相、CMYKを溶融混色することを考えると、フルカラー画像形成用のトナーを使用することが好ましい。このようなトナーとしてはこれまで知られたいかなる材料、製造方法、材料組成のものでも使用できる。また、粒子の粒子サイズは、体積平均粒径で、2μm〜20μmの範囲とすることが好ましく、混色性を高め、より微細な画像を形成する点から、2μm〜6μmの範囲とすることができる。
【0034】
また、本発明に使用する粒子に含まれる熱可塑性樹脂は、アクリル・モノマーを重合して形成されるアクリル重合体またはアクリル共重合体を使用することができる。本発明で使用することができるアクリル系モノマーとしては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、p−ターシャリーブチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートの他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等の他、ビニル誘導体、具体的には例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n−ブチルエーテル、イソブチルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;β−クロルエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、p−メチルフェニルエーテル、p−クロルフェニルエーテル、p−ブロムフェニルエーテル、p−ニトロフェニルビニルエーテル、p−メトキシフェニルビニルエーテル、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾール、ブタジエン等のジエン化合物を挙げることができる。
【0035】
また、粒子の物体表面への担持性を調節するために、粒子自体に、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、リン酸含有単量体、具体的には、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、スルホン酸基含有単量体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、アクロイルモルホリン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、2−ビニルイミダゾール、N−メチル−2−ビニルイミダゾール、N−ビニルイミダゾールなどを添加して、好ましい付着性を付与することもできる。また、これらの帯電制御剤を物体表面にスプレーなどの方法により付着させておき、粒子とは別に担持性を制御するために使用することができる。
【0036】
本発明で使用する粒子は、これまで知られたいかなる着色成分を使用して着色することができ、着色成分としては、例えば、カーボンブラックの他有機着色料、具体的には例えばC.I.ダイレクトレッド1、C.I.ベーシックレッド1、C.I.モーダントレッド30、C.I.ダイレクトブルー1、C.I.ダイレクトブルー2、C.I.アシッドブルー15、C.I.ベーシックブルー3、C.I.ベーシックブルー5、C.I.モーダントブルー7、C.I.ダイレクトグリーン6、C.I.ベーシックグリーン4、C.I.ベーシックグリーン6といった染料;カドミウムイエロー、ミネラルファーストイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、モリブデンオレンジGTR、ベンジジンオレンジG、カドミウムレッド4R、ウオッチングレッドカルシウム塩、ブリリアントカーミン3B、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、キナクリドン、ローダミンレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、ピグメントグリーンB、マカライトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらの着色成分は、適宜混合して用いることができ、さらに形成すべき画像の用途によっては、着色剤を特に使用しなくとも良い。
【0037】
この他、粒子の付着性を静電荷により制御する場合には、帯電性を制御するため、荷電制御剤を添加することができる。荷電制御剤としては、これまで知られた正荷電制御剤もしくは負荷電制御剤のいずれでも利用できる。
【0038】
本発明で使用する粒子の体積平均粒径は、沈降法、慣性法、拡散法、モビリティ・アナライザ、光散乱法、細孔電気抵抗法などを使用して測定することができ、具体的には、例えば、Coulter社製のMULTISIZER(商標)などのこれまで知られたいかなる装置を使用して測定することができる。
【0039】
本発明で画像を形成する物体24は、種々の形状、材質が考えられ例えば、物体24の材質としては、プラスチック・フィルム、強磁性または軟磁性の金属プレート、ガラス、紙などが想定される。本発明においては、上述した材質で、かつ複雑な表面形状を有する物体24の表面に粒子を付着させる必要がある。本発明においては、刷毛またはファーブラシなどに粒子を担持させておき、物体表面に擦りつけるだけで物体表面に粒子を担持させることもできる。しかしながら、種々の物体および環境にわたり安定して粒子を付着させるためには、種々の方法により粒子の物体表面への付着性を促進することが好ましい場合も想定できる。本発明において、粒子付着を促進する方法としては、具体的には、例えば磁性を使用する方法および静電相互作用を使用する方法を挙げることができる。
【0040】
図2には、静電吸着を使用して粒子を担持させるプロセスを示した図である。図2を使用して物体24に対して粒子を担持させるための処理を物体24に対して施すプロセスについて説明する。
【0041】
図2(a)に示すプロセスは、静電荷発生部材としてファーブラシを使用して物体の表面に静電荷を与えるプロセスである。物体24は、その表面が複雑な形状を有しており、搬送ステージ、ベルトコンベアなどの搬送装置28上に載置されている。搬送装置28は、画像形成処理が行われている場合には、搬送を停止し、画像形成が終了した段階で、矢線Aで示される方向へと物体を移動させ、次処理プロセスに物体24を搬送する。また、搬送装置28は、形成する部分画像が形成された後、物体24の表面の次領域がレーザ照射されるように物体を順次送り、全画像の形成処理後、次プロセスに搬送するように制御することもできる。
【0042】
物体24の上部には、ファーブラシ30が回動自在に保持されており、図2に示す実施の形態ではファーブラシ30は、矢線Bで示す方向へと、物体の移動する方向に対してカウンタ方向に回動する。物体24が、プラスチック・フィルム、プラスチック・フィルム、紙など誘電体であり、摩擦帯電が可能な場合には、ファーブラシ30には、帯電を制御することができる物質、所謂、帯電制御済などをコーティングしておくことができる。ファーブラシ30の柔毛は、物体24の表面に当接し、物体24の表面に所望する摩擦帯電を付与している。なお、ファーブラシ30の回動方向は、本発明においては特に限定されるものではなく、矢線Bの反対方向に回動させることもできる。
【0043】
また、物体24が金属プレート、金属フィルム、メッキなどの導電処理を施されたプラスチック材料である場合には、摩擦帯電ではなくファーブラシ30と物体24との間にバイアス電位を印加しておき、物体24の表面に静電荷を付与することもできる。この場合、ファーブラシ30は、導電性繊維または導電処理を施した繊維から製造することができる。
【0044】
また、図2(b)に示した実施の形態は、静電荷発生部材としてコロナ放電を使用して物体24の表面に静電荷を与えるプロセスである。図2(b)では、コロナ放電装置34は、バイアス電源32により物体24に対してバイアスされ、物体24の上側の適切な位置に保持されている。コロナ放電装置34により発生した荷電粒子は、バイアス電位に従い物体24へと移動して物体24の表面を帯電させる。
【0045】
なお、本発明では、ファーブラシなどを使用するだけで充分なコントラストの画像を形成することができる場合には、特に静電荷発生部材を使用することは必要な処理ではないが、環境安定性や付着安定性などの点からは、粒子の担持を促進するプロセスまたはそのための部材を使用することが、工業上の観点から好ましい。
【0046】
図3は、本発明において粒子を物体24の表面上に担持させる、粒子供給工程のプロセスを示した図である。図3(a)および(b)は、静電プロセスを使用して粒子を担持させる場合の実施の形態であり、図3(c)に示すプロセスは、磁性を使用して、粒子の担持を行なうプロセスを示す。
【0047】
図3(a)では、帯電した物体24の上部に、粒子を担持したファーブラシ36が粒子供給部材として配置されている。ファーブラシ36には、表面の電荷と逆の極性に帯電した粒子が保持されている。ファーブラシ36は、搬送装置28の搬送方向に対して矢線Bで示す方向へとカウンタ方向に回動し、ファーブラシ36は、担持した粒子を物体24の表面に粒子を移動させ。この場合、ファーブラシ36は、バイアスされていても良いし、またバイアスされていなくとも良い。
【0048】
図3(b)に示した実施の形態では、帯電した物体24の上部に、粒子供給部材として使用されるエアブラシ38が保持されている。エアブラシ38は、粒子を物体表面に向かって噴射し、物体24の表面に粒子を担持させる。なお、エアブラシ38は、粒子を収容する図示しない容器に接続されていて、ノズルから空気などの圧力により粒子を噴射させている。本発明では、エアブラシ38から粒子を噴射する前に、粒子に物体24の表面電荷と反対の電荷を与えておき、その後エアブラシ38から噴出させることもできる。また、他の実施の形態では、エアブラシ38のノズルに摩擦帯電を可能とする部材またはコーティングを施しておき、粒子がノズルを通過する際の摩擦により粒子に所望する帯電を付与することもできる。
【0049】
また、図3(c)に示す実施の形態では、粒子として磁性粒子を使用する場合に好適に用いられる実施の形態である。図3(c)では、磁性トナーなどの磁性粒子を、搬送装置28を介した反対側に設置した永久磁石または電磁石といった磁石40を磁場形成部材として使用して、磁気的に物体24の表面に保持させる。図3(c)に示した実施の形態では、搬送装置28は、例えば鉄などの強磁性体を使用して構成されており、また物体24は、鋼板などの磁性体から形成されている。粒子は、エアブラシまたはファーブラシから供給され、磁力により物体24の表面に担持される。また、本発明の別の実施の形態では、搬送装置28を磁性材料から形成しておくことができる。搬送装置28を磁性材料から構成すれば、搬送装置28と磁石とを一体とすることができ、物体24が移動した場合にでも、物体24が搬送装置28上に載置されている限り、物体24の表面に粒子を保持させておくことができる。
【0050】
図3(c)に示した実施の形態は、物体24の材質によりある程度制限を受けるものの、図2で示した物体24の帯電プロセスを省略することができるので、プロセスの簡略化および低コスト化が可能となる。また、上述したように、ファーブラシなどだけで充分に物体表面に粒子を付着させることができ、また担持させることができる場合には、図3(c)で説明する磁石または電磁石による粒子吸着処理は必要とされない。
【0051】
図3で説明した処理後、物体24の表面には、粒子が静電引力または磁力により付着する。この状態で、レーザ光を像状に照射して、照射部分の粒子を溶融させ、物体表面に融着させることで像形成が可能となる。本発明では、レーザ照射による像形成プロセスの後、非加熱領域、すなわち非画像部の粒子を除去して形成された画像を現像する。
【0052】
図4は、本発明の画像形成方法における現像プロセスの実施の形態を示した図である。図4の状態では、搬送装置28上には、物体24が載置され、物体24上には、すでに像状に画像が形成されている。この場合では、非画像部にも粒子が付着しているので、画像は、顕像化されていない。本発明の現像プロセスは、非画像部の粒子を除去することにより行われる。本発明では、粒子除去方式として、接触式除去方式と非接触式除去方式とが可能である。図4(a)が接触式現像プロセスであり、図4(b)が非接触式現像プロセスである。図4(a)の接触式現像プロセスを説明すると、搬送部材28上に載置された物体24の上部に、物体24に当接する配置で、粒子除去部材として現像ファーブラシ42が配設されている。
【0053】
現像ファーブラシ42は、物体の搬送方向とはカウンタ方向に回動し、回動につれて物体24の表面に付着した粒子を除去する。一方、画像部の粒子は、レーザ照射により物体24表面に融着されているので、現像ファーブラシ42により摺擦されても物体表面からは除去されず、この結果、形成された画像が現像される。本発明では、現像ファーブラシ42は、現像効率を調節するためにバイアス電位が印加されていても良い。また、最適な現像を行なうために、現像ファーブラシ42の材質、物性また摺擦圧などを適宜調整して最適な現像条件を得る構成とすることができる。
【0054】
図4(b)は、非接触式現像プロセスの実施の形態を示した図である。本発明における非接触式の現像プロセスでは、図4(b)に示すように、物体24の上側に粒子除去部材として空気または物体の特性に応じて水、溶媒などの流体を噴霧する現像エアブラシ44を配置する。現像エアブラシ44は、物体24の表面に向けて加圧された流体を噴射している。非画像部の粒子は、噴射された流体により除去され、像状に物体24の表面に融着した粒子のみが物体表面に残留し、現像が完了する。本発明の非接触式現像プロセスでは、粒子の飛散を防止し、なおかつ未使用粒子を回収することができるように、現像領域を遮蔽ボックスなどの遮蔽部材により遮蔽し、遮蔽部材内部から図示しない集塵機などを使用して余剰の粒子を回収するプロセスを追加することもできる。
【0055】
図5は、本発明の画像形成システムの画像形成方法の実施の形態を示した工程図である。図5に示すように、本発明の画像形成方法では、物体24は、搬送装置28上に載置されており、搬送装置28は、連続的、または工程上のタイミングに応答して、間歇的に移動している。図5には、粒子付着プロセスの後、レーザ照射プロセスおよび現像プロセスへと搬送された状態での物体24を、仮想線で示す。
【0056】
物体24は、粒子供給部材であるファーブラシまたはエアブラシを使用して粒子が供給され、粒子付着プロセスが施される。その後、物体24は、レーザ照射システムによりレーザ照射プロセスが施され、レーザ照射プロセスにおける像状照射により、物体24上には、粒子が像状に融着する。
【0057】
その後、物体24は、遮蔽部材46の内部に搬送されて粒子除去部材を使用して摺擦またはエアにより未定着の粒子を除去する現像プロセスが施される。現像プロセスは、図4で説明したように、現像ファーブラシによる接触式現像または現像エアブラシを使用する非接触現像により行なうことができる。また、図5に示した実施の形態では、遮蔽部材46には集塵機48が接続され、非画像部から除去された廃粒子を回収する。現像プロセスを経た物体24の表面には、制御コンピュータ14によりユーザが指令した画像が形成されていて、必要に応じて最終的な洗浄・リンスなどの処理を経た後、表面に画像が形成された製品とされる。
【0058】
本発明は、複雑な3次元形状を有する物体の表面に像形成する画像形成プロセスに好適に使用することができるが、本発明は、言うまでもなく平面的な物体に対しても像形成を行なうことができる。この場合には造形性する対象物である物体は、プリント基板、プリント配線板、オフセット印刷版とすることができ、粒子の物性を最適化することにより、レジスト、マスク、または網点などとして提供するための直接描画システムとして使用することもできる。
【0059】
さらに、本発明では、粒子の色相、材料などの物性を換えて粒子付着−レーザ照射−現像のプロセスを繰り返すことにより、粒子の色相および物性を複合化させた画像形成を行なうこともでき、例えば色相の異なる粒子を使用する場合には、所望する色相をCMYKの色相を有する粒子のドットから生成させることで、フルカラー画像形成も可能となる。
【0060】
また、本実施の形態の画像形成システムにおいては、以下、CO2レーザ光の照射により粒子を物体に定着するものとして説明するが、トナーを物体に定着させる方法はこれに限られるものではない。例えば、Nd−YAGレーザ光等の赤外レーザの照射により粒子を物体に融着することもできるし、処理効率が特に必要とされない場合には、自然光を集光して粒子に照射することにより融着させるようにしてもよい。
【0061】
また、本発明の画像形成システムにおいては、ビーム状のレーザ光をスキャナにより走査し、搬送部材により搬送するものとして説明したが、本発明の別の実施の形態では、物体を固定し、レーザ光線を変調させる要素として、光学マスクを利用して、フーリエ変換を使用して物体の所定の箇所に所望のパターンを形成させることもできる。また、着色対象部材を移動させ、所望の位置に光が照射されるようにしてもよい。また、レーザ光の走査は、反射ミラーとしてポリゴン・ミラーやプリズムなどを使用しても行なうことができるし、集光レンズとして、f−θレンズを使用することもできる。
【0062】
さらに、本発明の画像形成システムにおいては、流体の噴射やファーブラシによって粒子の余剰分を物体表面から除去するようにしたが、粒子の余剰分を着色対象部材から除去させる方法はこれに限られるものではない。例えば、余剰粒子の除去は、磁石や電磁石による引力や斥力を適宜形成させ、粒子除去に適用することができる。また、粒子付与プロセスについても同様に、引力または斥力を形成させて適用することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を具体的な実施例を以て説明するが、本発明の実施例は、例示的なものであり、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0064】
A.画像形成システムおよびプロセス条件
A−1.画像形成対象の物体および粒子
画像形成の対象物体として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂板、ガラス、紙フェノール、アルミ、ステンレス、木材、光沢紙、天然ゴム、凹凸面を備えるリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂板、アルミ、ステンレスを使用した。また、粒子として、沖電気工業株式会社製のカラー・トナーを使用した。
【0065】
A−2.画像形成システム
レーザ装置としては、高周波励起導波路型CO2レーザであるシンラッド社製のG48−2−28Sを用いた。レーザ装置を、スキャナ・コントローラにより入力する制御信号に基づいて、所望のパワーのレーザ光を発振させた。制御コンピュータには、予め予備実験で取得しておいた物体のデータ、描画する図形データおよび文字データおよび色データを含む絵柄データ、トナーの種類や量などのデータ、およびレーザ光の条件などに基づいて、物体に対して画像を形成するため予め取得しておいたデータを入力した。制御コンピュータは、入力されたデータに基づいてスキャナ・コントローラを制御し、レーザ出力および走査速度を入力されたデータを使用してスキャナ・コントローラにより制御した。
【0066】
本発明の実施例では、スキャナ・コントローラは、ゼネラルスキャニング社製のDE3000を使用した。DE3000は、制御用コンピュータからのコマンドに基づき、XYZスキャナを走査させるコントローラである。このDE3000を使用して、XYZサーボ・ドライバ(EDD)、幾何学的エラー補正機能を有するCPUボード、インターフェース・ボード(ECI)を有し、X/Y/Z軸それぞれ、16ビットの分解能で画像描画の座標を指定した。また、DE3000を使用して、走査データに合わせてレーザをON/OFF変調するための制御信号を出力させた。
【0067】
また、レーザ光の走査は、スキャナ光学系をスキャナ・コントローラからの制御信号により指令し、レーザ装置から出射されたレーザ光を、物体の指令された位置に照射し、レーザ光を物体上で走査させた。スキャナ光学系としては、ゼネラルスキャニング社製のCO2用レーザスキャナM2XY9.5mmヘッドを用いた。このスキャナ光学系のX、Yミラーの破損閾値は、連続(CW)発振で500W/cm2、パルス発振(100ns)で400MW/cm2、ミラーの反射率は、99.5%以上であった。レーザ光の走査は、スキャナ光学系のミラーおよびレンズの位置を制御することにより、レーザ光の照射位置と焦点位置を制御して、画像形成のできるエネルギーが得られる条件とした。
【0068】
A−3.プロセス条件
上述した画像形成システムを使用して、画像形成を行った。トナーとしては、カラー・プリンタ用のトナーを用い、トナーをファーブラシにより物体の表面に付着させた。その後、物体を、物体の基準位置、載置方向とスキャナの座標基準位置とが所定の関係になるように固定した。物体の固定後、着色したい色、図柄などの情報や、着色条件、レーザ発振条件などの情報を制御コンピュータに入力し、画像形成処理を開始させ、レーザ光により像状露光を施した。
【0069】
画像形成処理では、制御コンピュータにより制御されたスキャナ・コントローラがレーザ装置を制御し、レーザ装置から出射されるレーザ光を制御した。レーザ光の制御と同期して、スキャナ・コントローラにより、スキャナ光学系4のX、Y方向のミラーを動かすモータ、およびZ方向のレンズを駆動するリニア・モータを制御し、物体の表面に照射されるレーザ光の位置およびビーム・サイズを制御した。
【0070】
レーザ光がトナーに吸収されると、光エネルギーは、熱に変換され、レーザを照射した部分の温度が局所的に高くなる。その結果、トナーが溶解し部材表面へ融着し、その部分がそのトナーの色に着色されて、画像として識別される。画像形成の後、現像プロセスを、物体表面に付着しているトナーの余剰分をエアブラシから噴射される流体の圧力により除去して現像を行った。
【0071】
また、色相混合の検討は、所定の色相のトナーの画像形成の後に、異なった色相のトナーを塗布し、上述したプロセスを再度適用することにより行った。
【0072】
B.画像形成およびその評価
上述した画像形成システムおよびプロセスを、種々の条件を変更して画像形成を行なう、形成された画像を目視観測することにより検討した。表1に、画像形成検討した実施例1〜6の条件を示す。また、形成された画像を、図6〜図11に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
B−1.実施例1
実施例1では、各種材料に対する画像形成を検討した。実施例1では、平板状の各種材料を使用して、本発明の画像形成について検討した。その結果を図6に示す。図6(a)は、ガラス、図6(b)は、紙フェノール、図6(c)は、アクリル、図6(d)は、PET、図6(e)は、光沢紙、図6(f)は、天然ゴム、図6(g)は、木材、図6(h)は、アルミニウム、図6(i)は、ステンレスに対する画像形成の結果を示す。画像形成条件は、図6(a)〜(g)は、レーザ・パワー3.75W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、そして図6(h)および(i)は、レーザ・パワー5W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回の条件とした。図6に示されるように、本発明によれば、各種材料に対して良好な画像が形成できた。
【0075】
B−2.実施例2
実施例2として、物体の表面形状適応性を検討した。実施例2では、物体を屈曲させることで、物体の表面を急峻な凹凸の形状とした。図7(a)は、凹凸形状のアクリル、図7(b)は、凹凸形状のPET、図7(c)は、凹凸形状のアルミニウム、図7(d)は、凹凸形状のステンレスに対する画像形成の結果を示す。各条件は、図7(a)および(b)は、レーザ・パワー3.75W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、そして図7(c)および(d)は、レーザ・パワー5W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回である。図7に示すように、本実施の形態の画像形成システムにより、物体の材質を問わず、凹凸形状の物体に対しても所望の位置に良好な画像形成を行なうことができた。
【0076】
B−3.実施例3
実施例3として、画像とレーザ光の照射回数との関係を検討した。図8は、レーザ・パワー3W、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、ライン長10mmの条件下でPETに対するライン画像の画像形成の結果を示す。図8(a)は、照射回数1回、図8(b)は、照射回数2回、図8(c)は、照射回数3回、図8(d)は、照射回数4回、図8(e)は、照射回数5回の条件下でライン描画を行なった場合の着色結果を示す。図8に示されるように、レーザ照射の回数を増加させるにつれ線幅および画像濃度が増加しているのがわかる。これは粒子に対して供給される光エネルギーが増加すると、より多数の粒子が溶融して融着したためと考えられる。
【0077】
B−4.実施例4
実施例4として、レーザ・パワーと画像形成性との検討を行った。図9には、その結果を示す。図9では、照射レーザ光を、スキャン・スピード100mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件でPETに照射した。図9(a)は、レーザ・パワー3.25W、図9(b)は、レーザ・パワー3W、図9(c)は、レーザ・パワー2.75W、図9(d)は、レーザ・パワー2.50W、図9(e)は、レーザ・パワー2.00Wの条件下でライン描画を行なった場合の着色結果を示す。図9に示すように、レーザ光によるエネルギー供給が増加すると、図8で示した実施例と同様に、線幅および濃度が増加するのが確認されたものの、いずれの場合にも、良好な画像形成が可能であることが確認できた。
【0078】
B−5.実施例5
実施例5として、レーザ光のスキャン速度と画像形成性との関係を検討した。図10にその結果を示す。図10では、レーザ・パワー22.5W、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件下でPETに対するライン・マーキング着色の結果を示す図である。図10(a)はスキャン・スピード400mm/s、図10(b)はスキャン・スピード600mm/s、図10(c)はスキャン・スピード800mm/s、図10(d)はスキャン・スピード1000mm/s、図10(e)はスキャン・スピード1200mm/sの条件下でライン画像の形成を行なった場合の着色結果を示す。図10に示した実施例ではスキャン速度を増加させると、それに対応して供給光エネルギーが減少することに伴い、線幅の減少および濃度の低下が観測されるものの、良好な画像が形成できるのがわかった。
【0079】
図8〜図10に示すように、実施例3〜5についても本発明の画像形成システムおよび方法により良好な画像が形成できることが示された。すなわち、本実施の形態の着色システムにより、同一箇所へのレーザ光の照射回数、レーザ光の光強度密度、レーザ光の走査速度を変えることにより、線の幅および色濃度を変化させることができ、さらに、その線の幅は非常に細かいものであり、非常に繊細な図柄が描画できることが示された。
【0080】
B−6.実施例6
実施例6として、異なる色相の粒子を使用した混色および隣接画像の形成を検討した。実施例6では、レーザ・パワー15W、スキャン・スピード400mm/s、ビーム径0.5mm、照射回数1回、ライン長10mmの条件下でPETに画像形成を行った。図11(a)は、シアン、図11(b)は、マゼンタ、図11(c)は、イエローのトナーを塗布しライン描画を行なった場合である。図11(d)は、シアンとマゼンタ、図11(e)は、マゼンタとイエロー、図11(f)は、イエローとシアンの混合トナーを塗布しライン描画を行なった場合、図11(g)は、シアン既着色箇所にマゼンタのトナーを、図11(h)は、マゼンタ既着色箇所にシアンのトナーを、図11(i)は、マゼンタ既着色箇所にイエローのトナーを、図11(j)は、イエロー既着色箇所にマゼンタのトナーを、図11(k)は、イエロー既着色箇所にシアンのトナーを、図11(l)は、シアン既着色箇所にイエローのトナーを塗布しライン描画を行なった場合の結果を示す。
【0081】
同様に、図11(m)は、シアン既着色箇所近傍にマゼンタ、図11(n)は、マゼンタ既着色箇所近傍にイエロー、図11(o)は、イエロー既着色箇所近傍にシアンのトナーを塗布し交互にそれぞれの色について2本のライン、計4本ライン描画を行なった場合の着色結果を示す。
【0082】
図11に示すように、本実施の形態の画像形成方法により、色むらなどのない、良好な混色が可能とされているのがわかる。また、本発明では、複数色のトナーを混合する方法や、複数色のトナーを重ねて着色する方法や、複数色の着色箇所を近傍に設置する方法により、色相を変化させることができ、さらに、その線の幅は非常に細かいものであり、非常に繊細な図柄が描画できることが示された。
【0083】
B−7.実施例7
実施例7として、アクリル部材に対する本実施の形態の着色システムにおけるレーザの照射エネルギー密度に対する着色濃度を測定した。レーザ照射の積算エネルギーは、(OPHIR社製の300W−HP、日本レーザー社製のJLP−300W−HPを使用して測定した。)また、着色濃度の測定は、着色結果を撮像し、PCにデジタル画像として取り込み、画像ソフト(Adobe社製のPhotoshop(登録商標))を使用して測定した。)図12には、その結果を、比較例としてLPC法を用いた画像形成方法についてのレーザの照射エネルギー密度に対する着色濃度の比較を着色状態と共に示す。図12に示されるように、本発明の画像形成システムにより得られる画像は、最大着色濃度がLPC法の着色システムにおける最大着色濃度の約10倍程度の濃度となることがわかる。
【0084】
さらに、本発明の画像形成システムにおける着色可能な照射エネルギー密度は、LPC法の着色システムにおける着色可能な照射エネルギー密度の約0.1倍程度の密度で可能となることがわかった。これらのことから、本発明の画像形成システムにより、省エネルギーで効率の良い着色が可能であることが示された。
【0085】
また、比較例であるLPC法の着色システムにおける照射エネルギー密度に対する着色状態を見ると、LPC法の着色システムでは、画像濃度の立ち上がりまでのエネルギーを多く必要としていることがわかる。このことは、LPC法では、まず物体表面の改質などが発生し、その痕跡に着色が行なわれているものと考えることができる。すなわち、LPC法では、物体表面の改質と着色とが同時に行なわれていることがわかる。
【0086】
一方、本発明の実施例で得られる着色状態の結果は、概ね0.5J/cm2以上の光エネルギーを供給することにより目視可能な濃度の画像を形成することができ、本発明の画像形成システムが0.5〜1.3J/cm2の範囲でアクリル物体の表面に加工や改質の痕が残らない状態で画像形成でき、このため、着色の除去により着色前の状態へ戻すことが可能であることがわかった。さらに、本発明では、画像の堅牢度の点からは、1.3J/cm2以上の光エネルギーを照射することで堅牢な画像を形成することができることがわかる。
【0087】
B−8.実施例8
実施例8として、アクリル部材に対する本実施の形態の着色システムにおけるドット着色の断面濃度分布を検討した。その結果を図13に、比較例としたLPC法の着色システムにおけるドット着色の断面濃度分布と共に示す。縦軸は、本発明で得られた画像の濃度の相対値を示し、横軸は、ドットの径方向の相対位置である。なお、濃度測定は、実施例7で使用した測定方法を使用して測定した。径方向の切断線は、図13の右手側に併せて示した。
【0088】
図13に示されるように、比較例であるLPC法の着色システムの濃度分布が不均一、低濃度、そして周辺部までなだらかな分布広がっているのに対し、本発明により得られた画像は、濃度分布が均一であり、高濃度であり、さらに周辺部からの濃度コントラストが著しく高いということがわかる。このことは、比較例であるLPC法の着色システムにおける着色が、低コントラスト、低濃度、比較的大きな着色最小単位であったのに対して、本発明の画像形成システムにおける着色は、高コントラスト、高濃度、微細な着色が可能であることを示すものである。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明に依れば、様々な材質と複雑な形状の部材に対して、所望の位置に選択的に所望の着色を行なうことができる画像形成システムおよび画像形成方法が提供でき、本発明は、レーザによる直接描画に適した立体カラー・プリンタに適用することができる。そして、本発明は、スポット印刷分野、プリント配線分野、平版印刷分野、ロゴ印刷、キャラクタ商品への印刷などの画像形成分野において広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の画像形成システムのブロック図。
【図2】本発明の静電荷付与工程のプロセスを示した図。
【図3】本発明の粒子供給工程のプロセスを示した図。
【図4】本発明の粒子除去工程(現像プロセス)のプロセスを示した図。
【図5】本発明の画像形成プロセスを要素工程順に示した工程図。
【図6】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図7】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図8】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図9】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図10】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図11】本発明の実施例により得られた画像を示した図。
【図12】アクリル部材に対する本発明の画像形成システムにおけるドット着色の濃度と着色状態を、LPC法により得られた画像を比較例として示した図。
【図13】アクリル部材に対する本発明の画像形成システムにおけるドット着色の断面濃度分布を、LCD法により得られた画像を比較例として示した図。
【符号の説明】
【0091】
10…画像形成システム、12…レーザ装置、14…制御コンピュータ、16…スキャナ・コントローラ、18…スキャナ光学系、20…集光レンズ、22…反射ミラー、24…物体、26…融着画像、28…搬送装置、30…ファーブラシ、32…バイアス電源、34…コロナ放電装置、36…ファーブラシ、38…エアブラシ、40…磁石、42…ファーブラシ、
44…エアブラシ、46…遮蔽部材、48…集塵機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面に画像を形成するための画像形成システムであって、
前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する粒子供給部材と、
前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる光照射システムと、
前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する粒子除去部材と
を備える画像形成システム。
【請求項2】
前記物体は、3次元物体であり、前記物体の前記表面は、非平面形状である、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記光照射システムは、レーザ装置と前記レーザ装置からのレーザ光を像状に変調する光学系とを含む、請求項1または2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記光学系は、光反射要素または光学マスクを備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
さらに、前記物体の表面に前記粒子の担持を促進するための静電荷発生部材または磁場形成部材を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
画像形成システムを用いて物体の表面に画像を形成するための画像形成方法であって、
物体を前記画像システムに供給する工程と、
粒子供給部材から前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、
光照射システムから像状露光を行って、前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる工程と、
粒子除去部材により前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する工程と
を含む画像形成方法。
【請求項7】
前記物体を供給する工程は、前記物体の前記表面が非平面形状である3次元物体を提供する、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記融着させる工程は、光学系を使用してレーザ装置からのレーザ光を像状に変調する工程を含む、請求項6または7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記融着させる工程は、0.5J/cm2以上の光エネルギーを前記粒子に対して供給し、溶融させる工程を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記光エネルギーを変化させて、画像の線幅および濃度を変化させる工程を含む、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記供給する工程の前に静電荷発生部材または磁場形成部材により前記物体の表面に前記粒子の担持を促進する工程を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記供給する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に前記粒子を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を供給する工程を含む、請求項6〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記除去する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に流体を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を除去する工程を含む、請求項6〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
形成された画像状にさらに前記物体上に異なる色相の粒子を付着させる工程と、
付着した前記異なる色相の粒子を前記レーザ光により溶融させ、すでに形成された画像の色相と色相混合する工程と
を含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記粒子は、異なる色相の着色粒子を含み、前記融着させる工程は、前記レーザ照射により前記異なる色相の着色粒子を前記物体の表面上で混色する工程を含む、請求項6〜14のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項1】
物体の表面に画像を形成するための画像形成システムであって、
前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する粒子供給部材と、
前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる光照射システムと、
前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する粒子除去部材と
を備える画像形成システム。
【請求項2】
前記物体は、3次元物体であり、前記物体の前記表面は、非平面形状である、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記光照射システムは、レーザ装置と前記レーザ装置からのレーザ光を像状に変調する光学系とを含む、請求項1または2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記光学系は、光反射要素または光学マスクを備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項5】
さらに、前記物体の表面に前記粒子の担持を促進するための静電荷発生部材または磁場形成部材を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像形成システム。
【請求項6】
画像形成システムを用いて物体の表面に画像を形成するための画像形成方法であって、
物体を前記画像システムに供給する工程と、
粒子供給部材から前記物体の表面に熱可塑性の粒子を供給する工程と、
光照射システムから像状露光を行って、前記物体の表面に担持された前記粒子を照射して溶融させ、前記物体の表面に前記粒子を像状に融着させる工程と、
粒子除去部材により前記物体の表面から前記表面に融着していない粒子を除去する工程と
を含む画像形成方法。
【請求項7】
前記物体を供給する工程は、前記物体の前記表面が非平面形状である3次元物体を提供する、請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項8】
前記融着させる工程は、光学系を使用してレーザ装置からのレーザ光を像状に変調する工程を含む、請求項6または7に記載の画像形成方法。
【請求項9】
前記融着させる工程は、0.5J/cm2以上の光エネルギーを前記粒子に対して供給し、溶融させる工程を含む、請求項6〜8のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記光エネルギーを変化させて、画像の線幅および濃度を変化させる工程を含む、請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
前記供給する工程の前に静電荷発生部材または磁場形成部材により前記物体の表面に前記粒子の担持を促進する工程を含む、請求項6〜10のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記供給する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に前記粒子を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を供給する工程を含む、請求項6〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項13】
前記除去する工程は、前記粒子供給部材により前記物体の表面を摺擦する工程または前記物体の表面に流体を吹き付ける工程、または電磁気的相互作用により前記粒子を除去する工程を含む、請求項6〜11のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項14】
形成された画像状にさらに前記物体上に異なる色相の粒子を付着させる工程と、
付着した前記異なる色相の粒子を前記レーザ光により溶融させ、すでに形成された画像の色相と色相混合する工程と
を含む、請求項6〜13のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項15】
前記粒子は、異なる色相の着色粒子を含み、前記融着させる工程は、前記レーザ照射により前記異なる色相の着色粒子を前記物体の表面上で混色する工程を含む、請求項6〜14のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−144670(P2007−144670A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339548(P2005−339548)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(800000080)タマティーエルオー株式会社 (255)
【出願人】(598123138)学校法人 創価大学 (49)
【Fターム(参考)】
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