説明

画像形成方法

【課題】吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が200mm/sec以上となる高速で多数枚処理する際に、優れた耐擦過性を示し、画像中の傷等の画像欠陥の発生が防止された画像形成方法を提供する。
【解決手段】顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料と樹脂粒子とワックス粒子と1,2−アルキレンジオールと多価アルコールとピロリドン誘導体とアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物を吐出ヘッドから記録媒体に、前記吐出ヘッドと前記記録媒体との間の副走査方向の移動速度を200mm/sec以上としてインクを付与するインク付与工程と、インクが付与された前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の前記記録媒体を、前記記録媒体に平均粒子径1〜100μmの粉状物を1〜1000mg/m付着させる工程を設けて、集積する集積工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット法を利用して画像を形成する画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラー画像を記録する画像記録方法としては、近年、様々な方法が提案されているが、いずれにおいても画像や記録物の品質、品位に対する要求は高い。
【0003】
最近は、高画質な画像をより高速に形成する技術が注目されてきており、それをインクジェット法により実現しようとする場合、従来から広く適用されているシャトルスキャン方式ではなく、複数の吐出ノズルが二次元配列されたノズルプレートから広範な領域に複数のインク滴を一度に吐出して画像形成するシングルパス方式による方法や、あるいは両面に画像形成するための記録適性を高める方法など、種々の技術が検討されている。
【0004】
シャトルスキャン方式のような従来のインクジェット法では、記録速度が遅いため、記録中にインクの溶媒が乾燥あるいは記録媒体中に浸透しやすく、媒体上に着弾したインクドットはある程度の強度が保たれていた。また、インク速度が遅いことから、短時間で多量の記録媒体に画像が形成されたり、記録後短時間のうちに記録媒体が積み重ねられることもなかった。
【0005】
ところが、例えばシングルパス方式を利用して高速記録する場合には、乾燥時間が短くなり、かつ画像形成が完了した記録媒体が連続して積み重ねられるため、媒体中の互いに重なった部分では溶媒が蒸発しきれずに多く残存し、結果として画像部が柔らかい状態、つまり画像強度が確保される前に積み重ねられることになる。
【0006】
画像が充分に乾燥硬化される前に積み重ねられると、集積部から記録済みの記録媒体を移動させたりソーティング等する過程で、画像表面にキズが生じやすく、画像品質上支障を来たす場合がある。このような現象は、重ねられる記録媒体の数が多いほど、記録媒体のサイズが大きいほど、更にはインクやその溶媒の浸透の遅い記録媒体ほど、顕著に現れる。
【0007】
一方、オフセット印刷では、ブロッキングの防止の観点から、印刷直後に固体粒子を散布することが一般的に行なわれている。オフセット用のインクは通常、油性又は紫外線硬化性に構成されており、酸化重合や紫外線による重合によって皮膜形成されるため、比較的画像へのキズの発生は起きにくい。これに対して、水性インクの場合、画像の硬化は、インク膜中から水分がある程度乾燥で除かれることで達成されるため、乾燥が不充分なまま積み重ねられると、積み重ねた状態では溶媒が更に抜け難い。そのため、上記のように記録媒体の移動やソーティング等が原因で画像にキズが生じやすい。
【0008】
このような状況に関連して、インクに対して非吸収性ないし低吸収性の記録媒体上に水性インク組成物を吐出して画像を形成するインクジェット記録方式の印刷方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この印刷方法では、樹脂粒子として、樹脂定着剤粒子とワックス粒子とを含有することで、印刷物の耐擦性に優れるとされている。
【0009】
また、ブロッキング防止パウダーを用いて印刷する印刷方法に関する開示がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−90266号公報
【特許文献2】特開2006−231565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記従来の印刷方法では、耐擦性の観点からワックス粒子等を使用して耐擦性に優れるとされているが、吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が200mm/sec以上となるような高速記録時には、実際には乾燥が追いつかず、画像の耐擦性を充分に確保できないのが実情である。
【0012】
また、印刷分野ではブロッキング対策としてパウダーを用いる技術が知られているが、印刷に使用されるインクの性状や硬化の機構が水性インクと異なるため、印刷画像ではそれ以前に画像の強度自体は保たれており、画像表面へのキズが問題となることは少ないと考えられる。
【0013】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が200mm/sec以上となる高速で多数枚処理する際に、優れた耐擦過性を示し、画像中の傷等の画像欠陥の発生が防止された画像形成方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料と樹脂粒子とワックス粒子と1,2−アルキレンジオールと多価アルコールとピロリドン誘導体とアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物を吐出ヘッドから記録媒体に、前記吐出ヘッドと前記記録媒体との間の副走査方向の移動速度を200mm/sec以上としてインクを付与するインク付与工程と、インクが付与された前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の前記記録媒体を、前記記録媒体に平均粒子径1〜100μmの粉状物を1〜1000mg/m付着させる工程を設けて、集積する集積工程と、を有する
【0015】
<2> 前記ワックスが、カルナバワックスである前記<1>に記載の画像形成方法である。
<3> 前記ピロリドン誘導体として、ポリビニルピロリドンを含む前記<1>又は前記<2>に記載の画像形成方法である。
<4> 更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【0016】
<5> 前記粉状物は、疎水処理されているパウダー粒子である前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
<6> 前記記録媒体は、塗工層を有し、面積が1250cm以上である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の画像形成方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が200mm/sec以上となる高速で多数枚処理する際に、優れた耐擦過性を示し、画像中の傷等の画像欠陥の発生が防止された画像形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の画像形成方法を実施する画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の画像形成方法について詳細に説明する。
本発明の画像形成方法は、顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料と樹脂粒子とワックス粒子と1,2−アルキレンジオールと多価アルコールとピロリドン誘導体とアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物を吐出ヘッドから記録媒体に、前記吐出ヘッドと前記記録媒体との間の副走査方向の移動速度を200mm/sec以上としてインクを付与するインク付与工程と、インクが付与された記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後の記録媒体を、記録媒体に粒子径1〜100μmの粉状物を1〜1000mg/m付着させる工程を設けて、集積する集積工程とを設けて構成されている。本発明の画像形成方法は、更に、必要に応じて、インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を付与する処理液付与工程や、記録媒体を冷却する冷却工程などの他の工程を設けて構成することができる。
【0020】
本発明においては、吐出ヘッドからみて記録媒体の搬送速度が200mm/sec以上となる高速でインクジェット記録する場合に、インク組成物を、精細な画像を形成しやすく形成後は傷等の画像欠陥を生じにくい組成にすると共に、記録後に乾燥のみならず集積過程で粉状物を付与することで、乾燥性が充分に確保されず、膜が硬化しきれていない場合でも、記録媒体の移動やソーティング等に起因して集積後に形成画像に生じる傷や剥れ等の画像欠陥が防止される。これにより、高速での画像形成に際して、画像欠陥の少ない高品質の画像を安定的に形成することができる。
【0021】
以下、本発明の画像形成方法を構成する各工程について詳述する。
−インク付与工程−
本発明におけるインク付与工程は、顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料と樹脂粒子とワックス粒子と1,2−アルキレンジオールと多価アルコールとピロリドン誘導体とアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物を吐出ヘッドから記録媒体に、前記吐出ヘッドと記録媒体との間の副走査方向の移動速度を200mm/sec以上としてインクを付与する。
【0022】
本発明では、吐出ヘッドと記録媒体との間の副走査方向の移動速度、すなわち吐出ヘッドからみた記録媒体の搬送速度を、200mm/sec以上の高速にしてインクを付与する。画像形成の高速化の観点からは移動はより速いことが好ましく、搬送速度は250mm/s以上がより好ましく、400mm/s以上が更に好ましい。
【0023】
インクジェット法を利用した画像の形成は、エネルギーを供与することにより所望の記録媒体にインク組成物を吐出することにより行なえる。なお、本発明の好ましい画像形成方法として、特開2003−306623号公報の段落番号0093〜0105に記載の方法が適用できる。
インクジェット法には、特に制限はなく、公知の方式、例えば、静電誘引力を利用してインクを吐出させる電荷制御方式、電圧の印加により機械的歪を発生する圧電素子を利用してインクを吐出させるピエゾインクジェット方式、電気信号を音響ビームに変えインクに照射して放射圧を利用してインクを吐出させる音響インクジェット方式、及びインクを加熱して気泡を形成し、生じた圧力を利用するサーマルインクジェット(バブルジェット(登録商標))方式等のいずれであってもよい。
なお、インクジェット法には、フォトインクと称する濃度の低いインクを小さい体積で多数射出する方式、実質的に同じ色相で濃度の異なる複数のインクを用いて画質を改良する方式や無色透明のインクを用いる方式が含まれる。
【0024】
本発明におけるインクジェット法としては、ピエゾインクジェット方式が好適である。本発明のインク組成物又はこれを含むインクセットとピエゾインクジェット方式とを組み合わせることで、インクの連続吐出性及び吐出安定性がより向上する。ピエゾインクジェット方式において、圧電素子の歪形態は、撓みモード、縦モード、シアモードのいずれでもよい。圧電素子の構成及びピエゾヘッドの構造は、特に制限なく公知の技術を採用できる。
【0025】
インクジェット法により記録を行なう際に使用するインクノズル等については特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明に適用可能なインクジェット法としては、搬送速度を上記のように200mm/sec以上に保てる限りは、短尺のシリアルヘッドを用いてヘッドを記録媒体の幅方向に走査させながら記録を行なうシャトル方式であってもよいが、記録媒体の1辺の全域に対応して記録素子が配列されているラインヘッドを用いたライン方式を適用した態様が好ましい。ライン方式の場合、記録素子の配列方向と直交する方向(すなわち副走査方向)に記録媒体を走査させることで、記録媒体の全面に画像記録を行なうことができる。
【0026】
吐出するインク組成物の液滴量としては、高精細な画像を得る観点で、0.5〜6pl(ピコリットル)が好ましく、1〜5plがより好ましく、更に好ましくは2〜4plである。
【0027】
次に、本発明におけるインク組成物の詳細について示す。
(樹脂被覆顔料)
本発明におけるインク組成物は、顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料の少なくとも一種を含有する。この場合、顔料は必ずしも粒子表面の全体が被覆されている必要はなく、場合により粒子表面の少なくとも一部が被覆された状態であってもよい。
【0028】
前記水不溶性樹脂としては、例えば、〔1〕以下に示す一般式(1)で表される繰り返し単位(a)とイオン性基を有する繰り返し単位(b)とを含むポリマー、あるいは〔2〕塩生成基含有モノマー(c)由来の構成単位とスチレン系マクロマー(d)及び/又は疎水性モノマー(e)由来の構成単位とを含むポリマー、等が好適に挙げられ、中でも前記〔1〕ポリマーが好ましい。前記ポリマー〔2〕の詳細については、特開2009−84501号公報の段落0012〜0031に記載された詳細を参照することができる。
なお、「水不溶性」とは、25℃の水系媒体にポリマーを混合したときに、水系媒体に溶解するポリマーの量が、混合した全ポリマーに対する質量比として10質量%以下であることをいう。
【0029】
以下、〔1〕一般式(1)で表される繰り返し単位(a)とイオン性基を有する繰り返し単位(b)とを含むポリマーについて具体的に説明する。
【0030】
このポリマーは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位の少なくとも一種と、イオン性基を有する繰り返し単位の少なくとも一種とを含み、必要に応じて、更に、一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の疎水性繰り返し単位や、非イオン性の官能基を持つ親水性繰り返し単位などの他の構造単位を含むことができる。
【0031】
<(a)一般式(1)で表される繰り返し単位>
【化1】

【0032】
一般式(1)において、Rは水素原子、メチル基、又はハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)を表し、Lは、−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表し、Rは水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。なお、Lで表される基中の*印は、主鎖に連結する結合手を表す。Lは、単結合、又は2価の連結基を表す。Arは、芳香環から誘導される1価の基を表す。
【0033】
前記一般式(1)において、Rは水素原子、メチル基、又はハロゲン原子を表し、好ましくはメチル基を表す。
【0034】
は、−COO−、−OCO−、−CONR−、−O−、又は置換もしくは無置換のフェニレン基を表す。Lがフェニレン基を表す場合、無置換が好ましい。Rは水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0035】
は、単結合、又は2価の連結基を表す。前記2価の連結基としては、好ましくは炭素数1〜30の連結基であり、より好ましくは炭素数1〜25の連結基であり、更に好ましくは炭素数1〜20の連結基であり、特に好ましくは炭素数1〜15の連結基である。
中でも、最も好ましくは、炭素数1〜25(より好ましくは1〜10)のアルキレンオキシ基、イミノ基(−NH−)、スルファモイル基、及び、炭素数1〜20(より好ましくは1〜15)のアルキレン基やエチレンオキシド基[−(CHCHO)−,n=1〜6]などの、アルキレン基を含む2価の連結基等、並びにこれらの2種以上を組み合わせた基などである。
【0036】
Arは、芳香環から誘導される1価の基を表す。
Arで表される1価の基の芳香環としては、特に限定されないが、ベンゼン環、炭素数8以上の縮環型芳香環、ヘテロ環が縮環した芳香環、又は2以上のベンゼン環が縮環した芳香環が挙げられる。
【0037】
前記「炭素数8以上の縮環型芳香環」は、少なくとも2以上のベンゼン環が縮環した芳香環、少なくとも1種の芳香環と該芳香環に縮環して脂環式炭化水素で環が構成された炭素数8以上の芳香族化合物である。具体的な例としては、ナフタレン、アントラセン、フルオレン、フェナントレン、アセナフテンなどが挙げられる。
【0038】
前記「ヘテロ環が縮環した芳香環」とは、ヘテロ原子を含まない芳香族化合物(好ましくはベンゼン環)と、ヘテロ原子を有する環状化合物とが縮環した化合物である。ここで、ヘテロ原子を有する環状化合物は、5員環又は6員環であることが好ましい。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子が好ましい。ヘテロ原子を有する環状化合物は、複数のヘテロ原子を有していてもよい。この場合、ヘテロ原子は互いに同じでも異なっていてもよい。
芳香環が縮環したヘテロ環の具体例としては、フタルイミド、アクリドン、カルバゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾールなどが挙げられる。
【0039】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を形成するモノマーの具体例としては、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類を挙げることができる。
【0040】
本発明において、前記一般式(1)で表される繰り返し単位のように、主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性の構造単位では、芳香環は連結基を介して水不溶性樹脂の主鎖をなす原子と結合され、水不溶性樹脂の主鎖をなす原子に直接結合しない構造を有するので、疎水性の芳香環と親水性構造単位との間に適切な距離が維持されるため、水不溶性樹脂と顔料との間で相互作用が生じやすく、強固に吸着して分散性がさらに向上する。
【0041】
更には、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を形成するモノマーの具体例としては、下記のモノマーなどを挙げることができる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
前記(a)一般式(1)で表される繰り単位中のArとしては、被覆された顔料の分散安定性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、アクリドン、又はフタルイミドから誘導される1価の基であることが好ましい。
【0046】
前記繰り返し単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位のポリマー中における含有割合は、ポリマーの全質量に対して、5〜25質量%の範囲が好ましく、より好ましくは10〜18質量%の範囲である。この含有割合は、5質量%以上であると、白抜け等の画像故障の発生を顕著に抑制できる傾向となり、また、25質量%以下とするとポリマーの重合反応溶液(例えば、メチルエチルケトン)中での溶解性低下による製造適性上の問題が生じない傾向となり好ましい。
【0047】
<他の疎水性繰り返し単位>
ポリマー〔1〕は、疎水性構造単位として、前記一般式(1)で表される繰り返し単位以外の他の疎水性繰り返し単位を更に有してもよい。他の疎水性繰り返し単位としては、例えば、親水性構造単位に属しない(例えば親水性の官能基を有しない)例えば(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、スチレン類、及びビニルエステル類などのビニルモノマー類、主鎖をなす原子に連結基を介して芳香環を有する疎水性構造単位、等に由来の構造単位を挙げることができる。これらの構造単位は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0048】
前記(メタ)アクリレート類としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらのうち(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルが好ましい。中でも、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートが好ましい。
前記(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアリル(メタ)アクリルアミド、N−アリル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド類が挙げられる。
前記スチレン類としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、n−ブチルスチレン、tert−ブチルスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt−Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン、ビニル安息香酸メチル、及びα−メチルスチレン、ビニルナフタレン等などが挙げられ、中でも、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
前記ビニルエステル類としては、例えば、ビニルアセテート、ビニルクロロアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート、及び安息香酸ビニルなどのビニルエステル類が挙げられる。中でも、ビニルアセテートが好ましい。
【0049】
<(b)イオン性基を有する繰り返し単位>
イオン性基を有する繰り返し単位としては、カルボキシル基、スルホ基、ホスホネート基などのイオン性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位が挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、イオン性官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。イオン性基を有する繰り返し単位は、対応するモノマーの重合により導入できるが、重合後のポリマー鎖にイオン性基を導入したものでもよい。
【0050】
これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸に由来の繰り返し単位が好ましく、アクリル酸由来の構造単位もしくはメタクリル酸由来の構造単位のいずれか又は両方を含むことが好ましい。
【0051】
このポリマー〔1〕は、(b)イオン性基を有する繰り返し単位の割合がポリマー全質量の15質量%以下であって、イオン性基を有する繰り返し単位として少なくとも(メタ)アクリル酸由来の構造単位を含む態様が好ましい。
(b)イオン性基を有する繰り返し単位の含有量がポリマー全質量の15質量%以下であると、分散安定性に優れる。中でも、(b)イオン性基を有する繰り返し単位の割合は、分散安定性の観点から、5質量%以上15質量%以下が好ましく、7質量%以上13質量%以下がより好ましい。
【0052】
このポリマー〔1〕は、水性のインク組成物中において安定的に存在することができ、例えばインクジェットヘッド等での凝集物の付着、堆積を緩和し、付着した凝集物の除去性にも優れる。このような観点から、前記(a)一般式(1)で表される繰り返し単位以外の疎水性構造単位、及び前記「(b)イオン性基を有する繰り返し単位」以外の他の親水性構造単位をさらに有していてもよい。
【0053】
<親水性繰り返し単位>
前記他の親水性構成単位としては、非イオン性の親水性基を有するモノマーに由来の繰り返し単位が挙げられ、例えば、親水性の官能基を有する(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド類、及びビニルエステル類等の、親水性の官能基を有するビニルモノマー類を挙げることができる。
【0054】
「親水性の官能基」としては、水酸基、アミノ基、(窒素原子が無置換の)アミド基、及び後述のポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドが挙げられる。
【0055】
非イオン性の親水性基を有する親水性繰り返し単位を形成するモノマーとしては、エチレン性不飽和結合等の重合体を形成しうる官能基と非イオン性の親水性の官能基とを有していれば、特に制限はなく、公知のモノマーから選択することができる。具体的な例としては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、アミノエチルアクリレート、アミノプロピルアクリレート、アルキレンオキシド重合体を含有する(メタ)アクリレートを好適に挙げることができる。
【0056】
非イオン性の親水性基を有する親水性繰り返し単位は、対応するモノマーの重合により形成することができるが、重合後のポリマー鎖に親水性の官能基を導入してもよい。
【0057】
非イオン性の親水性基を有する親水性繰り返し単位は、アルキレンオキシド構造を有する親水性の構造単位がより好ましい。アルキレンオキシド構造のアルキレン部位としては、親水性の観点から、炭素数1〜6のアルキレンが好ましく、炭素数2〜6のアルキレンがより好ましく、炭素数2〜4のアルキレンが特に好ましい。また、アルキレンオキシド構造の重合度としては、1〜120が好ましく、1〜60がより好ましく、1〜30が特に好ましい。
【0058】
また、非イオン性の親水性基を有する親水性繰り返し単位は、水酸基を含む親水性の繰り返し単位であることも好ましい態様である。繰り返し単位中の水酸基数としては、特に制限はなく、水不溶性樹脂の親水性、重合時の溶媒や他のモノマーとの相溶性の観点から、1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。
【0059】
ポリマー〔1〕としては、親水性繰り返し単位と疎水性繰り返し単位(前記一般式(1)で表される構造繰り返しを含む)との組成は各々の親水性、疎水性の程度にも影響するが、親水性繰り返し単位の割合が15質量%以下であることが好ましい。このとき、疎水性繰り返し単位は、水不溶性樹脂の質量全体に対して、80質量%を超える割合であるのが好ましく、85質量%以上であるのがより好ましい。
親水性繰り返し単位の含有量が15質量%以下であると、単独で水性媒体中に溶解する成分量が抑えられ、顔料の分散などの諸性能が良好になり、インクジェット記録時には良好なインク吐出性が得られる。
【0060】
親水性繰り返し単位の好ましい含有割合は、水不溶性樹脂の全質量に対して、0質量%を超え15質量%以下の範囲であり、より好ましくは2〜15質量%の範囲であり、更に好ましくは5〜15質量%の範囲であり、特に好ましくは8〜12質量%の範囲である。
【0061】
芳香環の水不溶性樹脂中に含まれる含有割合は、水不溶性樹脂の全質量に対して、27質量%以下であるのが好ましく、25質量%以下であるのがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。中でも、15〜20質量%であるのが好ましく、17〜20質量%の範囲がより好ましい。芳香族環の含有割合が前記範囲内であると、耐擦過性が向上する。
【0062】
以下、ポリマー〔1〕の具体例(モル比(質量%)、重量平均分子量Mw、酸価)を列挙する。但し、本発明においては、下記に限定されるものではない。
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
・フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
・フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
・フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
・ベンジルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(60/30/10)
・フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/39/11)
・(M−25/M−27)混合物/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:15/75/10、MW49400、酸価65.2mgKOH/g)
・(M−25/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:18/69/13、MW41600、酸価84.7mgKOH/g)
・(M−28/M−29)混合物/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:15/85/10、MW38600、酸価65.2mgKOH/g)
・(M−28)/エチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比:20/73/7、MW45300、酸価45.6mgKOH/g)
【0063】
本発明における水不溶性樹脂の酸価としては、顔料分散性、保存安定性の観点から、30mgKOH/g以上100mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることがより好ましく、50mgKOH/g以上85mgKOH/g以下であることが特に好ましい。
なお、酸価とは、水不溶性樹脂の1gを完全に中和するのに要するKOHの質量(mg)で定義され、JIS規格(JIS K 0070、1992)記載の方法により測定されるものである。
【0064】
本発明における水不溶性樹脂の分子量としては、重量平均分子量(Mw)で3万以上が好ましく、3万〜15万がより好ましく、更に好ましくは3万〜10万であり、特に好ましくは3万〜8万である。分子量が3万以上であると、分散剤としての立体反発効果が良好になる傾向があり、立体効果により顔料へ吸着し易くなる。
また、数平均分子量(Mn)では1,000〜100,000の範囲程度のものが好ましく、3,000〜50,000の範囲程度のものが特に好ましい。数平均分子量が前記範囲内であると、顔料における被覆膜としての機能又はインク組成物の塗膜としての機能を発揮することができる。ポリマー〔1〕は、アルカリ金属や有機アミンの塩の形で使用されることが好ましい。
【0065】
また、水不溶性樹脂の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)としては、1〜6の範囲が好ましく、1〜4の範囲がより好ましい。分子量分布が前記範囲内であると、インクの分散安定性、吐出安定性を高められる。
【0066】
数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCは、HLC−8020GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgel、Super Multipore HZ−H(東ソー(株)製、4.6mmID×15cm)を3本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて溶媒THFにて検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算することにより求められる分子量である。
【0067】
水不溶性樹脂は、種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合により合成することができる。重合反応は、回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。重合の開始方法は、ラジカル開始剤を用いる方法、光又は放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば、鶴田禎二「高分子合成方法」改定版(日刊工業新聞社刊、1971)や大津隆行、木下雅悦共著「高分子合成の実験法」化学同人、昭和47年刊、124〜154頁に記載されている。
前記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン等の種々の有機溶剤が挙げられる。また、水との混合溶媒として用いてもよい。
重合条件について、重合温度は、通常は0℃〜100℃程度であるが、50〜100℃の範囲が好ましい。また、反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は1〜100kg/cmであり、特に1〜30kg/cm程度が好ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。得られた樹脂は、再沈殿などの精製を行なってもよい。
【0068】
顔料粒子を水不溶性樹脂で被覆した樹脂被覆粒子は、分散安定性の点で、顔料を転相乳化法により水不溶性樹脂で被覆してなる形態である場合が好ましい。
転相乳化法は、基本的には、自己分散能又は溶解能を有する樹脂と顔料との混合溶融物を水に分散させる自己分散(転相乳化)方法である。また、この混合溶融物には、硬化剤又は高分子化合物を含んでなるものであってもよい。ここで、混合溶融物とは、溶解せず混合した状態、溶解して混合した状態、又はこれら両者の状態のいずれの状態を含むものをいう。「転相乳化法」のより具体的な製造方法は、特開平10−140065号に記載の方法が挙げられる。
転相乳化法及び酸析法のより具体的な製造方法は、特開平9−151342号、特開平10−140065号の各公報に記載の方法が挙げられる。
【0069】
樹脂被覆顔料は、水不溶性樹脂を用いて下記の工程(1)及び工程(2)を含む方法により樹脂被覆顔料の分散物として調製する調製工程を設けることで好適に得られる。また、インク組成物は、調製工程で得られた樹脂被覆顔料の分散物を水及び有機溶媒と共に用いて水性インクとする方法により調製することができる。
・工程(1):水不溶性樹脂、有機溶媒、中和剤、顔料、及び水を含有する混合物を攪拌等により分散して分散物を得る工程
・工程(2):前記分散物から前記有機溶媒を除去する工程
【0070】
攪拌方法には特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー、ビーズミル等の分散機を用いることができる。
【0071】
なお、有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられ、その詳細については下記の樹脂粒子の項で述べる。また、中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、特定共重合体が水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。中和剤の詳細については、後述する。
【0072】
前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた分散物から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで、顔料の粒子表面が共重合体で被覆された樹脂被覆顔料粒子の分散物を得ることができる。得られた分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、ここでの有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下であり、更に好ましくは0.1質量%以下である。より具体的には、例えば、(1)アニオン性基を有する共重合体又はそれを有機溶媒に溶解した溶液と塩基性化合物(中和剤)とを混合して中和する工程と、(2)得られた混合液に顔料を混合して懸濁液とした後に、分散機等で顔料を分散して顔料分散液を得る工程と、(3)有機溶剤を例えば蒸留して除くことによって、顔料をアニオン性基を有する特定共重合体で被覆し、水性媒体中に分散させて水性分散体とする工程とを含む方法である。
なお、より具体的には、特開平11−209672号公報及び特開平11−172180号の記載を参照することができる。
【0073】
本発明において、分散処理は、例えば、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、高圧ホモジナイザー、高速攪拌型分散機、超音波ホモジナイザーなどにより行なえる。
【0074】
顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料の、インク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜15質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲がより好ましく、1〜7質量%の範囲が特に好ましい。
【0075】
(樹脂粒子)
本発明におけるインク組成物は、樹脂粒子の少なくとも一種を含有する。樹脂粒子を、顔料を被う前記樹脂以外に含有することにより、インク組成物の記録媒体への定着性及び画像の耐擦過性をより向上させることができる。また、後述の処理液を用いて画像形成するときには、処理液又はこれを乾燥させた領域と接触した際に凝集してインク組成物が増粘することで、インク組成物を固定化する機能を有する。
【0076】
樹脂粒子は、水不溶性の樹脂の粒子が好ましい。水不溶性とは、樹脂を105℃で2時間乾燥させた後、25℃の水100g中に溶解させたときに、その溶解量が10g以下であることをいう。インクの連続吐出性及び吐出安定性を高める観点から、その溶解量は好ましくは5g以下であり、更に好ましくは1g以下である。前記溶解量は、水不溶性ポリマーの塩生成基の種類に応じて、水酸化ナトリウム又は酢酸で100%中和した時の溶解量である。
【0077】
樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性、熱硬化性あるいは変性のアクリル系、エポキシ系、ポリウレタン系、ポリエーテル系、ポリアミド系、不飽和ポリエステル系、フェノール系、シリコーン系、又はフッ素系の樹脂、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、又はポリビニルブチラール等のポリビニル系樹脂、アルキド樹脂、フタル酸樹脂等のポリエステル系樹脂、メラミン樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、アミノアルキド共縮合樹脂、ユリア樹脂、尿素樹脂等のアミノ系材料、あるいはそれらの共重合体又は混合物などの樹脂の粒子が挙げられる。これらのうち、アニオン性のアクリル系樹脂は、例えば、アニオン性基を有するアクリルモノマー(アニオン性基含有アクリルモノマー)及び必要に応じて該アニオン性基含有アクリルモノマーと共重合可能な他のモノマーを溶媒中で重合して得られる。前記アニオン性基含有アクリルモノマーとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、及びホスホン基からなる群より選ばれる1以上を有するアクリルモノマーが挙げられ、中でもカルボキシル基を有するアクリルモノマー(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、エタアクリル酸、プロピルアクリル酸、イソプロピルアクリル酸、イタコン酸、フマル酸等)が好ましく、特にはアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。
【0078】
樹脂粒子としては、吐出安定性及び顔料を含む系の液安定性(特に分散安定性)の観点から、自己分散性樹脂粒子が好ましい。自己分散性樹脂とは、界面活性剤の不存在下、転相乳化法により分散状態としたとき、ポリマー自身の官能基(特に酸性基又はその塩)により、水性媒体中で分散状態となりうる水不溶性ポリマーをいう。
ここで、分散状態とは、水性媒体中に水不溶性ポリマーが液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中に水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態(サスペンジョン)の両方の状態を含むものである。
自己分散性樹脂においては、インク組成物に含有されたときのインク定着性の観点から、水不溶性ポリマーが固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散性樹脂であることが好ましい。
【0079】
自己分散性樹脂の乳化又は分散状態、すなわち自己分散性樹脂の水性分散物の調製方法としては、転相乳化法が挙げられる。転相乳化法としては、例えば、自己分散性樹脂を溶媒(例えば、水溶性有機溶剤等)中に溶解又は分散させた後、界面活性剤を添加せずにそのまま水中に投入し、自己分散性樹脂が有する塩生成基(例えば、酸性基)を中和した状態で、攪拌、混合し、前記溶媒を除去した後、乳化又は分散状態となった水性分散物を得る方法が挙げられる。
【0080】
また、自己分散性樹脂における安定な乳化又は分散状態とは、水不溶性ポリマー30gを70gの有機溶剤(例えば、メチルエチルケトン)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤(塩生成基がアニオン性であれば水酸化ナトリウム、カチオン性であれば酢酸)、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶剤を除去した後でも、乳化又は分散状態が、25℃で、少なくとも1週間安定に存在し、沈殿の発生が目視で確認できない状態であることをいう。
【0081】
また、自己分散性樹脂における乳化又は分散状態の安定性は、遠心分離による沈降の加速試験によっても確認することができる。遠心分離による、沈降の加速試験による安定性は、例えば、上記の方法により得られたポリマー粒子の水性分散物を、固形分濃度25質量%に調整した後、12000rpmで一時間遠心分離し、遠心分離後の上澄みの固形分濃度を測定することによって評価できる。
遠心分離前の固形分濃度に対する遠心分離後の固形分濃度の比が大きければ(1に近い数値であれば)、遠心分離によるポリマー粒子の沈降が生じない、すなわち、ポリマー粒子の水性分散物がより安定であることを意味する。本発明においては、遠心分離前後での固形分濃度の比が0.8以上であることが好ましく、0.9以上であることがより好ましく、0.95以上であることが特に好ましい。
【0082】
自己分散性樹脂は、分散状態としたときに水溶性を示す水溶性成分の含有量が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましい。水溶性成分が10質量%以下とすることで、ポリマー粒子の膨潤やポリマー粒子同士の融着を効果的に抑制し、より安定な分散状態を維持することができる。また、水性インク組成物の粘度上昇を抑制でき、例えば、水性インク組成物をインクジェット法に適用する場合に、吐出安定性がより良好になる。
水溶性成分とは、自己分散性樹脂に含有される化合物であって、自己分散性樹脂を分散状態にした場合に水に溶解する化合物をいう。前記水溶性成分は自己分散性樹脂を製造する際に、副生又は混入する水溶性の化合物である。
【0083】
水不溶性樹脂の主鎖骨格としては、特に制限はなく、例えば、ビニルポリマー、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)が挙げられる。中でも、特にビニルポリマーが好ましい。
【0084】
ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また、縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
【0085】
自己分散性樹脂の粒子は、自己分散性の観点から、親水性の構成単位と芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマーに由来する構成単位とを含む水不溶性ポリマーを含むことが好ましい。
【0086】
前記「親水性の構成単位」は、親水性基含有モノマーに由来するものであれば、特に制限はなく、1種の親水性基含有モノマーに由来するものであっても、2種以上の親水性基含有モノマーに由来するものであってもよい。前記親水性基としては、特に制限はなく、解離性基であってもノニオン性親水性基であってもよい。
前記親水性基は、自己分散促進の観点、形成された乳化又は分散状態の安定性の観点から、解離性基であることが好ましく、アニオン性の解離基であることがより好ましい。前記解離性基としては、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基などが挙げられ、中でも、インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、カルボキシル基が好ましい。
【0087】
親水性基含有モノマーは、自己分散性と凝集性の観点から、解離性基含有モノマーであることが好ましく、解離性基とエチレン性不飽和結合とを有する解離性基含有モノマーであることが好ましい。解離性基含有モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマー等が挙げられる。
【0088】
前記不飽和カルボン酸モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、2−メタクリロイルオキシメチルコハク酸等が挙げられる。
前記不飽和スルホン酸モノマーの具体例としては、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、ビス−(3−スルホプロピル)−イタコン酸エステル等が挙げられる。
前記不飽和リン酸モノマーの具体例としては、ビニルホスホン酸、ビニルホスフェート、ビス(メタクリロキシエチル)ホスフェート、ジフェニル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイロキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイロキシエチルホスフェート等が挙げられる。
前記解離性基含有モノマーの中では、分散安定性、吐出安定性の観点から、不飽和カルボン酸モノマーが好ましく、アクリル系モノマーがより好ましく、特にはアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。
【0089】
自己分散性樹脂の粒子は、自己分散性と処理液を用いて画像形成する際の処理液接触時における凝集速度の観点から、カルボキシル基を有するポリマーを含むことが好ましく、カルボキシル基を有し、酸価が25〜100mgKOH/gであるポリマーを含むことがより好ましい。更に、前記酸価は、自己分散性と処理液が接触したときの凝集速度の観点から、30〜90mgKOH/gであることがより好ましく、35〜65mgKOH/gであることが特に好ましい。特に、酸価は、25mgKOH/g以上であると、自己分散性の安定性が良好になり、100mgKOH/g以下であると凝集性が向上する。
【0090】
前記芳香族基含有モノマーは、芳香族基と重合性基とを含む化合物であれば特に制限はない。前記芳香族基は芳香族炭化水素に由来する基であっても、芳香族複素環に由来する基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、芳香族炭化水素に由来する芳香族基であることが好ましい。
また、前記重合性基は、縮重合性の重合性基であっても、付加重合性の重合性基であってもよい。本発明においては水性媒体中での粒子形状安定性の観点から、付加重合性の重合性基であることが好ましく、エチレン性不飽和結合を含む基であることがより好ましい。
【0091】
本発明における芳香族基含有モノマーは、芳香族炭化水素に由来する芳香族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましい。芳香族基含有モノマーは、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
前記芳香族基含有モノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、スチレン系モノマー等が挙げられる。中でも、ポリマー鎖の親水性と疎水性のバランスとインク定着性の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、及びフェニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートが更に好ましい。
なお、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0093】
前記環状脂肪族基含有モノマーは、環状脂肪族炭化水素に由来する環状脂肪族基とエチレン性不飽和結合とを有するモノマーであることが好ましく、環状脂肪族基含有(メタ)アクリレートモノマー(以下、脂環式(メタ)アクリレートということがある)がより好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートとは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換又は置換された脂環式炭化水素基(環状脂肪族基)を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記脂環式炭化水素基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
【0094】
脂環式炭化水素基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、及びビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
前記脂環式炭化水素基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキル又はアリールカルボニル基、及びシアノ基等が挙げられる。また、脂環式炭化水素基は、さらに縮合環を形成していてもよい。本発明における脂環式炭化水素基としては、粘度や溶解性の観点から、脂環式炭化水素基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
【0095】
脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0096】
これらのうち、自己分散性樹脂粒子の分散安定性と、定着性、ブロッキング耐性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、又は3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0097】
自己分散性樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むアクリル系樹脂が好ましく、更には、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含み、その含有量が10質量%〜95質量%であることが好ましい。芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートの含有量が10質量%〜95質量%であることで、自己乳化又は分散状態の安定性が向上し、更にインク粘度の上昇を抑制することができる。
自己分散状態の安定性、芳香環同士の疎水性相互作用による水性媒体中での粒子形状の安定化、粒子の適度な疎水化による水溶性成分量の低下の観点から、15質量%〜90質量%であることがより好ましく、15質量%〜80質量%であることがより好ましく、25質量%〜70質量%であることが特に好ましい。
【0098】
自己分散性樹脂は、例えば、芳香族基含有モノマー又は環状脂肪族基含有モノマー(好ましくは脂環式(メタ)アクリレート)に由来する構成単位と、解離性基含有モノマーに由来する構成単位とを用いて構成することができる。更に、必要に応じて、その他の構成単位を更に含んでもよい。
【0099】
前記その他の構成単位を形成するモノマーとしては、前記芳香族基含有モノマーと解離性基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば特に制限はない。中でも、ポリマー骨格の柔軟性やガラス転移温度(Tg)制御の容易さの観点から、アルキル基含有モノマーであることが好ましい。
前記アルキル基含有モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するエチレン性不飽和モノマー、並びにジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、等の(メタ)アクリルエステル系モノマー;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、Nーヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、並びにN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−(n−,イソ)ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN−アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド等、等の(メタ)アクリルアミド系モノマーが挙げられる。
【0100】
自己分散性樹脂の粒子を構成する水不溶性ポリマーの分子量としては、重量平均分子量で3000〜20万であることが好ましく、5000〜15万であることがより好ましく、10000〜10万であることが更に好ましい。重量平均分子量を3000以上とすることで水溶性成分量を効果的に抑制することができる。また、重量平均分子量を20万以下とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定される。GPCの詳細については、既述した通りである。
【0101】
自己分散性樹脂の粒子を構成する水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマーに由来する構造単位(好ましくは、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位)あるいは環状脂肪族基含有モノマー(好ましくは脂環式(メタ)アクリレート)を共重合比率として自己分散性樹脂粒子の全質量の15〜80質量%を含むことが好ましい。
また、水不溶性ポリマーは、ポリマーの親疎水性制御の観点から、芳香族基含有(メタ)アクリレートモノマー又は脂環式(メタ)アクリレートに由来する構成単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はベンジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位、あるいはイソボルニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はアダマンチル(メタ)アクリレートに由来する構造単位及び/又はジシクロペンタニル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を共重合比率として15〜80質量%と、カルボキシル基含有モノマーに由来する構成単位と、アルキル基含有モノマーに由来する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸の炭素数1〜4のアルキルエステルに由来する構造単位)とを含むことがより好ましく、更には加えて、酸価が25〜100であって重量平均分子量が3000〜20万であることが好ましく、酸価が30〜90であって重量平均分子量が5000〜15万であることがより好ましい。
【0102】
以下、水不溶性樹脂粒子Aを形成する水不溶性樹脂の具体例を挙げる。但し、本発明においては、これらに限定されるものではない。なお、括弧内は、共重合成分の質量比を表す。
【0103】
B−01:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(50/45/5)
B−02:フェノキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(30/35/29/6)
B−03:フェノキシエチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(50/44/6)
B−04:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/エチルアクリレート/アクリル酸共重合体(30/55/10/5)
B−05:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/59/6)
B−06:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(10/50/35/5)
B−07:ベンジルアクリレート/メチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(55/40/5)
B−08:フェノキシエチルメタクリレート/ベンジルアクリレート/メタクリル酸共重合体(45/47/8)
B−09:スチレン/フェノキシエチルアクリレート/ブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(5/48/40/7)
B−10:ベンジルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/シクロヘキシルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(35/30/30/5)
B−11:フェノキシエチルアクリレート/メチルメタクリレート/ブチルアクリレート/メタクリル酸共重合体(12/50/30/8)
B−12:ベンジルアクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸共重合体(93/2/5)
B−13:スチレン/フェノキシエチルメタクリレート/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(50/5/20/25)
B−14:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(62/35/3)
B−15:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/51/4)
B−16:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/49/6)
B−17:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/48/7)
B−18:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/47/8)
B−19:メチルメタクリレート/フェノキシエチルアクリレート/アクリル酸共重合体(45/45/10)
B−21:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/72/8)、ガラス転移温度:180℃、I/O値:0.44
B−22:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(40/52/8)、ガラス転移温度:160℃、I/O値:0.50
B−23:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(20/62/10/8)、ガラス転移温度:170℃、I/O値:0.44
B−24:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 共重合体(20/72/8)、ガラス転移温度:160℃、I/O値:0.47
B−25:メチルメタクリレート/メトキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(46/11/35/8)
【0104】
この水不溶性樹脂は、凝集速度の観点から、有機溶媒中で合成されたポリマーを含み、該ポリマーはカルボキシル基を有し、該ポリマー(好ましくは酸価が25〜100であり、より好ましくは酸価が30〜90であり、更に好ましくは酸価が35〜65である)のカルボキシル基の一部又は全部は中和され、水を連続相とするポリマー分散物(分散体)として調製されたものであることが好ましい。すなわち、水不溶性樹脂粒子の製造は、有機溶媒中でポリマーを合成する工程と、前記ポリマーのカルボキシル基の少なくとも一部が中和された水性分散物とする分散工程とを設けて行なうことが好ましい。
前記分散工程は、次の工程(1)及び工程(2)を含むことが好ましい。
・工程(1):ポリマー(水不溶性ポリマー)、有機溶媒、中和剤、及び水性媒体を含有する混合物を、攪拌する工程
・工程(2):前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程
【0105】
前記工程(1)は、まずポリマー(水不溶性ポリマー)を有機溶媒に溶解させ、次に中和剤と水性媒体を徐々に加えて混合、攪拌して分散体を得る処理であることが好ましい。このように、有機溶媒中に溶解した水不溶性ポリマー溶液中に中和剤と水性媒体を添加することで、強いせん断力を必要とせずに、より保存安定性の高い粒径の自己分散性樹脂粒子を得ることができる。混合物の攪拌方法に特に制限はなく、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
【0106】
有機溶媒としては、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒及びエーテル系溶媒が好ましく挙げられる。アルコール系溶媒としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t−ブタノール、エタノール等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒の中では、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒とイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒が好ましい。また、油系から水系への転相時への極性変化を穏和にする目的で、イソプロピルアルコールとメチルエチルケトンを併用することも好ましい。該溶剤を併用することで、凝集沈降や粒子同士の融着が無く、分散安定性の高い微粒径の自己分散性樹脂粒子を得ることができる。
【0107】
中和剤は、解離性基の一部又は全部が中和され、ポリマーが水中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。水不溶性樹脂粒子が解離性基としてアニオン性の解離基(例えばカルボキシル基)を有する場合、用いられる中和剤としては有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアニン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散性樹脂粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
【0108】
これら塩基性化合物は、解離性基100モル%に対して、5〜120モル%使用することが好ましく、10〜110モル%であることがより好ましく、15〜100モル%であることが更に好ましい。15モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、100モル%以下とすることで、水溶性成分を低下させる効果がある。
【0109】
前記工程(2)においては、前記工程(1)で得られた分散体から、減圧蒸留等の常法により有機溶剤を留去して水系へと転相することで自己分散性樹脂粒子の水性分散物を得ることができる。得られた水性分散物中の有機溶媒は実質的に除去されており、有機溶媒の量は、好ましくは0.2質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。
【0110】
自己分散性樹脂の粒子の平均粒子径は、体積平均粒子径で10nm〜400nmの範囲が好ましく、10〜200nmの範囲がより好ましく、10〜100nmの範囲が更に好ましい。体積平均粒子径は、10nm以上であると製造適性が向上し、1μm以下であると保存安定性が向上する。
また、自己分散性樹脂の粒子の粒径分布に関しては、特に制限はなく、広い粒径分布を持つもの又は単分散の粒径分布を持つもののいずれでもよい。また、水不溶性粒子を2種以上混合して使用してもよい。
なお、自己分散性樹脂の粒子の平均粒子径及び粒径分布は、ナノトラック粒度分布測定装置UPA−EX150(日機装(株)製)を用いて、動的光散乱法により体積平均粒径を測定することにより求められるものである。
【0111】
樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は、インク組成物の保存安定性の観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましい。
【0112】
樹脂粒子のインク組成物中における含有量としては、インク組成物の全質量に対して、0.5〜10質量%が好ましく、1〜9質量%がより好ましく、3〜9質量%がさらに好ましい。水不溶性樹脂の粒子の含有量は、0.5質量%以上であると、画像の耐擦過性が向上し、10質量%以下であると、長期における吐出安定性の点で有利である。
【0113】
(ワックス粒子)
本発明におけるインク組成物は、ワックス粒子の少なくとも一種を含有する。ワックスを含有することにより、耐擦過性をより向上させることができる。
【0114】
ワックス粒子としては、例えば、カルナバワックス、キャンデリワックス、みつろう、ライスワックス、ラノリン等の植物系、動物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、ペトロラタム等の石油系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト等の鉱物系ワックス、カーボンワックス、ヘキストワックス、ポリオレフィンワックス、ステアリン酸アミド等の合成ワックス、α−オレフィン・無水マレイン酸共重合体、等の天然ワックス又は合成ワックスの粒子あるいはこれらの混合粒子等が挙げられる。
【0115】
ワックスは、分散物の形で添加されることが好ましく、例えば、エマルジョンなどの分散物としてインク組成物中に含有することができる。分散物とする場合の溶媒としては水が好ましいが、これに限定されるものではなく、例えば通常用いられている有機溶媒を適宜選択して分散時に使用することができる。有機溶媒については、特開2006−91780号公報の段落番号[0027]の記載を参照することができる。
ワックス粒子は、一種単独であるいは複数種を混合して用いることができる。
【0116】
ワックス粒子は上市されている市販品を用いてもよい。市販品の例として、ノプコートPEM17(サンノプコ(株)製)、ケミパールW4005(三井化学(株)製)、AQUACER515、AQUACER593(いずれもビックケミー・ジャパン(株)製)、セロゾール524(中京油脂(株)製)等が挙げられる。
【0117】
上記のうち、好ましいワックスとしては、カルナバワックス、ポリオレフィンワックスが好ましく、インクの経時安定性の点で、特に好ましくはカルナバワックスである。
【0118】
樹脂粒子とワックス粒子との含有比率としては、樹脂粒子:ワックス粒子=1:1〜5:1の範囲(固形分比)であることが好ましい。含有比率がこの範囲内であると、画像の耐擦性に優れる。
【0119】
(1,2−アルキレンジオール)
本発明におけるインク組成物は、1,2−アルキレンジオールの少なくとも一種を含有する。1,2−アルキルジオールは、後述のアセチレングリコール系界面活性剤と共に含有されることで、記録媒体に対するインク組成物の濡れ性を相乗的に向上させる作用を示し、インクの濃淡ムラや滲みがより高められる。
【0120】
1,2−アルキルジオールとしては、例えば、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオールなど、炭素数が4〜8の1,2−アルキルジオールが挙げられる。中でも、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオールなど、炭素数6〜8の1,2−アルキルジオールが好ましい。炭素数が4以上であることで、記録媒体に対する濡れ性がより良好になり、画像中の濃淡ムラや滲みの発生がより抑えられる。また、炭素数が8以下であることで、水溶性が保たれ、インクの保存安定性を損なうことなく必要量を添加できる。
【0121】
1,2−アルキルジオールのインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、1〜8質量%が好ましく、1.5〜5.0質量%がより好ましい。1,2−アルキルジオールの含有量が1質量%以上であると、記録媒体に対するインク組成物の濡れ性が良好であり、濃淡ムラや滲みの発生の少ない画像が得られる。また、1,2−アルキルジオール類の含有量が8質量%以下であると、乾燥後の残存が生じ難く、乾燥性の確保に有利である。また、臭気を抑える点でも有利である。
【0122】
(多価アルコール)
本発明におけるインク組成物は、多価アルコールの少なくとも一種を含有する。多価アルコールは、吐出ヘッドのノズル部でのインクの乾燥固化を抑制し、インクの目詰まり、吐出方向曲がりや吐出不良等を防止する。
【0123】
本発明においては、乾燥時に水分とともに蒸発除去が容易である点で、蒸気圧の高い多価アルコールが好ましい。
多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。中でも、蒸気圧が高く打滴後の乾燥性を損なわない点で、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンが好ましい。
【0124】
多価アルコールのインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、2〜20質量%が好ましく、10〜19質量%がより好ましい。多価アルコールの含有量は、2質量%以上であると、インクの乾燥固化を抑制し、インクの目詰まり、吐出方向曲がりや吐出不良等を防ぐことができ、また20質量%以下であると、乾燥後において多価アルコールの残存が生じ難く、乾燥性の確保に有利である。また、臭気を抑える点でも有利である。
【0125】
(ピロリドン誘導体)
本発明におけるインク組成物は、ピロリドン誘導体の少なくとも一種を含有する。ピロリドン誘導体は、インク乾燥時に樹脂粒子による皮膜形成を促進し、記録媒体上でのインクの固化、定着を促進する機能を有する。例えばインクの吐出と吐出休止とが繰り返される使用形態において、インクの吐出曲がり及び不吐出が抑制され、インク吐出性、ひいては所期の高精細画像の形成性が安定化する。
【0126】
ピロリドン誘導体としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、ポリビニルピロリドン、等が挙げられる。中でも特に、インク組成物の保存性確保、樹脂粒子による皮膜形成促進、及び臭気低減の観点から、2−ピロリドン、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0127】
ピロリドン誘導体のインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、1〜8質量%が好ましく、2〜4質量%がより好ましい。ピロリドン誘導体の含有量が1質量%以上であると、インク組成物中の樹脂粒子による皮膜形成性に優れ、インクの固化、定着が良化する。また、ピロリドン誘導体の含有量が8質量%以下であると、乾燥後においてピロリドン誘導体の残存が生じ難く、乾燥性の確保に有利である。また、臭気を抑える点でも有利である。
【0128】
ピロリドン誘導体と前記1,2−アルキルジオールとの合計量としては、インク組成物の全質量に対して、10質量%以下であることが好ましい。該合計量が10質量%以下であることで、乾燥後においてピロリドン誘導体と1,2−アルキルジオールの残存が生じ難く、乾燥性の確保に有利である。また、臭気を抑える点でも有利である。
【0129】
(アセチレングリコール系界面活性剤)
本発明におけるインク組成物は、アセチレングリコール系界面活性剤の少なくとも一種を含有する。アセチレングリコール系界面活性剤は、他の界面活性剤に比べ、表面張力及びインクと接触するプリンタ部材(ヘッドノズルなど)との間の界面張力を適正に保ちやすく、起泡しにくい。そのため、インク組成物を吐出する際の吐出安定性が高められる。また、アセチレングリコール系界面活性剤を含有することで、記録媒体に対する濡れ性や浸透性が良好になり、インクの濃淡ムラやインク滲みが抑えられ、精細な画像形成に有利である。
【0130】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、例えば、サーフィノール104、同104E、同104H、同104A、同104BC、同104DPM、同104PA、同104PG−50、同104S、同420、同440、同465、同485、同SE、同SE−F、同504、同61、同DF37、同CT111、同CT121、同CT131、同CT136、同TG、同GA(以上、いずれもAir Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、同Y、同P、同A、同STG、同SPC、同E1004、同E1010、同PD−001、同PD−002W、同PD−003、同PD−004、同EXP.4001、同EXP.4036、同EXP.4051、同AF−103、同AF−104、同AK−02、同SK−14、同AE−3(以上、いずれも日信化学工業(株)製)、アセチレノールE00、同E00P、同E40、同E100(以上、いずれも川研ファインケミカル(株)製)等が挙げられる。
【0131】
アセチレン系界面活性剤のインク組成物中における含有量は、インク組成物の全質量に対して、0.1〜1.5質量%が好ましく、0.5〜1.0質量%がより好ましい。アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が0.1質量%以上であると、記録媒体上でインクが均一に濡れ広がり易く、インクの濃淡ムラや滲みを抑えて均質な画像が得られる。また、アセチレングリコール系界面活性剤の含有量が1.5質量%以下であると、インク組成物の保存安定性、吐出安定性に優れる。
【0132】
(水)
本発明におけるインク組成物は、水を含有するものであるが、水の量には特に制限はない。中でも、水の量は、安定性及び吐出信頼性確保の点から、インク組成物の全質量に対して、好ましくは10質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上80質量%以下であり、更に好ましくは、50質量%以上70質量%以下である。
【0133】
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水又は超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液及びこれを用いたインク組成物を長期保存する場合に、カビやバクテリアの発生が防止される点で好適である。
【0134】
(その他成分)
本発明におけるインク組成物は、上記した成分のほか、更に他の成分として、必要に応じて、浸透溶剤、保湿剤、防腐剤・防黴剤、pH調整剤、キレート化剤等の添加剤を含有することができる。これら添加剤の詳細については、特開2010−90266号公報の[0067]〜[0076]の記載を参照することができる。
【0135】
(記録媒体)
本発明の画像形成方法に用いられる記録媒体は、特に制限されるものではないが、インク組成物に対して非吸収性ないし低吸収性の記録媒体を用いた場合に、本発明の効果がより奏される。
【0136】
本発明において好ましい記録媒体としては、塗工層を有し、面積が1250cm以上の記録媒体である。塗工層を有する記録媒体は、一般のオフセット印刷などに用いられる、いわゆる塗工紙である。塗工紙は、セルロースを主体とした一般に表面処理されていない上質紙や中性紙等の表面にコート材を塗布してコート層を設けたものである。
なお、面積が1250cm以上であることは、画像形成時に付与されるインクの付与量が比較的多い場合を示すものであり、1250cm以上の場合に乾燥が不充分になり易く、耐擦性の向上及び画像欠陥の発生防止効果が大きい。
【0137】
記録媒体は、塗工層が両面で12g/m以上であるものが好ましく、より好ましくは18g/m以上である。塗工層が両面で12g/m以上であるものは、一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙である。塗工層が前記範囲内であると、インクの吸収量が多く、本発明において奏される効果が大きい。
また、記録媒体の坪量は、70〜350g/mが好ましく、より好ましくは70〜200g/mである。一般のオフセット印刷などに用いられる塗工紙は、坪量がこの範囲に含まれる。坪量が前記範囲内である場合は、インクの吸収量が多く、本発明において奏される効果が大きい。
【0138】
塗工紙は、従来の通常の水性インクジェットによる画像形成においては、インク吸収が遅く、高速に、更には両面に画像形成する場合において、インクの吸収、乾燥が追いつかず、画像形成後に順次、複数枚を重ねて集積される画像形成システムでは、記録媒体間で擦れや引っ掻きなどが原因で傷や剥れ等の画像欠陥が生じやすくなるところ、本発明の画像形成方法においては、優れた耐擦性が得られ、画像欠陥の少ない高品位の画像の形成が可能になる。
【0139】
上記の中でも、特に原紙とカオリン及び/又は重炭酸カルシウムを含むコート層とを有する塗工紙が好ましい。より具体的には、前記塗工紙としてアート紙、コート紙、軽量コート紙、又は微塗工紙がより好ましい。
【0140】
塗工紙は、一般に上市されているものを入手して使用できる。例えば、一般印刷用塗工紙を用いることができ、具体的には、王子製紙(株)製の「OKエバーライトコート」及び日本製紙(株)製の「オーロラS」等の微塗工紙、王子製紙(株)製の「OKコートL」及び日本製紙(株)製の「オーロラL」等の軽量コート紙(A3)、王子製紙(株)製の「OKトップコート+」、日本製紙(株)製の「オーロラコート」、「ユーライト」等のコート紙(A2、B2)、及び三菱製紙社製の「特菱アート」等のアート紙(A1)、王子製紙(株)製の「OK金藤+」及び三菱製紙(株)製の「特菱アート」等のアート紙(A1)などを挙げることができる。
【0141】
中でも、色材移動の抑制効果が大きく、従来以上に色濃度及び色相の良好な高品位な画像を得る観点からは、水の吸収係数Kaが0.05〜0.5でmL/m・ms1/2の記録媒体が好ましく、より好ましくは0.1〜0.4mL/m・ms1/2の記録媒体であり、更に好ましくは0.2〜0.3mL/m・ms1/2の記録媒体である。
【0142】
水の吸収係数Kaは、JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No51:2000(発行:紙パルプ技術協会)に記載されているものと同義であり、具体的には、吸収係数Kaは、自動走査吸液計KM500Win(熊谷理機(株)製)を用いて接触時間100msと接触時間900msにおける水の転移量の差から算出されるものである。
【0143】
−乾燥工程−
本発明における乾燥工程は、前記インク付与工程でインクが付与された記録媒体を乾燥させる。記録媒体上に付着されたインク組成物中に含有される液媒体、具体的には水、ピロリドン誘導体、1,2−アルキルジオール、及び多価アルコールが蒸発、飛散し、着色された樹脂皮膜が形成される。これにより、記録媒体上、ひいてはインク組成物に対して非吸収性ないし低吸収性の記録媒体上に、傷や剥れ等の画像欠陥の少ない高画質な画像を高速に形成することができる。
【0144】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられる。加熱方法としては、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0145】
加熱乾燥時の温度としては、特に制限はなく、乾燥可能な温度領域を選択すればよい。例えば、送風により記録媒体の温度が45〜70℃になるように加熱する、あるいは45〜70℃の乾燥ドラムに接触させて記録媒体の温度が45〜70℃になるように乾燥させる形態でもよい。また、これらを併用して乾燥させてもよい。
【0146】
〜冷却工程〜
本発明の画像形成方法では、前記乾燥工程で一旦加熱して乾燥させた後、集積前にあらかじめ記録媒体を冷却する冷却工程を設けてもよい。冷却工程では、乾燥後の記録媒体の温度を35℃以下に冷却することが好ましい。
【0147】
記録媒体の温度は、乾燥後に冷却処理が施されて集積された時点(集積直後)での温度として測定される値[℃]である。集積段階で好ましくは35℃以下の温度域まで冷却されることにより、集積状態にした際の耐擦性を向上させることができる。この記録媒体の温度は、集積された時点(集積直後)において、所望とする記録媒体間に配置された紙間温湿度計(HYGROPALM、ロトロニック社製)により測定される。
【0148】
冷却後の温度は、35℃以下が好ましく、傷や剥れの防止の観点からすると、30℃以下が好ましい。冷却後の温度の下限値については、特に制限はない。
【0149】
冷却方法としては、記録媒体の温度を積極的に下げることができる冷却工程であればいずれの方法であってもよい。冷却方法の例としては、冷却ゾーンに記録媒体を通過させる方法、冷風を記録媒体にあてる方法、冷却した物体に記録媒体を接触させる方法などが挙げられる。
【0150】
−処理液付与工程−
本発明の画像形成方法は、上記工程に加え、更に、既述のインク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を設けて好適に構成される。
【0151】
処理液は、インク組成物と接触したときにインク組成物中の成分を凝集させて凝集体を形成するものである。本発明においては、予め処理液が付与された上にインク組成物を吐出する態様でもよいし、はじめにインク組成物を付与した後に処理液を付与することもできる。処理液をインク組成物と接触するように記録媒体上に付与し、処理液がインク組成物と接触したときには、インク組成物中の樹脂粒子や顔料などの分散粒子が凝集し、記録媒体上に画像が固定化される。これにより、インクジェット記録がより高速化され、高速記録しても濃度、解像度の高い描画性(例えば細線や微細部分の再現性)に優れた画像が得られる。
【0152】
処理液の付与は、塗布法、インクジェット法、浸漬法などの公知の方法を適用して行なうことができる。塗布法としては、バーコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター等を用いた公知の塗布方法が挙げられる。なお、インクジェット法の詳細については既述した通りである。
本発明においては、処理液の付与量を低く抑える観点から、インクジェット法で吐出方法によるのが好ましい。
【0153】
処理液は、インク組成物と接触したときにインク組成物中の成分を凝集させて凝集体を形成する凝集成分の少なくとも1種が含有されている。処理液がインク組成物と混合することで、インク組成物中に安定的に分散している顔料等の凝集が促進される。このような処理液の例としては、インク組成物のpHを変化させることにより凝集物を生じさせることができる液体が挙げられる。このとき、処理液のpH(25℃±1℃)は、インク組成物の凝集速度の観点から、6以下が好ましく、1〜6がより好ましく、1.2〜5が更に好ましく、特に好ましくは1.5〜4である。この場合、インク組成物のpH(25±1℃)は、7.5〜9.5(より好ましくは8.0〜9.0)が好ましい。
中でも、画像濃度、解像度、及びインクジェット記録の高速化の観点から、インク組成物のpH(25±1℃)が7.5以上であって、処理液のpH(25±1℃)が1.5〜3である場合が好ましい。
前記凝集成分は、1種単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0154】
処理液は、凝集成分として、酸性化合物の少なくとも1種を用いて好適に構成することができる。酸性化合物としては、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、又はカルボキシル基を有する化合物、あるいはその塩(例えば多価金属塩)を使用することができる。中でも、インク組成物の凝集速度の観点から、リン酸基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、カルボキシル基を有する化合物が更に好ましい。
【0155】
前記カルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ポリアクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、もしくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩(例えば多価金属塩)等の中から選ばれることが好ましい。
【0156】
また、処理液としては、凝集成分として多価金属塩及び/又はポリアリルアミンを含有する液を用いてもよく、高速凝集性を向上させることができる。多価金属塩としては、周期表の第2属のアルカリ土類金属(例えば、マグネシウム、カルシウム)、周期表の第3属の遷移金属(例えば、ランタン)、周期表の第13属からのカチオン(例えば、アルミニウム)、ランタニド類(例えば、ネオジム)の塩、及びポリアリルアミン、ポリアリルアミン誘導体を挙げることができる。金属の塩としては、カルボン酸塩(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)、硝酸塩、塩化物、及びチオシアン酸塩が好適である。中でも、好ましくは、カルボン酸(蟻酸、酢酸、安息香酸塩など)のカルシウム塩又はマグネシウム塩、硝酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、及びチオシアン酸のカルシウム塩又はマグネシウム塩である。
【0157】
多価金属塩及び/又はポリアリルアミンの処理液中における含有量としては、凝集効果の観点から、1〜10質量%が好ましく、より好ましくは1.5〜7質量%であり、更に好ましくは2〜6質量%の範囲である。
【0158】
また、処理液としては、凝集成分としてカチオン性有機化合物を含有する液でもよい。カチオン性有機化合物としては、例えば、ポリ(ビニルピリジン)塩、ポリアルキルアミノエチルアクリレート、ポリアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリ(ビニルイミダゾール)、ポリエチレンイミン、ポリビグアニド、ポリグアニド、又はポリアリルアミン及びその誘導体などのカチオン性ポリマーを挙げることができる。
前記カチオン性ポリマーの重量平均分子量としては、処理液の粘度の観点では分子量が小さい方が好ましい。処理液をインクジェット方式で記録媒体に付与する場合には、1,000〜500,000の範囲が好ましく、1,500〜200,000の範囲がより好ましく、更に好ましくは2,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量は、1000以上であると凝集速度の観点で有利であり、500,000以下であると吐出信頼性の点で有利である。但し、処理液をインクジェット以外の方法で記録媒体に付与する場合には、この限りではない。
【0159】
前記カチオン性有機化合物としては、例えば、1級、2級、又は3級アミン塩型の化合物が好ましい。このアミン塩型の化合物の例として、塩酸塩もしくは酢酸塩等の化合物(例えば、ラウリルアミン、ヤシアミン、ステアリルアミン、ロジンアミンなど)、第4級アンモニウム塩型化合物(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウムなど)、ピリジニウム塩型化合物(例えば、セチルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムブロマイドなど)、イミダゾリン型カチオン性化合物(例えば、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリンなど)、高級アルキルアミンのエチレンオキシド付加物(例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミンなど)等のカチオン性の化合物や、例えば、アミノ酸型の両性界面活性剤、R−NH−CHCH−COOH型の化合物(Rはアルキル基等を表す。)、カルボン酸塩型両性界面活性剤(例えば、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなど)、硫酸エステル型、スルホン酸型、又は燐酸エステル型等の両性界面活性剤など所望のpH領域でカチオン性を示す両性界面活性剤などを挙げることができる。中でも、2価以上のカチオン性有機化合物が好ましい。
【0160】
カチオン性有機化合物を用いる場合、カチオン性有機化合物の処理液中における含有量は、凝集効果の観点から、1〜50質量%が好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
【0161】
上記のうち、凝集成分としては、凝集性及び画像の耐擦過性の点で、2価以上のカルボン酸、又は2価以上のカチオン性有機化合物が好ましく、2価以上のカルボン酸がより好ましい。
【0162】
処理液の粘度としては、インク組成物の凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。なお、粘度は、VISCOMETER TV-22(TOKI SANGYO CO.LTD製)を用いて20℃の条件下で測定されるものである。
また、処理液の表面張力としては、インク組成物の凝集速度の観点から、20〜60mN/mの範囲が好ましく、20〜45mN/mの範囲がより好ましく、25〜40mN/mの範囲がさらに好ましい。なお、表面張力は、Automatic Surface Tensiometer CBVP-Z(協和界面科学(株)製)を用いて25℃の条件下で測定されるものである。
【0163】
処理液の記録媒体への付与量としては、インク組成物中の成分を凝集可能であれば特に制限はないが、好ましくは、凝集成分(例えばカルボキシル基を有する化合物又はカチオン性有機化合物)の付与量が0.1g/m以上となる量とすることができる。中でも、凝集成分の付与量が0.1〜1.0g/mとなる量が好ましく、より好ましくは0.2〜0.8g/mである。凝集成分の付与量は、0.1g/m以上であると凝集反応が良好に進行する。また、付与量を1.0g/m以下にすることで、高くなり過ぎない程度の光沢度が得られる。
【0164】
前記インク付与工程前にあらかじめ処理液を記録媒体上に付与する場合、処理液の付与後、インク付与工程でインク組成物が付与されるまでの間に、記録媒体上の処理液を加熱乾燥する加熱乾燥工程が更に設けられていることが好ましい。インク付与工程前にあらかじめ処理液を加熱乾燥させておくと、滲み防止など画像の精細さが高まり、色濃度及び色相の良好な可視画像が得られる。
【0165】
加熱乾燥は、ヒータ等の公知の加熱手段やドライヤ等の送風を利用した送風手段、あるいはこれらを組み合わせた手段により行なえる。加熱方法としては、例えば、記録媒体の処理液の付与面と反対側からヒータ等で熱を与える方法や、記録媒体の処理液の付与面に温風又は熱風をあてる方法、赤外線ヒータを用いた加熱法などが挙げられ、これらの複数を組み合わせて加熱してもよい。
【0166】
−加熱定着工程−
本発明においては、必要に応じて、前記インク付与工程の後に記録媒体上のインクを加熱定着する加熱定着工程を更に設けることが好ましい。加熱定着工程は、インク組成物、あるいは処理液及びインク組成物の付与によって記録された画像を加熱し、記録媒体に定着させる。加熱定着処理を施すことにより、記録媒体上の画像の定着が施され、画像の耐擦過性をより向上させることができる。そのため、本発明の画像形成方法においては、加熱定着工程を設けることが好ましい。
【0167】
加熱は、画像中の樹脂粒子の最低造膜温度(MFT)以上の温度で行なうことが好ましい。MFT以上に加熱されることで、粒子が皮膜化して画像が強化される。加熱と共に加圧してもよい。加熱を加圧下で行なう場合、加圧時における圧力は、表面平滑化の点で、0.1〜3.0MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜1.0MPaの範囲であり、更に好ましくは0.1〜0.5MPaの範囲である。
【0168】
加熱の方法は、特に制限されないが、ニクロム線ヒーター等の発熱体で加熱する方法、温風又は熱風を供給する方法、ハロゲンランプ、赤外線ランプ等で加熱する方法など、非接触で乾燥させる方法を好適に挙げることができる。また、加熱加圧の方法は、特に制限はないが、例えば、熱板を記録媒体の画像形成面に押圧する方法や、一対の加熱加圧ローラ、一対の加熱加圧ベルト、あるいは記録媒体の画像記録面側に配された加熱加圧ベルトとその反対側に配された保持ローラとを備えた加熱加圧装置を用い、対をなすローラ等を通過させる方法など、接触させて加熱定着を行なう方法が好適に挙げられる。
【0169】
加熱加圧する場合、好ましいニップ時間は、1ミリ秒〜10秒であり、より好ましくは2ミリ秒〜1秒であり、更に好ましくは4ミリ秒〜100ミリ秒である。また、好ましいニップ幅は、0.1mm〜100mmであり、より好ましくは0.5mm〜50mmであり、更に好ましくは1mm〜10mmである。
【0170】
前記加熱加圧ローラとしては、金属製の金属ローラでも、あるいは金属製の芯金の周囲に弾性体からなる被覆層及び必要に応じて表面層(又は離型層ともいう)が設けられたものでもよい。後者の芯金は、例えば、鉄製、アルミニウム製、SUS製等の円筒体で構成することができ、芯金の表面は被覆層で少なくとも一部が覆われているものが好ましい。被覆層は、特に、離型性を有するシリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂で形成されるのが好ましい。また、加熱加圧ローラの一方の芯金内部には、発熱体が内蔵されていることが好ましく、ローラ間に記録媒体を通すことによって、加熱処理と加圧処理とを同時に施したり、あるいは必要に応じて、2つの加熱ローラを用いて記録媒体を挟んで加熱してもよい。発熱体としては、例えば、ハロゲンランプヒーター、セラミックヒーター、ニクロム線等が好ましい。
【0171】
加熱加圧装置に用いられる加熱加圧ベルトを構成するベルト基材としては、シームレスのニッケル電鍮が好ましく、基材の厚さは10〜100μmが好ましい。また、ベルト基材の材質としては、ニッケル以外にもアルミニウム、鉄、ポリエチレン等を用いることができる。シリコーン樹脂あるいはフッ素樹脂を設ける場合は、これら樹脂を用いて形成される層の厚みは、1〜50μmが好ましく、更に好ましくは10〜30μmである。
【0172】
また、前記圧力(ニップ圧)を実現するには、例えば、加熱加圧ローラ等のローラ両端に、ニップ間隙を考慮して所望のニップ圧が得られるように、張力を有するバネ等の弾性部材を選択して設置すればよい。
【0173】
加熱加圧ローラ、あるいは加熱加圧ベルトを用いる場合の記録媒体の搬送速度は、200〜700mm/秒が好ましく、より好ましくは300〜650mm/秒であり、更に好ましくは400〜600mm/秒である。
【0174】
−集積工程−
本発明における集積工程は、前記乾燥工程で乾燥した後の記録媒体を、記録媒体に粒子径1〜100μmの粉状物を1〜1000mg/m付着させる工程を設けて、粉状物が付着した記録媒体を積み重ねて集積する。
【0175】
記録媒体の集積は、任意の集積部に枚様の記録媒体を積み重ねて束状に回収することであり、記録媒体の平面サイズに対応する面積内に自由落下させる等して集積する。本発明においては、このように積み重ねられる記録媒体の枚数が例えば50枚以上になった場合に生じやすい画像への傷や剥れ等の画像欠陥の発生を防止できる。
【0176】
集積手段としては、従来から使用されているインクジェット画像形成装置に備えられた排出具、排出口、紙積台などの集積手段と同様のものが使用可能である。例えば記録媒体に粉状物が付着されると、粉状物が付着された記録媒体は装置の排出口から排出され、紙積台に積み重ねられる。
【0177】
粉状物の粒子径としては、1〜100μmが好ましい。粒子径が前記範囲内であると、記録媒体の画像の耐擦性が向上し、画像における傷や剥がれ等の画像欠陥の発生が抑制される。粉状物の粒子径が大きすぎると画像のザラツキや、機内の粉状物による汚れが無視できなくなりやすく、また粒子径が小さすぎると耐擦性の改善効果が低下する。そのため、画像の耐擦性を高めて画像欠陥の発生をより効果的に防ぐ観点からは、前記粒子径は、5〜50μmが好ましく、10〜40μmがさらに好ましく、15〜35μmがより好ましい。
本発明において、「粒子径」は、体積平均粒子径をいう。
【0178】
また、記録媒体への粉状物の付着量としては、1〜1000mg/mとする。付着量が前記範囲内であると、記録媒体の画像の耐擦性が向上し、画像における傷や剥がれ等の画像欠陥の発生が抑制される。画像の耐擦性をより高めて画像欠陥の発生をより効果的に防ぐ観点からは、前記付着量は、1〜500mg/mが好ましく、10〜100mg/mがより好ましく、20〜100mg/mが更に好ましい。
【0179】
粉状物の付与手段としては、従来より印刷分野でブロッキング防止用のパウダー付与手段として用いられているパウダースプレーノズルなどと同様の部材を用いることができる。また、ブロワー式、電子噴霧式のいずれでもよい。
【0180】
粉状物の粒子は、無機粒子及び有機粒子のいずれであってもよい。また、従来より印刷分野で使用されているブロッキング防止パウダーを用いることもできる。
【0181】
粉状物の例としては、シリコーン樹脂をコーティングした澱粉、シリカ(二酸化珪素)、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、及び金属酸化物からなる群から選ばれる材料の粒子(以下、パウダー粒子ともいう。)が好ましい。
【0182】
前記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルアクリレート及びポリメチルメタアクリレート(PMMA)を挙げることができる。
前記スチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンを挙げることができる。
前記金属酸化物としては、例えば、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アルミニウムを挙げることができる。
【0183】
インクジェット記録に用いられるインク組成物は、通常印刷分野で用いられる印刷用インクに比べ、水含有量が高いため、耐擦性を高め、画像における画像欠陥の発生を防ぐためには、パウダー粒子は疎水性であることが好ましい。例えば、シリコーン樹脂でコーティング処理した澱粉などの疎水処理されているパウダーが更に好ましい。
【0184】
本発明の画像形成方法は、例えば図1に示すように構成されたインクジェット記録装置(画像形成装置)を用いて好適に行なえる。図1は、本発明の画像形成方法を実施するインクジェット記録装置の一例を示す概略構成図である。
【0185】
図1に示すように、インクジェット記録装置100は、記録媒体1が搬送ベルト2によって搬送される搬送路に沿って、記録媒体1の搬送方向(矢印方向)における上流側から順に、処理液を記録媒体上に吐出する処理液吐出用ヘッド(処理液付与手段)31と、インクを吐出するインク吐出ヘッド(インク付与手段)32と、吐出形成されたインク画像を加熱乾燥する加熱乾燥手段4と、乾燥後のインク画像を加熱加圧処理して画像を定着する定着手段として加熱ロール5及び加圧ロール6からなる一対の定着ロールと、定着画像を冷却する冷却手段7と、画像が形成された記録媒体にパウダー(粉状物)を付着させるパウダー噴霧器(パウダー付与手段)8と、パウダーが付着された記録媒体を積み重ねて集積する集積トレイ(集積手段)9とを備えている。
【0186】
画像形成装置100の搬送路内に記録媒体1が搬送ベルト2により送り込まれると、処理液付与手段である処理液吐出用ヘッド31から記録媒体1にインク付与前に予め処理液が付与される。処理液付与手段としては、インクジェットノズルやローラ等が使用可能である。その後、インクジェットノズル等のインク付与手段の例であるインク吐出ヘッド32からインク組成物が記録媒体1の処理液付与面に向けて吐出され、記録媒体上に吐出されたインクで画像が形成される。画像が形成された記録媒体(印画物)1は、ドライヤ等の温風噴出ノズルやIRヒータ等の加熱ヒータを備えた加熱乾燥器4によって加熱乾燥され、定着手段として配置された一対の定着ロールに搬送される。定着手段には、加熱ローラ5と加圧ローラ6とが互いに圧接された熱圧着ローラが備えられており、搬送された印画物はこの加熱ローラ5と加圧ローラ6との間を通過し、通過時に熱圧着されることで記録媒体1上に形成された画像が定着されるようになっている。次いで、記録媒体1は、送風機(冷却手段)7で冷却され、加熱乾燥器4での加熱乾燥工程の直後に比べ、例えば5℃以上低い温度にまで冷やされる。その後の集積工程において、パウダー噴霧器(パウダー付与手段)8から記録媒体の画像形成面にパウダーが付与された後、パウダーが付着した記録媒体1は排出口から排出され、集積トレイなどの集積手段9に積み重ねられ、集積される。
【実施例】
【0187】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0188】
なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定し、ポリスチレン換算して表した分子量である。GPCは、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムとして、TSKgeL SuperHZM−H、TSKgeL SuperHZ4000、TSKgeL SuperHZ2000(いずれも東ソー(株)製の商品名)を用いて3本直列につなぎ、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。
また、酸価は、JIS規格(JIS K 0070:1992)に規定される方法により求めた。
【0189】
(実施例1)
<ポリマー粒子の調製>
〜自己分散性ポリマー粒子B−01の水分散物の調製〜
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた2リットル三口フラスコに、メチルエチルケトン560.0gを仕込んで87℃まで昇温した。反応容器内を還流状態を保ちながら(以下、反応終了まで還流)、この反応容器に、メチルメタクリレート266.8g、メトキシエチルアクリレート63.8g、ベンジルメタクリレート203g、メタクリル酸46.4g、及び「V−601」(和光純薬工業(株)製)2.32gからなる混合溶液を、2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、1時間攪拌した。その後、V−601を1.16gとメチルエチルケトン6.4gとからなる溶液を加え、2時間攪拌を行なった(工程(1))。続いて、この工程(1)を4回繰り返し、さらにV−601を1.16gとメチルエチルケトン6.4gとからなる溶液を加えて、3時間攪拌を続けた。重合反応を終了した後、溶液の温度を65℃に降温し、イソプロパノール163.0gを加えて放冷し、共重合体(メチルメタクリレート/メトキシエチルアクリレート/ベンジルメタクリレート/メタクリル酸=46/11/35/8)の樹脂溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量(Mw)は63000であり、酸価は65.1mgKOH/gであった。
【0190】
次に、得られた樹脂溶液317.3g(固形分濃度41.0質量%)を秤量し、イソプロパノール46.4g、20質量%無水マレイン酸水溶液1.65g(水溶性酸性化合物;共重合体に対してマレイン酸として0.3質量%相当)、及び2モル/LのNaOH水溶液40.77gを加え、反応容器内温度を70℃に昇温した。次に、蒸留水380gを10ml/minの速度で滴下し、水分散化した。その後、減圧下で反応容器内温度70℃で1.5時間保って、イソプロパノール、メチルエチルケトン、蒸留水を合計で287.0g留去し、プロキセルGXL(S)(アーチ・ケミカルズ・ジャパン(株)製)0.278g(樹脂固形分に対してベンゾイソチアゾリン−3−オンとして440ppm)添加した。その後、1μmのフィルターでろ過を実施し、ろ過液を回収し、固形分濃度26.5%の自己分散性ポリマー粒子B−01の水性分散物を得た。
【0191】
<顔料分散液の調製>
〜樹脂分散剤P−1の合成〜
攪拌機、冷却管を備えた1000mlの三口フラスコに、メチルエチルケトン88gを加えて窒素雰囲気下で72℃に加熱し、これにメチルエチルケトン50gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.85g、フェノキシエチルメタクリレート50g、メタクリル酸11g、及びメチルメタクリレート39gを溶解した溶液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間反応した後、メチルエチルケトン(MEK)2gにジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート0.42gを溶解した溶液を加え、78℃に昇温して4時間加熱した。得られた反応溶液にMEKを加え、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸(共重合比[質量比]=50/39/11)共重合体(樹脂分散剤P−1)40質量%のMEK溶液を得た。
得られた樹脂分散剤P−1の組成は、H−NMRで確認し、GPCより求めた重量平均分子量(Mw)は49400であった。さらに、JIS規格(JIS K 0070:1992)記載の方法によりこの共重合体の酸価を求めたところ、71.7mgKOH/gであった。
【0192】
〜ブラック顔料分散物Kの調製〜
顔料としてカーボンブラック(#2600、三菱化学(株)製)100gと、フェノキシエチルメタクリレート/メチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体(樹脂分散剤P−1)を固形分で57gと、メチルエチルケトン155.8gと、pH調整剤として1mol/L水酸化ナトリウム80.8g(メタクリル酸に対する中和度110モル%)と、イオン交換水491gとをディスパーで予備分散し、さらにビーズミル分散機で0.1mmφジルコニアビーズを用いて分散した。分散後、孔径1μmのフィルターでろ過し、ろ液を回収した。その後、吸光度スペクトルから顔料濃度を求め、顔料濃度が15%の樹脂被覆顔料粒子の分散物(ブラック顔料分散液K)を得た。
【0193】
〜シアン顔料分散物Cの調製〜
前記ブラック顔料分散物Kの調製において、顔料をカーボンブラックからピグメントブルー15:3(PB15:3)へ代えたこと以外は、ブラック顔料分散物Kと同様の方法でシアン顔料分散物Cを得た。
【0194】
〜マゼンタ顔料分散物Mの調製〜
前記ブラック顔料分散物Kの調製において、顔料をカーボンブラックからピグメントレッド122(PR122)へ代えたこと以外は、ブラック顔料分散物Kと同様の方法でマゼンタ顔料分散物Mを得た。
【0195】
〜イエロー顔料分散物Yの調製〜
前記ブラック顔料分散物Kの調製において、顔料をカーボンブラックからピグメントイエロー74(PY74)へ代えたこと以外は、ブラック顔料分散物Kと同様の方法でイエロー顔料分散物Yを得た。
【0196】
<インク組成物>
下記表1に示すインク組成になるように各成分を混合した。これをプラスチック製のディスポーザブルシリンジに詰め、PVDF5μmフィルター(Millex−SV、直径25mm、ミリポア社製)で濾過し、各色インク(インク組成物)を調製した。
【0197】
【表1】



【0198】
<処理液の調製>
下記組成の諸成分を混合して、処理液を調製した。処理液のpHは1.0であった。
<処理液の組成>
・マロン酸(東京化成工業(株)製) ・・・11質量%
・DL−リンゴ酸(東京化成工業(株)製) ・・・15質量%
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(和光純薬工業(株)製)・・・4質量%
・トリプロピレングリコールモノメチルエーテル ・・・4質量%
(和光純薬工業(株)製)
・イオン交換水 ・・・66質量%
【0199】
<画像形成及び評価>
〜画像形成〜
図1に示すインクジェット記録装置を用意し、その搬送ベルト2上に記録媒体1として特菱アート両面N(面積2982cm(菊判)、坪量104.7g/m、三菱製紙(株)製)を供給した。ここで、インクジェット記録装置100には、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック用の吐出ヘッド32に連通された不図示のインク貯留タンクに前記インクを順次充填し、処理液吐出ヘッド31に連通された不図示の処理液貯留タンクには処理液を充填した。
【0200】
搬送ベルト2により250mm/secの搬送速度で搬送された記録媒体(特菱アート両面N)1に対し、まず処理液吐出ヘッド31から処理液を付与した後、処理液が付与された記録媒体1を、不図示の温風噴出ノズル(70℃温風9m/分にて吹き付け)とIRヒータ(180℃)4によって乾燥処理し、処理液中の溶媒の一部を乾燥させた。
【0201】
その後、記録媒体1の処理液付与面にインク吐出ヘッド32から各色のインクを、600dpi×1200dpi×2pLにて吐出し、記録媒体1上にグレーのベタ画像を形成した。画像が形成された記録媒体(印画物)1は、ドライヤで加熱乾燥した後、互いに圧接する加熱ローラ5と加圧ローラ6とで構成された定着ロール間を通過させて、60℃で加熱することにより画像を定着した。さらに、記録媒体1に送風機(冷却手段)7で風をあてて定着温度より20℃低い温度まで冷却し、集積した。集積の際には、パウダー噴霧器8から記録媒体1の画像形成面に、パウダーとして澱粉(東邦精機社製、商品名:クラウン、粒子径23μm)を散布し、付着させた。その後、パウダーが付着した記録媒体1を排出口から排出して、1000枚積み重ねた。このとき、パウダーの種類又は記録媒体の画像形成面における付与量を、下記表1に示すように変化させた。
次に、1000枚重ねた状態で25℃、60%RHの環境条件下で2時間保管し、上記と同様の方法で裏面に画像を形成した。
【0202】
〜評価〜
上記のようにパウダーの種類又は付与量を変化させたときの耐擦性及び画像欠陥の程度について、以下に示す方法で評価を行なった。評価結果を下記表2に示す。
【0203】
−1.耐擦性−
10mm×50mmに裁断した未印字の特菱アート両面Nを文鎮(重量470g、サイズ15mm×30mm×120mm)に巻きつけたものを用意し(未印字の特菱アート両面Nと評価サンプルが接触する面積は150mm)、これで裏面への画像形成から5分経ったサンプルを3往復擦った(荷重260kg/mに相当)。擦った後の印字面、及び文鎮に巻きつけた特菱アートの表面を目視により観察し、下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
AA:印字面の画像の剥がれは全く視認できず、かつ、文鎮に巻きつけた特菱アート紙への色移りも視認できなかった。
A:印字面の画像の剥れは全く視認できない一方、文鎮に巻きつけた特菱アート紙への色移りが若干視認された。
B:印字面の画像の剥れが、わずかに視認され、また、文鎮に巻きつけた特菱アート紙への色移りが若干視認されたが、実用上問題ないレベルであった。
C:印字面の画像の剥れが視認でき、さらに、文鎮に巻きつけた特菱アート紙への色移りがあり、実用上問題があるレベルであった。
D:印字面の画像の剥れが顕著で、さらに、文鎮に巻きつけた特菱アート紙への色移りが顕著であり、実用上問題があるレベルであった。
【0204】
−2.画像欠陥−
排出トレイに集積されて重ねられた1000枚の記録媒体を24時間、25℃、60%RHの環境条件下で保管した後、形成された画像を目視により観察して、画像形成された記録媒体の500枚目と501枚目との間の画像欠陥の発生(本来印字されているべきところに白い色抜けが発生)の有無を下記の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:画像欠陥が目視で認められなかった。
B:画像形成面のごく一部(10cmに1箇所程度)に画像欠陥がみられた。
C:画像形成面の全体に画像欠陥が認められた。
【0205】
【表2】

【0206】
前記表2に示すように、本発明では、良好な耐擦性が得られ、画像には傷や剥がれなどの画像欠陥の発生が少なく、高品質な画像が得られた。
【0207】
1・・・記録媒体
2・・・搬送ベルト
4・・・IRヒータ(加熱手段)
5・・・加熱ローラ
6・・・加圧ローラ
7・・・冷却手段
8・・・パウダー噴霧器(パウダー付与手段)
9・・・排出トレイ(集積手段)
31・・・処理液吐出ヘッド
32・・・インク吐出ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料粒子の少なくとも一部が水不溶性樹脂で被覆された樹脂被覆顔料と樹脂粒子とワックス粒子と1,2−アルキレンジオールと多価アルコールとピロリドン誘導体とアセチレングリコール系界面活性剤とを含むインク組成物を吐出ヘッドから記録媒体に、前記吐出ヘッドと前記記録媒体との間の副走査方向の移動速度を200mm/sec以上としてインクを付与するインク付与工程と、
インクが付与された前記記録媒体を乾燥させる乾燥工程と、
乾燥後の前記記録媒体を、前記記録媒体に平均粒子径1〜100μmの粉状物を1〜1000mg/m付着させる工程を設けて、集積する集積工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項2】
前記ワックスが、カルナバワックスである請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記ピロリドン誘導体として、ポリビニルピロリドンを含む請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
更に、前記インク組成物中の成分を凝集させる凝集成分を含有する処理液を記録媒体に付与する処理液付与工程を有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記粉状物は、疎水処理されているパウダー粒子である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
前記記録媒体は、塗工層を有し、面積が1250cm以上である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の画像形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−213906(P2012−213906A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80397(P2011−80397)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】