説明

画像形成方法

【課題】 長期間にわたって、特に200万枚のプリント後においても、黒ポチなどの感光体の摩耗に起因する画像欠陥が抑制されると共に十分に高い画像濃度の画像を得ることができる画像形成方法の提供。
【解決手段】 画像形成方法は、電子写真用感光体上に形成された静電潜像を電子写真用トナーにより顕像化させたトナー像を転写材に転写する工程と、転写されずに前記電子写真用感光体上に残留した電子写真用トナーをクリーニングブレードによって除去する工程とを少なくとも含む方法であって、前記電子写真用トナーは、少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、感光体の耐摩耗性を向上させてクリーニングブレードによるクリーニングを良好に行うために、例えばトナーとして脂肪酸金属塩が添加されてなるものを用いるなど、感光体の表面に脂肪酸金属塩を展延させることが行われている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
感光体に脂肪酸金属塩を展延させることにより、当該感光体の表面の接触角を大きなものとすることができ、これによりトナーが感光体に付着しにくくなるため、クリーニングブレードにかける荷重を小さく設定することができる。その結果、感光体とクリーニングブレードとの摩擦が小さいものとなり、結局、感光体の磨耗が抑制される。
【0003】
しかしながら、昨今、環境負荷の抑制などのために、さらなる高耐久化(長寿命化)が図られた感光体、特に200万枚以上のプリントを行うことのできる感光体が求められているところ、脂肪酸金属塩の添加による感光体の摩耗の抑制のみによってはこの要請に応えることができない。
【0004】
【特許文献1】特開2006−17934号公報
【特許文献2】特開2007−94240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、長期間にわたって、特に200万枚のプリント後においても、黒ポチなどの電子写真用感光体(以下、単に「感光体」ともいう。)の摩耗に起因する画像欠陥が抑制されると共に十分に高い画像濃度の画像を得ることができる画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成方法は、電子写真用感光体上に形成された静電潜像を電子写真用トナーにより顕像化させたトナー像を転写材に転写する工程と、転写されずに前記電子写真用感光体上に残留した電子写真用トナーをクリーニングブレードによって除去する工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真用トナーは、少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の画像形成方法においては、前記電子写真用感光体が、その表面層に無機微粒子が含有されてなるものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明の画像形成方法においては、前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径が、個数基準のメジアン径で0.8〜8.0μmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像形成方法によれば、電子写真用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)が脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであるために、長期間にわたって、特に200万枚のプリント後においてもクリーニングブレードによる良好なクリーニングが行われ、その結果、黒ポチなどの感光体の摩耗に起因する画像欠陥の発生が抑制され、従って、良好な画質の画像を長期間にわたって安定的に形成することができる。
【0010】
トナーに脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子が共に外添されることによりクリーニングブレードによる良好なクリーニングが行われる理由としては、明確ではないが、クリーニングブレードの先端部分と感光体の表面との間にフッ素系樹脂粒子によるせき止め層が形成され、このせき止め層により、感光体の表面に残留したトナーや外添剤がせき止められるので、低荷重で十分なクリーニングを行うことができるため、クリーニングブレードにかける荷重を低いものとすることができ、従って感光体の回転に必要なトルクも低減され、結局、感光体とクリーニングブレードとの摩擦力が小さいものとなって当該感光体の表面の磨耗が抑制される結果、感光体に高い耐久性が得られるものと推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の画像形成方法および画像について詳細に説明する。
【0012】
本発明の画像形成方法は、感光体上に形成された静電潜像を特定のトナーにより顕像化させたトナー像を転写材に転写する工程と、転写されずに前記感光体上に残留した残留トナーをクリーニングブレードによって除去する工程とを少なくとも含む方法であって、用いる特定のトナーが、少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする方法である。
【0013】
〔トナー〕
本発明の画像形成方法に用いられる特定のトナーは、少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであって、具体的には、少なくとも樹脂を含有し、さらに所望に応じて着色剤、離型剤、荷電制御剤などを含有するトナー母体粒子に、外添剤として少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子が添加されているトナー粒子よりなるものである。
【0014】
〔フッ素系樹脂粒子〕
本発明の画像形成方法に用いられる特定のトナーに外添剤として添加されるフッ素系樹脂粒子は、その平均粒径が個数基準のメジアン径で0.8〜8.0μmのものであることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0μmである。
フッ素系樹脂粒子が個数基準のメジアン径で上記の範囲の平均粒径のものであることにより、クリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間に適当なせき止め層を形成することができ、これにより、残留トナーや脱離した外添剤などによる感光体10の表面の摩耗を抑制することができる。一方、フッ素系樹脂粒子が個数基準のメジアン径で0.8μm未満である場合は、当該フッ素系樹脂粒子がクリーニングブレード19と感光体10との当接部分に入り込んで力が加えられることにより、当該感光体10の表面が摩耗するおそれがある。また、フッ素系樹脂粒子が個数基準のメジアン径で8.0μmを超える場合は、所望の位置、すなわちクリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間にせき止め層を形成することができないおそれがある。
【0015】
フッ素系樹脂粒子の個数基準のメジアン径(D50)は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、フッ素系樹脂粒子0.02gを、界面活性剤溶液20mL(フッ素系樹脂粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、フッ素系樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を30μmにし、測定範囲である0.6〜18μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、個数積算分率の大きい方から50%の粒子径が個数基準のメジアン径とされる。
【0016】
フッ素系樹脂粒子を構成するフッ素系樹脂としては、例えばポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデンなどが挙げられる。
フッ素系樹脂粒子としては、上記のフッ素系樹脂を1種単独でまたは2種以上を混合して形成されたものを用いることができ、また、異なる種類のフッ素系樹脂による粒子を、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0017】
これらのフッ素系樹脂粒子の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.3〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量部である。
フッ素系樹脂粒子の添加量がトナー母体粒子に対して上記の範囲にある場合は、クリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間に適当なせき止め層を形成することができ、これにより、残留トナーや脱離した外添剤などによる感光体10の表面の摩耗を抑制することができる。一方、フッ素系樹脂粒子の添加量がトナー母体粒子に対して過多である場合は、フッ素系樹脂粒子同士の凝集が発生して所望の位置、すなわちクリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間にせき止め層を形成することができず、さらに形成された凝集粒子により感光体10の表面の摩耗が発生するおそれがあり、また、フッ素系樹脂粒子の添加量がトナー母体粒子に対して過少である場合は、形成されるせき止め層に抜け穴が形成されて残留トナーや脱離した外添剤などがすり抜け、クリーニングブレード19と感光体10との当接部分に入り込んで力が加えられることにより当該感光体10の表面を摩耗するおそれがある。
【0018】
〔脂肪酸金属塩〕
本発明の画像形成方法に用いられる特定のトナーに外添剤として添加される脂肪酸金属塩としては、特に限定されずに公知の種々のものを用いることができ、例えば、炭素数4〜60、好ましくは6〜40、より好ましくは8〜35の飽和または不飽和の脂肪酸の金属塩を好適に使用することができる。
脂肪酸金属塩の脂肪酸部分を得るための脂肪酸としては、具体的には、例えば酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸およびモンタン酸などの1価の飽和脂肪酸;アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸およびセバシン酸などの多価の飽和脂肪酸;クロトン酸およびオレイン酸などの1価の不飽和脂肪酸;マレイン酸およびシトラコン酸などの多価の不飽和脂肪酸を挙げることができる。
また、脂肪酸金属塩の金属塩部分を得るための金属としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、銅、ルビジウム、銀、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、アルミニウム、鉄、コバルト、ニッケルの塩およびその混合物などを挙げることができる。
脂肪酸金属塩としては、上記のものを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
特定のトナーに添加される脂肪酸金属塩としては、脂肪酸部分がステアリン酸によるものであることが特に好ましく、金属塩部分が亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウムの中から選ばれるものによるものであることが好ましい。特定のトナーに添加される脂肪酸金属塩としては、特にステアリン酸亜鉛を用いることが好ましい。
【0019】
脂肪酸金属塩は、粒子形状のものであることが好ましく、その平均粒径が体積基準のメジアン径で1〜20μmのものであることが好ましく、より好ましくは3〜15μmである。
脂肪酸金属塩の粒子が体積基準のメジアン径で上記の範囲の平均粒径のものであることにより、感光体10の表面に極めて薄い脂肪酸金属塩の層を高い均一性で形成させることができ、これにより、クリーニングブレード19、フッ素系樹脂粒子などによる感光体10の表面の摩耗を抑制することができる。一方、脂肪酸金属塩の粒子が体積基準のメジアン径で1μm未満である場合は、感光体10の表面上においてトナー粒子から当該脂肪酸金属塩の粒子が離脱されにくく、従って、脂肪酸金属塩による潤滑作用を十分に得ることができず、感光体10の表面の摩耗を十分に抑制することができないおそれがある。また、脂肪酸金属塩の粒子が体積基準のメジアン径で20μmを超える場合は、形成される脂肪酸金属塩の層が、高い均一性のものとならず、脂肪酸金属塩の層の形成されないまたは過度に薄い部分においては脂肪酸金属塩による潤滑作用を十分に得ることができず、感光体10の表面の摩耗を十分に抑制することができないおそれがある。
【0020】
脂肪酸金属塩の粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、脂肪酸金属塩の粒子0.02gを、界面活性剤溶液20mL(脂肪酸金属塩の粒子の分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、脂肪酸金属塩の粒子の分散液を調製し、この分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
【0021】
これらの脂肪酸金属塩の添加量は、トナー母体粒子100質量部に対して0.02〜0.5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.3質量部である。
脂肪酸金属塩の添加量がトナー母体粒子に対して上記の範囲にある場合は、感光体10の表面に極めて薄い脂肪酸金属塩の層を高い均一性で形成させることができ、これにより、クリーニングブレード19、フッ素系樹脂粒子などによる感光体10の表面の摩耗を抑制することができる。一方、脂肪酸金属塩の添加量がトナー母体粒子に対して過多である場合は、脂肪酸金属塩によるフィルミング現象が発生するおそれがあり、また、脂肪酸金属塩の添加量がトナー母体粒子に対して過少である場合は、脂肪酸金属塩による潤滑作用を十分に得ることができず、感光体10の表面の摩耗を十分に抑制することができないおそれがある。
【0022】
特定のトナーに外添される脂肪酸金属塩の量に対するフッ素系樹脂粒子の量は、その質量比が1〜50であることが好ましく、より好ましくは3〜40である。脂肪酸金属塩の量に対するフッ素系樹脂粒子の量が過多である場合は、フッ素系樹脂粒子による感光体10の表面の摩耗が生じるおそれがある。一方、脂肪酸金属塩の量に対するフッ素系樹脂粒子の量が過少である場合は、フィルミング現象が発生するおそれがある。
【0023】
〔その他の外添剤〕
本発明の画像形成方法に用いられる特定のトナーとしては、上記のフッ素系樹脂粒子および脂肪酸金属塩の他に、流動性、帯電性などを改良するために、いわゆる後処理剤である流動化剤などを外添剤として1種単独でまたは2種以上を組み合わせて添加することもできる。
【0024】
後処理剤としては、例えば、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。
【0025】
その他の外添剤の添加量は、当該その他の外添剤の合計が、トナー母体粒子100質量部に対して0.05〜10質量部、好ましくは0.1〜5質量部とされる。
【0026】
〔トナー母体粒子の製造方法〕
外添剤を添加する前の、トナー母体粒子を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、粉砕法、乳化分散法、懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、その他の公知の方法などが挙げられ、特に、微粉の形成が抑制され、また、小粒径のものを容易に得ることができるため、乳化重合凝集法によって得られたトナー母体粒子を用いることが好ましい。
【0027】
トナー母体粒子が粉砕法、乳化分散法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂として、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂、オレフィン系樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルフォン、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などの公知の種々の樹脂を用いることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
一方、トナー母体粒子が懸濁重合法、分散重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法などによって製造される場合には、トナー母体粒子を構成する樹脂を得るための重合性単量体として、例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0029】
また、重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0030】
〔着色剤〕
トナー母体粒子が着色剤を含有するものとして構成される場合において、着色剤としては特に限定されず、公知の種々のものを用いることができる。
着色剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.5〜20質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは2〜10質量部である。
【0031】
〔離型剤〕
トナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成される場合において、離型剤としては特に限定されず、公知の種々のワックスを用いることができる。ワックスとしては、特に低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、または酸化型のポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン系ワックスを用いることが好ましい。
このようにトナー母体粒子が離型剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの定着性が向上される。
離型剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.1〜30質量部添加されていることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
【0032】
〔トナー粒子の粒径〕
トナー粒子の粒径は、体積基準のメジアン径で3.0〜8.0μmであることが好ましい。体積基準のメジアン径が3.0〜8.0μmであることにより、細線の再現性や、写真画像の高画質化が達成できて高画質の印画物が得られる。
【0033】
トナーの体積基準のメジアン径(D50)は「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。具体的には、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を50μmにし、測定範囲である1〜30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径とされる。
【0034】
〔現像剤〕
以上のようなトナーは、磁性または非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。トナーを一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させて磁性一成分現像剤としたものが挙げられ、いずれも使用することができる。また、トナーを二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来から公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる樹脂分散型キャリアなど用いてもよい。
【0035】
〔画像形成装置〕
本発明の画像形成方法は、特定の有機感光体よりなる感光体10(図1参照)およびクリーニングブレード19が備えられた画像形成装置によって、行うことができる。
このような画像形成装置は、具体的には、例えば回転する感光体10を備え、この感光体10の周囲に、帯電手段、露光手段、現像手段、転写手段、分離手段およびクリーニングブレード19を有するクリーニング手段18がこの順に配設されており、さらに定着手段が設けられて構成されたものとすることができる。
【0036】
〔感光体〕
この例の画像形成方法に用いられる感光体10は、有機感光体であって、当該感光体10の表面層に、疎水化度が50以上、疎水化度分布値が25以下であり、かつ、数平均一次粒子径が3〜150nmである無機微粒子が含有されているものである。
このような無機微粒子が含有された表面層を有する感光体10によれば、形成される可視画像において画像ボケの発生が抑止され、また形成される可視画像がドット画像であっても劣化が抑止されたものが得られ、高耐久で、鮮鋭性が良好な電子写真画像を形成することができる。
なお、無機微粒子は、表面に存在する水酸基を封鎖して感光体の表面層に含有させることができることが知られており、一般に、水酸基の平均的な封鎖レベルを当該無機微粒子の疎水化度のみによって表しているが、この疎水化度のみを指標としていては、画像ボケやドット画像の劣化を抑止できない。
【0037】
ここに、「有機感光体」とは、電荷発生機能および/または電荷輸送機能を有する有機化合物が含有されて電荷発生機能および/または電荷輸送機能が発揮される構成の感光体をいい、公知の電荷発生機能を有する有機化合物(以下、「電荷発生物質」という。)および電荷輸送機能を有する有機化合物(以下、「電荷輸送物質」という。)の少なくとも一方を有して構成された感光体、電荷発生機能と電荷輸送機能とを共に有する高分子錯体を有して構成された感光体など公知の感光体を全て含有する。
【0038】
この感光体10の具体的な構成は、有機感光体として構成され、かつ、その表面層に上記の無機微粒子が含有されていれば特に制限されるものではなく、例えば、導電性支持体上に感光層として電荷発生層および複数の電荷輸送層が順次積層され、当該複数の電荷輸送層のうち、最上層のものが表面層として無機微粒子を含有するものとされた構成とすることができる。
ここに、「電荷発生層」とは、電荷発生物質が含有されて露光により電荷キャリアを発生させる機能を有する層をいい、「電荷輸送層」とは、電荷発生層において発生した電荷キャリアを、感光体10の表面に輸送する機能を有する層をいう。
以下、このような感光体10について詳細に説明する。
【0039】
〔導電性支持体〕
このような感光体10に用いられる導電性支持体としては、例えばシート状、円筒状の形状を有するものとすることができ、製造される画像形成装置を小型のものにするためには、円筒状のものであることが好ましい。円筒状の導電性支持体は、回転することによりエンドレスに画像形成に必要な領域を供与することができる。
【0040】
導電性支持体としては、アルミニウム、ニッケルなどよりなる金属ドラム;アルミニウム、酸化錫、酸化インジュウムなどを蒸着したプラスチックドラム;導電性物質を塗布した紙・プラスチックドラムなどを使用することができる。
このような導電性支持体としては、アルミニウムよりなる金属ドラムが最も好ましく挙げられる。このようなアルミニウムよりなる金属ドラムは、主成分のアルミニウム以外にマンガン、亜鉛、マグネシウムなどの成分が混合したものよりなる金属ドラムであってもよい。
【0041】
〔中間層〕
このような感光体10においては、導電性支持体と電荷発生層との間に、中間層が設けられていることが好ましい。
【0042】
中間層は、例えばN型半導性粒子がバインダー樹脂(以下、中間層に用いられるバインダー樹脂を「中間層バインダー樹脂」ともいう。)に分散されてなるものとされる。
ここに、N型半導性粒子とは、主たる電荷キャリアが電子である粒子である。従って、N型半導性粒子を絶縁性バインダーに含有させてなる中間層は、導電性支持体からのホール注入を効率的にブロックすることができ、また、電荷発生層からの電子に対してはブロッキング性が抑制された性質を有する。
【0043】
N型半導性粒子としては、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)などよりなるものが好ましく、特に酸化チタンよりなる粒子が特に好ましく用いられる。
酸化チタンよりなる粒子としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形およびアモルファス形などの結晶形のものが挙げられ、これらの中でもルチル形の酸化チタン顔料またはアナターゼ形の酸化チタン顔料は、中間層を通過する電荷キャリアの整流性を高め、すなわち電子の移動性を高め、帯電電位を安定させ、残留電位の増大を防止すると共に、ドット画像の劣化を防止することができるため、N型半導性粒子として最も好ましく用いることができる。
【0044】
N型半導性粒子は、数平均一次粒子径が3.0〜200nm、特に好ましくは5〜100nmの範囲であることが好ましい。
N型半導性粒子の数平均一次粒子径は、10,000倍に拡大した電子顕微鏡写真を使用し、ランダムに選択したN型半導性粒子100個の水平方向のフェレ方向径を測定し、その算術平均値をいう。
【0045】
N型半導性粒子は、メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体によって表面処理されたものを用いることが好ましい。メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、その分子量が1,000〜20,000であるものを用いることにより、表面処理の効果、すなわち高い整流性を有するものとなって、得られる感光体10を用いて形成された可視画像が黒ポチの発生が防止されたものとなり、また、ドット画像を形成する場合にその再現性が良好なものとなる。
【0046】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、具体的には、−(HSi(CH3 )O)−の構造単位と、これ以外のシロキサン構造単位(以下、「他のシロキサン構造単位」ともいう。)とを有する共重合体であることが好ましい。他のシロキサン構造単位としては、ジメチルシロキサン構造単位、メチルエチルシロキサン構造単位、メチルフェニルシロキサン構造単位およびジエチルシロキサン構造単位などが好ましく挙げられ、特にジメチルシロキサン構造単位が好ましい。共重合体中のメチルハイドロジェンシロキサン単位の存在割合は、10〜99モル%とされ、好ましくは20〜90モル%である。
この共重合体においては、メチルハイドロジェンシロキサン単位以外の単位が含まれていてもよい。
【0047】
メチルハイドロジェンシロキサン単位を含む重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などのいずれであってもよいが、特にランダム共重合体またはブロック共重合体であることが好ましい。
【0048】
中間層バインダー樹脂としては、N型半導性粒子が高い均一性で分散されることから、ポリアミド樹脂を用いることが好ましく、特に、アルコール可溶性ポリアミド樹脂を用いることが好ましい。
【0049】
中間層バインダー樹脂がポリアミド樹脂である場合、その分子量は数平均分子量で5,000〜80,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜60,000である。数平均分子量が5,000未満のポリアミド樹脂を用いた場合は、形成される中間層が膜厚の均一性の低いものとなる傾向がある。一方、数平均分子量が80,000より大きいポリアミド樹脂を用いた場合は、溶媒への溶解性が低いことにより、形成される中間層が、層中に凝集樹脂の発生したものとなりやすく、形成される可視画像に黒ポチが発生したり、ドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。
【0050】
このようなポリアミド樹脂は、一般的なポリアミドの合成法で合成することができる。このようなポリアミド樹脂について、市販されているものとしては、例えば、「ベスタメルトX1010」、「ベスタメルトX4685」(以上、ダイセル・デグサ(株)社製)などが挙げられる。
【0051】
中間層におけるN型半導体粒子の含有割合は、中間層バインダー樹脂100質量部に対して、100〜700質量部であることが好ましい。
【0052】
また、中間層の膜厚は、0.3〜10μmであることが好ましい。
【0053】
このような中間層は、例えば中間層塗布液を調製してこれを導電性支持体の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
中間層塗布液は、例えばN型半導性粒子および中間層バインダー樹脂を、適宜の液状媒体に溶解または分散させることにより調製される。
【0054】
〔電荷発生層〕
この例の感光体10を構成する電荷発生層は、電荷発生物質を含有するものであって、例えばバインダー樹脂(以下、電荷発生層に用いられるバインダー樹脂を「発生層バインダー樹脂」ともいう。)に電荷発生物質が分散されてなる構成ものとすることができる。この電荷発生層に含有される電荷発生物質としては、オキシチタニルフタロシアニンなどのチタニルフタロシアニン付加体顔料を使用することができる。これらのチタニルフタロシアニン付加体顔料は、他のフタロシアニン顔料、アゾ顔料、ペリレン顔料、アズレニウム顔料などと組み合わせて使用することができる。
【0055】
電荷発生物質の分散媒として発生層バインダー樹脂を用いる場合、発生層バインダー樹脂としては、公知の種々の樹脂を用いることができるが、ホルマール樹脂、ブチラール樹脂、シリコーン樹脂、シリコーン変性ブチラール樹脂、フェノキシ樹脂などを好ましく挙げられる。
発生層バインダー樹脂を用いた電荷発生層を有する感光体によれば、繰り返し使用に伴う残留電位の増加の程度を極めて抑制することができる。
【0056】
電荷発生層における電荷発生物質の含有割合は、発生層バインダー樹脂100質量部に対して、20〜600質量部であることが好ましい。
【0057】
また、電荷発生層の膜厚は、0.3〜2μmであることが好ましい。
【0058】
このような電荷発生層は、例えば電荷発生層塗布液を調製してこれを中間層の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
電荷発生層塗布液は、例えば電荷発生物質および発生層バインダー樹脂を、適宜の液状媒体に溶解または分散させることにより調製される。
【0059】
〔電荷輸送層〕
この例の感光体10を構成する電荷輸送層は、電荷輸送物質(CTM)を含有するものであって、例えばバインダー樹脂(以下、電荷輸送層に用いられるバインダー樹脂を「輸送層バインダー樹脂」ともいう。)に電荷輸送物質が分散されてなる構成ものとすることができる。
この電荷輸送層における電荷輸送機能は、具体的には、電荷発生層および電荷輸送層を導電性支持体上に積層し、光導伝性を検出することにより検証することができる。
【0060】
この電荷発生層に含有される電荷発生物質としては、公知の正孔輸送性(P型)のもの、例えばトリフェニルアミン誘導体、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物などを用いることが好ましい。
【0061】
電荷輸送層には、電荷輸送物質および輸送層バインダー樹脂の他に、必要に応じて、後述する無機微粒子や、酸化防止剤などの添加剤を含有させることができる。
【0062】
電荷輸送物質の分散媒として輸送層バインダー樹脂を用いる場合、輸送層バインダー樹脂としては、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよく、例えばポリスチレン、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、並びにこれらの樹脂の繰り返し単位構造のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂が挙げられ、さらに、これらの絶縁性樹脂の他に、ポリ−N−ビニルカルバゾールなどの高分子有機半導体が挙げられる。これらの中では、吸水率が小さく、電荷輸送物質の分散性が良好となり、さらに電子写真特性が良好であるポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
また、表面層となる最上層の電荷輸送層にバインダー樹脂(以下、表面層に用いられるバインダー樹脂を「表面層バインダー樹脂」ともいう。)を用いる場合、表面層バインダー樹脂としては、ポリカーボネート樹脂およびポリアリレート樹脂などが好ましい。これらポリカーボネート樹脂またはポリアリレート樹脂は、その分子量が10,000〜100,000であるものであることが好ましい。
【0063】
電荷輸送層における電荷輸送物質の含有割合は、輸送層バインダー樹脂100質量部に対して、50〜200質量部であることが好ましい。また、表面層となる最上層の電荷輸送層における電荷輸送物質の含有割合は、輸送層バインダー樹脂100質量部に対して、30〜200質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜150質量部である。
【0064】
また、電荷輸送層の膜厚は、合計の膜厚が10〜40μmであることが好ましい。電荷輸送層の合計の膜厚が10μm未満である場合は形成される可視画像において画像ムラが発生しやすく、電荷輸送層の合計の膜厚が40μmを超える場合は残電上昇が起こりやすく、従って、形成される可視画像における鮮鋭性が劣化しやすい。
また、表面層となる最上層の電荷輸送層の膜厚は、0.5〜10μmであることが好ましい。
【0065】
このような電荷輸送層は、例えば電荷輸送層塗布液を調製してこれを電荷発生層の表面に塗布・乾燥することにより、形成することができる。
電荷輸送層塗布液は、例えば電荷輸送物質および輸送層バインダー樹脂、表面層を形成させる場合にはさらに無機微粒子を、適宜の液状媒体に溶解または分散させることにより調製される。
【0066】
〔無機微粒子〕
感光体10の表面層に含有される無機微粒子としては、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなどの金属酸化物(遷移金属酸化物も含む)よりなるものが好ましい。これらの中でも、シリカ、酸化チタン、アルミナよりなる微粒子が好ましく用いられる。
【0067】
〔数平均一次粒子径〕
無機微粒子は、特にその数平均一次粒子径が5〜100nmであることが好ましい。
無機微粒子の数平均一次粒子径は、10,000倍に拡大した電子顕微鏡写真を使用し、ランダムに選択した無機微粉末100個のフェレ方向径を測定し、その算術平均値をいう。
数平均一次粒子径が5nm未満である無機微粒子を用いた場合は、表面層中において高い均一性の分散が得られにくく、凝集粒子を形成しやすいために、この凝集粒子が電荷トラップとなって残留電位が増大され、形成される可視画像において画像濃度の低下や画像ボケの発生が起こりやすく、さらにドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。一方、数平均一次粒子径が100nmより大きい無機微粒子を用いた場合は、感光体の表面が大きな凹凸の形成されたものとなりやすく、これらの大きな凹凸に活性ガス(オゾンやNOx )が付着しやすく、形成される可視画像において画像ボケの発生が起こりやすく、さらにドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。また、数平均一次粒子径が100nmより大きい無機微粒子は、分散液中で沈澱しやすく、凝集物が発生しやすい。
【0068】
〔疎水化度〕
無機微粒子の疎水化度が50未満である場合は、無機微粒子の表面に存在する水酸基が多いこととなるために、電位特性(帯電電位や残留電位など)の湿度依存性が大きく、形成される可視画像において画像ボケの発生が起こりやすく、さらにドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。
無機微粒子の疎水化度は55以上であることがより好ましい。また、シリカや酸化チタンなどの表面に水酸基を多く有する無機微粒子は疎水化度を95以上にするためにはこれら水酸基を表面処理によりほぼ100%封鎖することが必要となるので、製造コストが高く、工業的に有利ではないため、製造コストと実用性の観点から、疎水化度は90以下がより好ましい。
【0069】
無機微粒子の疎水化度(メタノールウェッタビリティ)は、メタノールに対する濡れ性の尺度で示され、具体的には以下のように測定されるものである。
すなわち、内容量200mLのビーカー中に入れた蒸留水50mLに、測定対象の無機微粒子0.2gを秤量して添加し、メタノールを、先端が液体中に浸漬されているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまで(全部が沈降するまで)ゆっくり滴下する。この無機微粒子全体を濡らすために必要なメタノールの量をa(mL)とし、下記式(1)により疎水化度が算出される。
式(1):疎水化度(メタノールウェッタビリティ)=(a/(a+50))×100
【0070】
〔疎水化度分布値〕
無機微粒子の疎水化度分布値が25を超える場合は、表面に水酸基が多く残存された無機微粒子が含まれることとなるために、形成される可視画像において画像ボケの発生が起こりやすく、さらにドット画像を形成した場合にこれが劣化したものとなるおそれがある。
【0071】
無機微粒子の疎水化度分布値は、以下の手順に従って測定されるものである。
(1)51本の遠沈管に、無機微粒子を0.2gずつ入れる。
(2)駒込ピペットを用いて、遠沈管にそれぞれ2Vol.%間隔で、0〜100Vol.%の濃度のメタノール溶液を各7mL入れ、密栓状態にする。
(3)ターブラーミキサーを用いて90rpmで30秒間分散させる。
(4)遠心分離器によって3500rpm、10分間遠心分離させる。
(5)沈降容積を測定し、全沈降容積(全部が沈降した容積)を100%としたときの各沈降容積(%)を算出する。
(6)算出した各沈降容積を基に、横軸メタノール濃度(Vol.%)、縦軸沈降容積(Vol.%)のグラフを作製し、当該グラフから沈降容積が100%のときのメタノール濃度(Vol.%)および沈降容積が10%のときのメタノール濃度(Vol.%)を読み取り、[{沈降容積が100%のときのメタノール濃度(Vol.%)}−{沈降容積が10%のときのメタノール濃度(Vol.%)}]を算出することにより、測定される。
なお、疎水化度分布値とは、[{沈降容積が100%のときのメタノール濃度(Vol.%)}−{沈降容積が10%のときのメタノール濃度(Vol.%)}]で表される値をいう。
【0072】
無機微粒子の疎水化度および疎水化度分布値は、シリカ粒子などの無機微粒子母体粒子の表面を、トリメチルシリル化剤などを用いて表面処理することにより、調整することができる。トリメチルシリル化剤としては、特に、下記一般式(1)または一般式(2)で表されるものを用いることが好ましい。
なお、以下に示すトリメチルシリル化剤以外の多官能シリル化剤や高炭素数のトリアルキルシリル化剤を用いた場合には、得られる無機微粒子が、疎水化度が低いものとなったり、疎水化度分布値が大きなものとなりやすい。
【0073】
一般式(1):((CH3 3 Si)2 NR1
〔一般式(1)中、R1 は水素または低級アルキル基である。〕
【0074】
以上において、低級アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜5のものが好ましく、炭素数1〜3のものがより好ましく、特にメチル基が好ましい。
【0075】
一般式(2):(CH3 3 SiX
〔一般式(2)中、Xはハロゲン原子、−OH、−OR2 、または−NR2 2 、から選ばれる基(ただし、R2 は一般式(1)のR1 と同じである。)である。〕
【0076】
以上において、ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、特に塩素原子が好ましい。
【0077】
上記一般式(1)で示されるトリメチルシリル化剤としては、具体的には、ヘキサメチルジシラザン、N−メチル−ヘキサメチルジシラザン、N−エチル−ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチル−N−プロピルジシラザンなどを例示することができ、反応性の良さからヘキサメチルジシラザンを用いるのが特に好ましい。
【0078】
また、上記一般式(2)で示されるトリアルキルシリル化剤としては、トリメチルクロロシラン、トリメチルシラノール、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、プロポキシトリメチルシラン、ジメチルアミノトリメチルシラン、ジエチルアミノトリメチルシランなどを例示することができ、反応性の良さからトリメチルシラノールを用いるのが特に好ましい。
【0079】
以上のトリアルキルシリル化剤は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
表面処理の具体的な方法としては、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤とを、水蒸気の存在下で反応させる方法が好ましい。この反応に際して、水蒸気の分圧は4〜20kPaとすることが好ましく、より好ましくは5〜15kPaである。
無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応において、水蒸気の分圧が4kPaより高い場合は、得られる無機微粒子を、疎水化度を高いものとすることができず、また疎水化度の分布もブロードなものとなる。一方、水蒸気の分圧が20kPaより低い場合は、疎水化度の分布がブロードになると共に、その均一性が損なわれやすい。
【0081】
また、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応は、短い反応時間でより疎水化度の高い無機微粒子を得ることができることから、トリメチルシリル化剤の気相の分圧を好ましくは50〜200kPa、より好ましくは80〜150kPaとなるような条件下で行うことが好ましい。
【0082】
さらに、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応は、トリメチルシリル化剤と水蒸気とのみからなる雰囲気中において反応を実施してもよいが、通常は、これらを窒素、ヘリウムなどの不活性ガスにより希釈して反応に供する。この場合、反応雰囲気の全圧は、一般的に150〜500kPa、好適には150〜250kPaとされる。
【0083】
なお、無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応性をより高いものとする観点から、必要に応じてアンモニア、メチルアミン、ジメチルアミンなどの塩基性ガス、特に好ましくはアンモニアを反応雰囲気中に共存させてもよい。このような塩基性ガスの分圧は、1〜100kPaとされることが好ましい。
【0084】
無機微粒子母体粒子とトリメチルシリル化剤との反応における反応温度は、疎水化反応の反応性の良好さやトリメチルシリル化剤の分解の危険性を考慮して、例えば130〜300℃とすることが好ましく、より好ましくは150〜250℃である。一般には、上記範囲において反応温度が高いほど、得られる無機微粒子の疎水性が高くなる傾向がある。
【0085】
この表面層中には、無機微粒子の分散性を助けるためにバインダー樹脂が含有されている。このようなバインダー樹脂としては、ポリカーボネートおよびポリアリレートなどが好ましい。これらポリカーボネートおよびポリアリレートの分子量は、10,000〜100,000であることが好ましい。
【0086】
このような無機微粒子の添加量は、バインダー樹脂100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましい。無機微粒子の添加量がバインダー樹脂100質量部に対して5質量部未満である場合は、表面層の摩耗が過度に生じ、擦り傷などが発生して形成されるハーフトーン画像が荒れたものとなりやすい。一方、無機微粒子の添加量がバインダー樹脂100質量部に対して50質量部を超える場合は、表面層が脆弱なものとなってクラックなどが発生しやすい。
【0087】
〔液状媒体〕
中間層、電荷発生層、電荷輸送層、表面層などの層形成に用いられる各層塗布液の液状媒体としては、特に限定されずに公知の種々のものを使用することができる。具体的には、n−ブチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、イソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどが挙げられ、特に、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、メチルエチルケトンなどが好ましい。
これらの液状媒体は、1種単独であるいは2種以上を混合した混合溶媒として用いることができる。
【0088】
また、これらの各層塗布液は、実際の塗布工程に供する前に、塗布液中の異物や凝集物を除去するために、金属フィルター、メンブランフィルターなどのフィルターによって濾過することが好ましい。フィルターとしては、例えば、日本ポール社製のプリーツタイプ(HDC)、デプスタイプ(プロファイル)、セミデプスタイプ(プロファイルスター)などを、各層塗布液の特性に応じて選択し、これを用いて濾過することが好ましい。
【0089】
各層塗布液の塗布方法としては、例えばスライドホッパー型塗布装置を用いる方法が挙げられ、その他に、浸漬塗布法、スプレー塗布法などの塗布方法を採用することができる。この感光体10においては、表面層の形成には円形スライドホッパー型塗布装置を用いる方法を採用することが最も好ましい。
【0090】
スライドホッパー型塗布装置を用いた塗布方法は、低沸点溶媒を用いた分散液を塗布液として用いる場合に最も適しており、円筒状の感光体を製造する場合は、特に、特開昭58−189061号公報などに開示されている円形スライドホッパー型塗布装置などを用いて各層塗布液を塗布することが好ましい。
【0091】
〔クリーニング手段〕
クリーニング手段18は、図1に示されるように、クリーニングブレード19を有しており、このクリーニングブレード19は、例えば、ウレタンゴムなどの弾性体よりなり、その基端部分19Aが支持部材17によって支持されると共に、先端部分19Bが感光体10の表面に当接されるよう設けられており、クリーニングブレード19の基端側から伸びる方向は、当接箇所における感光体10の回転による移動方向と反対方向である、いわゆるカウンター方向とされている。
【0092】
クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pは、15〜30N/mであることが好ましい。クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pが15N/m未満である場合は、クリーニング不良が発生しやすく、クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重が30N/mより大きい場合は、クリーニングブレードによる感光体の表面を擦過する力が過度に強く、その結果、使用に従って感光体の表面層の減耗量が増加していくことなどに起因して、得られる可視画像に筋状の画像欠陥が発生しやすい。
【0093】
また、クリーニングブレード19の感光体10への当接角θは、5〜35°であることが好ましい。
また、クリーニングブレード19の自由長Lは、図1に示すように、支持部材17に接触しない領域における基端部から、力を加えない変形前の状態におけるクリーニングブレードの先端部までの長さをいい、自由長Lは、3〜15mmであることが好ましい。
また、クリーニングブレード19の厚さは、0.5〜10mmであることが好ましい。
さらに、クリーニングブレード19の硬度は、65〜80であることが好ましい。
【0094】
クリーニングブレード19の感光体10への当接荷重Pは、クリーニングブレード19を感光体10に当接させたときの圧接力P’の法線方向ベクトル値である。また、当接角θは、感光体10の当接点における接線Xと変形前の状態におけるクリーニングブレード(図1において点線で示す。)とのなす角である。
【0095】
クリーニングブレード19の当接荷重Pは、バネ荷重である場合はバネ定数とバネの変異量から計算されるものである。また、重り荷重である場合は、荷重重さから計算されるものである。その他の荷重方法の場合は重量計等を用いて直接荷重が測定される。
【0096】
クリーニングブレード19を構成する弾性体の材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッソゴム、クロロピレンゴム、ブタジエンゴムなどが一般に用いられており、これらの中でも、ウレタンゴムは他のゴムに比して摩耗特性が優れている点で特に好ましい。例えば、特開昭59−30574号公報に開示されたポリカプロラクトンエステルとポリイソシアネートとを反応させて硬化させて得られるウレタンゴムなどを用いることが好ましい。
【0097】
クリーニングブレード19の使用に伴う反転を抑制するために、これを構成する弾性体の材料の硬度および反発弾性を共にコントロールすることが好ましい。具体的には、温度25±5℃における当該弾性体のJIS A 硬度を65〜80とすると共に、反発弾性を20%より大きく、かつ75%以下とするコントロールを行うことが好ましい。
ここに、JIS A 硬度および反発弾性は、JIS K 6301の加硫ゴム物理試験方法に基づいて測定されるものである。
温度25±5℃における当該弾性体のJIS A 硬度が65よりも小さい場合はクリーニングブレードの反転が起こりやすくなり、80よりも大きい場合はクリーニング性能が低いものとなる。また、反発弾性が75%を超える場合はクリーニングブレードの反転が起こりやすくなり、20%以下である場合はクリーニング性能が低いものとなる。
【0098】
以上のような画像形成装置においては、次のようにして画像形成動作が行われる。すなわち、感光体10が回転駆動され、この感光体10が帯電手段によって所定の極性、例えば負極性に帯電され、次いで、感光体10の表面においてトナー像が形成されるべき画像形成領域に、露光手段によって露光されることにより、照射箇所(露光領域)の電位が低下されて原稿画像に対応した静電潜像が感光体10上に形成され、現像手段により感光体10の表面電位と同じ極性、例えば負極性に帯電されたトナーが感光体10の静電潜像に付着して反転現像が行われ、これによりトナー像が形成される。さらに、転写手段により転写領域において当該トナー像が転写されることにより、転写材上にトナー像が形成される。その後、定着手段によって定着され、これにより可視画像が形成される。
そして、転写材が分離された後の感光体10上に残留する残留トナーが、クリーニング手段18のクリーニングブレード19により除去される。
具体的には、感光体10の表面に極めて薄い脂肪酸金属塩の層が形成されると共に、クリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間に適当なせき止め層が形成され、その結果、当該せき止め層により残留トナーが感光体10の表面から除去される。
【0099】
以上説明したような画像形成方法によれば、トナーが脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであるために、長期間にわたって、特に200万枚のプリント後においてもクリーニングブレードによる良好なクリーニングが行われ、その結果、黒ポチなどの感光体10の摩耗に起因する画像欠陥の発生が抑制され、従って、良好な画質の画像を長期間にわたって安定的に形成することができる。
【0100】
トナーに脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子が共に外添されることによりクリーニングブレード19による良好なクリーニングが行われる理由としては、明確ではないが、クリーニングブレード19の先端部分19Bと感光体10の表面との間にフッ素系樹脂粒子によるせき止め層が形成され、このせき止め層により、感光体10の表面に残留したトナーや外添剤がせき止められるので、低荷重で十分なクリーニングを行うことができるため、クリーニングブレード19にかける荷重を低いものとすることができ、従って感光体10の回転に必要なトルクも低減され、結局、感光体10とクリーニングブレード19との摩擦力が小さいものとなって当該感光体10の表面の磨耗が抑制される結果、感光体10に高い耐久性が得られるものと推測される。
【実施例】
【0101】
以下、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0102】
〔トナー粒子の合成例1〕
(1)コア粒子用ラテックスの作製
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部を投入し、75℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液60質量部を添加した後、さらに
スチレン 560質量部
n−ブチルアクリレート 160質量部
メタクリル酸 85質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、その後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行うことにより、ラテックス〔1〕を調製した。
次に、反応容器中に、純水1,000質量部にポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム2質量部と上記のラテックス〔1〕180質量部を投入し、混合することにより、ラテックス〔1A〕を調製した。
一方、別の反応容器に、
スチレン 168質量部
n−ブチルアクリレート 78質量部
メタクリル酸 26質量部
n−オクチルメルカプタン 4質量部
からなる混合液を投入し、70℃に昇温させた後、撹拌しながら脂肪酸エステル系化合物であるベヘン酸ベヘニル118質量部を少量ずつ添加することにより、ワックス含有モノマー溶液〔W〕を調製した。
上記のラテックス〔1A〕を窒素雰囲気下で撹拌しながら73℃に昇温させた後、上記のワックス含有モノマー溶液〔W〕を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)によって10分間分散処理を行うことにより、乳化分散液を得た。この乳化分散液を投入した反応容器に、撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着し、窒素雰囲気下で撹拌しながら78℃に昇温させた。さらに5%過硫酸カリウム水溶液80質量部を投入し、その10分間後にn−オクチルメルカプタン4質量部を投入した後、1時間かけて重合反応を行うことにより、ラテックス〔2〕を調製した(第1段(NP)重合)。
さらに、この反応系を35分間かけて80℃まで昇温させ、その後、5%過硫酸カリウム水溶液125質量部を添加し、さらに、
スチレン 270質量部
n−ブチルアクリレート 125質量部
メチルメタクリレート 43質量部
n−オクチルメルカプタン 7質量部
からなる混合液を1時間かけて滴下し、85℃まで昇温させた後、1時間半かけて重合反応を行うことにより、コア粒子用ラテックス〔3〕を調製した(第2段(SP)重合)。
【0103】
(2)シェル層用ラテックスの作製
撹拌機、温度計、コンデンサ、窒素吸入管を装着した反応容器中に、純水3,000質量部、ドデシル硫酸ナトリウム7質量部を投入し、80℃に昇温させて界面活性剤溶液を調製した。次いで、この界面活性剤溶液に5%過硫酸カリウム水溶液200質量部を添加した後、さらに
スチレン 500質量部
n−ブチルアクリレート 185質量部
メタクリル酸 175質量部
n−オクチルメルカプタン 14質量部
からなる混合液を3時間かけて滴下し、さらに、90℃に昇温した後、窒素雰囲気下で1時間の重合反応を行い、その後、冷却処理を行うことにより、シェル層用ラテックス〔4〕を調製した。
【0104】
(3)着色剤微粒子分散液の調製
ドデシル硫酸ナトリウムの10質量%水溶液900質量部を撹拌しながら、着色剤「モーガルL」210質量部を徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、着色剤分散液〔1〕を調製した。この着色剤分散液〔1〕中の着色剤微粒子の平均分散径を動的光散乱式粒度分析計「マイクロトラックUPA150」(日機装(株)製)を用いて測定したところ、120nmであった。
【0105】
(4)トナー母体粒子の作製
(4−1)コア粒子の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア粒子用ラテックス〔3〕 475質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液〔1〕 50質量部(固形分換算)
を投入して撹拌し、内温を30℃に調整した後、5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次いで、塩化マグネシウム・6水和物40質量部をイオン交換水40質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて反応系に添加し、3分間放置した後に昇温を開始して、この系を60分間かけて75℃まで昇温させて会合を開始した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、会合粒子の粒径が体積基準のメジアン径(D50)で6.0μmとなった時点で、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させることにより、コア粒子〔1〕を得た。
【0106】
(4−2)シェル層の形成
次に、上記のコア粒子〔1〕を作製した反応容器を80℃に調整し、これにシェル層用ラテックス〔4〕25質量部(固形分換算)を添加した。さらに、塩化マグネシウム・6水和物8質量部をイオン交換水8質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、85℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたって撹拌を継続してコア粒子の表面にシェル層用ラテックス〔4〕中の微粒子を凝集・融着させ、その後、90℃で2時間熟成処理を行った。
熟成処理後、塩化ナトリウム40質量部をイオン交換水200質量部に溶解した水溶液を添加し、8℃/分の冷却速度で30℃まで冷却することにより、コア−シェル粒子〔1〕が分散された分散液を得た。
【0107】
(4−3)洗浄、および、乾燥
コア−シェル粒子〔1〕の分散液を、バスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械(株)製)を用いて固液分離を行うことにより、コア−シェル粒子〔1〕のトナーケーキを形成した。そして、濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで前記バスケット型遠心分離機を用いてコア−シェル粒子〔1〕の洗浄と固液分離を繰り返し行った。濾液が所定の電気伝導度になった後、乾燥装置「フラッシュジェットドライヤー」(セイシン企業社製)を用いて、含水量が0.5質量%となるまで乾燥処理を行うことにより、トナー母体粒子〔1〕を作製した。このトナー母体粒子〔1〕は、体積基準のメジアン径(D50)が6.1μmであり、コア−シェル構造を有するものであった。
【0108】
(5)トナーの作製
トナー母体粒子〔1〕100質量部に、外添剤として疎水性シリカ(数平均一次粒子径=30nm)1.3質量部、疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.6質量部、脂肪酸金属塩としてステアリン酸亜鉛(体積基準のメジアン径=10μm)0.025質量部、フッ素系樹脂粒子としてポリテトラフルオロエチレン粒子(個数基準のメジアン径=2μm)0.35質量部を添加し、「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工社製)を用い、周速35m/secで25分間混合することにより、トナー粒子〔1〕によるトナー〔1〕を得た。
なお、以上において、トナー母体粒子〔1〕の体積基準のメジアン径は上記と同様の方法によって測定した値である。また、トナー母体粒子〔1〕について、シリカおよび二酸化チタンの添加によっては、その形状および粒径は変化しなかった。以下において同じである。
【0109】
〔トナー粒子の合成例2〜12〕
トナー粒子の合成例1において、脂肪酸金属塩とフッ素系樹脂粒子の種類および添加量を表1に従って変更したことの他は同様にして、トナー粒子〔2〕〜〔12〕を得た。なお、トナー粒子〔2〕〜〔10〕が本発明に係るものであり、トナー粒子〔11〕,〔12〕が比較用のものである。
【0110】
【表1】

【0111】
〔コートキャリアの作製例〕
フェライトコア粒子100質量部と、シクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂微粒子5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコア粒子の表面に樹脂コート層を形成させることにより、体積基準のメジアン径が60μmであるコートキャリアを得た。
キャリアの体積基準のメジアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定した値である。
【0112】
〔現像剤の作製例1〜12〕
トナー〔1〕〜〔10〕および比較用のトナー〔11〕,〔12〕に、上記のコートキャリアを、トナー濃度が6質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合することにより、現像剤〔1〕〜〔10〕および比較用の現像剤〔11〕,〔12〕を得た。
【0113】
〔感光体の作製例〕
(1)中間層
(i)中間層分散液の調製
バインダー樹脂:ポリアミド樹脂「ベスタメルトX4685」(ダイセル・デグサ社製)1部
ルチル型酸化チタン(一次粒径35nm;末端に水酸基を有するジメチルポリシロキサンで表面処理を行い、疎水化度を33に調整した酸化チタン顔料)5.6部
混合溶媒:エタノール/n−プロピルアルコール/THF(=45/20/30質量比)10部
を混合し、サンドミル分散機を用いて10時間バッチ式で分散させることにより、中間層分散液を調製した。
(ii)中間層塗布液の調製
この中間層分散液を、同じ混合溶媒を添加して二倍に希釈し、一夜静置後にフィルター「リジメッシュフィルター(公称濾過精度:5ミクロン、圧力;50kPa)」(日本ポール社製)を用いて濾過することにより、中間層塗布液を調製した。
(iii )中間層の形成
洗浄済みの円筒状のアルミニウム基体(切削加工により十点表面粗さRz=0.81μmに加工されたもの)上に、上記の中間層塗布液を浸漬塗布法によって塗布し、120℃で30分間乾燥させることにより、乾燥膜厚5μmの中間層を形成させた。
【0114】
(2)電荷発生層(CGL)
電荷発生物質(CGM):オキシチタニルフタロシアニン(Cu−Kα特性X線によるX線回折のスペクトルで、ブラッグ角(2θ±0.2°)27.3°に最大回折ピークを有するチタニルフタロシン顔料)24部
ポリビニルブチラール樹脂「エスレックBL−1」(積水化学社製)12部
混合溶媒:2−ブタノン/シクロヘキサノン(=4/1質量比)300部
を混合し、サンドミル分散機を用いて分散させることにより、電荷発生層塗布液を調製し、これを上記の中間層の上に浸漬塗布法によって塗布し、25℃で30分間乾燥させることにより、乾燥膜厚0.5μmの電荷発生層を形成させた。
【0115】
(3)電荷輸送層〔1〕(CTL1)
電荷輸送物質(4,4’−ジメチル−4’’−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン)225部
ポリカーボネート「Z300」(三菱ガス化学社製)300部
酸化防止剤「Irganox1010」(日本チバガイギー社製)6部
ジクロロメタン2,000部
シリコーンオイル「KF−54」(信越化学社製)1部
を混合し、溶解させることにより、電荷輸送層塗布液〔1〕を調製した。この電荷輸送塗布〔1〕を上記の電荷発生層の上に浸漬塗布法によって塗布し、110℃で70分間乾燥させることにより、乾燥膜厚18.0μmの電荷輸送層〔1〕を形成した。
【0116】
(4)電荷輸送層〔2〕(CTL2)
無機微粒子:シリカ粒子(ヘキサメチルシラザンで表面処理された平均一次粒径30nmのシリカ:疎水化度70、疎水化度分布値20)60部
電荷輸送物質(4,4’−ジメチル−4’’−(α−フェニルスチリル)トリフェニルアミン)150部
ポリカーボネート「Z300」三菱ガス化学社製)300部
酸化防止剤「Irganox1010」(日本チバガイギー社製)12部
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)2800部
シリコーンオイル「KF−54」(信越化学社製) 4部
を混合し、分散または溶解させることにより、電荷輸送層塗布液〔2〕を調製した。この電荷輸送塗布〔2〕を上記の電荷輸送層〔1〕の上に、円形スライドホッパー型塗布機を用いて塗布し、110℃で70分間乾燥させることにより、乾燥膜厚2.0μmの電荷輸送層〔2〕を形成し、これにより、感光体〔1〕を得た。
【0117】
<実施例1〜10、比較例1,2>
高速の画像形成装置「bizhub PRO 1050e」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)に、上記の感光体〔1〕を搭載すると共に下記条件のクリーニング手段を用いる改造を施し、それぞれ、上記のトナー〔1〕〜〔10〕または比較用のトナー〔11〕,〔12〕、並びに対応する現像剤〔1〕〜〔10〕または比較用の現像剤〔11〕,〔12〕を順次現像装置に装填し、これを用いると共に記録紙として「Jペーパー(坪量64g/m2 )」(コニカミノルタビジネスソリューションズ社製)を用い、常温常湿環境(温度20℃、湿度55%RH)下で、印字率が6%のオリジナル画像(文字画像、線画像がそれぞれ1/2等分にあるA4サイズの画像)を200万枚プリントする実写テストを行った。それぞれ初期、50万枚、100万枚、150万枚、200万枚プリント後に、以下(1)〜(4)の評価を行なった。結果を表2に示す。
−クリーニング手段の条件−
・性能:クリーニングブレード
・材質:ウレタンゴム
・当接荷重:24N/m
・自由長:9mm
・当接角:25°
・厚さ:2.0mm
・JIS A 硬度:70
・反発弾性:50%
【0118】
(1)感光層の膜厚の減耗量
感光層の膜厚を、「EDDY560C」(Fischer社製)で測定し、実写テストの初期からの変化量(減耗量)を調査した。200万枚プリント後に、その変化量(減耗量)が8.0μm以下である場合に許容範囲と判断される。
【0119】
(2)黒ポチ
A3サイズハーフトーン画像を1枚プリントし、感光体の傷による黒ポチの発生の有無を目視で観察した。なお、黒ポチとは、粒径が0.3mm以上の黒点のことをいう。
【0120】
(3)画像濃度
A3サイズのベタ画像を1枚プリントし、反射濃度計「RD−918」(マクベス社製)を用いて、ほぼ均等に12箇所(横3×縦4)の反射濃度を測定し、その平均値を画像濃度として調査した。なお、画像濃度が1.20以上である場合に合格と判断される。
【0121】
(4)細線再現性
A4サイズの、2ドットラインの画像信号に対応したテスト用ライン画像を1枚プリントし、このテスト用ライン画像におけるライン幅をW2 とし、初期のテスト用ライン画像におけるライン幅をW1 としたときに、これらのライン幅を各々印字評価システム「RT2000」(ヤーマン(株)製)によって測定し、W1 およびW2 のいずれもが200μm以下であり、かつ、(W2 −W1 )が8μm未満である場合を「◎」、(W2 −W1 )が8μm以上10μm未満である場合を「○」、(W2 −W1 )が10μm以上12μm未満である場合を「△」、(W2 −W1 )が12μm以上である場合を「×」として評価した。評価が○であれば、細線再現性は実用上十分であると判断される。
【0122】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の画像形成方法に用いられるクリーニングブレードの感光体への当接状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0124】
10 感光体
17 支持部材
18 クリーニング手段
19 クリーニングブレード
19A 基端部分
19B 先端部分



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真用感光体上に形成された静電潜像を電子写真用トナーにより顕像化させたトナー像を転写材に転写する工程と、転写されずに前記電子写真用感光体上に残留した電子写真用トナーをクリーニングブレードによって除去する工程とを少なくとも含む画像形成方法であって、
前記電子写真用トナーは、少なくとも脂肪酸金属塩およびフッ素系樹脂粒子を外添剤として含有するものであることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記電子写真用感光体が、その表面層に無機微粒子が含有されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂粒子の平均粒径が、個数基準のメジアン径で0.8〜8.0μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成方法。



【図1】
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【公開番号】特開2010−139950(P2010−139950A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−318267(P2008−318267)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】