説明

画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びブラックインク

【課題】1パス往復記録のような高速の記録方法においても、ブリーディングや白もや、さらには、色むらの抑制された、高品位の画像を形成できる画像形成方法を提供する。
【解決手段】顔料1101を含有する顔料ブラックインク1100と、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分1202及び染料1301を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインク1300と、を順不同で少なくとも一部が重なるように記録媒体1000に付与して画像を形成する工程を有することを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像記録方法、画像記録装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筆記具(万年筆、サインペン、水性ボールペンなど)用のインクや、インクジェット記録方法に用いるインクとして、画像濃度が高く、堅牢性などに優れた記録物が得られる、色材として顔料を含有するインク(顔料インク)が用いられている。特に近年は、オフィスなどで一般に用いられるコピー用紙や、レポート用紙、ノート、便箋、ボンド紙、連続伝票用紙などの種々の普通紙にも良好に記録を行うために、インクの組成や物性などに関する検討が数多く行われている。顔料については、例えば、カーボンブラック及び分散剤を含有する顔料インクや、分散剤を用いることなく顔料の分散が可能な自己分散型カーボンブラックを含有する顔料インクに関する提案がある(特許文献1乃至3参照)。
【0003】
文字品位とフルカラー画像品位との両立を目指すインクジェット記録方法では、上記で述べたような顔料インクなどをブラックインクとして用い、他のカラーインクと組み合わせて使用し、画像を形成することが行われる。カラーインクの具体例としては、例えば、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、レッドインク、グリーンインク及びブルーインクから選ばれる少なくとも1つが挙げられる。
【0004】
フルカラーの画像を形成する際に発生する課題として、以下のようなことが知られている。例えば、ブラックインクで形成した画像とカラーインクで形成した画像との境界部分で滲みが発生する現象(ブリーディング)が起こる場合がある。また、ブラックインクで形成した画像に発生する不均一な白いむら(白もや)が発生する場合がある。そして、ブリーディングや白もやが発生することにより、画像品位が低下する場合がある。このため、このようなブリーディングや白もやを抑制するための代表的な技術として、ブラックインクで画像を形成する領域に、該ブラックインク中の成分との反応性を有するカラーインクを重ねて付与する記録方法が開示されている(特許文献4及び5参照)。
【0005】
しかし、前記したような、反応性を有するカラーインクと、顔料を含有するブラックインクとを重ねて記録媒体に付与する場合、これらのインクを記録媒体に付与する順序によっては、得られる画像の色調が異なる現象、すなわち色むらが発生する場合がある。この色むらを抑制するために、顔料及び塩を含有するブラックインク、及び、前記顔料の分散状態を不安定化する成分を含有するカラーインク、を有するインクセットやかかるインクセットを用いた画像記録方法に関する提案がある(特許文献6及び7参照)。
【0006】
また、複数のインクを用いて記録を行う画像形成方法や画像形成装置においては、互いに異なる表面張力を有する複数のインクが用いられることがある。例えば、鮮鋭な文字品位を得るべく、ブラックインクは他のカラーインクと比較して、より高い画像濃度を有する画像を与えることが要求される。このため、他のカラーインクよりも表面張力が高くなるようにインクを設計することが一般的に行われている(特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−152681号公報
【特許文献2】特開昭64−6074号公報
【特許文献3】特開平8−3498号公報
【特許文献4】特開平11−343441号公報
【特許文献5】特開2004−115549号公報
【特許文献6】特開2001−150793号公報
【特許文献7】特開2001−152059号公報
【特許文献8】特開2003−96371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献4や5に記載されたような、顔料を含有するブラックインクで記録する領域に、該ブラックインク中の成分と反応性を有するカラーインクを重ねて付与する記録方法について改めて検討を行った。その結果、前記記録方法によれば、ブリーディングを抑制する効果や、前記ブラックインクで形成した画像における白もやを抑制する効果が得られることを確認した。しかし一方で、前記記録方法を用いて形成した画像には、色むらが発生するという課題があることが確認された。
【0009】
また、本発明者らは、特許文献6や7に記載されたような、顔料及び塩を含有するブラックインクと、前記ブラックインク中の顔料の分散状態を不安定化する成分を含有するカラーインクとを含むインクセットや、これを用いた画像記録方法について検討を行った。その結果、前記インクセットや前記画像記録方法によれば、記録画像における色むらを抑制する効果が得られることが確認された。
【0010】
近年、インクジェット記録方法として記録時間の短縮などのために、1パス往復記録が検討されている。この記録方法は、記録ヘッドの主走査の往方向及び復方向の双方向で記録する方法(往復記録)と、1回の主走査で記録ヘッドの長さと同じ幅の画像を記録する方法(1パス記録)とを組み合わせた記録方法である。そして、この1パス往復記録を用いることで、記録時間を大幅に短縮することができる。
【0011】
しかし、本発明者らが、上記特許文献6及び7に記載されたような技術を1パス往復記録に適用することについて検討を行った結果、前記したような色むらを十分に抑制できない場合があることがわかった。具体的には、1パス往復記録では、先に付与されたインクの記録媒体への浸透やインク成分の蒸発の前に、次のインクが付与されることとなる。このため、記録媒体上でインク滴同士が互いに液体の状態で接触することとなり、上記技術を用いたとしても色むらを十分に抑制できない場合があることが新たにわかった。
【0012】
つまり、上記特許文献6及び7に記載されたような技術では、顔料を含有するブラックインクと、これと反応するカラーインクとを重ねて記録する場合、その記録条件によっては、色むらを十分に抑制する効果が得られない場合があることになる。特に、ブラックインクの表面張力がカラーインクの表面張力よりも大きい場合に、先にカラーインク、後からブラックインクという順序で記録媒体に各インクを付与すると、色むらを十分に抑制できない場合がある。具体的には、このようにして記録を行うと、ブラックインクで記録した領域がカラーインクの色相に影響されて、色むらが特に顕著となる場合がある。
【0013】
したがって、本発明の目的は、ブリーディング及び白もやに優れた画像を形成させる画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することにある。また、本発明の別の目的は、1パス往復記録のような高速の記録方法においても、色むらが抑制された画像を形成させる画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することにある。さらに、本発明の別の目的は、これらの目的を満足し、発色性をも満足した画像を形成させる画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、顔料を含有する顔料ブラックインクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクと、を順不同で少なくとも一部が重なるように記録媒体に付与して画像を形成する工程を有することを特徴とする画像形成方法である。
【0015】
また、本発明の別の実施形態は、顔料を含有する顔料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドと、前記顔料ブラックインク及び前記染料ブラックインクを順不同で少なくとも一部が重なるように記録媒体に付与して画像を形成するための手段と、を有することを特徴とする画像形成装置である。
【0016】
また、本発明の別の実施形態は、記録媒体上に、顔料を含有する顔料ブラックインクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクとを順不同で記録媒体上において少なくとも一部が重なるように付与して、これらのインクが重なる部分の画像の品質を改善する画像の品質改善方法である。
【0017】
また、本発明の別の実施形態は、記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させる往復走査のそれぞれにおいて顔料を含有する顔料ブラックインクを付与してブラック画像を形成するインクジェット記録装置に用いられ、前記顔料ブラックインクと記録媒体上において少なくとも一部が重なるように前記ブラック画像の形成にあたって往復走査のそれぞれにおいて付与されるブラックインクであって、前記ブラックインクに含有される顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及びブラック染料を含有し前記ブラックインクよりも表面張力が低いことを特徴とするブラックインクである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブリーディング及び白もやに優れた画像を形成させる画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することができる。また、本発明によれば、1パス往復記録のような高速の記録方法においても、色むらが抑制された画像を形成させる画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することができる。本発明によれば、これらを満足し、発色性をも満足した画像形成方法、画像形成装置、画像の品質改善方法、及びこれらに用いられるブラックインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】顔料ブラックインク、反応性カラーインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。
【図2】反応性カラーインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。
【図3】顔料ブラックインク、反応性ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。
【図4】反応性ブラックインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。
【図5】インクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
【図6】記録ヘッドカートリッジの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、表面張力は常温(25℃)で測定した値とし、単位はmN/mである。
ここで、本発明者らが、上記課題を解決する手段を見出した経緯は、以下の通りである。本発明者らが鋭意検討した結果、ブラックインクとカラーインクとを重ねて画像を形成した場合、ブラックインクとカラーインクとの表面張力の差が、色むらを顕著にしているということがわかった。先ず、上記した通り、一般的には、ブラックインクは、他の色のインクと比べ高い画像濃度が特に求められていることから、他の色のインクよりも表面張力が高く設計される。これは、黒は画像濃度が最優先、他の色は異色間同士のブリーディング抑制が最優先というように、色によって異なる、求められる性能を最大限生かすようにするためである。
【0021】
ところが、このような場合、以下のような現象が生じることを本発明者らは見出した。すなわち、表面張力が異なるインク同士を接触させると、表面張力が相対的に低いインクが、表面張力が相対的に高いインクを引っ張り込むという現象が生じることを確認した。つまり、ブラックインクが先に記録され、カラーインクが後に記録された場合、ブラックインクが記録媒体に定着する前に、表面張力が相対的に高いブラックインクが、表面張力が相対的に低いカラーインクに引っ張り込まれる。そして、カラーインクはブラックインク上に素早く均一に濡れ広がり拡散するようになる。その結果、記録媒体には、均一に混合された状態のカラーインクとブラックインクが定着するようになり、視覚的には、カラーインクにほとんど影響されない、ほぼブラックインクのみによる色味のブラック画像が残る。
【0022】
一方、カラーインクが先に記録され、ブラックインクが後に記録された場合、表面張力が相対的に高いブラックインクが、表面張力が相対的に低いカラーインクに引っ張り込まれ、ブラックインクはカラーインク上にあまり濡れ広がらず拡散しない。このため、記録媒体には、不均一に混合された状態のカラーインクとブラックインクが定着するようになり、視覚的には、カラーインクの色味があるブラック画像が残る。つまり、表面張力の異なる、ブラックインクとカラーインクと順不同で付与して画像を形成した場合には、ブラックインクのみによる色味のブラック画像と、カラーインクの色味があるブラック画像とが混在することとなり、色むらが発生する。
【0023】
また、本発明者らが検討した結果、上記したような現象は、条件によっては、ブラックインクと、該ブラックインク中の成分と反応する反応系のカラーインクとを用いた場合でも見られるということがわかった。この場合、ブラックインク中の色材の分散状態を不安定化させる成分を含有する反応系のカラーインクを用いることで、ブラックインクと重ねて記録をした際、ブラックインクがより高い画像濃度を発現するようになるため、色むらは軽減される傾向にある。しかし、この場合においても、近年の要求水準からすると不十分である。また、近年、記録スピードの向上の要求により、1パス往復記録のような、先に付与されたインクが紙に着弾して浸透や蒸発が起こる前に、次のインクが付与され、記録媒体上においてインク滴同士が液液界面で接触する、より高速の記録方法が検討されている。そして、このような記録方法に用いる場合においては、上記した先行技術だけでは、色むらを抑えることは困難であることがわかった。
【0024】
このような特に厳しくなった要求に応えるため、本発明者らは、さらに検討を続けた。その結果、表面張力の異なる、複数のインクを重ねて記録を行う際、同系色のインクを重ねることによって、色味の変化を軽減し、色むらを抑えることができるという知見を得るに至った。
【0025】
上記したような経緯により見出された本発明は、以下の通りである。すなわち、本発明の一つは、記録媒体上に、顔料を含有する顔料ブラックインクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクとを用いる画像の品質改善方法である。そして、これらのインクを順不同で少なくとも一部が重なるように付与して、これらのインクが重なる部分の画像の品質を改善することを特徴とする。
【0026】
<画像形成方法>
また、前記した本発明の画像の品質改善方法を具現化した本発明の画像形成方法は、以下の通りである。すなわち、顔料を含有する顔料ブラックインクと、顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有する、顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクとを順不同で少なくとも一部が重なるように付与して画像を形成する方法である。以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。
【0027】
ここで、以下の説明においては、顔料を含有する顔料ブラックインクを「顔料ブラックインク」と称する。また、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクを「反応性ブラックインク」と称する。また、顔料ブラックインク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性成分を含有するカラーインクを「反応性カラーインク」と称する。また、反応性ブラックインク及び反応性カラーインクに含有される、顔料の分散状態を不安定化する反応性成分を「反応性成分」と称する。
【0028】
また、本発明における反応性成分とは、反応性ブラックインクに含まれる量のこの成分を顔料ブラックインクに付与した際、色材の不溶化や分散破壊、インクの粘度上昇などを生じさせる成分をいう。また、反応性ブラックインク中における反応性成分の含有量は、顔料ブラックインクに付与した際、色材の不溶化、分散破壊、粘度上昇などを生じさせる量が含有されていればよい。具体的には、反応性ブラックインク全質量を基準として、0.01質量%以上50.0質量%未満が好ましい。
【0029】
また、本発明において、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクは、各々のインクで形成した画像を目視で確認した場合に類似していると判断される色であることが好ましい。具体的には、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとをそれぞれ純水で2,000倍に希釈した各インクについて測定したCIELab色空間における明度の差の絶対値が20以内であることが好ましい範囲である。特には、明度の差の絶対値が0以上20以下であることが好ましい。なお、CIELab色空間における明度は一般的な装置で測定できるが、後述する実施例においては、紫外可視分光光度計L−4200(日立製作所製)を用いて測定した。
【0030】
本発明において、顔料ブラックインクは、鮮鋭な文字品位や高い画像濃度を得るために、記録媒体への浸透性が比較的小さい、いわゆる上乗せ系インクとすることが好ましい。具体的には、顔料ブラックインクの表面張力が30mN/m以上50mN/m以下の範囲であることが好ましい。また、本発明において、反応性ブラックインクは、カラーインク間とのブリーディングを抑制するために、記録媒体への浸透性が比較的大きい、いわゆる浸透系インクとすることが好ましい。具体的には、反応性ブラックインクの表面張力が20mN/m以上40mN/m以下の範囲であることが好ましい。さらに、本発明の効果を得るためには、反応性ブラックインクの表面張力が、顔料ブラックインクの表面張力よりも小さくなるように調整される。具体的には、反応性ブラックインクの表面張力が、顔料ブラックインクの表面張力よりも、5mN/m以上10mN/m以下の範囲で小さく調整されていることが好ましい。
【0031】
本発明の画像形成方法において、各インクを記録媒体に付与する工程は、具体的には順不同で行われる。先ず、顔料ブラックインクを付与する予定の、記録媒体の少なくとも一部の領域に、反応性ブラックインクを付与し、次に、反応性ブラックインクを付与した領域の少なくとも一部に顔料ブラックインクを付与する場合が挙げられる。また、記録媒体の少なくとも一部の領域に、顔料ブラックインクを付与し、次に、顔料ブラックインクを付与した領域の少なくとも一部に、反応性ブラックインクを付与する場合が挙げられる。
【0032】
このときの、各インクの付与量は、反応性ブラックインクの付与量が、顔料ブラックインクの付与量に対して、質量基準で、2/100以上50/100以下であることが好ましい。すなわち、顔料ブラックインクの付与量を100としたときに、反応性ブラックインクの付与量を2以上50以下とすることが好ましい。各インクの付与量を上記範囲とすることが好ましい理由は以下の通りである。顔料ブラックインクの付与量に対して、反応性ブラックインクの付与量が上記した範囲より少ない場合には、本発明の効果が十分に得られない場合があるためである。また、反応性ブラックインクの付与量に対して、顔料ブラックインクの付与量が上記した範囲より多い場合には、新たにブリーディングが発生して画像品位が低下することがあるためである。
【0033】
本発明においては、上記構成の画像形成方法により、1パス往復記録のように高速で記録を行う場合においても、色むらの発生を抑制することができる。すなわち、ブリーディングの発生を抑制するために、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを重ねて付与する場合において、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとが付与される順序の違いによって生じる色むらを低減させることができる。このような効果が得られる理由は明確には明らかではないが、本発明者らが検討を行った結果、以下に述べるようなメカニズムによるものであると考えられる。
【0034】
〔従来の画像形成方法における画像形成のメカニズム〕
本発明の効果が得られる理由を推測するにあたって、先ず、反応性ブラックインクを用いない場合、つまり、顔料ブラックインクと反応性カラーインクのみを重ねて付与することにより画像を形成する従来の画像形成方法について説明する。ここでは一例として、1パス往復記録において、顔料ブラックインクと反応性カラーインクを付与する順序が、往記録と復記録とでそれぞれ異なる場合について、図1及び図2を用いて考察する。
【0035】
なお、以下の考察では、各インクは、以下に示すような一般的な構成を想定している。すなわち、反応性カラーインク及び反応性ブラックインクは、インクの定着性や各色のカラーインク間におけるブリーディングの発生を抑制するために、表面張力が顔料ブラックインクより相対的に低く、記録媒体への浸透性を比較的大きくすることを想定している。また、顔料ブラックインクは、文字品位を向上するために、表面張力が反応性カラーインク及び反応性ブラックインクより相対的に高く、記録媒体への浸透性を比較的小さくすることを想定している。
【0036】
(1)往記録で、顔料ブラックインク、反応性カラーインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合。
図1は、顔料ブラックインク、反応性カラーインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。先ず、顔料ブラックインクを記録媒体(1000)に付与すると、図1(a)に示すように、顔料ブラックインク(1100)が記録媒体(1000)を覆う。なお、顔料ブラックインクは記録媒体への浸透が比較的遅い特性を有する。その後、顔料ブラックインク(1100)中の顔料(1101)が、記録媒体(1000)の表面上で凝集を生じ始め、顔料ブラックインク(1100)中の水性媒体(1102)は記録媒体に浸透し始める。ここで、染料(1201)及び反応性成分(1202)を含有する反応性カラーインク(1200)を顔料ブラックインクに重ねて付与すると、表面張力が相対的に高い顔料ブラックインクが、表面張力が相対的に低い反応性カラーインクに引っ張り込まれる。そして、図1(b)に示すように、反応性カラーインク(1200)は、記録媒体上の顔料ブラックインクの層に素早くかつ均一に濡れながら広がり、拡散する。このとき、反応性カラーインク中の反応性成分(1202)の作用により、記録媒体(1000)上の顔料(1101)の凝集が急激に均一に進み、図1(c)に示すように、顔料は記録媒体(1000)の表面近傍に均一に分布して存在するようになる。この結果、均一な画像が得られる。また、反応性カラーインク(1200)中の染料(1201)の一部は、記録媒体の表面近傍に定着した顔料層の内部に存在するものもあるが、ブラックの顔料が均一に分布して存在しているため、視覚的には光学濃度への寄与は少ない。
【0037】
(2)復記録で、反応性カラーインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合。
図2は、反応性カラーインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。先ず、反応性カラーインク(1200)を記録媒体(1000)に付与すると、図2(d)に示すように、記録媒体に比較的浸透しやすい特性を有する反応性カラーインクは記録媒体(1000)中に浸透する(1203)。その後、顔料(1101)を含有する顔料ブラックインク(1100)を反応性カラーインク(1200)に重ねて付与すると、表面張力が相対的に高い顔料ブラックインクが、表面張力が相対的に低い反応性カラーインクに引っ張り込まれる。このとき、図2(e)に示すように、顔料ブラックインク(1100)は先に付与された反応性カラーインク(1200)の層にあまり濡れ広がらず、ほとんど拡散しない。そして、これと同時に、顔料ブラックインク(1100)中の顔料(1101)は反応性成分(1202)の作用により急激に凝集を始める。しかし、反応性成分(1202)と顔料ブラックインク(1100)との接触面積は、上記の(1)の場合と比較して小さく、反応性成分(1202)は、顔料ブラックインク(1100)中に、ほとんど拡散しないため、顔料の凝集も不均一となる。その結果、図2(f)に示すように、顔料(1101)は、記録媒体(1000)上に不均一に分布して存在するようになる。この顔料の不均一な分布のうち、特に顔料の分布が少ない部分は白っぽく抜けた感じの画像となり、その部分では、記録媒体に定着した反応性カラーインク中の染料の一部が見えるため、視覚的にも不均一な画像となる。
【0038】
このように、顔料ブラックインクと反応性カラーインクとを重ねて付与することで画像を形成する従来の画像形成方法では、上記の(1)と(2)の記録が繰り返され、均一な画像と不均一な画像とが記録ごとに交互に形成されるため、色むらが発生する。なお、上記の(1)と(2)の記録で、各インクを記録媒体に付与する順序が逆となっても、同様のメカニズムにより色むらが発生する。すなわち、往記録で反応性カラーインク、顔料ブラックインクの順序、復記録で顔料ブラックインク、反応性カラーインクの順序で各インクを記録媒体に付与して画像を形成したとしても、色むらが発生する。
【0039】
〔本発明の画像形成方法の場合における画像形成のメカニズム〕
次に、本発明の画像形成方法について、例を挙げて説明する。ここでは一例として、1パス往復記録において、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを重ねて付与することにより画像を形成する本発明の画像形成方法について説明する。先ず、(3)として、往記録において、顔料ブラックインク、反応性ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合について図3を用いて考察する。また、(4)として、復記録において、反応性ブラックインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合について図4を用いて考察する。
【0040】
(3)往記録で、顔料ブラックインク、反応性ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合。
図3は、顔料ブラックインク、反応性ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。先ず、顔料ブラックインクを記録媒体(1000)に付与すると、図3(g)に示すように、顔料ブラックインク(1100)が記録媒体(1000)を覆う。なお、顔料ブラックインクは記録媒体への浸透が比較的遅い特性を有する。その後、顔料ブラックインク(1100)中の顔料(1101)が、記録媒体(1000)の表面上で凝集を生じ始め、顔料ブラックインク(1100)中の水性媒体(1102)は記録媒体に浸透し始める。ここで、染料(1301)及び反応性成分(1202)を含有する反応性ブラックインク(1300)を顔料ブラックインクに重ねて付与すると、表面張力が相対的に高い顔料ブラックインクが、表面張力が相対的に低い反応性ブラックインクに引っ張り込まれる。そして、図3(h)に示すように、反応性ブラックインク(1300)は記録媒体上の顔料ブラックインク(1100)の層に素早くかつ均一に濡れながら広がり、拡散する。このとき、反応性ブラックインク中の反応性成分(1202)の作用により、記録媒体(1000)上の顔料(1101)の凝集が急激に均一に進み、図3(i)に示すように、顔料は記録媒体(1000)の表面近傍に均一に分布して存在するようになる。この結果、均一な画像が得られる。また、反応性ブラックインク(1300)中の染料(1301)の一部は、記録媒体の表面近傍に定着した顔料層の内部に存在するものもある。しかし、ブラックの顔料が均一に分布して存在し、かつ顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとは同系色であるため、視覚的には光学濃度への寄与は少ない。
【0041】
(4)復記録で、反応性ブラックインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合。
図4は、反応性ブラックインク、顔料ブラックインクの順序でインクを記録媒体に付与する場合の概念図である。先ず、反応性ブラックインク(1300)を記録媒体(1000)に付与すると、図4(j)に示すように、記録媒体に比較的浸透しやすい特性を有する反応性ブラックインクは記録媒体(1000)中に浸透する(1302)。その後、顔料(1101)を含有する顔料ブラックインク(1100)を反応性ブラックインク(1300)に重ねて付与するとき、表面張力が相対的に高い顔料ブラックインクが、表面張力が相対的に低い反応性ブラックインクに引っ張り込まれる。このとき、図4(k)に示すように、顔料ブラックインク(1100)は先に付与された反応性ブラックインク(1300)の層にあまり濡れ広がらず、ほとんど拡散しない。そして、これと同時に、顔料ブラックインク(1100)中の顔料(1101)は反応性成分(1202)の作用により急激に凝集を始める。しかし、反応性成分(1202)と顔料ブラックインク(1100)との接触面積は、上記の(3)の場合と比較して小さく、反応性成分(1202)は顔料ブラックインク(1100)中にほとんど拡散しないため、顔料の凝集も不均一となる。その結果、図4(1)に示すように、顔料(1101)は記録媒体上に不均一に分布して存在するようになる。この顔料の不均一な分布のうち、特に顔料の分布が少ない部分は白っぽく抜けた感じの画像となり、その部分では記録媒体に定着した反応性ブラックインク中の染料の一部が見える。しかし、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとは同系色であるため、視覚的には均一な画像が得られる。
【0042】
このように、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを重ねて付与することにより画像を形成する本発明の画像形成方法では、上記の(3)と(4)の記録が繰り返され、いずれの場合でも均一な画像が形成されるため、色むらの発生が抑制される。なお、上記の(3)と(4)の記録で、各インクを記録媒体に付与する順序が逆となっても、同様のメカニズムにより色むらの発生が抑制される。すなわち、往記録で反応性ブラックインク、顔料ブラックインクの順序、復記録で顔料ブラックインク、反応性ブラックインクの順序で各インクを記録媒体に付与して画像を形成したとしても、色むらの発生が抑制される。
【0043】
<インク>
以下、本発明にかかる画像形成方法に用いる顔料ブラックインク及び反応性ブラックインク、並びに、これらに加えて使用できる非反応性カラーインクについて、各インクを構成する特徴的な成分、各インクで共通に用いることができる成分、の順序で説明する。
【0044】
[顔料ブラックインク]
(顔料)
顔料ブラックインクの色材は顔料であることが必要である。顔料ブラックインク中における、顔料の分散の形態は、自己分散型、樹脂などを分散剤として用いた樹脂分散型、などのいずれの形態であってもよい。これらの顔料は単独では勿論のこと、2種類以上を混合して用いてもよい。顔料ブラックインク中における顔料の含有量(質量%)は、顔料ブラックインク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには1.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、調色などの目的のために、顔料に加えて染料を用いることもできる。
【0045】
〔自己分散型顔料〕
本発明においては、少なくとも1つの親水性基(アニオン性基やカチオン性基)が顔料粒子の表面に直接又は他の原子団(−R−)を介して結合している自己分散型顔料を用いることが好ましい。このような自己分散型顔料を用いることにより、顔料をインク中に分散するための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。
【0046】
顔料粒子の表面に結合している親水性基は、具体的には、例えば、−COO(M1)、−SO3(M1)、−PO3H(M1)、−PO3(M1)2、−(COO(M1))nなどが挙げられる。なお、式中「M1」は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムであり、nは2以上の整数である。これらの親水性基は、顔料粒子の表面に直接結合していてもよい。又は、他の原子団(−R−)を顔料粒子の表面と前記親水性基との間に介在させて、上記で挙げたような親水性基を顔料粒子の表面に間接的に結合させてもよい。前記他の原子団(−R−)には、炭素原子数1乃至12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。なお、インク中の親水性基の形態は、その一部が解離した状態、若しくは完全に解離した状態のいずれの形態であってもよい。
【0047】
本発明においてはとりわけ、ジアゾカップリング法により得られる、−R−(COOM1)n基を一部分に有する化合物を表面に結合させている顔料を好適に用いることができる。また、アニオン性に帯電した自己分散型顔料の製造方法には、例えば、顔料を次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法などが挙げられ、この方法によれば顔料粒子の表面に−COONa基を化学的に結合させることができる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
【0048】
また、前記顔料粒子の表面に結合している−R−において、−COO(M1)が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、−COO(M1)を結合していることが好ましい。また、前記nが2であることや、前記RがC63であることが好ましい。このような構成とすることで、画像品位及び耐ブリーディング性について優れた効果が得られるためである。なお、前記顔料粒子の表面に結合している−R−において、−COO(M1)が結合している炭素原子に隣接する炭素原子が、−COO(M1)を結合していることとは、R中の隣り合う2つ以上の炭素原子が共に−COO(M1)基を有することである。これは、具体的には、下記一般式(1)のような構造を有することである。本発明においては、顔料粒子の表面に、下記一般式(1)で表される基が結合した自己分散型顔料を用いることが好ましい。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
【0049】

【0050】
また、顔料ブラックインクにおいては、前記−R−(COOM1)n基がより高密度に顔料粒子の表面に結合していることが好ましい。具体的には、例えば、顔料粒子の表面における親水性基密度が、2.00μmol/m2以上であることが好ましい。これは、前記で述べた溶媒和の程度に起因する固液分離がより促進され、上記効果がより顕著に得られるためである。なお、本発明においては、顔料粒子における親水性基密度は、顔料の比表面積や、顔料粒子の表面に結合している官能基の構造などにより大きく影響を受けるため、この範囲に限られるものではない。
【0051】
さらに、顔料ブラックインクにおいては、前記M1がアンモニウムである場合、より優れた耐水性が得られるため、特に好ましい。これは、かかるインクが記録媒体に付与されると、このアンモニウムが分解し、アンモニアが蒸発して顔料粒子の表面に結合している親水性基がH型(酸型)となり、親水性が低下することによるものと考えられる。ここで、M1がアンモニウムである自己分散型顔料は、以下の方法で得ることができる。例えば、M1がアルカリ金属である自己分散型顔料について、イオン交換法を行うことでM1をアンモニウムに置換する方法や、酸を加えてH型とした後に水酸化アンモニウムを添加してM1をアンモニウムにする方法などが挙げられる。
【0052】
〔樹脂分散型顔料〕
本発明においては、樹脂などを分散剤として用いることにより顔料粒子を分散する樹脂分散型顔料を用いることもできる。分散剤としては、水溶性を有するものであればいずれのものも用いることができる。本発明においては、親水性基、特にはイオン性基を有し、その作用により顔料を水性媒体に安定に分散することができるものが好ましい。分散剤は、重量平均分子量が、1,000乃至30,000、さらには3,000乃至15,000の樹脂を用いることが好ましい。顔料ブラックインク中における分散剤の含有量(質量%)は、顔料ブラックインク全質量を基準として、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、顔料ブラックインク中における顔料の含有量(P)及び分散剤の含有量(B)の比率(P/B比)は、0.02以上150以下であることが好ましい。
【0053】
分散剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。
スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体。スチレン−マレイン酸ハーフエステル共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸ハーフエステル共重合体。又はこれらの共重合体の塩など。
【0054】
〔カーボンブラック〕
顔料ブラックインクに用いる顔料にはカーボンブラックが挙げられる。カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどを用いることができる。具体的には、例えば、以下の市販品などを用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
レイヴァン:7000、5750、5250、5000ULTRA、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上、コロンビア製)。ブラックパールズL、リーガル:400R、330R、660R、モウグル:L、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、2000、ヴァルカンXC−72R(以上、キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上、デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学製)。
また、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを用いることもできる。また、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子や、チタンブラックなどを用いてもよい。
【0055】
(塩)
顔料ブラックインクは、さらに、塩を含有することが好ましい。これにより、記録媒体上での顔料の凝集が促進されるようになるため、記録媒体の種類によらず安定して本発明の効果を得ることができる。なお、顔料ブラックインク中における塩の形態は、その一部が解離した状態、又は完全に解離した状態のいずれの形態であってもよい。
【0056】
顔料ブラックインクに用いることができる塩の具体例は、例えば、(M2)NO3、CH3COO(M2)、C65COO(M2)、C24(COO(M2))2、C64(COO(M2))2、(M2)2SO4などが挙げられる。なお、式中、式中「M2」は、アルカリ金属、アンモニウム、又は有機アンモニウムである。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0057】
顔料ブラックインク中における、塩の含有量は、本発明の効果が十分得られる範囲で含有されていればよい。具体的には、顔料ブラックインク中における塩の含有量(質量%)は、顔料ブラックインク全質量を基準として、0.05質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。含有量が0.05質量%未満であると、本発明の効果が得られない場合があり、10.0質量%を上回ると、インクの保存安定性などが得られない場合がある。
【0058】
[反応性ブラックインク]
(反応性成分)
反応性ブラックインクは、顔料ブラックインク中の顔料の分散状態を不安定化する反応性成分を含有することを特徴とする。本発明において、顔料ブラックインク中の顔料の分散状態を不安定化することとは、以下の(1)又は(2)の態様を満たす場合と定義する。先ず、反応性ブラックインクと顔料ブラックインクとを等しい体積で混合して、混合インクを調製する。このとき、(1)混合インクに顔料の沈殿物や凝集物が発生する態様、(2)反応性ブラックインクの粘度A、顔料ブラックインクの粘度B、混合インクの粘度Cが、C>((A+B)/2)×1.2、の関係を満たす態様、などが挙げられる。なお、粘度は常温(25℃)で測定した値とし、単位はmPa・sである。前記した(1)又は(2)の態様は、具体的には、例えば、以下の(A)、(B)、(C)、又は(D)の態様とすることができる。
【0059】
(A)顔料ブラックインク中の顔料又は分散剤がアニオン性基を有し、反応性ブラックインクが反応性成分としてカチオン性成分を含有する態様。
この場合、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを混合すると、反応性ブラックインク中のカチオン性成分が顔料ブラックインク中の顔料又は分散剤のアニオン性基と反応して、顔料の分散状態が不安定化する。その結果、顔料の凝集や沈殿が起こり、また、混合インクが増粘する。
【0060】
前記カチオン性成分は、例えば、多価金属を用いることができる。インクが多価金属を含有するための具体的な手段は、例えば、インクが多価金属塩を含有することが挙げられる。なお、多価金属塩は、インク中では多価金属イオンと陰イオンに解離して存在するが、この場合も、インクが多価金属を含有する、と表現する。前記多価金属イオンは、具体的には、例えば、Mg2+、Ca2+、Cu2+、Co2+、Ni2+、Fe2+、La3+、Nd3+、Y3+、及びAl3+などが挙げられる。また、前記陰イオンは、具体的には、例えば、NO3-、SO42-、Cl-などの無機酸イオンや、CH3COO-などの有機酸イオンであることが好ましい。
【0061】
本発明においては、反応性ブラックインクの保存安定性や、反応性ブラックインクと接触する部材(インクジェット記録装置を構成するインク流路など)を溶解しないなどの観点から、上記した多価金属イオンの中でも特に、Mg2+を用いることが好ましい。また、溶解度の観点から、上記した陰イオンの中でも、NO3-、SO42-、Cl-、CH3COO-を用いることが好ましく、水への溶解度が優れているため、NO3-、SO42-、CH3COO-を用いることが特に好ましい。
【0062】
反応性ブラックインク中における多価金属の含有量(質量%)は、反応性ブラックインク全質量を基準として、0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。また、多価金属塩の形態では、反応性ブラックインク中における多価金属塩の含有量(質量%)は、反応性ブラックインク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下、さらには0.2質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0063】
(B)顔料ブラックインク中の顔料又は分散剤がカチオン性基を有し、反応性ブラックインクが反応性成分としてアニオン性成分を含有する態様。
この場合、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを混合すると、反応性ブラックインク中のアニオン性成分が顔料又は分散剤のカチオン性基と反応して、顔料の分散状態が不安定化し、顔料の凝集や沈殿が起こり、また、混合インクが増粘する。
【0064】
(C)顔料ブラックインク中の顔料がpH3乃至7で安定に分散するものであり、反応性ブラックインクのpHが8乃至11である態様。
この場合、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを混合すると、顔料ブラックインクのpHが上昇して、顔料の分散状態が不安定化し、顔料の凝集や沈殿が起こり、また、混合インクが増粘する。
【0065】
(D)顔料ブラックインク中の顔料がpH7乃至11で安定に分散するものであり、反応性ブラックインクのpHが3乃至6である態様。
この場合、顔料ブラックインクと反応性ブラックインクとを混合すると、顔料ブラックインクのpHが低下して、顔料の分散状態が不安定化し、顔料の凝集や沈殿が起こり、また、混合インクが増粘する。
【0066】
(染料)
反応性ブラックインクの色材は染料であることが必要である。反応性ブラックインクに用いる染料は、公知のものであっても、新規に合成されたものであってもよく、適宜選択して用いることができる。反応性ブラックインク中における染料の含有量(質量%)は、反応性ブラックインク全質量を基準として、0.05質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
【0067】
〔ブラック染料〕
下記に、反応性ブラックインクに用いることができるブラック染料を挙げる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
C.I.ダイレクトブラック:17、19、22、31、32、51、62、71、74、112、113、154、168、195など。C.I.アシッドブラック:2、48、51、52、110、115、156など。C.I.フードブラック:1、2など。また、下記一般式(2)で表される化合物又はその塩、下記一般式(3)で表される化合物又はその塩。
【0068】

(一般式(2)中、R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1乃至4のアルキル基;又は炭素数1乃至4のアルコキシ基である。R3及びR4はそれぞれ独立に、水素原子;炭素数1乃至4のアルキル基;炭素数1乃至4のアルコキシ基;ヒドロキシル基。又は、ヒドロキシル基若しくは炭素数1乃至4のアルコキシ基で置換されていてもよい炭素数1乃至4のアルキル基;ヒドロキシル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されていてもよい炭素数1乃至4のアルコキシ基。又は、アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基である。nは0又は1である。)なお、一般式(2)におけるn=0とは、SO3Hの位置がHであることを示す。
【0069】

(一般式(3)中、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立に、水素原子;ニトロ基;ヒドロキシル基;アミノ基;カルボキシル基;スルホン酸基;炭素数1乃至4のアルキル基。又は、炭素数1乃至4のアルコキシ基;ヒドロキシル基、炭素数1乃至4のアルコキシ基、スルホン酸基若しくはカルボキシル基で置換されているアルコキシ基;カルボキシル基若しくはスルホン酸基でさらに置換されてもよい炭素数1乃至4のアルコキシ基。又は、フェニル基、アルキル基若しくはアシル基によって置換されているアミノ基である。nは0又は1である。)なお、一般式(3)におけるn=0とは、SO3Hの位置がHであることを示す。
【0070】
以下に、一般式(2)で表される化合物又はその塩の具体例として例示化合物Bk1〜Bk3、また、一般式(3)で表される化合物又はその塩の具体例として例示化合物Bk4〜Bk6を示す。なお、例示化合物Bk1〜Bk6は遊離酸の形式で示す。本発明においては、一般式(2)で表される化合物又はその塩が例示化合物Bk1であることが特に好ましく、また、一般式(3)で表される化合物又はその塩が例示化合物Bk4であることが特に好ましい。また、染料は同時に2種類以上を用いてもよく、本発明では、例示化合物Bk1及び例示化合物Bk4を組み合わせて用いることが特に好ましい。
【0071】

【0072】

【0073】
本発明で用いる反応性ブラックインクは、上記で挙げたブラック染料に限られず、ブラックの色調を有するインクであればよい。例えば、イエロー、マゼンタ、シアン、レッド、グリーン、ブルーなどの染料の少なくとも1種を混合した、いわゆる調色ブラックインクとすることもできる。このような場合、反応性ブラックインク中における染料の含有量の合計(質量%)は、反応性ブラックインク全質量を基準として、0.05質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。下記に、本発明で用いることができる染料の具体例を色調ごとに挙げる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。
【0074】
〔イエロー染料〕
C.I.ダイレクトイエロー:8、11、12、27、28、33、39、44、50、58、85、86、87、88、89、98、100、110、132、173など。C.I.アシッドイエロー:1、3、7、11、17、23、25、29、36、38、40、42、44、76、98、99など。C.I.フードイエロー:3など。下記一般式(4)で表される化合物。
【0075】

(一般式(4)中、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミンのカチオン、又はアンモニウムイオンであり、nはそれぞれ独立に1又は2である。)
【0076】
前記一般式(4)で表される化合物の具体例は、下記表1の構造を有する例示化合物Y1〜Y4が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。なお、表1においては、便宜上、下記一般式(5)に示すようにA環及びB環として、スルホン酸基の置換位置を示す。スルホン酸基の置換位置は下記一般式(5)で定義した通りである。
【0077】

(一般式(5)中、Mはそれぞれ独立に、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、有機アミンのカチオン、又はアンモニウムイオンであり、nはそれぞれ独立に1又は2である。)
【0078】

【0079】
前記一般式(4)で表される化合物の好ましい具体例には、下記の例示化合物Y1が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。
【0080】

【0081】
〔マゼンタ染料〕
C.I.ダイレクトレッド:2、4、9、11、20、23、24、31、39、46、62、75、79、80、83、89、95、197、201、218、220、224、225、226、227、228、229、230など。C.I.アシッドレッド:6、8、9、13、14、18、26、27、32、35、42、51、52、80、83、87、89、92、106、114、115、133、134、145、158、198、249、265、289など。C.I.フードレッド:87、92、94など。C.I.ダイレクトバイオレット:107など。下記一般式(6)で表される化合物又はその塩。
【0082】

(一般式(6)中、R1は、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、シクロヘキシル基、モノ若しくはジアルキルアミノアルキル基、又はシアノアルキル基である。R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1乃至8のアルキル基、又はカルボキシル基(ただし、R2、R3、R4、R5及びR6すべてが水素原子である場合を除く。)である。)
【0083】
下記の例示化合物M1〜M7は、前記一般式(6)で表される化合物又はその塩の好ましい例示化合物である。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。なお、下記例示化合物M1〜M7において可溶化基は全てH型で記載してあるが、塩を形成していてもよい。本発明においては、これらの例示化合物の中でも特に、例示化合物M1を用いることが好ましい。
【0084】

【0085】
〔シアン染料〕
C.I.ダイレクトブルー:1、15、22、25、41、76、77、80、86、90、98、106、108、120、158、163、168、199、226、307など。C.I.アシッドブルー:1、7、9、15、22、23、25、29、40、43、59、62、74、78、80、90、100、102、104、112、117、127、138、158、161、203、204、221、244など。下記一般式(7)で表される化合物。
【0086】

(一般式(7)中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。R1及びR2はそれぞれ独立に、水素原子、スルホン酸基、カルボキシル基(ただし、R1及びR2が同時に水素原子となる場合を除く。)である。Yは塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、ヒドロキシアルキルアミノ基、カルボキシアルキルアミノ基又はスルホニルアルキルアミノ基である。l、m、nはそれぞれ、l=0乃至2、m=1乃至3、n=1乃至3(ただし、l+m+n=3乃至4)であり、置換基の置換位置は4位又は4’位である。)
【0087】
上記色材は、一般式(7)における4位又は4’位のみに、無置換スルファモイル基(−SO2NH2)又は置換スルファモイル基(下記一般式(8)で表される基)を選択的に導入したフタロシアニン誘導体である。なお、一般式(7)で表される化合物の合成には、4−スルホフタル酸誘導体、又は、4−スルホフタル酸誘導体及び(無水)フタル酸誘導体を、金属化合物の存在下で反応することで得られるフタロシアニン化合物を原料に用いる。さらに、前記フタロシアニン化合物におけるスルホン酸基をクロロスルホン酸基に変換した後、有機アミンの存在下でアミノ化剤を反応して得られる。
【0088】

【0089】
一般式(8)で表される基(置換スルファモイル基)の好ましい具体例を以下に示す。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。なお、一般式(8)で表される置換スルファモイル基は、遊離酸の形で示す。
【0090】

【0091】
一般式(7)で表される化合物の好ましい具体例は、上記例示置換基1が置換した化合物、すなわち、下記例示化合物C1が挙げられる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。なお、下記の構造式中、Mはアルカリ金属又はアンモニウムである。
【0092】

【0093】
(レッド染料)
C.I.アシッドオレンジ:7、8、10、12、24、33、56、67、74、88、94、116、142など。C.I.アシッドレッド:111、114、266、374など。C.I.ダイレクトオレンジ:26、29、34、39、57、102、118など。C.I.フードオレンジ:3など。C.I.リアクティブオレンジ:1、4、5、7、12、13、14、15、16、20、29、30、84、107など。C.I.ディスパースオレンジ:1、3、11、13、20、25、29、30、31、32、47、55、56など。
【0094】
(グリーン染料)
C.I.アシッドグリーン:1、3、5、6、9、12、15、16、19、21、25、28、81、84など。C.I.ダイレクトグリーン:26、59、67など。C.I.フードグリーン:3など。C.I.リアクティブグリーン:5、6、12、19、21など。C.I.ディスパースグリーン:6、9など。
【0095】
(ブルー染料)
C.I.アシッドブルー:62、80、83、90、104、112、113、142、203、204、221、244など。C.I.リアクティブブルー:49など。C.I.アシッドバイオレット:17、19、48、49、54、129など。C.I.ダイレクトバイオレット:9、35、47、51、66、93、95、99など。C.I.リアクティブバイオレット:1、2、4、5、6、8、9、22、34、36など。C.I.ディスパースバイオレット:1、4、8、23、26、28、31、33、35、38、48、56など。
【0096】
[非反応性カラーインク]
本発明においては、上述の顔料ブラックインクや反応性ブラックインクの他に、その他のインクを組み合わせて用いることができる。本発明におけるその他のインクとは、例えば、多価金属などを含有しない、すなわち、顔料ブラックインクと反応しないインク(非反応性カラーインク)を含む。非反応性カラーインクの染料は、公知のものであっても、新規に合成されたものであってもよく、適宜選択して用いることができる。具体的には、上記した反応性ブラックインクに用いることができる染料として挙げたものなどを用いることができる。勿論、本発明はこれらに限られるものではない。非反応性カラーインク中における染料の含有量(質量%)は、非反応性カラーインク全質量を基準として、0.05質量%以上15.0質量%以下であることが好ましい。
【0097】
以下、顔料ブラックインク、反応性ブラックインク及び非反応性カラーインクにおいて共通に用いることができる成分について説明する。
[各インクの水性媒体]
上述の顔料ブラックインク、反応性ブラックインク、非反応性カラーインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることが好ましい。水は、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、脱イオン水を用いることが好ましい。水溶性有機溶剤は、具体的には、例えば、以下のものを用いることができる。下記の水溶性有機溶剤は、単独でも又は混合物としても用いることができる。
【0098】
メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコールなどの炭素数1乃至6のアルキルアルコール類。ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類。アセトン、ジアセトンアルコールなどのケトン又はケトアルコール類。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール類。エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコールなどのアルキレン基の炭素数が2乃至6のアルキレングリコール類。ポリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのアルキルエーテルアセテート類。グリセリン。エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテルなどの多価アルコールのアルキルエーテル類。N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど。
【0099】
各インク中における水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下、さらには3.0質量%以上40.0質量%以下であることが好ましい。また、各インク中における水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、30.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。
【0100】
[その他の成分]
各インクには、保湿性維持のために、前記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性化合物を用いてもよい。インク中における保湿性化合物の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上20.0質量%以下、さらには、3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
【0101】
さらに、各インクは、所望の物性値を持つインクとするために上記成分以外にも必要に応じて種々の化合物を含有してもよい。具体的には、例えば、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマーなどの種々の添加剤を含有してもよい。
【0102】
例えば、界面活性剤は、以下のアニオン性界面活性剤又はノニオン性界面活性剤などの、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。アニオン性界面活性剤は、脂肪酸塩類、高級アルコール硫酸エステル塩類、脂肪油硫酸エステル塩類、アルキルアリルスルホン酸塩類などが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル類、アセチレンアルコール、アセチレングリコールなどが挙げられる。上記の中でも、アセチレンアルコール類やアセチレングリコール類は、普通紙への浸透性に優れた効果を発揮するため、特に好ましい。
【0103】
また、顔料ブラックインクは、鮮鋭な文字品位や高い画像濃度を得るために、記録媒体への浸透性が比較的小さい、所謂上乗せ系インクとすることが好ましい。具体的には、顔料ブラックインクの表面張力が、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましい。反応性ブラックインクは、ブリーディングを抑制するために、記録媒体への浸透性が比較的大きい、所謂浸透系インクとすることが好ましい。具体的には、反応性ブラックインクの表面張力が、20mN/m以上40mN/m以下であることが好ましい。さらに、本発明の効果を得るためには、反応性ブラックインクの表面張力が、顔料ブラックインクの表面張力よりも小さくなるように調整される。具体的には、反応性ブラックインクの表面張力が、顔料ブラックインクの表面張力よりも5mN/m以上10mN/m以下の範囲で小さいことが好ましい。なお、各インクの表面張力は水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類やその含有量などにより適宜調整することが好ましい。
【0104】
なお、本発明において、反応性ブラックインクは、記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させる往復走査のそれぞれにおいて顔料を含有する顔料ブラックインクを付与してブラック画像を形成するインクジェット記録装置に用いられることが好ましい。そして、反応性ブラックインクは、前記顔料ブラックインクと少なくとも一部が重なるように前記ブラック画像の形成にあたって往復走査のそれぞれにおいて付与されることが好ましい。
【0105】
<画像形成装置>
本発明にかかる画像形成装置は、以下の構成を有することを特徴とする。すなわち、顔料を含有する顔料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドを有する。また、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドを有する。また、前記顔料ブラックインク及び前記染料ブラックインクを順不同で少なくとも一部が重なるように付与して画像を形成するための手段を有する。また、本発明の画像形成装置は、前記顔料ブラックインクと前記染料ブラックインクとをそれぞれ純水で2,000倍に希釈した各インクについて測定したCIELab色空間における明度の差の絶対値が20以内であることが好ましい。なお、前記染料ブラックインクとは、上記で説明した反応性ブラックインクのことである。
【0106】
上記で説明した反応性ブラックインクや顔料ブラックインクを用いて記録を行うのに好適な画像形成装置として、往復記録ができるインクジェット記録装置について、図5及び図6を用いて説明する。
【0107】
図5はインクジェット記録装置の一例を示す概略説明図である。シャーシ10は、所定の剛性を有する複数の板状金属部材で構成され、インクジェット記録装置の骨格をなす。シャーシ10には、記録媒体を給送する給送部11、記録媒体を所定の記録位置へ導くと共に排出部12へ導く搬送部13、記録媒体に所定の記録を行う記録部、記録部の回復動作を行うヘッド回復部14とが組み込まれている。記録部は、キャリッジ軸15に沿って走査可能に支持されたキャリッジ16、キャリッジ16にヘッドセットレバー17を介して着脱可能に搭載される記録ヘッドカートリッジ、記録ヘッドカートリッジを所定位置に位置決めするキャリッジカバー20を有する。記録ヘッドカートリッジに対するキャリッジ16の別の係合部には、コンタクトフレキシブルプリントケーブル(以下、コンタクトFPCと略す)22の一端部が連結されている。コンタクトFPC22の端部に形成されたコンタクト部と、記録ヘッドカートリッジに設けられた外部信号入力端子であるコンタクト部301とが電気的に接触して各種の情報の授受や記録ヘッドカートリッジへの電力の供給などを行うようになっている。
【0108】
図6は記録ヘッドカートリッジの一例を示す概略説明図である。ここでは、インクセットの一例として、非反応性シアンインク、非反応性イエローインク、非反応性マゼンタインク、反応性ブラックインク、及び顔料ブラックインクを用いる場合を例に挙げて説明する。また、図6中において、101、102、103、104、及び105はそれぞれ、反応性ブラックインク用、非反応性シアンインク用、非反応性マゼンタインク用、非反応性イエローインク用及び顔料ブラックインク用の記録ヘッドである。図6中において、201及び205はそれぞれ反応性ブラックインクの吐出口列及び顔料ブラックインクの吐出口列である。図6に示した記録ヘッドにおいては、電気的接点301を通して記録信号などの電気信号のやりとりが行われる。染料インクを吐出する記録ヘッドは、インク1滴当たりの質量が5ng以下、さらには4ng以下、特には2ng以下となるように構成されていることが好ましい。また、顔料インクを吐出する記録ヘッドは、インク1滴当たりの質量が50ng以下、さらには30ng以下となるように構成されていることが好ましい。
【0109】
なお、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じて膜沸騰をインクに対して生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うバブルジェット(登録商標)方式の記録ヘッドについて一例を挙げて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、所謂オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能である。オンデマンド型の場合には、記録情報に対応して核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を電気熱変換体に印加することによって熱エネルギーを発生させる。これにより、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出口を介してインクを吐出して、インク滴を形成する。この駆動信号をパルス形状とすると、即時適切に気泡の成長、収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
【0110】
また、第二の力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の形態は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。この形態においては、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクを吐出する。
【0111】
また、インクジェット記録装置は、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものであっても、それらが分離不能に一体になったものであっても用いることができる。また、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、又はインクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。さらに、記録ヘッドに対して好ましい負圧を作用するための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収納部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などを採用することができる。また、インクジェット記録装置は、上述のようにシリアル記録方式を採るものが好ましいが、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列してなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
【実施例】
【0112】
以下、実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下の記載で「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
【0113】
<顔料分散液の調製>
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノ−1,2−ベンゼンジカルボン酸1.5gを加えた。次に、この溶液の入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態とし、これに5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かした溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥して、自己分散型カーボンブラックを調製した。得られた自己分散型カーボンブラックについて、イオン交換法によりナトリウムイオンをアンモニウムイオンに置換した。さらに、得られた自己分散型カーボンブラックに水を加えて顔料濃度が10%となるように分散して、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に−C63−(COONH42基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックが水中に分散された状態の顔料分散液を得た。
【0114】
上記で調製した自己分散型カーボンブラックのイオン性基密度を測定したところ、3.1μmol/m2であった。この際に用いたイオン性基密度の測定方法は、上記で調製した自己分散型カーボンブラック(ナトリウム塩型)のナトリウムイオン濃度をイオンメーター(東亜DKK製)を用いて測定し、その値から自己分散型カーボンブラックのイオン性基密度に換算した。
【0115】
<染料の合成>
(ブラック染料1の合成)
下記の化合物Aを、炭酸ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、さらに塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、6−フェニルアミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸水溶液を添加して、炭酸ナトリウムの存在下で溶解して、溶液Bを得た。次に、2−アミノスルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。次に、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸を、水酸化ナトリウムの存在下で溶解して、無水酢酸を添加して、アセチル化を行った。ここに上記で得られたジアゾ混濁液を、炭酸ナトリウムの存在下で滴下して、カップリング反応を行い、反応液Cを得た。この反応液Cに、水酸化ナトリウム、次いで塩化ナトリウムを添加して塩析を行い、化合物を得た。この化合物を水酸化ナトリウムの存在下で、水に溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、炭酸ナトリウムの存在下で、溶液Bを滴下して、カップリング反応を完結して、反応液を得た。この反応液を塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過を行うことにより化合物Dを得た。N,N−ジメチルホルムアミドに、2−ニトロ−4−クレゾール、トルエン、水酸化カリウムを添加して、トルエンとの共沸により水を留去して、プロパンスルトンを滴下した。その後、水酸化ナトリウムを添加して、これを濃縮後、オートクレーブにて、パラジウムカーボンを添加して、水素ガスを封入して溶液を得た。これを、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することでジアゾ化を行い、上記で得られた反応液Cを滴下して、水酸化ナトリウムの存在下でカップリング反応を完結して、反応液を得た。この反応液に塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加することによりジアゾ化を行い、このジアゾ混濁液を、前記化合物Dを溶解した水溶液に添加して、カップリング反応を完結した。これを塩化ナトリウムにより塩析した後、ろ過、洗浄を行うことにより、ブラック染料1(例示化合物Bk1のナトリウム塩)を得た。
【0116】

【0117】

【0118】
(ブラック染料2の合成)
下記の化合物Eを、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、さらに亜硝酸ナトリウム水溶液を添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,5−ジスルホン酸のアルカリ水溶液に滴下してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行い、化合物Fを得た。次いで、化合物Fを、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加してジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液に、8−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3,6−ジスルホン酸、炭酸ナトリウムを添加して、終夜撹拌して反応液Gを得た。次に、1−アミノ−2−ベンゼンスルホン酸を、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、さらに亜硝酸ナトリウム水溶液を添加して、ジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、6−アミノ−1−ヒドロキシナフタレン−3−スルホン酸のアルカリ水溶液に滴下してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行い、化合物Hを得た。次いで、化合物Hを、水酸化ナトリウムを添加した水に加えて溶解して、塩酸、亜硝酸ナトリウムを添加してジアゾ化を行った。このジアゾ混濁液を、前記反応液Gに添加してカップリング反応を行い、塩化ナトリウムで塩析した後、ろ過、洗浄を行うことにより、下記のブラック染料2(例示化合物Bk4のナトリウム塩)を得た。
【0119】

【0120】

【0121】
<インクの調製>
下記表2及び表3の上段に示す各成分を混合して、充分に撹拌して溶解又は分散した後、顔料ブラックインクはポアサイズ0.3μm、それ以外のインクはポアサイズ0.2μmのミクロフィルター(富士フイルム製)にて加圧ろ過を行い、インクを調製した。なお、下記表2及び表3中、アセチレノールE100とは、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物(界面活性剤;川研ファインケミカル製)である。
【0122】
また、各インクを、純水を用いて2,000倍(質量倍)に希釈した後、CIELab色空間における明度を紫外可視分光光度計L−4200(日立製作所製)を用いてそれぞれ測定した。そして、顔料ブラックインク(PigBkインク)と、インク1〜9のそれぞれとの明度の差の絶対値を求めた。得られた結果を表3の下段に併せて示す。さらに、各インクについて、25℃における表面張力を、協和CBVP式表面張力計A−1型(協和科学製)を用いて測定した。得られた結果を表2及び表3の下段に併せて示す。
【0123】

【0124】

【0125】
<評価>
(色むら及び白もや)
下記表4の左側に示す先打ちインク及び後打ちインクを組み合わせて用いて、顔料ブラックインクを付与する領域に、他のインクを重ねて付与する画像形成方法により、ブラックのベタ画像を形成した。画像形成装置には、往復記録ができるBJF850(キヤノン製)を改造したものを用いた。記録媒体は、高発色普通紙スーパーホワイトペーパーSW101(キヤノン製)を用いた。なお、各インクは、下記表4に示す先打ちインク、後打ちインク、の順序で記録媒体に重ねて付与した。また、画像の形成は、1パス往復記録で行った。この際のインクの付与量は、1/600インチ平方あたりに、顔料ブラックインクを約28ng、その他のインクを約2ngとした。
【0126】
上記で得られた画像について、往記録で形成した画像と復記録で形成した画像とを目視で確認して、これらの画像を比較することにより、色むらの評価を行った。色むらの評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
○:色むらがほとんど目立たなかった。
×:色むらが目立った。
【0127】
また、上記で得られた画像について、白もやの状態を目視で確認して、白もやの評価を行った。白もやの評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
○:白もやがほとんど目立たなかった。
×:白もやが目立った。
【0128】
(耐ブリーディング性)
上記と同様のブラックのベタ画像に、カラーインクで形成したベタ画像が隣接する画像を形成した。この際、カラーインクには、イエローの非反応性カラーインクであるインク10を用いた。画像形成装置は、往復記録ができるBJF850(キヤノン製)を改造したものを用いた。記録媒体は、高発色普通紙スーパーホワイトペーパーSW101(キヤノン製)を用いた。また、画像の形成は、1パス往復記録で行った。カラーのベタ画像を形成する際のインクの付与量は、1/600インチ平方あたりに、約14ngとした。
【0129】
上記で得られた画像について、ブラックのベタ画像とカラーのベタ画像との境界部におけるにじみの程度を目視で確認して耐ブリーディング性の評価を行った。耐ブリーディング性の評価基準は以下の通りである。評価結果を表4に示す。
○:ブリーディングがほとんど目立たなかった。
×:ブリーディングが目立った。
【0130】

【符号の説明】
【0131】
10:シャーシ
11:給送部
12:排出部
13:搬送部
14:ヘッド回復部
15:キャリッジ軸
16:キャリッジ
17:ヘッドセットレバー
20:キャリッジカバー
22:コンタクトフレキシブルプリントケーブル(コンタクトFPC)
101:反応性ブラックインク用記録ヘッド
102:シアンインク用記録ヘッド
103:マゼンタインク用記録ヘッド
104:イエローインク用記録ヘッド
105:顔料ブラックインク用記録ヘッド
201:反応性ブラックインクの吐出口列
205:顔料ブラックインクの吐出口列
301:電気的接点
1000:記録媒体
1100:顔料ブラックインク
1101:顔料ブラックインク中の顔料
1102:記録媒体に浸透した顔料ブラックインク中の水性媒体
1200:反応性カラーインク
1201:反応性カラーインク中の染料
1202:反応性成分
1203:記録媒体に浸透した反応性カラーインク
1300:反応性ブラックインク
1301:反応性ブラックインク中の染料
1302:記録媒体に浸透した反応性ブラックインク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含有する顔料ブラックインクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクと、を順不同で少なくとも一部が重なるように記録媒体に付与して画像を形成する工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記顔料ブラックインクと前記染料ブラックインクとをそれぞれ純水で2,000倍に希釈した各インクについて測定したCIELab色空間における明度の差の絶対値が20以内である請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
顔料を含有する顔料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクを吐出するための記録ヘッドと、前記顔料ブラックインク及び前記染料ブラックインクを順不同で少なくとも一部が重なるように記録媒体に付与して画像を形成するための手段と、を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記顔料ブラックインクと前記染料ブラックインクとをそれぞれ純水で2,000倍に希釈した各インクについて測定したCIELab色空間における明度の差の絶対値が20以内である請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
記録媒体上に、顔料を含有する顔料ブラックインクと、前記顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及び染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低い染料ブラックインクとを順不同で記録媒体上において少なくとも一部が重なるように付与して、これらのインクが重なる部分の画像の品質を改善する画像の品質改善方法。
【請求項6】
記録ヘッドを記録媒体に対して相対的に移動させる往復走査のそれぞれにおいて顔料を含有する顔料ブラックインクを付与してブラック画像を形成するインクジェット記録装置に用いられ、前記顔料ブラックインクと記録媒体において少なくとも一部が重なるように前記ブラック画像の形成にあたって往復走査のそれぞれにおいて付与されるブラックインクであって、
前記顔料ブラックインクに含有される顔料の分散状態を不安定化する反応性成分及びブラック染料を含有し、かつ前記顔料ブラックインクよりも表面張力が低いことを特徴とするブラックインク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188702(P2010−188702A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38253(P2009−38253)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】